加速度センサ
【課題】ウエハレベルパッケージを用いて、電極パッド近傍の信頼性を向上させることができる加速度センサを提供する。
【解決手段】加速度センサ100は、加速度検出素子と枠111に形成された電極パッド115とを接続するAl配線116とからなるセンサ部110と、センサ部110に実装されてセンサ部110を密閉空間に収容するキャップ部117と、センサ部110とキャップ部117とを接合する接着層118とを備え、電極パッド115は、センサ部110の密閉空間の方向に拡張された拡張部115Aを有し、キャップ部117は、拡張部115Aの端部と積層される接着層118によりセンサ部110と接合する。
【解決手段】加速度センサ100は、加速度検出素子と枠111に形成された電極パッド115とを接続するAl配線116とからなるセンサ部110と、センサ部110に実装されてセンサ部110を密閉空間に収容するキャップ部117と、センサ部110とキャップ部117とを接合する接着層118とを備え、電極パッド115は、センサ部110の密閉空間の方向に拡張された拡張部115Aを有し、キャップ部117は、拡張部115Aの端部と積層される接着層118によりセンサ部110と接合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾ抵抗素子を用いてX、Y及びZ軸方向の加速度を検出する加速度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や家電製品など様々な分野において、半導体加速度センサが用いられる。従来、この種の半導体加速度センサとして、例えば特許文献1乃至3で開示されているものがある。
【0003】
図1は、特許文献1に記載の半導体加速度センサの平面図である。
【0004】
図1に示すように、半導体加速度センサ10は、シリコン基板を加工して形成されるセンサ基板11とその上下面に配置される上部ガラスキャップと下部ガラスキャップとを備える。図1では、上部ガラスキャップを取り除いた状態を示している。
【0005】
センサ基板11は、矩形枠状のフレーム14、フレーム14の内側に配設された矩形板状の錘部15、及び錘部15をフレーム14の一辺に接続する一対の薄肉状のカンチレバー16を有している。錘部15は、カンチレバー16を介してフレーム14に揺動自在に支持されており、センサ基板11に加速度が作用すると錘部15が変位してカンチレバー16がフレーム14に対して撓むようになっている。
【0006】
一対のカンチレバー16には、それぞれに2個のセンシング部としてのゲージ抵抗17が設けられており、これら4つのゲージ抵抗17がブリッジ接続されている。カンチレバー16が接続されたフレーム14の一辺にはワイヤボンディングパッド18が設けられている。ゲージ抵抗17とワイヤボンディングパッド18とは、拡散層配線19、コンタクト部20及びAl配線21を介して接続されている。また、ワイヤボンディングパッド18には金やアルミニウムなどで形成されたボンディングワイヤ(図示せず)が接続されている。そして、このボンディングワイヤを外部に接続することによりセンサ基板11と外部との電気的接続がなされている。
【0007】
上部ガラスキャップ及び下部ガラスキャップは、フレーム14の上下面にそれぞれ陽極接合されている。上部ガラスキャップは、錘部15及びカンチレバー16を覆うとともにワイヤボンディングパッド18を上部ガラスキャップ外に露出させるようにフレーム14に陽極接合されている。
【0008】
カンチレバー16が接続されている一辺に隣接する二辺に沿ったフレーム14上には、厚さ約1〜2μmのアルミニウム製の金属薄膜23が帯状に形成されている。金属薄膜23が形成されていない部分には金属薄膜23とほぼ同じ高さの凸部24が形成されており、金属薄膜23と凸部24とで矩形枠状部25が形成されている。
【0009】
上部ガラスキャップとフレーム14とは、上部ガラスキャップの輪郭を矩形枠状部25の輪郭に位置合わせした状態で金属薄膜23を介して陽極接合されている。
【0010】
図2は、特許文献2に記載の加速度センサ基板の図であり、図2(b)は加速度センサ基板のピエゾ抵抗素子側の平面図、図2(a)は図2(b)のA−A’断面図である。
【0011】
図2に示すように、加速度センサチップ30は、ピエゾ抵抗素子31と配線32、分割溝33、電極パッド34、2点鎖線で示した接合部35、梁部36、錘部37、枠部38等から構成される。
【0012】
加速度センサ基板は、加速度センサチップ30が連結部39で接合されている。一点鎖線で示した分離部41で分離し個片化される。加速度センサ基板の上下面には、キャップ基板と接合する接合材が形成された接合部35を設ける。加速度センサチップ30の外周の分離部41に設けた分割溝33は、梁部36と錘部37を形成するときに同時に形成する。
【0013】
図3は、特許文献3に記載の加速度センサの平面図である。
【0014】
図3に示すように、加速度センサ50は、基板51と、基板51の上の右側部分に設置されたセンサ素子部52と、センサ素子部52の左側に設置された電極パッド53a(53a1〜53a4)とを備える。電極パッド53a1〜53a4は、それぞれ配線LNa、LNb、LNc、LNdを介してセンサ素子部52と接続されている。
【0015】
センサ素子部52には、加速度を検出するための質量体54、質量体54を支持する支持部55、質量体54と支持部55とを接続する梁部56が設けられている。配線LNaには固定電極57aが接続され、配線LNdには固定電極57dが接続されている。質量体54の両翼には、固定電極57a,57dと対向するように、可動電極58が櫛状に設けられている。質量体54及び可動電極58は、梁部56及び支持部55により中空保持されている。
【0016】
上記加速度センサ50に加速度が加わると、梁部56が撓んで質量体54が変位する。すると、可動電極58と固定電極57a,57dとの間の電極間距離が変動し、電極間の静電容量が変化する。この静電容量の変化により、加速度が検出される。
【0017】
図4は、特許文献1乃至3に記載の加速度センサにおいて、共通して用いられている加速度センサの配線及びコンタクト部の構造を示す図である。
【0018】
図4に示すように、加速度センサ60は、センサ基板61と、センサ基板61の側面に設置された電極パッド62と、センサ基板61と電極パッド62とを接続するAl配線63とを備える。センサ基板61の上部は、接着剤樹脂層64により上部ガラスキャップ、又はシリコンキャップ(図示略)に樹脂接合される。このような半導体センサの製造方法において、樹脂接合によるウエハレベルパッケージは、一般的な封止方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008−185355号公報
【特許文献2】特開2008−091845号公報
【特許文献3】特開2008−089327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、このような従来の加速度センサの製造方法にあっては、以下の課題があった。
