説明

加熱装置

【課題】電磁誘導加熱方式の励磁コイルにおいて、励磁コイルと発熱ローラ間で磁気結合を改善し、発熱量を改善するとともに長手方向全体に渡って均一な温度分布となる励磁コイルを提供する。
【解決手段】第1の長手部と、第2の長手部と、前記第1の長手部と第2の長手部を連結する2つの渡り部と、で構成され、前記第1の長手部と前記第2の長手部は同一方向に湾曲され、前記第1の長手部と前記第2の長手部の少なくとも一方の垂直断面形状は、曲率の異なる少なくとも2つの領域で形成し、前記両端渡り部は内面形状が、前記長手部の内面円弧部より外側に置かれた略平坦部を有し、前記渡り部の外形断面形状は、長手方向部の外側断面形状より大きく形成した構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱方式の加熱装置に関し、特に電子写真装置あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の画像形成装置に用いられ未定着画像を定着する定着装置の加熱手段としての誘導加熱用励磁コイルおよびその製造方法、前記誘導加熱用励磁コイルを用いた電磁誘導方式の加熱装置、前記加熱装置を具備した電子写真装置・静電記録装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタ、複写機などの画像形成装置に対しこれらの定着装置としては省エネルギ化および高速化の為、ハロゲンランプ等に変わる加熱源として電磁誘導加熱方式の定着装置が広く採用されるようになってきている。かかる電磁誘導加熱方式の定着装置では、発熱体に磁場生成手段により生成した磁場を作用させ、この渦電流により前記発熱体をジュール発熱させるものである。この加熱装置は例えば、画像形成手段によって転写紙及びOHPシートなどの記録媒体上に形成された未定着画像を加熱する画像形成装置の定着装置として用いることができる。
【0003】
ところでかかる電磁誘導加熱方式の加熱装置を用いた定着装置は、励磁コイルによる磁界で円筒状の発熱ローラ表面に設けた導電層に渦電流を発生させ発熱体をジュール加熱する構成を取っており、長手方向全体での温度均一を図り、しかも異なる記録材の記録に対応するためおよび装置の小型化を狙って、単一の励磁コイルを使用し、磁性部品で調整する構成があった(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−43049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、異なる記録材を処理するため(特許文献1)の構成では単一の励磁コイルを用い、発熱体の長手方向に渡って温度を均一化するための、温度分布の調整用に磁性部品をコイルに近づけたり離したりしてコントロールする構成を採っており、長手方向の小型化に対しては効果があるが、径方向では磁性部品の配置に伴い、逆に大型となり必ずしも小型化ができるわけではなかった。また、温度分布を調整するために、磁性部品をコイルに近づけたり、離したりする為、励磁コイルのインダクタンスが調整毎に変動することになり、調整裕度が少ない電磁誘導装置において、コイルインダクタンスと回路との整合がとれず電磁誘導加熱に要する電力を十分には供給できないことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決する為に、本発明の誘導加熱用励磁コイルは、発熱体に沿った、第1の長手部と、第2の長手部と、前記第1の長手部と第2の長手部を連結する2つの渡り部と、を備え、前記2つの渡り部は、前記長手部の表面より外側に積層して巻回してコイルを形成し、前記コイルを複数個数、長手方向に沿って並べて備えた構成とした。
【0006】
この構成により、渡り部の長さを短縮でき長手方向の励磁コイルの長さを長くできるため、誘導加熱するための最適な磁界を形成することができ、小型で高精度の誘導加熱用励磁コイルを提供できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、巻線の際にコイル保持部材の曲面にあった励磁コイルの曲面を成形するので、巻線後に導線へ力を加えることが無く、従って巻線後の断面形状を変化させるこ
