説明

動物の皮膚病を処置するための皮膚投与可能な製剤

本発明は、動物の皮膚病の皮膚処置用の、三環式化合物を含む医薬製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子を含む、動物の皮膚病を皮膚処置するための医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚病および他の疾患の処置に適するタクロリムスなどの免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子は、EP−A0184162に開示され、EP−A444659、EP−A−474126およびWO02/096419にも特定の医薬製剤に関して記載されている。ピメクロリムス(EP−A−427680参照)、シロリムス(ラパマイシンとも呼ばれる、US−P−3929992参照)およびアスクロリムス(ascrolimus)(WO93/04680参照)などの他の免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子は、原則として知られている。
【0003】
皮膚処置に適するこれらの三環式大環状分子の製剤は、同様に原則として知られている。例えば、出願EP−A−0315978は、タクロリムス含有エタノール性製剤を記載している。出願EP−A−0474126によると、吸収促進剤、溶媒および結合剤を含有する粘性の高い軟膏基剤中で、これらの化合物を製剤化することが可能である。加えて、出願WO99/55332およびWO94/28894は、上述の成分に加えて乳化剤および/または増粘剤も含む、様々な粘性の高いペースト状製剤を記載している。出願WO02/096419は、三環式活性化合物、炭酸プロピレンなどの炭酸塩、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールなどの脂肪性エーテル類、ミリスチン酸イソプロピルなどの長鎖脂肪酸モノエステル類、およびアジピン酸ジエチルなどのジエステル類、およびカルボキシビニルポリマーなどの重合性増粘剤を含有する、粘性の高いペースト剤を開示している。
【0004】
動物における皮膚使用のための、タクロリムスまたは他の免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子のスポットオン(spot-on)製剤は、今までに記載されていない。皮膚使用のための既知製剤は、動物の外被上で広がらず、従って大きい面積にわたって擦り込まなければならない場合があり、軟膏の残渣を残し、適用部位の動物の外被を粘つかせ、結果的に動物を便利かつ効果的に処置するのに適さないという欠点を有する。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、従って、タクロリムスなどの免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子を含み、動物における簡潔かつ効果的な皮膚適用を可能にする医薬を提供するという目的に基づく。
この目的は、免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子を含むスポットオン製剤を利用して達成される。
【0006】
本願の意味では、免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子は、特に、式(I)
【化1】

[式中、隣接するRとR、RとRおよびRとRの対は、独立して、
(a)2個の隣接する水素原子(ここで、Rはアルキル基であってもよい)、
(b)それらが結合している炭素原子間のさらなる結合;
であり、
は、水素原子、ヒドロキシル基、保護ヒドロキシル基またはアルコキシ基であるか、または、
は、Rと一体となって、オキソ基であり;
およびRは、相互に独立して、水素原子またはヒドロキシル基であり;
10は、水素原子、アルキル基、1個またはそれ以上のヒドロキシル基により置換されているアルキル基、アルケニル基、1個またはそれ以上のヒドロキシル基により置換されているアルケニル基、または、オキソ基により置換されているアルキル基であり;
Xは、オキソ基、2個の水素原子、水素原子とヒドロキシル基、または式−CHO−の基であり;
Yは、オキソ基、水素原子とヒドロキシル基、2個の水素原子、または、式N−NR1112もしくはN−OR13の基であり;
11およびR12は、相互に独立して、水素原子、アルキル基、アリール基またはトシル基であり;
13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22およびR23は、相互に独立して、水素原子またはアルキル基であり;
24は、1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有していてもよい、置換されていることもある環系であり;
nは、1または2であり、そして、
