説明

加速度センサ

【課題】 信頼性の高い加速度センサを提供する。
【解決手段】
固定部と、前記固定部に対して変位可能な錘部と、第1端が前記固定部に、第2端が前記錘部に接続される梁部と、前記梁部に配置され、前記梁部の撓みに応じて抵抗値が変化する抵抗素子と、前記抵抗素子の抵抗値を外部回路に接続するための導体層であって、前記抵抗素子に電気的に接続され、前記錘部の変位によりかかる応力が前記抵抗素子よりも小さい位置に配置された接続部と、前記接続部から延び、前記抵抗素子と異なる厚み位置に広がる面に配置される配線部と、を有する導体層と、を含む加速度センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加速度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ピエゾ抵抗効果を利用して加速度を検出する加速度センサが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の加速度センサは、重り部と、重り部を支持する梁部と、梁部を支持する固定部と、梁部に設けられたピエゾ抵抗素子と、ピエゾ抵抗素子に接続された金属配線とを有している。梁部上にはピエゾ抵抗素子の一部が露出するように絶縁層が形成されており、金属配線は、この露出部においてピエゾ抵抗素子に直接接続され、かつ、絶縁層上で引き回されている。
【0003】
ここで、加速度センサに加速度に比例した外力が加えられると、重り部が固定部に対して変位するとともに梁部に撓み変形が生じる。そして、梁部とともに曲げ変形が生じたピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を検出することにより、加速度が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−160348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された加速度センサに強い衝撃が加わると、金属配線と抵抗素子とが接続される部位において梁が破断するという問題があった。
【0006】
本発明は上述の問題に鑑みて案出されたものであり、その目的は、強い衝撃が印加された場合においても梁が破断することのない、信頼性の高い加速度センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加速度センサは、固定部と、前記固定部に対して変位可能な錘部と、第1端が前記固定部に、第2端が前記錘部に接続される梁部と、前記梁部に配置され、前記梁部の撓みに応じて抵抗値が変化する抵抗素子と、前記抵抗素子を外部回路に接続するための導体層であって、前記抵抗素子に電気的に接続され、前記錘部の変位によりかかる応力が前記抵抗素子よりも小さい位置に配置された接続部と、前記接続部から延び、前記抵抗素子と異なる厚み位置に広がる面に配置される配線部と、を有する導体層と、を含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加速度センサによれば、外部回路に接続するための導体層のうち、抵抗素子に電気的に接続される接続部が、錘部の変位によりかかる応力が抵抗素子よりも小さい位置に配置されていることから、強い衝撃が印加された場合においても梁部の破断を抑制することができる。これにより、信頼性の高い加速度センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a),(b),(c)はそれぞれ、本発明の第1実施形態を示す模式的な平面図,断面図および要部拡大図である。
【図2】図1に示す加速度センサの変形例を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す模式的な要部拡大平面図である。
【図4】(a),(b)はそれぞれ、本発明の第3実施形態を示す模式的な要部拡大平面図およびその変形例を示す模式的な要部拡大断面図である。
【図5】図1に示す加速度センサの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本発明に係る加速度センサの好適な実施の形態を詳細に説明する。また、以下の実施の形態で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率は現実のものとは必ずしも一致していない。また、理解を容易にするために、上面に位置する一部の構成要素の図示を省略する場合がある。また、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。なお、本実施形態ではピエゾ抵抗効果を利用した三次元加速度センサ素子を例に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1(a),(b),(c)は、本発明の一実施形態である加速度センサ10(以下、単にセンサ10ということがある)の平面図および図1(a)のI−I線における断面図,図1(b)の破線で囲む領域の拡大図である。
