説明

加熱・冷却装置

【課題】バッチ処理することが可能で、スル−プットの向上が可能で、しかも、コンパクト化と省エネルギ−化が可能な加熱・冷却装置
【解決手段】互いに非連通の複数の基板収容室23、35と、これら複数の基板収容室に加熱ガス又は冷却ガスを導入する加熱冷却制御手段50とを備え、加熱冷却制御手段は、複数の基板収容室の各々を個別に温度制御可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空処理装置に取り付けられた加熱・冷却装置に関し、特に、大型のガラス基板上に薄膜を形成する真空処理装置用の加熱・冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に各種の膜を成膜したりして素子構造を作り上げるために種々のプロセスが用いられている。そのプロセスの中にスパッタリングプロセス等(ここでは、これを他のプロセスという。)以外に基板(或いはウエハとも言う。)を加熱したり、冷却したり、或いはアニ−ルしたりする熱処理が含まれている。特に、加熱および冷却の熱処理は、他のプロセスに比べて、長時間を要し、その上、加熱および冷却処理を短時間で行おうとすると、基板に反りや損傷を来すという問題があり、その結果、スル−プットをより一層高めることが出来なかった。
【0003】
そこで、従来、特許第2575285号公報および特許第2766774号公報に開示されているように、加熱チャンバと冷却チャンバとを、他のプロセスチャンバとは、それぞれ個別に設けて、他プロセスチャンバで基板処理を行っている間に、加熱または冷却などの熱処理を要する基板に対する加熱または冷却処理を、平行して行える装置が提案されている。
【0004】
一方、特開2000−119848号公報には、一つの仕込み取出し室(ロ−ドロック/アンロ−ドロック室に相当する。)の内部を、仕込み区画と取出し区画とに区画し、仕込み区画に加熱手段を設け、取出し区画に冷却手段を設けた真空成膜装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2575285号公報
【特許文献2】特許第2766774号公報
【特許文献3】特開2000−119848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許第2575285号公報および特許第2766774号公報に開示されている従来技術では、基板の加熱と冷却とをそれぞれ個別に設けたチャンバ(真空処理室)で個別に行っている。従って、これら加熱専用のチャンバおよび冷却専用のチャンバは、それぞれ、基板のバッチ処理は可能であるものの、それぞれ個別に設けられているため、装置のコンパクト化の妨げとなり、従って占有面積の縮小化の妨げとなる。また、各専用チャンバは、それぞれ、基板のバッチ処理は可能であるものの、各チャンバ内では、基板の処理温度は予め設定された同一の温度に制御されているため、同一のプロセス処理条件の基板しかバッチ処理することが出来ない。
【0007】
また、必要に応じて、チャンバの増設をした場合、占有面積も増え、装置自体の消費電力も増し、装置のコンパクト化および省エネルギ−化の要求に十分応えられない。
【0008】
また、特開2000−119848号公報に開示されている仕込み区画および取出し区画は、ともに、一枚の基板処理しか出来ず、従って、一つの仕込み取出し室内では、加熱1枚および冷却1枚の合計最大2枚の基板しか同時処理出来ず、加熱および冷却の双方処理において、いわゆる多数枚同時のバッチ処理が出来ない構成となっている。
【0009】
この発明の第1の目的は、同一の真空処理室内で、加熱と冷却を同時にバッチ処理することが可能で、スル−プットの向上が可能で、しかも、コンパクト化と省エネルギ−化が可能な加熱・冷却装置を提供することにある。
【0010】
