制震システム、及び建物の制震方法
【課題】卓越する振動成分が主とする振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力を建物に付与することができる制震システム、及び建物の制震方法を提供する。
【解決手段】制御手段24によって、卓越する振動成分が主とする振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように可変減衰ダンパー16を操作することにより、卓越した振動成分を有する振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力Fを建物14に付与することができる。
【解決手段】制御手段24によって、卓越する振動成分が主とする振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように可変減衰ダンパー16を操作することにより、卓越した振動成分を有する振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力Fを建物14に付与することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に生じる振動をダンパーにより低減する制震システム、及び建物の制震方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の振動モデルを多質点系として捉えた場合、この建物に生じる応答振動加速度は、通常、1次振動モードの成分が他の振動モードの成分よりも大きくなる。よって、一般に、建物に生じる揺れを流体系ダンパーにより低減しようとする場合、支持部材を含めた流体系ダンパー全体としての減衰力が1次振動モードの振動数に対して最大となるように、流体系ダンパー本体の減衰係数を設定する。
【0003】
しかし、高次モードの振動数に対しては、この流体系ダンパーから建物へ効果的に減衰力を与えることができない。例えば、2次振動モードの加速度成分が他の振動モードの加速度成分よりも卓越する地震動に対しては、流体系ダンパーの有している最大限の減衰効果を発揮させることができない。
【0004】
特許文献1には、建物フレーム内に設置した可変減衰装置によって、地震等により建物に発生する揺れを低減する構造物の制震方法が開示されている。可変減衰装置は、減衰係数を2段階に切り替えることができ、可変減衰装置が設置されている建物層間の変位、この変位の速度、及び可変減衰装置から発生した力に基づいて可変減衰装置の制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−303926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は係る事実を考慮し、卓越する振動成分が主とする振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力を建物に付与することができる制震システム、及び建物の制震方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、建物の階層に配置され相対変位する前記階層へ減衰力を付与するとともに減衰係数を変更することで該減衰力を調整可能な可変減衰ダンパーと、前記建物に生じる応答振動値を計測する計測手段と、所定の次数を有する振動モードを複数設定し、前記計測手段により計測した応答振動値を、前記複数設定した振動モードが各々主となる振動成分に分ける分析手段と、前記分析手段により分けた前記振動成分同士を比較し、卓越する前記振動成分が主とする前記振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作する制御手段と、を有する制震システムである。
【0008】
請求項1に記載の発明では、制御手段によって、卓越する振動成分が主とする振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように可変減衰ダンパーを操作することにより、卓越する振動成分が主とする振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力を建物に付与することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記複数設定された振動モードの内の1つである第1振動モードの振動数に対して減衰力が最大になるように設定された前記可変減衰ダンパーの減衰係数は、前記複数設定された振動モードの内の前記第1振動モード以外の第2振動モードの振動数に対して減衰力が最大になるように減衰係数が設定された前記可変減衰ダンパーに生じる、前記第1振動モードの振動数における減衰係数よりも大きい。
【0010】
請求項2に記載の発明では、第1振動モードの振動数に対して減衰力が最大になるように設定された可変減衰ダンパーの減衰係数を、第2振動モードの振動数に対して減衰力が最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパーに生じる、第1振動モードの振動数における減衰係数よりも大きくすることにより、より効果的な減衰力を建物に付与することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記分析手段は、1次振動モードと2次振動モードとを設定し、前記計測手段により計測した応答振動値を、1次振動モードが主となる第1振動成分と2次振動モードが主となる第2振動成分とに分け、前記制御手段は、前記第1振動成分と前記第2振動成分とを比較し、前記第1振動成分が卓越する場合に、前記1次振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作し、前記第2振動成分が卓越する場合に、前記2次振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作する。
【0012】
請求項3に記載の発明では、建物に生じる、1次又は2次振動モードが主となる振動成分が卓越する振動を、効果的に低減することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、建物の階層に配置され相対変位する前記階層へ減衰力を付与するとともに減衰係数を変更することで該減衰力を調整可能な可変減衰ダンパーを用いた建物の制震方法において、前記建物に生じる応答振動値を計測する計測工程と、所定の次数を有する振動モードを複数設定し、前記計測工程により計測した応答振動値を、前記複数設定した振動モードが各々主となる振動成分に分ける分析工程と、前記分析工程により分けた前記振動成分同士を比較し、卓越する前記振動成分が主とする前記振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作する制御工程と、を有する建物の制震方法である。
【0014】
請求項4に記載の発明では、制御工程によって、卓越する振動成分が主とする振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように可変減衰ダンパーを操作することにより、卓越する振動成分が主とする振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力を建物に付与することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記構成としたので、卓越する振動成分が主とする振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力を建物に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る建物を示す立面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る可変減衰ダンパーを示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るモデル化した可変減衰ダンパーを示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る制震システムを示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る流体系ダンパー部の減衰係数に対する固定減衰ダンパーの減衰係数を示す線図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る固定減衰ダンパーに作用する振動の振動数に対する固定減衰ダンパーにより付与される減衰の効率を示す線図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る制震システムを示す説明図である。
【図8】本発明の実施例に係る時刻に対する地動加速度を示す線図である。
【図9】本発明の実施例に係る周期に対する応答加速度スペクトルを示す線図である。
【図10】本発明の実施例に係る建物階に対する応答振動加速度を示す線図である。
【図11】本発明の実施例に係る建物階に対する応答層間変形角を示す線図である。
【図12】本発明の実施例に係る時刻に対する応答振動加速度を示す線図である。
【図13】本発明の実施例に係る時刻に対する応答振動加速度を示す線図である。
【図14】本発明の実施例に係る時刻に対する流体系ダンパー部の減衰係数を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明の実施形態では、20階建ての鉄骨造の建物に本発明を適用した例を示すが、本発明は、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、CFT造(Concrete-Filled Steel Tube:充填形鋼管コンクリート構造)、それらの混合構造など、さまざまな構造や規模の建物に対して適用することができる。
【0018】
まず、本発明の第1の実施形態に係る制震システムについて説明する。
【0019】
図1の立面図に示すように、制震システム10は、地盤12の上に建てられた鉄骨造の建物14に備えられている。これにより、建物14は、免震層を有さない20階建ての制振建物を構成している。
【0020】
制震システム10は、可変減衰ダンパー16、計測手段としての加速度センサー18、及びコントローラ20を有している。コントローラ20は、分析手段としてのフィルタ分析部22と、制御手段としての制御指令部24とを備えている。加速度センサー18及びコントローラ20は、20階の床版の上に設置されている。
【0021】
図1、2に示すように、可変減衰ダンパー16は、建物14の各階層26に配置され、対角線上に位置するようにして各階層26の柱梁架構28に取り付けられている。柱梁架構28は、柱30と梁32とによって構成されている。
【0022】
可変減衰ダンパー16は、セミアクティブ式の流体系可変減衰ダンパーであり、流体系ダンパー部34と、鋼製の軸部材からなる支持部36とを直列に配置して構成されている。これにより、可変減衰ダンパー16は、建物14に地震力等が作用したときに相対変位する階層26へ減衰力Fを付与する。
【0023】
図3に示すように、可変減衰ダンパー16は、ダッシュポット38とバネ40とを直列に配置したMaxwellモデル42によってモデル化できる。ダッシュポット38は、流体系ダンパー部34の有する粘性減衰に相当し、バネ40は、流体系ダンパー部34に収容されているオイル等の流体に生じる圧縮剛性と、支持部36の軸剛性とを直列配置したダンパー剛性に相当する。
【0024】
Maxwellモデル42における可変減衰ダンパー16の減衰係数Ceqは、可変減衰ダンパー16に作用する振動の振動数に依存する。すなわち、流体系ダンパー部34に収容されているオイル等の流体に生じる圧縮剛性と、支持部36の軸剛性とを直列配置したダンパー剛性をK、可変減衰ダンパー16に作用する(可変減衰ダンパー16が取り付けられている柱梁架構28に作用する)振動の振動数をf、流体系ダンパー部34の減衰係数をCとしたときに、式(1)が成り立つ場合に、可変減衰ダンパー16の減衰係数Ceqは最大となる。
【0025】
【数1】
可変減衰ダンパー16は、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを、値CHと値CLとに切り替えることによって、可変減衰ダンパー16の減衰係数Ceq(可変減衰ダンパー16が階層26へ付与する減衰力F)を二段階に変更できる。値CH及び値CLの内、大きい側の値である値CHは、建物14の1次振動モードの振動数f(以下、「1次振動数f1」とする)に対して可変減衰ダンパー16の減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、式(1)から求めた流体系ダンパー部34の減衰係数Cに近い値にする。すなわち、式(1)から求めた減衰係数Cを目標値として設計された可変減衰ダンパー16において、この可変減衰ダンパー16に1次振動数f1の振動が加えられたときに得られる流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CHとする。
【0026】
