説明

副腎皮質刺激ホルモンアナログおよびこれに関連する方法

本発明のACTHアナログ化合物としては、ACTHペプチド配列を含み、以下に示すACTHアナログの好適な生物学的機能の1つ以上をもたらす1以上の構造改変を伴う化合物が挙げられる:(1)ACTHアナログの存在下では未改変ACTHと比較して副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させる、(2)内在性ACTHの存在下での副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させる、(3)MC−2Rメラノコルチンに結合する未改変ACTHと比較してMC−2R結合親和性を増加させ、MC−2Rレセプターの活性化を低下させる。従って、本発明のACTHアナログ化合物は、ACTH、ACTHレセプターまたはコルチコステロイド分泌に関連する疾患および障害(例えば、早期分娩およびクッシング病)の治療または予防に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の支援
本出願の内容は、米国国立衛生研究所からの研究助成金(認可番号NIH:DK50870)および全米科学財団からの助成金(認可番号NSF IBN−0132210)によって支援を受けたものである。従って米国政府は、本発明において一定の権利を有することができる。
関連出願の相互参照
本出願は、2004年10月27日に出願した米国仮特許出願第60/622,436号、発明の名称「早期分娩、クッシング症候群および関連障害を治療するための組成物および方法(Compositions and Methods for the Treatment of Premature Labor, Cushing's Syndrome and Related Disorders)」(当該出願の開示内容は全て引用により本明細書に含まれるものとする)の利益を主張するものである。
技術分野
本発明は、ACTHアナログ化合物、並びに、これに関連する医薬組成物および治療方法に関する。
背景
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)としても知られているコルチコトロピンは、脳下垂体から分泌される主なホルモンであり、様々な生体成長(vital growth)ステロイドおよび生理学的制御ステロイドの産生における介在物質であると考えられている。ACTHは副腎皮質を刺激する。具体的には、ヒトのコルチゾール(または齧歯類動物のコルチコステロン)等のグルココルチコイドの分泌を刺激するが、他の主要なステロイドホルモンであるアルドステロンの副腎皮質からの分泌については殆ど制御しない。ACTHは、副腎で発現するMC−2R副腎皮質刺激ホルモンレセプターに結合する。
【0002】
ACTHは、視床下部からのコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)に応答して下垂体前葉から分泌される。脳下垂体内では、特定のペプチダーゼ酵素の作用によって切断される大型の前駆体分子であるプロオピオメラノコルチン(POMC)からACTHが誘導される。ACTHのステロイド合成に対する作用としては、コレステロールエステラーゼの増加、コレステロールのミトコンドリア膜への輸送およびミトコンドリア膜中の輸送、P450SCCへのコレステロール結合、従ってプレグネノロン産生の増加を挙げることができる(Nussey, S. and S. Whitehead, Endocrinology: An Integrated Approach, BIOS Scientific Publishers Ltd. (2001)を参照)。これらに続く作用としては、ステロイド産生酵素の誘発と、過剰血管新生、細胞の肥大および過形成を特徴とする著しい構造変化の誘発とを挙げることができる。これは、過剰のACTHが長期間にわたって不必要に分泌されてしまう病態において特に顕著である。
【0003】
ステロイドグルココルチコイドは、副腎の副腎束状帯細網細胞(adrenal fasciculata-reticula cell)によって産生され、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の血漿レベルの増加に応答して分泌される。グルココルチコイドは炭水化物、タンパク質および脂肪の代謝に関与し、抗炎症特性を有することが判っており、ストレス時には過剰に分泌される。過剰のグルココルチコイドは、学習および記憶といった認知機能にとって重要な脳の辺縁系領域である海馬を傷害することが判っている。例えば、Sapolsky, R. M., Ann. N.Y. Acad. Sci. 746:294 (1994);およびMcEwen, B. S., Ann. N.Y. Acad. Sci. 746:134 (1994)を参照されたい。さらにまた、グルココルチコイドの神経毒性および神経に対する危険性(neuroendangerment)は、神経の発達や老化、並びに、海馬傷害に関連する神経疾患において重要であることが判っている。例えば、deKloet, E. R., et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 746:8 (1994)を参照されたい。
【0004】
コルチコステロイドは、コレステロールに構造上関連するステロイドホルモンである。これらのホルモンは副腎皮質で合成され、グルココルチコイド(例えば、コルチコステロイド)、鉱質コルチコイド(例えば、アルドステロン)、並びに、作用の弱いアンドロゲンおよびエストロゲンが挙げられる。副腎機能は、甲状腺の機能と同様に、視床下部(HPT)および脳下垂体(PIT)の支配下にある。コルチコステロイド(天然由来のグルココルチコイド)のレベルが設定値を下回ると、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の脳下垂体からの放出を刺激するCRH(コルチコトロピン放出ホルモン)が視床下部から放出される。ACTHは、コルチコステロイドの合成・分泌および副腎の成長を刺激する刺激ホルモンである(アルドステロンの合成/分泌に対しては最小限の作用を有する)。
【0005】
例えばクッシング症候群、コルチコステロイドの分泌過多による免疫反応障害、副腎が関連する早期分娩の特定の原因といったACTH関連病態を治療するために、ACTHレセプターに結合してコルチコステロイド分泌の活性化を低下させる化合物が求められている。
【0006】
クッシング症候群は、コルチコステロイドの副腎皮質からの分泌の増加に起因する障害である。副腎皮質の機能亢進は、ACTH依存性である場合もあり、ACTH調節とは無関係である場合(例えば、副腎皮質腺腫または癌腫によるコルチコステロイドの産生)もある。クッシング症候群の一般的な原因は、脳下垂体からのACTHの過剰産生である。この血流中のACTHレベルの上昇は、典型的には脳下垂体腺腫によって生じるが(クッシング病)、稀に異なる病因を有する。脳下垂体以外の場所でのACTH産生に起因するクッシング症候群は、異所性クッシング症候群として知られている。異所性部位の例としては、胸腺腫、甲状腺の髄様癌、褐色細胞腫、膵臓の島細胞腫瘍、肺の燕麦細胞癌が挙げられる。しかしながら、ヒトのクッシング症候群の大部分の症例では、その病因は脳下垂体腺腫である。クッシング症候群の症状としては、体重増加、体幹の肥満、ステロイドの分泌過多、コルチゾールの尿中排泄の増加、満月様顔貌、脱力感、疲労、背痛、頭痛、不能症、精神状態の変化、筋萎縮、本疾患に罹患していない哺乳動物と比較した場合の口渇および排尿の増加が挙げられる。クッシング症候群の診断および治療は、依然として難題である(Oldfield, E. W. et al., N. Engl. J. Med., 325:897-905 (1991); Findling, J. W. et al., "Diagnosis and differential diagnosis of Cushing's syndrome," Endocrinol. Metab. Clin. North Am., 30:729-47 (2001); Orth, D. N., "Cushing's syndrome," N Engl J Med., 332:791-803 (1995)を参照)。クッシング症候群に対しては現在利用できる医薬療法は存在しない。経験のある専門のセンターでは、ACTHを分泌する脳下垂体ミクロ腺腫の外科的切除によって約70〜80%の全治癒率をあげているが、マクロ腺腫の場合には治癒率はおよそ30%しかなく、広範囲にわたる外科的切除が必要であるため周囲の正常脳下垂体組織へのリスクが著しく上がり、約80%の症例で下垂体機能の一部低下または完全低下を招いている(Simmons, N. E. et al., "Serum Cortisol response to transphenoidal surgery for Gushing disease," J. Neurosurg., 95:1-8 (2001); Mampalam, T. J. et al., "Transsphenoidal microsurgery for Cushing's disease: A report of 216 cases," Ann. Intern. Med., 109:487-93 (1988);およびTrainer, P. J. et al., "Transsphenoidal resection in Cushing's disease: undetectable serum cortisol as the definition of successful treatment," Clin. Endocrinol., 38:73-8 (1993))。従って、ACTHの起源が、散在する下垂体腫瘍である場合、または、異所性起源である場合のクッシング症候群に対しても、患者にとって有効かつリスクの無い治療が求められている。
【0007】
ACTHレセプターに結合してコルチゾール分泌の活性化を低下させる化合物も、例えば、早期分娩を開始させる視床下部−脳下垂体−副腎系の治療に用いることができる。早期分娩は全出産のおよそ7〜10%で生じ、かなりの割合の周産期罹患率および死亡率に寄与している(McCormick, M. C, "The contribution of low birth weight to infant mortality and childhood morbidity," N Engl J Med., 312:82-90 (1985))。ヒトの女性における自然流産・早期分娩および長期在胎を防ぐことは、多くの理由から望ましい。(i)生育可能な生児出生をより確実にし、(ii)早産児に伴う医療合併症(health complications)の発生を軽減し、また、(iii)未熟児(健康であっても)が、身体の大きさや生育力のため、特別な看護を受けなければならない期間を減らすために、妊娠を延長させるのが望ましい。(i)生児出生、(ii)健常児、(iii)親の保護下に病院を適時に退院可能な小児の全てのファクターが、両親や親類の幸福と健康に望ましい影響をもたらす。早産には社会に対する影響もあり、例えば、極度の早産児を世話する際には非常に大きな社会経済的影響がある。
【0008】
農水産業では、生物を高い個体群密度で栽培・養殖することができれば、費用対効果を大きくすることが可能である。しかしながら、哺乳動物、鳥類および魚類の間では、副腎性ストレスホルモンが過剰に産生されてしまい、免疫機能障害や発育不良といった悪い結果を伴うことが多い。長期にわたるストレスによって引き起こされ、望ましくない健康上の変化(例えば、疾患に対する免疫機能や感受性の低下)をもたらすこれらの状態または他の状態において、副腎性ストレスホルモンのレベルを低下させる方法も、同じく望ましい。
【0009】
各種の組成物および方法を使用して、例えばアルギニンバソプレシン(AVP)に対する特定のレセプターを介すなどして、ACTHレベルを低下させることができる。米国特許第6,380,155号(2000年5月3日出願)は、ACTHの放出を調節するための、特定のバソプレシンレセプターアンタゴニスト組成物の使用に関するものである。ACTHレベルを調節してACTH関連病態を治療する組成物が望ましく、例えば、ACTH MC−2Rレセプターに結合可能であると同時に、ACTHによるコルチコステロイドの産生を減少または回避し、ACTHレベルの上昇に伴う望ましくない病態を緩和する組成物が望ましい。
要旨
未改変ACTHと比較して、ACTHによるコルチコステロイドの分泌を減少または回避する各種の改変副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)ペプチド(「ACTHアナログ」)を提供する。好ましくは、当該ACTHアナログは、未改変ACTHの存在下での副腎膜からのコルチコステロイドの分泌も減少させる。
【0010】
ACTHアナログ化合物は、好ましくは、未改変ACTHの少なくともアミノ酸1〜24を含み、1以上のアミノ酸置換を伴う。ACTHアナログ化合物は、未改変のヒトACTHアミノ酸配列に対する1以上のアミノ酸置換または末端切断を含むことができる。未改変のヒトACTHは、以下に示す配列のアミノ酸残基39個を有するポリペプチドである:N−Serl−Tyr−Ser−Met−Glu5−His−Phe−Arg−Trp−Gly10−Lys−Pro−Val−Gly−Lys15−Lys−Arg−Arg−Pro−Val20−Lys−Val−Tyr−Pro−Asn25−Gly−Ala−Glu−Asp−Glu30−Ser−Ala−Glu−Ala−Phe35−Pro−Leu−Glu−Phe39−Ac(配列番号1)(配列中、NおよびAcはそれぞれ分子のアミノ末端およびカルボキシ末端を表す)。ACTHアナログはまた、以下に示す配列の1以上の置換または改変を有するペプチドを含む化合物を含むこともできる:N−Ser1−Tyr−Ser−Met−Glu5−His−Phe−Arg−Trp−Gly10−Lys−Pro−Val−Gly−Lys15−Lys−Arg−Arg−Pro−Val20−Lys−Val−Tyr−Pro−Ac(配列番号2)(配列中、NおよびAcはそれぞれ分子のアミノ末端およびカルボキシ末端を表す)。好適なACTHアナログ化合物は、hACTHまたはmACTHの少なくともアミノ酸残基1〜19、より好ましくはhACTHまたはmACTHのアミノ酸残基1〜24を含み、1以上のアミノ酸置換を伴う。
【0011】
ACTHアナログ化合物としては、配列番号1または配列番号2のACTH配列を含み、以下に示すACTHアナログの好適な生物学的機能の1つ以上をもたらす1以上の構造改変を伴う化合物が挙げられる:(1)ACTHアナログの存在下では未改変ACTHと比較して副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させる、(2)内在性ACTHの存在下での副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させる、(3)未改変ACTHと比較してMC−2R結合親和性を増加させ、MC−2Rレセプターの活性化を低下させる。ACTHアナログ化合物を形成する好適なACTHアミノ酸置換の例としては、以下に示す置換の1つ以上が挙げられる:(1)1〜13位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換であって、6〜9位に位置するアミノ酸を保存するか、および/または、MC−2R結合を促進もしくは維持する置換、(2)15〜18位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換であって、これらの位置における酵素的切断を抑制または拮抗する置換、(3)15〜18位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換であって、ACTHアナログが15〜18位に塩基性側鎖を有するアミノ酸残基を隣接して含まないような置換、(4)20〜24位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換または末端切断であって、ACTHアナログの血清中半減期を延長させる置換または末端切断、(5)20〜36位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換であって、未改変ACTHペプチドと比較してACTHアナログ化合物の存在下では副腎膜のコルチコステロイド分泌を減少させるACTHアナログをもたらす置換、(6)25〜39位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換または好ましくは末端切断であって、所望の放出特性を有するACTHアナログ化合物をもたらす置換または末端切断、(7)アミノ酸残基25〜39の末端切断(24位に位置するアミノ酸残基により分子のカルボキシ末端を形成)。
【0012】
ACTHアナログ化合物は、好ましくは、副腎膜のメラノコルチン2レセプター(MC−2R)等のACTHレセプターに結合する。より好ましくは、ACTHアナログ化合物は、MC−2Rを発現する細胞を活性化しないか、または、弱く活性化し、かつ、未改変の内在性ACTHの作用を阻害または低下させる。
【0013】
第一の実施態様では、各種のACTHアナログ化合物は、未改変のヒトACTHアミノ酸配列に対して1以上のアミノ酸置換または末端切断を含むことができる。例えば、単離されたACTHアナログペプチドを含む組成物は、以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つを有する配列番号2のペプチドを含むことができる:
a.配列番号2の19位に位置するPro残基のアミノ酸Trpによる置換;または
b.配列番号2のアミノ酸残基16〜18から選択される残基の1以上のアミノ酸置換であって、以下の条件を満たすもの:
ACTHアナログのアミノ酸残基16、17および18が、LysおよびArgからなる群より選択される2個のアミノ酸残基をいずれも隣接して含まない;かつ
配列番号2の16、17または18位に置換した1以上のアミノ酸残基が、Lys、Arg、Gln、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、アルキル側鎖を有するアミノ酸アナログ(例えばNle)からなる群より選択される。場合によっては、ACTHアナログペプチドは、配列番号2のアミノ酸位置15、16、17または18のいずれか2箇所に置換した少なくとも1つのAla、Glyまたはアルキル側鎖を有する別のアミノ酸(即ち、Val、Leu、Ile、アルキル側鎖を含むアミノ酸アナログ(Nle等))と少なくとも1つのArg残基とを含むことができる。ACTHアナログは、場合によっては、以下のアミノ酸置換を有する配列番号2の配列から本質的になるものであってよい:配列番号2の19位に位置するPro残基をアミノ酸Trpで置換する;配列番号2の15位に位置するアミノ酸が、Lys、AlaおよびGlnからなる群より選択される;かつ、ACTHアナログペプチドが、配列番号2のアミノ酸残基16〜18から選択される残基の1以上のアミノ酸置換を含むものであって、ACTHアナログのアミノ酸残基16、17および18が、LysおよびArgからなる群より選択される2個のアミノ酸残基をいずれも隣接して含まない。好ましくは、ACTHアナログペプチドのアミノ酸残基6、7、8および9には、配列番号4のアミノ酸配列が含まれる。同じくACTHアナログペプチドのアミノ酸残基15〜19には、配列番号12のアミノ酸配列が含有可能である。
【0014】
第一の実施態様には、配列番号1のペプチドを有するACTHアナログも含まれ、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、配列番号1の19、26、30または36位に位置するアミノ酸残基の置換を伴う。ACTHアナログペプチドとしては、以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つを有する配列番号1のペプチドも挙げることができる:
a.配列番号1の19位に位置するPro残基のアミノ酸Trpによる置換;または
b.配列番号1のアミノ酸残基16〜18から選択される残基の1以上のアミノ酸置換であって、以下の条件を満たすもの:
ACTHアナログのアミノ酸残基16、17および18が、LysおよびArgからなる群より選択される2個のアミノ酸残基をいずれも隣接して含まない;かつ
配列番号2の16、17または18位に置換した1以上のアミノ酸残基が、Lys、Arg、Gln、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Nle(またはアルキル側鎖を有する別のアミノ酸アナログ)からなる群より選択される。
【0015】
他の好適なACTHアナログペプチドは、ACTHアナログペプチドのアミノ酸残基15〜19に配列番号6のアミノ酸配列が含まれるような、配列番号1または配列番号2のペプチドの改変を含む。ACTHアナログペプチドには1以上のペプチドの末端切断も含まれ、ACTHアナログは配列番号1のアミノ酸残基25〜39の末端切断をさらに含む。配列番号20のACTHアナログペプチドが特に好適である。
【0016】