とがなく、導線の絶縁被覆にストレスを加えることがなくなり信頼性が向上する。また、金型のカーブを部分的に細かく変えることができるので、発熱体の温度分布を細かく調整し、発熱体全体に渡って均一な温度分布とすることができ、高精度な励磁コイルを提供できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
請求項1の励磁コイルは、発熱体に沿った、第1の長手部と、第2の長手部と、第1の長手部と第2の長手部を連結する2つの渡り部と、を備え、2つの渡り部は、長手部の表面より外側に積層して巻回してコイルを形成し、コイルを複数個数、長手方向に沿って並べた構成を採る。
【0009】
この構成によれば、渡り部の長さを短縮でき長手方向の励磁コイルの長さを長くできるため、誘導加熱するための最適な磁界を形成することができ、小型で高精度の誘導加熱用励磁コイルを提供できる。また、複数の励磁コイルを選択して通電することにより、異なる記録材でも温度分布が均一な誘導加熱用励磁コイルを提供できる。
【0010】
請求項2の励磁コイルは、請求項2の誘導加熱用励磁コイルにおいて、奇数個数長手方向に沿って備えた構成を採る。
【0011】
この構成によれば、中央部に配置した励磁コイルとその両側に配置される複数の励磁の組み合わせで左右対称の発熱体の温度分布とすることができる。
【0012】
請求項3の励磁コイルは、請求項2の誘導加熱用励磁コイルにおいて、渡り部の厚みを3mm〜10mmとした構成を採る。
【0013】
この構成によれば、発熱体の長手方向の温度分布を有効に活用しかつ励磁コイルの小型化ができる。
【0014】
請求項4記載の加熱装置は、記録媒体に形成された未定着画像を加熱する加熱定着手段の加熱手段として、請求項1から請求項4に記載の励磁コイルを用いる構成を採る。
【0015】
この構成にすれば、記録媒体上に形成された未定着画像を定着装置により回転方向全体にわたり均一に加熱定着できる加熱装置を提供できる。
【0016】
請求項5記載の定着装置は、記録媒体に形成された未定着画像を加熱する加熱定着手段の加熱手段として、請求項5に記載の加熱装置を用いる構成を採る。
【0017】
この構成にすれば、記録媒体上に形成された未定着画像を加熱装置により回転方向全体にわたり均一に加熱定着できる定着装置を提供できる。
【0018】
請求項6の画像形成装置は、記録媒体上に形成された未定着画像を加熱定着する加熱手段として、請求項6記載定着熱装置を用いる構成を採る。
【0019】
この構成によれば、記録媒体上に形成された未定着画像を定着装置により回転軸方向の加熱幅全体に渡り均一に加熱定着することができる画像形成装置を提供できる。
【0020】
本発明の骨子は、複数の励磁コイルを組み合わせて、異なる記録材を定着する定着装置において、発熱体の長手方向に渡って温度分布を均一化できる構成を示すものである。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図にお
いて同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係わる励磁コイルを定着装置として用いた画像形成装置を示す断面図の一例である。図1において11は、電子写真感光体(『以下感光ドラム』という)である。感光ドラム11は、矢印の方向に所定の周速度で回転駆動されながら、その表面が帯電器12によってマイナスの暗電位V0に一様に帯電される。13はビームスキャナであり、図示しない画像読取装置やコンピュータ等のホスト装置から入力される画像装置の時系列的電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビーム14を出力する。帯電された感光ドラム11の表面は、このレーザビーム14によって走査露光される。これにより、感光ドラム11の露光部分は電位絶対値が低下して明電位VLとなり静電潜像が形成される。この潜像は現像器15のマイナスに帯電したトナーによって現像され顕像化される。
【0023】
現像器15は、回転駆動される現像ローラ16を備えている。現像ローラ16は感光ドラム11と対向して配置されており、その外周面には、トナーの薄層が形成される。現像ローラ16には、その絶対値が感光ドラム11の暗電位V0よりも小さく、明電位VLよりも大きい現像バイアスが印加されており、これにより現像ローラ16上のトナーが感光ドラム11の明電位VLにのみ転写されて、潜像が顕像化される。
