説明

刺繍データ作成装置及び刺繍データ作成プログラム

【課題】ユーザが嗜好する音楽のイメージにマッチングする図柄の刺繍模様を縫製する刺繍データ作成装置を提供する。
【解決手段】音楽データが再生されて、マイクから入力された音声は、音響分析により人間の声が特徴量に変換され音響データが記録される(S1)。音響データから歌詞が抽出され(S2)、歌詞が周知の形態素解析技術により単語に分解される(S3)。単語の出現回数が計数され(S4)、出現回数が多い単語から3つの単語が刺繍画像の作成に使用されるキーワードが決定される(S5)。刺繍データ作成画面が表示される(S6)。刺繍データ作成画面には、キーワードをカテゴリ名とするカテゴリに属する画像が表示されている。そして、ユーザが表示されている画像から好みの画像を選び、刺繍画像が編集される(S7)。そして、刺繍データ作成の指示が行われると(S8:YES)、編集された刺繍画像から刺繍データが作成される(S9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍データ作成装置及び刺繍データ作成プログラムに関するものであり、詳細には、画像の刺繍を行うための刺繍データを作成する刺繍データ作成装置及び刺繍データ作成プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザが嗜好する音楽のイメージにマッチングする図柄の刺繍模様を縫製したいという要望がある。しかし、音楽にあった図柄を作成するには、デザインセンスや絵を描く技術が必要であり、デザインや絵を描くことが苦手なユーザにとっては、難しいことである。
【0003】
ミシンと音楽との組み合わせとして、ユーザが所望する選択スイッチを操作すると、刺繍データとその刺繍データに関係した演奏曲とが選択され、刺繍を行いながら曲が演奏される自動演奏縫いのメロディステッチミシンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、音楽と画像の組み合わせとして、携帯端末装置において、音楽データに関連した画像データを記憶しておき、音楽データを再生する際に、併せて記憶された画像データを携帯端末装置の表示画面に表示させる携帯端末装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平3−173598号公報
【特許文献2】特開2002−215174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のメロディステッチミシンでは、あらかじめミシンに記憶されている刺繍データと演奏曲について、刺繍を行いながら曲を演奏させるだけである。よって、ユーザが嗜好する音楽に合った刺繍データを作成することはできないという問題点がある。また、特許文献2に記載の発明の携帯端末装置では、音楽に関係した画像が表示されるが、音楽データに併せて画像データが記憶されているものであり、画像データがない音楽データを再生する際には関連した画像を表示させることはできない。よって、特許文献2に記載の携帯端末装置の技術を、刺繍データ作成装置に応用することはできないという問題点がある。
【0005】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、ユーザが嗜好する音楽のイメージにマッチングする図柄の刺繍模様を縫製するための刺繍データ作成装置及び刺繍データ作成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明の刺繍データ作成装置では、刺繍縫製可能なミシンで刺繍縫製を行うための刺繍データを作成する刺繍データ作成装置において、音楽データを入力する音楽データ入力手段と、前記音楽データ入力手段により入力された音楽データの音声を歌詞の文字列データとして認識する音声認識手段と、前記歌詞の文字列データから、所定の規則に基づいて特定のキーワードを抽出するキーワード抽出手段と、画像データを記憶する画像データ記憶手段と、前記キーワード抽出手段で抽出されたキーワードに応じて、前記画像データ記憶手段に記憶された前記画像データを選択する画像データ選択手段と、前記画像データ選択手段で選択された前記画像データに基づいて刺繍データを作成する刺繍データ作成手段とを備えている。
【0007】
また、請求項2に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記音声認識手段は、前記音楽データ入力手段により入力された音楽データから音声認識により前記歌詞の文字列データを抽出する歌詞抽出手段と、少なくとも読みを含む単語に関する情報を記憶した単語辞書を参照して前記歌詞抽出手段により抽出された前記歌詞の文字列データを単語に分解する歌詞分解手段とを備えている。
