説明

加工システム

【課題】搬送レール等の軌道部材を用いることなく床面に設定した走行経路を搬送装置に走行させる無軌道型搬送システムを用いるとともに、走行経路に沿って配置された各工作機械に対する搬送装置の位置を、より高精度に位置決めすることが可能な加工システムを提供する。
【解決手段】搬送装置20は、走行経路R1に沿って床面F上にて走行及び停止可能な台車21と、ワークWの搬入または搬出を行うロボット22と、工作機械MCnに設けられた被連結手段CM(または連結手段CA)と連結可能な連結手段CA(または被連結手段CM)とを備え、工作機械には、自己の搬入・搬出位置に到達した搬送装置の連結手段と連結可能な位置に被連結手段が設けられており、搬送装置は、任意の工作機械の搬入・搬出位置に到達すると、連結手段と被連結手段を連結し、工作機械に対するロボットの相対位置及び相対方向を補正した後、ワークの搬入またはワークの搬出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め床面に設定された走行経路に沿って走行及び停止が可能な搬送装置を用いて、走行経路に沿って配置された複数の工作機械にワークを搬入し、加工されたワークを工作機械から搬出する、加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加工システムJ10の例を図5及び図6に示す。図5は従来の加工システムJ10の概略斜視図を示しており、図6(A)は従来の加工システムJ10の概略平面図を示しており、図6(B)は従来の加工システムJ10において、ロボット22を備えた搬送装置J20にてワークWを工作機械JMnに搬入(または搬出)する様子の概略側面図を示している。
図5及び図6に示す従来の加工システムJ10では、いわゆる「有軌道型搬送システム」が用いられており、床面とは異なる物理的な軌道部材(この場合、搬送レールJR1)を有し、搬送装置J20は、軌道部材(搬送レールJR1)に支持されて、床面を走行するのでなく軌道部材上(搬送レールJR1上)を走行する。
従来の加工システムJ10では、一連の加工工程を分割した複数の加工工程のそれぞれが対応付けられた工作機械JM1〜JMnが搬送レールJR1に沿って配置されており、搬送レールJR1上を移動する搬送装置J20を用いてワークを工作機械に搬入し、加工を終えたワークを工作機械から搬出して次の工作機械に搬入していく。
例えば特許文献1に記載された加工システムは、上記に説明した「有軌道型搬送システム」を用いた従来の加工システムJ10であり、搬送レールJR1上を搬送装置J20が走行し、搬送レールJR1に沿って複数の工作機械JMnが配置されている。そして工作機械における搬送レールJR1に対向する側には、ワークの搬入及び搬出を行うための側面扉TSが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−106445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
「有軌道型搬送システム」では、図6(B)に示すように、軌道部材(この場合、搬送レールJR1)を高精度に床面Fに据え付けることで、工作機械JM1に対する搬送装置J20の位置決めを高精度に行うことができる。例えば図6(B)において工作機械JMnの治具JnにワークWを取り付ける場合、数[mm]程度の誤差範囲で取り付けることができる。
ここで、図5、図6及び特許文献1に記載された従来技術では、各工作機械JM1〜JMn、及び搬送レールJR1は、それぞれ床面Fに据え付けられているが、工作機械には重量が数百[Kg]等、非常に重いものもあり、年間で数[mm]程度、床面Fに沈み込むものもある。床面Fへの沈み込み量が大きいと、搬送装置J20が治具JnにワークWを適切に取り付けまたは取り外しができなくなる可能性がある。
そこで、図6(B)に示す搬入または搬出において、搬送装置J20が治具JnにワークWを適切に取り付けまたは取り外しができるように、工作機械JMnの治具Jnの位置に対する搬送レールJR1の位置が許容誤差範囲内に収まるよう、搬送レールJR1の高さ等を定期的に調整する必要があり、非常に手間がかかる。
また、完成後の搬送レールJR1の長さは比較的長いので、完成後の状態で現場まで輸送することが困難である。このため、所定長さに分割した搬送レールを現場まで個々に輸送し、現場で各搬送レールを接続して組み立てており、据え付けのリードタイムが長い。
