制震ブレース取付方法
【課題】簡易に制震ブレースを柱梁架構に取り付けることができる制震ブレース取付方法を提供する。
【解決手段】建物の制震補強に使用される制震ブレースを、柱及び梁を有する柱梁架構に取り付ける制震ブレース取付方法において、前記制震ブレースを把持して昇降、回転及び移動を行うための取付装置を用意し、該取付装置を用いて、前記制震ブレースの管部を把持し、前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを持ち上げ、前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを回転させ、前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを前記柱梁架構へ移動させ、前記制震ブレースを前記柱梁架構の梁に取り付ける。
【解決手段】建物の制震補強に使用される制震ブレースを、柱及び梁を有する柱梁架構に取り付ける制震ブレース取付方法において、前記制震ブレースを把持して昇降、回転及び移動を行うための取付装置を用意し、該取付装置を用いて、前記制震ブレースの管部を把持し、前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを持ち上げ、前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを回転させ、前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを前記柱梁架構へ移動させ、前記制震ブレースを前記柱梁架構の梁に取り付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の制震補強に使用される制震ブレースを、柱及び梁を有する柱梁架構に取り付ける制震ブレース取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、長周期・長時間地震動対策として、既存建物の柱梁架構に2本の制震ブレース(筋交い)をV字状に取り付け、各制震ブレースの下端部に長期振動を吸収するオイルダンパーを設置する制震補強方法が実用化されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
制震ブレースは、例えば長さ2.5m、重さ400kgの長尺状の鋼材であり、制震ブレース取付方法としては、ウインチを用いた方法が一般的に採用されている。具体的には、複数の作業員が、梁にウインチを仮設し、仮設されたウインチで制震ブレースを吊り上げ、ワイヤで吊り下げられた制震ブレースの取り付け位置を巧みに調整しながら、柱梁架構に取り付けるという作業を行っている。
また、作業現場への制震ブレースの運搬方法としては、建物の地下に搬入された制震ブレースを、手押し運搬車を用いて運搬する方法が採用されている。既存建物の制震補強を行う場合、日常使用されている通路、出入口を通過し、エレベータにて作業階に運搬される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3972892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の制震ブレース取付方法においては、制震ブレースの取付作業に多大な手間を要していた。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、梁にウインチを仮設することなく、従来の取り付け方法に比べてより簡易に制震ブレースを柱梁架構に取り付けることができる制震ブレース取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る制震ブレース取付方法は、建物の制震補強に使用される制震ブレースを、柱及び梁を有する柱梁架構に取り付ける制震ブレース取付方法において、前記制震ブレースを把持して昇降、回転及び移動を行うための取付装置を用意し、該取付装置を用いて、前記制震ブレースの中間部を把持し、前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを持ち上げ、前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを回転させ、前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを前記柱梁架構へ移動させ、前記制震ブレースを前記柱梁架構の梁に取り付けることを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、取付装置にて制震ブレースを把持し、持ち上げ、回転させ、柱梁架構へ移動させて、取り付ける。従って、柱梁架構にウインチを仮設し、制震ブレースの吊り上げ、位置調整を行うといった作業は不要になる。
【0009】
本発明に係る制震ブレース取付方法は、車台の一端側に配されており、前記制震ブレースの端部を支持する固定支持部と、該車台の他端側に配されており、前記制震ブレースの中間部を支持する昇降可能な可動支持部とを有する運搬台車を用意し、建物に搬入された制震ブレースを、該運搬台車を用いて、前記制震ブレースの取り付けを行う取付作業場へ運搬し、前記運搬台車にて前記制震ブレースを取付作業場へ運搬した後、該運搬台車に支持された前記制震ブレースの中間部を、前記取付装置を用いて把持することを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、運搬台車の固定支持部に制震ブレースの端部を支持させると共に、制震ブレースの中間部を可動支持部に支持させる。可動支持部は昇降可能である。従って、制震ブレースの傾き姿勢を調整しながら、建物に搬送された制震ブレースを取付作業場へ運搬することが可能になる。
【0011】
本発明に係る制震ブレース取付方法は、前記運搬台車にて前記制震ブレースを取付作業場へ運搬した後、前記運搬台車の前記可動支持部を昇降させることによって、前記制震ブレースの姿勢を変更し、姿勢が変更された前記制震ブレースの中間部を、前記取付装置を用いて把持することを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、運搬台車の可動支持部を昇降させることによって、制震ブレースの傾き姿勢を変更し、制震ブレースの中間部を、取付装置を用いて把持する。従って、制震ブレースを把持する作業が容易になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明にあっては、梁にウインチを仮設することなく、従来の取り付け方法に比べてより簡易に制震ブレースを柱梁架構に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る制震ブレース取付方法を示す工程図である。
【図2】制震ブレース取付方法を概念的に示す説明図である。
【図3】制震ブレース取付方法を概念的に示す説明図である。
【図4】制震ブレース取付方法を概念的に示す説明図である。
【図5】取付装置を模式的に示した側面図である。
【図6】取付装置の要部を模式的に示した側面図である。
【図7】取付装置の要部を模式的に示した平面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線断面図である。
【図9】把持部及び把持部支持板の要部を示した模式図である。
【図10】把持部支持板に支持固定された把持基板の姿勢と、位置調整方向との関係を示す説明図である。
【図11】把持部の開閉動作を示す説明図である。
【図12】位置調整機構の動作を示す説明図である。
【図13】運搬台車を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の実施の形態に係る制震ブレース取付方法を示す工程図、図2乃至図4は、制震ブレース取付方法を概念的に示す説明図である。本実施の形態に係る制震ブレース取付方法は、建物5に搬入された長尺状の制震ブレースFを効率的に作業階へ運搬し、柱51a及び梁51bを有する柱梁架構51に取り付ける方法である。なお、制震ブレースFは、管部と、梁51bに取り付けられる大矩形板状のトッププレートと、ダンパーDに取り付けられる小矩形板状のベースプレートとから構成される。以下、制震ブレース取付方法を説明し、次に、制震ブレース取付方法に好適な取付装置3及び運搬台車4の構成について説明する。
【0016】
まず、制震ブレースFの取り付けを行う作業者は、運搬台車4を用意する(ステップS1)。運搬台車4は、車台41の一端側に配されており、前記制震ブレースFの端部を支持する固定支持部411と、車台41の他端側に配されており、前記制震ブレースFの中間部を支持する昇降可能な可動支持部48とを有する(図13参照)。運搬台車4の可動支持部48を昇降させることによって、制震ブレースFの傾きを変更することができる。詳細は後述する。
【0017】
次いで、作業者は、建物5の地下に搬入された制震ブレースFを運搬台車4に載置する(ステップS2)。より具体的には、制震ブレースFのトッププレートを固定支持部411に支持させ、制震ブレースFの管部(中間部)を可動支持部48に支持させる。トッププレートを下方にして載置する理由は、重いトッププレートを上方、軽いベースプレートを下方にして載置する場合に比べて、運搬台車4のバランスが良くなるためである。なお、場合によっては、ベースプレートを固定支持部411に支持させても良い。この場合、トッププレートが斜め上方に位置することになるため、トッププレートを下方から上方へ回転させる作業が不要になり、作業効率が向上する。
【0018】
次いで、作業者は、運搬台車4を用いて、制震ブレースFを制震ブレースFの取り付けを行う取付作業場へ運搬する(ステップS3)。制震ブレースFは、図2に示すように、地下通路、エレベータ52、既存の通路、出入口を通じて、運搬される。また、制震ブレースFを運搬する際、運搬台車4の可動支持部48を昇降させることによって、制震ブレースFを俯仰させることができ、建物内を円滑に移動することが可能になる。
【0019】
次いで、作業者は、制震ブレースFを柱梁架構51に取り付けるための取付機具1と、フォークリフト2とを備えた取付装置3を用意する(ステップS4)。取付装置3は、長尺状の制震ブレースFを柱梁架構に取り付けるための取付機具1と、フォークリフト2とを備える(図5参照)。取付機具1は、制震ブレースFを把持する把持部13と、柱梁架構51に対する把持部13の位置を前後方向、横方向、上下方向に移動させ、また首振り回動させることによって調整する位置調整機構12と、把持部13を位置調整機構12と共に回転させる回転機構11とを備えており、回転機構11はフォーク爪26に設置されている。詳細は後述する。
【0020】
次いで、作業者は、図3に示すように、運搬台車4を用いて、制震ブレースFの姿勢を変更する(ステップS5)。つまり、運搬台車4の可動支持部48を昇降させることによって、制震ブレースFの傾きを取付装置3の把持部13の把持方向に合わせる。また、作業者は、取付装置3の把持部13を回転させ、またフォーク爪26を昇降させることによって、位置合わせを行う。
【0021】
次いで、作業者は、取付装置3を用いて、図3及び後述する図11に示すように、制震ブレースFの管部を把持する(ステップS6)。そして、作業者は、取付装置3を用いて、フォーク爪26を上昇させ、制震ブレースFを持ち上げる(ステップS7)。次いで、作業者は、取付装置3を用いて、制震ブレースFを回転させ(ステップS8)、制震ブレースFを柱梁架構51へ移動させる(ステップS9)。