また、この発明の第2の目的は、同一の真空処理室内で、各基板の熱処理温度を個別に設定して、加熱と冷却を同時にバッチ処理することが可能で、スル−プットの向上が可能で、しかも、コンパクト化と省エネルギ−化が可能な加熱・冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的の達成を図るため、この発明の加熱・冷却装置においては、互いに非連通の複数の基板収容室と、これら複数の基板収容室に加熱ガス又は冷却ガスを導入する加熱冷却制御手段とを備えた構成とする。そして、加熱冷却制御手段を、複数の基板収容室の各々を個別に温度制御可能とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明の加熱・冷却装置によれば、同一の真空処理室内で、加熱と冷却を同時にバッチ処理することが可能で、スル−プットの向上が可能で、しかも、コンパクト化と省エネルギ−化が可能となる。
【0013】
また、この発明の加熱・冷却装置によれば、同一の真空処理室内で、各基板の熱処理温度を個別に設定して、加熱と冷却を同時にバッチ処理することが可能で、スル−プットの向上が可能で、しかも、コンパクト化と省エネルギ−化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)、(B)および(C)は、この発明の加熱・冷却装置を組み込んだ真空処理装置の構成例をそれぞれ説明するための模式図である。
【図2】(A)、(B)および(C)は、この発明の加熱・冷却装置の構成例の特色をそれぞれ説明するための模式図である。
【図3】(A)、(B)および(C)は、この発明の加熱・冷却装置の構成例の特色をそれぞれ説明するための模式図である。
【図4】(A)、(B)および(C)は、この発明の加熱・冷却装置の構成例の特色をそれぞれ説明するための模式図である。
【図5】(A)、(B)および(C)は、この発明の加熱・冷却装置の構成例の特色をそれぞれ説明するための模式図である。
【図6】この発明の加熱・冷却装置の構成例の特色を説明するための模式図である。
【図7】この発明の加熱・冷却装置の第1の構成例を説明するための模式図である。
【図8】この発明の加熱・冷却装置の第2の構成例を説明するための模式図である。
【図9】この発明の加熱・冷却装置の第3の構成例を説明するための模式図である。
【図10】この発明の加熱・冷却装置の第4の構成例を説明するための模式図である。
【図11】この発明の加熱・冷却装置の基板収容室の加熱および冷却方法の一例を説明するための模式図である。
【図12】この発明の加熱・冷却装置の基板収容室の加熱および冷却方法の他の例を説明するための模式図である。
【図13】この発明の加熱・冷却装置の基板収容室に設ける仕切弁の個数を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照して、この発明の加熱・冷却装置およびそれを用いた真空処理装置につき説明する。なお、図は、この発明が理解できる程度に、各構成成分の大きさ、形状および配置関係を概略的に示してあるにすぎず、また、この発明は、何ら図示例に限定されるものではない。
【0016】
まず、この発明が適用される真空処理装置の一構成例の概略につき、簡単に説明する。
【0017】
通常、この真空処理装置は、枚葉式スパッタリング装置やインライン式CVD装置等が知られている。枚葉式装置では、セパレ−ション室の周囲に、ロ−ド室、複数個のスパッタリング用の真空処理室、熱処理用の真空処理室、待機室、アンロ−ド室等の全部或いは所要の一部分の真空処理室が所定の順序に配設されている。また、インライン式装置では、ロ−ド室、複数個のスパッタリング用の真空処理室、熱処理用の真空処理室、待機室、アンロ−ド室等の全部或いは所要の一部分の真空処理室が所定の順序に配設されている。そして、周知の通り、基板はロ−ド室から所要の真空処理室に送られて、所要の処理を済ませてから最終的にアンロ−ド室から外部へ取り出される。その間の基板の移送は、周知の搬送機構を用いて行われる。また、周知の通り、基板への成膜処理の前後或いは成膜と成膜との間に、基板への加熱或いは冷却という熱処理が熱処理用の真空処理室で行われている。この熱処理用真空処理室に対する基板の収納および取り出しの移送も、ロボットで行われている。
【0018】
