説明

剥離フィルムの洗浄方法、並びに基材フィルム及び剥離フィルムのリサイクル方法

【課題】低コストで容易に実施可能であり、剥離フィルムのリサイクルに適した剥離フィルムの洗浄方法を提供すること。
【解決手段】基材フィルムと、基材フィルム上に形成された剥離層と、を有する剥離フィルムの洗浄方法であって、剥離層の表面に付着した異物を、有機溶剤を含む洗浄液で洗浄する洗浄工程と、剥離層の表面に付着した洗浄液を除去する溶剤除去工程と、を有する剥離フィルムの洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は剥離フィルムの洗浄方法、並びに基材フィルム及び剥離フィルムのリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサの製造プロセスとして、剥離フィルム上に形成された誘電体グリーンシートを用い、剥離フィルムを剥がして誘電体グリーンシートを積層する方法が知られている。
【0003】
このような製造プロセスに用いる剥離フィルムとしては、所望の強度と剥離性とを併せ持つように基材フィルムと当該基材フィルム上にシリコーン樹脂で形成された剥離層とを有するのが一般的である。通常、誘電体グリーンシートから剥離された剥離フィルムには、誘電体グリーンシートと密着していた剥離層の表面上に少量の誘電体残渣が付着している。
【0004】
資源の有効利用の観点から、剥離フィルムや基材フィルムのリサイクルが検討されている。リサイクルにあたっては、剥離フィルムに付着した誘電体残渣や不純物を除去することが必要となる。
【0005】
リサイクル方法として、例えば、剥離フィルムを細かく裁断して洗浄し、基材フィルムを構成する樹脂を溶融させた後、樹脂原料を用いて基材フィルムを再生する方法や、剥離フィルムに易溶解性樹脂層を設けることにより、シリコーン樹脂などで構成される表面機能層と基材フィルムとの分離を容易にする技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−169005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の方法では、基材フィルム上に易溶解性樹脂層を別途設ける必要があること、また、基材フィルムを溶融させることが必要であることから、工程が複雑になり、剥離フィルムや基材フィルムのリサイクルに時間とコストがかかってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明者らは、剥離フィルムを容易にリサイクルする方法を確立するため、基材フィルムを溶融させずに、使用済みの剥離フィルムを洗浄してリサイクルすることを試みたところ、以下に説明する通り、満足のいく結果が得られなかった。
【0008】
誘電体グリーンシートまたは電極グリーンシートから剥離された剥離フィルムの剥離層には、誘電体残渣や電極材料残渣などの異物が付着している。このような剥離フィルムを洗浄液に浸漬した後、取り出すと、剥離層の表面上に洗浄液の液滴が付着している部分が発生する。そこで、そのまま洗浄液を乾燥させると、剥離フィルムの表面張力が低いので、液滴の径が小さくなりながら蒸発する。洗浄液中には、洗浄液に由来する微量の不純物や、洗浄液中に誘電体残渣や電極材料に由来する不純物が存在する。このため、剥離フィルムの表面に付着した洗浄液をそのまま乾燥させると、蒸発量に応じて、その中央に収縮されるようにして液滴の径が小さくなって不純物が濃縮され、最終的に異物が点状(当初あった液滴の中央近辺)に残存してしまう。このような方法で洗浄した剥離フィルムに誘電体スラリーを塗布した場合、点状に残存する異物によって誘電体層にピンホールが形成されてしまうことがわかった。
【0009】
剥離フィルムをリサイクルするための別の洗浄方法として、超高純度の洗浄液を大量に使用して剥離フィルムの表面に付着した誘電体残渣を除去する方法が挙げられる。しかし、この方法は、単価の高い洗浄液を大量に使用することとなるため、コストの増加に繋がるし、資源の有効利用の観点からも好ましくない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、低コストで容易に実施可能であり、リサイクルに適した剥離フィルムの洗浄方法を提供することを目的とする。また、低コストで容易に実施可能な剥離フィルム及び基材フィルムのリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明では、基材フィルムと、基材フィルム上に形成された剥離層と、を有する剥離フィルムの洗浄方法であって、剥離層の表面に付着した異物を、有機溶剤を含む洗浄液で洗浄する洗浄工程と、剥離層の表面に付着した洗浄液を除去する溶剤除去工程と、を有する剥離フィルムの洗浄方法を提供する。
【0012】
本発明の剥離フィルムの洗浄方法によれば、剥離層に異物が付着した剥離フィルムを低コストで容易に洗浄することができる。この洗浄方法によって洗浄された剥離フィルムは、表面に付着する異物の量が十分に低減されているため、誘電体グリーンシート形成用の剥離フィルムとして再利用した場合に、誘電体グリーンシートのピンホールの発生を十分に抑制することができる。したがって、本発明の洗浄方法は、剥離フィルムのリサイクル用の洗浄方法に適している。