そして、値CH及び値CLの内、小さい側の値である値CLは、建物14の2次振動モードの振動数f(以下、「2次振動数f2」とする)に対して可変減衰ダンパー16の減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、式(1)から求めた流体系ダンパー部34の減衰係数Cに近い値にする。すなわち、式(1)から求めた減衰係数Cを目標値として設計された可変減衰ダンパー16において、この可変減衰ダンパー16に2次振動数f2の振動が加えられたときに得られる減流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CLとする。
【0027】
ここで、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CHと設定(以下、「設定A」とする)したときの、1次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー16の減衰係数をCa1、2次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー16の減衰係数をCa2とし、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CLと設定(以下、「設定B」とする)したときの、1次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー16の減衰係数をCb1、2次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー16の減衰係数をCb2とすると、各減衰の関係は、Ca1>Cb1、Ca2<Cb2となる。
【0028】
すなわち、第1振動モードとしての1次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように設定された可変減衰ダンパー16の減衰係数は、第2振動モードとしての2次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー16に生じる、第1振動モードの振動数fにおける減衰係数よりも大きくなる。また、第1振動モードとしての2次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように設定された可変減衰ダンパー16の減衰係数は、第2振動モードとしての1次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー16に生じる、第1振動モードの振動数fにおける減衰係数よりも大きくなる。
【0029】
なお、建物の2次振動数は、建物の1次振動数の約3倍になることが経験的に分かっているので、建物14の2次振動モードの振動数fを対象とした値CLは、建物14の1次振動モードの振動数fを対象とした値CHの約1/3になる。
【0030】
加速度センサー18は、建物14に地震力等が作用したときに、加速度センサー18が設置されている床版に生じる応答振動値としての応答振動加速度を計測する。すなわち、加速度センサー18は、建物14に生じる応答振動値としての応答振動加速度を計測する。
【0031】
フィルタ分析部22は、分析対象の振動モードを1次振動モードと2次振動モードとに設定し、加速度センサー18により計測した応答振動加速度を、1次振動モードが主となる第1振動成分としての第1加速度成分と、2次振動モードが主となる第2振動成分としての第2加速度成分とに分ける。
【0032】
加速度センサー18により計測された応答振動加速度を、第1加速度成分と第2加速度成分とに分ける具体的な分析方法の例としては、ローパスフィルタとハイパスフィルタとを用いる方法が挙げられる。この方法では、建物14の1次振動数f1よりも少し高い振動数f1’を遮断振動数とするローパスフィルタに応答振動加速度をかけて、このローパスフィルタを通った加速度成分を第1加速度成分とする。また、建物14の1次振動数f1よりも少し高い振動数f1’を遮断振動数とするハイパスフィルタに応答振動加速度をかけて、このハイパスフィルタを通った加速度成分を第2加速度成分とする。
【0033】
制御指令部24は、フィルタ分析部22によって分けた第1加速度成分と第2加速度成分とを比較し、第1加速度成分が卓越する場合に、1次振動モードの振動数f(1次振動数f1)に対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、建物14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー16の全てを操作し、第2加速度成分が卓越する場合に、2次振動モードの振動数f(2次振動数f2)に対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、建物14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー16の全てを操作する。
【0034】
すなわち、第1加速度成分が卓越する場合に、流体系ダンパー部34の減衰係数Cが値CH(設定A)になり、第2加速度成分が卓越する場合に、流体系ダンパー部34の減衰係数Cが値CL(設定B)になるように、可変減衰ダンパー16を操作する。
【0035】
第1加速度成分と第2加速度成分との比較において、どちらが卓越している成分であるかを決める具体的な判断方法の例としては、第1加速度成分と第2加速度成分との絶対値の最大値を比較し、第1加速度成分の絶対値の最大値が第2加速度成分の絶対値の最大値以上の場合に、1次振動モードの振動数f(1次振動数f1)に対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように(流体系ダンパー部34の減衰係数Cが値CHになるように)可変減衰ダンパー16を操作し、第1加速度成分の絶対値の最大値が第2加速度成分の絶対値の最大値未満の場合に、2次振動モードの振動数f(2次振動数f2)に対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように(流体系ダンパー部34の減衰係数Cが値CLになるように)可変減衰ダンパー16を操作する。すなわち、この例では、第1加速度成分と第2加速度成分との絶対値の最大値が大きい方の加速度成分を、卓越する加速度成分としている。
【0036】
次に、本発明の第1の実施形態に係る制震システムによる建物の制震方法について説明する。
【0037】
建物の制震方法は、計測工程、分析工程、及び制御工程によって、地震等により建物14に発生する振動を低減する。図4に示すように、まず、計測工程では、加速度センサー18により、建物14に生じる応答振動値としての応答振動加速度を計測する。
【0038】
次に、分析工程では、分析対象の振動モードを1次振動モードと2次振動モードとに設定し、フィルタ分析部22により、加速度センサー18により計測した応答振動加速度を、1次振動モードが主となる第1振動成分としての第1加速度成分と、2次振動モードが主となる第2振動成分としての第2加速度成分とに分ける。
【0039】
次に、制御工程では、制御指令部24により、フィルタ分析部22によって分けた第1加速度成分と第2加速度成分とを比較し、第1加速度成分が卓越する場合に、1次振動モードの振動数f(1次振動数f1)に対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、建物14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー16の全てを操作し、第2加速度成分が卓越する場合に、2次振動モードの振動数f(2次振動数f2)に対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、建物14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー16の全てを操作する。
【0040】
すなわち、第1加速度成分が卓越する場合に、流体系ダンパー部34の減衰係数Cが値CH(設定A)になり、第2加速度成分が卓越する場合に、流体系ダンパー部34の減衰係数Cが値CL(設定B)になるように、可変減衰ダンパー16を操作する。後は、地震等により建物14に振動が発生している間、計測工程、分析工程、及び制御工程をこの順に時々刻々と繰り返す。
【0041】
次に、本発明の第1の実施形態に係る制震システム及び建物の制震方法の作用と効果について説明する。
【0042】
本発明の第1の実施形態に係る制震システム10及び建物の制震方法では、図1、4に示すように、建物14の階層26に可変減衰ダンパー16により減衰力Fを付与することによって、地震等により建物14に発生する振動を低減することができる。
【0043】
また、卓越する加速度成分が主とする振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように可変減衰ダンパー16を操作することにより、卓越する加速度成分が主とする振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力Fを建物14に付与することができる。これにより、建物14に生じる、1次又は2次振動モードが主となる加速度成分が卓越する振動を、効果的に低減することができる。
【0044】
また、第1振動モード(1次振動モード又は2次振動モード)の振動数fに対して減衰力Fが最大になるように設定された可変減衰ダンパー16の減衰係数を、第2振動モード(第1振動モードが1次振動モードの場合は、2次振動モード、第1振動モードが2次振動モードの場合は、1次振動モード)の振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー16に生じる、第1振動モードの振動数における減衰係数よりも大きくすることにより、より効果的な減衰力Fを建物14に付与することができる。
【0045】
ここで、流体系ダンパー部と支持部とを直列に配置して構成され、建物に付与する減衰力が1つに固定されている(減衰係数の変更ができない)減衰ダンパー(以下、「固定減衰ダンパー」とする)を用いて、地震等により建物に生じる振動を低減する従来の方法においては、固定減衰ダンパーの減衰係数Ceqが建物の1次振動モードに対して最大となるように、流体系ダンパー部の減衰係数Cが式(1)により設定される。
【0046】
図5のグラフには、固定減衰ダンパーの有する流体系ダンパー部の減衰係数C(横軸)に対する、固定減衰ダンパーの減衰係数Ceq(縦軸)が示されている。例えば、建物の1次振動モードの振動数f1が1Hzであり、支持部材の剛性が1,000kN/cmの場合には、曲線44に示すように、減衰係数Cが159kNs/cmのときに固定減衰ダンパーの減衰係数Ceqが最大となる。また、例えば、建物の1次振動モードの振動数f1が3Hzであり、支持部材の剛性が1,000kN/cmの場合には、曲線46に示すように、減衰係数Cが53kNs/cmのときに固定減衰ダンパーの減衰係数Ceqが最大となる。このように、建物の1次振動モードの振動数を考慮して減衰係数Cを設定することで、大きな減衰力を建物に付加できる。
【0047】
しかし、このようにして流体系ダンパー部の減衰係数Cを設定した固定減衰ダンパーは、建物の1次振動数以外の振動数の振動に対しては、建物に付加できる減衰力が小さくなってしまう。
【0048】
図6のグラフには、固定減衰ダンパーに作用する振動の振動数f(横軸)に対する、固定減衰ダンパーにより付与される減衰の効率η(縦軸)が示されている。効率ηは、固定減衰ダンパーの減衰係数Ceqが建物の1次振動モードに対して最大の減衰係数Ceq・maxとなるように、流体系ダンパー部の減衰係数Cを設定したときの、ある振動数fにおける固定減衰ダンパーの減衰係数Ceqを、減衰係数Ceq・maxで割ってパーセント表示にした値である。すなわち、η=(Ceq/Ceq・max)×100となっている。
【0049】
例えば、固定減衰ダンパーの有する流体系ダンパー部の減衰係数Cを159kNs/cmとした曲線48では、振動数1Hzを最大としてそれ以外の振動数fでは効率が低減している。また、固定減衰ダンパーの有する流体系ダンパー部の減衰係数Cを53kNs/cmとした曲線50では、振動数3Hzを最大としてそれ以外の振動数fでは効率が低減している。これらのように、建物の1次振動モードの振動数f(1次振動数f1)に対して減衰係数Cを設定した場合、他の次数の振動モードに対しては最大限の制震効果を発揮すること(固定減衰ダンパーの減衰係数Ceqを、減衰係数Ceq・maxにすること)ができない。
【0050】
これに対して、本発明の第1の実施形態の制震システム10及び制震方法では、建物14の1次振動モードの振動が卓越するときには、建物14の1次振動モードの振動数f(1次振動数f1)に対して減衰係数Ceqの値が最大となるように、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CHに切り替え、建物14の2次振動モードの振動が卓越するときには、建物14の2次振動モードの振動数f(2次振動数f2)に対して減衰係数Ceqの値が最大となるように、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CLに切り替えることにより、卓越する加速度成分が主とする振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力Fを建物14に付与することができる。
