説明

制御弁

【課題】作動流体が流れる複数の流体通路の切り替える制御弁に嵩むコストをトータル的に抑制する。
【解決手段】制御弁は、第1内部通路および第2内部通路を有し、第1内部通路に設けられた比例弁38と、第2内部通路に並列に設けられた第1弁244および第2弁246とを収容する共用のボディ205と、比例弁38、第1弁244および第2弁246の開度を電気的に制御するための共用のモータユニット102と、第1弁244の制御状態において比例弁38および第2弁246を閉弁状態に維持し、第2弁246の制御状態において比例弁38を全開状態に維持するとともに第1弁244を閉弁状態に維持する作動切替機構と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御弁に関し、特に作動流体が流れる複数の流体通路の切り替えに好適な制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を搭載した車両においてはエンジンの燃焼効率が向上したこともあり、熱源として利用してきた冷却水が暖房に必要な温度にまで上昇し難くなっている。一方、内燃機関と電動機を併用したハイブリッド車両においては内燃機関の稼働率が低いため、そのような冷却水の利用がさらに難しい。電気自動車に至っては内燃機関による熱源そのものがない。このため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いたサイクル運転を行い、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷凍サイクルを有し、暖房運転時と冷房運転時とで室外熱交換器の機能が切り替えられる。暖房運転時においては室外熱交換器が蒸発器として機能する。その際、冷凍サイクルを冷媒が循環する過程で室内熱交換器が放熱し、その熱により車室内の空気が加熱される。一方、冷房運転時においては室外熱交換器が凝縮器として機能する。その際、室外熱交換器にて凝縮された冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。その際、除湿も行われる。そして、このように暖房運転時と冷房運転時とで装置の機能を切り替えるために、冷凍サイクルには複数の冷媒循環通路が設けられ、各冷媒循環通路の冷媒の流れを切り替えるための種々の制御弁が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−240266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような車両用冷暖房装置において制御弁が数多く用いられると、当然にコストが嵩み、また設置スペース上の問題も生じる。このため、制御弁のトータルの数や部品コストをできる限り少なくするのが望ましい。一方、そのように制御弁の数やコストを抑えつつも、運転状態に応じた空調性能を良好に確保する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、作動流体が流れる複数の流体通路の切り替える制御弁に嵩むコストをトータル的に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御弁は、第1内部通路および第2内部通路を有し、第1内部通路に設けられた第1弁と、第2内部通路に並列に設けられた第2弁および第3弁とを収容する共用のボディと、第1弁、第2弁および第3弁の開度を電気的に制御するための共用のアクチュエータと、第2弁の制御状態において第1弁および第3弁を閉弁状態に維持し、第3弁の制御状態において第1弁を全開状態に維持するとともに第2弁を閉弁状態に維持する作動切替機構と、を備える。
【0008】
この態様によると、第1内部通路および第2内部通路の開度をそれぞれ調整するために第1弁、第2弁および第3弁が設けられるところ、それらの弁が共用のボディに収容されて共用のアクチュエータにより開閉駆動される制御弁(複合弁)として構成される。第2内部通路に第2弁と第3弁とが並列に設けられ、その一方の開度が第1弁が閉弁状態にあるときに制御され、他方の開度が第1弁が全開状態(流量飽和状態)にあるときに制御される。すなわち、第2弁と第3弁を設けたことにより、第1内部通路の開放状態および遮断状態の双方において第2内部通路の開度を調整することができ、しかもそれらを一つのアクチュエータにより実現することができる。また、第2弁および第3弁のいずれかの制御状態において他の弁を閉弁状態または全開状態に維持することで、各弁の制御に他の弁の状態が実質的に影響を及ぼさないようにしている。言い換えれば、このように第1弁、第2弁および第3弁が制御上影響を及ぼさないようにすることで、一つのアクチュエータによる3つの弁の駆動が可能とされている。それにより、弁の数に対してボディやアクチュエータの数を抑えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作動流体が流れる複数の流体通路の切り替える制御弁に嵩むコストをトータル的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。
【図2】車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。
【図3】車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。
【図4】第2制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図5】第2制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図6】第2制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図7】第2制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図8】変形例に係る第2制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。この車両用冷暖房装置は、電気自動車の冷暖房装置として具体化されたものである。
【0012】
車両用冷暖房装置100は、圧縮機2、補助凝縮器3、室外熱交換器5、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置100は、冷媒としての代替フロン(HFO−1234yf)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
