説明

加速度センサ及び加速度センサ装置

【課題】耐衝撃性を向上させた加速度センサ及び加速度センサ装置。
【解決手段】
固定部50と、固定部50に対して変位可能な重り部7と、固定部50および重り部7を連結するとともに重り部7の変位に伴って撓む梁部5と、を含み、固定部50および重り部7は、少なくとも一方の側面の梁部5との連結部12外周に、梁部5の長手方向に沿って断面視凹曲線の内面6を有した溝部4を備えたことによって、耐衝撃性を向上させた加速度センサ及び加速度センサ装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耐衝撃性を向上させた加速度センサ及び加速度センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加速度センサは、重り部と、重り部を囲繞する枠状の固定部と、重り部と固定部とに連結される梁部とを有している。このような加速度センサは、加速度が加わると梁部が撓むため加速度検出が可能となっていた。ところで、梁部と固定部との連結部にはエッジが存在し、この部分に応力が集中しやすい。一方、梁部は薄く形成されているため、エッジ部分に集中する応力によって梁部に不具合が生じやすく、過度な加速度に対する耐衝撃性に問題があった。また、梁部と重り部との連結部においても同様の問題があった。
【0003】
そこで、耐衝撃性を向上させた加速度センサとしては、例えば特許文献1のようなものがある。図11に特許文献1に記載された従来の加速度センサ装置を示す。同図に示す加速度センサは、図11に示すように重り部71と、重り部71を囲繞する枠状の固定部70と、重り部71と固定部70とに連結される梁部72とを備え、固定部70と重り部71とを連結する梁部72の境界部分73の外形が滑らかに連続した形状となるように付属部74を有している。加速度センサをこのような構成にすることにより、梁部72の下面と固定部70との接合部および梁部72の下面と重り部71との接合部に集中する応力を緩和させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−122301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の加速度センサでは、境界部分73における梁部72の下面と固定部70との接合部および梁部72と重り部71との接合部の外形を滑らかにするために、付属部74を境界部分73につけていた。そのため、付属部74を取り付けた梁部72の厚みが一部厚くなることから梁部72が撓みにくくなり、加速度検出の感度が低下していた。
【0006】
本発明は、以上のような諸事情を鑑みて案出されたものであり、集中する応力を緩和させつつ、感度の低下を抑えた加速度センサ及び加速度センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加速度センサ装置は、固定部と、前記固定部に対して変位可能な重り部と、前記固定部および前記重り部を連結するとともに前記重り部の変位に伴って撓む梁部と、を含み、前記固定部および前記重り部は、少なくとも一方の側面の前記梁部との連結部外周に、前記梁部の長手方向に沿って断面視凹曲線の内面を有した溝部を備えるようになっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加速度センサ装置によれば、梁部が連結された固定部および重り部の少なくとも一方の側面の梁部との連結部外周に、梁部の長手方向に沿って断面視凹曲線の内面を有した溝部を備えることを特徴とする。このように、梁部の長手方向に沿って断面視凹曲線の内面を有した溝部を備えることから、この溝部の内面に集中する応力を緩和することができる。さらに、梁部が延出された延出部の分だけ梁部の長さが長くなるため検出感度の向上が図れる。これらのことから、検出感度の低下を抑えながら耐衝撃性に優れた加速度センサ及び加速度センサ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる加速度センサ装置の斜視図である。
【図2】図1に示す加速度センサ装置の蓋を外した状態の平面図である。
【図3】図1に示す加速度センサ装置の断面図であり、(a)は図2のA−A´線で切断したときの断面に、(b)は図2のB−B´線で切断したときの断面にそれぞれ相当する。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかる加速度センサの断面図である。
