説明

削岩機搭載台車における穿孔位置決め制御方法及び建設機械におけるブーム位置決め制御方法

【課題】既存の削岩機搭載台車に対し穿孔位置決め制御機能を持たせる。
【解決手段】ドリルジャンボ1に三次元スキャナー9を設置するとともに、コンピュータ2を設置し、コンピュータ2に予め、前記削岩機13及び/又はガイドシェル12の形状、寸法データを登録しておき、三次元スキャナー9により三次元点群データを取得し、コンピュータ2によって三次元モデルを生成するとともに、該三次元モデルと、予めコンピュータ2に登録された前記削岩機13及び/又はガイドシェル12の形状、寸法データとのパターンマッチングを行い、削岩機13及び/又はガイドシェル12を特定し、削岩機13及び/又はガイドシェル12の位置及び方向を把握する。また、削岩機13及び/又はガイドシェル12について三次元点群データの欠損がある場合、予め登録されている削岩機13及び/又はガイドシェル12の形状、寸法データに基づき、該欠損部分を補完する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドシェル、ブームを作動させるサーボ機構を有しない既存の削岩機搭載台車に対し、穿孔位置決め制御機能を持たせた位置決め制御方法及びブームを作動させるサーボ機構を有しない、既存の多関節ブームを備える建設機械に対し、ブーム位置決め制御機能を持たせたブーム位置決め制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、削岩機搭載台車(以下、ドリルジャンボともいう。)を用いた穿孔作業に係り、従来は、切羽断面上の穿孔位置に対してレーザー光を照射し、手作業によるマーキングを行っていたが、近年はトンネル掘削作業の自動化、作業の省力化等の要請に従って、削岩機を支持するガイドシェル、ブームの各関節に各種のセンサー(回転角センサ、変位センサ、近接センサ等)を取付けて、ドリルジャンボの基準点の位置を基に各関節の移動量、角度のデータをコンピュータにて演算処理を行い、削岩機の位置決め座標を算出するとともに、ガイドシェル、ブームを作動させるサーボ機構により、前記位置決め座標まで削岩機を自動的に移動させる穿孔位置決め方法(従来法1)が採用されるようになってきた。
【0003】
また、近年は前記穿孔位置決め制御システムに関しても種々の改良が試みられ、精度向上が図られている。例えば、下記特許文献1では、ドリルジャンボを用いたトンネル掘削による穿孔作業において、省力化と高精度のトンネル掘削を実現するために、台車後方と削岩機にレーザーターゲットを設け、トンネル抗口側に設置した測量器を用いてドリルジャンボの位置座標を計測し、次に削岩機に設置した視準ターゲットを連続的に視準してその位置を検出し、前記視準ターゲットの位置情報に基づく制御信号により削岩機のサーボ機構を介して削岩機を自動的に動作させ、予め計算された切羽面上の穿孔位置に削岩のビットを誘導して位置決めする穿孔位置決め方法(従来法2)が開示されている。
【0004】
更に、下記特許文献2では、多関節ブームを備える建設機械における前記多関節ブームの位置決め制御方法であって、前記多関節ブームの各関節部及び/又は先端にマーカーを設けるとともに、建設機械上の少なくとも2箇所以上に撮像装置を夫々設け、前記建設機械の座標及び姿勢、前記撮像装置の各設置座標を既知とした状態で、前記各撮像装置の画像に写るマーカーの座標を3次元画像処理によって求めることにより各関節部及び/又は先端の位置を計測し、前記多関節ブームを所定の位置まで移動させるようにした建設機械におけるブーム位置決め制御方法(従来法3)が開示されている。
【特許文献1】特開平5−156885号公報
【特許文献2】特開2006−57238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来法1の場合、既存のドリルジャンボに後付けによってセンサを取り付けるには装置の大幅な改造を必要とするため、現実的にはコスト的にかなりの負担を伴うことになる。また、ドリルジャンボは悪環境下での使用となるためサーボ機構の各センサーが故障し易く、その修理に多くの時間が掛かり、穿孔作業を一時的に停止せざるを得なくなることがある。また、センサによる計測値は各ブーム、センサーの固有の誤差、たわみ、及び稼働期間に応じて漸次増大していくピン、ブッシュの摩耗によるガタを含んだものであるとともに、ブーム先端へいくほどセンサ誤差が累積されるため、設定された位置決め座標どおりに削岩機を位置決めしても、実際には精度良く削岩機を位置決めできないことがあるなどの問題があった。
【0006】
