説明

制振材

【課題】 本発明は、1000Hz以上の周波数帯において優れた制振性及び軽量性を備えた制振材、特に、軽量性の要求される自動車用途に好適に用いることができる制振材を提供する。
【解決手段】 本発明の制振材は、熱可塑性樹脂発泡シートの一面に発泡粘着層が積層一体化されてなることを特徴とするので、制振材に伝達された振動エネルギーは、熱可塑性樹脂発泡シートの剛性及び発泡粘着層の粘弾性の相乗効果によって円滑に吸収されて優れた制振性を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に1000Hz以上の周波数帯において優れた制振性を発揮すると共に軽量性に優れた制振材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電化製品ではモーターなどの駆動装置の振動を低減させるために制振材が用いられており、その他に、建築用途では、折板屋根などにおける雨音の低減のために制振材が、自動車用途では、走行中に発生する振動によって屋根や扉などが微振動することに起因する振動音やエンジンなどの駆動系の振動を低減するために制振材が用いられている。
【0003】
このような制振材としては、特許文献1に、ゴム又は熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂及び無機粉体からなる制振性シート基材の一面にポリエチレンテレフタレート樹脂層が積層されてなる折板屋根用制振シートが提案されている。
【0004】
この制振シートは、その内部に無機粉体を含有させることによって振動エネルギーを熱的損失に変換するものであることから、比重が1g/cm3 以上であり軽量性に欠けるといった問題点があった。
【0005】
又、上述の制振シートの他に、比重の大きな制振シートを振動を発生する対象物(振動体)に貼着させることによって振動体の振動を緩和させることも行なわれているが、制振シートの軽量性に欠けるという点では同様であった。
【0006】
【特許文献1】特開平10−183883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた制振性及び軽量性を備えた制振材、特に、軽量性の要求される自動車用途に好適に用いることができる制振材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の制振材は、熱可塑性樹脂発泡シートの一面に発泡粘着層が積層一体化されてなることを特徴とする。
【0009】
上記熱可塑性樹脂発泡シートを構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などのポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、石油樹脂などが挙げられ、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂を含有していることがより好ましく、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを併用することが特に好ましい。なお、熱可塑性樹脂は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0010】
なお、プロピレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィン等が挙げられる。
【0011】
更に、熱可塑性樹脂発泡シートを構成する熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを併用する場合には、ポリプロピレン系樹脂として、アイソタクチックホモポリプロピレンとプロピレン−α−オレフィン共重合体とを併用することが好ましく、ポリプロピレン系樹脂として、アイソタクチックホモポリプロピレンとプロピレン−α−オレフィン共重合体とを併用し且つポリエチレン系樹脂として直鎖状低密度ポリエチレンを用いることがより好ましい。
【0012】
そして、上記熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、大きいと、制振材の軽量性が低下することがあるので、0.1g/cm3 以下が好ましく、0.02〜0.1g/cm3 がより好ましい。
