説明

加熱油化装置及び加熱油化方法

【課題】 容器内で効率的に自然対流を起こさせることにより、投入された原料の加熱効率を向上する。
【解決手段】 容器2の内部は、熱媒体7が上下に循環可能な閉ループ状に構成されている。加熱ガス通路5は、下部貯溜部11の熱媒体7を加熱する下部加熱部21と、下部貯溜部11で加熱された第1側部12の熱媒体7を加熱する側部加熱部22とを備えている。原料1は、第1側部12で加熱されて下部貯溜部11へ向かって第2側部13を流動する熱媒体7内に導入され、熱媒体7の循環を促進させる。伝熱管14a内では、原料1が沸騰して熱媒体7の循環駆動力を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料を油化する溶融釜等の加熱油化装置及び加熱油化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に開示されているように、原料としての廃プラスチック等を燃焼ガスで加熱して油化する溶融釜等の加熱油化装置が知られている。この特許文献1に開示された加熱油化装置は、図8に示すように、熱媒油としても作用する溶融プラスチックが貯溜される容器100を備えており、この容器100の下には、バーナ101の燃焼ガスで下から容器100を加熱する加熱室102が設けられている。また、容器100内には、加熱室102に連通するU字管からなる伝熱パイプ103が配設され、加熱室102から流れてきた燃焼ガスが伝熱パイプ103内を下から上に流れるようになっている。これにより、伝熱パイプ103における下側部分を流れるより高温の燃焼ガスで容器内底部の溶融プラスチックを加熱でき、熱媒油105の自然対流を促進させるようになっている。
【特許文献1】特開平11−323350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の加熱油化装置では、自然対流が起こるのは伝熱パイプ103の周囲だけに限られるため、伝熱パイプ103から離れた熱媒油105は滞留した状態となりやすい。このため、容器100内の一部で自然対流が発生するとはいえ、容器100内での加熱効率を向上できる余地が依然として残されている。
【0004】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、容器内で効率的に自然対流を起こさせることにより、投入された原料の加熱効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は、熱媒体の入った容器内に原料投入部を通して投入された原料を、加熱ガス通路を流れるガスで加熱して、少なくともその一部を気化させる加熱油化装置を前提として、上記容器の内部は、上記熱媒体が上下に循環可能な閉ループ状に構成され、上記加熱ガス通路は、閉ループ下部の熱媒体を加熱する下部加熱部と、上記閉ループ下部で加熱されて上昇した閉ループ側部の熱媒体を加熱する側部加熱部とを備え、上記閉ループ側部で加熱されて上記閉ループ下部へ向かう熱媒体中に上記原料が導入されるように構成されている。
【0006】
本発明では、容器内を閉ループ状に構成するとともに、閉ループ下部と閉ループ側部とで熱媒体を加熱し、閉ループ下部の熱媒体が加熱されて上昇したところで更に閉ループ側部で熱媒体を加熱するようにしている。このため、容器内の全体で熱媒体が循環する自然対流を発生させることができる。したがって、加熱ガス通路の周囲の熱媒体だけでなく、容器内の熱媒体全体が流動するので、容器内の一部だけで熱媒体が自然対流する構成に比べ、容器内での熱媒体の加熱効率を向上でき、この熱媒体とともに流動する原料の加熱効率を向上することができる。しかも、閉ループ側部で加熱されて高温になっている熱媒体に原料が導入される構成としているので、原料を効率よく且つ速やかに加熱することができる。さらに、容器内の熱媒体全体が流動する構成なので、原料が攪拌され易くなり、これにより、加熱ガス通路内のガスによって直接加熱される部分が過度に加熱されるのを抑制でき、原料に含まれる成分が炭化して容器内面等に付着するのを抑制することができる。したがって、カーボンを除去するためのメンテナンスの頻度を減らすことができるという利点もある。
【0007】
具体的な構成として、上記容器は、上記閉ループ下部と、上記閉ループ側部と、上記加熱ガス通路に接することなく上記閉ループ側部及び上記閉ループ下部を連通する還流部とによって、内部が閉ループ状に構成されているものとすることができる。
【0008】
