説明

制御装置及びプログラム

【課題】測色されるべき色を適切に決定するための技術を提供する。
【解決手段】
第1の色空間で表現される色の値を第2の色空間で表現される色の値に変換するための色変換テーブルを修正する制御装置は、第1の取得手段と、決定手段と、第2の取得手段と、修正手段と、を備える。第1の取得手段は、前記色変換テーブルに含まれる前記第2の色空間の特定の色の値を用いて表現される色に対応する第1の測色値を取得する。決定手段は、前記特定の値と、前記第1の測色値の明度に依存する変化量と、に基づいて、前記第2の色空間で表現される複数の値を決定する。第2の取得手段は、前記複数の値を用いて表現される複数の色から求められる複数の第2の測色値を取得する。修正手段は、前記複数の第2の測色値を用いて、前記色変換テーブルに含まれる前記特定の値を修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色変換テーブルを修正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1では、画像入力デバイスでの入力色データと、画像出力デバイスでの出力色データと、の対応関係を修正するために、複数の色のカラーパッチが測色される。新たに測色されたカラーパッチの測色値と、画像処理装置に記憶される過去に測色されたカラーパッチの測色値と、の値の差が所定の閾値を超えている場合に、新たに測色されたカラーパッチの測色値が過去履歴格納部に記憶される。換言すれば、プリンタの特性の変化によって、新たに測色されたカラーパッチの測色値が過去履歴格納部に記憶される。過去履歴格納部に記憶される測色値に応じて、プリンタプロファイルが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−147171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、常に同じ複数の色のカラーパッチが測色される。このため、ユーザが必要としない色が測色されることがあった。本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、測色されるべき適切な色を決定することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明の第1の装置は、第1の色空間で表現される色の値を第2の色空間で表現される色の値に変換するための色変換テーブルを修正する制御装置であって、前記色変換テーブルに含まれる前記第2の色空間の特定の値を用いて表現される色に対応する第1の測色値を取得する第1の取得手段と、前記特定の値と、前記第1の測色値の明度に依存する変化量と、に基づいて、前記第2の色空間で表現される複数の値を決定する決定手段と、前記複数の値を用いて表現される複数の色から求められる複数の第2の測色値を取得する第2の取得手段と、前記複数の第2の測色値を用いて、前記色変換テーブルに含まれる前記特定の色の値を修正する修正手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この構成により、特定の値と、第1の測色値の明度に依存する変化量と、に基づいて、測色されるべき複数の色を表現するための値を適切に決定することができる。第1の測色値の明度に依存して測色されるべき複数の色が決定されるため、特定の明度付近に測色値が集中して取得されることがない。
【0007】
また、上記の装置において、前記特定の値を用いて表現される色から求められるべき目標測色値を記憶する第1の記憶手段と、前記目標測色値と、前記第1の測色値と、の色差を算出する算出手段とを、さらに備え、前記修正手段は、前記色差が特定の色差以上である場合に、前記色変換テーブルの前記特定の値を修正することが好ましい。
【0008】
この構成により、目標測色値と、第1の測色値と、の色差が特定の色差以上である場合に、修正手段に色変換テーブルを修正させることができる。こうすることで、例えば、目標測色値と第1の測色値との色差が特定の色差未満である場合は複数の測色値を取得しない構成とすることができるため、無駄な測色が実行されることを抑制することができる。
【0009】
また、上記の装置において、前記修正手段は、前記複数の測色値の中から選択される特定の測色値に対応する色を表現するための値を用いて、前記色変換テーブルの前記特定の値を修正することが好ましい。
【0010】
