説明

加熱調理用包装袋の製造方法および加熱調理用包装袋

【課題】 加熱調理用包装袋を製造する際に、互いにシール強度の異なるシール部を安定して形成する。
【解決手段】 他方の胴部材3を底部材4にシールすることなく一方の胴部材2を底部材4にシールする工程と、一方の胴部材2を底部材4にシールすることなく他方の胴部材3を底部材4にシールする工程とを少なくとも備え、一方の胴部材2を底部材4にシールする工程は、底シール部6に対応する領域のみを一対のシール部材30,31で挟み込んでシールする工程と、底シール部6および通気口シール部8に対応する領域を一対のシール部材30,31で挟み込んでシールする工程とを有する製造方法による。シール部材30,31としては、一方のシール部材31として熱板を、他方のシール部材30としてゴム板を用いることが好ましい。これにより、均一なシールを安定して行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋を開封することなくその内容物を電子レンジ等で加熱して調理することが可能な加熱調理用包装袋の製造方法およびこれを用いて製造された加熱調理用包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品を包装袋内に密封してレトルト殺菌してなるレトルト食品が普及している。このような食品が密封された包装袋を電子レンジで加熱すると、包装袋内の空気が膨張したり、食品から水蒸気が生じる等して包装袋内が高圧になる。このような点から、電子レンジで加熱した際に自動的に通気口が開口するように工夫した包装袋が種々提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
特許文献1に記載の包装袋の場合、包装袋の胴部を構成する胴部材(包装袋本体)と装袋本体の下部に介装された底部材とのシール強度が、胴部材同士のシール強度よりも小さくなるように調整されているため、包装袋内で大量の水蒸気等が発生して、通気口が開口しても直ちに内圧が低下しない場合、胴部材と底部材とがシールされてなる底シール部が完全に剥離して、内容物が漏れ出してしまうおそれがある。このため、特許文献2に記載の包装袋においては、通気口を閉塞するため通気口の周囲をシールしてなる通気口シール部が、底シール部から包装袋の内方に突出するような形状に形成されており、しかも通気口シール部におけるシール強度を底シール部におけるシールよりも小さくしている。これにより、包装袋の内圧が通気口シール部に集中してかかりやすくなる上、通気口シール部が剥離する際に底シール部が剥離することを防止することができる。
【特許文献1】特許第3006528号公報
【特許文献2】特開2000−159276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献2のように、互いにシール強度の異なる底シール部と通気口シール部とを形成することは難しい。
また、内向きに2つ折りにされた底部材が一対の胴部材の下部同士の間に介装されてなる包装袋の底部材と胴部材とをシールする場合には、前記底部材の折り線が谷折りとなる側に冷却プレート板を挿入し、双方の胴部材の外側から熱板を当接させてシールすることが一般的であるが、この方法ではシールを繰り返すにつれて冷却プレート板を冷却する冷却水がの温度が温まり、温度ばらつきが生じることにより、一方の胴部材に近い側と他方の胴部材に近い側とでシール温度のばらつきが生じるおそれがある。このため、底シール部のシール強度を安定的かつ確実に通気口シール部のシール強度よりも強くすることは難しい。
このように、従来の技術によれば、それぞれのシール強度および両シール強度の差を適切に調整するためには複雑な装置および制御が必要になるものと考えられ、比較的低コストかつ容易に製造できる方法が望まれていた。