【0008】
また、請求項3に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項2に記載の発明の構成に加えて、前記キーワード抽出手段は、前記歌詞分解手段により前記歌詞の文字列データが分解された単語である単位歌詞について、前記単位歌詞の出現回数に基づいて決定される重要度に応じてランク付けをするランク付与手段と、前記ランク付与手段により付与されたランクに基づいて、前記歌詞の文字列データから少なくとも1つの前記単位歌詞を前記キーワードとして選択する単位歌詞選択手段とを備え、前記所定の規則は、前記ランク付与手段により付与されたランクが上位の前記単位歌詞を選択する規則であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記画像データ記憶手段は、前記画像データに対応する語句である対応語句を記憶しており、前記画像データ選択手段は、前記キーワード抽出手段により抽出された前記キーワード及び前記対応語句に基づいて前記画像データを選択することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記画像データ記憶手段は、前記画像データを所定のカテゴリ毎に分類し、階層化して記憶していることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る発明の刺繍データ作成プログラムでは、請求項1乃至5のいずれかに記載の刺繍データ作成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明の刺繍データ作成装置では、音楽データ入力手段は、音楽データを入力し、音声認識手段は、音楽データ入力手段により入力された音楽データの音声を歌詞の文字列データとして認識し、キーワード抽出手段は、歌詞の文字列データから、所定の規則に基づいて特定のキーワードを抽出し、画像データ記憶手段は、画像データを記憶し、画像データ選択手段は、キーワード抽出手段で抽出されたキーワードに応じて、画像データ記憶手段に記憶された画像データを選択し、刺繍データ作成手段は、画像データ選択手段で選択された画像データに基づいて刺繍データを作成することができる。したがって、音楽データの歌詞のイメージに合った刺繍模様の刺繍データを容易に作成することができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1に記載の発明の効果に加えて、音声認識手段の歌詞抽出手段は、音楽データ入力手段により入力された音楽データから音声認識により歌詞の文字列データを抽出し、歌詞分解手段は、少なくとも読みを含む単語に関する情報を記憶した単語辞書を参照して歌詞抽出手段により抽出された歌詞の文字列データを単語に分解することができる。したがって、音楽データの歌詞の文字情報がなくとも、歌詞の文字列データを得ることができる。
【0014】
また、請求項3に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項2に記載の発明の効果に加えて、キーワード抽出手段のランク付与手段は、歌詞分解手段により歌詞の文字列データが分解された単語である単位歌詞について、単位歌詞の出現回数に基づいて決定される重要度に応じてランク付けをし、単位歌詞選択手段は、ランク付与手段により付与されたランクに基づいて、歌詞の文字列データから少なくとも1つの単位歌詞をキーワードとして選択することができる。そして、所定の規則は、ランク付与手段により付与されたランクが上位の単位歌詞を選択する規則とすることができる。よって、出現回数の多い単語に応じて画像データが選択される。出現回数の覆い単語ほど、音楽データのイメージに影響を与えるので、音楽データのイメージにあった刺繍データを作成することができる。
【0015】
また、請求項4に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、画像データ記憶手段は、画像データに対応する語句である対応語句を記憶しており、画像データ選択手段は、キーワード抽出手段により抽出されたキーワード及び対応語句に基づいて画像データを選択することができる。したがって、容易に画像データを選択することができる。
【0016】
また、請求項5に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、画像データ記憶手段は、画像データを所定のカテゴリ毎に分類し、階層化して記憶することができる。キーワードに応じて画像を選択する際に、よりイメージにあった刺繍データを作成するのに役立つ。
【0017】
