説明

加工装置制御システムおよび加工装置制御方法

【課題】加工工程おける被加工製品の生産効率を向上させる。
【解決手段】加工装置制御システム100は、研磨パッド、ドレッサなどの消耗部品の状態を表す物理量(累積使用時間など)から半導体ウェハCMP装置などの加工装置200の装置性能(研磨レートなど)を予測する予測モデル、および、その予測モデルのパラメータを予測するメタ予測モデルを有する。モデル作成シミュレータ部110は、加工履歴データ記憶部140に蓄積されている加工履歴データと予め定めた所定の統計分布に従う乱数とを用いて、シミュレーションにより、そのメタ予測モデルのパラメータを定めるとともに、装置性能の予測モデルのパラメータを定め、そのパラメータを制御演算部130へ送信する。制御演算部130は、受信したパラメータによって定められる装置性能の予測モデルと前記消耗部品の状態を表す物理量の現在値とを用いて、加工装置200に対する制御量を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工性能に影響を及ぼす消耗部品を用いて加工対象を加工する加工装置の制御システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウェハCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)装置のような研磨装置では、その性能は、単位時間当たりの研磨量である研磨レートで表される。研磨レートは、多くの場合、半導体ウェハを研磨する研磨パッドや、その研磨パッドの目立てをするドレッサの性能によって定まる。この研磨パッドやドレッサは、消耗部品であり、使用する時間とともに磨耗するので、性能が劣化する。従って、半導体ウェハを所定量研磨しようとする場合には、研磨パッドやドレッサの性能によって定まる研磨レートを常に把握しておく必要がある。
【0003】
特許文献1には、ブランケットウェハをテスト研磨することによって、その時点での研磨レート(被研磨膜の除去率)を取得し、その取得した研磨レートないしはその研磨レートから予測される研磨レートを用いて、研磨量(研磨時間)を制御する半導体ウェハCMP装置の例が記載されている。このような半導体ウェハCMP装置では、消耗部品である研磨パッドやドレッサの性能が交換された場合であっても、その研磨レートを把握することができるので、現実の研磨レートに適合した制御を行うことが可能となり、研磨の精度が向上する。
【0004】
また、非特許文献1には、マルコフ連鎖モンテカルロ(Markov Chain Monte Carlo)法(以下、MCMC法と略す)を用いて、統計モデルのパラメータをデータから決定し、最適化する方法などが記載され、さらに、装置の制御モデルのパラメータをデータから決定する際にも、装置の制御モデルを統計モデルとして扱うことなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3859475号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Christophe Andrieu,他3 “An Introduction to MCMC for Machine Learning”, Kluwer Academic Publishers, Machine Learning, 50, 5-43, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、半導体ウェハCMP装置などでは、研磨しながら、同時に、研磨対象の薄膜の膜厚を測定することはできない。膜厚測定により求められる研磨レートの実績値は、研磨終了後、膜厚検査装置でその膜厚を実際に測定した後でなければ得ることができない。しかも、膜厚測定には、対象となる半導体ウェハを搬送したり、洗浄したりする手間も掛かるため、かなりの時間が掛かる。そのため、テスト研磨をし、膜厚測定をすれば、その待ち時間のために研磨工程が遅延することになる。そして、その結果として、半導体ウェハ製品としての生産効率が低下することになる。
【0008】
そこで、本発明は、テスト加工(テスト研磨)による加工工程(研磨工程)の遅延を低減させ、加工対象製品(半導体ウェハなど)の生産効率を向上させることが可能な加工装置制御システムおよび加工装置制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、消耗部品の状態によって加工性能が変動する加工装置の加工性能を予測して、その加工装置を制御する加工装置制御システムであって、前記加工装置による加工時に前記加工装置から取得した加工履歴データを蓄積した加工履歴データ記憶部と、前記消耗部品の状態を表す物理量から前記加工性能を予測する予測モデルのパラメータを予測するメタ予測モデルのパラメータを、前記加工履歴データ記憶部に蓄積されている加工履歴データと予め定めた所定の統計分布に従う乱数とを用いたシミュレーションとによって定めるモデル作成シミュレータ部と、前記モデル作成シミュレータ部によって定められたパラメータを有するメタ予測モデルによって定められた前記加工性能を予測する予測モデルと、前記消耗部品の状態を表す物理量の現在値と、に基づき、前記加工装置に対する制御量を演算する制御演算部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の加工装置制御システムは、消耗部品の状態を表す物理量(例えば、消耗部品の累積使用時間など)から加工装置の加工性能(例えば、研磨レート)を予測する予測モデルを作成することができるので、その加工性能を予測するのに、必ずしも、その加工性能を直接表す物理量(例えば、研磨レート)を必要としない。従って、加工(研磨)終了後直ちに、消耗部品の状態を表す物理量(例えば、消耗部品の累積使用時間など)を用いて加工装置の加工性能(例えば、研磨レート)を予測することができる。従って、テスト加工の頻度を少なくすることができるので、テスト加工やそれに伴う加工量測定などによる工程遅延を低減させることができる。その結果、被加工製品の生産効率が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、テスト加工(テスト研磨)に伴う加工工程(研磨工程)の遅延を低減させ、被加工製品(半導体ウェハなど)の生産効率を向上させることが可能な加工装置制御システムおよび加工装置制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る加工装置制御システムの機能的なブロックの構成の例を示した図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る加工装置制御システムを実現する計算機システムの構成の例を示した図。
【図3】本発明の実施形態において、加工装置の代表例として用いられる半導体ウェハCMP装置の概略構成の例を示した図。
【図4】加工履歴データ記憶部に蓄積される半導体ウェハCMP装置に対する加工履歴データのレコード構成の例を示した図。
【図5】半導体ウェハを半導体ウェハCMP装置で研磨したときの研磨レート実績値の推移チャートの例を示した図。
【図6】ドレッサ累積使用時間を説明変数とした場合の研磨レートRの予測値推移チャートの例を示した図であり、(a)は、研磨レートRの予測値および実績値を比較して示した図、(b)は、その予測値誤差推移チャートを示した図。
【図7】式(9)のメタ予測モデルに基づいて研磨レートRを予測した予測値推移チャートの例を示した図であり、(a)は、研磨レートRの予測値および実績値を比較して示した図、(b)は、その予測値誤差の推移を示した図。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る加工装置制御システムのモデル作成シミュレータ部におけるモデル作成シミュレーション処理の処理フローの例を示した図。
【図9】MCMC法によるパラメータ標本系列が収束する様子の例を示した図であり、(a)は、初回から収束するまでに加え、所定回数の収束区間を含んだ場合について、その収束する様子を示した図、(b)は、所定回数の収束区間における収束した様子を示した図。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る加工装置制御システムの制御演算部における装置性能予測および制御量計算処理の処理フローの例を示した図。
【図11】制御用計算機の表示装置に表示するアラーム表示画面の例を示した図。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る加工装置制御システムの機能的なブロックの構成の例を示した図。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る加工装置制御システムのモデル作成シミュレータ部におけるモデル作成シミュレーション処理の処理フローの例を示した図。
【図14】MCMC法による学習ゲインλの標本系列が収束する様子を示した図であり、(a)は、初回から収束するまでに加え、所定回数の収束区間を含んだ場合について、その収束する様子を示した図、(b)は、所定回数の収束区間における収束する様子を示した図。
【図15】研磨量制御シミュレーション結果を制御に適用する場合の制御量の推移チャートの例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施形態を説明するためのすべての図面において、同一の構成要素には同一符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0014】
<第1の実施形態>
(1.加工装置制御システムの構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る加工装置制御システムの機能的なブロックの構成の例を示した図である。図1に示すように、加工装置制御システム100は、モデル作成シミュレータ部110、制御演算部130、加工履歴データ記憶部140などのブロックを含んで構成される。
【0015】
ここで、モデル作成シミュレータ部110は、その内部に、モデル作成試行部111、確率的パラメータ生成部115、モデル精度収束判定部116、マルコフ連鎖標本値記憶部121、装置性能予測モデル記憶部122などのブロックを含んで構成され、さらに、モデル作成試行部111は、その内部に、装置性能予測モデルメタ予測試行部112、装置性能予測試行部113などを含んで構成される。また、制御演算部130は、その内部に、装置性能予測モデルメタ予測部132、装置性能予測部133、制御量計算部134、異常予測部135などのブロックを含んで構成される。
【0016】
この加工装置制御システム100の基本的な機能は、加工装置200(例えば、半導体ウェハCMP装置)における装置状態を含む様々な加工履歴データを取得し、その装置状態および加工履歴データに応じて、加工装置200を制御するための様々な制御量を出力する。この基本的な機能は、一般の制御システムと同じであるが、前記した各ブロックが有する独特の機能については、以下の実施形態の説明の中で順次説明する。
【0017】
図2は、加工装置制御システム100を実現する計算機システムの構成の例を示した図である。図2に示すように、本発明の実施形態に係る装置性能予測モデルの運用・管理を行う運用センタ300に設けられたモデル管理用計算機31は、通信ネットワーク500を介して、遠隔地の複数のサイト400にそれぞれ設置された制御用計算機41に接続されている。そして、サイト400にそれぞれ設置された制御用計算機41には、制御対象となる加工装置200が接続されている。
【0018】
ここで、モデル管理用計算機31は、演算処理装置32と記憶装置33とを含んで構成され、その記憶装置33には、マルコフ連鎖標本値記憶部121、装置性能予測モデル記憶部122、加工履歴データ記憶部140などが設けられる。また、制御用計算機41は、演算処理装置42と記憶装置43とを含んで構成されている。そして、図1に示したモデル作成シミュレータ部110の機能は、モデル管理用計算機31によって実現され、また、制御演算部130の機能は、制御用計算機41によって実現される。
【0019】
(2.半導体ウェハCMP装置の構成)
図3は、本発明の実施形態において、加工装置200の代表例として用いられる半導体ウェハCMP装置の概略構成の例を示した図である。図3に示すように、半導体ウェハCMP装置200aは、研磨対象の半導体ウェハ10をその下面に保持して押圧するヘッド14、ヘッド14を回転させるヘッド回転モータ15、ヘッド14により押圧される半導体ウェハ10の下面側に接触し、その接触面を研磨する研磨パッド11、研磨パッド11をその上面に保持するテーブル12、テーブル12を回転させるテーブル回転モータ13、研磨パッド11の目立てをするドレッサ16、ドレッサ16を回転させるドレッサ回転モータ17、ドレッサ16を研磨パッド11の半径方向に揺動させるドレッサ揺動モータ18、スラリー19を研磨パッド11上面に供給するスラリー供給部20、などを含んで構成される。
【0020】
半導体ウェハCMP装置200aでは、半導体ウェハ10は、ヘッド14によって保持されて、研磨パッド11の上面に所定の圧力で押圧される。一方、スラリー供給部20からは、研磨砥粒を含むスラリー19が研磨パッド11上に供給される。この状態でヘッド回転モータ15およびテーブル回転モータ13が回転すると、半導体ウェハ10は、研磨パッド11との接触面が研磨される。このとき、研磨の進行に伴い研磨パッド11の研磨面が磨耗する。そこで、ドレッサ回転モータ17およびドレッサ揺動モータ18が回転すると、ドレッサ16が研磨パッド11上を回転しながら揺動することによって、研磨パッド11の研磨面の目立てが行われる。
【0021】
加工装置制御システム100は、例えば、半導体ウェハ10上に形成された薄膜の膜厚が所定の目標値になるように、半導体ウェハCMP装置200aによる研磨時間などを制御する。その場合、その研磨時間は、研磨パッド11の目立ての状態や、ドレッサ16の目立ての性能などに大きく依存する。そこで、加工装置制御システム100は、研磨パッド11の目立ての状態や、ドレッサ16の目立ての性能などを知る手掛かりとなるデータを、加工履歴データとして半導体ウェハCMP装置200aから取得し、加工履歴データ記憶部140に蓄積する。
【0022】
図4は、加工履歴データ記憶部140に蓄積される半導体ウェハCMP装置200aに対する加工履歴データのレコード構成の例を示した図である。図4に示すように、半導体ウェハCMP装置200aに対する加工履歴データのレコードは、被研磨ウェハ番号、装置号機名、消耗部品ドレッサ使用時間、消耗部品研磨パッド使用時間、研磨前膜厚V、研磨後膜厚V、研磨時間T、研磨レートR、設置環境温度などのデータを含んで構成される。なお、この1レコードの加工履歴データは、研磨対象の1枚の半導体ウェハ10が研磨されるたびに取得されるものとする。
【0023】
(3.研磨レートの一般的な予測方法)
まず、ここでは、一般的な制御システムの基本的な考え方に沿って、半導体ウェハCMP装置200aにより半導体ウェハ10の研磨をする場合に、目標の膜厚を達成するための研磨時間を予測し、設定する方法について説明する。
【0024】
加工装置制御システム100の制御演算部130は、まず、半導体ウェハ10の研磨前の膜厚V(測定値)と研磨後の膜厚V(目標値)との差である研磨量dV(目標値)だけの研磨を行うのに必要な研磨時間Tを、次の式(1)に従って計算し、計算した研磨時間Tを半導体ウェハCMP装置200aに設定する。
【0025】
【数1】