一方、前記従来法2の場合も、ドリルジャンボは、ガイドシェル、ブームを作動させるサーボ機構を有することが必須となるため、既存のドリルジャンボに後付けによってセンサを取り付けるには装置の大幅な改造を必要とし、現実的にはコスト的に大きな負担を伴うことになる。また、測量器はトンネル抗口側に設置されるため、削岩機に設けたレーザーターゲットを視準する際に障害物が存在することが多いとともに、レーザーの自動追尾機能を利用しているため、削岩機の移動速度をレーザー光の移動速度以下とする必要があり、作業性が悪いなどの問題があった。さらに複数のブームを有するドリルジャンボに適用する場合、測量器を複数導入する必要があるため、コストが嵩むなどの問題があった。
【0007】
さらに、前記従来法3の場合は、既存の多関節ブームを備える建設機械に対し、極簡単にブーム位置決め制御機能を持たせることが可能である等の利点を有するものの、ガイドシェルに取り付けたマーカーが人、機械等の障害物によって隠れてしまい、撮像装置(CCDカメラ)によって視認できない場合は、一時的に制御不能になるなどの問題があった。また、油圧ショベル(バックホー)の場合は、使用状況によってはバケットが土で隠れた状態での作業となり、マーカーが殆ど撮像装置で視認できない状況になったり、マーカーが汚れたり、破損した場合に視認できなくなってしまうことがあった。
【0008】
そこで、本発明の第1課題は、ガイドシェル、ブームを作動させるサーボ機構を有しない既存の削岩機搭載台車に対し、極簡単に穿孔位置決め制御機能を持たせることが可能であるとともに、削岩機及び/又はガイドシェルの一部が障害物によって隠れ、位置計測ができない場合でも削岩機及び/又はガイドシェルの状態(位置、角度等)を把握できるようにすることにある。
【0009】
また、第2課題は、ブームを作動させるサーボ機構を有しない、既存の多関節ブームを備える建設機械に対し、極簡単にブーム位置決め制御機能を持たせることが可能であるとともに、ブームの一部が障害物によって隠れ、位置計測ができない場合でも、ブームの状態(位置、角度等)を把握できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記第1課題を解決するために請求項1に係る本発明として、走行可能な台車に対し、多関節ブームを介して、削岩機を搭載したガイドシェルを支持した削岩機搭載台車における前記ガイドシェルの位置決め制御方法であって、
前記削岩機搭載台車に三次元計測機器を設置するとともに、三次元点群データのデータ処理を行うコンピュータを設置し、かつ前記コンピュータに予め、前記削岩機及び/又はガイドシェルの形状、寸法データを登録しておき、
穿孔作業時に、前記三次元計測機器の座標を既知とした状態で、前記三次元計測機器により前記削岩機及び/又はガイドシェルを含む範囲をスキャニングすることにより三次元点群データを取得する第1ステップと、
前記三次元点群データに基づき、前記コンピュータによって三次元モデルを生成するとともに、該三次元モデルと、予めコンピュータに登録された前記削岩機及び/又はガイドシェルの形状、寸法データとのパターンマッチングを行い、削岩機及び/又はガイドシェルを特定する第2ステップと、
前記削岩機及び/又はガイドシェルの三次元生成モデルに基づき位置及び方向を把握するとともに、削岩機及び/又はガイドシェルの一部について三次元点群データの欠損がある場合、予め登録されている削岩機及び/又はガイドシェルの形状、寸法データに基づき三次元モデルの欠損部分を補完する第3ステップと、
前記第1ステップから第3ステップを繰り返し連続的に行うことにより、前記削岩機及び/又はガイドシェルの位置及び方向を把握し、前記削岩機を所定の穿孔位置まで移動させることを特徴とする削岩機搭載台車における穿孔位置決め制御方法が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の本発明においては、削岩機搭載台車に三次元計測機器を設置するとともに、三次元点群データのデータ処理を行うコンピュータを設置し、かつ前記コンピュータに予め、前記削岩機及び/又はガイドシェルの形状、寸法データを登録しておき、三次元計測機器により前記削岩機及び/又はガイドシェルを含む範囲をスキャニングすることにより三次元点群データを取得し、コンピュータによって三次元モデルを生成するとともに、該三次元モデルと、予めコンピュータに登録された前記削岩機及び/又はガイドシェルの形状、寸法データとのパターンマッチングを行い、削岩機及び/又はガイドシェルを特定し、削岩機及び/又はガイドシェルの三次元生成モデルに基づき位置及び方向を把握するとともに、削岩機及び/又はガイドシェルの一部について三次元点群データの欠損がある場合、予め登録されている削岩機及び/又はガイドシェルの形状、寸法データに基づき三次元モデルの欠損部分を補完するものである。