【0051】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
【0052】
なお、第1の実施形態では、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを式(1)から求めた減衰係数Cに近い値CH、CLとしたときに得られる、可変減衰ダンパー16の減衰係数Ceqを「卓越する振動成分が主とする1次又は2次振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数」とした例を示したが、先に説明した「Ca1>Cb1、Ca2<Cb2」の関係が満たされれば、この減衰係数以外の値を「卓越する振動成分が主とする1次又は2次振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数」としてもよい。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態に係る制震システムについて説明する。
【0054】
第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。第2の実施形態の制震システム52は、図7に示すように、第1の実施形態の制震システム10を構成する可変減衰ダンパー16、フィルタ分析部22、制御指令部24を、可変減衰ダンパー54、フィルタ分析部56、制御指令部58としたものである。
【0055】
図2の正面図に示すように、可変減衰ダンパー54は、建物14の各階層26に配置され、対角線上に位置するようにして各階層26の柱梁架構28に取り付けられている。可変減衰ダンパー54は、セミアクティブ式の流体系可変減衰ダンパーであり、流体系ダンパー部60と、支持部36とを直列に配置して構成されている。これにより、可変減衰ダンパー54は、建物14に地震力等が作用したときに相対変位する階層26へ減衰力を付与する。
【0056】
可変減衰ダンパー54は、流体系ダンパー部60の減衰係数Cを、設定した振動モードの数(以下、設定した振動モードの数を「n(nは、2以上の自然数)」とする)だけ切り替えることができ、これによって、可変減衰ダンパー54の減衰係数Ceq(可変減衰ダンパー54が階層26へ付与する減衰力)をn段階に変更できる。例えば、n=2の場合には、減衰係数Cを値C1と値C2とに切り替えることができ、n≧3の場合には、減衰係数Cを値C1、値C2、・・・、値Cnに切り替えることができる。
【0057】
値C1、値C2、・・・、値Cnは、設定した振動モードの振動数fに対して可変減衰ダンパー54の減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、式(1)から求めた流体系ダンパー部60の減衰係数Cに近い値にする。すなわち、式(1)から求めた減衰係数Cを目標値として設計された可変減衰ダンパー54において、設定した振動モードの振動数fの振動がこの可変減衰ダンパー54に加えられたときに得られる流体系ダンパー部60の減衰係数Cを、値C1、値C2、・・・、値Cnとする。
【0058】
ここで、1次振動モードの振動数fに対して可変減衰ダンパー54の減衰力が最大になる減衰係数Ceqとなるように式(1)から求めた流体系ダンパー部60の減衰係数Cに近い値を値C1とし、2次振動モードの振動数fに対して可変減衰ダンパー54の減衰力が最大になる減衰係数Ceqとなるように式(1)から求めた流体系ダンパー部60の減衰係数Cに近い値を値C2とし、n次振動モードの振動数fに対して可変減衰ダンパー54の減衰力が最大になる減衰係数Ceqとなるように式(1)から求めた流体系ダンパー部60の減衰係数Cに近い値を値Cnとした場合に、流体系ダンパー部60の減衰係数Cを値C1と設定(以下、「設定C」とする)したときの、1次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCc1、2次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCc2、n次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCcnとし、流体系ダンパー部60の減衰係数Cを値C2と設定(以下、「設定D」とする)したときの、1次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCd1、2次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCd2、n次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCdnとし、流体系ダンパー部60の減衰係数Cを値Cnと設定(以下、「設定E」とする)したときの、1次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCe1、2次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCe2、n次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCenとすると、各減衰の関係は、Cc1>Cd1、Cc1>Ce1、Cd2>Cc2、Cd2>Ce2、Cen>Ccn、Cen>Cdnとなる。
【0059】
すなわち、第1振動モードとしての1次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように設定された可変減衰ダンパー54の減衰係数は、第2振動モードとしての2次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー54に生じる、第1振動モードの振動数fにおける減衰係数や、第2振動モードとしてのn次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー54に生じる、第1振動モードの振動数fにおける減衰係数よりも大きくなる。
【0060】
また、第1振動モードとしての2次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように設定された可変減衰ダンパー54の減衰係数は、第2振動モードとしての1次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー54に生じる、第1振動モードの振動数における減衰係数や、第2振動モードとしてのn次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー54に生じる、第1振動モードの振動数における減衰係数よりも大きくなる。
【0061】
また、第1振動モードとしてのn次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように設定された可変減衰ダンパー54の減衰係数は、第2振動モードとしての1次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー54に生じる、第1振動モードの振動数における減衰係数や、第2振動モードとしての2次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー54に生じる、第1振動モードの振動数における減衰係数よりも大きくなる。
【0062】
フィルタ分析部56では、所定の次数を有する振動モードをn個設定し、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ及びハイパスフィルタを用いて、加速度センサー18により計測した応答振動加速度を、設定したn個の振動モードが各々主となる振動成分としての加速度成分に分ける。
【0063】
制御指令部58は、フィルタ分析部56によって分けた加速度成分同士を比較し、卓越する加速度成分が主とする振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように(流体系ダンパー部60の減衰係数Cが、値C1、値C2、・・・、値Cnになるように)、建物14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー54の全てを操作する。
【0064】
次に、本発明の第2の実施形態に係る制震システムによる建物の制震方法について説明する。
【0065】
建物の制震方法は、計測工程、分析工程、及び制御工程によって、地震等により建物14に発生する振動を低減する。図7に示すように、まず、計測工程では、加速度センサー18により、建物14に生じる応答振動値としての応答振動加速度を計測する。
【0066】
次に、分析工程では、所定の次数を有する振動モードをn個設定し、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ及びハイパスフィルタを用いて、加速度センサー18により計測した応答振動加速度を、設定したn個の振動モードが各々主となる振動成分としての加速度成分に分ける。
【0067】
次に、制御工程では、フィルタ分析部56によって分けた加速度成分同士を比較し、卓越する加速度成分が主とする振動モードの振動数fに対して減衰力が最大になる減衰係数Ceqとなるように(流体系ダンパー部60の減衰係数Cが、値C1、値C2、・・・、値Cnになるように)、建物14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー54の全てを操作する。後は、地震等により建物14に振動が発生している間、計測工程、分析工程、及び制御工程をこの順に時々刻々と繰り返す。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態に係る制震システム及び建物の制震方法の作用と効果について説明する。
【0069】
本発明の第2の実施形態に係る制震システム52及び建物の制震方法では、図7に示すように、可変減衰ダンパー54により、建物14の階層26へ減衰力を付与することによって、地震等により建物14に発生する振動を低減することができる。
【0070】
また、卓越する加速度成分が主とする振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように可変減衰ダンパー54を操作することにより、卓越する加速度成分が主とする振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力を建物14に付与することができる。
【0071】
例えば、2次振動モードよりも高次の振動モードを設定し、この高次の振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数Ceqとなるように可変減衰ダンパー54を操作できる制振システム52にすれば、2次振動モードよりも高次の振動モードが主となる加速度成分が卓越する振動に対して振動低減効果を発揮させることができる。
【0072】
また、第1振動モード(1次振動モード、2次振動モード又はn次振動モード)の振動数fに対して減衰力Fが最大になるように設定された可変減衰ダンパー54の減衰係数を、第2振動モード(第1振動モードが1次振動モードの場合は、2次振動モード又はn次振動モード、第1振動モードが2次振動モードの場合は、1次振動モード又はn次振動モード、第1振動モードがn次振動モードの場合は、1次振動モード又は2次振動モード)の振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー54に生じる、第1振動モードの振動数fにおける減衰係数よりも大きくすることにより、より効果的な減衰力Fを建物14に付与することができる。
【0073】
以上、本発明の第2の実施形態に係る制震システム及び建物の制震方法について説明した。
【0074】
なお、本発明の第2の実施形態に係る制震システム52及び建物の制震方法では、卓越する加速度成分が主とする振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、建物14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー54の全てを操作する例を示したが、可変減衰ダンパー54の全てを操作しなくてもよい。例えば、設定した振動モードの節にあたる(設定した振動モードの振動による層間変形の小さい)階層26に設置した可変減衰ダンパー54は、設定した振動モードに対する減衰効果が小さいので、操作しなくてもよい。
【0075】
また、第2の実施形態では、流体系ダンパー部60の減衰係数Cを式(1)から求めた減衰係数Cに近い値C1、値C2、・・・、値Cnとしたときに得られる、可変減衰ダンパー54の減衰係数Ceqを「卓越する振動成分が主とする振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数」とした例を示したが、先に説明した「Cc1>Cd1、Cc1>Ce1、Cd2>Cc2、Cd2>Ce2、Cen>Ccn、Cen>Cdn」の関係が満たされれば、この減衰係数以外の値を「卓越する振動成分が主とする振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数」としてもよい。
【0076】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明した。
