説明

加飾樹脂成形品及び加飾樹脂成形品の製造方法

【課題】 表皮材がキャビティ内において成形時に延ばされないようにした。
【解決手段】 対向して配置された固定型6と可動型7との間に表皮材4を配置した状態で固定型6及び可動型7を型締めし互いの成形面6b、7bによりキャビティ8を形成し、キャビティ8内における表皮材4の裏面側に溶融樹脂11を射出することにより加飾成形品を成形する場合、可動型7に表皮材4を挟持固定するスライドコア9を設け、スライドコア9の突起部10が、固定型6及び可動型7の型締め完了前に、ピラーガーニッシュ2の隅角部2aに相当する固定型6の成形面6b部位における隅角凹部6dにおいて表皮材4の裏面側を押圧することによって表皮材4を挟持固定し、キャビティ8内においてピラーガーニッシュ2を成形するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体ピラー部を装飾するピラーガーニッシュのような樹脂芯材の表面に表皮材を加飾してなる加飾成形品及び加飾成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の車室壁部、例えば、図1に示すフロントピラー1は、加飾成形品であるピラーガーニッシュ2を張設して、美装されている。
【0003】
ピラーガーニッシュ2は、図2−1及び図2−2に示すように、樹脂芯材3と樹脂芯材3の表面に積層された表皮材4とを有して構成し、その周囲は隅角部2aを有した略L字状のフランジ片部2bが形成されて、フロントピラー1の形状に適合する形状となっている。
【0004】
このように構成するピラーガーニッシュ2は、射出成形により成形された加飾成形品で構成している。
【0005】
従来、この種の加飾成形品を成形する射出成形型として、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されたものが知られている。
【特許文献1】特開平8-174597号公報(段落0010-0023、図1乃至図4)
【特許文献2】特開平7-60791号公報(段落0014乃至0030、図1、図2、図4乃至図8)。
【0006】
前者公報に記載された射出成形型は、固定型と、固定型に対向して可動に配置され、固定型と当接してキャビティを形成する可動型と、固定型に可動型に向かって進退自在に設けられたコアと、固定型に設けられコアを突出させるコア駆動機構と、固定型に設けられ、キャビティ内に樹脂を射出する射出孔とを備えて構成しており、固定型と可動型との間に供給した表皮材(絵付けフィルム)をコアにより可動型側に押付けるとともに固定型及び可動型を型締めすることによって表皮材におけるキャビティ外周部を挟持固定した状態で、固定型側からキャビティ内に樹脂を射出して、表面に表皮材が積層された射出成形品を成形するようになっている。
【0007】
後者公報に記載された射出成形型(インモールド転写成形装置)は、対となる固定型(キャビティブロック)と可動型(コアブロック)のうち固定型の成形面に対して真空引き作用により予め表皮材(転写フィルム)を吸着ブロックが吸着して成形面に引き込むことによって密着させながら、固定型及び可動型の成形面同士が形成するキャビティに樹脂材料を充填して成形品を成形すると共に、表皮材側の加飾模様を成形品の表面に転写するように構成したものである。
【0008】
そして、吸着ブロックにて表皮材を吸着するということは、固定型及び可動型の成形面同士が形成するキャビティは真空状態になっていることを意味し、したがって、固定型及び可動型は型締め状態となって、表皮材におけるキャビティ外周部を挟持固定していることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、前者公報に記載の射出成形型においては、表皮材はキャビティ外周部において挟持固定した状態で型締めした後、コアによって可動型側に押付けられるため、キャビティ内に存在する部分が薄く延ばされることとなる。このため、その後に射出される溶融樹脂によって、表皮材の薄肉となった部分が破れて、溶融樹脂が製品表面側に漏れ出すおそれがある。
【0010】
特に、表皮材の延び係数が小さい場合や表皮材が編物、織物、或いは不織布などの繊維目を有する素材の場合に、表皮材の破れや繊維目からの樹脂漏れが深刻な問題となる。
【0011】
