説明

加熱調理器

【課題】 特にグリルを主とする加熱調理器において、有効なオーブン機能を実現する。
【解決手段】 被加熱物100の上下に位置するように調理庫65内に設けた上側電熱ヒータ61及び下側電熱ヒータ62と、被加熱物100を調理庫65内に入れたまま、調理庫65内の温度を設定温度に到達させる際、上側電熱ヒータ61及び下側電熱ヒータ62の定格消費電力より低く設定した電力を最大として、上側電熱ヒータ61及び下側電熱ヒータ62に供給する電力を制御するグリル加熱制御手段66とを備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理器に関するものである。特に限られた調理庫内の空間において、グリルのように被加熱物を入れたまま、オーブン加熱を行えるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器具の一種であるロースターグリルは、魚、肉等を焼くロースター機能、ピザを丸ごと焼くようなグリル機能を備え、調理庫内の被加熱物を加熱調理するものである。被加熱物表面に焼き色、焦げ目等を付けることができる。特に、最近は調理庫内の容積が広くなり、また、よりおいしく、安全に調理できるようになり、その幅がますます広がりつつある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−074250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようにロースターグリルによる調理の幅が広がる中で、クッキー、スポンジケーキ等を焼く、オーブンによる調理への要求も高まりつつある。オーブンは、被加熱物を直接ヒータ等で加熱等するわけではなく、例えば、調理庫内の温度を高めて被加熱物を加熱するものである。そのため、オーブン機能を実現するには、調理庫内の温度監視は不可欠であるが、従来からも異常温度監視を行っている。
【0004】
そこで、本発明は、特にグリルを主とする加熱調理器において、従来の温度監視を有効に用いたオーブン機能、危険防止策等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る加熱調理器は、被加熱物の上下に位置するように調理庫内に設けた複数の加熱手段と、被加熱物を調理庫内に入れたまま、調理庫内の温度を設定温度に到達させる際、加熱手段の定格消費電力より低く設定した電力を最大として、加熱手段に供給する電力を制御する加熱制御手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、加熱制御手段が、複数の加熱手段に供給する電力の制御を行って調理庫内の温度を制御するようにしたのでオーブン調理を行うことができる。そして、その際、調理庫内の温度を所定の設定温度に到達させる際、加熱手段の定格消費電力より低い電力を、供給する電力の最大電力とするようにしたので、ロースターグリルのようなオーブンに比べて調理庫が狭いグリル機器においても、被加熱物への直接の熱伝達を抑え、表面を焦がさないようにすることができるので、被加熱物を調理庫内に入れたまま、調理庫内の温度を設定温度に到達させることができる。また、設定温度への到達時間も含めた調理時間の設定を行うことができるので、グリル調理を行う場合と同じ感覚でオーブン調理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る加熱調理器の外観を表す図である。また、図2はロースターグリル部6の構成を中心とする加熱調理器の構成を示すブロック図である。図1は、ロースターグリルを備えたビルトイン型のIHクッキングヒーターである。図1において、加熱調理器上面のトッププレート1には、左電磁誘導コイル21及び右電磁誘導コイル22を有する誘導加熱部2、中央ヒータ31を有するヒータ部3、上面操作部4、上面表示部5が設けられている。また、加熱調理器内にはロースターグリル部6が設けられている。そして、ロースターグリル部6に被加熱物を出し入れするための取っ手71を有するグリル扉7、前面操作部8及び前面表示部9が加熱調理器前面に設けられている。
【0008】
本実施の形態の加熱調理器の誘導加熱部2及びヒータ部3には、トッププレート1の下面と対向するように、例えば左電磁誘導コイル21及び右電磁誘導コイル22並びに中央ヒータ31(例えばラジエントヒータ)がそれぞれ配設されている。トッププレート1前方の外枠部分に上面操作部4が設けられている。また、調理器の前面右側に前面操作部8が設けられ、さらに左電磁誘導コイル21、右電磁誘導コイル22、ロースターグリル部6(中央ヒーター31)の動作状態等をそれぞれ表示する上面表示部5がトッププレート1に設けられている。