また、特許第2575285号公報および特許第2766774号公報に開示されているように、熱処理用の真空処理室に設けられた基板収容カセットが複数の部屋に区分されている場合には、各部屋を適宜に真空処理室の仕切弁(ゲ−トバルブという。)に対向させて位置決めする必要があるため、この基板収容カセットを上下方向に移動させる昇降装置が設けられている。各部屋は、この位置に移動されてきて、真空処理室の仕切弁が開き、対応する部屋に対し基板の収納および取り出しが可能となる。
【0019】
上述した従来の構成要素については、その具体的な構成および動作は、周知であるので、その詳細な説明は、特に必要がある場合を除き、ここでは省略する。
【0020】
この発明の加熱・冷却装置によれば、単一の真空処理室内に基板熱処理室として、加熱や冷却の不要な基板熱処理のための基板加熱室および基板冷却室のみを具える構成としている。
【0021】
以下、この発明の構成上の特徴につき、図1ないし図10を参照して説明する。図1(A)、(B)および(C)は、この発明の真空処理装置の構成例をそれぞれ示す説明図である。図2ないし図6は、この発明の特色の一部を説明するための、概略的な説明図である。図7ないし図10は、加熱・冷却装置の構造を説明するための概略的模式図である。
【0022】
まず、図1(A)に示す真空処理装置は、枚葉式装置であって、搬送機構を具えるセパレ−ション室(Sep)104に、隣接させて、加熱・冷却装置100と、第1および第2スパッタリング用の真空処理室(Pro1および2)106および108が配設されている。
【0023】
この加熱・冷却装置100は、真空処理室40と、その内部に基板加熱室および基板冷却室(H/C)とからなる基板熱処理室10を有する。さらに、基板熱処理用の当該真空処理室10に隣接させて、ロ−ド室(この場合には、ロ−ディングとアンロ−ディングを含んでいるのでL/ULで示してある。)102が配設されている。そして、真空処理室40は、ロ−ド室102とセパレ−ション室104との間に配設されている。
【0024】
これらロ−ド室102と真空処理室40との間、この真空処理室40とセパレ−ション室104との間、セパレ−ション室104と各真空処理室106および108との間は、基板の搬入および搬出が出来るように、それぞれ仕切弁(ゲ−トバブル)で、仕切られている。
【0025】
このような真空処理室での基板処理は、通常は、加熱→成膜→冷却の順で行われる。当然のことながら、必要に応じてこの順序が入れ替わることもあり得る。
【0026】
図1(A)に示す構成例の真空処理装置では、ロ−ド室102に搬送された基板は、ロ−ド室を所定圧力まで真空排気した後、基板熱処理室10を有する真空処理室(熱処理用真空処理室とも言う。)40の真空加熱室へ搬送される。基板は、真空加熱室で所定の温度に加熱された後、セパレ−ション室104に搬送される。このセパレ−ション室104から所要の成膜処理を行うため、基板は第1真空処理室108に送られ、場合によっては、第1真空処理室108の加熱機構で所定温度まで加熱或いは冷却されてから、基板に対する成膜処理が行われる。第1真空処理室108での処理終了後、基板はセパレ−ション室104へ戻される。第1真空処理室108での処理に連続して第2真空処理室106で成膜を行うプロセス条件の場合には、この基板は第2真空処理室106へ搬送されて処理が行われる。或いは、基板に対し加熱或いは冷却が一旦行われてから、当該基板が第2真空処理室106へ搬送されるようなプロセス条件の場合には、基板は、一旦、真空処理室40へ搬送され、そこで基板は所定の温度に熱処理された後、再度、基板はセパレ−ション室104を経由して第2真空処理室106へと搬送され、そこで成膜処理が行われる。第2真空処理室での処理終了後、基板は、セパレ−ション室104を経由して、真空処理室40へと戻される。ここで、基板冷却が必要な場合には、真空処理室40内の基板冷却室で、所定温度にまで冷却される。冷却が不要な場合には、基板は、真空処理室の基板搬送部を介して、ロ−ド室102に戻される。
【0027】
図1(B)および(C)は、真空処理装置の別の構成例を示す図である。図1(B)に示す構成例は、成膜やスパッタリング等用の2つの真空処理室間にセパレ−ション室を配設してあり、さらに、ロ−ド室と、基板熱処理室を有する真空処理室との間にこのセパレ−ション室が配設されている。
【0028】
