説明

剛性または可撓性マクロ多孔性研磨物品

マクロ多孔性研磨物品には、マクロ多孔性構造を有するスパンレース基材とコーティングが含まれる。コーティングは樹脂結合剤と研磨剤凝集体から成る。研磨剤凝集体は、研磨剤グリット粒子とナノ粒子結合剤との組成物から形成される。コーティングは基材内に少なくとも部分的に埋込まれている。マクロ多孔性研磨物品を製造する方法には、研磨剤グリット粒子とナノ粒子結合剤との研磨剤凝集体を樹脂結合剤と組合せてスラリーを形成するステップが含まれる。スラリーは、少なくとも部分的に基材に浸透するような形でマクロ多孔性支持体構造に塗布される。樹脂はその後硬化させられて凝集体砥粒を基材にボンドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2008年12月22日出願の米国仮特許出願第61/203,422号明細書の恩典を請求するものである。上述の出願の教示全体は、参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
仕上げおよび艶出しにおいて使用するための高性能研磨剤粒子には、グリット粒子と複合粒子が含まれる。グリット粒子は中実砥粒であり、一方複合粒子は、小さい一次グリット粒子がナノ粒子結合剤内部に合わせて結合された凝集体から形成されている。
【0003】
従来、一つの表面を所望の平滑さに仕上げるかまたは艶出しするためにグリット粒子が使用される場合、艶出しプロセスは、さまざまなグリッドサイズの研磨剤砥粒を用いて複数の艶出しステップで行なわれる。各々の連続する艶出しステップには、サイズが減少するグリット粒子の使用を伴う。表面はまず第1に比較的粗い研磨剤材料で艶出しされ、次に幾分かさらに細かいグリット研磨剤材料で再度艶出しされる。このプロセスは何度か反復されてよく、各々の連続する再艶出し作業は、表面が所望の平滑度まで艶出しされるまで、漸進的に細かくなるグリット研磨剤で実施される。
【0004】
複合粒子の使用は、より少ないステップで、またさらには単一の艶出しステップのみで、匹敵する表面平滑度を達成する効率の良さを提供することが発見された。一次粒子、ナノ粒子結合剤そして凝集体は全体として各々が、所望の最終的表面平滑度を得るのに必要な艶出しステップを達成すると考えられている。したがって、複合粒子は、高速超微細艶出しを必要とする利用分野において好適である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それでも、改善された表面平滑度そしてより長い製品寿命を達成する研磨物品および艶出し方法に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は、マクロ多孔性構造およびコーティングを有するパターン化されたスパンレース不織布基材を含むマクロ多孔性研磨物品に関する。コーティングは、樹脂結合剤および研磨剤凝集体から成る。研磨剤凝集体は、研磨剤グリット粒子とナノ粒子結合剤の組成物から形成される。このコーティングは、少なくとも部分的に基材に埋込まれている。
【0007】
別の態様では、本発明はマクロ多孔性研磨物品の形成方法に関する。この方法は、ナノ粒子結合剤中の研磨剤グリット粒子から形成された研磨剤凝集体を樹脂結合剤と組合せてスラリーを形成するステップを含む。スラリーは、次に、基材に少なくとも部分的に浸透するような形で、マクロ多孔性構造を有するパターン化されたスパンレース不織布基材に塗布される。樹脂は次に硬化されて、基材に対して凝集体砥粒をボンドする。
【0008】
本発明には、数多くの利点がある。例えば本発明の研磨物品は、使用中に工作物からの乾燥または湿潤削りくずのいずれかを実質的に除去するマクロ多孔性裏当てまたは基材を含む。こうすることで、発生する可能性のある「目詰まり」すなわち閉塞を著しく低減し、こうして研磨物品の切削寿命を延ばすことができる。さらに、本発明の研磨物品は、例えば乾式壁目地サンディングを含めた利用分野に特に適しているように、剛性のものであり得る。別の実施形態において、この研磨物品は可撓性であり得、眼科用レンズ仕上げなどの利用分野に適している。本発明の可撓性または半剛性のいずれかの研磨物品を利用できるその他の利用分野は、自動車用クリヤーコート仕上げおよび自動車用プライマー仕上げである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】基材上のコーティング内のシリカナノ粒子と組合されたダイヤモンドグリットを含む研磨剤凝集体を示す、走査電子顕微鏡で撮影した顕微鏡写真である。
【図2】基材上のコーティング内のシリカナノ粒子と組合されたダイヤモンドグリットを含む研磨剤凝集体を示す、走査電子顕微鏡で撮影した顕微鏡写真である。