また、請求項6に係る発明の刺繍データ作成プログラムでは、請求項1乃至5のいずれかに記載の刺繍データ作成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させることができる。したがって、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明の効果と同様の効果を奏すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る刺繍データ作成装置1の一実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施の形態の刺繍データ作成装置1は、刺繍ミシン3において刺繍を行うための刺繍データを作成するものである。まず、刺繍ミシン3について説明する。図1は、刺繍ミシン3の外観図である。
【0019】
図1に示すように、刺繍ミシン3は、縫い針34を装着する針棒35を上下駆動する針棒機構(図示外)、天秤機構(図示外)及び釜機構(図示外)を備えている。また、ミシンベッド30上に配置された刺繍を施そうとする加工布(図示外)を保持する刺繍枠31を、キャリッジカバー32内に収容され刺繍ミシン3の前後方向(紙面の前後方向)に移送するY方向駆動機構(図示外)と、本体ケース33内に収容されY方向駆動機構を刺繍ミシン3の左右方向(紙面の左右方向)に移送するX方向駆動機構(図示外)とを備えている。このY方向駆動機構とX方向駆動機構とによって刺繍枠31を移動させながら、針棒機構、天秤機構及び釜機構の協働による縫製動作を行うことにより、その加工布に所定の図柄の刺繍を施すようになっている。前記針棒機構、天秤機構、及び釜機構を駆動するミシンモータ(図示外)と、前記Y方向駆動機構及びX方向駆動機構を駆動する夫々のモータ(図示外)は、刺繍ミシン3に内蔵されたマイクロコンピュータ等から構成される制御装置により駆動が制御される。また、刺繍ミシン3の脚柱部36の側面にはメモリカードスロット37が搭載されており、刺繍データが記憶されたメモリカード2をメモリカードスロット37に装着することにより、刺繍データ作成装置1で作成された刺繍データが供給される。また、この刺繍ミシン3と刺繍データ作成装置1とをケーブルで接続可能に構成し、メモリカード等の記憶媒体を介さずに、直接刺繍データが供給されるようにしてもよい。
【0020】
次に、図2乃至図5を参照して刺繍データ作成装置1について説明する。図2は、刺繍データ作成装置1の物理的構成を示す全体構成図であり、図3は、刺繍データ作成装置1の電気的構成を示すブロック図である。そして、図4は、HDD13に設けられている記憶エリアの構成を示す模式図であり、図5は、HDD13に設けられている画像カテゴリ記憶エリア132の構成を示す模式図である。そして、図6は、RAM12に設けられている記憶エリアを示す模式図であり、図7は、RAM12に設けられている歌詞記憶エリア122を示す模式図であり、図8は、RAM12に設けられている解析結果記憶エリア123を示す模式図であり、図9は、RAM12に設けられている出現回数記憶エリア124を示す模式図である。
【0021】
図2に示すように、この刺繍データ作成装置1は、所謂パーソナルコンピュータである装置本体21と、この装置本体21に接続されるマウス14、キーボード15、ディスプレイ16、スピーカ17、マイク18、メモリカードドライブ19、CD−ROMドライブ20から構成されている。なお、装置本体21、マウス14、キーボード15、ディスプレイ16、メモリカードドライブ19の形状は図2に示すものに限らない。例えば、装置本体21はタワー型のものに限らず、横置きのものであってもよく、装置本体21とディスプレイ16とキーボード15とが一体化したノート型であってもよい。また、装置本体21は所謂パーソナルコンピュータでなく、専用機であってもよいことはいうまでもない。また、スピーカ17及びマイク18は図2に示すように一体型のものでなく、別々の装置であってもよい。
【0022】
次に、図3のブロック図を参照して、刺繍データ作成装置1の電気的構成について説明する。図3に示すように、刺繍データ作成装置1には、刺繍データ作成装置1の制御を司るCPU10が設けられ、CPU10には、BIOS等を記憶したROM11と、各種のデータを一時的に記憶するRAM12と、OSやプログラムや各種情報を記憶するハードディスク装置(HDD)13と、ユーザによる入力を受け付けるマウス14と、キーボード15と、画像を出力するディスプレイ16と、音を出力するスピーカ17と、音を入力するマイク18と、CD−ROM4を読み込むためのCD−ROMドライブ20と、メモリカード2に入出力するためのメモリカードドライブ19とがバスを介して接続されている。
【0023】