【0022】
次いで、作業車は、図3及び後述する図12に示すように、取付装置3を用いて、柱梁架構51に対する制震ブレースFの位置を微調整する(ステップS10)。
なお、位置調整を行う際、取付装置3を安定させるべく、アウトリガー6を取付装置3に保持させると良い。アウトリガー6は、棒状部材の下端部に刺股状部分及び接地板を形成してなる部材を、取付装置3の右側用、左側用として二つ備え、各部材を横方向の管部材によって連結して構成されている。
【0023】
そして、作業者は、制震ブレースFを柱梁架構51にボルトを用いて取り付ける(ステップS11)。1本の制震ブレースFを右斜めに設置し終えた作業者は、2本の制震ブレースFがV字状をなすように、2本目の制震ブレースFを同様の手順で左斜めに取り付ける。
【0024】
最後に、作業者は、制震ブレースFの下端部に長期振動を吸収するオイルダンパーDを設置し(ステップS12)、作業を終える。
【0025】
本実施の形態に係る制震ブレース取付方法にあっては、梁にウインチを仮設することなく、従来の取り付け方法に比べてより簡易に制震ブレースFを柱梁架構51に取り付けることができる。
【0026】
また、運搬台車4の可動支持部48を昇降させることによって、制震ブレースFを俯仰させることができ、建物内における制震ブレースFの運搬を円滑に行うことができる。
【0027】
更に、運搬台車4の可動支持部48を昇降させることによって、制震ブレースFの傾きを、取付装置の把持方向に合わせることができる。従って、一般的な台車を利用する場合に比べて、取付装置を用いた制震ブレースの把持工程をより速やかに行うことができ、結果として長周期・長時間地震動対策の制震補強の工期を短縮することができる。
【0028】
<取付装置>
次に、制震ブレース取付方法に好適な取付装置の構成について説明する。
図5は、本発明の実施の形態に係る取付装置3を模式的に示した側面図、図6は、取付装置3の要部を模式的に示した側面図、図7は、取付装置3の要部を模式的に示した平面図、図8は、図6のVIII−VIII線断面図である。本発明の実施の形態に係る取付装置3は、長尺状の制震ブレースFを柱梁架構に取り付けるための取付機具1と、フォークリフト2とを備える。以下、本実施の形態においては、フォークリフト2の進行方向を前方、フォークリフト2の後退方向を後方、前後方向に対して略垂直な水平方向を横方向という。
【0029】
フォークリフト2は、駆動機構を有するフォークリフト本体21、フォークリフト本体21から前方へ迫り出した略矩形の車体底部22、車体底部22の横方向両側にそれぞれ設けられた2個の前輪部23、フォークリフト本体21に設けられた後輪部24、車体底部22から上方へ立設されたマスト25、マスト25に沿って昇降するフォーク爪26、フォークリフト本体21に設けられた操作ハンドル27、及び車体底部22に載置されたバッテリ28を備える。
前輪部23は、前輪の車軸を支持する2枚の車軸支持板を備えている。前輪部23の該車軸支持板は、車体底部22の前方端部に設けられた横方向の上下回動軸23aによって上下回動可能に支持されている。また、車体底部22は、車体底部22の前方端部の横方向両側からそれぞれ上方に突出した突出部22aを備えており、突出部22aには前輪部23の上下回動位置を調整するための水平調整ねじ23bが先端部を前方に向けて螺合している。前輪部23は、水平調整ねじ23bの先端部が当接する当接部23cを車軸支持板の適宜箇所に備えている。
制震ブレースFの取り付けを行う作業者は、水平調整ねじ23bを回動させることによって、各前輪部23を上下回動させ、フォークリフト2の水平を調整することができる。既存建物で制震ブレースFの取り付け作業を行う際、図5に示すように養生を設けると、フォークリフト2及び取付機具1が傾くおそれがあるが、前輪部23を上下回動させることによって、取付機具1の水平を確保することが可能になる。水平を確保することによって、制震ブレースFの取付位置調整を正確に行うことが可能になる。
【0030】
取付機具1は、制震ブレースFを把持する把持部13と、柱梁架構に対する把持部13の位置を調整する位置調整機構12と、把持部13を位置調整機構12と共に回転させる回転機構11とを備えており、回転機構11はフォーク爪26に設置されている。以下、回転機構11、位置調整機構12、把持部13、その他の細部構造を順に説明し、次いで取付装置3の使用方法及び動作を説明する。
【0031】
<回転機構>
回転機構11は、ウォーム減速機111と、ウォーム減速機111の出力を巻き掛け伝動する巻き掛け伝動機構112とを備える。ウォーム減速機111は、フォーク爪26に設けられた支持台113によって支持されている。支持台113は、フォーク爪26の垂直部に締結された矩形状の背板と、該背板の上端から前方へ屈曲し、ウォーム減速機111が載置される載置板と、該載置板を補強する側板とで構成される。
【0032】
ウォーム減速機111は、ウォーム及び該ウォームに噛合するウォームホイール(不図示)を収容した略直方体の減速機収容体111aを備える。減速機収容体111aは、ウォーム及びウォームホイールの回転軸が夫々横方向及び前後方向を向き、かつウォームがウォームホイールの上方に位置する姿勢で支持台113の載置板上に固定されている。ウォームの入力軸111bは、減速機収容体111aから横方向両側に突出しており、各入力軸111bの先端部にはチェーンホイール111cが一体回転可能に設けられている。チェーンホイール111cには、該チェーンホイール111cを回転駆動させるエンドレスチェーン111dが巻き掛けられている。ウォームの出力軸111gは、減速機収容体111aから前方へ突出しており、巻き掛け伝動機構112に接続されている。
【0033】
減速機収容体111aの下部四隅には、略同形の縦長の板片が夫々立設されている。該板片の上端部には上下両側が開放したチェーン案内筒111eが設けられ、チェーン案内筒111eには、エンドレスチェーン111dが上下動自在に挿通している。チェーン案内筒111eは、エンドレスチェーン111dの上下移動を案内することによって、チェーンホイール111cからエンドレスチェーン111dが脱落することを防止するものである。
【0034】
また、チェーン案内筒111eには、側面視倒立U字状の巻き込み防止板111fが設けられている。巻き込み防止板111fは、前後に配された2つのチェーン案内筒111eから夫々上方へ延設され、エンドレスチェーン111dに倣うようにエンドレスホイールの外周縁を覆う板状部材であり、エンドレスホイールに作業者の衣服、指等が巻き込まれるといった事故を防止するためのものである。他の2つのチェーン案内筒111eにも同様の巻き込み防止板111fが設けられている。
【0035】
巻き掛け伝動機構112は、図11に示すように、出力軸111gの先端部に設けられた駆動小歯車112aと、回転軸方向を前後方向にして該駆動小歯車112aの下方に配された従動大歯車112cと、駆動小歯車112a及び従動大歯車112cに巻き掛けられたローラチェーン112bとを備える。従動大歯車112cは、位置調整機構12と一体回転可能に構成されている。詳細は後述する。
また、巻き掛け伝動機構112は、駆動小歯車112a、従動大歯車112c及びローラチェーン112bを覆う覆体112dを備える。覆体112dは、フォーク爪26の適宜箇所に設けられている。
【0036】
作業員がチェーンホイール111cから垂れ下がるエンドレスチェーン111dを引き下げると、チェーンホイール111cが回転し、回転力が入力軸111bに入力される。入力軸111bに入力した回転力は、ウォーム減速機111によって、出力軸111gへ減速伝達される。出力軸111gから出力された回転力は、更に、巻き掛け伝動機構112によって、従動大歯車112cへ減速伝達され、位置調整機構12が回転する。
また、作業員は、チェーンホイール111cの前方から垂れ下がったエンドレスチェーン111d、又は後方から垂れ下がったエンドレスチェーン111dのいずれかを選択的に引き下げることによって、従動大歯車112cの回転方向、即ち位置調整機構12の回転方向を選択することができる。
更に、横方向両側にエンドレスチェーン111d及びチェーンホイール111cが設けられているため、作業員は、作業環境に応じて取付装置3の右側、左側のいずれからも回転機構11を操作することができる。
更にまた、エンドレスチェーン111dにて駆動する構成であるため、取付装置31の上下位置に拘わらず、一定の操作性を確保することができる。
【0037】
<位置調整機構>
位置調整機構12は、従動大歯車112cの回転軸方向(本実施の形態においては前後方向)へ把持部13を進退させる進退駆動機構部121と、該回転軸方向に対して略垂直な第1方向(例えば、横方向)へ把持部13を移動させる第1位置調整機構部122と、前記回転軸方向及び第1方向に対して略垂直な第2方向(例えば、上下方向)へ把持部13を移動させる第2位置調整機構部123と、前記回転軸方向及び第1方向を含む面内(例えば、水平面内)において把持部13を首振り回動させる首振り機構部124とを備える。以下、前記回転軸方向及び第1方向を含む面を首振り回動面という。
なお、前記回転軸方向、第1方向、第2方向及び首振り回動面の相対関係は一定であるが、位置調整機構12は回転機構11によって回転する構成であるため、第1方向は水平面に対して変動する。例えば、位置調整機構12がある回転位置にあり、第1方向が水平横方向にある場合であっても、位置調整機構12が略90度回転すると、第1方向は鉛直方向になる。同様にして、第2方向及び首振り回動面も水平面に対して変動する。
【0038】
<位置調整機構の進退駆動機構部>
進退駆動機構部121は、従動大歯車112cの回転軸方向へ把持部13を移動させることによって、柱梁架構に対する把持部13の位置を調整するものである(図12(a)参照)。進退駆動機構部121は、その軸長方向と、前記回転軸方向とが略一致するように、従動大歯車112cと一体的に回転する角柱状の進退駆動機構部本体121aと、進退駆動機構部本体121aから前方へ突出しており、軸長方向へ進退する進退駆動部材121cとを備える。
【0039】
進退駆動機構部本体121aは、後端部から後方へ突出した軸部121bと、先端側の外周に同軸的に固定された回転円板部121dとを備える。軸部121bは、支持台113の背板に形成された凹部に嵌合し、回動可能に支持されている。フォーク爪26の先端側には、進退駆動機構部本体121aのラジアル加重を受け、回転円板部121dを回動可能に支持する支持ローラ111hが設けられている。
進退駆動機構部本体121aは、例えば、正逆回転可能なモータ(不図示)、該モータの回転運動を直線運動に変換するボールねじ機構等を収容している。また、進退駆動機構部本体121aは、進退駆動機構部121の動作を操作するための進退操作部121eを備えている。
【0040】
進退駆動部材121cは、進退駆動機構部本体121aより小寸法の角柱状をなし、進退駆動機構部本体121aに内嵌している。なお、進退駆動部材121cは、進退駆動機構部本体121aの前方端部の四辺縁部にそれぞれ設けられた複数のローラによって進退可能に支持されている。
【0041】
このように構成された進退操作部121eを作業員が操作すると、進退駆動部材121cは、前後方向へ進退する。従って、前後方向における把持部13の位置調整が可能になる。
【0042】
<位置調整機構の第1位置調整機構部>