一部の実施態様では、ACTHアナログペプチドの投与により、配列番号2のペプチドと比較して、インビトロでの血清コルチコステロイド誘発アッセイにおいてACTHによる副腎膜からのコルチコステロン産生が少なくとも10%、好ましくは100%まで減少する。例えば第二の実施態様では、ACTHアナログは改変されたACTHペプチドであり、未改変ACTHと比較してACTHアナログの存在下では副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させるように機能する。
【0017】
一部の実施態様では、インビボでの血清コルチコステロイド阻害アッセイにおいてACTHアナログペプチドを投与した場合、ACTHによるコルチコステロイドの分泌が少なくとも10%減少する。第三の実施態様では、ACTHアナログは、内在性ACTHの存在下での副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させるように機能する、改変ACTHペプチドである。
【0018】
一部の実施態様では、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号2の単離されたACTHアナログペプチドを含む組成物を提供する。当該ACTHアナログペプチドは、副腎膜に結合して配列番号2のペプチドを副腎膜から退かして置き換わるものである。ペプチド結合は、インビトロでの無血清副腎競合結合アッセイにて測定可能である。例えば第四の実施態様では、ACTHアナログは、副腎ACTHレセプター(例えば、MC−2Rレセプター)に結合するように機能し、好ましくは未改変ACTHと比較してMC−2R結合親和性を増加させ、MC−2Rレセプターの活性化を低下させる、改変ACTHペプチドである。好ましくは、ACTHアナログペプチドは、副腎膜に結合して配列番号2のペプチドを副腎膜から退かして置き換わることができ、当該ペプチド結合は、インビトロでの無血清副腎競合結合アッセイにて測定する。最も好ましくは、ACTHアナログペプチドが、配列番号2のペプチドの少なくとも2倍の親和性でMC−2R副腎膜に結合する。
【0019】
一部の実施態様では、ACTHアナログペプチドは、インビトロでの無血清副腎阻害アッセイにおいてACTHによる副腎膜からのコルチコステロン産生を減少させる。例えば第五の実施態様では、ACTHアナログ化合物は、インビトロで外植組織における未改変ACTHによるコルチコステロイド誘発を減少させることができる。ACTHアナログとしては、インビトロでの無血清副腎阻害アッセイにおいてACTHによる副腎膜からのコルチコステロン産生を減少させるペプチドが挙げられる。
【0020】
第六の実施態様では、半減期が延長されたACTHアナログを提供する。半減期が延長されたACTHアナログは、インビボで検出される血清コルチコステロイド濃度により測定される第一の活性を有するものと同定することができ、第一の活性は、インビトロ活性として検出される無血清コルチコステロイド濃度により測定される第二の活性よりも高く、ここで、インビボ活性は、実施例2の血清副腎コルチコステロイド阻害アッセイにて測定し、インビトロ活性は、実施例4のインビトロでの無血清副腎コルチコステロイド阻害アッセイにて測定する。
【0021】
第七の実施態様では、副腎の活動可能な状態(adrenal tone)を維持しながら過剰のACTHを阻止するのに有用なACTHアナログのスクリーニング方法も提供する。各種のACTHアナログを調製し、患者へ投与してインビボでのコルチゾン誘発を評価することができる。
【0022】
第八の実施態様では、本開示は、ACTHアナログを含む医薬組成物、および、ACTH関連病態に伴う症状の治療に見合った方法での当該組成物の被験体への投与に関する。本明細書に開示のACTHアナログは、ACTH関連病態(例えば、ヒトまたは動物におけるACTHの過剰発現)を治療するための医薬組成物へ配合することができる。ACTHアナログおよびACTHアナログを含有する関連の医薬組成物の製造方法も提供する。例えば一態様では、副腎の活動可能な状態を維持しながら過剰のACTHを阻止するのに有用な化合物について、ACTHアナログのクラスをスクリーニングする方法を提供する。
【0023】
ACTHアナログ化合物は、ACTHのレベルに関連する疾患、例えば、ACTHレセプター(MC−2R等)のモジュレーションに応答性の病態を治療する際に有用である。コルチコステロイドの分泌またはコルチコステロイドのレベルを調節するのに有用な化合物も提供する。ACTHアナログ化合物を投与することにより、ACTHレベルの調節に関連する病態を治療することができ、例えば、副腎機能の活性状態(tonic state)を維持しながら患者における高レベルのACTHの作用を軽減することができる。ACTHアナログ組成物は、例えば、ACTH関連病態(例えば、クッシング症候群、コルチコステロイドの分泌過多による免疫反応障害、早期分娩の開始(例えば、視床下部−脳下垂体−副腎系によるもの)および関連の病態)を治療する際に有用である。ある態様では、各種のACTHアナログを調製し、患者へ投与してインビボでのコルチゾン誘発を評価することができる。別の態様では、家畜被験体の治療方法、例えば、高い個体群密度にて栽培・養殖される農水産種の健康に役立つようストレスホルモンを低下させる方法を提供する。
詳細な説明
特に定義しない限り、本明細書で使用する技術・科学用語は全て、本発明が属する技術の当業者に通常理解されるのと同一の意味を有する。万一矛盾があった場合には、定義を含む本書類を基準とする。好適な方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載のものと類似または等価の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することもできる。本明細書に記載する刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は全て、引用により全内容が本明細書に含まれるものとする。本明細書に開示する材料、方法および具体例は、例示のみを目的としており、限定を意図したものではない。
【0024】
本明細書中、「未改変副腎皮質刺激ホルモン」(「未改変ACTH」)とは、下垂体前葉によって産生されるペプチドホルモンを意味し、当該ペプチドホルモンは、副腎皮質を刺激してグルココルチコイドホルモンを分泌させ、グルココルチコイドホルモンは、糖新生の過程を介して細胞のグルコース合成を助け、タンパク質を異化し、遊離脂肪酸を動員し、アレルギー応答時の炎症を抑える。このようなホルモンの一つは、炭水化物、脂肪およびタンパク質の代謝を調節するコルチコステロイドである。
【0025】
本明細書中、「コルチコステロイド」には、ヒトのコルチコステロイドコルチゾールおよび齧歯類動物のコルチコステロイドコルチコステロンが含まれる。
量に関して使用される「約」には、記載された量と等価の当該量の変動が含まれ、例えば、意図した目的または機能にとって、記載された量と実質的には違わない量が含まれる。
【0026】
本明細書中、「P(x−y)」(Pはポリペプチドの名前であり、xおよびyは整数である)との表記は、「P」と呼ばれるポリペプチドの(x)位から(y)位に位置する連続アミノ酸からなるアミノ酸配列を意味する。例えば、「hACTH(1−24)」とは、ヒトACTHペプチドのアミノ末端側の残基1〜24からなる24個の連続するアミノ酸のポリペプチドを意味する。「mACTH」はマウスのACTHを意味する。特に、hACTH(1−24)とmACTH(1−24)は同一のペプチド配列である。
【0027】
「aXb」(aおよびbはアミノ酸の1文字略語であり、Xは数字である)との表記は、未改変ACTHペプチドの「X」位のアミノ酸「a」をアミノ酸「b」で置換したことを意味する。例えば、「(V26F,E30K)mACTH」とは、分子のアミノ末端から26番目に位置するValアミノ酸の代わりにPheアミノ酸を置換し、かつ、分子のアミノ末端から30番目に位置するGluアミノ酸の代わりにLysアミノ酸を置換することにより改変された39アミノ酸のマウスACTH分子を意味する。同様に、「αβχX−Yδεφ」(α、β、χ、δ、εおよびφはアミノ酸の1文字略語を表し、XおよびYは数字である)との表記は、X位〜Y位に位置する連続アミノ酸「αβχ」をアミノ酸「δεφ」で置換したことを意味する。
【0028】
ACTHアナログ化合物としては、ACTH配列を含み、以下に示すACTHアナログの好適な生物学的機能の1つ以上をもたらす1以上の構造改変を伴う化合物が挙げられる:(1)ACTHアナログの存在下では未改変ACTHと比較して副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させる、(2)内在性ACTHの存在下での副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させる、(3)未改変ACTHと比較してMC−2R結合親和性を増加させ、これに伴ってMC−2Rレセプターの活性化を低下させる。ACTHアナログ化合物は、メラノコルチン2レセプター(MC−2R)に結合し、MC−2Rを発現する細胞を弱く活性化し、内在性ACTHのMC−2Rレセプターに対する作用を阻止することで作用すると考えられている。
【0029】
所望の機能の1つ以上を有するACTHアナログ化合物を形成するのに使用できる好適なACTHアミノ酸置換の例としては、以下のものが挙げられる:(1)1〜13位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換であって、6〜9位に位置するアミノ酸を保存するか、および/または、MC−2R結合を促進もしくは維持する置換、(2)15〜18位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換であって、これらの位置における酵素的切断を抑制または拮抗する置換、(3)15〜18位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換であって、隣接する二塩基アミノ酸を特徴としない置換、(4)20〜24位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換または末端切断であって、ACTHアナログの血清中半減期を延長させる置換または末端切断、(5)25〜39位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換または好ましくは末端切断であって、所望の放出特性を有するACTHアナログ化合物をもたらす置換または末端切断、(6)アミノ酸残基25〜39の末端切断(24位に位置するアミノ酸残基により分子のカルボキシ末端を形成)。
ACTHアナログ化合物
第一の実施態様では、各種のACTHアナログ化合物は、未改変のヒトACTHアミノ酸配列に対して1以上のアミノ酸置換または末端切断を含むことができる。未改変のヒトACTHは、以下に示す配列のアミノ酸残基39個を有するポリペプチドである:N−Ser1−Tyr−Ser−Met−Glu5−His−Phe−Arg−Trp−Gly10−Lys−Pro−Val−Gly−Lys15−Lys−Arg−Arg−Pro−Val20−Lys−Val−Tyr−Pro−Asn25−Gly−Ala−Glu−Asp−Glu30−Ser−Ala−Glu−Ala−Phe35−Pro−Leu−Glu−Phe39−Ac(配列番号1)(「hACTH」)(配列中、NおよびAcはそれぞれ分子のアミノ末端およびカルボキシ末端を表す)。ACTH(1−24)は、ヒトACTH(1−24)をはじめとして多くの脊索動物に見られ、かつ、以下のペプチド配列を有する点で保存されている:N−Ser1−Tyr−Ser−Met−Glu5−His−Phe−Arg−Trp−Gly10−Lys−Pro−Val−Gly−Lys15−Lys−Arg−Arg−Pro−Val20−Lys−Val−Tyr−Pro−Ac(配列番号2)(マウスACTHの1〜24部分(「mACTH(1−24)」と同一)(配列中、NおよびAcはそれぞれ分子のアミノ末端およびカルボキシ末端を表す)。
【0030】
ACTHアナログ化合物は、hACTH(配列番号1)の少なくともアミノ酸残基1〜19、より好ましくはアミノ酸残基1〜24を含むことができ、1以上のアミノ酸置換を伴う。好適なACTHアナログ化合物は、1以上のアミノ酸置換で改変された配列番号2を含む。ACTHアナログ化合物としては、ACTH配列を含み、以下に示すACTHアナログの好適な生物学的機能の1つ以上をもたらす1以上の構造改変を伴う化合物が挙げられる:(1)ACTHアナログの存在下では未改変ACTHと比較して副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させる、(2)内在性ACTHの存在下での副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させる、(3)未改変ACTHと比較してMC−2R結合親和性を増加させ、MC−2Rレセプターの活性化を低下させる。
【0031】
特に好適なACTHアナログ化合物は、未改変のヒトACTH配列に対して以下に示すアミノ酸置換の1つ以上を有する:(1)1〜13位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換であって、6〜9位に位置するアミノ酸を保存する置換、(2)15〜18位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換であって、これらの位置における酵素的切断を抑制または拮抗する置換、(3)15〜18位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換であって、隣接する二塩基アミノ酸を特徴としない置換、(4)20〜24位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換または末端切断であって、ACTHアナログの血清中半減期を延長させる置換または末端切断、(5)25〜39位に位置する1以上のアミノ酸残基の置換または好ましくは末端切断であって、未改変ACTHまたは他のACTHアナログ化合物と比較して血清中半減期が延長されたACTHアナログ化合物をもたらす置換または末端切断。
【0032】
ACTHアナログは、好ましくは、下記の式(I)で表されるポリペプチドを含む:
(I) N−(AA1-13)−(AA14)−(AA15-18)−(AA19)−Ac
(式中、N−およびAc−は、それぞれポリペプチドのアミノ末端およびカルボキシ末端を表し、(AA1-13)−は、連続する13個のアミノ酸またはアミノ酸アナログからなる第一の列を表し、(AA14)−は、第一の列のカルボキシ末端に結合したアミノ酸残基を表し、(AA15-18)−は、(AA14)のカルボキシ末端に結合した連続する4個のアミノ酸からなる第二の列を表し、(AA19)−は、第二の列のカルボキシ末端に結合したアミノ酸残基を表す)。
【0033】
式(I)のACTHアナログは、好ましくは、より大型の分子部分が(AA19)−Ac部分のカルボキシ末端にさらに結合している。ACTHアナログは、追加のアミノ酸が式(I)のカルボキシ末端(Ac)にさらに結合可能である。最も好ましくは、ACTHアナログは、合計5個の追加アミノ酸が式(I)のAc部分に結合しており、ACTHアナログ中に合計で少なくとも24個のアミノ酸を有する。
【0034】
ACTHアナログは、式(I)に相当する未改変ACTHのアミノ酸配列を含むことができ、好ましくは1以上のアミノ酸置換を伴う。追加のアミノ酸またはアミノ酸アナログは、好ましくは、式(I)の(AA19)−残基のカルボキシ末端に結合している。
【0035】
式(I)の(AA1-13)−部分は、式(II)に示す13個のアミノ酸からなる配列を表し:
(II) −AA1−AA2−AA3−AA4−AA5−AA6−AA7−AA8−AA9−AA10−AA11−AA12−AA13
表1の第二行に記載した未改変ACTHアミノ酸配列を有し、場合によっては表1の第三行に示す1以上のアミノ酸置換を伴っていてもよい。未改変のヒトACTHの(AA1-13)−部分は、Ser−Tyr−Ser−Met−Glu−His−Phe−Arg−Trp−Gly−Lys−Pro−Val(配列番号3)の配列を有する。好ましくは、式(II)のAA6−AA7−AA8−AA9−の部分は、未改変のアミノ酸配列His−Phe−Arg−Trp−(配列番号4)を有し、場合によっては、その(D)アミノ酸アナログの1つ以上で置換されていてもよい。
【0036】
【表1】

【0037】
表1中、(D)は、記載したアミノ酸の(D)エナンチオマーを意味し;Nleは、アミノ酸アナログであるノルロイシンまたはアルキル側鎖を有する別のアミノ酸を意味し;Ornは、オルニチンまたは類似の側鎖を有する別の改変アミノ酸を意味し;Dabは、2,4ジアミノ酪酸または類似のジアミノ酸を意味し;Dprは、2,3ジアミノプロピオン酸または別のジアミノ酸を意味し;(D)p−iodo−Pheは、p−ヨード修飾Pheアミノ酸等の立体化学的な基(steric group)を意味し;(D)−l−naph−Alaは、l−naph−修飾(D)−Alaアミノ酸または別の立体化学的に修飾されたアミノ酸を意味する。未改変ACTHの未改変(AA1-13)部分に対する置換を含むACTHアナログ化合物は、好ましくは、以下に示す任意のACTHアナログアミノ酸残基のうちの1つを含む(表1の所定の残基位置)。例えば、未改変ACTHはGlu残基をAA5位に有し、場合によっては、ACTHアナログを形成する際に(D)−Glu、CysまたはAsp残基で置換してもよい。式(II)のアミノ酸配列はまた、Hrubyらによって米国特許第4,485,039号、同第4,457,864号、同第4,866,038号、同第5,731,408号、同第5,714,576号、同第5,049,547号、同第4,918,055号、同第4,649,191号、同第5,674,839号(いずれも引用により本明細書に含まれるものとする)に開示されているMC−2R結合配列に相当する1以上のアミノ酸置換も含むことができる。
【0038】
式(I)の(AA14)−部分はアミノ酸残基(好ましくはGlyまたは(D)Gly)を表すが、ACTHアナログ化合物の望ましい生物学的機能、例えば、ACTHと比較した場合のACTHアナログによるコルチコステロイド分泌の減少、内在性ACTHおよび/またはMC−2R結合によるコルチコステロイド分泌の減少等を維持する他のアミノ酸を(AA14)−の位置に置換させることも可能である。
【0039】
式(I)の(AA15-18)−部分は、式(III)に示す4個のアミノ酸からなる配列を表す。
(III) −AA15−AA16−AA17−AA18
未改変のヒトACTHの(AA15-18)−部分には、Lys−Lys−Arg−Arg(配列番号5)の配列が含まれ、塩基性側鎖を有する4個のアミノ酸を隣接して含む。好ましくは、ACTHアナログ化合物は、式(III)において1以上のアミノ酸残基の置換を含み、これらの位置における酵素的切断を抑制または拮抗する。また、好ましくは、ACTHアナログ化合物は、式(III)において、塩基性側鎖を有するアミノ酸を隣接させない1以上のアミノ酸の置換も含む。AA15−およびAA16−は、好ましくはLys、Ala、GlyおよびValからなる群より独立して選択され、AA17−AA18は、好ましくはArg、Ala、GlyおよびValからなる群より独立して選択される。
【0040】
一態様では、配列番号2または式(III)の残基AA16−AA17−AA18の1以上のアミノ酸置換を、ACTHアナログのアミノ酸残基16、17および18が、LysおよびArgからなる群より選択される2個のアミノ酸残基をいずれも隣接して含まないように選択する。言い換えれば、一部のACTHアナログでは、ペプチド配列のAA16−AA17−AA18部分内では、アミノ酸LysおよびArgが互いに隣接(即ち、アルギニンがリシンに隣接、もしくは、リシンがアルギニンに隣接)しないか、または、同一のアミノ酸同士が隣接(即ち、アルギニンが別のアルギニンに隣接、もしくは、リシンが別のリシンに隣接)しない。その代わり、AA16−AA17−AA18部分内のアミノ酸の1つ以上を、以下に示すACTHアナログの好適な生物学的機能の1つ以上をもたらすLysまたはArg以外の任意のアミノ酸またはアミノ酸アナログで置換する:(1)ACTHアナログの存在下では未改変ACTHと比較して副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させる、(2)内在性ACTHの存在下での副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させる、(3)未改変ACTHと比較してMC−2R結合親和性を増加させ、MC−2Rレセプターの活性化を低下させる。例えば、ACTHアナログ化合物は、式(III)において1以上の位置に位置する未改変ACTH残基をAla残基で置換可能である。ACTHアナログ化合物は、式(III)においてGlyまたはアルキル側鎖を有する任意のアミノ酸(即ち、Ala、Val、Leu、Ile、アルキル側鎖を含むアミノ酸アナログ(Nle等))による配列番号5の残基置換を含むことができる。また、好ましくは、ACTHアナログは、配列番号2のアミノ酸位置15、16、17または18のいずれか2箇所に置換した少なくとも1つのAlaおよび少なくとも1つのArg残基を同様に含むことができる。場合によっては、配列番号2の15、16、17または18位におけるACTHアナログ置換は、Lys、Arg、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、アルキル側鎖を含むアミノ酸アナログ(Nle等)、Gln、Asn、GluおよびAspからなる群より選択されるアミノ酸である。最も好ましくは、ACTHアナログは、Lys−Arg−Ala−Ala−(配列番号6)、Ala−Lys−Ala−Arg(配列番号7)、Lys−Ala−Ala−Arg(配列番号8)、Lys−Ala−Arg−Ala−(配列番号9)、Gln−Lys−Gln−Arg(配列番号10)およびAla−Ala−Ala−Ala(配列番号11)からなる群より選択される式(III)のアミノ酸配列を含む。ACTHアナログ化合物はまた、15、16、17または18位に位置する1以上のアミノ酸残基を、アミノ酸またはアルキル側鎖を有するアミノ酸アナログ、例えばGly、Ala、Val、Leu、IleまたはNleで置換することもできる。ACTHアナログでは、ACTHアナログ化合物の好適な生物学的機能の1つ以上、例えば、未改変ACTHと比較した場合のACTHアナログによるコルチコステロイド分泌の減少、内在性ACTHおよび/またはMC−2R結合によるコルチコステロイド分泌の減少等を維持する他のアミノ酸を、AA15−AA16−AA17−AA18の位置の1つ以上に置換させる。