【0021】
(1)樹脂接合によるウエハレベルパッケージでは、電極パッド62近傍のAl配線63のことを考慮せずに封止していたため、Al配線63が保護されず、信頼性を確保することができない。例えば、図4では、電極パッド62近傍のAl配線63の上部65が保護されていない。
【0022】
特許文献1乃至3に記載の加速度センサについてみてみると、図1では、ワイヤボンディングパッド18及びAl配線21、図2では、配線32及び電極パッド34、図3では、電極パッド53及び配線LNa、LNb、LNc、LNdであり、いずれも電極パッド近傍のAl配線が保護されていない。パッド近傍のAl配線が保護されておらず、ウエハ接合によってAl配線の信頼性が確保できない。
【0023】
(2)Al配線の信頼性を確保するためには、ダイシングによるセンサチップ個片化後にAl配線に保護膜を施す必要があり生産性が悪化してしまう。
【0024】
本発明は、かかる点を考慮してなされたものであり、ウエハレベルパッケージを用いて、電極パッド近傍の信頼性を向上させることができる加速度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の加速度センサは、枠部と、錘部と、前記枠部と前記錘部とを連結する梁部と、前記梁部上に形成された加速度検出素子と、前記枠部に形成された電極パッドとを接続する金属配線とを有するセンサ部と、前記センサ部上に配置され、該センサ部に密閉空間を形成するキャップ部と、前記センサ部と前記キャップ部とを接合する接着層とを備え、前記電極パッドは、前記密閉空間の方向に拡張された拡張部を有し、前記キャップ部は、前記拡張部の少なくとも一部と積層される前記接着層により前記センサ部と接合する構成を採る。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ウエハレベルパッケージを用いて、電極パッド近傍の信頼性を向上させることができる加速度センサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】特許文献1に記載の半導体加速度センサの平面図
【図2】特許文献2に記載の加速度センサ基板の図
【図3】特許文献3に記載の加速度センサの平面図
【図4】従来の加速度センサの配線及びコンタクト部の構造を示す図
【図5】本発明の実施の形態に係る加速度センサの外観構成を示す図
【図6】上記実施の形態に係る加速度センサのピエゾ抵抗素子の十字梁での概略配置を示す平面図
【図7】上記実施の形態に係る加速度センサの要部を示す上視図
【図8】図7のA−A’矢視断面図
【図9】上記実施の形態に係る加速度センサの製造工程図
【図10】上記実施の形態に係る加速度センサの表面キャップウエハの製造工程図
【図11】上記実施の形態に係る加速度センサの表面キャップウエハの他の製造工程図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
(実施の形態)
図5は、本発明の実施の形態に係る加速度センサの外観構成を示す図である。図6は、ピエゾ抵抗素子の十字梁での概略配置を示す平面図である。図7は、加速度センサの要部を示す上視図である。図8は、図7のA−A’矢視断面図である。本実施の形態は、3軸加速度センサに適用した例である。
【0030】
図5乃至図8に示すように、加速度センサ100は、枠111と、枠111内に設けられた錘112(112a〜112d)と、枠111と錘112とを連結する十字梁113(113a〜113d)と、十字梁113上に形成された加速度検出素子と、加速度検出素子と枠111に形成された電極パッド115(115a〜115d)とを接続するAl配線116とからなるセンサ部110を備える。
【0031】
電極パッド115(115a〜115d)は、センサ部110の密閉空間の方向に拡張された拡張部115Aを有する。電極パッド115(115a〜115d)が、拡張部115Aを有することで、キャップ部117(後述)を外側に広げることなくAl配線116をキャップ部117内の密閉空間に収容しつつ、電極パッド115の本来の機能である十分な広さのワイヤボンディング領域を確保する。
【0032】
また、加速度センサ100は、センサ部110に実装されてセンサ部110を密閉空間に収容するキャップ部117と、拡張部115Aの少なくとも一部に積層され、センサ部110とキャップ部117とを接合する接着層118とを有する。
【0033】
十字梁113を構成する各梁113a〜113dは、ピエゾ抵抗素子を有する肉薄の可撓性部材となっている。十字梁113は、中心部分でクローバ状の錘112と連結されている。この十字梁113の中心部分は、肉薄で可撓性の十字梁113が加速度に応じて撓むのに対して、加速度が加わっても錘112を支持して撓まないため、中心非可動部114と呼ぶことにする。
【0034】
Al配線116は、ピエゾ抵抗素子と電極パッド115(115a〜115d)の拡張部115Aとを接続する。電極パッド115(115a〜115d)は、当該ピエゾ抵抗素子に電圧を印加し及びピエゾ抵抗素子からの出力を取り出すための端子部である。
【0035】
キャップ部117は、電極パッド115(115a〜115d)の拡張部115A上に積層された接着層118を介してセンサ部110を密閉空間に収容するキャップウエハ又は接合樹脂である。
【0036】
接着層118は、ポリイミド等の接着材料からなる。接着層118は、キャップ部117の外形形状と同じ矩形形状パターンを有し、キャップ部117の内周面と電極パッド115(115a〜115d)の拡張部115A及び枠111とを接着する。特に、接着層118は、接着面が電極パッド115(115a〜115d)の拡張部115Aの端部及びAl配線116の一部に重なるような接着層パターンを有する。キャップ部117と電極パッド115(115a〜115d)が形成された枠111とを接着層118を介して接合した場合、電極パッド115(115a〜115d)の拡張部115Aの少なくとも端部は、接着層118の内側、すなわちキャップ部117で保護された密閉空間内に配置される。Al配線116は、キャップ部117の密閉空間内で保護される。
【0037】
図7に示すように、接着層118は、十字梁113から等距離に離して配置し、かつ等幅の枠形状とする。接着層118は、シリコンの熱膨張係数に近い係数をもつ接着材料を用いることが好ましい。具体的には、デバイス材料のシリコンの熱膨張係数(2.5〜4.5×10−6/K)に近い係数をもつ接着材料を用いる。
【0038】
また、図8に示すように、接着層118は、電極パッド115(115a〜115d)の拡張部115Aを覆い、かつ拡張部115A上の膜厚とその他枠111の膜の高さが同じになるように形成する。
【0039】