【0012】
図1に示すようにセンサ10は、錘部11と、錘部11を囲繞する枠状の固定部13と、一方端(第1端)が固定部13に連結され、他方端(第2端)が錘部11に連結される梁部12と、固定部13に形成されるパッド電極14と、梁部12に形成される抵抗素子15と、抵抗素子15を外部回路に接続させる導体層16と、を有している。
【0013】
センサ素子10に加速度が加わると、加速度に応じた力がこの錘部11に作用し、錘部11が固定部13に対して変位することで(動くことで)梁部12が撓むようになっている。この撓みにより、抵抗素子15に応力が加わり、応力に応じて変化する抵抗値を、導体層16,パッド電極14を介して外部回路に取り出して検出する。
【0014】
ここで、導体層16は、抵抗素子15に電気的に接続される接続部16aと、接続部16aから延び、抵抗素子15と異なる厚み位置(図のZ軸方向)に広がる面(XY平面)に配置される配線部16bとを含む。配線部16bは、抵抗素子15のうち接続部16aと接続される部位を除いた錘部11、梁部12および固定部13を被覆する絶縁層17上に配置される。これにより、必要部以外では抵抗素子15と電気的に絶縁を確保した状態で、自由に配線部16bを引き回すことができる。そして、接続部16aは、錘部11の変位によりかかる応力が抵抗素子15よりも小さい位置に配置されている。図1に示すセンサ10では、抵抗素子15よりも接続部16aにかかる応力を小さくするために、抵抗素子15を梁部12から錘部11または固定部13まで延ばした箇所において、接続部16aと接触させることで、電気的に接続している。
【0015】
このような構成にすることにより、従来の加速度センサに比べ、梁部12の破断(破損)を抑制した、信頼性の高いセンサ10を提供することができる。これは、以下のメカニズムによるものと推察される。すなわち、通常、検出感度を高めるために抵抗素子は梁部のうち応力が集中する位置に配置されるため、導体層16と抵抗素子15とが接続される部位も応力が集中することとなる。従来の加速度センサは、この応力が集中する部位に、絶縁層と導体層とにより段差が形成されるため、この段差によりさらに応力が集中し、梁部が破損する恐れがある。
【0016】
これに対して、センサ10は、抵抗素子15よりも接続部16aにかかる応力を小さくするように、接続部16aを錘部11または固定部13に配置することで、錘部11の変位による応力集中箇所と、段差形状による応力集中箇所とをずらすことができる。これにより、接続部16aは、錘部11が変位した場合であっても応力分布が周辺と変わらない位置に配置されることとなり、梁部12の破損を抑制することができる。ここで、抵抗素子15にかかる応力とは、抵抗素子15が配置された領域内の最大値とする。
【0017】
なお、梁部12における応力集中箇所は、固定部13,錘部11に接続される第1端,第2端付近である。このことから、梁部12の中央付近において抵抗素子15と導電層16とを接続させる部位については、接続部16aを固定部13,錘部11に配置しなくてもよい。
【0018】
次に、上記のようなセンサ10の構成について詳述する。
【0019】
錘部11,固定部13,梁部12は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いて、これを加工することにより一体的に形成することができる。このようなSOI基板は、SiOからなる絶縁層の一主面側に、n型またはp型のSiからなる半導体層が形成されており、他主面側にSiからなる支持層が形成されたものを用いればよい。そして錘部11及び固定部13はこの半導体層,絶縁層,支持層から構成され、梁部は半導体層から構成されるように加工すればよい。
【0020】
錘部11は、加速度に対する感度をあげるために、可能な限り大きくすることが好ましいが、その形状及び大きさは適宜に設定されてよい。この例では平面形状が略正方形をなし、その一辺の長さは例えば0.25mm〜0.5mmに設定される。また錘部11の厚みは例えば0.2mm〜0.625mmに設定される。特に限定はないが、後述する固定部13の厚みと同程度とすることが好ましい。
【0021】
このような錘部11を囲繞するようにして枠状の固定部13が形成されている。固定部13は、平面形状が略正方形をなし、中央部に錘部11より若干大きい略正方形の開口部を有している。固定部13は、その一辺が例えば0.8mm〜3.0mmに設定され、アーム(辺)の幅(アームの長手方向と直交する方向の幅。図1のw)は例えば0.1mm〜1.8mmに設定される。また固定部13の厚み(図1のt)は、例えば0.2mm〜0.625mmに設定される。
