説明

加熱装置

【課題】電源開閉手段を共通化しコストダウンをはかるとともに、加熱可能な加熱手段の使用ができ、利便性のよい多口の加熱装置を提供することを目的とする。
【解決手段】第1、第2加熱手段6、7と、第1、第2制御手段8、9と、共通化した電源開閉手段10とを備え、第1、第2制御手段8、9には、第1、第2駆動手段8a、9aと、第1、第2接点検知手段8b、9bと、第1、第2駆動無効手段8c、9cとを有している。そして、通常は第1制御手段8が第1駆動手段8aで電源開閉手段10を駆動するとともに第1接点検知手段8bにて接点状態を検知し、第1駆動無効手段8cにて第2駆動手段9aによる電源開閉手段10の駆動を無効にするように制御する。これにより、電源開閉手段10を減らしコストダウンをはかるとともに、故障した加熱手段以外の加熱可能な加熱手段の使用ができ、利便性を保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多口誘導加熱調理器などの加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱装置は、商用電源と加熱手段の接続を開閉する電源開閉手段(電源リレー)と、微小電流の電源スイッチとを備えて、機器を使用する場合には電源スイッチを操作して商用電源と加熱手段を接続し鍋などの加熱を行い、使用しない場合には電源スイッチを操作して電源開閉手段を開にして加熱手段への電源供給を遮断することにより、機器の安全性を実現している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、複数の加熱手段を有する多口の加熱装置の場合、それぞれの加熱手段と商用電源間に電源開閉手段を備えることで、多口の内の1口が故障した場合でもその他の加熱手段を使用できるようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−260540号公報
【特許文献2】特開2004−158386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、多口の加熱装置の場合、電源開閉手段をそれぞれの加熱手段と商用電源間に用いるので、電源開閉手段のコストがかかってしまう。また、電源開閉手段を共通とした場合には、それぞれの加熱手段には属さない電源開閉手段の駆動手段が必要となるが、その駆動手段が故障した場合、本来加熱手段にて加熱することが可能であるにもかかわらず、すべての加熱手段が使用できないという課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電源開閉手段を共通化しコストダウンをはかるとともに、加熱可能な加熱手段の使用ができ、利便性のよい加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱装置は、独立して加熱できる第1および第2加熱手段と、それぞれの加熱手段を制御する第1および第2制御手段と、前記第1および第2加熱手段への電力の供給を共通で入り切りする電源開閉手段とを備え、前記第1および第2制御手段それぞれには、前記電源開閉手段を駆動する第1および第2駆動手段と、前記電源開閉手段の接点状態を検知する第1および第2接点検知手段と、前記第2駆動手段を無効にする第1駆動無効手段および前記第1駆動手段を無効にする第2駆動無効手段とを有し、通常は前記第1制御手段が前記第1駆動手段で前記電源開閉手段を駆動するとともに前記第1接点検知手段にて接点状態を検知し、前記第1駆動無効手段にて前記第2駆動手段による前記電源開閉手段の駆動を無効にするように制御するものである。
【0007】
これにより、電源開閉手段を減らしコストダウンをはかるとともに、故障した加熱手段以外の加熱可能な加熱手段の使用ができ、利便性を保つことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加熱装置は、電源開閉手段の数を低減してコストダウンをはかるとともに、故障した加熱手段以外の加熱手段の使用を可能とし、利便性を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、独立して加熱できる第1および第2加熱手段と、それぞれの加熱手段を制御する第1および第2制御手段と、前記第1および第2加熱手段への電力の供給を共通で入り切りする電源開閉手段とを備え、前記第1および第2制御手段それぞれには、前記電源開閉手段を駆動する第1および第2駆動手段と、前記電源開閉手段の接点状態を検知する第1および第2接点検知手段と、前記第2駆動手段を無効にする第1駆動無効手段および前記第1駆動手段を無効にする第2駆動無効手段とを有し、通常は前記第1制御手段が前記第1駆動手段で前記電源開閉手段を駆動するとともに前記第1接点検知手段にて接点状態を検知し、前記第1駆動無効手段にて前記第2駆動手段による前記電源開閉手段の駆動を無効にするように制御する加熱装置としたものである。