上記構成を採ると、図7に示すように、Al配線116は、キャップ部117に形成される接着層118の内側に配置される。Al配線116が、接着層118の内側に配置される構造であればどのような構造でもよい。本実施の形態では、密閉空間の方向に拡張された電極パッド115(115a〜115d)の拡張部115Aの端部が接着層118に重なるように、電極パッド115(115a〜115d)及び接着層118を形成する。この構成によれば、Al配線116のみに接着層118が重なるのではなく、Al配線116及び拡張部115Aの端部にも接着層118が重なる。このため、接着層118を介して伝達される応力を拡張部115Aの端部が受けることで、Al配線116の破損を未然に防止することができる。その一方で、電極パッド115(115a〜115d)は、密閉空間の方向に拡張された拡張部115Aを有することで、キャップ部117を外側に広げることなくAl配線116をキャップ部117内の密閉空間に収容しつつ、電極パッド115の本来の機能である十分な広さのワイヤボンディング領域を確保することができる。
【0040】
拡張部115Aを含む電極パッド115(115a〜115d)の全長は、例えば160〜170μmに形成する。この場合、接着層118に接合される拡張部115Aの端部の長さは、70〜80μmである。
【0041】
本実施の形態では、ピエゾ抵抗素子がある梁部にかかる応力を均等にするために各梁端部から等距離になるように離し、等幅にする。以下、具体的に説明する。
【0042】
図6に、X軸、Y軸、Z軸方向用のピエゾ抵抗素子が、十字梁113上のどの位置に配置されているかの概略を示す。
【0043】
梁113aには、X軸方向用及びZ軸方向用のピエゾ抵抗素子x1,x2,z1,z2が形成されている。同様に、梁113cには、X軸方向用及びZ軸方向用のピエゾ抵抗素子x3,x4,z3,z4が形成されている。
【0044】
X軸方向用のピエゾ抵抗素子x1〜x4とZ軸方向用のピエゾ抵抗素子z1〜z4は、梁113a,113cの長手方向(X方向)の同位置に並列に配置されている。よって、その対称性が確保されている。
【0045】
梁113d,113bには、Y軸方向用のピエゾ抵抗素子y1〜y4が形成されている。ここで各ピエゾ抵抗素子x1〜x4,y1〜y4,z1〜z4は、梁113における、枠111の近傍位置と、中心非可動部114の近傍位置に形成されている。つまり、ピエゾ抵抗素子x1〜x4,y1〜y4,z1〜z4は、加速度によって梁113が撓み易い、梁113の付け根部分に形成されている。
【0046】
なお、本実施の形態では、X軸方向用のピエゾ抵抗素子x1〜x4と、Z軸方向用のピエゾ抵抗素子z1〜z4を同一の梁上に形成したが、本実施の形態の3軸加速度センサ100は構造上、X軸とY軸は等価なので、Y軸方向用のピエゾ抵抗素子y1〜y4とZ軸方向用のピエゾ抵抗素子z1〜z4を同一梁上の同位置に並列に配置してもよい。
【0047】
次に、加速度センサ100の製造方法について説明する。
【0048】
図9は、加速度センサ100の製造工程図である。図中、Sは各工程を示す。
【0049】
加速度センサチップ、表面キャップウエハ、及び裏面キャップウエハは、Si基板を材料として、半導体プロセスにより製造する。加速度センサチップは、加速度センサ100のセンサ部110を上部から覆うキャップ部117を構成する。表面キャップウエハは、キャップ部117及び接着層118を構成する。裏面キャップウエハは、加速度センサ100のセンサ部110を底部から封止するキャップ部(図示略)を構成する。
【0050】
<加速度センサチップ>
S1:Siウエハ上に表面処理を行う。
【0051】
S2:Siウエハをフォトリソとドライ・エッチングを用いて加工し、十字梁113を形成する。具体的には、B(ボロン)又はP(リン)といった不純物を、イオン・インプランテーションによってSi基板中に注入することでピエゾ抵抗素子x1〜x4,y1〜y4,z1〜z4を形成する。また、SiウエハのSiO2酸化膜上にTEOS(tetra-ethyl-ortho-silicate)膜を形成する。TEOS膜の上に、フォト・レジストによりAl配線を形成する。
【0052】
S3:Al配線保護膜形成後のSiウエハに、ドライ・エッチングによって錘及び可撓部など構造体を形成する。
【0053】
S4:十字梁113が形成された加速度センサウエハと、工程S21,S22で別途作製された表面キャップウエハと、工程S31,S32で別途作製された裏面キャップウエハとを接合する表裏面封止基板ボンティングを行う。本実施の形態では、加速度センサウエハ完成後に、加速度センサウエハと表面キャップウエハと裏面キャップウエハとを表裏面封止基板ボンディングしている。
【0054】
上記工程S4の表面封止基板ボンディングにおいて、表面キャップウエハを加速度センサウエハに接合する際、電極パッド115の拡張部115Aと接着層118とを重ねるようにアライメントを行いボンディングする。電極パッド115は、センサ部110の中央側に延長した拡張部115Aを有し、この拡張部115Aの枠111が接着層118を介して表面キャップウエハと接合される。すなわち、加速度センサウエハと表面キャップウエハとの接合は、枠111上の拡張部115Aの端部を含むAl配線116領域が担う。このため、電極パッド115は、パッド本来の目的である十分な広さのワイヤボンディング領域を確保することができる。また、図7に示すように、接着層118は、デバイス面内の応力バランスを良くするために十字梁113から等距離に配置し、等幅の枠形状とする。
【0055】
S5:研削処理により電極パッド115(115a〜115d)を露出させる。
【0056】
S6:全数検査により合格した加速度センサをダイシングする。
【0057】
S7:ダイシングした加速度センサに樹脂パッケージなどの後工程を施して製造工程を終了する。
【0058】
<表面キャップウエハ>
S21:Siウエハ上に熱酸化膜(ここではSiO2酸化膜)を形成する。
【0059】
S22:熱酸化膜を形成したSiウエハ上に接着層118を形成する。作製された表面キャップウエハは、センサ部110を密閉空間に収容するキャップ部117として加速度センサウエハに接合される(工程S4又はS7参照)。
【0060】
<裏面キャップウエハ>
S31:Siウエハ上に熱酸化膜(ここではSiO2酸化膜)を形成する。
【0061】
S32:熱酸化膜を形成したSiウエハ上に接着層(図示略)を形成する。作製された裏面キャップウエハは、加速度センサウエハの底面に接合される(工程S4参照)。
【0062】
図10は、表面キャップウエハの製造工程図である。表面キャップウエハは、加速度センサ100のセンサ部110を上部から覆うキャップ部117である。
【0063】
キャップウエハは、図10(a)に示すように、例えばSiウエハを材料として、半導体プロセスにより製造する。
【0064】
S41:Siウエハ117a上に熱酸化膜(ここではSiO2酸化膜)119を形成する(図10(b)参照)。
【0065】
S42:SiウエハのSiO2酸化膜119上にポリイミド等の接着層118aを塗布する(図10(c)参照)。
【0066】