第1位置調整機構部122は、把持部13を第1方向へ移動させることによって、柱梁架構に対する把持部13の位置を調整するものである(図12(b)参照)。第1位置調整機構部122は、進退駆動部材121cの先端部に設けられたフランジに締結された第1位置調整基板122aを備える。第1位置調整基板122aは、進退駆動機構部本体121aの軸長方向(本実施の形態においては前後方向)に対して略垂直な板材であり、該板材には、前方へ突出し、かつ第1方向に離隔対向した略同形の2枚の送りねじ支持板122bが設けられている。2枚の送りねじ支持板122bは、角部を切り欠いた略矩形状である。
【0043】
また、第1位置調整機構部122は、第1方向へ移動する第1方向移動部材122fと、該第1方向移動部材122fを送りねじ機構によって第1方向へ移動させる第1方向送りねじ122cと、第1方向移動部材122fを支持すると共に第1方向への直線移動を案内する第1方向案内軸122eとを備える。第1方向送りねじ122cは、2枚の支持板を第1方向に貫通し、送りねじ支持板122bによって第1方向への移動が規制され、かつ自由回転可能に支持されている。第1方向送りねじ122cの両端には、丸リム型の第1方向送りハンドル122dが夫々設けられている。また、第1方向案内軸122eは、第1方向送りねじ122cと同様、2枚の支持板によって支持されている。第1方向移動部材122fは、2枚の支持板間を往復移動できる厚み寸法を有する板状をなし、送りねじに螺合する雌ねじと、第1方向案内軸122eに移動可能に挿通する挿通孔とが形成されている。
【0044】
また、第1方向移動部材122fは、第2方向一端側(図5中、上端側)に雌ねじを備える。更に、第1方向移動部材122fは、第2位置調整機構123と連結するための構成として、前方端部から第1方向両側へ夫々突出し、第2方向へ適宜長に亘って形成された線条体(不図示)を有する。
【0045】
このように構成された第1位置調整機構部122の第1方向送りハンドル122dを作業員が回転させると、ねじ送り機構によって、第1方向移動部材122fは第1方向へ直線移動する。従って、第1方向における把持部13の位置調整が可能になる。
【0046】
<位置調整機構の第2位置調整機構部>
第2位置調整機構部123は、把持部13を第2方向へ移動させることによって、柱梁架構に対する把持部13の位置を調整するものである(図12(c)参照)。第2位置調整機構部123は、第2方向へ直線移動する板状の第2方向移動部材123aを備える。第2方向移動部材123aは、第1方向移動部材122fの線条体に係合する鉤状の案内リブ123bを備えており、線条体に沿って第2方向へ移動できるように構成されている。また、第2方向移動部材123aは、第2方向一端側から後方へ突出したF字状突出部を備える。該F字状突出部は、第2方向位置調整ねじ123cを、自由回転可能に支持し、かつ第2方向への移動を規制している。第2方向位置調整ねじ123cは、第1方向移動部材122fの雌ねじに螺合している。
【0047】
このように構成された第2位置調整機構部123の第2方向位置調整ねじ123cを作業員が回転させると、第2方向移動部材123aは、第1方向移動部材122fの線条体に沿って第2方向へ直線移動する。従って、第2方向における把持部13の位置調整が可能になる。
【0048】
<位置調整機構の首振り機構部>
首振り機構部124は、首振り回動面において把持部13を首振り回動させることによって、柱梁架構に対する把持部13の位置を調整するものである(図12(d)参照)。首振り機構部124は、第2方向移動部材123aの前方に設けられ、前方が開放した中空略直方体形状の首振り基部124aと、把持部13を支持する把持部支持板124dとを備える。首振り基部124aには、第2方向の首振り回動軸124bが設けられている。把持部支持板124dは、後方へ突出した2枚の第1軸支フランジ124cを備え、第1軸支フランジ124cは、首振り回動軸124bによって回動可能に支持されている。
【0049】
また、首振り機構部124は、把持部支持板124dを首振り回動させるためのねじ機構を有する。具体的には、首振り機構部124は、外周面に雄ねじを有し、一端部が首振り基部124a側に接続された棒状の首振りねじ124hと、該雄ねじに螺合した雌ねじ筒体を有し、把持部支持板124dに接続された丸リム型の首振りハンドル124gとを備える。より詳細な構成は以下の通りである。
首振りねじ124hの一端部には、該首振りねじ124hの軸長方向に対して略垂直な首振りねじ支持軸124jが設けられている。首振り基部124aの一側面には、第2軸支フランジ124iが形成されており、首振りねじ支持軸124jは、その軸長方向が第2方向に略一致するように第2軸支フランジ124iによって支持されている。
首振り機構部124は、首振りハンドル124gの雌ねじ筒体が自由回転可能に内嵌し、首振りねじ124hに沿って該雌ねじ筒体と一体的に移動する移動ブロック124fを備える。把持部支持板124dには、移動ブロック124fを挾持するための挾持片124eが形成されており、移動ブロック124fは、図示しない第2方向の回動軸によって、挾持片124eに支持されている。
【0050】
首振りハンドル124gが回転して雌ねじ筒体が回転した場合、雌ねじ筒体と共に移動ブロック124fは、首振りねじ124hに沿って移動する。移動ブロック124fが首振りねじ124hに沿って移動した場合、把持部支持板124dも移動ブロック124fに追動し、首振り回動軸124bを回動中心にして首振り回動する。
【0051】
なお、把持部支持板124dは、把持部13を異なる複数の姿勢で支持固定するための細部構成として、把持基板挾持部124k、図5〜図11に図示されていない第1及び第2ボルト孔124m、124m、把持基板固定ボルト124nを備えているが(図9及び図10参照)、その詳細は、後述の把持部13の構成と併せて説明する。
【0052】
<把持部>
図9は、把持部13及び把持部支持板124dの要部を示した模式図である。把持部13は、把持部支持板124dに支持固定された把持基板131と、制震ブレースFを把持する2組の把持爪132、133とを備える。把持基板131は、略長方形の板状であり、把持部支持板124dに対して積層的に対向している。把持基板131の四隅には、把持爪132、133を支持するための把持爪支持部131eを備える。把持爪支持部131eの短辺方向内側には、緩衝部材131gが設けられている。また、把持基板131は、把持爪132、133を開方向へ付勢する付勢部材132d、133dを引っ掛けるためのU字状の引掛部131fを備える。更に、把持基板131の各短辺には長手方向外側へ夫々突出した突出湾曲部が形成されている。更にまた、把持基板131は、該把持基板131の回転軸から離隔した第1ボルト挿通孔131cと、該第1ボルト孔124lから把持基板131の回転方向へ所定長離隔した第2ボルト挿通孔131dとを有する。第1及び第2ボルト挿通孔131c,131dは、異なる姿勢で把持部13を位置調整機構12の把持部支持板124dに支持固定するためのものである。
【0053】
また、把持部13は、把持爪132、133の先端部132f、133fが互に接離する方向へ回動するように、把持爪132、133の基端部を回動可能に支持する把持爪支持軸132a、133aを備える。把持爪支持軸132a、133aは、把持基板131の長辺方向を向くよう把持爪支持部131eによって支持されている。また、把持部13は、図6に示すように把持基板131の把持爪支持部131eに把持爪支持軸132a、133aを着脱可能に係止するための係止部材133bを備える。なお、作図の便宜上、符号133bを一部省略してあるが、各把持爪132、133には同様の係止部材133bが設けられている。
【0054】
更に、把持部13は、把持爪132、133を閉状態に連結するための連結桿132hを備える。連結桿132hの一端側には雄ねじが形成されており、該雄ねじには把持爪132、133を閉状態で締結するための把持爪締結ボルト132iが螺合している。連結桿132hの他端側は把持爪132の先端部132fに、連結桿支持軸132gによって回動可能に支持されている。なお、連結桿支持軸132gは、把持爪支持軸132a、133aと略同方向である。把持爪133の先端部133fは、把持爪132側から把持爪133側へ回動した連結桿132hの一端側が嵌り込む凹部を備える。凹部に連結桿132hを嵌め込んだ状態で把持爪締結ボルト132iを締結することによって、把持爪132、133を締結することができる。また、把持爪133の先端部133fには、凹部に嵌り込んだ連結桿132hの脱落を防止する脱落防止突起133gが設けられている。詳細には、脱落防止突起133gは、前記凹部の連結桿132h入側から、該凹部に嵌り込んだ連結桿132hの前記他端側へ突出した凸状部である。
脱落防止突起133gを設けることによって、把持爪締結ボルト132iによる締結が解除された状態であっても、連結桿132hによって把持爪132、133の連結状態を維持することができる。従って、把持爪締結ボルト132iを締め付ける際、把持爪132、133を閉状態に押さえ込みながら締結作業を行う必要がなくなる。また、把持爪締結ボルト132iの締結を解除した際、自重によって把持爪132、133が落下するように開き、作業員が負傷する事故を防止することができる。
【0055】
更にまた、把持爪132、133は、引掛金具132c、133cを備え、引掛金具132c、133cと、把持基板131の引掛部131fとの間には、把持爪132、133を開方向へ付勢する把持爪付勢部材132d、133dが設けられている。また、把持爪132、133の内側には、緩衝部材132e、133eが設けられている。
【0056】
図10は、把持部支持板124dに支持固定された把持基板131の姿勢と、位置調整方向との関係を示す説明図である。把持部支持板124dは、把持基板131の突出湾曲部を前記長手方向の外側から挟み込むように挾持する鉤状の把持基板挾持部124kを備えており、図10に示すように把持基板131を把持基板回転軸131bによって回動可能に支持している。
また、把持部支持板124dは、把持基板131が図10(a)に示すように、第2方向(図10中上下方向)に対して把持基板131の長手方向が一方向(図10中右方向)へ所定角度傾いた姿勢で、把持基板131を固定するための第1ボルト孔124lを有する。図10(a)に示すように、把持基板固定ボルト124nを第1ボルト挿通孔131cに挿通させ第1ボルト孔124lに螺合させることによって、把持基板131を前記一方向へ傾けた状態で把持部支持板124dに支持固定させることができる。
同様にして、把持部支持板124dは、把持基板131が図10(b)に示すように、第2方向(図10中上下方向)に対して把持基板131の長手方向が他方向(図10中左方向)へ所定角度傾いた姿勢で、把持基板131を固定するための第2ボルト孔124mを有する。図10(b)に示すように、把持基板固定ボルト124nを第2ボルト挿通孔131dに挿通させ第2ボルト孔124mに螺合させることによって、把持基板131を前記他方向へ傾けた状態で把持部支持板124dに支持固定させることができる。
【0057】
このように構成された把持部支持板124d及び把持基板131にあっては、制震ブレースFの取り付け姿勢の変更に柔軟に対応することができる。また、図10(a)、(b)に示すように、把持部支持板124dに対する把持基板131の姿勢を適宜変更することによって、制震ブレースFを右斜めに取り付ける場合、左斜めに取り付ける場合のいずれの場合であっても、位置調整機構12による位置調整方向を変更することなく制震ブレースFの取り付けを行うことが可能になる。つまり、2本の制震ブレースFを略V字状に取り付ける場合、一の制震ブレースFを右斜めに把持して取り付け、更に他の制震ブレースFを左斜めに把持して取り付ける必要があるが、いずれの場合においても、把持部13の位置を横方向及び上下方向の直線移動、水平面における首振り回動によって調整することが可能になる。