【0013】
更に、上記熱可塑性樹脂発泡シートのヤング率は、小さいと、制振材の制振性が低下することがある一方、大きいと、制振材の柔軟性や成形性が低下することがあるので、10〜100MPaが好ましい。なお、熱可塑性樹脂発泡シートのヤング率は、下記の要領で測定されたものをいう。
【0014】
即ち、熱可塑性樹脂発泡シートをJIS K6251の4.4(試験片の打ち抜き刃型)に規定された打ち抜き型を用いてJIS K6251の4.1(試験片の形状および寸法)に規定されたダンベル状1号形に打ち抜いて試験片を得た。なお、試験片の上下面は互いに平行になるように調整する。次に、試験片における長さ方向の中央で且つ幅方向の中央での厚みt(m)を測定すると共に、試験片における長さ方向の中央での幅方向の長さW(m)を測定する。
【0015】
続いて、上記試験片を引張試験機の一対のつかみ具に取り付ける。一対のつかみ具を、試験片における長さ方向の両端縁の夫々から長さ方向に20mmだけ内側に入った部分に取り付け、つかみ具間の間隔を80mmとする。
【0016】
しかる後、引張試験機のつかみ具を互いに離間させることによって、試験片をその長さ方向に1000mm/分の引張速度で0.5mmだけ伸長させた直後に、速度1000mm/分の速度でつかみ具を互いに近接させることによって試験片を元の状態に復元させる。この試験片の伸長及び復元動作を1サイクルとして3サイクル行い、3サイクル中における試験片に加わる最大荷重F(N)を測定し、下記式に基づいて熱可塑性樹脂発泡シートのヤング率Y(Pa)を算出する。なお、下記式中、(0.5/60)は試験片の伸長歪みを表している。
Y(Pa)=F×W/{t×(0.5/60)}
【0017】
熱可塑性樹脂発泡シートの厚みは、薄いと、制振材の制振性や機械的強度が低下することがある一方、厚いと、制振材の軽量性が低下することがあるので、1〜10mmが好ましく、2〜5mmがより好ましい。
【0018】
上記熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱可塑性樹脂及び熱分解型発泡剤を押出機に供給して溶融混練して発泡性樹脂シートを押出し、この発泡性樹脂シートを、必要に応じて電子線、α線、β線などの電離性放射線を照射することによって架橋した後、熱分解型発泡剤の分解温度以上の温度に加熱して発泡させて熱可塑性樹脂発泡シートを製造する方法、熱可塑性樹脂及び物理型発泡剤を押出機に供給して溶融、混練して押出発泡により熱可塑性樹脂発泡シートを製造する方法などが挙げられる。
【0019】
なお、上記熱分解型発泡剤としては、従来から発泡体の製造に用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド
、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)などが挙げられ、これらは単独で用いられても二種類以上が併用されてもよい。
【0020】
上記物理型発泡剤としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、1,1,2−トリメチルシクロプロパン、メチルシクロプロパン、エチルシクロブタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、モノクロロジフルオロメタン、1,1,1−トリクロロトリフルオロエタン、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン、1,2−ジクロロテトラフルオロエタン、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素;ジメチルエーテル、2−エトキシエタノール、アセトン、メチルエチル ケトン、アセチルアセトンなどのエーテル、ケトン類;二酸化炭素、窒素などの不活性ガスなどが挙げられる。
【0021】
そして、上記熱可塑性樹脂発泡シートの一面には発泡粘着層が積層一体化されている。この発泡粘着層を構成する粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤などが挙げられ、アクリル系粘着剤を含有していることが好ましい。
