説明

剥離マイクロチューブならびに空間制御された付着ナノスケール粒子および層を含有する高性能エネルギー貯蔵および収集装置

本開示は、剥離ナノチューブと電気-または光-活性な付着したナノスケール粒子または層とを含有する電極物質を有するエネルギー貯蔵または収集装置およびそのような装置の製造方法に関する。剥離ナノチューブおよび付着したナノスケール粒子または層は、コーティング、溶液法またはキャスティング法、または溶融押出しのような方法で容易に作製して、電極を形成することができる。電解質を用いてナノチューブを分散させることもできるし、ポリマー形態で溶融作製法も可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の情報
この出願は、2009年12月18日に出願され、その開示は出典明示してその全体が本明細書に含まれるとみなされる米国仮出願第61/288,025号に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、概略、改善されたエネルギー貯蔵または収集装置に関し、特に、剥離され、付着したナノスケールの粒子または層を有するマイクロチューブを含有する部品を用いるバッテリー、ウルトラキャパターおよび光電池に関する。
【背景技術】
【0003】
カーボンナノチューブ (CNTs) は、個々のナノチューブの高い強度および導電率の特性のため、エネルギー貯蔵装置の使用に魅力的な物質と考えられている。カーボンナノチューブは、米国特許第7,060,390号に記載されるように、グラフェン層へのリチウムイオン層間挿入 (intercalation) のため、リチウムイオンバッテリーにとって潜在的に有用と認識されている。カーボンナノチューブ、特に単壁および二重壁カーボンナノチューブの現行の普及した使用での問題は、ナノチューブ集合体を個別ばらばらの状態(すなわち、剥離された状態)に完全にほぐす強固で、効率的かつ無害な方法がないことである。かくして、エネルギー貯蔵装置におけるカーボンナノチューブの従前の使用は、活性表面領域に完全に接近できないことによって、性能が限定されていた。同様に、CNTは、合成で発生する触媒残渣および非チューブカーボン構造の除去では、高純度(>約96重量%)のものを得ることは困難である。
【0004】
CNTを剥離することに対する障害が発生する。なぜならば、それらの合成直後に、チューブは容易に平行配置で集まり、普通バンドルまたはロープと呼ばれるものになる。その結果として、チューブオーバーラップ1ナノメータ毎に約20kbTの侮れないファン・デル・ワールス結合エネルギーが生じ、そして、完全に分離するのが非常に困難な凝集の形成が生じる。ファン・デル・ワールス力を克服するために、様々な手法が採用されてきた。例えば、チューブケミカル機能化、界面活性剤などである。これらの手法は、初期チューブ長の重大な崩壊後に得られた高収率の剥離ナノチューブの製造においてのみ成功している。一層低減された長さのカーボンナノチューブは、より弱い強度および導電率にさいなまれ、かくして、エネルギー貯蔵または収集装置におけるそれらの完全性能が制限される。
【0005】
整列されたカーボンナノチューブは、依然として、かなりのファン・デル・ワールス会合を有し、それは、カーボンナノチューブの局所集塊を生じ、それで、有効表面積が減少される。また、整列されたカーボンナノチューブコンポジットの問題は、チューブ方向の割裂が、無秩序配向カーボンナノチューブコンポジットよりも一層容易に発生し得ることである。さらに、垂直配列でカーボンナノチューブを成長させる特別な技術および市販の電極を作製する際のそれらの取扱いに関連するコストが極端に高いと考えられることである。
【0006】
リチウム、Li、イオンバッテリーは、他の充電式バッテリー技術に勝るエネルギー密度のため、携帯用電子機器から電気自動車までにわたる用途において相当な注目を浴びている。しかしながら、より軽く、より薄く、かつ、より高い容量のリチウムイオンバッテリーに対する要求は、最高度の安全な入手可能性を維持しつつ、バッテリー容量、サイクル寿命、および充電−放電率を拡張するための改善された電極および電解質の双方の協奏的な開発を必要とする。
【0007】