【0012】
従って、削岩機搭載台車に対して、極簡単にガイドシェルの三次元位置計測機能を持たせることが可能であるとともに、削岩機及び/又はガイドシェルの一部が障害物によって隠れ、三次元計測機器によって視認できなくなったとしても、削岩機及び/又はガイドシェルの状態(位置、角度等)を把握できるようになる。そして、削岩機及び/又はガイドシェルの位置及び方向の位置計測を繰り返し行うことにより位置が計測できるため、削岩機を所定の穿孔位置まで移動することが可能となる。
【0013】
ところで、前記三次元計測機器を用いた三次元モデルの生成技術は、三次元スキャナーや複数台のCCDカメラによるステレオ画像処理によって三次元的に形状を特定する技術である。三次元スキャナー(レーザレーダ装置)を用いる場合は、対象物が内側に含まれるように水平レンジ角及び垂直レンジ角を設定するとともに、これによって特定された矩形範囲内に任意数の実測点を均等に配置し、三次元スキャナーから各実測点までの距離を計測することによって距離データ及び角度データから対象物の三次元データ(三次元点群データ)を取得するものであり、取得した三次元点群データから形状を特定する各種の処理を行い、三次元モデルが生成される。前記ステレオ画像処理は、光軸が平行乃至その交角が既知である複数台のCCDカメラ等の撮像装置を配置し、三角測量の原理により対象点の座標を特定し、これを多数点に亘り行うことにより三次元モデルを生成するものである。
【0014】
請求項2に係る本発明として、走行可能な台車に対し、多関節ブームを介して、削岩機を搭載したガイドシェルを支持した削岩機搭載台車における前記ガイドシェルの位置決め制御方法であって、
前記削岩機搭載台車外の位置に三次元計測機器を固定的に設置するとともに、設置点座標を既知とし、かつ三次元点群データのデータ処理を行うコンピュータを設置するとともに、該コンピュータに予め、前記削岩機及び/又はガイドシェルの形状、寸法データを登録しておき、
前記三次元計測機器により前記削岩機及び/又はガイドシェルを含む範囲をスキャニングすることにより三次元点群データを取得する第1ステップと、
前記三次元点群データに基づき、前記コンピュータによって三次元モデルを生成するとともに、該三次元モデルと、予めコンピュータに登録された前記削岩機及び/又はガイドシェルの形状、寸法データとのパターンマッチングを行い、削岩機及び/又はガイドシェルを特定する第2ステップと、
前記削岩機及び/又はガイドシェルの三次元生成モデルに基づき位置及び方向を把握するとともに、削岩機及び/又はガイドシェルの一部について三次元点群データの欠損がある場合、予め登録されている削岩機及び/又はガイドシェルの形状、寸法データに基づき三次元モデルの欠損部分を補完する第3ステップと、
前記第1ステップから第3ステップを繰り返し連続的に行うことにより、前記ガイドシェルの位置及び方向を把握し、前記削岩機を所定の穿孔位置まで移動させることを特徴とする削岩機搭載台車における穿孔位置決め制御方法が提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明と対比すると、三次元計測機器を削岩機搭載台車ではなく、その周囲の設置点座標が既知とされる位置に固定的に設けるようにしたものである。前記削岩機搭載台車が、例えば山岳トンネルの発破孔の削孔に用いられる場合には、切羽削孔時に前記削岩機搭載台車は切羽前面に位置し、発破時には待避のために後方側への移動を繰り返すことになる。
【0016】
従って、請求項1記載の発明のように、三次元計測機器を削岩機搭載台車上に設けた場合には、削岩機搭載台車が移動するたびに、三次元計測機器の設置座標を既知とするための測量が必要になるが、本請求項2記載の発明の場合には、前記三次元計測機器が座標既知点に固定的に設置されているため、削岩機搭載台車の位置が問題とならず、前記三次元計測機器の設置座標を既知とするための測量を省略することが可能となり、削岩機及び/又はガイドシェルの位置及び方向計測を効率的に行い得るようになる。
【0017】
前記第2課題を解決するために請求項3に係る本発明として、多関節ブームを備える建設機械における前記多関節ブームの位置決め制御方法であって、前記建設機械に三次元計測機器を設置するとともに、三次元点群データのデータ処理を行うコンピュータを設置し、かつ前記コンピュータに予め、前記多関節ブームの可動部毎にその形状、寸法データを登録しておき、