S43:SiウエハのSiO2酸化膜119上に、フォト・レジストにより接着層118aをパターニングする(図10(d)参照)。パターニング後は、接着層118となる。図7及び図8に示すように、接着層118パターンは、電極パッド115の拡張部115Aの端部で、かつキャップ部117周囲を取り囲む形状である。
【0067】
S44:接着層118が接着されたSiウエハ117aに対して、ウエハボンディング時に枠111上の電極パッド115を露出させるためのエッチングを行う(図10(e)参照)。すなわち、接着層118のパターニングを完成させた後、接着層118が枠形状にパターニングされた後に電極パッド115を露出させるためのエッチングを行う。エッチング後は、Siウエハ117bとなる。
【0068】
S45:上記表面キャップウエハを加速度センサウエハに接合するウエハボンディングを行う。特に、電極パッド115の拡張部115Aと接着層118とを重ねるようにアライメントを行いボンディングする。
【0069】
S46:ウエハボンディング後のSiウエハ117bを研削して電極パッド115を露出させ(図10(f)参照)、キャップウエハ作製フローを終了する。
【0070】
図10では、接着層118のパターニングを完成させた後、すなわち接着層118が枠形状にパターニングされた後に電極パッド115を露出させるためのエッチングを行っている。図11の変形例も可能である。
【0071】
図11は、表面キャップウエハの他の製造工程図である。図10と同一工程には同一番号を付している。
【0072】
S43’:SiウエハのSiO2酸化膜119上に、フォト・レジストにより接着層118aの中央部のみをパターニングする(図11(d)参照)。このパターニング後は、接着層118bとなる。
【0073】
S44’:中央部のみをパターニングされた接着層118bが接着されたSiウエハ117aに対して、接着層118bの枠外側とSiウエハ117bのパッド露出部を継続してエッチングを行う(図11(e)参照)。パターニング後は、接着層118となる。図7及び図8に示すように、接着層118パターンは、電極パッド115の拡張部115Aの端部で、かつキャップ部117周囲を取り囲む形状である。また、電極パッド115を露出させるためのエッチングも同時に完了する。
【0074】
図11では、デバイス内部にかかる接着層118aの枠中央部のみパターニングした後に、接着層118bの枠外側とSiウエハ117bのパッド露出部を継続してエッチングを行っている。
【0075】
図11の工法によれば、電極パッド115の露出エッチ部と接着層118bの枠外側を同じ面にすることができ、電極パッド115のワイヤボンディング領域を大きく確保することができ、又はデバイスサイズを小さくすることができる。
【0076】
以上詳細に説明したように、本実施の形態の加速度センサ100は、加速度検出素子と枠111に形成された電極パッド115(115a〜115d)とを接続するAl配線116とからなるセンサ部110と、センサ部110に実装されてセンサ部110を密閉空間に収容するキャップ部117と、センサ部110とキャップ部117とを接合する接着層118とを備え、電極パッド115は、センサ部110の密閉空間の方向に拡張された拡張部115Aを有し、キャップ部117は、拡張部115Aの端部と積層される接着層118によりセンサ部110と接合する。接着層118と電極パッド115の拡張部115Aが重なるようにキャップウエハとデバイスウエハを接合する。これにより、以下の効果を得ることができる。
【0077】
(1)電極パッド115の拡張部115Aの端部と積層される接着層118が、センサ部110を枠形状で取り囲むことにより、デバイスウエハのAl配線116を保護することができる。特に、電極パッド115の拡張部115Aと重ねてキャップウエハを接合することで、Al配線116(数μm〜数十μm)を全て物理的、化学的に保護することができ、吸湿性を有する樹脂パッケージングを行った場合でもAl配線116の信頼性を確保することができる。また、樹脂パッケージングは、セラミックパッケージと比較して生産性、コスト面でメリットがある。よって、信頼性を確保しながら生産性、コスト面の向上を図ることができる。
【0078】
(2)キャップ部117を外側に広げることなく、電極パッド115のワイヤボンディング領域を確保することができる。樹脂モールド封止前に外部に露出している部分は、キャップチップとデバイスチップのシリコンとデバイス上の電極パッド115(幅約100μm)のみである。
【0079】
(3)接着層パターンを十字梁113から等距離に離隔し、等幅の枠形状とすることで、デバイス面内で応力バランスを良くし、応力によるデバイス特性(オフセット電圧、感度)の悪化を防ぐことができる。
【0080】
(4)接着層118は、デバイス材料のシリコンの熱膨張係数(2.5〜4.5×10−6/K)に近い係数をもつ接着材料を用いることで、熱応力によるデバイス特性の悪化を防ぐことができる。
【0081】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変更が可能であり、本発明がこれらに及ぶことは当然である。
【0082】
上記実施の形態では、3軸加速度センサに適用した例であるが、同様の構成により、半導体加速度センサ全般に適用することができる。
【0083】
また、上記実施の形態では、加速度センサという名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、3軸加速度センサ、半導体センサ等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の加速度センサは、例えばゲームコントローラ等の玩具や、自動車の衝撃検出装置、ハードディスクの落下検知装置、携帯電話機の入力装置等の種々の装置に広く適用し得る。
【符号の説明】
【0085】
100 加速度センサ
110 センサ部
111 枠
112a〜112d 錘
111,113a〜113d 梁
115,115a〜115d 電極パッド
116 Al配線
117 キャップ部
118 接着層
x1〜x4 X軸方向用のピエゾ抵抗素子
y1〜y4 Y軸方向用のピエゾ抵抗素子
z1〜z4 Z軸方向用のピエゾ抵抗素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾ抵抗素子を用いてX、Y及びZ軸方向の加速度を検出する加速度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や家電製品など様々な分野において、半導体加速度センサが用いられる。従来、この種の半導体加速度センサとして、例えば特許文献1乃至3で開示されているものがある。
【0003】
図1は、特許文献1に記載の半導体加速度センサの平面図である。
【0004】
図1に示すように、半導体加速度センサ10は、シリコン基板を加工して形成されるセンサ基板11とその上下面に配置される上部ガラスキャップと下部ガラスキャップとを備える。図1では、上部ガラスキャップを取り除いた状態を示している。