【0024】
一方、給紙部17からは記録材205が一枚ずつ給送され、レジストローラ対18を経て、感光ドラム11と転写ローラ19のニップ部へ、感光ドラム11の回転と同期した適切なタイミングで送られる。そして、感光ドラム11上のトナー像は、転写バイアスが印加された転写ローラ19により記録材205に順次転写される。記録材205が分離されたあとの感光ドラム11は、その表面の転写残りトナー等の残留物がクリーニング装置20によって除去され、繰り返し次の画像形成に供される。
【0025】
21は定着ガイドであり、この定着ガイド21によって、転写後の記録材205の定着装置22への移動が案内される。記録材205は感光ドラム11から分離された後、定着装置22へ搬送され、これにより記録材205上に転写されたトナー像が定着される。23は排紙ガイドであり、この排紙ガイド23によって定着装置22を通過した記録材205が装置外へ案内される。これらの定着紙ガイド21、排紙ガイド23は、ABSなどの樹脂によって構成されている。尚、定着ガイド21、排紙ガイド23は、アルミなどの非磁性体の金属によって構成することもできる。トナー像が定着された後の記録材205は排紙トレイ24へ案内される。
【0026】
25は装置本体の底板、26は装置本体の天板、27は本体シャーシであり、これらは一体となって装置全体の強度を担うものである。これらの部材は磁性材料である鋼を基材とし、亜鉛メッキを施した材料によって構成されている。
【0027】
28は冷却ファンであり、この冷却ファン28は装置内に気流を発生させる。29はアルミなどの非磁性体の金属を含む遮蔽部材としてのコイルカバーであり、このコイルカバー29は、励磁コイル105及びアーチコア106の背面を覆うように構成されている。
【0028】
次に、本実施の形態の一例の加熱装置としての定着装置について詳細に説明する。
【0029】
図2は本発明の実施の形態に係る定着装置を示す説明図である。
【0030】
図2に示す定着装置は画像形成装置に用いられる電磁誘導加熱方式の定着装置であり、
誘導加熱手段100の電磁誘導により外周面に沿って加熱される発熱ローラ(第1の回転体)201と、発熱ローラ201と平行に配置された定着ローラ202と、発熱ローラ201と定着ローラ202とに張架されて電磁誘導により加熱されるとともに定着ローラ202の回転により矢印A方向に回転する無端帯状の発熱ベルト(第2の回転体)203と、発熱ベルト203と接触してニップ部を形成して定着ローラ202に圧接されるともに発熱ベルト203に対して順方向に回転する加圧ローラ(加圧部材)204と、発熱ベルト203および発熱ローラ201を挟んで励磁コイル105と対向する対向コア110と、を備えている。対向コア110の材料は、フェライト、パーマロイ等の強磁性体を用いることができる。対向コア110は、励磁コイルで生成される磁束の大半が対向コア110を通るので、励磁コイル外側への漏洩磁束が少なく、励磁コイルの磁束を有効に活用できる。
【0031】
発熱ローラ201はたとえばFe、Ni、及びその合金類(SUS等)の中空円筒状の強磁性金属部材からなり、外径がたとえば20mm、肉厚がたとえば0.1mm〜0.2mmとされて、低熱容量で昇温の速い構成となっている。
【0032】
定着ローラ202は、たとえばSUS等の金属製の芯金202aと、耐熱性を有するシリコーンゴムをソリッド状または発泡状にして芯金202aを被覆した弾性部材202bとを含む。そして、加圧ローラ204からの押圧力でこの加圧ローラ204との間に所定幅の接触部(ニップ部N)を形成するために外径を30mm程度として発熱ローラ201より大きくしており、弾性部材202bの肉厚を3〜8mm程度、硬度を15〜50°(Asker C)程度としている。
【0033】
このような構成により、発熱ローラ201の熱容量が定着ローラ202の熱容量より小さくなるので、発熱ローラ201が急速に加熱されてウォームアップ時間が短縮される。
【0034】
発熱ローラ201と定着ローラ202の間に張架された発熱ベルト203は、発熱ローラ201の外周面に配置された誘導加熱手段100によって加熱されるとともに、加熱された発熱ローラ201との接触部位Lで熱伝導加熱される。そして、駆動手段(図示せず)による定着ローラ202の回転に伴う発熱ベルト203の回転によって発熱ベルト203の内面が連続的に加熱され、結果としてベルト全体に渡って加熱される。
