説明

制御装置およびペアリング方法

【課題】複数の被制御機器が存在する場合、信号出力や応答時間に応じてペアリング対象を選択すると、本来ペアリングすべき対象とペアリングできない場合がある。
【解決手段】制御機器100は、複数の被制御機器200のうち、これまでペアリングを行っていない被制御機器200を優先してペアリングを行う。さらに、ペアリング候補がすべて以前ペアリングを行ったことがある場合、最も以前にペアリングを行った被制御機器200をペアリング対象に選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置と被制御装置があらかじめペアリングを行い無線通信を行うシステムの制御装置およびペアリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭内の機器、例えばテレビを遠隔制御するために、IEEE802.15.4規格などの2.4GHz帯等の電波を使用する無線方式が近年使われ始めている。
【0003】
このような無線方式を用いた遠隔制御方式を採用するテレビやリモコンは、購入時にリモコンと、そのリモコンの操作対象となる機器を関連づけるペアリングを行う必要がある。
【0004】
ペアリングとは、制御機器(例えばリモコンなどの制御装置)と被制御機器(例えばテレビなどの被制御装置)が、互いにそれぞれを識別する識別情報を交換することである。
【0005】
図6に、ペアリングの通信シーケンスの一例を示す。
ユーザが制御機器のペアリング操作を行うと(ステップS501)、制御機器は自身の識別情報を記載したペアリング要求をブロードキャストメッセージとして送信する(ステップS502)。
【0006】
被制御機器は、ペアリング要求を受信すると、送信元に対して自身の識別情報を記載したペアリング応答を送信する(ステップS503)。
【0007】
制御機器は、ペアリング応答を受信すると、ペアリング応答を送信した被制御機器の識別情報をペアリング対象として登録し(ステップS504)、ペアリング完了通知を被制御機器に送信する(ステップS505)。
【0008】
ペアリング完了通知を受信した被制御機器は、制御機器の識別子をペアリング対象として登録し、ペアリング完了の通知応答を制御機器に送信し(ステップS506)、ペアリングが完了する(ステップS507)。
【0009】
ところで、複数のペアリング可能な被制御機器が存在する場合には、ペアリング要求の送信がブロードキャストメッセージとして送信されるため、複数の被制御機器からペアリング応答が送信される。このような場合、特許文献1および特許文献2の制御機器は、ペアリング可能な複数の被制御機器の中からペアリング対象の被制御機器を選択して決定する。
【特許文献1】特表2007−536852号公報
【特許文献2】特開2008−205780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1記載のペアリング方式では、制御機器は、最初にペアリング応答を返した被制御機器とペアリングを行う。この方式では、例えば高速な処理能力を有する被制御機器が存在する場合、その被制御機器とのペアリングが行われる可能性が高く、必ずしもペアリングを行いたい被制御機器とペアリングを行うことができない課題がある。
【0011】
また、特許文献2記載のペアリング方式では、被制御機器側で制御機器から受信した電波信号の電界強度を測定してペアリング応答にその電界強度の値を含めて送信し、制御機器は、最大の電界強度を持つペアリング応答を返した被制御機器とペアリングを行う。この方式では、例えば被制御機器側で常に最大の電界強度値を固定的に返す被制御機器があった場合、常にその被制御機器とペアリングが行われ、必ずしもペアリングを行いたい被制御機器とのペアリングを行うことができない課題がある。
【0012】
そこで、本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、複数の被制御装置の中から適切な被制御装置とペアリングすることが可能な制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る制御装置は、被制御装置とあらかじめペアリングを行い無線通信を行う制御装置であって、過去にペアリングを行った被制御装置の履歴を示す履歴情報を保持する履歴情報保持部と、ペアリングを行う際にペアリング可能な複数の被制御装置がある場合、前記履歴情報に基づいて、前記複数の被制御装置からペアリング対象の被制御装置を選択し、前記履歴情報を更新するペアリング制御部とを備えることを特徴とする。
【0014】
これにより、履歴情報に基づいてペアリング対象の被制御装置が選択されるため、複数のペアリング可能な被制御装置の中から適切な被制御装置とペアリングすることができる。
【0015】
例えば、前記ペアリング制御部は、前記ペアリング可能な複数の被制御装置の中に、前記履歴情報に記録されていない被制御装置がある場合、前記履歴情報に記録されていない被制御装置をペアリング対象の被制御装置として選択する。