また、生産量の変動に応じて加工工程の見直しを行い、工作機械JMnの数が増えて加工システムを拡張する必要が発生した場合、搬送レールJR1を延長する工事も必要であり、拡張工事のリードタイムが長くなる。
更に、搬送レールJR1は直線状に延長することはできるがカーブさせるのは非常に困難であり、床面Fの空き状態によっては搬送レールJR1の延長ができない場合もある。なお搬送レールJR1の内側には、搬送装置J20に電力を供給するための配線や、搬送装置J20にエアを供給するための配管等を収容しており、これらも延長する必要があるため、非常に手間がかかり、拡張工事のリードタイムが長くなる。
また、搬送レールJR1が有ることにより、作業者が搬送レールJR1の側から保守点検作業を行う場合等において保守性が良くない。
なお、搬送レールJR1を用いることなく、床面Fに磁気テープ等を貼ることで床面Fに走行経路を設定し、床面Fに設定した走行経路を搬送装置に走行させる「無軌道型搬送システム」(この場合、磁気テープは搬送装置を支持しないので磁気テープは軌道部材ではない)を利用すれば、上記の搬送レールJR1に伴うデメリットを解消できるが、「無軌道型搬送システム」では、各工作機械に対する搬送装置の位置決め精度が「有軌道型搬送システム」より低く、搬送装置J20が各工作機械の治具JnにワークWを適切に取り付けまたは取り外しができなくなる可能性がある。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、搬送レール等の軌道部材を用いることなく床面に設定した走行経路を搬送装置に走行させる無軌道型搬送システムを用いるとともに、走行経路に沿って配置された各工作機械に対する搬送装置の位置を、より高精度に位置決めすることが可能な加工システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの加工システムである。
請求項1に記載の加工システムは、予め床面に設定された走行経路に沿って走行及び停止可能な搬送装置と、一連の加工工程を分割した複数の加工工程のそれぞれに対応付けられて前記走行経路に沿って配置された複数の工作機械と、を備え、前記搬送装置にて、次の加工工程に対応する工作機械にワークを搬入し、加工を終えた工作機械からワークを搬出する、加工システムである。
前記搬送装置は、前記走行経路に沿って前記床面上にて走行及び停止可能な台車と、可動範囲内のワークを把持または把持したワークを可動範囲内で移動または移動させたワークを開放することが可能なロボットと、工作機械のそれぞれに設けられた被連結手段と連結手段の一方と連結可能な、前記被連結手段と前記連結手段の他方と、を備えており、前記走行経路は、複数の工作機械のそれぞれに設定された搬入・搬出位置に、前記搬送装置を誘導可能となるように設定されている。
そして、複数の工作機械のそれぞれには、自己の搬入・搬出位置に到達した前記搬送装置の前記被連結手段と前記連結手段の他方と連結可能な位置に、前記被連結手段と前記連結手段の一方が設けられており、前記搬送装置は、任意の工作機械の搬入・搬出位置に到達すると、前記被連結手段と前記連結手段を連結し、連結した工作機械に対する前記ロボットの相対位置及び相対方向を補正した後、ワークの搬入またはワークの搬出を行う。
【0006】
また、本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの加工システムである。
請求項2に記載の加工システムは、請求項1に記載の加工システムであって、前記搬送装置に備えられた前記被連結手段と前記連結手段の他方、及び前記ロボットは、前記台車に対してフローチング部材を介して保持されている。
また、前記搬送装置は、前記被連結手段と前記連結手段の他方を、少なくとも2つ有しており、それぞれの工作機械は、前記被連結手段と前記連結手段の他方のそれぞれと連結可能となるように、前記被連結手段と前記連結手段の一方を、少なくとも2つ有している。
そして、前記搬送装置に備えられた前記被連結手段と前記連結手段の他方のそれぞれは、前記工作機械に備えられた前記被連結手段と前記連結手段の一方のそれぞれと機械的に連結し、連結した前記被連結手段と前記連結手段の一方からの力を前記フローチング部材に伝達して、連結した工作機械に対する前記ロボットの相対位置及び相対方向を補正する。