【0009】
左温度検出素子23、右温度検出素子24は、例えばサーミスタからなり、トッププレート1を介してそれぞれ得られる鍋(容器)の調理物の温度に基づく信号を、それぞれ左誘導加熱制御手段25、右誘導加熱制御手段26に送信する。中央温度検出素子32は、例えばサーモスタットからなり、トッププレート1を介して置かれた鍋の反射熱と中央ヒータ31の自己発熱による温度上昇を検出し、その検出に基づく信号を中央ヒータ制御手段33に送信する。
【0010】
左誘導加熱制御手段25及び右誘導加熱制御手段26は、例えば1チップマイクロコンピュータ(マイコン)、インバータ等で構成される。それぞれ、後述する主制御手段11からの指示を含む信号、左温度検出素子23、右温度検出素子24からの信号等に基づいて、それぞれ左電磁誘導コイル21、右電磁誘導コイル22への電力供給を制御し、加熱(火力)制御を行う。また、例えば温度等のデータを含む信号を主制御手段11に送信する。中央ヒータ制御手段33についても同様に、主制御手段11からの指示を含む信号、中央温度検出素子32からの信号等に基づいて、中央ヒータ31の加熱(火力)制御等を行う。
【0011】
図3は上面操作部4のキー配列を表す図である。上面操作部4には、誘導加熱部2及びロースターグリル部6をそれぞれ操作するための各種キーが配列されている。例えば左側には、左電磁誘導コイル21の火力(弱・中・強)を選択するための火力設定キー、揚げ物の調理時に操作するための左揚げ物キー等、左側キー41が配列されている。一方、右側には、右電磁誘導コイル22の火力(弱・中・強)を選択するための火力設定キー、揚げ物の調理時に操作するための右揚げ物キー、通常よりも高火力で動作させる3kWキー等、右側キー42が配列されている。また、中央にはロースターグリル部6で調理するのに必要な自動メニューキー43、手動メニューキー44、火力UPキー45、火力DOWNキー46、スタートキー47、停止キー48が配列されている。これらのキーにより、ロースターグリル部6で設定する火力(電力)、調理モード、調理時間、設定温度等の指示が入力される。本実施の形態では設定温度等を調理者が任意に設定することができるが、例えば、調理コース等の指示入力により、あらかじめ調理時間、設定温度等が決まっていてもよい。
【0012】
図4は前面操作部8及び前面表示部9を表す図である。前面操作部8には、左電磁誘導コイル21、右電磁誘導コイル22又は中央ヒータ31のオン、オフと火力調節をそれぞれ操作するための火力調整エンコーダーダイヤル81、それぞれの調理時間を設定するためのタイマー設定ダイヤル82が設けられている。また、電源スイッチ83、誘導加熱部2及び/又はヒータ部3の動作をさせないためのロックキー84も設けられている。特に本実施の形態の加熱調理器においては、後述するように、ロースターグリル部6の調理庫65内を照らすためのランプヒータ67のON−OFFを操作するグリル照明キー85が設けられている。一方、前面表示部9として、左電磁誘導コイル21、右電磁誘導コイル22又は中央ヒータ31の各動作状態を文字を光らせて教示する動作ランプ91が設けられている。また、後述するように、グリル扉7が高温であることを文字を光らせて教示する扉注意ランプ92が設けられている。
【0013】
例えば、主制御手段11等の制御関係の手段に制御電源が供給された状態で、エンコーダダイヤル81を押し出して凸状態にすると、対応するコイル又はヒータが火力の入力待機状態となる。トッププレート1の上面表示部5には、火力レベル表示を行う火力表示部(LED)が配置され、火力のレベルを表示すると共に、入力待機状態を示す表示を行う。入力待機状態では火力表示LEDは青の点灯表示、ヒーター動作中の火力入力時は、該当する火力レベルに応じて、赤のLEDを点灯させる。前面表示部9の動作ランプ91も待機状態は文字が青く点灯し、加熱動作時は赤く点灯する。これにより、加熱調理器から離れた位置からも、現在の動作状態が確認できるようになる。
【0014】