作業時に、前記三次元計測機器の座標を既知とした状態で、前記三次元計測機器により前記多関節ブームを含む範囲をスキャニングすることにより三次元点群データを取得する第1ステップと、
前記三次元点群データに基づき、前記コンピュータによって三次元モデルを生成するとともに、該三次元モデルと、予めコンピュータに登録された前記多関節ブームの各可動部の形状、寸法データとのパターンマッチングを行い、前記多関節ブームの各可動部を特定する第2ステップと、
前記多関節ブームの三次元生成モデルに基づき、各可動部の位置及び方向を把握するとともに、多関節ブームの一部について三次元点群データの欠損がある場合、予め登録されている多関節ブームの形状、寸法データに基づき三次元モデルの欠損部分を補完する第3ステップと、
前記第1ステップから第3ステップを繰り返し連続的に行うことにより、前記多関節ブームの位置状態を把握し、前記多関節ブームを所定位置まで移動させることを特徴とする建設機械におけるブーム位置決め制御方法が提供される。上記請求項1記載の発明の基本原理を、建設機械におけるブーム位置決め制御に適用したものである。なお、前記「多関節ブームの可動部」には、ブームの他、先端に設けられるバケット等の作業構造部を含むものとする。
【0018】
請求項4に係る本発明として、多関節ブームを備える建設機械における前記多関節ブームの位置決め制御方法であって、前記建設機械外の位置に三次元計測機器を設置するとともに、設置点座標を既知とし、かつ三次元点群データのデータ処理を行うコンピュータを設置するとともに、該コンピュータに予め、前記多関節ブームの可動部毎にその形状、寸法データを登録しておき、
前記三次元計測機器により前記多関節ブームを含む範囲をスキャニングすることにより三次元点群データを取得する第1ステップと、
前記三次元点群データに基づき、前記コンピュータによって三次元モデルを生成するとともに、該三次元モデルと、予めコンピュータに登録された前記多関節ブームの各可動部の形状、寸法データとのパターンマッチングを行い、前記多関節ブームの各可動部を特定する第2ステップと、
前記多関節ブームの三次元生成モデルに基づき、各可動部の位置及び方向を把握するとともに、多関節ブームの一部について三次元点群データの欠損がある場合、予め登録されている多関節ブームの形状、寸法データに基づき三次元モデルの欠損部分を補完する第3ステップと、
前記第1ステップから第3ステップを繰り返し連続的に行うことにより、前記多関節ブームの位置状態を把握し、前記多関節ブームを所定位置まで移動させることを特徴とする建設機械におけるブーム位置決め制御方法が提供される。上記請求項2記載の発明の基本原理を、建設機械におけるブーム位置決め制御に適用したものである。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記三次元計測機器として、三次元スキャナー又は複数台のCCDカメラを用いる請求項1、2いずれかに記載の削岩機搭載台車における穿孔位置決め制御方法または請求項3,4いずれかに記載の建設機械におけるブーム位置決め制御方法が提供される。
【0020】
請求項6に係る本発明として、前記削岩機搭載台車が削岩機を搭載したガイドシェルを複数有する場合には、前記削岩機を搭載したガイドシェルを色分けすることにより識別可能としてある請求項1,2いずれかに記載の削岩機搭載台車における穿孔位置決め制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり、請求項1、2、5、6いずれかに記載の本発明によれば、ガイドシェル、ブームを作動させるサーボ機構を有しない既存の削岩機搭載台車に対して、簡単に穿孔位置決め機能を持たせることが可能であるとともに、削岩機及び/又はガイドシェルの一部が障害物によって隠れ、三次元計測機器によって視認できなくなったとしても、削岩機及び/又はガイドシェルの状態(位置、角度等)を把握できるようになる。
【0022】
請求項3、4、5いずれかに記載の本発明によれば、サーボ機構を有しない既存の、多関節ブームを備える建設機械に対して、簡単にブーム位置決め機能を持たせることが可能であるとともに、ブームの一部が障害物によって隠れ、三次元計測機器によって視認できなくなったとしても、ブームの状態(位置、角度等)を把握できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0024】
〔第1A形態例〕
〔削岩機搭載台車1の構造〕
ドリルジャンボ1は、図1に示されるように、多関節ブーム11を介して、削岩機13を搭載したガイドシェル12を、走行可能な台車14により支持した構造を成す穿孔装置である。
【0025】