【図5】(a)、(b)、(c)は本発明の第1の実施形態にかかる加速度センサの変形例を示す部分的な拡大断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる加速度センサを示す図であり、(a)は第2の実施形態にかかる加速度センサの平面図、(b)は図6(a)のC−C´線で切断したときの断面に相当する図である。
【図7】本発明の第3の実施形態にかかる加速度センサを示す部分的な拡大斜視図である。
【図8】(a)、(b)、(c)は本発明の第1の実施形態にかかる加速度センサの製造方法の一例を説明する断面図である。
【図9】図5(b)に示す構造を有する加速度センサに加速度が印加された際のシミュレーション結果を示す図である。
【図10】図4に示す加速度センサに加速度が印加された際のシミュレーション結果を示す図である。
【図11】従来の加速度センサ装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本発明にかかる加速度センサ及び加速度センサ装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率は現実のものとは必ずしも一致していない。また、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。なお、本実施形態ではピエゾ抵抗効果を利用した三次元加速度センサ装置を例に説明する。
【0011】
<加速度センサ装置>
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態にかかる加速度センサ装置100の斜視図、図2は図1の加速度センサ装置100の蓋10を外した状態の平面図である。また、図3は図2に示す加速度センサ装置100の断面図であり、図3(a)は図2のA−A’線で切断したときの断面に相当し、図3(b)は図2のB−B’線で切断したときの断面に相当する。これらの図に示すように第1の実施形態にかかる加速度センサ装置100は、加速度センサ20と基体1とから主に構成されている。
【0012】
まず加速度センサ20について説明する。図4は、図3(a)に示した加速度センサ装置100から加速度センサ20を抜き出した図である。図4に示すように加速度センサ20は、固定部50と、固定部50に対し変位可能な重り部7と、固定部50および重り部7を連結するとともに重り部の変位に伴って撓む梁部5とを備えている。また、固定部50の梁部5との連結部12外周に、梁部5の長手方向に沿って断面視凹曲線の内面6を有した溝部4が設けられていることにより、梁部5が固定部50側および重り部7側に延出された延出部25を有するように設けられている。
【0013】
加速度センサ20に加速度が加わると、加速度に応じた力がこの重り部7に作用し、重り部7が動くことで梁部5が撓むようになっている。第1の実施形態における重り部7には、その四隅に連結された4個の付属重り部7´が設けられている。付属重り部7´は、重り部7と一体形成されるものであり、付属重り部7´を設けることによって加速度に対する梁部5の撓みが大きくなり、加速度の検出感度を向上させることができる。なお、重り部7および付属重り部7´の構成、機能および形成方法は、同一又は類似することから、以下では、付属重り部7´の説明を省略することがある。
【0014】
重り部7は、平面形状が略正方形をなし、その一辺の長さは例えば0.25mm〜0.5mmに設定される。また重り部7の厚みは例えば0.2mm〜0.625mmに設定される。付属重り部7´は、重り部7と同様に平面形状が、略正方形をなし、その一辺の長さは例えば0.1mm〜0.4mmに設定される。また付属重り部7´の厚みは、重り部7と同じ厚みを有するように例えば0.2mm〜0.625mmに設定される。なお、重り部7および付属重り部7´の平面形状は正方形に限られず、円や長方形など任意の形状が可能である。なお、重り部7と付属重り部7´は、例えばSOI(Silicon on Insulator)基板を加工することにより一体的に形成されている。
【0015】