この構成により、特定の色を、取得された測色値に対応する色を表現するための値で修正することができるため、より適切に色変換テーブルを修正することができる。
【0011】
また、上記の装置において、前記変化量は、前記特定の値を構成する少なくとも3つの色成分に基づいて決定されることが好ましい。
【0012】
この構成により、少なくとも3つの色成分に基づいて変化量を決定することができるため、より適切な変化量に基づいて複数の値を決定することができる。
【0013】
また、上記の装置において、前記決定手段は、前記特定の値を構成する黒色成分に基づいて、前記変化量を補正する補正手段を、さらに備えることが好ましい。
【0014】
この構成により、黒色成分に基づいて変化量を補正することができるため、より適切に複数の値を決定することができる。
【0015】
また、上記の装置において、前記第2の色空間で表現される値と、前記第2の色空間内で表現される値に対する変化量と、を対応させた複数の組から構成される対応テーブルを記憶する第2の記憶手段を、さらに備え、前記対応テーブルは、前記第2の色空間で表現される第1の値に対する第1の変化量と、前記第1の値よりも明度が大きい第2の値に対する第2の変化量と、を少なくとも含み、前記第2の変化量は、前記第1の変化量よりも値が小さく、前記決定手段は、前記対応テーブルを参照することによって、前記第2の色空間で表現される複数の値を決定することが好ましい。
【0016】
この構成により、対応テーブルに基づいて新たに測色されるべき複数の色を決定することができるため、処理の負荷を低減させることができる。
【0017】
また、上記の装置において、前記複数の値のそれぞれを構成する色成分は、少なくとも3つが同じ値であることが好ましい。
【0018】
なお、この発明は、制御装置及び制御装置で実行される方法、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】端末装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】テーブルに記憶される情報を示す図。
【図3】色変換テーブル修正処理を示すフローチャート。
【図4】カラーパッチに基づくテーブルを示す図。
【図5】目標値と測色値との関係を示す図。
【図6】色差の判定結果に関するUIを示す図。
【図7】カラーパッチ決定処理を示すフローチャート。
【図8】変化量決定処理を示すフローチャート。
【図9】変化量決定処理で使用されるパラメータの算出方法を示す図。
【図10】新たに出力されるカラーパッチの決定方法を示す図。
【図11】色変換テーブルの修正を示す図。
【図12】変化量対応テーブルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について以下の順序で説明する。
A.実施例:
A−1.端末装置の構成:
A−2.色変換テーブル修正処理の概要:
A−3.色変換テーブル修正処理:
B.変形例:
【0021】
A.実施例:
A−1.端末装置の構成:
図1は、本実施例における端末装置10の概略構成を表すブロック図である。
【0022】
本実施例の端末装置10は、制御部20と、表示部21と、操作部22と、インターフェース23と、を備えており、それぞれがバス線で接続されている。
【0023】
制御部20は、CPU30とメモリ40とを備える。メモリ40は、色変換プログラム41と、テーブル42と、を格納する。CPU30が当該色変換プログラム41に従って処理を実行することによって、各手段51〜58の機能が実現される。テーブル42は、色変換テーブル42aと、目標テーブル42bと、第1測色テーブル42cと、を含む。
【0024】
端末装置10は、インターフェース23を介して、プリンタ70、測色器80などの外部の装置と接続される。本実施例では、プリンタ70において、複数のカラーパッチが出力(印刷)される。また、出力(印刷)されたカラーパッチは、測色器80で測色される。なお、本実施例では、カラーパッチの測色値は、L値で表現される。
【0025】
制御部20は、L空間で表現される当該測色されたカラーパッチの測色結果を測色器80から受信し、メモリ40に記憶する。なお、測色器80が測色した測色値43aは、測色器80から直接端末装置10に送信される構成を記載したが、これに代えて、測色器80からプリンタ70に送信され、プリンタ70を介して端末装置10に送信されてもよい。
【0026】
ここで、L空間は、CIEL色空間を意味し、種々のデバイスに依存せずに色が表現される空間である。なお、L空間の各値を構成する成分のうち、a*とb*とは色相と彩度とを示す指標であり、L*は明度を示す指標である。
