説明

加工済み判定用リブの切断分離方法

【課題】合成樹脂成形品に薄肉の脆弱部をレーザー加工で形成した後、加工済み判定用リブの切断分離作業を簡略化することができるようにする。
【解決手段】合成樹脂成形品10に予め突出形成されている加工済み判定用リブ13を照射手段21と加工部厚み検出手段23間に配置し、前記照射手段21からレーザービームを前記加工済み判定用リブ13に照射して前記加工済み判定用リブ13を切断分離するリブ切断分離工程を備え、前記合成樹脂成形品10には、前記リブ切断分離工程時に前記加工済み判定用リブ13を貫通したレーザービームの進路となる位置に、予めレーザービーム通過防止突部17を形成しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂成形品に形成されている加工済み判定用リブをレーザー加工で切断分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグドア部を有するインストルメントパネル用の合成樹脂成形品においては、エアバッグドア部を構成する位置に、自動車衝突時のエアバッグの膨張により押圧されて破断する脆弱部が形成されている。また、前記脆弱部は、近年、美観などの点から外面に表れないインビジブルタイプが好まれている。
【0003】
前記インビジブルタイプからなる脆弱部の形成方法は、図9に示すように、射出成形等によってインストルメントパネル形状に成形された合成樹脂成形品60に対し、裏側の脆弱部形成予定部位63aにレーザービームの照射手段(レーザー発振器)71からレーザービームを照射し、前記脆弱部形成予定部位63aに切れ込みを入れて薄肉の脆弱部63を形成するレーザー加工による方法が多用されている。なお、前記レーザービームを合成樹脂成形品60の裏側から脆弱部形成予定部位63aに照射する際、前記脆弱部形成予定部位63aを貫通しないようにレーザービームの照射が行われる。
【0004】
前記レーザー加工による脆弱部63の形成においては、予めレーザービームの照射手段71に対向させて加工部厚み検出手段75を配設し、前記照射手段71と前記加工部厚み検出手段75との間に前記合成樹脂成形品60を配置し、前記照射手段71から照射されるレーザービームによって形成される脆弱部63の厚みを、前記加工部厚み検出手段75により検出している。前記加工部厚み検出手段75は、前記脆弱部63から漏れる光量(赤外線量)を検出可能なカメラや赤外線センサー等からなり、前記照射手段71の制御装置(図示せず)と接続されている。そして、前記レーザービームの照射されている部位から漏れる光量(赤外線量)が所定量となった時点、すなわちレーザービーム照射位置における合成樹脂成形品60の厚みが所定厚みになった時点で、その位置に対するレーザービームの照射を終了し、前記照射手段71と前記加工部厚み検出手段75あるいは前記合成樹脂成形品60の何れかを、次の位置へ移動させてレーザービームの照射を行っている。
【0005】
前記合成樹脂成形品60は、前記脆弱部63の形成後、自動車に組み付けられたり、表面に発泡層や表皮材が積層されたりする。その際、前記脆弱部63の形成されていないものが用いられるのを防ぐため、図10にも示すように、前記合成樹脂成形品60に予め加工済み判定用リブ65を突出形成しておき、前記レーザー加工による脆弱部63の形成後に、前記照射手段71と前記加工部厚み検出手段75、あるいは前記合成樹脂成形品60の何れかを移動させて、前記照射手段71と前記加工部厚み検出手段75の間に前記加工済み判定用リブ65を配置し、前記加工済み判定用リブ65の基部66にレーザービームを照射して前記基部66に切り込みを形成し、次にペンチや専用の治具を用いて前記加工済み判定用リブ65を折り取って分離させ、その後の合成樹脂成形品60の使用時に前記加工済み判定用リブ65が無いのを確認することにより、前記脆弱部63の加工済みを判断できるようにしている。図11に、前記加工済み判定用リブ65の分離後の状態を示す。図11において符号65aは、前記加工済み判定用リブ65が折り取られた跡を示す。なお、前記脆弱部63が形成されていない場合、前記加工済み判定用リブ65の基部66にレーザー加工による切り込みが形成されてなく、前記加工済み判定用リブ65が折り取りにくくなっていることから、前記脆弱部63が形成されていないのに誤って前記折り取り時加工済み判定用リブ65を折り取ることを防止している。