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、互いにシール強度の異なるシール部を安定して形成することができる加熱調理用包装袋の製造方法および加熱調理用包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、内向きに2つ折りにされた底部材が一対の胴部材の下部同士の間に介装されており、前記胴部材と前記底部材とが互いに対向する対向面の下端縁部同士がシールされることにより底シール部が形成されており、前記胴部材の一方は、前記底シール部の上端縁部と接する位置又はこの位置より上側の位置に穿設された通気口を有しており、前記通気口は、前記底シール部の上端縁部から上方に突出して前記通気口の周縁部を覆うような形状で形成されるとともに、シール強度が前記底シール部のシール強度より小さい通気口シール部により閉塞されており、内部に内容物を密封した後、内部が所定圧力以上になると、前記通気口シール部が剥離して前記通気口が開口されるように構成された加熱調理用包装袋の製造方法であって、前記他方の胴部材を前記底部材にシールすることなく前記一方の胴部材を前記底部材にシールする工程と、前記一方の胴部材を前記底部材にシールすることなく前記他方の胴部材を前記底部材にシールする工程とを、少なくとも備え、前記一方の胴部材を前記底部材にシールする工程は、底シール部に対応する領域のみを一対のシール部材で挟み込んでシールする工程と、底シール部および通気口シール部の両方に対応する領域を一対のシール部材で挟み込んでシールする工程とを有することを特徴とする加熱調理用包装袋の製造方法を提供する。
この加熱調理用包装袋の製造方法においては、前記一対のシール部材のうち、一方のシール部材として熱板を、他方のシール部材としてゴム板を用いることが好ましい。
また、本発明は、上述の加熱調理用包装袋の製造方法により製造されたことを特徴とする加熱調理用包装袋を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、一方の胴部材を底部材にシールする工程と、他方の胴部材を底部材にシールする工程とを分けることにより、それぞれの胴部材の側に形成される底シール部のシール強度が安定するように製造することが可能となる。
通気口を有する一方の胴部材を底部材にシールする工程では、通気口シール部がヒートシールを受ける回数を、底シール部がヒートシールを受ける回数よりも少なくすることにより、底シール部のシール強度と通気口シール部のシール強度との差を確実に調整することが可能となる。従って、生産性が向上し、低コストでの製造が可能となる。
本発明により得られる加熱調理用包装袋によれば、加熱時に内容物の漏れ出しのおそれがなく、所定の内圧に達したときに通気口が確実に開口するようになる。
一対のシール部材のうち、一方のシール部材として熱板を、他方のシール部材としてゴム板を用いることにより、熱板の金型面のとおりに均一なシールを安定して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明の加熱調理用包装袋(以下、単に包装袋という場合がある。)の一例を示す図面であり、図1(a)は正面図、図1(b)は縦断面図、図1(c)は裏面図である。なお、図1(a),(c)においてはヒートシールされた部分を示すために斜線を用いている。
この包装袋1は、一対の胴部材2,3と、折り線4aを中心線にして2つ折りにされた底部材4とから構成されている。図1(b)に示すように、底部材4は折り線4aが内向きとなるように一対の胴部材2,3の下部同士の間に介装されている。
【0008】
ここで、胴部材2,3および底部材4に用いられるフィルムとしては、1種類の樹脂からなる単層フィルム、1種類または複数種類の樹脂からなる多層を有する共押出フィルムや積層体フィルム、ラミネートフィルムなどを用いることができる。フィルムは、少なくとも片面がヒートシール性を有することが必要であり、このようなフィルムとしては例えば、延伸フィルムなどからなる基材層の表面にヒートシール性を有する樹脂からなるシーラント層を積層してなるラミネートフィルムを用いることができる。
【0009】
ガスバリア性を付与するため、前記フィルムにアルミナ(Al)やシリカ(SiO)等のセラミックを蒸着してなるセラミック蒸着膜を設けることもできる。この場合、酸素や水蒸気などのガスがフィルムを通過することが阻止され、内容物の保存性が向上して常温下長期保存が可能となるので好ましい。また、フィルムに金属層が含まれないため、電子レンジで加熱したときにスパークするおそれがない。さらに、フィルムの透明性が確保されるため、包装袋1の内部の検査も容易であり、電気的放射によって金属探知が可能となる上、充填時にインラインピンホールテストによる検知器の設置も可能となるので、好ましい。
【0010】
