説明

加熱調理装置とそれを備える加熱調理システム

【課題】 簡単な構造で、炊飯ムラなどの調理ムラのない加熱調理を実現することができる加熱調理装置と、そのような加熱調理装置を備える加熱調理システムを提供することを課題とする。
【解決手段】 調理容器が被加熱位置にセットされたときに前記調理容器の底面と対向する位置に円周方向に間隔をあけて放射状に配置された複数の発熱部を備える加熱手段と、前記複数の発熱部を、前記放射状の中心を軸として前記円周方向に揺動回転させる揺動回転機構とを有する加熱調理装置、及びそのような加熱調理装置を複数台備えている加熱調理システムを提供することによって解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理装置とそれを備える加熱調理システムに関し、詳細には、炊飯などの加熱調理を調理ムラなく行うことができる加熱調理装置と、そのような加熱調理装置を備える加熱調理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
炊飯に代表される加熱調理は、外食や中食の増大とともに益々その需要が増し、例えば、弁当やおにぎりなどに加工される米飯を大量に炊き上げる業務用の炊飯システムには、規模の大きさや多品種少量炊飯といったキメの細かさに加えて、効率化と省エネ化が望まれている。
【0003】
このような状況下、熱効率の良さから表面燃焼バーナが着目され、近年、炊飯装置などの業務用の加熱調理装置における加熱源として頻繁に利用されている。因みに、表面燃焼バーナとは、周知のとおり、燃焼ガス混合体が拡散通過するに十分な表裏連通した細孔を有するセラミック製または金属繊維製などの多孔質部材をバーナプレートとして用い、そのバーナプレートの裏面から燃焼ガス混合体を供給して、バーナプレートの表面で燃焼させるタイプのバーナである。
【0004】
表面燃焼バーナを加熱源として用いる炊飯装置としては、例えば、特許文献1〜2に開示されたものがある。これらの炊飯装置においては、炊飯位置にセットされた炊飯釜の底面と対向する位置に表面燃焼バーナのバーナプレートが放射状に配置され、炊飯釜の底面を加熱することによって炊飯が行われる。しかし、表面燃焼バーナにおいては、燃焼エネルギーが直ちに輻射熱として炊飯釜等の調理容器に伝達されるため、往々にして炊飯ムラなどの調理ムラが生じやすいという欠点がある。この欠点を解決するため、例えば、特許文献3においては、表面燃焼バーナのバーナプレートの表面近傍に二次空気口を開口することにより、表面燃焼バーナによって火炎を伴う有炎燃焼を可能とし、高い熱効率を維持しつつ、炊飯ムラなどの調理ムラの発生を抑制した加熱調理装置が提案されている。しかし、特許文献3の加熱調理装置においては、バーナプレートの表面近傍に二次空気口を開口させる必要があり、加熱調理装置の特にバーナ部分の構造が複雑になるという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−224499号公報
【特許文献2】特開2005−69641号公報
【特許文献3】特開2006−145104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来の加熱調理装置が有する欠点や不都合を解消するために為されたもので、簡単な構造で、炊飯ムラなどの調理ムラのない加熱調理を実現することができる加熱調理装置と、そのような加熱調理装置を備える加熱調理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明者は、放射状に配置されたバーナプレート等の発熱部を、その放射状の中心を軸として、放射状の円周方向に揺動回転させることによって、炊飯釜などの調理容器に対する加熱ムラを無くし、炊飯ムラなどの調理ムラのない加熱調理を実現できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、調理容器が被加熱位置にセットされたときに前記調理容器の底面と対向する位置に円周方向に間隔をあけて放射状に配置された複数の発熱部を備える加熱手段と、前記複数の発熱部を、前記放射状の中心を軸として前記円周方向に揺動回転させる揺動回転機構とを有する加熱調理装置を提供することによって上記の課題を解決するものである。また、本発明は、そのような加熱調理装置を複数台備えている加熱調理システムを提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0009】