【図3】基材上のコーティング内のシリカナノ粒子と組合されたダイヤモンドグリットを含む研磨剤凝集体を示す、走査電子顕微鏡で撮影した顕微鏡写真である。
【図4】基材上のコーティング内のシリカナノ粒子と組合された炭化ケイ素グリットを含む研磨剤凝集体を示す、走査電子顕微鏡で撮影した顕微鏡写真である。
【図5】基材上のコーティング内のシリカナノ粒子と組合された炭化ケイ素グリットを含む研磨剤凝集体を示す、走査電子顕微鏡で撮影した顕微鏡写真である。
【図6】基材上のコーティング内のシリカナノ粒子と組合された炭化ケイ素グリットを含む研磨剤凝集体を示す、走査電子顕微鏡で撮影した顕微鏡写真である。
【図7】パターン化マクロ多孔性基材の図である。
【図8】研磨物品向けの2つの異なる裏当ての性能比較を示す。
【図9】研磨剤グリット粒子内の2つの異なる炭化ケイ素ボンディング度の性能比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以上のことは、異なる図全体を通して同じ参照番号が同じ部品を意味している添付図面中で示されている本発明の例証的実施形態のさらに詳細な説明から、明らかになる。図面は必ずしも原寸に比例しておらず、代りに本発明の実施形態を例示することが重要視されている。本明細書中で引用されている全ての特許、公開出願および参考文献の教示は、その全体が参照により本明細書に援用されている。以下で詳述するのは、本発明の研磨物品のさまざまな実施形態の構成要素である。
【0011】
本発明の研磨物品は、パターン化マクロ多孔性基材、樹脂結合剤および研磨剤凝集体を含む。研磨剤凝集体は、研磨剤グリット粒子およびナノ粒子結合剤を含む。
【0012】
マクロ多孔性基材
一実施形態において、本発明の研磨物品のマクロ多孔性基材は、不織布ウェブを形成するために結合された繊維から形成される。繊維は、ニードルパンチングおよび水流交絡などの当該技術分野において公知の適切な方法によって噛合わせることができる。水流交絡されたウェブは「スパンレース」としても公知である。一部の実施形態では、基材をベロアアタッチメント(velour attachment)系と水流交絡させて、艶出し用工具に対する糸くずの出ない取付け可能性を有する複合基材を作り上げることができる。基材の繊維は連続繊維または短繊維、モノフィラメントまたはマルチフィラメントであり得、ポリマー繊維および植物繊維を含むさまざまな材料で形成可能である。一実施形態において、繊維はポリエステル繊維である。使用可能なその他の材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、レーヨン、鋼、グラスファイバなどの合成繊維、あるいは綿または羊毛などの天然繊維が含まれる。繊維は、約100〜2000デニールの間にあり得る。
【0013】
基材材料は、好ましくは可撓性であり、約300ミクロン〜約6mmの間の厚みを有し得る。基材のパターンは変動し得るが、図7に示されているものなどのマクロ孔を含んでいるべきである。本明細書で使用される「マクロ多孔性」という用語は、約15ミクロン〜約3mmの孔サイズを有することを意味している。マクロ多孔性基材のマクロ孔は、艶出し作業中の削りくずの蓄積を削減するだけでなく、研磨物品に高い柔軟性を付与することができ、こうしてこの研磨物品は不規則なサンディング済み形状に適合できるようになる。さらに、マクロ孔は、流体およびサンディング削りくずがウェブ内を流れることができるようにし、研磨物品の目詰まりを防止する。
【0014】
研磨剤凝集体粒子
本明細書で使用される「凝集体」という用語は、圧力または撹拌を加えることによってさらに小さい粒子へと凝集体粒子を分離または崩壊させることが比較的むずかしくなるような形で組合わされた複数のより小さな粒子で作られた粒子に言及するために使用されてよい。これは、圧力または手作業での撹拌を加えることなどによってより小さい粒子へと崩壊させることが比較的容易であるような形で組合わされた複数のより小さな粒子で作られた粒子に言及するために使用される「集塊」という用語とは対照的である。一般に、「集塊」はスラリーまたは分散中で自然発生的に形成し、一方凝集体は、教示が全体として参照により本明細書に援用されている米国特許第6,797,023号明細書および2008年1月23日出願のStarlingの「Coated Abrasive Products Containing Aggregates」という題の米国特許出願第12/018589号明細書中に記載のものなどの具体的方法により形成されなくてはならない。「凝集体」は、微粒子範囲内のサイズを有する研磨剤グリットおよび、研磨剤グリットが中に埋込まれるかまたは格納される凝集体のマトリクスを提供するナノ粒子結合剤の両方を含む複合構造を有する。