【0013】
本発明の剥離フィルムの洗浄方法は、溶剤除去工程において、剥離層の表面に付着した洗浄液にガスを吹き付けることによって洗浄液を除去することが好ましい。これによって、一層低コストで容易に剥離フィルムを洗浄することができる。
【0014】
本発明の剥離フィルムの洗浄方法は、溶剤除去工程において、剥離層の表面に付着した洗浄液を繊維で吸収して除去することが好ましい。これによって、より確実に剥離フィルムの剥離層の表面に付着した溶剤を除去することができ、誘電体グリーンシート形成用の剥離フィルムとして再利用した場合に、誘電体グリーンシートのピンホールの発生を一層十分に抑制することができる。
【0015】
本発明の剥離フィルムの洗浄方法は、洗浄工程の前に、剥離層の表面と粘着ロールとを接触させて、表面に付着した異物の一部を除去する粘着工程を有することが好ましい。これによって、溶剤除去工程の前に、剥離層の表面に付着している誘電体をある程度除去することができるため、洗浄後における剥離層表面の異物の量を一層十分に低減することができる。
【0016】
本発明はまた、上記洗浄方法で洗浄した剥離フィルムをリサイクルする剥離フィルムのリサイクル方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、基材フィルムと、基材フィルム上に形成された剥離層と、を有する剥離フィルムの洗浄方法であって、剥離層に異物を有する剥離フィルムを、アルカリ性物質とアルコールとを含む溶液に接触させた後、有機溶剤と接触させて、剥離層を基材フィルムから除去する除去工程を有する剥離フィルムの洗浄方法を提供する。
【0018】
上記洗浄方法によれば、剥離層の表面や内部に異物を有する剥離フィルムを、容易に洗浄することができる。この理由としては、次の要因が挙げられる。まず、アルカリ性物質とアルコールとを含む溶液に剥離層を接触させることによって、剥離層を構成するシリコーン樹脂のシロキサン結合等を切断することができる。そして、結合の切断によって低分子化したシリコーン樹脂等を有機溶剤等に接触させることによって、基材フィルムから剥離層を容易に除去することができる。
【0019】
本発明では、除去工程の前に剥離層にコロナ処理を施す工程を有しており、除去工程で剥離フィルムを接触させる溶液が水を含有することが好ましい。これによって、剥離層の表面を親水性にすることができ、除去工程において水を含有する溶液を用いても、アルカリ性物質の剥離層への浸透を容易にすることができる。水を含有する溶液には、アルカリ性物質を容易に溶解させることができるため、一層円滑にシロキサン結合等の切断を行うことが可能となる。
【0020】
また、本発明では、上述の洗浄方法によって、剥離層が除去された基材フィルムの一面上に剥離層を形成する剥離層形成工程を有する剥離フィルムのリサイクル方法を提供する。このリサイクル方法によれば、表面の異物が十分に除去され、誘電体グリーンシートを剥離層上に形成した場合にピンホールの発生が十分に抑制可能な剥離フィルムを再生することができる。
【0021】
また、本発明では、一面上に剥離層が形成され、該剥離層上に異物が付着している基材フィルムを、アルカリ性物質とアルコールとを含む溶液に接触させた後、有機溶剤と接触させて、異物及び剥離層を基材フィルムから除去する除去工程を有する基材フィルムのリサイクル方法を提供する。これによって、低コストで容易に基材フィルムをリサイクルすることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、低コストで容易に実施可能であり、リサイクルに適した剥離フィルムの洗浄方法を提供することができる。また、低コストで容易に実施可能な剥離フィルム及び基材フィルムのリサイクル方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の洗浄方法に用いられる剥離フィルムの一例を模式的に示す側面図である。
【0025】
剥離フィルム10は、基材フィルム12と該基材フィルム12の一面上に形成された剥離層14とを有する。また、剥離層14の表面上には異物16が付着している。まず、基材フィルム12及び剥離層14について以下に説明する。
【0026】
基材フィルム12としては、例えばポリエステルフィルムが挙げられる。特に透明性が要求される用途には、透明性の高いポリエステルフィルムを用いることが好ましく、二軸延伸ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、遮光性が要求される用途には無機顔料を配合したポリエステルフィルムを用いることが好ましく、TiO、SiO等のような顔料を配合した二軸延伸ポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0027】
ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分とからなる結晶性の線状飽和ポリエステルであることが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等を例示することができる。
【0028】