図1、図2に示すようにロースターグリル部6は、調理庫65と調理庫65内に被加熱物100を出し入れするための引き出し開閉可能なグリル扉7を有している。調理庫65内には、網101上に置かれた被加熱100を上下から挟むように設けられた上側電熱ヒータ61及び下側電熱ヒータ62が設けられている。特に下側電熱ヒータ62は、グリル扉7に連接されたフレームに配設された受け皿(図示せず)と網101との間に設けられている。ここで、本実施の形態では、上側電熱ヒータ61、下側電熱ヒータ62の定格消費電力をそれぞれ1200W、800W(つまり、上側電熱ヒータ61の2/3)とする。また、調理庫65内の奥部には温度検出素子となる奥側サーミスタ63が配設され、さらに、調理庫65手前となるグリル扉7の近傍で、かつ上側電熱ヒータ61と下側電熱ヒータ62と間の位置に扉側サーミスタ64が配設されている。
【0015】
ここで、従来のロースターグリルの場合には、例えば電熱ヒータが放熱する際に放つ光により、扉に設けた窓を介して被加熱物の焼き具合を見ることができた。本実施の形態では、後述するように上側電熱ヒータ61及び下側電熱ヒータ62への電力供給を制御し、火力調整を行うと、場合によっては電熱ヒータが放つ光(放熱)が少なく、グリル扉7の窓から覗いても調理者が被加熱物100の状態を確認できないことがある。そこで、本実施の形態の加熱調理器では、調理庫65内を照らすための照明手段となるランプヒータ67を設ける。ランプヒータ67とするのは、被加熱物100、調理庫65内の加熱に寄与させるためである。特にランプヒータ67の位置を上側電熱ヒータ61よりも扉側に設けることにより、照明だけでなく、外気と触れることで温度が低めになるグリル扉7近傍の加熱を補うことも期待でき、仕上がりにムラのない調理を行うことができる。さらに、特に図示はしないが調理庫65の奥側には排気口が設けられ、この排気口から煙突が接続し、この煙突内に、触媒と、この触媒を加熱する触媒ヒータが配設されている。煙突内には、調理庫65内から触媒を介した後方にファン及びファンモータが設けられ、調理庫65内の煙を強制的に排出する。
【0016】
グリル加熱制御手段66は、ロースターグリル部6における加熱制御を行うため、本実施の形態においては少なくとも記憶手段、タイマ、カウンタ(図示せず)を有しているものとする。そして、主制御手段11からの指示を含む信号、奥側サーミスタ24及び扉側サーミスタ25から送信される検出温度に関する信号等に基づいて、上側電熱ヒータ61及び下側電熱ヒータ62の電力供給を制御し、火力(加熱)制御を行う。また、例えば温度等のデータを含む信号を主制御手段11に送信する。特に、本実施の形態においては、後述するように主制御手段11から送信された信号に含まれる設定温度のデータ、奥側サーミスタ24及び扉側サーミスタ25からの信号に含まれる検出温度のデータ等に基づいて、被加熱物100を調理庫65内に入れた状態で、調理庫65内の温度を設定温度に到達させ、一定に保つように制御を行う。また、本実施の形態においては、主制御手段11から送信される指示を含む信号に基づいて、ランプヒータ67のオン又はオフ制御を行う。さらに、触媒ヒータへの電力供給制御、触媒ファンの駆動制御等も行う。
【0017】
ここで、本実施の形態では、上側電熱ヒータ61及び下側電熱ヒータ62の火力制御について、火力は1.0〜0.5刻みで5.0まで9段階(火力0も含めると10段階)の制御をそれぞれ独立して行えるものとする。火力5.0は、それぞれ定格消費電力である1200W、800Wが供給される。
【0018】
図2に示す主制御手段11は、加熱調理器の全体の制御を行う。特に本実施の形態においては、特に、上面操作手段4の自動メニューキー43、手動メニューキー44、火力UPキー45、火力DOWNキー46を介して調理者から指示された設定温度に関するデータを含む信号をグリル加熱制御手段66に送信し、上面表示手段5に設定温度を表示させる。また、グリル加熱制御手段66から送信される温度に関する信号に基づいて、調理庫65内の温度も上面表示手段5に表示させてもよい。さらに、前面操作手段8を介して入力された指示に基づいて、グリル加熱制御手段66にランプヒータ67のオン又はオフを制御させる。また、例えば、主制御手段11が実行する処理の手順等、送信された信号に含まれるデータを一時的又は長期的に記憶する、例えばE2PROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory:EEPROMともいう)等の主制御記憶手段12が主制御手段11と接続されている。
【0019】
