説明

動体判別機能付き電子機器

【課題】 動体を正確に判別することができるコンパクトな電子機器を提供する。
【解決手段】 動体しきい値記憶手段104の動体しきい値を、測定対象物までの距離が遠い場合には大きく、測定対象物までの距離が近い場合には小さくなるように、測定距離範囲毎に予め設定する。動体判定手段106は、測距値の最大値と最小値の差が所定の動体しきい値よりも大きい場合に測定対象物が動体であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、PSD測距センサを用いて対象物までの距離を測定し、所定の基準により対象物が動体か否かを判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
PSD(Position Sensitive Detector)測距センサは、比較的コンパクトな検出機器として知られており、センサから測定対象物までの距離を三角測量法によって測定する。三角測量法では、LEDより投光した赤外線の反射成分について入射角度から距離を演算するため、センサの経年劣化により赤外線強度が劣化した場合でも測定精度の悪化が少なく、高精度な測定が可能である。しかしながら、測定対象物がセンサから遠方になるほど出力の誤差が大きくなり検出精度が低下するとともに出力電圧の個体差が大きくなるなど測定距離依存性や個体差の問題があった。特許文献1〜3には、PSD測距センサの測定距離依存性を克服して、遠方または近方の位置においても測定対象物までの距離を精度良く検出するための技術が開示されている。
【0003】
また、センサによって検出されている測定対象が静止している物体であるか、人間のように動いている動体であるかを判断したい場合がある。例えば、モニタにセンサを設け、モニタの前に人間がいなければモニタを省電力モードに移行させ、モニタの前に人間がいればモニタを省電力モードに移行させないような場合である。かかる場合、センサがモニタの前に測定対象物を検出した場合であっても、測定対象物が椅子のような静止物体であれば省電力モードに移行させることが好ましい。そこで、検出対象が人間のような動体であるか、椅子のような静体であるかを判定することが必要となる。また、特許文献4には、超音波センサを用いて測定対象物が動体であるか否かを判定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−240511号公報
【特許文献2】実開平7−20506号公報
【特許文献3】特開2007−10556号公報
【特許文献4】特開平11−133151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3には、PSD測距センサを用いて測定対象物までの距離を測定することは開示されているが、その測定対象物が動体であるか否かを判定することまでは開示されていない。一方、特許文献4には、超音波センサを用いて、所定の基準により測定対象物が動体であるか否かを判定することが開示されているが、超音波センサを用いているため装置が大型化してしまう問題があった。
【0006】
この発明は、測定対象物が動体であるか否かを正確に判別することができるコンパクトな動体判別機能付き電子機器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)この発明の動体判別機能付き電子機器は、
投光素子から照射され、測定対象物で反射した光を受光して測定対象物までの距離に対応する電圧を出力するPSD測距センサと、
前記PSD測距センサからの出力を受けて、測定対象物までの距離を示す測距値を算出する測距値算出手段と、
測定対象物までの距離に対応して所定の測定距離範囲毎に予め設定される動体しきい値を記憶するための動体しきい値記憶手段と、
前記測距値より算出した変動値を前記動体しきい値と比較することにより、測定対象物が動体か否かを判定する動体判定手段と、
測定対象物が動体であるか否かの結果に基づいて、所定の処理を実行する処理実行手段と、
を備えた動体判別機能付き電子機器であって、
前記動体しきい値記憶手段に記憶される動体しきい値を、測定対象物までの距離が遠い場合には大きく、測定対象物までの距離が近い場合には小さくなるように、測定距離範囲毎に予め設定した、
ことを特徴とする。
【0008】
このように、PSD測距センサの距離依存性を考慮することにより、動体判別機能付き電子機器は、PSD測距センサを用いて動体か否かを正確に判別することができる。
【0009】
(2)前記(1)の動体判別機能付き電子機器において、
前記動体判定手段は、
前記測距値算出手段より得られる複数の測距値の中から最大値および最小値となるものをそれぞれ選定し、
前記測距値の最大値が予め設定された何れの測定距離範囲内にあるかを判断することにより、対応する所定の動体しきい値を決定し、
前記最大値と最小値の差が、前記所定の動体しきい値よりも大きい場合か否かを比較し、前記所定の動体しきい値よりも大きい場合に測定対象物が動体であると判定する、
ことを特徴とする。
【0010】
このように、測距値から最大値および最小値を選定し、最大値と最小値の差を所定の動体しきい値と比較して測定対象物が動体か否かを判定しPSD測距センサの測定距離依存性を考慮することで動体判別機能付き電子機器は、PSD測距センサを用いて、動体か否かを正確に判別することができる。
【0011】
(3)前記(1)、(2)の発明の動体判別機能付き電子機器は、
前記動体しきい値記憶手段に記憶される前記動体しきい値を、前記PSD測距センサの離散的な出力特性に対応する最小距離変化量を算出することにより、測定距離範囲毎に予め設定した、
ことを特徴とする。
【0012】
これにより、PSD測距センサの離散的な出力特性を考慮して動体しきい値を算出することができる。
【0013】
(4)前記(1)、(2)の発明の動体判別機能付き電子機器は、
前記動体しきい値記憶手段に記憶される前記動体しきい値を、前記PSD測距センサの離散的な出力特性による最小電圧変化量、または前記測距値算出手段の性能による距離分解能のうち何れか大きい方に対応する動体しきい値を算出することにより、測定距離範囲毎に予め設定した、
ことを特徴とする。
【0014】
これにより、PSD測距センサの離散的な出力特性および外部デバイスの性能を考慮して動体しきい値を算出することが可能となる。
【0015】
(5)前記(1)ないし(4)の発明の動体判別機能付き電子機器は、
異なるPSD測距センサについて、所定位置での測距値を取得しておき、
前記所定位置に対応する測定距離範囲の動体しきい値を、前記異なるPSD測距センサのうち所定位置での最小距離変化量が最も大きくなるPSD測距センサの最小距離変化量に基づいて設定した、
ことを特徴とする。
【0016】
これにより、PSD測距センサの個体差を考慮して動体しきい値を決定することができる。
【0017】
(6)前記(1)、(2)の発明の動体判別機能付き電子機器は、
予め段階的に設定した動体しきい値に基づいて、各測定距離範囲を決定した、
ことを特徴とする。
【0018】
これにより、動体しきい値を基準として測定距離範囲を設定することができる。
【0019】
(7)前記(1)ないし(6)の発明の動体判別機能付き電子機器は、
前記処理実行手段が、
前記動体判定手段が測定対象物が動体でないと判断した場合に、電子機器の電源供給モードを通常モードから省電力モードに移行する処理を行い、
前記動体判定手段が測定対象物が動体であると判定した場合に、電子機器の電源供給モードを省電力モードから通常モードに移行する処理を行う、
ことを特徴とする。
【0020】
このように、PSD測距センサの測定距離依存性を考慮して測定対象物が動体か否かを判定することで、電子機器を省電力で動作するように正確に制御することができる。
【0021】
なお、この実施形態において、「動体しきい値」とは、測定対象物が動体であるか静体であるかを判断するために用いられるしきい値であり、具体的には、図12に示す測定距離範囲R1、R2、R3に対応して設定される動体しきい値S1、S2、S3(S1、S2、S3のうち何れかが動体しきい値Sthとして最終的に選定される)がこれに該当する。また、「測定対象物が動体であるか否かを判断する」とは、具体的には、PSD測距センサにより測定される測定対象物までの距離(測距値)の変動値が、所定の動体しきい値より大きいか否かを比較することであり、図15に示すステップS1307の処理がこれに該当する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の動体判別機能付き電子機器のブロック図である。