【0015】
典型的には、凝集体は、凝集体の微結晶サイズ、砥粒サイズ、密度、引張り強度、ヤング率などを改変するか焼、焼結または再結晶などの顕著な形成後熱処理無く研磨剤材料内で利用される。このような熱処理プロセスは、使用可能な製品を提供する目的でセラミック加工において一般に実施されるが、本明細書では利用されない。適切な熱処理ステップは一般に約400℃超、一般に約500℃以上で実施される。実際、温度は、一部のセラミック種については、容易に約800℃〜約1200℃以上の範囲内にあり得る。
【0016】
拡大して見た場合、凝集体は、図4〜6の走査電子顕微鏡写真でわかるように丸くなったまたは球状のものとして特徴づけされる一般に回転楕円体形状を有する。しかしながら、一部の例では、凝集体は、その中心近くに空隙を有し、したがって図1〜3の走査顕微鏡写真でわかるようなよりドーナツ形またはトーラス様の形状を示すものとして観察されるかもしれない。ダイヤモンドグリットなどの研磨剤グリット材料の個々の粒子は、凝集体の表面全体にわたり、かつその内部に分散するものとして観察されるかもしれず、凝集体の表面上で個々のグリット粒子が合わさって凝集するケースは比較的少ない。図1〜6は樹脂結合剤系内で共に結合された分散した個々の凝集体を示すということが指摘される。
【0017】
凝集体のサイズおよびサイズ範囲は、調整されてよく、かつ混合物の組成そして凝集体形成において噴霧乾燥機が使用される場合には噴霧乾燥機の送り速度を含めた数多くの要因により左右されるかもしれない。例えば、およそ20ミクロン、35ミクロン、40ミクロンおよび45ミクロンのものを含めたサイズの研磨剤凝集体を、噴霧乾燥機を用いて生産することができる。これらの凝集体は、約5〜約8ミクロンの範囲内の研磨剤グリット粒子を含むことができる。
【0018】
研磨剤凝集体のさらなる研究により、回転楕円体には中空のものもあれば、本質的に砥粒および/またはナノ粒子結合剤で充填されているものもある、ということが明らかにされた。中空粒子は、凝集体の平均粒子サイズの約0.08〜約0.4倍の範囲内の壁厚を有する厚い殻で覆われたラケットボールと類比し得る。プロセスパラメータおよび組成パラメータを修正して異なる壁厚を得ることが可能である。一部の実施形態においては、研磨剤集塊は、教示が全体として参照により本明細書に援用されている米国特許第6,797,023号明細書および2008年1月23日出願のStarlingの「Coated Abrasive Products Containing Aggregates」という題の米国特許出願第12/018589号明細書中に記載のものである。
【0019】
研磨剤グリット粒子
凝集体複合粒子を形成する研磨剤グリット粒子は一般に約3超、好ましくは約3〜約10のモース硬度を有する。特定の利用分野について、研磨剤グリット粒子は約5、6、7、8または9以上のモース硬度を有する。研磨剤グリット粒子は一般に、研磨剤凝集体内で一次活性研削または艶出し剤として役立つと考えられている。適切な研磨剤組成物の例としては、非金属無機固体、例えば炭化物、酸化物、窒化物および一部の炭素質材料が含まれる。酸化物としては酸化ケイ素(例えば石英、クリストバライトおよびガラス質形態)、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムが含まれる。炭化物および窒化物としては、炭化ケイ素、アルミニウム、窒化ホウ素(立方晶窒化ホウ素を含む)、炭化チタン、窒化チタン、窒化ケイ素が含まれるが、これに限定されない。炭素質材料としては、合成ダイヤモンド、ダイヤモンド様炭素および関連する炭素質材料例えばフラライトおよび凝集体ダイヤモンドナノロッドを広く含めたダイヤモンドが含まれる。材料には、天然に発生する広範囲の採掘鉱物、例えばガーネット、クリストバライト、石英、コランダム、長石なども含まれていてよい。本開示の一部の実施形態は、ダイヤモンド、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、および/または酸化セレン材料を利用し、ダイヤモンドが著しく有効であることが示されている。さらに、当業者であれば、所望の硬度特性を有するさまざまな他の組成物を、本開示の研磨剤凝集体内で研磨剤グリット粒子として使用してよい、ということを認識するものである。さらに、2つ以上の異なる研磨剤グリット粒子を同じ凝集体内で使用することができる。この研磨物品において使用するためのグリット粒子としては、炭化ケイ素が特に有効であることが発見された。詳細には、炭化ケイ素は好ましくは約21重量%がボンドされているが約10重量%〜約80重量%の範囲でボンドされ得る。
