説明

制御弁

【課題】複数の冷媒通路を切り替えて運転がなされる車両用冷暖房装置において、その冷媒通路の切り替える制御弁に嵩むコストをトータル的に抑制する。
【解決手段】ある態様の制御弁は、第1冷媒通路および第2冷媒通路が内部に形成され、第1冷媒通路の冷媒の流れを調整するために開度が制御される第1弁41と、第2冷媒通路の冷媒の流れを調整するために開度が制御される第2弁42とを収容する共用のボディ104と、第1弁41と第2弁42の開度を電気的に調整するための共用のモータユニット102と、モータユニット102による第1弁41および第2弁42の一方の開度の制御状態において他方を全開状態に維持可能な弁配置構成と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御弁に関し、特に車両用冷暖房装置の冷媒通路の切り替えに好適な制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を搭載した車両においてはエンジンの燃焼効率が向上したこともあり、熱源として利用してきた冷却水が暖房に必要な温度にまで上昇し難くなっている。一方、内燃機関と電動機を併用したハイブリッド車両においては内燃機関の稼働率が低いため、そのような冷却水の利用がさらに難しい。電気自動車に至っては内燃機関による熱源そのものがない。このため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いたサイクル運転を行い、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷凍サイクルを有し、暖房運転時と冷房運転時とで室外熱交換器の機能が切り替えられる。暖房運転時においては室外熱交換器が蒸発器として機能する。その際、冷凍サイクルを冷媒が循環する過程で室内熱交換器が放熱し、その熱により車室内の空気が加熱される。一方、冷房運転時においては室外熱交換器が凝縮器として機能する。その際、室外熱交換器にて凝縮された冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。その際、除湿も行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−240266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車室内の快適性を維持するとともに、寒冷下においても車両運転中の視界を良好に維持するために、このような車両用冷暖房装置においては特に除湿運転が重要視される。そのため、複数の熱交換器が比較的複雑な経路で配管されることが多く、冷媒通路の切り替えのために二方向弁や三方向弁といった制御弁が数多く用いられる。二方向弁は、その開閉により冷媒通路を開放または遮断したり、その開度調整により冷媒通路の開度を調整したりする。三方向弁は、1つの共用通路と2つの個別通路との接続点に設けられ、共用通路と連通させる個別通路を切り替える。これらの制御弁は、ソレノイドやステッピングモータなどのアクチュエータを用いる電気駆動弁として構成されることが多い。
【0006】
しかしながら、このような制御弁が数多く用いられると、当然にコストが嵩み、車両の設置スペース上の問題も生じる。このため、このような制御弁を冷媒通路を切り替えるだけの切替弁としてだけではなく、その開度を比例的に変化させて冷媒流量の調整を行う比例弁として機能させたり、その開度を絞ることで冷媒を膨張させて状態遷移させる膨張弁として機能させるなど、複数種の制御弁の機能を兼用させることもある。しかし、その制御弁の複数の弁部の開度を外部から調整可能とする場合には、その弁部の数に応じたアクチュエータが必要となり、依然として改善の余地があった。
【0007】
本発明の目的は、複数の冷媒通路を切り替えて運転がなされる車両用冷暖房装置において、その冷媒通路の切り替える制御弁に嵩むコストをトータル的に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御弁は、第1冷媒通路および第2冷媒通路が内部に形成され、第1冷媒通路の冷媒の流れを調整するために開度が制御される第1弁と、第2冷媒通路の冷媒の流れを調整するために開度が制御される第2弁とを収容する共用のボディと、第1弁と第2弁の開度を電気的に調整するための共用のアクチュエータと、アクチュエータによる第1弁および第2弁の一方の開度の制御状態において他方を全開状態に維持可能な弁配置構成と、を備える。
【0009】
この態様によると、複数の冷媒通路の開度をそれぞれ調整するために複数の弁が設けられるところ、その複数の弁が共用のボディに収容されて共用のアクチュエータにより開閉駆動される制御弁(複合弁)として構成される。そして、一方の弁による冷媒の流量制御がなされている状態において、他方の弁を全開させて流量飽和状態とする配置構成を有することで、その他方の弁の状態が一方の弁の流量制御に実質的に影響を及ぼさないようにしている。言い換えれば、このように第1弁と第2弁とがその弁配置によって制御上影響を及ぼさないようにすることで、一つのアクチュエータによる複数の弁の駆動が可能とされている。それにより、弁の数に対してボディやアクチュエータの数を抑えることができる。このため、このような制御弁を車両用冷暖房装置の冷媒循環通路に複数設ければ、弁の数に対してトータルのコストをさらに抑制可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の冷媒通路を切り替えて運転がなされる車両用冷暖房装置において、その冷媒通路の切り替える制御弁に嵩むコストをトータル的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。
【図2】車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。
【図3】第1実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図4】第1実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図5】第1実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図6】第2実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図7】第2実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。本実施形態は、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車の冷暖房装置として具体化したものである。