【図2】本発明の動体判別システムの仕組みを説明するための模式図(図2A)、およびPSD測距センサの距離−出力電圧特性を示すグラフ(図2B)である。
【図3】PSD測距センサの理想的な距離−出力電圧特性を示すグラフである。
【図4a】PSD測距センサの離散的な距離−出力電圧特性を示すグラフである。
【図4b】図4aの拡大図である。
【図5】PSD測距センサの実効値として制御された出力電圧を示すグラフである。
【図6a】図3に示すPSD測距センサの理想的な出力電圧を有限の分解能をもった外部デバイスで検出した場合の距離−出力電圧特性を示すグラフである。
【図6b】図6aの拡大図である。
【図7】図4a、bに示すPSD測距センサの離散的な出力電圧を有限の分解能をもった外部デバイスで検出した場合の距離−出力電圧特性を示すグラフである。
【図8】所定の測定距離におけるしきい値距離を示すグラフである。
【図9a】PSD測距センサの製造上の個体差による距離−出力電圧特性のバラツキを示すグラフである。
【図9b】図9aの拡大図である。
【図10】図9aに示すPSD測距センサの製造上の個体差による距離−出力電圧特性のバラツキの具体的な値を示す表である。
【図11】この発明の省電力モニタ装置のハードウェア構成を示す図である。
【図12】動体判定DBに記憶されるデータの具体例を示す図である。
【図13】メイン処理の内容を示すフローチャートである。
【図14】通常モードの周期的処理の詳細を示すフローチャートである。
【図15】動体判定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図16】省電力モードの周期的処理を示すフローチャートである。
【図17】他の実施形態におけるハードウェア構成を示す図である。
【図18】動体しきい値Sthの設定フローを示す図である。
【図19】PSD測距センサの距離−出力電圧特性をもとにしきい値電圧ΔVthを電圧−距離変換した表である。
【図20】離散的な出力電圧を有するPSD測距センサ2を有限の分解能をもった外部デバイスの出力電圧Voを離散値毎に目盛りでプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[動体判別機能付き電子機器のブロック図]
図1に、この発明の動体判別機能付き電子機器100のブロック図を示す。図1に示すように、動体判別機能付き電子機器100は、PSD測距センサ2、測距値算出手段102、動体しきい値記憶手段104、動体判定手段106、処理実行手段108を備えている。なお、以下の実施形態では、電子機器がモニタ装置である場合を例に説明する(以下、「動体判別機能付き電子機器100」に代わり「モニタ装置100」と記す)。
【0024】
図2Aは、本発明の動体判別システムの仕組みを説明するための模式図である。
【0025】
PSD測距センサ2は、図2Aに示すようにモニタ装置100の上部に設けられ、測定対象物までの距離(以下、「測定距離D」と記す)を測定するために用いられる。PSD測距センサ2は、内部に設けられた投光素子からPSDビームを照射し、測定対象物で反射した光を内部に設けられたPSD素子で受光して測定距離Dに応じた出力電圧(以下、「出力電圧Vo」と記す)を出力する。測距値算出手段102は、PSD測距センサ2からの出力電圧Vo を受けて、測定距離Dを示す測距値を算出する。
【0026】
図2Aに示すユーザー3は、モニタ装置100の使用開始時にセンサ2の角度を手動で操作し、PSD測距センサ2の狙点がユーザー3の胸の高さで、かつ、胸の中心付近に向かうように調節する。前記調整は、PSD測距センサ2のPSDビームの指向性が強いため、センサ正面をユーザー3の身体の比較的面積の広い部位に向け、PSDビームをユーザー3の身体で確実に反射させるために行う。なお、PSDビームをユーザー3の身体で反射させることができるならば、モニタ装置100にPSD測距センサ2の角度を固定して構成したり、PSD測距センサ2をモニタ装置100の上部以外の位置に設けたりしてもよい。また、PSDビームがユーザー3の身体を常に狙うように、PSD測距センサ2の角度調節を自動で行うように構成することも可能である。
【0027】
図2Bは、PSD測距センサ2からユーザー3までの測定距離D(図2Aを参照)を横軸にとり、PSD測距センサ2の出力電圧Voを縦軸にとった特性図である。図2Bに示すように、測定距離Dと出力電圧Vo の関係(以下、「距離−出力電圧特性」と記す)は反比例の関係を有している。したがって、測定距離Dに対して出力電圧Voが一通りに決まるため、PSD測距センサ2を用いてモニタ装置100からユーザー3までの距離を容易に測定することができる。
【0028】
ユーザー3が着席している場合には、呼吸や揺れなどの動作によって、測定距離Dを示す測距値は図2Aに示すように最大値Dmaxおよび最小値Dminの間で変動するため、ユーザー3を動体として検出することができる。
【0029】
その一方で、ユーザー3が離席しており、例えば椅子のような静止物を検出した場合でも、PSD測距センサ2や測距値算出手段102の性能や外乱要因により、測定距離Dを示す測距値は常に変動する。そのため、測定対象物を動体として検出するために最低限必要な測定距離Dの変化量(以下、「動体検出感度」と記す)があり、動体検出感度以下の微小な動作に対して、動体か否かを誤検出してしまう問題があった。
【0030】
この問題を解決して測定対象物が動体か否かを正確に判定するためには、PSD測距センサ2の動体検出感度を考慮した判定を行う必要がある。すなわち、動体検出感度をもとに、測定距離Dを示す測距値の変動の大きさについて、測定対象物が動体か否かの判定基準となるしきい値(以下、「動体しきい値Sth」と記す)を予め設定しておき、図2Aに示す最大値Dmax および最小値Dminの差で得られる距離変動値ΔD(=Dmax−Dmin)と動体しきい値Sthを比較し、動体しきい値Sthより距離変動値ΔDが大きい場合には測定対象物を動体であると判定し、動体しきい値Sthより距離変動値ΔDが小さい場合には測定対象物を静止物であると判定する。
【0031】
しかしながら、図2Bに示すようにPSD測距センサ2の距離−出力電圧特性は反比例の関係を有しているため、一定の距離変動値ΔDに対する出力電圧Voの変化量は測定距離Dに依存するという特徴をもつ。具体的には、ユーザー3がモニタ装置100に近い位置にいる場合はPSD測距センサ2の出力電圧Voは急峻に変化する一方、ユーザー3がモニタ装置100から遠い位置にいる場合はPSD測距センサ2の出力電圧Voは緩やかに変化する。このようなPSD測距センサ2の動体検出感度の測定距離依存性を考慮して、測定距離Dが近い場合には上記判定のための動体しきい値Sthが小さくなるように設定し、測定距離Dが遠い場合には上記判定のための動体しきい値Sthが大きくなるように設定する。このように、PSD測距センサ2の動体検出感度の測定距離依存性をもとに、測定距離Dに応じた所定の動体しきい値Sthが設定されることで、測定距離Dによらず正確に測定対象物が動体か否かを判定することができる。
【0032】
図1に示す動体しきい値記憶手段104は、測定距離Dに応じて予め設定される複数の動体しきい値Sthを、前記動体しきい値Sthが適用される所定の距離範囲(以下、「測定距離範囲R」と記す)毎に記憶するための手段である。例えば、図2Bにおいて測定距離範囲R1、R2、R3で示される測定距離範囲R毎に、それぞれ動体しきい値S1、S2、S3(測定距離Dに応じてこのうちの何れかが動体しきい値Sthとして選定される)が予め設定され、記憶される。これらの各動体しきい値S1、S2、S3は、上記のとおり、PSD測距センサ2の動体検出感度の測定距離依存性を考慮して、測定距離Dが近い測定距離範囲Rでは小さく、測定距離Dが遠い測定距離範囲Rでは大きくなるように設定される。
【0033】
なお、所定の測定距離範囲Rを定めず、測定距離Dに応じて連続的に動体しきい値Sthを変化させるように構成することも可能である。