【0013】
圧縮機2、補助凝縮器3、室外熱交換器5およびアキュムレータ8は、車室外(エンジンルーム)に設けられている。一方、車室内には空気の熱交換が行われるダクトが設けられ、そのダクトにおける空気の流れ方向上流側に蒸発器7が配設され、下流側に温水ヒータ12が配設されている。補助凝縮器3と温水ヒータ12との間には、冷凍サイクルとは別の温水循環路14が設けられている。補助凝縮器3は、冷凍サイクルを流れる冷媒と、温水循環路14を流れる冷却水(ブラインなどでもよい)との熱交換を行う。温水循環路14には、その冷却水を循環させるためのポンプ16と、補助的に駆動されるPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ18が設けられている。
【0014】
車両用冷暖房装置100は、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。この冷凍サイクルは、補助凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として直列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。すなわち、冷房運転時(除湿時)に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路、暖房運転中の除湿時に冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
【0015】
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→室外熱交換器5→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→室外熱交換器5→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。室外熱交換器5を流れる冷媒の流れは、第1冷媒循環通路と第2冷媒循環通路とで逆方向となっている。
【0016】
具体的には、圧縮機2の吐出室は第1通路21を介して補助凝縮器3の入口に接続され、補助凝縮器3の出口は第2通路22を介して室外熱交換器5の一方の出入口に接続されている。室外熱交換器5の他方の出入口は第3通路23を介して蒸発器7の入口に接続され、蒸発器7の出口は第4通路24(戻り通路)を介してアキュムレータ8の入口に接続されている。これら第1通路21、第2通路22、第3通路23および第4通路24により第1冷媒循環通路が形成される。
【0017】
第2通路22には、補助凝縮器3の側から第1分岐点、第2分岐点、第3分岐点が設けられている。すなわち、第2通路22は、第1分岐点にてバイパス通路25と分岐し、第2分岐点にてバイパス通路26と分岐し、第3分岐点にてバイパス通路27と分岐している。そして、バイパス通路25が第3通路23に接続されることにより、補助凝縮器3から導出された冷媒の少なくとも一部を室外熱交換器5を迂回させて蒸発器7へ供給可能な第3冷媒循環通路が形成される。また、バイパス通路26が室外熱交換器5の他方の出入口に接続され、バイパス通路27がアキュムレータ8の入口に接続されることにより、第2冷媒循環通路が形成される。また、第1通路21と第2通路22とを補助凝縮器3を迂回する形で接続するバイパス通路28も設けられている。
【0018】
第4通路24におけるバイパス通路27との合流点よりも下流側は、第1冷媒循環通路、第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路の共用の通路である第1共用通路41となっている。また、第3通路23におけるバイパス通路25との合流点よりも下流側は、第1冷媒循環通路と第3冷媒循環通路との共用の通路である第2共用通路42となっている。そして、第1共用通路41と第2共用通路42を部分的に挿通するように内部熱交換器10が配設されている。
【0019】
第2通路22とバイパス通路26との分岐点(第2分岐点)には第1制御弁4が設けられている。第3通路23とバイパス通路25との合流点には第2制御弁6が設けられている。第4通路24とバイパス通路27との合流点には第3制御弁9が設けられている。さらに、バイパス通路28には開閉弁30が設けられている。
【0020】
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。
【0021】
補助凝縮器3は、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助的な凝縮器として機能し、冷凍サイクルを流れる冷媒と温水循環路14を流れる冷却水との熱交換を行う。すなわち、温水循環路14を流れる冷却水は、圧縮機2から吐出された高温の冷媒により加熱され、温水ヒータ12を機能させる。ダクトに取り込まれて蒸発器7にて冷却および除湿された空気のうち、図示しないエアミックスドアにて振り分けられた空気が温水ヒータ12を通過することにより適度に加熱される。温水ヒータ12を通過した空気と迂回した空気とが温水ヒータ12の下流側にて混合されて目標の温度に調整される。PTCヒータ18は、自己温度制御機能を有するヒータであり、エアミックスドアの開度、外気温などに基づき動作する。冷却水が温まるまでPTCヒータ18での暖房が可能となる。なお、このようなPTCヒータそのものは公知であるため、その説明については省略する。
【0022】
室外熱交換器5は、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外熱交換器5が蒸発器として機能する際には、膨張装置(後述の比例弁32)の通過により低温・低圧となった冷媒が、室外熱交換器5を通過する際に蒸発する。
【0023】
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、膨張装置(後述の比例弁33)の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。車室内に導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却され、除湿される。このとき冷却・除湿された空気は、温水ヒータ12の通過過程で加熱される。
【0024】
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。