ここで、調理者が電源スイッチ83を押した時点で、電源パワーリレー(図示せず)がONするように電源パワーリレーの駆動コイルに電流を流す回路構成とする。電源パワーリレーがONすると、制御用電源回路(図示せず)から、主制御部手段10等に動作電源5Vが供給され、起動する。主制御手段11が起動した時点で、前出の電源パワーリレーをONする駆動信号が出力され、主制御手段11の駆動信号で電源パワーリレーがONを維持し、制御電源は供給を継続する状態となる。
【0020】
本実施の形態のように、誘導加熱機器のビルトイン式に設けられ、本来的にグリル機器として用いる加熱調理器は、調理庫65のスペースが限られている(一般に市販等されているオーブン機器の約1/2の容積となる)。このような加熱調理器において、危険防止のために調理庫65内の温度検出を行っており、調理庫65内の温度制御が可能であるため、オーブンとして用いることもできる。この場合、調理庫65内(の空気)を設定温度にするまでの時間(従来の予熱時間に相当する)を要しない。そして、あらかじめ被加熱物100を調理庫65内に入れておくことができる。そのため、予熱した後に再度、被加熱物100を入れる動作を行わなくてもよいので調理者にも都合がよいし、予熱時間を含めたトータルの総調理時間設定することもできるので、グリル加熱と同じ感覚で用いることができる。
【0021】
ただ、通常のグリル加熱を行う際に、上側電熱ヒータ61及び下側電熱ヒータ62に供給するような、例えば定格消費電力のような電力により、調理庫65内を所定の設定温度に到達等させようとすると、調理庫65内のサーミスタによる検出が実際の調理庫65内の温度上昇に追従することができず、実際の調理庫65内の温度を設定温度を越えて上昇させてしまうオーバーシュートが発生する。オーバーシュートを発生させると、電力を無駄にし、設定温度まで下げるための時間を必要とする。また、スペースの関係上、上側電熱ヒータ61及び下側電熱ヒータ62と被加熱物100の距離が近くなり、設定温度に到達させることだけを優先すると、被加熱物100を焦がしてしまう等、オーブンとして用いることができない場合もある。
【0022】
そこで、本実施の形態では、調理庫65内を設定温度に到達させるまでの時間とのバランスをとりつつ、調理庫65内の温度を設定温度に到達させる際、上側電熱ヒータ61及び下側電熱ヒータ62に対して定格消費電力での供給を行わず、それを下回る電力の最大を、設定温度に基づいてあらかじめ定めておき、その電力の範囲内で電力供給による制御を行う。また、設定温度、調理庫65内の温度を上面表示部5に表示してもよい。そして、例えばグリル加熱の場合は、被加熱物100に焼き色を付けるために上側の火力を大きくするが、調理庫65内を暖める際に上側の火力を大きくすると、庫内の上側だけが暖まり、暖気が溜まってしまうため、設定温度に到達させるためには下側から加熱した方がよい。そこで、本実施の形態では、下側電熱ヒータ62への通電率を高くし、電力供給を上側電熱ヒータ61よりも多くする。
【0023】
図5は調理庫65内を設定温度に到達させるまでのグリル加熱制御手段66を中心とする処理動作を表す図である。図5に基づいて、設定温度に到達させるまでの加熱調理器の動作について説明する。
【0024】
図6は上面表示部5に表示される画面を表す図である。主制御手段11は、上面表示部5に火力、調理モード、設定温度、調理時間等の設定画面を表示させる(図6(a)、(b))。ここではオーブンが選択されたものとする。さらに調理者により、上面操作部4を介して設定温度、調理時間が指示されると、主制御手段11は、上面操作部4から送信される信号に基づいて、グリル加熱制御手段66に、火力、調理モード、設定温度、調理時間等のデータを含む信号を送信する。グリル加熱制御手段66は、サーミスタ比較処理に基づく調理庫65内を設定温度に到達させる工程(以下、予熱相当工程という)を開始する(S1)。
【0025】
図7は上側電熱ヒータ61及び下側電熱ヒータ62に供給される電力(火力)と設定温度との関係を表す図である。グリル加熱制御手段66は、上側電熱ヒータ61、下側電熱ヒータ62に対し、それぞれ独立して通電率を設定し、電力供給を制御する(S2)。通電について、例えば他の電化機器に対するフリッカを防止する等のため、電源周期の半サイクルのタイミングで行うものとする。例えば電源の何周期分かを単位とし、その中で必要な電力供給に応じた回数を半サイクルのタイミング毎に通電する。このとき、通電、遮断のバランスを考慮する。また、上半波又は下半波への偏りをなくすため、上半波と下半波での通電を均等にするようにする。