Y、R10およびR23は、上記の定義に加えて、それらが結合している炭素原子と一体となって、飽和または不飽和の5員または6員の窒素−、硫黄−および/または酸素−含有複素環式環であり、それは、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、ベンジル、式−CHSe(C)の基、および、1個またはそれ以上のヒドロキシル基により置換されているアルキルから選択される1個またはそれ以上の基により置換されていることもある]
の化合物である。
【0007】
本願の意味では、アルキル基およびアルコキシ基のアルキル部分は、特に、1個ないし6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族炭化水素ラジカル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ネオペンチルおよびヘキシルである。
【0008】
アルケニル基の好ましい例は、特に、1個ないし6個の炭素原子を含有し、少なくとも1個の二重結合を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族炭化水素ラジカル、例えば、ビニル、プロペニル(アリル基とも呼ばれる)、ブテニル、メチルプロペニル、ペンテニルおよびヘキセニルである。
【0009】
アリール基の好ましい例は、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、メシチルおよびナフチルである。
【0010】
ヒドロキシルおよびアミノ基に好ましい保護基は:1−(C1−6アルキルチオ)C1−6−アルキル基、例えばメチルチオメチル、エチルチオメチル、プロピルチオメチル、イソプロピルチオメチル、ブチルチオメチル、イソブチルチオメチル、ヘキシルチオメチルなどのC1−6アルキルチオメチル基である。
メチルチオメチル基は、ことさら特に好ましい。
【0011】
トリC1−6アルキルシリル(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、トリ−tert−ブチルシリルなど)またはC1−6アルキルジアリールシリル(例えば、メチルジフェニルシリル、エチルジフェニルシリル、プロピルジフェニルシリル、tert−ブチルジフェニルシリルなど)などの三置換シリル基にさらに言及し得る。好ましいのは、トリ−C1−4−アルキルシリル基およびC1−4−アルキルジフェニルシリル基、特にtert−ブチルジメチルシリル基およびtert−ブチルジフェニルシリル基である。
【0012】
好ましいのは、さらに、カルボン酸、スルホン酸またはカルバミン酸から誘導される、脂肪族、芳香族性アシル基、または芳香族性の基により置換されている脂肪族アシル基などのアシル基である。
【0013】
脂肪族アシル基の例は、必要に応じてカルボキシルラジカルなどの1個またはそれ以上の置換基を有するC1−6アルカノイル基(かかる基の例は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、カルボキシアセチル、カルボキシプロピオニル、カルボキシブチリル、カルボキシヘキサノイルなどである);必要に応じてC1−6アルキルなどの1個またはそれ以上の置換基を有するシクロ−C1−6−アルコキシ−C1−6−アルカノイル基(例は、シクロプロピルオキシアセチル、シクロブチルオキシプロピオニル、シクロヘプチルオキシブチリル、メンチルオキシアセチル、メンチルオキシプロピオニル、メンチルオキシブチリル、メンチルオキシペンタノイル、メンチルオキシヘキサノイルなどである);カルボキシルまたは保護カルボキシルなどの1個またはそれ以上の置換基を有するカンファースルホニル基またはC1−6−アルキルカルバモイル基{例は、カルボキシ−C1−6−アルキルカルバモイル(例えば、カルボキシメチルカルバモイル、カルボキシエチルカルバモイル、カルボキシプロピルカルバモイル、カルボキシブチルカルバモイル、カルボキシペンチルカルバモイル、カルボキシヘキシルカルバモイルなど)、トリ−C1−6−アルキルシリル−C1−6−アルコキシカルボニル−C1−6−アルキルカルバモイル基(例えば、トリメチルシリルメトキシカルボニルエチルカルバモイル、トリメチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、トリエチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、tert−ブチルジメチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、トリメチルシリルプロポキシカルボニルブチルカルバモイルなど)である}である。
【0014】
芳香族性アシル基の例は、なかんずく、必要に応じて、ニトロなどの1個またはそれ以上の置換基を有するアロイル基(例は、ベンゾイル、トルオイル、キシロイル、ナフトイル、ニトロベンゾイル、ジニトロベンゾイル、ニトロナフトイルなどである);必要に応じてハロゲンなどの1個またはそれ以上の置換基を有するアレーンスルホニル基(例は、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル、キシレンスルホニル、ナフタレンスルホニル、フルオロベンゼンスルホニル、クロロベンゼンスルホニル、ブロモベンゼンスルホニル、ヨードベンゼンスルホニルなどである)である;