【0026】
式(1)によれば、研磨時間Tを計算するには、研磨レートRを予め定めておく必要がある。研磨レートRは、単位時間あたりの研磨量であり、半導体ウェハCMP装置200aの研磨性能を表す量である。研磨レートRは、次の式(2)により計算することができる
【0027】
【数2】

【0028】
式(2)によれば、研磨量dVを研磨時間Tで除すことにより求めることができる。そこで、ここでは、前回(n−1)の研磨における研磨量dVの測定値とそのときの研磨時間Tの設定値とを用いて、次の式(3)に従って、前回(n−1)の研磨レートRの実績値を計算し、その計算した研磨レートRの実績値を、次回(n)の研磨レートの予測値R(n)とする。なお、ここでいう前回(n−1)の研磨とは、直前に行った半導体ウェハ10の研磨を指し、次回(n)の研磨とは、前回(n−1)の次に行おうとしている半導体ウェハ10の研磨をさすものとする(以下、本明細書にて同じ)。
【0029】
【数3】

【0030】
この式(3)における前回(n−1)の膜厚V、Vの測定値および研磨時間Tの設定値は、加工履歴データ記憶部140から、当該半導体ウェハ10に付された被研磨ウェハ番号の行に含まれる研磨前膜厚V、研磨後膜厚Vおよび研磨時間Tのデータを読み出したものである。
【0031】
また、式(3)の表記では、次回(n)の研磨レートの予測値R(n)の記号“R”の上部には、いわゆる“ハット”マーク(“^”)が付されているが、この“ハット”マークは、予測値を表すものとするが、明細書の本文では省略する。
【0032】
以上のようにして、加工装置制御システム100の制御演算部130は、次回(n)の研磨レートRの予測値を求めることができる。そして、その予測値と研磨量dVの目標値とを式(1)に代入することにより、半導体ウェハCMP装置200aに設定すべき研磨時間Tを得ることができる。
【0033】
なお、式(3)に従って、前回(n−1)の実績値を用いて計算した研磨レートRを、そのまま次回(n)の予測値として使用した場合には、前回研磨時の固有の変動ノイズがそのまま予測誤差に反映されることになる。そこで、その変動ノイズの影響を低減させるためには、式(4)に従って、研磨レートRの前回(n―1)の実績値と次回(n)の予測値との間でフィルタ処理を行えばよい。
【0034】
【数4】

【0035】
(4.一般的な予測方法における問題点)
しかしながら、以上に説明した次回(n)の研磨レートRの予測値の計算方法には、実用上、重大な問題が存在する。すなわち、式(3)を計算するためには、研磨前の膜厚V(n−1)の測定値が必要であるが、実際上の半導体の製造ラインにおいては、研磨前の膜厚V(n−1)の測定に時間が掛かるため、次回(n)の研磨を行うときまで、その研磨前の膜厚V(n−1)の測定値を得ることができない。
【0036】
研磨前の膜厚V(n−1)の測定に時間が掛かるのは、膜厚測定装置(図示せず)が半導体ウェハCMP装置200aとは別体の装置であるため、その膜厚測定装置で膜厚を測定する場合には、その測定時間のほかに、対象の半導体ウェハ10を洗浄したり、搬送したりする時間が必要となるからである。
【0037】
もちろん、膜厚測定装置により研磨前の膜厚V(n−1)の測定値が取得されるのを待って、式(3)を用いて次回(n)の研磨の研磨レートR(n)を予測し、その予測された研磨レートR(n)を用いて、次回(n)の研磨を行うことは可能である。しかしながら、こうした場合、膜厚測定に伴う時間遅れのために、半導体ウェハ10の生産効率が大幅に低下してしまう。従って、現実の生産ラインでは、このような方法がとられることはない。
【0038】
そこで、このような場合には、前回(n)の研磨レートR(n)の代りに、膜厚測定に伴う時間遅れよりも前の、例えば、L回前の研磨レートR(n−L)を用いて、次回(n)の研磨レートR(n)の予測値とする、という対策を立てることができる。この場合には、次回(n)の研磨レートR(n)の予測値は、式(3)を拡張した式(5)によって求めることができる。
【0039】
【数5】

【0040】
ここで、Lの実際上の値は、製造ラインの様々なケースにもよるが、およその目安は、5〜10程度である。また、当然ではあるが、この場合にも、式(4)と同様の式を用いることにより、L回前の研磨レートR(n−L)で生じるノイズの影響を低減させることができる。
【0041】
ところが、半導体ウェハCMP装置200aのような加工装置200では、消耗品である研磨パッド11やドレッサ16が、その使用時間とともに消耗され、また、その性能が劣化する。そのため、研磨パッド11やドレッサ16は、たびたび取り替えなければならない。研磨パッド11やドレッサ16を取り替えると、その性能が向上するので、研磨レートRが向上する。
【0042】
図5は、半導体ウェハ10を半導体ウェハCMP装置200aで研磨したときの研磨レート実績値の推移チャートの例を示した図である。図5に示した研磨レート実績値推移チャート50において、その横軸は、半導体ウェハ10の研磨順の番号を表し、縦軸は、研磨レートRの実績値を表す。また、研磨レート実績値推移チャート50の黒の四角のドットは、各研磨順の半導体ウェハ10の研磨で得られた研磨レートRの実績値を表す。
【0043】
なお、研磨レートRは、研磨対象の膜の材質や半導体ウェハ10に形成される集積回路パターンによっても大きく相違する。そこで、図5に示した研磨レート実績値推移チャート50では、その研磨レートRの実績値は、すべて同じ集積回路製品の半導体ウェハ10から得られた実績値であり、集積回路パターンによる相違の影響が出ないように配慮されている。
【0044】
また、図5において、ドレッサ交換点50dは、消耗部品であるドレッサ16の交換時点を表し、図5の例では、D〜Dの各時点で合計4回、ドレッサ16が新しいものに交換されたことが表わされている。また、研磨パッド交換点50pは、消耗部品である研磨パッド11の交換時点を表し、図5の例では、P1,1〜P4,2の各時点で合計9回、研磨パッド11が新しいものに交換されたことが表わされている。
【0045】
また、図5から分かるように、とくに、ドレッサ16や研磨パッド11が交換されたときなどには、研磨レートの実績値が大きく変動している。そのため、式(5)に従って、L回前(n−L)の研磨レートR(n−L)の実績値を、次回(n)の研磨レートR(n)の予測値として用いた場合には、その予測値から計算された研磨時間T(n)の誤差も大きくなり、その結果、研磨される膜厚にも大きな誤差が生じることになる。
【0046】
従って、このようにして研磨された半導体ウェハ10では、目標膜厚を達成できない半導体ウェハ10が大量に発生する事態となる。その場合、研磨超過の半導体ウェハ10については、廃棄せざるを得ず、また、研磨不足の半導体ウェハ10については、追加の研磨が必要となる。そして、その結果として、半導体ウェハ10の生産効率が大幅に低下することになる。
【0047】
以上のように、半導体ウェハ10の生産効率が低下する問題を考慮すれば、とくに、半導体ウェハCMP装置200aのような消耗部品が加工性能を定める加工装置200では、L回前(n−L)の研磨レートR(n−L)の実績値を用いて、次回(n)の研磨レートR(n)を予測することは、実際上困難ということになる。
【0048】
(5.本発明の実施形態における解決方法)
以上に説明したように、研磨レートの一般的な予測方法、すなわち、前回(n−1)またはL回前(n−L)の研磨における研磨レートR(n−1),R(n−L)を用いて、次回(n)の研磨レートR(n)を予測する方法では、生産効率が低下するという問題を解決することができなかった。そこで、本実施形態では、前回(n−1)の研磨で容易に取得することが可能な製造上の他のパラメータ(変数)を用いて、次回(n)の研磨レートR(n)を予測する方法を提示する。
【0049】
(5.1 研磨レート予測モデルの導入)
本実施形態の加工装置制御システム100では、生産効率が低下するという問題を解決するために、制御演算部130の装置性能予測部133が、次の式(6)で表される研磨レート予測モデルに基づき研磨レートを予測するという構成をとる。
【0050】
【数6】