【0027】
表示部21は、ディスプレイを備えており、各種の画面を表示する。操作部22は、キーボードやポインティングデバイスを備えている。ユーザは、操作部22を操作することによって、表示部21に表示される項目を選択する。
【0028】
図2は、メモリ40内のテーブル42に記憶される2つのテーブル42a、42bを示す図である。
【0029】
図2(A)は、色変換テーブル42aを示す。色変換テーブル42aは、RGB空間内の座標値(R(n),G(n),B(n))と、CMYK空間内の座標値(C1(n),M1(n),Y1(n),K1(n))と、を1対1で対応させた複数の組から構成されるテーブルである。なお、RGBは、それぞれレッド、グリーン、ブルーを示し、CMYKは、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックを示す。RGBのそれぞれの色成分の値が大きいほど、明度が大きい(換言すれば、濃度が小さい)。一方、CMYKのそれぞれの色成分の値が大きいほど、明度が小さい(換言すれば、濃度が大きい)。色変換テーブル42aは、印刷データをプリンタ70で印刷する際に使用される。
【0030】
図2(B)は、目標テーブル42bを示す。目標テーブル42bは、RGB空間内の座標値(R(n),G(n),B(n))と、当該RGB値に対して測色されるべきL値(L1(n),a1(n),b1(n))と、を1対1で対応させた複数の組から構成されるテーブルである。なお、目標テーブル42bに含まれる各RGB値と、色変換テーブル42aに含まれる各RGB値と、は同じ値である。
【0031】
A−2.色変換テーブル修正処理の概要:
続いて、本実施例で実行される色変換テーブル42aの修正処理の概要について説明する。色変換テーブル42aの修正処理では、まず、プリンタ70で複数のカラーパッチが出力される。その後、当該複数のカラーパッチの測色値に基づいて、色変換テーブル42aが修正される。具体的には、色変換テーブル42aの修正処理は、一のCMYK値(色変換テーブル42a内の一のRGB値に対応するCMYK値)によって表現されるカラーパッチから測色される測色L値が、目標テーブル42b内の当該一のRGB値に対する目標L値に近づくように、色変換テーブル42aを修正するための処理である。なお、本実施例では、RGB値の各成分の値が全て同じ値である色(グレイ軸方向の色)について色変換テーブル42aを修正する。
【0032】
本実施例では、目標L値と測色L値との色差ΔEが所定の値以上である場合に、制御部20は、前述した色変換テーブルの修正処理を実行する。こうすることで、目標L値と測色L値との色差が大きいRGB値(すなわち、測色されるべき目標L値からの色差が閾値以内に、測色L値が存在しないRGB値)において、カラーパッチを出力させることができる。
【0033】
A−3.色変換テーブル修正処理:
図3は、色変換テーブルの修正処理を示すフローチャートである。
【0034】
色変換テーブル修正処理は、例えば、ユーザが操作部62を操作することによって、色変換テーブル42aを修正する指示がなされることにより開始される。
【0035】
制御部20は、第1色変換テーブル42aに基づいて、第1測色テーブル42cを取得する(S50)。具体的には、制御部20は、色変換テーブル42a内の予め定められた複数のRGB値に対応する複数のCMYK値で表現されるカラーパッチをプリンタ70に出力させる。制御部20は、出力されたカラーパッチの測色値を測色器80から取得し、第1測色テーブル42cとしてメモリ40に記憶する。
【0036】
制御部20は、色変換テーブル42aの予め定められた複数のRGB値と、当該RGB値に対するL値とを対応付けるため、色変換テーブル42aに基づいて、当該複数のRGB値のそれぞれに対応する複数のCMYK値で表現されるカラーパッチをプリンタ70に出力させる。なお、本実施例では、予め定められた複数のRGB値は、それぞれ以下に示す式を満たすRGB値である。
【0037】
(R(N),G(N),B(N)) = (0+16×(N−1),0+16×(N−1),0+16×(N−1)) … 式(1)
【0038】
(ただし、Nは1≦N≦17を満たす整数。ただし、RGB値は256階調で表現されるため、最も明度の高いRGB値として、(R,G,B)=(255,255,255)が用いられる)
【0039】
