説明

加熱合材の保温運搬容器

【課題】 工場でのトラック荷台への搭載時や復旧現場での搬出時のハンドリングを良好にして、加熱合材運搬時の労力を軽減する。
【解決手段】 非通気性の補強層11Aが少なくとも外表面に形成された耐熱合成繊維織物11B,13Bよりなる基布11,13を外側と内側に配備し、基布11,13間に断熱材12を挟持してなる基材10によって、加熱合材が収容される密封可能な袋状容器1を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱アスファルト混合物等の加熱合材を保温状態で運搬する為の保温運搬容器に関する。
【背景技術】
【0002】
路面下へのマンホールの設置工事やガス管或いは水道管等の埋設工事、更には路面下における既設埋設物の修理補修や点検作業を行う際には、アスファルトコンクリートの舗装面を一旦壊して路盤を露出させて、開削する必要がある。
【0003】
そして、工事等の後には開削後の路盤を埋め戻して、舗装面の復旧が行われるが、この際に用いられる復旧用の合材には、常温合材と加熱合材がある。常温合材は常温で運搬,保管及び施工ができるので簡便性に富むという利点がある反面、施工初期における安定性や耐久性に劣るという欠点がある。これに対して、加熱合材は、粗骨材,細骨材,フィラ及びアスファルトを所定割合で混合した上で加熱されたアスファルト混合物等であって、安定性や耐久性に優れている利点がある。このため、近年は、復旧用の合材、特に、即日本復旧に用いられる合材としては、加熱アスファルト混合物等からなる加熱合材が一般に用いられている。
【0004】
加熱アスファルト混合物は、基層に粗粒度のものが用いられ、表層には密粒度及び細粒度のものが用いられており、一般に、敷きならし後に実施される転圧時の最適温度が110〜140℃とされている。また、アスファルト生成又は再生工場から搬出された加熱アスファルト混合物は、一旦温度が低下すると所望の強度が得られなくなるので、運搬時等には、強度低下を招かないように温度管理がなされており、110℃以下に低下した加熱アスファルト混合物は廃棄処分にすることが義務付けられている。このように廃棄処分にされたものは生成又は再生工場に回収されて再生処理を施した後、再利用されることになる。
【0005】
したがって、従来は、開削現場でアスファルト路面の復旧工事を行うための加熱合材の供給は、路面構築の完了時刻に合わせて、加熱合材が工場からダンプトラックによって搬送され、工事現場に到着すると即座に施行に供することがなされていた。
【0006】
しかしながら、点在する復旧工事現場毎に、加熱合材を工場からトラック搬送するのは、多大な労力と経費を要することになり、また、加熱合材自体や開削の施工方法の改良によって、一現場での加熱合材の使用量が少なくなっているにも拘わらず、一回の搬送量を少なくすると放熱による温度低下が顕著になることから、大量の加熱合材を搬送して残った廃棄物を再度回収することが一般になされており、従来の加熱合材の現場供給は、非効率的且つエネルギー消費型の供給体制にならざるを得ない問題があった。
【0007】
この問題を解消するためには、アスファルト生成又は再生工場から搬出された大量の加熱合材を複数の復旧現場に持ち回り、一回の工場からの搬出で多数の復旧現場に少量ずつ加熱合材を搬送する供給体制が望まれるが、そのためには、加熱合材を良好に保温した状態で運搬できる運搬保温部材の開発が求められる。
【0008】
下記特許文献1には、このために開発された加熱合材の運搬保温用シートが提示されている。この運搬保温用シートは、加熱合材を工場から舗装現場に運搬する際に使用されるものであって、支持体の少なくとも片面に、短繊維が絡合してなる不織布を積層した積層体からなり、支持体または短繊維を、ポリイミド繊維,ポリフェニレンスルフィド繊維,アラミド繊維,ガラス繊維の少なくとも1種類から選択したものである。
【0009】
【特許文献1】特開2002−211628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した運搬保温用シートは、シート上に載せた加熱合材をシート全体で包むようにして用いるもので、例えば、トラックの荷台全体にこのシートを敷いて、その上に大量の加熱合材を載せ、シート全体でこれを包んで搬送する使用形態が採用される。