また、後者公報に記載の射出成形型においては、吸着ブロックはキャビティ内における表皮材の中央部を吸着していることから、上記ピラーガーニッシュ2のように隅角部2aを有するような成形品の場合、隅角部2aを成形するキャビティの隅角凹部まで真空により確実に倣って固定することが難しく、また、真空引きするために必ずキャビティ内を真空にする必要があり、このために、表皮材のキャビティにおける外周部を固定型及び可動型により予め挟持固定しなければならない。
【0012】
そして、表皮材のキャビティにおける外周部が固定されているために、キャビティ内に存在する表皮材が薄く延ばされることとなる。このため、その後に射出される溶融樹脂によって、表皮材の薄肉となった部分が破れて、溶融樹脂が製品表面側に漏れ出すおそれがある。
【0013】
従って、後者公報記載の射出成形型の場合も、表皮材の延び係数が小さい場合や表皮材が編物、織物、或いは不織布などの繊維目を有する素材の場合に、表皮材の破れや繊維目からの樹脂漏れが深刻な問題となる。
【0014】
そこで、本発明は、かかる点に鑑み、表皮材がキャビティ内において成形時に延ばされないようにして加飾樹脂成形品を成形する製造方法及びこの製造方法により成形された加飾樹脂成形品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の加飾樹脂成形品の製造方法は、隅角部を有し金型に表皮を挿入して樹脂と一体に成形される加飾樹脂成形品の製造方法であって、開かれた金型の製品隅角部表面側成形部を有する一方の金型と製品隅角部裏面側成形部を有する他方の金型との間に、前記製品隅角部表面側成形部に対向させて表皮を挿入する工程と、他方の金型から、一方の金型の前記製品隅角部表面側成形部に、前記製品隅角部表面側成形部に向けて表皮を偏位させる工程と、一方の金型と他方の金型とを閉じる工程と、製品隅角部裏面側成形部と表皮との間に溶融樹脂を射出する工程とを具備するものである。
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、溶融樹脂導入前であって金型を閉じる前に、隅角部に対向する箇所の表皮を突っ張らせることなく前記製品隅角部表面側成形部に近づけるかまたは当てておくことができることから、溶融樹脂の充填過程で延ばされる表皮の延び量を少なくすることができる。
【0017】
したがって、隅角部における表皮の局部的薄肉化や、延びの限度を超えて破れ溶融樹脂が隅角部表面側に流出することを効果的に防止することができる。とりわけ、延びの少ない樹脂表皮や編物、不織布などの素材を利用する場合にあっては、延びの限度を容易に超え、或いは局部的に破れたり繊維目を通るなどして溶融樹脂が漏れやすい傾向を持つので、効果的である。
【0018】
また、請求項2に記載の本発明にかかる加飾樹脂成形品の製造方法は、請求項1に記載の隅角部が縁状隅角部であり、表皮を縁状隅角部に沿って複数の偏位点で偏位させるものである。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、隅角部が縁状である場合に、縁状隅角部の造形ラインに沿って表皮をその肉厚を確保しつつ一体に成形できるので、隅角部が直線状である場合はもとより、曲線状の場合には格別に隅角部に沿って表皮の形状が付与され、薄肉化による外観の悪化を防止し、良好な加飾効果が容易に得られる。
【0020】
また、請求項3に記載の本発明にかかる加飾樹脂成形品は、請求項1の製造方法により製造された加飾樹脂成形品であって、隅角部の表側に表皮が一体に添設され、隅角部またはその近傍に、この成形品の裏側から表皮の裏面またはその近傍に達する深さの小孔を備えたことを特徴とするものである。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、隅角部の表面側に表皮が定位され、隅角部に局所的な表皮の延びによる薄肉部が存在せず、成形品裏面側に小孔が残存するのみなので、表皮側への外観上の影響を極めて少なくまたは実質ゼロにすることができる。
【0022】
また、請求項4に記載の本発明にかかる加飾樹脂成形品は、請求項2の製造方法により製造された加飾樹脂成形品であって、縁状隅角部の表側に表皮が一体に添設され、この縁状隅角部またはその近傍に、この成形品の裏側から表皮の裏面またはその近傍に達する深さで、かつこの隅角部に沿って配列された複数の小孔を備えたことを特徴とするものである。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、縁状隅角部に沿って表皮を定位され、隅角部が直線状である場合はもとより、曲線状の場合には格別に隅角部に沿って局所的な薄肉部がない表皮が付与され艶ムラ等がなく意匠効果が高く、成形品裏面側に小孔が残存するのものなので、表皮側への外観上の影響を極めて少なくまたは実質ゼロにすることができる。