【0034】
図1に示す動体判定手段106は、PSD測距センサ2を用いて取得した測定距離Dを示す測距値の最大値Dmaxおよび最小値Dminの差で得られる距離変動値ΔDを、測定距離Dに応じた動体しきい値Sthと比較することにより、測定対象物が動体か否かを判定する手段である。具体的には、動体判定手段106は、PSD測距センサ2より経時的に得られる複数の測定距離Dを示す測距値の中から、まず最大値Dmax および最小値Dminとなるものをそれぞれ選定する。つぎに、最大値Dmax が予め設定された何れの測定距離範囲R内にあるかを判断することにより、測定距離Dに応じた動体しきい値Sthを選定する。つまり、最大値Dmax が図2Bに示す測定距離範囲R1、R2、R3の何れの測定距離範囲R内にあるかを判断し、これに対応する動体しきい値S1、S2、S3の何れかの値を測定距離Dに応じた動体しきい値Sth として選定する。そのうえで、距離変動値ΔDが測定距離Dに応じた動体しきい値Sth よりも大きい場合には測定対象物を動体であると判定し、距離変動値ΔDが測定距離Dに応じた動体しきい値Sth よりも大きくない場合には測定対象物を静止物であると判定する。
【0035】
図1に示す処理実行手段108は、測定対象物が動体か否かを動体判定手段106が判定した場合に所定の処理を実行する手段である。具体的には、動体か否かの判定結果によりモニタ装置100の動作モードを通常モードと省電力モードの間で切り替える処理が該当する。
【0036】
上記のように、動体しきい値記憶手段104(図1を参照)に記憶される所定の動体しきい値Sth が、PSD測距センサ2の距離−出力電圧特性の反比例の関係を考慮して測定距離範囲R毎に予め設定されることにより、PSD測距センサ2の動体検出感度の測定距離依存性が考慮され、測定距離Dによらず測定対象物が動体か否かを正確に判定することができるコンパクトなモニタ装置100の提供を可能とする。
【0037】
[PSD測距センサ2の基本特性と動体しきい値Sth の設定方法について]
つぎに、PSD測距センサ2の特性と動体しきい値Sth の設定方法について、以下に詳しく説明する。
【0038】
「PSD測距センサ2の基本特性の説明」
PSD測距センサ2は、三角測量の原理を応用して、測定対象物までの距離(以下、「測定距離D」と記す)に応じた出力電圧Vo を出力する装置である。三角測量の原理上、測定距離Dと出力電圧Vo の関係(以下、「距離−出力電圧特性」と記す)は理想的には図3に示すような連続的な反比例の関係となる。
【0039】
前記反比例の関係によれば、一定の測定距離Dの変化量(以下、「距離変化量Δd」と記す) に対するPSD測距センサ2の出力電圧Voの変化量(以下、「電圧変化量ΔVo」と記す)は測定距離Dに応じて変化する特徴をもつ。すなわち、図3においてΔd1=Δd2 に対してΔVo1>ΔVo2 となる。また前記特徴を言いかえれば、一定の電圧変化量ΔVo に対する距離変化量Δd は、測定距離Dに依存する。すなわち、図3においてΔVo3=ΔVo4 に対して、Δd3<Δd4 となる。なお、図3の距離−出力電圧特性は、図2Bに示した特性を詳細に表したものでもある。
【0040】
「離散的な出力電圧Voをもち、かつ離散的な距離−出力電圧特性をもつPSD測距センサ2の説明」
PSD測距センサ2の距離−出力電圧特性は、理想的には図3に示すように、測定距離Dの連続的変化に対し出力電圧Voも連続的に変化する。しかし、小型かつ廉価なPSD測距センサ2の場合、センサ内部の出力回路は8bit 程度のDAC(Digital Analog Converter)出力段となっていることが一般的であり、その出力電圧Vo は測定距離Dの連続的変化に対し、図4aおよびその拡大図である図4bの距離−出力電圧特性に示すように、センサ内部の出力回路の性能に依存した一定の出力電圧変化ステップ(以下、「最小電圧変化量ΔVomin」と記す)をもつ離散的な変化となる。
【0041】
このとき、最小電圧変化量ΔVominをPSD測距センサ2の距離−出力電圧特性をもとに電圧−距離変換したものを最小距離変化量Δdminと定義する。最小距離変化量Δdminは、PSD測距センサ2が測定距離Dの変化を出力電圧Voの変化として検出するために最低限必要な距離変化量Δdを示す。すなわち、最小距離変化量Δdminは動体検出感度を示し、最小距離変化量Δdminが小さいほど動体検出感度が高く、最小距離変化量Δdminが大きいほど動体検出感度が低いとみなすことができる。PSD測距センサ2の距離−出力電圧特性は反比例の関係を有しているため、一定の電圧変化量ΔVo に対する距離変化量Δd は測定距離Dに依存するとともに、一定の最小電圧変化量ΔVomin に対する最小距離変化量Δdmin も測定距離Dに依存する。つまり、このような離散的な距離−出力電圧特性をもつPSD測距センサ2では、測定距離Dに応じて最小距離変化量Δdmin が変化する特徴をもち、近距離では動体検出感度が高く、遠距離では動体検出感度が低くなる。
【0042】
「離散的な出力電圧Voをもち、かつ実効値として連続的な距離−出力電圧特性を実現したPSD測距センサ2の説明」
また、このような離散的な出力電圧VoをもつPSD測距センサ2には、最小距離変化量Δdmin 以下の距離変化に対して、図5に示すように最小電圧変化量ΔVomin の振幅にて出力電圧Vo を瞬時的に制御し、実効値として最小電圧変化量ΔVomin 以下の中間電圧を出力することにより、図3に示すような連続的な距離−出力電圧特性を実効値として実現したものもある。このような一定の最小電圧変化量ΔVomin を最小ステップとする離散的な出力電圧Voをもち、かつ実効値として連続的な距離−出力電圧特性を実現したPSD測距センサ2を用いるときは、瞬時的な電圧変化量ΔVoから測定対象物が動体か否かを判定する動体判別システムの場合には、瞬時的には静止物に対しても図5に示すような変動した出力電圧Voを示すことから、図4aに示す離散的な距離−出力電圧特性をもつPSD測距センサ2と同様にΔVomin>0、Δdmin>0とみなす必要がある。ただし、出力電圧Voが測距値算出手段102にて十分に平均化され、実効値的な電圧変化量ΔVoから測定対象物が動体か否かを判定する動体判別システムの場合には、図3に示す理想的な距離−出力電圧特性をもつPSD測距センサ2同様にΔVomin=0、Δdmin=0とみなすことができる。
【0043】
「PSD測距センサ2の個体差によるバラツキの説明」
さらに、異なるPSD測距センサ2の間には、製造上の個体差による距離−出力電圧特性のバラツキがある。その一例として、最小電圧変化量ΔVomin=16[mV]のバラツキをもった3つの異なるPSD測距センサ2a、2b、2cについて、図9aおよびその拡大図である図9bに距離−出力電圧特性を示し、図10に各測定距離D=30、50、80、120[cm]における出力電圧Vo と最小電圧変化量ΔVominから、最小距離変化量Δdminを算出した表を示す。何れのPSD測距センサ2も同一の仕様であるため、各最小電圧変化量はΔVmin_a=ΔVmin_b=ΔVmin_c=16[mV]である。その一方で、同一の測定距離Dにおける最小距離変化量は常にΔdmin_a<Δdmin_b<Δdmin_cとなっている。
【0044】
このように、同一の測定距離Dにある測定対象物を異なるPSD測距センサ2a、2b、2cを用いて測定対象物が動体か否かを検出する場合には、何れのPSD測距センサ2a、2b、2cを用いたとき最小距離変化量Δdminが最大、すなわち動体検出感度が最も低くなるかを考慮する必要がある。上記の例では、同一の測定距離Dにおける最小距離変化量がΔdmin_a<Δdmin_b<Δdmin_cであることから、PSD測距センサ2cの動体検出感度が最も低い。
【0045】
「外部デバイスによる距離分解能Δdiの説明」
測距値算出手段102は、外部デバイス(ADC(Analog Digital Converter)などの入力装置とマイクロコンピュータなどの演算装置を組合せたシステム)を用いて構成される。このとき、PSD測距センサ2の出力電圧Voの検出は、外部デバイスの性能(入力装置の分解能および電圧−距離変換を行う演算装置の分解能)に依存し、図6aおよびその拡大図である図6bに示すように、外部デバイスの有限の分解能に依存した一定の検出電圧変化ステップ(以下、「電圧分解能ΔVi」と記す)の離散値で行われる。