本実施形態におけるポリエステルフィルムは、従来から知られている方法で製造することができる。例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムは、ポリエステルを乾燥後、押出機にて溶融し、ダイ(例えばT−ダイ、I−ダイ等)から回転冷却ドラム上に押出し、急冷して未延伸フィルムとし、次いでこの未延伸フィルムを二軸方向に延伸し、必要に応じて熱固定することにより製造することができる。
【0029】
基材フィルム12の厚みは特に制限されるものではないが、5〜250μmが好ましい。これによって、誘電体グリーンシートからの剥離性と機械的強度とを両立させることができる。
【0030】
剥離層14は、シリコーン樹脂(シリコーン硬化物)を含有することが好ましい。これによって、剥離性に優れた剥離層14とすることができ、誘電体グリーンシートを除去した後に剥離層14の表面10a上に残存する誘電体残渣の量を低減することができる。
【0031】
基材フィルム12の一面上に剥離層14を形成する剥離層形成工程について以下に説明する。剥離層14形成のために使用し得る剥離剤液としては、硬化型シリコーン樹脂を含有する塗液を用いることができる。剥離層14は、硬化型シリコーン樹脂を含有する塗液を塗布した後、乾燥、硬化させることで形成することができる。
【0032】
硬化型シリコーン樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、縮合反応型、付加反応型、紫外線硬化型、電子線硬化型などいずれのものでも用いることができる。具体例を挙げると、信越化学工業社製のKS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、KNS−305、KNS−3000、X−62−1256、ダウ・コーニング・アジア社製のDKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、東芝シリコーン社製のYSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721等、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSD7223、SD7226、SD7229、SRX−210等が挙げられる。
【0033】
硬化型シリコーン樹脂塗料をコーティングする方法としては、リバースロールコート法、グラビアロールコート法、エアーナイフコート法等、公知の方法を採用することができる。
【0034】
塗布された硬化型シリコーン樹脂塗料は、例えば、熱により乾燥、硬化させることにより硬化皮膜を形成することができる。その場合、50〜180℃、好ましくは80〜160℃の範囲の温度で5秒以上、好ましくは10秒以上の時間で加熱処理することにより、硬化皮膜を形成することが好ましい。紫外線硬化型、電子線硬化型の場合は、シリコーン樹脂塗料を塗布した後、それぞれ紫外線、電子線を塗布面に照射して塗膜を硬化させる。
【0035】
硬化型シリコーン樹脂の塗布厚みとしては0.01〜25g/m、さらには0.05〜20g/mの範囲が好ましい。
【0036】
剥離層14の厚みは0.03〜5μm、さらには0.05〜3μmの範囲が好ましい。剥離層14の厚みが0.05μm未満の場合、剥離層の剥離性能が低下する傾向がある。一方、剥離層14の厚みが3μmを超える場合、塗液の硬化が不十分となる傾向があり、剥離性能が経時的に変化することがある。
【0037】
このようにして得られた剥離フィルム10の剥離層14側の表面10a上に、セラミック粉、有機バインダ、可塑剤、溶剤等を含むセラミック塗料をドクターブレード法等で塗布して、誘電体グリーンシートを形成することができる。また、剥離フィルム10の表面10a上には、パラジウム、銀、ニッケル等を含有する電極ペーストをスクリーン印刷することによって、電極パターンを形成することができる。誘電体グリーンシートや電極パターンを剥離フィルム10から剥離すると、通常、剥離フィルム10の剥離層14の表面10a上には異物16が付着する。
【0038】
異物16としては、誘電体及び電極材料の残渣や、埃等が挙げられる。誘電体の残渣は、剥離フィルム10の表面10a上に形成されていた誘電体グリーンシートに由来するものであり、その成分は誘電体グリーンシートと同等である。
【0039】
電極材料の残渣は、上述の誘電体グリーンシート上に、スクリーン印刷により形成されていたパラジウム、銀、ニッケル等の電極成分に由来するものである。その他に、異物16としては、空気中の埃などが挙げられる。
【0040】
図2は、本発明の剥離フィルムの洗浄方法に係る第1実施形態を示す工程図である。
【0041】
本実施形態の剥離フィルム10の洗浄方法は、剥離フィルム10の表面10a上に付着した異物を、有機溶剤を含む洗浄液で除去する洗浄工程と、剥離フィルム10の表面10a上の洗浄液に空気を吹き付けることによって洗浄液を除去する溶剤除去工程とを有する。
【0042】
洗浄工程では、表面10aに異物が付着した剥離フィルム10を、洗浄槽20内に貯留された洗浄液中に浸漬する。これによって、誘電体や電極材料の残渣が膨潤して剥離フィルム10の表面10aと残渣との界面に応力が発生して、誘電体残渣が剥離フィルム10の表面10aから除去される。また、表面10aに付着した埃は、剥離フィルムを洗浄液中に浸漬することによって容易に除去される。
【0043】