【0051】
ここで、変数x(n−1)は、半導体ウェハCMP装置200aの前回(n−1)の状態を表す説明変数であり、説明変数が1つの場合、式(6)は,単回帰式となり、複数の場合、重回帰式となる。また、このモデルでは、変数x(n−1)として前回(n−1)の膜厚測定値を選ぶ必要はなく、前回(n−1)の研磨の直後に容易に取得可能な半導体ウェハCMP装置200aの状態を表す変数であれば、どのような変数であってもでもよい。
【0052】
すなわち、式(6)によれば、研磨レートなど加工装置200の装置性能を、装置性能そのものを表す物理量からではなく、その性能と相関度の高い「他の物理量」を用いて予測しようとするものである。ここでは、その「他の物理量」が説明変数に該当し、加工装置200による加工工程終了時に、直ちに容易に得られるものであれば、どのような物理量であってもよい。その「他の物理量」が直ちに得られれば、次回(n)の装置性能を直ちに予測することができる
【0053】
本実施形態では、制御演算部130は、研磨対象の半導体ウェハ10の研磨終了後、直ちにその変数の値を取得することができ、取得した値を加工履歴データ記憶部140に蓄積し、式(6)の計算を行うことができる。よって、次回(n)の研磨レートR(n)は、研磨終了後に直ちに得られるので、研磨レートR(n)の取得に時間が掛かるために半導体ウェハ10の生産効率が低下するという、一般的な予測方法における問題は解決される。
【0054】
なお、半導体ウェハCMP装置200aの場合、使用可能な説明変数(変数x)の候補としては、例えば、ドレッサ16や研磨パッド11などの消耗部品の交換時点からのそれらの累積使用時間、同様に交換時点からの累積被研磨半導体ウェハ数、研磨パッド11の各部の温度、テーブル回転モータ13のトルク、ヘッド14の各部の圧力などを挙げることができる。
【0055】
(5.2 最小2乗法による予測モデルの構築)
説明変数の候補の中から、いずれの変数を、あるいは、いずれの変数の組み合せを採用するかについては、加工履歴データ記憶部140に収集した、研磨レートRの実績値と説明変数候補xの実績値とを用い、最尤法または最小2乗法によって統計的に回帰式の係数aを決定し、係数aから求めた説明変数の予測精度への寄与によって決めることができる。寄与が同等の複数の説明変数がある場合は、説明変数の値の収集コストに基づき決めればよい。
【0056】
図5の例では、研磨レートR(n)の実績値は、消耗部品であるドレッサ16が交換されるドレッサ交換点50dのD、D、D、Dの各時点の前後で大きく変化し、ドレッサ16の交換後からの累積使用時間の経過とともに低下している。これは、ドレッサ16の交換後からの累積使用時間が式(6)の研磨レート予測モデルの説明変数としての寄与が高いことを意味している。
【0057】
図6は、ドレッサ累積使用時間を説明変数とした場合の研磨レートRの予測値推移チャートの例を示した図であり、(a)は、研磨レートRの予測値および実績値を比較して示した図、(b)は、その予測値誤差推移チャートを示した図である。ここで、予測誤差とは、実績値の予測値からの偏差を表するものとする。なお、図6(a)において、グレーの丸のドットは、研磨レートRの予測値を表し、白の四角のドットは、実績値を表す。
【0058】
図6(a)を参照すると、ドレッサ累積使用時間からも、かなりいい精度で研磨レートRを予測可能なことが分かる。しかしながら、図6(b)を参照すると、A区間52aではプラス側にオフセットした予測誤差が発生し、C区間52cではマイナス側にオフセットした予測誤差が発生していることが分かる。また、B区間52bでは、予測誤差の急峻な反転が観察される。
【0059】
図6(b)における、A区間52aおよびC区間52cにおける予測誤差のオフセットは、ドレッサ交換点50dのDで交換し、A区間52aで使用したドレッサ16のドレス性能と、ドレッサ交換点50dのDで交換し、C区間52cで使用したドレッサ16のドレス性能の相違により生じたものである。これは、ドレッサ累積使用時間からの研磨レートRの予測では、ドレッサ16のドレス性能の違いによる予測誤差のオフセットの発生を防止することができないことを意味している。
【0060】
また、B区間52bには、ドレッサ交換点50dは存在しないが、研磨パッド交換点50pにおけるP2,3の交換点で、予測誤差が突然にプラス側からマイナス側へ反転する現象が生じている。このような予測誤差の反転現象は、P2,3の交換点以外では生じていない。一般に、交換後の研磨パッド11の初期ドレス性能(研磨パッド11のエージング性能)は、ドレッサ16の累積使用時間に依存して変動する。図6の例では、研磨パッド交換点50pにおける交換点P2,3は、他の交換点に比べ、ドレッサ16の累積使用時間が長くなった例である。そのため、研磨パッド11を交換しても、十分な初期ドレス性能が得られず、予測誤差が反転したものである。
【0061】
以上のように、予め取得された消耗品であるドレッサ16の累積使用時間と研磨レートRとの相関関係に基づき、ドレッサ16のそのときの累積使用時間から研磨レートRを予測する方法では、予測誤差のオフセットや予測誤差の反転(突発シフト)が発生することを防止することはできない。
【0062】
(5.3 メタ予測モデルの構築)
(5.3.1 予測誤差のオフセットを防止するモデル)
本実施形態では、予測誤差のオフセットが発生するという問題を解決するために、ドレッサ16を交換するたびにテスト研磨を実施するものとした。そして、加工装置制御システム100(図1参照)における制御演算部130の装置性能予測モデルメタ予測部132は、ドレッサ16が交換されるたび、そのテスト研磨で得られる研磨レートの実績値(以下、単に、テスト研磨結果という)を取得し、研磨レート予測モデルにおける切片aを、次の式(7)に従って決定する。
【0063】
【数7】

【0064】
さらに、ドレッサ16の交換ごとに研磨レート予測モデルの係数aが変動する場合には、装置性能予測モデルメタ予測部132は、ドレッサ16が交換されるときのテスト研磨結果を用い、式(8)に従って係数aを予測する。
【0065】
【数8】

【0066】
以上、式(7)や式(8)においては、研磨レートRを予測する回帰式のモデルのパラメータである切片aや係数aが、他の回帰式の予測モデルで表されるという予測モデルの多重構成となっている。本明細書では、このような多重構成の上位側の予測モデルをメタ予測モデルという。
【0067】
以上、式(7)または式(8)によれば、研磨レートRを予測する回帰式のモデルにおける切片aや係数aは、ドレッサ16が交換されるたびに、そのとき実施されるテスト研磨結果に従って更新されることになる。これは、ドレッサ16の個別的なドレス性能の相違が補正されることを意味する。従って、研磨レートRの予測値における予測誤差のオフセットの発生が防止される。
【0068】
(5.3.2 予測誤差の反転(突発シフト)を防止するモデル)
次に、研磨レートRの予測値における予測誤差の反転(突発シフト)が発生する問題を解決する方法を考える。その解決方法の1つは、ドレッサ16交換時の場合と同様に、式(7)や式(8)を用いることである。すなわち、研磨パッド11の交換時にもテスト研磨を実施し、そのテスト研磨の結果を式(7)に適用して、研磨レート予測モデルの切片aを決定し、さらに、必要があれば、同じテスト研磨の結果を式(8)に適用して、係数aを予測すればよい。
【0069】
しかしながら、そうした場合、テスト研磨回数が増加することになる。テスト研磨にせよ、その研磨で得られる研磨レートの実績値を次の研磨で利用する場合には、前記したように、対象の半導体ウェハ10の膜厚を膜厚測定装置で測定する時間だけでなく、半導体ウェハ10を洗浄したり、搬送したりする時間が必要となり、その生産効率が低下する。そこで、本実施形態では、テスト研磨回数を増加させないで済む方法を採用する。
【0070】
すなわち、本実施形態では、消耗部品であるドレッサ16または研磨パッド11が交換されるたびに、装置性能予測モデルメタ予測部132が、式(9)のメタ予測モデルに基づき、研磨レート予測モデルを更新する。また、半導体ウェハ10の研磨が行われるたびに、装置性能予測部133がその予測モデルを用いて研磨レートを予測する。
【0071】
【数9】