【0041】
式(I)の(AA19)−部分はアミノ酸残基を表し、Pro、TrpまたはAlaであってよいが、好ましくはTrp、Ala、または、ACTHアナログ化合物の好適な生物学的機能の1つ以上、例えば、未改変ACTHと比較した場合のACTHアナログによるコルチコステロイド分泌の減少、内在性ACTHおよび/またはMC−2R結合によるコルチコステロイド分泌の減少等を維持しながら(AA19)−の位置に置換可能な他のアミノ酸である。好ましくは、ACTHアナログ化合物では、プロリン以外のアミノ酸を(AA19)−の位置に置換させる。より好ましくは、ACTHアナログでは、Proの代わりにアミノ酸Trpを(AA19)−の位置に置換させる。未改変ACTHペプチド配列(例えば、hACTHやmACTH)は、(AA19)−の位置にプロリン残基を含む。プロリンは以下の化学構造を有する:
【0042】
【化1】

【0043】
プロリンの化学構造には、環構造を形成する側鎖が含まれる。プロリンは、αヘリックスの末端またはターンもしくはループ中に見られることが多い。ポリペプチド中にほぼトランス形でのみ存在する他のアミノ酸とは異なり、プロリンはペプチド中にシス配置で存在可能である。シス形とトランス形はほぼ等エネルギーである。好ましくは、(AA19)−は、式(III)において配列番号6〜10を含むACTHアナログではTrpであるが、ACTHアナログ中(AA19)−がProである化合物も提供する。
【0044】
従って、特に好適なACTHアナログは、(AA14)−(AA15-18)−(AA19)−が、−Gly14−Lys15−Arg16−Ala17−Ala18−Trp19−(配列番号12)、−Gly14−Ala15−Lys16−Ala17−Arg18−Pro19−(配列番号13)、−Gly14−Lys15−Ala16−Ala17−Arg18−Pro19−(配列番号14)、−Gly14−Lys15−Ala16−Arg17−Ala18−Pro19−(配列番号15)、−Gly14−Gln15−Lys16−Gln17−Arg18−Pro19−(配列番号16)および−Gly14−Lys15−Arg16−Ala17−Ala18−Pro19−(配列番号17)からなる群より選択される、改変されたhACTH、mACTHまたはhACTH(1−24)ペプチド配列である。
【0045】
ACTHアナログは、下記の式(IVa)または式(IVb)で表されるポリペプチドを含む:
(IVa) N−(AA1-13)−(AA14)−(AA15-18)−(AA19)−(AA20-24)−
(IVb) N−(AA1-13)−(AA14)−(AA15-18)−(AA19)−(AA20-24)−Ac
(式中、N−はポリペプチドのN末端を表し、Acはポリペプチドのカルボキシ末端を表す)。式(VIa)または(VIb)のACTHアナログには、式(I)について上述したようなN−(AA1-13)−(AA14)−(AA15-18)−(AA19)−が含まれ、さらに(AA20-24)−の部分が式(I)のアミノ酸配列のカルボキシ末端に結合している。式(VIa)および(VIb)の(AA20-24)−部分は、式(V)に示す5個のアミノ酸からなる配列を表す。
【0046】
(V) −AA20−AA21AA22AA23−AA24
未改変のヒトACTHの(AA20-24)−部分には、Val−Lys−Val−Tyr−Pro(配列番号18)の配列が含まれる。好ましくは、ACTHアナログ化合物は、式(V)において1以上のアミノ酸残基の置換を含み、ACTHアナログの血清中半減期を延長させる。例えば、ACTHアナログは、式(V)に相当する配列である−Ala−Ala−Ala−Ala−Ala−(配列番号19)を含むことができる。
【0047】
式(IVa)で表される特に好適なACTHアナログは、hACTH(1−24)の配列を含み、式(III)の−AA15−AA16−AA17−AA18−の部分が配列番号6で置換されている。式(IVa)で表される特に好適な化合物の一つは、ACTHアナログである(KKRRP15−19KRAAW)mACTH(1−24)であり、以下の配列を有する:N−Ser1−Tyr−Ser−Met−Glu5−His−Phe−Arg−Trp−Gly10−Lys−Pro−Val−Gly−Lys15−Arg−Ala−Ala−Trp−Val20−Lys−Val−Tyr−Pro−Ac(配列番号20)(「AT814」とも称する)。特に好適な他のACTHアナログ化合物は、15、16、17または18位に位置するアミノ酸残基の1つ以上をアラニンまたはグルタミンで置換した、および/または、20、21、22、23または24位に位置するアミノ酸残基をアラニンで置換した配列番号2のペプチドから本質的になり、例えば、Costa, JL et al., "Mutational analysis of evolutionarily conserved ACTH residues," Gen Comp Endocrinol. Mar; 136(1):12-6 (2004)(引用により全内容が本明細書に含まれるものとする)に記載されているものが挙げられる。
【0048】
第一の実施態様の第三の態様では、ACTHアナログは、式(VIa)または式(VIb)で表されるポリペプチドを含む:
(VIa) N−(AA1-13)−(AA14)−(AA15-18)−(AA19)−(AA20-24)−(AA25-39)−
(VIb) N−(AA1-13)−(AA14)−(AA15-18)−(AA19)−(AA20-24)−(AA25-39)−Ac
(式中、N−はポリペプチドのアミノ末端を表し、Acはポリペプチドのカルボキシ末端を表す)。式(IVa)または(IVb)のACTHアナログには、式(IVa)について上述したようなN−(AA1-13)−(AA14)−(AA15-18)−(AA19)−(AA20-24)−が含まれ、さらに(AA25-39)−の部分が式(IVa)のアミノ酸配列のカルボキシ末端に結合している。式(VIa)は、場合によっては、追加の化学構造がAA39残基に結合していてもよく、あるいは、AA39残基が式(VIb)の構造のカルボキシ末端を形成する。式(VIa)および(VIb)の(AA25-39)−部分は、式(VII)に示す15個のアミノ酸からなる配列を表す。
【0049】
(VII) −AA25−AA26−AA27−AA28−AA29−AA30−AA31AA32−AA33−AA34−AA35−AA36−AA37−AA38−AA39
未改変のヒトACTHの(AA25-39)−部分には、Asn−Gly−Ala−Glu−Asp−Glu−Ser−Ala−Glu−Ala−Phe−Pro−Leu−Glu−Phe(配列番号21)の配列が含まれる。好ましくは、ACTHアナログ化合物は、式(VII)において1以上のアミノ酸残基の置換を含むか、または、式(VII)のカルボキシ末端から1以上のアミノ酸残基の末端切断を含み、ACTHアナログ化合物に所望の徐放特性を与える。例えば、ACTHアナログは、配列番号10の未改変ACTH配列を有する式(VII)に相当する配列を含むことができ、場合によっては、AA30をLysで置換および/またはAA36をArgで置換することで改変されていてもよい。
【0050】
置換変異体は、アミノ酸配列中の少なくとも1つの残基が除去され、代わりに異なる残基が挿入されているものである。このような置換は、タンパク質の特徴を細かくモジュレートするのが望ましい場合には、以下の表2に従って行うことが可能である。表2は、タンパク質中の元のアミノ酸と置き換えることのできるアミノ酸を示し、このようなアミノ酸は当該技術分野では保存的置換として認められている。ACTHアナログ化合物としては、以下に示すACTHアナログの好適な生物学的機能の1つ以上を保持する1以上の保存的置換を有する化合物が挙げられる:(1)ACTHアナログの存在下では未改変ACTHと比較して副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させる、(2)内在性ACTHの存在下での副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させる、(3)未改変ACTHと比較してMC−2R結合親和性を増加させ、MC−2Rレセプターの活性化を低下させる。
【0051】
【表2】

【0052】
機能または免疫学的同一性の実質的な変化は、表2よりも保存的でない置換を選択することでもたらされる。即ち、(a)置換領域におけるポリペプチド主鎖の構造を、例えばシートまたはヘリックス構造として維持する上で、(b)標的部位における分子の荷電または疎水性を維持する上で、あるいは、(c)側鎖の嵩高さを維持する上で著しく効果の異なる残基を選択することでもたらされる。通常タンパク質の特性に最も大きな変化をもたらすと予想される置換は、以下のものが考えられる:(a)親水性の残基(例えば、セリルまたはスレオニル)と疎水性残基(例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルまたはアラニル)との置換;(b)システインまたはプロリンと他の任意の残基との置換;(c)電気陽性の側鎖を有する残基(例えば、リシル、アルギニルまたはヒスタジル(histadyl))と電気陰性の残基(例えば、グルタミルまたはアスパルチル)との置換;(d)嵩高い側鎖を有する残基(例えば、フェニルアラニン)と側鎖を持たない残基(例えば、グリシン)との置換。
【0053】
ACTHアナログ化合物の好適なACTHアナログ生物学的機能は、任意の適切な方法で測定可能であるが、好ましくは後述するアッセイの1つ以上を行うことで評価する。
ACTH機能の低下をもたらすACTHアナログ化合物
第二の実施態様では、ACTHアナログは改変されたACTHペプチドであり、未改変ACTHと比較してACTHアナログの存在下では副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させるように機能する。ACTHアナログの構造は、好ましくは上述の構造式の1つ以上に従って選択する。ACTHアナログ化合物は、例えば、ACTHアナログ投与後の被験体血液中におけるコルチコステロイドレベルの低下により測定した場合に、ACTHによる血中コルチコステロン分泌を減少させることができる。ACTHアナログは好ましくは、インビボでの血清コルチコステロイド誘発アッセイにより測定した場合に、同等の未改変ACTHペプチドの投与と比較して、血清コルチコステロンレベルを少なくとも10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%減少させる。
【0054】
インビボでの血清コルチコステロイド誘発アッセイでは、被験体の血流中におけるコルチコステロイドまたはコルチコステロンのレベルを測定する。より詳しくは、インビボでの血清コルチコステロイド誘発アッセイには以下の工程が含まれる:第一に、内在性ACTHの産生を抑制する薬剤をマウス被験体へ投与(例えば、デキサメタゾンを腹腔内注射)し;第二に、内在性ACTHの産生を抑制するのに適した時間(例えば、1.5〜2.0時間)待った後、適切な方法(例えば、腹腔内または皮下注射)によって被験化合物をマウスへ投与し;第三に、注射した被験化合物が作用するのに適した時間(例えば、1時間)待った後、血液サンプルを被験体から採取し、血清コルチコステロンのレベルを適切な方法(例えば、125I RIAキット(ICN,Costa Mesa,CA)を使用した競合ラジオイムノアッセイ)で判定する。実施例1では、マウスのインビボでの血清コルチコステロイド誘発アッセイを詳細に記載する。
【0055】
ACTHまたはACTHアナログのいずれかを被験化合物として投与後、血中の血清コルチコステロイドを測定することで、インビボでACTHアナログ化合物によって誘導されるコルチコステロイドまたはコルチコステロンの分泌を、未改変ACTH化合物によって産生されるコルチコステロイド分泌のレベルと比較した。図1は、mACTH(1−24)と各種ACTHアナログ被験化合物とを実施例1の方法に従って用いて行ったマウスのインビボでのコルチコステロイド副腎誘発アッセイの結果を示す。標準的なラジオイムノアッセイ(RIA)分析を用い、mACTH(1−24)またはACTHアナログ化合物をデキサメタゾン抑制マウスへ投与した1時間後に回収した血液サンプルついてコルチコステロンレベルを測定することで、機能低下をもたらすACTHアナログ組成物を同定した。図1では、各種ACTHアナログペプチドの効力をコルチコステロンの誘発率(%)として表す(マウスACTHの場合を100%とする)。グラフ(10)は、ACTHと9種類のACTHアナログ化合物サンプル(14)についてコルチコステロン誘発率(12)を示したものである。インビボでの血清コルチコステロイド副腎誘発アッセイにおいて未改変mACTH(1−24)について測定した血清コルチコステロン濃度(20)に対する割合(%)として、サンプル2〜10におけるACTHアナログ化合物のコルチコステロン誘発率(12)を示す。図1のサンプル2〜10について、構造改変および血清中における減少率(測定値)を下記の表3に示す。
【0056】
【表3】

【0057】
内在性ACTHによるコルチコステロン誘発の減少
第三の実施態様では、ACTHアナログは、内在性ACTHの存在下での副腎膜からのコルチコステロイド分泌を減少させるように機能する、改変ACTHペプチドである。ACTHに先立ってまたは同時に投与した場合、ACTHアナログ化合物は、血清コルチコステロイドレベルを10〜100%減少させることができる。好ましくは、ACTHアナログ化合物は、インビボでの血清コルチコステロイド阻害アッセイ(例えば、実施例2に記載のアッセイ)により測定したACTH単独投与の場合と比較して、インビボでの血清コルチコステロイド阻害アッセイにより測定した血清コルチコステロイドレベルを約10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%減少させる。一連のインビボでの血清コルチコステロイド阻害アッセイを行うことで、内在性ACTHによる副腎ホルモン産生を阻害する代表的なACTHアナログ化合物を同定した。ACTHアナログは単独でも投与可能であり、ACTHと併用してACTHの投与に先立ってまたは同時に投与することもできる。
【0058】
インビボでの血清コルチコステロイド阻害アッセイでは、第一のコルチコステロイド産生生物活性を有する化合物と被験化合物とを投与した後、被験体の血流中におけるコルチコステロイドまたはコルチコステロンのレベルを測定する。コルチコステロイド産生生物活性を有する化合物は、コルチコステロイド産生を検出可能なレベルで増加させることが知られている化合物であればいずれの化合物でもよい。被験化合物は、コルチコステロイド産生化合物に先立って、コルチコステロイド産生化合物と併用して、および/または、コルチコステロイド産生化合物の後に投与可能である。コルチコステロイド産生化合物は、好ましくはACTHであるが、コルチコステロイド産生生物活性が知られているACTHアナログであってもよい。一連のインビボでの血清コルチコステロイド阻害アッセイをACTHアナログ被験化合物を用いて行うことにより、使用したコルチコステロイド産生化合物に比べてコルチコステロイドの産生を阻害するACTHアナログを同定することができる。好ましくは、このようにして同定したACTHアナログは、内在性の未改変ACTHの存在下でのコルチコステロイドの産生を阻害するものである。
【0059】
インビボでの血清コルチコステロイド阻害アッセイでは、以下の工程により被験化合物とコルチコステロイド産生化合物とを順次投与することができる:第一に、内在性ACTHの産生を抑制する薬剤をマウス被験体へ投与(例えば、デキサメタゾンを腹腔内注射)し;第二に、内在性ACTHの産生を抑制するのに適した時間(例えば、1.5〜2.0時間)待った後、適切な方法(例えば、腹腔内注射)によって被験化合物をマウスへ投与し;第三に、被験化合物が作用するのに適した時間(例えば、1時間)待った後、適切な方法(例えば、腹腔内注射)によってコルチコステロイド産生活性を有する化合物をマウスへ投与し、;第四に、両投与化合物の生物活性が生じるのに適した時間(例えば、1時間)待った後、血液サンプルを被験体から採取し、血清コルチコステロンのレベルを適切な方法(例えば、125I RIAキット(ICN,Costa Mesa,CA)を使用した競合ラジオイムノアッセイ)で判定する。場合によっては、工程2と3を逆にすることもできる(コルチコステロイド産生化合物を最初に投与し、その後被験化合物を投与)。インビボでの血清コルチコステロイド阻害アッセイでは、以下の工程により被験化合物とコルチコステロイド産生化合物とを同時投与することも可能である:第一に、内在性ACTHの産生を抑制する薬剤をマウス被験体へ投与(例えば、デキサメタゾンを腹腔内注射)し;第二に、内在性ACTHの産生を抑制するのに適した時間(例えば、1.5〜2.0時間)待った後、適切な方法(例えば、腹腔内注射)によってコルチコステロイド産生化合物と被験化合物とをマウスへ同時投与し;第三に、両投与化合物の生物活性が生じるのに適した時間(例えば、1時間)待った後、血液サンプルを被験体から採取し、血清コルチコステロンのレベルを適切な方法(例えば、125I RIAキット(ICN,Costa Mesa,CA)を使用した競合ラジオイムノアッセイ)で判定する。また、一部の実施態様では、いずれのインビボでの血清コルチコステロイド阻害アッセイにおいても、第一の工程を、ACTHの産生を抑制する薬剤の投与に代えて、工程4の方法による被験体の血中における内在性コルチコステロイドまたはコルチコステロイドの初期レベルの測定に置き換えることが可能である。実施例2では、マウスのインビボでの血清コルチコステロイド阻害アッセイを詳細に記載する。
【0060】
一連の独立したインビボでの血清コルチコステロイド阻害アッセイを行い、ACTH副腎ホルモン産生をインビボで阻害するACTHアナログを同定した。デキサメタゾン抑制マウスの血清コルチコステロンレベルは、(1)ACTH(コルチコステロイド産生化合物)を投与、(2)ACTHアナログ(被験化合物)を投与した後にACTHを投与、(3)ACTHをACTHアナログと組み合わせて投与、(4)ACTHアナログを単独で投与した後に、実施例2に記載の通り測定した。表4に、マウスで測定した血清コルチコステロイドのレベルを投与時間の関数として示す。
【0061】
【表4】

【0062】
表4を参照すると、実施例2に記載の通り、5回の独立したインビボでの血清コルチコステロイドアッセイにおいて、デキサメタゾンをまず時間=0分でマウスへ投与した。「ビヒクル」サンプルでは、液体ビヒクルのみをデキサメタゾン注射120分後に投与したところ、1時間後に採取した血液サンプルで測定した場合にはコルチコステロンのレベルは検出不可であった。「ACTH」サンプルでは、ACTHをデキサメタゾン注射120分後に投与したところ、1時間後に採取した血液サンプルでは500±76ng/mLのコルチコステロンレベルが検出された。「AT90−ACTH120」サンプルでは、ACTHアナログである(KKRRP15−19KRAAW)mACTH(1−24)をデキサメタゾン注射1.5時間後に投与し、ACTH(1−24)を30分後に投与したところ、1時間後に採取した血中レベルで175±27ng/mLの血清コルチコステロンレベルを測定した。「(AT+ACTH)120」サンプルでは、ACTHアナログである(KKRRP15−19KRAAW)mACTH(1−24)(「AT814」)をmACTH(1−24)と共にデキサメタゾン注射120分後に投与したところ、1時間後に採取した血中レベルで51±8ng/mLの血清コルチコステロンレベルを測定した。「AT」サンプルでは、ACTHアナログである(KKRRP15−19KRAAW)mACTH(1−24)をデキサメタゾン注射120分後に投与したところ、無視できる程度の約7±7ng/mLの血清コルチコステロンレベルが得られた。
【0063】