【0020】
以上の説明から理解されるはずであるが、実施形態では多様な研磨剤グリット粒子を使用してよい。以上のうち、立方晶窒化ホウ素およびダイヤモンドが「超研磨剤」粒子とみなされ、非常に重要な意味をもつ艶出し作業を含めた専門的な機械加工作業のために商業的に広く使用されてきた。さらに、研磨剤グリット粒子は、凝集体内に取込む前に個々の粒子上に金属コーティングを形成するべく、処理されてよい。超研磨剤グリットは、コーティングに特に適している。典型的な金属コーティングにはニッケル、チタン、銅、銀およびその合金および混合物が含まれる。
【0021】
一般に、研磨剤グリット粒子のサイズは、微粒子範囲内にある。本明細書中で使用される「微粒子」という用語は、約0.1ミクロン〜約50ミクロン、好ましくは約0.2ミクロン以上、約0.5ミクロン以上、または約0.75ミクロン以上で約20ミクロン以下、例えば約10ミクロン以下の平均粒子サイズを有する粒子に言及するために使用されてよい。特定の実施形態は、約0.5ミクロン〜約10ミクロンの平均粒子サイズを有する。研磨剤グリット粒子のサイズは、使用されているグリット粒子のタイプによって変動し得る。例えば、ダイヤモンドグリット粒子は約0.5〜約2ミクロンのサイズを有することができ、炭化ケイ素グリット粒子は約3〜約8ミクロンのサイズを有することができ、酸化アルミニウムグリット粒子は約3〜約5ミクロンのサイズを有することができる。
【0022】
研磨剤グリット粒子は研磨剤凝集体ナノ粒子などのより小さな粒子の研磨剤凝集体で形成され得るが、より一般的には研磨剤グリットは微粒子範囲内の単一粒子で形成される、という点に留意すべきである。本明細書で使用する「ナノ粒子」という用語は、約5nm〜約150nm、典型的には約100nm、80nm、60nm、50nm未満または約50nm未満の平均粒子サイズを有する粒子に言及するために使用されてよい。例えば、複数のナノサイズのダイヤモンド粒子を合わせて凝集させてダイヤモンドグリットの微粒子を提供してよい。研磨剤グリット粒子のサイズは、使用されるグリット粒子のタイプに応じて変動し得る。
【0023】
研磨剤グリット粒子は、一般に、凝集体の約0.1%〜約85%を構成してよい。凝集体はより好ましくは、約10重量%〜約50重量%の研磨剤グリット粒子を含む。
【0024】
単一のサイズの研磨剤グリット粒子を用いて研磨剤凝集体を形成してよく、グリット粒子および結果として得られる凝集体のサイズは両方共、所望の艶出し利用分野に合わせて調整される。変形形態では、2つ以上のサイズの異なる研磨剤グリット粒子の混合物を組み合わせて用いて、各々のグリット粒子サイズに起因する有利な特性を有する研磨剤凝集体を形成してもよい。
【0025】
ナノ粒子結合剤
本開示に係る研磨剤凝集体は、上述のようなナノ粒子結合剤材料も含んでいる。ナノ粒子結合剤は一般に、結合剤の性質上研磨剤凝集体の内部で研磨剤グリット粒子を共に形成し保持するように機能する連続マトリクス相を形成する。この点に関して、ナノ粒子結合剤は、連続マトリクス相を形成するもののそれ自体一般に、密に接触し、噛合わされかつ或る程度は互いにボンドされている個々に識別可能なナノ粒子で構成されている、という点に留意すべきである。しかしながら、このように形成された凝集体は生で未焼成状態にあることから、個々のナノ粒子は一般に、焼結セラミック材料の場合のように共に融合して砥粒を形成することはない。本明細書中で使用されるように、ナノ粒子結合剤の説明は1つまたは多数の結合剤種にまで及ぶ。
【0026】
ナノ粒子結合剤材料は、液体コロイドまたは懸濁液中のナノサイズの二酸化ケイ素(コロイドシリカとして公知)などの非常に細かいセラミックおよび炭素質粒子を含んでいてよい。ナノ粒子結合剤材料は同様に、コロイドアルミナ、ナノサイズの酸化セリウム、ナノサイズのダイヤモンドおよびその混合物も含んでいてよいが、これに限定されない。本開示の一部の実施形態においては、ナノ粒子結合剤として使用するためにコロイドシリカが好ましい。例えば、使用して成功を収めてきた市販のナノ粒子結合剤としては、コロイドシリカ溶液BINDZEL2040 BINDZIL2040(Marietta、GeorgiaのEka Chemicals Inc.から入手可能)およびNEXSIL20(Ashland、MassachusettsのNyacol Nano Technologies,Inc.から入手可能)が含まれる。
【0027】
研磨剤凝集体は、凝集体内部における研磨剤グリットの分散を促進するために、主として可塑化剤として役立ち、分散剤としても公知である別の材料を含むこともできる。使用される加工温度が低いため、可塑化剤は凝集体中に残留すると考えられ、熱重量分析(TGA)により残留分として定量化された。可塑化剤は、混合物が噴霧乾燥される場合凝集体内のグリット粒子をナノ粒子結合剤材料と共に保持する上でも補助するかもしれないと考えられる。