【0015】
芳香族性の基により置換されている脂肪族アシル基の例は、なかんずく、必要に応じてC1−6アルコキシまたはトリハロゲノ−C1−6−アルキルなどの1個またはそれ以上の置換基を有するアリール−C1−6−アルカノイル基である。例は、フェニルアセチル、フェニルプロピオニル、フェニルブチリル、2−トリフルオロメチル−2−メトキシ−2−フェニルアセチル、2−エチル−2−トリフルオロメチル−2−フェニルアセチル、2−トリフルオロメチル−2−プロポキシ−2−フェニルアセチルなどである。
【0016】
上述のアシル基の中で、特に好ましいのは、必要に応じてカルボキシル置換基を有するC1−4−アルカノイル基、2個のC1−4アルキル置換基をシクロアルキルユニットに有するシクロ−C−C−アルコキシ−C1−4−アルカノイル基、カンファースルホニル基、カルボキシ−C1−4−アルキルカルバモイル基、トリ−C1−4−アルキルシリル−C1−4−アルコキシカルボニル−C1−4−アルキルカルバモイル基、必要に応じて1個または2個のニトロ基を有するベンゾイル基、ハロゲン置換されていることもあるベンゼンスルホニル基、または、C1−4−アルコキシ置換基により置換されていることもあるフェニル−C1−4−アルカノイル基、および、トリハロゲノ−C1−4−アルキル基である。ことさら特に好ましいのは、アセチル、カルボキシプロピオニル、メンチルオキシアセチル、カンファースルホニル、ベンゾイル、ニトロベンゾイル、ジニトロベンゾイル、ヨードベンゼンスルホニルおよび2−トリフルオロメチル−2−メトキシ−2−フェニルアセチルである。
【0017】
「5員または6員の窒素−、硫黄−および/または酸素含有複素環式環」の好ましい例は、ピロリル基およびテトラヒドロフリル基を含む。
【0018】
24は、1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有していてもよい、置換されていることもある環系である。R24は、好ましくは、必要に応じて適する置換基を有するシクロ−C5−7−アルキル基である。好ましい例を以下に示す:
(a)3,4−ジオキソシクロヘキシル基
(b)3−R20−4−R21−シクロヘキシル基
{式中、R20は、ヒドロキシル、アルコキシ、オキソ基または基−OCHOCHCHOCHであり、そして、R21は、ヒドロキシル、−OCN、アルコキシ基、置換されていることもあるヘテロアリールオキシ、1−または2−テトラゾリル、基−OCHOCHCHOCH、保護ヒドロキシル基、塩素、臭素、ヨウ素、アミノオキサリルオキシ、アジド基、p−トリルオキシチオカルボニルオキシまたはR2526CHCOO−(式中、R25は、保護されていることもあるヒドロキシルまたは保護アミノであり、そして、R26は、水素またはメチルである)であるか、または、R20およびR21は、一体となってエポキシド環中の酸素原子を形成している}、または、
(c)メトキシメチル、保護されていることもあるヒドロキシメチル、アシルオキシメチル(ここで、アシルユニットは、四級化されていることもあるジメチルアミノ基またはエステル化されていることもあるカルボキシル基を含有する)により、1個またはそれ以上の保護されていることもあるアミノおよび/またはヒドロキシル基により、または、アミノオキサリルオキシメチルにより置換されているシクロペンチル基。好ましい例は、2−ホルミルシクロペンチル基である。
【0019】
置換されていることもあるヘテロアリールオキシの置換されていることもあるヘテロアリールユニットは、EP−A−532,088からの化合物のRで特定されるものの1つであり得る。この文書を、出典明示により本明細書の一部とする;1−ヒドロキシエチルインドール−5−イルが好ましい。
【0020】
式(I)の化合物およびそれらの医薬的に許容され得る塩は、WO02/096419およびそこで引用されている文書で原則として開示されている。
【0021】
式(I)の化合物の代表例は、以下の式のタクロリムス(SK506)である。
【化2】

化学名:
17−アリル−1,14−ジヒドロキシ−12−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザトリシクロ−[22.3.1.04,9]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオン
【0022】
好ましい式(I)の化合物は、式中、
隣接する対の、RとRまたはRとRが、相互に独立して、それらが結合している炭素原子間のさらなる結合であり;
およびR23が、独立して水素原子であり;
がヒドロキシル基であり;
10が、メチル基、エチル基、プロピル基またはアリル基であり;
Xが、2個の水素原子またはオキソ基であり;
Yがオキソ基であり;