【0026】
少なくとも本実施の形態の加熱調理器をオーブンとして機能させたい温度(ここでは設定温度)の範囲内においては、調理庫65内を設定温度に到達させるまでの工程中、グリル加熱制御手段66は、下側電熱ヒータ62に供給する電力が上側電熱ヒータ61に供給する電力以上となるように制御する。
【0027】
図8は設定温度と目標設定温度との関係を表す図である。例えば、奥側サーミスタ63、扉側サーミスタ64により検出された温度が目標設定温度であれば、対応する調理庫65の温度(ここでは調理庫65の中心部分を調理庫65の温度とする。以下、検知温度という)は設定温度であるものと推定する。この関係についてはデータとしてグリル加熱制御手段66が記憶手段(図示せず)に記憶しているものとする。また、上述した主制御記憶手段12に記憶しておいてもよい。なお、図8に示す関係は一例を表すものであり、調理庫65の容積等によって関係は異なる。グリル加熱制御手段66は、検知温度及び設定温度のデータを含む信号を主制御手段11に送信する。主制御手段11は、検知温度、設定温度のどちらか一方又は両方を上面表示部5に表示させる。
【0028】
グリル加熱制御手段66は、検知温度が設定温度に達しているかどうかを判断する(S3)。ここで本実施の形態では、奥側サーミスタ63、扉側サーミスタ64により検出された温度のどちらかが、図7に示すように目標設定温度以上であれば、検知温度(調理庫65の温度)が設定温度に達しているものと見なす。検知温度が設定温度に達していると判断すると、予熱相当工程を終了し、温度一定制御工程に移行する(S5)。
【0029】
一方、S3において、検知温度が設定温度に達していないものと判断すると、工程開始から10分を経過しているかどうかを判断する(S4)。経過していないと判断すると、引き続き上側電熱ヒータ61、下側電熱ヒータ62に対する予熱相当工程での電力供給を制御する(S2)。工程開始から例えば10分を経過していると判断すると、予熱相当工程を終了し、温度一定制御工程に移行する。したがって、本実施の形態では、予熱相当工程は最長でも10分となる。ここでは一例として予熱相当工程の最長時間を10分としているが、これに限定するものではない。
【0030】
図9はロースターグリル部6における調理庫65内を設定温度に維持する一定制御する処理を表す図である。グリル加熱制御手段66は、予熱相当工程が終了した後、調理者が指示した調理時間の残りの時間、調理庫65内を設定温度に一定制御する温度一定制御工程(調理工程)を行う。ここで、本実施の形態においては、温度一定制御工程は1秒間隔で以下のステップで説明する処理が行われるものとする。また、本説明の中で、火力を下げる場合には、まず、下側電熱ヒータ62への電力供給を少なくして火力を下げ、下側電熱ヒータ62の火力が2.0以下でさらに下げる必要がある場合に、上側電熱ヒータ61の火力を下げていくものとする。火力を上げる場合には、上側電熱ヒータ61及び下側電熱ヒータ62の双方に対し、最大で初期状態の火力まで上げる。
【0031】
グリル加熱制御手段66は、図7の関係に基づいて、上側電熱ヒータ61、下側電熱ヒータ62に対し、それぞれ独立して設定温度に基づく初期状態での通電率を設定し、電力供給を制御する。
【0032】
温度一定制御工程を開始すると、まず、グリル加熱制御手段66は、実際には、上述したように、奥側サーミスタ63、扉側サーミスタ64により検出された温度のどちらか(以下、これらの温度を検出温度という)が、異常温度以上であるかどうかを判断する(S11)。異常温度以上であると判断すると、上側電熱ヒータ61及び下側電熱ヒータ62への電力供給を停止し、火力を0にする(S31)。そして、検出温度が、一定制御する設定温度に対する目標設定温度になるまで待った後、異常温度以上であると判断する直前の火力で、再度制御を開始する(S32)。
【0033】
検知温度が異常温度以上でないと判断すると、火力を降下させる処理を行った後、かつ2秒を経過していない状態かどうかを判断する(S12)。火力を下げていない状態又は火力を下げても2秒を経過していれば、設定された火力での電力供給を続ける(S13)。
【0034】
一方、火力を下げて2秒を経過していなければ、現在の設定火力が火力2よりも小さいかどうかを判断する、火力判断を行う(S101)。現在の設定火力が火力2よりも小さければ、設定火力を0とする(S102)。現在の設定火力が火力2よりも小さくなければ(火力2以上であれば)、設定された火力での電力供給を続け(S103)、さらに次の1秒において温度一定制御工程を行う。