【0046】
このとき、電圧分解能ΔViをPSD測距センサ2の距離−出力電圧特性をもとに電圧−距離変換したものを距離分解能Δdiと定義する。距離分解能Δdiは、外部デバイスがPSD測距センサ2の出力電圧Voの変化を検出するために最低限必要な距離変化量Δdを示す。すなわち、距離分解能Δdiは最小距離変化量Δdminと同様に、測定距離Dに依存した動体検出感度を示している。したがって、このような有限の分解能をもつ外部デバイスを用いて測定対象物が動体か否かを検出する場合には、測定距離Dを示す測距値には測定距離Dに依存した距離分解能Δdiが発生することを考慮して動体しきい値Sthを設定する必要がある。
【0047】
なお、無限の分解能とみなせる程度の高性能な外部デバイスを用いた場合は、電圧分解能ΔVi=0とみなすことができる。
【0048】
また、PSD測距センサ2の出力電圧Voを、前記PSD測距センサ2と前記外部デバイスの間に備える外部増幅器によって増幅したうえで前記外部デバイスで検出する場合には、電圧分解能ΔViを外部増幅器の増幅率Aの逆数倍(1/A倍)に補正して扱う必要がある。なお、PSD測距センサ2の出力電圧Voを外部増幅器によって増幅するのは、測定距離Dが遠方の場合でも外部デバイスにおいて出力電圧Voの変動を確実に測定可能とするためである。
【0049】
「外乱要因による外乱距離変動Δdnの説明」
PSD測距センサ2の過渡特性や、電気的・光学的外乱、温度ドリフトなどが要因となって、PSD測距センサ2の出力電圧Voあるいは外部デバイスの検出電圧は測定対象物が動体か否かに関わらず常に変動している。この外乱要因による電圧変動量(以下、「外乱電圧変動ΔVn」と記す)をPSD測距センサ2の距離−出力電圧特性をもとに電圧−距離変換したものを外乱距離変動Δdnと定義する。外乱距離変動Δdnは、測定対象物が動体か否かに関わらず常に発生する距離変化量Δdを示す。すなわち、外乱距離変動Δdnは最小距離変化量Δdminあるいは距離分解能Δdiと同様に、測定距離Dに依存した動体検出感度を示すとともに、最小距離変化量Δdminあるいは距離分解能Δdiに加算されることで動体検出感度を低下させる要因となる。したがって、このような外乱要因が発生する動体判別システムを用いて測定対象物が動体か否かを検出する場合には、測定距離Dを示す測距値には測定距離Dに依存した外乱距離変動Δdn が発生することを考慮して動体しきい値Sthを設定する必要がある。
【0050】
なお、外乱要因による外乱電圧変動ΔVnは、動体判別システムの仕様や測定対象物の物性・形状などに依存するほか、不特定の外部要因による増加が懸念されるため、適切なマージン(例えば、実測より得られた外乱電圧変動ΔVnに対し、数十%程度)を設けておくことが望ましい。ただし、外乱要因が無視できるほど小さいような場合には、マージンを0にすることも可能である。
【0051】
「動体しきい値Sthの設定方法についての説明」
上記のとおり、PSD測距センサ2を用いて電圧変化量ΔVoから算出される距離変化量Δd をもとに測定対象物が動体か否かを判定する動体判別システムにおいて、動体しきい値Sthは、PSD測距センサ2の距離−出力電圧特性や外部デバイスの性能、外乱要因などを総合的に考慮したうえで設定する。すなわち、PSD測距センサ2の最小電圧変化量ΔVominと外部デバイスの電圧分解能ΔViと外乱要因による外乱電圧変動ΔVnから、静止物の検出時に発生しうる電圧変動の最大値(以下、「しきい値電圧ΔVth」と記す)を求め、つぎに、しきい値電圧ΔVthから静止物の検出時に発生しうる距離変動の最大値(以下、「しきい値距離Δdth」と記す)を求めることにより、動体しきい値Sthを設定する。
【0052】
具体的には、PSD測距センサ2の最小電圧変化量ΔVominと、外部増幅器有無により補正した外部デバイスの電圧分解能ΔViのうち、より大きいほうを選択し、それに外乱要因による外乱電圧変動ΔVnを加えたものをしきい値電圧ΔVthと定める。すなわち、ΔVth=ΔVomin+ΔVnまたはΔVth=ΔVi+ΔVnとなる。ここで、外乱電圧変動ΔVnは、外乱要因の影響がPSD測距センサ2および外部デバイスの何れについても同じであると考えて、同じ値に設定される。
【0053】
つぎに、しきい値電圧ΔVthをPSD測距センサ2のうち動体検出感度が最も低い個体における距離−出力電圧特性をもとに電圧−距離変換したものをしきい値距離Δdthと定める。すなわち、Δdth=Δdmin+ΔdnまたはΔdth=Δdi+Δdnとなる。これを測定距離Dごとに算出し、動体しきい値Sthを測定距離Dによらず常にSth>Δdthとなるように設定すればよい。
【0054】
なお、外乱要因の影響がPSD測距センサ2および外部デバイスについて同じでないような場合には、外乱電圧変動ΔVnは、PSD測距センサ2の最小電圧変化量ΔVominに加えるものと、外部デバイスの電圧分解能ΔViに加えるものとで異なる値に設定しても良い。例えば、PSD測距センサ2の最小電圧変化量ΔVominについての外乱電圧変動をΔVn1とし、外部デバイスの電圧分解能ΔViについての外乱電圧変動をΔVn2とし、しきい値電圧ΔVthを、ΔVth=ΔVomin+ΔVn1またはΔVth=ΔVi+ΔVn2で求めるようにしてもよい。
【0055】
「測定距離Dに応じた動体しきい値Sth設定」
図8に横軸に測定距離D、縦軸にしきい値距離Δdthをとったグラフを示す。PSD測距センサ2の距離−出力電圧特性は反比例の関係を有しているため、しきい値距離Δdthは測定距離Dが遠くなるほどに大きくなる。しきい値距離Δdthは動体判別システムの総合的な動体検出感度とみなすことができ、動体しきい値Sth は、測定距離Dによらず常にしきい値距離Δdth以上の値に設定する必要がある。
【0056】
一例として、図8を用いて動体しきい値Sth を段階的に設定した例(図8にSth2で示す)および動体しきい値Sth を連続的に設定した例(図8にSth1で示す)を示す。予め複数の測定距離範囲Rが定まっている場合は、各測定距離範囲R内におけるしきい値距離Δdthの最大値以上の動体しきい値Sthを段階的に設定すればよい。測定距離Dに応じて連続的に動体しきい値Sthを設定する場合は、図8に示すしきい値距離Δdthよりも常に大きくなるように曲線状(図8にSth1で示す)や直線状(図8にSth2で示す)にて連続的に設定すればよい。
【0057】
以上の動体しきい値Sth設定の流れを図18に示し、以下に動体判別システムの構成別に詳しく説明する。
【0058】
[理想的なPSD測距センサ2を無限の分解能をもった外部デバイスで検出する場合]
連続的な出力電圧Voをもち、かつ図3に示す理想的な距離−出力電圧特性をもつPSD測距センサ2を、無限の分解能とみなせる程度の高性能な外部デバイスで検出した場合には、PSD測距センサ2の連続的な出力電圧Voが連続性を保ったまま外部デバイスで検出されるため、離散性を考慮する必要はなく、動体しきい値Sthは外乱要因のみで決定される(図18のST5)。すなわち、最小電圧変化量ΔVomin=0、電圧分解能ΔVi=0、外乱電圧変動ΔVn>0であるから、しきい値電圧はΔVth=ΔVnと定まり、このしきい値電圧ΔVthから、PSD測距センサ2のうち動体検出感度が最も低い個体における距離−出力電圧特性をもとに電圧−距離変換した、しきい値距離Δdth=Δdnが測定距離Dごとに算出されるので、測定距離Dによらず常に動体しきい値SthがSth>Δdnとなるように設定すればよい(図18のST7)。
【0059】
[離散的なPSD測距センサ2を無限の分解能をもった外部デバイスで検出する場合]
離散的な出力電圧Vo をもち、かつ図4aに示す離散的な距離−出力電圧特性をもつPSD測距センサ2を、無限の分解能とみなせる程度の高性能な外部デバイスで検出した場合には、PSD測距センサ2の最小電圧変化量ΔVominを最小ステップとする離散的な出力電圧Voが離散性を保ったまま外部デバイスで検出されるため、動体しきい値SthはPSD測距センサ2の距離−出力電圧特性と外乱要因で決定される(図18のST1、ST5)。すなわち、最小電圧変化量ΔVomin>0、電圧分解能ΔVi=0、外乱電圧変動ΔVn>0であるから、しきい値電圧はΔVth=ΔVomin+ΔVnと定まり、このしきい値電圧ΔVthから、PSD測距センサ2のうち動体検出感度が最も低い個体における距離−出力電圧特性をもとに電圧−距離変換した、しきい値距離Δdth=Δdmin+Δdnが測定距離Dごとに算出されるので、測定距離Dによらず常に動体しきい値SthがSth>Δdthとなるように設定すればよい(図18のST7)。