14、R15、R16、R17、R18、R19およびR22は、各場合でメチル基であり、
24は、3−R20−4−R21−シクロヘキシル基{式中、R20は、ヒドロキシル、アルコキシ基、オキソ基または基−OCHOCHCHOCHであり、そして、R21は、ヒドロキシル、−OCN、アルコキシ基、置換されていることもあるヘテロアリールオキシ、1−または2−テトラゾリル、基−OCHOCHCHOCH、保護ヒドロキシル基、塩素、臭素、ヨウ素、アミノオキサリルオキシ、アジド基、パラトリルオキシチオカルボニルオキシまたはR25−R26−CHCOO−(式中、R25は、保護されていることもあるヒドロキシルまたは保護アミノであり、そして、R26は、水素またはメチルである)であるか、または、R20およびR21は、一体となってエポキシド環中の酸素原子を形成している}であり、そして、
nが、1または2の整数である、
ものである。
【0023】
タクロリムスは別として、他の特に好ましい式(I)の化合物は、ハロゲン化アスコマイシン類、例えば、EP−A427680で実施例66として開示されている、ピメクロリムスと呼ばれる33−エピクロロ−33−デオキシアスコマイシンなどのアスコマイシン化合物である。
【0024】
ピメクロリムスは、以下の式を有する。
【化3】

【0025】
他の特に好ましい免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子は、式
【化4】

を有する化合物シロリムス(ラパマイシンとも呼ばれる、US−P−3,929,992参照)および、式
【化5】

を有する化合物アスクロリムス(WO93/04680)である。
【0026】
免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子は、それらの非毒性の医薬的に許容し得る塩の形態でも使用できる。適する塩は、有機および無機塩基との塩、特に、ナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、およびトリエチルアンモニウム塩およびN−ベンジル−N−メチルアミン塩などのアンモニウム塩である。
【0027】
上述の免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子は、不斉炭素原子または二重結合をベースとする光学および幾何異性体などの、異なる配座異性体および立体異性体の形態で存在できる。これらの配座異性体および異性体も、本発明に関して使用できる。免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子は、さらに、水和物またはエタノラート(ethanolate)などの、それらの溶媒和物の形態でも存在できる。これらの後者も、本発明に関して使用できる。
【0028】
必要に応じて、本発明による医薬は、免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子に加えて、さらなる適する医薬活性化合物も含み得る。
【0029】
動物の皮膚適用に適する製剤は、特に、均質かつ低粘性であるべきであり、良好に広がるべきである。自発的拡展性(spontaneous spreading behaviour)に加えて、かかる製剤は、非常に良好な活性、標的動物による耐容、恒温動物に対する低毒性および格別な長期安定性(例えば、スポットオン製剤に通例であり、0.5ないし6.0mlの容積を有する単回用量のプラスチックチューブ内で)も示すべきである。
【0030】
本発明による製剤の平均粘度は、3ないし12mPa.s、好ましくは4ないし7.5mPa.s、特に好ましくは4.5ないし6.5mPa.sである。
【0031】
原則として、全ての常套のスポットオン溶媒は、新規スポットオン製剤を製造するのに適する。言及し得る常套のスポットオン溶媒は、特に:イソプロパノール、エタノール、メタノール、オクタノールおよびベンジルアルコールなどの脂肪族および芳香族性アルコール類;炭酸プロピレンまたは炭酸エチレンなどの有機炭酸塩、N−メチルピロリドン、2−ピロリドンまたはオクチルピロリドンなどのピロリドン類、脂肪族エーテル類、特にジエチレングリコールモノメチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エステル類、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、およびソルケタール(solketal)などのケタール類である。当然、該溶媒に、常套の安定化剤、UV吸収剤、酸性化剤並びにオリゴマーおよびポリマーの拡展剤(spreading agent)を提供することができる。
【0032】
本発明は、さらに、特に、
(a)0.01ないし10重量%(全質量をベースとする)の免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子、