この構成において、上記原料投入部は、上記還流部の上方に配置されているのが好ましい。そうすれば、原料を流下させることにより、還流部内を閉ループ下部に向かって流動する熱媒体に原料が供給されることになるので、供給された原料によって閉ループでの熱媒体の自然対流を促進させることができる。すなわち、熱媒体よりも低温の原料が混合されることで熱媒体の比重が重くなるので、熱媒体の還流部内での下向きの流動を原料投入によって促進させることができる。この結果、容器内全体での熱媒体の自然循環を促進できて、原料の加熱効率をさらに向上することができる。
【0009】
ここで、上記下部加熱部が、上記閉ループ下部内に配置された複数の伝熱管を備え、上記各伝熱管は、それぞれ一端部が上記容器の側壁を貫通して上記ガスが流入するように構成される一方、他端部が前記側壁に対向する側壁を貫通して上記側部加熱部に接続されている構成にすることができる。
【0010】
この態様では、市場にある安価な種々の管部材を利用でき、しかも限られたスペースで下部加熱部の伝熱面積を増大できるので、部品コストの上昇を抑制しつつ加熱効率を向上することができる。
【0011】
あるいは、上記下部加熱部が、上記閉ループ下部内に配置されたU字管を備え、上記U字管は、一端部が上記容器の側壁を貫通して上記ガスが流入するように構成されるとともに、他端部が上記側壁を貫通して上記側部加熱部に接続されている構成にすることもできる。
【0012】
この態様によれば、U字管と容器がそれぞれ熱膨張係数の異なる材質で構成される場合であっても、U字管の熱膨張に伴う熱応力がU字管と容器との間に働くことを抑制できるので、容器及びU字管が材質の制限を受けるのを緩和することができる。
【0013】
そして、上記閉ループ側部が、複数の伝熱管を備え、これら各伝熱管内に閉ループ下部で加熱された熱媒体が流入する構成とされていてもよい。
【0014】
この態様では、閉ループ下部で加熱された熱媒体を閉ループ側部の各伝熱管へ流入させ、この伝熱管内で熱媒体をさらに加熱するので、伝熱管内の原料を沸騰させて気液二相流を発生させることにより、伝熱管内で上昇流を円滑に発生させることができる。
【0015】
そして、上記原料が、原油を含むものであれば、例えば大量の原油の処理が要求される石油精製装置等の原油加熱装置に適用することが可能となる。
【0016】
また、上記原料が、固体成分を含むものであり、この固体成分は、上記ガスにより加熱されて溶融するものであってもよい。
【0017】
この場合、上記固体成分が、プラスチックを含むものであれば、例えば廃プラスチック等を油化する溶融釜等に適用することが可能になる。
【0018】
また、上記閉ループ側部の上端部に、上記容器の内部で蒸発した原料を反応させる触媒槽と、上記容器の内部で蒸発した原料を分留させる分留塔との少なくとも一方が接続されていれば、蒸発成分の改質等が可能になる。
【0019】
また、上記熱媒体の液面を検出する液面検出手段を備えていれば、熱媒体の液面を検出することができるので、液面が所定範囲内になるように制御をすることが可能となる。
【0020】
また、上記容器内に停留する成分を排出する排出管路を備えていれば、排出管路を介して停留成分を外部に排出することができるので、蒸発させることができなかった重質成分等を抜き取ることができるようになる。
【0021】
また、本発明は、熱媒体の入った容器内に原料を投入し、この原料をガスで加熱して少なくともその一部を気化させる加熱油化方法を前提として、上記容器として、上記熱媒体が上下に循環可能な閉ループ状に構成されたものを使用し、上記ガスにより閉ループ下部で熱媒体を加熱するとともに、この加熱されて上昇した熱媒体を上記ガスによってさらに閉ループ側部で加熱し、上記閉ループ側部で加熱された熱媒体が上記閉ループ下部に向かって下方に流動するところに上記原料を投入する。
【0022】
この加熱油化方法において、上記原料に固体成分が含まれる場合には、上記熱媒体が上記閉ループ側部で上記固体成分の溶融温度以上に加熱されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、容器内で効率的に自然対流を起こさせることができ、投入された原料の加熱効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本発明に係る加熱油化装置の一実施形態としての加熱釜10を概略的に示している。この加熱釜10は、例えば、原料1として投入された原油等の重質油を加熱して軽質油成分を取り出すものであり、石油精製装置用の加熱釜や分留精製する装置の加熱釜として用いることができる。図1に示すように、加熱釜10は、ステンレス製の容器2を備えている。この容器2内には、軽油や灯油等の熱媒体7が貯溜されている。
【0026】