図1(C)に示す構成例は、成膜やスパッタリング等用の2つの真空処理室間にセパレ−ション室を配設した系を2組設け、さらに、ロ−ド室、第1のセパレ−ション室、基板熱処理室を有する真空処理室および第2のセパレ−ション室の順に配設されている。
【0029】
次に、上述した基板熱処理室10の特色について、その概略を、図1ないし図6を参照して、説明する。尚、これら図に示す構成例において、真空処理室40と、この真空処理室40に設けられている仕切弁48は、従来構成と変わらない。また、これら図に示す構成例では、真空処理室40内において、基板熱処理室10は、上下方向に可動であるが、可動手段は周知の手段であるので、その図示を省略してある。また、図2ないし図6において、真空処理室40と、内部の基板熱処理室10との位置関係は、適当な位置関係で示してあり、従って、熱処理後に基板を搬出するためには、基板熱処理室10を上下方向のいずれかの方向に移動させて、搬出すべき基板を真空処理室40の仕切弁48に対向する位置にもたらして、搬出を行う構成となっている。
【0030】
さらに、図2ないし図6に示す構成例では、加熱および冷却手段については図示および説明を省略するが、これらについては、後述する。
【0031】
この発明によれば、図2(A)に示すように、加熱・冷却装置100の基板熱処理室10は、真空処理室40内に、基板加熱室20および基板冷却室30(それぞれ、図中破線で囲んだ領域として示してある。)を具えている。
【0032】
或いは、図3(A)に示すように、この基板加熱室20および基板冷却室30間に、加熱および冷却の不要な基板用の、基板搬送室70を具えることも可能である。
【0033】
或いはまた、図4(A)に示すように、基板加熱室20と基板冷却室30とを真空処理室40内で互いに熱的に遮蔽するための遮蔽手段110を設けることが出来る。
【0034】
さらに、この発明においては、図5(A)に示すように、この真空処理室40内で、基板加熱室20と基板搬送室70とを互いに熱的に遮蔽する遮蔽手段120と、基板冷却室30と基板搬送室70とを互いに熱的に遮蔽する遮蔽手段130とを設けることが出来る。
【0035】
また、場合によっては、図2(B)、図3(B)、図4(B)、図5(B)および図6に示すように、基板加熱室20および基板冷却室30の双方またはいずれか一方を、互いに連通する複数の基板収容室22および32に仕切ることが出来る。
【0036】
また、場合によっては、図2(C)、図3(C)、図4(C)および図5(C)に示すように、基板加熱室20および基板冷却室30の双方またはいずれか一方は、互いに非連通の複数の基板収容室23および35に仕切ることが出来る。
【0037】
さらに、また、この発明の構成例においては、基板熱処理室10は、基板の搬出入用の、開口または開閉手段としての仕切弁を具えている。図6に示す構成例は、真空処理室40内に上下方向(鉛直または垂直方向とも言う。)に延在させた、固定式の縦仕切150を設け、仕切弁48と対向する位置部分に基板を搬入および搬出させるための開口152を一カ所設けた例である。従って、丁度、この開口152以外の縦仕切150の部分は、連通式の各基板収容室22および32に対して、少なくとも一方側の、基板収容室から離間した側壁の役割を果たしている。勿論、この縦仕切150を筒型に形成して、各基板収容室22および32の全周囲にわたり、包囲するように設けても良い。勿論、非連通式の基板収容室に対しても同様に、この縦仕切を設けることが出来る。
【0038】
尚、図2ないし図6を参照して説明した構成例以外の構成もこの発明に適用出来る。例えば、後述する構成例からも明らかなように、各基板収容室を密閉するように、開閉自在の開閉扉、或いは仕切弁を設けることが出来る。
【0039】
次に、図7ないし図13を参照して、この発明の構成の具体例につき説明する。図7ないし図10は、加熱・冷却装置の構造の一例を説明するための概略的模式図である。
【0040】
図7に示す構成例では、加熱・冷却装置100の基板熱処理室(加熱・冷却室とも言う。)10は、真空処理室40内において、上下方向に分離されて形成されている。この例では、上側に基板加熱室20が形成されていて、また、下側にこれに連続して基板冷却室30が形成されている。なお、図7中、真空処理室40の壁の一部分を40aおよび40bとして示してある。基板熱処理室10は、全体として1つの容器として形成されている。