図2には、表2の結果を、実施例2に記載の通りデキサメタゾン注射180分後に測定したコルチコステロンレベルの割合(%)として示す。グラフ(100)は、ACTHと表2に記載の4種類のサンプル(114)についてコルチコステロン誘発率(112)を示したものである(ACTH(120)の投与について測定したコルチコステロンのレベルを100%に正規化)。サンプル「AT90−ACTH120」(140)は、ACTHの投与30分前にACTHアナログを投与した場合を表し、ACTH投与1時間後に採取した血液サンプル中における血清コルチコステロンレベルは約65%減少した。サンプル「(AT+ACTH)120」(160)は、ACTHアナログとACTHとを同時投与した場合を表し、1時間後に採取した血液サンプル中における血清コルチコステロンレベルは約90%減少した。「AT」サンプル(180)並びに表1のサンプル10に見られるように、ACTHアナログの単独投与では、1時間後に採取した血液サンプル中における血清コルチコステロンレベルは、またしても約99%〜100%減少した。「ビヒクル」単独サンプルは図2には示していない。
副腎ACTHレセプター結合アッセイ
第四の実施態様では、ACTHアナログは、副腎ACTHレセプター(例えば、MC−2Rレセプター)に結合するように機能し、好ましくは未改変ACTHと比較してMC−2R結合親和性を増加させ、MC−2Rレセプターの活性化を低下させる、改変ACTHペプチドである。
【0064】
好適なACTHアナログ化合物は、内在性の未改変ACTHよりも高い親和性で副腎膜に結合し、インビトロでの無血清副腎競合結合アッセイにおいて未改変ACTHを退かして置き換わることができる(実施例3)。ACTHアナログ化合物は、好ましくは、副腎膜調製物に結合するACTHの少なくとも20%と置き換わる(インビトロでの無血清副腎競合結合アッセイにより測定)。より好ましくは、ACTHアナログ化合物は、未改変ACTHと比較して、外植副腎膜に対して2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍の親和性を有する。
【0065】
内在性の未改変ACTHよりも高い親和性で副腎膜に結合し、未改変ACTHを退かして置き換わることのできるACTHアナログ化合物は、インビトロでの無血清副腎競合結合アッセイを用いて同定可能である(実施例3)。図3には、実施例3に記載の方法により、代表的なACTHアナログである配列番号20を有するAT814(「AT814」)を用いて行ったインビトロでの無血清副腎競合結合アッセイの結果を示す。グラフ(200)は、放射性ACTHと共にインキュベートした副腎膜調製物についてガンマカウンターにより測定した1分当たりのカウント数(CPM)(212)を示したものである。CPMレベルが高いほど、放射標識化合物が多く存在することを意味する。カラム(210)は、副腎膜不在下でのバックグラウンド測定を示す。カラム(220)は、外植副腎膜を放射標識されたmACTH(1−24)とのみ2時間合わせた後検出した、放射標識された未改変mACTH(1−24)のレベルを示す(競合結合なし)。カラム(230)、(240)および(250)は、副腎膜上のレセプター(例えば、MC−2R)への競合結合による競合結合アッセイの結果を示しており、放射標識されていない(「cold」)mACTH(1−24)を結合させて、放射標識されたmACTH(1−24)を外植副腎膜(カラム(220)で測定)から退かした。具体的には、カラム(230)は、放射標識された外植副腎膜を10nMの「cold」mACTH(1−24)と合わせた後に検出したところ、放射標識mACTH(1−24)のレベルが低下したことを示しており;カラム(240)は、100nMの「cold」mACTH(1−24)を添加した後では、放射標識された外植副腎膜に結合した放射標識mACTH(1−24)のレベルがさらに低下したことを示しており;カラム(250)は、外植副腎膜調製物を1000nMの「cold」mACTH(1−24)と合わせた後では、放射標識された外植副腎膜に結合した放射標識mACTH(1−24)のレベルが一層低下したことを示している。「cold」mACTH(1−24)の濃度が上昇するにつれて放射標識されたmACTH(1−24)のレベル低下が検出されたことから、放射標識されたmACTH(1−24)が「cold」mACTH(1−24)によってMC−2Rレセプターから退かされたことが明らかである。
【0066】
mACTH(1−24)の代わりに配列番号20で表される「cold」(放射標識されていない)AT814 ACTHアナログ化合物を用いて、インビトロでの無血清副腎競合結合アッセイを繰り返した。カラム(235)、(245)および(255)は、「cold」AT814を10nM(カラム(235))、100nM(カラム(245))および1000nM(カラム(255))の濃度にて競合結合させた競合結合アッセイの結果を示しており、放射標識されていないAT814を結合させて、放射標識されたmACTH(1−24)を外植副腎膜(カラム(220)で測定)から退かした。「cold」AT814の濃度が上昇するにつれて放射標識されたAT814のレベル低下が検出されたことから、放射標識されたmACTH(1−24)が「cold」AT814によって退かされたことが明らかである。具体的には、グラフ(200)の結果より、AT814の副腎膜に対する結合親和性が、放射標識されたmACTH(1−24)よりも約3〜約4倍高いことが明らかである。AT814の副腎膜に対する結合親和性の増加は、MC−2Rレセプター結合親和性の増加の指標となり得る。
ACTHアナログ化合物のインビトロでの試験
第五の実施態様では、ACTHアナログ化合物は、インビトロで外植組織における未改変ACTHによるコルチコステロン誘発を減少させることができる。外植副腎膜と合わせた場合、ACTHアナログ化合物は、好ましくは無血清培地中のコルチコステロイドレベルを10〜100%減少させる。好ましくは、ACTHアナログ化合物は、未改変ACTHの単独投与と比較して、インビトロでの無血清副腎コルチコステロイド阻害アッセイにより測定した血清コルチコステロイドレベルを約10%,15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%減少させる(実施例4)。一連のインビトロでの無血清副腎コルチコステロン阻害アッセイを行うことで、外植副腎膜を未改変ACTHへ接触させた際に誘導される副腎ホルモン産生を阻害する代表的なACTHアナログ化合物を同定したところ、副腎コルチコステロン産生に対するACTHアナログ化合物の直接的な作用が示唆された。
【0067】
一連の独立したインビトロでの無血清副腎コルチコステロイド阻害アッセイを行い、ACTHによる副腎ホルモンの産生をインビトロで阻害するACTHアナログを同定した。実施例4の手順に従って、外植副腎膜および未改変ACTH、AT814 ACTHアナログ(配列番号20)、または、ACTHとAT814との組み合わせ(各100ng/mL)を含有する無血清培養培地中で、コルチコステロンの濃度を測定した。一連のインビトロでの無血清副腎コルチコステロン阻害アッセイを外植マウス副腎膜を用いて行い、無血清培地中で測定したコルチコステロイドのレベルを表3に示す。コルチコステロンレベルは副腎膜を無血清M199培地に入れてから2.0時間後に測定し、表5の各コルチコステロンレベルは5つのサンプルの平均である。
【0068】
【表5】

【0069】
表5を参照すると、実施例4に記載の通り、外植マウス副腎半球をM199無血清培地(Invitrogen)へ30分間入れた。「M199培地」サンプルでは、最初に30分間浸した後、副腎膜をM199無血清培地中に合計で2.0時間浸漬(合わせて2.5時間浸漬)させてから標準的なRIAラジオアッセイ技術を利用して培養物のコルチコステロンレベルを測定した。「ACTH」サンプルでは、未改変ACTHをM199培地へ添加したところ、2時間後に培養培地中で約600mg/mLのコルチコステロンレベルが検出された。「AT−814」サンプルでは、ACTHアナログである(KKRRP15−19KRAAW)mACTH(1−24)(配列番号20)をM199培地へ添加したところ、2時間後に培養培地中で約290mg/mLのコルチコステロンレベルが検出された。「ACTH+AT−814」サンプルでは、100ng/mLのAT814 ACTHアナログ(配列番号20)と100ng/mLの未改変ACTHとをM199培地へ同時に添加したところ、2時間後に培養培地中で約396mg/mLのコルチコステロンレベルが検出された。図4は、上述の通りおよび実施例4に記載の通り、「ACTH」サンプル(310)、「AT−814」サンプル(320)および「ACTH+AT−814」サンプル(330)について、表3のコルチコステロン誘発率(302)を、M199培養培地中で測定したACTH(310)の量に対する割合(%)として示したグラフ(300)である。「M199培地」サンプルは図2には示していない。再び図4を参照すると、AT814をM199無血清培地中の副腎膜へ添加した場合には、コルチコステロン誘発は無視できる量にとどまり、等量のAT814 ACTHアナログと未改変ACTHとの組み合わせを添加した場合には、未改変ACTHの単独添加と比較してコルチコステロンの誘発量が約65%減少した。
ACTHアナログ化合物のインビボでの試験
血清中半減期が延長されたACTHアナログ化合物は、特定の用途にとって好適である。ACTHアナログ化合物は、場合によっては、未改変ACTHまたは別のACTHアナログに比べてACTHアナログの血清中半減期を延長可能な1以上のアミノ酸置換または末端切断を含んでいてもよい。例えば、ACTHアナログ化合物は、ACTH配列に比べて化合物の血清中半減期を延長させる、未改変ACTH配列のアミノ酸位置25〜39のうちの1以上のアミノ酸置換を含むことができる。好適なACTHアナログ化合物は、未改変ACTHよりも長い血清中半減期を有することができる。ACTHの血中における半減期は約20分未満である。従って、特に好適なACTHアナログ化合物は、約20分、30分、40分、または、50分以上の血清中半減期を有する。
【0070】
第六の実施態様では、半減期が延長されたACTHアナログを提供する。半減期が延長されたACTHアナログは、インビボで検出される血清コルチコステロイド濃度により測定される第一の活性を有するものと同定することができ、第一の活性は、インビトロ活性として検出される無血清コルチコステロイド濃度により測定される第二の活性よりも高く、ここで、インビボ活性は、実施例1の血清副腎コルチコステロイド阻害アッセイにて測定し、インビトロ活性は、実施例4のインビトロでの無血清副腎コルチコステロイド阻害アッセイにて測定する。
【0071】
他の位置におけるアミノ酸置換でも、場合によってはACTHアナログの血清中半減期を高めることが可能であるが、特定の実施態様では、hACTHやmACTHといったACTH分子の20〜24位に位置する1以上のアミノ酸を改変することにより、ACTHアナログの血清中半減期が延長される。図5は、7種類のACTHアナログ化合物(410)、(420)、(430)、(440)、(450)、(460)および(470)のインビボ活性(灰色のバー)とインビトロ活性(白色のバー)を比較したグラフである。7種類全てのACTHアナログ化合物について、インビボ活性は実施例1の方法を用いて、インビトロ活性は実施例4の方法を用いて測定した。結果を、mACTH(1−24)配列(配列番号2)に対する割合(%)として測定した「コルチコステロン誘発率(%)」(402)の棒グラフとして表す。図5に見られるように、「Ala19−24」と命名したサンプル(460)は、ACTHアナログである(AAAAA20−24VKVYP)ACTH(1−24)であり、mACTHのアミノ酸位置19〜24の各々をAla残基で置換したものである。サンプル(460)では、本化合物について測定したインビトロ活性(464)に比べてインビボ(462)で測定した血清中半減期が増加しており、未改変mACTHのインビトロ活性よりも約50%高かった。さらにまた、(AAAAA20−24VKVYP)ACTH(1−24)のACTHアナログ(460)のインビボ活性は、mACTHと他のACTHアナログ(410)、(420)、(430)、(440)、(450)および(470)の双方に比べて高かった。これらの結果より、20〜24位に位置するアミノ酸残基が、ACTHアナログ化合物の血清中半減期を決定する上で役割を果たす可能性が示唆される。ACTHの20〜24位に1以上のアミノ酸置換を有するACTHアナログ化合物は、ACTHに比べて血清中半減期を延長させるのに特に好適である。
【0072】
同様に望ましくは、ACTHアナログ化合物は、インビボアッセイ(実施例1)またはインビトロアッセイ(実施例4)で測定した際に、ACTHアナログのコルチコステロン誘発を明らかに増加させることなく(または、より好ましくは低下させながら)血清中半減期を延長させるアミノ酸置換を含むことができる。例えば、ACTHアナログ(410)、(420)、(430)、(440)、(450)および(470)における15〜19位の置換に由来するコルチコステロン誘発は、未改変mACTH(1−24)と比較して、インビボおよびインビトロ双方におけるACTHアナログのコルチコステロン誘発活性を低下させた。具体的には、ACTHアナログ(410)は(K15A、R17A)mACTH(1−24)のACTHアナログであって、インビボ活性(412)よりも高いインビトロ活性(414)を示し;ACTHアナログ(420)は(K16A、R17A)mACTH(1−24)のACTHアナログであって、インビボ活性(422)よりも高いインビトロ活性(424)を示し;ACTHアナログ(430)は(K16A、R18A)mACTH(1−24)のACTHアナログであって、インビボ活性(432)よりも高いインビトロ活性(434)を示し;ACTHアナログ(440)は(K15Q、R17Q)mACTH(1−24)のACTHアナログであって、インビボ活性(442)よりも高いインビトロ活性(444)を示し;ACTHアナログ(470)は(P19W、K21A)mACTH(1−24)のACTHアナログであって、インビボ活性よりも高いインビトロ活性(474)を示した。
スクリーニング方法
第七の実施態様では、副腎の活動可能な状態を維持しながら過剰のACTHを阻止するのに有用なACTHアナログのスクリーニング方法も提供する。各種のACTHアナログを調製し、患者へ投与してインビボでのコルチゾン誘発を評価することができる。
【0073】
安定な複合体を形成するための特定化合物の分子認識(即ち、抗体による抗原の認識)の特異性は、溶液中における分析用イムノアッセイおよび固相界面における免疫センサー双方の基礎となり得る。これらの分析方法は、標的検体(即ち、MC2Rレセプターに結合する化合物)と非常に特異的な結合試薬との間のリガンド結合反応の産物を観察することに基づくリガンド結合アッセイであってよい。
【0074】
特定の場合には、別の(alternative)検体結合化合物(例えば、アプタマー)をリガンド結合アッセイに適用して特に感度の高いスクリーニングを行う。アプタマーは、高い親和性と特異性で各種の標的分子を認識する能力を有する一本鎖DNAまたはRNAオリゴヌクレオチド配列である。これらのリガンド結合オリゴヌクレオチドは、様々な診断方式において抗体の特性を模倣するものである。全体として特有の形状に折り畳まれ、標的構造に対して複雑な結合溝を形成する。アプタマーは、SELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)として知られるインビトロセレクション法によって同定する。アプタマーは検出表面に付着し易い点で抗体よりも有利であると考えられる。また、どのような量であっても再現性の高い合成法であるため、親和定数が抗体よりも一貫して低く、かつ、これらの化合物の安定性に依然として問題があるにも拘らず、複雑な生物学的マトリックスにおけるスクリーニング用途にとって(即ち、MC2Rと結合する際に特に活性な、ACTH−(15−19)位および/またはACTH−(21)位をアミノ酸残基で置換したACTHアナログを同定する際に)特に有用であると考えられる。
【0075】
あるいは、分子インプリンティング技術を利用してMC2R活性に影響を及ぼす化合物または方法をスクリーニングしてもよい。これは、特定の物質または構造アナログ群に対して予め選択的に決定した高分子吸着剤を調製することに基づく技術である。プラスチック材料の機能性および架橋性モノマー(例えば、メタクリルおよびスチレン)を鋳型となるリガンドと相互作用させて低エネルギー相互作用を作り出す。続いて重合を誘導する。この過程では、非共有結合的な自己集合法または可逆的な共有結合法のいずれかによって、目的の分子をポリマー内に捕捉する。重合を停止した後、鋳型分子を洗い流す。得られた鋳型のインプリントは硬質ポリマー中に維持され、鋳型についての立体化学的(サイズ、形状)および化学的(相補的な官能性の特別な配置)な記憶を持つ。分子的にインプリントされたポリマー(MIP)は、抗原−抗体相互作用と類似の特異性で鋳型(=検体)に結合可能である。
【0076】
固相抽出およびクロマトグラフィーにおける主要な用途以外にも、分子的にインプリントされたポリマーは、競合結合アッセイにおいて抗体の非生物学的な代替として利用可能である。典型的な生物学的細胞の増殖時には、グルコース等の炭素含有栄養源を取り込み、乳酸等の酸性代謝産物を放出する。ミクロ生体機能解析(microphysiometry)では、代謝率におけるこれらの変化を、細胞周囲の培地の酸性化率の変化として記録する(即ち、Raley-Susman, K.M. et al., "Effects of excitotoxin exposure on metabolic rate of primary hippocampal cultures: application of silicon microphysiometry to neurobiology," J Neurosci., 12(3):773-780 (1992); Baxter, G.T. et al., "PKCε is involved in granulocyte-macrophage colony-stimulating factor signal transduction: evidence from microphysiometry and antisense oligonucleotide experiments," Biochemistry, 31:19050-10954 (1992); Bouvier, C. etal., "Dopaminergic activity measured in D1- and D2-transfected fibroblasts by silicon microphysiometry," J. Recept. Res., 13(1-4):559-571 (1993);およびMcConnell, H. M. et al., "The cytosensor microphysiometer: biological applications of silicon technology," Science, 257:1906-1912 (1992))。ミクロ生体機能解析を利用して細胞に影響を与える分子を検出することができる。このような分子としては、神経伝達物質、成長因子、サイトカイン、レセプター等が挙げられる。従って、ミクロ生体機能解析法では、MC2Rレセプター活性に影響を与えるACTHアナログについての貴重な情報を得ることができる。
【0077】
合成コンビナトリアルライブラリーは、大規模な生化学的スクリーニングに有用である多様な構造の供給源である(即ち、Sastry, L. et al., "Screening combinatorial antibody libraries for catalytic acyl transfer reactions," Ciba Found Symp., 159:145-155 (1991); Persson, M.A.A. et al., "Generation of diverse high-affinity monoclonal antibodies by repertoire cloning," Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 33:2432-2436 (1991);およびHoughten, R. A., "Generation and use of synthetic peptide combinatorial libraries for basic research and drug discovery," Nature, 354:84-86 (1991))。このようなライブラリーは、溶液化学と固相化学を組み合わせることで作成され、スクリーニング用の固相支持体から切り離される。
【0078】
液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動といった分離技術を質量分析またはタンデム質量分析と組み合わせることで、構造評価に利用可能な分析システムが作成される(即ち、Hsieh, S. et al., "Separation and identification of peptides in single neurons by microcolumn liquid chromatography − Matrix-assisted laser desorption/ionization time-of-flight mass spectrometry and postsource decay analysis," Anal Chem., 70(9):1847-1852 (1998); Tretyakova, N.Y. etal., "Quantitative analysis of 1,3-butadene-induced DNA adducts in vivo and in vitro using liquid chromatography electrospray ionization tandem mass spectrometry," J. Mass Spectrom., 33:363-376 (1998);およびTaylor, G.W. et al., "Excursions in biomedical mass spectrometry," Br. J. Clin. Pharmacol., 41:119-126 (1996))。化合物/分子の分子量についての情報が得られる点で、質量分析が特に有用である。大型の分子を精製および制御しながら断片化すれば、配列に関する情報を抽出することも可能である。