このような重り部7および付属重り部7´を囲繞するようにして枠状の固定部50が形成されている。固定部50は、平面形状が略正方形をなし、中央部に重り部7および付属重り部7´より若干大きい略正方形の開口部を有している。固定部50は、その一辺が例えば1.0mm〜3.0mmに設定され、固定部50を構成するアームの幅(アームの長手方向と直交する方向の幅)は例えば0.3mm〜1.8mmに設定される。また固定部50の厚みは、例えば0.2mm〜0.625mmに設定される。この固定部50の下面が接着剤11によって基体1の主面1Aに接合されることにより加速度センサ20が基体1に固定されることとなる。
【0016】
このような固定部50と重り部7との間には図4に示されるように一定厚みの梁部5が設けられている。梁部5は、一方端が重り部7の側面の各辺の上面側中央部に連結され、他方端が固定部50の側面の内周における各辺の上面側中央部に連結されている。また、図2にも示すように第1の実施形態における加速度センサ20では、4本の梁部5が設けられている。
【0017】
梁部5は可撓性を有し、加速度センサ20に加速度が加わると重り部7が動き、重り部7の動きに伴って梁部5が撓むようになっている。梁部5は、例えば長手方向の長さが0.15mm〜0.8mmに設定され、幅(長手方向と直交する方向の長さ)が0.04mm〜0.2mmに設定され、厚みt1が5μm〜20μmに設定されている。このように梁部5を細長く且つ薄く形成することによって可撓性が発現される。
【0018】
梁部5が連結された固定部50の側面の連結部12外周には、溝部4が設けられている。本実施形態において溝部4は梁部5の連結部下部に形成され、そのような溝部4は断面視凹曲線の内面6によって形成されている。ここで、断面視凹曲線とは、梁部5の厚み方向に溝部4を断面視した際の溝部4の曲線を指す。具体的には、溝部4の断面視凹曲線の内面6は、梁部5の長手方向に略平行な長軸31を有し、溝部4が形成された固定部50の側面上に短軸30を有する楕円の一部により形成されている。
【0019】
本実施形態では溝部4の断面視凹曲線の内面6全体が楕円から形成されている。このように梁部5が連結された固定部50の連結部12下部に、梁部5の長手方向に沿って溝部4を設けることによって、梁部5が延出部25を有する構造となる。これにより延出部25の分だけ梁部5の長さが長くなるため検出感度の向上が図れる。さらに、溝部4の断面視凹曲線の内面6全体が楕円の一部により形成されていることから、溝部4の内面6に集中する応力を緩和することができる。これにより、加速度センサの検出感度の低下を抑えながら耐衝撃性を向上させることができる。なお、このような楕円は、梁部5と略平行な仮想直線上の2定点からの距離の和が一定な曲線により形成され、その曲線が梁部5と固定部50の連結部12下部で、梁部5の長手方向と連続するように接続される。
【0020】
本実施形態では重り部7側にも溝部4が設けられている。重り部7にも溝部4を形成することによって、梁部5が延出された延出部25が重り部7にも形成される。このように梁部5が連結された重り部7の連結部12下部にも溝部4を設けることによって、梁部5が固定部50側と重り部7側の両方に延出部25を有する構造となる。これにより重り部7に形成された延出部25の分だけ梁部5の長さが長くなるため検出感度がより一層向上する。また、梁部5と重り部7との連結部12下部においても、応力を緩和することができる。
【0021】
溝部4は、梁部5と固定部50との連結部12下部および梁部5と重り部7との連結部12下部に形成されている。溝部4は、平面視して梁部5の幅と略同一の幅で形成される。本実施形態では、断面視して溝部4全体が楕円により形成されており、溝部4の長軸31の長軸半径は、剛性の観点から固定部50の幅w1が梁部5の厚みt1より厚くなるように形成される。なお、湾曲する外周面6の曲率半径は、半径が常に同じ円の曲率半径以上にすることが好ましい。その中でも、短軸30の短軸半径と長軸31の長軸半径とを等しくして、溝部4の断面視凹曲線の内面6全体を円の一部として形成した場合、集中する応力を溝部4全体で均一に緩和させることができる。
【0022】
さらに、溝部4の短軸30の短軸半径を、梁部5の厚みt1より大きくすることにより、梁部5と固定部50との連結部12下部に集中する応力を大きく緩和させることができる。
【0023】
また、梁部5と固定部50との連結部12下部および梁部5と重り部7との連結部12下部に溝部4を設けることによって、Z軸方向に加速度がかかる場合、特に梁部5と固定部50との連結部12下部に応力が集中しやすいため効果的に集中する応力を緩和することができる。