前記シーラント層を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。例えば、胴部材2,3のシーラント層および底部材4のシーラント層として、同一グレードのキャストポリプロピレン(ランダム重合体もしくはブロック重合体)または異なるグレードのキャストポリプロピレンを使用して、ポリプロピレン同士でヒートシールすることもできる。
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂などからなる単層または多層の組み合わせを用いることができる。
胴部材2,3と底部材4とは、互いにヒートシールによって接合できる限り、構造、材質、厚さなどが互いに同じでもよく、また異なっていてもよい。
【0011】
胴部材2,3および底部材4からなる包装袋1においては、胴部材2,3はヒートシール性を有する面同士が向かい合わせられるとともに、底部材4はヒートシール性を有する側の面が外側となるように2つ折りにされて両胴部材2,3の間に介装されている。
包装袋1の両側縁部に形成された側縁シール部5では、胴部材2,3間に底部材4が介装された下部では、各胴部材2,3の両側縁部が底部材4の両側縁部とヒートシールされているとともに、それより上側の底部材4が介装されていない部分では胴部材2,3の両側縁部同士でヒートシールされている。
また、包装袋1の下端縁部には、各胴部材2,3と底部材4とが互いに対向する対向面の下端縁部同士でヒートシールされることにより底シール部6が形成されている。底シール部6は、包装袋1下部の両側において側縁シール部5と重なっている。
なお、図1では図示を省略したが、底部材4の両側縁部の一部にパンチ穴などにより切欠(図示略)を設け、該切欠を通して包装袋1の下部においても胴部材2,3の両側縁部同士がヒートシールされるようにすることもできる。
【0012】
一方の胴部材2には、底シール部6の上端縁部6aと接する位置又はこの位置より上側の位置に穿設された通気口7を有している。この通気口7は、底シール部6の上端縁部6aから上方に突出するとともに通気口7の周縁部を覆うような形状に形成された通気口シール部8により閉塞されている。この通気口シール部8は、一方の胴部材2と底部材4との対向面同士をヒートシールすることにより形成されるものであり、通気口シール部8のシール強度は、底シール部6のシール強度よりも小さいものとされている。通気口シール部8のシール強度は、底シール部6のシール強度の80%〜70%程度が好ましい。通気口シール部8のシール強度は、レトルト殺菌処理後で、23N/15mm以上あることが望ましい。
通気口シール部8は、通気口7の周縁の全周を覆う必要はなく、図1(a)に示すように、底シール部6の上端縁部6aが通気口7を横切っていて、通気口シール部8が底シール部6の上側にあたる一部のみ形成されていてもよい。
通気口7の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形等とすることができる。通気口7の寸法は、通気口7が開口したときに包装袋1の内部のガス等が逃げやすく、かつ通気口7から内容物が漏れ出しにくいような寸法を選択するとよい。
通気口シール部8が底シール部6の上端縁部6aから突出してなる形状は、特に限定されるものではなく、例えば、三角形状、台形状、長方形状、半円状などの各種形状を採用することができる。
【0013】
この包装袋1は、上部に開口した開口部9を通して内部に食品などの内容物(図示略)を密封した後には、胴部材2,3の上端部同士をシールすることにより開口部9が閉塞される。つまり、側縁シール部5、底シール部6、開口部9を閉塞するシール部により、包装袋1の周縁がシールされて内部が密封される。通気口シール部8のシール強度は、上記周縁シール部のシール強度よりも小さいものとされている。包装袋1を密封後にレトルト殺菌処理する場合、包装袋1の周縁に形成された周縁シール部のシール強度は、レトルト殺菌処理後、23N/15mm以上(2.3kgf/15mm以上)であることが望ましい。
密封後にはレトルト殺菌処理やボイル殺菌処理などの加熱殺菌処理により内容物を殺菌することができる。
【0014】
