説明

加湿装置および加湿方法

【課題】 吸着材で捕捉した水分により室内を加湿する加湿装置であって、水分と伴に捕捉した臭気成分の室内への漏出を低減できる加湿装置および加湿方法を提供する。
【解決手段】 加湿装置は、屋外(6)の空気を供給する給気路(1)と、室内(7)の空気を排出する排気路(2)と、給気路(1)及び排気路(2)に吸着材(4)の一部をそれぞれ位置させる吸着材保持機構(3)と、給気路(1)に配置された加熱手段(51)とを備えている。吸着材(4)は、温度(T1)以上に加熱することにより水分を脱着し、温度(T1)よりも高い温度(T2)以上に加熱することにより臭気成分を脱着する吸着材である。そして、加湿操作では、排気路(2)において水分を吸着させ、給気路(1)において実質的に臭気の伴わない水分を脱着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿装置および加湿方法に関するものであり、詳しくは、吸着材で捕捉した水分によって室内を加湿する加湿装置であって、吸着材によって水分と伴に捕捉した臭気成分の室内への漏出を低減することが出来る加湿装置、および、当該加湿装置を使用した加湿方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、吸着材の吸着、脱着機能を利用して室内の空気を加湿する技術が提案されている。例えば、屋外の空気中から吸着材に水分を吸着させ、吸着した水分を室内に供給する加湿装置が「除加湿機能付空気調和機」として開示されており(特許文献1)、また、室内の空気中から吸着材に水分を吸着させ、水分を減少させた空気を屋外に排出すると共に、吸着した水分を室内に再び供給する加湿装置が「除・加湿装置」として開示されている(特許文献2)。上記の様な加湿技術は、吸着材の吸脱着によって空気中の水分を利用できるため、水道水などの水を蒸発させて加湿する従前の技術に比べ、定期的に給水し続ける必要がなく、水分の蒸発に伴うシリカ成分の析出などがない点において優れている。
【特許文献1】特開平5−168841号公報
【特許文献2】特開平11−101473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記の様な加湿装置においては、通常、外気や室内空気から吸着材に水分を吸着した際、水分と共に、生活環境にて発生した臭気成分も吸着される。従って、室内の空気を加湿するにあたり、吸着材から水分を加熱脱着させた場合、水分と共に臭気成分も脱着し、加湿される被処理空気に臭気成分が同伴され、室内に臭気が漂うと言う問題が生じる。
【0004】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、吸着材で捕捉した水分によって室内を加湿するにあたり、吸着材から水分を脱着させる際の臭気成分の同伴を防止すべく種々検討の結果なされたものであり、その目的は、吸着材によって水分と伴に捕捉した臭気成分の室内への漏出を一層低減することが出来る加湿装置、および、当該加湿装置を使用した加湿方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明においては、特定の流路構成および吸着材の一部を常時入れ換える吸着材保持機構の採用により、換気の目的で室内から屋外へ排出される空気、屋外の空気、または、室内を循環させる空気から水分を吸着材によって吸着すると共に、吸着した水分を室内へ向けて流れる空気中で脱着して室内の空気を加湿する。その場合、吸着材として、温度(T1)以上に加熱することにより水分を脱着し、温度(T1)よりも高い温度(T2)以上に加熱することにより臭気成分を脱着する特定の性質の吸着材を使用することにより、加湿操作においては、温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満の温度に吸着材を加熱し、実質的に水分だけを選択的に脱着させる様にした。また、好ましくは、蓄積した臭気成分による水分吸着性能の低下や飽和状態となった臭気の放出を防止するため、必要に応じて、温度(T2)以上に吸着材を加熱し、吸着材に蓄積した臭気成分を脱着除去する。その場合、屋外へ向けて空気が流れる流路において臭気成分を脱着するか、または、室内へ向けて空気が流れる流路に対して屋外側へ流路を切り替える流路切替機構を設けることにより、臭気成分を屋外へ排出する様にした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、温度(T1)以上の加熱により水分を脱着し、温度(T1)よりも高い温度(T2)以上の加熱により臭気成分を脱着する特定の吸着材を使用し、加湿操作において、温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満となる様に吸着材を加熱再生し、吸着材に吸着されている水分だけを選択的に脱着するため、室内へ供給される空気を臭気のない水分によって快適に加湿できる。また、吸着した臭気成分の除去操作を行う態様においては、温度(T2)以上となる様に吸着材を加熱再生し、吸着材に吸着されている臭気成分を脱着して屋外へ排出するため、室内への臭気成分の漏出を一層低減でき、常に室内を一層快適に加湿できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明は、吸着材によって回収した水分を脱着させることにより、居室、工場内の加湿の必要な部屋や作業室、あるいは、車輌の室内など各種室内の空気に対して加湿を行う加湿装置および加湿方法に関するものである。本発明において、室内とは上記の様な仕切られた空間領域を言い、屋外とは仕切られた空間領域の周囲の領域を言う。例えば、工場建屋内の加湿すべき一作業室内を室内とした場合は、前記作業室を除く工場の建屋内部は屋外として扱う。
【0008】
本発明は、加湿に利用する水分の捕捉方法により、室内の水分を利用する態様と、屋外の水分を利用する態様とが挙げられるが、これらの態様は、更に、室内換気の方式、すなわち、給気および排気を行う方式、排気だけを行う方式、給気だけを行う方式および換気を行わない方式の4つの方式の違いにより、4つの態様に区別することが出来る。そして、斯かる4つの態様については、加湿装置における臭気成分の排出方式により、それぞれに2つの態様を挙げることが出来る。
【0009】
図1〜図8は、各々、本発明の第1〜第4の態様に係る加湿装置の基本的な構造例を示す平面図である。図1及び図2は、給気および排気を行う換気機能を備え、かつ、室内の水分を回収する方式の第1の態様に係る加湿装置を示す図であり、そのうち、図1は、排気路に臭気成分を直接排出する構造の加湿装置を示す図であり、図2は、流路切替機構によって屋外に臭気成分を排出する構造の加湿装置を示す図である。
【0010】
また、図3及び図4は、排気だけを行う換気機能を備え、かつ、室内の水分を回収する方式の第2の態様に係る加湿装置を示す図であり、そのうち、図3は、排気路に臭気成分を直接排出する構造の加湿装置を示す図であり、図4は、流路切替機構によって屋外に臭気成分を排出する構造の加湿装置を示す図である。
【0011】
更に、図5及び図6は、給気だけを行う換気機能を備え、かつ、屋外の水分を回収する方式の第3の態様に係る加湿装置を示す図であり、そのうち、図5は、排気路に臭気成分を直接排出する構造の加湿装置を示す図であり、図6は、流路切替機構によって屋外に臭気成分を排出する構造の加湿装置を示す図である。
【0012】
そして、図7及び図8は、換気機能がなく、屋外の水分を回収する方式の第4の態様に係る加湿装置を示す図であり、そのうち、図7は、排気路に臭気成分を直接排出する構造の加湿装置を示す図であり、図8は、流路切替機構によって屋外に臭気成分を排出する構造の加湿装置を示す図である。なお、図9は、本発明に適用される吸着材の一例における水分および臭気成分の脱着特性を示すグラフである。
【0013】
先ず、本発明の加湿装置について説明する。本発明の第1の態様に係る加湿装置は、図1に示す様に、吸着材(4)で水分および臭気成分を捕捉すると共に、捕捉した水分によって室内(7)を加湿する加湿装置であり、屋外(6)の空気を室内(7)に供給する給気路(1)と、室内(7)の空気を屋外(6)へ排出する排気路(2)と、給気路(1)及び排気路(2)にそれぞれ吸着材(4)の一部を位置させ且つこれらを入れ換える吸着材保持機構(3)と、給気路(1)の吸着材保持機構(3)よりも上流側に配置された加熱手段(51)とを備えている。
【0014】
給気路(1)及び排気路(2)は、いわゆる給気用および排気用のダクトであり、これらの少なくとも吸着材保持機構(3)が配置される部位は、互いに平行かつ並列に隣接して配置される。給気路(1)及び排気路(2)の長手方向に直交する断面形状は、通常は方形に形成され、また、これらの断面積は、室内(7)を所定の湿度に維持するための加湿量を勘案して設定される。なお、図示しないが、通常、給気路(1)及び排気路(2)には送風用のファンが設置されると共に、給気路(1)及び排気路(2)の各入口側には空気清浄用のフィルターが設置される。
【0015】