容器2は、内部が閉ループ状に構成されている。以下、具体的に説明する。容器2は、その下部に比較的大きな内容積を有する下部貯溜部11を備えている。この下部貯溜部11は、閉ループの下側部を構成するものであり、本発明でいう閉ループ下部に相当する。
【0027】
概略図である図2に示すように、下部貯溜部11には、その上面部における一端側(図2の左側)から上方に延びる第1側部12と、上面部における他端側(図2の右側)から上方に延びる第2側部13とが設けられている。第1側部12は、それぞれ細管からなる多数の伝熱管14aによって構成された伝熱管部14と、この伝熱管部14の上端部に設けられた合流部15とを備えている。
【0028】
上記伝熱管部14は、その下端部が下部貯溜部11の上面部に接続されており、各伝熱管14aが上下に延びる姿勢に設置されている。各伝熱管14a内は、下部貯溜部11の上面に形成された連通孔を通して下部貯溜部11内と連通されている。上記合流部15は、全伝熱管14aにまたがるように設けられるもので、各伝熱管14aの上端部から流出した熱媒体がこの合流部15で合流するようになっている。伝熱管部14と合流部15とにより、本発明でいう閉ループ側部が構成されている。すなわち、伝熱管部14及び合流部15は、閉ループの一方の側部となっている。
【0029】
一方、第2側部13は、例えば円筒状に形成されていて、内部が空洞になっている。この第2側部13と上記合流部15とには、下部貯溜部11から上方に離間したところに配置された上部貯溜部17が架け渡されている。そして、下部貯溜部11と第1側部12と第2側部13と上部貯溜部17とで囲まれた空間が、紙面奥行き方向に貫通した貫通空間となっている。上部貯溜部17は、第1側部12から第2側部13に向かって僅かに降下する傾斜配置の例えば円筒状に形成されている。この上部貯溜部17は、閉ループの上側部となっている。
【0030】
上記合流部15と第2側部13とは、上部貯溜部17を通して連通されている。この第2側部13は、下部貯溜部11の上面部に形成された連通孔を通して下部貯溜部11と連通されている。このように、容器2の内部は、下部貯溜部11と第1側部12と第2側部13と上部貯溜部17とが連通する閉ループ状に構成されていて、熱媒体7が容器2内を上下に循環可能となっている。すなわち、容器2内部が全体として熱対流の循環路となる閉回路となっている。本実施形態において、上部貯溜部17と第2側部13とにより、本発明でいう還流部が構成されている。すなわち、第1側部12から流出した熱媒体7が上部貯溜部17と第2側部13を通って下部貯溜部11へ向かうようになっている。上記容器2は、この形態で下部貯溜部11、第1側部12、第2側部13及び上部貯溜部17が一体的に構成されたものとなっていて、これら下部貯溜部11、第1側部12、第2側部13及び上部貯溜部17の全体に熱媒体7が貯溜されている。
【0031】
第2側部13の上端部には、容器2内に原料1を投入するための原料投入部3が設けられている。この原料投入部3は、第2側部13に上方から原料1が流下するように接続されている。これにより、投入された原料が流下してそのまま第2側部13内の熱媒体7に供給されるようになっている。
【0032】
上記原料投入部3には、ゲートバルブ3aが設けられている。このゲートバルブ3aは、図略のポンプ等によって原料貯槽(図示省略)から供給された原料1の容器2内への投入量を調整するためのものである。このゲートバルブ3aの開閉量を調整することにより、容器2内全体の貯溜量を調整できるようになっている。なお、原料投入部3は、原料1が自重で流下して容器2内に供給されるようにホッパによって構成してもよい。
【0033】
本実施形態に係る加熱釜10には、容器2内の熱媒体7を加熱するガス4を流通させる加熱ガス通路5が設けられている。この加熱ガス通路5は、下部加熱部21と、側部加熱部22と、両加熱部21,22を連通する連通部23とを備えている。
【0034】
上記下部加熱部21は、下部貯溜部11内の熱媒体7を加熱するためのものであり、容器2の外部に配設された外側加熱部25と、容器2の内部に配設された内側加熱部26とを備えている。外側加熱部25は、端部にバーナ8が配設され、略水平に延びる導入部25aと、この導入部25aの下流端に連通し、容器2の底面2aに沿って略水平に延びる底面加熱部25bと、底面加熱部25bの下流端に連通し、下部貯溜部11の側壁2bに沿って上方に延びる連絡部25cとからなる。外側加熱部25は、その外壁が耐火性の断熱材によって構成されており、この外側加熱部25内を流れるガス4の熱が外部に漏れないようになっている。なお、バーナ8の燃料としては、安価なC重油などの重質油燃料等を使用することができる。
【0035】