【0006】
しかし、従来においては、前記加工済み判定用リブ65の折り取り作業が余分に必要となり、工数が増大する問題がある。また、前記加工済み判定用リブ65にレーザービームを照射して直接切断分離しようとしても、その場合には加工済み判定用リブ65を貫通したレーザービームが前記加工部厚み検出手段75に入射し、前記加工部厚み検出手段75を破損させる問題が発生する。しかも、前記レーザービームの照射手段71と前記加工部厚み検出手段75は、互いの位置が固定されているため、前記加工部厚み検出手段75をレーザービームの入射しない位置に移動させることが難しかった。
【0007】
【特許文献1】特開2005−170373号公報
【特許文献2】特開2004−175121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、加工済み判定用リブを切断分離する作業を簡略化することができる加工済み判定用リブの切断分離方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、合成樹脂成形品に予め突出形成されている加工済み判定用リブをレーザービームの照射手段と加工部厚み検出手段間に配置し、前記照射手段からレーザービームを前記加工済み判定用リブに照射して前記加工済み判定用リブを切断分離するリブ切断分離工程を備え、前記合成樹脂成形品には、前記リブ切断分離工程時に前記加工済み判定用リブを貫通したレーザービームの進路となる位置に、予めレーザービーム通過防止突部を形成しておき、前記リブ切断分離工程時に前記加工済み判定用リブを貫通したレーザービームを、前記レーザービーム通過防止突部に衝突させてレーザービームが前記加工部厚み検出手段へ到達するのを阻止することを特徴とする加工済み判定用リブの切断分離方法に係る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リブ切断分離工程時に加工済み判定用リブを貫通したレーザービームの進路となる位置に、予めレーザービーム通過防止突部を形成しておき、前記リブ切断分離工程時に前記加工済み判定用リブを貫通したレーザービームを、前記レーザービーム通過防止突部に衝突させてレーザービームが加工部厚み検出手段へ到達するのを阻止する構成としたことにより、レーザービームによって加工部厚み検出手段が破損するおそれがない。しかも、従来のように、レーザー加工によって加工済み判定用リブに切り込みを形成した後に、加工済み判定用リブをペンチや治具等で折り取る面倒な作業が不要となり、作業が簡略となる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態に用いられる合成樹脂成形品の裏側斜視図、図2は図1の合成樹脂成形品における加工済み判定用リブ付近の拡大斜視図、図3は図1及び図2の3−3断面図、図4は同実施形態における脆弱部形成工程を示す概略図、図5は同実施形態におけるリブ切断工程を示す概略断面図、図6は同実施形態の合成樹脂成形品におけるリブ切断工程後を示す斜視図である。
【0012】
本実施形態における加工済み判定用リブの切断分離方法は、脆弱部形成工程と、リブ切断分離工程とよりなる。
【0013】
脆弱部形成工程では、図1に示す合成樹脂成形品10に対して脆弱部をレーザー加工により形成する。本実施形態の合成樹脂成形品10は、エアバッグドア部を有するインストルメントパネル用のものであり、ポリプロピレン、ABS、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂から射出成形等によってインストルメントパネル形状に形成されている。
【0014】
前記合成樹脂成形品10には、エアバッグの膨張により押されて破断する薄肉の脆弱部を形成するための脆弱部形成予定部位15aが裏面11に設定されている。なお、前記脆弱部形成予定部位15aは、前記合成樹脂成形品10の成形時に形成された細い筋などで示されていてもよく、あるいは示されていなくてもよく、脆弱部形成工程において後述のクランプ等で合成樹脂成形品10が所定位置にセットされた際に、レーザー加工位置となるようにされる。
【0015】