【0025】
第1制御弁4は、共用のボディに比例弁31と比例弁32とを収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。第1制御弁4のボディには、第2通路22における第2分岐点と第3分岐点とをつなぐ第1内部通路と、バイパス通路26を構成する第2内部通路が設けられている。比例弁31は大口径の弁であり、第1内部通路に設けられてその開度を調整する。比例弁32は小口径の弁であり、第2内部通路に設けられてその開度を調整する。比例弁32は膨張装置としても機能する。本実施形態では、第1制御弁4として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。
【0026】
第2制御弁6は、共用のボディに比例弁33、比例弁38および逆止弁39を収容する集合弁として構成される。第2制御弁6のボディには、バイパス通路25につながる第1内部通路と、第3通路23の下流側につながる第2内部通路と、第3通路23の上流側につながる第3内部通路とが設けられている。本実施形態では、第2制御弁6として、ステッピングモータの駆動により比例弁33および比例弁38の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。
【0027】
比例弁33は、第2内部通路に設けられ、室外熱交換器5から第3通路23を介して導入された冷媒、または補助凝縮器3からバイパス通路25を介して導入された冷媒を絞り膨張させて下流側に導出する「膨張装置」としても機能する。比例弁38は、第1内部通路に設けられ、その開閉によりバイパス通路25における冷媒の流れを許容または遮断する。比例弁38は、外部から電気的に開閉駆動されるオン/オフ弁として構成されている。
【0028】
逆止弁39は、第3内部通路、詳細には第3通路23におけるバイパス通路25との合流点(第1冷媒循環通路における第3冷媒循環通路との合流点)の上流側に設けられている。逆止弁39は、バイパス通路25を通過した冷媒が室外熱交換器5側へ逆流することを防止する機械式の弁として構成されている。なお、逆止弁39をその前後差圧が設定差圧以上となったときに開弁する差圧弁として構成してもよい。第2制御弁6の具体的構成については後述する。
【0029】
第3制御弁9は、共用のボディに比例弁35と比例弁36とを収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。第3制御弁9のボディには、第4通路24を構成する第1内部通路とバイパス通路27を構成する第2内部通路が設けられている。比例弁35は大口径の弁であり、第2内部通路に設けられてその開度を調整する。比例弁36は大口径の弁であり、第1内部通路に設けられてその開度を調整する。本実施形態では、第3制御弁9として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。
【0030】
開閉弁30は、外部から電気的に開閉駆動されるオン/オフ弁として構成されている。本実施形態では、開閉弁30として、ステッピングモータの駆動により開閉可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって開閉可能な電磁弁を用いてもよい。開閉弁30は、後述のように、冷房運転時において適宜開弁されることにより、圧縮機2から吐出された冷媒の一部を補助凝縮器3を経ることなく室外熱交換器5に供給する。それにより補助凝縮器3における圧損を少なくし、圧縮機2の仕事効率を高める。
【0031】
内部熱交換器10は、第1共用通路41と第2共用通路42を部分的に挿通して両共用通路を流れる冷媒の熱交換をさせる。これにより、補助凝縮器3または室外熱交換器5から蒸発器7に向かって流れる冷媒が、アキュムレータ8から圧縮機2に向かって流れる冷媒によって冷却される一方、アキュムレータ8から圧縮機2に向かって流れる冷媒が、補助凝縮器3または室外熱交換器5から蒸発器7に向かって流れる冷媒によって加熱され、冷凍サイクルの熱交換率が高められる。なお、図示のように、第3通路23とバイパス通路25との合流点は、内部熱交換器10の入口の上流側に設けられている。また、比例弁33は、内部熱交換器10の出口の下流側に設けられている。
【0032】
以上のように構成された車両用冷暖房装置100は、図示しない制御部により制御される。制御部は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて各制御弁の制御量(弁開度や開閉状態)を決定し、その制御量が実現されるようアクチュエータに電流を供給する。本実施例ではアクチュエータとしてステッピングモータを用いるため、制御部は、各制御弁の制御量が実現されるようステッピングモータに制御パルス信号を出力する。このような制御により、圧縮機2は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。なお、本実施形態ではこのような制御を実現するために、補助凝縮器3の出口、室外熱交換器5の出入口、蒸発器7の入口と出口、内部熱交換器10の入口と出口のそれぞれの温度を検出するための複数の温度センサが設置されている。
【0033】
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2および図3は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。図2は冷房運転時の状態を示し、(A)は通常冷房運転時の状態を示し、(B)は特定冷房運転時の状態を示している。図3は暖房運転時の状態を示し、(A)は特定暖房運転時の状態を示し、(B)は通常暖房運転時の状態を示し、(C)は特殊暖房運転時の状態を示している。なお、「特定冷房運転」は、冷房運転において特に除湿の機能を高めた運転状態である。「特定暖房運転」は、暖房運転において特に除湿の機能を高めた運転状態である。「特殊暖房運転」は、室外熱交換器5を機能させない運転状態である。
【0034】
各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜iはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。
【0035】