【0022】
このような固定部13と錘部11との間には図1に示すように梁部12が設けられている。梁部12は、一方端が錘部11の各辺の上面側中央部に連結され、他方端が固定部13の内周における各辺の上面側(一主面13a側)中央部に連結されており、本実施形態におけるセンサ素子10では、4本の梁部12が設けられている。
【0023】
梁部12は可撓性を有し、センサ10に加速度が加わると錘部11が動き、錘部11の動きに伴って梁部12が撓むようになっている。梁部12は、例えば長手方向の長さが0.1mm〜0.8mmに設定され、幅(長手方向と直交する方向の長さ)が0.01mm〜0.2mmに設定され、厚みが5μm〜20μmに設定されている。このように梁部12を細長く且つ薄く形成することによって可撓性が発現される。
【0024】
このような梁部12の上面には複数の抵抗素子15が形成されている。抵抗素子15は、より具体的には、梁部12がn型のSiからなる場合には、ボロンを打ち込んだり拡散させたりすることにより形成されたピエゾ抵抗素子で構成させることができる。本実施形態では、3軸方向(図1に示した3次元直交座標系におけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の加速度を検出できるように梁部12の所定の位置にこれらの抵抗素子15が形成されている。
【0025】
例えば、X軸方向に伸びる2つの梁部12には、X軸方向の加速度を検出するための4個の抵抗素子15が設けられており、それぞれの梁部12に2個ずつ配置されている。これら4個の抵抗素子15のうち、固定部13側に配された抵抗素子同士を導体層16やパッド電極14に接続される不図示のボンディングワイヤ等により直列に接続し、固定部11側に配された抵抗素子15同士を直列に接続し、これらを並列に接続することでブリッジ回路を構成している。またY軸方向に伸びる2つの梁部12には、Y軸方向の加速度を検出するための4個の抵抗素子15が設けられており、これらの抵抗素子15を、X軸方向の加速度検出用の抵抗素子15と同様に配置し、抵抗素子同士の接続を導体層16により行うことによってブリッジ回路を構成している。
【0026】
また、Z軸方向の加速度を検出するための4個の抵抗素子15が、X軸方向に伸びる2つの梁部12に、X軸方向の加速度を検出するための4個の抵抗素子15それぞれと並ぶようにして形成されている。このZ軸方向の加速度検出用の抵抗素子15は、X軸方向の加速度検出用の抵抗素子15とは、抵抗素子同士の接続の仕方が異なっており、本実施形態では、X軸方向に伸びる2本の梁部12のうち一方の梁部12に設けられた固定部13側の抵抗素子15と、他方の梁部12に設けられた錘部11側の抵抗素子15とを配線層16により直列接続してブリッジ回路を構成している。
【0027】
このようなブリッジ回路が組まれたセンサ10に加速度が加わると、上述したように梁部12が撓み、この撓みに応じて抵抗素子15が変形するため、導体層16により形成されたブリッジ回路で検出する出力電圧が変化する。この抵抗値の変化に基づく出力電圧の変化を電気信号として取り出し、これを外部のICで演算処理することによって印加された加速度の方向並びに大きさを検知することができる。
【0028】
また、ICは、センサ10に設けてもよい。なおZ軸方向の加速度検出用の抵抗素子15は、X軸方向に伸びる梁部12に設けたのと同様にして、Y軸方向に伸びる2つの梁部12に設けるようにしてもよい。
【0029】
固定部13の上面には、抵抗素子15と電気的に接続されるパッド電極14が設けられており、このパッド電極14と配線層16を介して抵抗素子同士の接続や抵抗素子15からの電気信号の外部への取り出しなどを行っている。
【0030】
(加速度センサの製造方法)
次に本発明のセンサ10の製造方法について説明する。具体的には、以下のとおりである。
【0031】
基板としてSOI基板を用いた例を用いて説明する。SOI基板は、絶縁層と、絶縁層の一方側に積層された半導体層と、絶縁層の他方側に積層された支持層とを有するものである。絶縁層は、例えばSiOにより形成されている。半導体層は、シリコンにより形成されている。支持層は、例えば、シリコン等の半導体により形成されている。
【0032】
まず、SOI基板を酸素雰囲気中において1100℃で所望する厚みの熱酸化膜が形成されるまで熱酸化処理を行なう。これにより、SOI基板の外周全面に熱酸化膜が形成される。
【0033】