【0058】
なお、回転機構11によって、把持部13を回転させた場合、上述のように位置調整方向が変動するため、位置調整作業に混乱が生じ、効率的に制震ブレースFを取り付けることが困難になる。また、位置調整機構12の後段に、回転機構11を設けることも考えられるが、大きな減速比を有する大型の回転機構11を位置調整機構12の後段に設けた場合、不具合が生ずる。例えば、フォークリフト2に取付機具1のより広い載置スペースを確保し、また不要なカウンターウェイトを備える必要が生じるため、全体として取付装置3が大型化することになる。既存の建物において制震ブレースFを取り付ける場合、作業スペースは限られており、取付装置3の大型化は深刻な問題となる。
【0059】
<その他の細部構造>
取付装置3は、取付装置3の安定させるアウトリガー6(図11参照)を保持するための2個のアウトリガー保持筒14aを各フォーク爪26に備える。また、各アウトリガー保持筒14aを連結する連結管14b、連結管14bの適宜箇所に設けられた工具保持筒14cを備える。工具保持筒14cは、把持爪締結ボルト132i、第2方向位置調整ねじ123c、把持基板固定ボルト124n等を締結するための工具を保持するためのものである。
【0060】
図11は、把持部13の開閉動作を示す説明図、図12は、位置調整機構12の動作を示す説明図である。図11(a)に示すように、把持爪締結ボルト132iを緩め、連結桿132hを把持爪133から脱離させることによって、把持爪132、133を開くことができる。また、図11(b)に示すように、制震ブレースFを把持爪132、133によって挟み込み、連結桿132hを把持爪133に嵌め、把持爪締結ボルト132iで締結することによって、制震ブレースFを把持させることができる。
【0061】
図12に示すように、進退操作部121e、第1方向送りハンドル122d、第2方向位置調整ねじ123c、首振りハンドル124gを操作して、制震ブレースFを前後、横方向、上下方向に移動させ、首振り回動させることにより、柱梁架構Aに対する制震ブレースFの位置を微調整することができる。図12(a)は前後位置調整動作、図12(b)は横位置調整動作、図12(c)は上下位置調整動作、図12(d)は首振り回動の動作を示している。
【0062】
<運搬台車>
次に、制震ブレース取付方法に好適な運搬台車4の構成について説明する。図13は、運搬台車4を模式的に示した斜視図である。運搬台車4は、略矩板状の車台41を備える。なお、車台41の形状は特に限定されず、楕円状等の長手方向を有する形状であれば良い。車台41の底面の4隅には、走行車輪42a,42b,44a,44bが配してあり、該底面の略中央には、走行車輪43a,43bが配してある。ここで、走行車輪42a,42bが配してある車台41の短辺側を正面方向とする。
【0063】
走行車輪42a,42b及び走行車輪43a,43b間の車台41の底面には、車台41の短辺方向に張り出す縮退自在な運搬台車用アウトリガー45を備える。また、走行車輪43a,43b及び走行車輪44a,44b間の車台41の底面には、車台41の短辺方向に張り出す縮退自在な運搬台車用アウトリガー46を備える。運搬台車用アウトリガー45,46夫々は、張出方向先端の底面に補助車輪45a,45b及び補助車輪46a、46bを備える。補助車輪45a,45b,46a,46bの下端は、走行車輪42a,42b,43a,43b,44a,44bの接地面よりも上方に位置しており、走行面に対して所定の間隙を有するようにしてある。
【0064】
車台41の長手方向の一短辺側には、制震ブレースFの端部を支持するための固定支持部411が設けられている。固定支持部411は、例えば、溝部が上方を向くように、車台41の短辺方向に沿って取り付けた溝形鋼である。
なお、固定支持部411は、例えば車台41の一短辺側にゴム等の摩擦係数の大きな滑止め部材を貼設して制震ブレースFの端部を固定し、支持するように構成しても良い。また、固定支持部411は、車台41の一短辺に沿って段部を設けて制震ブレースFの端部の車台41の長手方向の移動を制限し、支持するように構成しても良い。また、固定支持部411は、車台41の一短辺側を上方に向けて反るように形成して制震ブレースFの端部の車台41の長手方向の移動を制限し、支持するように構成しても良い。
【0065】
車台41の他短辺側には、支柱47a,47bが立設してある。支柱47a,47bは、溝の開口が対向するように配された溝形鋼である。また、車台41の長手方向の略中央には、支柱47a,47b夫々の立設方向が変化しないよう補強する補助柱471a、471bを備える。支柱47a,47b間には、支柱47a,47bを略平行に維持すべく補強する横桁472が架設してある。
【0066】
支柱47a,47bは、可動支持部48を昇降可能に挟持している。可動支持部48は、矩形枠板状をなし、各側面に支柱47a,47bの溝部を上下方向に転動する転動体を備えている。また、可動支持部48は、回転軸が車台41の短辺方向を向いたローラ481を上面に備える。ローラ481は、軸長方向略中央が縮径しており、表面にゴム及び合成樹脂等の弾性体が貼設してある。ローラ481の軸長方向略中央を縮径させることによって、制震ブレースFの管部をローラ481の軸長方向略中央部に保持することが可能になる。また、ローラ481の表面に貼設された弾性体によって、制震ブレースFの管部との接触面に傷が発生することを防止することが可能になる。なお、円筒状のローラ481を例示したが、これに限るものではなく1つ又は車台41の長手方向に並設されたボールローラからなるものでも良い。車台41の上面、支柱47a,47b間の略中央には、シリンダ固定部490が設けられている。
【0067】
シリンダ固定部490は、車台41の上面にボルト等で固定してある略矩形の下側板部と、該下側板部の両短辺夫々の中点を結ぶ線に沿って立設してある立設板部と、立設板部の立設方向の端部に前記下側板部に対して略平行に設けられた上側板部とからなり、断面H字状をなす。シリンダ固定部490の上側板部の上面の略中央には、油圧シリンダ49が立設してあり、油圧シリンダ49のピストンロッド491の端部が可動支持部48の下面の略中央に接続してある。ピストンロッド491の伸縮方向は、可動支持部48の昇降方向と略一致するようにしてある。
【0068】
また、車台41の上面には、手動で操作されるピストン式の油圧ポンプ50が載置してある。なお、手動の油圧ポンプに代えて、電動ポンプを用いても良い。油圧ポンプ50は、車台41の上面に取外し可能に固定しても良い。この場合、運搬時には、油圧ポンプ50が車台41の上面に固定される。油圧ポンプ50を操作する場合、作業者の姿勢に応じ適宜載置位置を変更すべく車台41の上面から取り外すと良い。油圧ポンプ50は、円筒状であり、車台41の上面に載置すべく両端近傍に脚部を備える。油圧ポンプ50は、操作ハンドル501の操作によって、作動油を加圧し、油圧ホース503を介して油圧シリンダ49に吐出するようにしてある。ピストンロッド491は、油圧シリンダ49に加圧した作動油が流入した場合、伸長し、可動支持部48を押し上げるようにしてある。
【0069】
また、油圧ポンプ50は、油圧開放弁502を備えており、油圧開放弁502を開放した場合、加圧された作動油の油圧が減少し、油圧ホース503を介して油圧シリンダ49から作動油が油圧ポンプ50に戻るようにしてある。また、ピストンロッド491は、油圧シリンダ49から加圧された作動油が流出した場合、縮退し、可動支持部48を引き込んで下降させるようにしてある。
【0070】
このように構成された運搬台車4にあっては、固定支持部411にトッププレートを支持させた場合、トッププレートの端部が固定支持部411の溝に嵌合して係止される。これにより、制震ブレースFの滑り落ちが防止される。また、制震ブレースFの管部は、支柱47a、47b間の可動支持部48のローラ481により支持される。
【0071】
運搬台車44に載置された制震ブレースFの傾斜角度の変更手順を説明する。制震ブレースFの傾斜角度を増大させたい場合、油圧ポンプ50の操作ハンドル501を操作する。操作ハンドル501の操作によって、作動油が加圧され、加圧された作動油は、油圧ホース503を介して油圧シリンダ49に送り込まれ、ピストンロッド491が伸長する。伸長したピストンロッド491は、可動支持部48を押し上げ、その結果、制震ブレースFの傾斜角度が増大する。制震ブレースFの傾斜角度を増大させることによって、狭い通路、曲がり角、出入口の通過が容易になる。なお、運搬台車44の車台41の短辺方向の幅は、運搬台車用アウトリガー45,46を格納させることにより、減少させると良い。
【0072】
制震ブレースFの傾斜角度を減少させたい場合、油圧開放弁501を緩める。油圧開放弁501を緩められた場合、作動油の油圧が減少し、ピストンロッド491が縮退する。縮退したピストンロッド491は、可動支持部48を引き込み、その結果、制震ブレースFの傾斜角度が減少する。制震ブレースFの傾斜角度を減少させることによって、高さ制限がある通路、出入口等の通過が容易になる。
【0073】
なお、運搬台車44に、挟み防止板を備えても良い。挟み防止板は、矩形板状であり、ユーザが支柱47a,47bを把持して可動支持部48を昇降させる場合、転動体と、支柱47a,47bの溝との間に作業者の指先等が挟まれるといった事故を防止するためのものである。また、挟み防止板は、可動支持部48の正面に取り付けて可動支持部48の昇降と共に支柱47a,47bの正面を移動するようにしても良い。
【0074】
以上、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 取付機具
2 フォークリフト
3 取付装置
4 運搬台車
5 建物
51 柱梁架構
51a 柱
51b 梁
F 制震ブレース
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の制震補強に使用される制震ブレースを、柱及び梁を有する柱梁架構に取り付ける制震ブレース取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、長周期・長時間地震動対策として、既存建物の柱梁架構に2本の制震ブレース(筋交い)をV字状に取り付け、各制震ブレースの下端部に長期振動を吸収するオイルダンパーを設置する制震補強方法が実用化されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
制震ブレースは、例えば長さ2.5m、重さ400kgの長尺状の鋼材であり、制震ブレース取付方法としては、ウインチを用いた方法が一般的に採用されている。具体的には、複数の作業員が、梁にウインチを仮設し、仮設されたウインチで制震ブレースを吊り上げ、ワイヤで吊り下げられた制震ブレースの取り付け位置を巧みに調整しながら、柱梁架構に取り付けるという作業を行っている。