図2(A)に示すように、通常冷房運転時においては、第1制御弁4において比例弁31が開弁状態とされ比例弁32が閉弁状態とされる。このとき、比例弁31は全開状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁33が開弁状態とされ比例弁38が閉弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ比例弁36が開弁状態とされる。開閉弁30は開弁状態とされる。それにより、第1冷媒循環通路のみが開放される。このため、バイパス通路25,26,27が遮断され、圧縮機2から吐出冷媒は室外熱交換器5および蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。
【0036】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、その大半がバイパス通路28を通ることで補助凝縮器3を迂回する形で室外熱交換器5に導かれる。室外熱交換器5を経由した冷媒は、比例弁33にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7に導入される。蒸発器7の入口に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。蒸発器7から導出された冷媒は、比例弁36を経てアキュムレータ8に導入される。制御部は、室外熱交換器5の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御するか、または圧縮機2の入口側の温度に基づき、その入口側の過熱度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。前者の場合、比例弁33の入口または内部熱交換器10の入口の温度に基づいてその過冷却度を調整するようにしてもよい。
【0037】
なお、このとき、開閉弁30が開弁されることで、圧縮機2の吐出冷媒の一部が室外熱交換器5に直接導かれるため、補助凝縮器3における冷媒の圧損を抑制することができる。その結果、圧縮機2の仕事効率を高めることができる。また、内部熱交換器10により、アキュムレータ8から圧縮機2に送られる冷媒と室外熱交換器5から比例弁33に送られる冷媒との熱交換が行われるため、蒸発器7の入口側の冷媒のエンタルピを低下させると同時に、圧縮機2の入口側の冷媒のエンタルピを上昇させることができる。その結果、蒸発器7の入口と出口とのエンタルピの差が大きくなり、冷凍サイクルの成績係数を大きくできるため、システムの効率および冷凍能力を向上させることができる。
【0038】
図2(B)に示すように、特定冷房運転時においては、開閉弁30は閉弁状態とされる。また、比例弁31の開度が調整されて差圧制御が実行される。このとき、比例弁31には前後差圧ΔPが発生する。その結果、補助凝縮器3の凝縮圧力(凝縮温度)が、室外熱交換器5の凝縮圧力(凝縮温度)よりも高く維持され、車室内の温度が必要以上に低下することが抑制される。具体的には、ドライバの足元の温度をある程度高く維持することができる。また、この場合も、制御部は、室外熱交換器5の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御するか、または圧縮機2の入口側の温度に基づき、その入口側の過熱度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。
【0039】
図3(A)に示すように、特定暖房運転時においては、第1制御弁4の比例弁31が閉弁状態とされ比例弁32が開弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁33および比例弁38が共に開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35および比例弁36が共に開弁状態とされる。開閉弁30は閉弁状態とされる。このとき、比例弁32が膨張装置として機能するため、その下流側は低圧となる。その結果、逆止弁39が閉弁状態となる。それにより、第1冷媒循環通路が遮断され、第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒は、一方でバイパス通路26を介して室外熱交換器5に導かれ、他方でバイパス通路25を介して蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。
【0040】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、補助凝縮器3を経て凝縮される。補助凝縮器3から導出された冷媒は、一方で比例弁32にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、室外熱交換器5を通過する際に蒸発される。室外熱交換器5から導出された冷媒は、比例弁35を経てアキュムレータ8に導入される。また、補助凝縮器3から導出された冷媒は、他方で比例弁33にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7を通過する際に蒸発される。蒸発器7から導出された冷媒は、比例弁36を経てアキュムレータ8に導入される。
【0041】
このとき、制御部は、室外熱交換器5による熱吸収と蒸発器7による除湿とを適正に行うべく、室外熱交換器5における冷媒の蒸発量と蒸発器7における冷媒の蒸発量との比率を適正に調整する。室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率は、比例弁32と比例弁33の弁開度の比率により制御される。制御部は、比例弁32の開度と比例弁33の開度との比率を調整することにより両蒸発器における蒸発量を調整する。その際、制御部は、蒸発器7が凍結することがないよう、蒸発器7の出口側の温度が適正範囲に保たれるように制御する。
【0042】
また、制御部は、比例弁35および比例弁36の一方の全開状態を維持したまま他方の開度を調整する。本実施形態では、図3(A)の左上段のモリエル線図に示すように、室外熱交換器5よりも蒸発器7の温度が低い場合には比例弁36を全開状態にして比例弁35の開度を制御する。一方、図3(A)の右上段のモリエル線図に示すように、蒸発器7よりも室外熱交換器5の温度が低い場合には比例弁35を全開状態にして比例弁36の開度を制御する。
【0043】