【0028】
可塑化剤には、界面活性剤および他の表面張力改質種を含めた有機および無機の両方の材料が含まれる。特定の実施形態は、ポリマーおよびモノマーなどの有機種を使用する。例証的一実施形態において、可塑化剤はポリオールである。例えば、ポリオールはモノマーポリオールであってもポリマーポリオールであってもよい。例証的モノマーポリオールとしては、1,2−プロパンジオール;1,4−プロパンジオール;エチレングリコール;グリセリン;ペンタエリスリトール;糖アルコール類、例えばマリトール、ソルビトール、イソマルトまたはそれらの任意の組合せ;あるいはそれらの任意の組合せが含まれる。例証的ポリマーポリオールとしては、ポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコール;ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール;酸化ポリエチレン;酸化ポリプロピレン;酸化プロピレン、酸化エチレンまたはそれらの組合せとグリセリンの反応生成物;ジオールとジカルボン酸またはその誘導体の反応生成物、;天然油ポリオール;またはそれらの任意の組合せがある。一例では、ポリオールは、ポリエステルポリオール例えばジオールとジカルボン酸またはその誘導体の反応生成物であってよい。別の例では、ポリオールはポリエーテルポリオール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、またはグリセリンと酸化プロピレンまたは酸化エチレンの反応生成物である。詳細には、可塑化剤はポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0029】
研磨物品の形成
研磨物品のコーティングは当初、研磨剤凝集体および基材の表面に凝集体を接着させるために用いられる結合剤のスラリーである。結合剤は好ましくはポリマー樹脂結合剤である。適切なポリマー樹脂材料としては、ポリエステル類、エポキシ樹脂、ポリウレタン類、ポリアミド類、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリ塩化ビニル類、ポリエチレン、ポリシロキサン、シリコーン類、酢酸セルロース類、ニトロセルロース、天然ゴム、デンプン、シェラックおよびそれらの混合物がある。ポリマー樹脂は熱またはその他の放射線により硬化されてよい。最も好ましくは、樹脂はUV硬化性アクリレート樹脂である。
【0030】
凝集体および結合剤に加えて、スラリーは一般に、溶媒例えば水または有機溶媒およびポリマー樹脂材料をも含んでいる。スラリーは、さらに、基材上に凝集体砥粒をボンドするように設計された結合剤系を形成するためのその他の成分を追加で含んでいてよい。スラリー組成物は、例えば高せん断ミキサーなどを使用して徹底的に混合される。
【0031】
凝集体、樹脂および光学的添加剤は共に組合わされてスラリーを形成し、スラリーは少なくとも部分的に基材に浸透するように基材上にコーティングされる。スラリーは、好ましくはナイフ延展機を用いて基材に塗布されてコーティングを形成する。あるいは、スロットダイ、ロール、トランスファ、グラビアまたは逆転グラビアコーティング方法を用いてスラリーコーティングを塗布してもよい。基材が所望の塗り速度でナイフ延展機の下に補給されるにつれて、凝集体砥粒スラリーは、所望の厚みで基材に塗布される。
【0032】
研磨物品は、凝集体コーティングが基材にどれほど浸透するかに応じて、可撓性、半剛性または剛性であり得る。部分的浸透は、可撓性研磨物品を生み出し、一方コーティングの完全な浸透は、剛性または半剛性研磨物品を生成する。本明細書中で使用される「剛性」という用語は、約3インチという小さい半径まで変形または屈曲可能であることを意味する。本明細書中で使用される「半剛性」という用語は、約1インチという小さい半径まで変形または屈曲可能であることを意味する。本明細書中で使用される「可撓性」という用語は、約1/4インチという小さい半径まで変形または屈曲可能であることを意味する。
【0033】
任意には、重力塗布、スラリー、静電気コーティングまたは静電気スプレーなどのさまざまな砥粒塗布方法を用いて凝集体コーティング上に追加の研磨剤粒子を添加することができる。さらに、研磨物品に目詰まり防止剤または分散剤を添加して、削りくずの蓄積をさらに抑えることができる。
【0034】