これにより、電源開閉手段を減らしコストダウンをはかるとともに、故障した加熱手段以外の加熱可能な加熱手段の使用ができ、利便性を保つことができる。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明において、各制御手段それぞれには、第1および第2通信手段を備え、第1接点検知手段にて電源開閉手段の接点異常を検知した場合には、第1通信手段にて接点異常を第2制御手段の第2通信手段に送信するとともに、第1駆動無効手段による第2駆動手段の無効化を止めることにより、電源開閉手段を直接駆動していない第2制御手段側も、電源開閉手段の接点異常を知ることができ、特に、溶着などの場合には加熱を停止し、安全性を保つことができる。
【0011】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、接点異常時は、第2駆動無効手段にて第1駆動手段を無効にするとともに、第2制御手段の第2駆動手段にて電源開閉手段を駆動することにより、第1駆動手段が故障した場合でも、第2駆動手段にて電源開閉手段を駆動し各加熱手段が加熱を行うことができる。
【0012】
第4の発明は、特に、第2または第3の発明において、通信異常時は、第2駆動無効手段にて第1駆動手段を無効にするとともに、第2制御手段の第2駆動手段にて電源開閉手段を駆動することにより、第1制御手段が故障し通信手段による通信が不可能となった場合には、第2駆動手段にて電源開閉手段を駆動し第2加熱手段にて加熱を行うことができるとともに、通信手段のみの異常の場合には、各加熱手段が加熱を行うことができる。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における加熱装置として多口誘導加熱調理器を例示している。
【0015】
図に示すように、本実施の形態における加熱装置は、商用電源1、商用電源1を整流するダイオードブリッジ2および3、ダイオードブリッジ2および3で整流された電源を平滑する平滑コンデンサ4および5、独立して加熱できる第1加熱手段6および第2加熱手段7を備えている。そして、第1加熱手段6および第2加熱手段7は、それぞれ加熱コイル、共振コンデンサ、スイッチング素子から高周波磁界を発生させて、加熱コイル上にあるトッププレート(図示せず)を介して鍋などの被加熱物を誘導加熱する。
【0016】
第1制御手段8および第2制御手段9は、第1加熱手段6および第2加熱手段7内の各スイッチング素子のオン・オフをコントロールし、鍋などに加わる火力を独立して制御する。電源開閉手段10は商用電源1と第1加熱手段6および第2加熱手段7の接続の開閉を行う共通化したリレーである。
【0017】
第1制御手段8および第2制御手段9は、それぞれ電源開閉手段10を駆動する第1駆動手段8aおよび第2駆動手段9aを有し、これらはそれぞれが属する制御手段に従い、トランジスタ11およびフォトカプラ12aを駆動し電源開閉手段10のコイルに電圧を印加することで電源開閉手段10の開閉を行っている。ここで、電源開閉手段10の駆動にトランジスタ11とフォトカプラ12aを用いているのは、異なるダイオードブリッジで基準電位を設けているので、機能絶縁のために片側をフォトカプラとしている。なお、全ての制御手段8および9の基準電位を共通とする場合には、フォトカプラ12aをトランジスタとしてもよい。
【0018】
また、第1制御手段8および第2制御手段9は、電源開閉手段10の接点の開閉状態を検知する第1接点検知手段8bと第2接点検知手段9bを有している。第1接点検知手段8bは第1駆動手段8aにて電源開閉手段10を駆動していない時は「開」、第1駆動手段8aにて電源開閉手段10を駆動している時は「閉」、と検知した場合は正常と判断し、各々逆の場合は接点異常と判断する。
【0019】
第1制御手段8は第1接点検知手段8bにより検知された接点状態により、正常の場合は第1加熱手段6の加熱を可能とし、異常の場合は、第1加熱手段6による加熱を禁止するとともに、第1駆動手段8aは所定回数(例えば、8回)の打ち直し(オン・オフの繰り返し)をする。これにより、接点の微溶着などが解消され、接点状態が正常(駆動の論理と接点の論理が正しい)になれば、第1加熱手段6による加熱を可能とし、異常のままであれば加熱禁止状態を継続する。
【0020】
さらに、第1制御手段8および第2制御手段9は、第1駆動無効手段8cと第2駆動無効手段9cを有している。第1駆動無効手段8cは、第2駆動手段9aによる電源開閉手段10の駆動を無効に、第2駆動無効手段9cは、第1駆動手段8aによる電源開閉手段10の駆動を無効にするもので、それぞれフォトカプラ12bまたは12cをオンさせることで、トランジスタ11やフォトカプラ12aがオンできないようにする。