【0013】
車両用冷暖房装置100は、圧縮機2、室内凝縮器3、室外熱交換器5、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置100は、冷媒としての代替フロン(HFO−1234yf)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
【0014】
車両用冷暖房装置100は、また、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。この冷凍サイクルは、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として直列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。すなわち、冷房運転時(除湿時)に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路、暖房運転中の除湿時に冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
【0015】
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→室外熱交換器5→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→室外熱交換器5→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。室外熱交換器5を流れる冷媒の流れは、第1冷媒循環通路と第2冷媒循環通路とで逆方向となっている。
【0016】
具体的には、圧縮機2の吐出室は第1通路21を介して室内凝縮器3の入口に接続され、室内凝縮器3の出口は第2通路22を介して室外熱交換器5の一方の出入口に接続されている。室外熱交換器5の他方の出入口は第3通路23を介して蒸発器7の入口に接続され、蒸発器7の出口は第4通路24(戻り通路)を介してアキュムレータ8の入口に接続されている。これら第1通路21、第2通路22、第3通路23および第4通路24により第1冷媒循環通路が形成される。
【0017】
第2通路22には、室内凝縮器3の側から第1分岐点、第2分岐点、第3分岐点が設けられている。すなわち、第2通路22は、第1分岐点にてバイパス通路25に分岐し、第2分岐点にてバイパス通路26に分岐し、第3分岐点にてバイパス通路27に分岐している。そして、バイパス通路25が第3通路23に接続されることにより、室内凝縮器3から導出された冷媒の少なくとも一部を室外熱交換器5を迂回させて蒸発器7へ供給可能な第3冷媒循環通路が形成される。また、バイパス通路26が室外熱交換器5の他方の出入口に接続され、バイパス通路27がアキュムレータ8の入口に接続されることにより、第2冷媒循環通路が形成される。
【0018】
室内凝縮器3の出口と室外熱交換器5の一方の出入口との間には第1制御弁4が設けられている。また、その室外熱交換器5の一方の出入口と蒸発器7の出口との間には第2制御弁6が設けられている。さらに、室外熱交換器5の他方の出入口と蒸発器7の入口との間には第3制御弁9が設けられている。
【0019】
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。
【0020】
室内凝縮器3は、車室内に設けられ、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が室内凝縮器3を通過する際に放熱する。車室内に導入された空気は、室内凝縮器3を通過する過程で温められる。
【0021】
室外熱交換器5は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外熱交換器5が蒸発器として機能する際には、膨張装置(第2弁32)の通過により低温・低圧となった冷媒が、室外熱交換器5を通過する際に蒸発する。
【0022】
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、膨張装置(第1弁51または第2弁52)の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。車室内に導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却され、除湿される。このとき冷却・除湿された空気は、室内凝縮器3の通過過程で加熱される。
【0023】
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。
【0024】
第1制御弁4は、共用のボディに第1弁31と第2弁32とを収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。第1制御弁4のボディには、第2通路22における第2分岐点と第3分岐点とをつなぐ第1冷媒通路と、バイパス通路26を構成する第2冷媒通路が設けられている。第1弁31は大口径の弁であり、第1冷媒通路に設けられてその開度を調整する。第2弁32は小口径の弁であり、第2冷媒通路に設けられてその開度を調整する。第2弁32は膨張装置としても機能する。本実施形態では、第1制御弁4として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。
【0025】
第2制御弁6は、共用のボディに第1弁41と第2弁42とを収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。第2制御弁6のボディには、第4通路24を構成する第1冷媒通路とバイパス通路27を構成する第2冷媒通路が設けられている。第1弁41は大口径の弁であり、第1冷媒通路に設けられてその開度を調整する。第2弁42も大口径の弁であり、第2冷媒通路に設けられてその開度を調整する。本実施形態では、第2制御弁6として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。第2制御弁6の具体的構成については後述する。
【0026】