【発明の効果】
【0024】
上記のように構成する本発明によれば、溶融樹脂導入前であって金型を閉じる前に、隅角部に対向する箇所の表皮を突っ張らせることなく前記製品隅角部表面側成形部に近づけるかまたは当てておくことができることから、溶融樹脂の充填過程で延ばされる表皮の延び量を少なくすることができる。したがって、隅角部における表皮の局部的薄肉化や、延びの限度を超えて破れ溶融樹脂が隅角部表面側に流出することを効果的に防止することができる。とりわけ、延びの少ない樹脂表皮や編物、不織布などの素材を利用する場合にあっては、延びの限度を容易に超え、或いは局部的に破れたり繊維目を通るなどして溶融樹脂が漏れやすい傾向を持つので、効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図を用いて、本発明を実施するための一実施の形態について説明する。
【0026】
図1は加飾成形品であるピラーガーニッシュを使用して美装された自動車のフロントピラー周辺を描画した斜視図、図2−1は図1におけるピラーガーニッシュの一部を拡大して描画した斜視図、図2−2は図2−1におけるA−A断面図、図3は本発明に係る射出成形型の縦断面図、図4は図3における射出成形型に表皮材を供給してスライドコアが当該表皮材に当接した状態の説明図、図5はスライドコアが更に固定型側に進んで表皮材を固定型におけるピラーガーニッシュの隅角部に相当する成形面部位近傍まで移動させた状態を説明図、図6はスライドコアが表皮材を固定型におけるピラーガーニッシュの隅角部に相当する成形面部位において挟持固定した状態の説明図、図7は固定型及び可動型が形成したキャビティ内に溶融樹脂を供給しピラーガーニッシュの隅角部に相当する成形面部位近傍まで到達した状態の説明図、図8は溶融樹脂の供給が更に進みピラーガーニッシュの成形面部位内をほぼ埋め尽くした状態の説明図、図9は溶融樹脂がピラーガーニッシュの成形面部位内を完全に埋め尽くした状態の説明図である。
【0027】
先ず、図1において、自動車における車室前部の骨組みを構成するフロントピラー1は、加飾成形品であるピラーガーニッシュ2を張設して、美装されている。
【0028】
ピラーガーニッシュ2は、図2−1及び図2−2に示すように、樹脂芯材3と樹脂芯材3の表面に積層された表皮材4とを有して構成し、その周囲は隅角部2aを有した略L字状のフランジ片部2bが形成されて、フロントピラー1の形状に適合する形状となっている。
【0029】
次に、このように構成するピラーガーニッシュ2は本発明に係る実施の形態としての射出成形型を用いて成形される。
【0030】
射出成形型5は、図3に示すように、互いに対向した状態で配置された固定型6と可動型7によって構成され、固定型6の外周部に植設した一対の案内ピン6a、6aに可動型7の外周部に凹設したピン孔7aが嵌合摺動することによって、固定型6に対して可動型7が移動し、型締めを行うように構成されている。型締め時には、固定型6の成形面6b及び可動型7の成形面7bによって、キャビティ8(図6乃至図9参照)を形成している。
【0031】
固定型6の成形面6bの外周部には、ピラーガーニッシュ2のフランジ片部2bを形成するフランジ片成形凹部6cが形成されており、フランジ片成形凹部6cは、隅角部2aを形成する隅角凹部6dを有して構成している。
【0032】
可動型7には、成形面7bを貫通するように溶融樹脂をキャビティ8内に供給するゲート7cが形成され、また、フランジ片成形凹部6cに対向する部位に、スライドコア9が進退可能に設けられている。
【0033】
スライドコア9は、固定型6に対する可動型7の移動方向に対して傾斜して進退可能に可動型7に設けられており、また、先端にはフランジ片成形凹部6cの形状に適合した略角柱状の頭部型9aが形成されており、頭部型9aにおける隅角凹部6bに対向する角部9bには、図10に詳細に示すように突起部10が複数個一直線状または曲線状に隅角部に植設されおり、しかも、突起部10は、φ1.5〜10mmの円柱形を呈し、先端形状は、隅角凹部6dの形状に追従して、断面略直角に形成されている。突起部10は好しくはφ2〜4mmである。φが1.5mm未満では、突起部により表皮を貫通してしまい表側に樹脂が漏れてしまったり、溶融樹脂の射出圧で突起部10が変形する場合がある。φが10mm超える大きさでは、表皮の裏当てがない面積が大きくなり、表皮のたるみやシワの原因となり、外観上好しくない。