【0024】
梁部5の上面には、図2に示すように複数の抵抗素子9が形成されている。抵抗素子9は、より具体的には、シリコン基板にボロンを打ち込むことにより形成されたピエゾ抵抗素子である。ピエゾ抵抗素子は、ピエゾ抵抗素子にかかる応力の強さによって抵抗値が変化することから応力のかかりやすい位置に配置される。
【0025】
このことから、ピエゾ抵抗素子は梁部5が撓んだ際に応力がかかりやすい梁部5と固定部50との接合部上面および梁部5と重り部7との接合部上面の周縁に形成される。溝部4を設けて梁部5に延出部25が形成されている場合、延出部25の分だけ梁部5が長くなるため、延出部25の周縁部上面に応力がよりかかりやすくなる。このことから、延出部25の周縁部上面に抵抗素子9を形成することが好ましい。第1の実施形態では、3軸方向(図2に示した3次元直交座標系におけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の加速度を検出できるように梁部5の所定の位置にこれらの抵抗素子9が形成されている。例えば、X軸方向に伸びる2つの梁部5には、X軸方向の加速度を検出するための4個の抵抗素子9が設けられており、それぞれの梁部5に2個ずつ配置されている。これら4個の抵抗素子9のうち、固定部50側に配された抵抗素子同士を直列に接続し、重り部7側に配された抵抗素子同士を直列に接続し、これらを並列に接続することでブリッジ回路を構成している。
【0026】
またY軸方向に伸びる2つの梁部5には、Y軸方向の加速度を検出するための4個の抵抗素子9が設けられており、これらの抵抗素子9を、X軸方向の加速度検出用の抵抗素子9と同様に配置し、抵抗素子同士の接続を行うことによってブリッジ回路を構成している。
【0027】
また、Z軸方向の加速度を検出するための4個の抵抗素子9が、X軸方向に伸びる2つの梁部5に、X軸方向の加速度を検出するための4個の抵抗素子9それぞれと並ぶようにして形成されている。このZ軸方向の加速度検出用の抵抗素子9は、X軸方向の加速度検出用の抵抗素子9とは、抵抗素子同士の接続の仕方が異なっており、第1の実施形態では、X軸方向に伸びる2本の梁部5のうち一方の梁部5に設けられた固定部50側の抵抗素子9と、他方の梁部5に設けられた重り部7側の抵抗素子9とを直列接続してブリッジ回路を構成している。なおZ軸方向の加速度検出用の抵抗素子9は、X軸方向に伸びる梁部5に設けたのと同様にして、Y軸方向に伸びる2つの梁部5に設けるようにしてもよい。
【0028】
このようなブリッジ回路が組まれた加速度センサ20に加速度が加わると、上述したように梁部5が撓み、この撓みに伴って抵抗素子9が変形するため、ブリッジ回路で検出する出力電圧が変化する。この抵抗値の変化に基づく出力電圧の変化を電気信号として取り出し、ICチップ23で演算処理することによって印加された加速度の方向並びに大きさを検知することができる。固定部50の上面には、抵抗素子9と電気的に接続される素子側電極パッド15が設けられており、この素子側電極パッド15を介して抵抗素子同士の接続や抵抗素子9からの電気信号の外部への取り出しなどを行っている。
【0029】
以上説明した通り、第1の実施形態の加速度センサ20は、梁部5と固定部50との連結部12下部および梁部5と重り部7との連結部12下部に、梁部5の長手方向に沿って溝部4を設けることにより、梁部5が固定部50および重り部7に延出された延出部25が形成される。このように溝部4を形成することによって、延出部25の分だけ梁部5の長さを長くすることができる。
【0030】
さらに、溝部4の断面視凹曲線の内面6全体が楕円により形成されていることから、溝部4の内面6に集中する応力を緩和することができる。このことから、従来の同サイズの加速度センサと比較した場合、梁部5の厚みを維持しつつ、固定部50および重り部7の連結部12下部において集中する応力を緩和させることができるので、加速度検出感度の低下を招きにくい。
【0031】
さらに、溝部4を設けて延出部25が形成されることにより、梁部5の長手方向の長さが延出部25の分だけ長くなることから梁部5が撓みやすくなり、梁部5の上面にかかる応力を大きくすることができる。また、抵抗素子9を最大応力のかかる固定部50と梁部5とが連結された周縁の位置および重り部7と梁部5とが連結された周縁の位置に配置した場合、同じ加速度の印加でも、従来の梁部5にかかる応力より大きな応力をかけることができるので加速度検出の感度を向上させることができる。