【0077】
なお、本発明の第1及び第2の実施形態では、可変減衰ダンパー16、54をセミアクティブ式の流体系可変減衰ダンパーとした例を示したが、可変減衰ダンパー16、54は、建物14の階層26へ減衰力を付与することができるとともに、減衰係数(階層26へ付与する減衰力)を変更可能なものであればよい。
【0078】
また、本発明の第1及び第2の実施形態では、建物14の各階層26に可変減衰ダンパー16、54を配置した例を示したが、可変減衰ダンパー16、54は、建物14を構成する各階層26に配置してもよいし、一部の階層26に配置してもよい。また、可変減衰ダンパー16、54が配置される階層26において、この階層26の有する全ての柱梁架構28に可変減衰ダンパー16、54を取り付けてもよいし、一部の柱梁架構28に取り付けてもよい。
【0079】
例えば、図1に示すように、建物14を構成する各階層26において、各階層26の有する一部の柱梁架構28に可変減衰ダンパー16、54を取り付けるようにしてもよいし、応答振動加速度が大きくなる建物14上層の階層26のみに可変減衰ダンパー16、54を配置するようにしてもよい。
【0080】
また、制震システム10、52によって機能させないダンパー(例えば、減衰係数の変更ができないセミアクティブダンパー)を建物14に併設して、このダンパーからは、従来の方法で建物14の階層26に減衰力を付与させるようにしてもよい。
【0081】
また、本発明の第1及び第2の実施形態で示した可変減衰ダンパー16、54は、所定値以上の荷重が加わった際に流体系ダンパー部34、60の減衰係数Cを瞬間的に小さくして過大な荷重が可変減衰ダンパー16、54に加わることを防ぐリリーフ機構を備えることが好ましい。
【0082】
また、本発明の第1及び第2の実施形態では、建物14の20階の床版の上に加速度センサー18を設置した例を示したが、加速度センサー18は、設定する振動モードの振動(加速度成分)が計測できる位置に設置すればよい。建物14の頂部(屋上階の床版の上)に設置することがより好ましいが、設置が困難な場合には、できるだけ建物14の頂部に近い階の床版の上に設置するのが好ましい。
【0083】
また、加速度センサー18は、建物14の複数階に設置してもよい。この場合には、複数の加速度センサー18により計測した各々の応答振動加速度を、設定した振動モードが主となる加速度成分に分けた後に、これらの加速度成分同士を同じ座標上で比較できるように、これらの加速度成分を事前実験の結果等に基づいて補正した後に、制御工程を行う。
【0084】
また、本発明の第1の実施形態では、ローパスフィルタとハイパスフィルタとを用いて、応答振動加速度を第1加速度成分と第2加速度成分とに分ける例を示し、本発明の第2の実施形態では、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ及びハイパスフィルタを用いて、応答振動加速度を、設定したn個の振動モードが各々主となる加速度成分に分ける例を示したが、加速度センサー18により計測された応答振動加速度を、対象となる振動モードが主となる加速度成分に分けることができれば、どのような方法で分けてもよい。例えば、オブザーバやカルマンフィルタなどによる状態推定を利用して、応答振動加速度を加速度成分に分けてもよい。また、余分な長周期成分や、電源ノイズなどの高振動成分を除去するため、ローパスフィルタとハイパスフィルタとをそれぞれバンドパスフィルタにしてもよい。
【0085】
また、本発明の第1の実施形態では、第1加速度成分と第2加速度成分との絶対値の最大値が大きい方の加速度成分を、卓越する加速度成分とする例を示したが、本発明の第1及び第2の実施形態において、どの加速度成分を卓越する加速度成分とするかは、他の方法を用いてもよい。例えば、過去数秒間の加速度成分の絶対値の平均値が大きい方の加速度成分を、卓越する加速度成分としてもよいし、所定値を超える加速度成分が多い方の加速度成分を、卓越する加速度成分としてもよい。また、加速度成分毎に異なる重みを加えて比較してもよい。
【0086】
また、本発明の第1及び第2の実施形態では、応答振動値を応答振動加速度とし、振動成分を加速度成分として、振動モード分析(分析工程及び制御工程)を行う例を示したが、応答振動値を応答振動速度や応答振動変位とし、振動成分を速度成分や変位成分として、振動モード分析(分析工程及び制御工程)を行ってもよい。
【0087】
また、本発明の第1及び第2の実施形態では、制振建物(建物14)に制振システム10、52を適用した例を示したが、免震層を有する免震建物に制振システム10、52を適用(免震建物の階層に可変減衰ダンパー16、54を配置)してもよい。
【0088】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1及び第2の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0089】
(実施例)
【0090】
本実施例では、シミュレーションによって検証した、本発明の第1の実施形態の制震システム10の効果について説明する。シミュレーションは、図1に示した建物14を建物モデル(以下、「建物モデル14」とする)にして行なった。また、建物モデル14を、表1に示す諸元を有する20階建ての建物を想定した等価せん断モデルとし、建物モデル14の有する減衰を、建物モデル14の1次振動モードと2次振動モードとの減衰定数を1.5%とするレーリー型減衰とした。また、建物モデル14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー16のモデルを、図3で示したMaxwellモデル42とした。表1の建物階の欄に示されているRは、屋上階を意味する。
【0091】
【表1】
シミュレーションは、ケース1〜3に対して行った。ケース1は、可変減衰ダンパー16の流体系ダンパー部34の減衰係数Cを、建物モデル14の1次振動数f1に対して可変減衰ダンパー16の減衰係数Ceqが最大となる値CHに固定した場合である。
【0092】
ケース2は、可変減衰ダンパー16の流体系ダンパー部34の減衰係数Cを、建物モデル14の2次振動数f2に対して可変減衰ダンパー16の減衰係数Ceqが最大となる値CLに固定した場合である。
【0093】
ケース3は、第1加速度成分が卓越するときに流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CHにし、第2加速度成分が卓越するときに流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CLにした場合であり、本発明の第1の実施形態の制震システム10に相当する。
【0094】
表2には、ケース1、2における、1次〜6次振動モードの振動数と減衰定数とが示されている。これらの値は、表1で示したように、値CHを640(kNs/cm)とし、値CLを232(kNs/cm)として、複素固有値解析によって求めたものである。
【0095】
【表2】
表2からわかるように、ケース1では、1次振動モードの減衰定数が、他の振動モードの減衰定数よりも大きくなっており、ケース2では、2次振動モードの減衰定数が、他の振動モードの減衰定数よりも大きくなっている。
【0096】
図8のグラフには、シミュレーションに用いた地震動の加速度波形が示されている。図8のグラフの横軸は、時刻を示し、縦軸は、時刻に対する地動加速度を示している。図9のグラフには、シミュレーションに用いた地震動の応答加速度スペクトルが示されている。図9のグラフの横軸は、周期(=1/周波数)を示し、縦軸は、周期に対する応答加速度スペクトルを示している。図9に示すように、地震動においては、1次周期T1(1次振動数f1)よりも2次周期T2(2次振動数f2)の方が、応答加速度スペクトルが卓越していることがわかる。
【0097】
加速度センサー18は、20階の床版の上に設置されており、この20階の床版に生じる応答振動加速度を計測する。フィルタ分析部22は、0.2Hzから、建物モデル14の1次振動数である約0.54Hzよりも大きい0.9Hzまでを対象としたバンドバスフィルタと、0.9Hzから30Hzまでを対象としたバンドパスフィルタとによって構成されている。
【0098】
制御指令部24では、フィルタ分析部22によって分けられた第1加速度成分と第2加速度成分とのそれぞれにおいて、現時刻から2秒前までの加速度データの絶対値の最大値を求め、第1加速度成分の絶対値の最大値が第2加速度成分の絶対値の最大値以上の場合に、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CH(=640(kNs/cm))にし、第1加速度成分の絶対値の最大値が第2加速度成分の絶対値の最大値未満の場合に、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CL(=232(kNs/cm))にするように可変減衰バンパー16を操作する。
【0099】
図10〜13には、シミュレーションの結果が示されている。図10のグラフにおいて、縦軸は、建物階を示し、横軸は、建物階に対する応答振動加速度を示し、値62A、値64A、値66Aは、それぞれケース1、ケース2、ケース3の値を示している。また、図11のグラフにおいて、縦軸は、建物モデル14の建物階を示し、横軸は、建物モデル14の建物階に対する階層26の応答層間変形角を示し、値62B、値64B、値66Bは、それぞれケース1、ケース2、ケース3の値を示している。図10、11のグラフの縦軸に示されているRは、屋上階を意味する。
【0100】
図10、11に示すように、応答振動加速度については、本発明の第1の実施形態の制震システム10に相当するケース3が、ケース1よりも小さくなっており、ケース2と同程度の加速度となっている。また、層間変形角については、ケース3がケース1よりも小さくなっている。これにより、本発明の第1の実施形態の制震システム10によって効果的な減衰力が建物モデル14に付与されていることがわかる。
【0101】
図12のグラフには、ケース1の場合の時刻(横軸)に対する、建物モデル14の20階の床版に生じる応答振動加速度(縦軸)が示され、図13のグラフには、ケース3の場合の時刻(横軸)に対する、建物モデル14の20階の床版に生じる応答振動加速度(縦軸)が示されている。
【0102】
図12、13より、ケース1において20秒前後に生じた2次モード以上の振動による200cm/s2以上の応答振動加速度が、ケース3においては無くなっていることがわかる。これにより、ケース3では、2次振動モードの振動を低減していることがわかる。
【0103】
図14は、シミュレーション時に行われた制御工程の様子を示したものである。図14の横軸は、時刻を示し、縦軸は、時刻に対する流体系ダンパー部34の減衰係数Cの値を示している。図14からわかるように、減衰係数Cの少ない回数の切り替えによって、効果的な減衰力が建物モデル14に付与されている。
【符号の説明】
【0104】
10、52 制震システム
14 建物
16、54 可変減衰ダンパー
18 加速度センサー(計測手段)
22、56 フィルタ分析部(分析手段)
24、58 制御指令部(制御手段)
26 階層
F 減衰力
f 振動数
f1 1次振動数(振動数)
f2 2次振動数(振動数)
Ceq 減衰係数
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に生じる振動をダンパーにより低減する制震システム、及び建物の制震方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の振動モデルを多質点系として捉えた場合、この建物に生じる応答振動加速度は、通常、1次振動モードの成分が他の振動モードの成分よりも大きくなる。よって、一般に、建物に生じる揺れを流体系ダンパーにより低減しようとする場合、支持部材を含めた流体系ダンパー全体としての減衰力が1次振動モードの振動数に対して最大となるように、流体系ダンパー本体の減衰係数を設定する。
【0003】
しかし、高次モードの振動数に対しては、この流体系ダンパーから建物へ効果的に減衰力を与えることができない。例えば、2次振動モードの加速度成分が他の振動モードの加速度成分よりも卓越する地震動に対しては、流体系ダンパーの有している最大限の減衰効果を発揮させることができない。
【0004】
特許文献1には、建物フレーム内に設置した可変減衰装置によって、地震等により建物に発生する揺れを低減する構造物の制震方法が開示されている。可変減衰装置は、減衰係数を2段階に切り替えることができ、可変減衰装置が設置されている建物層間の変位、この変位の速度、及び可変減衰装置から発生した力に基づいて可変減衰装置の制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−303926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は係る事実を考慮し、卓越する振動成分が主とする振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力を建物に付与することができる制震システム、及び建物の制震方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、建物の階層に配置され相対変位する前記階層へ減衰力を付与するとともに減衰係数を変更することで該減衰力を調整可能な可変減衰ダンパーと、前記建物に生じる応答振動値を計測する計測手段と、所定の次数を有する振動モードを複数設定し、前記計測手段により計測した応答振動値を、前記複数設定した振動モードが各々主となる振動成分に分ける分析手段と、前記分析手段により分けた前記振動成分同士を比較し、卓越する前記振動成分が主とする前記振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作する制御手段と、を有する制震システムである。