吸着材保持機構(3)としては、必要量の吸着材(4)を保持可能な構造を有し、且つ、一部の量の吸着材(4)を給気路(1)に位置させ、且つ、同時に他の一部の量の吸着材(4)を排気路(2)に位置させると共に、前記の量の吸着材(4)を入れ替え可能な構造を備えたものであれば、種々の機構を採用出来る。例えば、吸着材保持機構(3)は、図示する様に、吸着材(4)を収容する短軸円筒状の容器であって、かつ、給気路(1)と排気路(2)に跨がって回転可能に配置されたローターとして構成される。図示した上記の吸着材保持機構(3)の構成は、デシカント空調システムにおいて採用されている所謂デシカントローターと同様である。
【0016】
具体的には、吸着材保持機構(3)は、例えば、外形が短軸円筒状に形成され且つその両端面に亘って通気可能になされた多孔構造体、通称ハニカム体に吸着材を担持させて成るローター本体と、当該ローター本体の中心線に沿って設けられ且つ給気路(1)と排気路(2)の隔壁部分に沿って枢支される駆動軸(31)とから主に構成され、別途設けられた電動機などの駆動手段(図示省略)によりローター本体が0.1〜6回転/分の速さで一方向へ低速回転する様になされている。従って、給気路(1)及び排気路(2)においては、吸着材が逐次入れ替わり、かつ、多孔構造体に流れる空気を吸着材に接触させることが出来る。
【0017】
上記の吸着材保持機構(3)に使用されるローター本体の製造方法は、特開平5−23584号などに開示されている様に公知である。すなわち、ローター本体の製造においては、例えば、セラミック繊維などの無機繊維にて抄紙され且つコルゲート(波付け)加工された無機繊維紙と、平らな無機繊維紙とを重ねて巻回することによりハニカム体を構成する。一方、吸着材のパウダーをバインダー中に分散して吸着材スラリーを調製する。次いで、斯かる吸着材スラリーに上記のハニカム体を浸漬することにより、ハニカム体に吸着材を担持させた後、ハニカム体を焼成炉で焼成することにより、無機繊維紙に含まれる有機成分を除去すると共に、無機繊維紙を焼結する。これにより、多孔構造体に吸着材を担持させたローター本体を得ることが出来る。
【0018】
また、吸着材保持機構(3)のローター部分は、短軸円筒状に形成され、かつ、両円盤面に多数の小孔が設けられた容器本体と、当該容器本体に収容された吸着材(4)とから構成されてもよい。なお、吸着材保持機構(3)としては、図に例示した様な機構の他、給気路(1)と排気路(2)に亙ってスライド可能に配置され、かつ、表面に多数の小孔が設けられた引戸構造の薄板版の2つの容器本体に吸着材(4)をそれぞれ収容し、前記の各容器本体を一定のタイミングで互違いに移動させることにより、給気路(1)内の吸着材(4)と排気路(2)内の吸着材(4)とを入換える様になされた機構、あるいは、給気路(1)と排気路(2)の境界部分に設けられた回転軸によって支持され、かつ、表面に多数の小孔が設けられた回転扉構造の薄板状の容器本体に吸着材(4)を収容し、前記の容器本体を一定のタイミングで180度回転させることにより、給気路(1)内の吸着材(4)と排気路(2)内の吸着材(4)とを入換える様になされた機構などが挙げられる。なお、吸着材保持機構(3)における吸着材(4)の量は、当該吸着材の種類および加湿処理すべき空気量に応じて決定される。
【0019】
また、給気路(1)の吸着材保持機構(3)よりも上流側(外気の取入れ口側)には加熱手段(51)が配置される。加熱手段(51)は、吸着材(4)に吸着した水分を脱着させる際、換言すれば、吸着材(4)の再生の際、主に給気路(1)の空気を加熱するために設けられる。加熱手段(51)としては、電熱ヒーター等の発熱体の他、ヒートポンプの高温熱源なども利用することが出来る。また、加熱手段(51)を構成する機器は複数設けられてもよい。
【0020】
周知の通り、ヒートポンプは、気体である冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮された冷媒を冷却して凝縮することにより周囲の空気(被加熱物)を加熱する高温熱源としての凝縮器と、凝縮された冷媒を蒸発させることにより周囲の空気(被冷却物)を冷却する低温熱源としての蒸発器とから構成される。ヒートポンプを利用する場合は、加熱手段(51)として凝縮器が給気路(1)に配置される。上記の加熱手段(51)は、空気の加熱のみならず、再生すべき吸着材(4)の加熱に輻射熱も利用し得る様に、吸着材保持機構(3)の近傍に配置されるのが好ましい。
【0021】
更に、本発明の好ましい態様においては、排気路(2)の吸着材保持機構(3)よりも上流側(室内空気の取入れ口側)に冷却手段(52)が配置される。冷却手段(52)は、吸着すべき水分を含む空気の相対湿度を上げ、吸着材(4)の水分吸着量を高めるために設けられる。冷却手段(52)としては、冷媒の蒸発により周囲の空気(被冷却物)を冷却する上述のヒートポンプの蒸発器(低温熱源)を利用することが出来る。吸着すべき水分を含む空気を冷却手段(52)によって予め冷却し、その相対湿度を例えば90%程度以上に高めることにより、吸着材(4)の吸着力を最大限に発揮させることが出来、排気路(2)内で脱着する水分量を増加させて一層効率的に加湿することが出来る。なお、ヒートポンプが複数の蒸発器および凝縮器を備えている場合には、加熱手段(51)、冷却手段(52)として、ヒートポンプの一部の蒸発器および凝縮器を利用すればよい。
【0022】
本発明の加湿装置においては、選択的に水分および臭気成分を脱着させるため、吸着材保持機構(3)の吸着材(4)として、温度(T1)以上に加熱することにより水分を脱着し、温度(T1)よりも高い温度(T2)以上に加熱することにより臭気成分を脱着する吸着材が使用される。水分の脱着温度である温度(T1)の範囲は、通常40〜100℃、好ましくは45〜80℃、更に好ましくは50〜60℃であり、臭気成分の脱着温度である温度(T2)の範囲は、通常100〜300℃、好ましくは100〜200℃である。
【0023】
なお、本発明における臭気成分としては、主に下記に記載されている物質が挙げられる。すなわち、家庭内における臭気物質については、『ゼオライトの科学と工学』(発行;講談社,編者;小野嘉夫・矢嶋建明,221頁)に詳しく記載されており、アンモニア、酢酸、アセトアルデヒド、硫化水素、硫化メチル、メチルアミン、トリメチルアミン、メチルメルカプタン、イソ吉草酸などが主成分とされている。建材・建具などから室内に放散される物質としては、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなどのVOC(揮発性有機化合物)が知られている。また、タバコ臭気の代表物質には、アンモニア、酢酸、アセトアルデヒドが含まれることも公知である。高齢者福祉施設や医療福祉施設では、特にアンモニア等を原因とする生活臭の除去が課題になっている。
【0024】
一方、移動体である乗用車においても車室内空気質を向上させる動きがあり、次の13物質について室内濃度指針値を設定し、低減を図ろうとしている。13物質は次の通りである。ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロルベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、クロルピリホス、フタル酸ジ n ブチル、テトラデカン、フタル酸ジ 2 エチルヘキシル、ダイアジノン、アセトアルデヒド、フェノブカルブ。これらは、厚生労働省の「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」の指針に示されている。
【0025】
上記の吸着材(4)は、アンモニアが主成分である臭気成分および水分に関して次の様な脱着特性を備えている。すなわち、吸着材(4)の脱着特性は、25℃において乾燥状態にて水蒸気を吸着させたときの水蒸気吸着量に対し、25℃から100℃まで加熱したときの水分脱着量の割合(水蒸気脱着割合)が60%以上であり、かつ、25℃において乾燥状態にてアンモニアを吸着させたときのアンモニア吸着量に対し、25℃から100℃まで加熱したときのアンモニア脱着量の割合(アンモニア脱着割合)が60%以下である。上記の脱着特性については、水蒸気脱着割合が70%以上で且つアンモニア脱着割合が50%以下であるのが好ましく、水蒸気脱着割合が80%以上で且つアンモニア脱着割合が40%以下であるのが更に好ましい。
【0026】
上記の特性を確認するための分析方法は次の通りである。先ず、吸着材(4)をガラス管に入れ、150℃で5時間、真空下で乾燥させた後、室温に維持した状態で水蒸気(又はアンモニア)の蒸気のみをガラス管内に導入し、2時間そのままの状態で放置し、水蒸気(又はアンモニア)を十分に吸着させる。そして、熱重量測定装置を使用し、吸着材(4)を逐次加熱したときの重量変化について測定する。
【0027】
吸着材重量の測定では、水蒸気(又はアンモニア)の吸着した吸着材(4)を熱重量測定装置にセットし、先ず、その室温での吸着材重量(W1)を測定する。次いで、50ml/minのHe気流下、10℃/minで昇温し、100℃まで加熱したときの吸着材重量(W2)を測定し、更に、300℃まで加熱したときの吸着材重量(W3)を測定する。300℃まで加熱した場合は略全ての蒸気成分が脱着しているので、全吸着量は、W1−W3となり、また、100℃まで加熱したときの水蒸気(又はアンモニア)の吸着成分の脱着量はW1−W2となる(100℃脱着量)。従って、吸着材(4)の100℃における脱着割合(水蒸気脱着割合またはアンモニア脱着割合)は以下の式で表すことが出来る。