コーティングされた基材はその後、加熱または放射線によって硬化されて、樹脂を固め凝集体砥粒を基材にボンドする。一実施形態において、コーティングされた基材は、この硬化プロセス中に約100℃〜約250℃の温度まで加熱される。本開示の別の実施形態においては、硬化ステップが約200℃未満の温度で実施されることが好ましい。さらに別の実施形態において、コーティングはUV放射により硬化される。
【0035】
樹脂がひとたび硬化され、凝集体研磨剤砥粒が基材にボンドされたならば、さまざまな素材除去、仕上げおよび艶出しの利用分野のために、コーティング済み基材を使用してよい。加工物の表面は、その一部分を除去するため研磨動作中の仕上った研磨剤製品を適用することによって研磨可能である。本発明の例証的実施形態について以下で説明する。
【実施例】
【0036】
2つのタイプの裏当て、すなわちPET(ポリエチレンテレフタレート)フイルムおよびマクロ多孔性基材(PGI Spun Lace M059スクリム)を、同一のAAA1.25インチテストパネル上で研磨性能について試験した。PETフイルムで裏当てした研磨物品とマクロ多孔性基材で裏当てした研磨物品は、炭化ケイ素グリット粒子およびナノ粒子結合剤樹脂から形成された研磨剤凝集体と混合したUVアクリレート結合剤樹脂を含む同じコーティングを含んでいた。
【0037】
消尽前のスポット数(「スポット数」)、平均表面粗度(「Ra」)およびピグテイル数(「ピグテイル数」)などの性能結果を記録し、図8に棒グラフで示している。消尽前のスポット数は、テスト物品の耐用寿命時間を示している。表面欠陥がそれ以上除去されなくなる前にできるかぎり多くの表面スポット上で表面欠陥を研磨し除去するために研磨剤被験試料を用いる。消尽前のスポット数が多くなればなるほど、被験物品の耐用寿命は長い。表面粗度は、表面形状測定装置、この場合はMahr Perthometer M2(GoettingenのMahr GmbH製)で測定する。平滑な表面が所望される。ピグテイルは、研磨中に研磨物品により形成される深いらせん形状の擦過傷であり、その存在は望ましくない。表は、スクリムがより多くの消尽前スポット、より低い表面粗度およびピグテイルの不在を示したため、マクロ多孔性基材(PGI SpunLace M059スクリム)上のUVアクリレートスラリーコーティングが、PETフイルム上のものよりも著しく優れた性能を示すことを示している。
【0038】
図8に示されているように、マクロ多孔性基材の裏当ては、研磨剤凝集体系内でPETフイルムの裏当てに比べて優れた研削性能を示す。これは同様に、研削後の最大表面粗度「Rmax」によっても観察できる。下表1は、以上で記述したものと類似する被験物品についての最大表面粗度値を提供している。
【0039】
【表1】

【0040】
炭化ケイ素研磨剤グリット粒子を含む凝集体については、2つの異なるボンディング度も試験した。第1の被験研磨物品は、21%ボンドされた炭化ケイ素グリット粒子を有していた。第2の被験研磨物品は、47%ボンドされた炭化ケイ素グリット粒子を有していた。図9の棒グラフでは、21%ボンドされた炭化ケイ素が合計スポット数での利点を提供することが示されている。
【0041】
本発明についてその例証的実施形態を基準にして詳細に示し記述してきたが、当業者であれば、添付のクレームが包含する本発明の範囲から逸脱することなく形態および詳細にさまざまな変更を加えてよいということを理解するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)マクロ多孔性構造を有する基材;および
b)前記マクロ多孔性基材上のコーティングであって、結合剤と、研磨剤グリット粒子およびナノ粒子結合剤の組成物から形成された研磨剤凝集体とを含むコーティング
を含み、前記コーティングが前記基材内に少なくとも部分的に埋込まれているマクロ多孔性研磨物品。
【請求項2】
可撓性である、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項3】
剛性または半剛性である、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項4】
前記コーティングが前記基材内に完全に埋込まれている、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項5】
前記不織布基材がポリエステル繊維を含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項6】
前記コーティングの上に砥粒コーティングをさらに含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項7】
さらに目詰まり防止剤/分散剤を含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項8】