【0034】
また、スライドコア9の基部には、固定型6に対する可動型7の移動方向に対して傾斜するように、ガイド孔9cが形成されており、ガイド孔9cは、固定型6側に立設されたアッギュラピン6e内を摺動案内されて、固定型6に対して可動型7が型締め方向に移動した際にこの型締め方向とは所定の角度だけ傾斜してスライドコア9がスライド移動するように構成されている。
【0035】
かかる構成において、加飾成形品であるピラーガーニッシュ2を成形するには、先ず、図3及び図4に示す固定型6に対して可動型7が型開き状態で、表皮材4を固定型6の成形面6bと可動型7の成形面7bとの間に供給する。
【0036】
この状態では、スライドコア9の突起部10の先端が表皮材4に軽く当接している。
【0037】
この型開き状態から、可動型7を案内ピン6aがピン孔7aに嵌合摺動しながら案内されて固定型6方向に徐々に移動すると、図5に示すように、この移動によって、アッギュラピン6eがガイド孔9c内を摺動しながら、スライドコア9を固定型6に対する可動型7の移動方向に対して傾斜した方向にガイドして、突起部10の先端を表皮材4に当接させながら、フランジ片成形凹部6cの隅角凹部6d方向に徐々に移動させていく。
【0038】
この状態より更に可動型7を固定型6方向に移動させると、突起部10の先端は、表皮材4を固定型6の隅角凹部6dに押付けて表皮材4をフランジ片成形凹部6c内に案内することになる。その後、固定型6の成形面6bの外周部に対して可動型7の成形面7bの外周部が密着した型締め状態となり、密封されたキャビティ8を形成することになり、この時、表皮材4の外端は固定型6及び可動型7により挟持固定されることになる(図6の状態)。
【0039】
したがって、固定型6に対する可動型7に型締め完了前においては、表皮材4の外端部がフリー状態となっており、突起部10は表皮材4をフランジ片成形凹部6c内に持ち込むことになる。
【0040】
次に、図7に示すように、ゲート7cから溶融樹脂11を表皮材4の裏面側におけるキャビティ8内に供給して(図7の状態)、溶融樹脂11の供給が図8の状態に進む過程において、溶融樹脂11の供給圧により表皮材4の外端部を徐々にフランジ片成形凹部6cの凹部形状に追従させる方向に移動させている。
【0041】
この過程を更に進めて、図9示す溶融樹脂11の供給終了時には、表皮材4の外端部がフランジ片成形凹部6cの形状に倣って成形され、図12及び図13に示すように、樹脂芯材3の外端まで表皮材4が被覆して、表皮材4の余長部4aは不図示のカッター機等により切り落とされ、図2−1に示すような表皮材4に加飾されたピラーガーニッシュ2が完成する。
【0042】
完成したピラーガーニッシュ2における隅角部2aには、間欠的に突起部10によって小孔部2cが形成されていることになる。
【0043】
上記実施の形態によれば、スライドコア9の突起部10が固定型6及び可動型7の型締め完了前に、表皮材4の隅角部6dに相当する固定型6の成形面部位の隅角凹部6dに表皮材4の裏面側を押圧することによって表皮材4を挟持固定するようにして、その後、固定型6及び可動型7の型締めを行ってこれらが形成するキャビティ8内においてピラーガーニッシュ2を成形するようにしたことから、表皮材4はその外周部が固定型6及び可動型7によって挟持固定されていない状態で、ピラーガーニッシュ2の隅角部2aに相当する固定型6の成形面部位における隅角凹部6dに倣い追従することになり、その後に固定型6及び可動型7の型締めを行い、溶融樹脂11をキャビティ8内に供給しても、溶融樹脂11によって表皮材4が薄肉になるのを抑えることができ、表皮材4の薄肉化による破れを防止し、溶融樹脂11がピラーガーニッシュ2の表面側に漏れ出しを無くすことができ、特に、表皮材4の延び係数が小さい場合や表皮材が編物、織物、或いは不織布などの繊維目を有する素材の場合に、表皮材の破れや繊維目からの樹脂漏れを抑えることができる。
【0044】
また、ピラーガーニッシュ2の隅角部2aにスライドコア9の突起部10によって形成された小孔部2cは、表皮材4により覆い隠されてれピラーガーニッシュ2の表面には表出せず見栄えを劣化することなく、ピラーガーニッシュ2の隅角部2aが柔軟性を有することになってフロントピラー1側形状に追従させやすくなって、取り付け性の向上の作用を奏することを期待できる。