【0028】
【数1】

【0029】
吸着材(4)としては、上記の吸着特性を備えている限り特に限定されるものではなく、種々の吸着材を使用できる。しかしながら、通常のY型ゼオライトは、水分を脱着再生する場合に比較的高温に加熱が必要であり、例えば100℃以下、好ましくは80℃以下、更に好ましくは60℃以下と言う温度では十分な脱着が出来ない。また、通常のシリカは、比較的低温で水分を脱着できるが、水分と伴に吸着した臭気成分も一緒に脱着するため適当ではない。本発明においては、前述の様に、温度(T1)と言う比較的低温での再生時に水分だけを脱着し、しかも、温度(T2)と言う高温での再生時に臭気成分を脱着し得る性能が要求されるが、斯かる性能を備えた吸着材(4)としては、AlPO系ゼオライトが好適である。
【0030】
AlPO系ゼオライトは、骨格を形成する酸素以外の元素として、少なくともAlとPを含むゼオライトである。また、Al,Pの一部をケイ素、リチウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、砒素、スズ、カルシウム、硼素等のヘテロ原子に置換したものでもよい。斯かるヘテロ原子としては、ケイ素、マグネシウム、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、硼素が好ましく、ケイ素、鉄がより好ましい。
【0031】
また、上記のゼオライトにおいて、フレームワーク密度は、通常、10.0T/1000Å以上、20.0T/1000Å以下の範囲であり、好ましくは、11T/1000Å以上、19T/1000Å以下の範囲、より好ましくは、12T/1000Å以上、18T/1000Å以下の範囲である。なお、フレームワーク密度とは、ゼオライトの1000Åあたりの酸素以外の骨格を構成する元素の数を意味し、この値は、ゼオライトの構造により決まるものである。フレームワーク密度とゼオライトの構造との関係は、「ATLAS OF ZEOLITE FRAMEWARK TYPES Fifth Revised Edition 2001 ELSEVIER」に示されている。
【0032】
上記の様なゼオライトの構造としては、IZA(International Zeolite Association)が定めたコードで示すと、AEI、AEL、AEN、AET、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、CHA、DFO、ERI、FAU、GIS、LEV、LTA、RHO、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SOD、THO、VFI、ZONなどがあげられ、AEI、AET、AFI、AFN、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AST、ATS、ATT、AWW、CHA、DFO、ERI、FAU、GIS、LEV、LTA、GHO、SOD、VFI、ZONが好ましく、AFI、CHAがより好ましい。
【0033】
また、上記のゼオライトは、他のカチオンと交換可能なカチオン種を有するものを含んでいてもよい。その場合のカチオンとしては、プロトン、Li、Na、K等のアルカリ元素、Ca、Mg等のアルカリ土類元素、La、Ce等の希土類元素、Fe、Co、Ni等の遷移金属元素などが挙げられる。中でも、プロトン、アルカリ元素、遷移金属元素が好ましい。
【0034】
本発明の加湿装置は、上記の様な吸着材(4)を使用すると共に、日常的な加湿操作においては、排気路(2)において吸着材(4)に水分を吸着させ、給気路(1)において加熱手段(51)で温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満の温度に吸着材(4)を加熱して実質的に臭気の伴わない水分を脱着させることにより、室内(7)に対する加湿を行う様になされている。上記の加湿操作および後述する臭気成分の除去操作は、加熱手段(51)、冷却手段(52)等の駆動機器に対する作動プログラムが予め書き込まれた制御装置(図示省略)によって制御される。
【0035】
すなわち、図1に示す本発明の加湿装置による室内(7)の加湿操作では、前述の様に0.01〜6回転/分の速さで吸着材保持機構(3)を回転させ、同時に、加熱手段(51)及び冷却手段(52)を作動させる。排気路(2)においては、屋外(6)へ排出する空気を冷却手段(52)によって冷却し、その相対湿度を例えば90%以上に高め、吸着材保持機構(3)の吸着材(4)によって空気中の水分を吸着する。一方、給気路(1)においては、吸着材(4)が温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満となる様に、室内(7)に供給される空気を加熱手段(51)によって加熱する。加熱手段(51)の制御条件は、予め実験的に求められる吸着材(4)の温度から設定できる。そして、給気路(1)においては、加熱によって吸着材(4)から水分を選択的に脱着させることにより、室内(7)に供給される空気を加湿する。
【0036】
上記の様に、図1に示す本発明の加湿装置は、上記の特定の吸着材(4)を使用し、加湿操作において、温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満となる様に吸着材(4)を給気路(1)にて加熱再生し、吸着材(4)に吸着されている水分だけを選択的に脱着するため、室内(7)へ供給される空気を臭気のない水分によって快適に加湿できる。
【0037】
また、上記の態様の加湿装置においては、蓄積した臭気成分による吸着材(4)の水分吸着性能の低下を防止し、また、臭気成分の吸着量が飽和状態となって吸着材(4)から一時的に多量の放出される、いわゆる臭気戻りと言う問題を防止するため、吸着材(4)に蓄積した臭気成分を必要に応じて除去し得る様に構成されてもよい。例えば、図1に示す様に、加湿装置は、排気路(2)の吸着材保持機構(3)よりも上流側(室内空気の取入れ口側)に配置された第2の加熱手段(9)を備え、そして、吸着材に蓄積した臭気成分の除去操作においては、排気路(2)において第2の加熱手段(9)で温度(T2)以上に吸着材(4)を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている。
【0038】
上記の第2の加熱手段(9)は、吸着材(4)に吸着した臭気成分を脱着させる際に主に排気路(2)の空気を加熱するために設けられる。第2の加熱手段(9)としては、加熱手段(51)による加熱温度(T1)よりも高い温度(T2)以上に吸着材(4)を加熱するため、通常、電熱ヒーター等の発熱体が使用される。斯かる第2の加熱手段(9)は、空気の加熱のみならず、再生すべき吸着材(4)の加熱に輻射熱も利用し得る様に、吸着材保持機構(3)の近傍に配置されるのが好ましい。
【0039】
図1に示す加湿装置においては、加湿に要する運転時間などから臭気成分が吸着材(4)に多量に蓄積されていると判断された場合(臭気成分がが飽和状態に近づいた場合)には臭気成分の除去操作に切り替える。除去操作では、給気路(1)による給気を停止すると共に、排気路(2)において、冷却手段(52)の作動を停止し、第2の加熱手段(9)を作動させる。排気路(2)においては、吸着材(4)が温度(T2)以上となる様に、屋外(6)へ排出される空気を第2の加熱手段(9)によって加熱する。第2の加熱手段(9)の制御条件は、予め実験的に求められる吸着材(4)の温度から設定できる。そして、排気路(2)においては、加熱によって吸着材(4)から臭気成分を脱着させ、排出される空気に同伴させて臭気成分を屋外(6)へ排出する。
【0040】
上記の様に、図1に示す本発明の加湿装置は、上記の特定の吸着材(4)を使用しており、吸着した臭気成分の除去操作において、温度(T2)以上となる様に吸着材(4)を排気路(2)にて加熱再生し、吸着材(4)に吸着されている臭気成分を脱着して排気路(2)から屋外(6)へ排出するため、吸着材(4)の水分吸着性能の低下が防止され、かつ、臭気戻り等がなく、室内(7)への臭気成分の漏出を一層低減でき、その結果、常に室内(7)を快適に加湿することが出来る。
【0041】
また、上記の態様の加湿装置は、吸着材(4)に蓄積した臭気成分を必要に応じて除去し得る様に、例えば、図2に示す様な構成を備えていてもよい。図2に示す加湿装置は、給気路(1)の吸着材保持機構(3)よりも下流側に配置され且つ屋外(6)側へ流路を切り替える流路切替機構(8)を備え、そして、吸着材(4)に蓄積した臭気成分の除去操作においては、流路切替機構(8)によって給気路(1)の流れを屋外(6)側へ切り替えると共に、給気路(1)において加熱手段で温度(T2)以上に吸着材(4)を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている。
【0042】