洗浄液に含まれる有機溶剤は、誘電体や電極材料の残渣を膨潤、溶解させるものであれば特に制限されない。有機溶剤としては、例えば、アルコール類、ケトン類等が挙げられる。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。例示した有機溶剤の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
剥離フィルム10を洗浄液に浸漬している間に、洗浄液に周波数10〜100kHz程度の超音波振動を加えてもよい。これによって、一層確実に剥離フィルム10の表面10aから誘電体残渣を除去することができる。また、洗浄液は室温で用いてもよく、洗浄液の沸点以下の温度に加熱してもよい。
【0045】
溶剤除去工程では、図2に示すように、剥離フィルム10を洗浄槽20から上方向(図2中、矢印C方向)に取り出しながら、剥離フィルム10の表面10aに付着する洗浄液22に空気を吹き付けて洗浄液22を除去する。空気の吹き付け方向に特に制限はないが、下方向(図2中、矢印A方向)に向けて吹き付けることが好ましい。これによって、風圧の作用と重力の作用によって、液滴状の洗浄液22を一層円滑に下方に移動させて剥離フィルム10から除去することができる。また、除去された洗浄液22は洗浄槽20に戻ることとなるので、洗浄液22の消費量を抑制することができる。
【0046】
液滴状の洗浄液22に吹き付けるガスは空気に限定されるものではなく、例えば、窒素ガス、二酸化炭素ガスなどの不活性ガスや、酸素ガスなどを用いてもよい。また、ガスの供給源としては通常の市販の送風機を用いることができる。このような送風機を用いて、例えば、風速5〜50m/sでガスを剥離フィルム10の表面10aに付着する液滴状の洗浄液22に吹き付けて、洗浄液22を除去することができる。
【0047】
本実施形態の剥離フィルム10の洗浄方法によれば、ガスを吹き付けることによって液滴状の洗浄液22を剥離フィルム10から十分に除去することができる。したがって、洗浄後の剥離フィルム10の剥離層上に再び誘電体グリーンシート形成した場合に、ピンホールの発生を十分に抑制することができる。このため、誘電体グリーンシート積層用の剥離フィルムのリサイクル用の洗浄方法として特に好適である。
【0048】
(第2実施形態)
図3は、本発明の剥離フィルムの洗浄方法に係る第2実施形態を示す工程図である。本実施形態では、上記第1実施形態と同様にして、洗浄工程を行う。その後、以下の通り溶剤除去工程を行う。
【0049】
本実施形態の溶剤除去工程では、洗浄槽20から取り出した剥離フィルム10の表面10a上に付着した液滴状の洗浄液22を、剥離フィルム10の側面から洗浄液22に空気を吹き付けることによって、水平方向(図3中、矢印A方向)に移動させて除去する。
【0050】
剥離フィルム10の剥離層は、通常、表面張力が低いため、上述のように空気を水平方向に吹き付けることによっても、洗浄液22を十分に除去することができる。なお、剥離フィルム10の風下側の側面が下側になるように剥離フィルム10を傾ければ、重力の作用と空気の風圧との相乗効果によって、洗浄液22を一層十分に除去することができる
【0051】
(第3実施形態)
図4は、本発明の剥離フィルムの洗浄方法に係る第3実施形態を示す工程図である。剥離フィルム10は全体として、ローラー30から繰り出され、ローラー38で巻き取られることによって、矢印D方向に移動して連続的に洗浄される。
【0052】
本実施形態の剥離フィルム10の洗浄方法は、剥離フィルム10の表面上に付着した異物を、有機溶剤を含む洗浄液で除去する洗浄工程と、剥離フィルム10の表面上の洗浄液に空気を吹き付けることによって洗浄液を除去する第1溶剤除去工程と、剥離フィルム10の表面上の洗浄液を繊維で吸着して除去する第2溶剤除去工程と、剥離フィルム10を乾燥する乾燥工程とを有する。
【0053】
洗浄工程では、ローラー30から異物16が表面に付着した剥離フィルム10が繰り出されて、洗浄槽20内の洗浄液中に浸漬される。ここで、所定時間、剥離フィルム10は洗浄液中に浸漬されて、剥離フィルム10に付着していた誘電体などの異物16の大部分が除去される。
【0054】
洗浄液に含まれる有機溶剤は、誘電体残渣を膨潤、溶解させるものであれば特に制限されない。有機溶剤としては、例えば、アルコール類、ケトン類等が挙げられる。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。例示した有機溶剤の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
第1溶剤除去工程では、ローラー32を通過した剥離フィルム10を洗浄槽20から引き上げて、剥離フィルム10の表面に付着している液滴状の洗浄液を、ガスを吹きつけることによって排除する。ガスは、送風機24から剥離フィルム10に向けて吹き付けられる。ガスの吹き付け方向は、上記第1実施形態または第2実施形態と同様とすることができる。
【0056】
第2溶剤除去工程では、ローラー33を通過した剥離フィルム10を、繊維26と接触させる。繊維26によって、剥離フィルム10の表面上に残存する洗浄液が拭き取られる。繊維26としては、洗浄液の吸収性に優れる材料を用いることができ、例えば不織布を用いることができる。
【0057】