前記多関節ブーム11、ガイドシェル12及び削岩機13からなる穿孔装置本体10は、具体的には図2に示されるように、台車14の基台15上にブーム台16を旋回軸17によって枢着し、このブーム台16に伸縮ブーム18の基端を俯仰軸19によって枢着している。伸縮ブーム18は基端ブーム18Aと先端ブーム18Bとからなり、先端ブーム18Bが基端ブーム18Aに対して伸縮自在にスライドするようになっている。前記基台15とブーム台16との間には旋回用油圧シリンダ20、伸縮ブーム18の基端ブーム18Aとブーム台16との間には俯仰用油圧シリンダ21が設けられており、これによって伸縮ブーム18は、旋回、俯仰可能となっている。
【0026】
先端ブーム18Bの先端部には、チルトボデイ22がチルト軸23によって枢着され、先端ブーム18Bとの間にチルト用油圧シリンダ24を設けチルト可能になっている。チルトボデイ22には、スイングボデイ25がスイング軸26によって枢着され、チルトボデイ22との間にスイング用油圧シリンダ(図示略)を設けてスイング可能になっている。スイングボデイ25にはガイドロータリ27が設けられており、ロータリ軸28を中心としてローテーション可能になっている。ガイドロータリ27には、マウント軸30でガイドマウンチング29が支持され、このガイドマウンチング29でガイドシェル12を前後スライド可能に支承している。ガイドシェル12には、先端にビット13aを取付けたロッド13bが挿着されている削岩機13が搭載されており、削岩機13は前後方向への送りが与えられて切羽Sの岩盤に穿孔する。
〔削岩機13及び/又はガイドシェル12の位置計測のための機器〕
前記ドリルジャンボに対し、図1、図2等に示されるように、前記ドリルジャンボ1上に三次元スキャナー9を設置するとともに、三次元点群データのデータ処理を行うコンピュータ2を設置する。前記三次元スキャナー9はコンピュータ2と信号線によって接続されている。前記コンピュータ2には、予め計画された穿孔パターンに従った位置決め用座標データが入力されているとともに、予め削岩機13及び/又はガイドシェル12の形状、寸法データが登録されている。
【0027】
〔削岩機の穿孔位置決め制御〕
以下、前記削岩機13の穿孔位置決め制御方法について詳述する。
【0028】
先ず最初に、図1に示されるように、ドリルジャンボ1を切羽Sへの穿孔のために切羽手前に定位させたならば、三次元スキャナー9により、ドリルジャンボ1の後方に設けた視準ターゲット7A、7Bを視準することにより、三次元スキャナー9の座標を演算により求め確定する。
【0029】
上記準備測量が完了したならば、穿孔作業時に、図3に示されるように、三次元スキャナー9により前記削岩機13及び/又はガイドシェル12を含む範囲をスキャニングすることにより三次元点群データを取得するようにする。この場合、三次元点群データのデータ量が膨大な場合や及びノイズを除去するために、三次元点群データの間引きを行うようにするのが望ましい。三次元点群データの間引き方法としては、種々の方法が提案されているが、例えば特開平6−94428号公報、特開2000−2435号公報に示される方法などがある。前者の特開平6−94428号公報に記載されるデータ量縮減方法は、得られた三次元点群データを指定された精度まで繰り返し近似を行い曲面のパラメトリック関数に変換し、入力先システムのデータフォーマットにより記述する技術であり、後者の特開2000−2435号公報に記載されるデータ量縮減方法は、予めユーザー設定で縮減度(間引き比率)設定し、ある点について着目する処理をすべての点について繰り返し行い、何点目の処理をしているかのカウンタを点番号とし、これとそれまでに残した点のカウンタを持つようにし、1つの点を取り出した時、(残した点数)/(点番号)を判定値として計算し、その値が縮減度よりも小さい場合には間引き、そうでない場合には残すようにする処理を繰り返し行うものである。なお、詳しくは同公報を参照されたい。
【0030】
次いで、前記三次元点群データに基づき、形状を特定する各種の処理を行い、前記コンピュータ2によって三次元モデルを生成する。この際、生成される三次元モデルには、削岩機13及びガイドシェル12以外にも、前記多関節ブーム、場合によっては他の機械類等が存在する場合があるため、該三次元モデルと、予めコンピュータ2に登録された前記削岩機13及び/又はガイドシェル12の形状、寸法データとのパターンマッチングを行い、削岩機13及び/又はガイドシェル12がどれであるかを特定する。
【0031】