すなわち、図2に示す加湿装置は、給気路(1)、排気路(2)、吸着材保持機構(3)、加熱手段(51)及び流路切替機構(8)を備えている。給気路(1)、排気路(2)、吸着材保持機構(3)、吸着材(4)及び加熱手段(51)の構成は、図1に示す装置と同様である。図2に示す加湿装置においては、水分の脱着に使用する加熱手段(51)を臭気成分の脱着にも利用するため、臭気成分の脱着を給気路(1)において行い、かつ、脱着した臭気成分を室内(7)へ排出するため、給気路(1)の吸着材保持機構(3)よりも下流側に流路切替機構(8)が配置される。斯かる流路切替機構(8)としては、室内(7)に供給される空気の流れを変更し得る機構であれば各種の機構を採用できるが、例えば、図示する様に、流路の側壁の一部が扉として構成され且つ当該扉が駆動軸によって90度回動することにより、流路の出口側を閉止し且つ流路の途中を屋外(6)側へ解放する機構が挙げられる。
【0043】
また、図2に示す加湿装置において、好ましくは、図1に示す装置と同様に、吸着材(4)による水分の吸着を高めるため、排気路(2)の吸着材保持機構(3)よりも上流側(室内空気の取入れ口側)に冷却手段(52)が配置される。冷却手段(52)の構成は図1に示す装置におけるのと同様である。更に、好ましくは、臭気成分の脱着操作における加熱手段(51)の過負荷をなくし且つより効率的に吸着材(4)を加熱するため、給気路(1)の吸着材保持機構(3)よりも上流側(屋外空気の取入れ口側)には第2の加熱手段(9)が配置される。第2の加熱手段(9)の構成は図1に示す装置におけるのと同様である。
【0044】
図2に示す加湿装置においては、図1に示す装置と同様に室内(7)を加湿することが出来る。そして、臭気成分の除去操作では、排気路(2)において、冷却手段(52)の作動を停止し、給気路(1)において、流路切替機構(8)を作動させて給気路(1)の出口側を閉止して中間部を屋外(6)側へ解放する。また、加熱手段(51)の温度もしくは出力を高めるか、または、加熱手段(51)の温度もしくは出力を高め且つ第2の加熱手段(9)を作動させる。そして、給気路(1)においては、吸着材(4)が温度(T2)以上となる様に、給気路(1)の空気を加熱する。斯かる操作により、吸着材(4)から臭気成分を脱着させ、流路切替機構(8)によって切り替えられた屋外(6)側への流路を通じ、排出される空気に同伴させて臭気成分を屋外(6)へ排出する。
【0045】
上記の様に、図2に示す本発明の加湿装置は、上記の特定の吸着材(4)を使用しており、吸着した臭気成分の除去操作において、温度(T2)以上となる様に吸着材(4)を給気路(1)にて加熱再生し、吸着材(4)に吸着されている臭気成分を脱着すると共に、屋外(6)側へ切り替えられた給気路(1)から臭気成分を屋外(6)へ排出するため、吸着材(4)の水分吸着性能の低下が防止され、かつ、臭気戻り等がなく、その結果、室内(7)への臭気成分の漏出を一層低減でき、常に室内(7)を快適に加湿することが出来る。
【0046】
次に、本発明の第2の態様に係る加湿装置について説明する。第2の態様に係る加湿装置は、図3に示す様に、吸着材(4)で水分および臭気成分を捕捉すると共に、捕捉した水分によって室内(7)を加湿する加湿装置であり、室内(7)の空気を屋外(6)へ排出する排気路(2)と、室内(7)の空気を取り込んで再び室内(7)へ戻す室内空気流路(21)と、排気路(2)及び室内空気流路(21)にそれぞれ吸着材(4)の一部を位置させ且つこれらを入れ換える吸着材保持機構(3)と、室内空気流路(21)の吸着材保持機構(3)よりも上流側に配置された加熱手段(51)とを備えている。
【0047】
排気路(2)は、例えば、設置し易い様に、その出口側を屈曲させて構成されるが、機能的には前述の態様におけるのと同様である。また、吸着材保持機構(3)、吸着材(4)及び加熱手段(51)のそれぞれの構成は、前述の態様における構成と同様である。図3に示す加湿装置においては、室内(7)から排出される空気から水分を回収し、回収した水分によって室内(7)を加湿するため、排気路(2)に隣接して室内空気流路(21)が設けられる。室内空気流路(21)は、前述の給気路(1)や排気路(2)と同様の構造のダクトであり、室内(7)の空気を循環する機能を有する。
【0048】
また、本発明の好ましい態様においては、前述の態様と同様に、吸着材(4)による水分の吸着を高めるため、排気路(2)の吸着材保持機構(3)よりも上流側(室内空気の取入れ口側)に冷却手段(52)が配置される。冷却手段(52)の構成は前述の態様におけるのと同様である。
【0049】
図3に示す本発明の加湿装置においても、選択的に水分および臭気成分を脱着させるため、吸着材保持機構(3)の吸着材(4)として、前述の態様におけるのと同様の吸着材が使用される。そして、日常的な加湿操作においては、排気路(2)において吸着材(4)に水分を吸着させ、室内空気流路(21)において加熱手段(51)で温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満の温度に吸着材(4)を加熱して実質的に臭気の伴わない水分を脱着させることにより、室内(7)に対する加湿を行う様になされている。上記の加湿操作および後述の臭気成分の除去操作は、前述の態様と同様に、制御装置(図示省略)によって制御される。
【0050】
図3に示す本発明の加湿装置による室内(7)の加湿操作では、前述の様に吸着材保持機構(3)を回転させ、同時に、加熱手段(51)及び冷却手段(52)を作動させる。排気路(2)においては、屋外(6)へ排出する空気を冷却手段(52)によって冷却してその相対湿度を高め、吸着材保持機構(3)の吸着材(4)によって空気中の水分を吸着する。一方、室内空気流路(21)においては、吸着材(4)が温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満となる様に、室内(7)に供給される空気を加熱手段(51)によって加熱する。そして、室内空気流路(21)においては、加熱によって吸着材(4)から水分を選択的に脱着させることにより、室内(7)に供給される空気を加湿する。
【0051】
上記の様に、図3に示す本発明の加湿装置は、上記の特定の吸着材(4)を使用し、加湿操作において、温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満となる様に吸着材(4)を室内空気流路(21)にて加熱再生し、吸着材(4)に吸着されている水分だけを選択的に脱着するため、室内(7)へ供給される空気を臭気のない水分によって快適に加湿できる。
【0052】
また、図3に示す本発明の加湿装置においては、図1に示す態様と同様に、吸着材(4)に蓄積した臭気成分を必要に応じて除去し得る様に構成されてもよい。例えば、図3に示す様に、加湿装置は、排気路(2)の吸着材保持機構(3)よりも上流側に配置された第2の加熱手段(9)を備え、そして、吸着材に蓄積した臭気成分の除去操作においては、排気路(2)において第2の加熱手段(9)で温度(T2)以上に吸着材(4)を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている。
【0053】
上記の第2の加熱手段(9)は、吸着材(4)に吸着した臭気成分を脱着させる際に主に排気路(2)の空気を加熱するために設けられる。第2の加熱手段(9)は、通常、図1に示す態様におけるのと同様の構成を備えており、そして、吸着材(4)の加熱において輻射熱も利用し得る様に、吸着材保持機構(3)の近傍に配置されるのが好ましい。
【0054】
図3に示す加湿装置において、臭気成分の除去操作では、室内空気流路(21)による給気(室内空気の循環)を停止すると共に、排気路(2)において、冷却手段(52)の作動を停止し、第2の加熱手段(9)を作動させる。第2の加熱手段(9)の制御条件は、前述の態様と同様に、予め実験的に求められる吸着材(4)の温度から設定できる。排気路(2)においては、吸着材(4)が温度(T2)以上となる様に、屋外(6)へ排出される空気を第2の加熱手段(9)によって加熱する。そして、加熱によって吸着材(4)から臭気成分を脱着させ、排気路(2)から排出される空気に同伴させて臭気成分を屋外(6)へ排出する。
【0055】
上記の様に、図3に示す本発明の加湿装置は、上記の特定の吸着材(4)を使用しており、吸着した臭気成分の除去操作において、温度(T2)以上となる様に吸着材(4)を排気路(2)にて加熱再生し、吸着材(4)に吸着されている臭気成分を脱着して排気路(2)から屋外(6)へ排出するため、吸着材(4)の水分吸着性能の低下が防止され、かつ、臭気戻り等がなく、室内(7)への臭気成分の漏出を一層低減でき、その結果、常に室内(7)を快適に加湿することが出来る。
【0056】
また、上記の態様の加湿装置は、吸着材(4)に蓄積した臭気成分を必要に応じて除去し得る様に、例えば、図4に示す様な構成を備えていてもよい。図4に示す加湿装置は、室内空気流路(21)の吸着材保持機構(3)よりも下流側に配置され且つ屋外(6)側へ流路を切り替える流路切替機構(8)を備え、そして、吸着材(4)に蓄積した臭気成分の除去操作においては、流路切替機構(8)によって室内空気流路(21)の流れを屋外(6)側へ切り替えると共に、室内空気流路(21)において加熱手段で温度(T2)以上に吸着材(4)を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている。