【0060】
[理想的なPSD測距センサ2を有限の分解能をもった外部デバイスで検出する場合]
連続的な出力電圧Voをもち、かつ図3に示す理想的な距離−出力電圧特性をもつPSD測距センサ2を、有限の分解能をもった外部デバイスで検出した場合には、PSD測距センサ2の連続的な出力電圧Voが電圧分解能ΔViを最小ステップとする離散値として外部デバイスで検出されるため、動体しきい値Sthは外部デバイスの有限の分解能と外乱要因で決定される(図18のST2、ST5)。すなわち、最小電圧変化量ΔVomin=0、電圧分解能ΔVi>0、外乱電圧変動ΔVn>0であるから、しきい値電圧ΔVth=ΔVi+ΔVnと定まり、このしきい値電圧ΔVthから、PSD測距センサ2のうち動体検出感度が最も低い個体における距離−出力電圧特性をもとに電圧−距離変換したしきい値距離Δdth=Δdi+Δdnが測定距離Dごとに算出されるので、測定距離Dによらず常に動体しきい値SthがSth>Δdthとなるように設定すればよい(図18のST7)。
【0061】
[離散的なPSD測距センサ2を有限の分解能をもった外部デバイスで検出する場合]
離散的な出力電圧Vo をもち、かつ図4aに示す離散的な距離−出力電圧特性をもつPSD測距センサ2を、有限の分解能をもった外部デバイスで検出した場合には、図7に示すように、PSD測距センサ2の最小電圧変化量ΔVomin(図7において実線で示す)を最小ステップとする離散的な出力電圧Voが電圧分解能ΔVi(図7において破線で示す)を最小ステップとする離散値として外部デバイスで検出されるため、動体しきい値SthはPSD測距センサ2の距離−出力電圧特性と外部デバイスの有限の分解能と外乱要因で決定される(図18のST1、ST2、ST4、ST5)。すなわち、最小電圧変化量ΔVomin>0、電圧分解能ΔVi>0、外乱電圧変動ΔVn>0であるから、しきい値電圧ΔVthはΔVth=ΔVomin+ΔVnとΔVth=ΔVi+ΔVnの何れか大きいほうで定まり、このしきい値電圧ΔVthから、PSD測距センサ2のうち動体検出感度が最も低い個体における距離−出力電圧特性をもとに電圧−距離変換したしきい値距離Δdth=Δdmin+ΔdnまたはΔdth=Δdi+Δdnが測定距離Dごとに算出されるので、測定距離Dによらず常に動体しきい値SthがSth>Δdthとなるように設定すればよい(図18のST7)。
【0062】
なお、上記実施形態では、図7に示すように、離散的なPSD測距センサ2(最小電圧変化量ΔVomin)を有限の分解能(電圧分解能ΔVi)をもった外部デバイスで検出する場合に、最小電圧変化量ΔVominと電圧分解能ΔViの何れか大きいほうに外乱電圧変動ΔVnを加算したものを、しきい値電圧ΔVthとして定めることとしたが(すなわち、ΔVth=ΔVomin+ΔVnまたはΔVth=ΔVi+ΔVn)、これに限定されるものではない。
【0063】
例えば、最小電圧変化量ΔVominのほうが電圧分解能ΔViより大きい場合(ΔVomin>ΔVi)に、電圧分解能ΔViに基づいてΔVominの値を補正して、しきい値電圧ΔVthを決定するようにしてもよい。また、逆に、電圧分解能ΔViのほうが最小電圧変化量ΔVominより大きい場合(ΔVi>ΔVomin)に、最小電圧変化量ΔVominに基づいて電圧分解能ΔViの値を補正することで、しきい値電圧ΔVthを決定するようにしてもよい。
【0064】
上記補正処理について、図20を用いて具体的に説明する。なお、図20は、図7のような離散的なPSD測距センサ2(最小電圧変化量ΔVomin)を有限の分解能(電圧分解能ΔVi)をもった外部デバイスで検出する場合の距離−出力電圧特性を示すグラフにおいて、縦軸に相当する出力電圧Voの離散値毎にPSD測距センサ2および外部デバイスそれぞれについて目盛りをプロットした図である。
【0065】
最小電圧変化量ΔVominのほうが電圧分解能ΔViより大きい場合(ΔVomin>ΔViのとき)には、図20Bに示すように、最小電圧変化量ΔVominが上限値Vomin_1bと下限値Vomin_2bとの差で表されるときに、その上限値Vomin_1bに丸められる最大の電圧分解能Vi_1bと、下限値Vomin_2bに丸められる最小の電圧分解能Vi_2bの差をΔVomin'とし(このとき、結果としてΔVomin'>ΔVominとなる)、しきい値電圧をΔVth=ΔVomin'+ΔVnにより求めることができる。
【0066】
また、電圧分解能ΔViのほうが最小電圧変化量ΔVominより大きい場合(ΔVi>ΔVominのとき)には、図20Aに示すように、電圧分解能ΔViが上限値Vi_1aと下限値Vi_2aとの差で表されるときに、その上限値Vi_1aに丸められる最大の出力電圧Vomin_1aと、下限値Vi_2aに丸められる最小の出力電圧Vomin_2aの差をΔVi'とし(このとき、結果としてΔVi'>ΔViとなる)、しきい値電圧をΔVth=ΔVi'+ΔVnにより求めることができる。
【0067】
[動体しきい値Sth設定の具体的な実施例]
一例として、図9aおよびその拡大図である図9b、図10に示す最小電圧変化量ΔVomin=16[mV]のバラツキをもった3つの異なるPSD測距センサ2a、2b、2cの出力電圧Voを、増幅率A=2の外部増幅器によって増幅したうえで、電圧分解能ΔVi=13[mV]の外部デバイスを用いて検出した場合、図10に示す各測定距離D=30、50、80、120を境界とした3つの測定距離範囲R1、R2、R3(つまり、30[cm]≦R1<50[cm]、50[cm]≦R2<80[cm]、80[cm]≦R3<120[cm])について、これに対応する各動体しきい値S1、S2、S3の設定方法を示す。
【0068】
まず、最小電圧変化量ΔVomin=16[mV](図18のST1)に対し、電圧分解能ΔViを増幅率Aで補正すると、ΔVi/A=13[mV]/2=6.5[mV]と求まるので(図18のST2、ST3)、ΔVomin>ΔVi/Aとなる。したがって、便宜上、外乱電圧変動ΔVnが実測によりΔVn=14[mV]であったとすると(図18のST5)、しきい値電圧ΔVthはΔVth=ΔVomin+ΔVn=16[mV]+14[mV]=30[mV]と求まる(図18のST4)。
【0069】
つぎに、図10よりPSD測距センサ2a、2b、2cの同一の測定距離Dにおける最小距離変化量がΔdmin_a<Δdmin_b<Δdmin_cであることから、PSD測距センサ2cの動体検出感度が最も低いとわかるので、図19に示すようにPSD測距センサ2cの距離−出力電圧特性をもとに、上記で求めたしきい値電圧ΔVth(=30[mV])を電圧−距離変換してしきい値距離Δdthを測定距離Dごとに算出し、図8に示すような測定距離Dとしきい値距離Δdthの関係を導く(図18のST6)。
【0070】
図8のSth2に示すように、所定の測定距離範囲R1、R2、R3内におけるしきい値距離Δdthの最大値以上の動体しきい値Sth、例えば、それぞれS1=3.0[cm]、S2=7.5[cm]、S3=20.0[cm]と設定することによって、所定の各測定距離範囲RについてPSD測距センサ2a、2b、2cの何れを用いた場合にも測定対象物が動体か否かを判定することができる動体しきい値Sthが設定される(図18のST7)。
【0071】