本発明の加熱調理装置によれば、放射状に間隔をあけて配置された複数の発熱部が、放射状の中心を軸として放射状の円周方向に揺動回転するので、対向する炊飯釜などの調理容器の底面をより均等に加熱することが可能となり、炊飯ムラなどの調理ムラを無くすことができる。発熱部の揺動回転の角度には、均等な加熱ができる限り特段の制限はないが、揺動回転の角度が余りに小さいと揺動回転による効果が顕著に現れないので、発熱部の揺動回転の角度は円周方向に隣接する2つの発熱部間の角度の1/3以上であるのが好ましく、1/2以上であるのがより好ましい。逆に、揺動回転の角度を余りに大きくしても、揺動回転機構が大掛かりなものとなる割には揺動回転による効果にさほどの差異が期待できないので、発熱部の揺動回転の角度は円周方向に隣接する2つの発熱部間の角度以下で十分である。
【0010】
また、本発明の加熱調理装置で用いられる加熱手段としては、炊飯等の加熱調理に必要な熱量を炊飯釜等の調理容器に供給できるものであればどのような加熱手段であっても良いが、例えば、円周方向に間隔をあけて放射状に配置された複数のバーナプレートを発熱部として有する表面燃焼バーナを加熱手段として用いる場合には、表面燃焼バーナによる高い熱効率を維持しつつ、調理容器の底面を均一に加熱して、調理ムラのない加熱調理を実現することが可能となる。
【0011】
さらに、本発明が対象とする加熱調理にも特に制限はなく、被調理材料を調理容器に入れてこれを加熱することによって調理を行うものであれば基本的にどのような加熱調理であっても良いが、本発明の加熱調理装置は、加熱調理中に、供給された熱による容器内での対流以外には被調理材料を撹拌することのない加熱調理に適用されるのが好ましく、特に炊飯に適用されるのが好ましい。本発明の加熱調理装置が米の炊飯に適用される場合には、調理容器は炊飯釜であり、調理容器が被加熱位置にセットされたときとは、炊飯釜が炊飯位置にセットされたときということになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加熱調理装置によれば、円周方向に間隔をあけて放射状に配置された複数の発熱部を備える加熱手段を用いる場合であっても、加熱ムラのない加熱調理を実現することが可能となる。特に、加熱手段として、円周方向に間隔をあけて放射状に配置された複数のバーナプレートを有する表面燃焼バーナを用いる場合には、表面燃焼バーナの高い熱効率と、炊飯ムラなどの調理ムラのない加熱調理を両立させることができるという利点が得られる。また、本発明の加熱調理装置を複数台備えてなる本発明の加熱調理システムによれば、炊飯ムラなどの調理ムラのない加熱調理を、連続して、効率良く行うことができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の加熱調理装置の一例を示す正面断面図である。
【図2】本発明の加熱調理装置の一例を示す平面図である。
【図3】図1の部分拡大断面図である。
【図4】図1のX−X’断面図である。
【図5】図1のY−Y’断面図である。
【図6】図1の部分拡大断面図である。
【図7】揺動回転機構の一例の動作を説明する図である。
【図8】揺動回転機構の一例の動作を説明する図である。
【図9】揺動回転機構の一例の動作を説明する図である。
【図10】揺動回転機構の一例の動作を説明する図である。
【図11】揺動回転機構の一例の動作を説明する図である。
【図12】発熱部の揺動回転の状態を表す平面図である。
【図13】揺動回転機構の他の一例を示す図である。
【図14】揺動回転機構のさらに他の一例を示す図である。