【0041】
図7の構成例では、容器および真空処理室の形状を四角形状としてある。基板加熱および冷却用の容器10の天井壁を12,底壁を14,図中左の側壁を15および右の側壁を16としてそれぞれ示す。そして、この構成例では、容器室内を横方向の壁(横壁または仕切りという。)18で仕切り、この仕切り18を遮蔽手段として用いて容器室内を上側の基板加熱室20および下側の基板冷却室30としてそれぞれ区画して、これら両室20および30を熱的に遮断すなわち遮蔽するように構成している。
【0042】
従って、基板加熱室20は、天井壁12と、横壁18と、左側壁15と、右側壁16と、図には示されていない正面側の側壁および背面側の側壁とで囲まれて形成されている。他方、基板冷却室30は、底壁14と、横壁18と、左側壁15と、右側壁16と、図には示されていない正面側の側壁および背面側の側壁とで囲まれて形成されている。この場合、好ましくは、断熱効果を高めるため、これら加熱室20および冷却室30の内壁の全部または一部分を断熱性の優れた材料で形成するのがよい。
【0043】
また、好ましくは、基板加熱室20および基板冷却室30の双方またはいずれか一方を、互いに連通する複数の基板収容室22および32に仕切っておくのが良い。この場合の仕切り板24,34として、例えば、容器側壁に適当に設けた棚その他の手段とすることが出来る。これら基板収容室22および32は、好ましくは、基板を基板保持具(いわゆるトレ−)(図示していない。)で保持させた状態で収容出来るように構成するのがよい。また、これら基板収容室22および32は、これらの収容室に収容された基板を、加熱室20或いは冷却室30毎に一括して、加熱或いは冷却することが可能となる。
【0044】
上述した加熱・冷却装置100は、基板加熱室20の加熱或いは基板冷却室30の冷却の制御を行うための加熱冷却制御手段50を具えている。図7の構成例では、加熱および冷却の各室20および30は、それぞれの基板収容室22および32を、例えば、加熱ガス26或いは冷却ガス36で、一括して熱制御するように構成している。そのため、図7には示していないが、基板加熱室20用の加熱制御手段として、加熱ガス供給および排気するガス供給および排気系や、加熱室20従って基板収容室22内の温度を制御する温度制御系などを設けることが出来る。同様に、図7には示していないが、基板冷却室30用の冷却制御手段として、冷却ガス供給および排気するガス供給および排気系や、冷却室30従って基板収容室32内の温度を制御する温度制御系などを設けることが出来る。
【0045】
尚、この熱処理は、ガスを用いる代わりに、加熱ヒ−タとか、加熱或いは冷却パイプとか、ヒ−トポンプとか、その他の直接または間接的な適当な加熱または冷却手段50により行えばよい。
【0046】
上述した基板熱処理室(加熱・冷却室)10が収容されている真空処理室40は、通常は、例えば成膜プロセス用のチャンバのような、他の真空処理室と隣接している場合もあるので、その場合には、従来と同様に、各真空処理室には、仕切弁すなわちゲ−トバルブを設けてもよい。加熱・冷却装置10の各熱処理室20および30には、多数の基板を同時収容出来る構成となっているので、これらの基板を出し入れするためには、基板収容室22および32のそれぞれにも開閉扉28および38を設けてある。この開閉扉28および38は、各基板収容室22および32毎に一カ所設ければよいが、複数箇所設けても良い。図7に示す構成例では、真空処理室40の1つの壁40bに対向する側の右側壁16にそれぞれ開閉扉28および38を設けている。そして、真空処理室40の壁40bには、適当な位置に1つの仕切弁42を設けている。これら開閉扉28或いは38と42とは、基板の出し入れの際には、対向位置に位置決めする必要がある。従って、加熱・冷却装置10を上下方向に移動させる昇降装置、例えば、モータや油圧で上下するロッド機構60が設けられている。
【0047】
上述した図7の構成例によれば、他のプロセスを行う真空処理室とは独立した別の1つの真空処理室40内に基板加熱室20と基板冷却室30とを、それぞれ個別に設けている。