本実施形態では、剥離フィルム10を挟むようにして、一対の繊維26を剥離フィルム10の上方と下方とからそれぞれ押し当てている。これによって、剥離フィルム10の表面に残存する洗浄液を一層確実に吸収除去することができる。
【0058】
乾燥工程では、ローラー34を通過した剥離フィルム10を、乾燥機52に導入して残存する洗浄液を蒸発させる。これによって、残渣の付着量が一層十分に低減された再生剥離フィルムを得ることができる。このような剥離フィルムは、例えば、ローラー38によってロール状に巻かれてリサイクルされる。
【0059】
なお、本実施形態では、第1溶剤除去工程と第2溶剤除去工程の2つの溶剤除去工程を有していたが、どちらか一方のみとしてもよい。また、洗浄工程の前に、粘着層を有する粘着ロールを用い、該粘着層と剥離フィルムの剥離層とを接触させることによって剥離フィルムの剥離層の表面上に付着した異物を除去する粘着除去工程を有していてもよい。粘着除去工程を有することによって、最終的に得られる剥離フィルムの異物を一層確実に低減することができる。粘着ロールとしては、市販のものを用いることができる。
【0060】
(第4実施形態)
本実施形態の剥離フィルムの洗浄方法は、剥離層に異物を有する剥離フィルムを、アルカリ性物質をアルコールに溶解させて得られる分解液に浸漬した後、当該剥離フィルムを有機溶剤と接触させて、剥離層を基材フィルムから除去する除去工程を有する。以下、詳細について説明する。
【0061】
分解液としては、アルコール、又はアルコールと水との混合液に、アルカリ性物質を溶解させた溶液を用いることができる。このような分解液と剥離フィルムとを接触させると剥離フィルム10(図1)の剥離層14を構成するシリコーン樹脂の一部が分解する。すなわち、分子量の大きなシリコーン樹脂の結合の一部を切断することにより、シリコーン樹脂の分子量を小さくすることができる。また、剥離フィルム10を分解液に浸漬することによって、異物も除去することができる。
【0062】
アルカリ性物質としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、これらのうち、水酸化カリウムが好適である。分解液におけるアルカリ性物質の含有量は、0.1〜10mol/lであることが好ましく、0.2〜2mol/lであることがより好ましい。該含有量が高すぎる場合、基材フィルム12がダメージを受けやすくなる傾向があり、該含有量が低すぎる場合、シリコーン樹脂の分解に長時間を所要する傾向がある。
【0063】
分解液に用いる混合液は、アルコールと水との混合液であることが好ましい。水を含有する混合液を用いることによって、アルカリ性物質を容易に溶解させることが可能となり、除去工程を円滑に行うことができる。
【0064】
アルコールとしては、アルコール単体でアルカリ性物質を溶解できるか、水と混合することでアルカリ性物質を溶解できるものを用いることができる。このようなアルコールのうち、メタノール、エタノール、プロパノール等が好ましく、メタノール、エタノールのような低級アルコールがより好ましく、メタノールがさらに好ましい。
【0065】
アルコールと水との混合液を用いる場合、混合液全体に対するアルコールの割合は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。アルコールの割合が30質量%未満の場合、シリコーン樹脂が水分をはじく性質を有していることから、シリコーン樹脂の分解が進行し難くなる傾向がある。アルコールの含有量を50質量%以上とすれば、シリコーン樹脂への浸透性を一層向上させることができ、シリコーン樹脂の分解を効率的に進行させることが可能となる。
【0066】
分解液の温度は、例えば40℃以上、沸点以下に加熱することも好ましい。これによって、シリコーン樹脂の分解が促進され、除去工程を短縮することができる。剥離フィルム10の分解液中への浸漬時間は特に限定されず、例えば30秒間〜30分間とすることができる。
【0067】
上述の通り、剥離フィルム10を分解液中に浸漬した後、剥離フィルム10を取り出して有機溶剤中に浸漬する。分解液中への浸漬によって、剥離層14のシリコーン樹脂は分解されて分子量が小さくなっているため、剥離フィルム10を有機溶剤中に浸漬すると、剥離層14は溶解、膨潤して基材フィルム12から容易に剥離する。なお、分解液に浸漬せずに、剥離フィルム10を直接有機溶剤に浸漬しても、剥離層14を基材フィルム12から剥離することができない。
【0068】
有機溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ヘキシルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート等を用いることができる。これらのうち、剥離層14を一層容易に剥離させる観点から、トルエンが好ましい。
【0069】
剥離フィルム10を浸漬する有機溶剤の温度は室温でもよいが、40〜60℃に加熱することも好ましい。これによって、剥離層14の膨潤が一層円滑に進行し、除去工程を短縮することができる。剥離フィルム10の有機溶剤中への浸漬時間は特に限定されず、例えば30秒間〜30分間とすることができる。また、有機溶剤に超音波振動を加えることが好ましい。これによって、剥離層14を基材フィルム12から一層容易に剥離させることができる。