【図15】本発明の加熱調理システムの一例を示す平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0015】
図1は、本発明の加熱調理装置の一例を示す正面断面図である。図1において、1は本発明の加熱調理装置であり、2は被加熱位置にセットされた調理容器である。本例においては、加熱調理装置1は炊飯装置であり、調理容器2は炊飯釜であるので、以下、炊飯装置1、炊飯釜2として説明するが、本発明の加熱調理装置1は炊飯装置に限られるものではなく、調理容器2は炊飯釜に限られるものではない。
【0016】
図1において、3は炊飯装置1を構成するかまど、4はかまど3に内張りされた断熱材、5はかまど3内に配置された加熱手段である。本例において、加熱手段5は表面燃焼バーナであり、6c、6gはその発熱部であるバーナプレートである。図1に示すとおり、バーナプレート6c、6gは、被加熱位置、すなわち炊飯位置にセットされた炊飯釜2の底面と対向する位置に設置されている。なお、加熱手段5が表面燃焼バーナであるので、バーナプレート6c、6gが内部に混合ガスを通過させる細孔を有する多孔質体であることはいうまでもない。7は混合ガスの分配室、8は接続口であり、接続口8は、フレキシブル管9及び配管10を介して混合ガス源11に接続されている。
【0017】
混合ガス源11は、天然ガス又は都市ガスなどの燃料ガスと空気とを強制的に混合して加熱手段5に供給するものであり、加熱手段5に供給する混合ガスの流量、及び混合ガス中の燃料ガスと空気との比率を、例えば、炊飯の開始から終了までの時間的な経過に従って、或いは、白飯、茶飯、酢飯などの炊飯されるご飯の種類に応じて、予め定められたプログラムに基づいて適宜変化させることができるように構成されている。なお、フレキシブル管9としては、内部に混合ガス通路を備えつつ、固定された配管10に対して、接続口8の揺動回転を許容することができる可撓性を有するものであれば良く、その構造や材質に特段の制限はない。
【0018】
12は回転筒であり、回転筒12は、回転軸受13、13によって垂直な軸の回りに回転自在に支承されている。14は回転筒12に取り付けられた揺動レバーであり、揺動レバー14には、ピン15が先端部を上向に取り付けられている。16は連結体であり、連結体16は、その先端部の孔にピン15を挿入することによって、揺動レバー14に対して回転自在に取り付けられている。加熱手段5は回転筒12と連結されており、後述するように連結体16を介して揺動レバー14を図1における紙面に垂直な方向に揺動させると、揺動レバー14が取り付けられている回転筒12は垂直な軸の回りに揺動回転し、その揺動回転に伴い加熱手段5も垂直な軸の回りに揺動回転する。17は温度センサである。温度センサ17は、その先端が炊飯位置にセットされた炊飯釜2の底面と接触するように、バネ等の弾性手段によって常に上方に向かって付勢されている。温度センサ17で検知された温度信号は、信号線18を介して、炊飯装置1の動作を制御する制御装置19に供給されている。20c、20gは、炊飯釜2の下側の鍔の下面と接触して、下側の鍔の下面とかまど3の上面との間に空間を残した状態で、炊飯釜2を所定の炊飯位置にセットするためのスペーサーである。21は炊飯装置1の支柱、22はフレームである。
【0019】
図2は図1の平面図である(但し炊飯釜2は省略してある)。図2に示すとおり、加熱手段5である表面燃焼バーナは8個のバーナプレート6a〜6hを有しており、バーナプレート6a〜6hは、円周方向に互いに45度の間隔をあけて均等に放射状に配置されている。本例の表面燃焼バーナにおいてはバーナプレートの数は8個であるが、発熱部であるバーナプレートの数が8個に限られないことは勿論である。ただし、調理容器である炊飯釜2の底面を均等に加熱するという観点からは、少なくとも2個以上、好ましくは4個以上であるのが良く、かつ、互いに同じ角度間隔をあけて、均等に配置されているのが好ましい。なお、配置が均等であれば、形状や大きさの異なる2種以上のバーナプレートを混在させても良い。かまど3の上面には8個のスペーサー20a〜20hが、互いに45度の間隔をあけて均等に配置されている。
【0020】