【0072】
すなわち、装置性能予測モデルメタ予測部132は、ドレッサ16が交換される場合には、式(7)または式(8)に従って、研磨レート予測モデルを更新する。一方、研磨パッド11が単独に交換される場合には、装置性能予測モデルメタ予測部132は、メタ予測モデルの説明変数として研磨パッド交換時点のドレッサ累積使用時間を用いて、研磨レート予測モデルの切片aおよび係数aを予測し、更新する。
【0073】
以上のようなメタ予測モデルを用いることにより、研磨パッド交換時のドレッサ累積使用時間が短い場合、つまり、ドレッサ16のドレス性能が高い場合には、その交換された研磨パッド11が、高研磨レートの状態に初期化(エージング)され、一方、研磨パッド交換時のドレッサ累積使用時間が長い場合、つまり、ドレッサ16のドレス性能が低い場合には、研磨パッド11が低研磨レートの状態にしか初期化(エージング)されない、というような現象まで忠実に予測することが可能になった。
【0074】
(5.3.3 予測モデルの切片の学習)
さらに、研磨レート予測モデルの精度を向上させるために、式(10)に示すように、装置性能予測部133が、研磨が実施されるたびに、研磨レート予測モデルを学習する構成としてもよい。前記したように、膜厚測定には時間遅延が伴うために、常に前回の研磨レート実績値を得ることは難しい。
【0075】
そこで、ここでは、装置性能予測部133は、任意のL回前(n−L)の研磨レート実績値と予測値の差をフィードバックして、予め定められた学習ゲインλを乗じて、予測モデルの切片aを学習し、更新する構成としてもよい。この学習ゲインλは、研磨レート実績値のフィードバック制御ゲインに相当する。なお、学習モデルは、予測モデルの切片aだけの学習ではなく、予測モデルの係数aも学習し、更新する構成であってもよい。
【0076】
【数10】

なお、式(10)中の左向きの矢印(←)は、左辺で計算された値を右辺に代入することを意味する。
【0077】
(5.4 メタ予測モデルの効果)
図7は、式(9)のメタ予測モデルに基づいて研磨レートRを予測した予測値推移チャートの例を示した図であり、(a)は、研磨レートRの予測値および実績値を比較して示した図、(b)は、その予測値誤差の推移を示した図である。なお、図7(a)において、グレーの丸のドットは、研磨レートRの予測値を表し、白の四角のドットは、実績値を表す。
【0078】
式(9)のメタ予測モデルでは、消耗部品であるドレッサ16や研磨パッド11が交換されるたびに、回帰予測モデルの切片および係数が予測され、更新される。しかも、ドレッサ16が更新されたときには、テスト研磨が行われ、その研磨結果が式(9)のメタ予測モデルに代入され、研磨レート予測モデルが更新される。
【0079】
従って、式(9)のメタ予測モデルでは、図7(b)に示されている通り、図6(b)の場合にA区間52aやC区間52cに発生した予測誤差のオフセットは、発生していない。また、B区間52bでの予測誤差の反転(突発シフト)も発生していない。このように、メタ予測モデルにより、研磨レートRを予測する回帰モデルの切片や係数を予測するようにしたことにより、予測誤差のオフセットや予測誤差の反転(突発シフト)を防止することができ、予測の精度を向上させることができる。
【0080】
(5.5 メタ予測モデルに存在する課題)
以上に示した式(9)に基づくメタ予測モデルでは、研磨レートRの予測モデルの切片aと係数aの2つのパラメータを予測するために、2つのメタ予測モデルが用意される。従って、メタ予測モデルを利用するには、その2つのメタ予測モデルについて、それぞれ切片と係数の2つのパラメータが必要となり、合計4つのパラメータを事前に決定しておくことが必要となる。
【0081】
これらのメタ予測モデルのパラメータは、回帰モデルのパラメータであるため、統計的に定められるべきであるが、そのパラメータを定めるために大量のテスト研磨を行うことはできない。そうすれば、半導体ウェハ10の生産効率を低下させることになる。従って、これらのパラメータは、加工履歴データ記憶部140に蓄積された加工履歴データが、できるだけ少量のうちから、早急に決定される必要がある。
【0082】
これらのメタ予測モデルのパラメータは、最尤法や最小2乗法などを適用することによって、統計的に定めることができる。しかしながら、半導体ウェハCMP装置200aの場合、そのメタ予測モデルは、ドレッサ16の交換時と研磨パッド11の単独交換時とで異なる予測式で表されているため、それぞれの場合に応じて、そのパラメータを個別的に決定しなければならない。従って、加工履歴データ記憶部140に蓄積された少量の加工履歴データは、そのそれぞれの場合の条件に応じて、さらに、少量のデータに分割され、メタ予測モデルのパラメータは、その少量のデータを用いて統計的に決定される。その場合、その少量のデータを用いて統計的にパラメータを決定する場合に、そのパラメータの精度を如何にして確保するかが課題となる。
【0083】
(6.モデル作成シミュレータ部における処理)
そこで、この課題を解決するために、本実施形態では、少量の加工履歴データからメタ予測モデルのパラメータを決定するという方法を採らず、メタ予測モデルのパラメータの確率分布をシミュレーションで評価して、その平均値あるいは最頻値からパラメータの値を定めるという方法を採用する。
【0084】
このようなメタ予測モデルのパラメータの決定方法を実現するために、本実施形態における加工装置制御システム100(図1参照)には、モデル作成シミュレータ部110が設けられており、さらに、そのモデル作成シミュレータ部110の内部には、モデル作成試行部111、確率的パラメータ生成部115およびモデル精度収束判定部116が設けられている。
【0085】
そのモデル作成シミュレータ部110において、確率的パラメータ生成部115は、式(9)における4つのメタ予測モデルのパラメータの候補を確率的に生成するとともに、その生成したパラメータの候補をモデル作成試行部111へ送る。また、モデル作成試行部111は、そのメタ予測モデルのパラメータの候補に基づき、研磨レートRの予測値をシミュレーション評価し、その予測誤差を求める。モデル精度収束判定部116は、そのシミュレーション評価により求められた予測誤差の統計的な収束判定を行う。そして、その収束判定で収束と判定されるまで、以上の確率的パラメータ生成部115、モデル作成試行部111およびモデル精度収束判定部116における処理が繰り返される。
【0086】
また、さらに詳細には、モデル作成試行部111は、装置性能予測モデルメタ予測試行部112と装置性能予測試行部113とを含んで構成される。装置性能予測モデルメタ予測試行部112は、確率的パラメータ生成部115から受信した4つのメタ予測モデルのパラメータ候補を用いて、式(9)のメタ予測モデルの候補を構築する。そして、加工履歴データ記憶部140から所定の連続するウェハ研磨区間の消耗部品累積使用時間データ(本実施形態では、図4の加工履歴データ中の消耗部品ドレッサ使用時間および消耗部品研磨パッド使用時間)を取得し、そこから導かれる消耗部品交換に応じて、逐次、研磨レート予測モデルの候補を更新し、装置性能予測試行部113に送信する。
【0087】
装置性能予測試行部113は、同じく加工履歴データ記憶部140から所定の連続するウェハ研磨区間の消耗部品累積使用時間データを取得し、その取得した消耗部品累積使用時間データを、逐次、受信した研磨レート予測モデルの候補に代入して、半導体ウェハCMP装置200aの装置性能である研磨レートRを予測する。
【0088】
さらに、装置性能予測試行部113は、加工履歴データ記憶部140から所定の連続するウェハ研磨区間の研磨レート実績値(図4のデータテーブルの研磨レートRp)を取得し、研磨レート予測値と比較して偏差を計算し、その分散を予測誤差として、モデル精度収束判定部116に送信する。
【0089】
続いて、モデル精度収束判定部116は、一連のメタ予測モデルのパラメータ候補データに対する予測誤差データが所定の確率標本分布(例えば、正規分布)に収束しているか否かを判定し、収束区間を確定する。なお、これらの収束判定の詳細については、別途、図を参照して説明する。
【0090】
モデル作成シミュレータ部110は、メタ予測モデルの各パラメータ候補の収束区間のシミュレーションデータから、平均値または最頻値を計算し、その計算値をパラメータ値として確定させ、制御演算部130に送信する。
【0091】
(7.MCMC法の適用)
ところで、確率的パラメータ生成部115におけるメタ予測モデルのパラメータ候補の生成を、単純なモンテカルロシミュレーション法によって、ランダムに行った場合には、予測誤差の確率標本分布が収束するのに長時間を要する、あるいは、収束しないという問題が生じる。そこで、本実施形態では、モデル作成シミュレータ部110におけるメタ予測モデルのパラメータ候補の生成(標本サンプリング)、研磨レート予測モデルの候補の更新、予測誤差の確率標本分布の収束評価の一連の処理に、階層ベイスモデルに対するMCMC法を適用する。
【0092】
階層ベイスモデルに対するMCMC法をモデル作成シミュレータ部110における一連の処理に適用すれば、予測誤差の実績値から導かれる尤度とパラメータ事前確率分布との積からパラメータ事後確率分布を得ることができ、さらに、その事後確率分布に基づきメタ予測モデルのパラメータ候補を生成(標本サンプリングによる)することができるので、予測誤差の確率標本分布の収束が速くなるという効果が得られる。
【0093】
図8は、モデル作成シミュレータ部110におけるモデル作成シミュレーション処理の処理フローの例を示した図である。図8に示すように、モデル作成シミュレーション処理は、マルコフ連鎖によるパラメータ初期値設定処理(ステップS10)、モデル予測試行処理(ステップS11)、予測誤差の分散計算と事後分布の更新処理(ステップS12)、マルコフ連鎖収束判定処理(ステップS13)、マルコフ連鎖からの収束区間の標本値の切り出し処理(ステップS14)、収束区間の標本値の分布からのパラメータ確定処理(ステップS15)、制御演算部のモデル更新処理(ステップS16)を含んで構成される。
【0094】
また、モデル予測試行処理(ステップS11)は、モデル作成試行のための装置データ区間初期化処理(ステップS11a)、装置データ読み込み処理(ステップS11b)、装置性能予測モデルメタ予測試行処理(ステップS11c)、装置性能予測モデルからの装置性能予測試行処理(ステップS11d)、装置性能予測誤差計算処理(ステップS11e)、装置データ終了処理(ステップS11f)を含んで構成される。
【0095】
以下、図8を参照して、MCMC法およびMCMC法が適用されたモデル作成シミュレーション処理の詳細について説明する。まず、事前準備として、次の式(11)に示すように、研磨レートの実績値と予測値との偏差である研磨レート予測誤差εを、その平均値がゼロ、分散がσの正規分布Nに従う確率変数であるとする。なお、式中の「〜」は、左辺の確率変数(研磨レート予測誤差ε)が右辺の統計分布(正規分布N)に従うことを表す。
【0096】
【数11】