図4は、カラーパッチから測色される測色値をもとに作成される2つのテーブル42c、42dについて示す図である。
【0040】
制御部20は、出力されたカラーパッチの測色値を測色器80から取得する。図4(A)は、当該出力された複数のカラーパッチから取得される測色値(すなわち、色変換テーブルの修正処理が実行される前に取得される測色値)をもとに生成される第1測色テーブル42cである。
【0041】
図示するように、第1測色テーブル42cは、CMYK値と、当該CMYK値から測色されたL値と、を対応させた複数の組から構成される。
【0042】
第1測色テーブル42cの各測色L値の取得方法について説明する。制御部20は、色変換テーブル42aを参照することによって、複数のRGB値(図2(A)の(R(n),G(n),B(n)))に対応するCMYK値(図2(A)の(C1(n),M1(n),Y1(n),K1(n)))を判断し、当該CMYK値を示す情報をプリンタ70に送信する。
【0043】
プリンタ70は、送信された複数のCMYK値を示す情報を受信し、当該CMYK値に基づいて、カラーパッチを用紙に出力する。測色器80は、当該出力されたカラーパッチのL値を測色する。
【0044】
各測色L値を取得すると、測色器80は、各測色L値を端末装置10に送信する。これにより、制御部20は、送信された測色L値を参照することによって、上述したRGB値(図2(A)の(Rn(0),Gn(0),Bn(0)))と、L値(図3(A)の(Ln(1),an(1),bn(1)))と、を対応付けることができる。なお、これに代えて、予め定められた測色値の情報をプリンタ70以外の外部の装置から取得する構成としてもよい。
【0045】
制御部20は、送信された各測色L値をもとに、図4(A)に示す第1測色テーブル42cを生成し、メモリ40内のテーブル42に記憶する。
【0046】
図3において、制御部20は、メモリ40に記憶される目標テーブル42bの各目標L値と、前述した第1測色テーブル42cの各測色L値と、を読み込む(S100)。
【0047】
図5は、目標テーブル42aの各目標L値と、第1測色テーブル42cの各測色L値と、の対応関係をL空間内に示した図である。
【0048】
目標線TLは、目標テーブル42bの各目標L値の点を連結した線である。また、調整線ALは、第1測色テーブル42cの各測色L値の点を連結した線である。同じRGB値に対する2つのL値の間の距離(すなわち、2点間の色差ΔE)が大きいほど、色のずれが大きいことを示す。
【0049】
なお、色差とは、L空間内における2点間のユークリッド距離を示す。一のRGB値に対する目標L値を(L1(n),a1(n),b1(n))とし、当該一のRGB値に対する測色L値を(L2(n),a2(n),b2(n))とした場合、色差ΔEは以下の式で算出される。
【0050】
ΔE = sqrt{(L1(n)―L2(n))+(a1(n)―a2(n))+(b1(n)―b2(n))} … 式(2)
【0051】
制御部20は、目標L値と、目標L値に対応する測色L値と、の色差を複数のRGB値ごとに算出し(S200)、算出された各色差ΔEをメモリ40に記憶する。
【0052】
各色差ΔEがメモリ40に記憶されると、制御部20は、各RGB値と、色差ΔEと、を対応させた判定結果画面を表示部21に出力する。図6は、判定結果画面SC2を示す図である。図示するように、画面SC2には、各RGB値に対応する目標L値と、測色L値と、の色差ΔEが表示されている。なお、本実施例では、色差ΔEが1.0未満である点については、目標L値と測色L値との色のずれが小さいことを示す「OK」の文字列が表示される。一方、色差が1.0以上である点については、目標L値と測色L値との色のずれが大きいことを示す「NG」の文字列が表示される。なお、当該閾値は1.0に限定されることなく、例えば、2.0でもよい。これにより、ユーザは、各RGB値に対応する色差のずれを容易に認識することができる。
【0053】
画面SC2は、カラーパッチ出力ボタンB5と、キャンセルボタンB6と、を含む。ユーザは、画面SC2を参照することによって、色変換テーブル42aを修正するために再度カラーパッチの出力を希望するか否かを選択することができる。カラーパッチの出力を希望する場合は、ユーザは、カラーパッチ出力ボタンB5を押下する。一方、カラーパッチの出力を希望しない場合は、ユーザは、キャンセルボタンB6を押下する。
【0054】
続いて制御部20は、ユーザによって指定されたボタンが、いずれのボタンであるかを判断する(S300)。カラーパッチの出力が希望されない場合は(すなわち、ユーザがボタンB6を押下した場合は)(S300 NO)、制御部20は、図3の色変換テーブルの修正処理を終了する。