【0007】
また、本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりの加工システムである。
請求項3に記載の加工システムは、請求項1または2に記載の加工システムであって、前記搬送装置に備えられた前記台車と、前記ロボットと、前記被連結手段と前記連結手段の他方、の動力源は電力のみであるとともに前記搬送装置はバッテリを搭載しており、前記工作機械に備えられた前記被連結手段と前記連結手段の一方、には電源供給端子が設けられている。
そして前記搬送装置は、前記連結手段と前記被連結手段とが連結されると、前記電源供給端子から供給される電力を前記バッテリに充電する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の加工システムを用いれば、床面に設定した走行経路を搬送装置に走行させる無軌道型搬送システムを用いるとともに、搬送装置に設けた連結手段(または被連結手段)を、工作機械に設けた被連結手段(または連結手段)に機械的に連結させて、工作機械に対する(搬送装置の)ロボットの相対位置及び相対方向を補正するので、工作機械に対する(搬送装置の)ロボットを、より高精度に位置決めすることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の加工システムによれば、搬送装置は少なくとも2つの連結手段(または被連結手段)を備え、連結手段(または被連結手段)とロボットとを、台車に対してフローチング部材を介して保持する構造とすることで、工作機械に備えた少なくとも2つの被連結手段(または連結手段)から受ける力を、連結手段(または被連結手段)を経由させてフローチング部材へと伝達させることで、工作機械に対する(搬送装置の)ロボットの相対位置及び相対方向を、より適切に補正できる構造を実現することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の加工システムによれば、稼動中に搬送装置に充電されるので、搬送装置を充電するために加工システムの稼動を中断させる必要がなく、稼働率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の加工システム10の一実施の形態を説明する概略斜視図である。
【図2】加工システム10の概略平面図(A)と、搬送装置20にて工作機械MCnにワークWを搬入(または搬出)する様子を説明する概略側面図(B)である。
【図3】搬送装置20の構造の例を説明する図である。
【図4】工作機械MCnに対する(搬送装置20の)ロボット22の相対位置及び相対方向を補正する様子を説明する図である。
【図5】従来の加工システムJ10の例を説明する概略斜視図である。
【図6】従来の加工システムJ10の概略平面図(A)と、従来の搬送装置J20にて従来の工作機械JM1にワークWを搬入(または搬出)する様子を説明する概略側面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の加工システム10の一実施の形態を説明する概略斜視図の例を示しており、図2(A)は加工システム10の概略平面図の例を示している。また、X軸、Y軸、Z軸は互いに直交する軸を示しており、Z軸は鉛直上向き方向を示しており、X軸及びY軸は水平方向を示している。
【0013】
●[加工システム10の全体構成(図1、図2(A))]
図1に示すように本実施の形態にて説明する加工システム10は、予め床面Fに設定された走行経路R1(例えば、磁気テープ等を床面Fに貼り付けて走行経路を設定)に沿って走行及び停止可能な搬送装置20と、走行経路R1に沿って配置された複数の工作機械MC1〜MCnを備えている。従って、本実施の形態にて説明する加工システム10は、前述した「無軌道型搬送システム」を用いた加工システムである。
なお、工作機械MCnは、一連の加工工程を分割した複数の加工工程のそれぞれに対応付けられている。
また、加工システム10の各工作機械の動作や搬送装置20の動作等、加工システム10の全体を管理・コントロールする制御手段(工程管理コンピュータ等)については記載及び説明を省略する。
また、走行経路R1は、複数の工作機械のそれぞれに設定された搬入・搬出位置に、搬送装置20を誘導可能となるように設定されている。
【0014】