【0097】
さらに、メタ予測モデルの4個のパラメータと、式(11)の研磨レート予測誤差εが従う正規分布Nの分散パラメータとを、確率変数θとして、式(12)に示す階層ベイスモデルを設定する。
【0098】
【数12】

【0099】
式(12)に示されているように、研磨レートの実績値に基づく確率変数θの事後確率密度関数である関数π(左辺)は、確率変数θが与えられたときの研磨レート予測誤差データの尤度関数である関数fと、確率変数θの事前確率密度関数である関数π(右辺)との積で表される。
【0100】
確率変数θの事前確率密度関数のうち、メタ予測モデルの4個のパラメータの事前確率密度関数は、式(13)に示す正規分布Nで表されるものとする。
【0101】
【数13】

【0102】
事前知識がある場合は、これらの正規分布Nの平均値および分散値は、その知識に基づいて設定される。本実施形態では、事前知識があることを想定しないので、その正規分布Nとして、平均値がゼロ、分散値が10,000といった幅の広いものを設定する。ただし、事前知識がない場合、平均値や分散値などの統計値が結果に及ぼす感度は小さいので、それらの統計値を厳密にこれらの値と同じ値に設定する必要はない。
【0103】
また、確率変数θの事前確率密度関数のうち、式(11)の研磨レート予測誤差εが従う正規分布Nの分散σの事前確率密度関数は、次の式(14)に示されるように、逆ガンマ分布IGで表される。
【0104】
【数14】