【0008】
請求項1に記載の発明では、制御手段によって、卓越する振動成分が主とする振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように可変減衰ダンパーを操作することにより、卓越する振動成分が主とする振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力を建物に付与することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記複数設定された振動モードの内の1つである第1振動モードの振動数に対して減衰力が最大になるように設定された前記可変減衰ダンパーの減衰係数は、前記複数設定された振動モードの内の前記第1振動モード以外の第2振動モードの振動数に対して減衰力が最大になるように減衰係数が設定された前記可変減衰ダンパーに生じる、前記第1振動モードの振動数における減衰係数よりも大きい。
【0010】
請求項2に記載の発明では、第1振動モードの振動数に対して減衰力が最大になるように設定された可変減衰ダンパーの減衰係数を、第2振動モードの振動数に対して減衰力が最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパーに生じる、第1振動モードの振動数における減衰係数よりも大きくすることにより、より効果的な減衰力を建物に付与することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記分析手段は、1次振動モードと2次振動モードとを設定し、前記計測手段により計測した応答振動値を、1次振動モードが主となる第1振動成分と2次振動モードが主となる第2振動成分とに分け、前記制御手段は、前記第1振動成分と前記第2振動成分とを比較し、前記第1振動成分が卓越する場合に、前記1次振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作し、前記第2振動成分が卓越する場合に、前記2次振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作する。
【0012】
請求項3に記載の発明では、建物に生じる、1次又は2次振動モードが主となる振動成分が卓越する振動を、効果的に低減することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、建物の階層に配置され相対変位する前記階層へ減衰力を付与するとともに減衰係数を変更することで該減衰力を調整可能な可変減衰ダンパーを用いた建物の制震方法において、前記建物に生じる応答振動値を計測する計測工程と、所定の次数を有する振動モードを複数設定し、前記計測工程により計測した応答振動値を、前記複数設定した振動モードが各々主となる振動成分に分ける分析工程と、前記分析工程により分けた前記振動成分同士を比較し、卓越する前記振動成分が主とする前記振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作する制御工程と、を有する建物の制震方法である。
【0014】
請求項4に記載の発明では、制御工程によって、卓越する振動成分が主とする振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように可変減衰ダンパーを操作することにより、卓越する振動成分が主とする振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力を建物に付与することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記構成としたので、卓越する振動成分が主とする振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力を建物に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る建物を示す立面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る可変減衰ダンパーを示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るモデル化した可変減衰ダンパーを示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る制震システムを示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る流体系ダンパー部の減衰係数に対する固定減衰ダンパーの減衰係数を示す線図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る固定減衰ダンパーに作用する振動の振動数に対する固定減衰ダンパーにより付与される減衰の効率を示す線図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る制震システムを示す説明図である。
【図8】本発明の実施例に係る時刻に対する地動加速度を示す線図である。
【図9】本発明の実施例に係る周期に対する応答加速度スペクトルを示す線図である。
【図10】本発明の実施例に係る建物階に対する応答振動加速度を示す線図である。
【図11】本発明の実施例に係る建物階に対する応答層間変形角を示す線図である。
【図12】本発明の実施例に係る時刻に対する応答振動加速度を示す線図である。
【図13】本発明の実施例に係る時刻に対する応答振動加速度を示す線図である。
【図14】本発明の実施例に係る時刻に対する流体系ダンパー部の減衰係数を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明の実施形態では、20階建ての鉄骨造の建物に本発明を適用した例を示すが、本発明は、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、CFT造(Concrete-Filled Steel Tube:充填形鋼管コンクリート構造)、それらの混合構造など、さまざまな構造や規模の建物に対して適用することができる。
【0018】
まず、本発明の第1の実施形態に係る制震システムについて説明する。
【0019】
図1の立面図に示すように、制震システム10は、地盤12の上に建てられた鉄骨造の建物14に備えられている。これにより、建物14は、免震層を有さない20階建ての制振建物を構成している。
【0020】
制震システム10は、可変減衰ダンパー16、計測手段としての加速度センサー18、及びコントローラ20を有している。コントローラ20は、分析手段としてのフィルタ分析部22と、制御手段としての制御指令部24とを備えている。加速度センサー18及びコントローラ20は、20階の床版の上に設置されている。
【0021】
図1、2に示すように、可変減衰ダンパー16は、建物14の各階層26に配置され、対角線上に位置するようにして各階層26の柱梁架構28に取り付けられている。柱梁架構28は、柱30と梁32とによって構成されている。
【0022】
可変減衰ダンパー16は、セミアクティブ式の流体系可変減衰ダンパーであり、流体系ダンパー部34と、鋼製の軸部材からなる支持部36とを直列に配置して構成されている。これにより、可変減衰ダンパー16は、建物14に地震力等が作用したときに相対変位する階層26へ減衰力Fを付与する。
【0023】
図3に示すように、可変減衰ダンパー16は、ダッシュポット38とバネ40とを直列に配置したMaxwellモデル42によってモデル化できる。ダッシュポット38は、流体系ダンパー部34の有する粘性減衰に相当し、バネ40は、流体系ダンパー部34に収容されているオイル等の流体に生じる圧縮剛性と、支持部36の軸剛性とを直列配置したダンパー剛性に相当する。
【0024】
Maxwellモデル42における可変減衰ダンパー16の減衰係数Ceqは、可変減衰ダンパー16に作用する振動の振動数に依存する。すなわち、流体系ダンパー部34に収容されているオイル等の流体に生じる圧縮剛性と、支持部36の軸剛性とを直列配置したダンパー剛性をK、可変減衰ダンパー16に作用する(可変減衰ダンパー16が取り付けられている柱梁架構28に作用する)振動の振動数をf、流体系ダンパー部34の減衰係数をCとしたときに、式(1)が成り立つ場合に、可変減衰ダンパー16の減衰係数Ceqは最大となる。
【0025】
【数1】
可変減衰ダンパー16は、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを、値CHと値CLとに切り替えることによって、可変減衰ダンパー16の減衰係数Ceq(可変減衰ダンパー16が階層26へ付与する減衰力F)を二段階に変更できる。値CH及び値CLの内、大きい側の値である値CHは、建物14の1次振動モードの振動数f(以下、「1次振動数f1」とする)に対して可変減衰ダンパー16の減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、式(1)から求めた流体系ダンパー部34の減衰係数Cに近い値にする。すなわち、式(1)から求めた減衰係数Cを目標値として設計された可変減衰ダンパー16において、この可変減衰ダンパー16に1次振動数f1の振動が加えられたときに得られる流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CHとする。
【0026】
そして、値CH及び値CLの内、小さい側の値である値CLは、建物14の2次振動モードの振動数f(以下、「2次振動数f2」とする)に対して可変減衰ダンパー16の減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、式(1)から求めた流体系ダンパー部34の減衰係数Cに近い値にする。すなわち、式(1)から求めた減衰係数Cを目標値として設計された可変減衰ダンパー16において、この可変減衰ダンパー16に2次振動数f2の振動が加えられたときに得られる減流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CLとする。
【0027】
ここで、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CHと設定(以下、「設定A」とする)したときの、1次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー16の減衰係数をCa1、2次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー16の減衰係数をCa2とし、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CLと設定(以下、「設定B」とする)したときの、1次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー16の減衰係数をCb1、2次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー16の減衰係数をCb2とすると、各減衰の関係は、Ca1>Cb1、Ca2<Cb2となる。
【0028】
すなわち、第1振動モードとしての1次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように設定された可変減衰ダンパー16の減衰係数は、第2振動モードとしての2次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー16に生じる、第1振動モードの振動数fにおける減衰係数よりも大きくなる。また、第1振動モードとしての2次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように設定された可変減衰ダンパー16の減衰係数は、第2振動モードとしての1次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー16に生じる、第1振動モードの振動数fにおける減衰係数よりも大きくなる。
【0029】
なお、建物の2次振動数は、建物の1次振動数の約3倍になることが経験的に分かっているので、建物14の2次振動モードの振動数fを対象とした値CLは、建物14の1次振動モードの振動数fを対象とした値CHの約1/3になる。
【0030】
加速度センサー18は、建物14に地震力等が作用したときに、加速度センサー18が設置されている床版に生じる応答振動値としての応答振動加速度を計測する。すなわち、加速度センサー18は、建物14に生じる応答振動値としての応答振動加速度を計測する。
【0031】