【0070】
有機溶剤の浸漬は、例えば2つの洗浄槽を準備して、まず、第1の洗浄槽に剥離フィルムを浸漬し、所定時間経過後に剥離フィルムを引き上げて、その後、該剥離フィルムを第2の洗浄槽に浸漬してもよい。第2の洗浄槽に貯留された有機溶剤のシリコーン成分の含有量は、第1の洗浄槽に貯留された有機溶剤のシリコーン成分の含有量よりも十分に小さいため、シリコーン樹脂に由来するシリコーン成分の付着が一層少ない基材フィルムを得ることができる。
【0071】
なお、残渣が付着した剥離フィルムを分離液に浸漬する前に、剥離フィルムの剥離層表面にコロナ処理を施してもよい。このようにコロナ処理を施す工程を設けることによって、剥離フィルムの剥離層表面を親水性にすることができる。これによって、親水性の分解液が剥離層内部に一層浸透し易くなり、除去工程に所要する時間を一層短縮することが可能となる。
【0072】
剥離フィルムを有機溶媒中に所定時間浸漬した後、有機溶媒中から取り出すことによって、剥離層の残存量が十分に低減された基材フィルム12を得ることができる。これによって、基材フィルム12をリサイクルすることができる。このような基材フィルム12は、誘電体残渣などの異物の付着量が十分に低減されていることから、基材フィルム12上に剥離層を形成する上述の剥離層形成工程を行うことによって、例えば誘電体グリーンシート積層用の剥離フィルムとしてリサイクルすることができる。このため、本実施形態の方法は、誘電体グリーンシート積層用の剥離フィルムのリサイクル方法として特に好適な剥離層の除去方法であるともいえるし、基材フィルムのリサイクル方法であるともいえる。上記方法で洗浄されてリサイクルされた剥離フィルムを用いて形成される誘電体グリーンシートは、ピンホールの発生が十分に抑制されている。また、リサイクルされる基材フィルムの損傷は十分に抑制されており、耐久性にも優れている。
【0073】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
<剥離フィルムの作製>
ビニル基を有するメチルビニルポリシロキサンとメチルハイドロジェンシランの混合溶液に白金触媒を加えて付加反応させる熱硬化タイプのシリコーン樹脂溶液を、トルエンで希釈して固形分濃度3質量%に調整した後、乾燥後の塗膜厚が0.1μmとなるようにバーコーターにて38μm厚の2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材フィルム)に塗布し、加熱温度110℃で40秒間、乾燥及び硬化反応させて、基材フィルム上にシリコーン樹脂層(剥離層)が形成された剥離フィルムを得た。
【0076】
<誘電体グリーンシートの作製>
BaTiO系セラミック粉末、有機バインダとしてポリビニルブチラール(PVB)、及び溶媒としてメタノールを準備した。次に、該セラミック粉末100質量部に対して、10質量部の有機バインダと、150質量部の溶媒とを、ボールミルで混練してスラリー化することによって誘電体ペーストを得た。この誘電体ペーストは、誘電体原料(セラミック粉体)と有機ビヒクルとを混練して得られる有機溶剤系ペーストで構成される。
【0077】
上述の通り作製した剥離フィルムのシリコーン樹脂層上に、上記誘電体ペーストをドクターブレード法によって所定厚みで塗布して乾燥し、剥離フィルム上に厚み1μmの誘電体グリーンシートを形成した。
【0078】
<導電体ペーストの作製>
まず、導電性粉末として平均粒径が0.2μmのNi粒子、及び上記有機ビヒクルを準備した。次に、導電性粉末100質量部に対して、30〜70質量部の有機ビヒクルを添加し、ボールミルで混練し、スラリー化して導電性ペーストを得た。
【0079】
作製した導電性ペーストを、剥離フィルム上に形成された誘電体グリーンシート上に塗布して電極パターンを作製した。
【0080】
電極パターンが形成された誘電体グリーンシートを剥離フィルムから剥離して、剥離層の表面上に誘電体の残渣が付着した剥離フィルムを得た。当該剥離フィルムを、シクロヘキサノン(洗浄液)を有する洗浄槽に1分間浸漬した。浸漬後、剥離フィルムを洗浄槽より取り出して、剥離フィルムの側面から空気を吹き付けて剥離フィルムの表面に付着するシクロヘキサノンを除去した。除去後、誘電体が剥離フィルムの剥離層の表面上にないことを目視にて確認した。その後、赤外線加熱ヒーターを用いて剥離フィルムを加熱し、剥離層が形成された面とは反対側のPETフィルムの面のシクロヘキサノンを乾燥させた。
【0081】
乾燥後、洗浄した剥離フィルムの剥離層上に、上述の誘電体スラリーをドクターブレード法によって所定厚みで塗布して乾燥し、厚みが1μmの誘電体グリーンシートを形成した。当該誘電体グリーンシートには、ピンホールが発生しなかった。
【0082】
(実施例2)
実施例1と同様にして剥離層の表面上に誘電体の残渣が付着した剥離フィルムを得た。当該剥離フィルムを、メチルエチルケトンを有する洗浄槽に1分間浸漬させた。浸漬後、剥離フィルムを洗浄槽より取り出して、洗浄槽の液面から50cmの高さの場所に設置された不織布が巻かれたロールと、剥離フィルムの剥離層とを接触させた。このように、剥離層表面に付着したメチルエチルケトンを不織布に吸収させることによって、剥離層上の洗浄液を除去した。除去後、誘電体が剥離フィルムの剥離層の表面上にないことを目視にて確認した。その後、室温で剥離フィルムを乾燥させた。