包装袋1の内容物を電子レンジなどで加熱調理する場合は、図2(a)に示すように、通気口7が上に向くように、一方の胴部材2を上に、他方の胴部材3に下にして置く。そうすると、加熱により、包装袋1内部に空気などの気体が存在する場合はこれが膨張し、また、内容物中の水分が蒸発することにより生じた水蒸気が膨張して、包装袋1の内部が高圧になる。包装袋1の内部が所定の圧力以上になると、図2(b)に示すように、通気口シール部8が剥離して通気口7が開口する。従って、この通気口7から包装袋1の内部の過剰なガス等が逃げ、包装袋1の内圧が減少する。通気口シール部8のシール強度は、底シール部6のシール強度よりも小さいものとされているので、通気口シール部8が完全に剥離しても、底シール部6が剥離することはなく、底抜けや内容物の漏れが生じることがない。
【0015】
ここで、本発明に係る加熱調理用包装袋の製造方法について説明する。
図3は、本形態例の加熱調理用包装袋の製造方法に用いられる製袋機の一例を示す概略図である。図4は、本形態例の加熱調理用包装袋の製造方法において、胴部材と底部材とがヒートシールされる様子を説明する説明図である。図4(a)は、一方の胴部材と底部材のうち、底シール部のみに対応する領域をシール部材で挟み込んでシールする工程を示し、図4(b)は、一方の胴部材と底部材のうち、底シール部および通気口シール部の両方に対応する領域をシール部材で挟み込んでシールする工程を示し、図4(c)は、は他方の胴部材と底部材をシール部材で挟み込んでシールする工程を示す。
【0016】
図3に示す製袋機20は、胴部材2,3となるフィルムが巻回された胴部材供給リール21(胴部材供給手段)と、底部材4となるフィルムが巻回された底部材供給リール22(底部材供給手段)と、包装袋1の内面となる面同士が向かい合うように胴部材2,3および底部材4を向かい合わせる合わせロール23と、一方の胴部材2を底部材4とヒートシールして底シール部6および通気口シール部8を形成する第1のシール手段24と、他方の胴部材3を底部材4とヒートシールして底シール部6を形成する第2のシール手段25と、胴部材2,3および底部材4をフィルムの搬送方向に直交する幅方向にヒートシールすることにより側縁シール部5を形成する第3のシール手段26と、胴部材2,3および底部材4を搬送するフィルム搬送手段27と、胴部材2,3および底部材4をフィルムの搬送方向に沿う方向および前記幅方向に切断する第1および第2のカッター28,29とを備える。
【0017】
加熱調理用包装袋を製造するため、まず、胴部材供給リール21に巻回されたフィルム(符号略)は、図示しないカッターにより、その長手方向に沿って帯状をなす同一幅の2枚の胴部材2,3に切断される。図示しないパンチャーにより一方の胴部材2に通気口7が形成された後、合わせロール23により両胴部材2,3の内面同士が対向するように配置される。
合わせロール23は、上下の胴部材2,3の前後左右の位置が正確に重ね合わさるように、各胴部材2,3の送り方向を偏向させるようになっている。そして胴部材2,3間に底部材4が挿入される。胴部材2,3および底部材4はフィルム搬送手段27により所定の順序で重ね合わせられた状態で搬送される。
【0018】
フィルム搬送手段27は、図示略のコントロールにより胴部材2,3および底部材4を一定の周期で間欠的に搬送し、胴部材2,3および底部材4の搬送は、周期ごとに一定の送り寸法が得られるように制御し、胴部材2,3および底部材4のヒートシールを行うときには、搬送を休止するようになっていることが好ましい。また、胴部材2,3および底部材4の送り寸法の制御は、例えば胴部材2,3のいずれかに設けられたピッチ印刷図柄をCCDカメラ等の光学センサにより検知し、該光学センサから得られた情報に基づいて制御することもできる。
【0019】
第1のシール手段24においては、図4(a),(b)に示すように、他方の胴部材3の外面に当接された第1の受け台30と、一方の胴部材2の外面に当接された第1の熱板31とをシール部材として用いて、これらのシール部材30,31により、重ね合わせられたフィルム2,3,4を挟み込んでヒートシールする。
ここで、第1の受け台30は、例えばシリコーンゴム(硬度は例えば40〜70°程度)などからなるゴム板である。また、第1の熱板31は、ヒータ32により加熱された金型33を備える。金型33は、アルミ、砲金、鋳物などから構成することができる。
受け台として柔軟なゴム板30を用いることにより、ゴム板30で熱板31を吸収することができるため、シール圧力がバラツキにくくなる。これにより、金属板同士でフィルムを挟み込んでシールする場合と比較して、均一な金型面を出すことができる。