フィルタ分析部22は、分析対象の振動モードを1次振動モードと2次振動モードとに設定し、加速度センサー18により計測した応答振動加速度を、1次振動モードが主となる第1振動成分としての第1加速度成分と、2次振動モードが主となる第2振動成分としての第2加速度成分とに分ける。
【0032】
加速度センサー18により計測された応答振動加速度を、第1加速度成分と第2加速度成分とに分ける具体的な分析方法の例としては、ローパスフィルタとハイパスフィルタとを用いる方法が挙げられる。この方法では、建物14の1次振動数f1よりも少し高い振動数f1’を遮断振動数とするローパスフィルタに応答振動加速度をかけて、このローパスフィルタを通った加速度成分を第1加速度成分とする。また、建物14の1次振動数f1よりも少し高い振動数f1’を遮断振動数とするハイパスフィルタに応答振動加速度をかけて、このハイパスフィルタを通った加速度成分を第2加速度成分とする。
【0033】
制御指令部24は、フィルタ分析部22によって分けた第1加速度成分と第2加速度成分とを比較し、第1加速度成分が卓越する場合に、1次振動モードの振動数f(1次振動数f1)に対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、建物14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー16の全てを操作し、第2加速度成分が卓越する場合に、2次振動モードの振動数f(2次振動数f2)に対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、建物14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー16の全てを操作する。
【0034】
すなわち、第1加速度成分が卓越する場合に、流体系ダンパー部34の減衰係数Cが値CH(設定A)になり、第2加速度成分が卓越する場合に、流体系ダンパー部34の減衰係数Cが値CL(設定B)になるように、可変減衰ダンパー16を操作する。
【0035】
第1加速度成分と第2加速度成分との比較において、どちらが卓越している成分であるかを決める具体的な判断方法の例としては、第1加速度成分と第2加速度成分との絶対値の最大値を比較し、第1加速度成分の絶対値の最大値が第2加速度成分の絶対値の最大値以上の場合に、1次振動モードの振動数f(1次振動数f1)に対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように(流体系ダンパー部34の減衰係数Cが値CHになるように)可変減衰ダンパー16を操作し、第1加速度成分の絶対値の最大値が第2加速度成分の絶対値の最大値未満の場合に、2次振動モードの振動数f(2次振動数f2)に対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように(流体系ダンパー部34の減衰係数Cが値CLになるように)可変減衰ダンパー16を操作する。すなわち、この例では、第1加速度成分と第2加速度成分との絶対値の最大値が大きい方の加速度成分を、卓越する加速度成分としている。
【0036】
次に、本発明の第1の実施形態に係る制震システムによる建物の制震方法について説明する。
【0037】
建物の制震方法は、計測工程、分析工程、及び制御工程によって、地震等により建物14に発生する振動を低減する。図4に示すように、まず、計測工程では、加速度センサー18により、建物14に生じる応答振動値としての応答振動加速度を計測する。
【0038】
次に、分析工程では、分析対象の振動モードを1次振動モードと2次振動モードとに設定し、フィルタ分析部22により、加速度センサー18により計測した応答振動加速度を、1次振動モードが主となる第1振動成分としての第1加速度成分と、2次振動モードが主となる第2振動成分としての第2加速度成分とに分ける。
【0039】
次に、制御工程では、制御指令部24により、フィルタ分析部22によって分けた第1加速度成分と第2加速度成分とを比較し、第1加速度成分が卓越する場合に、1次振動モードの振動数f(1次振動数f1)に対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、建物14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー16の全てを操作し、第2加速度成分が卓越する場合に、2次振動モードの振動数f(2次振動数f2)に対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、建物14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー16の全てを操作する。
【0040】
すなわち、第1加速度成分が卓越する場合に、流体系ダンパー部34の減衰係数Cが値CH(設定A)になり、第2加速度成分が卓越する場合に、流体系ダンパー部34の減衰係数Cが値CL(設定B)になるように、可変減衰ダンパー16を操作する。後は、地震等により建物14に振動が発生している間、計測工程、分析工程、及び制御工程をこの順に時々刻々と繰り返す。
【0041】
次に、本発明の第1の実施形態に係る制震システム及び建物の制震方法の作用と効果について説明する。
【0042】
本発明の第1の実施形態に係る制震システム10及び建物の制震方法では、図1、4に示すように、建物14の階層26に可変減衰ダンパー16により減衰力Fを付与することによって、地震等により建物14に発生する振動を低減することができる。
【0043】
また、卓越する加速度成分が主とする振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように可変減衰ダンパー16を操作することにより、卓越する加速度成分が主とする振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力Fを建物14に付与することができる。これにより、建物14に生じる、1次又は2次振動モードが主となる加速度成分が卓越する振動を、効果的に低減することができる。
【0044】
また、第1振動モード(1次振動モード又は2次振動モード)の振動数fに対して減衰力Fが最大になるように設定された可変減衰ダンパー16の減衰係数を、第2振動モード(第1振動モードが1次振動モードの場合は、2次振動モード、第1振動モードが2次振動モードの場合は、1次振動モード)の振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー16に生じる、第1振動モードの振動数における減衰係数よりも大きくすることにより、より効果的な減衰力Fを建物14に付与することができる。
【0045】
ここで、流体系ダンパー部と支持部とを直列に配置して構成され、建物に付与する減衰力が1つに固定されている(減衰係数の変更ができない)減衰ダンパー(以下、「固定減衰ダンパー」とする)を用いて、地震等により建物に生じる振動を低減する従来の方法においては、固定減衰ダンパーの減衰係数Ceqが建物の1次振動モードに対して最大となるように、流体系ダンパー部の減衰係数Cが式(1)により設定される。
【0046】
図5のグラフには、固定減衰ダンパーの有する流体系ダンパー部の減衰係数C(横軸)に対する、固定減衰ダンパーの減衰係数Ceq(縦軸)が示されている。例えば、建物の1次振動モードの振動数f1が1Hzであり、支持部材の剛性が1,000kN/cmの場合には、曲線44に示すように、減衰係数Cが159kNs/cmのときに固定減衰ダンパーの減衰係数Ceqが最大となる。また、例えば、建物の1次振動モードの振動数f1が3Hzであり、支持部材の剛性が1,000kN/cmの場合には、曲線46に示すように、減衰係数Cが53kNs/cmのときに固定減衰ダンパーの減衰係数Ceqが最大となる。このように、建物の1次振動モードの振動数を考慮して減衰係数Cを設定することで、大きな減衰力を建物に付加できる。
【0047】
しかし、このようにして流体系ダンパー部の減衰係数Cを設定した固定減衰ダンパーは、建物の1次振動数以外の振動数の振動に対しては、建物に付加できる減衰力が小さくなってしまう。
【0048】
図6のグラフには、固定減衰ダンパーに作用する振動の振動数f(横軸)に対する、固定減衰ダンパーにより付与される減衰の効率η(縦軸)が示されている。効率ηは、固定減衰ダンパーの減衰係数Ceqが建物の1次振動モードに対して最大の減衰係数Ceq・maxとなるように、流体系ダンパー部の減衰係数Cを設定したときの、ある振動数fにおける固定減衰ダンパーの減衰係数Ceqを、減衰係数Ceq・maxで割ってパーセント表示にした値である。すなわち、η=(Ceq/Ceq・max)×100となっている。
【0049】
例えば、固定減衰ダンパーの有する流体系ダンパー部の減衰係数Cを159kNs/cmとした曲線48では、振動数1Hzを最大としてそれ以外の振動数fでは効率が低減している。また、固定減衰ダンパーの有する流体系ダンパー部の減衰係数Cを53kNs/cmとした曲線50では、振動数3Hzを最大としてそれ以外の振動数fでは効率が低減している。これらのように、建物の1次振動モードの振動数f(1次振動数f1)に対して減衰係数Cを設定した場合、他の次数の振動モードに対しては最大限の制震効果を発揮すること(固定減衰ダンパーの減衰係数Ceqを、減衰係数Ceq・maxにすること)ができない。
【0050】
これに対して、本発明の第1の実施形態の制震システム10及び制震方法では、建物14の1次振動モードの振動が卓越するときには、建物14の1次振動モードの振動数f(1次振動数f1)に対して減衰係数Ceqの値が最大となるように、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CHに切り替え、建物14の2次振動モードの振動が卓越するときには、建物14の2次振動モードの振動数f(2次振動数f2)に対して減衰係数Ceqの値が最大となるように、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CLに切り替えることにより、卓越する加速度成分が主とする振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力Fを建物14に付与することができる。
【0051】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
【0052】
なお、第1の実施形態では、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを式(1)から求めた減衰係数Cに近い値CH、CLとしたときに得られる、可変減衰ダンパー16の減衰係数Ceqを「卓越する振動成分が主とする1次又は2次振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数」とした例を示したが、先に説明した「Ca1>Cb1、Ca2<Cb2」の関係が満たされれば、この減衰係数以外の値を「卓越する振動成分が主とする1次又は2次振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数」としてもよい。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態に係る制震システムについて説明する。
【0054】
第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。第2の実施形態の制震システム52は、図7に示すように、第1の実施形態の制震システム10を構成する可変減衰ダンパー16、フィルタ分析部22、制御指令部24を、可変減衰ダンパー54、フィルタ分析部56、制御指令部58としたものである。
【0055】
図2の正面図に示すように、可変減衰ダンパー54は、建物14の各階層26に配置され、対角線上に位置するようにして各階層26の柱梁架構28に取り付けられている。可変減衰ダンパー54は、セミアクティブ式の流体系可変減衰ダンパーであり、流体系ダンパー部60と、支持部36とを直列に配置して構成されている。これにより、可変減衰ダンパー54は、建物14に地震力等が作用したときに相対変位する階層26へ減衰力を付与する。
【0056】
可変減衰ダンパー54は、流体系ダンパー部60の減衰係数Cを、設定した振動モードの数(以下、設定した振動モードの数を「n(nは、2以上の自然数)」とする)だけ切り替えることができ、これによって、可変減衰ダンパー54の減衰係数Ceq(可変減衰ダンパー54が階層26へ付与する減衰力)をn段階に変更できる。例えば、n=2の場合には、減衰係数Cを値C1と値C2とに切り替えることができ、n≧3の場合には、減衰係数Cを値C1、値C2、・・・、値Cnに切り替えることができる。
【0057】
値C1、値C2、・・・、値Cnは、設定した振動モードの振動数fに対して可変減衰ダンパー54の減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、式(1)から求めた流体系ダンパー部60の減衰係数Cに近い値にする。すなわち、式(1)から求めた減衰係数Cを目標値として設計された可変減衰ダンパー54において、設定した振動モードの振動数fの振動がこの可変減衰ダンパー54に加えられたときに得られる流体系ダンパー部60の減衰係数Cを、値C1、値C2、・・・、値Cnとする。
【0058】