【0022】
更に、発泡粘着層中に架橋剤を含有させて発泡粘着層を架橋させることによって、発泡粘着層の粘弾性による制振作用を維持しつつ発泡粘着層の厚みを薄くすることができ、制振材の軽量性を向上させることができると共に、制振材の可撓性を向上させて貼着箇所の表面形状に沿って制振材を円滑に貼着させることができる。このような架橋剤としては、発泡粘着層を架橋させることができれば、特に限定されず、例えば、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、シラン系架橋剤などが挙げられる。
【0023】
又、発泡粘着層中における架橋剤の含有量としては、多いと、発泡粘着層の架橋密度が高くなり過ぎて、発泡粘着層の粘弾性による制振作用が却って低下することがあるので、発泡粘着層を構成する樹脂成分100重量部に対して6重量部以下が好ましく、1〜4重量部がより好ましい。
【0024】
そして、発泡粘着層の密度は、小さいと、発泡粘着層の粘弾性による制振作用が低下することがある一方、大きいと、制振材の軽量性が低下することがあるので、0.05〜1g/cm3 が好ましく、0.15〜1g/cm3 がより好ましい。
【0025】
更に、発泡粘着層の厚みは、薄いと、発泡粘着層の粘弾性による制振作用が低下することがある一方、厚いと、制振材の軽量性が低下することがあるので、0.5〜5mmが好ましく、1〜3mmがより好ましい。
【0026】
上記粘着剤を用いて発泡粘着層を製造する方法としては、汎用されている方法を用いることができ、例えば、粘着剤のエマルジョンに空気を混合させて発泡させ発泡粘着剤エマルジョンを作製した後、この発泡粘着剤エマルジョンを任意の面に所定厚みで塗布して乾燥させる方法が挙げられる。
【0027】
次に、上記熱可塑性樹脂発泡シートの一面に発泡粘着層を積層一体化して制振材を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂発泡シートの一面に両面粘着テープを介して発泡粘着層を積層一体化して制振材を製造する方法、熱可塑性樹脂発泡シートの一面に粘着剤を介して発泡粘着層を積層一体化して制振材を製造する方法、熱可塑性樹脂発泡シートの一面に上記発泡粘着剤エマルジョンを直接塗布した後、発泡粘着剤エ
マルジョンを乾燥させて、熱可塑性樹脂発泡シートの一面に発泡粘着剤層を積層一体化して制振材を製造する方法などが挙げられる。
【0028】
又、熱可塑性樹脂発泡シートの一面に発泡粘着層が積層一体化されてなる制振材の厚みは、薄いと、制振材の制振性が低下したり或いは機械的強度が低下することがある一方、厚いと、制振材の軽量性が低下することがあるので、1.5〜15mmが好ましく、2〜12mmがより好ましい。
【0029】
更に、熱可塑性樹脂発泡シートの他面に繊維層が積層一体化されていてもよい。このような繊維層としては、例えば、不織布、織布、編布などが挙げられ、不織布が好ましい。
【0030】
上記繊維層を構成する繊維としては、特に限定されず、例えば、合成樹脂繊維;ガラス繊維や金属繊維などの無機繊維;綿、麻、絹などの天然繊維などが挙げられる。合成樹脂繊維を構成する合成樹脂としては、例えば、ナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;レーヨンなどが挙げられる。又、繊維層を構成する繊維の繊維径は、0.1μm〜1mmが好ましく、1〜500μmがより好ましい。
【0031】
更に、繊維層の厚みは、薄いと、制振材の防音性が低下することがある一方、厚いと、制振材の軽量性が低下することがあるので、3〜30mmが好ましく、5〜20mmがより好ましい。又、繊維層の密度は、大きいと、制振材の軽量性が低下することがあるので、0.5g/cm3 以下が好ましく、0.01〜0.3g/cm3 がより好ましい。
【0032】
そして、熱可塑性樹脂発泡シートの一面に発泡粘着層が積層一体化され且つ他面に繊維層が積層一体化されている制振材の厚みは、薄いと、制振材の防音性が低下することがある一方、厚いと、制振材の軽量性が低下することがあるので、4.5〜45mmが好ましく、7〜32mmがより好ましい。
【0033】