【0048】
従って、バッチ熱処理すべき多数の基板を基板加熱室20および基板冷却室30の基板収容室22およびまたは32のそれぞれに設置すれば、他の成膜プロセスとは別個にかつ平行して、基板の加熱およびまたは冷却を行えるとともに、これら加熱および冷却の同時熱処理も行うことが出来る。
【0049】
また、加熱・冷却以外の他のプロセス処理と基板の加熱および冷却処理とを別室で行っているので、スル−プットの向上が図れる。また、加熱・冷却以外の他のプロセスを行う真空処理室とは独立した別の1つの真空処理室40内に基板加熱室20と基板冷却室30とが、それぞれ個別に設けられているので、加熱・冷却装置100はもとより、この装置100を具えた真空処理装置のコンパクト化と省エネルギ−化が可能となる。
【0050】
次に、この発明の加熱・冷却装置100の他の構成例につき、図8を参照して、説明する。図8の構成例では、基板熱処理室10の容器室内を縦方向の壁すなわち縦壁17で熱的に遮蔽できるように区画して、基板加熱室20と基板冷却室30とを、横方向に区切って設けた構成となっている。そのため、基板加熱熱室20および基板冷却室30の各基板収容室22および32に基板を出し入れするための開閉扉28および38は、各基板収容毎に1カ所ずつ設け、これら各収容室22および32に対して、真空処理室40には、両側の壁40aおよび40bのそれぞれに1カ所ずつ仕切弁42を設けている。その他の構成等の必要事項は、所要に応じて、図7で説明した構成と同様に適用できるので、その詳細は省略する。
【0051】
図9は、この発明の加熱・冷却装置100のさらに他の好適な構成例の説明図である。この構成例によれば、基板加熱室20および基板冷却室30の双方またはいずれか一方に、互いに非連通の複数の基板収容室23および35を設けている。
【0052】
そのため、この装置100の容器10の室内には複数の横壁19を平行に設けて、複数の基板収容室23および35に互いに熱的に遮蔽出来るように、区画してある。
【0053】
この横壁も図7の構成例の場合と同様に、少なくとも、基板収容室側の内壁を断熱性良く形成しておくのが好ましい。各基板収容室23および35は、互いに熱的に遮蔽または遮断されて独立しているので、各室に対する加熱或いは冷却は、独立して行う必要がある。そのため、基板加熱室20の各基板収容室23および基板冷却室30の各基板収容室35には、図7に示す構成例で説明したと同様な加熱制御手段50を、対応させて設ける。このように、基板収容室23または35に、個別に、加熱または冷却手段を設けることによって、それぞれの室の温度を独立して制御出来るので、収容された基板に適した熱処理を行うことが可能となる。
【0054】
また、この図9に示す構成例では、各基板収容室23および35には2カ所に開閉扉28および38を設けてある。そのため、これら開閉扉28および38に対応して、真空処理室40の両壁40aおよび40bにも、それぞれ1つずつ仕切弁48を設けてある。尚、図には示していないが、この両壁40aおよび40bに設ける仕切弁48の位置は、上下方向に同一レベルにあってもまたは異なるレベルにあっても良い。そうすれば、一方の仕切弁48を基板加熱室20に専用とし、他方の仕切弁48を基板冷却室30に専用として使用することが出来る。また、これら仕切弁48を同一の壁に設けても良いし、異なる壁に設けても良い。その他の構成等の必要事項は、所要に応じて、図7および図8で説明した構成と同様に適用できるので、その詳細は省略する。
【0055】
図10は、この発明の加熱・冷却装置100のさらに他の構成例を説明するための図である。この図10の構成例が、図9で説明した構成例と異なる点は、基板加熱室20と基板冷却室30との間に、加熱および冷却の不要な基板用の、基板搬送室70を具える構成とした点である。この基板搬送室70は、上下の基板加熱室20および基板冷却室30からは熱的に遮断または遮蔽されている。そして、この基板搬送室70にも、少なくとも1つの開閉扉72を設ける。ここでは、基板搬送室70両側に開閉扉72を設けた例を示している。
【0056】