【0057】
すなわち、図4に示す加湿装置は、給気路(1)、室内空気流路(21)、吸着材保持機構(3)、加熱手段(51)及び流路切替機構(8)を備えている。給気路(1)、室内空気流路(21)、吸着材保持機構(3)、吸着材(4)及び加熱手段(51)の構成は、図3に示す装置と同様である。図4に示す加湿装置においては、加熱手段(51)を臭気成分の脱着にも利用するため、臭気成分の脱着を室内空気流路(21)において行い、かつ、脱着した臭気成分を屋外(6)へ排出するため、室内空気流路(21)に流路切替機構(8)が配置される。流路切替機構(8)は、例えば、側壁の扉構造により、室内空気流路(21)の出口側を閉止し、室内空気流路(21)の下流側を排気路(2)に連結する様に構成される。流路切替機構(8)自体の構成は、図2に示す態様におけるのと同様である。
【0058】
また、図4に示す加湿装置において、好ましくは、図3に示す装置と同様に、吸着材(4)による水分の吸着を高めるため、排気路(2)の吸着材保持機構(3)よりも上流側(室内空気の取入れ口側)に冷却手段(52)が配置される。冷却手段(52)の構成は図3に示す装置におけるのと同様である。更に、臭気成分の脱着操作における加熱手段(51)の過負荷をなくし且つより効率的に吸着材(4)を加熱するため、室内空気流路(21)の吸着材保持機構(3)よりも上流側(屋外空気の取入れ口側)に第2の加熱手段(9)が配置される。第2の加熱手段(9)の構成は図3に示す装置におけるのと同様である。
【0059】
図4に示す本発明の加湿装置においては、図3に示す装置と同様に室内(7)を加湿することが出来る。そして、臭気成分の除去操作では、排気路(2)において、冷却手段(52)の作動を停止し、室内空気流路(21)において、流路切替機構(8)を作動させて当該室内空気流路の出口側を閉止し、室内空気流路(21)の下流側を屋外(6)側、すなわち、排気路(2)の下流側へ解放する。また、加熱手段(51)の温度もしくは出力を高めるか、または、加熱手段(51)の温度もしくは出力を高め且つ第2の加熱手段(9)を作動させる。そして、室内空気流路(21)においては、吸着材(4)が温度(T2)以上となる様に、室内空気流路(21)の空気を加熱する。斯かる操作により、吸着材(4)から臭気成分を脱着させ、流路切替機構(8)によって切り替えられた屋外(6)側への流路、すなわち、排気路(2)の下流側へ至る流路を通じ、排出される空気に同伴させて臭気成分を屋外(6)へ排出する。
【0060】
上記の様に、図4に示す本発明の加湿装置は、上記の特定の吸着材(4)を使用しており、吸着した臭気成分の除去操作において、温度(T2)以上となる様に吸着材(4)を室内空気流路(21)にて加熱再生し、吸着材(4)に吸着されている臭気成分を脱着すると共に、屋外(6)側(排気路(2)側)へ切り替えられた室内空気流路(21)から臭気成分を屋外(6)へ排出するため、吸着材(4)の水分吸着性能の低下が防止され、かつ、臭気戻り等がなく、その結果、室内(7)への臭気成分の漏出を一層低減でき、常に室内(7)を快適に加湿することが出来る。
【0061】
次に、本発明の第3の態様に係る加湿装置について説明する。第3の態様に係る加湿装置は、図5に示す様に、吸着材(4)で水分および臭気成分を捕捉すると共に、捕捉した水分によって室内(7)を加湿する加湿装置であり、屋外(6)の空気を室内(7)に供給する給気路(1)と、屋外(6)の空気を取り込んで再び屋外(6)へ排出する外気流路(11)と、給気路(1)及び外気流路(11)にそれぞれ吸着材(4)の一部を位置させ且つこれらを入れ換える吸着材保持機構(3)と、給気路(1)の吸着材保持機構(3)よりも上流側に配置された加熱手段(51)とを備えている。
【0062】
給気路(1)、吸着材保持機構(3)、吸着材(4)及び加熱手段(51)のそれぞれの構成は、前述の態様における構成と同様である。図5に示す加湿装置においては、屋外(6)の空気から水分を回収し、回収した水分によって室内(7)を加湿するため、給気路(1)に隣接して外気流路(11)が設けられる。外気流路(11)は、構造的には前述の給気路(1)や排気路(2)と同様のダクトであり、屋外(6)の空気を装置内に循環させる機能を有する。
【0063】
また、本発明の好ましい態様においては、前述の態様と同様に、吸着材(4)による水分の吸着を高めるため、外気流路(11)の吸着材保持機構(3)よりも上流側(屋外空気の取入れ口側)に冷却手段(52)が配置される。冷却手段(52)の構成は前述の態様におけるのと同様である。
【0064】
図5に示す本発明の加湿装置においても、選択的に水分および臭気成分を脱着させるため、吸着材保持機構(3)の吸着材(4)として、前述の態様におけるのと同様の吸着材が使用される。そして、日常的な加湿操作においては、日常的な加湿操作においては、外気流路(11)において吸着材(4)に水分を吸着させ、給気路(1)において加熱手段(51)で温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満の温度に吸着材(4)を加熱して実質的に臭気の伴わない水分を脱着させることにより、室内(7)に対する加湿を行う様になされている。上記の加湿操作および後述の臭気成分の除去操作は、前述の態様と同様に、制御装置(図示省略)によって制御される。
【0065】
図5に示す本発明の加湿装置による室内(7)の加湿操作では、前述の様に吸着材保持機構(3)を回転させ、同時に、加熱手段(51)及び冷却手段(52)を作動させる。外気流路(11)においては、取り込んだ屋外(6)の空気を冷却手段(52)によって冷却してその相対湿度を高め、吸着材保持機構(3)の吸着材(4)によって空気中の水分を吸着する。一方、給気路(1)においては、吸着材(4)が温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満となる様に、室内(7)に供給される空気を加熱手段(51)によって加熱する。そして、給気路(1)においては、加熱によって吸着材(4)から水分を選択的に脱着させることにより、室内(7)に供給される空気を加湿する。
【0066】
上記の様に、図5に示す本発明の加湿装置は、上記の特定の吸着材(4)を使用し、加湿操作において、温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満となる様に吸着材(4)を給気路(1)にて加熱再生し、吸着材(4)に吸着されている水分だけを選択的に脱着するため、給気路(1)により室内(7)へ供給される空気を臭気のない水分によって加湿できる。
【0067】
また、図5に示す本発明の加湿装置においては、図1及び図3に示す態様と同様に、吸着材(4)に蓄積した臭気成分を必要に応じて除去し得る様に構成されてもよい。例えば、図5に示す様に、加湿装置は、外気流路(11)の吸着材保持機構(3)よりも上流側に配置された第2の加熱手段(9)を備え、そして、吸着材(4)に蓄積した臭気成分の除去操作においては、外気流路(11)において第2の加熱手段(9)で温度(T2)以上に吸着材(4)を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている。
【0068】
上記の第2の加熱手段(9)は、吸着材(4)に吸着した臭気成分を脱着させる際に主に外気流路(11)の空気を加熱するために設けられる。第2の加熱手段(9)は、通常、図1及び図3に示す態様におけるのと同様の構成を備えており、そして、吸着材(4)の加熱において輻射熱も利用し得る様に、吸着材保持機構(3)の近傍に配置されるのが好ましい。
【0069】
図5に示す加湿装置において、臭気成分の除去操作では、給気路(1)による給気を停止すると共に、外気流路(11)において、冷却手段(52)の作動を停止し、第2の加熱手段(9)を作動させる。第2の加熱手段(9)の制御条件は、前述の態様と同様に、予め実験的に求められる吸着材(4)の温度から設定できる。外気流路(11)においては、吸着材(4)が温度(T2)以上となる様に、流通する屋外(6)の空気を第2の加熱手段(9)によって加熱する。そして、加熱によって吸着材(4)から臭気成分を脱着させ、外気流路(11)から排出される空気に同伴させて臭気成分を屋外(6)へ排出する。
【0070】
上記の様に、図5に示す本発明の加湿装置は、上記の特定の吸着材(4)を使用しており、吸着した臭気成分の除去操作において、温度(T2)以上となる様に吸着材(4)を外気流路(11)にて加熱再生し、吸着材(4)に吸着されている臭気成分を脱着して外気流路(11)によって屋外(6)へ排出するため、吸着材(4)の水分吸着性能の低下が防止され、かつ、臭気戻り等がなく、室内(7)への臭気成分の漏出を一層低減でき、その結果、常に室内(7)を快適に加湿することが出来る。
【0071】