【0035】
発熱ベルト203は、基材がガラス転移点360(℃)のポリイミド樹脂中に銀粉を分散して導電層を形成した、直径50mm、厚さ50μmの薄肉の無端状ベルトで構成されている。導電層は、厚さ10μm銀層を2〜3積層した構成としてもよい。また、さらに、この発熱ベルト203の表面には、離型性を付与するために、フッ素樹脂を含む厚さ5μmの離型層(図示せず)を被覆してもよい。発熱ベルト203の基材のガラス転移点は、200(℃)〜500(℃)の範囲であることが望ましい。さらに、発熱ベルト203の表面の離型層としては、PTFE、PFA、FEP、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂やゴムを単独であるいは混合して用いてもよい。
【0036】
なお、発熱ベルト203の基材の材料としては、上述のポリイミド樹脂の他、フッ素樹脂等の耐熱性を有する樹脂、電鋳によるニッケル薄板及びステンレス薄板等の金属を用いることもできる。例えば、この発熱ベルト203は、厚さ40μmのSUS430(磁性)又はSUS304(非磁性)の表面に、厚さ10μmの銅メッキを施した構成のもの、あるいは厚さ30〜60μmのニッケル電鋳ベルトであってもよい。
【0037】
また、発熱ベルト203は、モノクロ画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合には離型性のみを確保すればよいが、この発熱ベルト203をカラー画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合にはゴム層を形成して弾性を付与することが望ましい。
【0038】
加圧ローラ204は、たとえばSUSまたはAl等の熱伝導の高い金属製の円筒部材を含む芯金204aと、この芯金204aの表面に設けられた耐熱性およびトナー離型性の高い弾性部材204bとから構成されている。
【0039】
電磁誘導により発熱ローラ201を加熱する誘導加熱手段100は、図2に示すように、励磁コイルユニットと、発熱ローラと発熱ベルトで構成している。例示コイルユニットは、磁界発生手段である励磁コイル105と、コイル保持部材109とを有している。ここで、コイル保持部材109は発熱ローラ201の外周面に近接配置された半円弧形状をしており、発熱ローラと励磁コイル105との断熱部材としての働きと、励磁コイル105の固定および、アーチコア106、センターコア107、およびサイドコア108の固定をする部材として構成されている。すなわち、コイル保持部材109は、発熱ローラ部分の温度は、定着温度の例えば170℃に達するため、近接している励磁コイル105へ輻射熱を遮断し、励磁コイル105の発熱を抑制できる。
【0040】
励磁コイル105に使用する導線は、素線径φ0.05〜φ0.2の線を束ねたリッツ線束を1〜10束組み合わせて形成される。リッツ線束の外径は最大で2mmの外径の線束を組み合わせて使用しており、コイル厚みは2mmの厚みにできる。さらに薄いコイル厚みに対応するために、リッツ線の1束の撚り本数を10〜40本で構成することができる。なお、リッツ線の外径は、JIS C3005によれば、(数1)で算出できる。
【0041】
【数1】

【0042】
(ここで、D:リッツ線の外径、d:リッツ線の素線の外径、n:素線本数)。
【0043】
したがって、リッツ線束を複数束組み合わせて同時に巻線することにより、巻間にあわせて励磁コイルの厚みの厚い部分と励磁コイルの薄い部分とが巻線できるようになる。また、素線径がφ0.2より大きい線径では高周波の交流電流による電気抵抗が大きくなり、励磁コイルの発熱が過大となる。
【0044】
図3は本発明の実施の形態に係わる励磁コイルユニットを示す図である。
【0045】
図3に示す励磁コイルユニットのように、励磁コイル105の外側には、励磁コイル105の背面を覆うアーチ状に形成されたアーチコア106と、励磁コイル105の巻回中心に配置されたセンターコア107と、励磁コイル105の巻回束の両端に配置されたサイドコア108と、で構成されている。コアの材料は、フェライト、パーマロイ等の強磁性体を用いることができる。励磁コイル105は、中央部105a、105b、105cの3つのコイルで構成され、異なる記録材に対応できるように構成されている。また、励磁コイル105間の渡り部分には、磁性部品121が配置されている。