【0055】
一方、カラーパッチの出力が希望された場合は(すなわち、ユーザがボタンB5を押下した場合は)(S300 YES)、制御部20は、カラーパッチ決定処理を実行する(S400)。
【0056】
図7は、カラーパッチ決定処理(図3のS400)を示すフローチャートである。
【0057】
制御部20は、予め定められた複数のRGB値(すなわち、上述した式(1)を満たすRGB値)の中で、最初に出力されるカラーパッチを決定するためのRGB値を決定する(S410)。本実施例では、明度が最も高いRGB値((R,G,B)=(255,255,255))を、最初にカラーパッチの値を決定するためのRGB値として決定する。
【0058】
続いて制御部20は、メモリ40を参照することによって、S200で算出された色差ΔE(すなわち、目標L値と、測色L値と、の色差)を読み込む(S420)。
【0059】
続いて制御部20は、S420で読み込まれた色差が、閾値(本実施例では1.0)未満であるか否かを判断する(S430)。色差が閾値未満である場合は(S430 YES)、制御部20は、新たに出力されるべきカラーパッチを決定することなく、S470に処理を移行する。例えば、図6のX1に示されるように、RGB値(255,255,255)における色差ΔEは0.2である。そのため、S470に処理が移行される。
【0060】
一方、S430において、色差が閾値以上である場合は(S430 NO)、制御部20は、カラーパッチの出力に際して必要なパラメータである変化量sを算出するために実行される変化量の決定処理を実行する(S440)。例えば、図6のX2に示されるように、RGB値(80,80,80)における色差ΔEは3.5である。そのため、変化量の決定処理が実行される。
【0061】
図8は、変化量決定処理(図7のS440)を示すフローチャートである。変化量決定処理で決定される変化量sは、S410で選択されたRGB値の明度に応じて決定されるパラメータである。換言すれば、変化量sは、一の明度である色から、他の明度である色に変更される際に、当該2つの色の色差に応じて変更されるべきCMYK値を示すパラメータである。
【0062】
制御部20は、色変換テーブル42aに含まれるRGB値の中で、変化量sを決定するための注目すべきRGB値(すなわち、S420で読み込まれた測色L値)との明度差が小さい2つのRGB値を選択する(S441)。例えば、(R,G,B)=(224,224,224)のRGB値に対応する変化量sを算出する場合は、制御部20は、(R,G,B)=(240,240,240)と、(R,G,B)=(208,208,208)と、のRGB値を選択する。なお、当該2点は異なる方法で決定されてもよい。例えば、注目すべきRGB値から色差が小さい2つのRGB値が選択されてもよい。
【0063】
図9は、変化量決定処理で用いられるパラメータを示した図である。ここで、S441で選択された2つのRGB値のうち、明度の大きいRGB値に対する測色L値の明度成分をLa、明度の大きいRGB値が色変換テーブル42で変換された場合のCMYK値を(C,M,Y,K)=(Ca,Ma,Ya,Ka)とする。また、S441で特定された2つのRGB値のうち、明度の小さいRGB値に対する測色L値の明度成分をLb、明度の小さいRGB値が色変換テーブル42で変換された場合のCMYK値を(C,M,Y,K)=(Cb,Mb,Yb,Kb)とする。
【0064】
制御部20は、S441で選択された2つのRGB値のそれぞれの測色L値の明度差を算出する(S442)。具体的には、以下の式(7)に基づいて、明度差を算出する。なお、abs()は括弧内の値の絶対値を示す。
【0065】
ΔL = abs(La−Lb) … 式(3)
【0066】
続いて、制御部は、S441で選択された2つのRGB値のそれぞれに対応するCMY値の差を算出する(S443)。具体的には、以下の式(8)に基づいて、CMY値の差ΔMatを算出する。
【0067】
ΔMat = {abs(Ca−Cb)+abs(Ma−Mb)+abs(Ya−Yb)}/3 … 式(4)
【0068】
続いて制御部20は、S441で選択された2つのRGB値のそれぞれに対応するK成分の差によって、CMY値の差ΔMatを補正する(S444)。具体的には、以下の式(9)に基づいて、CMY値の差ΔMatを補正した値ΔMat’を算出する。
【0069】