次に、図4を参照して、HDD13に設けられている記憶エリアについて説明する。HDD13には、画像データ記憶エリア131、画像カテゴリ記憶エリア132、刺繍画像記憶エリア133、刺繍データ作成プログラム記憶エリア134等が設けられている。なお、HDD13には、これら以外の記憶エリアも設けられている。画像データ記憶エリア131には、刺繍のモチーフとなる画像のデータが記憶されており、画像カテゴリ記憶エリア132には、画像データを特定する情報(ファイル名)と、その画像データに対応するキーワードが記憶されている。そして、刺繍画像記憶エリア133には、刺繍データが作成される画像が記憶される。そして、刺繍データ作成プログラム記憶エリア134には、パーソナルコンピュータを刺繍データ作成装置1として機能させるためのプログラムが記憶されている。
【0024】
次に、図5を参照して、画像カテゴリ記憶エリア132について説明する。図5に示すように、画像カテゴリ記憶エリア132には、第一カテゴリ欄、第二カテゴリ欄、第三カテゴリ欄、画像データ欄が設けられている。つまり、カテゴリは3層構造となっており、第三カテゴリに対応して、第三カテゴリに属する画像データのファイル名が記憶されている。例えば、「果物」という第一カテゴリは、「りんご」,「いちご」,・・・・といった第二カテゴリに分解される。そして、「りんご」という第二カテゴリは「実」,「お菓子」,「木」,「その他」という第三カテゴリに分解される。そして、「実」という第三カテゴリに属する画像データ名「123456」,「468746」,「168747」,・・・・が記憶されている。
【0025】
なお、画像データが属するカテゴリは、1つである必要はなく、例えば、「000457」というファイル名の画像は、第一カテゴリ「果物」−第二カテゴリ「りんご」−第三カテゴリ「木」に属しているが、第一カテゴリ「畑」−第二カテゴリ「果樹園」−第三カテゴリ「りんご畑」にも属している。
【0026】
次に、図6を参照して、RAM12に設けられている記憶エリアについて説明する。RAM12には、音響データ記憶エリア121、歌詞記憶エリア122、解析結果記憶エリア123、出現回数記憶エリア124、キーワード記憶エリア125等が記憶されている。なお、RAM12には、これら以外の記憶エリアも設けられている。音響データ記憶エリア121には、マイク18から入力された音声が特徴量に分析された音響データが記憶され、歌詞記憶エリア122には、音響データから音声認識により抽出されたテキスト(歌詞)が記憶される。そして、解析結果記憶エリア123には、歌詞を形態素解析した結果が記憶され、出現回数記憶エリア124には、解析結果に基づいて各形態素の出現回数が記憶される。そして、キーワード記憶エリア125には、刺繍画像を作成する際に使用されるキーワードが記憶される。
【0027】
次に、図7を参照して、RAM12に設けられている歌詞記憶エリア122について説明する。図7に示すように、歌詞記憶エリア122には、音楽CDをCDプレーヤで再生し、マイク18から入力された音響データが記憶される。図7に示す例では、「私は真っ赤なりんごです お国は寒い北の国・・・・」という歌詞が記憶されている。
【0028】
次に、図8を参照して、RAM12に設けられている解析結果記憶エリア123について説明する。図8に示すように、解析結果記憶エリア123には単語欄、品詞欄、基本形欄が設けられている。この解析結果記憶エリア123には、歌詞記憶エリア122に記憶されている歌詞に対して、周知の形態素解析を行った結果として、単語欄には単語(形態素)が記憶され、品詞欄にはその単語の品詞が記憶され、基本形欄には、単語が活用語(動詞,形容詞,形容動詞,助動詞のように活用する語)である場合にその基本形が記憶される。
【0029】
図8に示す例では、図7に示した歌詞の解析結果の一部が記憶されている。「私」は名詞であり、「は」は助詞であり、「真っ赤な」は形容詞であり基本形は「真っ赤だ」であり、「りんご」は名詞であり、「です」は助動詞であり基本形は「です」である。そして、「お」は接頭詞であり、「国」は名詞であり、「は」は助詞であり、「寒い」は形容詞であり基本形は「寒い」であり、「北」は名詞である。その他の単語については省略されている。
【0030】
次に、図9を参照して、RAM12に設けられている出現回数記憶エリア124について説明する。出現回数記憶エリア124には、単語欄及び回数欄が設けられている。ここには、解析結果記憶エリア123に記憶されている単語の出現回数が計数され、回数の降順にソートされる。図9は、図8に示した解析結果の出現回数が計数され、ソートされた後の出現回数記憶エリア124を示している。図9に示すように、「りんご」の出現回数が一番多く、14回であり、次いで、「りんご畑」、「独り言」、「かわいい」が3回出現しており、次いで、「国」、「箱」が2回出現している。