【0105】
事前知識がある場合は、逆ガンマ分布IGの2個の母数nとSは、その知識に基づいて設定される。本実施形態では、事前知識があることを想定しないので、逆ガンマ分布IGとしては、母数nが0.002、Sが1の幅が広い分布を設定する。なお、事前知識がない場合、母数の結果に及ぼす感度は小さいので、2個の母数を厳密にこれらの値と同じ値に設定する必要はない。
【0106】
続いて、図8を参照しつつ、MCMC法によるモデル作成シミュレーション処理の処理フローについて説明する。まず、モデル作成シミュレータ部110は、確率変数θに含まれる、メタ予測モデルの4個のパラメータと、式(11)の研磨レート予測誤差εが従う正規分布Nの分散の初期値を設定する(パラメータ初期値設定処理:ステップS10)。これらの初期値の結果に対する感度は高くはないため、式(13)および式(14)の事前に設定した分布から、適宜、サンプリングして設定してもよい。
【0107】
次に、モデル作成シミュレータ部110は、マルコフ連鎖に従い、式(12)の事後分布からに従って、逐次、標本値計算を行うステップS11a〜ステップS11fの処理を繰り返し実行する(モデル予測試行処理:ステップS11)。
【0108】
モデル予測試行処理(ステップS11)において、装置性能予測モデルメタ予測試行部112は、確率的パラメータ生成部115から送信される確率変数θ(メタ予測モデルの4個のパラメータと研磨レート予測誤差の分散パラメータ)の現行値を受信し、受信したメタ予測モデルの4個のパラメータを用いて式(9)のメタ予測モデルを構築し、モデル作成試行のための装置データ区間を設定する(装置データ区間設定処理:ステップS11a)。
【0109】
次に、装置性能予測モデルメタ予測試行部112は、その設定した装置データ区間の消耗部品累積使用時間データを、加工履歴データ記憶部140から逐次に読み込む(装置データ読み込み処理:ステップS11b)。そして、その読み込んだデータから導かれる消耗部品の交換実績に応じて、研磨レート予測モデルのメタ予測を試行し、得られた研磨レート予測モデルを装置性能予測試行部113に送信する(装置性能予測モデルメタ予測試行処理:ステップS11c)。
【0110】
さらに、装置性能予測試行部113は、ステップS11aで設定された装置データ区間における連続するウェハ研磨区間の消耗部品累積使用時間データを、加工履歴データ記憶部140から逐次取得し、先に受信した研磨レート予測モデルに代入して、装置性能である研磨レートの予測を試行する(研磨レート予測試行処理:ステップS11d)。そして、装置性能予測試行部113は、加工履歴データ記憶部140から、先に設定した連続するウェハ研磨区間の研磨レート実績値を取得し、研磨レート予測値と比較して予測誤差を計算する(装置性能予測誤差計算処理:ステップS11e)。
【0111】
次に、装置性能予測試行部113は、ステップS11aで設定された装置データ区間について、モデル予測試行計算すべき装置データ区間が終了したか否かを判定する(ステップS11f)。そして、その判定の結果、モデル予測試行計算すべき装置データ区間が終了していない場合には(ステップS11fでNo)、前に戻って、装置データ読み込み処理(ステップS11b)以下の処理を繰り返し実行する。
【0112】
一方、モデル予測試行計算すべき装置データ区間が終了した場合には(ステップS11fでYes)、装置性能予測試行部113は、ここまでの処理で得られた予測誤差の系列の分散を計算し、その予測誤差分散と、確率変数θの現行値と、必要があれば消耗部品累積使用時間データとを式(12)に入力し、確率変数θの事後分布を更新する(予測誤差分散計算および事後分布更新処理:ステップS12)。
【0113】
次に、モデル精度収束判定部116は、確率変数θの標本値に含まれる、研磨レート予測誤差の分散σの事後分布からの標本値の連鎖集合が逆ガンマ分布IGに収束し、かつ、収束判定後から所定のマルコフ連鎖標本数が計算されたか否かを判定する(マルコフ連鎖収束条件判定処理:ステップS13)。
【0114】
そして、その収束条件が満たされていない場合には(ステップS13aでNo)、確率的パラメータ生成部115は、以降、このステップを通過するたびに、確率変数θに含まれるメタ予測モデルのパラメータおよび研磨レート予測誤差の分散パラメータのうちの1つを、マルコフ連鎖に従い順に選択し、前回、パラメータが更新された式(12)の事後分布から、その標本値を新たに発生させ、更新されたパラメータの値と、残りの前回と同じパラメータの値と、をモデル作成試行部111に送信する(ステップS17)。
【0115】
ステップS17に続いて、その処理は、確率的パラメータ生成部115からモデル作成試行部111の処理に移行し、再び、ステップS11a以下の処理が繰り返して実行される。
【0116】
一方、ステップS13での収束条件が満たされていた場合には(ステップS13aでYes)、モデル精度収束判定部116は、それまでの繰り返しの計算処理を終了して、収束区間を確定させ、確率変数θの標本系列を切り出す(収束区間標本系列切り出し処理:ステップS14)。
【0117】
図9は、MCMC法(図8のステップS13までの繰り返し処理)によるパラメータ標本系列が収束する様子の例を示した図であり、(a)は、初回から収束するまでに加え、所定回数の収束区間を含んだ場合について、その収束する様子を示した図、(b)は、所定回数の収束区間における収束した様子を示した図である。
【0118】
図9(a)において、左側チャート55aは、分散パラメータσの逆数の標本系列が収束する様子を示したもの、右側チャート55bは、メタ予測モデルのパラメータの1つであるパラメータβの標本系列が収束する様子を示したものである。ここで、収束が確定したと判断される、例えば、繰り返し回数2,000回以降5,000回までを収束区間56という。
【0119】
図9(b)において、左側チャート57aは、図9(a)の左側チャート55aから収束区間56の部分を切り出したパラメータ標本系列であり、また、右側チャート57bは、その度数分布である。この収束区間56のパラメータ標本系列から、その平均値58が計算される。また、右側チャート57bから分かるように、収束区間56におけるパラメータ標本系列は、正規分布を形成する。
【0120】
再度、図8の処理フローを参照すると、モデル作成シミュレータ部110は、確率変数θに含まれる各パラメータの収束区間56の標本系列に基づき、平均値を計算してパラメータ値を確定させる(パラメータ確定処理:ステップS15)。その後、モデル作成シミュレータ部110は、メタ予測モデルの4個のパラメータのそれぞれ平均値(例えば、図9(b)の符号58)を、制御演算部130の装置性能予測モデルメタ予測部132に送信して、制御演算部130における予測モデルを更新する(予測モデル更新処理:ステップS16)。
【0121】
以上、図8を用いて、モデル作成シミュレータ部110が実行するMCMC法に基づくモデル作成シミュレーション処理の内容について説明したが、実際の計算の詳細は、例えば、Metropolis Hastingsアルゴリズム、Gibbs Samplerアルゴリズム、Slice Samplerアルゴリズムなどに基づいて実行される(非特許文献1など参照)。
【0122】
なお、以上に説明したモデル作成シミュレーション処理は、図2に示した運用センタ300に設置されたモデル管理用計算機31のプログラムとして、その記憶装置33に格納され、そのプログラムは、演算処理装置32によって実行される。また、そのプログラムの実行に際しては、マルコフ連鎖標本値記憶部121、装置性能予測モデル記憶部122、加工履歴データ記憶部140のデータが、適宜、読み書きされる。
【0123】
(8.制御演算部における処理)
図10は、加工装置制御システム100の制御演算部130における装置性能予測および制御量計算処理の処理フローの例を示した図である。図10に示すように、制御演算部130の装置性能予測モデルメタ予測部132は、まず、モデル作成シミュレータ部110から送信されたメタ予測モデルの4個のパラメータ値を受信し、受信したパラメータ値によりメタ予測モデルを更新する(ステップS20)、すなわち、式(9)の研磨レート予測モデルにおける切片aおよび係数aを予測するメタ予測モデルを更新する。
【0124】
次に、装置性能予測モデルメタ予測部132は、研磨対象の半導体ウェハ10の到着に同期して、加工履歴データ記憶部140から消耗部品(ドレッサ16および研磨パッド11)使用時間の前回値を取得し(ステップS21)、消耗部品(ドレッサ16および研磨パッド11)の交換を検知する(ステップS22)。なお、消耗部品の交換を検知するには、加工履歴データの消耗部品(ドレッサ16および研磨パッド11)使用時間の前回値から前々回値を差し引き、その符号が反転しているかどうかを検知すればよい。
【0125】
そして、その消耗部品の検知により、ドレッサ16の交換を検知した場合には(ステップS23でYes)、装置性能予測モデルメタ予測部132は、テスト研磨結果を取得し、そのテスト研磨結果を用いて、すなわち、テスト研磨結果を式(9)のドレッサ交換時のメタ予測モデルに代入することによって、研磨レート予測モデルを更新する(ステップS23a)。
【0126】
また、ドレッサ16の交換を検知せず(ステップS23でNo)、研磨パッド11の交換を検知した場合には(ステップS24でYes)、装置性能予測モデルメタ予測部132は、ドレッサ使用時間を用いて、すなわち、ドレッサ使用時間を式(9)の研磨パッド交換時のメタ予測モデルに代入することによって、研磨レート予測モデルを更新する(ステップS24a)。
【0127】
一方、ドレッサ16の交換も研磨パッド11の交換も検知しなかった場合には(ステップS24でNo)、装置性能予測モデルメタ予測部132は、加工履歴データ記憶部140から取得した研磨レートの実績値を取得し、式(10)に基づき、研磨レート予測モデルの切片aを学習する(ステップS25)。なお、このとき、研磨レート予測モデルの係数aを併せて学習するようにしてもよい。
【0128】
装置性能予測モデルメタ予測部132は、ここまでの処理によって更新または学習した研磨レート予測モデルを装置性能予測部133へ送付する。そして、その送付を受けた装置性能予測部133は、ドレッサ使用時間の前回値を用いて、すなわち、式(9)の研磨レート予測モデルにドレッサ使用時間の前回値を代入することにより、研磨レートを予測し(ステップS26)、予測した研磨レートを制御量計算部134および異常予測部135へ送付する。
【0129】
続いて、異常予測部135は、研磨レート予測値を所定のしきい値と照合することによって、研磨レート異常の有無を判定し、研磨レート異常であった場合には(ステップS27でYes)、加工装置200(半導体ウェハCMP装置200a)にアラームを送信する(ステップS27a)。
【0130】
一方、研磨レート異常でなかった場合には(ステップS27でNo)、制御量計算部134は、式(1)に基づき研磨時間を計算し、その計算によって得られた研磨時間を加工装置200(半導体ウェハCMP装置200a)へ送信し(ステップS28)、その送信した研磨時間での研磨を指示する。
【0131】
制御演算部130は、加工装置200(半導体ウェハCMP装置200a)からの通知に基づき、次の研磨対象の半導体ウェハ10の到着を検知した場合には(ステップS29でYes)、処理をステップS21へ戻し、ステップS21以下の処理を繰り返して実行する。なお、加工履歴データ記憶部140に、所定の数の実績データが新規に蓄積された場合には、一旦、ステップS21以下の繰り返し処理を中断して、モデル作成シミュレータ部110が、メタ予測モデルの4個のパラメータ値を更新するようにしてもよい。
【0132】
以上、図10を用いて説明した制御演算部130における装置性能予測および制御量計算処理は、サイト400(図2参照)に設置された制御用計算機41のプログラムとして、その記憶装置43に格納され、そのプログラムは、演算処理装置42によって実行される。
【0133】
この場合、制御用計算機41は、通信ネットワーク500を介してモデル管理用計算機31から取得したメタ予測モデルのパラメータ値に基づき予測した研磨レートの計算結果を、加工装置200(半導体ウェハCMP装置200a)へ送信するとともに、その加工装置200による研磨で得られた加工履歴データ(消耗部品使用時間、研磨前後の膜厚など)を取得して、自身の記憶装置43に蓄積して利用する。また、制御用計算機41は、その蓄積した加工履歴データのコピーをモデル管理用計算機31へ送信する。従って、制御用計算機41およびモデル管理用計算機31は、実質的にミラー状態の加工履歴データ記憶部140を有することになる。
【0134】
図11は、制御用計算機41の表示装置に表示するアラーム表示画面の例を示した図である。アラームは、加工装置200(半導体ウェハCMP装置200a)側で発報され、表示されればよいが、制御用計算機41の表示装置に図11に示すようなアラーム表示画面を表示すると、保守員にとって好都合である。また、アラームが発生していない場合であっても、消耗部品交換など保守員が保守を行うタイミングで同様の表示画面を表示すると、保守員にとって好都合である。
【0135】
図11に示すように、アラーム表示画面80は、発報内容表示欄81を備え、その発報内容表示欄81には、例えば、「研磨レート予測値 下限値超過」といった発報された異常の内容が表示される。また、アラーム表示画面80は、現在の消耗部品のステータス表示欄82を備え、そのステータス表示欄82には、ドレッサの交換日時およびその累積使用時間、研磨パッド交換日時およびその累積使用時間などが表示される。
【0136】
また、アラーム表示画面80は、研磨レート予測結果表示欄83を備え、その研磨レート予測結果表示欄83には、研磨パッド単独交換時の研磨レート予測値やドレッサ・研磨パッド同時交換時の研磨レート予測値などが表示されるほか、その研磨レート予測シミュレーションの実行を指示する予測ボタン83a,83bが表示される。さらに、アラーム表示画面80には、研磨レート予測値・実績値推移チャート84が表示され、その中には、研磨レートの予測値84a、その下限のしきい値である下限値84bなどが併せて表示される。
【0137】
なお、このようなアラーム表示画面80は、図10に示した処理フローのステップS27aが実行された時点で、例えば、研磨パッド単独交換時の研磨レート予測値が下限値を超えた場合などに表示される。このとき、ドレッサ・研磨パッド同時交換時の研磨レート予測値の表示欄は空欄となっている。ここで、サイト400の保守員が、ドレッサ・研磨パッド同時交換時側の「予測」ボタンを押下すれば、研磨レート予測シミュレーションが実行され、その予測結果がドレッサ・研磨パッド同時交換時の予測研磨レートとして表示される。
【0138】
これによって、保守員は、研磨パッド単独交換を行った上で追加のテスト研磨を行うなどの措置をとるか、あるいは、ドレッサ・研磨パッド同時交換を行うか、といった保守作業の適切な選択を行うことができるようになる。
【0139】
(9.本実施形態の効果)
本実施形態では、加工装置200の装置性能(例えば、研磨レート)の予測を、その装置性能を直接表す物理量の計測値ではなく、その装置性能に相関のある、より容易に取得可能な装置状態を表す物理量(例えば、ドレッサ16や研磨パッド11の累積使用時間など)を用いて行うことができるようにした。その結果、例えば、膜厚検査装置を用いて半導体ウェハ10の膜厚を計測しなくても、研磨レートの予測値を得ることができるので、その予測値を用いて、加工装置200(半導体ウェハCMP装置200a)の性能変動を補償する運転条件(研磨時間)を制御することができる。そのため、研磨レートを予測するための膜厚計測のための遅延時間がなくなるので、半導体ウェハ10などの生産効率を向上させることができる。
【0140】
また、本実施形態では、複数の消耗部品(例えば、ドレッサ16および研磨パッド11)の中の一部の消耗部品(研磨パッド11)を交換する際に、その交換によって装置性能(研磨レート)の予測モデルがどれだけ変動するかを、他の消耗部品(ドレッサ16)の状態(累積使用時間)を用いて予測している。従って、保守の際には、すべての消耗部品(ドレッサ16および研磨パッド11)を交換せず、その一部を交換するに留めた場合であっても、継続して装置性能(研磨レート)を精度よく予測できるので、消耗部品ごとの寿命に合わせて、消耗部品を延命させることができる。
【0141】
また、本実施形態では、消耗部品交換とそれに伴う装置性能変動の実績データの蓄積が少ない段階でも、装置性能(研磨レート)の予測モデルのパラメータ(切片および係数)を確率変数とみなして、予測モデルパラメータ候補の標本値生成と少量データへの適用による装置性能予測あるいは装置制御のシミュレーションを繰り返すことにより、予測モデルパラメータの分布を確定する。そして、このようにして確定した分布の平均値あるいは最頻値を最適な予測モデルパラメータとすることで、実績データの蓄積が少ない段階でも、精度のよい予測モデルを作成することができる。
【0142】
さらに、本実施形態では、予測モデルパラメータ候補の標本値生成、装置性能(研磨レート)予測モデルの候補の更新、予測誤差の確率標本分布の収束評価、の一連のステップに、階層ベイスモデルに対するMCMC法を適用している。このMCMC法の適用により、予測誤差の実績値から導かれる尤度とパラメータ事前確率分布との積からパラメータ事後確率分布を得て、その事後確率分布を用いて予測モデルパラメータ候補の標本生成を行うことで、効率よく予測モデルパラメータの分布を確定させることができる。
【0143】
<第2の実施形態>
図12は、本発明の第2の実施形態に係る加工装置制御システムの機能的なブロックの構成の例を示した図である。図12に示すように、加工装置制御システム100Aは、モデル作成シミュレータ部110A、制御演算部130、加工履歴データ記憶部140などのブロックを含んで構成される。以下、図1に示した第1の実施形態の加工装置制御システム100と同じ構成要素については、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0144】
本実施形態では、モデル作成シミュレータ部110Aが制御シミュレータ214および制御性能収束判定部224を備える点で、第1の実施形態におけるモデル作成シミュレータ部110と相違し、装置性能(研磨レート)予測モデルの評価・作成だけでなく、装置制御(研磨量制御)モデルの評価・作成が可能な構成となっている。
【0145】
図13は、モデル作成シミュレータ部110Aにおけるモデル作成シミュレーション処理の処理フローの例を示した図である。図13に示す処理フローにおいて、第1の実施形態におけるモデル作成シミュレーション処理の処理フロー(図8参照)と相違する点は、モデル予測作成処理(ステップS11A)が、装置性能予測値による制御シミュレーション処理(ステップS11g)および制御誤差計算処理(ステップS11h)を含んでいることである。他の処理は、第1の実施形態の場合と同じであり、図8と同じステップ番号が付されており、以下、その説明を省略する。
【0146】
本実施形態では、MCMC法における確率変数θとして、すでに説明したメタ予測モデルの4個のパラメータと式(11)の研磨レート予測誤差が従う正規分布Nの分散パラメータに、式(10)の学習ゲイン(フィードバック制御ゲイン)λを加えて、式(15)に示す階層ベイスモデルを設定する(事前準備のステップにつき図13に図示せず)。
【0147】
【数15】