【0016】
これにより、制御装置は過去にペアリングされたことのない被制御装置とペアリングすることができる。つまり、新規の被制御装置を設置した場合、過去にペアリングされたことがない被制御装置が優先してペアリングされるため、その新規の被制御装置と適切にペアリングすることができる。
【0017】
また、前記ペアリング制御部は、前記ペアリング可能な複数の被制御装置がすべて前記履歴情報に記録されている場合、前記履歴情報により示される最も以前にペアリングした被制御装置を、ペアリング対象の被制御装置として選択する。
【0018】
これにより、制御装置は、過去にペアリングされたことがあっても、現在から最も長い期間ペアリングされていない被制御装置を、ペアリング対象の被制御装置として選択することができる。つまり、一度ペアリングされた被制御装置の優先度は、次回のペアリング時に下がるため、ユーザはペアリング操作を複数回繰り返すことにより、制御装置とユーザの所望する被制御装置とを正しくペアリングすることができる。
【0019】
また、前記履歴情報は、これまでペアリングを行った被制御装置のアドレスを、ペアリングを行った時間順に並べたリストである。
【0020】
これにより、制御装置は、その履歴情報から、選択すべき被制御装置のアドレスを簡単に見つけ出すことができる。
【0021】
なお、本発明は、このような制御装置として実現することができるだけでなく、その制御装置がペアリングする方法や、その制御装置がペアリングするためのプログラム、そのプログラムを格納する記憶媒体としても実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ペアリング応答を早く返す被制御装置が存在しても、一度その被制御装置とペアリングが行われた後、新規に被制御装置を設置した場合、履歴にない被制御装置が優先してペアリングが行われるため、ペアリング対象機器と正しくペアリングが行える可能性が高まる。また、ペアリング信号の強度などによらず、一度ペアリングが行われた被制御装置は次回ペアリング操作時に優先度が下がるため、ペアリング操作を複数回繰り返すことにより、ペアリング対象機器と正しくペアリングを行える可能性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態における制御装置(制御機器)およびペアリング方法について図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態における制御機器の構成を示す構成図である。
制御機器100は、例えば操作ボタンなどを具備する入力部101と、後述する受信リストを保持する受信リスト保持部102と、後述する履歴リストを保持する履歴リスト保持部(履歴情報保持部)103と、受信リストおよび履歴リストに基づいてペアリング対象を選択するペアリング制御部104と、複数の被制御機器200、またはそれらのうちの何れか1つと通信する通信部105とを備える。
【0025】
以下、このような制御機器100の動作について図2〜図5を用いて説明する。
図2は、被制御機器200が複数存在する場合の制御機器100と被制御機器200の動作例を示したシーケンス図である。なお、図2では、制御機器100とペアリング可能な被制御機器200が2つあることを想定し、それらの被制御機器200を、被制御機器200Aと被制御機器200Bとに区別して示す。
【0026】
まず、ユーザがペアリング操作を実施する(ステップS201)。ペアリング操作は、制御機器100の入力部101に設置されたボタンなどを押下する操作である。また、ペアリング操作は、制御機器100の入力部101に設置された複数のボタンの同時押しなどの操作であってもよい。このようなペアリング操作をトリガに、ペアリングが開始される。
【0027】
ペアリング操作が行われると、制御機器100は自身を識別する機器IDを付加したペアリング要求パケット(以下、ペアリング要求という)をブロードキャストメッセージとして送信する(ステップS202)。機器IDとしては、無線インタフェースに個別に割り当てられるMACアドレスなどを用いてもよい。
【0028】
ペアリング要求を受信した被制御機器200A、200Bは、制御機器100とのペアリングを行う場合、被制御機器200A、200Bを識別する機器IDを付加したペアリング応答パケット(以下、ペアリング応答という)を、制御機器100に送信する(ステップS203、S204)。
【0029】
制御機器100は、ペアリング要求を送信した後一定時間被制御機器200A、200Bからの応答を待ち、ペアリング応答を受信した場合、ペアリング応答に含まれる被制御機器200A、200Bの機器IDを受信リストに記録する(ステップS205)。
【0030】
一定時間経過後、制御機器100は、受信リストに記載された機器IDと、履歴リストに記載された機器IDからペアリング対象の被制御機器を1つ選択し、ペアリング対象機器として決定する(ステップS206)。