また、前記合成樹脂成形品10の所定部位、図示の例では合成樹脂成形品10の幅方向W一端の側部外面12には、図2及び図3にも示すように、加工済み判定用リブ13とレーザービーム通過防止突部17が突出して形成されている。前記加工済み判定用リブ13は、前記合成樹脂成形品10の側部外面12において合成樹脂成形品10の裏側寄りに形成され、一方、前記レーザービーム通過防止突部17は、前記加工済み判定用リブ13よりも前記合成樹脂成形品10の表側寄りに形成されている。前記加工済み判定用リブ13は、後述するリブ切断分離工程時のレーザービーム照射により切断分離可能な厚みとされている。それに対し、前記レーザービーム通過防止突部17は、リブ切断分離工程時に前記加工済み判定用リブ13を貫通したレーザービームの進路となる位置に設けられ、かつレーザービームが貫通しない厚みとされている。さらに本実施形態におけるレーザービーム通過防止突部17は、前記加工済み判定用リブ13の基部14を、リブ切断分離工程時にレーザービームの照射される側を除いて囲むように形成され、前記加工済み判定用リブ13の切断分離跡が前記レーザービーム通過防止突部17により目立たないようにされている。
【0016】
前記脆弱部形成工程及び後述のリブ切断分離工程で用いられるレーザー加工装置は公知のものが用いられる。前記レーザー加工装置は、その概略を示す図4のように、レーザービームの照射手段(レーザー発振器)21に対向して加工部厚み検出手段23が配設され、前記照射手段21と前記加工部厚み検出手段23の間に前記合成樹脂成形品10が配置可能とされている。なお、前記照射手段21と加工部厚み検出手段23の位置関係は固定されている。また、前記加工部厚み検出手段23は、前記脆弱部形成工程時にレーザービームの照射で形成される合成樹脂成形品10の脆弱部15から漏れる光量(赤外線量)を検出可能なカメラや赤外線センサー等からなり、前記照射手段71の制御装置(図示せず)と接続されている。
【0017】
前記レーザービームの照射手段21と前記加工部厚み検出手段23の間に前記合成樹脂成形品10を配置する。その際、前記合成樹脂成形品10は、前記裏面11を前記照射手段21へ向けてクランプ等の第1把持手段31で把持され、前記脆弱部形成予定部位15aがレーザービームの照射位置となるようにされる。その際、前記照射手段21と対向して前記加工部厚み検出手段23が位置している。なお、本実施例では、前記加工済み判定用リブ13の先端側がクランプ等の第2把持手段33で把持される。また、前記第2把持手段33の下方には分離リブ落下収納容器37が配置されている。
【0018】
次いで、前記照射手段21からレーザービームを前記合成樹脂成形品10の脆弱部形成予定部位15aに照射すると共に、前記照射位置における合成樹脂成形品10の厚みを加工部厚み検出手段23により検出し、照射位置が所定厚みの薄肉となった時点で次の位置へ照射位置を移動し、これを繰り返して薄肉の脆弱部15を前記脆弱部形成予定部位15aに形成する。なお、照射位置の移動は、前記照射手段21と加工部厚み検出手段23を移動手段(図示せず)で移動させることにより、あるいは前記合成樹脂成形品10を移動手段(図示せず)で移動させることにより行われる。
【0019】
リブ切断分離工程では、前記レーザービームの照射手段21と前記加工部厚み検出手段23を移動させることにより、あるいは前記合成樹脂成形品10を移動させることにより、図5に示すように、前記照射手段21によるレーザービームの照射位置を前記加工済み判定用リブ13の基部14にする。次に、前記照射手段21からレーザービームを前記加工済み判定用リブ13の基部14に、前記合成樹脂成形品10の裏側から照射し、前記レーザービームを前記加工済み判定用リブ13の基部14に貫通させながら、前記レーザービームの照射手段21と前記加工部厚み検出手段23を移動させることにより、あるいは前記合成樹脂成形品10を移動させることにより、前記加工済み判定用リブ13の基部14を切断し、前記加工済み判定用リブ13を分離する。その際、前記加工済み判定用リブ13の基部14を貫通したレーザービームは、前記レーザービーム通過防止突部17に衝突して通過が阻止されるため、前記加工部厚み検出手段23へのレーザービームの入射が防止され、前記加工部厚み検出手段23がレーザービームにより破損するのが防止される。
【0020】