【0011】
これによると、工場でのトラック荷台への搭載時や復旧現場での搬出時の作業性に問題があり、特に、復旧現場での搬出時にシートを開放する際に大きな放熱が生じるので、複数の現場を持ち回る際には現場を渡る毎に加熱合材の温度が低下してしまう問題が生じる。
【0012】
また、シート自体の通気は遮断されていても、シートの折り畳み口などから進入する外気と内包の加熱合材が接する機会が多いので、この外気との接触によって加熱合材の温度が低下することが懸念され、長時間の運搬時には十分な保温が確保され難い問題があった。
【0013】
また、小面積のシートに少量の加熱合材を包んで、これを複数個トラックの荷台に載置し、復旧現場でシート毎搬出することも考えられるが、この場合は、搬出時にシート外面が擦れるなどして、シートが破断することが懸念され、復旧現場での保管時にこの破断箇所から放熱して内包している加熱合材の温度が低下することが考えられる。また、加熱合材を包んだ状態を維持しながらトラックの荷台から下ろすのは、やはり作業性の面で問題があった。
【0014】
本発明は、このような問題に対処することを目的とするものであって、工場でのトラック荷台への搭載時や復旧現場での搬出時の作業性を良好にして、加熱合材運搬時の労力を軽減すること、一つの復旧現場で使用される少量の加熱合材の運搬に際しても十分な保温性を担保することができ、特に、一回の搬送で複数の復旧現場を持ち回る際にも良好な保温状態を維持した加熱合材を必要量だけ現場に供給することができること等、が本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するための本発明の特徴は、一つには、舗装面の復旧工事に使用する加熱合材を収容して運搬する保温運搬容器であって、非通気性の補強層が少なくとも外表面に形成された耐熱合成繊維織物よりなる基布を外側と内側に配備し、該基布間に断熱材を挟持してなる基材によって、前記加熱合材が収容される密封可能な袋状容器を形成したことを特徴とする。
【0016】
また一つには、舗装面の復旧工事に使用する加熱合材を収容して運搬する保温運搬容器であって、非通気性の補強層が少なくとも外表面に形成された耐熱合成繊維織物よりなる基布を外側と内側に配備し、該基布間に断熱材を挟持してなる基材によって、前記加熱合材が収容される密封可能な箱状容器を形成したことを特徴とする。
【0017】
更には、前述した特徴に加えて、前記基布は、ゴム引き補強加工によって前記補強層を形成したポリエステル織物よりなり、前記断熱材はポリエステル不織物からなることを特徴とする。
【0018】
また、前述した特徴に加えて、前記加熱合材の収容量は一復旧工事現場での使用量に応じて設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
このような特徴によると、加熱合材の生成又は再生工場でのトラック荷台への搭載時や復旧現場での搬出時の作業性を良好にして、加熱合材運搬時の労力を軽減することができる。また、一つの復旧現場で使用される少量の加熱合材の運搬に際しても十分な保温性を担保することができ、特に、一回の搬送で複数の復旧現場を持ち回る際にも良好な保温状態を維持した加熱合材を必要量だけ現場に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る加熱合材の保温運搬容器に採用される基材を示す断面図である。
【0021】
同図(a)に示す基材10は、その一形態であって、非通気性の補強層11Aが外表面に形成された耐熱合成繊維織物11Bよりなる基布11と、非通気性の補強層13Aが内面に形成された耐熱合成繊維織物13Bよりなる基布13と、その基布11,13を外側と内側に配備し、その基布11,13の間に断熱材12を挟持した構造を有している。
【0022】
また、同図(b)に示す基材10は、他の形態であって、非通気性の補強層11Aが外表面に形成された耐熱合成繊維織物11Bよりなる基布11と、補強層が内面に形成されていない耐熱合成繊維織物13Bよりなる基布13と、その基布11,13を外側と内側に配備し、その基布11,13の間に断熱材12を挟持した構造を有している。
【0023】