例えば、前者のように室外熱交換器5よりも蒸発器7の温度が低く、室外熱交換器5の出口側に過熱度(スーパーヒート)が発生している場合、比例弁35の開度を絞ることによりその過熱度が設定値(ゼロまたは小さな適正値)に近づくように制御する。このとき、室外熱交換器5における外部からの熱吸収量は、その比例弁35の絞り量により調整される。すなわち、比例弁36を全開状態に維持しつつ比例弁35の開度を絞ることで、室外熱交換器5の蒸発圧力Poと蒸発器7の出口の圧力Peとの差圧ΔP=Po−Peが適正となり、循環する冷媒を室外熱交換器5と蒸発器7とで蒸発させる比率を調整することができる。すなわち、差圧ΔPが大きくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に小さくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に大きくなる)。逆に、差圧ΔPが小さくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に大きくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に小さくなる)。制御部は、室外熱交換器5の出口側に過熱度に応じて比例弁35の開度を制御して差圧ΔPを適正に調整することで、特定暖房運転時における除湿機能を確保する。なお、室外熱交換器5の出口側の過熱度の有無およびその大きさは、室外熱交換器5の入口側の温度と出口側の温度を検出することで特定することができる。
【0044】
逆に、後者のように蒸発器7よりも室外熱交換器5の温度が低く、蒸発器7の出口側に過熱度が発生している場合、比例弁36の開度を絞ることによりその過熱度が設定過熱度(ゼロまたは小さな適正値)に近づくように制御する。すなわち、比例弁35を全開状態に維持しつつ比例弁36の開度を絞ることで、蒸発器7の出口の圧力Peと室外熱交換器5の蒸発圧力Poとの差圧ΔP=Pe−Poが適正となり、特定暖房運転時における除湿機能を確保することができる。なお、蒸発器7の出口側の過熱度の有無およびその大きさは、蒸発器7の入口側の温度と出口側の温度を検出することで特定することができる。
【0045】
図3(B)に示すように、通常暖房運転時においては、第1制御弁4の比例弁31が閉弁状態とされ比例弁32が開弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁33および比例弁38が共に閉弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が開弁状態とされ、比例弁36が閉弁状態とされる。開閉弁30は閉弁状態とされる。それにより第2冷媒循環通路のみが開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒はバイパス通路26を介して室外熱交換器5に導かれる。このとき、蒸発器7には冷媒が供給されないため、蒸発器7は実質的に機能しなくなり、室外熱交換器5のみが蒸発器として機能するようになる。制御部は、補助凝縮器3の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁32の開度を制御する。
【0046】
図3(C)に示すように、特殊暖房運転時においては、第1制御弁4の比例弁31および比例弁32が共に閉弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁33および比例弁38が共に開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ、比例弁36が開弁状態とされる。それにより第3冷媒循環通路のみが開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒はバイパス通路25を介して蒸発器7に導かれる。つまり、冷媒が室外熱交換器5を迂回するため室外熱交換器5が実質的に機能しなくなる。蒸発器7に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を除湿する。このような特殊冷暖房運転は、外部からの吸熱が困難な場合、例えば車両が極寒状況におかれた場合などに有効に機能する。制御部は、補助凝縮器3の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。
【0047】
次に、本実施形態の制御弁の具体的構成について説明する。図4〜図7は、第2制御弁6の構成および動作を表す断面図である。
図4に示すように、第2制御弁6は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体201とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体201は、有底筒状のボディ205に小口径の比例弁33と大口径の比例弁38とを同軸状に収容し、さらにそれらに対して直角方向に逆止弁39を組み付けて構成される。比例弁33および比例弁38は、1つのモータユニット102により開閉駆動される。
【0048】
ボディ205の一方の側部には第1導入ポート210、第2導入ポート212、第3導入ポート214が設けられ、他方の側部には第1導出ポート216、第2導出ポート218が設けられている。第1導入ポート210は第3通路23の上流側に連通し、第2導入ポート212はバイパス通路25に連通し、第3導入ポート214は内部熱交換器10の一方の出口に連通する。第1導出ポート216は内部熱交換器10の一方の入口に連通し、第2導出ポート218は第3通路23の下流側に連通する。第2導入ポート212と第1導出ポート216とをつなぐ通路により第1内部通路が構成され、第3導入ポート214と第2導出ポート218とをつなぐ通路により第2内部通路が構成され、第1導入ポート210と第1導出ポート216とをつなぐ通路により第3内部通路が構成されている。
【0049】
ボディ104の上端部には、円板状の区画部材124が配設されている。区画部材124は、弁本体201の内部とモータユニット102の内部とを区画する。区画部材124の中央部には、円ボス状の軸受部126が設けられている。軸受部126の内周面には雌ねじ部が設けられ、外周面は滑り軸受として機能する。
【0050】
ボディ205の内方には、小径の弁体230,232、大径の弁体234、弁作動体134、伝達部材235が同軸状に配設されている。また、それらの軸線から外れた位置に弁体236が配設されている。弁体230と弁体232は比例弁33を構成する。弁体230は、伝達部材235を介して弁作動体134と作動連結可能に構成されている。弁体234は比例弁38を構成する。弁体236は逆止弁39を構成する。