【0031】
次に、図10及び図11を参照して、刺繍データ作成装置1の動作について説明する。図10は、刺繍データ作成装置1の動作を示すフローチャートであり、図11は、刺繍データ作成のために、ディスプレイ16に表示される刺繍データ作成画面200を示す模式図である。
【0032】
図10に示す処理は、刺繍データ作成装置1において、刺繍データ作成プログラムが実行されると開始される。まず、一般的なCDプレーヤ等を用いて音楽CDを再生し、再生された音楽をマイク18から入力する。マイク18から入力された音楽の音声は、周知の音声認識技術で用いられる音響分析により逐次分析され、人間の声が特徴量に変換される。そして、この特徴量が音響データとして音響データ記憶エリア121に記憶される(S1)。
【0033】
次いで、音響データ記憶エリア121に記憶されている音響データから、歌詞が抽出される(S2)。具体的には、音響モデル、言語モデル、辞書等が参照されて周知の音声認識技術により、音響データからテキスト(歌詞)が出力され、歌詞として歌詞記憶エリア122(図7参照)に記憶される。次いで、歌詞記憶エリア122に記憶されている歌詞が、周知の形態素解析技術により形態素(単語)に分解され、解析結果記憶エリア123(図8参照)に記憶される(S3)。
【0034】
次いで、解析結果記憶エリア123に記憶されている単語の出現回数が計数され、出現回数記憶エリア124に記憶される(S4)。ここでは、名詞、動詞、形容詞、形容動詞である単語のみが抽出されて計数される。なお、活用語では、基本形欄が参照されて活用形が異なっているものも同一の単語として計数される。そして、計数後は出現回数記憶エリア124が回数の多い順にソートされる。
【0035】
そして、刺繍画像の作成に使用されるキーワードが決定される(S5)。このキーワードは、出現回数が多い単語から順にキーワードの候補とされる。そして、その単語が画像カテゴリ記憶エリア132に登録されているか否かの判断が行われ、その単語が第一カテゴリ、第二カテゴリ又は第三カテゴリに記憶されていれば、キーワードに決定されてキーワード記憶エリア125に記憶される。本実施の形態では、3つの単語がキーワードとされる。
【0036】
図7乃至図9に示した例では、まず14回出現している「りんご」がキーワードの候補とされる。第一カテゴリ「果物」の第二カテゴリに「りんご」があるので、この「りんご」はキーワードとされる。次に、2回出現している「りんご畑」がキーワードの候補とされる。第一カテゴリ「畑」、第二カテゴリ「果樹園」、第三カテゴリ「りんご畑」があるので、「りんご畑」はキーワードとされる。次に、同じく2回出現している「独り言」がキーワードの候補とされるが、この「独り言」は画像カテゴリ記憶エリア132の、第一カテゴリ欄、第二カテゴリ欄、第三カテゴリ欄のいずれにも記憶されていないので、キーワードとされない。そして、次に、同じく2回出現している「かわいい」がキーワード候補とされ、第一カテゴリ「かわいい」があるので、「かわいい」はキーワードとされる。
【0037】
次いで、刺繍データ作成画面200がディスプレイ16に表示され(S6)、刺繍データ作成画面200において刺繍データを作成するための刺繍画像の編集が行われる(S7)。図11に示すように、刺繍データ作成画面200には、カテゴリ欄210,画像サンプル欄220,刺繍画像編集領域230,選択ボタン241,保存ボタン242,刺繍データ作成ボタン243,キャンセルボタン244が設けられている。図11は、図7乃至図9に示す例での刺繍データ作成画面である。
【0038】
まず、カテゴリ欄210について説明する。ここには、キーワード記憶エリア125に記憶されているキーワードの属するカテゴリが階層表示される。左の列が第一カテゴリ、真ん中の列が第二カテゴリ、右の列が第三カテゴリである。図7乃至図9に示した例では、「りんご」,「りんご畑」,「かわいい」がキーワードとされているので、これらのキーワードの属するカテゴリが表示されている。「りんご」は第一カテゴリ「果物」の第二カテゴリに属しているので、第一カテゴリとして「果物」が表示され、「果物」の第二カテゴリである「りんご」,「いちご」,「みかん」,「ぶどう」,「その他」が展開され、表示されている。そして、キーワードである「りんご」については、第三カテゴリである「実」,「お菓子」,「木」,「その他」が展開され、表示されている。そして、「りんご」はキーワードであるので、枠で囲まれて強調表示されている。さらに、「りんご」は反転表示されており、現在このカテゴリが選択されていることを示している。
【0039】