熱可塑性樹脂発泡シートの他面に繊維層を積層一体化する方法としては、特に限定されず、熱可塑性樹脂発泡シートの他面に両面粘着テープを介して繊維層を積層一体化する方法の他に、繊維層を構成する繊維が合成樹脂繊維である場合には、合成樹脂繊維の熱融着力によって熱可塑性樹脂発泡シートの他面に繊維層を積層一体化する方法が挙げられる。
【0034】
そして、上記制振材は、その発泡粘着剤層が振動体側となるように両面粘着テープや粘着剤などを介して振動体に貼着されることによって優れた制振性を発揮すると共に、熱可塑性樹脂発泡シートの他面に繊維層が積層一体化されている場合には優れた防音性能を発揮する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の制振材は、上述の如き構成を有していることから、制振材に伝達された振動エネルギーは、熱可塑性樹脂発泡シートの剛性及び発泡粘着層の粘弾性の相乗効果によって円滑に吸収されて優れた制振性を発揮する。
【0036】
しかも、本発明の制振材は、熱可塑性樹脂発泡シートとこの熱可塑性樹脂発泡シートの一面に積層一体化された発泡粘着層とによって構成されており、無機充填材は含有されていないことから、軽量性に優れており自動車用途などのように軽量化が求められる用途においても好適に用いることができると共に、成形性にも優れており所望形状に成形して種々の形状を有する振動体の表面に貼着させて振動体の制振を図ることができる。
【0037】
そして、発泡粘着層中に該発泡粘着層を構成する樹脂成分100重量部に対して架橋剤
6重量部以下が含有されている場合には、発泡粘着層の粘弾性による制振性を維持しながら発泡粘着層の厚みを薄することができ、制振材の軽量性を更に図ることができる上に、発泡粘着層の厚みが薄い分だけ制振材の可撓性が向上し、制振材をその貼着箇所の表面に沿って円滑に変形させながら安定的に貼着させることができる。
【0038】
更に、熱可塑性樹脂発泡シートの他面に繊維層を積層一体化することによって、制振材に優れた防音性能を付与することができ、制振性及び防音性の双方が要求される自動車用途などにも好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(実施例1)
水−アクリルエマルジョン(大日本インキ化学社製 商品名「ボンコート350」、樹脂成分:50重量%)90重量部、水−ウレタンエマルジョン(大日本インキ化学社製 商品名「ハイドランHW−930」、樹脂成分:50重量%)10重量部、エポキシ系架橋剤(大日本インキ化学社製 商品名「CR−5L」)3重量部、塩化アンモニウム系気泡剤(大日本インキ化学社製 商品名「F−1」)5重量部、シリコーン系整泡剤(大日本インキ化学社製 商品名「ボンコートNBA−1」)0.5重量部及びカルボキシメチルセルロース水溶液(ダイセル化学工業社製、4重量%)6重量部を均一に混合した後に濾過して粘着剤エマルジョンを作製し、この粘着剤エマルジョンに泡立て器を用いて空気を混合して発泡させ、発泡粘着剤エマルジョンを作製した。
【0040】
次に、一面が離型処理面とされたポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、このポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面に上記発泡粘着剤エマルジョンを均一な厚みとなるように塗布した後、発泡粘着剤エマルジョンの水分を蒸発、除去して、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚み1.9mmの発泡粘着層(密度:0.20g/cm3 )を積層してなる発泡粘着シートを作製した。なお、発泡粘着層中にはこの発泡粘着層を構成する樹脂成分100重量部に対してエポキシ系架橋剤6重量部が含有されていた。
【0041】
一方、ポリエチレン(三井住友ポリオレフィン社製 商品名「LE−520H」100重量部、アゾジカルボンアミド(大塚化学社製 商品名「SO−40」)14重量部及び、酸化防止剤(旭電化社製 商品名「アデカスタブ328」)1重量部を押出機に供給して溶融混練して押出し、厚みが1. 3mmの発泡性樹脂シートを得た。
【0042】