【0051】
ボディ205の下半部には区画部材220がOリングを介して組み付けられ、上半部には区画部材222がOリングを介して組み付けられている。区画部材220は、下方に向けて縮径する段付円筒状をなし、その上端開口部は第2導入ポート212に連通し、下端開口部は第3導入ポート214に連通する。区画部材220の第2導出ポート218との対向部には、内外を連通させる連通孔224が設けられている。区画部材220の下半部には小径の弁孔226,228が上下に同軸状に設けられ、それぞれ連通孔224に連通している。弁孔226の上端開口縁により弁座240が形成され、弁孔228の下端開口縁により弁座242が形成されている。
【0052】
弁孔226の上流側は、後述する貫通孔249を介して第3導入ポート214に連通している。すなわち、第1弁244と第2弁246は、第3導入ポート214と第2導出ポート218とをつなぐ第2内部通路に対して並列に設けられており、いずれか一方の開弁により第2内部通路を開放することが可能となっている。区画部材220における弁孔226の上方には大径のガイド孔255が形成されている。ガイド孔255は、弁体234の下半部を摺動可能に支持する。
【0053】
区画部材220には上方から弁体230が挿通され、下方から弁体232が挿通されている。弁体230が上方から弁孔226に接離することにより第1弁244の開度を調整し、弁体232が下方から弁孔228に接離することにより第2弁246の開度を調整する。これら第1弁244および第2弁246は比例弁33を構成する。すなわち、比例弁33は一対の弁を含み、その一方を閉弁させた状態で他方を開弁させることでその開度を調整可能な構造を有する。
【0054】
弁体230は段付円柱状をなし、その下半部が区画部材220に摺動可能に挿通され、その先端部が弁座240に対向配置されている。弁体230は、いわゆるニードル弁体として構成され、その尖った先端部が弁孔226に挿抜される。そして、弁体230が弁座240に着脱することにより第1弁244が開閉される。弁体230は、その上端部に設けられた係止部231にて伝達部材235の下端部に連結されている。
【0055】
一方、弁体232は段付円柱状をなし、区画部材220に摺動可能に挿通され、その上端部が弁座242に対向配置されている。弁体232は、いわゆるニードル弁体として構成され、その尖った先端部が弁孔228に挿抜される。そして、弁体232が弁座242に着脱することにより第2弁246が開閉される。弁体232の下端部には半径方向外向きに延出する受圧部材248が設けられている。弁体232の下面とボディ205の底部との間には、弁体232を閉弁方向に付勢するスプリング250(「付勢部材」として機能する)が介装されている。区画部材220には、その軸線からずれた位置にその軸線に平行な複数の貫通孔249が設けられている。貫通孔249の一端はガイド孔255に連通し、他端は第3導入ポート214に連通している。
【0056】
区画部材222は、上方に向けて縮径する段付円筒状をなし、その上端開口部は第1導出ポート216に連通し、下端開口部は第2導入ポート212に連通する。区画部材222の内方には大径の弁孔252が設けられ、その下端開口縁により弁座254が形成されている。区画部材222と区画部材220とに囲まれる空間には弁体234が配設されている。弁体234が下方から弁孔252に接離することにより比例弁38を開閉する。
【0057】
弁体234は、段付円筒状をなし、その上部外周面にはリング状の弾性体(例えばゴム)が嵌着されており、その弾性体が弁座254に着座することにより比例弁38を完全に閉じることが可能となっている。弁体234の下部外周面にはOリング257が嵌着されており、ガイド孔255に摺動可能に支持されている。弁体234の下端面からは複数の脚部256が軸線に平行に延設され(同図には1つのみ表示)、複数の貫通孔249をそれぞれ貫通している。弁体234が開弁方向に所定高さリフトすると、脚部256が受圧部材248に当接し、弁体232を開弁方向に付勢する。弁体234の内方の上端部には、Oリングを挟むようにばね受け258が配設されている。
【0058】
なお、本実施形態においては、弁孔252の有効径Aとガイド孔255の有効径Bとが等しく設定されている。一方、第1導出ポート216から内部熱交換器10に向けて導出される冷媒の圧力Pout1と、内部熱交換器10を経て第3導入ポート214から導入される冷媒の圧力Pin3とはほぼ等しい。このため、弁体234に作用する冷媒圧力の影響はキャンセルされる。
【0059】
伝達部材235は、弁体234に内挿された長尺状の本体を有する。伝達部材235の上半部は弁体234および弁作動体134を軸線方向に貫通し、その先端部が外方に加締められて係止部156となっている。なお、本実施形態においては、弁作動体134と伝達部材136とがモータユニット102により軸線方向に駆動される「弁作動体」としても機能する。すなわち、伝達部材136は、弁作動体134の「伝達部」としても機能する。伝達部材235の下半部は、円筒状の収容部となっており、その下端開口部が内方にやや加締められることで弁体230の係止部231を下方から係止する。これにより、弁体230が伝達部材235から脱落するのが防止されている。
【0060】
伝達部材235と弁体230との間には、弁体230を閉弁方向に付勢するスプリング260(「付勢部材」として機能する)が介装されている。また、伝達部材235とばね受け258との間には、伝達部材235を下方に付勢するスプリング262(「付勢部材」として機能する)が介装されている。すなわち、弁体230と伝達部材235とはその収容部の長さだけ軸線方向に相対変位可能となっているが、通常はスプリング260により係止部231が下死点にて係止される方向に付勢され、図示のように突っ張った状態を維持する。
【0061】
逆止弁39は、ボディ205における第1導入ポート210の近傍に固定された円筒状のボディ270と、その内方に配設された弁体236を有する。ボディ270の内方には弁孔272が形成されている。弁体236は、円板状の本体にリング状の弾性体(本実施例ではゴム)を嵌着して構成される。弁体236の片側面には複数の脚部が延設されている。その脚部が弁孔272に摺動可能に内挿されることで、弁体236の軸線方向への安定した開閉動作が担保されている。弁体236の反対側面と区画部材222との間には、弁体236を閉弁方向に付勢するスプリング274(「付勢部材」として機能する)が介装されている。弁体236が弁孔272に接離することにより逆止弁39を開閉する。