【0031】
制御機器100は、選択されたペアリング対象機器(この例では被制御機器200A)にペアリング完了通知を送信する(ステップS207)。ペアリング完了通知を受信した被制御機器200Aは、制御機器100の機器IDをペアリング対象として記録し、ペアリング完了通知応答を送信する(ステップS208)。
【0032】
ペアリング完了通知応答を受信した制御機器100は、ペアリング対象機器として被制御機器200Aの機器IDを記録する(ステップS209)。
【0033】
なお、制御機器100による、上述のペアリング要求およびペアリング完了通知の送信と、ペアリング応答およびペアリング完了通知応答の受信とは、制御機器100の通信部105で行われ、制御機器100のそれら以外の動作は、制御機器100のペアリング制御部104によって行われる。
【0034】
以下、制御機器100におけるペアリング対象機器を決定するステップS205およびステップS206の処理について、図3〜図5を用いて説明する。
【0035】
図3は、ステップS205からステップS206における制御機器100の動作を示すフローチャートである。図4は、履歴リストに記録されていない機器IDが受信リストに含まれている場合の制御機器100の動作を説明するための説明図であり、図5は、受信リストに含まれている機器IDが全て履歴リストに記録されている場合の制御機器100の動作を説明するための説明図である。
【0036】
制御機器100は、ペアリング要求を送信した後、一定時間ペアリング応答を待つ(ステップS101)。一定時間内に被制御機器200からのペアリング応答を受信すると、制御機器100内の受信リストに、ペアリング応答(機器ID)を追加する(ステップS102)。図4(a)は、受信リストの例である。受信リストには、被制御機器200の機器IDが受信した順に追加される。図4(a)の例では、最初に機器ID3を持つ被制御機器200からのペアリング応答を受信し、次に機器ID7を持つ被制御機器200からのペアリング応答を受信し、次に機器ID1を持つ被制御機器200からのペアリング応答を受信した状態を示している。
【0037】
制御機器100がペアリング応答を待つ状態がタイムアウトすると、制御機器100は受信リストと履歴リストの比較を行う(ステップS103)。
【0038】
図4(b)は履歴リストの例である。履歴リストには、制御機器100が過去ペアリングを行った被制御機器200の識別子が、時系列で記録されている。図4(b)に示す履歴リストでは、最も過去にペアリングを行った被制御機器200は機器ID3を持つ被制御機器200であり、機器ID2を持つ被制御機器200は機器ID3を持つ被制御機器200よりも最近にペアリングを行っており、機器ID1を持つ被制御機器200は最も最近にペアリングを行ったことを示している。
【0039】
制御機器100が受信リストと履歴リストの比較を行う際、図4(a)と図4(b)に示すように、履歴リストに存在しない機器IDが受信リストに存在する場合、受信リストからペアリング対象の被制御機器200を1つ選択する(ステップS104)。
【0040】
なお、被制御機器200を1つ選択する際、最も早く応答を返した被制御機器200を選択してもよいし、最も最後に応答を返した被制御機器200を選択してもよい。また、受信リストからランダムに被制御機器200を選択してもよい。例えば、最も早く応答を返した被制御機器200を選択する場合、図4(a)と図4(b)に示す状態であった場合は、機器ID7を持つ被制御機器200がペアリング対象機器として選択される。
【0041】
また、制御機器100が受信リストと履歴リストの比較を行い、図5(a)と図5(b)に示すように、受信リストの機器IDがすべて履歴リストに存在する場合、受信リストからペアリング対象の被制御機器200を1つ選択する(ステップS105)。
【0042】
図5(a)は受信リストの例であり、図5(b)は履歴リストの例である。これらは、図4(a)と図4(b)と同等であるため、説明は省略する。
【0043】
なお、被制御機器200を1つ選択する際、履歴リスト中の最も過去にペアリングを行った被制御機器200とペアリングを行う。例えば、受信リストが図5(a)の状態であり、履歴リストが図5(b)の状態である場合、機器ID3を持つ被制御機器200がペアリング対象機器として選択される。
【0044】
ペアリング対象機器が選択されると、制御機器100は履歴リストを更新する(ステップS106)。
【0045】
選択されたペアリング対象機器の機器IDが履歴リストに存在しない場合は、履歴リストの先頭にペアリング対象機器の機器IDを追加する。例えば、図4(c)において、ペアリング対象機器として機器ID7を持つ被制御機器200が選択された場合、履歴リストの先頭に機器ID7が追加される。
【0046】
履歴リスト中の被制御機器200がペアリング対象として選択された場合は、その機器IDを履歴リストの先頭に移動する。例えば、図5(c)において、ペアリング対象機器として機器ID3を持つ被制御機器200が選択された場合、履歴リストの先頭に機器ID3が移動される。