そして、前記削岩機13及び/又はガイドシェル12の三次元生成モデルに基づき、その位置(三次元座標)及び方向を把握するとともに、仮に障害物等に隠れ、前記三次元スキャナー9によって三次元点群データが取得されず、削岩機13及び/又はガイドシェル12の一部について三次元点群データの欠損がある場合、予め登録されている削岩機13及び/又はガイドシェル12の形状、寸法データに基づき三次元モデルの欠損部分を補完する。すなわち、削岩機13及び/又はガイドシェル12の一部について三次元モデルの生成ができない場合は、判明している削岩機13及び/又はガイドシェルの三次元モデル部分の情報と、予め登録されている削岩機13及び/又はガイドシェル12の形状、寸法データに基づいて、三次元モデルの欠損部分のデータを埋めるようにする。
【0032】
前述した削岩機13及び/又はガイドシェル12の三次元位置計測を繰り返し連続的に行うことにより、前記削岩機13及び/又はガイドシェル12の位置及び方向を把握し、前記削岩機13を所定の穿孔位置まで移動させるようにする。
【0033】
〔第1B形態例〕
本第2形態例は、第1形態例ではドリルジャンボ1上に設けた三次元スキャナー9をドリルジャンボ1周囲の、設置点座標が既知とされる位置(設置後の計測により座標を特定する場合を含む。)に固定的に設けるようにし、穿孔作業前に、三次元スキャナー9の座標を既知とするための測量作業を省略可能にしたものである。
【0034】
具体的には、図4に示されるように、三次元スキャナー9を、例えばトンネル内壁の天井部等に固定的に設ける。三次元スキャナー9の設置点座標は、ドリルジャンボ1の後方に設けた視準ターゲット7A、7Bを視準することにより計測しておく。
【0035】
後は、前記第1A形態例と同様の要領により、三次元スキャナー9により前記削岩機13及び/又はガイドシェル12を含む範囲をスキャニングすることにより三次元点群データを取得し、コンピュータ2によって三次元モデルを生成するとともに、該三次元モデルと、予めコンピュータ2に登録された前記削岩機13及び/又はガイドシェル12の形状、寸法データとのパターンマッチングを行い、削岩機13及び/又はガイドシェル12を特定し、削岩機13及び/又はガイドシェル12の三次元生成モデルに基づき、位置及び方向を把握するとともに、削岩機13及び/又はガイドシェル12の一部について三次元点群データの欠損がある場合、予め登録されている削岩機13及び/又はガイドシェル12の形状、寸法データに基づき三次元モデルの欠損部分を補完するようにする。
【0036】
前記ドリルジャンボ1は、切羽削孔時に切羽前面に位置し、発破時には待避のために後方側へ移動を繰り返すことになるため、その度に前記三次元スキャナー9の座標位置を既知とするための測量作業が必要となり作業が繁雑となる。従って、本第1B形態例のように、前記三次元スキャナー9の座標が既知とされる点に固定配置し、削岩機13及び/又はガイドシェル12の位置及び方向のみを計測できるようにすれば、測量作業を大幅に省力化できるようになる。
【0037】
〔第2形態例〕
上記第1A、第1B形態例では、ドリルジャンボ1に本発明を適用した例について述べたが、本発明は図5に示されるように、多関節ブーム4を備える建設機械、例えば油圧ショベル5等のブーム位置決め制御に対しても同様に適用が可能である。
【0038】
この場合は、先ず前記コンピュータ2に予め、前記多関節ブーム4の可動部毎、すなわち第1ブーム4A、第2ブーム4B、バケット4Cの形状、寸法データを登録しておく。
【0039】
掘削作業時に、先ず、油圧ショベル5を掘削部位に定位させたならば、三次元スキャナー9により、周囲に設けた視準ターゲット7A、7B(図示省略)を視準することにより、三次元スキャナー9の座標を演算により求め確定する。前記三次元スキャナー9の設置座標を既知とした状態で、前記三次元スキャナー9により前記多関節ブーム4を含む範囲をスキャニングすることにより三次元点群データを取得し、次いで前記三次元点群データに基づき、前記コンピュータ2によって三次元モデルを生成する。この際、生成される三次元モデルには、前記多関節ブーム4A、4B、及びバケット4C等があるため、該三次元モデルと、予めコンピュータ2に登録された前記第1ブーム4A、第2ブーム4B、バケット4Cの形状、寸法データとのパターンマッチングを行い、それぞれを特定する。
【0040】
前記多関節ブーム4の三次元生成モデルに基づき、各可動部4A〜4Cの位置及び方向を把握するとともに、多関節ブーム4の一部について三次元点群データの欠損がある場合、予め登録されている多関節ブーム4の各可動部4A〜4Cの形状、寸法データに基づき三次元モデルの欠損部分を補完する。前述した多関節ブーム4の三次元位置計測を繰り返し連続的に行うことにより、前記多関節ブーム4の位置状態を把握し、前記多関節ブーム4を所定位置まで移動させるようにする。