乗り物用Li-イオンバッテリーは、典型的に、容量/重量要求に合致し、バッテリーのセル数およびシステムコストを低減するためには、現在利用可能なものより3倍高いエネルギー密度が必要である。Liバッテリーは、短絡(内部短絡を含む)、過充電、過放電、クラッシュ、または火および/もしくは他の高温環境への暴露などの酷い状態に本質的に耐えられない。これらのより大きな(エネルギー)バッテリーにおけるLi化学の使用が、これらの問題に取り組む緊急性を増大する。15年寿命、または300,000 HEVサイクル、または5,000 EVサイクルを付与する能力は、従来のLiイオンバッテリーでは証明されず、電極での望ましくない体積膨張/損失および、約4ボルトを超える電圧での電解質とのLiの副反応のため、困難であると予測される。
【0008】
バッテリーは、通常、カソード、アノードおよび電解質を含む。商業的に、Li-イオンバッテリーのアノード用のもっともありふれた物質はグラファイトである。カソードは、一般に、3つの物質:コバルト酸リチウムのような層状酸化物、リン酸鉄リチウムのようなポリアニオンに基づくもの、またはマンガン酸リチウムのようなスピネルのうちの一つである。ソニーによって市販されているようなありふれたリチウムイオンバッテリーは、カソード物質として無機化合物、LiCoO2、アノードとしてグラファイトを用いる。LiCoO2は、LiおよびCoカチオンが、密充填酸素アレイにおける稜共有 (edge-sharing) 八面体部位の交互層を充填する、菱面体構造を有する。充電中、リチウムはカソード層から脱層間挿入 (de-itercalated) され、電解質媒体中の分離膜を通過して輸送され、そして、炭素アノードに層間挿入 (intercalated) される。放電プロセスにおいて、リチウムイオンはアノードから脱層間挿入され、カソード内の層間の空の八面体部位に再び層間挿入される。アノード、カソード、および電解質に対する物質の選択より、リチウムイオンバッテリーの電圧、容量、寿命、および安全性は劇的に変化する。バッテリーに対する問題は、一般的に、放電中のアノードでの熱発生を管理することである。熱は電解質の劣化を生じ、それゆえ、時間とともにエネルギー容量が減少する。
【0009】
比エネルギー密度(重量あたりまたは体積あたり)は、作用電圧および可逆容量の双方に関連する。作用電圧は、酸化還元プロセスの電位に依存し、可逆容量はリチウム層間挿入の可逆量によって制限される。利用可能の酸化還元対は、より高い適切な電位範囲に位置し、物質の構造は、高い容量を得るために、広い組成物範囲で安定でなければならない。
【0010】
電気化学的リチウム挿入/脱離反応は、格子内でのリチウムイオンの拡散および粒子表面上での電荷移動プロセスの双方を伴う。かくして、電極の導電率は、活性物質塊中のリチウムイオン導電率および電極の電子導電性を含む。より高い電子導電性が、内部抵抗を低く維持し、優れた電力密度を付与する助けとなる。この困難を克服するルートは、国際公開第2009/133807号に記載されるように、粒子サイズの低減および、カーボンのような導電性剤の被覆による電子導電性の増加を含む。
【0011】
シリコンナノワイヤーは、4200 mAh g-1の固有貯蔵容量のため、将来のバッテリー用途に高い可能性を有するようである。しかしながら、シリコンは、Li+挿入で300%を超えて膨張し、充電/放電サイクルに際して亀裂が生じるという重大な問題をもたらす。米国特許出願公開第2008/0280207号は、カーボンナノチューブのパラレルアレイの周りのシリコン層(ナノワイヤーではない)からなるアノード構造がキャパシティ向上に有益であることを記載する。そのシリコン層は、SiH4の化学気相蒸着を用いて蒸着される。そのカーボンナノチューブも剥離されない。
【0012】
ポリアニリン、ポリピロールおよびポリフッ化ビニリデンのような導電性または高誘電性ポリマーが、しばしば、電気活性粒子のバインダーに選択される。
【0013】
もっともありふれた電解質は液状のものであり、溶媒として単純なアルコールおよびグリコールの炭酸エステルまたはエステルがよく使用され、電解質としてLiPF6が含有される。溶媒は、典型的には、高い誘電率の炭酸エチレン (EC) および低い粘度の炭酸エチルメチル (EC) の混合溶液である。ときには、U-ブチロラクトンおよびLiBF4の組合せが用いられる。炭酸プロピレンが優れた溶媒であるが、グラファイト上で急速に分解してしまう。もし、短絡があれば、非常に重大な発熱 (> 200℃) が発生し、これらのタイプの電解質が発火する。
【0014】