(b)5ないし32重量%(全質量をベースとする)の、環状炭酸塩、ベンジルアルコールおよびジメチルスルホキシド(DMSO)またはこれらの溶媒の混合物から選択される溶媒、
(c)50ないし75重量%(全質量をベースとする)のグリコールエーテル、
(d)0.01ないし0.75重量%(全質量をベースとする)のフェノール性抗酸化剤、
(e)0ないし7.5重量%(全質量をベースとする)のトリグリセリド類または二価アルコールのエステル類、
(f)0ないし7.5重量%の、水分誘引性、水分結合性の短鎖グリコール類
を含む医薬に関する。
【0033】
本発明による製剤は、0.01ないし10重量%、好ましくは0.1ないし5重量%、特に好ましくは、0.2ないし3.0重量%の、免疫抑制性三環式活性化合物を含む。必要に応じて、本発明による製剤は、さらなる活性化合物も含むことができる。
【0034】
(b)で挙げられる溶媒は、本発明による医薬中に5ないし32重量%、好ましくは7.5ないし25重量%、特に好ましくは15ないし25重量%の割合で存在する。
ある実施態様によると、関係している溶媒は、環状炭酸塩、特に炭酸プロピレンまたは炭酸エチレンである。
他の実施態様によると、用いる溶媒はベンジルアルコールである。
他の実施態様によると、用いる溶媒はジメチルスルホキシドである。
【0035】
他の実施態様によると、上述の溶媒の混合物、例えば、炭酸エチレン/ベンジルアルコールまたは炭酸プロピレン/ベンジルアルコールも、溶媒(b)として用いることができる。
溶媒混合物の場合、混合比は、通例、90:10ないし10:90、好ましくは80:20ないし20:80の範囲にある。
【0036】
(c)で挙げられる脂肪族エーテルは、通常、グリコールモノアルキルエーテル類またはグリコールジアルキルエーテル類である。グリコール部分は、エチレングリコールまたはプロピレングリコールから誘導できる;アルキルラジカルは、通常、1個ないし4個の炭素原子を含有する。言及し得る好ましい例は:ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテルである。脂肪族エーテルは、通例、50ないし75重量%、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも67.5重量%の量で医薬中に存在する。
【0037】
フェノール性抗酸化剤は、好ましくは、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)および/または、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)である。本発明による医薬で好ましいBHTおよび/またはBHAの量は、0.01ないし0.75重量%、特に好ましくは0.05ないし0.25重量%、ことさら特に好ましくは約0.1%である。
【0038】
(e)で挙げられるトリグリセリド類または二価アルコールのエステル類は、原則として、医薬補助物質として知られている。それらは、アルコール成分として、3個までの炭素原子を含有する二価または三価のアルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、または、トリグリセリド類の場合、グリセロールを含有する。エステルの酸成分は、6個ないし18個の炭素原子を含有し、直鎖または分枝鎖であり得、また一不飽和または多不飽和であり得る脂肪酸を含む。通例、6個ないし12個の炭素原子を含有する中鎖脂肪酸が好ましい。混合エステル類または他の異なるエステルタイプの混合物を使用することが可能である。適するトリグリセリド類の例は、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド類、またはカプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド類である。
【0039】
プロピレングリコールのカプリル酸および/またはカプリン酸(プロピレングリコールオクタノエートデカノエート)とのエステル類は、同様に好ましい。これらのエステル類は、Sasol Germany GmbH/Witten から、商品名 Miglyol 840(プロピレングリコールオクタノエートデカノエート、CAS No.68583−51−7)および Miglyol 812(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、CAS No.73398−61−5)で入手できる。それらのポリエチレンオキシド修飾、ポリプロピレンオキシド修飾および/または炭酸プロピレン修飾誘導体を使用することも可能である。
【0040】
8ないし40mPa.s、特に好ましくは26ないし35mPa.sの粘度(20℃)を有する低粘度エステル類を、本発明による医薬において好ましく用いる。
【0041】
(e)で挙げられるエステル類は、本発明による医薬中に、0ないし10重量%、好ましくは2.5ないし7.5重量%、特に好ましくは2.5ないし5重量%の量で存在する。
【0042】