【0041】
また、この建設機械の場合も、上記第1B形態例のように、三次元スキャナー9を油圧ショベル5周囲の、設置点座標が既知とされる位置に固定的に設けるようにしてもよい。
【0042】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では1台の三次元スキャナー9を用いて三次元点群データを取得するようにしたが、死角を補完するために2箇所以上に三次元スキャナー9を設置するようにしてもよい。
【0043】
(2)上記形態例では、三次元計測機器として三次元スキャナー9を用いて点群データを取得するようにしたが、光軸が平行乃至その交角が既知である複数台のCCDカメラ等の撮像装置を配置した機器を用い、ステレオ画像処理により点群データを取得するようにしてもよい。
【0044】
(3)上記第1A、第1B形態例では、サーボ機構を有しないドリルジャンボ1に対して本発明を適用することにより、極簡単に穿孔位置決め制御機能を持たせることを可能としたが、サーボ機構を有するドリルジャンボに対して適用してもよい。この場合は、最初の計測で削岩機13のビット13aの位置座標と方向とを求めたならば、削孔位置までの移動量を演算し、サーボ機構により削岩機13を所定の穿孔位置まで移動させることが可能である。
【0045】
(4)上記第1形態例のドリルジャンボ1のように、複数の、図示例では2台の穿孔装置本体10、10を備える場合には、各穿孔装置本体10,10の識別を行うために、それぞれを色分けするのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1A形態例に係るドリルジャンボ1の穿孔位置決め要領を示す、(A)は側面図、(B)は平面図である。
【図2】穿孔装置本体10部分の要部拡大図である。
【図3】ガイドシェル12の位置計測要領の概念図である。
【図4】第1B形態例に係るドリルジャンボ1の穿孔位置決め要領を示す側面図である。
【図5】第2形態例に係る油圧ショベル5のブーム位置決め制御要領を示す側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1…ドリルジャンボ、2…コンピュータ、4…多関節ブーム、5…油圧ショベル、7A・7B…視準ターゲット、9…三次元スキャナー、10…穿孔装置本体、12…ガイドシェル、13…削岩機、S…切羽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な台車に対し、多関節ブームを介して、削岩機を搭載したガイドシェルを支持した削岩機搭載台車における前記ガイドシェルの位置決め制御方法であって、
前記削岩機搭載台車に三次元計測機器を設置するとともに、三次元点群データのデータ処理を行うコンピュータを設置し、かつ前記コンピュータに予め、前記削岩機及び/又はガイドシェルの形状、寸法データを登録しておき、
穿孔作業時に、前記三次元計測機器の座標を既知とした状態で、前記三次元計測機器により前記削岩機及び/又はガイドシェルを含む範囲をスキャニングすることにより三次元点群データを取得する第1ステップと、
前記三次元点群データに基づき、前記コンピュータによって三次元モデルを生成するとともに、該三次元モデルと、予めコンピュータに登録された前記削岩機及び/又はガイドシェルの形状、寸法データとのパターンマッチングを行い、削岩機及び/又はガイドシェルを特定する第2ステップと、
前記削岩機及び/又はガイドシェルの三次元生成モデルに基づき位置及び方向を把握するとともに、削岩機及び/又はガイドシェルの一部について三次元点群データの欠損がある場合、予め登録されている削岩機及び/又はガイドシェルの形状、寸法データに基づき三次元モデルの欠損部分を補完する第3ステップと、
前記第1ステップから第3ステップを繰り返し連続的に行うことにより、前記削岩機及び/又はガイドシェルの位置及び方向を把握し、前記削岩機を所定の穿孔位置まで移動させることを特徴とする削岩機搭載台車における穿孔位置決め制御方法。
【請求項2】
走行可能な台車に対し、多関節ブームを介して、削岩機を搭載したガイドシェルを支持した削岩機搭載台車における前記ガイドシェルの位置決め制御方法であって、
前記削岩機搭載台車外の位置に三次元計測機器を固定的に設置するとともに、設置点座標を既知とし、かつ三次元点群データのデータ処理を行うコンピュータを設置するとともに、該コンピュータに予め、前記削岩機及び/又はガイドシェルの形状、寸法データを登録しておき、
前記三次元計測機器により前記削岩機及び/又はガイドシェルを含む範囲をスキャニングすることにより三次元点群データを取得する第1ステップと、