そして、第一カテゴリ「果物」の下には、「畑」が表示されている。そして、「畑」の第二カテゴリとして「果樹園」及び「菜園」が表示されている。そして、第二カテゴリ「果樹園」の第三カテゴリとして「りんご畑」,「みかん畑」,「ぶどう園」,「その他」が展開され、表示されている。さらに、「りんご畑」はキーワードであるので枠で囲まれて強調表示されている。さらに、第一カテゴリ「畑」の下には、「かわいい」が表示されている。この「かわいい」はキーワードであるので、枠で囲まれて強調表示されている。そして、「かわいい」の第二カテゴリとして「花」,「動物」,「キャラクター」,「リボン」,「その他」が展開され、表示されている。なお、キーワード「かわいい」は第一カテゴリであるので、第三カテゴリは展開されていない。
【0040】
そして、このカテゴリ欄210で選択されているカテゴリに属する画像が、カテゴリ欄210の右に設けられている画像サンプル欄220に表示される。図11の例では、「りんご」が選択されているので、第一カテゴリ「果物」−第二カテゴリ「りんご」に属する画像が表示される。つまり、図11の例では、第三カテゴリ「実」,「お菓子」,「木」,「その他」に属する画像すべてが表示される。属する画像は、画像カテゴリ記憶エリア132の画像データ欄に画像データのファイル名が記憶されているので、そのファイル名の画像データのファイルが画像データ記憶エリア131から読み出される。なお、カテゴリ欄210で第三カテゴリが選択されていれば、その第三カテゴリに属する画像のみが表示され、第一カテゴリが選択されていれば、その第一カテゴリに属する第二カテゴリに属するすべての画像が表示される。
【0041】
図11に示す例では、1つのりんごの実の画像である画像221,りんご箱に詰められたりんごの画像である画像222,3つのりんごの実が並んだ画像である画像223,2つの葉付きのりんごの実の画像である画像224が表示されている。なお、画像サンプル欄220にはスクロールバーが設けられており、その他の画像は、このスクロールバーを操作することにより表示させることができる。
【0042】
そして、画像サンプル欄220において選択されている画像の周囲には選択枠229が表示される。そして選択ボタン241が選択されると、選択枠229で選択されている画像が刺繍画像編集領域230に展開される。図11に示す例では、画像221が選択され、刺繍画像編集領域230に画像231が表示されている。ここにさらに画像を追加するには、カテゴリ欄210において、他のカテゴリを選択すると、画像サンプル欄220にそのカテゴリに属する画像が表示されるので、使用したい画像を選択し、選択ボタン241を選択すればよい。なお、刺繍画像編集領域230において、周知の画像編集ソフトのように画像を拡大/縮小したり、色を変更したり、文字を追加したり、画像をコピーしたり、線や図形を描画したりする機能を持たせてもよい。なお、保存ボタン242が選択されると、刺繍画像編集領域230に表示されている画像がHDD13の刺繍画像記憶エリア133に記憶される。
【0043】
そして、刺繍データ作成ボタン243が選択され、刺繍データ作成の指示が行われると(S8:YES)、刺繍画像編集領域230に表示されている画像がHDD13の刺繍画像記憶エリア133に記憶され、さらに刺繍画像記憶エリア133に記憶された画像を刺繍ミシン3で刺繍するための刺繍データが作成される(S9)。この刺繍データの作成は周知の画像の刺繍データ作成方法で行われる。具体的には、画像に基づいて刺繍糸の糸色が決定され、糸色毎に縫製領域が決定され、その縫製領域を塗り潰すための針落ち点が決定される。そして、作成された刺繍データはメモリカード2に記憶される。なお、図10のフローチャートには記載しないが、キャンセルボタン244が選択された場合には、本処理は終了する。なお、カテゴリ欄210でのカテゴリの選択、画像サンプル欄220での画像の選択、各種ボタン241〜244の選択、キーボード15又はマウス14の操作により行われる。
【0044】
以上のようにして、音楽データから歌詞が抽出され、出現回数に基づいてキーワードが選択されて、そのキーワードに関係する画像が提示される。よって、ユーザは提示された画像から好みの画像を選択したり、組み合わせたりすることにより、音楽のイメージに合った刺繍、つまり、音楽のイメージと同じイメージを持つ画像の刺繍を施す刺繍データを簡単に作成することができる。
【0045】