得られた発泡性樹脂シートの両面に電子線を加速電圧800kVで2. 4Mrad照射して発泡性樹脂シートを架橋させた。この発泡性樹脂シートを250℃に加熱して厚みが4. 2mmで且つ密度が0. 025g/cm3 の熱可塑性樹脂発泡シートを得た。なお、熱可塑性樹脂発泡シートのヤング率は1. 78MPaであった。
【0043】
そして、上記熱可塑性樹脂発泡シートの一面に両面粘着テープ(積水化学工業社製 商品名「セキスイテープNo.5761」)を介して上記発泡粘着シートをその発泡粘着層が熱可塑性樹脂発泡シート側となるように重ね合わせ、熱可塑性樹脂発泡シートの一面に発泡粘着層を積層一体化させて厚みが6.1mmの制振材を得た。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、発泡粘着層から剥離、除去した。
【0044】
(実施例2)
アゾジカルボンアミドを14重量部の代わりに21重量部とし、発泡性樹脂シートの厚みを1.3mmの代わりに2.6mmとし、発泡性樹脂シートの両面に電子線を加速電圧800kVで2.4Mrad照射する代わりに電子線を加速電圧500kVで3.8Mrad照射したこと以外は実施例1と同様の要領で、厚みが8.6mmで且つ密度が0. 0
33g/cm3 の熱可塑性樹脂発泡シートを得た。なお、熱可塑性樹脂発泡シートのヤング率は1.40MPaであった。そして、上記熱可塑性樹脂発泡シートの一面に実施例1と同様の要領で作製した発泡粘着層を同様の方法で積層一体化させて厚みが10.5mmの制振材を得た。
【0045】
(実施例3)
エチレン−プロピレンランダム共重合体(チッソ社製 商品名「XK0235」)45重量部、アイソタクチックホモポリプロピレン(出光社製 商品名「SH152」)15重量部、直鎖状低密度ポリエチレン(出光社製 商品名「0238CN」)40重量部、アゾジカルボンアミド6.8重量部、架橋剤(共栄化学社製 商品名「TND−23H」)3重量部、酸化防止剤A(旭電化社製 商品名「アデカスタブAO−60」)1重量部、酸化防止剤B(旭電化社製 商品名「アデカスタブCDA−1」)0.5重量部及び酸化防止剤C(大内新興化学社製 商品名「ノクラック400S」)0.5重量部を押出機に供給して溶融混練して押出し、厚みが1.2mmの発泡性樹脂シートを得た。
【0046】
得られた発泡性樹脂シートの両面に電子線を加速電圧800kVで3.6Mrad照射して発泡性樹脂シートを架橋させた。次に、この発泡性樹脂シートを250℃に加熱して厚みが2.9mmで且つ密度が0.070g/cm3 の熱可塑性樹脂発泡シートを得た。なお、熱可塑性樹脂発泡シートのヤング率は19.4MPaであった。
【0047】
そして、上記熱可塑性樹脂発泡シートの一面に実施例1と同様の要領で作製した発泡粘着層を同様の方法で積層一体化させて厚みが4.8mmの制振材を得た。
【0048】
(実施例4)
エチレン−プロピレンランダム共重合体を45重量部の代わりに55重量部とし、アイソタクチックホモポリプロピレンを15重量部の代わりに25重量部とし、直鎖状低密度ポリエチレンを40重量部の代わりに20重量部としたこと以外は実施例3と同様の要領で、厚みが2.5mmで且つ密度が0.070g/cm3 の熱可塑性樹脂発泡シートを得た。なお、熱可塑性樹脂発泡シートのヤング率は23.8MPaであった。
【0049】
そして、上記熱可塑性樹脂発泡シートの一面に実施例1と同様の要領で作製した発泡粘着層を同様の方法で積層一体化させて厚みが4.4mmの制振材を得た。
【0050】
(実施例5)
エチレン−プロピレンランダム共重合体を45重量部の代わりに55重量部とし、アイソタクチックホモポリプロピレンを15重量部の代わりに25重量部とし、直鎖状低密度ポリエチレンを40重量部の代わりに20重量部としたこと、発泡性樹脂シートの両面に電子線を加速電圧800kVで3. 6Mrad照射して発泡性樹脂シートを架橋させた後に、電子線を更に加速電圧540kVで1. 7Mrad照射したこと以外は実施例3と同様の要領で、厚みが2. 4mmで且つ密度が0. 070g/cm3 の熱可塑性樹脂発泡シートを得た。なお、熱可塑性樹脂発泡シートのヤング率は35. 6MPaであった。
【0051】
そして、上記熱可塑性樹脂発泡シートの一面に実施例1と同様の要領で作製した発泡粘着層を同様の方法で積層一体化させて厚みが4.3mmの制振材を得た。