【0148】
確率変数θに加えた学習ゲインλの事前確率密度関数は、式(16)に示す一様分布Uであるとする。一様分布Uは、上下限が整数値の区間幅(=99−1+1=99)の逆数の確率の整数値をとり、学習ゲイン(フィードバック制御ゲイン)λは、その0.01倍の値(0.01〜0.99)であるとする。
【0149】
【数16】

【0150】
モデル作成シミュレータ部110Aは、第1の実施形態の場合と同様に、ステップS10およびステップS11aを実行した後、マルコフ連鎖に従い、逐次、式(15)の事後分布からの標本値計算を行うために、ステップS11b〜ステップS11fのループ処理を繰り返す。
【0151】
ただし、制御シミュレータ214は、装置性能予測試行処理(ステップS11d)による研磨レートの予測の試行に引き続いて、装置性能(研磨レート)予測値による制御シミュレーションを実施する(ステップS11g)。具体的には、式(10)の研磨レート予測モデル切片aの研磨レート実績値に基づく遅延学習(フィードバック制御)を行う。
【0152】
さらに、制御シミュレータ214は、次の式(17)に示すように、研磨量要求値を研磨レート予測値で割り算し、研磨時間を予測する。そして、この研磨時間予測値に研磨レート実績値を掛けることで、研磨量シミュレーション値を得る。そして、この研磨量シミュレーション値を、制御性能収束判定部224に送信する。
【0153】
【数17】

【0154】
制御性能収束判定部224は、加工履歴データ記憶部140から、ステップS11aで設定された連続するウェハ研磨区間の研磨量実績値を取得し、研磨量シミュレーション値と比較して制御誤差を計算する(ステップS11h)。続いて、その区間の装置データに基づく、逐次の制御シミュレーション計算が終了したか否かを判定する(ステップS11f)。
【0155】
制御性能収束判定部224は、その区間の装置データに基づく、逐次の制御シミュレーション計算が終了した場合には(ステップS11fでYes)、得られた制御誤差系列の分散を計算し、その制御誤差系列の分散と、学習ゲインλを含む確率変数θの現行値と、必要があれば消耗部品累積使用時間データと、を式(15)に代入し、確率変数θの事後分布を更新する(ステップS12)。
【0156】
次に、制御性能収束判定部224は、確率変数θの標本値に含まれる、制御誤差の分散の事後分布からの標本値の連鎖集合が正規分布に収束し、かつ、収束判定後から所定のマルコフ連鎖標本数が計算されたか否かを判定する(ステップS13)。そして、その収束条件が満たされていない場合には(ステップS13aでNo)、確率的パラメータ生成部115は、以降、このステップを通過するたびに、確率変数θに含まれるメタ予測モデルのパラメータ、研磨レート予測誤差の分散パラメータおよび学習ゲイン(フィードバック制御ゲイン)λのうちの1つをマルコフ連鎖に従い順に選択し、前回、パラメータが更新された式(12)の事後分布から、その標本値を新たに発生させ、更新されたパラメータの値と、残りの前回と同じパラメータの値と、をモデル作成試行部111Aに送信する(ステップS17)。
【0157】
一方、ステップS13での収束条件が満たされていた場合には(ステップS13aでYes)、制御性能収束判定部224は、それまでの繰り返しの計算処理を終了して、収束区間を確定させ、確率変数θの標本系列を切り出す(ステップS14)。
【0158】
図14は、MCMC法(図13のステップS13までの繰り返し処理)による学習ゲインλの標本系列が収束する様子を示した図であり、(a)は、初回から収束するまでに加え、所定回数の収束区間を含んだ場合について、その収束する様子を示した図、(b)は、所定回数の収束区間における収束する様子を示した図である。
【0159】
図14(a)において、左側チャート70aは、学習ゲインλの標本系列が収束する様子を示したもの、右側チャート70bは、その度数分布である。図14(a)に示すように、例えば、繰り返し回数20000回以降を収束区間56とすれば、学習ゲインλの標本系列は、逆ベータ分布などの指数族の分布に収束している。また、収束区間56より前の区間では、研磨レート予測モデルのパラメータが精度のよい値に収束していないため、学習ゲインの値を大きくする試行が行われている。一方、収束区間56では、精度のよいモデルができたため、小さな学習ゲインの値に収束していることが分かる。
【0160】
また、図14(b)において、左側チャート71aは、図14(a)の左側チャート70aから収束区間56の部分を切り出した学習ゲインλの標本系列であり、また、右側チャート71bは、その度数分布である。この収束区間56のパラメータ標本系列から、最頻値72が計算され、学習ゲイン(フィードバック制御ゲイン)λの最適値が確定されることになる。
【0161】
図15は、研磨量制御シミュレーション結果を制御に適用する場合の制御量の推移チャートの例を示した図である。図15において、グレーの丸のドットは、制御量(研磨量)のシミュレーション値を表し、白の四角のドットは、実績値を表す。この図からは、以上に説明した研磨レート予測モデルのパラメータおよび学習ゲイン(フィードバック制御ゲイン)をMCMC法によって確定させるという研磨量制御シミュレーションの効果として、シミュレーション適用前の実績値に対して、シミュレーション値では、研磨量のばらつきが大幅に低減されていることが分かる。
【0162】
以上、第2の実施形態によれば、学習ゲイン(フィードバック制御ゲイン)λを確率変数θに含めることで、MCMC法によって、研磨レート予測モデルを予測するメタ予測モデルの4個のパラメータと同時に、学習ゲイン(フィードバック制御ゲイン)λについても制御誤差を低減することが可能な値を求めることができる。
【0163】
<第3の実施形態>
本実施形態では、1台の加工装置200(例えば、半導体ウェハCMP装置200aなどの研磨装置)のデータだけでなく、複数台の加工装置200のデータを混合して、すなわち、加工装置200の機差を含んだ形態で、統一予測モデルの作成が可能な加工装置制御システム100の例について説明する。なお、本実施形態は、第1の実施形態あるいは第2の実施形態が拡張された形態で実施される。
【0164】
複数台の加工装置200のデータを混合する場合には、前に説明した式(9)の代わりに、式(18)を使用する。ここでは、すでに説明した式(9)と、同一の作用を有する部分については、説明を省略する。次の式(18)に示すように、研磨レート予測モデルの切片および係数を予測する、2つのメタ予測モデルに、それぞれ装置毎のオフセットを追加する。
【0165】
【数18】

【0166】
さらに、前に説明した式(12)あるいは式(15)と同様に、次の式(19)では、確率変数θに、前記の2つの加工装置200ごとのオフセットを装置台数分だけ追加し、その事前確率密度関数は、式(20)に示す正規分布Nに設定する。事前知識がある場合は、正規分布Nの平均パラメータと分散パラメータを、その知識に基づいて設定する。本実施形態では、事前知識があることを想定しないので、その正規分布Nとして、平均値がゼロ、分散値が10,000といった幅の広いものを設定する。ただし、事前知識がない場合、平均値や分散値などの統計値が結果に及ぼす感度は小さいので、それらの統計値を厳密にこれらの値と同じ値に設定する必要はない。
【0167】
【数19】