【0032】
かかる加速度センサ20は、図3(a)に示すように基体1に実装されている。基体1は加速度センサ20を保護する機能を有し、内部には加速度センサ20を収容するキャビティ8が設けられている。基体1は、例えば、セラミック材料などからなる4枚の絶縁層1a〜1dを積層することにより構成されている。絶縁層1aは平板状の部材からなり、その主面1Aに加速度センサ20が載置される。絶縁層1bは加速度センサ20より若干大きい開口部を有する枠状の部材であり、絶縁層1aと接合されている。絶縁層1cは、絶縁層1bの開口部より広い開口部を有する枠状の部材であり、絶縁層1bの主面の一部が露出するようにして絶縁層1bと接合されている。さらに、絶縁層1aの主面1Aと対向する他方主面には絶縁層1dが接合されており、絶縁層1dは絶縁層1bと同様に孔部を有する枠状の部材からなる。このように形成された絶縁層1dの孔部にはICチップ23が収容される。
【0033】
絶縁層1cの開口部から露出する絶縁層1bの主面には、複数の基板側電極パッド16が形成されている。基板側電極パッド16は金属細線17によって加速度センサ20の固定部50上面に設けた素子側電極パッド15と電気的に接続されている。また基体1の下面には、複数の外部端子18が設けられており、外部端子18は基体1の内部に設けたビアホール導体19を介して基板側電極パッド16と接続されている。すなわち、加速度センサ20の電気信号は、素子側電極パッド15、金属細線17、基板側電極パッド16、ビアホール導体19、ICチップ23、外部端子18などを介して外部へ取り出されることとなる。
【0034】
このような基体1の主面1Aに載置される加速度センサ20は、図3(b)に示すように、接着剤11により絶縁層1aに接合されている。接着剤11は、例えば、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂などを使用することができる。
【0035】
接着剤11には、重り部7の下面と基体1の主面1Aとの間に所定の大きさのギャップが形成されるように、所定の径を有する球状のスペーサ部材22が混合されている。すなわち、重り部7の下面と基体1の主面1Aとの間のギャップの大きさをスペーサ部材22によって制御することができる。スペーサ部材22は、例えばシリカ、シリコン、ジビニルベンゼンなど所定の硬さを有する球状の部材であり、その直径は例えば2〜30μmである。
【0036】
また、ICチップ23は基体1に設けたビアホール導体19や配線導体(図示せず)などを介して加速度センサ20及び外部端子18と電気的に接続されている。ICチップ23は、例えば加速度センサ20の出力信号を増幅する増幅回路、加速度センサ20の温度特性を補正する温度補正回路、ノイズを除去するノイズ除去回路などが集積化されたものである。
【0037】
第1の実施形態の加速度センサ20のように梁部5が重り部7の上面四辺の中央部に連結されている場合、加速度センサ20と基体1との接合は、固定部50の四隅部において行うことが好ましい。これにより加速度センサ20の基体1への接合箇所と梁部5との間の距離が離れるため、接着剤11による接合に起因して発生し得る残留応力が梁部5に与える影響を小さくすることができ、加速度センサ装置100の電気的な特性が劣化するのを抑えることができる。
【0038】
加速度センサ20が接合された基体1のキャビティ8の開口部を塞ぐようにして蓋10が基体1の主面1Aに固着されている。これにより加速度センサ20がキャビティ8内に気密封止されることとなる。蓋10は、例えば42アロイやステンレスなどの金属板からなり、銀ロウやエポキシ樹脂などの接合剤により基体1に接合されている。
【0039】
以上、本発明の加速度センサ装置100によれば、接着剤11の接着面積のばらつきを小さくすることができ、加速度センサ20に不均一な残留応力が発生するのを抑制して電気的な特性が優れた加速度センサ装置100となすことができる。
【0040】
本実施形態では、ピエゾ抵抗効果を加速度検出に利用した加速度センサについて説明したが、静電容量効果を利用して加速度検出を行う加速度センサに適宜応用することができる。