【0035】
S13の処理の後、検出温度が目標設定温度+2℃以上であるかどうかを判断する(S14)。目標設定温度+2℃以上であると判断すると、火力を1.0下げ(S15)、上述した火力判断を行う(S101)。目標設定温度+2℃以上でないと判断すると、検出温度が目標設定温度+1℃(以上)であるかどうかを判断する(S16)。目標設定温度+1℃(以上)であると判断すると、目標設定温度+1℃以上が3回連続したかどうかを判断する(S17)。3回連続したものと判断すると、火力を0.5下げ(S18)、上述した火力判断を行う(S101)。
【0036】
目標設定温度+1℃(以上)でないと判断すると、検出温度が目標設定温度(以上)であるかどうかを判断する(S19)。目標設定温度(以上)であると判断すると、上述した火力判断を行う(S20)。
【0037】
また、目標設定温度(以上)でないと判断すると、検出温度が目標設定温度−1℃以下であるかどうかを判断する(S21)。目標設定温度−1℃以下であると判断すると、それが3回連続したかどうかを判断する(S22)。3回連続したものと判断すると、火力を0.5上げ(S23)、上述した火力判断を行う(S101)。グリル加熱制御手段66は、以上の処理を調理時間が終了するまで行う。
【0038】
以上のように実施の形態1によれば、ロースターグリル部6において、グリル加熱制御手段66が、奥側サーミスタ63及び扉側サーミスタ64により調理庫65内の温度を検出しながら、上側電熱ヒータ61及び下側電熱ヒータ62の加熱を制御することで、調理庫65内の温度を積極的に制御するようにしたので、本来のグリル調理に加え、オーブン調理を行うことができる。特に、本実施の形態では、比較的低温とされる150℃から180℃程度の温度も制御でき、便利である。また、制御の仕方によっては、調理庫65内を、例えば生地が発酵する40℃近傍にすることもでき、このような場合、生地の発酵から焼きまでの一連の作業をロースターグリル部6において行うことができる。
【0039】
また、調理庫65内の温度を所定の設定温度に到達させる際、上側電熱ヒータ61、下側電熱ヒータ62の定格消費電力より低い電力を、設定温度の到達までの時間との関係で設定し、供給する電力の最大電力とするようにしたので、調理庫65内が狭いロースターグリル部6において、オーバーシュートを抑え、また、被加熱物100への直接の熱伝達を抑え、表面を焦がさずに、調理庫65内を設定温度に速やかに到達させることができる。また、被加熱物100への直接の熱伝達を抑えるようにすることで、あらかじめ被加熱物100を調理庫内に入れたまま、調理庫65内の温度を所定の設定温度に到達させることができ、また、設定温度への到達時間も含めた調理時間の設定を行うことができるので、グリル調理を行う場合と同じ感覚でオーブン調理を行うことができる。さらに、グリル加熱制御手段66は、調理庫65内を設定温度に到達させる際、下側電熱ヒータ62に供給する電力を上側電熱ヒータ61よりも大きくするようにしたので、被加熱物100の表面を焦がさず、また、調理庫65上側だけに熱を溜めることなく、下側からの加熱により、庫内の温度を均一にして設定温度に到達させることができる。
【0040】
そして、調理庫65内の温度一定制御において、今まで不得意としていたデマンド制御中で、火力が制限されていても、温度一定制御であれば、制限された低火力においても問題なく調理をすることができる。ここで、デマンド制御とは、加熱調理器全体のヒータ負荷の消費電力合計が、機器の最大定格電力(ここでは仮に5800Wとする)を超えてしまわないように、例えば機器内の1又は複数の手段の加熱に係る消費電力の最大値を抑える制御である。例えば、右側電磁誘導コイル22の誘導加熱に係る定格消費電力が最大3000W、右側電磁誘導コイル21の誘導加熱に係る定格消費電力が最大2500W、ロースターグリル部6による定格消費電力が最大2500W(触媒ヒータ、触媒ファン、ランプヒータ67等を含む)とすると、その合計が8000Wになって機器の最大定格電力5800Wを超えてしまう。そこで、これらを同時に使用できるようにするため、例えば本来3000Wで用いることができる右側電磁誘導コイル22への電力供給を800Wに抑えて動作制御するようにしてもよい。また、誘導加熱部2とロースターグリル部6との間で優先順位をもたせて、誘導加熱部2に電力を供給し、ロースターグリル部6への電力供給を800Wに制限するようにしてもよい。これにより、TOTAL火力コントロール(機器全体の総電力制御)を行うことができる。また、ロースターグリル部6において、温度制御を行えるようにすることで、その上側に位置する誘導加熱部2、ヒータ部3等を構成する器具、制御手段等に与える熱的影響を抑えることができる。また、取っ手71についても、温度が上がりすぎることがない。