【0045】
なお、上記実施の形態においては、スライドコア9の突起部10は、フランジ片成形凹部6c内において、隅角凹部6dを挟持固定するように構成したが、これに限定されるものでなく、表皮材4の隅角部2aの周辺における隅角外周部(隅角部から上下15mm以内の範囲)を挟持固定するようにしてもよい。
【0046】
また、スライドコア9の突起部10が、表皮材4の隅角部またはその近傍に相当する固定型6の隅角凹部6d向けて表皮材を押圧し、突起部10がピラーガーニッシュ2裏面側から表皮材近傍まで到達した状態で、溶融樹脂を射出してもよい。これによって成形されたピラーガーニッシュ2の小孔部2cは、薄皮または薄肉部が表皮材4の隅角部2aまたはその外周部に形成される。
【0047】
また、上記実施の形態においては、突起部10は、スライドコア9の角部9bに沿って一列植設したが、更に表皮材4の挟持固定力を増すために、図14に示すように、角部9bを間に挟んで2列並設して植設してもよく、また、図15に示すように角部9bと共にこれを間に挟んで3列並設して植設してもよい。
【0048】
更に、上記実施の形態においては、突起部10の先端は、隅角凹部6dの形状に追従して断面略直角に形成されているが、これに限定されるものでなく、図16−1に示すように、曲面形状にしたり、図16−2に示すように角錐台形状にしたり、あるいは、図16−3に示すように一方の片面が直線状をなしもう一方の片面を傾斜曲面に形成しても良い。
【0049】
更にまた、上記実施の形態において、ピラーガーニッシュ2の成形後に、図12及び図13に示すように、表皮材4の余長部4aが形成され、不図示のカッター機等により切り落さなければ、図2−1に示すような表皮材4に加飾されたピラーガーニッシュ2が完成しなかったが、例えば、図17に示すように、表皮材4から余長部4aを型セット前に切り落としておくことによって、成形後の余長部4aの切り落とし工程を省くようにしてもよい。この場合、スライドコア9の突起部10によって挟持固定された挟持固定部より外端側が、固定型6及び可動型7の型締め時に遊端になるよう構成されることになる。
【0050】
このために、表皮材4における溶融樹脂11による薄肉化を完全に防止することができる。ただ、表皮材4の外端側を遊端にしたために、遊端側からピラーガーニッシュ2の表面に樹脂回りを起すことがあるが、この樹脂回りは遊端側から極僅かピラーガーニッシュ2の表面側にはみ出しているに過ぎず、ピラーガーニッシュ2の商品性を損なうまでには至らず、このため、ピラーガーニッシュ2を他部品と組み合わせて組み付けるような場合にも、ピラーガーニッシュ2の遊端側が表側に露出するように組み合わせることもでき、ピラーガーニッシュ2と他部品とを突き合せて組み付ける場合にも問題が起こることがない。
【0051】
また、上記実施の形態において、スライドコア9の突起部10は、ピラーガーニッシュ2の隅角部2aに相当する固定型6の隅角凹部6dにおける表皮材4の裏面を挟持固定するようにしたが、これに限定されず、表皮材4の隅角外周部周辺部の裏面を挟持固定するようにすることが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明は、溶融樹脂導入前であって金型を閉じる前に、隅角部に対向する箇所の表皮を突っ張らせることなく前記製品隅角部表面側成形部に近づけるかまたは当てておくことができることから、溶融樹脂の充填過程で延ばされる表皮の延び量を少なくすることができ、従って、隅角部における表皮の局部的薄肉化や、延びの限度を超えて破れ溶融樹脂が隅角部表面側に流出することを効果的に防止することができる。とりわけ、延びの少ない樹脂表皮や編物、不織布などの素材を利用する場合にあっては、延びの限度を容易に超え、或いは局部的に破れたり繊維目を通るなどして溶融樹脂が漏れやすい傾向を持つので、効果的であるために、自動車の車体ピラー部を装飾するピラーガーニッシュのような樹脂芯材の表面に表皮材を加飾してなる加飾樹脂成形品及び加飾樹脂成形品の製造方法に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】加飾成形品であるピラーガーニッシュを使用して美装された自動車のフロントピラー周辺を描画した斜視図である。
【図2−1】図1におけるピラーガーニッシュの一部を拡大して描画した斜視図である。