なお、上記実施の形態のマイク18が「音楽データ入力手段」に該当し、HDD13の画像データ記憶エリア131及び画像カテゴリ記憶エリア132が「画像データ記憶手段」に該当する。そして、図10に示すフローチャートのS1及びS2において音楽データから歌詞を抽出する処理を行うCPU10が「歌詞抽出手段」に相当し、S3の形態素解析を行う処理が「歌詞分解手段」に相当し、S1〜S3の処理を行うCPU10が「音声認識手段」に相当する。そして、S6で刺繍データ作成画面200において、画像サンプル欄220から画像データを選択、選択ボタン241の選択の入力を受け付ける処理を行うCPU10が「画像データ選択手段」に相当し、S9で刺繍データを作成する処理を行うCPU10が「刺繍データ作成手段」に相当する。そして、S4で単語の出現回数を計数し、回数の降順にソートする処理を行うCPU10が「ランク付け手段」に相当し、S5でキーワードを決定する処理を行うCPU10が「単位歌詞選択手段」に相当する。また、解析結果記憶エリア123には単語欄に記憶されている単語が「単位歌詞」に該当する。
【0046】
なお、本発明の刺繍データ作成装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。上記実施の形態では、音楽データは音楽CDに録音されており、CDプレーヤで再生しているとした。しかし、音楽データが記憶される媒体はCDに限らず、メモリカードやUSBメモリ等のような携帯型記録媒体に録音されていてもよい。また、音楽を再生する機器の記憶媒体に記憶されていてもよいし、音楽を再生する機器がネットワークに接続可能であれば、ネットワークを介して読み込み可能な場所に記憶されていてもよい。また、音楽を再生する機器もCDプレーヤに限らず、音楽データを再生可能な機器であってもよい。さらに、刺繍データ作成装置1であってもよい。また、携帯電話等の携帯型端末でネットワークを介してダウンロードし、携帯型端末を刺繍データ作成装置1に接続して音楽データを読み込むようにしてもよい。また、ラジオ、テレビなどの外部の機器から出力される音楽をマイク18から入力してもよい。また、人間が生で歌う音声をマイク18から入力してもよい。また、刺繍データ作成装置1で音楽データを読み込み可能な場合には、CD−ROMドライブ20で音楽CDを再生してスピーカ17から出力し、マイク18により再生された音を入力してもよいし、音楽データから直接音響データを作成してもよい。
【0047】
また、上記実施の形態では、所謂パーソナルコンピュータを刺繍データ作成装置として用いたが、ミシン3にマイク、ディスプレイ及び入力装置(例えば、キーやタッチパネル)を設けて、刺繍データ作成プログラムを搭載し、刺繍データを作成するようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態においては、音声認識により抽出された歌詞をそのまま用いたが、抽出された歌詞をユーザが確認、編集するようにしてもよい。例えば、S2において歌詞を抽出した後に、ディスプレイ16にその歌詞を表示させる。そこで、実際の歌詞と誤って認識されている文字を選択、正しい文字をキーボード15により入力し、歌詞記憶エリア122に記憶させる。また、形態素解析による解析結果もユーザが確認、編集するようにしてもよい。例えば、S4において、解析結果記憶エリア123に記憶されている情報をディスプレイ16に表示させる。そこで、誤っている単語や品詞を修正入力し、解析結果記憶エリア123に記憶させる。
【0049】
また、上記実施の形態では、単語の出現回数に基づいてのみキーワードを自動的に決定し、刺繍データ作成画面200を表示させたが、ユーザにキーワードを選択させてもよい。また、上記実施の形態では、出現回数の多い順にランク付けを行ったが、ランク付けの基準は出現回数でなくともよい。例えば、その歌詞の音量を記録し、音量の大きい順でランク付けを行ってもよい。具体的には、S1において音楽データが入力される際に特徴量に対応して音量も記録する。そして、歌詞抽出後にそれぞれの文字毎に音量を記憶する。そして、形態素解析後に各単語を成す文字の音量の平均音量を算出し、単語の音量とする。また、その歌詞の発生速度(その単語の発生時間を文字数で割る)を算出し、発生速度の遅い順でランク付けを行ってもよい。具体的には、S1において、音声認識において歌詞を抽出する際に各単語の発生時間を計測し、文字毎に発生時間を記憶する。そして、形態素解析後に各単語を成す文字の発生時間を合計し、単語の文字数で割り、単語の発生速度とする。また、出現回数、音量、発生速度のうちのいずれかを組み合わせてランク付けを行ってもよい。例えば、各単語の音量の最小値から最大値までを10分割し、音量の小さい方から1,2,3,・・・,10の数値(音量値)を付与する。そして、単語毎にこの音量値を集計する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】刺繍ミシン3の外観図である。
【図2】刺繍データ作成装置1の物理的構成を示す全体構成図である。
【図3】刺繍データ作成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】HDD13に設けられている記憶エリアの構成を示す模式図である。