次に熱酸化膜を介して半導体層にイオン注入法などにより不純物を注入し、700℃程度でアニールすることでピエゾ抵抗からなる抵抗素子15を形成する。不純物としては、半導体層がn型のSOI基板を用いた場合にはB(ボロン)が例示でき、半導体層がp型のSOI基板を用いた場合にはP(リン),As(ヒ素),Ph(ホスヒン)などが例示できる。抵抗素子15を形成した後、熱酸化膜を、抵抗素子15の一部を露出させるようにパターニングすることで、絶縁層17に形成する。次に、この絶縁層17から露出するピエゾ抵抗素子15に連結するとともに、絶縁層17上に引き回される配線層16を形成する。配線層16は、スパッター、CVD、蒸着などによりアルミなどの金属材料を成膜した後、成膜した金属材料をドライエッチング、ウェットエッチングなどによりパターニングすることにより形成される。その後、400℃程度でシンタリング処理を行うことで、配線層16の接続部16aと抵抗素子15との接合をオーミックとすることができる。
【0034】
次に、従来周知の半導体微細加工技術、例えばフォトリソグラフィ法や反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)などによりSOI基板の半導体層側と支持層側から加工を施すことにより、固定部13,錘部11,梁部12を形成する。厚み方向(Z軸方向)において固定部13,錘部11等を一主面に対して垂直に加工するためには、誘導結合型プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)RIEにより加工することが好ましい。
【0035】
具体的には、まず、錘部11と固定部13とを区切る溝部に対応する領域において半導体層を除去する。次に、上記の溝部,梁部12に対応する領域において支持層を除去する。
【0036】
さらに、上記の溝部に対応する領域において絶縁層を除去する。以上のようにして、半導体層、絶縁層及び支持層を貫通する溝部が形成され、当該溝部によりSOI基板が内周側と外周側とに区切られ、錘部11と固定部13とが形成される。また、溝部の間欠部分(溝部が途切れる部分)における半導体層により梁部12が形成される。
【0037】
なお、SOI基板は、複数のセンサ10よりも広い面積を有しており、上述の各工程においては、1枚のSOI基板から複数のセンサ10が形成される。各工程は、基本的には1枚のSOI基板の複数のセンサ10に対して並行的に行われる。そして、SOI基板は、例えばダイシングなどにより複数のセンサ10に分割される。
【0038】
以上のとおり、各工程により、センサ10は形成される。
【0039】
(第1実施形態の変形例)
次にセンサ10の変形例について図2を参照しつつ説明する。なお、以下も同様であるが、図1と同様の箇所には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0040】
図2に示すセンサ10’は、図1に示すセンサ10とは、配線層16と抵抗素子15とを電気的に接続する構成が異なる。以下、相違点のみ説明する。
【0041】
図1に示すセンサ10は、抵抗素子15と配線層16の接続部16aとが直接接続されている。これに対し、センサ10’は、抵抗素子15と同じ厚み位置(Z軸位置)に抵抗素子15から延びる延在部18を設け、この延在部18に導電層16の接続部16aが接続されている。そして、抵抗素子15を、梁部12の錘部11の変位による応力が集中する部位のみに配置させ、そこから梁部12の第1または第2端を跨ぐように延在部18を錘部11または固定部13まで延ばすように配置している。これにより、加速度に対する感度を高めることができる。また、延在部18の導電性を抵抗素子15に比べ高くすることで、抵抗素子15と接続部16aとのXY平面上における配置位置が離間していても電気的な損失を低減させた状態で、両者を電気的に接続することができる。
【0042】
このような延在部18は、例えば、抵抗素子15に比べてドープする不純物量を多くすることで形成できる。なお、この場合には、絶縁層17’は延在部18を露出するように熱酸化膜をパターニングして形成すればよい。
【0043】
また、延在部18の厚み方向(Z軸方向)の位置は、少なくとも一部が抵抗素子15の配置された厚み位置と重複していればよく、両者の厚みを一致させる必要はない。例えば、延在部18の厚みを抵抗素子15の厚みに対して大きくし、両者の上面を揃えるように配置させてもよい。
【0044】
このように、抵抗素子15と導体層16とを直接接続せずに延在部18を介して接続することにより、段差が生じる導体層16との接続位置(接続部16aの位置)を自由に調節することができる。これにより、接続部16aを錘部11の変位による応力が少ない領域に配置することができ、梁部12の破損を抑制することができる。さらに、抵抗素子15を応力が集中する位置のみに配置し加速度の検出感度を高めることもできる。
【0045】