なお、上記実施例とは逆に、予め動体しきい値Sth を段階的に設定しておき、つぎにかかる条件を満たすように測定距離範囲Rを設定することも可能である。例えば、動体しきい値Sth をS1=3.0[cm]、S2=7.5[cm]、S3=20.0[cm]の3段階に予め設定しておき、上記実施例と同じく図8に示すような測定距離Dとしきい値距離Δdthの関係を求め、しきい値距離Δdthが各動体しきい値S1、S2、S3以内となるような各測定距離範囲Rを設定すればよい。すなわち、動体しきい値S1=3.0に対応する測定距離範囲R1を、しきい値距離Δdthが3.0を超えない範囲の30[cm]≦R1<50[cm]に設定し、同様に、動体しきい値S2=7.5に対応する測定距離範囲R2を、しきい値距離Δdthが7.5を超えない範囲の50[cm]≦R2<80[cm]に設定し、動体しきい値S3=20.0に対応する測定距離範囲R3を、しきい値距離Δdthが20.0を超えない範囲の80[cm]≦R3<120[cm]に設定することによって、所定の各動体しきい値SthについてPSD測距センサ2a、2b、2cの何れを用いた場合にも測定対象物が動体か否かを判定することができる測定距離範囲Rが設定される。
【0072】
[動体判別機能付き電子機器のハードウェア構成]
図11は、この発明の動体判別機能付きモニタ装置100のハードウェア構成を示す図である。図11に示すように、動体判別機能付きモニタ装置100は、モニタ筐体の外部に取り付けられ、測定対象物までの距離を三角測量法により測定するPSD測距センサ2を備える。さらに、PSD測距センサ2から出力されたデータを変換するADC(Analog Digital Converter)3、モニタ筐体の内部基板に実装され測定対象物までの距離を算出するMPU4、モニタ6、外部PCとのデータ送受信を行う通信部8、メモリ12、電源ボタンなどのユーザーインターフェース14、タイマー16などの外部デバイス10を備えている。なお、外部デバイス10の性能は、前述のようにADC3(入力装置)とMPU4(演算装置)の組み合わせによって決まる。
【0073】
図11に示すようにメモリ12には、測定対象物が動体か否かの判定するための動体判定プログラム20の他、PSD測距センサ2の出力から距離を算出するための距離算出テーブル22(図2Bに示す距離−出力電圧特性グラフに相当するデータテーブル)、動体か否かの判定に用いられる各種データを備えた動体判定DB24等が記録される。
【0074】
図12は、動体判定DB24に記憶されるデータの例を示す図である。
【0075】
図12に示すように、動体判定DB24には、各ユーザー毎に、ユーザーID、測距値より算出される最大値Dmaxおよび最小値Dminの差で得られる変動値ΔD、測距値の最大値Dmaxおよび最小値Dmin、各測定距離範囲R1、R2、R3について予め設定される動体しきい値S1,S2,S3、およびその中から測定対象物までの距離に応じて決定される動体しきい値Sth、通常モードでPSD測距センサ2により測定したユーザーまでの距離を示す測距値である測定値Da(例えば、Da1〜Da5の5個)、所定数の測定値Daを平均することで算出される測距値である測定値Db(例えば、Db1〜Db3の3個)、省電力モードへの移行を示す省電力フラグF0、省電力モードで測定したユーザーまでの距離を示す測距値である測定値Da’(例えば、Da1’〜Da3’の3個)等の各種データが記憶されている。
【0076】
図12に示す測定値Db(Db1〜Db3)は、測定値Daが5回分溜まる毎に平均して得た値を過去3回分だけ蓄積したデータである。なお、測定値Dbは、FIFO(ファーストイン−ファーストアウト)方式で記憶される。よって、例えば、記憶される測定値Dbのデータが3個を超えると古いデータDb3が消去され、同時に測定値Db1、Db2のデータが測定値Db2、Db3に書き換えられる。
【0077】
測定値Da’(Da1’〜Da3’)は、省電力モードにおいてPSD測距センサ2で測定して得られる値を過去3回分だけ蓄積したデータである。省電力モードにおける測定値Da’は、FIFO(ファーストイン−ファーストアウト)方式で記憶される。
【0078】
図12に示す動体判定DBの省電力フラグF0には、省電力モードへ移行した場合に「1」が書き込まれ、通常モードでは「0」が書き込まれる。省電力フラグF0を参照することにより、現在、省電力モード、通常モードの何れのモードであるかを判断することができる。
【0079】
[動体判定プログラムが実行する処理]
動体判定プログラム20(図11)が実行するメイン処理のフローチャートを、図13に示す。
【0080】
図13に示すように、動体判定プログラム20は、まず、現在、通常モードにあるか省電力モードにあるかによって異なる所定周期(通常モードの場合には周期T、省電力モードの場合には周期Tといったように、各モードについて予め設定)毎にメイン処理を開始する(ステップS100)。
【0081】
具体的には、図12に示す省電力フラグF0に「0」が記憶されているときは、所定時間T毎にメイン処理を開始する。一方、動体判定DB24の省電力フラグF0に「1」が記憶されているときは、所定時間T毎にメイン処理を開始する。
【0082】
メイン処理を実行する周期T、Tは、例えば、通常モードの周期T=100m秒毎、省電力モードの周期T=1秒毎といったように、通常モードの周期Tよりも省電力モードの周期Tの方が長くなるように設定されるが、これは省電力モードでの消費電力を抑えるためである。
【0083】
さらに、現在のモードが通常モードか省電力モードか否かにより(ステップS200)、MPU4は、通常モードの場合には所定の周期的処理(ステップS1000)を実行し、省電力モードの場合には所定の周期的処理(ステップS2000)を実行することになる。
【0084】
[通常モードの周期的処理]
まず、図13に示す通常モードの周期的処理(図13のステップS1000)の詳細について、図14および図15に示すフローチャートを用いて説明する。
【0085】
まず、図11に示すMPU4は、PSD測距センサ2の出力に基づいて距離算出テーブル22を参照し、得られた測定値Daを動体判定DB24に記憶する(図14のステップS1001)。例えば、図12に示す直近の測距値Da1「67.2」が得られ、記憶される。
【0086】
測定値Daが所定数N、例えば5個溜まると(ステップS1002のYes)、その平均を算出して得た値を動体判定DB24に測定値Dbとして記憶し、測定値Daのデータは全て消去する(ステップS1003)。例えば、図12に示す測定値Da(1−5)の5つ分のデータ「67.2,・・・,76.1」の平均を算出して測定値Db1「69.2」が得られる。
【0087】
なお、ステップS1003では、測定値Dbを測定値Daのデータ5つが溜まる毎に算出することとしたが、測定値Daのデータが一個得られる各周期毎に(つまり、移動平均により)測定値Dbを算出してもよい。この場合、測定値DaのデータはFIFO方式で記憶され、周期毎に古いものから1つずつ消去されることになる。
【0088】
さらに、測定値Dbのデータが所定数N、例えば3個溜まるまで、通常モードの周期的処理を最初からループする(ステップS1004)。測定値Dbのデータが所定数N個溜まる(ステップS1004のYes)と、図15に示すように、検知した測定対象物が動体か否かを判断する動体判定処理に移る。
【0089】
動体判定においては、まず省電力判定DB24(図12)を参照することにより最も直近の測定値Db1が所定の範囲内にあるか否かが判定される(ステップS1301)。つまり、ユーザーまでの距離がr0未満で近すぎたり(例えば、r0=30[cm])、ユーザーまでの距離がr3以上で遠すぎると(例えば、r3=120[cm])、動体判定処理を行わずにタイマー16を0にリセットし(ステップS1308)、次の周期に移行する。これは、センサまでの距離が近すぎると図2Bに示すよう急激に出力電圧が増加するという特性により感度が著しく低下してしまい動体判定を正確に行うことが困難なためである。また、センサまでの距離が遠すぎるとユーザーが離席していると考えられるため直ちにスリープ状態とすればよく、動体か否かを判定する必要がないためである。
【0090】
MPU4は、最も直近の測定値Db1が所定の範囲(例えば、r0〜r3)内にあると判断した場合には(ステップS1301のYes)、図15に示すように、動体判定DB24から直近の測定値Dbのデータを所定数N、例えば3個だけ読み出し、その中から最大値と最小値を選定する(ステップS1302)。例えば、Db1、Db2、Db3の3つの測定値Dbを読み出し、それぞれの値が、図12に示すようにDb1=69.2[cm]、Db2=70.4[cm]、Db3=72.1[cm]の場合、Db3が最大値Dmaxとして選定され、Db1が最小値Dminとして選定される。
【0091】