近年、ポリマー電解質が一層注目を浴びている。なぜならば、それらは、電解質漏えいから解放され、薄いバッテリーを作製できるからである。固体電解質およびいくつかのポリマー電解質はセパレータを必要としない。多種のポリマー電解質が提案されているが、実用的なバッテリーにはほんの少ししか使用されていない。ポリシロキサンが近年興味のあるものである。多くの固体ポリ電解質タイプは真の固体ポリマーではなく、可塑剤として液体電解質を含有するポリマーゲルである。
【0015】
セパレータは2つの主要な機能を有している。ひとつは、電解質の自由物質移動を許容しつつ、アノードとカソードとの間の直接接触を回避すること、および、もうひとつは、偶発的な熱発生の場合に、その物質移動を停止するシャッター作用である。セパレータフィルムが溶けて、孔閉鎖を生じる。二軸配向ポリオレフィンフィルムが、高孔率フィルムを得るために、普通に使用される。
【0016】
Li-イオンバッテリー用のシリコン/グラファイト/多重壁 (multi-walled) カーボンナノチューブ (MWNTs) 製のコンポジットアノード物質がボールミルで調製されている。このコンポジットアノード物質は、最初のサイクルで、グラムあたり2274ミリアンペア時 (mAh/g) の放電容量を示し、20充電−放電サイクル後、シリコン/グラファイトコンポジットの218 mAh/gよりも高い584 mAh/gの可逆容量を保持した。しかしながら、シリコン粒子は直径でマイクロメータ程度のスケールで現れ、無秩序に分散されている。さらに、MWNTに粒子が付着していないのが明らかであった。
【0017】
アルミニウムまたはシリコンのような基材上に成長した垂直整列された多重壁カーボンナノチューブ (VAMWNT) 電極が調査された。リチウムイオンバッテリーの現在の技術水準は、最大理論比容量が372 mAh/gであり、実用比容量が150-370 mAh/gの範囲にあり、電流方向に整列された陰極としてグラファイトを利用する。このようにナノチューブを整列することによって、リチウムイオンと、MWNTの間隙 (interstitial spaces) ならびにWNTの内外面との間の接近および界面移動の増大が可能と考えられた。これらの電極は、650 mAh/gの安定かつ可逆容量を生じることができた。前記したように、作製されたままで完璧に整列されたカーボンナノチューブは、依然として、連携して束を形成し、チューブ長に沿ってクラックがより入りやすい。
【0018】
整列されたカーボンナノチューブ同軸ナノワイヤーも、個々の整列されたカーボンナノチューブへの適当な導電性ポリマーの同心円層または二酸化チタン、TiO2コーティングの電気化学蒸着によって調整されている。これらの整列されたカーボンナノチューブ同軸ナノワイヤーは、実験室において、独特の電子移動特性を有することが示され、バッテリーやスーパーキャパシターを含む広汎な装置用途に対する潜在的な重要性を有することが推測された。
【0019】
カーボンナノチューブおよび炭素粒子のマットは、金属ホイルを代替する導電系として利用されている。V2O5コンポジット電極キセロゲルへの含浸は、Li/Li+に対して、4および2Vの間で95 mAg-1の定電流放電/充電にて、160 mAhg-1の可逆的比容量を与える。単純含浸法は、局所的電荷密度のゆらぎ、および決まった時間を超える安定な構造を防止するように、粒子の空間分布を制御することはできない。付着によるナノスケール粒子または層の分布の制御は、体積に対する結晶表面積の高い比率を維持するのに有益であると信じられている。
【発明の概要】
【0020】
本開示は、いくつかの具体例において、改善されたエネルギー貯蔵または収集装置に関し、より詳細には、高いエネルギー密度、電力密度、および光子転換効率を有し、その合成されたままの状態―カーボンナノチューブが元来剥離されていない状態で作成されたことを意味する―から剥離され、電気-または光-活性ナノスケール粒子または層に付着し、誘電媒体または電解質を有する、元素または金属複合物に由来するカーボンナノチューブまたは他のタイプのナノチューブを含有する少なくとも2つの電極のうち少なくともひとつを有する、バッテリー、キャパシターまたは光電池に関する。
【0021】
もうひとつの具体例において、エネルギー貯蔵または収集装置は、遷移元素、酸化物および、限定されないが、Ru, Ir, W, Mo, Mn, Ni, Co, Ti, V, Si, Sn, Feおよびそれらの組合せなどの遷移金属の複合体を含有する、電気活性または光活性種とさらに関連するかまたは機能化されたナノチューブを含有する。