以上より、図2に示すセンサ10’によれば、信頼性が高く、かつ、加速度の検出感度の高い加速度センサを提供することができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、図3を用いて、本発明の他の実施形態であるセンサ20について説明する。図3は、センサ20の1つの梁部12付近の要部拡大平面図である。なお、理解を容易にするために抵抗素子15と延在部18とに斜線を付している。
【0047】
図3のセンサ20と図2に示すセンサ10’とでは、錘部11の変位による応力を抵抗素子15に比べて接続部16aで小さくする手段が異なる。
【0048】
錘部11が変位すると、梁部12の形状にも依存するが、一般的には梁部12の第1端12aと第2端12bとに応力が集中する。そして、梁部12をXY平面でみたとき、第1端12aと第2端12bと結ぶ方向においてその中間12cに向けて、応力が小さくなるような応力分布が生じる。そこで、図3に示すセンサ20では、抵抗素子15をコの字状(Cの字状)に折り返した形状とし、第1端12aの近くに配置される抵抗素子15は折り曲げた側が第1端12aに位置するように、第2端12bの近くに配置される抵抗素子15は折り曲げた側が第2端12bに位置するように、それぞれ配置している。そして、抵抗素子15から延在する延在部18を、梁部12の第1端12aと第2端12bとの中間側12cに設け、この延在部18上に接続部16aを配置することで、錘部11の変位による応力を抵抗素子15に比べて接続部16aで小さくしている。
【0049】
このような構成とすることで、梁部12の破損を抑制し、信頼性の高いセンサ20を提供するとともに、例えば、固定部13に接続部16aを設ける必要がないので、固定部13の幅を小さくすることができ、小型なセンサ20を提供することができる。
【0050】
なお、図3においては、延在部18を介して抵抗素子15と導体層16とを接続したが、延在部18を設けなくてもよい。その場合には、抵抗素子15のうち、中間12c側の部分に接続部16aを接続させればよい。
【0051】
(第3実施形態)
次に、図4を用いて、本発明の他の実施形態であるセンサ30について説明する。図4(a)は、センサ30の1つの梁部付近を示す拡大平面図である。図中において、理解を容易にするために、抵抗素子15と延在部16とに斜線を付している。
【0052】
図4(a)のセンサ30と図2に示すセンサ10’とでは、錘部11の変位による応力を抵抗素子15に比べて接続部16aで小さくする手段が異なる。
【0053】
具体的には、梁部12に、第1端12a,第2端12bに向けて断面積を大きくなる断面積変化部12dを形成する。このような断面積変化部12dにより、梁部12と固定部13との接続部分および梁部と錘部11との接続部分への応力集中を抑制し、梁部12の接続部分における破損を抑制することができる。
【0054】
そして、梁部12のうち最も応力が加わる位置(応力集中部)は、この断面積変化部12dから中央12c側に続く部位であることから、抵抗素子15はこの応力集中部に配置し、抵抗素子15から断面積変化部12dまで延びる延在部18を設け、この断面積変化部12dにおいて延在部18と導体層16の接続部16aとを接続させる。これにより、錘部11の変位による応力を、接続部16aで抵抗素子15に比べて小さくすることができるので、梁部12の破損を防ぎ、信頼性の高いセンサ30を提供することができる。
【0055】
このような断面積変化部12dは、例えば、XY平面視で、断面積変化部12dの幅が徐々に広がり、その外形が形成する曲線の接線と固定部13の梁部12が接続される部分が形成する辺とで成す角度が、第1端12aに近付くに連れ徐々に小さくなり、一致するようにすることが好ましい。具体的には、断面積変化部12dの外形が形成する曲線の曲率半径は、梁部12の幅w’の1/4以上とすることが好ましい。第2端12bと錘部11との接続部においても同様である。
【0056】
このように、梁部12の断面積変化部12dに接続部16aを配置することにより、梁部12の破損を抑制することができる。また、固定部13に接続部12aを配置する領域が不要となるので、小型なセンサを提供することができる。
【0057】
なお、図4(a)によれば、断面積変化部12dを、XY平面において梁部12の幅を広くすることで実現したが、図4(b)に示すように厚み方向(Z軸)において断面積を変化させてもよいし、図4(a),(b)を組み合わせたものとしてもよい。ここで厚み方向で断面積変化部12dを設ける場合には、断面視においてその外形が形成する曲線の曲率半径を、梁部12の厚みt’の1/2以上とすることが好ましい。
【0058】