第3制御弁9は、共用のボディに第1弁51と第2弁52とを収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。第3制御弁9のボディには、第3通路23を構成する第1冷媒通路とバイパス通路25を構成する第2冷媒通路が設けられている。第1弁51は小口径の弁であり、第1冷媒通路に設けられてその開度を調整する。第2弁52も小口径の弁であり、第2冷媒通路に設けられてその開度を調整する。第1弁51および第2弁52は膨張装置としても機能する。本実施形態では、第3制御弁9として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。
【0027】
以上のように構成された車両用冷暖房装置100は、図示しない制御部により制御される。制御部は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて各制御弁の制御量(弁開度や開閉状態)を決定し、その制御量が実現されるようアクチュエータに電流を供給する。本実施例ではアクチュエータとしてステッピングモータを用いるため、制御部は、各制御弁の制御量が実現されるようステッピングモータに制御パルス信号を出力する。このような制御により、圧縮機2は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。なお、本実施形態ではこのような制御を実現するために、室内凝縮器3の出口、室外熱交換器5の一方の出入口と他方の出入口、蒸発器7の入口と出口のそれぞれの温度を検出するための複数の温度センサが設置されている。
【0028】
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は特定暖房運転時の状態を示し、(C)は通常暖房運転時の状態を示し、(D)は特殊暖房運転時の状態を示している。なお、「特定暖房運転」は、暖房運転において特に除湿の機能を高めた運転状態である。「特殊暖房運転」は、室外熱交換器5を機能させない運転状態である。なお、図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。
【0029】
図2(A)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁4において第1弁31が開弁状態とされ第2弁32が閉弁状態とされる。また、第2制御弁6において第1弁41が開弁状態とされ第2弁42が閉弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において第1弁51が開弁状態とされ第2弁52が閉弁状態とされる。それにより第1冷媒循環通路のみが開放される。このため、バイパス通路25,26,27が遮断され、圧縮機2から吐出冷媒は室外熱交換器5および蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。
【0030】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3および室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、室外熱交換器5を経由した冷媒が第3制御弁9の第1弁51にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7に導入される。蒸発器7の入口に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。蒸発器7から導出された冷媒は、第2制御弁6の第1弁41を経てアキュムレータ8に導入される。制御部は、室外熱交換器5の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう第1弁51の開度を制御する。
【0031】
図2(B)に示すように、特定暖房運転時においては、第1制御弁4の第1弁31が閉弁状態とされ第2弁32が開弁状態とされる。また、第2制御弁6において第1弁41および第2弁42が共に開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において第1弁51が閉弁状態とされ第2弁52が開弁状態とされる。それにより第1冷媒循環通路が遮断され、第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が開放される。このため、室内凝縮器3から導出された冷媒は、一方でバイパス通路26を介して室外熱交換器5に導かれ、他方でバイパス通路25を介して蒸発器7に導かれる。
【0032】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮される。室内凝縮器3から導出された冷媒は、一方で第1制御弁4の第2弁32にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、室外熱交換器5を通過する際に蒸発される。室外熱交換器5から導出された冷媒は、第2制御弁6の第2弁42を経てアキュムレータ8に導入される。また、室内凝縮器3から導出された冷媒は、他方で第3制御弁9の第2弁52にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7を通過する際に蒸発される。蒸発器7から導出された冷媒は、第2制御弁6の第1弁41を経てアキュムレータ8に導入される。
【0033】
このとき、制御部は、室外熱交換器5による熱吸収と蒸発器7による除湿とを適正に行うべく、室外熱交換器5における冷媒の蒸発量と蒸発器7における冷媒の蒸発量との比率を適正に調整する。具体的には、制御部は、室内凝縮器3の出口側の温度に基づいて第2弁32と第2弁52のトータルの開度を調整することにより、室内凝縮器3の出口側の過冷却度が適正となるよう制御する。制御部は、また、車両用冷暖房装置100の運転負荷に応じて第2弁32と第2弁52の開度の比率を制御することにより、両弁をそれぞれ通過する冷媒流量の比率を調整し、室外熱交換器5および蒸発器7のそれぞれにおける蒸発量を調整する。また、制御部は、第2制御弁6における第1弁41および第2弁42の一方の全開状態を維持したまま他方の開度を調整する。本実施形態では、室外熱交換器5よりも蒸発器7の温度が低い場合には第1弁41を全開状態にして第2弁42の開度を制御する。一方、蒸発器7よりも室外熱交換器5の温度が低い場合には第2弁42を全開状態にして第1弁41の開度を制御する。