また、上記の態様の加湿装置は、吸着材(4)に蓄積した臭気成分を必要に応じて除去し得る様に、例えば、図6に示す様な構成を備えていてもよい。図6に示す加湿装置は、給気路(1)の吸着材保持機構(3)よりも下流側に配置され且つ屋外(6)側へ流路を切り替える流路切替機構(8)を備え、そして、吸着材(4)に蓄積した臭気成分の除去操作においては、流路切替機構(8)によって給気路(1)の流れを屋外(6)側へ切り替えると共に、給気路(1)において加熱手段(51)で温度(T2)以上に吸着材(4)を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている。
【0072】
すなわち、図6に示す加湿装置は、給気路(1)、外気流路(11)、吸着材保持機構(3)、加熱手段(51)及び流路切替機構(8)を備えている。給気路(1)、外気流路(11)、吸着材保持機構(3)、吸着材(4)及び加熱手段(51)の構成は、図5に示す装置と同様である。図6に示す加湿装置においては、加熱手段(51)を臭気成分の脱着にも利用するため、臭気成分の脱着を給気路(1)において行い、かつ、脱着した臭気成分を屋外(6)へ排出するため、給気路(1)に流路切替機構(8)が配置される。流路切替機構(8)は、例えば、側壁の扉構造により、給気路(1)の出口側を閉止し、例えば、給気路(1)の途中を屋外(6)側に開放する様に構成される。流路切替機構(8)自体の構成は、図2及び図4に示す態様におけるのと同様である。
【0073】
また、図6に示す加湿装置において、好ましくは、図5に示す装置と同様に、吸着材(4)による水分の吸着を高めるため、外気流路(11)の吸着材保持機構(3)よりも上流側(屋外空気の取入れ口側)に冷却手段(52)が配置される。冷却手段(52)の構成は図5に示す装置におけるのと同様である。更に、臭気成分の脱着操作における加熱手段(51)の過負荷をなくし且つより効率的に吸着材(4)を加熱するため、給気路(1)の吸着材保持機構(3)よりも上流側(屋外空気の取入れ口側)には第2の加熱手段(9)が配置される。第2の加熱手段(9)の構成は図5に示す装置におけるのと同様である。
【0074】
図6に示す本発明の加湿装置においては、図5に示す装置と同様に室内(7)を加湿することが出来る。そして、臭気成分の除去操作では、冷却手段(52)の作動を停止し、給気路(1)において、流路切替機構(8)を作動させて当該給気路の出口側を閉止し、給気路(1)の途中を屋外(6)側へ解放する。また、加熱手段(51)の温度もしくは出力を高めるか、または、加熱手段(51)の温度もしくは出力を高め且つ第2の加熱手段(9)を作動させる。そして、給気路(1)において、吸着材(4)が温度(T2)以上となる様に、給気路(1)の空気を加熱する。斯かる操作により、吸着材(4)から臭気成分を脱着させ、流路切替機構(8)によって切り替えられた屋外(6)側への流路を通じ、排出される空気に同伴させて臭気成分を屋外(6)へ排出する。
【0075】
上記の様に、図6に示す本発明の加湿装置は、上記の特定の吸着材(4)を使用しており、吸着した臭気成分の除去操作において、温度(T2)以上となる様に吸着材(4)を給気路(1)にて加熱再生し、吸着材(4)に吸着されている臭気成分を脱着すると共に、屋外(6)側へ切り替えられた給気路(1)から臭気成分を屋外(6)へ排出するため、吸着材(4)の水分吸着性能の低下が防止され、かつ、臭気戻り等がなく、その結果、室内(7)への臭気成分の漏出を一層低減でき、常に室内(7)を快適に加湿することが出来る。
【0076】
次に、本発明の第4の態様に係る加湿装置について説明する。第4の態様に係る加湿装置は、図7に示す様に、吸着材(4)で水分および臭気成分を捕捉すると共に、捕捉した水分によって室内(7)を加湿する加湿装置であり、屋外(6)の空気を取り込んで再び屋外(6)へ排出する外気流路(11)と、室内(7)の空気を取り込んで再び室内(7)へ戻す室内空気流路(21)と、外気流路(11)及び室内空気流路(21)にそれぞれ吸着材(4)の一部を位置させ且つこれらを入れ換える吸着材保持機構(3)と、室内空気流路(21)の吸着材保持機構(3)よりも上流側に配置された加熱手段(51)とを備えている。
【0077】
外気流路(11)は、例えば、設置し易い様に、その入口側および出口側を屈曲させて構成されるが、機能的には前述の態様におけるのと同様である。室内空気流路(21)、吸着材保持機構(3)、吸着材(4)及び加熱手段(51)の構成は、前述の態様における構成と同様である。図7に示す加湿装置においては、屋外(6)の空気から水分を回収し、回収した水分によって室内(7)を加湿するため、吸着材保持機構(3)が配置される部分においては、外気流路(11)に隣接して室内空気流路(21)が設けられる。
【0078】
また、本発明の好ましい態様においては、前述の態様と同様に、吸着材(4)による水分の吸着を高めるため、外気流路(11)の吸着材保持機構(3)よりも上流側(屋外空気の取入れ口側)に冷却手段(52)が配置される。冷却手段(52)の構成は前述の態様におけるのと同様である。
【0079】
図7に示す本発明の加湿装置においても、選択的に水分および臭気成分を脱着させるため、吸着材保持機構(3)の吸着材(4)として、前述の態様におけるのと同様の吸着材が使用される。そして、日常的な加湿操作においては、外気流路(11)において吸着材(4)に水分を吸着させ、室内空気流路(21)において加熱手段(51)で温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満の温度に吸着材(4)を加熱して水分を脱着させることにより、室内(7)に対する加湿を行う様になされている。上記の加湿操作および後述の臭気成分の除去操作は、前述の態様と同様に、制御装置(図示省略)によって制御される。
【0080】
図7に示す本発明の加湿装置による室内(7)の加湿操作では、前述の様に吸着材保持機構(3)を回転させ、同時に、加熱手段(51)及び冷却手段(52)を作動させる。外気流路(11)においては、取り込んだ屋外(6)の空気を冷却手段(52)によって冷却してその相対湿度を高め、吸着材保持機構(3)の吸着材(4)によって空気中の水分を吸着する。一方、室内空気流路(21)においては、吸着材(4)が温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満となる様に、室内(7)に供給される空気を加熱手段(51)によって加熱する。そして、室内空気流路(21)においては、加熱によって吸着材(4)から水分を選択的に脱着させることにより、室内(7)に供給される空気を加湿する。
【0081】
上記の様に、図7に示す本発明の加湿装置は、上記の特定の吸着材(4)を使用し、加湿操作において、温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満となる様に吸着材(4)を室内空気流路(21)にて加熱再生し、吸着材(4)に吸着されている水分だけを選択的に脱着するため、室内(7)へ供給される空気を臭気のない水分によって加湿できる。
【0082】
また、図7に示す本発明の加湿装置においては、図1、図3及び図5に示す態様と同様に、吸着材(4)に蓄積した臭気成分を必要に応じて除去し得る様に構成されてもよい。例えば、図7に示す様に、加湿装置は、外気流路(11)の吸着材保持機構(3)よりも上流側に配置された第2の加熱手段(9)を備え、そして、吸着材(4)に蓄積した臭気成分の除去操作においては、外気流路(11)において第2の加熱手段(9)で温度(T2)以上に吸着材(4)を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている。
【0083】
上記の第2の加熱手段(9)は、吸着材(4)に吸着した臭気成分を脱着させる際に主に外気流路(11)の空気を加熱するために設けられる。第2の加熱手段(9)は、通常、図1、図3及び図5に示す態様におけるのと同様の構成を備えており、そして、吸着材(4)の加熱において輻射熱も利用し得る様に、吸着材保持機構(3)の近傍に配置されるのが好ましい。
【0084】
図7に示す加湿装置において、臭気成分の除去操作では、室内空気流路(21)による給気(室内空気の循環)を停止すると共に、外気流路(11)において、冷却手段(52)の作動を停止し、第2の加熱手段(9)を作動させる。第2の加熱手段(9)の制御条件は、前述の態様と同様に、予め実験的に求められる吸着材(4)の温度から設定できる。外気流路(11)においては、吸着材(4)が温度(T2)以上となる様に、流通する屋外(6)の空気を第2の加熱手段(9)によって加熱する。そして、加熱によって吸着材(4)から臭気成分を脱着させ、外気流路(11)から排出される空気に同伴させて臭気成分を屋外(6)へ排出する。
【0085】
上記の様に、図7に示す本発明の加湿装置は、上記の特定の吸着材(4)を使用しており、吸着した臭気成分の除去操作において、温度(T2)以上となる様に吸着材(4)を外気流路(11)にて加熱再生し、吸着材(4)に吸着されている臭気成分を脱着して外気流路(11)によって屋外(6)へ排出するため、吸着材(4)の水分吸着性能の低下が防止され、かつ、臭気戻り等がなく、室内(7)への臭気成分の漏出を一層低減でき、その結果、常に室内(7)を快適に加湿することが出来る。
【0086】