【0041】
(変形例)
図5は、溝部4の断面形状のパターンの一例を示す拡大断面図である。なお、図5では梁部5と固定部50の一角のみを示している。図5(a)に示す図は、溝部4の一部が、楕円の一部と直線を組み合わせることにより形成されている。図5(a)は、溝部4の断面視凹曲線の内面6が、梁部5下部と連続する曲線と直線により形成されている。このように、溝部4は、円や直線など種々の形状を組み合わせることが可能である。
【0042】
図5(b)に示す図は、溝部4全体が半径R1の半円により形成されている。このように、溝部4の断面視凹曲線の内面6全体を半円で形成することにより、梁部5と固定部50との連結部12下部に集中する応力を断面視凹曲線の内面6で均一に緩和させることができる。
【0043】
図5(c)に示す図は、溝部4を深く形成して延出部25が長手方向に長くなるように形成されている。図5(c)の場合は、溝部4を形成することによって、断面視して梁部5から延出された延出部25が梁部5と同じ厚みで一定距離形成される。このように延出部25を長く形成することによって、耐衝撃性を向上させると共に、梁部5をより長くすることができるため加速度センサを大型化することなく加速度検出感度を向上させることができる。
【0044】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態にかかる加速度センサ200について説明する。
第1の実施形態の加速度センサ20と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。第1の実施形態の加速度センサ20では、梁部5と固定部50との連結部12下部および梁部5と重り部7との連結部12下部に溝部4を設けることにより延出部25を形成していたが、第2の実施形態の加速度センサ200では、溝部202を梁部5と固定部205との連結部210側面および梁部5と重り部207との連結部210側面に設けて延出部220を形成している。
【0045】
図6(a)は第2の実施形態にかかる加速度センサ200を示す平面図であり、図6(b)は図6(a)のC−C´線で切断したときの断面に相当する。第2の実施形態の加速度センサ200は、梁部5と固定部205との連結部210側面および梁部5と重り部207との連結部210側面に溝部202を設けている。溝部202は、図6(b)が示すように、固定部50を貫通するように形成されている。このように連結部210側面に溝部202を設けることにより、梁部5が固定部205側および重り部207側に延出された延出部220が形成され、延出部220の分だけ梁部5の長さを長くすることができる。さらに、溝部4が断面視凹曲線の内面6であることから、内面6に集中する応力を緩和することができる。ただし、本実施形態において断面視凹曲線とは、溝部4を梁部5の幅方向に断面視した際の溝部4の曲線を指す。
【0046】
以上のことから、固定部205および重り部207の連結部210側面において集中する応力を緩和させることができ、耐衝撃性を向上させることができる。また、XY軸方向に加速度がかかる場合、特に梁部5と固定部50との連結部210側面および梁部5と重り部207との連結部210側面に応力が集中しやすいため、このように溝部202を設けることによって集中する応力を効果的に緩和することができる。
【0047】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態にかかる加速度センサ300について説明する。第1の実施形態の加速度センサ20と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。図7は、第3の実施形態にかかる加速度センサ300の要部を示す拡大斜視図である。図7では固定部50と梁部5との連結部12のみを示している。図7に示すように、本実施形態にかかる加速度センサ300は、梁部5の連結部12外周全部に断面視凹曲線の内面41を有する溝部40を形成したものである。このように連結部12外周全部に溝部40を有することによって、XYZ軸の3軸方向に加速度がかかった場合でも、応力を効果的に緩和することができる。なお、本実施形態では固定部50と梁部5との連結部12に溝部40を設けることを説明したが、重り部7と梁部5との連結部12全部にも同様の溝部40を設けてもよい。
【0048】
<加速度センサ装置の製造方法>