【0034】
例えば、前者のように室外熱交換器5よりも蒸発器7の温度が低い場合、室外熱交換器5の蒸発圧力Poと蒸発器7の出口の圧力Peとの差圧ΔP=Po−Peが適正となるように制御することで、循環する冷媒を室外熱交換器5と蒸発器7とで蒸発させる比率を調整することができる。すなわち、差圧ΔPが大きくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に小さくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に大きくなる)。逆に、差圧ΔPが小さくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に大きくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に小さくなる)。制御部は、その差圧ΔPが適正となるように制御することで、特定暖房運転時における除湿機能を確保する。なお、室外熱交換器5の蒸発圧力Poについては室外熱交換器5の入口側の温度Toを検出することで特定することができる。また、蒸発器7の出口の圧力Peについては蒸発器7の入口側の温度Teを検出することで特定することができる。
【0035】
逆に、後者のように蒸発器7よりも室外熱交換器5の温度が低い場合、蒸発器7の出口の圧力Peと室外熱交換器5の蒸発圧力Poとの差圧ΔP=Pe−Poが適正となるように制御する。制御部は、その差圧ΔPが適正となるように制御することで、特定暖房運転時における除湿機能を確保する。その場合、蒸発器7の出口の圧力Peについては蒸発器7の入口側の温度Teを検出することで特定することができる。また、室外熱交換器5の蒸発圧力Poについては室外熱交換器5の入口側の温度Toを検出することで特定することができる。
【0036】
なお、このように室外熱交換器5や蒸発器7の入口側の温度を検出するのは、それぞれの出口側に過熱度(スーパーヒート)が発生している場合、出口側の温度を検出してもその温度は蒸発圧力に対応しないためである。なお、出口側の温度と入口側の温度との温度差に基づき、過熱度がどの程度発生しているかを判定することができるため、その温度差に応じて第1弁41や第2弁42の開度を調整することで、適正な蒸発状態を実現することが可能となる。
【0037】
図2(C)に示すように、通常暖房運転時においては、第1制御弁4の第1弁31が閉弁状態とされ第2弁32が開弁状態とされる。また、第2制御弁6において第1弁41が閉弁状態とされ、第2弁42が開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において第1弁51および第2弁52が共に閉弁状態とされる。それにより第2冷媒循環通路のみが開放される。このため、室内凝縮器3から導出された冷媒はバイパス通路26を介して室外熱交換器5に導かれる。このとき、蒸発器7には冷媒が供給されないため、蒸発器7は実質的に機能しなくなり、室外熱交換器5のみが蒸発器として機能するようになる。制御部は、室内凝縮器3の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう第2弁32の開度を制御する。
【0038】
図2(D)に示すように、特殊暖房運転時においては、第1制御弁4の第1弁31および第2弁32が共に閉弁状態とされる。また、第2制御弁6において第1弁41が開弁状態とされ、第2弁42が閉弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において第1弁51が閉弁状態とされ、第2弁52が開弁状態とされる。それにより第3冷媒循環通路のみが開放される。このため、室内凝縮器3から導出された冷媒はバイパス通路25を介して蒸発器7に導かれる。つまり、冷媒が室外熱交換器5を迂回するため室外熱交換器5が実質的に機能しなくなる。蒸発器7に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を除湿する。このような特殊冷暖房運転は、外部からの吸熱が困難な場合、例えば車両が極寒状況におかれた場合などに有効に機能する。制御部は、室内凝縮器3の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう第2弁52の開度を制御する。
【0039】
次に、本実施形態の主要な制御弁の具体的構成について説明する。
図3〜図5は、第1実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。図3に示すように、第2制御弁6は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体101とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体101は、有底筒状のボディ104に大口径の第1弁41と大口径の第2弁42とを同軸状に収容して構成され、一方の弁の全開状態を維持しつつ他方の弁の開度を設定開度に調整する比例弁として構成されている。
【0040】
ボディ104の一方の側部には第1導入ポート110および第2導入ポート112が設けられ、他方の側部には導出ポート114が設けられている。第1導入ポート110は第4通路24に連通し、第2導入ポート112はバイパス通路27に連通し、導出ポート114は下流側通路に連通する。その下流側通路はアキュムレータ8の入口につながっている。すなわち、ボディ104には、第1導入ポート110と導出ポート114とをつなぐ第1冷媒通路と、第2導入ポート112と導出ポート114とをつなぐ第2冷媒通路が形成される。
【0041】
ボディ104の中央部には、円筒状の区画部材120が内挿されている。区画部材120は、ボディ104に同心状に組み付けられており、その導出ポート114との対向面には内外を連通する連通孔が形成されている。区画部材120の上端面とボディ104の内周面との間にはOリング122が設けられ、区画部材120の下端面とボディ104の内周面との間にはシールリング124が設けられている。シールリング124は、リング状をなす弾性体(例えばゴム)からなり、その外周端部が区画部材120とボディ104との間に挟まれるようにして支持されている。シールリング124は、半径方向内向きに延出する薄肉部を有し、後述のように受圧調整部材としても機能する。
【0042】