【0022】
もうひとつの具体例において、エネルギー貯蔵または収集装置は、ポリアニリンまたはポリビニルピロールのような導電性ポリマーを含有し、混合された電気活性または光活性種とさらに関連するかまたは機能化されたナノチューブを含有する。
【0023】
もうひとつの具体例において、エネルギー貯蔵または収集装置は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸またはテトラブチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸のような電解質塩としても機能できる界面活性剤を用いて分散される剥離ナノチューブを含有する。
【0024】
さらにもうひとつの具体例において、エネルギー貯蔵または収集装置は、剥離され、付着したナノスケール粒子または層を有し、そして、そこで、アッセンブリーが配向されるナノチューブを含有する。
【0025】
もうひとつの具体例において、エネルギー貯蔵または収集装置は、剥離され、付着したナノスケール粒子または層を有し、そして、そこで、フィルム、薄いマット、繊維、布、不織布、フェルトなどの形態に作製されるナノチューブを含有する。
【0026】
もう一つの具体例において、エネルギー貯蔵または収集装置は、少なくともひとつの電極が、付着したナノスケール粒子または層を有する、剥離された炭素またはミネラルナノチューブを含有する少なくとも2つの電極;これらの電極の間に配置された電解質;および電解質中に配置されて、これらの電極間に電気的絶縁を付与しつつ、電解質内のイオン流を可能とするセパレータを含有する。
【0027】
さらなる具体例において、エネルギー貯蔵または収集装置は、絶縁体を含有し、さらに、その絶縁体は、剥離され、かつ、絶縁体およびナノチューブ混合物の誘電率が絶縁体媒体単独よりも大きくなるように絶縁体媒体中に分散された、付着したナノスケール粒子または層を有するナノチューブの部分を有する。
【0028】
もうひとつの具体例において、エネルギー貯蔵または収集装置の作製方法は、ポリマーすなわち粘性液のような媒体に剥離ナノチューブを再び分散させて、電極を作製し、ついで、誘電体または電解質として作用する電極にもうひとつの媒体と積層することを含む。電極の形成は、米国特許第3,415,920号および米国特許第5,094,793号に記載されているように、多層ダイまたは多層形成装置による液体または溶融物の同時押出しにより行うことができる。得られた多層は、直列で積み重ね、連結して、より高い電圧を負荷できる。あるいは、エネルギー貯蔵装置は、剥離ナノチューブを用い、溶媒キャスティング法、スプレー法、ペースト塗布法、圧縮法、延伸法、またはそれらの組合せなどにより、剥離ナノチューブの混合物を加工して、所望の形態を付与することによって作製できる。
【0029】
もうひとつの具体例において、剥離ナノチューブの電極物質への組込み (incorporation) は、電極に増強した強度および丈夫さを付与し、高振動または極端な熱サイクルのようなより厳しい環境下での電極の成型または特性を可能とする。これは、剥離ナノチューブのない電極物質と比較される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示は、電気または光活性な付着したナノスケール粒子または層と共に剥離ナノチューブを含む集電装置、電極、絶縁体、電解質またはセパレータからなる、改善されたエネルギー貯蔵または収集装置に関する。
【0031】
ナノチューブは、限定されないが、炭素、シリコン、金属もしくは無機化合物またはそれらの混合物のような物質を含有する。ナノチューブは、いくつかの具体例において、約1nmと約20nmとの間の直径、他の具体例において、約1nmと10nmとの間の直径を有する。ナノチューブは、いくつかの具体例において、少なくとも約10、他の具体例において、少なくとも60のアスペクト比、すなわち直径に対する長さの比を有する。カーボンナノチューブは、通常、約1.2nmの内径を有する。
【0032】
「合成されたまま "As-synthesized"」のカーボンナノチューブは、化学気相蒸着、レーザーアブレーション、高圧一酸化炭素合成などのようないかなる公知の手段でも作製できる。化学気相蒸着 (CVD) は、カーボンナノチューブの製造にもっとも頻繁に採用される方法であり、工業における大多数の供給者によってもっとも主流で用いられる方法である。この方法は、不活性ガスで希釈されたガス状の炭素源(前駆体という。)を用い、反応器に導入する。前駆体が固定基板上の触媒と相互作用するとき、ガス状炭素源は固体状態に分解して、単-、二重-、および多重壁カーボンナノチューブと他の不純物との混合物を凝塊状に形成する。