ΔMat’ = ΔMat+d×abs(Ka−Kb) … 式(5)
【0070】
(d:重み付け計数(0<d≦1))
【0071】
このように、本実施例では、S441で選択された2つのRGB値に対応するK成分の差で、CMY値の差ΔMatを補正する。こうすることで、K成分が変化量sに反映されるため、K成分の影響を受けるグレイ軸方向の色のカラーパッチをより適切に出力することができる。
【0072】
最後に、制御部20は、以下の式(10)に基づいて、変更量sを算出する(S445)。
【0073】
s = ΔMat’/ΔL … 式(6)
【0074】
変化量の決定処理が終了すると、制御部20は、変化量の決定処理で決定された変化量sに基づいて、新たに出力すべき一のカラーパッチと、当該一のカラーパッチに隣接するカラーパッチと、のパッチ間隔を決定する(S450)。具体的には、以下に示す式(2)に基づいて、パッチ間隔Δxが決定される。なお、パッチ間隔Δxとは、図3のS500で出力されるカラーパッチのうちの一のカラーパッチを表現するためのCMYK値と、当該一のカラーパッチに隣接するカラーパッチを表現するためのCMYK値と、の差を示す。
【0075】
Δx = ΔE×s/n … 式(7)
【0076】
(ΔE:目標L値と測色L*a*b値*との色差、s:変化量、n:分割数)
【0077】
なお、分割数nの値は、予めメモリ40に記憶されている。分割数nが大きいほど、パッチ間隔Δxが小さくなるため、単位距離あたりに出力されるカラーパッチの数が多くなる。なお、分割数nの値は例えば4に設定される。
【0078】
カラーパッチの間隔Δxが決定されると、制御部20は、新たに出力されるカラーパッチの値を決定する(S460)。具体的には、以下に示す式に基づいて、出力されるカラーパッチが決定される。
【0079】
例えば、C成分については、修正前のカラーパッチの色のC成分をC1、新たに出力されるべきカラーパッチの色のC成分をC2とすると、C2は以下のように表現される。
【0080】
C2 = C1+Δx×{(―n/2)+k} (k=0、1、…、n) …式(8)
【0081】
すなわち、C成分について、n+1個のカラーパッチが出力される。
【0082】
同様に、M成分、Y成分についても、以下のように表現される。
【0083】
M2 = M1+Δx×{(―n/2)+k} (k=0、1、…、n) …式(9)
【0084】
Y2 = Y1+Δx×{(―n/2)+k} (k=0、1、…、n) …式(10)
【0085】
図10は、新たに出力されるカラーパッチの決定方法について示す図である。図示するように、カラーパッチの間隔Δxに基づいて、C成分と、M成分と、Y成分とをそれぞれ一成分ずつ独立に変化させてカラーパッチを出力させることにより、(n+1)×(n+1)×(n+1)個のカラーパッチが出力される。
【0086】
続いて、制御部20は、式(1)を満たす全てのRGB値に対する処理が終了したか否かを判断する(S470)。出力されるカラーパッチが決定されていないRGB値が存在する場合は(S470 NO)、制御部20は、S420に処理を戻す。このように、色変換テーブル42aに含まれる全てのRGB値に対して処理が実行される。
【0087】
カラーパッチ決定処理が実行されると、制御部20は、プリンタ70に対して、カラーパッチ決定処理で決定された複数のカラーパッチを出力するよう指示する(S500)。その後、制御部20は、測色器80に対して、出力された各カラーパッチを測色するよう指示する(S600)。
【0088】
制御部20は、測色器80から各カラーパッチに対する複数の測色L値を受信し、当該複数の測色L値に基づいて色変換テーブル42aを修正する(S800)。
【0089】
具体的には、制御部20は、受信した複数の測色L値の中で、目標L値との色差が最も小さい測色L値を選択する。その後、制御部20は、目標L値に最も近い測色L値(すなわち、目標L値との色差が最も小さいL値)が測色されたCMYK値を判断し、目標L値に最も近い測色L値と、当該CMYK値と、を対応させた第2測色テーブル42dを生成する。制御部20は、第2測色テーブル42dのCMYK値で、色変換テーブル42aの測色L値に対応するCMYK値を変更する。
【0090】