【0079】
副腎膜からのコルチコステロイド分泌を配列番号2または配列番号1の未改変ACTHよりも抑えるACTHアナログ化合物を同定するためのACTHアナログ化合物のスクリーニング方法は、副腎膜とACTHアナログとを接触させる工程を含むことができる。ACTHによるコルチコステロイドの分泌を減少させる化合物を同定するためのACTHアナログ化合物のスクリーニング方法は、以下に示す工程の1つ以上を含むことができる:
a.第一の副腎膜と第二の副腎膜を用意し;
b.第一の副腎膜を、未改変ACTHペプチドを含む未改変ペプチドを含む第一の組成物と接触させ、続いて、未改変ACTHペプチドとの接触後に第一の副腎膜から分泌される第一のコルチコステロイド濃度を測定し;
c.第二の副腎膜を、ACTHアナログを含む第二の組成物と接触させ、続いて、ACTHアナログとの接触後に第二の副腎膜から分泌される第二のコルチコステロイド濃度を測定し;
d.分泌された第一のコルチコステロイド濃度と、分泌された第二のコルチコステロイド濃度とを比較し;
e.第二の化合物が第一の化合物よりもコルチコステロイド分泌を抑えるか否かを判定する。
未改変ACTHペプチドは、好ましくは配列番号2または配列番号1のペプチドである。
【0080】
第一の副腎膜と第二の副腎膜は被験体の体内に存在することができ、コルチコステロイドの濃度は被験体の血液中で測定することができる(インビボアッセイ)。あるいは、第一の副腎膜と第二の副腎膜は被験体から外植したものであり、コルチコステロイドの濃度を無血清培地中で測定する(インビトロアッセイ)。インビボ阻害アッセイの工程またはインビトロ競合結合アッセイの工程を含むスクリーニングアッセイは、以下の工程を含むこともでき、好ましくは、工程(d)の前であって、工程(c)の代わりまたは工程(c)の後のいずれかで行う:
a.第二の副腎膜を、ACTHペプチドを含む第一の組成物およびACTHアナログを含む第二の組成物と同時に接触させ、続いて、第二の副腎膜から分泌される第二のコルチコステロイド濃度を測定する。
【0081】
スクリーニングアッセイは、1以上の他のアッセイ、例えば、血清コルチコステロイド誘発アッセイ、血清コルチコステロイド阻害アッセイ、副腎結合アッセイまたは無血清副腎阻害アッセイとして記載されるアッセイを行う工程を含むことができる。工程は、特にことわらない限り、いずれの順番で行ってもよい。
ACTHアナログ組成物および投与
ACTHアナログは、各種のACTH関連病態(例えば、患者におけるACTHの過剰発現に関連する病態)を治療するための医薬組成物に配合することができる。
【0082】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」とは、健全な医療判断の範囲内で、過剰の毒性、刺激、アレルギー応答、または、他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織との接触使用に適しており、かつ、妥当な利益/リスク比に見合ったリガンド、材料、組成物および/または剤形を同義的に意味する。
【0083】
治療での使用に関する「治療上有効量」の化合物(例えば、ACTHアナログペプチド)とは、所望の用法の一部として(哺乳動物または魚類等の脊索動物へ)投与した場合に、治療対象の障害もしくは病態または化粧品に対する臨床上許容可能な基準に従って(例えば、いずれの医療にも適用可能な妥当な利益/リスク比で)症状を緩和する、病態を改善する、または、疾患病態の発症を遅らせる量の、調製物中のポリペプチドまたはペプチドを意味する。
【0084】
本明細書中「治療」とは、以下のことを意味し、かつ、含む:1)高レベルのACTHに伴う疾患または病態が、このような疾患または病態の素因を持ち得るが、まだ持っていると診断されていない患者において起こることを予防する;2)高レベルのACTHに伴う疾患または病態を阻害する、例えば、その進行を阻止する;3)高レベルのACTHに伴う疾患または病態を緩和する、例えば、疾患または病態の後退を引き起こす。
【0085】
本明細書中で同義的に使用される「患者」または「被験体」とは、本発明に従って治療を施す生物を意味し、好ましくは、哺乳動物種、魚類種または鳥類種等の脊索動物を意味する。開示のACTHアナログおよび治療方法の恩恵を受ける哺乳動物種としては、類人猿、チンパンジー、オランウータン、ヒト、サル、並びに、ペット等の家畜動物、例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ハムスターが挙げられるが、これらに限定されない。魚類種としては、サケおよび水産養殖に使用される他の種が挙げられる。
【0086】
「ACTH関連病態」とは、本明細書中では、ACTHによるコルチコステロイドまたはコルチコステロイドレベルの調節、副腎膜に対するACTH結合の調節、ACTHレセプター(例えば、MC−2R)の調節により治療可能であるか、または、これらに応答性である病態、障害、症状または疾患の意味で使用し、例えば、特定のメラノコルチンレセプターに伴う病態が挙げられる。
【0087】
「メラノコルチンレセプターに伴う病態」とは、本明細書中では、ACTHに結合するレセプターの調節、および/または、被験体におけるコルチコステロイドレベルの低下により治療可能な病態、障害または疾患の意味で使用する。ACTH関連病態としては、「MC−2Rに伴う病態」、あるいは、MC−2Rレセプターの調節により治療可能な病態、障害または疾患を挙げることができる。好ましくは、MC−2Rに伴う病態は、MC−2Rレセプターと、内在性ACTHによるコルチコステロイド分泌のレベルと比較してコルチコステロイド分泌のレベルを低下させるACTHアナログとを結合させることで治療可能である。
【0088】
本発明の方法を使用して同定される化合物の立体異性体(エナンチオマー形およびジアステレオマー形を含む)は全て、本発明の範囲内に含まれるものとする。本発明の化合物の個々の立体異性体は、例えば、他の異性体を実質的に含まないか、あるいは、例えば、ラセミ体として混在してもよく、また、他の全てのもしくは他の選択した立体異性体との混合物であってもよい。本発明によって同定される化合物のキラル中心は、IUPAC 1974 Recommendationsによって規定される通り、SもしくはR、または、DもしくはLの配置を有することができる。
【0089】
第八の実施態様では、本開示は、ACTHアナログを含む医薬組成物、および、ACTH関連病態に伴う症状の治療に見合った方法での当該組成物の被験体への投与に関する。投与経路は公知の方法に従って選択可能である。ACTHアナログは、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の一部として使用することができる。ACTHレベルの上昇に伴う疾患または病態を治療するための、少なくとも1種類の本発明のACTHアナログを含む医薬組成物は、例えば、医薬製剤の分野で周知の技術等に従って、従来の固体もしくは液体のビヒクルまたは希釈剤、並びに、所望の投与様式に適したタイプの医薬用添加剤(例えば、賦形剤、結合剤、保存剤、安定化剤、着香剤等)を用いることで製剤化が可能である。
【0090】
ACTHアナログを含む医薬組成物は、任意の適切な手段によって投与できる。例えば、ACTHアナログを含む組成物は、皮下、静脈内、筋肉内もしくは槽内への注射または輸液技術による注射投与(例えば、滅菌された注射用の水性もしくは非水性の液剤または懸濁剤として);吸入噴霧等による経鼻投与;クリーム剤または軟膏剤等の形態での局所投与;非毒性の薬学的に許容されるビヒクルまたは希釈剤を含有する投与単位製剤での投与が可能である。本発明のACTHアナログは、例えば、即時放出または持続放出に適した形態で投与可能である。即時放出または持続放出は、本発明のACTHアナログを含む適切な医薬組成物を使用することで達成可能であり、特に持続放出の場合には、皮下インプラントもしくは浸透圧ポンプ等のデバイスを使用することで達成可能である。本発明のACTHアナログは、リポソームの形態で投与することも可能である。
【0091】
本発明のACTHアナログポリペプチドを含む医薬組成物は公知の方法に従って製剤化することができ、これにより、そのACTHアナログ生成物と薬学的に許容される担体ビヒクルとを混合物の状態で組み合わせる。予防および治療処置に使用可能な組成物には、1種以上のACTHアナログ化合物と適用手段(例えば、注射用担体系、鼻腔内または経皮様式)とが含まれる。
【0092】
本明細書中「担体」としては、使用する投与量および濃度で接触対象の細胞または被験体に対して非毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定化剤が挙げられる。本明細書中「薬学的に許容される担体」とは、対象の化学物質を、ある臓器または身体のある部分から別の臓器または身体の別の部分へ運搬または輸送するのに要する、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを意味し、例えば、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶剤またはカプセル化材料等を意味する。各担体は、製剤の残りの成分と適合性があり、患者に対して有害でなはなく、かつ、実質的に非発熱原性であるという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として機能し得る材料の一部の例を以下に挙げる:(1)ラクトース、グルコース、スクロース等の糖類;(2)トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン等のデンプン類;(3)セルロースおよびその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテート;(4)カガカント(kagacanth)末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオ脂、坐剤用ワックス等の賦形剤;(9)落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、大豆油等の油類;(10)プロピレングリコール等のグリコール類;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール等のポリオール類;(12)オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル等のエステル類;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱性物質を含まない水;(17)等張生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;(21)医薬製剤に使用される他の非毒性の適合性物質。ある実施態様では、本発明の医薬組成物は非発熱原性である、即ち、患者へ投与した際に著しい体温上昇を起こさないものである。多くの場合、生理学的に許容される担体は水性のpH緩衝化溶液である。許容される担体、賦形剤または安定化剤は、使用する投与量および濃度ではレシピエントに対して非毒性であり、リン酸、クエン酸および他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸等の酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、アミノ酸またはアミノ酸誘導体(例えば、ノルロイシンまたはオルニチン);単糖類、二糖類および他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノースまたはデキストリン;EDTA等のキレート剤;マンニトール、ソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;および/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、PEG等の非イオン性界面活性剤。ACTHアナログ用の担体はいずれも従来の手段で製造可能である。しかしながら、アルコールを担体に用いる場合には、ACTHアナログの変性を防ぐため、ACTHアナログをミセル、リポソームまたは「逆相(reverse)」リポソームの状態にすべきである。同様に、ACTHアナログを担体中に配置し、かつ、担体を加熱する場合には、ACTHアナログの熱変性を回避するため、このような配置は担体をある程度冷却した後に行うべきである。担体は好ましくは滅菌されている。1種以上のACTHアナログを液体形態または凍結乾燥状態でこれらの物質へ添加してもよく、その結果、液体と接触すると溶解する。
【0093】
改変ACTHアナログは担体系と組み合わせることができ、これに先立ってまたは同時に、薬理学的に適切なpH範囲(例えば、約4.0〜約9.0)を維持する安定化緩衝剤の環境にACTHアナログを置いてもよく、例えば、pH約5.0、6.0、7.0、8.0、またはこれらの間の0.05刻みの任意のpH、例えば、5.2、6.5、7.4、7.5および8.5のpH値が挙げられる。所望の純度を有するACTHアナログの有効成分を、場合によって生理学的に許容される担体、賦形剤または安定化剤(Remington's Pharmaceutical Sciences第16版,Osol, A. Ed. (1980))と混合することにより、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で保存用に治療製剤を調製する。安定化緩衝剤は、ACTHアナログの最適な活性を可能にするものでなければならない。当該緩衝剤は、ジチオトレイトール等の還元試薬を含有していてもよい。安定化緩衝剤はまた、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩等の金属キレート試薬であるか、または、このような試薬を含んでいてもよく、あるいは、リン酸緩衝液、クエン酸リン酸緩衝液、または、他の任意の緩衝液を含有していてもよい。
【0094】
本発明に用いる化合物の有効量は、当業者であれば決定可能である。ACTHアナログの有効投薬率(effective dosage rate)または有効投与量は、ACTHアナログが治療または予防のいずれに使用されるか、レシピエントと感染性細菌との接触期間、個体の身長および体重、医療判断の範囲内で他に考慮すべき事項にある程度依存する。ACTHアナログ含有組成物を使用する期間も、その使用が短期間の予防目的(毎時、毎日または毎週であってよい)なのか、あるいは、組成物の使用に関してさらに徹底した用法が必要となる可能性のある治療目的(何時間、何日または何週にもわたって使用、および/または、毎日もしくは一日のうちに時間間隔を決めて使用)なのかに依存する。使用するいずれの剤形も、最小限の単位を最低限の時間で供給しなければならない。本発明の医薬組成物の投与量および所望の薬物濃度は、想定される個々の用途に応じて変動する。例えば、本発明のACTHアナログを患者へ投与してクッシング症候群または早期分娩を治療する場合には、成人に対する代表的な投与量としては、一日当たり約0.001〜100mg/kg体重の活性化合物が挙げられ、単回投与または複数回投与のいずれも可能である(例えば、一日当たり1〜4回)。いずれの化合物に対しても、特定の用量レベルや投与頻度が変動し、かつ、使用する特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性や作用の長さ、患者の種、年齢、体重、全身の健康状態、性別や食事の内容、投与様式・投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、個々の病態の重篤度等の様々な要因に依存することは理解されるであろう。
【0095】
適当な投与量または投与経路の決定は、十分に通常の治療者の能力の範囲内である。動物実験からは、ヒトでの療法に有効な用量の決定について信頼できる指針が得られる。有効用量の種間スケーリングは、Mordenti, J.およびChappell, W.("The use of interspecies scaling in toxicokinetics", Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobi et al., Eds., Pergamon Press, New York 1989, pp. 42-96)によって定められた原則に従って行うことができる。有効量または有効投与量のACTHアナログを規定するACTHアナログの活性単位の濃度は、経鼻および経口経路の湿潤環境や局所の場合には、液体中約10単位/ml〜約500,000単位/mlの範囲であればよく、可能であれば、約10、20、30、40、50、60、70、80、90または100単位/ml〜約50,000単位/mlの範囲である。従って、代表的な値としては、約200単位/ml、300単位/ml、500単位/ml、1,000単位/ml、2,500単位/ml、5,000単位/ml、10,000単位/ml、20,000単位/ml、30,000単位/ml、40,000単位/mlが挙げられる。より詳しくは、活性ACTHアナログ単位との接触時間に応じて、1ml当たりの活性ACTHアナログ単位の所望濃度が左右される。インビボ投与に使用する製剤は、好ましくは滅菌されている。これは、凍結乾燥および再構成の前後に滅菌濾過膜を通して濾過することで容易に行える。通常本明細書における治療用組成物は、滅菌済みの入口を有する容器、例えば、静脈注射用液剤バッグまたは皮下注射針によって貫通可能な栓を有するバイアルへ入れる。
【0096】
ACTHアナログを含む医薬組成物の例としては、注射用組成物、ACTHアナログを所望の時間にわたって徐放させる組成物、皮膚投与用組成物、注射用ゲル、インプラント用医療デバイス用のコーティング、粘膜接着性組成物、または、鼻用組成物もしくは他の吸入用組成物が挙げられる。
【0097】
一部の例では、ACTHアナログは、筋肉内注射または静脈注射によって投与可能である。例えば、ACTHアナログは筋肉内、静脈内、皮下、皮下、皮内へ投与でき、または、これらを組み合わせても投与できる。
【0098】
注射用組成物は、好ましくは適切な担体と1種以上のACTHアナログ化合物とを含む。担体は、蒸留水、生理食塩水、アルブミン、血清またはこれらの任意の組み合わせから構成可能である。筋肉内注射を投与様式として選択した場合は、等張製剤を使用すればよい。通常、等張性のための添加剤としては、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトールおよびラクトースを挙げることができる。場合によっては、リン酸緩衝生理食塩水等の等張液を使用する。安定化剤としては、ゼラチンおよびアルブミンが挙げられる。一部の例では、血管収縮剤を製剤へ添加する。医薬は、滅菌済みかつ発熱性物質を含まないものを提供する。通常は、上述したように静脈注射が最も適している。非経口投与用の代表的な組成物としては注射用液剤または懸濁剤が挙げられ、例えば、マンニトール、1,3−ブタンジオール、水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液といった適切な非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶剤、あるいは、他の適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤、例えば、合成モノまたはジグリセリドや脂肪酸(オレイン酸等)を含有していてもよい。グリセリンまたはグリセロール(1,2,3プロパントリオール)は製薬用の市販の担体である。注射または塩化ナトリウム注射または他の薬学的に許容される水性注射液用に、グリセリンまたはグリセロールを滅菌水で希釈して0.1〜100%(v/v)、1.0〜50%または約20%の濃度で使用してもよい。DMSOは、局所適用される多くの薬物の浸透を高めることのできる非プロトン性溶剤である。注射または塩化ナトリウム注射または他の薬学的に許容される水性注射液用に、DMSOを滅菌水で希釈して0.1〜100%(v/v)の濃度で使用してもよい。特に静脈注射用液剤を調製する場合には、ビヒクルにもリンゲル液、緩衝化溶液およびデキストロース溶液が含まれていてもよい。
【0099】