このように構成すれば、加熱または冷却を必要としない基板を、当該真空処理室40の基板搬送室70に待避させたり、この真空処理室40を経て、外部へ移送させることが出来、より一層の装置のコンパクト化を可能にする。
【0057】
また、基板搬送室70は、基板加熱室20および基板冷却室30から加熱や冷却の不要な基板に対し、熱処理の影響が及ぶのを回避出来る。
【0058】
尚、この基板搬送室70と同趣旨の基板搬送室を、図7および図8で説明した構成例においても、設計に応じて、適宜、設けることが出来る。
【0059】
その他の構成等の必要事項は、所要に応じて、図7、図8或いは図9で説明した構成と同様に適用できるので、その詳細は省略する。
【0060】
図11および図12は、非連通の個別の基板収容室23或いは35における加熱或いは冷却の方法を説明する図である。それぞれの基板収容室23および35には、基板80を適当な支持手段82を介在させて収容してある。
【0061】
図11に示す例は、図7の構成例で説明したと同様に、基板収容室23或いは35にガス供給および排気系を設けて外部よりガスを循環させて基板80を加熱または冷却する方法を示している。また、図12は、基板収容室にヒ−トポンプその他の好適な加熱または冷却手段を取り付けて、輻射により基板80を加熱或いは冷却する方法を示している。
【0062】
図11または図12に示すように構成すれば、基板加熱室20の非連通基板収容室23に収容された基板80の個別加熱、および基板冷却室30の非連通基板収容室35に収容された基板80の個別冷却の双方またはいずれか一方の熱処理が可能となる。
【0063】
図11および図12を参照して説明した加熱或いは冷却の方法は、非連通式の基板収容室23および35にのみ適用されるのではなく、連通式の基板収容室22および32にも適用して好適である。
【0064】
また、図13(A)、(B)、(C)および(D)は、真空処理室40に備える仕切弁48の個数を説明する図である。真空処理室にどのように仕切弁を設けるかは、この加熱・冷却装置の真空処理室が、真空処理装置のどの箇所に配置されるかによって決まる。図13(A)に示す例では、真空処理室の周囲に仕切弁を設けていない例である。図13(B)に示す例では、真空処理室の周囲に1個の仕切弁を設けた場合であり、図13(C)は、真空処理室の周囲の対向する2つの側壁に仕切弁をそれぞれ1個ずつ設ける場合であり、図13(D)は、真空処理室の周囲の3つの側壁にそれぞれ1個ずつ設ける場合である。このように、真空処理室の周囲に、設計に応じて、所要のセパレーション室、ロード室、他の真空処理室を配置させることが出来る。
【0065】
尚、図13(D)に示した構成例では、3カ所に仕切弁を設けているが、実用化に際しては、真空処理室の3カ所のういちのいずれかの1カ所或いは2カ所に仕切弁を取り付けておいて、残りの箇所には仕切弁の取り付けが可能な状態としておいて、その箇所にはブランクフランジを取り付けておくこともできる。その場合、仕切弁は、図13(B)或いは図13(C)に示した構成例のように取り付けられる。
【0066】
図7ないし図10を参照して説明した構成例では、基板を基板収容室の移動方向に対して直交する方向に搭載させる、すなわち、基板を水平方向に寝かせて搭載する例につき説明したが、これとは異なり、基板を基板収容室の移動方向に平行(垂直方向)または傾けて搭載させる、すなわち、基板を立てかけて搭載するように、基板収容室を構成した場合にも、この発明を適用して好適である。しかし、この基板を立てかける構成であると、基板を水平方向に寝かせる場合に比べて、真空処理室40の占有面積が多少は広がる。しかし、これ以外のセパレ−ション室や成膜或いはスパッタリング用の真空処理室も縦型となるので、それぞれの占有面積が縮小化し、そのため、真空処理装置全体の占有面積が縮小化するので、装置自体のコンパクト化を実現出来る。
【0067】
さらに、上述した図7ないし図13を参照して説明した構成例では、各基板収容室22,23,32,35の基板搬入出口に開閉扉28、38を設けた構成例につき説明したが、開閉扉を設ける代わりに、より密閉度を上げる必要がある場合には、各基板収容室22,23,32,35の基板搬入出口に、ゲートバルブと称せられる仕切弁を、設けることが出来る。