ここで、1次振動モードの振動数fに対して可変減衰ダンパー54の減衰力が最大になる減衰係数Ceqとなるように式(1)から求めた流体系ダンパー部60の減衰係数Cに近い値を値C1とし、2次振動モードの振動数fに対して可変減衰ダンパー54の減衰力が最大になる減衰係数Ceqとなるように式(1)から求めた流体系ダンパー部60の減衰係数Cに近い値を値C2とし、n次振動モードの振動数fに対して可変減衰ダンパー54の減衰力が最大になる減衰係数Ceqとなるように式(1)から求めた流体系ダンパー部60の減衰係数Cに近い値を値Cnとした場合に、流体系ダンパー部60の減衰係数Cを値C1と設定(以下、「設定C」とする)したときの、1次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCc1、2次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCc2、n次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCcnとし、流体系ダンパー部60の減衰係数Cを値C2と設定(以下、「設定D」とする)したときの、1次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCd1、2次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCd2、n次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCdnとし、流体系ダンパー部60の減衰係数Cを値Cnと設定(以下、「設定E」とする)したときの、1次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCe1、2次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCe2、n次振動モードの振動数において得られる可変減衰ダンパー54の減衰係数をCenとすると、各減衰の関係は、Cc1>Cd1、Cc1>Ce1、Cd2>Cc2、Cd2>Ce2、Cen>Ccn、Cen>Cdnとなる。
【0059】
すなわち、第1振動モードとしての1次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように設定された可変減衰ダンパー54の減衰係数は、第2振動モードとしての2次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー54に生じる、第1振動モードの振動数fにおける減衰係数や、第2振動モードとしてのn次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー54に生じる、第1振動モードの振動数fにおける減衰係数よりも大きくなる。
【0060】
また、第1振動モードとしての2次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように設定された可変減衰ダンパー54の減衰係数は、第2振動モードとしての1次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー54に生じる、第1振動モードの振動数における減衰係数や、第2振動モードとしてのn次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー54に生じる、第1振動モードの振動数における減衰係数よりも大きくなる。
【0061】
また、第1振動モードとしてのn次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように設定された可変減衰ダンパー54の減衰係数は、第2振動モードとしての1次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー54に生じる、第1振動モードの振動数における減衰係数や、第2振動モードとしての2次振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー54に生じる、第1振動モードの振動数における減衰係数よりも大きくなる。
【0062】
フィルタ分析部56では、所定の次数を有する振動モードをn個設定し、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ及びハイパスフィルタを用いて、加速度センサー18により計測した応答振動加速度を、設定したn個の振動モードが各々主となる振動成分としての加速度成分に分ける。
【0063】
制御指令部58は、フィルタ分析部56によって分けた加速度成分同士を比較し、卓越する加速度成分が主とする振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように(流体系ダンパー部60の減衰係数Cが、値C1、値C2、・・・、値Cnになるように)、建物14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー54の全てを操作する。
【0064】
次に、本発明の第2の実施形態に係る制震システムによる建物の制震方法について説明する。
【0065】
建物の制震方法は、計測工程、分析工程、及び制御工程によって、地震等により建物14に発生する振動を低減する。図7に示すように、まず、計測工程では、加速度センサー18により、建物14に生じる応答振動値としての応答振動加速度を計測する。
【0066】
次に、分析工程では、所定の次数を有する振動モードをn個設定し、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ及びハイパスフィルタを用いて、加速度センサー18により計測した応答振動加速度を、設定したn個の振動モードが各々主となる振動成分としての加速度成分に分ける。
【0067】
次に、制御工程では、フィルタ分析部56によって分けた加速度成分同士を比較し、卓越する加速度成分が主とする振動モードの振動数fに対して減衰力が最大になる減衰係数Ceqとなるように(流体系ダンパー部60の減衰係数Cが、値C1、値C2、・・・、値Cnになるように)、建物14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー54の全てを操作する。後は、地震等により建物14に振動が発生している間、計測工程、分析工程、及び制御工程をこの順に時々刻々と繰り返す。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態に係る制震システム及び建物の制震方法の作用と効果について説明する。
【0069】
本発明の第2の実施形態に係る制震システム52及び建物の制震方法では、図7に示すように、可変減衰ダンパー54により、建物14の階層26へ減衰力を付与することによって、地震等により建物14に発生する振動を低減することができる。
【0070】
また、卓越する加速度成分が主とする振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように可変減衰ダンパー54を操作することにより、卓越する加速度成分が主とする振動モードの次数に影響を受けることなく、効果的な減衰力を建物14に付与することができる。
【0071】
例えば、2次振動モードよりも高次の振動モードを設定し、この高次の振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数Ceqとなるように可変減衰ダンパー54を操作できる制振システム52にすれば、2次振動モードよりも高次の振動モードが主となる加速度成分が卓越する振動に対して振動低減効果を発揮させることができる。
【0072】
また、第1振動モード(1次振動モード、2次振動モード又はn次振動モード)の振動数fに対して減衰力Fが最大になるように設定された可変減衰ダンパー54の減衰係数を、第2振動モード(第1振動モードが1次振動モードの場合は、2次振動モード又はn次振動モード、第1振動モードが2次振動モードの場合は、1次振動モード又はn次振動モード、第1振動モードがn次振動モードの場合は、1次振動モード又は2次振動モード)の振動数fに対して減衰力Fが最大になるように減衰係数が設定された可変減衰ダンパー54に生じる、第1振動モードの振動数fにおける減衰係数よりも大きくすることにより、より効果的な減衰力Fを建物14に付与することができる。
【0073】
以上、本発明の第2の実施形態に係る制震システム及び建物の制震方法について説明した。
【0074】
なお、本発明の第2の実施形態に係る制震システム52及び建物の制震方法では、卓越する加速度成分が主とする振動モードの振動数fに対して減衰力Fが最大になる減衰係数Ceqとなるように、建物14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー54の全てを操作する例を示したが、可変減衰ダンパー54の全てを操作しなくてもよい。例えば、設定した振動モードの節にあたる(設定した振動モードの振動による層間変形の小さい)階層26に設置した可変減衰ダンパー54は、設定した振動モードに対する減衰効果が小さいので、操作しなくてもよい。
【0075】
また、第2の実施形態では、流体系ダンパー部60の減衰係数Cを式(1)から求めた減衰係数Cに近い値C1、値C2、・・・、値Cnとしたときに得られる、可変減衰ダンパー54の減衰係数Ceqを「卓越する振動成分が主とする振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数」とした例を示したが、先に説明した「Cc1>Cd1、Cc1>Ce1、Cd2>Cc2、Cd2>Ce2、Cen>Ccn、Cen>Cdn」の関係が満たされれば、この減衰係数以外の値を「卓越する振動成分が主とする振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数」としてもよい。
【0076】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明した。
【0077】
なお、本発明の第1及び第2の実施形態では、可変減衰ダンパー16、54をセミアクティブ式の流体系可変減衰ダンパーとした例を示したが、可変減衰ダンパー16、54は、建物14の階層26へ減衰力を付与することができるとともに、減衰係数(階層26へ付与する減衰力)を変更可能なものであればよい。
【0078】
また、本発明の第1及び第2の実施形態では、建物14の各階層26に可変減衰ダンパー16、54を配置した例を示したが、可変減衰ダンパー16、54は、建物14を構成する各階層26に配置してもよいし、一部の階層26に配置してもよい。また、可変減衰ダンパー16、54が配置される階層26において、この階層26の有する全ての柱梁架構28に可変減衰ダンパー16、54を取り付けてもよいし、一部の柱梁架構28に取り付けてもよい。
【0079】
例えば、図1に示すように、建物14を構成する各階層26において、各階層26の有する一部の柱梁架構28に可変減衰ダンパー16、54を取り付けるようにしてもよいし、応答振動加速度が大きくなる建物14上層の階層26のみに可変減衰ダンパー16、54を配置するようにしてもよい。
【0080】
また、制震システム10、52によって機能させないダンパー(例えば、減衰係数の変更ができないセミアクティブダンパー)を建物14に併設して、このダンパーからは、従来の方法で建物14の階層26に減衰力を付与させるようにしてもよい。
【0081】
また、本発明の第1及び第2の実施形態で示した可変減衰ダンパー16、54は、所定値以上の荷重が加わった際に流体系ダンパー部34、60の減衰係数Cを瞬間的に小さくして過大な荷重が可変減衰ダンパー16、54に加わることを防ぐリリーフ機構を備えることが好ましい。
【0082】
また、本発明の第1及び第2の実施形態では、建物14の20階の床版の上に加速度センサー18を設置した例を示したが、加速度センサー18は、設定する振動モードの振動(加速度成分)が計測できる位置に設置すればよい。建物14の頂部(屋上階の床版の上)に設置することがより好ましいが、設置が困難な場合には、できるだけ建物14の頂部に近い階の床版の上に設置するのが好ましい。
【0083】
また、加速度センサー18は、建物14の複数階に設置してもよい。この場合には、複数の加速度センサー18により計測した各々の応答振動加速度を、設定した振動モードが主となる加速度成分に分けた後に、これらの加速度成分同士を同じ座標上で比較できるように、これらの加速度成分を事前実験の結果等に基づいて補正した後に、制御工程を行う。
【0084】
また、本発明の第1の実施形態では、ローパスフィルタとハイパスフィルタとを用いて、応答振動加速度を第1加速度成分と第2加速度成分とに分ける例を示し、本発明の第2の実施形態では、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ及びハイパスフィルタを用いて、応答振動加速度を、設定したn個の振動モードが各々主となる加速度成分に分ける例を示したが、加速度センサー18により計測された応答振動加速度を、対象となる振動モードが主となる加速度成分に分けることができれば、どのような方法で分けてもよい。例えば、オブザーバやカルマンフィルタなどによる状態推定を利用して、応答振動加速度を加速度成分に分けてもよい。また、余分な長周期成分や、電源ノイズなどの高振動成分を除去するため、ローパスフィルタとハイパスフィルタとをそれぞれバンドパスフィルタにしてもよい。