また、ボディ104における区画部材120の上方には、円筒状の区画部材130が内挿されている。区画部材130は、ボディ104に同心状に組み付けられており、その第2導入ポート112との対向面には内外を連通する連通孔が形成されている。Oリング122は、区画部材120の上端面と区画部材130の下端面との間に挟まれるように配置され、その脱落が防止されている。
【0043】
ボディ104の底部にはリング状の弁座部材133が嵌着されるとともに、ガイド部材135が固定されている。ガイド部材135は、複数の脚部(本実施形態では3本)がボディ104に同心状に立設されるようにして構成されている。ガイド部材135の底部が弁座部材133に部分的にオーバラップすることにより、弁座部材133の脱落が防止されている。
【0044】
ボディ104の上端部には、円板状の区画部材123が配設されている。区画部材123は、弁本体101の内部とモータユニット102の内部とを区画する。区画部材123の中央部には、円ボス状の軸受部126が設けられている。軸受部126の内周面には雌ねじ部が設けられ、外周面は滑り軸受として機能する。
【0045】
区画部材123の下面にもリング状の弁座部材136が嵌着されるとともに、ガイド部材138が固定されている。ガイド部材138は、複数の脚部(本実施形態では3本)がボディ104に同心状に立設されるようにして構成されている。ガイド部材138の底部が弁座部材136に部分的にオーバラップすることにより、弁座部材136の脱落が防止されている。弁座部材136と弁座部材133とは、ボディ104の軸線方向一端側と他端側とに設けられている。ガイド部材135とガイド部材138は、上下に対称な配置構造となっている。
【0046】
ボディ104の内方には、大径の弁体140、大径の弁体142、弁作動体134および伝達ロッド146が同軸状に(同一軸線上に)配設されている。区画部材123の軸受部126の内周面には雌ねじ部が設けられている。弁作動体134の下端部には、伝達ロッド146が連結されている。弁体140はボディ104の下半部に位置し、弁体142はボディ104の上半部に位置する。弁体140と弁体142とは、軸線に沿って対向配置されている。
【0047】
弁体140は有底円筒状をなし、その底部中央に下方に凸となる形状の係止部150を有し、その係止部150の中央には伝達ロッド146の先端部を貫通させるための貫通孔が設けられている。また、弁体140の底部には、その内部と導出ポート114とを連通させる連通孔が形成されている。弁体140は、ガイド部材135に摺動可能に外挿され、その下端開口部が弁座部材133に接離することにより第1弁41の開度を調整する。弁体140の外周部のシールは、シールリング124により実現されている。区画部材120は、弁体140を摺動可能に支持するガイド部を構成する。
【0048】
弁体142は弁体140と近似した構造を有する。すなわち、弁体142は有底円筒状をなし、その底部中央に上方に凸となる形状の係止部152を有し、その係止部152の中央には伝達ロッド146の下半部を貫通させるための貫通孔が設けられている。また、弁体142の底部には、その内部と導出ポート114とを連通させる連通孔が形成されている。弁体142は、ガイド部材138に摺動可能に外挿され、その上端開口部が弁座部材136に接離することにより第2弁42の開度を調整する。弁体142の外周部のシールは、Oリング122により実現されている。Oリング122は、弁体142を摺動可能に支持するガイド部を構成する。図示のように、弁体140と弁体142とは、ボディ104の中央部にて互いに底部を対向させるように配置される。
【0049】
弁作動体134は、段付円筒状をなし、その外周部に雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部は、軸受部126の雌ねじ部に螺合する。弁作動体134の上端部には半径方向外向きに延出する複数(本実施形態では4つ)の脚部155が設けられており、モータユニット102のロータに嵌合している。
【0050】
弁作動体134は、モータユニット102の回転駆動力を受けて回転し、その回転力を並進力に変換する。すなわち、弁作動体134が回転すると、ねじ機構(「作動変換機構」として機能する)によって弁作動体134が軸線方向に変位し、弁体140および弁体142を第1弁41、第2弁42の開閉方向に駆動する。
【0051】
伝達ロッド146は段付円柱状をなし、弁体142を軸線方向に貫通している。伝達ロッド146の上端部は、弁作動体134の底部に固定されている。すなわち、伝達ロッド146は、弁作動体134の一部を構成する。伝達ロッド146の下半部は小径化されて弁体142の底部を貫通し、その先端部が弁体140の底部を貫通して半径方向外向きに加締められている。伝達ロッド146は、その下半部の基端により弁体142の上方への相対変位を規制し、その下端部により弁体140の下方への相対変位を規制する。すなわち、伝達ロッド146の下半部は、弁体140の係止部150と弁体142の係止部152とをその離間方向への変位を規制するように支持する係合部を構成する。弁体140の係止部150と弁体142の係止部152との間に形成される空間には、互いを離間方向に付勢するスプリング148(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0052】
ここで、本実施形態においては、弁体142の弁部の有効径Aと摺動部の有効径Bとが等しく設定されているため、弁体142に作用する冷媒圧力の影響がキャンセルされる。同様に、弁体140の弁部の有効径Cと摺動部の有効径Dとが等しく設定されているため、弁体140に作用する冷媒圧力の影響もキャンセルされる。弁体140については、閉弁時にその摺動部の下面とシールリング124の上面とが密着して摺動部の有効径Dを確保することにより高精度な圧力キャンセルが可能となっている。このため、冷媒圧力の変化によりモータユニット102に過度な負荷がかかることがなく、弁開度の制御を安定に行うことができる。
【0053】
一方、モータユニット102は、ロータ172とステータ173とを含むステッピングモータとして構成されている。モータユニット102は、有底円筒状のスリーブ170の内方にロータ172を回転自在に支持するようにして構成されている。スリーブ170の外周には、励磁コイル171を収容したステータ173が設けられている。スリーブ170は、その下端開口部がボディ104に組み付けられており、ボディ104とともに第2制御弁6のボディを構成する。