図3は、図1の加熱手段5とその近傍の部分だけを取り出して示す部分拡大断面図である。23c、23gは、それぞれバーナプレート6c、6gに対応した空間部であり、空間部23c、23gは、それぞれ対応する混合ガス通路24c及び24gを介して、分配室7と連通している。25は分配室7内を外周部と内周部とに区切る多孔板である。図1に示した混合ガス源11から配管10及びフレキシブル管9を介して分配室7の外周部に供給された空気と燃料ガスとの混合ガスは、多孔板25によって一定の流路抵抗を与えられて分配室7の全周に行き渡り、分配室7の内周部から混合ガス通路24c、24gを通って空間部23c、23gへと導かれる。空間部23c、23gへと導かれた混合ガスは、それぞれのバーナプレート6c、6gから噴出し、適当な着火手段によって着火されることにより、バーナプレート6c、6gの表面で燃焼する。26は内部に温度センサ17と接続された信号線18を収容する保護管である。
【0021】
図4は図1のX−X’断面図である。図に示すとおり、分配室7は、ドーナツ状の空間であり、接続口8はその外周部に開口し、混合ガス通路24a〜24hはその内周部に開口しており、両者の間は多孔板25によって区切られている。混合ガス通路24a〜24hは、それぞれ、バーナプレート6a〜6h直下に位置する空間部23a〜23hと連通している。
【0022】
図5は図1のY−Y’断面図である。便宜上、加熱手段5の輪郭を破線で示してある。図5において27は電動機であり、支柱21、21に取り付けられている。電動機27の出力軸には適宜の減速機構を介して駆動円板28が連結されている。駆動円板28の外周部には、ピン29を介して、連結体16の一方端が回転自在に取り付けられている。30は揺動レバー14に設けられた長孔であり、長孔30の適宜の位置には、ピン15が一時的に固定されており、ピン15には連結体16の他方端が回転自在に取り付けられている。これら電動機27、駆動円板28、連結体16、揺動レバー14、及びピン15、29によって、加熱手段5の発熱部であるバーナプレート6a〜6hを揺動回転させる揺動回転機構が形成されている。
【0023】
図6は、図1における揺動レバー14及び連結体16の近傍だけを拡大して示す部分拡大断面図である。図6において、31はナット、32はワッシャであり、通常は、ナット31を締め付け状態とすることによって、ピン15は長孔30の適宜の位置に固定されている。ナット31を緩めることにより、ピン15を長孔30に沿って適宜の位置に移動させることが可能であり、移動後の位置でナット31を締め付け状態とすれば、ピン15をその位置に固定することができる。このように、ピン15の固定位置は長孔30に沿って変更することが可能であり、これにより、揺動レバー14の揺動角度を変更することができる。すなわち、ピン15の固定位置を揺動レバー14の根元部である回転筒12に近い方にすれば揺動レバー14の揺動角度は大きくなり、揺動レバー14の先端部に近い方にすれば、揺動レバー14の揺動角度は小さくなる。ピン15の先端部には、連結体16が挿入され、連結体16はピン15に対して、換言すれば揺動レバー14に対して回転自在である。
【0024】
次に図7〜図11を用いて本例の揺動回転機構の動作を説明する。先ず、図7に示す状態では、連結体16を回転自在に係止しているピン29は、駆動円板28の図中最上部の位置にあり、揺動レバー14は図中(1)で示す揺動角度「0」の位置にある。この状態から、電動機27が作動して、駆動円板28を図中矢印方向に90度回転させると、ピン29は図8に示す位置へと移動する。ピン29の移動に伴い、連結体16も図中下方に移動し、揺動レバー14は、揺動レバー14が固定されている回転筒12とともに、図中(2)で示す揺動角度「α」の位置まで回転する。
【0025】
図8の状態からさらに駆動円板28を90度回転させると、ピン29は図9に示すように駆動円板28の図中最下部の位置まで移動し、この移動に伴い、揺動レバー14は回転筒12とともに図9中(3)で示す揺動角度「β」の位置まで回転する。ピン29が駆動円板28の最下部にある図9の位置が、揺動レバー14の揺動角度、つまりは回転筒12の揺動角度が最大となる位置となる。