【0046】
センターコア107とサイドコア108はアーチコア106と共に磁路を構成している。このため発熱ベルトの外側では、励磁コイル105によって生成された磁束の大半がこの3種類のコアを通過しコアの外部への漏洩磁束を減らしている。なお、これら3種類のコアは必ずしもすべてが必要でなく、1種類の場合もあるし、いくつか組合せる場合もあるし、ない場合もある。
【0047】
ここで、センターコア107及びサイドコア108はアーチコア106と一体でもよい
し別々の部材を組み合わせてもよい。
【0048】
励磁コイル105には駆動電源(指示せず)から10kHz〜1MHzの高周波交流電流、好ましくは20kHz〜800kHzの高周波交流電流が給電され、これにより励磁コイル105、アーチコア106、センターコア107およびサイドコア108と対向コア110間に交番磁界を発生する。駆動電源からは、幅の狭い記録材に対応するには、105aに通電し、幅の広い記録材を処理する場合は、105a,105b,105cに通電する構成としている。そして、発熱ローラ201と発熱ベルト203との接触領域Lおよびその近傍部においてこの交番磁界が発熱ローラ201に作用し、これらの内部では上記の磁界の変化を妨げる方向に渦電流が流れる。
【0049】
この渦電流が発熱ローラ201の抵抗に応じたジュール熱を発生させ、主として発熱ローラ201と発熱ベルト203との接触領域およびその近傍部において発熱ローラ201が電磁誘導発熱して加熱される。
【0050】
このようにして加熱された発熱ベルト203は、定着ニップ部Nの入口側においてサーミスタなどの熱応答性の高い感温素子を含む温度検出手段112により、ベルトの内面温度が検知される。
【0051】
これにより、温度検知手段112が発熱ベルト203の表面を傷付けることがないので、定着性能が継続的に確保されるとともに、発熱ベルト203の定着ニップ部Nに入る直前の温度が検知される。そして、この温度情報を基に出される信号に基づき誘導加熱手段100への投入電力を制御することにより、発熱ベルト203の温度がたとえば170℃に安定維持される。
【0052】
定着装置の上流側に配設された画像形成部(図示せず)において記録材205上に形成されたトナー画像206が定着ニップ部Nに導入される際には、加熱手段100により加熱された発熱ベルト203の表面温度と裏面温度との差が小さくなった状態で定着ニップ部Nに送り込まれる。そのため、ベルト表面温度が設定温度に対して過度に高くなる、いわゆるオーバーシュートを抑え安定した温度制御を行うことが可能になる。
【0053】
次に本実施の形態に係る励磁コイルについて説明する。
【0054】
図4(a)は、本実施の形態に係る加熱装置の励磁コイルの斜視図である。
【0055】
図4(b)は、本実施の形態に係る加熱装置の励磁コイルの正面図であり、図4(c)は励磁コイルの側面図である。
【0056】
励磁コイル105a、105b、105cは、それぞれ第1の長手部301aと第2の長手部301bと、第1の長手部と第2の渡り部を連結する2つの渡り部402を有し、第1の長手部と第2の長手部の間隔は5mmから30mmの範囲で間隔G1を設けている。間隔Gが5mmより狭い部分の長手部同士より生成される磁界は、発熱体への影響が少なくなるし、30mmより大きいと励磁コイル105が大きく形成しなければならなくなる。
【0057】
渡り部402は、厚みTが3〜10mmとし、中央部に凹部401を設けている。厚みTは、導線束の最大外形のφ2より大きく設定すれば渡り部の形状の増大を防ぐことができる。励磁コイルは、巻型(図示せず)により巻線され、渡り部402は、発熱体側から巻線され、巻き終わりは発熱体から離れる。図10に示すように必ずしも巻はじめから順に積層され巻回されることはなく、発熱体側から巻線に従って積み上げられ巻線する。従
来の励磁コイルの渡り部は、内側および外側の形状は略長手部と等しく巻線され、励磁コイル105の厚みが長手部巻線と略等しくしていた。従って、渡り部のコイル厚み長手部より厚く巻線することで、渡り部の長手方向の厚みTを短縮できて、励磁コイル105全体として短くすることができる。
【0058】