【0041】
さらに、本実施の形態においては、調理庫65内で被加熱物100を照らすランプヒータ67を設けるようにしたので、特に上側電熱ヒータ61の放熱による発光が、加熱制御によって抑えられ、被加熱物100の状態が確認できないような場合であっても、ランプヒータ67で被加熱物100を照らすことで、調理者はグリル扉7を開くことなく任意に確認することができる。また、例えば調理中にランプヒータ67を発光させておき、調理中であることを知らせるようにすることで、調理者が誤ってグリル扉7に触れるような危険を防止することができる。また、加熱手段としても用いることができるランプヒータ67とし、例えば外気との接触で温度が低めになるグリル扉7の近傍に設けておき、低下分を補うことも期待でき、被加熱物100の仕上がり状態において、ムラを少なくすることができる。
【0042】
そして、上面表示部5に、設定温度、調理庫65の温度を上面表示部5に表示するようにしたので、調理中に調理庫65内の温度がリアルタイムで表示されることで、例えば、調理者は、調理温度の切り替えタイミング、調理の味付けタイミング等の判断をすることもでき、より出来のよい調理を可能とする加熱調理器を得ることができる。また、開発評価時の実際の制御温度を容易に判断することができる。また、上面表示部5の表示と、その表示に基づいて調理者が操作を入力する上面操作部4とを近くに設けたので、操作性がよく、設定のたびに迷うことがなくなる。
【0043】
実施の形態2.
本実施の形態では、扉側サーミスタ64が検出した温度に基づいて主制御手段11が判断して行うグリル扉7の高温注意表示について説明する。例えば、扉側サーミスタ64が検出した温度と実際のグリル扉7の温度との間には関連がある。例えば、扉側サーミスタ64の検出に基づく温度が90℃であればグリル扉7の温度が約70℃であり、扉側サーミスタ64の検出に基づく温度が70℃であればグリル扉7の温度が約60℃である。そこで、あらかじめ高温注意表示を行う温度(例えば70℃)を定めておく。主制御手段11は、グリル加熱制御手段66から送信された温度に関する信号に基づいて、扉側サーミスタ64の検出に基づく温度が90℃より小さい温度から90℃以上になったものと判断すると、扉注意ランプ92を発光させ、高温注意表示を行う。例えば、図4の扉注意ランプ92では、文字を光らせることでことで高温注意表示を行っているが、例えば、単なるLEDを発光させる等によっても教示を行うことができる。また、点滅表示等をさせてもよい。
【0044】
一方、高温注意表示を行ってから、グリル扉7の温度が下がる傾向にある場合、ヒステリシスをもたせる(つまり、扉注意ランプ92を発光、消光させる温度を異ならせる)。主制御手段11は、扉側サーミスタ64の検出に基づく温度が70℃より大きい温度から70℃以下になったものと判断すると、扉注意ランプ92を消光させる。
【0045】
ここでは、扉注意ランプ92による表示により、扉の温度が高いことを教示するようにしているが、例えば他の教示手段(例えば音(音声、ブザー等)等で教示する教示手段等)を用いて教示するようにしてもよい。また、この場合、センサ等を設けておき、例えば、人が近づいたら音等で注意を促すようにしてもよい。
【0046】
ここで、加熱調理器においては、例えば調理者が一定時間操作を行わないと、自動的に電源を遮断することになっているものもある。しかしながら、全ての電源を切り、扉注意ランプ92も消光させてしまうと、注意喚起という本来の目的が達成できない場合がある。そのため、一度、扉注意ランプ92が発光すると、例えば操作がなく、一定時間が経過しても、上述した扉注意ランプ92を発光しておくべき温度であると判断している間は、電源の遮断を行わないようにする。
【0047】
以上のように実施の形態2によれば、グリル扉7の近傍に設けた扉側サーミスタ64が検出した温度に基づいて、主制御手段11が扉注意ランプ92を発光させ、グリル扉7の高温注意表示を行うようにしたので、調理者が知らずに触れる危険を防ぐことができる。
【0048】
実施の形態3.