【0085】
また、本発明の第1の実施形態では、第1加速度成分と第2加速度成分との絶対値の最大値が大きい方の加速度成分を、卓越する加速度成分とする例を示したが、本発明の第1及び第2の実施形態において、どの加速度成分を卓越する加速度成分とするかは、他の方法を用いてもよい。例えば、過去数秒間の加速度成分の絶対値の平均値が大きい方の加速度成分を、卓越する加速度成分としてもよいし、所定値を超える加速度成分が多い方の加速度成分を、卓越する加速度成分としてもよい。また、加速度成分毎に異なる重みを加えて比較してもよい。
【0086】
また、本発明の第1及び第2の実施形態では、応答振動値を応答振動加速度とし、振動成分を加速度成分として、振動モード分析(分析工程及び制御工程)を行う例を示したが、応答振動値を応答振動速度や応答振動変位とし、振動成分を速度成分や変位成分として、振動モード分析(分析工程及び制御工程)を行ってもよい。
【0087】
また、本発明の第1及び第2の実施形態では、制振建物(建物14)に制振システム10、52を適用した例を示したが、免震層を有する免震建物に制振システム10、52を適用(免震建物の階層に可変減衰ダンパー16、54を配置)してもよい。
【0088】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1及び第2の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0089】
(実施例)
【0090】
本実施例では、シミュレーションによって検証した、本発明の第1の実施形態の制震システム10の効果について説明する。シミュレーションは、図1に示した建物14を建物モデル(以下、「建物モデル14」とする)にして行なった。また、建物モデル14を、表1に示す諸元を有する20階建ての建物を想定した等価せん断モデルとし、建物モデル14の有する減衰を、建物モデル14の1次振動モードと2次振動モードとの減衰定数を1.5%とするレーリー型減衰とした。また、建物モデル14の各階層26に配置されている可変減衰ダンパー16のモデルを、図3で示したMaxwellモデル42とした。表1の建物階の欄に示されているRは、屋上階を意味する。
【0091】
【表1】
シミュレーションは、ケース1〜3に対して行った。ケース1は、可変減衰ダンパー16の流体系ダンパー部34の減衰係数Cを、建物モデル14の1次振動数f1に対して可変減衰ダンパー16の減衰係数Ceqが最大となる値CHに固定した場合である。
【0092】
ケース2は、可変減衰ダンパー16の流体系ダンパー部34の減衰係数Cを、建物モデル14の2次振動数f2に対して可変減衰ダンパー16の減衰係数Ceqが最大となる値CLに固定した場合である。
【0093】
ケース3は、第1加速度成分が卓越するときに流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CHにし、第2加速度成分が卓越するときに流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CLにした場合であり、本発明の第1の実施形態の制震システム10に相当する。
【0094】
表2には、ケース1、2における、1次〜6次振動モードの振動数と減衰定数とが示されている。これらの値は、表1で示したように、値CHを640(kNs/cm)とし、値CLを232(kNs/cm)として、複素固有値解析によって求めたものである。
【0095】
【表2】
表2からわかるように、ケース1では、1次振動モードの減衰定数が、他の振動モードの減衰定数よりも大きくなっており、ケース2では、2次振動モードの減衰定数が、他の振動モードの減衰定数よりも大きくなっている。
【0096】
図8のグラフには、シミュレーションに用いた地震動の加速度波形が示されている。図8のグラフの横軸は、時刻を示し、縦軸は、時刻に対する地動加速度を示している。図9のグラフには、シミュレーションに用いた地震動の応答加速度スペクトルが示されている。図9のグラフの横軸は、周期(=1/周波数)を示し、縦軸は、周期に対する応答加速度スペクトルを示している。図9に示すように、地震動においては、1次周期T1(1次振動数f1)よりも2次周期T2(2次振動数f2)の方が、応答加速度スペクトルが卓越していることがわかる。
【0097】
加速度センサー18は、20階の床版の上に設置されており、この20階の床版に生じる応答振動加速度を計測する。フィルタ分析部22は、0.2Hzから、建物モデル14の1次振動数である約0.54Hzよりも大きい0.9Hzまでを対象としたバンドバスフィルタと、0.9Hzから30Hzまでを対象としたバンドパスフィルタとによって構成されている。
【0098】
制御指令部24では、フィルタ分析部22によって分けられた第1加速度成分と第2加速度成分とのそれぞれにおいて、現時刻から2秒前までの加速度データの絶対値の最大値を求め、第1加速度成分の絶対値の最大値が第2加速度成分の絶対値の最大値以上の場合に、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CH(=640(kNs/cm))にし、第1加速度成分の絶対値の最大値が第2加速度成分の絶対値の最大値未満の場合に、流体系ダンパー部34の減衰係数Cを値CL(=232(kNs/cm))にするように可変減衰バンパー16を操作する。
【0099】
図10〜13には、シミュレーションの結果が示されている。図10のグラフにおいて、縦軸は、建物階を示し、横軸は、建物階に対する応答振動加速度を示し、値62A、値64A、値66Aは、それぞれケース1、ケース2、ケース3の値を示している。また、図11のグラフにおいて、縦軸は、建物モデル14の建物階を示し、横軸は、建物モデル14の建物階に対する階層26の応答層間変形角を示し、値62B、値64B、値66Bは、それぞれケース1、ケース2、ケース3の値を示している。図10、11のグラフの縦軸に示されているRは、屋上階を意味する。
【0100】
図10、11に示すように、応答振動加速度については、本発明の第1の実施形態の制震システム10に相当するケース3が、ケース1よりも小さくなっており、ケース2と同程度の加速度となっている。また、層間変形角については、ケース3がケース1よりも小さくなっている。これにより、本発明の第1の実施形態の制震システム10によって効果的な減衰力が建物モデル14に付与されていることがわかる。
【0101】
図12のグラフには、ケース1の場合の時刻(横軸)に対する、建物モデル14の20階の床版に生じる応答振動加速度(縦軸)が示され、図13のグラフには、ケース3の場合の時刻(横軸)に対する、建物モデル14の20階の床版に生じる応答振動加速度(縦軸)が示されている。
【0102】
図12、13より、ケース1において20秒前後に生じた2次モード以上の振動による200cm/s2以上の応答振動加速度が、ケース3においては無くなっていることがわかる。これにより、ケース3では、2次振動モードの振動を低減していることがわかる。
【0103】
図14は、シミュレーション時に行われた制御工程の様子を示したものである。図14の横軸は、時刻を示し、縦軸は、時刻に対する流体系ダンパー部34の減衰係数Cの値を示している。図14からわかるように、減衰係数Cの少ない回数の切り替えによって、効果的な減衰力が建物モデル14に付与されている。
【符号の説明】
【0104】
10、52 制震システム
14 建物
16、54 可変減衰ダンパー
18 加速度センサー(計測手段)
22、56 フィルタ分析部(分析手段)
24、58 制御指令部(制御手段)
26 階層
F 減衰力
f 振動数
f1 1次振動数(振動数)
f2 2次振動数(振動数)
Ceq 減衰係数
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の階層に配置され相対変位する前記階層へ減衰力を付与するとともに減衰係数を変更することで該減衰力を調整可能な可変減衰ダンパーと、
前記建物に生じる応答振動値を計測する計測手段と、
所定の次数を有する振動モードを複数設定し、前記計測手段により計測した応答振動値を、前記複数設定した振動モードが各々主となる振動成分に分ける分析手段と、
前記分析手段により分けた前記振動成分同士を比較し、卓越する前記振動成分が主とする前記振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作する制御手段と、
を有する制震システム。
【請求項2】
前記複数設定された振動モードの内の1つである第1振動モードの振動数に対して減衰力が最大になるように設定された前記可変減衰ダンパーの減衰係数は、前記複数設定された振動モードの内の前記第1振動モード以外の第2振動モードの振動数に対して減衰力が最大になるように減衰係数が設定された前記可変減衰ダンパーに生じる、前記第1振動モードの振動数における減衰係数よりも大きい請求項1に記載の制震システム。
【請求項3】
前記分析手段は、1次振動モードと2次振動モードとを設定し、前記計測手段により計測した応答振動値を、1次振動モードが主となる第1振動成分と2次振動モードが主となる第2振動成分とに分け、
前記制御手段は、前記第1振動成分と前記第2振動成分とを比較し、前記第1振動成分が卓越する場合に、前記1次振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作し、前記第2振動成分が卓越する場合に、前記2次振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作する、
請求項1又は2に記載の制震システム。
【請求項4】
建物の階層に配置され相対変位する前記階層へ減衰力を付与するとともに減衰係数を変更することで該減衰力を調整可能な可変減衰ダンパーを用いた建物の制震方法において、
前記建物に生じる応答振動値を計測する計測工程と、
所定の次数を有する振動モードを複数設定し、前記計測工程により計測した応答振動値を、前記複数設定した振動モードが各々主となる振動成分に分ける分析工程と、
前記分析工程により分けた前記振動成分同士を比較し、卓越する前記振動成分が主とする前記振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作する制御工程と、
を有する建物の制震方法。
【請求項1】
建物の階層に配置され相対変位する前記階層へ減衰力を付与するとともに減衰係数を変更することで該減衰力を調整可能な可変減衰ダンパーと、
前記建物に生じる応答振動値を計測する計測手段と、
所定の次数を有する振動モードを複数設定し、前記計測手段により計測した応答振動値を、前記複数設定した振動モードが各々主となる振動成分に分ける分析手段と、
前記分析手段により分けた前記振動成分同士を比較し、卓越する前記振動成分が主とする前記振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作する制御手段と、
を有する制震システム。
【請求項2】
前記複数設定された振動モードの内の1つである第1振動モードの振動数に対して減衰力が最大になるように設定された前記可変減衰ダンパーの減衰係数は、前記複数設定された振動モードの内の前記第1振動モード以外の第2振動モードの振動数に対して減衰力が最大になるように減衰係数が設定された前記可変減衰ダンパーに生じる、前記第1振動モードの振動数における減衰係数よりも大きい請求項1に記載の制震システム。
【請求項3】
前記分析手段は、1次振動モードと2次振動モードとを設定し、前記計測手段により計測した応答振動値を、1次振動モードが主となる第1振動成分と2次振動モードが主となる第2振動成分とに分け、
前記制御手段は、前記第1振動成分と前記第2振動成分とを比較し、前記第1振動成分が卓越する場合に、前記1次振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作し、前記第2振動成分が卓越する場合に、前記2次振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作する、
請求項1又は2に記載の制震システム。
【請求項4】
建物の階層に配置され相対変位する前記階層へ減衰力を付与するとともに減衰係数を変更することで該減衰力を調整可能な可変減衰ダンパーを用いた建物の制震方法において、
前記建物に生じる応答振動値を計測する計測工程と、
所定の次数を有する振動モードを複数設定し、前記計測工程により計測した応答振動値を、前記複数設定した振動モードが各々主となる振動成分に分ける分析工程と、
前記分析工程により分けた前記振動成分同士を比較し、卓越する前記振動成分が主とする前記振動モードの振動数に対して減衰力が最大になる減衰係数となるように前記可変減衰ダンパーを操作する制御工程と、
を有する建物の制震方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−91970(P2013−91970A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234267(P2011−234267)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
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