制御部20は、図4(B)の第2測色テーブル42dに基づいて、色変換テーブル42aを修正する。図11は、色変換テーブル42aの修正を示した図である。図11(A)は色変換テーブル修正処理が実行される前の旧色変換テーブル42aを示し、図11(B)は色変換テーブル処理が実行された後の新色変換テーブル42eを示す。図示するように、制御部20は、RGB値が(R(n),G(n),B(n)に対応するCMYK値を、(C1(n),M1(n),Y1(n),K1(n))から(C2(n),M2(n),Y2(n),K2(n))に修正する。具体的には、旧色変換テーブル42aに含まれる(C1(n),M1(n),Y1(n),K1(n))のうち、一部のCMYK値が修正されて、(C2(n),M2(n),Y2(n),K2(n))が生成される。
【0091】
以上の説明において、制御部20によって実行される色変換プログラムのうち、図6のS100が本発明の第1の取得手段51によって実行される処理に相当する。
また、図7のS450、S460、及び、図8のS442、S443、S445が決定手段52によって実行される処理に相当する。また、図3のS500、S600が第2の取得手段53によって実行される処理に相当する。また、図3のS700が修正手段54によって実行される処理に相当する。また、メモリ40が第1の記憶手段55、第2の記憶手段58に相当する。また、図7のS420、S430が算出手段56によって実行される処理に相当する。また、図8のS444が補正手段57によって実行される処理に相当する。
【0092】
以上説明したように、本実施例の端末装置10は、色変換テーブル42aを修正するために、予め定められたRGB値に対応するL値を測色器80から取得する。端末装置10は、当該RGB値に対応するCMYK値と、測色L値の明度成分Lに依存する変化量sと、に基づいて、新たに測色されるべき複数のカラーパッチを決定する。その後、端末装置10は、決定された複数のカラーパッチの測色値を用いて、色変換テーブル42aを修正する。
【0093】
このように、本実施例の端末装置10は、測色されるべき複数のカラーパッチを適切に決定することができる。具体的には、変化量sは、色変換テーブル42aのRGB値の明度Lが大きいほど、変化量sが小さくなるという特徴を備える。その結果、当該RGB値に対して出力される複数のカラーパッチのパッチ間隔Δxが大きくなる。その結果、RGB値の明度Lが大きいほど、当該RGB値に対するカラーパッチの間隔を大きくすることができる。このように、明度ΔLと、変化量sと、に応じて、適切な数のカラーパッチを出力させることができる。
【0094】
なお、本実施例におけるRGB空間が本発明における第1の色空間に相当し、CMYK空間が第2の色空間に相当する。
【0095】
B.変形例:
本発明における技術的範囲は、上述した実施例に限られるものではなく、以下に示すような種々の態様によって実施することが可能である。
【0096】
(1)上述した実施例では、S440に示す変化量決定処理によって変化量sを決定することを記載したが、別の構成であってもよい。すなわち、図12に示すような変化量対応テーブルをメモリ40に予め記憶させておき、当該変化量対応テーブルを参照することによって、変化量sを決定してもよい。なお、変化量対応テーブル内の各変化量は、明度が大きいほど(すなわち、RGB値が大きいほど)、変化量sが小さくなるように決定されることが好ましい。
【0097】
(2)上述した実施例では、端末装置10が出力すべきカラーパッチを決定することを記載したが、異なる構成であってもよい。すなわち、端末装置10と接続されるプリンタ70の制御部が出力すべきカラーパッチを決定してもよい。
【0098】
また、上述した実施例では、プリンタ70と測色器80とが別々の構成であることを記載したが、これに代えて、プリンタ70の内部に測色器80が含まれる構成を採用してもよい。
【0099】
(4)上述した実施例では、図3のS700において、受信した測色L値の中で、目標L値に最も近い測色L値に対応するCMYK値を用いて、色変換テーブル42aを修正しているが、異なる構成であってもよい。例えば、目標L値に近い測色L値を5点抽出し、当該5点それぞれに対応するCMYK値の平均値で、色変換テーブル42aを修正してもよい。
【0100】
(5)上述した各実施例では、CPU30が色変換プログラム41に従って処理を実行することによって、各手段51〜58の機能が実現されるが、各手段51〜58の少なくとも1個は、論理回路等のハードウェアで実現されてもよい。
【符号の説明】
【0101】