【0021】
なお、図1ではcancel−1、cancel−2はそれぞれ同じ記号は、信号ラインがつながっていることを意味している。
【0022】
ここで、電源開閉手段10の駆動を第1駆動手段8aと第2駆動手段9aの両方で駆動することも考えられるが、その場合、駆動するタイミングのズレや、どちらかの駆動手段が故障した場合、第1または第2接点検知手段8b、9bのどちらかが異常を検知してしまい、結果、異常と判断した側の駆動手段が打ち直しを行ってしまうので、正常と検知していた側も異常となり、第1加熱手段6も第2加熱手段7も加熱が禁止されてしまう可能性がある。
【0023】
そこで、通常使用時は第1駆動手段8aでのみ電源開閉手段10を駆動するとともに、第1接点検知手段8bにて接点状態を検知するようにする。さらに、第1駆動無効手段8cは、第2駆動手段9aによる電源開閉手段10の駆動を無効にするようにフォトカプラ12cをオンさせる。これにより、何らかの要因で第2駆動手段9aがフォトカプラ12aをオンさせる状態で故障した場合でも、第1駆動手段8aのみで電源開閉手段10を駆動することが確実にできる。よって、第1加熱手段6および第2加熱手段7は共通の電源開閉手段10で商用電源1と接続され、加熱可能となる。
【0024】
電源開閉手段10を共通化することで、電源開閉手段10の削減によるコストダウンおよびスペースの削減が可能となる。なお、第1加熱手段6および第2加熱手段7は誘導加熱としたが、シーズヒータやラジェントヒータやハロゲンヒータあるいはその他の熱源などを用いても同様の効果があるとともに安全性を確保することができる。また、通常の駆動手段を第1駆動手段8aとし、接点検知を第1接点検知手段8b、相手の駆動を無効にするのを第1駆動無効手段8cとしたが、それぞれを第2駆動手段9a、第2接点検知手段9b、第2駆動無効手段9cとしても違いはない。さらに、加熱手段として2つの場合を示したがこれに限らずそれ以上の場合であってもよい。
【0025】
電源開閉手段10のコイル側の電源に抵抗を介したコンデンサとし、トランジスタまたはフォトトランジスタ1石で駆動する構成としたが、コンデンサを用いずにトランジスタ1石でコイルに電圧を印加する構成や、トランジスタ2石によりリレー動作時と保持時の印加電圧を切り替える構成としても、その効果に違いはない。
【0026】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における加熱装置として多口誘導加熱調理器を例示している。実施の形態1と基本構成は同じであるのでその説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0027】
図に示すように、本実施の形態における加熱装置は、第1制御手段8と第2制御手段9内にそれぞれ第1通信手段13と第2通信手段14を設け、それぞれの第1、第2通信手段13、14間で通信を行う構成としたものである。なお、通信方式はシリアル通信としているがパラレル通信でも違いはない。
【0028】
通常使用時は第1駆動手段8aでのみ電源開閉手段10を駆動するとともに、第1接点検知手段8bにて接点状態を検知するようにする。そして、接点状態が正常であれば、第1通信手段13は第2通信手段14に正常であることを送信する。第2通信手段14が電源開閉手段10の接点が正常であることを受け取ると、第2制御手段9は第2加熱手段7による加熱を可能とする。これにより通常は第1、第2加熱手段6、7とも加熱可能となる。
【0029】
次に、第1接点検知手段8bにより電源開閉手段10の接点異常を検知し、第2駆動手段9aにより電源開閉手段10の打ち直しを行った後も接点異常である場合、第1通信手段13は接点異常を第2通信手段14に送信するとともに、第1駆動無効手段8cによる第2駆動手段9bの無効化を中止する。すなわち、第1駆動無効手段8cによりフォトカプラ12cがオンしている状態をオフ状態にする。これにより、フォトカプラ12aをオンさせるトランジスタは第2駆動手段9aに従うことが可能となる。また、直接、電源開閉手段10を駆動していない第2制御手段9側も、接点異常を認識することができ、第2加熱手段7による加熱を禁止することができるので、安全性を確保することができる。
【0030】