【0052】
(実施例6)
エポキシ系架橋剤を3重量部の代わりに2重量部としたこと以外は実施例1と同様の要領で発泡粘着シートを作製する一方、実施例3と同様の要領で熱可塑性樹脂発泡シートを作製した。
【0053】
そして、上記熱可塑性樹脂発泡シートの一面に上記粘着シートの発泡粘着層を実施例1と同様の要領で積層一体化して厚みが4.8mmの制振材を得た。得られた発泡粘着層中にはこの発泡粘着層を構成する樹脂成分100重量部に対してエポキシ系架橋剤4重量部が含有されていた。又、発泡粘着層は、その厚みが1.9mmで、密度が0.18g/cm3 であった。
【0054】
(実施例7)
エポキシ系架橋剤を3重量部の代わりに0.6重量部としたこと以外は実施例1と同様の要領で発泡粘着シートを作製する一方、実施例3と同様の要領で熱可塑性樹脂発泡シートを作製した。
【0055】
そして、上記熱可塑性樹脂発泡シートの一面に上記粘着シートの発泡粘着層を実施例1と同様の要領で積層一体化して厚みが4.8mmの制振材を得た。得られた発泡粘着層中にはこの発泡粘着層を構成する樹脂成分100重量部に対してエポキシ系架橋剤1.2重量部が含有されていた。又、発泡粘着層は、その厚みが1.9mmで、密度が0.19g/cm3 であった。
【0056】
(実施例8)
実施例1と同様の要領で発泡粘着シートを作製する一方、実施例3と同様の要領で熱可塑性樹脂発泡シートを作製した。そして、上記熱可塑性樹脂発泡シートの一面に両面粘着テープ(積水化学工業社製 商品名「セキスイテープNo.5761」)を介して上記発泡粘着シートをその発泡粘着層が熱可塑性樹脂発泡シート側となるように重ね合わせ、熱可塑性樹脂発泡シートの一面に発泡粘着層を積層一体化させると共に、熱可塑性樹脂発泡シートの他面に両面粘着テープ(積水化学工業社製 商品名「セキスイテープNo.5761」)を介してポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布(繊維径:200μm、密度:0.03g/cm3 、厚み:10mm)を積層一体化させて厚みが14.8mmの制振材を得た。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、発泡粘着層から剥離、除去した
【0057】
(比較例1)
実施例1と同様の要領で発泡粘着シートを作製した。
【0058】
(比較例2)
エチレン−プロピレンランダム共重合体(チッソ社製 商品名「XK0235」)55重量部、アイソタクチックホモポリプロピレン(出光社製 商品名「SH152」)25重量部、直鎖状低密度ポリエチレン(出光社製 商品名「0238CN」)20重量部、アゾジカルボンアミド6.8重量部、架橋剤(共栄化学社製 商品名「TND−23H」)3重量部、酸化防止剤A(旭電化社製 商品名「アデカスタブAO−60」)1重量部、酸化防止剤B(旭電化社製 商品名「アデカスタブCDA−1」)0.5重量部及び酸化防止剤C(大内新興化学社製 商品名「ノクラック400S」)0.5重量部を押出機に供給して溶融混練して押出し、厚みが1.2mmの発泡性樹脂シートを得た。
【0059】
得られた発泡性樹脂シートの両面に電子線を加速電圧800kVで3.6Mrad照射して発泡性樹脂シートを架橋させた。次に、この発泡性樹脂シートを250℃に加熱して厚みが3.0mmで且つ密度が0.038g/cm3 の熱可塑性樹脂発泡シートを作製した。なお、熱可塑性樹脂発泡シートのヤング率は18.7MPaであった。
【0060】
(比較例3)
厚みが23mmのポリエステル繊維からなる不織布(住友スリーエム社製 商品名「シンサレート」、目付:400g/m2 )を二枚、積層一体化させてなる不織布積層体を得
た。
【0061】
得られた制振材、発泡粘着シートの発泡粘着層、熱可塑性樹脂発泡シート及び不織布積層体の制振性を下記に示した要領で測定し、その結果を図1に示すと共に、制振材、発泡粘着シートの発泡粘着層、熱可塑性樹脂発泡シート及び不織布積層体の防音性を測定し、その結果を表2に示した。
【0062】
(制振性)