【0005】
センサ基板11は、矩形枠状のフレーム14、フレーム14の内側に配設された矩形板状の錘部15、及び錘部15をフレーム14の一辺に接続する一対の薄肉状のカンチレバー16を有している。錘部15は、カンチレバー16を介してフレーム14に揺動自在に支持されており、センサ基板11に加速度が作用すると錘部15が変位してカンチレバー16がフレーム14に対して撓むようになっている。
【0006】
一対のカンチレバー16には、それぞれに2個のセンシング部としてのゲージ抵抗17が設けられており、これら4つのゲージ抵抗17がブリッジ接続されている。カンチレバー16が接続されたフレーム14の一辺にはワイヤボンディングパッド18が設けられている。ゲージ抵抗17とワイヤボンディングパッド18とは、拡散層配線19、コンタクト部20及びAl配線21を介して接続されている。また、ワイヤボンディングパッド18には金やアルミニウムなどで形成されたボンディングワイヤ(図示せず)が接続されている。そして、このボンディングワイヤを外部に接続することによりセンサ基板11と外部との電気的接続がなされている。
【0007】
上部ガラスキャップ及び下部ガラスキャップは、フレーム14の上下面にそれぞれ陽極接合されている。上部ガラスキャップは、錘部15及びカンチレバー16を覆うとともにワイヤボンディングパッド18を上部ガラスキャップ外に露出させるようにフレーム14に陽極接合されている。
【0008】
カンチレバー16が接続されている一辺に隣接する二辺に沿ったフレーム14上には、厚さ約1〜2μmのアルミニウム製の金属薄膜23が帯状に形成されている。金属薄膜23が形成されていない部分には金属薄膜23とほぼ同じ高さの凸部24が形成されており、金属薄膜23と凸部24とで矩形枠状部25が形成されている。
【0009】
上部ガラスキャップとフレーム14とは、上部ガラスキャップの輪郭を矩形枠状部25の輪郭に位置合わせした状態で金属薄膜23を介して陽極接合されている。
【0010】
図2は、特許文献2に記載の加速度センサ基板の図であり、図2(b)は加速度センサ基板のピエゾ抵抗素子側の平面図、図2(a)は図2(b)のA−A’断面図である。
【0011】
図2に示すように、加速度センサチップ30は、ピエゾ抵抗素子31と配線32、分割溝33、電極パッド34、2点鎖線で示した接合部35、梁部36、錘部37、枠部38等から構成される。
【0012】
加速度センサ基板は、加速度センサチップ30が連結部39で接合されている。一点鎖線で示した分離部41で分離し個片化される。加速度センサ基板の上下面には、キャップ基板と接合する接合材が形成された接合部35を設ける。加速度センサチップ30の外周の分離部41に設けた分割溝33は、梁部36と錘部37を形成するときに同時に形成する。
【0013】
図3は、特許文献3に記載の加速度センサの平面図である。
【0014】
図3に示すように、加速度センサ50は、基板51と、基板51の上の右側部分に設置されたセンサ素子部52と、センサ素子部52の左側に設置された電極パッド53a(53a1〜53a4)とを備える。電極パッド53a1〜53a4は、それぞれ配線LNa、LNb、LNc、LNdを介してセンサ素子部52と接続されている。
【0015】
センサ素子部52には、加速度を検出するための質量体54、質量体54を支持する支持部55、質量体54と支持部55とを接続する梁部56が設けられている。配線LNaには固定電極57aが接続され、配線LNdには固定電極57dが接続されている。質量体54の両翼には、固定電極57a,57dと対向するように、可動電極58が櫛状に設けられている。質量体54及び可動電極58は、梁部56及び支持部55により中空保持されている。
【0016】
上記加速度センサ50に加速度が加わると、梁部56が撓んで質量体54が変位する。すると、可動電極58と固定電極57a,57dとの間の電極間距離が変動し、電極間の静電容量が変化する。この静電容量の変化により、加速度が検出される。
【0017】
図4は、特許文献1乃至3に記載の加速度センサにおいて、共通して用いられている加速度センサの配線及びコンタクト部の構造を示す図である。
【0018】
図4に示すように、加速度センサ60は、センサ基板61と、センサ基板61の側面に設置された電極パッド62と、センサ基板61と電極パッド62とを接続するAl配線63とを備える。センサ基板61の上部は、接着剤樹脂層64により上部ガラスキャップ、又はシリコンキャップ(図示略)に樹脂接合される。このような半導体センサの製造方法において、樹脂接合によるウエハレベルパッケージは、一般的な封止方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008−185355号公報
【特許文献2】特開2008−091845号公報
【特許文献3】特開2008−089327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、このような従来の加速度センサの製造方法にあっては、以下の課題があった。
【0021】
(1)樹脂接合によるウエハレベルパッケージでは、電極パッド62近傍のAl配線63のことを考慮せずに封止していたため、Al配線63が保護されず、信頼性を確保することができない。例えば、図4では、電極パッド62近傍のAl配線63の上部65が保護されていない。
【0022】
特許文献1乃至3に記載の加速度センサについてみてみると、図1では、ワイヤボンディングパッド18及びAl配線21、図2では、配線32及び電極パッド34、図3では、電極パッド53及び配線LNa、LNb、LNc、LNdであり、いずれも電極パッド近傍のAl配線が保護されていない。パッド近傍のAl配線が保護されておらず、ウエハ接合によってAl配線の信頼性が確保できない。
【0023】
(2)Al配線の信頼性を確保するためには、ダイシングによるセンサチップ個片化後にAl配線に保護膜を施す必要があり生産性が悪化してしまう。
【0024】
本発明は、かかる点を考慮してなされたものであり、ウエハレベルパッケージを用いて、電極パッド近傍の信頼性を向上させることができる加速度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の加速度センサは、枠部と、錘部と、前記枠部と前記錘部とを連結する梁部と、前記梁部上に形成された加速度検出素子と、前記枠部に形成された電極パッドとを接続する金属配線とを有するセンサ部と、前記センサ部上に配置され、該センサ部に密閉空間を形成するキャップ部と、前記センサ部と前記キャップ部とを接合する接着層とを備え、前記電極パッドは、前記密閉空間の方向に拡張された拡張部を有し、前記キャップ部は、前記拡張部の少なくとも一部と積層される前記接着層により前記センサ部と接合する構成を採る。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ウエハレベルパッケージを用いて、電極パッド近傍の信頼性を向上させることができる加速度センサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】特許文献1に記載の半導体加速度センサの平面図