【0033】
カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ表面上のヒドロキシルおよびカルボン酸基の組合せを与える時間の濃硫酸および硝酸の混合物のような技術を用いて酸化できる。これらのヒドロキシルおよびカルボキシル基は、任意で、オキシクロリドまたはフルオリドのような他の官能基に容易に転換できる。カルボキシル基は、金属、金属酸化物または他の元素含有複合体の付着に適している。
【0034】
ナノチューブの剥離とは、実質的にナノチューブの長さに沿って他のナノチューブとの直接会合がないことを意味する。
【0035】
ナノスケール粒子または層の付着とは、ナノスケール粒子または層が少なくともひとつの静電または共有結合部位によってナノチューブの隣に保持されることを意味する。
【実施例】
【0036】
水酸化リチウムの溶液を、カルボン酸官能性を有する剥離カーボンナノチューブの蒸着物に添加し、脱イオン水で洗浄し、ついで、乾燥する。予備合成された斜方晶LiFePO4ナノクリスタル(または他のカソード物質)は、LiCO3との会合によって分散されたカーボンナノチューブの側壁に付着できる。あるいは、LiFePO4ナノクリスタルは、温度400℃にての無機結晶のイン・サイチュ合成により、剥離された官能化カーボンナノチューブに直接付着できる。カーボンナノチューブは、これらの温度にて安定であることが知られているからである。LiFePO4は、本質的に、電気(電子およびイオン)導電率が低い。ナノサイズの粒子を用いることによって、Liは、容易に、クリスタルギャラリー (crystal galleries) に侵入し、退出することができ、それによって、Li充電放電率を増大する。充電/放電の間、Liが出入りするときの格子の拡大/収縮のため、ナノスケールクリスタルを使用することも、クラッキングの問題を軽減する。ナノスケール電気活性種のカーボンナノチューブへの付着は、電子移動を容易にし、不均一な特性をもたらすナノ粒子の局所移動を防止する。
【0037】
ポリフッ化ビニリデンのようなバインダーは、必要であれば、剥離され、かつ、電気-または光-活性物質付着を有するナノチューブへ添加できる。これらのバインダーは溶液または溶融物として添加できる。
【0038】
付着物のある剥離カーボンナノチューブの配向は、カーボンナノチューブおよび付着物をポリマー媒体に分散させ、繊維押出しによりチューブを配向させることによって入手できる。ポリマー媒体は、PVDFのようなバインダーであり得る。他の選択されたポリマー媒体は、電解質系内に取り込まれるか、または、250℃にて加熱するか、または、水で洗浄することによって容易に除去できる、ポリエチレンオキサイドまたはポリビニルアルコールを含む。
【0039】
これらのチューブは、全てシリコンナノチューブ触媒として有用なAl, Ga, In, Au,およびPdのような様々な化学基で機能化できる。シリコンナノチューブは、プラズマ中、400℃にて、剥離カーボンナノチューブ上の触媒粒子上で、成長させられる。
【0040】
基板促進無電解メッキ法 (SEED) を用いて、Cu, Ag, Sn, Au, Pt, Pd, Zn,およびVのような様々な金属および金属酸化物ナノ粒子でカーボンナノチューブを修飾できる。ナノ粒子の連続蒸着は、必要であれば、ナノチューブの完全被覆をもたらす。あるいは、フェーリング液のような技術を用いて、剥離ナノチューブを酸化物で完全にコートできる。例えば、剥離カーボンナノチューブに付着した酸化スズのナノスケール粒子は、リチウムイオンバッテリーにおけるアノードとして有用である。同様に、剥離カーボンナノチューブに対する付着したナノスケールTiO2粒子は、光電池装置を向上させるのに有用である。
【0041】