受け台30は加熱されたものではないので、一方の胴部材2と底部材4との間はヒートシールされるが、他方の胴部材3と底部材4との間はヒートシールされない。また、底部材4同士の間は、シーラント層とは反対側の基材層同士の重ねあわせになるので、シーラント層よりも融点の高い基材層同士もヒートシールされることはない。
従って、一方の胴部材2を底部材4との間のみをヒートシールすることが可能となる。
【0020】
図5(a),(b),(c)は、シール部材31の例を示す平面図であり、図6は、図5(b)に示すシール部材31の金型33が一方の胴部材2および底部材4の上に重ね合わせられる位置を説明する平面図である。なお、図6において二点鎖線は、長尺の胴部材から各包装袋1が形成される領域の境界線を示す。
図5の各図に示すシール部材31は、底シール部6に対応する底シール部形成部34と、通気口シール部8に対応する通気口シール部形成部35とからなる金型33を備える。通気口シール部形成部35は通気口シール部8の形状に対応して底シール部形成部34から突出した突部により構成されている。
【0021】
図5,図6に示すように、底シール部形成部34はフィルムの搬送方向(矢印Mにより示す)に沿って延びる突条であり、包装袋1の幅Wの複数倍の長さを有する。フィルムは1回ヒートシールが行われるごとに、包装袋1の幅Wずつ搬送されるので、シール部材31は、1つの底シール部6に対応する領域を複数回繰り返してシールすることができる。なお、図5(a),(b)に示すシール部材31では底シール部形成部34の長さは包装袋1の幅Wの3倍になっており、図5(c)に示すシール部材31では底シール部形成部34の長さは包装袋1の幅Wの4倍になっている。
【0022】
また、通気口シール部形成部35は、底シール部形成部34が底シール部6をヒートシールする繰返し回数よりも少ない個数だけ設けられている。なお、図5(a),(b)に示すシール部材31には通気口シール部形成部35が2個形成されており、図5(c)に示すシール部材31には通気口シール部形成部35は3個形成されている。通気口シール部形成部35の形状は、通気口シール部8の形状に合わせて適当な形状を採用することができるが、図5(a)に示すシール部材31では通気口シール部形成部35は台形状突部から構成されており、図5(b),(c)に示すシール部材31では通気口シール部形成部35は三角形状突部から構成されている。なお、図5に示す各シール部材31においては、底シール部6のみ形成するための部分に、通気口シール部形成部35の代わりに通気口シール部8を回避するような形状の凹部36が設けられている。
例えば図6に示す例では、符号Aで示す位置では、一方の胴部材2には底シール部形成部34は当接するが通気口シール部形成部35は欠けているので、図4(a)に示すように、底シール部6のみに対応する領域が熱板31とゴム板30とで挟み込まれてシールされる。また、符号B,Cで示す位置では、一方の胴部材2に、底シール部形成部34と通気口シール部形成部35との両方が当接するので、図4(b)に示すように、底シール部6および通気口シール部8に対応する領域が熱板31とゴム板30とで挟み込まれてシールされる。つまり、底シール部6がヒートシールを受ける回数と、通気口シール部8がヒートシールを受ける回数とに差が設けられる。これにより、底シール部6のシール強度と通気口シール部8のシール強度との差を確実に調整することが可能となる。底シール部形成部34の加熱温度と通気口シール部形成部35の加熱温度に、差を設ける必要がないので、熱板31の金型33の加熱温度の制御に特別な制御が不要であり、簡便に実施可能である。
シール強度の差を出すために、加熱温度や圧力に差を設けたり、通気口シール部8に対応する部分にシール強度が小さくなるような特殊な材料を用いたりする必要がないため、生産性が高く、製造コストを低減することが可能となる。
【0023】
第1のシール手段24によるシールが完了した後、第2のシール手段25においては、図4(c)に示すように、一方の胴部材2の外面に当接された第2の受け台40と、一方の胴部材2の外面に当接された第2の熱板41とにより、重ね合わせられたフィルム2,3,4を挟み込んでヒートシールする。
ここで、第2の受け台(ゴム板)40および第2の熱板41は、それぞれ、第1の受け台30および第1の熱板31と同様に構成されており、第2の熱板41は、ヒータ42により加熱された金型43を備える。
これにより、第2のシール手段25においては、他方の胴部材3を底部材4との間のみをヒートシールすることができる。