数々の場合で、水分誘引性、水分結合性の短鎖グリコール類を、0−7.5重量%、好ましくは2.5ないし5重量%の量で、本発明による製剤に添加するのが望ましい。エチレングリコールおよびプロピレングリコールは、これらのグリコール類の例として用い得る。
【0043】
加えて、テルペン類、オレイン酸などの吸収促進剤、即ち、浸透増強剤と呼ばれるものを、本発明による製剤と混合し得る。吸収促進剤は、それ自体知られている。適する吸収促進剤の例は、例えば、教科書 R.C. Scott, R.H. Guy and J. Hadgraft Prediction of Percutaneous Penetration Methods, Measurements, Modelling Associate Editor SM Tittensor (1989)の199−230頁に載っており、これを出典明示により本明細書の一部とする。
【0044】
原則として、該新規製剤は、家庭用動物および生産用動物などの全動物の処置に適する。それらは、好ましくは、哺乳動物、特にネコおよびイヌなどの家庭用動物に使用する。ウマへの使用も好ましい。
【0045】
好ましく適用する新規製剤の量は、処置しようとする動物の体重に対し、0.025ないし0.25ml/kg、特に好ましくは0.05ないし0.1ml/kgである。
【0046】
該製剤は、皮膚病、特に、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、炎症性の皮膚病、外耳炎、中耳炎、天疱瘡、狼瘡および肛門周囲の瘻孔などの、原発的または二次的に免疫学的起源を有する皮膚病の処置に、非常に抜群に適している。
【0047】
いかなる活性化合物も含有しない組成物(「プラセボ製剤」と呼ばれるもの)を使用する予備実験は、動物の外被上での抜群の自発拡展性、標的動物による非常に良好な耐容、恒温動物における低毒性、容易な適用性、および全気候帯における、スポットオン適用に使用される単回用量のポリプロピレンチューブ中での非常に良好な長期安定性を示す。適するポリプロピレンチューブは、通常、0.5ないし6.0mlの容積および300ないし500μmの壁厚を有する。
【0048】
本発明による製剤を、常套の防爆性(non-explosion-proof)スポットオン充填装置で単回用量のプラスチックチューブに、困難なく分注することができると期待される。
【実施例】
【0049】
実施例
以下の実施例は、本発明による製剤の製造法を提案する。原則として、これらの製剤は、活性化合物タクロリムスを、所定の成分中、RT(室温)で撹拌することにより製造できる。
【0050】
実施例1
均質な製剤100.0mlは、以下のものからなる。
タクロリムス0.5g
炭酸プロピレン20.0g
ジエチレングリコールモノエチルエーテル76.84g
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(粘性の範囲(20℃)28ないし32mPa.s、商品名 Miglyol 812、Sasol Germany GmbH, D-58453 Witten より)5.4g
BHT(ブチルヒドロキシトルエン)0.1g
【0051】
実施例2
均質な製剤100.0mlは、以下のものからなる。
タクロリムス0.5g
ベンジルアルコール20.0g
ジエチレングリコールモノエチルエーテル74.48g
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(粘性の範囲(20℃)28ないし32mPa.s、商品名 Miglyol 812、Sasol Germany GmbH, D-58453 Wittenより)5.4g
BHT0.1g
【0052】
実施例3
均質な製剤100.0mlは、以下のものからなる。
タクロリムス0.5g
炭酸プロピレン20.0g
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル74.48g
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(粘性の範囲(20℃)28ないし32mPa.s、商品名 Miglyol 812、Sasol Germany GmbH, D-58453 Wittenより)5.4g
BHA0.1g
【0053】
実施例4
均質な製剤100.0mlは、以下のものからなる。
タクロリムス0.5ml
炭酸プロピレン/ベンジルアルコール(1:1)20.0ml
ジエチレングリコールモノエチルエーテル75.62ml
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(粘性の範囲(20℃)28ないし32Pa.s、モル質量約520、商品名 Miglyol 812、Sasol Germany GmbH, D-58453 Wittenより)5.4ml
BHA(ブチルヒドロキシアニソール)0.1ml
【0054】
実施例5
均質な製剤100.0mlは、以下のものからなる。
タクロリムス0.5ml
炭酸プロピレン20.0g
ジエチレングリコールモノエチルエーテル74.64g