シリコンの炭素表面への付着を行う(MWNTを必要としない)一般的な手法は、Stewart et al., J. Am. Chem. Soc, 2004, 126:370-378に見ることができる。様々な具体例において、シリル保護末端アルキン部位は均一に剥離されたカーボンナノチューブの表面に置かれ、次いで、シリコンのナノスケール粒子を添加して、表面上にシリコン粒子を均一に分散させる。市販のシリコンナノ粒子の表面は、様々な溶媒中で安定した粒子分散を可能にするように処理できる。最終構造は、例えば、適当な液状媒体中で剥離カーボンナノチューブと完全に分散したシリコンナノ粒子とを組み合わせ、その後の付着化学によって、得られる。これらのナノスケール粒子は、直径3-20 nmである。付着したシリコン粒子、管または層は、リチウムイオンバッテリーならびに太陽光電池装置用の改良されたアノードに有用である。
【0042】
同様に、オキシ炭化ケイ素粒子の剥離カーボンナノチューブへの付着はリチウムイオンバッテリーのカソードに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも2つの電極
を含み、
b)合成されたままの状態の電気活性または光活性ナノスケール粒子または層から剥離された炭素またはミネラルのナノチューブを含有する少なくともひとつの電極;
c)各々が電極と接触し、または電極も集電装置として機能する少なくとも2つの集電装置;
d)任意で、絶縁体
を含む、エネルギー貯蔵および収集装置。
【請求項2】
a)少なくとも2つの電極
を含み、
b)合成されたままの状態の電気活性または光活性ナノスケール粒子または層から剥離された炭素またはミネラルのナノチューブを含有する少なくともひとつの電極;
c)各々が電極と接触し、または電極も集電装置として機能する少なくとも2つの集電装置;
d)それらの電極の間に配置された電解質;および
e)任意で、それらの電極の間に配置され、それらの電極の間に電気的絶縁を付与しつつ、その電解質内部のイオン流を可能にする、セパレータを含む、エネルギー貯蔵および収集装置。
【請求項3】
前記電極または集電装置が単壁カーボンナノチューブを含む、請求項1に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項4】
電極または集電装置が単壁カーボンナノチューブを含む、請求項2に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項5】
単壁カーボンナノチューブが、主に、導電型である、請求項3または4に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項6】
電極または集電装置が、約0.2ミクロメートルよりも長いナノチューブを含む、請求項1に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項7】
電極または集電装置が、約0.2ミクロメートルよりも長いナノチューブを含む、請求項2に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項8】
カーボンナノチューブが、合成されたままのもの (as-synthesized) よりも狭い分布の長さを有する、請求項6または7に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項9】
電極または集電装置が、電気活性または光活性の付着したナノスケール粒子または層のある剥離ナノチューブを含む、請求項1のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項10】
ナノチューブが、最初の合成に際して、ナノチューブ内に実質的に不純物が存在しない(96重量%より高い純度)、請求項9に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項11】
電極または集電装置が、最初の合成に際して、ナノチューブ内に実質的に不純物が存在しないナノチューブを含む、請求項2のエネルギー貯蔵装置。
【請求項12】
ナノチューブを含む少なくともひとつの電極が、電子移動剤でもある界面活性剤に接触されている、請求項1に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項13】
ナノチューブを含む少なくともひとつの電極が、電解質または電子移動剤でもある界面活性剤に接触されている、請求項2に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項14】