【0062】
弁作動体134は、段付円筒状をなし、その外周部に雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部は、軸受部126の雌ねじ部に螺合する。弁作動体134の上端部には半径方向外向きに延出する複数(本実施形態では4つ)の脚部152が設けられており、モータユニット102のロータに嵌合している。弁作動体134は、モータユニット102の回転駆動力を受けて回転し、その回転力を並進力に変換する。すなわち、弁作動体134が回転すると、ねじ機構(「作動変換機構」として機能する)によって弁作動体134が軸線方向に変位し、各弁体を開閉方向に駆動する。
【0063】
一方、モータユニット102は、ロータ172とステータ173とを含むステッピングモータとして構成されている。モータユニット102は、有底円筒状のスリーブ170の内方にロータ172を回転自在に支持するようにして構成されている。スリーブ170の外周には、励磁コイル171を収容したステータ173が設けられている。スリーブ170は、その下端開口部がボディ205に組み付けられており、ボディ205とともに第2制御弁6のボディを構成する。
【0064】
ロータ172は、円筒状に形成された回転軸174と、その回転軸174の外周に配設されたマグネット176を備える。本実施形態では、マグネット176は24極に磁化されている。回転軸174の内方にはモータユニット102のほぼ全長にわたる内部空間が形成されている。回転軸174の内周面の特定箇所には、軸線に平行に延びるガイド部178が設けられている。ガイド部178は、後述する回転ストッパと係合するための突部を形成するものであり、軸線に平行に延びる一つの突条により構成されている。
【0065】
回転軸174の下端部はやや縮径され、その内周面に軸線に平行に延びる4つのガイド部180が設けられている。ガイド部180は、軸線に平行に延びる一対の突条により構成され、回転軸174の内周面に90度おきに設けられている。この4つのガイド部180には、上述した弁作動体134の4つの脚部152が嵌合し、ロータ172と弁作動体134とが一体に回転できるようになっている。ただし、弁作動体134は、ロータ172に対する回転方向の相対変位は規制されるものの、そのガイド部180にそった軸線方向の変位は許容される。すなわち、弁作動体134は、ロータ172とともに回転しつつ弁体132の開閉方向に駆動される。
【0066】
ロータ172の内方には、その軸線に沿って長尺状のシャフト182が配設されている。シャフト182は、その上端部がスリーブ170の底部中央に圧入されることにより片持ち状に固定され、ガイド部178に平行に内部空間に延在している。シャフト182は、弁作動体134と同一軸線上に配置されている。シャフト182には、そのほぼ全長にわたって延在する螺旋状のガイド部184が設けられている。ガイド部184は、コイル状の部材からなり、シャフト182の外面に嵌着されている。ガイド部184の上端部は折り返されて係止部186となっている。
【0067】
ガイド部184には、螺旋状の回転ストッパ188が回転可能に係合している。回転ストッパ188は、ガイド部184に係合する螺旋状の係合部190と、回転軸174に支持される動力伝達部192とを有する。係合部190は一巻きコイルの形状をなし、その下端部に半径方向外向きに延出する動力伝達部192が連設されている。動力伝達部192の先端部がガイド部178に係合している。すなわち、動力伝達部192は、ガイド部178の一つの突条に当接して係止される。このため、回転ストッパ188は、回転軸174により回転方向の相対変位は規制されるが、ガイド部178に摺動しつつその軸線方向の変位が許容される。
【0068】
すなわち、回転ストッパ188は、ロータ172と一体に回転し、その係合部190がガイド部184にそってガイドされることで、軸線方向に駆動される。ただし、回転ストッパ188の軸線方向の駆動範囲はガイド部178の両端に形成された係止部により規制される。同図には、回転ストッパ188が中間位置にある状態が示されている。回転ストッパ188が上方へ変位して係止部186に係止されると、その位置が上死点となる。回転ストッパ188が下方へ変位すると、その下死点にて係止される。
【0069】
ロータ172は、その上端部がシャフト182に回転自在に支持され、下端部が軸受部126に回転自在に支持されている。具体的には、回転軸174の上端開口部を封止するように有底円筒状の端部部材194が設けられている。そして、その端部部材194の中央に設けられた円筒軸196の部分が、スリーブ170の底部に突設された円ボス部に支持されている。すなわち、軸受部126が一端側の軸受部となり、スリーブ170における円筒軸196との摺動部が他端側の軸受部となっている。
【0070】
以上のように構成された第2制御弁6は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、第2制御弁6による流量制御に際し、車両用冷暖房装置の図示しない制御部は、設定開度に応じたステッピングモータの駆動ステップ数を演算し、励磁コイル171に駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ172が回転し、弁作動体134が回転駆動されて比例弁33,38の開閉状態および開度が調整される。一方、回転ストッパ188がガイド部184にそって駆動されることにより、各弁体の動作範囲が規制される。
【0071】
図4は、比例弁33が開弁状態となり、比例弁38が閉弁状態となる場合を示している。すなわち、比例弁38を閉弁状態に維持しつつ、第1弁244を開弁させることで比例弁33の開度を調整する状態を示している。第2制御弁6は、例えば図2(A),(B)に示した冷房運転時においてこのような状態をとる。このとき、逆止弁39は開弁状態を維持する。
【0072】
図5は、比例弁33,38が共に閉弁状態となる場合を示している。第2制御弁6は、例えば図3(B)の通常暖房運転時においてこのような状態をとり得る。すなわち、図4の状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されると、第1弁244が閉じて比例弁33が閉弁状態となる。このとき、第1導入ポート110から導入される冷媒圧力Pin1が低い場合には、図示のように逆止弁39が閉弁する。
【0073】