【0047】
このように本発明における制御機器100(制御装置)は、履歴リスト(履歴情報)を参照することにより、適切な被制御機器200を選択してペアリングすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の制御装置およびペアリング方法により、被制御装置の性能によってペアリング対象が決定されてしまう現象や、悪意のある被制御装置によって、固定的にペアリング対象が決定されてしまう現象を防止することができ、ペアリングを行いたい機器とペアリングができないといったユーザの混乱を防止することができる。また、本発明の制御装置およびペアリング方法は、例えば、テレビなどの被制御装置とペアリングして通信するリモコンなどに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】制御機器の構成を示す構成図である。
【図2】制御機器がペアリングを行う際の通信シーケンス図である。
【図3】制御機器がペアリング対象となる被制御機器を選択する際のフローチャートである。
【図4】(a)は受信リストの一例を示す図であり、(b)は履歴リストの一例を示す図であり、(c)は更新後の履歴リストの一例を示す図である。
【図5】(a)は受信リストの他の例を示す図であり、(b)は履歴リストの他の例を示す図であり、(c)は更新後の履歴リストの他の例を示す図である。
【図6】従来のペアリング動作を行う際のシーケンス図である。
【符号の説明】
【0050】
100 制御機器
101 入力部
102 受信リスト保持部
103 履歴リスト保持部
104 ペアリング制御部
105 通信部
200 被制御機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被制御装置とあらかじめペアリングを行い無線通信を行う制御装置であって、
過去にペアリングを行った被制御装置の履歴を示す履歴情報を保持する履歴情報保持部と、
ペアリングを行う際にペアリング可能な複数の被制御装置がある場合、前記履歴情報に基づいて、前記複数の被制御装置からペアリング対象の被制御装置を選択し、前記履歴情報を更新するペアリング制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記ペアリング制御部は、
前記ペアリング可能な複数の被制御装置の中に、前記履歴情報に記録されていない被制御装置がある場合、前記履歴情報に記録されていない被制御装置をペアリング対象の被制御装置として選択する、
請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記ペアリング制御部は、
前記ペアリング可能な複数の被制御装置がすべて前記履歴情報に記録されている場合、前記履歴情報により示される最も以前にペアリングした被制御装置を、ペアリング対象の被制御装置として選択する、
請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
前記履歴情報は、これまでペアリングを行った被制御装置のアドレスを、ペアリングを行った時間順に並べたリストである、
請求項3記載の制御装置。
【請求項5】
制御装置が被制御装置とあらかじめペアリングを行い無線通信を行うペアリング方法であって、
過去にペアリングを行った被制御装置の履歴を示す履歴情報を保持し、
ペアリングを行う際にペアリング可能な複数の被制御装置がある場合、前記履歴情報に基づいて、前記複数の被制御装置からペアリング対象の被制御装置を選択し、前記履歴情報を更新する、
ペアリング方法。
【請求項6】
前記ペアリング対象の被制御装置を選択するときには、
前記ペアリング可能な複数の被制御装置の中に、前記履歴情報に記録されていない被制御装置がある場合、前記履歴情報に記録されていない被制御装置をペアリング対象の被制御装置として選択する、
請求項5記載のペアリング方法。
【請求項7】
前記ペアリング対象の被制御装置を選択するときには、
前記ペアリング可能な複数の被制御装置がすべて前記履歴情報に記録されている場合、前記履歴情報により示される最も以前にペアリングした被制御装置を、ペアリング対象の被制御装置として選択する、
請求項6記載のペアリング方法。
【請求項8】
前記履歴情報は、これまでペアリングを行った被制御装置のアドレスを、ペアリングを行った時間順に並べたリストである、
請求項7記載のペアリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−81425(P2010−81425A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249021(P2008−249021)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】