絶縁体が、絶縁体とナノチューブとの混合物の誘電率が絶縁体媒体よりも高くなるように、絶縁体媒体中に分散したナノスケール粒子または層が付着したナノチューブの部分をさらに含む、請求項1に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項15】
合成されたままの状態から剥離され、電極または集電装置内の電気活性または光活性ナノスケール粒子または層に付着した炭素またはミネラルのナノチューブが配向されている、請求項1に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項16】
合成されたままの状態から剥離され、電極または集電装置内の電気活性または光活性ナノスケール粒子または層に付着した炭素またはミネラルのナノチューブが配向されている、請求項2に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項17】
導電性ポリマーが混合されている、請求項1に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項18】
導電性ポリマーが混合される、請求項2に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項19】
a)少なくとも2つの電極
を含み、
b)合成されたままの状態の電気活性または光活性ナノスケール粒子または層から剥離された炭素またはミネラルのナノチューブを含有する少なくともひとつの電極;
c)リチウム塩および、任意で、有機溶媒を含む電解質
を含む、エネルギー貯蔵および収集装置。
【請求項20】
少なくともひとつの電極が、大多数が導電型の単壁カーボンナノチューブである単壁カーボンナノチューブを含む、請求項19に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項21】
少なくともひとつの電極が、0.02ミクロメーターを超える長さのナノチューブを含む、請求項19に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項22】
ナノチューブが、合成されたままのものよりも狭い長さ分布を有する、請求項21に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項23】
ナノチューブが、電極内部で配向されている、請求項19に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項24】
電極がナノチューブを含み、ナノチューブが、初期合成でナノチューブ内に実質的に不純物が存在しないものである、請求項19に記載のエネルギー貯蔵または収集装置。
【請求項25】
付着したナノスケール粒子または層のある剥離ナノチューブを媒体に分散させて電極を形成し、誘電体または電解質として作用するもうひとつに媒体と接合することを含む、エネルギー貯蔵または収集装置の作製方法。
【請求項26】
接合を多層ダイまたは多層形成装置を通す共押出しを用いて行う、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
キャスティング法、スプレー法、ペースト塗布法、圧縮法、延伸法、またはそれらの組合せなどにより、所望の形態を付与する構造のアッセンブリーをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
電極に増強した強度および丈夫さを付与し、高振動または極端な熱サイクルのようなより厳しい環境下での電極の成型または特性を可能とする、付着したナノスケール粒子および層のある剥離ナノチューブを含む、エネルギー貯蔵または収集装置。

【公表番号】特表2013−514630(P2013−514630A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544723(P2012−544723)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/060349
【国際公開番号】WO2011/075489
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(511204382)デザインド・ナノチューブス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (2)
【氏名又は名称原語表記】Designed NanoTubes, LLC
【Fターム(参考)】