例えば加工の開始が指示されると、搬送装置20は、ワークWを把持して走行経路R1に沿って移動し、最初の加工工程に対応する工作機械MC1の手前(工作機械MC1の搬入・搬出位置に相当)で停止し、工作機械MC1の側面扉TS(搬入搬出口)にワークWを搬入する。
そして、搬送装置20は、先に搬入され既に工作機械MC1によって加工されたワークWを工作機械MC1の側面扉TSから搬出する。
搬送装置20は、搬出したワークWを把持した状態で走行経路R1に沿って移動し、次の加工工程に相当する工作機械MC2の手前(工作機械MC2の搬入・搬出位置に相当)で停止し、ワークWを側面扉TSから搬入する。以降、同様に工作機械MCnまでワークWの搬入と搬出を行う。
なお、図2(A)の点線に示すように、走行経路R1は、搬送装置20の退避や合流等が可能となるように、種々の方向に走行可能となるように設定しておくと、生産量の変動時や異常発生時等において便利である。
なお、搬送レールを有していないので、図1及び図2(A)に示すように、走行経路R1は、直線状に限定されず、床面Fの任意の方向に拡張することができる。
【0015】
●[搬送装置20による工作機械MCnへのワークWの搬入(図2(B))と、搬送装置20の構造(図3)]
次に図2(B)を用いて、搬送装置20による工作機械MCnへのワークWの搬入(または搬出)の状態等について説明する。
図2(B)及び図3(A)〜(C)に示すように、搬送装置20は、走行経路R1に沿って床面F上を走行するとともに走行経路R1における任意の位置で停止可能な台車21と、ワークWの搬入及び搬出を行うロボット22と、工作機械MCnのそれぞれに設けられた被連結手段CMと連結可能な連結手段CAと、を備えている。なお図示省略するが、搬送装置20は、走行及びロボット等の動力源となるバッテリ、走行経路R1に沿った走行及び停止を行う走行制御手段、加工システム10の工程管理コンピュータ等(図示省略)との無線通信を行うための通信手段、ロボット22の制御を行うロボット制御手段等も備えている。
また、台車21は、図示しない経路検出手段を備えており、走行経路R1を検出しながら走行経路R1に沿って走行及び停止が可能であり、工作機械のそれぞれに設定された搬入・搬出位置に停止することができる。なお、各工作機械の搬入・搬出位置には、搬送装置20の停止位置を位置決めする磁気テープや位置決めブラケット等が床面Fに貼り付けられている。
【0016】
しかし、その停止位置は、従来の搬送レールJR1と比較すると、位置決め精度が低く、このままでは図2(B)において、ワークWを工作機械MCnの治具Jnに取り付けることができない可能性があり、工作機械MCnに対するロボット22の相対位置及び相対方向を補正する必要がある。
なお、「相対位置」とは、X軸方向への平行移動、Y軸方向への平行移動、Z軸方向への平行移動による位置を指し、「相対方向」とは、X軸回りの旋回、Y軸回りの旋回、Z軸回りの旋回による姿勢(向き)を指す。
また、例えばロボット22は、複数の関節部とワークWを把持または開放可能な把持部とを有しており、可動範囲内のワークWを把持、または把持したワークWを可動範囲内で移動、または移動させたワークWを開放することが可能である。これにより、ワークWを把持した状態で走行経路R1に沿って移動し、工作機械MCnの治具JnにワークWを取り付け可能であり(搬入可能であり)、工作機械MCnの治具JnからワークWを取り出し可能である(搬出可能である)。
【0017】
●[工作機械MCnに対するロボット22の相対位置及び相対方向の補正方法(図3、図4)]
工作機械MCnのそれぞれには、自己の搬入・搬出位置に到達した搬送装置20の連結手段CAと連結可能な位置に、被連結手段CMが設けられている。この被連結手段CMは、その工作機械に対する基準位置に相当し、搬送装置20は、連結手段CAを被連結手段CMに連結すると、被連結手段CMの位置及び方向に応じて、工作機械に対するロボット22の相対位置及び相対方向を補正する。
図3(A)〜(C)は、搬送装置20の側面図、平面図、正面図の例を示しており、ロボット22と連結手段CAは、テーブル23に載置されている。
そしてテーブル23は、台車21に対してフローチング部材24(例えば弾性部材)を介して(フローチングした状態で)保持されている。
連結手段CAは、図3(B)及び(C)に示すように、被連結手段CMに向かう方向に伸縮移動可能である。
【0018】