【0054】
ロータ172は、円筒状に形成された回転軸174と、その回転軸174の外周に配設されたマグネット176を備える。本実施形態では、マグネット176は24極に磁化されている。回転軸174の内方にはモータユニット102のほぼ全長にわたる内部空間が形成されている。回転軸174の内周面の特定箇所には、軸線に平行に延びるガイド部178が設けられている。ガイド部178は、後述する回転ストッパと係合するための突部を形成するものであり、軸線に平行に延びる一つの突条により構成されている。
【0055】
回転軸174の下端部はやや縮径され、その内周面に軸線に平行に延びる4つのガイド部180が設けられている。ガイド部180は、軸線に平行に延びる一対の突条により構成され、回転軸174の内周面に90度おきに設けられている。この4つのガイド部180には、上述した弁作動体134の4つの脚部155が嵌合し、ロータ172と弁作動体134とが一体に回転できるようになっている。ただし、弁作動体134は、ロータ172に対する回転方向の相対変位は規制されるものの、そのガイド部180にそった軸線方向の変位は許容される。すなわち、弁作動体134は、ロータ172とともに回転しつつ弁体132の開閉方向に駆動される。
【0056】
ロータ172の内方には、その軸線に沿って長尺状のシャフト182が配設されている。シャフト182は、その上端部がスリーブ170の底部中央に圧入されることにより片持ち状に固定され、ガイド部178に平行に内部空間に延在している。シャフト182は、弁作動体134と同一軸線上に配置されている。シャフト182には、そのほぼ全長にわたって延在する螺旋状のガイド部184が設けられている。ガイド部184は、コイル状の部材からなり、シャフト182の外面に嵌着されている。ガイド部184の上端部は折り返されて係止部186となっている。
【0057】
ガイド部184には、螺旋状の回転ストッパ188が回転可能に係合している。回転ストッパ188は、ガイド部184に係合する螺旋状の係合部190と、回転軸174に支持される動力伝達部192とを有する。係合部190は一巻きコイルの形状をなし、その下端部に半径方向外向きに延出する動力伝達部192が連設されている。動力伝達部192の先端部がガイド部178に係合している。すなわち、動力伝達部192は、ガイド部178の一つの突条に当接して係止される。このため、回転ストッパ188は、回転軸174により回転方向の相対変位は規制されるが、ガイド部178に摺動しつつその軸線方向の変位が許容される。
【0058】
すなわち、回転ストッパ188は、ロータ172と一体に回転し、その係合部190がガイド部184にそってガイドされることで、軸線方向に駆動される。ただし、回転ストッパ188の軸線方向の駆動範囲はガイド部178の両端に形成された係止部により規制される。同図には、回転ストッパ188が中間位置にある状態が示されている。回転ストッパ188が上方へ変位して係止部186に係止されると、その位置が上死点となる。回転ストッパ188が下方へ変位すると、その下死点にて係止される。
【0059】
ロータ172は、その上端部がシャフト182に回転自在に支持され、下端部が軸受部126に回転自在に支持されている。具体的には、回転軸174の上端開口部を封止するように有底円筒状の端部部材194が設けられ、その端部部材194の中央に設けられた円筒軸196の部分がシャフト182に支持されている。すなわち、軸受部126が一端側の軸受部となり、シャフト182における円筒軸196との摺動部が他端側の軸受部となっている。
【0060】
以上のように構成された第2制御弁6は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて第1弁41を全開状態とし、第2弁42を閉弁状態とする場合、図3に示す状態とされる。
【0061】
一方、第1弁41または第2弁42の開度を調整する場合、図3の状態からロータ172を一方向に回転駆動(正転)する。それにより、図4に示すように、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって下降し、弁体142および弁体140を押し下げるようにして変位させ、第2弁42が開弁状態となる。なお、図4には第1弁41および第2弁42の双方が全開となる中立状態が示されているが、いずれか一方の開度を小さくしてその開度を制御することにより、その小さくした側の弁を流れる冷媒の流量を調整することができる。このとき、開度が大きくなる側の弁は、その開度が大きくなっても冷媒の流量は飽和状態となり、図4に示す状態と実質的に変わらない全開状態を維持する。すなわち、弁体142が図3に示す全閉状態と図4に示す全開位置との間の範囲で駆動されることにより第2弁42の開度が調整される。
【0062】
また、第1弁41を閉弁状態とする場合、図4の状態からロータ172をさらに同方向に回転駆動する。それにより、図5に示すように、弁体142および弁体140がさらに押し下げられ、第1弁41が閉弁状態となる。このとき、弁体142が図4の状態からさらに開弁方向に駆動されるが、第2弁42は、その開度が大きくなっても冷媒の流量は飽和状態となり、図4に示す状態と実質的に変わらない全開状態を維持する。第1弁41を閉弁状態から開弁させる場合には、図5の状態からロータ172を他方向に回転駆動(逆転)させればよい。すなわち、弁体140が図5に示す全閉状態と図4に示す全開位置との間の範囲で駆動されることにより第1弁41の開度が調整される。
【0063】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る制御弁は、弁機構の構成が第1実施形態と異なるが、その他の部分に共通の構成を有する。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図6および図7は、第2実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【0064】
第2制御弁206は、第1実施形態の第2制御弁6に置き換えて適用される。図6に示すように、第2制御弁206は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体201とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体201は、ボディ204に大口径の第1弁41と大口径の第2弁42とを同軸状に収容して構成され、一方の弁の全開状態を維持しつつ他方の弁の開度を設定開度に調整する比例弁として構成されている。