前記研磨剤凝集体が一般に回転楕円体またはドーナツ形状を有する、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項9】
前記基材がベロアアタッチメント系と水流交絡されている、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項10】
前記結合剤が紫外光硬化性アクリレートである、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項11】
前記凝集体粒子が、本質的に充填されているまたは中空である、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項12】
前記グリッド粒子が、約21%のボンド炭化ケイ素を伴う非焼成粒子である、請求項11に記載の研磨物品。
【請求項13】
前記マクロ多孔性基材がパターン化されている、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項14】
前記マクロ多孔性基材が不織布である、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項15】
前記マクロ多孔性基材がスパンレースである、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項16】
マクロ多孔性研磨物品を形成する方法であって、
a)研磨剤グリット粒子とナノ粒子結合剤との研磨剤凝集体を樹脂結合剤と組合せてスラリーを形成するステップと;
b)マクロ多孔性構造を有するマクロ多孔性基材に対し前記スラリーを塗布して、少なくとも部分的に前記基材に浸透させるステップと;
c)前記樹脂を硬化させて、前記凝集体砥粒を前記基材にボンドするステップと;
を含む方法。
【請求項17】
前記スラリーが前記基材に完全に浸透する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記スラリーが、グラビアコーティング、ロールコーティングまたはトランスファコーティングによって前記基材に塗布される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記スラリーを前記基材に塗布した後に砥粒コーティングを塗布するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記砥粒コーティングが重力、スラリー、静電コーティングまたは静電スプレーにより塗布される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記樹脂結合剤がアクリレートである、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記アクリレート樹脂結合剤が紫外光により硬化される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記マクロ多孔性基材がパターン化されている、請求項16に記載の研磨物品。
【請求項24】
前記マクロ多孔性基材が不織布である、請求項16に記載の研磨物品。
【請求項25】
前記マクロ多孔性基材がスパンレースである、請求項16に記載の研磨物品。
【請求項26】
加工物表面を研磨する方法であって、研磨動作中の研磨製品を適用して前記加工物表面の一部を除去するステップを含み、前記研磨製品が、
a)マクロ多孔性構造を有する不織布基材;および
b)前記マクロ多孔性基材上のコーティングであって、結合剤と、研磨剤グリット粒子およびナノ粒子結合剤の組成物から形成された研磨剤凝集体とを含むコーティング、
を含み、前記コーティングが前記基材内に少なくとも部分的に埋込まれている、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2012−512037(P2012−512037A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540955(P2011−540955)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/067914
【国際公開番号】WO2010/075041
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(391010770)サンーゴバン アブレイシブズ,インコーポレイティド (87)
【出願人】(507169495)サン−ゴバン アブラジフ (41)
【Fターム(参考)】