【0068】
尚、上述した開閉扉の場合には、例えば、基板の搬入或いは搬出を必要とする基板に係わる基板収容室が、真空処理室40の基板搬入出口に対向する位置に移動してきて停止するとき、機械的或いは電磁的な作用により、これら開閉扉が開き、また、基板の搬入或いは搬出作業が終了して、基板収容室が移動するときに、これら開閉扉が閉じるように構成するのが好適である。この場合、これら開閉扉の開閉制御は、設計に応じて任意に行うことが出来る。
【0069】
また、この発明で適用される基板はその種類を何ら制限しないが、好ましくは、基板熱処理室で処理すべき基板をガラス基板とするのが良い。その場合には、これらガラス基板で液晶装置を、短時間でしかも歩留まり良く形成することが出来る。
【符号の説明】
【0070】
10:基板熱処理室(容器または基板熱処理領域)
12:天井壁 14:底壁
15:左側壁 16:右側壁
17:遮蔽手段(縦壁或いは仕切り)
18,19:遮蔽手段(横壁或いは仕切り)
20:基板加熱室 30:基板冷却室
22.32:(連通式の)基板収容室
23,35:(非連通式の)基板収容室
24,34:仕切り板 26:加熱ガス、
28,38,72:開閉扉
36:冷却ガス 40:真空処理室
40a,40b:(真空処理室の)壁
42,48:仕切弁(ゲートバルブ)
50:加熱冷却制御手段 60:昇降装置
70:基板搬送室
100:加熱・冷却装置 102:ロ−ド室
104:セパレ−ション室
106,108:スパッタリング用の真空処理室
110,120,130:遮蔽手段
150:縦仕切 152:開口
154:仕切片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに非連通の複数の基板収容室と、
該複数の基板収容室に加熱ガス又は冷却ガスを導入する加熱冷却制御手段と
を備え、
前記加熱冷却制御手段は、前記複数の基板収容室の各々を個別に温度制御可能である
ことを特徴とする加熱・冷却装置。
【請求項2】
前記複数の基板収容室の各々に対応した開閉扉が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の加熱・冷却装置。
【請求項3】
基板加熱室及び基板冷却室を備え、
前記複数の基板収容室は、前記基板加熱室内に設けられた複数の第1基板収容室と、前記基板冷却室内に設けられた複数の第2基板収容室とに分類され、
前記開閉扉は、第1開閉扉と第2開閉扉とに分類され、
前記基板加熱室は、前記複数の第1基板収容室の各々に対応して設けられた前記第1開閉扉を有し、
前記基板冷却室は、前記複数の第2基板収容室の各々に対応して設けられた前記第2開閉扉を有し、
前記加熱冷却制御手段は、
前記複数の第1基板収容室に収容された基板を加熱ガスで加熱する加熱制御手段と、
前記複数の第2基板収容室に収容された基板を冷却ガスで冷却する冷却制御手段と
を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の加熱・冷却装置。
【請求項4】
前記基板加熱室と前記基板冷却室との間に設けられた、加熱および冷却の不要な基板を収容するための基板搬送室と、
該基板搬送室に設けられた第3開閉扉と
を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の加熱・冷却装置。
【請求項5】
前記基板加熱室と前記基板冷却室とは、互いに積層されている
ことを特徴とする請求項4に記載の加熱・冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−41640(P2012−41640A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242523(P2011−242523)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【分割の表示】特願2000−243948(P2000−243948)の分割
【原出願日】平成12年8月11日(2000.8.11)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】