ACTHアナログを担体系に配合するのに先立って、または、これと同時に、適切なpH範囲を維持する安定化緩衝剤の環境にACTHアナログを置くのが望ましい場合がある。安定化緩衝剤は、ACTHアナログの最適な活性を可能にするものでなければならない。当該緩衝剤は、ジチオトレイトール等の還元試薬であってよい。安定化緩衝剤はまた、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩等の金属キレート試薬であるか、または、このような試薬を含んでいてもよく、あるいは、リン酸緩衝液またはクエン酸リン酸緩衝液を含有していてもよい。担体中に見られる緩衝剤は、ACTHアナログの環境を安定化させる役割を果たすことができる。
【0100】
担体は、場合によっては、少量の添加剤、例えば、等張性および化学的安定性を高める物質を含有可能である。このような材料は、使用する投与量および濃度ではレシピエントに対して非毒性であり、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸および他の有機酸またはその塩等の緩衝液;アスコルビン酸等の酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン;グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニン等のアミノ酸;単糖類、二糖類および他の炭水化物、例えば、セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノース、トレハロースまたはデキストリン;EDTA等のキレート剤;マンニトール、ソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の対イオン;ポリソルベート、ポロキサマー、ポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤;および/または薬学的に許容される塩、例えば、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2等が挙げられる。
【0101】
「薬学的に許容される塩」とは、阻害剤の比較的毒性のない無機および有機酸付加塩を意味する。これらの塩は、阻害剤の最終単離・精製の際にインシチュで調製してもよく、または、精製後の阻害剤を遊離塩基の形態で適切な有機または無機酸と別途反応させ、このようにして形成した塩を単離することにより調製してもよい。代表的な塩としては、14臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、;リン酸塩、トシル酸塩(tosylate)、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩(naphthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリルスルホン酸塩等が挙げられる(例えば、Berge et al. (1977) "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照)。他の場合には、本発明の方法に有用な阻害剤は1つ以上の酸性官能基を含有していてもよく、従って、薬学的に許容される塩基との間に薬学的に許容される塩を形成可能である。これらの場合における「薬学的に許容される塩」とは、阻害剤の比較的毒性のない無機および有機塩基付加塩を意味する。これらの塩は、同様に、阻害剤の最終単離・精製の際にインシチュで調製してもよく、または、精製後の阻害剤を遊離酸の形態で適切な塩基(例えば、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩もしくは炭酸水素塩)、アンモニア、または、薬学的に許容される1級、2級もしくは3級有機アミンと別途反応させることにより調製してもよい。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等が挙げられる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン等が挙げられる(例えば、前出のBerge et al.を参照)。
【0102】
ACTHアナログを含む注射用医薬製剤は、場合によっては、抗菌剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、局所麻酔薬といった他の治療薬を含むことができる。局所麻酔薬としては、テトラカイン、塩酸テトラカイン、リドカイン、塩酸リドカイン、ジクロニン、塩酸ジクロニン、塩酸ジメチソキン、ジブカイン、塩酸ジブカイン、ピクリン酸ブタンベン (butambenpictate)、塩酸プラモキシンが挙げられる。局所麻酔薬の代表的な濃度は、全組成物の約0.025重量%〜約5重量%である。ベンゾカイン等の麻酔薬も、約2重量%〜約25重量%の好適な濃度で使用可能である。
【0103】
医薬組成物はまた、場合によっては、様々なレベルにおいてステロイドホルモンの合成を抑制する1種以上の追加の生物活性物質(即ち、ステロイドホルモンの合成の各段階を触媒する酵素の阻害剤)を含むことができ、このような物質としては、J.Steroid Biochem.、vol. 5、p. 501 (1974)に概説されている生物活性物質が挙げられ、例えば、以下に記載のものが挙げられる:a)ジフェニルメタンの誘導体、例えば、アンフェノンB(ステロイドホルモンの合成をヒドロキシラーゼの11−β−、17−および21−の段階で抑制);b)ピリジンの誘導体(SU−cシリーズ)、例えば、メチラポン(metirapon)(ヒドロキシラーゼの11−βの段階で合成を抑制);c)置換α,α−グルタルアミド、例えば、アミノグルテチミド(20−α−ヒドロキシラーゼおよびC20、C22−リアーゼ(liase)の抑制を介したコレステロールからのプレグネノロンの合成を妨害);d)ステロイド物質、例えば、トリロスタン(3β−置換ステロイド−3β−ヒドロキシ−5−アンドロステン−17−オン;3β−デスオキシステロイドヒドロゲナーゼ−5,4−イソメラーゼを抑制(Steroids, vol.32, p.257));e)スピロノラクトンファミリーのステロイド(抗鉱質コルチコイドの速やかな解離に使用(PNAS USA 71 (4) p.1431-1435 (1974)));f)腎臓(Z. Naturforsch., 45b, p.711-715 (1990))および海馬I型MR(Life Science, 59, p.511-21 (1996))に対して特異的な結合特性を示すが、II型GRに対しては示さない、抗鉱質コルチコイドZK91587として記載される合成ステロイド。従って、好都合なことに、両レセプター系を含む組織でのMR機能の研究においてツールとして有用である。
【0104】
ACTHアナログは、場合によっては、グルココルチコイドホルモンとホルモンレセプターとの相互作用を特異的に抑制する生物活性物質と共に投与することができ、このような物質の例としては以下のものが挙げられる:a)ミフェプリストン(11β,17β)−11−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−17−ヒドロキシ−17−(1−プロピニル)エストラ−4,9−ジエン−3−オン(グルココルチコイドホルモンのレセプターに作用して、グルココルチコイドの作用に至るメカニズムを開始できない複合体を形成(Annals of New-York Academy of Science, vol. 761, p.296-310 (1995));前記化合物は中絶薬(contragestive agent)(RU38486またはRU486)としても知られている);b)非ステロイド物質(J:Steroid Biochem., vol. 31, p.481-492 (1988))、例えば、塩酸ドロタベリン(drotaverina hydrochloride) (イソキノリン−1−(3,4−ジエトキシベンジリデン)−6,7−ジエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドリゾキノリンの誘導体)またはアセチルサリチル酸(V. P. GolikovによるMoskovskava Meditsina, 1990, "Receptor mechanisms of the glucocorticoid effect")。抗グルココルチコイド(例えば、ミフェプリストン)が臨床現場で使用されてきたのは、非下垂体性クッシング症候群の手術不能な症例を治療するためである。ミフェプリストン(抗プロゲステロンおよび抗グルココルチコイドの双方)の場合には、高用量(一日当たり800mgまで)が必要である。活性を増加させ、かつ、交差反応性および望ましくない副作用を軽減する方策を体系的に用いることにより、効力および選択性が向上した新たな抗ホルモン剤の開発において、特に抗エストロゲンおよび抗アンドロゲンの分野において、素晴らしい進展が報告されている。
【0105】
非経口投与する際のACTHアナログの有効投薬率または有効投与量、および、治療期間は、感染の深刻さ、患者の体重、レシピエントと感染性細菌との接触期間、感染の深刻さ、その他様々な複数の変動要素にある程度依存する。組成物は、一日当たり1回〜複数回でどこへ適用してもよく、短期間または長期間の適用が可能である。数日または数週間続けて使用してもよい。使用するいずれの剤形も、最小限の単位を最低限の時間で供給しなければならない。ACTHアナログの有効量または有効投与量をもたらすと考えられるACTHアナログの活性単位の濃度は、組成物中約10、20、30、40、50、60、70、80、90または100単位/ml〜約10,000,000単位/mlの範囲、約1000単位/ml〜約10,000,000単位/mlの範囲、約10,000〜10,000,000単位/mlの範囲であればよい。1ml当たりの活性単位の量および接触期間は、感染の性質、および、担体によってACTHアナログが持ち得る接触量に依存する。液体環境にある時ACTHアナログが最も良好に作用することは覚えておかなくてはならない。従って、ACTHアナログの有効性は、担体に捕捉された水分量にある程度関連する。治療の際のACTHアナログの濃度は、血液および血液量中の細菌数に依存する。
【0106】
ACTHアナログをインビボ投与する場合には、通常の投与量は、投与経路に応じて、被験体の体重に対して一日当たり約10ng/kg〜100mg/kg以上または約1μg/kg/日〜10mg/kg/日の範囲で変動する。個々の投与量および送達方法に関する指針を以下に示すが、文献にも記載されている。治療化合物や障害が異なれば有効となる製剤も異なること、ある臓器または組織を標的とする投与は、例えば、別の臓器または組織に対する送達とは異なる方法での送達が必要となる場合があること、が予想される。
【0107】
輸液または注射用の液剤は、従来の方法で調製可能であり、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸等の保存剤またはエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩等の安定化剤を添加し、次いで輸液容器(fusion vessel)、注射用バイアルまたはアンプルへ移してもよい。あるいは、注射用化合物を他の成分と共にまたは単独で凍結乾燥し、使用時に緩衝化溶液または蒸留水中へ適宜可溶化させてもよい。不揮発性油、リポソームおよびオレイン酸エチル等の非水性ビヒクルも、本発明で有用である。
【0108】
また、複数の方法を使用してACTHアナログの細胞膜輸送を助けることができる。ACTHアナログは、公知の技術によりACTHアナログをリポソームへ「挿入」すれば、リポソームの状態で輸送できる。同様に、ACTHアナログを逆相ミセルとしてもよい。ACTHアナログは、ポリエチレングリコールをACTHアナログの非活性部分へ結合させてPEG化することもできる。あるいは、疎水性分子を使用してACTHアナログの細胞膜輸送を行うこともできる。最終的には、ACTHアナログのグルコシル化を利用して、細胞膜上の特異的なインターナリゼーションレセプターを標的とすることができる。
【0109】
特定の治療方法に対しては、制御放出能を有する材料が特に望ましい。ACTHアナログは、ACTHアナログ化合物を所望の期間にわたって徐放させるポリマー等の担体系と組み合わせることができる。他にもこのような製剤に含まれるのは、セルロース(アビセル)またはポリエチレングリコール(PEG)等の高分子量賦形剤が挙げられる。このような製剤には、粘膜への付着を助ける賦形剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(SCMC)、無水マレイン酸共重合体(例えば、Gantrez)、および、ポリアクリル酸共重合体(例えば、Carbopol 934)等の放出制御剤も含まれていてもよい。滑沢剤、流動促進剤、着香剤、着色剤および安定化剤も、製造および使用を容易にするため添加してもよい。
【0110】
ACTHアナログ化合物は、Loughman記載の徐放性担体組成物(米国特許第6,893,645号、2002年7月15日出願、2005年5月17日付与;本特許は引用により本明細書に含まれるものとする)と組み合わせることができる。ACTHアナログと組み合わせ可能な徐放または制御放出製剤および方法の他の例としては、公開米国特許出願第US2005/0164927A1号(2004年8月18日出願、Cheungら)、同第US2003/0125528A1号(2002年9月27日出願、Hayら)、同第US2003/0211966A1号(2002年10月21日出願、Kubekら)、同第US2003/0148938A1号(2001年11月7日出願、Sharmaら)、同第US2003/0181361A1号(2003年3月31日出願、Sharmaら)が挙げられる(いずれの出願も、その開示内容は全て引用により本明細書に含まれるものとする)。一部の実施態様では、制御放出治療組成物は、制御放出ポリマーと有効量のACTHアナログとを含むことができる。制御放出ポリマーは水膨潤性ポリマーであってよく、場合によっては、架橋部分を所望なだけ含んでいてもよい。制御放出ポリマーは、所望ましいレベルの水溶解性または最小限の水溶解性を有することができる。
【0111】
使用可能なポリマー増粘剤としては、当業者に公知のもの、例えば、化粧品工業および製薬工業に使用されることの多い親水性ゲル化剤や水性アルコールゲル化剤が挙げられる。親水性ゲル化剤または水性アルコールゲル化剤は、例えば、「CARBOPOL(登録商標)」(B.F.Goodrich,Cleveland,Ohio)、「HYPAN(登録商標)」(Kingston Technologies,Dayton,N.J.)、「NATROSOL(登録商標)」(Aqualon,Wilmington,Del.)、「KLUCEL(登録商標)」(Aqualon,Wilmington,Del.)または「STABILEZE(登録商標)」(ISP Technologies,Wayne,N.J.)を含むことができる。ゲル化剤は、組成物の約0.2重量%〜約4重量%とすることができる。特に、「CARBOPOL(登録商標)」の組成重量%の範囲例は、約0.5%〜約2%であり、「NATROSOL(登録商標)」および「KLUCEL(登録商標)」の重量%範囲は約0.5%〜約4%であってよい。「HYPAN(登録商標)」および「STABILEZE(登録商標)」の組成重量%の範囲は約0.5%〜約4%であってよい。
【0112】
「CARBOPOL(登録商標)」は、カルボマーの一般名を与えられている多数の架橋アクリル酸ポリマーのうちの一つである。これらのポリマーは水に溶け、苛性材料(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、トリエタノールアミンまたは他のアミン塩基で中和すると透明またはわずかに濁ったゲルを形成する。「KLUCEL(登録商標)」は、水に懸濁し、完全に水和すると均一なゲルを形成するセルロースポリマーである。他のゲル化ポリマーとしては、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースゴム、MVE/MAデカジエンクロスポリマー、PVM/MA共重合体、または、これらの組み合わせが挙げられる。
【0113】
保存剤も本発明に使用することができ、例えば、全組成物の約0.05〜0.5重量%とすることができる。保存剤の使用により、製品が微生物に汚染されても、製剤としては微生物の増殖を抑制または弱めることが確実となる。本発明に有用な保存剤をいくつか挙げると、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、クロロキシレノール、安息香酸ナトリウム、DMDMヒダントイン、3−ヨード−2−プロピルブチルカルバメート、ソルビン酸カリウム、グルコン酸クロルヘキシジン、または、これらの組み合わせが挙げられる。
【0114】
ACTHアナログの投与を必要とする疾患または障害のいずれの治療にも適した放出特性を有する製剤において、ACTHアナログの徐放投与が望ましい場合には、ACTHアナログのマイクロカプセル化を考慮する。ACTHアナログとの使用に適した好適なマイクロカプセル化組成物としては、米国特許第6,475,507号(2000年11月6日出願、Pelletら)および同第6,911,218号(1999年4月20日出願、Ignatiousら)に記載されているものが挙げられる(いずれの特許も引用により全内容が本明細書に含まれるものとする)。徐放用組換えタンパク質のマイクロカプセル化は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン−(rhIFN−)、インターロイキン−2およびMN rgp120を用いた場合で成功している。Johnson et al., Nat. Med., 2:795-799 (1996); Yasuda, Biomed. Ther., 27:1221-1223 (1993); Hora et al., Bio/Technology. 8:755-758 (1990); Cleland, "Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polylactide Polyglycolide Microsphere Systems." in Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach, Powell and Newman, eds, (Plenum Press: New York, 1995), pp. 439462;WO97/03692、WO96/40072、WO96/07399;および米国特許第5,654,010号。
【0115】
徐放または制御放出担体は、「長期」または「低速」放出担体(例えば、特定の鼻内噴霧剤、ポリマー剤またはカプセル剤等)であってよく、1ml当たりより低濃度の活性(ACTHアナログ)単位をより長期にわたって保持または供給可能である。これに対し、「短期」または「高速」放出担体(例えば、含嗽剤等)は、1ml当たり高濃度の活性(ACTHアナログ)単位をより短期間に保持または供給可能である。1ml当たりの活性単位の量と接触期間は、感染の性質、処置が予防または治療のいずれであるか、および、他の変動要素に依存する。従って、投与回数は状況に応じて変わり、一日当たり1〜4回またはそれ以上であってよく、期間も1日〜数週間であってよい。感染は皮膚で起こる場合もあるため、このような組成物は局所適用の用途にも製剤化可能であり、周知のビヒクル、例えば、米国特許第6,056,954号および同第6,056,955号に記載されているビヒクルを用いて製剤化すればよい。ミセルや多重膜ミセルもACTHアナログの放出を制御するのに利用可能である。
【0116】
これらのタンパク質の徐放製剤は、生体適合性および広範囲の生分解性特性の点から乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)等の生体吸収性ポリマーを利用できる。PLGAの分解産物、即ち、乳酸とグリコール酸は、人体内では速やかに排出され得る。また、このポリマーの分解性は、その分子量や組成に応じて数ヶ月〜数年に調節可能である。Lewis, "Controlled release of bioactive agents from lactide/glycolide polymer," M. Chasin and R. Langer (Eds.), Biodegradable Polymers as Drul: Delivery Systems (Marcel Dekker: New York, 1990), pp. 1-41。
【0117】