図6は、比例弁33が閉弁状態となり、比例弁38が開弁状態となる場合を示している。すなわち、図5の状態からロータ172が一方向にさらに回転駆動されると、弁作動体134が弁体234に当接してこれを下方に付勢し、第1弁244および第2弁246が閉じた状態で比例弁38が開弁状態となる。なお、本実施形態における冷凍サイクルではシステムの運転上、特にこのような制御状態を設定していないが、図5の状態から図7の状態へ変位する過程で図6の状態が現れる。変形例においては、図示のような状態を維持する制御状態を設定してもよい。
【0074】
図7は、比例弁33,38が共に開弁状態となる場合を示している。すなわち、比例弁38を全開状態に維持しつつ、第2弁246を開弁させることで比例弁33の開度を調整する状態を示している。第2制御弁6は、例えば図3(A),(C)に示した暖房運転時においてこのような状態をとり得る。すなわち、図6の状態からロータ172が一方向にさらに回転駆動されると、弁体234の脚部256により受圧部材248が付勢されて第2弁246が開弁する。すなわち、比例弁38を全開状態に維持しつつ、比例弁33の開度が調整される。なお、ロータ172を他方向に回転駆動(逆転)すると、上述とは逆の弁開度制御状態が実現される。
【0075】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0076】
図8は、変形例に係る第2制御弁206の構成および動作を表す断面図である。なお、同図において上記実施形態の第2制御弁6と同様の構成部分については同一の符号を付している。本変形例においては、比例弁38を開閉する弁体290が、本体292と弁体部294とを含み、弁体部294が弁座254に着脱する。一方、弁体部294は本体292に対して軸線方向に所定範囲で相対変位することができる。すなわち、弁体部294はリング状をなし、本体292の上部に外挿されている。弁体部294と本体292との間には、弁体部294を閉弁方向に付勢するスプリング296(「付勢部材」として機能する)が設けられている。
【0077】
弁体部294は、通常はスプリング296の付勢力により上死点に位置するが、その前後差圧が設定値よりも大きくなると、スプリング296の付勢力に抗して開弁方向に変位する。このような構成により、比例弁38において本体292が図示の閉弁位置にあっても、その前後差圧に応じて本体292が開弁方向に退避して圧力を逃がすことができる。これは、第2制御弁206を構成する全ての弁が閉弁されることで、それらによる閉空間の圧力が異常に高まることを防止するものである。
【0078】
上記実施形態では、本発明の制御弁を電気自動車の車両用冷暖房装置に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車の車両用冷暖房装置に提供することが可能であることは言うまでもない。さらに、車両以外の冷暖房装置に適用することも可能である。
【0079】
上記実施形態では、複合弁のアクチュエータとしてステッピングモータを採用する例を示したが、ソレノイド等により構成してもよい。
【符号の説明】
【0080】
2 圧縮機、 3 補助凝縮器、 4 第1制御弁、 5 室外熱交換器、 6 第2制御弁、 7 蒸発器、 8 アキュムレータ、 9 第3制御弁、 10 内部熱交換器、 30 開閉弁、 31,32,33,35,36,38 比例弁、 39 逆止弁、 100 車両用冷暖房装置、 102 モータユニット、 134 弁作動体、 172 ロータ、 173 ステータ、 201 弁本体、 205 ボディ、 206 第2制御弁、 230,232,234,236 弁体、 244 第1弁、 246 第2弁、 290 弁体、 292 本体、 294 弁体部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1内部通路および第2内部通路を有し、前記第1内部通路に設けられた第1弁と、前記第2内部通路に並列に設けられた第2弁および第3弁とを収容する共用のボディと、
前記第1弁、前記第2弁および前記第3弁の開度を電気的に制御するための共用のアクチュエータと、
前記第2弁の制御状態において前記第1弁および前記第3弁を閉弁状態に維持し、前記第3弁の制御状態において前記第1弁を全開状態に維持するとともに前記第2弁を閉弁状態に維持する作動切替機構と、
を備えることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記作動切替機構は、
前記第1弁を開閉する第1弁体と、前記第2弁を開閉する第2弁体と、前記第3弁を開閉する第3弁体と、前記アクチュエータにより軸線方向に駆動される弁作動体とを同一軸線上に配置して構成され、
前記第2弁の開度を制御する際には、前記第2弁体と前記弁作動体とを一体変位可能に作動連結するとともに、前記第1弁体および前記第3弁体と前記弁作動体とを相対変位可能に連結解除し、
前記第3弁の開度を制御する際には、前記第1弁体および前記第3弁体と前記弁作動体とを作動連結するとともに、前記第2弁体と前記弁作動体との作動連結を解除することを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記弁作動体は、
前記第1弁体に接離することにより前記第1弁体と作動連結または連結解除され、
前記第1弁体に作動連結された状態で、さらに前記第1弁体が前記第3弁体に接離することにより前記第3弁体と作動連結または連結解除されることを特徴とする請求項2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記弁作動体は、
前記第1弁体を貫通する伝達部を有し、その伝達部が前記第2弁体に係合または係合解除されることにより前記第2弁体と作動連結または連結解除されることを特徴とする請求項2または3に記載の制御弁。
【請求項5】
前記アクチュエータとして、回転駆動されるロータを含むステッピングモータと、
前記ロータとともに回転し、その軸線周りの回転運動を前記弁作動体の軸線方向の並進運動に変換する作動変換機構と、
を備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−225405(P2012−225405A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92644(P2011−92644)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】