【0026】
続いて、駆動円板28がさらに90度回転すると、ピン29は図10に示す位置へと移動し、この移動に伴い、揺動レバー14は、回転方向を変えて、回転筒12とともに、図中(2)で示す揺動角度「α」の位置まで戻る。駆動円板28がさらに90度回転すると、ピン29は図11に示すとおり、再び、駆動円板28の図中最上部の位置へと移動し、揺動レバー14は、回転筒12とともに、図中(1)で示す当初の位置へと復帰する。以下、駆動円板28の回転に伴い、揺動レバー14は(1)→(2)→(3)→(2)→(1)という揺動回転を繰り返し、結果として、揺動レバー14に連結されている回転筒12、及び加熱手段5における発熱部であるバーナプレート6a〜6hも、角度「0」から「β」の範囲で、揺動回転を繰り返すことになる。
【0027】
図12は、発熱部であるバーナプレート6a〜6hの揺動回転の状態を表す平面図である。図に示すとおり、発熱部であるバーナプレート6a〜6hは、図中実線で示す位置と破線で示す位置との間で、両矢印で示す放射状の円周方向に揺動回転する。なお、回転筒12の回転中心は、発熱部であるバーナプレート6a〜6hの放射状の中心と一致しているので、発熱部であるバーナプレート6a〜6hの上述した揺動回転は、その放射状の中心を軸として、放射状の円周方向に向かって行われることになる。
【0028】
このように本発明の炊飯装置1においては、揺動回転機構を作動させることにより、加熱手段5における発熱部であるバーナプレート6a〜6hが、揺動角度「0」から「β」の範囲で揺動回転するので、調理容器である炊飯釜2の底面のより広い範囲が発熱部であるバーナプレート6a〜6hと対向して加熱されることになり、発熱部であるバーナプレート6a〜6hで発生される熱は、より均等に炊飯釜2の底面に伝達されることになる。このため、本発明の炊飯装置1によれば、加熱ムラが大幅に低減され、炊飯ムラなどの調理ムラのない加熱調理を実現することが可能となる。
【0029】
また、発熱部であるバーナプレート6a〜6hの揺動角度「β」は、先に図6に基づいて説明したとおり、揺動レバー14に対するピン15の固定位置を長孔30に沿って変更することによって、適宜変更可能である。調理容器である炊飯釜2の底面をより均等に加熱するという観点からは、揺動角度「β」は、円周方向に隣接する2つの発熱部、すなわち、バーナプレート間の角度の1/3以上とするのが好ましく、より好ましくは1/2以上とするのが良い。また、揺動角度「β」を余りに大きくしても、揺動回転機構の構造が複雑となり、大掛かりなものとなる割には、加熱の均一性がさほど向上しなくなるので、揺動角度「β」は、最大でも、円周方向に隣接する2つの発熱部、すなわち、バーナプレート間の角度以下とするのが良い。本例の場合、バーナプレート6a〜6hは8個あり、円周方向に隣接する2つのバーナプレート間の角度は45度であるので、揺動角度「β」は、15度(=45度×(1/3))以上45度以下、より好ましくは、22.5度(=45度×(1/2))以上45度以下とするのが良いということになる。
【0030】
また、発熱部を揺動回転させる周期には、調理容器である炊飯釜2の底面を均等に加熱することができる限り、特段の制限はないが、基本的には、全加熱調理時間中、少なくとも5回、より好ましくは10回以上、さらに好ましくは20回以上揺動回転させるのが良い。例えば、炊飯の場合、通常の炊飯時間を20分とすると、炊飯期間中に少なくとも5回揺動回転させるには4分に1回、より好ましく10回揺動回転させるには2分に1回、さらに好ましく20回揺動回転させるには1分に1回の周期で揺動回転させれば良いということになる。なお、揺動回転の周期とは、発熱部が当初の位置から再び当初の位置に戻るまでの期間を意味している。
【0031】
また、揺動回転の周期は、全加熱調理期間中一定であっても良く、変化させても良い。例えば、炊飯の場合、炊飯期間の中期までは比較的強火での加熱が行われ、後期には比較的弱火での加熱が行われるが、加熱手段によって供給される火力の強弱に合わせて、強火の場合には揺動回転の周期を短くして例えば2分に1回の周期とし、弱火の場合には揺動回転の周期を長くして3分に1回の周期とするようにしても良い。