ここで、補強層11A,13Aは、非通気性であり、且つ剪断等に所望の強度が得られるものであればよく、ゴム製等の合成樹脂層によって形成することができ、耐熱合成繊維織物11B,13Bと一体に形成されるもの、好ましくは、ゴム引き補強加工によって形成されるもの等を採用することができる。また、耐熱合成繊維織物11B,13Bは耐熱性を有するものであればよく、ポリエステル織物、アクリル織物等を採用することができる。
【0024】
そして、この基布11,13間に挟持される断熱材12としては、特には限定されないが、短繊維の絡合不織物等であって、特には、ポリエステル不織物,PPS不織物等を採用することができる。また、このような短繊維の不織物の他には、耐熱性を有する発泡体、特にはメラミン発泡体等を採用することができる。
【0025】
このような基材10によって形成される容器によると、断熱材12の作用によって、収容される加熱合材の保温性を確保することができる。また、外側の基材11の存在によって、非通気性の補強層11Aにより外気或いは雨等が容器内に入り込むのを防止することができ、且つハンドリング時の擦れ等に対して有効な強度を確保することができる。また、耐熱合成繊維織物11Bの作用によって、耐熱強度或いは容器の形状維持性能を得ることができる。更には、内側の基材13の存在によって、高温(180℃程度)の収容物(加熱合材)から断熱材12を保護することができる共に、容器の耐熱強度或いは形状維持性能を得ることができる。
【0026】
図2及び図3は、本発明の実施形態に係る保温運搬容器の形態例を示した外観図である。図2に示した例は、前述の基材10によって、加熱合材が収容される密封可能な袋状容器1を形成したものである。この際、外表面は前述した補強層11Aで覆われている。この例では、長方形の2枚の平面部1A,1Bと厚み部1Cを有する横長状の袋容器1が形成されており、開口部1Dを閉じて平面部1A,1Bを折り畳むことで内部の密封性が得られるようにしている。また、必要に応じて折り畳んだ後にその周囲を縛る密封ベルト1Eを設けてもよい。
【0027】
また、図3に示した例は、前述の基材10によって、加熱合材が収容される密封可能な箱状容器2を形成したものである。ここでも当然、外表面は前述した補強層11Aで覆われている。この例では、長方形の6枚の平面基材を気密に継ぎ合わせて直方体の箱状容器2が形成されており、密封開口部2Aを形成して、これを開けて内部を開放し、収容物を入れた後にこれを閉めて内部の密封性を確保するようにしている。必要に応じて手提げベルト2Bを設けるようにしても良い。
【0028】
このような実施形態に係る袋状又は箱状容器1,2によると、完全に収容された加熱合材を密封することができるので、運搬時や復旧現場での保管時に収容された加熱合材に外気や雨が触れてその温度が低下することを回避することができる。したがって、比較的長時間の運搬又は保管に対しても十分に対応することができ、加熱アスファルト混合物を110℃以上の状態に維持することができる。
【0029】
また、工場でのトラック荷台への搭載時や復旧現場での搬出時には、容器毎搬入・搬出することができるので、良好なハンドリング性が得られ、搬入・搬出作業の労力を軽減することができる。
【0030】
特に、工場からの一回の運搬で複数の復旧現場を持ち回る際には、一復旧現場で必要な加熱合材の使用量に応じて各容器への収容量を設定しておけば、各復旧現場では必要な個数の容器を密封状態のまま配布できることになり、加熱合材の保温状態を適正な状態に維持したままで、複数の復旧現場に加熱合材を効率よく配布することができる。
【0031】
また、この容器は、容器自体の重量を極めて軽量にすることができ、更に運搬時に余計なスペースを要することも無いので、多くの容器に加熱合材を区分けして運搬する場合であっても、一度に多量の加熱合材(収容物)を運搬することができる。そして、復旧現場で容器内の加熱合材を用いて復旧工事を行った後には、使用済みの容器は折り畳むか或いは潰してしまえば嵩張ることがないので、簡単に回収することができ、回収したものを再利用することもできる。
【実施例】
【0032】
表1は、前述した基材10の具体例を示したものである。
【0033】
【表1】

【0034】