上記バーナ8の燃焼により、ガス4が発生し、このガス4は、導入部25a、底面加熱部25b及び連絡部25cをこの順に流れる。このとき底面加熱部25bでは、ガス4の熱が容器2の底面2aを介して下部貯溜部11内の熱媒体7に伝わる。言い換えると、容器2の底面2aは、ガス4の熱を熱媒体7に伝える伝熱面となっている。
【0036】
上記内側加熱部26は、下部貯溜部11内に配置されるものであり、複数のU字管26aによって構成されている。各U字管26aは、両端部が上下に配置されるように下部貯溜部11の一方(図2に左側)の側壁2bに固定されるとともに、この側壁2bから対向する側壁2cに向かって水平に延びるように配設されている。そして、U字管26aの湾曲部は、対向側壁2cの近傍に配置されている。このように湾曲部が容器側壁2cから離間した状態に配設されることにより、U字管26aが熱膨張してもそれに伴ってU字管26aに熱応力が作用するのを抑制できるようになっている。
【0037】
U字管26aの下側の一端部は、容器側壁2bに形成された連通孔を通して上記連絡部25cと連通されている。一方、U字管26aの上側の一端部は、容器側壁2bに形成された連通孔を通して上記連通部23と連通されている。この連通部23は、下端部で上記U字管26aに連通されるともに、容器2の外側に配設されている。そして、連通部23は、その上端部において上記側部加熱部22の下端部に連通されている。連通部23は、図示省略するが断熱材によって被覆されている。
【0038】
上記側部加熱部22は、上記第1側部12の熱媒体7を加熱するためのものであり、伝熱管部14を取り囲むように配設され、第1側部12の下端部から第1側部12に沿って上方に延びる例えば円筒状の部材によって構成されている。そして、側部加熱部22の下端部で上記連通部23と連通されている。すなわち、側部加熱部22内において、伝熱管14aの外側を上方に向かって流れるガス4によって伝熱管部14内の熱媒体7が加熱されるようになっている。
【0039】
容器2には、貯留された熱媒体7の液面7aを検出するための液面検出手段の一例としての液面センサ29が設けられている。この液面センサ29は、例えば第2側部13の上端部に配設されており、容器2内の熱媒体量が正常な循環が生じる所定範囲内になるように加熱量及び原料1の投入量をコントロールするために設けられるものである。
【0040】
また、容器2には、この容器2内に停留する成分を排出するための排出管路6が設けられている。この排出管路6は、下部貯溜部11における下端部に設けられ、原料1から分留されて容器底部に停留する重質油分を排出するのに使用される。すなわち、原料1中の重質油分は沸点が高く蒸発しにくいので、本装置の稼働時間の経過と共に重質油分の比率が高まり、この重質油分が下部貯溜部11の最下部に停留するようになる。そして、重質油分を放置しておくと割合を増していき、カーボン発生の原因となるので、排出管路6から重質油分を抜くことにより、原料1中の重質油分の割合を一定に保つようにしている。なお、排出された原料1は図略の貯槽に貯蔵することもできるが、燃料として用いることもできる。すなわち、排出管路6に開閉弁6aを設けるととともに、図1に示すように、排出管路6とバーナ8の燃料供給路31を接続して、この接続路にポンプ33を設けることにより、重質油分を燃料として利用することが可能となる。
【0041】
第1側部12の上側には、触媒槽32が設けられている。この触媒槽32は、容器2内で蒸発した油性物質を改質し精製するためのものである。なお、第1側部12の上側には、この触媒槽32に代えて分留塔を配設してもよい。
【0042】
次に図2及び図3を参照しながら、本加熱釜10の運転動作について説明する。図2に示す矢印は、ガス4の流れを示し、図3の矢印は、熱媒体7及び原料1の流動を示している。
【0043】
まず、運転の初期には、軽油や灯油等の熱媒体7が容器2内に供給され、バーナ8を燃焼させて発生する例えば700〜800℃程度のガス4によって容器2内を加熱する。すなわち、バーナ8の燃焼ガス4は、導入部25aを流れた後、底面加熱部25bで容器底面2aを加熱し、連絡部25cを通して内側加熱部26に流入する。この内側加熱部26において、燃焼ガス4は下部貯溜部11内の熱媒体7を加熱し、連通部23を通して側部加熱部22に流入する。この側部加熱部22において、燃焼ガス4は第1側部12内の熱媒体7を加熱して排出される。
【0044】
一方、容器2内部では、燃焼ガス4によって下部貯溜部11で加熱された熱媒体7は、上昇して伝熱管部14の各伝熱管14aに流入する。この熱媒体7は、伝熱管14a内で一部が沸騰する程度に加熱される。このため、伝熱管14a内では気液混合のマクロな平均密度が低い流体となって強烈な上昇流が生じる。これにより、容器2内では、熱媒体7が下部貯溜部11、第1側部12、上部貯溜部17及び第2側部13をこの順に循環する循環流が生ずる。この熱媒体7は、例えば350℃程度に加熱されている。