【0083】
乾燥後、洗浄した剥離フィルムの剥離層上に、実施例1と同様にして誘電体スラリーを塗布して乾燥し、厚みが1μmの誘電体グリーンシートを形成した。当該誘電体グリーンシートには、ピンホールが発生しなかった。
【0084】
(比較例1)
実施例1と同様にして剥離層の表面上に誘電体の残渣が付着した剥離フィルムを得た。当該剥離フィルムを、シクロヘキサノン(洗浄液)を有する洗浄槽に1分間浸漬した。浸漬後、剥離フィルムを洗浄槽より取り出して、空気を吹き付けずにそのまま赤外線加熱ヒーターを用いて剥離フィルムを加熱し、剥離層が形成された面とは反対側のPETフィルムの面のシクロヘキサノンを乾燥させた。
【0085】
乾燥後、洗浄した剥離フィルムの剥離層上に、実施例1と同様にして誘電体スラリーを塗布して乾燥し、厚みが1μmの誘電体グリーンシートを形成した。当該誘電体グリーンシートには、ピンホールが発生していた。
【0086】
(比較例2)
実施例1と同様にして剥離層の表面上に誘電体の残渣が付着した剥離フィルムを得た。当該剥離フィルムを、メチルエチルケトンを有する洗浄槽に1分間浸漬させた。浸漬後、そのまま剥離フィルムを室温で乾燥させた。
【0087】
乾燥後、洗浄した剥離フィルムの剥離層上に、実施例1と同様にして誘電体スラリーを塗布して乾燥し、厚みが1μmの誘電体グリーンシートを形成した。当該誘電体グリーンシートには、ピンホールが発生していた。
【0088】
(実施例3)
実施例1と同様にして剥離層の表面上に誘電体の残渣が付着した剥離フィルムを得た。当該剥離フィルムを、エタノール100質量部に対して、純水100質量部及び水酸化カリウム5質量部を混合して得られた分解液(60℃)中に、1分間浸漬した。浸漬後、剥離フィルムを分解液中から取り出して純水で当該フィルムを洗浄して分解液を洗い流した。
【0089】
この時点で、剥離フィルムは、剥離層を有していた。しかしながら、剥離層の表面にマジックインクを塗布したところ、マジックインクははじかれず、はじき性が消失していることが確認された。
【0090】
その後、剥離フィルムを室温のトルエン中に1分間浸漬し、剥離フィルムをトルエン中から取り出して室温で乾燥した。
【0091】
剥離フィルムから剥離層及び異物が十分に除去されて、PETフィルムのみになっていることが確認された。このPETフィルム上に、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂溶液を塗布してシリコーン樹脂層(剥離層)を形成し、剥離フィルムを得た。
【0092】
この剥離フィルムの剥離層上に、実施例1と同様にして誘電体スラリーを塗布して乾燥し、厚みが1μmの誘電体グリーンシートを形成した。当該誘電体グリーンシートには、ピンホールが発生しなかった。
【0093】
(実施例4)
実施例1と同様にして剥離層の表面上に誘電体の残渣が付着した剥離フィルムを得た。当該剥離フィルムを、エタノール100質量部に対して、純水100質量部及び水酸化カリウム20質量部を混合して得られた分解液(約25℃)中に、1分間浸漬した。浸漬後、剥離フィルムを分解液中から取り出して純水で当該フィルムを洗浄し分解液を洗い流した。
【0094】
この時点で、剥離フィルムは、剥離層を有していた。しかしながら、剥離層の表面にマジックインクを塗布したところ、マジックインクははじかれず、はじき性が消失していることが確認された。
【0095】
その後、剥離フィルムを室温のキシレン中に1分間浸漬し、剥離フィルムをキシレン中から取り出して室温で乾燥した。
【0096】
剥離フィルムから剥離層及び異物が十分に除去されて、PETフィルムのみになっていることが確認された。このPETフィルムに、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂溶液を塗布してシリコーン樹脂層(剥離層)を形成し、剥離フィルムを得た。
【0097】
この剥離フィルムの剥離層上に、実施例1と同様にして誘電体スラリーを塗布して乾燥し、厚みが1μmの誘電体グリーンシートを形成した。当該誘電体グリーンシートには、ピンホールが発生しなかった。
【0098】
(実施例5)
実施例1と同様にして剥離層の表面上に誘電体の残渣が付着した剥離フィルムを得た。当該剥離フィルムの剥離層表面にコロナ処理(電流量5A)を施した。コロナ処理後の剥離層表面の純水の接触角は86°であり、処理前(接触角109°)に比べて親水性になっていることが確認された。
【0099】
コロナ処理をした剥離フィルムを、エタノール100質量部に対して、純水100質量部及び水酸化カリウム10質量部を混合して得られた常温(約25℃)の分解液中に、1分間浸漬した。浸漬後、剥離フィルムを分解液中から取り出して純水で当該剥離フィルムを洗浄して分解液を洗い流した。
【0100】
この時点で、剥離フィルムは、剥離層を有していた。しかしながら、剥離層の表面にマジックインクを塗布したところ、マジックインクははじかれず、はじき性が消失していることが確認された。
【0101】
その後、剥離フィルムを室温のメチルエチルケトン中に1分間浸漬した。その後、剥離フィルムをメチルエチルケトン中から取り出して室温で乾燥させた。
【0102】