前記三次元点群データに基づき、前記コンピュータによって三次元モデルを生成するとともに、該三次元モデルと、予めコンピュータに登録された前記削岩機及び/又はガイドシェルの形状、寸法データとのパターンマッチングを行い、削岩機及び/又はガイドシェルを特定する第2ステップと、
前記削岩機及び/又はガイドシェルの三次元生成モデルに基づき位置及び方向を把握するとともに、削岩機及び/又はガイドシェルの一部について三次元点群データの欠損がある場合、予め登録されている削岩機及び/又はガイドシェルの形状、寸法データに基づき三次元モデルの欠損部分を補完する第3ステップと、
前記第1ステップから第3ステップを繰り返し連続的に行うことにより、前記ガイドシェルの位置及び方向を把握し、前記削岩機を所定の穿孔位置まで移動させることを特徴とする削岩機搭載台車における穿孔位置決め制御方法。
【請求項3】
多関節ブームを備える建設機械における前記多関節ブームの位置決め制御方法であって、前記建設機械に三次元計測機器を設置するとともに、三次元点群データのデータ処理を行うコンピュータを設置し、かつ前記コンピュータに予め、前記多関節ブームの可動部毎にその形状、寸法データを登録しておき、
作業時に、前記三次元計測機器の座標を既知とした状態で、前記三次元計測機器により前記多関節ブームを含む範囲をスキャニングすることにより三次元点群データを取得する第1ステップと、
前記三次元点群データに基づき、前記コンピュータによって三次元モデルを生成するとともに、該三次元モデルと、予めコンピュータに登録された前記多関節ブームの各可動部の形状、寸法データとのパターンマッチングを行い、前記多関節ブームの各可動部を特定する第2ステップと、
前記多関節ブームの三次元生成モデルに基づき、各可動部の位置及び方向を把握するとともに、多関節ブームの一部について三次元点群データの欠損がある場合、予め登録されている多関節ブームの形状、寸法データに基づき三次元モデルの欠損部分を補完する第3ステップと、
前記第1ステップから第3ステップを繰り返し連続的に行うことにより、前記多関節ブームの位置状態を把握し、前記多関節ブームを所定位置まで移動させることを特徴とする建設機械におけるブーム位置決め制御方法。
【請求項4】
多関節ブームを備える建設機械における前記多関節ブームの位置決め制御方法であって、前記建設機械外の位置に三次元計測機器を設置するとともに、設置点座標を既知とし、かつ三次元点群データのデータ処理を行うコンピュータを設置するとともに、該コンピュータに予め、前記多関節ブームの可動部毎にその形状、寸法データを登録しておき、
前記三次元計測機器により前記多関節ブームを含む範囲をスキャニングすることにより三次元点群データを取得する第1ステップと、
前記三次元点群データに基づき、前記コンピュータによって三次元モデルを生成するとともに、該三次元モデルと、予めコンピュータに登録された前記多関節ブームの各可動部の形状、寸法データとのパターンマッチングを行い、前記多関節ブームの各可動部を特定する第2ステップと、
前記多関節ブームの三次元生成モデルに基づき、各可動部の位置及び方向を把握するとともに、多関節ブームの一部について三次元点群データの欠損がある場合、予め登録されている多関節ブームの形状、寸法データに基づき三次元モデルの欠損部分を補完する第3ステップと、
前記第1ステップから第3ステップを繰り返し連続的に行うことにより、前記多関節ブームの位置状態を把握し、前記多関節ブームを所定位置まで移動させることを特徴とする建設機械におけるブーム位置決め制御方法。
【請求項5】
前記三次元計測機器として、三次元スキャナー又は複数台のCCDカメラを用いる請求項1、2いずれかに記載の削岩機搭載台車における穿孔位置決め制御方法または請求項3,4いずれかに記載の建設機械におけるブーム位置決め制御方法。
【請求項6】
前記削岩機搭載台車が削岩機を搭載したガイドシェルを複数有する場合には、前記削岩機を搭載したガイドシェルを色分けすることにより識別可能としてある請求項1,2いずれかに記載の削岩機搭載台車における穿孔位置決め制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−25163(P2008−25163A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197569(P2006−197569)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(591284601)株式会社演算工房 (22)
【Fターム(参考)】