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(粘性の範囲(20℃)27ないし30mPa.s、モル質量約520、商品名 Miglyol 810、Sasol Germany GmbH, D-58453 Wittenより)7.4g
BHA0.1g
【0055】
実施例6
均質な製剤100.0mlは、以下のものからなる。
タクロリムス0.5g
ベンジルアルコール20.0g
ジエチレングリコールモノエチルエーテル72.64g
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(粘性の範囲(20℃)27ないし30mPa.s、モル質量約520、商品名 Miglyol 810、Sasol Germany GmbH, D-58453 Wittenより)7.4g
BHA0.1g
【0056】
実施例7
均質な製剤100.0mlは、以下のものからなる。
タクロリムス1.5g
炭酸エチレン19.0g
ジエチレングリコールモノエチルエーテル77.68g
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(粘性の範囲(20℃)28ないし32mPa.s、商品名 Miglyol 812、Sasol Germany GmbH, D-58453 Witten より)5.4g
BHT0.1g
【0057】
実施例8
均質な製剤100.0mlは、以下のものからなる。
タクロリムス1.5g
炭酸プロピレン19.0g
ジエチレングリコールモノエチルエーテル69.64g
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(粘性の範囲(20℃)28ないし32mPa.s、商品名 Miglyol 812、Sasol Germany GmbH, D-58453 Witten より)5.4g
プロピレングリコール5.0g
BHT0.1g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子を含む、スポットオン適用のための医薬。
【請求項2】
(a)0.01ないし10重量%(全質量をベースとする)の免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子、
(b)5ないし32重量%(全質量をベースとする)の、環状炭酸塩、ベンジルアルコールおよびジメチルスルホキシド(DMSO)並びにこれらの溶媒の混合物から選択される溶媒、
(c)50ないし75重量%(全質量をベースとする)の脂肪族エーテル、
(d)0.01ないし0.75重量%(全質量をベースとする)のフェノール性抗酸化剤、
(e)0ないし7.5重量%(全質量をベースとする)のトリグリセリド類または二価アルコールのエステル類、
(f)0ないし7.5重量%の、水分誘引性、水分結合性の短鎖グリコール類
を含む医薬。
【請求項3】
タクロリムス、ピメクロリムス、シロリムスおよびアスクロリムスから選択される免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子を含む、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
タクロリムスを含む、請求項3に記載の医薬。
【請求項5】
炭酸エチレンを含む、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の医薬。
【請求項6】
炭酸プロピレンを含む、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の医薬。
【請求項7】
ジエチレングリコールモノエチルエーテルを含む、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の医薬。
【請求項8】
ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを含む、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の医薬。
【請求項9】
動物の皮膚病を制御するための、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の医薬の使用。
【請求項10】
動物の皮膚病を制御するためのスポットオン医薬を製造するための、免疫抑制性三環式ラクトン大環状分子の使用。

【公表番号】特表2008−513388(P2008−513388A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531634(P2007−531634)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009468
【国際公開番号】WO2006/029726
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】