剥離フィルムから、剥離層が完全に除去されて、PETフィルムのみになっていることが確認された。このPETフィルムに、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂溶液を塗布してシリコーン樹脂層(剥離層)を形成し、剥離フィルムを得た。
【0103】
この剥離フィルムの剥離層上に、実施例1と同様にして誘電体スラリーを塗布して乾燥し、厚みが1μmの誘電体グリーンシートを形成した。当該誘電体グリーンシートには、ピンホールが発生しなかった。
【0104】
(比較例3)
実施例1と同様にして剥離層の表面上に誘電体の残渣が付着した剥離フィルムを得た。当該剥離フィルムを、室温のトルエン中に2分間浸漬した。その後、剥離フィルムをトルエン中から取り出して室温で乾燥した。
【0105】
上述の処理を施しても、剥離フィルムから剥離層は除去できず、PETフィルムと剥離層とは密着していた。
【0106】
(比較例4)
実施例1と同様にして剥離層の表面上に誘電体の残渣が付着した剥離フィルムを得た。当該剥離フィルムを、純水200質量部に対して水酸化カリウム5質量部を混合して得られた分解液(60℃)中に、1分間浸漬した。浸漬後、剥離フィルムを分解液中から取り出して、純水で当該剥離フィルムを洗浄して分解液を洗い流した。
【0107】
この時点で、剥離フィルムは、剥離層を有していた。剥離層の表面にマジックインクを塗布したところ、マジックインクがはじかれたため、はじき性を有していることが確認された。
【0108】
その後、剥離フィルムを室温のトルエン中に1分間浸漬し、剥離フィルムをトルエン中から取り出して室温で乾燥させた。
【0109】
上述の処理を施しても、剥離フィルムから剥離層は除去できず、PETフィルムと剥離層とは密着していた。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の洗浄方法に用いられる剥離フィルムの一例を模式的に示す側面図である。
【図2】本発明の剥離フィルムの洗浄方法に係る第1実施形態を示す工程図である。
【図3】本発明の剥離フィルムの洗浄方法に係る第2実施形態を示す工程図である。
【図4】本発明の剥離フィルムの洗浄方法に係る第3実施形態を示す工程図である。
【符号の説明】
【0111】
10…剥離フィルム、10a…表面、12…基材フィルム、14…剥離層、16…異物、20…洗浄槽、24…送風機、26…繊維、52…乾燥機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成された剥離層と、を有する剥離フィルムの洗浄方法であって、
前記剥離層の表面に付着した異物を、有機溶剤を含む洗浄液で洗浄する洗浄工程と、
前記剥離層の表面に付着した前記洗浄液を除去する溶剤除去工程と、を有する剥離フィルムの洗浄方法。
【請求項2】
前記溶剤除去工程は、前記剥離層の前記表面に付着した前記洗浄液にガスを吹き付けることによって前記洗浄液を除去する請求項1記載の剥離フィルムの洗浄方法。
【請求項3】
前記溶剤除去工程は、前記剥離層の前記表面に付着した前記洗浄液を繊維で吸収して除去する請求項1記載の剥離フィルムの洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄工程の前に、前記剥離層の前記表面と粘着ロールとを接触させて、前記表面に付着した前記異物の一部を除去する工程を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の剥離フィルムの洗浄方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の洗浄方法で洗浄した前記剥離フィルムをリサイクルする剥離フィルムのリサイクル方法。
【請求項6】
基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成された剥離層と、を有する剥離フィルムの洗浄方法であって、
前記剥離層に異物を有する前記剥離フィルムを、アルカリ性物質とアルコールとを含む溶液に接触させた後、有機溶剤と接触させて、前記剥離層を前記基材フィルムから除去する除去工程を有する剥離フィルムの洗浄方法。
【請求項7】
前記除去工程の前に前記剥離層にコロナ処理を施す工程を有しており、前記除去工程で前記剥離フィルムを接触させる前記溶液が水を含有する請求項6記載の剥離フィルムの洗浄方法。
【請求項8】
請求項6又は7記載の洗浄方法によって、前記剥離層が除去された前記基材フィルムの一面上に剥離層を形成する剥離層形成工程を有する剥離フィルムのリサイクル方法。
【請求項9】
一面上に剥離層が形成され、該剥離層の表面上に異物が付着している基材フィルムを、アルカリ性物質とアルコールとを含む溶液に接触させた後、有機溶剤と接触させて、前記異物及び前記剥離層を前記基材フィルムから除去する除去工程を有する基材フィルムのリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−291690(P2009−291690A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146140(P2008−146140)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】