【図2】特許文献2に記載の加速度センサ基板の図
【図3】特許文献3に記載の加速度センサの平面図
【図4】従来の加速度センサの配線及びコンタクト部の構造を示す図
【図5】本発明の実施の形態に係る加速度センサの外観構成を示す図
【図6】上記実施の形態に係る加速度センサのピエゾ抵抗素子の十字梁での概略配置を示す平面図
【図7】上記実施の形態に係る加速度センサの要部を示す上視図
【図8】図7のA−A’矢視断面図
【図9】上記実施の形態に係る加速度センサの製造工程図
【図10】上記実施の形態に係る加速度センサの表面キャップウエハの製造工程図
【図11】上記実施の形態に係る加速度センサの表面キャップウエハの他の製造工程図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
(実施の形態)
図5は、本発明の実施の形態に係る加速度センサの外観構成を示す図である。図6は、ピエゾ抵抗素子の十字梁での概略配置を示す平面図である。図7は、加速度センサの要部を示す上視図である。図8は、図7のA−A’矢視断面図である。本実施の形態は、3軸加速度センサに適用した例である。
【0030】
図5乃至図8に示すように、加速度センサ100は、枠111と、枠111内に設けられた錘112(112a〜112d)と、枠111と錘112とを連結する十字梁113(113a〜113d)と、十字梁113上に形成された加速度検出素子と、加速度検出素子と枠111に形成された電極パッド115(115a〜115d)とを接続するAl配線116とからなるセンサ部110を備える。
【0031】
電極パッド115(115a〜115d)は、センサ部110の密閉空間の方向に拡張された拡張部115Aを有する。電極パッド115(115a〜115d)が、拡張部115Aを有することで、キャップ部117(後述)を外側に広げることなくAl配線116をキャップ部117内の密閉空間に収容しつつ、電極パッド115の本来の機能である十分な広さのワイヤボンディング領域を確保する。
【0032】
また、加速度センサ100は、センサ部110に実装されてセンサ部110を密閉空間に収容するキャップ部117と、拡張部115Aの少なくとも一部に積層され、センサ部110とキャップ部117とを接合する接着層118とを有する。
【0033】
十字梁113を構成する各梁113a〜113dは、ピエゾ抵抗素子を有する肉薄の可撓性部材となっている。十字梁113は、中心部分でクローバ状の錘112と連結されている。この十字梁113の中心部分は、肉薄で可撓性の十字梁113が加速度に応じて撓むのに対して、加速度が加わっても錘112を支持して撓まないため、中心非可動部114と呼ぶことにする。
【0034】
Al配線116は、ピエゾ抵抗素子と電極パッド115(115a〜115d)の拡張部115Aとを接続する。電極パッド115(115a〜115d)は、当該ピエゾ抵抗素子に電圧を印加し及びピエゾ抵抗素子からの出力を取り出すための端子部である。
【0035】
キャップ部117は、電極パッド115(115a〜115d)の拡張部115A上に積層された接着層118を介してセンサ部110を密閉空間に収容するキャップウエハ又は接合樹脂である。
【0036】
接着層118は、ポリイミド等の接着材料からなる。接着層118は、キャップ部117の外形形状と同じ矩形形状パターンを有し、キャップ部117の内周面と電極パッド115(115a〜115d)の拡張部115A及び枠111とを接着する。特に、接着層118は、接着面が電極パッド115(115a〜115d)の拡張部115Aの端部及びAl配線116の一部に重なるような接着層パターンを有する。キャップ部117と電極パッド115(115a〜115d)が形成された枠111とを接着層118を介して接合した場合、電極パッド115(115a〜115d)の拡張部115Aの少なくとも端部は、接着層118の内側、すなわちキャップ部117で保護された密閉空間内に配置される。Al配線116は、キャップ部117の密閉空間内で保護される。
【0037】
図7に示すように、接着層118は、十字梁113から等距離に離して配置し、かつ等幅の枠形状とする。接着層118は、シリコンの熱膨張係数に近い係数をもつ接着材料を用いることが好ましい。具体的には、デバイス材料のシリコンの熱膨張係数(2.5〜4.5×10−6/K)に近い係数をもつ接着材料を用いる。
【0038】
また、図8に示すように、接着層118は、電極パッド115(115a〜115d)の拡張部115Aを覆い、かつ拡張部115A上の膜厚とその他枠111の膜の高さが同じになるように形成する。
【0039】
上記構成を採ると、図7に示すように、Al配線116は、キャップ部117に形成される接着層118の内側に配置される。Al配線116が、接着層118の内側に配置される構造であればどのような構造でもよい。本実施の形態では、密閉空間の方向に拡張された電極パッド115(115a〜115d)の拡張部115Aの端部が接着層118に重なるように、電極パッド115(115a〜115d)及び接着層118を形成する。この構成によれば、Al配線116のみに接着層118が重なるのではなく、Al配線116及び拡張部115Aの端部にも接着層118が重なる。このため、接着層118を介して伝達される応力を拡張部115Aの端部が受けることで、Al配線116の破損を未然に防止することができる。その一方で、電極パッド115(115a〜115d)は、密閉空間の方向に拡張された拡張部115Aを有することで、キャップ部117を外側に広げることなくAl配線116をキャップ部117内の密閉空間に収容しつつ、電極パッド115の本来の機能である十分な広さのワイヤボンディング領域を確保することができる。
【0040】
拡張部115Aを含む電極パッド115(115a〜115d)の全長は、例えば160〜170μmに形成する。この場合、接着層118に接合される拡張部115Aの端部の長さは、70〜80μmである。
【0041】
本実施の形態では、ピエゾ抵抗素子がある梁部にかかる応力を均等にするために各梁端部から等距離になるように離し、等幅にする。以下、具体的に説明する。
【0042】
図6に、X軸、Y軸、Z軸方向用のピエゾ抵抗素子が、十字梁113上のどの位置に配置されているかの概略を示す。
【0043】
梁113aには、X軸方向用及びZ軸方向用のピエゾ抵抗素子x1,x2,z1,z2が形成されている。同様に、梁113cには、X軸方向用及びZ軸方向用のピエゾ抵抗素子x3,x4,z3,z4が形成されている。
【0044】
X軸方向用のピエゾ抵抗素子x1〜x4とZ軸方向用のピエゾ抵抗素子z1〜z4は、梁113a,113cの長手方向(X方向)の同位置に並列に配置されている。よって、その対称性が確保されている。
【0045】