【0045】
引き続き、液面センサ29によって検出された液面7aが所定のレベルに達していなければ、ゲートバルブ3aを開放して、原料投入部3から原料1を投入する。この原料1としては、原油などの重質油が該当する。
【0046】
この原料1は、原料投入部3からそのまま流下して第2側部13内の熱媒体7と混合される。第2側部13内には、伝熱管部14で加熱された熱媒体7が流入しており、容器2内の中でも特に高温になっている熱媒体7が流動しているので、投入された原料1は効率よく加熱される。したがって、粘性の高い原料1が容易に熱をもらって流動性が高くなるので、原料1の投入によって自然対流が抑制されるのを防止することができる。またこのとき、熱媒体7に低温の原料1が混合されることになるので、熱媒体7の比重が大きくなり、第2側部13における下降流を加速させる。すなわち、伝熱管部14での上昇流に加えて第2側部13での下降流が容器2内での熱媒体7及び原料1の混合流体の自然対流を促進する。これにより、熱媒体7ととともに流動する原料1を下部貯溜部11及び第1側部12で効率良く加熱することができる。そして、容器2内で気化した蒸気Vは、触媒槽32へと導かれて改質される。
【0047】
以上説明したように、本実施形態1に係る加熱釜10によれば、容器2内を閉ループ状に構成するとともに、下部貯溜部11と第1側部12で熱媒体7を加熱するようにしているので、下部貯溜部11の熱媒体7が加熱されて上昇したところで更に第1側部12で熱媒体7を加熱することができる。このため、熱媒体7が容器2内の全体を循環する強力な自然対流を発生させることができる。したがって、加熱ガス通路5の周囲の熱媒体7だけでなく、容器2内の熱媒体7全体が流動するので、容器2内の一部だけで熱媒体7が自然対流する構成に比べ、容器2内での熱媒体7の加熱効率を向上でき、この熱媒体7とともに流動する原料1の加熱効率を向上することができる。しかも、第1側部12で加熱されて高温になっている熱媒体7に原料1が導入される構成としているので、原料1を効率よく且つ速やかに加熱することができる。このように、本加熱釜10では、原料1の加熱効率が高くなるので、例えば大量の原油の処理が要求される石油精製装置等に有効である。
【0048】
さらに、容器2内の熱媒体全体が流動する構成なので、高速の循環流を発生させるとともに原料1を攪拌し易くできることにより、加熱ガス通路5内のガス4によって直接加熱される部分が過度に加熱されるのを抑制できるとともに、原料1に含まれる成分が炭化して容器2内面等に付着するのを抑制することができる。したがって、C2、C3等の微粒カーボンの付着により伝熱性能が劣化するのを抑制できるとともに、付着したカーボンを除去するためのメンテナンスの頻度を減らすことができるという利点もある。
【0049】
また、本実施形態1では、原料投入部3を第2側部13の上端部に配設したので、上部貯溜部17から下部貯溜部11に向かって第2側部13内を流動する熱媒体7に原料1が供給されることになる。このため、供給された原料1によって閉ループでの熱媒体7の自然対流を促進させることができる。すなわち、熱媒体7よりも低温の原料が混合されることで熱媒体7の比重が重くなるので、熱媒体7の第2側部13内での下向きの流動を原料投入によって促進させることができる。この結果、容器2内全体での熱媒体7の自然循環を促進できて、原料1の加熱効率をさらに向上することができる。
【0050】
また、本実施形態1では、内側加熱部26が、両端部が容器2の一側壁2bに固定された複数のU字管26aによって構成されているので、U字管26aと容器2がそれぞれ熱膨張係数の異なる材質で構成される場合であっても、U字管26aの熱膨張に伴う熱応力がU字管26aと容器2との間に働くことを抑制できるので、容器2及びU字管26aが材質の制限を受けるのを緩和することができる。
【0051】
また、本実施形態1では、第1側部12に多数の伝熱管14aからなる伝熱管部14を設けるようにしたので、伝熱管14aの内部において原料1を沸騰させて気液二相流を発生させ、伝熱管14a内で上昇流を円滑に発生させることができる。これにより、比較的容積の大きな下部貯溜部11で伝熱面積を稼ぎつつ、伝熱管部14において効率よく循環駆動力を得ることができる。特に本実施形態では、伝熱管部14を細管の集合体としたので、伝熱面積を増大でき、この点においても伝熱効率の向上が図られている。
【0052】
また、本実施形態1では、液面センサ29を設けるようにしたので、液面7aが所定範囲内になるように制御をすることが可能となり、熱媒体7が溢れ出るのを防ぐことができる。また、原料1の量が少なすぎて伝熱管部14等が露出して過度に加熱してしまうようなことを防止することもできる。