また、作業現場への制震ブレースの運搬方法としては、建物の地下に搬入された制震ブレースを、手押し運搬車を用いて運搬する方法が採用されている。既存建物の制震補強を行う場合、日常使用されている通路、出入口を通過し、エレベータにて作業階に運搬される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3972892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の制震ブレース取付方法においては、制震ブレースの取付作業に多大な手間を要していた。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、梁にウインチを仮設することなく、従来の取り付け方法に比べてより簡易に制震ブレースを柱梁架構に取り付けることができる制震ブレース取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る制震ブレース取付方法は、建物の制震補強に使用される制震ブレースを、柱及び梁を有する柱梁架構に取り付ける制震ブレース取付方法において、前記制震ブレースを把持して昇降、回転及び移動を行うための取付装置を用意し、該取付装置を用いて、前記制震ブレースの中間部を把持し、前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを持ち上げ、前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを回転させ、前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを前記柱梁架構へ移動させ、前記制震ブレースを前記柱梁架構の梁に取り付けることを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、取付装置にて制震ブレースを把持し、持ち上げ、回転させ、柱梁架構へ移動させて、取り付ける。従って、柱梁架構にウインチを仮設し、制震ブレースの吊り上げ、位置調整を行うといった作業は不要になる。
【0009】
本発明に係る制震ブレース取付方法は、車台の一端側に配されており、前記制震ブレースの端部を支持する固定支持部と、該車台の他端側に配されており、前記制震ブレースの中間部を支持する昇降可能な可動支持部とを有する運搬台車を用意し、建物に搬入された制震ブレースを、該運搬台車を用いて、前記制震ブレースの取り付けを行う取付作業場へ運搬し、前記運搬台車にて前記制震ブレースを取付作業場へ運搬した後、該運搬台車に支持された前記制震ブレースの中間部を、前記取付装置を用いて把持することを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、運搬台車の固定支持部に制震ブレースの端部を支持させると共に、制震ブレースの中間部を可動支持部に支持させる。可動支持部は昇降可能である。従って、制震ブレースの傾き姿勢を調整しながら、建物に搬送された制震ブレースを取付作業場へ運搬することが可能になる。
【0011】
本発明に係る制震ブレース取付方法は、前記運搬台車にて前記制震ブレースを取付作業場へ運搬した後、前記運搬台車の前記可動支持部を昇降させることによって、前記制震ブレースの姿勢を変更し、姿勢が変更された前記制震ブレースの中間部を、前記取付装置を用いて把持することを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、運搬台車の可動支持部を昇降させることによって、制震ブレースの傾き姿勢を変更し、制震ブレースの中間部を、取付装置を用いて把持する。従って、制震ブレースを把持する作業が容易になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明にあっては、梁にウインチを仮設することなく、従来の取り付け方法に比べてより簡易に制震ブレースを柱梁架構に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る制震ブレース取付方法を示す工程図である。
【図2】制震ブレース取付方法を概念的に示す説明図である。
【図3】制震ブレース取付方法を概念的に示す説明図である。
【図4】制震ブレース取付方法を概念的に示す説明図である。
【図5】取付装置を模式的に示した側面図である。
【図6】取付装置の要部を模式的に示した側面図である。
【図7】取付装置の要部を模式的に示した平面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線断面図である。
【図9】把持部及び把持部支持板の要部を示した模式図である。
【図10】把持部支持板に支持固定された把持基板の姿勢と、位置調整方向との関係を示す説明図である。
【図11】把持部の開閉動作を示す説明図である。
【図12】位置調整機構の動作を示す説明図である。
【図13】運搬台車を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の実施の形態に係る制震ブレース取付方法を示す工程図、図2乃至図4は、制震ブレース取付方法を概念的に示す説明図である。本実施の形態に係る制震ブレース取付方法は、建物5に搬入された長尺状の制震ブレースFを効率的に作業階へ運搬し、柱51a及び梁51bを有する柱梁架構51に取り付ける方法である。なお、制震ブレースFは、管部と、梁51bに取り付けられる大矩形板状のトッププレートと、ダンパーDに取り付けられる小矩形板状のベースプレートとから構成される。以下、制震ブレース取付方法を説明し、次に、制震ブレース取付方法に好適な取付装置3及び運搬台車4の構成について説明する。
【0016】
まず、制震ブレースFの取り付けを行う作業者は、運搬台車4を用意する(ステップS1)。運搬台車4は、車台41の一端側に配されており、前記制震ブレースFの端部を支持する固定支持部411と、車台41の他端側に配されており、前記制震ブレースFの中間部を支持する昇降可能な可動支持部48とを有する(図13参照)。運搬台車4の可動支持部48を昇降させることによって、制震ブレースFの傾きを変更することができる。詳細は後述する。
【0017】
次いで、作業者は、建物5の地下に搬入された制震ブレースFを運搬台車4に載置する(ステップS2)。より具体的には、制震ブレースFのトッププレートを固定支持部411に支持させ、制震ブレースFの管部(中間部)を可動支持部48に支持させる。トッププレートを下方にして載置する理由は、重いトッププレートを上方、軽いベースプレートを下方にして載置する場合に比べて、運搬台車4のバランスが良くなるためである。なお、場合によっては、ベースプレートを固定支持部411に支持させても良い。この場合、トッププレートが斜め上方に位置することになるため、トッププレートを下方から上方へ回転させる作業が不要になり、作業効率が向上する。
【0018】
次いで、作業者は、運搬台車4を用いて、制震ブレースFを制震ブレースFの取り付けを行う取付作業場へ運搬する(ステップS3)。制震ブレースFは、図2に示すように、地下通路、エレベータ52、既存の通路、出入口を通じて、運搬される。また、制震ブレースFを運搬する際、運搬台車4の可動支持部48を昇降させることによって、制震ブレースFを俯仰させることができ、建物内を円滑に移動することが可能になる。
【0019】
次いで、作業者は、制震ブレースFを柱梁架構51に取り付けるための取付機具1と、フォークリフト2とを備えた取付装置3を用意する(ステップS4)。取付装置3は、長尺状の制震ブレースFを柱梁架構に取り付けるための取付機具1と、フォークリフト2とを備える(図5参照)。取付機具1は、制震ブレースFを把持する把持部13と、柱梁架構51に対する把持部13の位置を前後方向、横方向、上下方向に移動させ、また首振り回動させることによって調整する位置調整機構12と、把持部13を位置調整機構12と共に回転させる回転機構11とを備えており、回転機構11はフォーク爪26に設置されている。詳細は後述する。
【0020】
次いで、作業者は、図3に示すように、運搬台車4を用いて、制震ブレースFの姿勢を変更する(ステップS5)。つまり、運搬台車4の可動支持部48を昇降させることによって、制震ブレースFの傾きを取付装置3の把持部13の把持方向に合わせる。また、作業者は、取付装置3の把持部13を回転させ、またフォーク爪26を昇降させることによって、位置合わせを行う。
【0021】
次いで、作業者は、取付装置3を用いて、図3及び後述する図11に示すように、制震ブレースFの管部を把持する(ステップS6)。そして、作業者は、取付装置3を用いて、フォーク爪26を上昇させ、制震ブレースFを持ち上げる(ステップS7)。次いで、作業者は、取付装置3を用いて、制震ブレースFを回転させ(ステップS8)、制震ブレースFを柱梁架構51へ移動させる(ステップS9)。
【0022】
次いで、作業車は、図3及び後述する図12に示すように、取付装置3を用いて、柱梁架構51に対する制震ブレースFの位置を微調整する(ステップS10)。
なお、位置調整を行う際、取付装置3を安定させるべく、アウトリガー6を取付装置3に保持させると良い。アウトリガー6は、棒状部材の下端部に刺股状部分及び接地板を形成してなる部材を、取付装置3の右側用、左側用として二つ備え、各部材を横方向の管部材によって連結して構成されている。
【0023】
そして、作業者は、制震ブレースFを柱梁架構51にボルトを用いて取り付ける(ステップS11)。1本の制震ブレースFを右斜めに設置し終えた作業者は、2本の制震ブレースFがV字状をなすように、2本目の制震ブレースFを同様の手順で左斜めに取り付ける。
【0024】
最後に、作業者は、制震ブレースFの下端部に長期振動を吸収するオイルダンパーDを設置し(ステップS12)、作業を終える。
【0025】
本実施の形態に係る制震ブレース取付方法にあっては、梁にウインチを仮設することなく、従来の取り付け方法に比べてより簡易に制震ブレースFを柱梁架構51に取り付けることができる。
【0026】
また、運搬台車4の可動支持部48を昇降させることによって、制震ブレースFを俯仰させることができ、建物内における制震ブレースFの運搬を円滑に行うことができる。
【0027】
更に、運搬台車4の可動支持部48を昇降させることによって、制震ブレースFの傾きを、取付装置の把持方向に合わせることができる。従って、一般的な台車を利用する場合に比べて、取付装置を用いた制震ブレースの把持工程をより速やかに行うことができ、結果として長周期・長時間地震動対策の制震補強の工期を短縮することができる。
【0028】
<取付装置>
次に、制震ブレース取付方法に好適な取付装置の構成について説明する。
図5は、本発明の実施の形態に係る取付装置3を模式的に示した側面図、図6は、取付装置3の要部を模式的に示した側面図、図7は、取付装置3の要部を模式的に示した平面図、図8は、図6のVIII−VIII線断面図である。本発明の実施の形態に係る取付装置3は、長尺状の制震ブレースFを柱梁架構に取り付けるための取付機具1と、フォークリフト2とを備える。以下、本実施の形態においては、フォークリフト2の進行方向を前方、フォークリフト2の後退方向を後方、前後方向に対して略垂直な水平方向を横方向という。
【0029】
フォークリフト2は、駆動機構を有するフォークリフト本体21、フォークリフト本体21から前方へ迫り出した略矩形の車体底部22、車体底部22の横方向両側にそれぞれ設けられた2個の前輪部23、フォークリフト本体21に設けられた後輪部24、車体底部22から上方へ立設されたマスト25、マスト25に沿って昇降するフォーク爪26、フォークリフト本体21に設けられた操作ハンドル27、及び車体底部22に載置されたバッテリ28を備える。