【0168】
【数20】

【0169】
モデル作成シミュレータ部110,110A(図1、図12参照)は、複数台の加工装置200のデータが混合したデータセットに対して、MCMC法を適用し、式(20)の事前分布に基づき、式(19)の事後分布からの標本値を発生させ、装置台数分の加工装置200ごとのオフセットを含めた確率変数θの平均値あるいは最頻値を得る。制御演算部130は、この値を式(18)のメタ予測モデルに代入して、加工装置200ごとの研磨レートの予測に基づき、研磨時間を計算し、研磨量の制御を行う。
【0170】
以上、本実施形態によれば、研磨レート予測モデルを予測するメタ予測モデルに、加工装置200ごとのオフセットパラメータを導入することで、複数台の加工装置200のデータが混合したデータセットから、メタ予測モデルを作成することができる。従って、加工装置200の1台あたりの実績データ数が少ない場合にも、他の加工装置200のデータを活用することで、研磨レートRの予測を行うことが可能になる。
【0171】
(実施形態の変形例:複数製品混流)
また、複数台の加工装置200の代わりに、同様にして研磨対象の複数種類の半導体ウェハ10に対してオフセットを設定すれば、複数種類の半導体ウェハ10を混流して研磨を行った際のデータセットから、メタ予測モデルを作成することができ、研磨対象の半導体ウェハ10の1種類あたりの実績データ数が少ない場合にも、他の種類の半導体ウェハ10のデータを活用することで、研磨レートRの予測を行うことができるようになる。さらには、複数台の加工装置200のデータセットの混合と、混流製品のデータセットの混合を、同時に処理することが可能となる。
【0172】
<一般化>
以上に説明した実施形態では、式(9)の研磨レートRを予測する説明変数として、前回のドレッサ使用時間x(n−1)を採用し、予測モデルの切片aと係数aを予測するメタ予測モデルの説明変数として、ドレッサ交換時にはテスト研磨結果を採用し、パッド単独交換時には交換直前時点Pi、jの直前のドレッサ使用時間x(Pi、j−1)を採用した。ただし、これに限定される訳ではなく、適切な説明変数は、加工装置200の構成や加工(研磨)プロセスの手順(研磨プロセス条件)に依存して変わる。
【0173】
例えば、消耗部品としては、ドレッサ16や研磨パッド11の他に、半導体ウェハ10を保持するヘッド14のメンブレン(吸着ゴム膜)や、半導体ウェハ10の外周に設置して同時研磨することによって半導体ウェハ10の外周部の過研磨、端だれ、剥離などを防ぐリテーナリングなどが候補になる。
【0174】
また、消耗部品使用時間の他に、消耗部品の消耗進捗によって変化する物理量、例えば、研磨パッド11の温度、半導体ウェハ10の温度、ドレッサ16の温度、テーブル駆動トルク、ヘッド駆動トルク、ドレッサ駆動トルク、あるいは、これら物理量の2乗の消耗部品交換後からの累積値、などを説明変数に使用してもよい。また、消耗部品の交換に限らず、加工装置200の状態を変更するメンテナンスで扱う全ての物理量について、本発明の装置性能予測方法を適用することができる。
【0175】
説明変数の候補の中から、どの変数を、あるいは、どの変数の組合せを説明変数として採用するかは、例えば、加工履歴データ記憶部140に蓄積された研磨レートRの実績値と説明変数候補xの実績値から、最尤法あるいは最小2乗法によって統計的に回帰式の係数aを決定し、その係数aから求められた説明変数の予測精度への寄与度を評価することによって決めることができる。また、寄与度が同等な複数の説明変数がある場合は、説明変数の値の収集コストから決めればよい。
【0176】
さらに、以上に説明した実施形態では、半導体ウェハCMP装置200aを制御対象の加工装置200として説明したが、加工装置200が半導体ウェハCMP装置200aに限定されるものではない。制御対象の加工装置200は、他の製品あるいは材料を研磨あるいは研削するものであれば、その装置性能としての研磨レートの予測が課題となり、以上に説明した実施形態と同様にして、その制御性能を向上させることができる。また、研磨装置に限らず、複数の消耗部品の劣化が装置性能に影響を及ぼす加工装置であれば、本発明の適用によって装置性能の変動を精度よく予測して、その制御性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0177】
10 半導体ウェハ
11 研磨パッド
12 テーブル
13 テーブル回転モータ
14 ヘッド
15 ヘッド回転モータ
16 ドレッサ
17 ドレッサ回転モータ
18 ドレッサ揺動モータ
19 スラリー
20 スラリー供給部
31 モデル管理用計算機
32 演算処理装置
33 記憶装置
41 制御用計算機
42 演算処理装置
43 記憶装置
100,100A 加工装置制御システム
110,110A モデル作成シミュレータ部
111,111A モデル作成試行部
112 装置性能予測モデルメタ予測試行部
113 装置性能予測試行部
115 確率的パラメータ生成部
116 モデル精度収束判定部
121 マルコフ連鎖標本値記憶部
122 装置性能予測モデル記憶部
130 制御演算部
132 装置性能予測モデルメタ予測部
133 装置性能予測部
134 制御量計算部
135 異常予測部
140 加工履歴データ記憶部
200 加工装置
200a 半導体ウェハCMP装置
214 制御シミュレータ
224 制御性能収束判定部
300 運用センタ
400 サイト
500 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消耗部品の状態によって加工性能が変動する加工装置の加工性能を予測して、その加工装置を制御する加工装置制御システムであって、
前記加工装置による加工時に前記加工装置から取得した加工履歴データを蓄積した加工履歴データ記憶部と、
前記消耗部品の状態を含む前記加工装置の状態を表す物理量から前記加工性能を予測する予測モデルのパラメータを予測するメタ予測モデルのパラメータを、前記加工履歴データ記憶部に蓄積されている加工履歴データと予め定めた所定の統計分布に従う乱数とを用いたシミュレーションとによって定めるモデル作成シミュレータ部と、
前記モデル作成シミュレータ部によって定められたパラメータを有するメタ予測モデルによって定められた前記加工性能を予測する予測モデルと、前記消耗部品の状態を表す物理量の現行値と、に基づき、前記加工装置に対する制御量を演算する制御演算部と、
を備えたこと
を特徴とする加工装置制御システム。
【請求項2】
前記加工性能を予測する予測モデルは、前記消耗部品の状態を表す物理量を説明変数とする回帰モデルであること
を特徴とする請求項1に記載の加工装置制御システム。
【請求項3】
前記加工性能を予測する予測モデルのパラメータを予測するメタ予測モデルは、前記消耗部品交換時における前記消耗部品の状態を表す物理量を説明変数とする回帰モデルであること
を特徴とする請求項1に記載の加工装置制御システム。
【請求項4】
前記加工性能を予測する予測モデルのパラメータを予測するメタ予測モデルは、学習ゲインを予測するモデルを含むこと
を特徴とする請求項1に記載の加工装置制御システム。
【請求項5】
前記消耗部品の状態を表す物理量は、その消耗部品の交換時からの累積使用時間であること
を特徴とする請求項1に記載の加工装置制御システム。
【請求項6】
前記モデル作成シミュレータ部は、
前記シミュレーションを実行するとき、前記統計分布に従う乱数を、マルコフ連鎖モンテカルロ法により発生させること
を特徴とする請求項1に記載の加工装置制御システム。
【請求項7】
前記制御演算部は、
前記加工装置に対する制御量の演算により、予め定められたしきい値の範囲外の制御量が演算されたときには、制御量の異常と判断して、前記加工装置にアラームを通知すること
を特徴とする請求項1に記載の加工装置制御システム。
【請求項8】
消耗部品の状態によって加工性能が変動する加工装置の加工性能を予測して、その加工装置を、計算機により制御する加工装置制御方法であって、
前記計算機は、
前記加工装置による加工時に前記加工装置から取得した加工履歴データを蓄積した加工履歴データ記憶部を備え、
前記消耗部品の状態を含む前記加工装置の状態を表す物理量から前記加工性能を予測する予測モデルのパラメータを予測するメタ予測モデルのパラメータを、前記加工履歴データ記憶部に蓄積されている加工履歴データと予め定めた所定の統計分布に従う乱数とを用いたシミュレーションとによって定めるモデル作成シミュレーションステップと、
前記モデル作成シミュレーションステップによって定められたパラメータを有するメタ予測モデルによって定められた前記加工性能を予測する予測モデルと、前記消耗部品の状態を表す物理量の現行値と、に基づき、前記加工装置に対する制御量を演算する制御量演算ステップと、
を実行すること
を特徴とする加工装置制御方法。
【請求項9】
前記加工性能を予測する予測モデルは、前記消耗部品の状態を表す物理量を説明変数とする回帰モデルであること
を特徴とする請求項8に記載の加工装置制御方法。
【請求項10】
前記加工性能を予測する予測モデルのパラメータを予測するメタ予測モデルは、前記消耗部品交換時における前記消耗部品の状態を表す物理量を説明変数とする回帰モデルであること
を特徴とする請求項8に記載の加工装置制御方法。
【請求項11】
前記加工性能を予測する予測モデルのパラメータを予測するメタ予測モデルは、学習ゲインを予測するモデルを含むこと
を特徴とする請求項8に記載の加工装置制御方法。
【請求項12】
前記消耗部品の状態を表す物理量は、その消耗部品の交換時からの累積使用時間であること
を特徴とする請求項8に記載の加工装置制御方法。
【請求項13】
前記計算機は、
前記モデル作成シミュレーションステップを実行するとき、前記統計分布に従う乱数を、マルコフ連鎖モンテカルロ法により発生させること
を特徴とする請求項8に記載の加工装置制御方法。
【請求項14】
前記計算機は、
前記加工装置に対する制御量の演算により、予め定められたしきい値の範囲外の制御量が演算されたときには、制御量の異常と判断して、前記加工装置にアラームを通知すること
を特徴とする請求項8に記載の加工装置制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−74574(P2012−74574A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218885(P2010−218885)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】