【0053】
また、本実施形態1では、排出管路6を介して停留成分を外部に排出することができるので、蒸発させることができなかった重質成分を抜き取ることができる。
【0054】
また、原料投入部3の上流側にゲートバルブ3aを設けることにより、原料1の投入量をコントロールすることができるので、釜全体の油の量などをコントロールできる。
【0055】
なお、容器2の材質はステンレスに限られるものではなく、形状、材質は種々変更が可能である。
【0056】
また、燃焼ガス4は、C重油などの重質油を燃焼させることにより得られるものに限らず、例えば天然ガスなどその他の燃料を燃焼させて得られるものも採用可能である。
【0057】
(実施形態2)
図4及び図5は、第2実施形態に係る加熱釜10を概略的に示している。なお、図4では、燃焼ガス4の流れを矢印で示しており、図5では、熱媒体7及び原料1の流動方向を矢印で示している。
【0058】
前記実施形態1では、内側加熱部26が複数のU字管26aによって構成される構成としたが、本実施形態2では、内側加熱部26が、真っ直ぐに延びる複数の伝熱管26bによって構成されている。すなわち、内側加熱部26は、細管の集合体となっている。その他の構成については、実施形態1と同様なので、同じ構成要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
各伝熱管26bは、水平方向に延びる姿勢で配置されるとともに、容器2の対向する側壁2b,2c間に架設されている。そして、各伝熱管26bの一方(図4の右側)の端部が、底面加熱部25bに連通する一方、他方の端部が連絡部25cに連通されている。この連絡部25cは、容器2下部の側壁2bに沿って上下に延びるものであり、その上端部が側部加熱部22に連通している。
【0060】
この加熱釜10では、バーナ8の燃焼ガス4は、底面加熱部25bを流れて下部貯溜部11の底面2aを加熱し、その後各伝熱管26bに流入して水平方向に流れる。この燃焼ガス4は、下部貯溜部11内の熱媒体7及び原料1を加熱した後、側部加熱部22において第1側部12内の熱媒体7及び原料1を加熱する。これにより、容器2内の全体で熱媒体7及び原料1が自然循環し、原料1を効率的に気化させることができる。
【0061】
本実施形態2によれば、内側加熱部26に市場にある安価な種々の管部材を利用でき、しかも限られたスペースで下部加熱部21の伝熱面積を増大できるので、部品コストの上昇を抑制しつつ加熱効率を向上することができる。
【0062】
なお、その他の構成、作用及び効果は実施形態1と同様である。
【0063】
(実施形態3)
図6は、第3実施形態に係る加熱釜10を概略的に示している。本実施形態3では、下部加熱部21及び側部加熱部22が前記実施形態1,2に比べて簡素化された構成となっている。
【0064】
具体的に、下部加熱部21には内側加熱部が設けられておらず外側加熱部25のみの構成となっている。下部加熱部21は、導入部25aと底面加熱部25bと下側面加熱部25dとからなる。したがって、本実施形態3では、下部貯溜部11は、容器2の外側のみから加熱される構成となっている。
【0065】
側部加熱部22は、下端部が下側面加熱部25dに連通するとともに、そこから第1側部12に沿って上方に延びている。
【0066】
第1側部12は、下部貯溜部11の上面部に接続された、上下に延びる例えば円筒状の部材によって構成されている。そして、この第1側部12に伝熱管は配設されていないので、第1側部12内を熱媒体7及び原料1が分流することなく流動する。したがって、前記実施形態に比べて熱媒体7及び原料1の流動抵抗を低減することができる。
【0067】
本実施形態3においても、容器2内の全体で熱媒体7及び原料1が自然循環するので、原料1を効率的に気化させることができる。
【0068】
なお、その他の構成、作用及び効果は実施形態1と同様である。
【0069】
(実施形態4)
図7は、本発明に係る加熱油化装置の一実施形態としての溶融釜20を概略的に示している。この溶融釜20は、原料として投入された廃プラスチック等の固体成分を溶融して油化するためのものである。
【0070】
この溶融釜20の構成は、実施形態1に係る加熱釜10の構成と基本的に同じである。すなわち、容器2は、下部貯溜部11、第1側部12、上部貯溜部17及び第2側部13を備え、内部が閉ループ状に構成されている。そして、容器2内部の熱媒体7及び原料1を加熱するガス4が流れる加熱ガス通路5は、下部加熱部21と、側部加熱部22と、両加熱部21,22を連通する連通部23とを備えている。