次に図4(A)〜(C)を用いて、工作機械MCnに対するロボット22の相対位置及び相対方向を補正する動作について説明する。図4(A)〜(C)は、搬送装置20及び工作機械MCnを上から見た様子を示している。
搬送装置20は、工作機械MCnの搬入・搬出位置に到達すると、その位置で停止する。図4(A)は、工作機械MCnの搬入・搬出位置に搬送装置20が停止した状態を示しており、搬送装置20が走行経路R1に対して平行な状態よりも少し傾斜した状態で停止した例を示している。この状態ではロボット22を用いてワークWを工作機械MCnに搬入(または搬出)しても、正しい位置(治具Jnの位置)に搬入(または搬出)できない可能性がある。
そこで、搬送装置20は、図4(B)に示すように、連結手段CAを伸ばし、工作機械MCnに設けられた被連結手段CMに、連結手段CAの先端嵌合部CBを嵌合させる。先端嵌合部CBはテーパ状に形成されているので、被連結手段CMとの位置が数[mm]程度ずれていても、充分嵌合可能である。
【0019】
そして搬送装置20は、テーパ状に形成された先端嵌合部CBを被連結手段CMに嵌合させると、徐々に連結手段CAと被連結手段CMとの連結力を高めていき、被連結手段CMの位置及び方向に応じて、自身(連結手段CA)の位置及び方向を変化させ、連結手段CAを介して被連結手段CMから受ける力をテーブル23に伝達する。
この力とフローチング部材24によって、台車21に対するテーブル23の位置及び方向が変化し、図4(C)に示すように、工作機械MCnに対するロボット22(テーブル23)の相対位置及び相対方向が自動的に補正される。
なお、上記のように被連結手段CMからの力を連結手段CAからテーブル23へと伝達させるために、被連結手段CM及び連結手段CAは、2つ以上であることが好ましい。
このように、工作機械MCnに対するロボット22の相対位置及び相対方向を補正した後、ロボット22によるワークWの搬入または搬出を行う。
なお、連結手段CAと被連結手段CMの具体的な構成としては、例えば、マシニングセンタにおける主軸と工具との間のクランプ機構や、テーブルとパレットとの間のクランプ機構を採用することができる。
また、上記の説明では、連結手段CAを搬送装置20に設け、被連結手段CMを工作機械MCnに設けた例を説明したが、連結手段CAを工作機械MCnに設け、被連結手段CMを搬送装置20に設けてもよい。この場合、連結開始のトリガとして、工作機械MCnの側に、搬送装置20が自身の前(搬入・搬出位置)に停止したことを検出するセンサ等を設ければよい。
【0020】
また、搬送装置20における台車21、ロボット22、連結手段CAの動力源は電力のみであることが好ましい。圧縮エア等も動力源とすると、自走式の搬送装置20では補充が困難である。
本実施の形態にて説明する搬送装置20の動力源は電力のみであり、搬送装置20は図示しないバッテリを搭載しており、被連結手段CMからバッテリに充電する。
すなわち、少なくとも1つの工作機械の被連結手段CM(または連結手段CA)には、電力を供給可能な電源供給端子が設けられている。そして搬送装置20は、当該被連結手段CM(または連結手段CA)に連結手段CA(または被連結手段CM)を連結すると、被連結手段CM(または連結手段CA)に設けられた電源供給端子から供給される電力をバッテリに充電する。
これにより、加工システムの稼動を中断させることなく搬送装置20に充電することができるので、稼働率の低下を抑制することができ、便利である。
【0021】
以上、本実施の形態にて説明した加工システム10は、無軌道型搬送システムの搬送装置20を有することで、有軌道型搬送システムを用いた従来の加工システムJ10と比較して、搬送レールJR1の工事が不要であるので、工事(拡張時の工事も含む)のリードタイムを短くすることができる。また、搬送レールJR1を有していないので、拡張する際、直線状に限定されず、図1及び図2(B)に示すように、床面Fの任意の方向に拡張できる。
また、各工作機械MCnの被連結手段CM(または連結手段CA)と、搬送装置20の連結手段CA(または被連結手段CM)を用いることで、工作機械MCnに対するロボット22の相対位置及び相対方向を適切に補正することができ、位置決め精度をより向上させることができる。
また、搬送装置20は電力のみを動力源としており、工作機械MCnの被連結手段CM(または連結手段CA)から供給される電力を充電する構成とすることで、工程の稼働率の低下を抑制することができる。