10…端末装置、20…制御部、21…表示部、22…操作部、23…インターフェース、30…CPU、40…メモリ、41…色変換プログラム、42…テーブル、42a…色変換テーブル、42b…目標テーブル、42c…第1測色テーブル、42d…第2測色テーブル、51…第1の取得手段、52…決定手段、53…第2の取得手段、54…修正手段、55…第1の記憶手段、56…算出手段、57…補正手段、58…第2の記憶手段、70…プリンタ、80…測色器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色空間で表現される色の値を第2の色空間で表現される色の値に変換するための色変換テーブルを修正する制御装置であって、
前記色変換テーブルに含まれる前記第2の色空間の特定の色の値を用いて表現される色に対応する第1の測色値を取得する第1の取得手段と、
前記特定の値と、前記第1の測色値の明度に依存する変化量と、に基づいて、前記第2の色空間で表現される複数の値を決定する決定手段と、
前記複数の値を用いて表現される複数の色から求められる複数の第2の測色値を取得する第2の取得手段と、
前記複数の第2の測色値を用いて、前記色変換テーブルに含まれる前記特定の値を修正する修正手段と、
を備えることを特徴とする、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記特定の値を用いて表現される色から求められるべき目標測色値を記憶する第1の記憶手段と、
前記目標測色値と、前記第1の測色値と、の色差を算出する算出手段とを、さらに備え、
前記修正手段は、前記色差が特定の色差以上である場合に、前記色変換テーブルの前記特定の値を修正する
ことを特徴とする、制御装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の制御装置であって、
前記修正手段は、前記複数の測色値の中から選択される一の測色値に対応する色を表現するための値を用いて、前記色変換テーブルの前記特定の値を修正する
ことを特徴とする、制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の制御装置であって、
前記変化量は、前記特定の値を構成する少なくとも3つの色成分に基づいて決定される
ことを特徴とする、制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の制御装置であって、
前記決定手段は、前記特定の値を構成する黒色成分に基づいて、前記変化量を補正する補正手段を、さらに備える
ことを特徴とする、制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の制御装置であって、
前記第2の色空間で表現される値と、前記第2の色空間内で表現される値に対する変化量と、を対応させた複数の組から構成される対応テーブルを記憶する第2の記憶手段を、さらに備え、
前記対応テーブルは、前記第2の色空間で表現される第1の値に対する第1の変化量と、前記第1の値よりも明度が大きい第2の値に対する第2の変化量と、を少なくとも含み、
前記第2の変化量は、前記第1の変化量よりも値が小さく、
前記決定手段は、前記対応テーブルを参照することによって、前記第2の色空間で表現される複数の値を決定する
ことを特徴とする、制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の制御装置であって、
前記複数の値のそれぞれを構成する色成分は、少なくとも3つが同じ値である
ことを特徴とする、制御装置。
【請求項8】
第1の色空間で表現される色の値を第2の色空間で表現される色の値に変換するための色変換テーブルを修正するコンピュータに、
前記色変換テーブルに含まれる前記第2の色空間の特定の色の値を用いて表現される色に対応する第1の測色値を取得する第1の取得手段と、
前記特定の値と、前記第1の測色値の明度に依存する変化量と、に基づいて、前記第2の色空間で表現される複数の値を決定する決定手段と、
前記複数の値を用いて表現される複数の色から求められる複数の第2の測色値を取得する第2の取得手段と、
前記複数の第2の測色値を用いて、前記色変換テーブルに含まれる前記特定の値を修正する修正手段と、
を実行させる、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−74581(P2013−74581A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214028(P2011−214028)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】