主制御手段11は、上面操作部4からの、調理者の調理に関する設定指示のデータ(例えば調理時間、調理設定温度等)を、主制御記憶手段12に記憶させておく。そして、加熱調理器内の同じ調理器具が次回用いられる際、主制御手段11は、初期設定値として上面表示手段に表示させる。調理者は、その時点で上面操作部4からを介して変更指示を送信し、初期設定値からの変更を行うことができる。ただし、調理開始後の途中変更した設定値については、調理中の途中変更はその調理に関してのステップのひとつとして考慮するため記憶しない。前回の設定を次の設定に利用することで、特に調理者が同じ料理を多く調理する傾向がある場合に、設定の煩わしさを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の実施の形態1に係る加熱調理器の外観を表す図である。
【図2】ロースターグリル部6の構成を中心とする構成を示すブロック図である。
【図3】上面操作部4のキー配列を表す図である。
【図4】前面操作部8及び前面表示部9を表す図である。
【図5】調理庫65内を設定温度に到達させるまでの処理動作を表す図である。
【図6】上面表示部5に表示される画面を表す図である。
【図7】電熱ヒータ61、62の電力と設定温度との関係を表す図である。
【図8】設定温度と目標設定温度との関係を表す図である。
【図9】調理庫65内を設定温度に一定制御する処理を表す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 トッププレート、11 主制御手段、12 主制御記憶手段、2 誘導加熱部、21 左電磁誘導コイル、22 右電磁誘導コイル、23 左温度検出素子、24 右温度検出素子、25 左誘導加熱制御手段、26 右誘導加熱制御手段、3 ヒータ部、31 中央ヒータ、32 中央温度検出素子、33 中央ヒータ制御手段、4 上面操作部、41 左側キー、42 右側キー、43 自動メニューキー、44 手動メニューキー、45 火力UPキー、46 火力DOWNキー、47 スタートキー、48 停止キー、5 上面表示部、6 ロースターグリル部、61 上側電熱ヒータ、62 下側電熱ヒータ、63 奥側サーミスタ、64 扉側サーミスタ、65 調理庫、66 グリル加熱制御手段、67 ランプヒータ、7 グリル扉、71 取っ手、8 前面操作部、81 火力調整エンコーダーダイヤル、82 タイマー設定ダイヤル、83 電源スイッチ、84 ロックキー、85 グリル照明キー、9 前面表示部、91 動作ランプ、92 扉注意ランプ、100 被加熱物、101 網。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物の上下に位置するように調理庫内に設けた複数の加熱手段と、
前記被加熱物を前記調理庫内に入れたまま、前記調理庫内の温度を設定温度に到達させる際、前記加熱手段の定格消費電力より低く設定した電力を最大として、前記加熱手段に供給する電力を制御する加熱制御手段と
を備えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記設定温度及び/又は前記調理庫内の温度を表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱制御手段は、前記被加熱物の上側に位置する前記加熱手段よりも前記被加熱物の下側に位置する前記加熱手段に供給する電力の方が大きくなるように、各加熱手段に供給する電力を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記被加熱物を照らす照明手段を前記調理庫内にさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記照明手段をランプヒータとすることを特徴とする請求項4記載の加熱調理器。
【請求項6】
調理庫内に被加熱物を出し入れする扉の近傍に設けられ、前記調理庫内の温度に基づく信号を送信する温度検出素子と、
該温度検出素子からの信号に基づいて、前記扉が所定以上の温度であるかどうかを判断する判断手段と、
該判断手段の判断に基づいて、前記扉が所定以上の温度である旨を教示する教示手段と
を備えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項7】
調理に関する設定指示のデータを含む信号を送信する操作手段と、
前記設定指示のデータを記憶する記憶手段と、
表示信号に基づいて表示を行う表示手段と、
前記操作手段から送信された信号に基づいて、前記設定指示のデータを前記記憶手段に記憶させ、調理設定が行われる際、前記設定指示のデータを初期設定値として表示させる表示信号を前記表示手段に送信する制御手段と
を備えることを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−51806(P2007−51806A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236294(P2005−236294)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】