JIS G0602に規定する中央支持定常加振法に準拠して250〜5000Hzにおける損失係数を測定し、測定された損失係数を制振性の指標とした。具体的には、制振材、発泡粘着層、熱可塑性樹脂発泡シート及び不織布積層体のそれぞれから縦15mm×横250mmの平面長方形状の試験片を切り出し、この試験片をJIS G3141に規定されている鋼板(SPCC〜SB、平面長方形状(縦15mm、横250mm)、厚さ0.5mm)上に両面粘着テープ(積水化学工業社製 商品名「セキスイテープNo.5761」)を介して貼着して250〜5000Hzにおける損失係数を測定した。なお、制振材を鋼板上に貼着させるにあたっては、制振材の発泡粘着層が鋼板側となるようにした。
【0063】
(防音性)
図2に示したように、平面長方形状の床部1と、この床部1の左右端縁から垂直上方に延設された左右壁部2、2と、床部1の後端縁から垂直上方に延設された後側壁部3と、後側壁部及び左右壁部の上端縁に連設した状態に配設された屋根部4と、この屋根部4の上面全面に敷設された金属プレス瓦〔積水化学工業社製 商品名「セキスイかわら」〕(図示せず)とからなる防音試験室を用意した。なお、屋根部4は、幅1200mm×長さ3500mmの平面長方形状であり、屋根部4の中心(重心)から床部1上面までの高さは約55cmであった。
【0064】
次に、屋根部4の下面全面に制振材、発泡粘着シートの発泡粘着層、熱可塑性樹脂発泡シート又は不織布積層体を両面粘着テープ(積水化学工業社製 商品名「セキスイテープNo.5761」)を介して貼着した。なお、制振材の発泡粘着層が屋根部4側となるようにした。
【0065】
しかる後、屋根部4の上方から雨量100mm/時間の人工降雨(雨粒の直径:3mm、5cm間隔)を人工降雨装置から降らせ、普通騒音計(リオン社製 商品名「NA−29」)を用いて、その他の条件はJIS Z8731に準拠して、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hzにおいて1/1オクターブバンド周波数にて音響性能(等価騒音:5秒間平均)を測定した。なお、人工降雨は、屋根部4の中心(重心)から垂直上方7mの高さ位置に人工降雨装置を設置し、この人工降雨装置から生じさせ、普通騒音計は、屋根部4の中心(重心)から垂直下方に30cmだけ下がった位置に設置した。
【0066】
又、屋根部4の下面に制振材、発泡粘着シートの発泡粘着層、熱可塑性樹脂発泡シート又は不織布積層体を全く貼着しない状態で上述と同様の要領で音響性能を測定した。なお、表2には「基準」として表記した。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例において測定した損失係数を示したグラフである。
【図2】防音性を測定する際に用いた防音試験室を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
1 床部
2 左右壁部
3 後側壁部
4 屋根部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂発泡シートの一面に発泡粘着層が積層一体化されてなることを特徴とする制振材。
【請求項2】
発泡粘着層がアクリル系粘着剤を含有していることを特徴とする請求項1に記載の制振材。
【請求項3】
熱可塑性樹脂発泡シートのヤング率が10〜100MPaであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制振材。
【請求項4】
発泡粘着層中に該発泡粘着層を構成する樹脂成分100重量部に対して架橋剤6重量部以下が含有されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の制振材。
【請求項5】
熱可塑性樹脂発泡シートの他面に繊維層が積層一体化されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の制振材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−71090(P2006−71090A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3126(P2005−3126)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】