また、工作機械MCnにおける走行経路R1の側には搬送レール等がないため、走行経路R1の側からの工作機械の保守点検等がより容易となる。
【0022】
本発明の加工システムは、本実施の形態で説明した外観、構成、動作等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
また、本実施の形態にて説明した搬送装置20の外観、構成、動作等は、種々の変更、追加、削除が可能である。
また、連結手段CA、被連結手段CMは、本実施の形態にて説明した構成及び構造に限定されず、種々の構成及び構造にて実現することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 加工システム
20 搬送装置
21 台車
22 ロボット
23 テーブル
24 フローチング部材
CA 連結手段
CB 先端嵌合部
CM 被連結手段
F 床面
Jn 治具
MCn 工作機械
R1 走行経路
W ワーク



【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め床面に設定された走行経路に沿って走行及び停止可能な搬送装置と、
一連の加工工程を分割した複数の加工工程のそれぞれに対応付けられて前記走行経路に沿って配置された複数の工作機械と、を備え、
前記搬送装置にて、次の加工工程に対応する工作機械にワークを搬入し、加工を終えた工作機械からワークを搬出する、加工システムにおいて、
前記搬送装置は、前記走行経路に沿って前記床面上にて走行及び停止可能な台車と、可動範囲内のワークを把持または把持したワークを可動範囲内で移動または移動させたワークを開放することが可能なロボットと、工作機械のそれぞれに設けられた被連結手段と連結手段の一方と連結可能な、前記被連結手段と前記連結手段の他方と、を備えており、
前記走行経路は、複数の工作機械のそれぞれに設定された搬入・搬出位置に、前記搬送装置を誘導可能となるように設定されており、
複数の工作機械のそれぞれには、自己の搬入・搬出位置に到達した前記搬送装置の前記被連結手段と前記連結手段の他方と連結可能な位置に、前記被連結手段と前記連結手段の一方が設けられており、
前記搬送装置は、任意の工作機械の搬入・搬出位置に到達すると、前記被連結手段と前記連結手段を連結し、連結した工作機械に対する前記ロボットの相対位置及び相対方向を補正した後、ワークの搬入またはワークの搬出を行う、
加工システム。
【請求項2】
請求項1に記載の加工システムであって、
前記搬送装置に備えられた前記被連結手段と前記連結手段の他方、及び前記ロボットは、前記台車に対してフローチング部材を介して保持されており、
前記搬送装置は、前記被連結手段と前記連結手段の他方を、少なくとも2つ有しており、
それぞれの工作機械は、前記被連結手段と前記連結手段の他方のそれぞれと連結可能となるように、前記被連結手段と前記連結手段の一方を、少なくとも2つ有しており、
前記搬送装置に備えられた前記被連結手段と前記連結手段の他方のそれぞれは、前記工作機械に備えられた前記被連結手段と前記連結手段の一方のそれぞれと機械的に連結し、連結した前記被連結手段と前記連結手段の一方からの力を前記フローチング部材に伝達して、連結した工作機械に対する前記ロボットの相対位置及び相対方向を補正する、
加工システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加工システムであって、
前記搬送装置に備えられた前記台車と、前記ロボットと、前記被連結手段と前記連結手段の他方、の動力源は電力のみであるとともに前記搬送装置はバッテリを搭載しており、
前記工作機械に備えられた前記被連結手段と前記連結手段の一方、には電源供給端子が設けられており、
前記搬送装置は、前記連結手段と前記被連結手段とが連結されると、前記電源供給端子から供給される電力を前記バッテリに充電する、
加工システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−247267(P2010−247267A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98944(P2009−98944)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】