【図5】HDD13に設けられている画像カテゴリ記憶エリア132の構成を示す模式図である。
【図6】RAM12に設けられている記憶エリアを示す模式図である。
【図7】RAM12に設けられている歌詞記憶エリア122を示す模式図である。
【図8】RAM12に設けられている解析結果記憶エリア123を示す模式図である。
【図9】RAM12に設けられている出現回数記憶エリア124を示す模式図である。
【図10】刺繍データ作成装置1の動作を示すフローチャートである。
【図11】刺繍データ作成のために、ディスプレイ16に表示される刺繍データ作成画面200を示す模式図である。
【符号の説明】
【0051】
1 刺繍データ作成装置
2 メモリカード
3 刺繍ミシン
4 音楽CD
10 CPU
12 RAM
13 HDD
121 音響データ記憶エリア
122 歌詞記憶エリア
123 解析結果記憶エリア
124 出現回数記憶エリア
125 キーワード記憶エリア
131 画像データ記憶エリア
132 画像カテゴリ記憶エリア
200 刺繍データ作成画面
210 カテゴリ欄
220 画像サンプル欄
230 刺繍画像編集領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺繍縫製可能なミシンで刺繍縫製を行うための刺繍データを作成する刺繍データ作成装置において、
音楽データを入力する音楽データ入力手段と、
前記音楽データ入力手段により入力された音楽データの音声を歌詞の文字列データとして認識する音声認識手段と、
前記歌詞の文字列データから、所定の規則に基づいて特定のキーワードを抽出するキーワード抽出手段と、
画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
前記キーワード抽出手段で抽出されたキーワードに応じて、前記画像データ記憶手段に記憶された前記画像データを選択する画像データ選択手段と、
前記画像データ選択手段で選択された前記画像データに基づいて刺繍データを作成する刺繍データ作成手段と、
を備えたことを特徴とする刺繍データ作成装置。
【請求項2】
前記音声認識手段は、
前記音楽データ入力手段により入力された音楽データから音声認識により前記歌詞の文字列データを抽出する歌詞抽出手段と、
少なくとも読みを含む単語に関する情報を記憶した単語辞書を参照して前記歌詞抽出手段により抽出された前記歌詞の文字列データを単語に分解する歌詞分解手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項3】
前記キーワード抽出手段は、
前記歌詞分解手段により前記歌詞の文字列データが分解された単語である単位歌詞について、前記単位歌詞の出現回数に基づいて決定される重要度に応じてランク付けをするランク付与手段と、
前記ランク付与手段により付与されたランクに基づいて、前記歌詞の文字列データから少なくとも1つの前記単位歌詞を前記キーワードとして選択する単位歌詞選択手段とを備え、
前記所定の規則は、前記ランク付与手段により付与されたランクが上位の前記単位歌詞を選択する規則であることを特徴とする請求項2に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項4】
前記画像データ記憶手段は、前記画像データに対応する語句である対応語句を記憶しており、
前記画像データ選択手段は、前記キーワード抽出手段により抽出された前記キーワード及び前記対応語句に基づいて前記画像データを選択することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の刺繍データ作成装置。
【請求項5】
前記画像データ記憶手段は、前記画像データを所定のカテゴリ毎に分類し、階層化して記憶していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の刺繍データ作成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の刺繍データ作成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させるための刺繍データ作成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−237433(P2008−237433A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80572(P2007−80572)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】