次に本発明の第1の実施形態にかかる加速度センサ装置の製造工程を図8を用いて説明する。図8は、加速度センサ20の製造方法を説明する断面図である。
【0049】
(工程A)
図8(a)に示すように、まず重り部7と、重り部7を囲繞する枠状の固定部50と、一方端が固定部50の側面に連結され、且つ他方端が重り部7の側面に連結される梁部5と、梁部5に設けられる抵抗素子9と、を有する加速度センサ20を準備する。一方で、シリコン層からなり、加速度センサ20が載置される基体1を準備する。
【0050】
加速度センサ20は例えば、シリコン層の間にSiO層35を有するSOI基板37を用いて作製される。まず、SOI基板37表面のシリコン層にイオン注入法によりボロンを注入することでピエゾ抵抗からなる抵抗素子9(図示せず)を形成する。抵抗素子9を形成した後、ピエゾ抵抗素子に連結する配線を金属スパッター、ドライエッチング装置を用いて作製する。次に、従来周知の半導体微細加工技術、例えばフォトリソグラフィ法やディープドライエッチングによりSOI基板37の裏面側に穿孔部36を設けることにより固定部50および重り部7を形成し、その後、表面側から穿孔部36まで貫通する加工を施すことにより梁部5を形成する。
【0051】
(工程B)
さらに、工程Aによって準備された加速度センサ20の穿孔部36が形成された裏面側からエッチングガスにフッ酸を用いて、固定部50および重り部7のSiO層35をドライエッチングする。その後、図8(b)に示すように、有機ケイ素化合物を用いて撥水性ドライコーティングを行うことにより、ドライエッチング後に残ったSiO層35の端部に撥水部38を形成する。撥水部38は、角などに多く形成されやすいため、SiO層35の端部の上部と下部に撥水部38が多く形成される。さらに、このドライエッチングと撥水性ドライコーティングを繰り返すことによって、SiO層35側の端部の上部と下部がドライエッチングされにくいため、梁部5と固定部50との連結部12下部および梁部5と重り部7との連結部12下部に溝部4が設けられる。このようにして図8(c)に示すような加速度センサ20が作製される。なお、加速度センサ20を平面視して、梁部5と固定部50との連結部12側面および梁部5と重り部7との連結部12側面に形成される溝部4は、上述のフォトリソグラフィ法やディープドライエッチング法により形成することができる。
【0052】
(工程C)
一方、基体1はアルミナなどのセラミック材料からなる複数の絶縁層1a〜1dを積層することにより形成される。具体的には、主面1Aを有する平板状の絶縁層1a、矩形状の開口部を有する絶縁層1b、絶縁層1bの開口部より大きな開口部を有する絶縁層1cを順次積層し、絶縁層1aの主面1Aと対向する他方主面に絶縁層1dを接合することより基体1が作製される。
【0053】
次に図3に示すように基体1の主面1Aで且つ加速度センサ20を載置したときに接着剤11を塗布する。接着剤11は硬化前のシリコーン樹脂やエポキシ樹脂であり、ディスペンサーなどを用いて基体1の主面1Aに塗布される。接着剤11には、シリカ、シリコン、ジビニルベンゼンなどからなる直径が2μm〜30μm程度の球状のスペーサ部材22が混合されており、このスペーサ部材22が固定部50の下面と基体1の主面1Aとの間に介在されることにより基体1の主面1Aと重り部7の下面との間に隙間を形成することができる。
【0054】
次に加速度センサ20を基体1の主面1Aに載置させ、接着剤11を硬化させることにより加速度センサ20と基体1とを接合する。加速度センサ20を基体1に接合した後、金、銅、アルミニウムなどからなる金属細線17により加速度センサ20に設けた素子側電極パッド15と基体1に設けた基板側電極パッド16とを接続する。最後に42アロイなどからなる金属製の蓋10を銀ロウやエポキシ樹脂などの接合剤により基体1の上面(絶縁層1cの上面)に接合することより製品としての加速度センサ装置100が完成する。
【実施例1】
【0055】
次に本発明の加速度センサ20について、加速度が加わったときの状態を2次元有限要素法によるシミュレーションにより検証した。図9は、図5(b)に示す溝部4を有する加速度センサ20に加速度が印加された際の梁部5と固定部50との連結部12下部における応力集中係数を示すシミュレーション結果である。シミュレーションモデルを固定部50の厚みw2を100μmとして、梁部5の厚みt1を5μm、15μmの2つの場合についてシミュレーションを行った。このモデルにおいて、梁部5と固定部50との連結部12から150μm離れた梁部5の下面からZ軸の正の方向に10μNの力を印加したときに、溝部4の半径R1を変化させた場合の梁部5の下面と固定部50との連結部12における応力集中係数の変化を検証した。