前述した各実施例による基材10によって袋状又は箱状容器を形成することで、収容した加熱アスファルト混合物を約10時間運搬及び現場で保管した場合でも、その温度を110℃以上に維持することができた。
【0035】
図4は、本発明の使用形態例を示した説明図である。本発明の実施形態に係る袋状又は箱状容器1,2には、紙袋に入れた加熱アスファルト混合物Mを収容することが好ましい。
【0036】
運搬時には、例えば大型の箱状容器2の中に袋状容器1に収容した加熱アスファルト混合物Mを複数収容して搬送する。この際、紙袋に入れた加熱アスファルト混合物Mを直接箱状容器2内に収容するようにしてもよいし、或いは、紙袋に入れた加熱アスファルト混合物Mを袋状容器1に収容したものを保温シートで包んで搬送するようにしてもよい。そして、各復旧現場においては、復旧工事に必要な加熱アスファルト混合物の量に応じて単数又は複数個の袋状容器1を配布する。各復旧現場で数時間の保管が必要な場合には、必要に応じて袋状容器1を更に保温シート等で包む等の保温措置を付加するようにしてもよい。
【0037】
ここで、一つの袋状容器1内に収容される加熱アスファルト混合物Mの量は、一復旧工事現場での使用量に応じて設定される。例えば、一つの復旧工事現場で70kgの加熱アスファルト混合物Mを必要とする場合は、一つの袋状容器1の収容量を35kgに設定して一現場に2個の袋状容器1を配布するようにする。
【0038】
このような実施形態或いは実施例によると、運搬時或いは復旧現場での保管時に温度が低下することで廃棄処分になる加熱合材の量を極力少なくすることができるので、ほぼ必要な量だけ運搬すれば良く、効率的且つエネルギー節約型の加熱合材供給形態を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る加熱合材の保温運搬容器に採用される基材を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る保温運搬容器の形態例を示した外観図である。
【図3】本発明の実施形態に係る保温運搬容器の形態例を示した外観図である。
【図4】本発明の使用形態例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 袋状容器
2 箱状容器
10 基材
11,13 基布
11A,13A 補強層
11B,13B 耐熱合成繊維織物
12 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装面の復旧工事に使用する加熱合材を収容して運搬する保温運搬容器であって、
非通気性の補強層が少なくとも外表面に形成された耐熱合成繊維織物よりなる基布を外側と内側に配備し、該基布間に断熱材を挟持してなる基材によって、前記加熱合材が収容される密封可能な袋状容器を形成したことを特徴とする加熱合材の保温運搬容器。
【請求項2】
舗装面の復旧工事に使用する加熱合材を収容して運搬する保温運搬容器であって、
非通気性の補強層が少なくとも外表面に形成された耐熱合成繊維織物よりなる基布を外側と内側に配備し、該基布間に断熱材を挟持してなる基材によって、前記加熱合材が収容される密封可能な箱状容器を形成したことを特徴とする加熱合材の保温運搬容器。
【請求項3】
前記基布は、ゴム引き補強加工によって前記補強層を形成したポリエステル織物よりなり、前記断熱材はポリエステル不織物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載された加熱合材の保温運搬容器。
【請求項4】
前記加熱合材の収容量は、一復旧工事現場での使用量に応じて設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された加熱合材の保温運搬容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−232311(P2006−232311A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47927(P2005−47927)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(592090315)株式会社佐藤渡辺 (10)
【Fターム(参考)】