【図2−2】図2−1におけるA−A断面図である。
【図3】本発明に係る射出成形型の縦断面図である。
【図4】図3における射出成形型に表皮材を供給してスライドコアが当該表皮材に当接した状態の説明図である。
【図5】同じく、スライドコアが更に固定型側に進んで表皮材を固定型におけるピラーガーニッシュの隅角部に相当する成形面部位近傍まで移動させた状態を説明図である。
【図6】同じく、スライドコアが表皮材を固定型におけるピラーガーニッシュの隅角部に相当する成形面部位において挟持固定した状態の説明図である。
【図7】同じく、固定型及び可動型が形成したキャビティ内に溶融樹脂を供給しピラーガーニッシュの隅角部に相当する成形面部位近傍まで到達した状態の説明図である。
【図8】同じく、溶融樹脂の供給が更に進みピラーガーニッシュの成形面部位内をほぼ埋め尽くした状態の説明図である。
【図9】同じく、溶融樹脂がピラーガーニッシュの成形面部位内を完全に埋め尽くした状態の説明図である。
【図10】図3におけるスライドコアの斜視図である。
【図11】図10におけるスライドコアを構成する突起部の正面図である。
【図12】本発明に係る射出成形型により成形されたピラーガーニッシュにおける図2−1のA−A断面図である。
【図13】本発明に係る射出成形型により成形されたピラーガーニッシュにおける図2−1のA−A線より少しずらした部位における断面図である。
【図14】本発明に係る他の実施の形態におけるスライドコアの斜視図である。
【図15】本発明に係る更に他の実施の形態におけるスライドコアの斜視図である。
【図16−1】本発明に係る他の実施の形態における突起部の正面図である。
【図16−2】本発明に係る更に他の実施の形態における突起部の正面図である。
【図16−3】本発明に係る別の実施の形態における突起部の正面図である。
【図17】本発明に係る射出成形型の更に別の実施の形態の型締め時における要部断面図である。
【符号の説明】
【0054】
2 ピラーガーニッシュ(加飾成形品)
2a 隅角部
4 表皮材
5 射出成形型
6 固定型
6b 成形面
6c フランジ片成形凹部
6d 隅角凹部
7 可動型
7b 成形面
8 キャビティ
9 スライドコア
11 溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隅角部を有し金型に表皮を挿入して樹脂と一体に成形される加飾樹脂成形品の製造方法であって、
開かれた金型の製品隅角部表面側成形部を有する一方の金型と製品隅角部裏面側成形部を有する他方の金型との間に、前記製品隅角部表面側成形部に対向させて表皮を挿入する工程と、
他方の金型から、一方の金型の前記製品隅角部表面側成形部に、前記製品隅角部表面側成形部に向けて表皮を偏位させる工程と、
一方の金型と他方の金型とを閉じる工程と、
製品隅角部裏面側成形部と表皮との間に溶融樹脂を射出する工程と、
を具備する加飾樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
隅角部は縁状隅角部であり、表皮を縁状隅角部に沿って複数の偏位点で偏位させる請求項1の加飾樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1の製造方法により製造された加飾樹脂成形品であって、隅角部の表側に表皮が一体に添設され、隅角部またはその近傍に、この成形品の裏側から表皮の裏面またはその近傍に達する深さの小孔を備えたことを特徴とする加飾樹脂成形品。
【請求項4】
請求項2の製造方法により製造された加飾樹脂成形品であって、縁状隅角部の表側に表皮が一体に添設され、この縁状隅角部またはその近傍に、この成形品の裏側から表皮の裏面またはその近傍に達する深さで、かつこの隅角部に沿って配列された複数の小孔を備えたことを特徴とする加飾樹脂成形品。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図16−3】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−68950(P2006−68950A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252769(P2004−252769)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】