また、第2通信手段14が接点異常を受信すると、第2駆動無効手段9cにて第1駆動手段8aによる電源開閉手段10の駆動を無効にするように、フォトカプラ12bをオンさせる。これにより、第1駆動手段8aの状態が如何なる状態であろうとも、第2駆動手段9aにて電源開閉手段10を駆動することができる。また、第2接点検知手段9bにて電源開閉手段10の接点状態を検知する。ここで、第2接点検知手段9bにて接点が正常と検知されると、第2制御手段9は第2加熱手段7による加熱を可能にするとともに、第2通信手段14が第1通信手段13へ接点正常と送信する。第1通信手段13が接点正常を受信すると、第2制御手段9は第2駆動手段9aまたは第2接点検知手段9bの故障と判断して、第2加熱手段7による加熱を可能とする。これにより、電源開閉手段10が故障していない場合には、第1加熱手段6、第2加熱手段7ともに加熱可能とし、使用者の使い勝手を悪くする可能性を減らすことができる。
【0031】
次に、第2通信手段14が第1通信手段13からの通信を受信できない場合、第2制御手段9は通信異常と判断し、第2駆動無効手段9cにて第1駆動手段8aによる電源開閉手段10の駆動を無効にする。そして、第2駆動手段9aにて電源開閉手段10の駆動を行う。通信異常は第1、第2通信手段13、14のみの故障の可能性もあるが、第2制御手段9自体の故障の場合も考えられ、その場合にも第2加熱手段7による加熱を可能とすることができる。また、通信手段13、14自身の故障で、第1駆動手段8aが正常に電源開閉手段10を駆動している場合には、一旦、第2駆動無効手段9cにより電源開閉手段10の駆動が無効化され、接点異常を検知してしまうが、その後、第2駆動手段9aにより電源開閉手段10が駆動されるので、接点検知は正常にもどり、加熱可能とすることができる。これにより、使用者の使い勝手を悪くする可能性を減らすことができる。
【0032】
なお、本実施の形態においても、実施の形態1と同様、種々の変形例が考えられるものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明にかかる加熱装置は、電源開閉手段の数を低減してコストダウンをはかるとともに、故障した加熱手段以外の加熱手段の使用を可能とし、利便性を保つことができるので、多口誘導加熱調理器のみならず、システマティックに接続された加熱機器や一般の加熱装置を含め、加熱装置全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態2における加熱装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0035】
6 第1加熱手段
7 第2加熱手段
8 第1制御手段
8a 第1駆動手段
8b 第1接点検知手段
8c 第1駆動無効手段
9 第2制御手段
9a 第2駆動手段
9b 第2接点検知手段
9c 第2駆動無効手段
10 電源開閉手段
13 第1通信手段
14 第2通信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立して加熱できる第1および第2加熱手段と、それぞれの加熱手段を制御する第1および第2制御手段と、前記第1および第2加熱手段への電力の供給を共通で入り切りする電源開閉手段とを備え、前記第1および第2制御手段それぞれには、前記電源開閉手段を駆動する第1および第2駆動手段と、前記電源開閉手段の接点状態を検知する第1および第2接点検知手段と、前記第2駆動手段を無効にする第1駆動無効手段および前記第1駆動手段を無効にする第2駆動無効手段とを有し、通常は前記第1制御手段が前記第1駆動手段で前記電源開閉手段を駆動するとともに前記第1接点検知手段にて接点状態を検知し、前記第1駆動無効手段にて前記第2駆動手段による前記電源開閉手段の駆動を無効にするように制御する加熱装置。
【請求項2】
各制御手段それぞれには、第1および第2通信手段を備え、第1接点検知手段にて電源開閉手段の接点異常を検知した場合には、第1通信手段にて接点異常を第2制御手段の第2通信手段に送信するとともに、第1駆動無効手段による第2駆動手段の無効化を止める請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
接点異常時は、第2駆動無効手段にて第1駆動手段を無効にするとともに、第2制御手段の第2駆動手段にて電源開閉手段を駆動する請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
通信異常時は、第2駆動無効手段にて第1駆動手段を無効にするとともに、第2制御手段の第2駆動手段にて電源開閉手段を駆動する請求項2または3に記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−146632(P2009−146632A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320374(P2007−320374)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】