一部の例では、治療用組成物は、粘膜付着性の徐放性製剤とACTHアナログとを含む。粘膜の内層としては、開示および記載の通り、例えば、上下気道、眼、口腔前庭、鼻、直腸、膣、歯周ポケット、小腸および結腸が挙げられる。E.R.Squibb&Co社のOrahesive(登録商標)は、口腔粘膜に付着させる目的でペクチン、ゼラチンおよびナトリウムカルボキシメチルセルロースを粘着性の炭化水素ポリマー中で組み合わせた接着剤である。しかしながら、親水性および疎水性の成分を物理的に混合したこのような混合物は、最終的にはバラバラになってしまう。これに対し、本開示における親水性および疎水性のドメインは不溶性の共重合体を生成する。米国特許第4,948,580号(同じく引用により本明細書に含まれるものとする)には、生体接着性の経口ドラッグデリバリーシステムが記載されている。その組成は、共重合体であるポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)とゼラチンとで形成される凍結乾燥ポリマー混合物を含み、軟膏基剤(例えば、ポリエチレンを分散させた鉱油)中に分散されている。米国特許第5,413,792号(引用により本明細書に含まれるものとする)には、(A)ポリオルガノシロキサンと水溶性の高分子材料とを3:6〜6:3の重量比で含むペースト様基剤と、(B)有効成分とを含むペースト様調製物が開示されている。米国特許第5,554,380号では、少なくとも2つの相を有する油中水系を含有する固体または半固体の生体付着性の経口摂取可能なドラッグデリバリーシステムを特許請求している。一方の相には約25体積%〜約75体積%の親水性の内相が含まれ、もう一方の相には約23体積%〜約75体積%の疎水性の外相が含まれ、疎水性の外相は(a)乳化剤、(b)グリセリドエステル、(c)ワックス材料の3種類の成分から構成されている。米国特許第5,942,243号には、抗菌剤の投与に有用な代表的な放出材料がいくつか記載されている(当該特許の開示内容は引用により本明細書に含まれるものとする)。本開示の組成物の剤形は、従来の方法により調製可能である。
【0118】
ACTHアナログを含む組成物は、鼻内噴霧剤、点鼻剤、鼻軟膏剤、洗鼻剤、鼻内注射剤、鼻タンポン、気管支噴霧剤および吸入器によって投与可能である。鼻内噴霧剤、点鼻剤、鼻軟膏剤、洗鼻剤、鼻内注射剤、鼻タンポン、気管支噴霧剤、口腔内噴霧剤および吸入器の使用によってACTHアナログを直接導入する場合には、ACTHアナログは液体またはゲル環境下にあってよく、液体は担体として作用する。改変ACTHアナログの乾燥無水物を吸入器および気管支噴霧剤によって投与してもよいが、液体形態の送達を利用することも可能である。鼻内噴霧剤は、長時間作用性または持効性の噴霧剤であってよく、当該技術分野で周知の手段によって製造できる。吸入剤も使用可能であり、その場合、ACTHアナログは気管支道のさらに奥(例えば、肺)まで到達可能となる。鼻エーロゾルまたは吸入投与用の代表的な組成物には、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤等を含んでいてもよい液剤(生理食塩水中)、バイオアべイラビリティを高める吸収促進剤、および/または、他の可溶化剤もしくは分散剤(例えば、当該技術分野で公知のもの)が含まれる。
【0119】
ACTHアナログの皮膚投与用の組成物は、少なくとも1種のACTHアナログを皮膚へまたは皮膚を介して送達するための担体を用いて製剤化できる。ACTHアナログの適用様式としては、複数の異なる種類の担体や担体の組み合わせが挙げられ、当該担体としては、水性液体、アルコール液体基剤、水溶性ゲル、ローション剤、軟膏剤、非水性液体基剤、鉱油基剤、鉱油とワセリンとの配合物、ラノリン、リポソーム、タンパク質担体(例えば、血清アルブミンまたはゼラチン)、セルロースカラメル末、および、これらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。治療薬を含有する担体の送達様式としては、スミア、噴霧、持効性pACTH、液体を吸収させたワイプ、および、これらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ACTHアナログは、直接または残りの担体のうちの1つに含ませた状態で包帯へ適用してもよい。包帯は湿潤または乾燥状態で販売可能であり、ACTHアナログは包帯上では凍結乾燥状態である。この適用方法が感染皮膚の治療には最も有効である。局所用組成物の担体には、ポリマー増粘剤、水、保存剤、活性な界面活性剤または乳化剤、酸化防止剤、日焼け止め、および、溶剤または混合溶剤系を含む半固体およびゲル様ビヒクルが含まれていてもよい。米国特許第5,863,560号(Osborne)には、皮膚と医薬との接触を助けることのできる複数の異なる担体の組み合わせが記載されている。局所投与用の別の組成物には、プラスティベース(ポリエチレンでゲル化した鉱油)等の局所用担体が含まれる。
【0120】
一例として、本発明は、約0.5〜10%のカルボマーと約0.5〜10%の薬剤(溶解状態および微粒子状態のいずれでも存在)とを有する皮膚用組成物を含む。溶解状態の薬剤は角質層を通過する能力を有するが、微粒子状態の薬剤にはその能力はない。アミン塩基、水酸化カリウムの溶液または水酸化ナトリウムの溶液を添加することで、ゲルの形成が完了する。特に薬剤としては、ダプソン(抗炎症特性を有する抗菌剤)を挙げることができる。ダプソンの溶解状態に対する微粒子状態の代表的な比率の一つは5以下である。
【0121】
別の例では、本発明は、約1%のカルボマー、約80〜90%の水、約10%のエトキシジグリコール、約0.2%のメチルパラベン、約0.3〜3.0%のダプソン(微粒子状態のダプソンおよび溶解状態のダプソンの双方を含む)および約2%の苛性材料を含む。特に、カルボマーとしては「CARBOPOL(登録商標)980」を、苛性材料としては水酸化ナトリウム溶液を挙げることができる。
治療方法
ACTHアナログ化合物を使用して様々なACTH関連病態を治療することができる。治療方法には、1種以上のACTHアナログ化合物を投与して、ACTHによる副腎ホルモン分泌の速度を低下させ、患者における高レベルのACTHの作用を緩和し、または、副腎機能の活性状態を維持しながら過剰のACTHを阻止することが含まれる。ACTHアナログ化合物は、ACTHのレベルに関連する疾患、例えば、ACTHレセプター(MC−2R等)のモジュレーションに応答性の病態を治療する際に有用である。ACTHアナログ化合物を投与することにより、ACTHレベルの調節に関連する病態を治療することができ、例えば、副腎機能の活性状態を維持しながら患者における高レベルのACTHの作用を軽減することができる。
【0122】
ACTHアナログ組成物は、例えば、ACTH関連病態(例えば、クッシング症候群、コルチコステロイドの分泌過多による免疫反応障害、早期分娩の開始(例えば、視床下部−脳下垂体−副腎系によるもの)および関連の病態)を治療する際に有用である。一態様では、各種のACTHアナログを調製し、患者へ投与してインビボでのコルチゾン誘発を評価することができる。
【0123】
高分解能MR脳下垂体イメージングと組み合わせれば、ACTHアナログ化合物を投与して脳下垂体のACTH産生腫瘍を治療することができる。同じく、錐体静脈洞サンプリングと組み合わせれば、ACTHアナログ化合物を投与して脳下垂体由来のACTH分泌過多、術前の下垂体腫瘍の局在化と偏り(lateralization)を突き止めることもできる(Oldfield, E. W. et al., "Petrosal sinus sampling with and without corticotrophin-releasing hormone for the differential diagnosis of Cushing's syndrome," N Engl J Med., 325:897-905 (1991);およびFindling, J. W. et al., Endocrinol Metab Clin North Am., 30:729-47 (2001)を参照)。脳下垂体ミクロ腺腫の70%が経蝶形骨法による切除に成功しているが、マクロ腺腫の場合の外科的な「治癒」率は、専門のセンターでも患者の約3分の1にしかならない(Mampalam, T. J. et al., Ann Intern Med., 109:487-93 (1988))。
【0124】
ACTH分泌過多の治療と併用したり、脳下垂体への放射線照射と組み合わせるなどすれば、ACTHアナログ化合物は腫瘍の治療にも投与でき、腫瘍の増殖やホルモンレベルを抑制することができる。放射線照射の影響は数年間は現れない可能性があるが、最終的には、大部分の患者で脳下垂体の傷害および機能不全を伴う(Brada, M. et al., "The long-term efficacy of conservative surgery and radiotherapy in the control of pituitary adenomas," Clin Endocrinol., 38:571-8 (1993))。副腎皮質機能亢進症、即ちコルチゾール分泌過多は、副腎摘出術(副腎の一方または双方を外科的に除去)によって完全に解決可能であるが、この方法では下垂体腫瘍の増殖は抑えられず、また、他の疾病の罹患も同時に招いてしまう(Trainer, P. J. et al., "Cushing's syndrome: Therapy directed at the adrenal glands," Endocrinol Metab Clin North Am., 23:571-584 (1994)を参照)。
【0125】
ACTHアナログ化合物は、医薬療法、例えば、シプロヘプタジン(抗セロトニン剤;ACTH分泌を抑制するのに用いられるが、最終的な効力が弱く、その使用が中断されていた(Krieger, D. T. et al., "Cyproheptadine-induced remission of Cushings disease," N Engl J Med. 293:893-6 (1975)))の同時投与と組み合わせて投与できる。抗真菌剤であるケトコナゾールは副腎コルチゾール生合成を抑制するが、当該薬物は下垂体腫瘍の増殖またはACTH分泌は阻害せず、特異体質性の肝臓障害によりその長期使用が制限されている(Sonino, N., "The use of ketoconazole as an inhibitor of steroid production," N Engl J Med., 317:812-8 (1987)を参照)。
【0126】
妊娠時には、第三妊娠三半期に胎盤および胎膜から相当量のCRHが産生され(Frim, D. M. et al., "Characterization and gestational regulation of corticotrophin-releasing hormone messenger RNA in human placenta," J Clin Invest., 82:287-292 (1988)を参照)、特に妊娠30週以降に母体の末梢血漿においてCRH濃度の増加を引き起こすおそれがある(Sasaki, A. et al., "Immunoreactive corticotropin-releasing hormone in human plasma during pregnancy, labor, and delivery," J Clin Endocrinol Metab., 64:224-229 (1987);およびGoland, R.S. et al., "High levels of corticotropin-releasing hormone immunoreactivity in maternal and fetal plasma during pregnancy," J Clin Endocrinol Metab., 63:119-1204 (1986)を参照)。最近の研究からは、早期分娩の女性では母体のCRH血漿レベルが上昇しており(Wolfe, C.D.A. et al., "Plasma corticotrophin releasing factor (CRF) in abnormal pregnancy," Br J Obstet Gynaecol., 95:1003-1006 (1988); Warren, W.B. et al, "Elevated maternal plasma corticotropin-releasing hormone levels in pregnancies complicated by preterm labor," Am J Obstet Gynecol., 166:1198-1207 (1992);およびMcLean, M. et al., "A placental clock controlling the length of human pregnancy," Nat Med., 1:460-463 (1995)を参照)、CRH血漿レベルが低下すると過期産となる(前出のMcLean et al.)ことが示唆されている。
【0127】
ACTHアナログは、子宮収縮抑制薬(即ち、分娩抑制薬)と組み合わせて分娩を遅らせることも可能である。子宮収縮抑制薬の例としてはリトドリンおよびテルブタリンが挙げられ、いずれもβ−交感神経様作用性である。しかしながら、有効であるためには、これらの薬物を通常は分娩が完全に始まる前に投与しなければならず、分娩が始まった後に投与した場合には、効力または安全性が不確かである。子宮収縮抑制薬は、時として、妊娠の高リスク期間(通常は妊娠約28〜34週)に通常は輸液によって低レベルで妊婦へ連続投与されるが、当該薬物は、腎機能、呼吸機能、心拍数、全身筋系の活動可能な状態(general body musculature tone)に望ましくない副作用を及ぼすおそれがある。投与量は多くの場合低く維持されなければならず、例えば1mg/ccのテルブタリン溶液なら約0.1cc/時間までである。分娩の開始を回避させる際、これらの低投与量の有効性は一貫しておらず、十分に定量がなされていない。従って、早期分娩の治療に対して新たな処置および方法が必要とされている。さらに重要なことには、早期分娩に対する新たな処置および方法は、望ましくない副作用を示さないことが必要である。
【0128】
一実施態様では、ACTHアナログ組成物を投与してACTHの生合成を減少させることができる。この治療方法は、薬剤(例えば、メチラポン)の投与と併用することができ、好ましくは薬剤の投与の代わりに行うことができる。好ましくは、ACTHアナログ組成物を投与して、例えばJ. R. Lindsay and L.K. Nieman (2005) "The Hypothalamic-Pituitary-Adrenal Axis in Pregnancy: Challenges in Disease Detection and Treatment," Endocrine Reviews 26:775-800に記載されているような妊娠中に発症するクッシング病の発病を治療することができる。この病態の治療は、通常は妊娠の延長または出産の準備を目的としており、ACTHポリペプチドおよび/またはメチラポン(母体の肝機能または胎児の発育に悪影響を及ぼすことなく十分に許容されることが観察されている)の投与が含まれる。メチラポンを投与するとACTHの生合成を減速させることができる。ACTHアナログ組成物は、コルチコステロイドの分泌過多の原因がACTHレベルの上昇の結果であると考えられる場合には(このような女性では、おそらく下垂体腫瘍から分泌)、例えばコルチコステロイドの合成を減少させる方策の一部として特に好適である。
【0129】
別の態様では、家畜被験体の治療方法、例えば、高い個体群密度にて栽培・養殖される農水産種の健康に役立つようストレスホルモンを低下させる方法を提供する。1種以上のACTHアナログ化合物を含む組成物は、高い個体群密度にて栽培・養殖される農水産種の健康に役立つようストレスホルモンを低下させる方法においても投与できる。
実施例
以下実施例を挙げて本発明の好適な実施態様を実際に説明する。以下の実施例に開示する材料および技術は、本発明の実施において十分に機能することが発明者によって明らかとなった材料・技術を示すものであり、従って、発明の実施にとって好ましい態様を構成すると考えられることは、当業者であれば分かる筈である。しかしながら、当業者であれば、本明細書の開示から、開示された特定の実施態様において多くの変更が可能であり、発明の概念および範囲を逸脱することなく依然として同様または類似の結果が得られることは明らかな筈である。
実施例1 血清コルチコステロイド誘発アッセイ(インビボ)
ACTHによる血中コルチコステロイド分泌を減少させるACTHアナログは、インビボでの血清コルチコステロイド誘発アッセイを行ってACTHアナログ投与後の被験体における血中コルチコステロイドレベルを測定することで同定できる。
【0130】
インビボでの血清コルチコステロイド誘発アッセイは、以下の方法に従って行った。第一に、本発明者の繁殖集団からの2〜3ヶ月齢の雄FVB/Nマウスに、1群当たり5匹でデキサメタゾン(0.4mg/0.1ml PBS/マウス;Sigma,St.Louis,MO)を腹腔内注射し、内在性ACTHの産生を抑制した。Hajos, GT et al., "Studies of the potency of polypeptides with ACTH action by a new method based on continuous measurement of plasma corticosterone," Steroids Lipids Res 3:225-228 (1972), Costa, JL, et al., "Mutational analysis of evolutionarily conserved ACTH residues," Gen Comp Endocrinol, 136:12-16 (2004)およびKarpac, J, et al., "Development, Maintenance, and Function of the Adrenal Gland in Early Postnatal Pro-opiomelanocortin Null Mutant Mice," Endocrinology (2005)(印刷に先立って2005年2月24日オンラインにて公表)を参照されたい(いずれも引用により本明細書に含まれるものとする)。
【0131】
第二に、90〜120分後、デキサメタゾン抑制マウスの肩甲骨間皮下に、未改変mACTH(1−24)または複数のACTHアナログペプチド化合物のうちの1つ(1μg/0.1ml PBS/0.5%BSA)のいずれか、あるいは、ビヒクル単独(対照)(0.1ml PBS/0.5%BSA)を注射した。以下のACTHアナログペプチド化合物を別々のマウスへ投与した:1:マウスACTH1−24;2:V26F,E30K;3:P19W,K21E,Y23R;4:E30K,P36R;5:ALA19−24;6:V26F,P36R;7:P19W,K21E;8:P19W,K21A,delY23;9:P19W,K21A;10:KRRP16−19RAAW(AT814)(配列番号20)。
【0132】
第三に、1時間後、尾を少しだけ切開して1分未満以内に血液を回収し、血清をフラッシュ凍結してアッセイまで−80℃で保存した。競合ラジオイムノアッセイ(125I RIAキット;ICN,Costa Mesa,CA)により製造業者の推奨に従って血清コルチコステロンを判定した。アッセイサンプル1つ当たり血清を1μl使用した。サンプルは2回ずつ測定した。上述のACTHアナログペプチドの結果を図1のグラフに示す(ACTH活性の割合(%)として活性を表示)。これらのACTHアナログは天然型のACTHよりも低い活性を示した。
実施例2 血清コルチコステロイド阻害アッセイ(インビボ)
ACTHによる血中コルチコステロイド分泌を減少させるACTHアナログは、インビボでの血清コルチコステロイド阻害アッセイを行って未改変ACTHによる副腎ホルモン産生を阻害する能力を試験することで同定できる。ACTHアナログ被験化合物をコルチコステロイド誘発活性が知られている化合物(例えば、ACTHまたは別のACTHアナログ)と組み合わせて投与した後、被験体における血中コルチコステロイドレベルを測定した。ACTHアナログ被験化合物は、コルチコステロイド産生化合物の投与前、投与と同時に、または、投与後に投与できる。
【0133】
インビボでの血清コルチコステロイド阻害アッセイは、以下の方法に従って行った。ACTHアナログ被験化合物(例えば、実施例1において低い活性を示したもの)を、未改変ACTHによる副腎ホルモン産生を阻害する能力について試験した。
【0134】
第一に、本発明者の繁殖集団からの2〜3ヶ月齢の雄FVB/Nマウスに、1群当たり5匹でデキサメタゾン(0.4mg/0.1ml PBS/マウス;Sigma,St.Louis,MO)を腹腔内注射し、内在性ACTHの産生を抑制した。
【0135】
第二に、90〜120分後、動物の肩甲骨間皮下に野生型ACTHおよび/または被験ACTHアナログペプチド(1μg/0.1ml PBS/0.5%BSA)またはビヒクル単独(0.1mL PBS/0.5%BSA)を投与した。
【0136】
第三に、1時間後、尾を少しだけ切開して1分未満以内に血液を回収し、血清をフラッシュ凍結してアッセイまで−80℃で保存した。競合ラジオイムノアッセイ(125I RIAキット;ICN,Costa Mesa,CA)により製造業者の推奨に従って血清コルチコステロンを判定した。アッセイサンプル1つ当たり血清を1μl使用した。サンプルは2回ずつ測定した。
【0137】
上述の通り、アナログAT814(配列番号20)について、結果をグラフとして図2に示す。ペプチドの効力をコルチコステロンの誘発率(%)として表す(天然型のマウスACTHの場合を100%とする)。最後にペプチドを注射してから1時間後のコルチコステロン誘発を比較したところ、AT814は、ACTH注射の30分前に適用した場合には、コルチコステロン誘発を野生型ACTHの35%まで減少させ、ACTH注射と同時に適用した場合には、野生型ACTHの10%まで減少させることが判明した。
実施例3 副腎結合アッセイ(インビトロ)
副腎レセプターに結合する能力を有するACTHアナログは、インビトロでの副腎結合アッセイを行うことで同定できる。外植副腎膜に結合する放射標識されたACTHアナログ被験化合物の量を測定し、副腎レセプター結合活性を有するACTHアナログを同定できる。好ましくは無血清培地中で行う(インビトロでの無血清副腎結合アッセイ)。