さらに、MPU4は、選定した最大値Dmaxが、所定の測定距離範囲R1[r0以上〜r1未満]、R2[r1以上〜r2未満]、R3[r2以上〜r3未満](例えば、r0=30[cm]、r1=50[cm]、r2=80[cm]、r3=120[cm])の何れに属するかを判断する(ステップS1303)。
【0092】
その結果、最大値DmaxがR1[r0以上〜r1未満]の範囲にある場合は、S1(例えば、3.0[cm])を動体しきい値Sthに決定する(ステップS1304)。最大値がR2[r1以上〜r2未満]の範囲にある場合は、S2(例えば、7.5[cm])を動体しきい値に決定する(ステップS1305)。最大値がR3[r2以上〜r3未満]の範囲にある場合は、S3(例えば、20.0[cm])を動体しきい値に決定する(ステップS1306)。
【0093】
例えば、図12に示すように最大値Dmaxが「72.1」[cm]である場合、測定距離範囲R2内にあるため、動体しきい値SthはS2=7.5[cm]に選定される。なお、上記動体しきい値Sthの各値(S1、S2、S3)は、各測定距離範囲に対応する動体しきい値としてそれぞれ予め設定されている。このように、動体しきい値Sthが測定対象物までの距離に応じて段階的に設定されるのは、PSD測距センサの測定距離依存性を考慮したためである。
【0094】
MPU4は、動体しきい値Sthを決めた後、測定値Dbの最小値Dminと最大値Dmaxの差ΔDが動体しきい値Sth(S1、S2、S3より選定)より大きいか否かを判断する(ステップS1307)。
【0095】
測定値Dbの最小値Dminと最大値Dmaxの差が動体しきい値Sthより大きい(つまり、測定対象物に動きがある)場合には(ステップS1307のYes)、図15に示すように、タイマー16を0にリセットし(ステップS1308)、次周期へ移る。
【0096】
測定値Dbの最小値Dminと最大値Dmaxの差ΔDが動体しきい値Sth(S1、S2、S3)より大きくない(つまり、測定対象物に動きがない)場合には(ステップS1307のNo)、タイマー16をカウントアップする(ステップS1309)。
【0097】
例えば、図12に示すようにDb3「72.1」を最大値として選定し、Db1「69.2」を最小値として選定した場合、その差「2.9」[cm](=72.1−69.2)が選定された動体しきい値Sth(S2=7.5[cm])より小さいため、タイマー16がカウントアップされる。
【0098】
以降の周期的処理において、所定のタイムアウト時間t1、例えば45秒を経過しても測定値Dbの最小値Dminと最大値Dmaxの差が動体しきい値Sth(S1、S2、S3)より小さい場合(ステップS1311のYes)、MPU4は所定の時間ts秒だけパネルの輝度をダウンするよう制御する(ステップS1312)。
【0099】
さらに、所定のタイムアウト時間t2、例えば60秒(>t1)を経過しても測定値Dbの最小値Dminと最大値Dmaxの差が動体しきい値Sth(S1、S2、S3)よりも小さい場合には(ステップS1310のYes)、省電力フラグF0に「1」を書き込んで(ステップS1313)、省電力モードに移行することになる(図13のステップS100、S200、S2000)。
【0100】
以上のように、検知した測定対象物が静止物体であると判断された場合には、スリープ状態となって通常モードから省電力モードへ移行し、さらに後述する省電力モードの周期的処理において、スリープ状態からの復帰処理(図16)が行われる。
【0101】
[省電力モードの周期的処理]
つぎに、省電力モードに移行した際に行われる復帰処理について、図16を用いて以下に説明する。なお、図16は、省電力モードの周期的処理を示すフローチャートである。
【0102】
なお、省電力モードに移行した場合、動体判定DB24の省電力フラグF0には「1」が記憶されている。このため、図13に示すメイン処理において、MPU4(図11)は、現在、省電力モードであると判断して所定時間T毎に処理を開始し、これに基づいて、省電力モードの周期的処理(図13のステップS200、S2000)が実行されることになる。
【0103】
省電力モードの周期的処理では、まず、図16に示すように、PSD測距センサ2の出力から距離算出テーブル22(図11)を参照することにより、ユーザーまでの距離の測定値が取得され、得られた値が図12に示す動体判定DB24に測定値Da’として記憶される(ステップS2001)。なお、通常モードの周期的処理とは異なり、省電力モードの周期的処理では、消費電力を抑制するために測定値の平均(図12に示す測定値Daを平均した測定値Dbに相当するデータ)を算出していない。
【0104】
ユーザーまでの距離の測定値Da’(図16のステップ2001で取得)が所定数N、例えば3個以上溜まると(図16のステップS2201のYes)、MPU4は、直近の測定値Da’を所定数N(例えば、3個)読み出して、最大値と最小値をそれぞれ選定する(ステップS2203)。
【0105】
さらに、MPU4は、測定値Da’の最小値Dminと最大値Dmaxの差が所定の動体しきい値Sth’より大きいか否かを判断する(ステップS2204)。なお、省電力モードにおける所定の動体しきい値Sth’は、通常モードに移行した時の動体しきい値Sthの値をそのまま用いることができるが、その他の方法、例えば、図15に示す通常モードと同様の方法(ステップS1302〜S1306)により省電力モードにおける所定の動体しきい値Sth’を決定してもよい。
【0106】
測定値の最小値Dminと最大値Dmaxの差が所定の動体しきい値Sth’より大きい(つまり、測定対象物に動きがある)と判断された場合には(ステップS2204のYes)、省電力フラグF0に「0」を書き込んで(ステップS2205)、次の周期で通常モードに移行する(図13のステップS100、S200、S1000)。
【0107】
一方、測定値の最小値Dminと最大値Dmaxの差が所定の動体しきい値Sth’より大きくない(つまり、測定対象物に動きがない)と判断された場合には(ステップS2204のNo)、通常モードに移行せずに、次ループ(省電力モードの周期的処理)に移る。
【0108】
以上のように、省電力モードにおいてユーザーが動体である(静体でない)と判断された場合には、直ちに省電力モードから通常モードへ移行することになる。
【0109】
[その他の実施形態]
なお、上記実施形態では、測定値Dbの中から選定した最小値Dminと最大値Dmaxの差により得られる変動値ΔDを、動体しきい値Sthと比較することにより動体判定を行うこととしたが(図15に示すステップS1307)、これに限定されるものではなく、測定値Dbの前後(例えば、Db1〜Db2、Db2〜Db3、…、Dbn−1〜Dbnの間)における差をそれぞれ算出しておき、その中で差が最も大きいものを変動値ΔDとして動体しきい値Sthと比較することにより動体判定を行うようにしてもよい。
【0110】
なお、上記実施形態では、複数の測定値Dbの中から選定した最大値Dmaxに基づいて動体しきい値Sthを決定することとしたが(図15に示すステップS1303)、これに限定されるものではなく、測定値Dbの平均値や、測定値Dbの最小値に基づいて動体しきい値を決定するようにしてもよい。
【0111】
なお、上記実施形態では、図11に示すようにメモリ12に記憶した動体判定プログラム20による処理をモニタ装置100内部のMPU4などによって実行するようにしたが、図17に示すように外部モニタ206に接続したPC200のハードディスク13に動体判定プログラム20などを記憶しておき、PC200側のCPU5により動体判定プログラム20を実行するようにしてもよい。
【0112】
図17は、この発明の省電力制御PC200の具体的なハードウェア構成を示す図である。図17に示すように、外部のPSD測距センサ2および外部モニタ206に接続される省電力制御PC200は、CPU5、RAM13、モニタ6等とのデータ送受信を行う通信部8、ハードディスク13、キーボード/マウス15、タイマー16を備えている。なお、外部モニタ206とPC200とは、USBや専用ケーブル(DDC/CI規格)などの有線方式または無線方式でデータ交換可能に接続される。
【0113】