梁113d,113bには、Y軸方向用のピエゾ抵抗素子y1〜y4が形成されている。ここで各ピエゾ抵抗素子x1〜x4,y1〜y4,z1〜z4は、梁113における、枠111の近傍位置と、中心非可動部114の近傍位置に形成されている。つまり、ピエゾ抵抗素子x1〜x4,y1〜y4,z1〜z4は、加速度によって梁113が撓み易い、梁113の付け根部分に形成されている。
【0046】
なお、本実施の形態では、X軸方向用のピエゾ抵抗素子x1〜x4と、Z軸方向用のピエゾ抵抗素子z1〜z4を同一の梁上に形成したが、本実施の形態の3軸加速度センサ100は構造上、X軸とY軸は等価なので、Y軸方向用のピエゾ抵抗素子y1〜y4とZ軸方向用のピエゾ抵抗素子z1〜z4を同一梁上の同位置に並列に配置してもよい。
【0047】
次に、加速度センサ100の製造方法について説明する。
【0048】
図9は、加速度センサ100の製造工程図である。図中、Sは各工程を示す。
【0049】
加速度センサチップ、表面キャップウエハ、及び裏面キャップウエハは、Si基板を材料として、半導体プロセスにより製造する。加速度センサチップは、加速度センサ100のセンサ部110を上部から覆うキャップ部117を構成する。表面キャップウエハは、キャップ部117及び接着層118を構成する。裏面キャップウエハは、加速度センサ100のセンサ部110を底部から封止するキャップ部(図示略)を構成する。
【0050】
<加速度センサチップ>
S1:Siウエハ上に表面処理を行う。
【0051】
S2:Siウエハをフォトリソとドライ・エッチングを用いて加工し、十字梁113を形成する。具体的には、B(ボロン)又はP(リン)といった不純物を、イオン・インプランテーションによってSi基板中に注入することでピエゾ抵抗素子x1〜x4,y1〜y4,z1〜z4を形成する。また、SiウエハのSiO2酸化膜上にTEOS(tetra-ethyl-ortho-silicate)膜を形成する。TEOS膜の上に、フォト・レジストによりAl配線を形成する。
【0052】
S3:Al配線保護膜形成後のSiウエハに、ドライ・エッチングによって錘及び可撓部など構造体を形成する。
【0053】
S4:十字梁113が形成された加速度センサウエハと、工程S21,S22で別途作製された表面キャップウエハと、工程S31,S32で別途作製された裏面キャップウエハとを接合する表裏面封止基板ボンティングを行う。本実施の形態では、加速度センサウエハ完成後に、加速度センサウエハと表面キャップウエハと裏面キャップウエハとを表裏面封止基板ボンディングしている。
【0054】
上記工程S4の表面封止基板ボンディングにおいて、表面キャップウエハを加速度センサウエハに接合する際、電極パッド115の拡張部115Aと接着層118とを重ねるようにアライメントを行いボンディングする。電極パッド115は、センサ部110の中央側に延長した拡張部115Aを有し、この拡張部115Aの枠111が接着層118を介して表面キャップウエハと接合される。すなわち、加速度センサウエハと表面キャップウエハとの接合は、枠111上の拡張部115Aの端部を含むAl配線116領域が担う。このため、電極パッド115は、パッド本来の目的である十分な広さのワイヤボンディング領域を確保することができる。また、図7に示すように、接着層118は、デバイス面内の応力バランスを良くするために十字梁113から等距離に配置し、等幅の枠形状とする。
【0055】
S5:研削処理により電極パッド115(115a〜115d)を露出させる。
【0056】
S6:全数検査により合格した加速度センサをダイシングする。
【0057】
S7:ダイシングした加速度センサに樹脂パッケージなどの後工程を施して製造工程を終了する。
【0058】
<表面キャップウエハ>
S21:Siウエハ上に熱酸化膜(ここではSiO2酸化膜)を形成する。
【0059】
S22:熱酸化膜を形成したSiウエハ上に接着層118を形成する。作製された表面キャップウエハは、センサ部110を密閉空間に収容するキャップ部117として加速度センサウエハに接合される(工程S4又はS7参照)。
【0060】
<裏面キャップウエハ>
S31:Siウエハ上に熱酸化膜(ここではSiO2酸化膜)を形成する。
【0061】
S32:熱酸化膜を形成したSiウエハ上に接着層(図示略)を形成する。作製された裏面キャップウエハは、加速度センサウエハの底面に接合される(工程S4参照)。
【0062】
図10は、表面キャップウエハの製造工程図である。表面キャップウエハは、加速度センサ100のセンサ部110を上部から覆うキャップ部117である。
【0063】
キャップウエハは、図10(a)に示すように、例えばSiウエハを材料として、半導体プロセスにより製造する。
【0064】
S41:Siウエハ117a上に熱酸化膜(ここではSiO2酸化膜)119を形成する(図10(b)参照)。
【0065】
S42:SiウエハのSiO2酸化膜119上にポリイミド等の接着層118aを塗布する(図10(c)参照)。
【0066】
S43:SiウエハのSiO2酸化膜119上に、フォト・レジストにより接着層118aをパターニングする(図10(d)参照)。パターニング後は、接着層118となる。図7及び図8に示すように、接着層118パターンは、電極パッド115の拡張部115Aの端部で、かつキャップ部117周囲を取り囲む形状である。
【0067】
S44:接着層118が接着されたSiウエハ117aに対して、ウエハボンディング時に枠111上の電極パッド115を露出させるためのエッチングを行う(図10(e)参照)。すなわち、接着層118のパターニングを完成させた後、接着層118が枠形状にパターニングされた後に電極パッド115を露出させるためのエッチングを行う。エッチング後は、Siウエハ117bとなる。
【0068】
S45:上記表面キャップウエハを加速度センサウエハに接合するウエハボンディングを行う。特に、電極パッド115の拡張部115Aと接着層118とを重ねるようにアライメントを行いボンディングする。
【0069】
S46:ウエハボンディング後のSiウエハ117bを研削して電極パッド115を露出させ(図10(f)参照)、キャップウエハ作製フローを終了する。
【0070】
図10では、接着層118のパターニングを完成させた後、すなわち接着層118が枠形状にパターニングされた後に電極パッド115を露出させるためのエッチングを行っている。図11の変形例も可能である。
【0071】
図11は、表面キャップウエハの他の製造工程図である。図10と同一工程には同一番号を付している。
【0072】
S43’:SiウエハのSiO2酸化膜119上に、フォト・レジストにより接着層118aの中央部のみをパターニングする(図11(d)参照)。このパターニング後は、接着層118bとなる。
【0073】
S44’:中央部のみをパターニングされた接着層118bが接着されたSiウエハ117aに対して、接着層118bの枠外側とSiウエハ117bのパッド露出部を継続してエッチングを行う(図11(e)参照)。パターニング後は、接着層118となる。図7及び図8に示すように、接着層118パターンは、電極パッド115の拡張部115Aの端部で、かつキャップ部117周囲を取り囲む形状である。また、電極パッド115を露出させるためのエッチングも同時に完了する。