また、図4においては、延在部18を介して抵抗素子15と導体層16とを接続したが、延在部18を設けなくてもよい。その場合には、抵抗素子15を断面積変化部12dまで延在させて、接続部16aを接続させればよい。
【0059】
(錘部の変形例)
図1〜図4においては、錘部11の平面形状が略正方形のものを示したが、図5に示すセンサ10’’のように、錘部11の四隅に連結された4個の付属錘部21が設けられた構成としてもよい。なお、図中において導体層16およびz軸の加速度を検出するための抵抗素子15の図示を省略している。付属錘部21は、錘部11と一体形成されるものであり、付属錘部21を設けることによって加速度に対する梁部12の撓みが大きくなり、加速度の検出感度を向上させることができる。
【0060】
付属錘部21の平面視における一辺の長さは例えば、0.1mm〜0.4mmである。付属錘部21の厚みは例えば錘部11の厚みと同じである。このような付属錘部21は、SOI基板を加工して錘部11を形成するときに同時に形成するようにパターニングを工夫すればよい。
【0061】
なお、図1〜図4に示すセンサ10,10’,20,30は、錘部11が単一材料からなる場合を例に説明したが、錘部11を構成する材料に比べ比重の大きい材料からなる別体の錘部材を貼りあわせてもよい。この場合には、同じ加速度が加わった場合に梁部12が撓む量が増え、より感度の高いセンサ素子を提供することができる。
【0062】
このような錘部材としては、錘部11がシリコンであればイリジウム、オスミウム、白金、レニウム、金、タングステン、ウラン、タンタル、パラジウム、ルテニウム、タリウム、鉛、銀、モリブデン、ルテチウム、ビスマスにより形成し、例えば、ポリイミド、エポキシ、シリコーン等の接着部材を介して錘部11に接続すればよい。
【0063】
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0064】
加速度センサは、3軸の加速度を計測するものに限定されない。また、重り部の形状や梁部の数等の具体的な構成は、適宜に設定されてよい。例えば、加速度センサ素子は、梁部を1本のみ又は2本のみ有し、片持ち梁状にするなどして、1軸の加速度を計測するものであってもよい。また、SOI基板ではなくSi基板を用いてもよい。また、梁部の形状をダイヤフラム形状としてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10・・・センサ
11・・・錘部
12・・・梁部
13・・・固定部
13a・・一主面
14・・・パッド電極
15・・・抵抗素子
16・・・導体層
16a・・接続部
16b・・配線部
17・・・絶縁層
18・・・延在部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、
前記固定部に対して変位可能な錘部と、
第1端が前記固定部に、第2端が前記錘部に接続される梁部と、
前記梁部に配置され、前記梁部の撓みに応じて抵抗値が変化する抵抗素子と、
前記抵抗素子の抵抗値を外部回路に接続するための導体層であって、
前記抵抗素子に電気的に接続され、前記錘部の変位によりかかる応力が前記抵抗素子よりも小さい位置に配置された接続部と、前記接続部から延び、前記抵抗素子と異なる厚み位置に広がる面に配置される配線部と、を有する導体層と、
を含む加速度センサ。
【請求項2】
断面視で、前記抵抗素子と同じ厚み位置において、前記抵抗素子から延在する、前記抵抗素子に比べ導電性の高い延在部をさらに有し、
前記接続部は、前記延在部に接続される、請求項1に記載の加速度センサ。
【請求項3】
前記接続部は、前記固定部または前記錘部に配置された、請求項1または2記載の加速度センサ。
【請求項4】
前記延在部は、前記抵抗素子から前記固定部または前記錘部まで延在する、請求項2に係る請求項3に記載の加速度センサ。
【請求項5】
前記接続部は、前記梁部に配置され、前記抵抗素子の、前記第1端と前記第2端との中間側において、前記抵抗素子に電気的に接続されている、請求項1に記載の加速度センサ。
【請求項6】
前記梁部は、前記第1端または前記第2端に向けて断面積が大きくなる断面積変化部を有し、
前記接続部は、前記断面積変化部に配置された、請求項1に記載の加速度センサ。
【請求項7】
少なくとも前記抵抗素子を覆い、前記延在部を露出させる絶縁層をさらに有し、
前記配線部は、前記絶縁層上に配置される、請求項2に記載の加速度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−256234(P2010−256234A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108093(P2009−108093)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】