図17のハードディスク13には、図11に示すメモリ12と同様、外部モニタ206の省電力制御を行うための動体判定プログラム20、PSD測距センサ2からの出力に基づいて距離を算出するための距離算出テーブル22(図2Bに示す距離−出力電圧特性グラフに相当するデータテーブル)、測定対象物が動体か否かの判定に用いられるデータを記憶した動体判定DB24(図12)などが記録されている。
【0114】
また、上記実施形態では、モニタ装置100(図11)を省電力制御するようにしたが、図17に示す外部モニタ206に接続されるPC200を省電力制御するようにしてもよい。また、図17に示す外部モニタ206およびPC200の両方を省電力制御するようにしてもよい。
【0115】
なお、上記実施形態では、省電力制御を行う特別のモニタ装置100によって処理を行うこととしたが、汎用のモニタ装置に省電力制御を行うためのモジュールを接続して上記省電力制御を実現してもよい。
【0116】
なお、上記実施形態では、PSD測距センサ2をモニタ装置100の上部に設けたが、モニタ装置100の下部や左右に設けるようにしてもよい。または、上記実施形態では、PSD測距センサ2を1つだけ設けるようにしたが、複数設けるようにしてもよい。
【0117】
なお、上記実施形態では、動体判別機能を備えた電子機器としてモニタ装置100を例に説明したが、その他の電子機器の制御(例えば、トイレの流水制御、開蓋制御)のために動体判別機能を採用してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光素子から照射され、測定対象物で反射した光を受光して測定対象物までの距離に対応する電圧を出力するPSD測距センサと、
前記PSD測距センサからの出力を受けて、測定対象物までの距離を示す測距値を算出する測距値算出手段と、
測定対象物までの距離に対応して所定の測定距離範囲毎に予め設定される動体しきい値を記憶するための動体しきい値記憶手段と、
前記測距値より算出した変動値を前記動体しきい値と比較することにより、測定対象物が動体か否かを判定する動体判定手段と、
測定対象物が動体であるか否かの結果に基づいて、所定の処理を実行する処理実行手段と、
を備えた動体判別機能付き電子機器であって、
前記動体しきい値記憶手段に記憶される動体しきい値を、測定対象物までの距離が遠い場合には大きく、測定対象物までの距離が近い場合には小さくなるように、測定距離範囲毎に予め設定した、
ことを特徴とする動体判別機能付き電子機器。
【請求項2】
請求項1の動体判別機能付き電子機器において、
前記動体判定手段は、
前記測距値算出手段より得られる複数の測距値の中から最大値および最小値となるものをそれぞれ選定し、
前記測距値の最大値が予め設定された何れの測定距離範囲内にあるかを判断することにより、対応する所定の動体しきい値を決定し、
前記最大値と最小値の差が、前記所定の動体しきい値よりも大きい場合か否かを比較し、前記所定の動体しきい値よりも大きい場合に測定対象物が動体であると判定する、
ことを特徴とする動体判別機能付き電子機器。
【請求項3】
請求項1または請求項2の動体判別機能付き電子機器において、
前記動体しきい値記憶手段に記憶される前記動体しきい値を、前記PSD測距センサの離散的な出力特性に対応する最小距離変化量を算出することにより、測定距離範囲毎に予め設定した、
ことを特徴とする動体判別機能付き電子機器。
【請求項4】
請求項1または請求項2の動体判別機能付き電子機器において、
前記動体しきい値記憶手段に記憶される前記動体しきい値を、前記PSD測距センサの離散的な出力特性による最小電圧変化量、または前記測距値算出手段の性能による距離分解能のうち何れか大きい方に対応する動体しきい値を算出することにより、測定距離範囲毎に予め設定した、
ことを特徴とする動体判別機能付き電子機器。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかの動体判別機能付き電子機器において、
異なるPSD測距センサについて、所定位置での測距値を取得しておき、
前記所定位置に対応する測定距離範囲の動体しきい値を、前記異なるPSD測距センサのうち所定位置での最小距離変化量が最も大きくなるPSD測距センサの最小距離変化量に基づいて設定した、
ことを特徴とする動体判別機能付き電子機器。
【請求項6】
請求項1または請求項2の動体判別機能付き電子機器において、
予め段階的に設定した動体しきい値に基づいて、各測定距離範囲を決定した、
ことを特徴とする動体判別機能付き電子機器。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかの動体判別機能付き電子機器において、
前記処理実行手段が、
前記動体判定手段が測定対象物が動体でないと判断した場合に、電子機器の電源供給モードを通常モードから省電力モードに移行する処理を行い、
前記動体判定手段が測定対象物が動体であると判定した場合に、電子機器の電源供給モードを省電力モードから通常モードに移行する処理を行う、
ことを特徴とする動体判別機能付き電子機器。
【請求項8】
投光素子から照射され、測定対象物で反射した光を受光して測定対象物までの距離に対応する電圧を出力するPSD測距センサと、
前記PSD測距センサからの出力を受けて、測定対象物までの距離を示す測距値を算出する測距値算出手段と、
測定対象物までの距離に対応して所定の測定距離範囲毎に予め設定される動体しきい値を記憶するための動体しきい値記憶手段と、
前記測距値より算出した変動値を前記動体しきい値と比較することにより、測定対象物が動体か否かを判定する動体判定手段と、
測定対象物が動体であるか否かの結果を外部に出力する出力手段、
を備えた電子機器用の動体判別モジュールであって、
前記動体しきい値記憶手段に記憶される動体しきい値を、測定対象物までの距離が遠い場合には大きく、測定対象物までの距離が近い場合には小さくなるように、測定距離範囲毎に予め設定した、
ことを特徴とする電子機器用の動体判別モジュール。
【請求項9】
投光素子から照射され、測定対象物で反射した光を受光して測定対象物までの距離に対応する電圧を出力するPSD測距センサからの出力を受けて、測定対象物までの距離を示す測距値を算出する測距値算出ステップと、
測定対象物までの距離に対応して所定の測定距離範囲毎に予め設定される動体しきい値を記憶するための動体しきい値記憶ステップと、
前記測距値より算出した変動値を前記動体しきい値と比較することにより、測定対象物が動体か否かを判定する動体判定ステップと、
測定対象物が動体であるか否かの結果に基づいて、所定の処理を実行する処理実行ステップと、
を備えた動体判別方法であって、
前記動体しきい値記憶ステップで記憶される動体しきい値を、測定対象物までの距離が遠い場合には大きく、測定対象物までの距離が近い場合には小さくなるように、測定距離範囲毎に予め設定した、
ことを特徴とする動体判別方法。
【請求項10】
コンピュータを、
投光素子から照射され、測定対象物で反射した光を受光して測定対象物までの距離に対応する電圧を出力するPSD測距センサからの出力を受けて、測定対象物までの距離を示す測距値を算出する測距値算出手段と、
測定対象物までの距離に対応して所定の測定距離範囲毎に予め設定される動体しきい値を記憶するための動体しきい値記憶手段と、
前記測距値より算出した変動値を前記動体しきい値と比較することにより、測定対象物が動体か否かを判定する動体判定手段と、
測定対象物が動体であるか否かの結果に基づいて、所定の処理を実行する処理実行手段と、
として機能させるための動体判別プログラムであって、
前記動体しきい値記憶手段に記憶される動体しきい値を、測定対象物までの距離が遠い場合には大きく、測定対象物までの距離が近い場合には小さくなるように、測定距離範囲毎に予め設定した、
ことを特徴とする動体判別プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−47740(P2011−47740A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195337(P2009−195337)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(391010116)株式会社ナナオ (160)
【Fターム(参考)】