【0071】
本実施形態4が前記実施形態1〜3と異なる点は、原料に固体成分が含まれ、容器2内でこの固体成分を溶融させる点である。原料としては、表1に示す種類のプラスチックが適用可能である。これらのプラスチックは300℃以下の融点を持つものである。
【0072】
【表1】

【0073】
固体プラスチックの油化還元の第一段階である加熱液化において、従来の方法では、これらのプラスチックを溶融させるのは非常に困難であり、伝熱特性の良くないプラスチックを如何に効率よく加熱するかが要点となっている。そこで、本実施形態4に係る溶融釜20では、300℃以上に加熱されて容器2内を高速で流動する熱媒体7にプラスチック42を適量投入することによってプラスチック42を効率よく加熱するようにしている。
【0074】
具体的には、運転の初期において軽油や灯油等の熱媒体7を容器2に供給し、300℃以上に加熱する。このとき、下部貯溜部11で加熱された熱媒体7が第1側部12の伝熱管14a内でさらに加熱され、伝熱管14a内で熱媒体7の強烈な上昇流が生ずる。そして、容器2内の全体において、熱媒体7が下部貯溜部11、第1側部12、上部貯溜部17及び第2側部13をこの順に循環する循環流が生ずる。なお、この循環する方向を図7に実線矢印で示し、ガス4の流れを破線矢印で示している。
【0075】
この状態で、原料投入部3から原料としての細断された廃プラスチック42を適量供給する。すなわち、液面センサ29によって容器2内の貯溜量が検出されており、この検出結果に応じてゲートバルブ3aの開度を調整することにより、廃プラスチック42が効率よく溶融する適量を供給することができる。そして、原料投入部3から投入された廃プラスチック42は、第1側部12の伝熱管部14で加熱された350℃程度の熱媒体7が下部貯溜部11に向かって高い流速をもって大量に流動するところに混入されるため、直ちに加熱されて液化する。そして、熱媒体7はこの液化したプラスチック42とともに流動し、下部貯溜部11及び第1側部12でさらに加熱される。これにより、軽質油成分が蒸発して蒸気Vとなり、プラスチック42の油化を行うことができる。
【0076】
したがって、本実施形態4によれば、容器2内の全体で熱媒体7を自然循環させることができ、固体のプラスチック42を効率的に溶融させることができ、プラスチック42の油化還元の第一段階である加熱液化を容易かつ確実に行うことができる。
【0077】
なお、本実施形態4では原料としてのプラスチック42を投入する構成としたが、これに限られるものではなく、例えば、原料として、原油などの重質油とプラスチックの混合物を投入するようにしてもよい。また、プラスチックとしては表1に示す種類のもの以外にも適用可能である。
【0078】
また、本実施形態4では、内部加熱部が複数のU字管26aによって構成されているが、これに代え、実施形態2のように複数の真っ直ぐな伝熱管によって構成してもよい。また第1側部12に複数の伝熱管からなる伝熱管部14が設けられる構成に代え、実施形態3のように第1側部12が例えば円筒状の部材によって構成され、熱媒体7がその中を分流されることなく流動する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態1に係る加熱釜を示す概略外観図である。
【図2】前記加熱釜の内部構成を概略的に示す図である。
【図3】前記加熱釜での熱媒体の流動方向を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る加熱釜の内部構成を概略的に示す図2相当図である。
【図5】前記加熱釜での熱媒体の流動方向を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態3に係る加熱釜の内部構成を概略的に示す図2相当図である。
【図7】本発明の実施形態4に係る加熱釜の内部構成を概略的に示す図2相当図である。
【図8】従来の加熱油化装置の内部構成を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 原料
2 容器
3 原料投入部
4 ガス
5 加熱ガス通路
6 排出管路
7 熱媒体
10 加熱釜
11 下部貯溜部(閉ループ下部の一例)
12 第1側部(閉ループ側部の一例)
13 第2側部
14a 伝熱管
17 上部貯溜部
20 溶融釜
21 下部加熱部
22 側部加熱部
26a U字管
26b 伝熱管
29 液面センサ
32 触媒槽
42 プラスチック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体の入った容器内に原料投入部を通して投入された原料を、加熱ガス通路を流れるガスで加熱して、少なくともその一部を気化させる加熱油化装置であって、