【0032】
なお、揺動回転機構の動作開始及び/又は終了は、加熱手段5の動作開始及び/又は終了と連動させておくのが好ましい。すなわち、加熱手段5による加熱開始と連動して揺動回転機構が作動するか、或いは、加熱手段5による加熱終了と連動して揺動回転機構が作動を停止するか、または、その双方としておくのが好ましい。
【0033】
以上、加熱手段5として表面燃焼バーナを用いる場合を例に本発明を説明したが、本発明の加熱調理装置における加熱手段は表面燃焼バーナに限られない。円周方向に間隔をあけて放射状に発熱部を配置することができるものであれば、どのような加熱手段であっても良く、例えば、発熱部としてシーズヒータ等の電熱線を備える加熱手段であっても、また、ブンゼンバーナや、例えば特許文献3に開示されている二次空気口を備えた表面燃焼バーナであっても、さらには過熱蒸気を噴出して過熱蒸気によって炊飯釜2を加熱するものであっても良い。
【0034】
図13は、揺動回転機構の他の一例を示す図である。図13において、揺動レバー14の先端部には回転輪33が取り付けられており、回転輪33にはカム34が接触している。35はカム34の回転軸である。揺動レバー14は、図示しない弾性手段によって、常に図中下方に向かって付勢されている。この状態で、カム34が適宜の駆動手段によって回転軸35の回りに回転駆動されると、カム34と回転輪33を介して接触している揺動レバー14は、図中矢印で示す円周方向に揺動回転する。カム34の大きさや形状、揺動レバー14に対する位置を調整することによって、揺動レバー14の揺動角度を調整することが可能である。本例においては、揺動レバー14、回転輪33、カム34が揺動回転機構を形成している。
【0035】
図14は、揺動回転機構のさらに他の一例を示す図である。図14において、36、37は歯車、38は回転動力伝達機構である。図に示すとおり、歯車36は回転筒12に取り付けられており、歯車36には歯車37が噛み合っている。この状態で電動機27を駆動すると、その回転は、回転動力伝達機構38を介して歯車37に伝達され、歯車37が回転し、この回転に伴い歯車36及び回転筒12が回転する。電動機27の回転方向を一定時間毎又は一定回転数毎に切り替えるか、回転動力伝達機構38に内蔵されている回転方向切り換え機構を、一定時間毎又は一定回転数毎に切り替えることによって、歯車37の回転方向を切り換えて、回転筒12を揺動回転させることができる。また、歯車37の回転方向を切り替えるタイミングを変更することによって、回転筒12の揺動回転の角度を変更したり、例えば電動機27の回転速度を変えるか、回転動力伝達機構38に内蔵されている減速機構の減速率を変更することによって、回転筒12の揺動回転の周期を変更することができる。本例においては、電動機27、回転動力伝達機構38、歯車36、37が揺動回転機構を形成している。
【0036】
図15は、本発明の加熱調理システムの一例を示す平面概略図である。本例においては、加熱調理システムとして、本発明の炊飯装置1を複数台備えている炊飯システム100が示されている。炊飯システム100は、図示しない多数の炊飯釜が搬送ラインに沿って搬送されながら炊飯に必要な各種の工程を経て、炊飯釜ごとに米飯が炊き上げられる炊飯システムである。図15において、101は洗米・給水部、102は蓋着装置、103はリフタ、104は立体浸漬部、105は蓋取り装置、106は調味液供給装置、107は炊飯・蒸らし部である。炊飯・蒸らし部107の上段には複数の炊飯装置1が配置され、搬送台車108によって未炊飯の炊飯釜が適宜の空いている炊飯装置1にセットされ、炊飯が行われる。炊飯が終了した炊飯釜は、再び搬送台車108で炊飯・蒸らし部107の奥側にあるリフタ103へと搬送され、複数の炊飯装置1の下段を時間を掛けて通過しながら蒸らしが行われる。蒸らしが終了した炊飯釜は、炊飯・蒸らし部107の入口側にあるリフタ103から、再び搬送ラインへと戻される。
【0037】