【0138】
副腎結合活性が知られている化合物(好ましくはACTH)よりも高い親和性で副腎レセプターに結合する能力を有するACTHアナログも、インビトロでの副腎競合結合アッセイ(放射標識された副腎結合性化合物(例えば、ACTH)の量の減少を、様々な濃度の放射標識されていないACTHアナログ被験化合物について、外植副腎膜を含む培地中で測定)を行うことで同定できる。放射標識された副腎結合性化合物の副腎膜結合の減少を利用すれば、ACTHアナログ被験化合物の結合活性を同定および特性決定することができる。一連のインビトロでの副腎競合結合アッセイでは、放射標識されたACTHの結合の減少を、ACTHアナログ被験化合物の副腎膜培地中への添加と組み合わせて測定した。
【0139】
インビトロでの無血清副腎競合結合アッセイは、以下の方法に従って行った。第一に、副腎をマウスから摘出して脂肪を切り離し、半分に切り分けた。Costa, JL, et al., "Mutational analysis of evolutionarily conserved ACTH residues," Gen Comp Endocrinol. 136:12-16 (2004);およびWeber, MM, et al., "Postnatal overexpression of insulin-like growth factor II in transgenic mice is associated with adrenocortical hyperplasia and enhanced steroidogenesis," Endocrinology 140:1537-1543 (1999)を参照されたい(いずれも引用により本明細書に含まれるものとする)。
【0140】
第二に、各副腎半球を4ウェルディッシュの個々のウェルへ入れ、マウス1匹当たり1ディッシュとした。副腎半球を5%CO2、37℃にて、0.5ml無血清培地(M199;Invitrogen)中30分間インキュベートして平衡化させた。
【0141】
第三に、副腎半球をほぐすか、そうでなければダンス型ホモジナイザーを用いて解離させ、膜画分を形成した。画分を適切な緩衝液(トリスまたはHEPES)中に再懸濁させた。次いで、125I放射標識ACTH(200ml)と放射標識されていない被験化合物(例えば、ACTHまたはAT814(配列番号20)等のACTHアナログ)とを、被験化合物の総濃度が0nM、10nM、100nMおよび1000nMとなるような量で再懸濁膜画分へ添加し、対照にはペプチドを添加しなかった。膜画分を回収し、放射線シグナルをガンマ検出器用いて検出した。放射標識されていない被験化合物の添加後に検出される放射線シグナルの低下は、各種被験化合物の結合親和性と相関可能である。ACTHアナログペプチド被験化合物の添加後に見られる放射線シグナルの低下は、副腎ACTHレセプター(例えば、MC−2R)への結合親和性の増加と、副腎MC−2RレセプターにおいてACTHを退かして置き換わる能力の指標となり得る。
【0142】
図3に、一連のインビトロでの無血清副腎競合結合アッセイの結果を示す。
実施例4 副腎阻害アッセイ(インビトロ)
ACTHによる副腎膜からのコルチコステロイドの分泌を減少または阻止するACTHアナログは、インビトロでの無血清コルチコステロイド阻害アッセイを行って未改変ACTHによる副腎ホルモン産生を阻害する能力を試験することで同定できる。ACTHアナログ被験化合物をコルチコステロイド誘発活性が知られている化合物(例えば、ACTHまたは別のACTHアナログ)と組み合わせて添加した後、無血清培地中のコルチコステロイドレベルを測定した。ACTHアナログ被験化合物は、コルチコステロイド産生化合物の添加前、添加と同時に、または添加後に添加できる。
【0143】
インビトロでの無血清副腎阻害アッセイは、以下の方法に従って行った。第一に、副腎をマウスから摘出して脂肪を切り離し、半分に切り分けた。Costa, JL, et al., "Mutational analysis of evolutionarily conserved ACTH residues," Gen Comp Endocrinol. 136:12-16 (2004);およびWeber, MM, et al., "Postnatal overexpression of insulin-like growth factor II in transgenic mice is associated with adrenocortical hyperplasia and enhanced steroidogenesis," Endocrinology 140:1537-1543 (1999)を参照されたい(いずれも引用により本明細書に含まれるものとする)。
【0144】
第二に、各副腎半球を4ウェルディッシュの個々のウェルへ入れ、マウス1匹当たり1ディッシュとした。副腎半球を5%CO2、37℃にて、0.5ml無血清培地(M199;Invitrogen)中30分間インキュベートして平衡化させた。
【0145】
第三に、培地を除去し、ACTH、AT814または両者(各100ng/ml)を含有するM199(0.5ml)と置換し、対照にはペプチドを添加しなかった。
第四に、2時間インキュベーションした後、培地を取り除けて各マウスからの4つ全ての半球についてプールし、標準的なRIA法を用いてコルチコステロンによるアッセイを行った。競合ラジオイムノアッセイ(125I RIAキット;ICN,Costa Mesa,CA)により製造業者の推奨に従ってコルチコステロンを判定した。アッセイサンプル1つ当たり血清を1μl使用した。サンプルは2回ずつ測定した。図4に結果を示す。
実施例5 (推定)家畜への治療投与
魚の養殖場では、混雑の影響と感染の拡大によって商業目的での魚の総トン数を最大にする目標が停滞するにつれ、いくつかの難題に直面するようになる。このような環境では、魚は、視床下部/脳下垂体/間腎(HPI)系を介して慢性的なストレス発作を処理しようとする。このような状況では、通常コルチコステロイドの上昇に続いて死亡率がある程度のレベルに達し、コルチコステロイドに対する感受性が鈍くなり、次いで個体群密度に関して新たな定常状態を出現させる。皮肉にも、このような「調節」サイクル時にはコルチコステロイドレベルの上昇が継続しており、感染に対する抵抗性を低下させている。
【0146】
養殖魚のHPIは、本発明のACTHアナログを徐放投与、例えば、このような魚ではシラスチックカプセルインプラントから徐放投与することでモジュレート可能である。このHPI系の緩衝手法は、生存を改善する筈であり、また、養殖魚の体重増加を容易にする可能性がある。
【0147】
本発明のACTHアナログまたはACTH単独のいずれかをインプラントした魚を、HPI系を活性化させる環境条件(即ち、混雑、pHのシフト、アンモニアやニトレートの蓄積)の下に置く。これらの典型例で分析可能な2つのパラメータは、死亡率と体重変化である。このようなパラメータから、本発明のACTHアナログが魚のコルチコステロンレベルを低下させる際に有効であるか否かが明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】図1は、各種ACTHアナログ化合物を注射した後インビボで測定したコルチコステロンのレベルを、未改変ACTHの投与後に測定したコルチコステロンのレベルと比較して示したグラフである。
【図2】図2は、未改変ACTHを投与、ACTHアナログを未改変ACTHと組み合わせて投与、ACTHアナログに続いて未改変ACTHを別途投与、および、ACTHアナログを単独で投与した際に誘導された、インビボでのコルチコステロンを比較したグラフである。
【図3】図3は、未改変ACTHとACTHアナログ化合物に対する副腎ACTHレセプターの競合結合アッセイの結果を比較したグラフである。
【図4】図4は、未改変ACTHを添加、ACTHアナログを未改変ACTHと組み合わせて添加、および、ACTHアナログを単独で添加した際に外植副腎膜において誘導された、インビトロでのコルチコステロンを比較したグラフである。
【図5】図5は、コルチコステロンを誘導する際の各種ACTHアゴニスト化合物のインビボおよびインビトロ活性を、未改変ACTHの活性を基準(即ち100%)にして比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたACTHアナログペプチドを含む組成物であって、前記ACTHアナログペプチドは、以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つを有する配列番号2のペプチドを含むものである、前記組成物:
a.配列番号2の19位に位置するPro残基のアミノ酸Trpによる置換;または
b.配列番号2のアミノ酸残基16〜18から選択される残基の1以上のアミノ酸置換であって、以下の条件を満たすもの:
i.前記ACTHアナログのアミノ酸残基16、17および18が、LysおよびArgからなる群より選択される2個のアミノ酸残基をいずれも隣接して含まない;かつ
ii.配列番号2の16、17または18位に置換した1以上のアミノ酸残基が、Lys、Arg、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、アルキル側鎖を含むアミノ酸アナログ、Gln、Asn、GluおよびAspからなる群より選択される。
【請求項2】
前記ACTHアナログペプチドが、配列番号2のアミノ酸位置15、16、17または18のいずれか2箇所に置換した少なくとも1つのAlaおよび少なくとも1つのArg残基を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ACTHアナログが、以下のアミノ酸置換を有する配列番号2の配列から本質的になる、請求項1または2記載の組成物:
配列番号2の19位に位置するPro残基をアミノ酸Trpで置換する;
配列番号2の15位に位置するアミノ酸が、Lys、AlaおよびGlnからなる群より選択される;かつ
前記ACTHアナログペプチドが、配列番号2のアミノ酸残基16〜18から選択される残基の1以上のアミノ酸置換を含むものであって、前記ACTHアナログのアミノ酸残基16、17および18が、LysおよびArgからなる群より選択される2個のアミノ酸残基をいずれも隣接して含まない。
【請求項4】
前記ACTHアナログペプチドのアミノ酸残基6〜9に、アミノ酸配列−His6−Phe7−Arg8−Trp9−が含まれる、請求項1、2または3記載の組成物。
【請求項5】
前記ACTHアナログペプチドのアミノ酸残基15〜19に、アミノ酸配列−Lys15−Arg16−Ala17−Ala18−Trp19−が含まれる、請求項1、2または3記載の組成物。
【請求項6】
インビボでの血清コルチコステロイド阻害アッセイにおいて前記ACTHアナログペプチドを投与した場合、ACTHによるコルチコステロイド分泌が少なくとも10%減少する、請求項1、2、3、4または5記載の組成物。
【請求項7】
前記ACTHアナログペプチドが、副腎膜に結合して配列番号2のペプチドを副腎膜から退かして置き換わるものであって、ここで当該ペプチド結合は、インビトロでの無血清副腎競合結合アッセイにて測定する、請求項1、2、3、4、5または6記載の組成物。
【請求項8】
前記ACTHアナログペプチドが、配列番号2のペプチドの少なくとも2倍の親和性でMC−2R副腎膜に結合する、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記ACTHアナログペプチドが、インビトロでの無血清副腎阻害アッセイにおいてACTHによる副腎膜からのコルチコステロン産生を減少させる、請求項1、7または8記載の組成物。
【請求項10】
単離されたACTHアナログペプチドを含む組成物であって、前記ACTHアナログペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号2のペプチドを含み、副腎膜に結合して配列番号2のペプチドを副腎膜から退かして置き換わるものであって、ここで当該ペプチド結合は、インビトロでの無血清副腎競合結合アッセイにて測定する、前記組成物。
【請求項11】
前記ACTHアナログペプチドが、以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つを有する、請求項10記載の組成物:
(a)配列番号2の19位に位置するPro残基のアミノ酸Trpによる置換;または
(b)配列番号2のアミノ酸残基16〜18から選択される残基の1以上のアミノ酸置換であって、以下の条件を満たすもの:
前記ACTHアナログのアミノ酸残基16、17および18が、LysおよびArgからなる群より選択される2個のアミノ酸残基をいずれも隣接して含まない;かつ
配列番号2の16、17または18位に置換した1以上のアミノ酸残基が、Lys、Arg、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、アルキル側鎖を含むアミノ酸アナログ、Gln、Asn、GluおよびAspからなる群より選択される。
【請求項12】
前記ACTHアナログペプチドのアミノ酸残基15〜19に、アミノ酸配列−Lys15−Arg16−Ala17−Ala18−Trp19−が含まれる、請求項10または11記載の組成物。
【請求項13】
前記ACTHアナログペプチドが、インビトロでの無血清副腎阻害アッセイにおいてACTHによる副腎膜からのコルチコステロン産生を減少させる、請求項10、11または12記載の組成物。
【請求項14】
前記ACTHアナログペプチドを投与した場合、ACTHによるコルチコステロイド誘発が少なくとも10%減少し、ここでコルチコステロン誘発は、インビボでの血清コルチコステロイド阻害アッセイにて測定する、請求項10、11、12または13記載の組成物。
【請求項15】
前記ACTHアナログペプチドが、配列番号2のペプチドと比較して、インビトロでの血清コルチコステロイド誘発アッセイにおいてACTHによる副腎膜からのコルチコステロン産生を少なくとも10%減少させる、請求項10、11、12、13または14記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1つのアミノ酸置換を有する配列番号1のペプチドを含む単離されたACTHアナログペプチドを含む組成物であって、前記ACTHアナログペプチドは、配列番号2のペプチドと比較して、インビトロでの血清コルチコステロイド誘発アッセイにおいてACTHによる副腎膜からのコルチコステロン産生を少なくとも10%減少させるものであり、前記少なくとも1つのアミノ酸置換には、配列番号1の19、26、30または36位に位置するアミノ酸残基の置換が含まれる、前記組成物。
【請求項17】
前記ACTHアナログペプチドが、以下のアミノ酸置換のうち少なくとも1つを有する、請求項16記載の組成物:
(a)配列番号1の19位に位置するPro残基のアミノ酸Trpによる置換;または
(b)配列番号1のアミノ酸残基16〜18から選択される残基の1以上のアミノ酸置換であって、以下の条件を満たすもの:
前記ACTHアナログのアミノ酸残基16、17および18が、LysおよびArgからなる群より選択される2個のアミノ酸残基をいずれも隣接して含まない;かつ
配列番号2の16、17または18位に置換した1以上のアミノ酸残基が、Lys、Arg、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、アルキル側鎖を含むアミノ酸アナログ、Gln、Asn、GluおよびAspからなる群より選択される。
【請求項18】
前記ACTHアナログペプチドのアミノ酸残基15〜19に、アミノ酸配列−Lys15−Arg16−Ala17−Ala18−Trp19−が含まれる、請求項16または17記載の組成物。
【請求項19】
前記ACTHアナログが、配列番号1のアミノ酸残基25〜39の末端切断をさらに含む、請求項16、17または18記載の組成物。
【請求項20】
前記ACTHアナログペプチドが配列番号20のペプチドを含む、請求項16、17、18または19記載の組成物。
【請求項21】
ACTH関連病態を治療するための医薬の製造におけるACTHアナログの使用であって、請求項1、10または16記載のACTHアナログを適切な担体と組み合わせる工程を含む、前記使用。
【請求項22】
血中コルチコステロイド濃度の上昇が前記ACTH関連病態の症状である、請求項21記載の使用。
【請求項23】
前記ACTH関連病態が、クッシング病、早期分娩、下垂体腫瘍および視床下部/脳下垂体/間腎(HPI)系の病理からなる群より選択される、請求項21記載の使用。
【請求項24】
前記医薬が、注射、吸入または経皮吸収による投与用に製剤化される、請求項21記載の使用。
【請求項25】
前記医薬が配列番号20のACTHアナログを含む、請求項21、22、23または24記載の使用。
【請求項26】
請求項1、10または16記載のACTHアナログを含む医薬組成物を被験体へ投与することを含む、ACTH関連病態の治療方法。
【請求項27】
前記医薬組成物を、被験体へ注射、吸入または経皮吸収によって投与するために製剤化する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記医薬組成物を注射用に製剤化し、前記医薬組成物を被験体へ注射する工程をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記医薬組成物の投与前に被験体の血中コルチコステロイドレベルを測定する工程をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記医薬組成物を皮下または静脈内に注射する、請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記医薬組成物を被験体へ注射する前に、被験体の血中コルチコステロイドレベルを低下させる薬剤を投与する工程をさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項32】
前記血中コルチコステロイドレベルを低下させる薬剤がデキサメタゾンを含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記被験体がヒトである、請求項26記載の方法。
【請求項34】
前記医薬組成物が徐放性組成物を含む、請求項26記載の方法。
【請求項35】
前記医薬組成物が配列番号20のACTHアナログを含む、請求項25、26、27、28、29、30、31、32、33または34記載の方法。
【請求項36】
副腎膜からのコルチコステロイド分泌を配列番号2の未改変ACTHよりも抑えるACTHアナログ化合物を同定するための、ACTHアナログ化合物のスクリーニング方法であって、副腎膜とACTHアナログとを接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項37】
前記スクリーニング方法が以下の工程をさらに含む、請求項36記載の方法:
a.第一の副腎膜と第二の副腎膜を用意し;
b.第一の副腎膜を、配列番号2を含む未改変ペプチドを含む第一の組成物と接触させ、続いて、配列番号2を含む未改変ペプチドとの接触後に第一の副腎膜から分泌される第一のコルチコステロイド濃度を測定し;
c.第二の副腎膜を、ACTHアナログを含む第二の組成物と接触させ、続いて、ACTHアナログとの接触後に第二の副腎膜から分泌される第二のコルチコステロイド濃度を測定する。
【請求項38】
分泌された第一のコルチコステロイド濃度と、分泌された第二のコルチコステロイド濃度とを比較する工程をさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
第二の化合物が第一の化合物よりもコルチコステロイド分泌を抑えるか否かを判定する工程をさらに含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記ACTHアナログが請求項1、10または16記載のACTHアナログである、請求項36、37、38または39記載の方法。
【請求項41】
前記第一の副腎膜と第二の副腎膜が被験体の体内に存在し、コルチコステロイドの濃度を被験体の血液中で測定する、請求項36、37、38または39記載の方法。
【請求項42】
前記第一の副腎膜と第二の副腎膜が被験体から外植したものであり、コルチコステロイドの濃度を無血清培地中で測定する、請求項36、37、38または39記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−518026(P2008−518026A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539117(P2007−539117)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/038789
【国際公開番号】WO2006/052468
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(507141608)ユニバーシティ・オブ・デンバー (2)
【出願人】(507140830)ユニヴァーシティ・オブ・フロリダ (2)
【出願人】(507140841)オクラホマ・メディカル・リサーチ・ファウンデーション (7)
【Fターム(参考)】