【0056】
図9のグラフは縦軸が応力集中係数を示し、横軸が半径R1を梁部5の厚みt1で割った値(R1/t1)を示している。応力集中係数は、どれだけ応力が集中するかを表わす値であり、応力集中係数の値が大きくなればなる程、1点に集中する応力の割合が大きいことを表す。この図9のシミュレーション結果が示すように、溝部4により形成される断面視凹曲線の内面6の半径R1と梁部5の厚みt1の比を大きくしていくことによって、応力集中係数を1に近い値にすることができる。ここで応力集中係数が1とは、応力が一様に分布していることを示す。このように、内面6の半径R1を梁部5の厚みt1と同じ以上に大きくすることによって、梁部5と固定部50との連結部12に集中していた応力を緩和させることができる。このように応力が分散されることから、梁部5と固定部50との連結部12下部にかかる応力の大きさを大幅に低減させることがわかる。若しくは、内面6の半径R1に対して梁部5の厚みt1を薄くすることによって集中する応力を大幅に低減させることができる。
【実施例2】
【0057】
さらに、実施例1と同じ条件で溝部4の断面形状が楕円により形成されている加速度センサ20について加速度が加わったときの状態をシミュレーションにより検証した。以下、実施例1と異なる部分についてのみ説明する。図10は、図4に示す溝部4を有する加速度センサ20に加速度が印加された際の梁部5と固定部50との連結部12下部における応力集中係数を示すシミュレーション結果である。本実施例2のシミュレーションのモデルを、図4に示すような溝部4の断面視凹曲線の内面6が短軸30および長軸31を有するような楕円の一部とした。また、このモデルにおいて、楕円の長軸半径は短軸半径R2の2倍とし、梁部5の厚みt1を5μmとした。なお、比較例は実施例1の梁部5の厚みt1が5μmとしたシミュレーション結果である。この結果から、溝部4により形成される内面6の曲率半径を円より大きな楕円で形成することにより、より小さな半径R2で応力の集中を緩和することができることがわかる。
【符号の説明】
【0058】
1 基板
1a〜1d 絶縁層
4 溝部
5 梁部
6 内面
7 重り部
7´ 付属重り部
8 キャビティ
9 抵抗素子
10 蓋
11 接着剤
12 連結部
15 素子側電極パッド
16 基板側電極パッド
17 金属細線
18 外部端子
19 ビアホール導体
20 加速度センサ
22 スペーサ部材
23 ICチップ
25 延出部
30 短軸
31 長軸
35 SiO
36 穿孔部
38 撥水部
50 固定部
100 加速度センサ装置
R1 半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、前記固定部に対して変位可能な重り部と、前記固定部および前記重り部を連結するとともに前記重り部の変位に伴って撓む梁部と、を含み、
前記固定部および前記重り部は、少なくとも一方の側面の前記梁部との連結部外周に、前記梁部の長手方向に沿って断面視凹曲線の内面を有した溝部を備える加速度センサ。
【請求項2】
前記固定部および前記重り部は、両方の側面に、前記梁部との連結部外周に沿って前記溝部を有する請求項1に記載の加速度センサ。
【請求項3】
前記溝部の前記断面視凹曲線は、2定点からの距離の和が一定な曲線により形成されている請求項1または2に記載の加速度センサ。
【請求項4】
前記曲線全体が楕円の一部をなし、前記楕円の短軸は前記溝部が形成された前記側面と一致し、前記楕円の短軸の短軸半径が前記梁部の厚みより大きく形成されている請求項3に記載の加速度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−256221(P2010−256221A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107905(P2009−107905)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】