前輪部23は、前輪の車軸を支持する2枚の車軸支持板を備えている。前輪部23の該車軸支持板は、車体底部22の前方端部に設けられた横方向の上下回動軸23aによって上下回動可能に支持されている。また、車体底部22は、車体底部22の前方端部の横方向両側からそれぞれ上方に突出した突出部22aを備えており、突出部22aには前輪部23の上下回動位置を調整するための水平調整ねじ23bが先端部を前方に向けて螺合している。前輪部23は、水平調整ねじ23bの先端部が当接する当接部23cを車軸支持板の適宜箇所に備えている。
制震ブレースFの取り付けを行う作業者は、水平調整ねじ23bを回動させることによって、各前輪部23を上下回動させ、フォークリフト2の水平を調整することができる。既存建物で制震ブレースFの取り付け作業を行う際、図5に示すように養生を設けると、フォークリフト2及び取付機具1が傾くおそれがあるが、前輪部23を上下回動させることによって、取付機具1の水平を確保することが可能になる。水平を確保することによって、制震ブレースFの取付位置調整を正確に行うことが可能になる。
【0030】
取付機具1は、制震ブレースFを把持する把持部13と、柱梁架構に対する把持部13の位置を調整する位置調整機構12と、把持部13を位置調整機構12と共に回転させる回転機構11とを備えており、回転機構11はフォーク爪26に設置されている。以下、回転機構11、位置調整機構12、把持部13、その他の細部構造を順に説明し、次いで取付装置3の使用方法及び動作を説明する。
【0031】
<回転機構>
回転機構11は、ウォーム減速機111と、ウォーム減速機111の出力を巻き掛け伝動する巻き掛け伝動機構112とを備える。ウォーム減速機111は、フォーク爪26に設けられた支持台113によって支持されている。支持台113は、フォーク爪26の垂直部に締結された矩形状の背板と、該背板の上端から前方へ屈曲し、ウォーム減速機111が載置される載置板と、該載置板を補強する側板とで構成される。
【0032】
ウォーム減速機111は、ウォーム及び該ウォームに噛合するウォームホイール(不図示)を収容した略直方体の減速機収容体111aを備える。減速機収容体111aは、ウォーム及びウォームホイールの回転軸が夫々横方向及び前後方向を向き、かつウォームがウォームホイールの上方に位置する姿勢で支持台113の載置板上に固定されている。ウォームの入力軸111bは、減速機収容体111aから横方向両側に突出しており、各入力軸111bの先端部にはチェーンホイール111cが一体回転可能に設けられている。チェーンホイール111cには、該チェーンホイール111cを回転駆動させるエンドレスチェーン111dが巻き掛けられている。ウォームの出力軸111gは、減速機収容体111aから前方へ突出しており、巻き掛け伝動機構112に接続されている。
【0033】
減速機収容体111aの下部四隅には、略同形の縦長の板片が夫々立設されている。該板片の上端部には上下両側が開放したチェーン案内筒111eが設けられ、チェーン案内筒111eには、エンドレスチェーン111dが上下動自在に挿通している。チェーン案内筒111eは、エンドレスチェーン111dの上下移動を案内することによって、チェーンホイール111cからエンドレスチェーン111dが脱落することを防止するものである。
【0034】
また、チェーン案内筒111eには、側面視倒立U字状の巻き込み防止板111fが設けられている。巻き込み防止板111fは、前後に配された2つのチェーン案内筒111eから夫々上方へ延設され、エンドレスチェーン111dに倣うようにエンドレスホイールの外周縁を覆う板状部材であり、エンドレスホイールに作業者の衣服、指等が巻き込まれるといった事故を防止するためのものである。他の2つのチェーン案内筒111eにも同様の巻き込み防止板111fが設けられている。
【0035】
巻き掛け伝動機構112は、図11に示すように、出力軸111gの先端部に設けられた駆動小歯車112aと、回転軸方向を前後方向にして該駆動小歯車112aの下方に配された従動大歯車112cと、駆動小歯車112a及び従動大歯車112cに巻き掛けられたローラチェーン112bとを備える。従動大歯車112cは、位置調整機構12と一体回転可能に構成されている。詳細は後述する。
また、巻き掛け伝動機構112は、駆動小歯車112a、従動大歯車112c及びローラチェーン112bを覆う覆体112dを備える。覆体112dは、フォーク爪26の適宜箇所に設けられている。
【0036】
作業員がチェーンホイール111cから垂れ下がるエンドレスチェーン111dを引き下げると、チェーンホイール111cが回転し、回転力が入力軸111bに入力される。入力軸111bに入力した回転力は、ウォーム減速機111によって、出力軸111gへ減速伝達される。出力軸111gから出力された回転力は、更に、巻き掛け伝動機構112によって、従動大歯車112cへ減速伝達され、位置調整機構12が回転する。
また、作業員は、チェーンホイール111cの前方から垂れ下がったエンドレスチェーン111d、又は後方から垂れ下がったエンドレスチェーン111dのいずれかを選択的に引き下げることによって、従動大歯車112cの回転方向、即ち位置調整機構12の回転方向を選択することができる。
更に、横方向両側にエンドレスチェーン111d及びチェーンホイール111cが設けられているため、作業員は、作業環境に応じて取付装置3の右側、左側のいずれからも回転機構11を操作することができる。
更にまた、エンドレスチェーン111dにて駆動する構成であるため、取付装置31の上下位置に拘わらず、一定の操作性を確保することができる。
【0037】
<位置調整機構>
位置調整機構12は、従動大歯車112cの回転軸方向(本実施の形態においては前後方向)へ把持部13を進退させる進退駆動機構部121と、該回転軸方向に対して略垂直な第1方向(例えば、横方向)へ把持部13を移動させる第1位置調整機構部122と、前記回転軸方向及び第1方向に対して略垂直な第2方向(例えば、上下方向)へ把持部13を移動させる第2位置調整機構部123と、前記回転軸方向及び第1方向を含む面内(例えば、水平面内)において把持部13を首振り回動させる首振り機構部124とを備える。以下、前記回転軸方向及び第1方向を含む面を首振り回動面という。
なお、前記回転軸方向、第1方向、第2方向及び首振り回動面の相対関係は一定であるが、位置調整機構12は回転機構11によって回転する構成であるため、第1方向は水平面に対して変動する。例えば、位置調整機構12がある回転位置にあり、第1方向が水平横方向にある場合であっても、位置調整機構12が略90度回転すると、第1方向は鉛直方向になる。同様にして、第2方向及び首振り回動面も水平面に対して変動する。
【0038】
<位置調整機構の進退駆動機構部>
進退駆動機構部121は、従動大歯車112cの回転軸方向へ把持部13を移動させることによって、柱梁架構に対する把持部13の位置を調整するものである(図12(a)参照)。進退駆動機構部121は、その軸長方向と、前記回転軸方向とが略一致するように、従動大歯車112cと一体的に回転する角柱状の進退駆動機構部本体121aと、進退駆動機構部本体121aから前方へ突出しており、軸長方向へ進退する進退駆動部材121cとを備える。
【0039】
進退駆動機構部本体121aは、後端部から後方へ突出した軸部121bと、先端側の外周に同軸的に固定された回転円板部121dとを備える。軸部121bは、支持台113の背板に形成された凹部に嵌合し、回動可能に支持されている。フォーク爪26の先端側には、進退駆動機構部本体121aのラジアル加重を受け、回転円板部121dを回動可能に支持する支持ローラ111hが設けられている。
進退駆動機構部本体121aは、例えば、正逆回転可能なモータ(不図示)、該モータの回転運動を直線運動に変換するボールねじ機構等を収容している。また、進退駆動機構部本体121aは、進退駆動機構部121の動作を操作するための進退操作部121eを備えている。
【0040】
進退駆動部材121cは、進退駆動機構部本体121aより小寸法の角柱状をなし、進退駆動機構部本体121aに内嵌している。なお、進退駆動部材121cは、進退駆動機構部本体121aの前方端部の四辺縁部にそれぞれ設けられた複数のローラによって進退可能に支持されている。
【0041】
このように構成された進退操作部121eを作業員が操作すると、進退駆動部材121cは、前後方向へ進退する。従って、前後方向における把持部13の位置調整が可能になる。
【0042】
<位置調整機構の第1位置調整機構部>
第1位置調整機構部122は、把持部13を第1方向へ移動させることによって、柱梁架構に対する把持部13の位置を調整するものである(図12(b)参照)。第1位置調整機構部122は、進退駆動部材121cの先端部に設けられたフランジに締結された第1位置調整基板122aを備える。第1位置調整基板122aは、進退駆動機構部本体121aの軸長方向(本実施の形態においては前後方向)に対して略垂直な板材であり、該板材には、前方へ突出し、かつ第1方向に離隔対向した略同形の2枚の送りねじ支持板122bが設けられている。2枚の送りねじ支持板122bは、角部を切り欠いた略矩形状である。
【0043】
また、第1位置調整機構部122は、第1方向へ移動する第1方向移動部材122fと、該第1方向移動部材122fを送りねじ機構によって第1方向へ移動させる第1方向送りねじ122cと、第1方向移動部材122fを支持すると共に第1方向への直線移動を案内する第1方向案内軸122eとを備える。第1方向送りねじ122cは、2枚の支持板を第1方向に貫通し、送りねじ支持板122bによって第1方向への移動が規制され、かつ自由回転可能に支持されている。第1方向送りねじ122cの両端には、丸リム型の第1方向送りハンドル122dが夫々設けられている。また、第1方向案内軸122eは、第1方向送りねじ122cと同様、2枚の支持板によって支持されている。第1方向移動部材122fは、2枚の支持板間を往復移動できる厚み寸法を有する板状をなし、送りねじに螺合する雌ねじと、第1方向案内軸122eに移動可能に挿通する挿通孔とが形成されている。
【0044】
また、第1方向移動部材122fは、第2方向一端側(図5中、上端側)に雌ねじを備える。更に、第1方向移動部材122fは、第2位置調整機構123と連結するための構成として、前方端部から第1方向両側へ夫々突出し、第2方向へ適宜長に亘って形成された線条体(不図示)を有する。
【0045】
このように構成された第1位置調整機構部122の第1方向送りハンドル122dを作業員が回転させると、ねじ送り機構によって、第1方向移動部材122fは第1方向へ直線移動する。従って、第1方向における把持部13の位置調整が可能になる。
【0046】
<位置調整機構の第2位置調整機構部>
第2位置調整機構部123は、把持部13を第2方向へ移動させることによって、柱梁架構に対する把持部13の位置を調整するものである(図12(c)参照)。第2位置調整機構部123は、第2方向へ直線移動する板状の第2方向移動部材123aを備える。第2方向移動部材123aは、第1方向移動部材122fの線条体に係合する鉤状の案内リブ123bを備えており、線条体に沿って第2方向へ移動できるように構成されている。また、第2方向移動部材123aは、第2方向一端側から後方へ突出したF字状突出部を備える。該F字状突出部は、第2方向位置調整ねじ123cを、自由回転可能に支持し、かつ第2方向への移動を規制している。第2方向位置調整ねじ123cは、第1方向移動部材122fの雌ねじに螺合している。
【0047】