その後、前記第2把持手段33による前記加工済み判定用リブ13の把持を解除することにより、前記切断分離した加工済み判定用リブ13を落下させて前記分離リブ落下収納容器37に収納する。図6に、前記加工済み判定用リブ13の分離後の状態を示す。符号13aは前記加工済み判定用リブ13の分離跡を示す。
【0021】
なお、前記レーザービーム通過防止突部17は、前記加工済み判定用リブ13の基部14を囲むものに限られない。例えば、図7及び図8に示す合成樹脂成形品40のように、加工済み判定用リブ43の基部44を囲まないようにレーザービーム通過防止突部47を設けたものでもよい。符号41は合成樹脂成形品の裏面、45aは脆弱部形成予定部位である。この合成樹脂成形品40に対し、前記合成樹脂成形品10と同様にして、前記加工済み判定用リブ43の基部44に前記合成樹脂成形品40の裏側から前記レーザービームの照射手段21によりレーザービームを照射し、前記加工済み判定用リブ43を切断分離する。その際、前記加工済み判定用リブ43の基部44を貫通したレーザービームは、前記レーザービーム通過防止突部47に衝突して通過が阻止され、前記加工部厚み検出手段23に入射するのが防止されて前記加工部厚み検出手段23の破損が防止される。
【0022】
なお、前記説明においては自動車のインストルメントパネル用合成樹脂成形品に脆弱部を形成する例について記載したが、本発明は、インストルメントパネル用以外の合成樹脂成形品についても、加工済み判定用リブをレーザー加工で切断分離する場合に適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に用いられる合成樹脂成形品の裏側斜視図である。
【図2】図1の合成樹脂成形品における加工済み判定用リブ付近の拡大斜視図である。
【図3】3−3断面図である。
【図4】同実施形態における脆弱部形成工程を示す概略図である。
【図5】同実施形態におけるリブ切断工程を示す概略断面図である。
【図6】同実施形態の合成樹脂成形品におけるリブ切断工程後を示す斜視図である。
【図7】他の実施形態に用いられる合成樹脂成形品の裏側斜視図である。
【図8】8−8断面図である。
【図9】従来における脆弱部形成時を示す斜視図である。
【図10】10−10断面図である。
【図11】従来における加工済み判定用リブ分離後の状態を示す合成樹脂成形品の斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
10 合成樹脂成形品
11 合成樹脂成形品の裏面
13 加工済み判定用リブ
15a 脆弱部形成予定部位
15 脆弱部
17 レーザービーム通過防止突部
21 レーザービームの照射手段
23 加工部厚み検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂成形品に予め突出形成されている加工済み判定用リブをレーザービームの照射手段と加工部厚み検出手段間に配置し、前記照射手段からレーザービームを前記加工済み判定用リブに照射して前記加工済み判定用リブを切断分離するリブ切断分離工程を備え、
前記合成樹脂成形品には、前記リブ切断分離工程時に前記加工済み判定用リブを貫通したレーザービームの進路となる位置に、予めレーザービーム通過防止突部を形成しておき、
前記リブ切断分離工程時に前記加工済み判定用リブを貫通したレーザービームを、前記レーザービーム通過防止突部に衝突させてレーザービームが前記加工部厚み検出手段へ到達するのを阻止することを特徴とする加工済み判定用リブの切断分離方法。
【請求項2】
レーザービームの照射手段に対向して加工部厚み検出手段を配設し、前記照射手段と前記加工部厚み検出手段との間に合成樹脂成形品を配置し、前記照射手段からレーザービームを前記合成樹脂成形品に照射して薄肉の脆弱部を形成する脆弱部形成工程後に、前記リブ切断分離工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の加工済み判定用リブの切断分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−62465(P2007−62465A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248757(P2005−248757)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】