また、凹部の幅G2は、長手部の間隔G1と略等し、凹部の高さDは、10mmより低い高さで設定する。10mmより高いと励磁コイル105の渡り部402の外形が大きくなり、定着装置としても大きくなる。渡り部の厚みTは、複数の励磁コイルを組み合わせるためにはできるだけ薄く設定するが、3mmより薄くなると、渡り部402の径が大きくなるし、逆に10mmより厚くなると、励磁コイル105間の発熱体を加熱する有効磁界成分が少なくなり温度むらが発生する。
【0059】
励磁コイル105の渡り部402間、例えば105aと105bの励磁コイル間同士の凹部の下側には、磁性部品121を配置する。磁性部品121の形状は、略直方体の形状とし、磁性部品121の長さは、双方の渡り部を合わせた長さと同等以上の長さにする。また、厚みは、凹部の厚みに略等しくするか、発熱体の温度分布を考慮して、0〜10mmの範囲で決定する。また磁性部品の材料としては、フェライトやFeやFe合金(パーマロイ等)が使用できる。凹部を設ける構成では、渡り部402の構成は巻き終わり部が巻始めより発熱体から離れる構成をとらない場合でも適用できる。
【0060】
磁性部品121の形状は、直方体だけでなく、半円柱や、三角柱やかまぼこ型等任意に選択してもよい。
【0061】
図3に示すように長手方向の間にセンターコアを配置する構成においても渡り部402にはセンターコア107とは、別に磁性部品121を配置する。
【0062】
磁性部品121は、長手方向の温度分布の状態では、配置しない場合もあり、渡り部402の長手方向の長さ3〜10mm程度とした場合には省略する場合がある。
【0063】
励磁コイル105および磁性部品は、コイル保持部材109に例えば接着剤にて固定される。接着剤としては、耐熱の高い材料が望ましく、例えばシリコン系の接着剤を用いることができる。
【0064】
励磁コイル105は、1〜9個の範囲で使用し、奇数個で構成するのが望ましい。奇数個に設定したほうが発熱体の左右の対称性がとりやすいが、もちろん偶数個で構成しても発熱体の温度の均一化および対称性は可能である。
【0065】
また、図9に複数の励磁コイル105で構成された加熱装置の発熱体の温度分布を示す。実施の形態の一例として、A4サイズの記録材に対応する長手方向中央部に配置する励磁コイル105aとその両側に励磁コイル105b、105cを配置し、105a、105b、105cを接続して、A3サイズの記録材に対応する励磁コイル105とした場合の発熱体の温度を示す。この構成にすることでA3サイズとA4サイズの記録材の温度分布の調整が可能である。
【0066】
実施の形態では、3個の励磁コイルの例で示したが、様々な記録材の大きさに対応するには、複数個の励磁コイルを組み合わせることで、調整できることは言うまでもない。
【0067】
また、図5に、本発明の加熱装置の中での励磁コイルの形状を説明する。
【0068】
図5(b)に示すように、励磁コイル105長手方向のF−F垂直断面形状は、発熱ベ
ルト203に沿った形状とし円弧からなる曲線部分Cと平坦部H1と曲線部H2からなり、発熱ベルト203は図の矢印方向に回転する。励磁コイル105の端部は円弧の中心より発熱ローラ側に発熱ベルト203の形状に沿って延びた構成とした。
【0069】
かかる励磁コイル105を発熱ベルト203に沿って延びた構成とすることで、発熱ベルト203の表面の導電層を流れる渦電流の発生する面積を増加させて、発熱ベルト203の発熱量を増加させることができる。本発明の実施の形態では、曲線部Cの原点Oより発熱ベルト203に沿って5mmの延長をし、ベルトが170℃まで立ち上がる時間が約2秒短くできた。発熱ベルト203に沿って励磁コイル105を延長する長さは、0〜10mmの範囲が望ましく、10mmを超えると発熱ローラ201内に配置された対向コア110との結合の効果が少なくなる。
【0070】
また、図5(b)の実施の形態では、曲線部Cからなる円弧と平坦部H1,曲線部H2で構成した例を示したが、発熱ベルト203の膨らみにあわせた場合や、延長する長さを考慮して、図5(c)のように円弧から連結される両端を平坦部で構成することもできるし、図5(d)に示すように円弧から連結される部分を円弧で構成してもよい。
【0071】
図6はコイル厚みが均等な場合のコイルの角度と発熱分布を、図7はコイル厚みを一部薄くした場合の発熱分布を示す。従ってコイルの厚みを調整することで、発熱体の温度を調整することができるので、発熱体上の渦電流量が減少し、発熱体の温度を長手方向全体に渡って細かく調整することができる。