このように構成された第2位置調整機構部123の第2方向位置調整ねじ123cを作業員が回転させると、第2方向移動部材123aは、第1方向移動部材122fの線条体に沿って第2方向へ直線移動する。従って、第2方向における把持部13の位置調整が可能になる。
【0048】
<位置調整機構の首振り機構部>
首振り機構部124は、首振り回動面において把持部13を首振り回動させることによって、柱梁架構に対する把持部13の位置を調整するものである(図12(d)参照)。首振り機構部124は、第2方向移動部材123aの前方に設けられ、前方が開放した中空略直方体形状の首振り基部124aと、把持部13を支持する把持部支持板124dとを備える。首振り基部124aには、第2方向の首振り回動軸124bが設けられている。把持部支持板124dは、後方へ突出した2枚の第1軸支フランジ124cを備え、第1軸支フランジ124cは、首振り回動軸124bによって回動可能に支持されている。
【0049】
また、首振り機構部124は、把持部支持板124dを首振り回動させるためのねじ機構を有する。具体的には、首振り機構部124は、外周面に雄ねじを有し、一端部が首振り基部124a側に接続された棒状の首振りねじ124hと、該雄ねじに螺合した雌ねじ筒体を有し、把持部支持板124dに接続された丸リム型の首振りハンドル124gとを備える。より詳細な構成は以下の通りである。
首振りねじ124hの一端部には、該首振りねじ124hの軸長方向に対して略垂直な首振りねじ支持軸124jが設けられている。首振り基部124aの一側面には、第2軸支フランジ124iが形成されており、首振りねじ支持軸124jは、その軸長方向が第2方向に略一致するように第2軸支フランジ124iによって支持されている。
首振り機構部124は、首振りハンドル124gの雌ねじ筒体が自由回転可能に内嵌し、首振りねじ124hに沿って該雌ねじ筒体と一体的に移動する移動ブロック124fを備える。把持部支持板124dには、移動ブロック124fを挾持するための挾持片124eが形成されており、移動ブロック124fは、図示しない第2方向の回動軸によって、挾持片124eに支持されている。
【0050】
首振りハンドル124gが回転して雌ねじ筒体が回転した場合、雌ねじ筒体と共に移動ブロック124fは、首振りねじ124hに沿って移動する。移動ブロック124fが首振りねじ124hに沿って移動した場合、把持部支持板124dも移動ブロック124fに追動し、首振り回動軸124bを回動中心にして首振り回動する。
【0051】
なお、把持部支持板124dは、把持部13を異なる複数の姿勢で支持固定するための細部構成として、把持基板挾持部124k、図5〜図11に図示されていない第1及び第2ボルト孔124m、124m、把持基板固定ボルト124nを備えているが(図9及び図10参照)、その詳細は、後述の把持部13の構成と併せて説明する。
【0052】
<把持部>
図9は、把持部13及び把持部支持板124dの要部を示した模式図である。把持部13は、把持部支持板124dに支持固定された把持基板131と、制震ブレースFを把持する2組の把持爪132、133とを備える。把持基板131は、略長方形の板状であり、把持部支持板124dに対して積層的に対向している。把持基板131の四隅には、把持爪132、133を支持するための把持爪支持部131eを備える。把持爪支持部131eの短辺方向内側には、緩衝部材131gが設けられている。また、把持基板131は、把持爪132、133を開方向へ付勢する付勢部材132d、133dを引っ掛けるためのU字状の引掛部131fを備える。更に、把持基板131の各短辺には長手方向外側へ夫々突出した突出湾曲部が形成されている。更にまた、把持基板131は、該把持基板131の回転軸から離隔した第1ボルト挿通孔131cと、該第1ボルト孔124lから把持基板131の回転方向へ所定長離隔した第2ボルト挿通孔131dとを有する。第1及び第2ボルト挿通孔131c,131dは、異なる姿勢で把持部13を位置調整機構12の把持部支持板124dに支持固定するためのものである。
【0053】
また、把持部13は、把持爪132、133の先端部132f、133fが互に接離する方向へ回動するように、把持爪132、133の基端部を回動可能に支持する把持爪支持軸132a、133aを備える。把持爪支持軸132a、133aは、把持基板131の長辺方向を向くよう把持爪支持部131eによって支持されている。また、把持部13は、図6に示すように把持基板131の把持爪支持部131eに把持爪支持軸132a、133aを着脱可能に係止するための係止部材133bを備える。なお、作図の便宜上、符号133bを一部省略してあるが、各把持爪132、133には同様の係止部材133bが設けられている。
【0054】
更に、把持部13は、把持爪132、133を閉状態に連結するための連結桿132hを備える。連結桿132hの一端側には雄ねじが形成されており、該雄ねじには把持爪132、133を閉状態で締結するための把持爪締結ボルト132iが螺合している。連結桿132hの他端側は把持爪132の先端部132fに、連結桿支持軸132gによって回動可能に支持されている。なお、連結桿支持軸132gは、把持爪支持軸132a、133aと略同方向である。把持爪133の先端部133fは、把持爪132側から把持爪133側へ回動した連結桿132hの一端側が嵌り込む凹部を備える。凹部に連結桿132hを嵌め込んだ状態で把持爪締結ボルト132iを締結することによって、把持爪132、133を締結することができる。また、把持爪133の先端部133fには、凹部に嵌り込んだ連結桿132hの脱落を防止する脱落防止突起133gが設けられている。詳細には、脱落防止突起133gは、前記凹部の連結桿132h入側から、該凹部に嵌り込んだ連結桿132hの前記他端側へ突出した凸状部である。
脱落防止突起133gを設けることによって、把持爪締結ボルト132iによる締結が解除された状態であっても、連結桿132hによって把持爪132、133の連結状態を維持することができる。従って、把持爪締結ボルト132iを締め付ける際、把持爪132、133を閉状態に押さえ込みながら締結作業を行う必要がなくなる。また、把持爪締結ボルト132iの締結を解除した際、自重によって把持爪132、133が落下するように開き、作業員が負傷する事故を防止することができる。
【0055】
更にまた、把持爪132、133は、引掛金具132c、133cを備え、引掛金具132c、133cと、把持基板131の引掛部131fとの間には、把持爪132、133を開方向へ付勢する把持爪付勢部材132d、133dが設けられている。また、把持爪132、133の内側には、緩衝部材132e、133eが設けられている。
【0056】
図10は、把持部支持板124dに支持固定された把持基板131の姿勢と、位置調整方向との関係を示す説明図である。把持部支持板124dは、把持基板131の突出湾曲部を前記長手方向の外側から挟み込むように挾持する鉤状の把持基板挾持部124kを備えており、図10に示すように把持基板131を把持基板回転軸131bによって回動可能に支持している。
また、把持部支持板124dは、把持基板131が図10(a)に示すように、第2方向(図10中上下方向)に対して把持基板131の長手方向が一方向(図10中右方向)へ所定角度傾いた姿勢で、把持基板131を固定するための第1ボルト孔124lを有する。図10(a)に示すように、把持基板固定ボルト124nを第1ボルト挿通孔131cに挿通させ第1ボルト孔124lに螺合させることによって、把持基板131を前記一方向へ傾けた状態で把持部支持板124dに支持固定させることができる。
同様にして、把持部支持板124dは、把持基板131が図10(b)に示すように、第2方向(図10中上下方向)に対して把持基板131の長手方向が他方向(図10中左方向)へ所定角度傾いた姿勢で、把持基板131を固定するための第2ボルト孔124mを有する。図10(b)に示すように、把持基板固定ボルト124nを第2ボルト挿通孔131dに挿通させ第2ボルト孔124mに螺合させることによって、把持基板131を前記他方向へ傾けた状態で把持部支持板124dに支持固定させることができる。
【0057】
このように構成された把持部支持板124d及び把持基板131にあっては、制震ブレースFの取り付け姿勢の変更に柔軟に対応することができる。また、図10(a)、(b)に示すように、把持部支持板124dに対する把持基板131の姿勢を適宜変更することによって、制震ブレースFを右斜めに取り付ける場合、左斜めに取り付ける場合のいずれの場合であっても、位置調整機構12による位置調整方向を変更することなく制震ブレースFの取り付けを行うことが可能になる。つまり、2本の制震ブレースFを略V字状に取り付ける場合、一の制震ブレースFを右斜めに把持して取り付け、更に他の制震ブレースFを左斜めに把持して取り付ける必要があるが、いずれの場合においても、把持部13の位置を横方向及び上下方向の直線移動、水平面における首振り回動によって調整することが可能になる。
【0058】
なお、回転機構11によって、把持部13を回転させた場合、上述のように位置調整方向が変動するため、位置調整作業に混乱が生じ、効率的に制震ブレースFを取り付けることが困難になる。また、位置調整機構12の後段に、回転機構11を設けることも考えられるが、大きな減速比を有する大型の回転機構11を位置調整機構12の後段に設けた場合、不具合が生ずる。例えば、フォークリフト2に取付機具1のより広い載置スペースを確保し、また不要なカウンターウェイトを備える必要が生じるため、全体として取付装置3が大型化することになる。既存の建物において制震ブレースFを取り付ける場合、作業スペースは限られており、取付装置3の大型化は深刻な問題となる。
【0059】
<その他の細部構造>
取付装置3は、取付装置3の安定させるアウトリガー6(図11参照)を保持するための2個のアウトリガー保持筒14aを各フォーク爪26に備える。また、各アウトリガー保持筒14aを連結する連結管14b、連結管14bの適宜箇所に設けられた工具保持筒14cを備える。工具保持筒14cは、把持爪締結ボルト132i、第2方向位置調整ねじ123c、把持基板固定ボルト124n等を締結するための工具を保持するためのものである。
【0060】
図11は、把持部13の開閉動作を示す説明図、図12は、位置調整機構12の動作を示す説明図である。図11(a)に示すように、把持爪締結ボルト132iを緩め、連結桿132hを把持爪133から脱離させることによって、把持爪132、133を開くことができる。また、図11(b)に示すように、制震ブレースFを把持爪132、133によって挟み込み、連結桿132hを把持爪133に嵌め、把持爪締結ボルト132iで締結することによって、制震ブレースFを把持させることができる。
【0061】
図12に示すように、進退操作部121e、第1方向送りハンドル122d、第2方向位置調整ねじ123c、首振りハンドル124gを操作して、制震ブレースFを前後、横方向、上下方向に移動させ、首振り回動させることにより、柱梁架構Aに対する制震ブレースFの位置を微調整することができる。図12(a)は前後位置調整動作、図12(b)は横位置調整動作、図12(c)は上下位置調整動作、図12(d)は首振り回動の動作を示している。
【0062】
<運搬台車>
次に、制震ブレース取付方法に好適な運搬台車4の構成について説明する。図13は、運搬台車4を模式的に示した斜視図である。運搬台車4は、略矩板状の車台41を備える。なお、車台41の形状は特に限定されず、楕円状等の長手方向を有する形状であれば良い。車台41の底面の4隅には、走行車輪42a,42b,44a,44bが配してあり、該底面の略中央には、走行車輪43a,43bが配してある。ここで、走行車輪42a,42bが配してある車台41の短辺側を正面方向とする。