上記容器の内部は、上記熱媒体が上下に循環可能な閉ループ状に構成され、
上記加熱ガス通路は、閉ループ下部の熱媒体を加熱する下部加熱部と、上記閉ループ下部で加熱されて上昇した閉ループ側部の熱媒体を加熱する側部加熱部とを備え、
上記閉ループ側部で加熱されて上記閉ループ下部へ向かう熱媒体中に上記原料が導入されるように構成されていることを特徴とする加熱油化装置。
【請求項2】
上記閉ループ下部と、上記閉ループ側部と、上記加熱ガス通路に接することなく上記閉ループ側部及び上記閉ループ下部を連通する還流部とによって、上記容器の内部が閉ループ状に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱油化装置。
【請求項3】
上記原料投入部は、上記還流部の上方に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の加熱油化装置。
【請求項4】
上記下部加熱部は、上記閉ループ下部内に配置された複数の伝熱管を備え、
上記各伝熱管は、それぞれ一端部が上記容器の側壁を貫通して上記ガスが流入するように構成される一方、他端部が前記側壁に対向する側壁を貫通して上記側部加熱部に接続されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の加熱油化装置。
【請求項5】
上記下部加熱部は、上記閉ループ下部内に配置されたU字管を備え、
上記U字管は、一端部が上記容器の側壁を貫通して上記ガスが流入するように構成されるとともに、他端部が上記側壁を貫通して上記側部加熱部に接続されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の加熱油化装置。
【請求項6】
上記閉ループ側部は、複数の伝熱管を備え、これら各伝熱管内に閉ループ下部で加熱された熱媒体が流入する構成とされていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の加熱油化装置。
【請求項7】
上記原料は、原油を含むものであることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の加熱油化装置。
【請求項8】
上記原料は、固体成分を含むものであり、この固体成分は、上記ガスにより加熱されて溶融するものであることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の加熱油化装置。
【請求項9】
上記固体成分は、プラスチックを含むものであることを特徴とする請求項8に記載の加熱油化装置。
【請求項10】
上記閉ループ側部の上端部には、上記容器の内部で蒸発した原料を反応させる触媒槽と、上記容器の内部で蒸発した原料を分留させる分留塔との少なくとも一方が接続されていることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の加熱油化装置。
【請求項11】
上記熱媒体の液面を検出する液面検出手段を備えていることを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の加熱油化装置。
【請求項12】
上記容器内に停留する成分を排出する排出管路を備えていることを特徴とする請求項1から11の何れか1項に記載の加熱油化装置。
【請求項13】
熱媒体の入った容器内に原料を投入し、この原料をガスで加熱して少なくともその一部を気化させる加熱油化方法であって、
上記容器として、上記熱媒体が上下に循環可能な閉ループ状に構成されたものを使用し、
上記ガスにより閉ループ下部で熱媒体を加熱するとともに、この加熱されて上昇した熱媒体を上記ガスによってさらに閉ループ側部で加熱し、
上記閉ループ側部で加熱された熱媒体が上記閉ループ下部に向かって下方に流動するところに上記原料を投入することを特徴とする加熱油化方法。
【請求項14】
上記原料は、固体成分が含まれるものであり、
上記熱媒体が上記閉ループ側部で上記固体成分の溶融温度以上に加熱されることを特徴とする請求項13に記載の加熱油化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−328338(P2006−328338A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209081(P2005−209081)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(505164575)株式会社SUN風 (4)
【Fターム(参考)】