炊飯・蒸らし部107を出た炊飯釜は、蓋取り装置105で再び蓋が取られ、取られた蓋は、蓋洗浄装置109を経て、最初の蓋着装置102へと送られる。一方、蓋が取られた炊飯釜は、方向切り換え装置110へと進み、そこで米飯取り出し装置111によって反転され、炊き上がった米飯が炊飯釜から取り出される。取り出された米飯は、米飯撹拌装置112で撹拌され、撹拌後、搬送装置113へと送り出される。114は計量装置であり、撹拌済みの米飯を予め定められた量ずつ計量し、後続する搬送装置113へと送り出し、送り出された米飯は、パレタイザ115で所定量ずつ容器に収容され、積み上げられる。一方、米飯取り出し装置111によって米飯が取り出され空になった炊飯釜は、方向切り換え装置110でその進行方向を90度切り換えられ、炊飯釜洗浄装置116へと搬送され、そこで洗浄されて次の炊飯のために洗米、給水部101へと送られる。
【0038】
このような本発明の炊飯システム100によれば、炊飯装置1として本発明の炊飯装置が用いられているので、炊飯釜の加熱がムラなく均一に行われ、炊飯ムラのない炊飯を効率良く実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上述べたとおり、本発明の加熱調理装置によれば、比較的簡単な構造で、ムラなく調理容器を加熱することができるので、調理ムラのない加熱調理を実行することができる。特に、加熱調理装置の加熱手段として熱効率の良い表面燃焼バーナを用いる場合には、表面燃焼バーナによる高い熱効率と、ムラのない加熱調理とを両立させることができる。さらには、本発明の加熱調理装置を備える加熱調理システムによれば、品質の良い米飯などの加熱調理品をエネルギー効率良く生産することができるので、極めて優れた産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0040】
1 炊飯装置
2 炊飯釜
3 かまど
4 断熱材
5 加熱手段
6a〜6h バーナプレート
7 分配室
8 接続口
9 フレキシブル管
10 配管
11 混合ガス源
12 回転筒
13 回転軸受
14 揺動レバー
15、29 ピン
16 連結体
17 温度センサ
18 信号線
19 制御装置
20a〜20h スペーサー
21 支柱
22 フレーム
23a〜23h 空間部
24a〜24h 混合ガス通路
25 多孔板
26 保護管
27 電動機
28 駆動円板
30 長孔
31 ナット
32 ワッシャ
33 回転輪
34 カム
35 回転軸
36、37 歯車
38 回転動力伝達機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理容器が被加熱位置にセットされたときに前記調理容器の底面と対向する位置に円周方向に間隔をあけて放射状に配置された複数の発熱部を備える加熱手段と、前記複数の発熱部を、前記放射状の中心を軸として前記円周方向に揺動回転させる揺動回転機構とを有する加熱調理装置。
【請求項2】
前記揺動回転の角度が、円周方向に隣接する2つの発熱部間の角度の1/3以上である請求項1記載の加熱調理装置。
【請求項3】
前記複数の発熱部を備える加熱装置が、円周方向に間隔をあけて放射状に配置された複数のバーナプレートを有する表面燃焼バーナである請求項1又は2記載の加熱調理装置。
【請求項4】
前記調理容器が炊飯釜であり、前記被加熱位置が炊飯位置である請求項1〜3のいずれかに記載の加熱調理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の加熱調理装置を複数台備えている加熱調理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−22169(P2013−22169A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158467(P2011−158467)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(599103122)精宏機械株式会社 (26)
【Fターム(参考)】