また、上記の態様の加湿装置は、吸着材(4)に蓄積した臭気成分を必要に応じて除去し得る様に、例えば、図8に示す様な構成を備えていてもよい。図8に示す加湿装置は、室内空気流路(21)の吸着材保持機構(3)よりも下流側に配置され且つ屋外(6)側へ流路を切り替える流路切替機構(8)を備え、そして、吸着材(4)に蓄積した臭気成分の除去操作においては、流路切替機構(8)によって室内空気流路(21)の流れを屋外(6)側へ切り替えると共に、室内空気流路(21)において加熱手段(51)で温度(T2)以上に吸着材(4)を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている。
【0087】
すなわち、図8に示す加湿装置は、室内空気流路(21)、外気流路(11)、吸着材保持機構(3)、加熱手段(51)及び流路切替機構(8)を備えている。室内空気流路(21)、外気流路(11)、吸着材保持機構(3)、吸着材(4)及び加熱手段(51)の構成は、図7に示す装置と同様である。図8に示す加湿装置においては、加熱手段(51)を臭気成分の脱着にも利用するため、臭気成分の脱着を室内空気流路(21)において行い、かつ、脱着した臭気成分を屋外(6)へ排出するため、室内空気流路(21)に流路切替機構(8)が配置される。流路切替機構(8)は、例えば、側壁の扉構造により、室内空気流路(21)の出口側を閉止し、室内空気流路(21)の下流側を外気流路(11)に連結する様に構成される。流路切替機構(8)自体の構成は、図2、図4及び図6に示す態様におけるのと同様である。
【0088】
また、図8に示す加湿装置において、好ましくは、図7に示す装置と同様に、吸着材(4)による水分の吸着を高めるため、外気流路(11)の吸着材保持機構(3)よりも上流側(屋外空気の取入れ口側)に冷却手段(52)が配置される。冷却手段(52)の構成は図7に示す装置におけるのと同様である。更に、臭気成分の脱着操作における加熱手段(51)の過負荷をなくし且つより効率的に吸着材(4)を加熱するため、室内空気流路(21)の吸着材保持機構(3)よりも上流側(室内空気の取入れ口側)には第2の加熱手段(9)が配置される。第2の加熱手段(9)の構成は図7に示す装置におけるのと同様である。
【0089】
図8に示す本発明の加湿装置においては、図7に示す装置と同様に室内(7)を加湿することが出来る。そして、臭気成分の除去操作では、外気流路(11)において、冷却手段(52)の作動を停止し、室内空気流路(21)において、流路切替機構(8)を作動させて当該室内空気流路の出口側を閉止し、室内空気流路(21)の下流側を屋外(6)側、すなわち、外気流路(11)の下流側へ解放する。また、加熱手段(51)の温度もしくは出力を高めるか、または、加熱手段(51)の温度もしくは出力を高め且つ第2の加熱手段(9)を作動させる。そして、室内空気流路(21)においては、吸着材(4)が温度(T2)以上となる様に、室内空気流路(21)の空気を加熱する。斯かる操作により、吸着材(4)から臭気成分を脱着させ、流路切替機構(8)によって切り替えられた屋外(6)側への流路、すなわち、外気流路(11)の下流側へ至る流路を通じ、排出される空気に同伴させて臭気成分を屋外(6)へ排出する。
【0090】
上記の様に、図8に示す本発明の加湿装置は、上記の特定の吸着材(4)を使用しており、吸着した臭気成分の除去操作において、温度(T2)以上となる様に吸着材(4)を外気流路(11)にて加熱再生し、吸着材(4)に吸着されている臭気成分を脱着すると共に、屋外(6)側(外気流路(11)側)へ切り替えられた室内空気流路(21)から臭気成分を屋外(6)へ排出するため、吸着材(4)の水分吸着性能の低下が防止され、かつ、臭気戻り等がなく、その結果、室内(7)への臭気成分の漏出を一層低減でき、常に室内(7)を快適に加湿することが出来る。
【0091】
なお、本発明の加湿装置は、除湿機能や温度調節機能を備えた空調装置において構成されてもよい。また、上記の各態様の加湿装置においては、給気路(1)、排気路(2)、外気流路(11)、室内空気流路(21)の風量、ならびに、吸着材保持機構(3)における吸着材(4)の収容量などは、加湿対象である室内(7)の大きさや目標湿度を勘案して設定され、更に、加湿操作や臭気成分の除去操作においては、吸着材(4)に供給する加熱空気の風量を大きくことも出来る。
【0092】
また、本発明の加湿方法は、上記の各態様の加湿装置を使用し、室内(7)する加湿方法であり、本発明の加湿方法によれば、上記の特定の吸着材(4)を使用し、加湿操作において、温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満となる様に吸着材(4)を加熱再生し、吸着材(4)に吸着されている水分だけを選択的に脱着するため、室内(7)へ供給される空気を臭気のない水分によって快適に加湿できる。
【0093】
更に、本発明の加湿方法は、吸着材(4)に吸着された臭気成分の除去機能を備えた図1〜図8に示す様な加湿装置を使用し、室内を加湿すると共に、必要に応じ、吸着材に吸着した臭気成分を屋外へ排出する加湿方法であり、本発明の加湿方法によれば、上記の特定の吸着材を使用するため、上記の方法と同様に、室内(7)へ供給される空気を臭気のない水分によって快適に加湿でき、しかも、吸着した臭気成分の除去操作において、温度(T2)以上となる様に吸着材(4)を加熱再生し、吸着材(4)に吸着されている臭気成分を脱着して屋外(6)へ排出するため、室内(7)への臭気成分の漏出を一層低減でき、常に室内(7)を一層快適に加湿することが出来る。
【実施例】
【0094】
本発明に好適な吸着材(4)と従来型の吸着材の各脱着特性について比較を行った。本発明に好適な吸着材(4)として、アルミノフォスフェート類のFAPO5及びSAPO34を準備し、これらについて前述の分析方法に従って熱重量測定を行い、100℃におけるそれぞれの水分脱着割合およびアンモニア脱着割合を確認した(実施例1及び2)。FAPO5は、AFI型のFeアルミノフォスフェート(Fe/(Fe+Al+P)のモル比が4.5%)であり、SAPO34は、CHA型のシリコアルミノフォスフェート(Si/(Si+Al+P)のモル比が8.8%)である。一方、従来型の吸着材として、A型シリカゲル及びNa型のYゼオライト(シリカ/アルミナのモル比が5)を準備し、これらについて同様に熱重量測定を行い、100℃におけるそれぞれの水分脱着割合およびアンモニア脱着割合を確認した(比較例1及び2)。それぞれの結果は以下の表に示す通りである。
【0095】
【表1】

【0096】
因みに、好適な吸着材(4)の一例として、ヘテロ原子としてFeを含むAFI型ゼオライトであるFAPO5の脱着特性を図9に示す。斯かる脱着特性は、吸着した水と臭気成分であるアンモニアについて、50ml/minのHe気流下、10℃/minの昇温条件において熱重量分析して得られた結果である。図9に示すグラフによれば、100℃以下、例えば80℃において、水はほとんど脱着しているが、アンモニアはほとんど脱着しておらず、上記の吸着材(4)は、低温において、水は容易に脱着可能であるが、臭気成分は脱着し難いことを表している。
【0097】
更に、実施例2で使用したSAPO34の脱着特性に関し、臭気成分をアンモニアに替えて、キシレン、アセトアルデヒド、酢酸について、実施例2と同様の方法で100℃における脱着割合を測定した(実施例3)。その結果、水蒸気脱着割合が86%であるのに対し(実施例2参照)、キシレン脱着割合は38%、アセトアルデヒド脱着割合は53%、酢酸脱着割合は54%であった。これから、SAPO34は、アンモニア以外の臭気成分についても、水蒸気と比べて脱着し難いことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の態様に係る加湿装置の一構造例を示す平面図であり、給気および排気を行う換気機能を備え且つ室内の水分を回収する方式の加湿装置であって、排気路に臭気成分を直接排出する構造の加湿装置の図である。
【図2】本発明の第1の態様に係る加湿装置の他の構造例を示す平面図であり、給気および排気を行う換気機能を備え且つ室内の水分を回収する方式の加湿装置であって、流路切替機構によって屋外に臭気成分を排出する構造の加湿装置の図である。
【図3】本発明の第2の態様に係る加湿装置の一構造例を示す平面図であり、排気だけを行う換気機能を備え且つ室内の水分を回収する方式の加湿装置であって、排気路に臭気成分を直接排出する構造の加湿装置の図である。
【図4】本発明の第2の態様に係る加湿装置の他の構造例を示す平面図であり、排気だけを行う換気機能を備え且つ室内の水分を回収する方式の加湿装置であって、流路切替機構によって屋外に臭気成分を排出する構造の加湿装置の図である。
【図5】本発明の第3の態様に係る加湿装置の一構造例を示す平面図であり、給気だけを行う換気機能を備え且つ屋外の水分を回収する方式の加湿装置であって、排気路に臭気成分を直接排出する構造の加湿装置の図である。
【図6】本発明の第3の態様に係る加湿装置の他の構造例を示す平面図であり、給気だけを行う換気機能を備え且つ屋外の水分を回収する方式の加湿装置であって、流路切替機構によって屋外に臭気成分を排出する構造の加湿装置の図である。