【0024】
第2のシール手段25によるシールが完了した後、第3のシール手段26においては、胴部材2,3および底部材4をフィルムの搬送方向に直交する幅方向にヒートシールすることにより側縁シール部5を形成する。
包装袋の底部と側部とがヒートシールされた後、第1のカッター28によって胴部材2,3および底部材4をフィルムの搬送方向に沿う方向に切断し、さらに第2のカッター29によって胴部材2,3および底部材4をフィルムの搬送方向に直交する幅方向に切断する。フィルムを切断する際には、隣接する包装袋の間をその境界線に沿って切断してもよいが、包装袋同士の境界線の両側で若干の間隔をおいて2個所で切断してもよい。
【0025】
以上説明したように、本形態例の加熱調理用包装袋の製造方法によれば、一方の胴部材を底部材にシールする工程と、他方の胴部材を底部材にシールする工程とを分けることにより、それぞれの胴部材の側に形成される底シール部のシール強度が安定するように製造することが可能となる。通気口を有する一方の胴部材を底部材にシールする工程では、通気口シール部がヒートシールを受ける回数を、底シール部がヒートシールを受ける回数よりも少なくすることにより、底シール部のシール強度と通気口シール部のシール強度との差を確実に調整することが可能となる。従って、生産性が向上し、低コストでの製造が可能となる。
内容物の充填後にレトルト等の加熱殺菌処理を行って通気口シール部のシール強度が低下しても、加熱殺菌処理中に通気口が誤って開いてしまうおそれがない。
本形態例の加熱調理用包装袋によれば、加熱時に内容物の漏れ出しのおそれがなく、所定の内圧に達したときに通気口が確実に開口するようになる。
【0026】
胴部材のいずれかと底部材とをヒートシールする際に、シール部材として、ヒートシールされる側の胴部材の外面に当接される熱板と、該胴部材とは反対側の胴部材の外面に当接されるゴム板とを用いることにより、均一なシールを安定して行うことができる。
【0027】
図7は、本発明の加熱調理用包装袋の製造方法の改変例において、胴部材と底部材とがヒートシールされる様子を説明する説明図である。
上記この改変例においては、上述の第1および第2のシール手段24、25において、シール部材として、胴部材に当接される熱板31,41と、底部材4の折り線4aが谷折りとなる側に挿入される冷却プレート板37,47とを組にしたものが用いられている。ここで、冷却プレート板37,47は、例えば内部に冷却水が流された金属製の部材である。
このようなシール部材を用いることによっても、図7(a)に示すように、他方の胴部材3を底部材4にシールすることなく一方の胴部材2を底部材4にシールして底シール部6を形成する工程と、図7(b)に示すように、他方の胴部材3を底部材4にシールすることなく一方の胴部材2を底部材4にシールして底シール部6および通気口シール部8を形成する工程と、図7(c)に示すように、一方の胴部材2を底部材4にシールすることなく他方の胴部材3を底部材4にシールして底シール部6を形成する工程とを実施することができる。
この改変例に係る加熱調理用包装袋の製造方法によれば、冷却プレート板37,47によって底部材4同士のヒートシールを防止することができるので、少なくとも底部材4が
単層フィルムのように、内外両面がヒートシール性を有するフィルムである場合に好適である。
【実施例】
【0028】
胴部材および底部材として、PET12μm/ナイロン15μm/ポリプロピレン60μmの3層構成からなるフィルムを用いて、上記実施形態で説明した装置および方法により図1に示すようなスタンディングパウチタイプの包装袋を製造した。
得られた包装袋中に内容物としてカレーを充填し、包装袋の開口部をヒートシールにより密封した。さらに、包装袋を125℃で30分間加熱してレトルト殺菌処理を施した。
包装袋に内容物が密封されてなる包装体を電子レンジに入れて加熱したところ、包装袋の内部で水蒸気等が膨張することにより加圧状態になったが、通気口シール部が80〜90秒ほどで剥離する結果、目立った音が出ることなく通気口が開口し、包装袋内のガス等が抜けて包装袋の加圧状態が解消された。内容物の漏れ出しもなく、適切な加熱調理を簡便に行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、包装袋を開封することなくその内容物を電子レンジ等で加熱して調理することが可能な加熱調理用包装袋の製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の加熱調理用包装袋の一例を示す(a)正面図、(b)縦断面図、(c)裏面図である。