【0072】
励磁コイルは鞍型コイルで構成しているが両端部の渡り部はその中央部に内側の径より離れて平坦部401を有している。鞍型コイルで構成することで、発熱体に長手方向の長さを長く採ることができ、全体の長さを短くすることができる。
【0073】
また、図4に示すように異なる記録材に対応するためには励磁コイルを複数組み合わせて構成するが、複数の励磁コイルで構成した場合の励磁コイル間の渡り部の磁界低下を補正するため、平坦部の内側に磁性部品を追加して、発熱体全体での温度分布を均一化することができる。
【0074】
図8は本発明の実施の形態の別の構成を示す図である。
【0075】
本実施の形態では、発熱ローラと定着ローラ間を発熱ベルトで張架した、2軸タイプの構成について述べたが、本発明の加熱装置としては、発熱ローラと定着ローラが一体の1軸構成も考えられる。1軸の構成を採ることにより、小型化が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る励磁コイルは、励磁コイルを用いた電磁誘導方式の加熱装置、加熱装置を具備した電子写真装置・静電記録装置などの画像形成装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる励磁コイルを定着装置として用いた画像形成装置を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態に係る定着装置を示す説明図
【図3】本発明の実施の形態に係わる励磁コイルユニットを示す図
【図4】本発明の実施の形態に係わる励磁コイルを示す図
【図5】本発明の実施の形態に係わる加熱装置を示す図
【図6】(a)本発明の実施の形態に係る均一コイル厚みの加熱装置の断面図、(b)(a)の断面図に対応する定着ローラ上の発熱量を示すグラフ
【図7】(a)本発明の実施の形態に係るコイル厚みをかえた加熱装置断面図、(b)(a)の断面図に対応する定着ローラ上の発熱量を示すグラフ
【図8】本発明の実施の形態の別の構成を示す図
【図9】複数の励磁コイルで構成された加熱装置の発熱体の温度分布を示す図
【図10】渡り部の断面図
【図11】従来のコイル構成図
【符号の説明】
【0078】
22 定着装置
100 誘導加熱手段
105 励磁コイル
106 アーチコア
107 センターコア
108 サイドコア
109 コイル保持部材
110 対向コア
121 磁性部品
201 発熱ローラ
202、202a、202b 定着ローラ
203 発熱ベルト
204、204a、204b 加圧ローラ
401 凹部
402 渡り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体に沿った、第1の長手部と、第2の長手部と、前記第1の長手部と第2の長手部を連結する2つの渡り部とを備え、
前記2つの渡り部は、前記長手部の表面より外側に積層して巻回したコイルを形成し、
前記コイルを複数個数、長手方向に沿って並べたことを特徴とする誘導加熱装置用励磁コイル。
【請求項2】
前記励磁コイルは、奇数個数長手方向に沿って備えたことを特徴とする請求項1の誘導加熱装置用励磁コイル。
【請求項3】
前記渡り部の厚みを3mm〜10mmとしたことを特徴とする請求項1の誘導加熱用励磁コイル。
【請求項4】
記録媒体に形成された未定着画像を加熱する加熱定着手段の加熱手段として、請求項1から請求項4に記載の励磁コイルを用いることを特徴とする加熱装置。
【請求項5】
記録媒体上に形成された未定着画像を加熱定着する加熱手段として、請求項5記載の加熱装置を用いることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
記録媒体上に形成された未定着画像を加熱定着する加熱手段として、請求項6記載の定着装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−24493(P2006−24493A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202864(P2004−202864)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】