【図7】本発明の第4の態様に係る加湿装置の一構造例を示す平面図であり、換気機能がなく且つ屋外の水分を回収する方式の加湿装置であって、排気路に臭気成分を直接排出する構造の加湿装置の図である。
【図8】本発明の第4の態様に係る加湿装置の他の構造例を示す平面図であり、換気機能がなく且つ屋外の水分を回収する方式の加湿装置であって、流路切替機構によって屋外に臭気成分を排出する構造の加湿装置の図である。
【図9】本発明に適用される吸着材の一例における水分および臭気成分の脱着特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0099】
1 :給気路
11:外気流路
2 :排気路
21:室内空気流路
3 :吸着材保持機構
4 :吸着材
51:加熱手段
52:冷却手段
6 :屋外
7 :室内
8 :流路切替機構
9 :第2の加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着材で水分および臭気成分を捕捉すると共に、捕捉した水分によって室内を加湿する加湿装置であって、屋外の空気を室内に供給する給気路と、室内の空気を屋外へ排出する排気路と、前記給気路および前記排気路にそれぞれ吸着材の一部を位置させ且つこれらを入れ換える吸着材保持機構と、前記給気路の前記吸着材保持機構よりも上流側に配置された加熱手段とを備え、前記吸着材が、温度(T1)以上に加熱することにより水分を脱着し、温度(T1)よりも高い温度(T2)以上に加熱することにより臭気成分を脱着する吸着材であり、そして、前記排気路において吸着材に水分を吸着させ、前記給気路において前記加熱手段で温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満の温度に吸着材を加熱して実質的に臭気の伴わない水分を脱着させることにより、室内に対する加湿を行う様になされていることを特徴とする加湿装置。
【請求項2】
排気路の吸着材保持機構よりも上流側に配置された第2の加熱手段を備え、必要に応じ、前記排気路において前記第2の加熱手段で温度(T2)以上に吸着材を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている請求項1に記載の加湿装置。
【請求項3】
給気路の吸着材保持機構よりも下流側に配置され且つ屋外側へ流路を切り替える流路切替機構を備え、必要に応じ、前記流路切替機構によって前記給気路の流れを屋外側へ切り替えると共に、前記給気路において加熱手段で温度(T2)以上に吸着材を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている請求項1に記載の加湿装置。
【請求項4】
吸着材で水分および臭気成分を捕捉すると共に、捕捉した水分によって室内を加湿する加湿装置であって、室内の空気を屋外へ排出する排気路と、室内の空気を取り込んで再び室内へ戻す室内空気流路と、前記排気路および前記室内空気流路にそれぞれ吸着材の一部を位置させ且つこれらを入れ換える吸着材保持機構と、前記室内空気流路の前記吸着材保持機構よりも上流側に配置された加熱手段とを備え、前記吸着材が、温度(T1)以上に加熱することにより水分を脱着し、温度(T1)よりも高い温度(T2)以上に加熱することにより臭気成分を脱着する吸着材であり、そして、前記排気路において吸着材に水分を吸着させ、前記室内空気流路において前記加熱手段で温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満の温度に吸着材を加熱して実質的に臭気の伴わない水分を脱着させることにより、室内に対する加湿を行う様になされていることを特徴とする加湿装置。
【請求項5】
排気路の吸着材保持機構よりも上流側に配置された第2の加熱手段を備え、必要に応じ、前記排気路において前記第2の加熱手段で温度(T2)以上に吸着材を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている請求項4に記載の加湿装置。
【請求項6】
室内空気流路の吸着材保持機構よりも下流側に配置され且つ屋外側へ流路を切り替える流路切替機構を備え、必要に応じ、前記流路切替機構によって前記室内空気流路の流れを屋外側へ切り替えると共に、前記室内空気流路において加熱手段で温度(T2)以上に吸着材を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている請求項4に記載の加湿装置。
【請求項7】
吸着材で水分および臭気成分を捕捉すると共に、捕捉した水分によって室内を加湿する加湿装置であって、屋外の空気を室内に供給する給気路と、屋外の空気を取り込んで再び屋外へ排出する外気流路と、前記給気路および前記外気流路にそれぞれ吸着材の一部を位置させ且つこれらを入れ換える吸着材保持機構と、前記給気路の前記吸着材保持機構よりも上流側に配置された加熱手段とを備え、前記吸着材が、温度(T1)以上に加熱することにより水分を脱着し、温度(T1)よりも高い温度(T2)以上に加熱することにより臭気成分を脱着する吸着材であり、そして、前記外気流路において吸着材に水分を吸着させ、前記給気路において前記加熱手段で温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満の温度に吸着材を加熱して実質的に臭気の伴わない水分を脱着させることにより、室内に対する加湿を行う様になされていることを特徴とする加湿装置。
【請求項8】
外気流路の吸着材保持機構よりも上流側に配置された第2の加熱手段を備え、必要に応じ、前記外気流路において前記第2の加熱手段で温度(T2)以上に吸着材を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている請求項7に記載の加湿装置。
【請求項9】
給気路の吸着材保持機構よりも下流側に配置され且つ屋外側へ流路を切り替える流路切替機構を備え、必要に応じ、前記流路切替機構によって前記給気路の流れを屋外側へ切り替えると共に、前記給気路において前記加熱手段で温度(T2)以上に吸着材を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている請求項7に記載の加湿装置。
【請求項10】
吸着材で水分および臭気成分を捕捉すると共に、捕捉した水分によって室内を加湿する加湿装置であって、屋外の空気を取り込んで再び屋外へ排出する外気流路と、室内の空気を取り込んで再び室内へ戻す室内空気流路と、前記外気流路および前記室内空気流路にそれぞれ吸着材の一部を位置させ且つこれらを入れ換える吸着材保持機構と、前記室内空気流路の前記吸着材保持機構よりも上流側に配置された加熱手段とを備え、前記吸着材が、温度(T1)以上に加熱することにより水分を脱着し、温度(T1)よりも高い温度(T2)以上に加熱することにより臭気成分を脱着する吸着材であり、そして、前記外気流路において吸着材に水分を吸着させ、前記室内空気流路において前記加熱手段で温度(T1)以上で且つ温度(T2)未満の温度に吸着材を加熱して実質的に臭気の伴わない水分を脱着させることにより、室内に対する加湿を行う様になされていることを特徴とする加湿装置。
【請求項11】
外気流路の吸着材保持機構よりも上流側に配置された第2の加熱手段と備え、必要に応じ、前記外気流路において前記第2の加熱手段で温度(T2)以上に吸着材を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている請求項10に記載の加湿装置。
【請求項12】
室内空気流路の吸着材保持機構よりも下流側に配置され且つ屋外側へ流路を切り替える流路切替機構を備え、必要に応じ、前記流路切替機構によって前記室内空気流路の流れを屋外側へ切り替えると共に、前記室内空気流路において加熱手段で温度(T2)以上に吸着材を加熱して臭気成分を脱着させることにより、臭気成分の排出を行う様になされている請求項10に記載の加湿装置。
【請求項13】
吸着材が、以下に記載の特性を備えている請求項1〜12の何れかに記載の加湿装置。
吸着材の特性:25℃において乾燥状態にて水蒸気を吸着させたときの水蒸気吸着量に対し、25℃から100℃まで加熱したときの水分脱着量の割合が60%以上であり、かつ、25℃において乾燥状態にてアンモニアを吸着させたときのアンモニア吸着量に対し、25℃から100℃まで加熱したときのアンモニア脱着量の割合が60%以下である。
【請求項14】
吸着材が、AlPO系ゼオライトである請求項13に記載の加湿装置。
【請求項15】
請求項1、4、7又は10の何れかに記載の加湿装置を使用し、室内を加湿することを特徴とする加湿方法。
【請求項16】
請求項2、3、5、6、8、9、11又は12の何れかに記載の加湿装置を使用し、室内を加湿すると共に、必要に応じ、吸着材に吸着した臭気成分を屋外へ排出することを特徴とする加湿方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−10307(P2006−10307A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151251(P2005−151251)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】