【0065】
ボディ204の一方の側部には第1導入ポート210および第2導入ポート212が設けられ、他方の側部には導出ポート214が設けられている。第1導入ポート210は第4通路24に連通し、第2導入ポート212はバイパス通路27に連通し、導出ポート214は下流側通路に連通する。その下流側通路はアキュムレータ8の入口につながっている。すなわち、ボディ204には、第1導入ポート210と導出ポート214とをつなぐ第1冷媒通路と、第2導入ポート212と導出ポート214とをつなぐ第2冷媒通路が形成される。
【0066】
ボディ204には、段付円筒状の区画部材220が内挿されている。区画部材220は、シール部材を介してボディ204に同心状に組み付けられている。そして、区画部材220の上半部に弁孔222が形成され、その上流側開口端縁により弁座224が形成されている。区画部材220の下半部に弁孔226が形成され、その上流側開口端縁により弁座228が形成されている。ボディ204の内方には、弁体233、弁体232、弁作動体134および伝達ロッド234が同軸状に(同一軸線上に)配設されている。区画部材123の軸受部126の内周面には、第1実施形態と同様に雌ねじ部が設けられている。弁作動体134の下端部には、伝達ロッド234が連結されている。伝達ロッド234は、段付円柱状をなし、弁体233の中央部を軸線方向に貫通している。伝達ロッド234の上端部は、弁作動体134の底部に固定されている。伝達ロッド234の下半部は大径化され、その段部が弁体233との相対変位を規制する係止部となっている。
【0067】
区画部材123の内方にはガイド孔236が形成されている。弁体233は、有底円筒状をなし、その下端部の外周面にはリング状の弾性体(例えばゴム)からなる弁部材235が嵌着されており、その弁部材235が弁座224に着座することにより、第2弁42を完全に閉じることが可能になる。弁体233は、その上端開口部が半径方向外向きに延出してガイド孔236に摺動可能に支持されている。区画部材123と弁体233とに囲まれた空間により背圧室240が形成されている。伝達ロッド234と弁体233との間に所定のクリアランスが存在するため、弁孔222の下流側の下流側圧力Poutがそのクリアランスを介して背圧室240に導入される。
【0068】
区画部材123と弁体233との間には、弁体233を閉弁方向に付勢するスプリング242(「付勢部材」として機能する)が介装されている。区画部材123と区画部材220との間には受圧調整部材244が配設されている。受圧調整部材244は、リング状をなす弾性体(例えばゴム)からなり、その外周端部が区画部材220と区画部材123との間に挟まれるようにして支持されている。受圧調整部材244は、薄膜状に形成され、第2弁42の閉弁時に区画部238に対して下方から当接する。
【0069】
弁体232は、弁孔226と第1導入ポート210との間の圧力室246に配設され、上流側から弁孔226に接離して第1弁41の開度を調整する。弁体232は、有底円筒状をなし、その上端部の外周面にはリング状の弾性体(例えばゴム)からなる弁部材250が嵌着されており、その弁部材250が弁座228に着座することにより、第1弁41を完全に閉じることが可能になる。
【0070】
圧力室246には、円穴状のガイド部252が弁孔226と同軸状に形成されている。そして、弁体232の下端部がガイド部252に摺動可能に内挿されている。弁体232とガイド部252とに囲まれた空間により背圧室254が形成される。弁体232とボディ204との間には、弁体232を閉弁方向に付勢するスプリング256(「付勢部材」として機能する)が介装されている。弁体232の上底部に第1導入ポート210と背圧室254とを連通させる連通孔258が設けられているため、背圧室254には第1導入ポート210から導入される下流側圧力Poutが満たされる。区画部材220の下端部とボディ204との間にも受圧調整部材244が配設されている。受圧調整部材244は、第1弁41の閉弁時に弁体232の下端部に対して上方から当接する。
【0071】
ここで、本実施形態においても、弁孔226の有効径Cとガイド部252の有効径Dとが等しく設定され、また弁孔222の有効径Aとガイド孔236の有効径Bとが等しく設定されている。このため、弁体233および弁体232に作用する冷媒圧力の影響はキャンセルされる。
【0072】
以上のように構成された第2制御弁206は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて第1冷媒通路を連通状態として第2冷媒通路を遮断する場合、図6に示す状態となる。この状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されると、第1冷媒通路と第2冷媒通路とがともに連通状態となる。すなわち、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって上昇し、伝達ロッド234を吊り上げるようにして弁体233を開弁方向に変位させる。このとき、スプリング256の付勢力によって弁体232が閉弁方向に動作する。
【0073】
図7に示す第1冷媒通路と第2冷媒通路の開度が等しい中立状態は、弁体233と弁体232がともに全開状態にある。この状態からロータ172が同方向に回転駆動されると、弁体233がさらに開弁方向、弁体232がさらに閉弁方向に動作することで、第2弁42の全開状態が維持されつつ第1弁41の開度が制御可能となる。一方、図7に示す状態からロータ172が他方向に回転駆動(逆転)されると、弁体233が閉弁方向、弁体232が開弁方向に動作することで、第1弁41の全開状態が維持されつつ第2弁42の開度が制御可能となる。
【0074】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0075】
上記実施形態では、第2制御弁6および第2制御弁206のアクチュエータとしてステッピングモータを用いる例を示したが、ソレノイドを用いてもよい。
【0076】
上記実施形態では、本発明の制御弁を電気自動車の車両用冷暖房装置に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車の車両用冷暖房装置に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。