【0074】
図11では、デバイス内部にかかる接着層118aの枠中央部のみパターニングした後に、接着層118bの枠外側とSiウエハ117bのパッド露出部を継続してエッチングを行っている。
【0075】
図11の工法によれば、電極パッド115の露出エッチ部と接着層118bの枠外側を同じ面にすることができ、電極パッド115のワイヤボンディング領域を大きく確保することができ、又はデバイスサイズを小さくすることができる。
【0076】
以上詳細に説明したように、本実施の形態の加速度センサ100は、加速度検出素子と枠111に形成された電極パッド115(115a〜115d)とを接続するAl配線116とからなるセンサ部110と、センサ部110に実装されてセンサ部110を密閉空間に収容するキャップ部117と、センサ部110とキャップ部117とを接合する接着層118とを備え、電極パッド115は、センサ部110の密閉空間の方向に拡張された拡張部115Aを有し、キャップ部117は、拡張部115Aの端部と積層される接着層118によりセンサ部110と接合する。接着層118と電極パッド115の拡張部115Aが重なるようにキャップウエハとデバイスウエハを接合する。これにより、以下の効果を得ることができる。
【0077】
(1)電極パッド115の拡張部115Aの端部と積層される接着層118が、センサ部110を枠形状で取り囲むことにより、デバイスウエハのAl配線116を保護することができる。特に、電極パッド115の拡張部115Aと重ねてキャップウエハを接合することで、Al配線116(数μm〜数十μm)を全て物理的、化学的に保護することができ、吸湿性を有する樹脂パッケージングを行った場合でもAl配線116の信頼性を確保することができる。また、樹脂パッケージングは、セラミックパッケージと比較して生産性、コスト面でメリットがある。よって、信頼性を確保しながら生産性、コスト面の向上を図ることができる。
【0078】
(2)キャップ部117を外側に広げることなく、電極パッド115のワイヤボンディング領域を確保することができる。樹脂モールド封止前に外部に露出している部分は、キャップチップとデバイスチップのシリコンとデバイス上の電極パッド115(幅約100μm)のみである。
【0079】
(3)接着層パターンを十字梁113から等距離に離隔し、等幅の枠形状とすることで、デバイス面内で応力バランスを良くし、応力によるデバイス特性(オフセット電圧、感度)の悪化を防ぐことができる。
【0080】
(4)接着層118は、デバイス材料のシリコンの熱膨張係数(2.5〜4.5×10−6/K)に近い係数をもつ接着材料を用いることで、熱応力によるデバイス特性の悪化を防ぐことができる。
【0081】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変更が可能であり、本発明がこれらに及ぶことは当然である。
【0082】
上記実施の形態では、3軸加速度センサに適用した例であるが、同様の構成により、半導体加速度センサ全般に適用することができる。
【0083】
また、上記実施の形態では、加速度センサという名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、3軸加速度センサ、半導体センサ等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の加速度センサは、例えばゲームコントローラ等の玩具や、自動車の衝撃検出装置、ハードディスクの落下検知装置、携帯電話機の入力装置等の種々の装置に広く適用し得る。
【符号の説明】
【0085】
100 加速度センサ
110 センサ部
111 枠
112a〜112d 錘
111,113a〜113d 梁
115,115a〜115d 電極パッド
116 Al配線
117 キャップ部
118 接着層
x1〜x4 X軸方向用のピエゾ抵抗素子
y1〜y4 Y軸方向用のピエゾ抵抗素子
z1〜z4 Z軸方向用のピエゾ抵抗素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠部と、
錘部と、
前記枠部と前記錘部とを連結する梁部と、
前記梁部上に形成された加速度検出素子と、前記枠部に形成された電極パッドとを接続する金属配線とを有するセンサ部と、
前記センサ部上に配置され、該センサ部に密閉空間を形成するキャップ部と、
前記センサ部と前記キャップ部とを接合する接着層とを備え、
前記電極パッドは、前記密閉空間の方向に拡張された拡張部を有し、
前記キャップ部は、前記拡張部の少なくとも一部と積層される前記接着層により前記センサ部と接合する加速度センサ。
【請求項2】
前記拡張部は、前記金属配線に接続される端部が前記接着層と積層される請求項1記載の加速度センサ。
【請求項3】
前記接着層は、前記センサ部を取り囲み、かつ前記梁部から等距離に離隔する枠形状である請求項1記載の加速度センサ。
【請求項4】
前記接着層は、前記センサ部を取り囲み、かつ等幅の枠形状である請求項1記載の加速度センサ。
【請求項5】
前記接着層は、前記枠部又は前記キャップ部の材料の熱膨張係数に近い熱膨張係数をもつ接着材料からなる請求項1記載の加速度センサ。
【請求項1】
枠部と、
錘部と、
前記枠部と前記錘部とを連結する梁部と、
前記梁部上に形成された加速度検出素子と、前記枠部に形成された電極パッドとを接続する金属配線とを有するセンサ部と、
前記センサ部上に配置され、該センサ部に密閉空間を形成するキャップ部と、
前記センサ部と前記キャップ部とを接合する接着層とを備え、
前記電極パッドは、前記密閉空間の方向に拡張された拡張部を有し、
前記キャップ部は、前記拡張部の少なくとも一部と積層される前記接着層により前記センサ部と接合する加速度センサ。
【請求項2】
前記拡張部は、前記金属配線に接続される端部が前記接着層と積層される請求項1記載の加速度センサ。
【請求項3】
前記接着層は、前記センサ部を取り囲み、かつ前記梁部から等距離に離隔する枠形状である請求項1記載の加速度センサ。
【請求項4】
前記接着層は、前記センサ部を取り囲み、かつ等幅の枠形状である請求項1記載の加速度センサ。
【請求項5】
前記接着層は、前記枠部又は前記キャップ部の材料の熱膨張係数に近い熱膨張係数をもつ接着材料からなる請求項1記載の加速度センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−7672(P2011−7672A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152269(P2009−152269)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】
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