【0063】
走行車輪42a,42b及び走行車輪43a,43b間の車台41の底面には、車台41の短辺方向に張り出す縮退自在な運搬台車用アウトリガー45を備える。また、走行車輪43a,43b及び走行車輪44a,44b間の車台41の底面には、車台41の短辺方向に張り出す縮退自在な運搬台車用アウトリガー46を備える。運搬台車用アウトリガー45,46夫々は、張出方向先端の底面に補助車輪45a,45b及び補助車輪46a、46bを備える。補助車輪45a,45b,46a,46bの下端は、走行車輪42a,42b,43a,43b,44a,44bの接地面よりも上方に位置しており、走行面に対して所定の間隙を有するようにしてある。
【0064】
車台41の長手方向の一短辺側には、制震ブレースFの端部を支持するための固定支持部411が設けられている。固定支持部411は、例えば、溝部が上方を向くように、車台41の短辺方向に沿って取り付けた溝形鋼である。
なお、固定支持部411は、例えば車台41の一短辺側にゴム等の摩擦係数の大きな滑止め部材を貼設して制震ブレースFの端部を固定し、支持するように構成しても良い。また、固定支持部411は、車台41の一短辺に沿って段部を設けて制震ブレースFの端部の車台41の長手方向の移動を制限し、支持するように構成しても良い。また、固定支持部411は、車台41の一短辺側を上方に向けて反るように形成して制震ブレースFの端部の車台41の長手方向の移動を制限し、支持するように構成しても良い。
【0065】
車台41の他短辺側には、支柱47a,47bが立設してある。支柱47a,47bは、溝の開口が対向するように配された溝形鋼である。また、車台41の長手方向の略中央には、支柱47a,47b夫々の立設方向が変化しないよう補強する補助柱471a、471bを備える。支柱47a,47b間には、支柱47a,47bを略平行に維持すべく補強する横桁472が架設してある。
【0066】
支柱47a,47bは、可動支持部48を昇降可能に挟持している。可動支持部48は、矩形枠板状をなし、各側面に支柱47a,47bの溝部を上下方向に転動する転動体を備えている。また、可動支持部48は、回転軸が車台41の短辺方向を向いたローラ481を上面に備える。ローラ481は、軸長方向略中央が縮径しており、表面にゴム及び合成樹脂等の弾性体が貼設してある。ローラ481の軸長方向略中央を縮径させることによって、制震ブレースFの管部をローラ481の軸長方向略中央部に保持することが可能になる。また、ローラ481の表面に貼設された弾性体によって、制震ブレースFの管部との接触面に傷が発生することを防止することが可能になる。なお、円筒状のローラ481を例示したが、これに限るものではなく1つ又は車台41の長手方向に並設されたボールローラからなるものでも良い。車台41の上面、支柱47a,47b間の略中央には、シリンダ固定部490が設けられている。
【0067】
シリンダ固定部490は、車台41の上面にボルト等で固定してある略矩形の下側板部と、該下側板部の両短辺夫々の中点を結ぶ線に沿って立設してある立設板部と、立設板部の立設方向の端部に前記下側板部に対して略平行に設けられた上側板部とからなり、断面H字状をなす。シリンダ固定部490の上側板部の上面の略中央には、油圧シリンダ49が立設してあり、油圧シリンダ49のピストンロッド491の端部が可動支持部48の下面の略中央に接続してある。ピストンロッド491の伸縮方向は、可動支持部48の昇降方向と略一致するようにしてある。
【0068】
また、車台41の上面には、手動で操作されるピストン式の油圧ポンプ50が載置してある。なお、手動の油圧ポンプに代えて、電動ポンプを用いても良い。油圧ポンプ50は、車台41の上面に取外し可能に固定しても良い。この場合、運搬時には、油圧ポンプ50が車台41の上面に固定される。油圧ポンプ50を操作する場合、作業者の姿勢に応じ適宜載置位置を変更すべく車台41の上面から取り外すと良い。油圧ポンプ50は、円筒状であり、車台41の上面に載置すべく両端近傍に脚部を備える。油圧ポンプ50は、操作ハンドル501の操作によって、作動油を加圧し、油圧ホース503を介して油圧シリンダ49に吐出するようにしてある。ピストンロッド491は、油圧シリンダ49に加圧した作動油が流入した場合、伸長し、可動支持部48を押し上げるようにしてある。
【0069】
また、油圧ポンプ50は、油圧開放弁502を備えており、油圧開放弁502を開放した場合、加圧された作動油の油圧が減少し、油圧ホース503を介して油圧シリンダ49から作動油が油圧ポンプ50に戻るようにしてある。また、ピストンロッド491は、油圧シリンダ49から加圧された作動油が流出した場合、縮退し、可動支持部48を引き込んで下降させるようにしてある。
【0070】
このように構成された運搬台車4にあっては、固定支持部411にトッププレートを支持させた場合、トッププレートの端部が固定支持部411の溝に嵌合して係止される。これにより、制震ブレースFの滑り落ちが防止される。また、制震ブレースFの管部は、支柱47a、47b間の可動支持部48のローラ481により支持される。
【0071】
運搬台車44に載置された制震ブレースFの傾斜角度の変更手順を説明する。制震ブレースFの傾斜角度を増大させたい場合、油圧ポンプ50の操作ハンドル501を操作する。操作ハンドル501の操作によって、作動油が加圧され、加圧された作動油は、油圧ホース503を介して油圧シリンダ49に送り込まれ、ピストンロッド491が伸長する。伸長したピストンロッド491は、可動支持部48を押し上げ、その結果、制震ブレースFの傾斜角度が増大する。制震ブレースFの傾斜角度を増大させることによって、狭い通路、曲がり角、出入口の通過が容易になる。なお、運搬台車44の車台41の短辺方向の幅は、運搬台車用アウトリガー45,46を格納させることにより、減少させると良い。
【0072】
制震ブレースFの傾斜角度を減少させたい場合、油圧開放弁501を緩める。油圧開放弁501を緩められた場合、作動油の油圧が減少し、ピストンロッド491が縮退する。縮退したピストンロッド491は、可動支持部48を引き込み、その結果、制震ブレースFの傾斜角度が減少する。制震ブレースFの傾斜角度を減少させることによって、高さ制限がある通路、出入口等の通過が容易になる。
【0073】
なお、運搬台車44に、挟み防止板を備えても良い。挟み防止板は、矩形板状であり、ユーザが支柱47a,47bを把持して可動支持部48を昇降させる場合、転動体と、支柱47a,47bの溝との間に作業者の指先等が挟まれるといった事故を防止するためのものである。また、挟み防止板は、可動支持部48の正面に取り付けて可動支持部48の昇降と共に支柱47a,47bの正面を移動するようにしても良い。
【0074】
以上、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 取付機具
2 フォークリフト
3 取付装置
4 運搬台車
5 建物
51 柱梁架構
51a 柱
51b 梁
F 制震ブレース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の制震補強に使用される制震ブレースを、柱及び梁を有する柱梁架構に取り付ける制震ブレース取付方法において、
前記制震ブレースを把持して昇降、回転及び移動を行うための取付装置を用意し、
該取付装置を用いて、前記制震ブレースの中間部を把持し、
前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを持ち上げ、
前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを回転させ、
前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを前記柱梁架構へ移動させ、
前記制震ブレースを前記柱梁架構の梁に取り付ける
ことを特徴とする制震ブレース取付方法。
【請求項2】
車台の一端側に配されており、前記制震ブレースの端部を支持する固定支持部と、該車台の他端側に配されており、前記制震ブレースの中間部を支持する昇降可能な可動支持部とを有する運搬台車を用意し、
建物に搬入された制震ブレースを、該運搬台車を用いて、前記制震ブレースの取り付けを行う取付作業場へ運搬し、
前記運搬台車にて前記制震ブレースを取付作業場へ運搬した後、該運搬台車に支持された前記制震ブレースの中間部を、前記取付装置を用いて把持する
ことを特徴とする請求項1に記載の制震ブレース取付方法。
【請求項3】
前記運搬台車にて前記制震ブレースを取付作業場へ運搬した後、前記運搬台車の前記可動支持部を昇降させることによって、前記制震ブレースの姿勢を変更し、
姿勢が変更された前記制震ブレースの中間部を、前記取付装置を用いて把持する
ことを特徴とする請求項2に記載の制震ブレース取付方法。
【請求項1】
建物の制震補強に使用される制震ブレースを、柱及び梁を有する柱梁架構に取り付ける制震ブレース取付方法において、
前記制震ブレースを把持して昇降、回転及び移動を行うための取付装置を用意し、
該取付装置を用いて、前記制震ブレースの中間部を把持し、
前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを持ち上げ、
前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを回転させ、
前記取付装置を用いて、前記制震ブレースを前記柱梁架構へ移動させ、
前記制震ブレースを前記柱梁架構の梁に取り付ける
ことを特徴とする制震ブレース取付方法。
【請求項2】
車台の一端側に配されており、前記制震ブレースの端部を支持する固定支持部と、該車台の他端側に配されており、前記制震ブレースの中間部を支持する昇降可能な可動支持部とを有する運搬台車を用意し、
建物に搬入された制震ブレースを、該運搬台車を用いて、前記制震ブレースの取り付けを行う取付作業場へ運搬し、
前記運搬台車にて前記制震ブレースを取付作業場へ運搬した後、該運搬台車に支持された前記制震ブレースの中間部を、前記取付装置を用いて把持する
ことを特徴とする請求項1に記載の制震ブレース取付方法。
【請求項3】
前記運搬台車にて前記制震ブレースを取付作業場へ運搬した後、前記運搬台車の前記可動支持部を昇降させることによって、前記制震ブレースの姿勢を変更し、
姿勢が変更された前記制震ブレースの中間部を、前記取付装置を用いて把持する
ことを特徴とする請求項2に記載の制震ブレース取付方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−236308(P2010−236308A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86931(P2009−86931)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(597144484)ジーオーピー株式会社 (50)
【出願人】(000194756)成和リニューアルワークス株式会社 (32)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(597144484)ジーオーピー株式会社 (50)
【出願人】(000194756)成和リニューアルワークス株式会社 (32)
【Fターム(参考)】
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