【0077】
上記実施形態においては、補助凝縮器として室内凝縮器を設ける例を示した。変形例においては、補助凝縮器を室外熱交換器とは別に設けられる熱交換器として構成してもよい。その熱交換器は、例えば車室外に配置され、冷却水(ブラインなどでもよい)を利用して熱交換を行うものでもよい。具体的には、例えば図1におけるバイパス通路25への分岐点と圧縮機2との間に熱交換器を設ける一方、車室内に放熱器を配置し、これら熱交換器と放熱器とを冷却水の循環回路にて接続してもよい。その循環回路には冷却水を汲み上げるポンプを設けてもよい。このようにすれば、圧縮機2から第1制御弁4へ向かう高温の冷媒と、循環回路を循環する冷却水との間で熱交換を行うことができる。このような構成においても、圧縮機2から吐出された冷媒を熱交換器により凝縮させて第1制御弁4や第3制御弁9に供給することが可能となる。
【符号の説明】
【0078】
2 圧縮機、 3 室内凝縮器、 4 第1制御弁、 5 室外熱交換器、 6 第2制御弁、 7 蒸発器、 8 アキュムレータ、 9 第3制御弁、 31 第1弁、 32 第2弁、 41 第1弁、 42 第2弁、 51 第1弁、 52 第2弁、 100 車両用冷暖房装置、 101 弁本体、 102 モータユニット、 104 ボディ、 132 弁体、 133 弁座部材、 134 弁作動体、 135 ガイド部材、 136 弁座部材、 140,142 弁体、 146 伝達ロッド、 172 ロータ、 173 ステータ、 174 回転軸、 176 マグネット、 182 シャフト、 184 ガイド部、 188 回転ストッパ、 190 係合部、 192 動力伝達部、 196 円筒軸、 201 弁本体、 204 ボディ、 206 第2制御弁、 222 弁孔、 224 弁座、 226 弁孔、 228 弁座、 232,233 弁体、 234 伝達ロッド、 235 弁部材、 240,254 背圧室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1冷媒通路および第2冷媒通路が内部に形成され、前記第1冷媒通路の冷媒の流れを調整するために開度が制御される第1弁と、前記第2冷媒通路の冷媒の流れを調整するために開度が制御される第2弁とを収容する共用のボディと、
前記第1弁と前記第2弁の開度を電気的に調整するための共用のアクチュエータと、
前記アクチュエータによる前記第1弁および前記第2弁の一方の開度の制御状態において他方を全開状態に維持可能な弁配置構成と、
を備えることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記弁配置構成は、前記第1弁を開閉する第1弁体と、前記第2弁を開閉する第2弁体と、前記アクチュエータにより軸線方向に駆動される弁作動体とを同一軸線上に配置し、前記第1弁体および前記第2弁体のそれぞれが前記弁作動体と軸線方向に係合可能とされることにより構成され、
前記弁作動体の駆動により前記第1弁および前記第2弁の一方を通過する冷媒の流量が飽和する位置に一方の弁体を維持しつつ、双方の弁体を一体変位させることにより、他方の弁開度を制御することを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記ボディの軸線方向一端側に設けられた第1弁座と、
前記ボディの軸線方向他端側に設けられた第2弁座と、
筒状の本体を有し、その一端側開口端部が前記第1弁座に着脱することにより前記第1弁を開閉する前記第1弁体と、
筒状の本体を有し、その一端側開口端部が前記第2弁座に着脱することにより前記第2弁を開閉する前記第2弁体と、
を備え、
前記第1弁体の他端部と前記第2弁体の他端部とが、前記第1冷媒通路と前記第2冷媒通路とが接続される前記ボディの中間部において対向配置されるとともに、それぞれ前記弁作動体に係合することを特徴とする請求項2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記第1弁体を前記ボディの中間部において摺動可能に支持する第1ガイド部と、
前記第2弁体を前記ボディの中間部において摺動可能に支持する第2ガイド部と、
前記第1弁体の一端側開口端部の有効径と前記第1ガイド部の内径とが等しくされ、前記第2弁体の一端側開口端部の有効径と前記第2ガイド部の内径とが等しくされることによる圧力キャンセル機構と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の制御弁。
【請求項5】
前記弁作動体は、前記第1弁体の他端部と前記第2弁体の他端部とをその離間方向への変位を規制するように支持する係合部を有し、
前記第1弁体の他端部と前記第2弁体の他端部との間に両弁体を離間方向に付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の制御弁。
【請求項6】
前記アクチュエータとして、回転駆動されるロータを含むステッピングモータと、
前記ロータとともに回転し、その軸線周りの回転運動を前記弁作動体の軸線方向の並進運動に変換する作動変換機構と、
を備えることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の制御弁。
【請求項7】
前記ボディに固定され、前記ロータの軸線方向に延びるシャフトと、
前記シャフトの外周面に軸線方向にそって延設された螺旋状のガイド部と、
前記ガイド部にそって係合する係合部と前記ロータに支持される動力伝達部とを有し、前記ロータの回転とともに前記シャフトの軸線方向に変位し、前記動力伝達部が前記シャフトの一端側および他端側のそれぞれで係止されることにより前記ロータの回転を規制する回転ストッパと、
を備え、
前記弁作動体は、前記ロータに係合して軸線方向に並進可能に支持され、
前記ロータがその一端側と他端側に軸受部を有する中空形状をなし、
前記シャフトが前記ロータの内部空間に延設されることにより、前記回転ストッパがその内部空間において変位するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−163259(P2012−163259A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24090(P2011−24090)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】