【図2】本発明の加熱調理用包装袋の作用を説明する図面であり、(a)は包装袋の内部が加圧された状態を説明する部分断面図、(b)は通気口から内部のガス等が逃げる様子を示す部分断面図である。
【図3】本発明の加熱調理用包装袋の製造方法に用いられる製袋機の一例を示す概略図である。
【図4】本形態例の加熱調理用包装袋の製造方法において、胴部材と底部材とがヒートシールされる様子を説明する説明図であり、(a)は一方の胴部材と底部材のうち、底シール部のみに対応する領域をシール部材で挟み込んでシールする工程を示し、(b)は一方の胴部材と底部材のうち、底シール部および通気口シール部の両方に対応する領域をシール部材で挟み込んでシールする工程を示し、(c)は他方の胴部材と底部材をシール部材で挟み込んでシールする工程を示す。
【図5】(a),(b),(c)は、シール部材の例を示す平面図である。
【図6】図5(b)に示すシール部材の加熱部が一方の胴部材および底部材の上に重ね合わせられる位置を説明する平面図である。
【図7】本発明の加熱調理用包装袋の製造方法の改変例において、胴部材と底部材とがヒートシールされる様子を説明する説明図であり、(a)は一方の胴部材と底部材のうち、底シール部のみに対応する領域をシール部材で挟み込んでシールする工程を示し、(b)は一方の胴部材と底部材のうち、底シール部および通気口シール部の両方に対応する領域をシール部材で挟み込んでシールする工程を示し、(c)は他方の胴部材と底部材をシール部材で挟み込んでシールする工程を示す。
【符号の説明】
【0031】
1…加熱調理用包装袋(包装袋)、2…一方の胴部材、3…他方の胴部材、4…底部材、6…底シール部、6a…底シール部の上端縁部、7…通気口、8…通気口シール部、30,40…受け台(シール部材)、31,41…熱板(シール部材)、37,47…冷却プレート板(シール部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内向きに2つ折りにされた底部材が一対の胴部材の下部同士の間に介装されており、前記胴部材と前記底部材とが互いに対向する対向面の下端縁部同士がシールされることにより底シール部が形成されており、前記胴部材の一方は、前記底シール部の上端縁部と接する位置又はこの位置より上側の位置に穿設された通気口を有しており、前記通気口は、前記底シール部の上端縁部から上方に突出して前記通気口の周縁部を覆うような形状で形成されるとともに、シール強度が前記底シール部のシール強度より小さい通気口シール部により閉塞されており、内部に内容物を密封した後、内部が所定圧力以上になると、前記通気口シール部が剥離して前記通気口が開口されるように構成された加熱調理用包装袋の製造方法であって、
前記他方の胴部材を前記底部材にシールすることなく前記一方の胴部材を前記底部材にシールする工程と、前記一方の胴部材を前記底部材にシールすることなく前記他方の胴部材を前記底部材にシールする工程とを、少なくとも備え、
前記一方の胴部材を前記底部材にシールする工程は、底シール部に対応する領域のみを一対のシール部材で挟み込んでシールする工程と、底シール部および通気口シール部の両方に対応する領域を一対のシール部材で挟み込んでシールする工程とを有することを特徴とする加熱調理用包装袋の製造方法。
【請求項2】
前記一対のシール部材のうち、一方のシール部材として熱板を、他方のシール部材としてゴム板を用いることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理用包装袋の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱調理用包装袋の製造方法により製造されたことを特徴とする加熱調理用包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−36233(P2006−36233A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215436(P2004−215436)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】