説明

動物用シャンプー

【課題】動物用シャンプーを少ない工程にて安全に製造する技術を提供する。
【解決手段】動物用シャンプーは、オキシアルキレングリコール、洗浄剤、および溶剤を含んでおり、オキシアルキレングリコールは、1,2−アルキレングリコールの水酸基にアルキレンオキシドが付加および付加重合の少なくとも一方によって結合されており、水酸基に結合されたアルキレンオキシドのモル数の平均値が0.5〜5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用シャンプーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット等の愛玩動物とともに過ごすライフスタイルが増えており、愛玩動物に関する技術へのニーズも高まっている。例えば、愛玩動物を清潔に保つための動物用シャンプーの開発が行われている。
【0003】
一般に、動物用シャンプー内にて微生物が増殖することを防止する防腐効果を動物用シャンプーに付与するために、動物用シャンプーに防腐剤が添加される。一般的に使用される防腐剤は、パラオキシ安息香酸エステルである。
【0004】
また、動物用シャンプーは、飼い主の意に反して動く動物を適用対象としていることから、容器からの取り出しが容易であることや、取り出した後の扱いが簡便であることは、ヒト用シャンプーと異なり、動物用シャンプーに重要な性質である。動物用シャンプーは、その粘度が高過ぎると容器から取り出しにくい。一方、動物用シャンプーは、その粘度が低過ぎるとその扱いが容易とはいえず、容器から飼い主の手に取り出したシャンプーが、動物に適用される前にその手から零れ落ちてしまう。また、動物に適用された後であっても、動物用シャンプーが動物の身体から垂れ落ちたり、動物の目に入ったりしてしまう。このように、容器から容易に取り出したり、取り出した後に簡便に扱ったりするには、動物用シャンプーが適切な粘度を有していることが重要である。
【0005】
動物用シャンプーの粘度を適切な範囲に調整するために、動物用シャンプーに増粘剤が添加される。一般的に使用される増粘剤は、水溶性高分子である。また、ジオールにアルキレンオキシドを付加した「オキシアルキレン単位を有する化合物」が、増粘効果を有する化合物として知られている(特許文献1および2参照)。このオキシアルキレン単位を有する化合物は、適度な粘度を付与するために、外用組成物および液体洗浄剤組成物に添加されている(それぞれ特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−88063号公報(平成20年4月17日公開)
【特許文献2】特開2008−208323号公報(平成20年9月11日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、動物用シャンプーは、適切な防腐効果および適切な粘度を有している必要がある。しかし、単一の化合物によって、これらの効果が併せて奏される例はこれまでに知られていない。例えば、パラオキシ安息香酸エステルは防腐効果を有するものの、増粘効果を有していない。また、増粘剤としての水溶性高分子は、増粘効果を有しているものの、防腐効果を有していない。そもそも、パラオキシ安息香酸エステルおよび多くの水溶性高分子は粉体である。粉体は、周囲の湿度が高くなると取扱い性が悪化する。また、粉体の取扱い時には、粉立ちが起こったり、この粉立ちに起因する粉塵爆発が起こったりしないように、慎重を期す必要がある。
【0008】
防腐剤および増粘剤という異なる2つの成分が添加されなければならないため、動物用シャンプーの構成成分が多くなる。構成成分が多いと、製造過程における工程が煩雑になる。すなわち、製品に含まれる各成分を秤量したり、各成分を混合したりする回数が増加するため、シャンプーを構成する成分が多くなると、シャンプーを製造する工程が複雑になる。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、動物用シャンプーを少ない工程にて安全に製造する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、オキシアルキレン単位を有する特定の化合物が、増粘効果だけでなく防腐効果も有していることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
上述したように、特許文献1および2には、オキシアルキレン単位を有する化合物が、増粘効果を有していることが開示されている。しかし、増粘効果とともに防腐効果も有している特定の化合物が存在することは、特許文献1および2に開示も示唆もされていない。しかも、開示されている外用組成物および液体洗浄剤組成物に防腐効果を付与するために防腐剤が添加されているように、特許文献1および2には、オキシアルキレン単位を有する化合物の中に防腐効果を有しているものが存在するという技術思想が開示も示唆もされていない。
【0012】
すなわち、本発明に係る動物用シャンプーは、オキシアルキレングリコール、洗浄剤、および溶剤を含んでおり、オキシアルキレングリコールは、1,2−アルキレングリコールの水酸基にアルキレンオキシドが付加および付加重合の少なくとも一方によって結合されており、該水酸基に結合されたアルキレンオキシドのモル数の平均値が0.5〜5であることを特徴としている。
【0013】
また、本発明に係る動物用シャンプーにおいて、結合されたアルキレンオキシドのモル数の平均値は1〜3であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る動物用シャンプーにおいて、アルキレンオキシドはエチレンオキシドであることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る動物用シャンプーにおいて、1,2−アルキレングリコールが、1,2−オクチレングリコール、1,2−ノニレングリコール、1,2−デシレングリコール、1,2−ウンデシレングリコール、1,2−ドデシレングリコール、1,2−トリデシレングリコール、1,2−テトラデシレングリコール、1,2−ペンタデシレングリコール、および1,2−ヘキサデシレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、単一の化合物を用いて動物用シャンプーに防腐効果および増粘効果の両方を付与することができるので、動物用シャンプーを容易に製造することができる。しかも、上記化合物は、常温にて液状もしくはペースト状であるので、取扱いに困難性はない。すなわち、本発明は、安全に製造することができる動物用シャンプーを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る動物用シャンプーは、オキシアルキレングリコール、洗浄剤、および溶剤を公知の方法を用いて混合することによって製造することができる動物用シャンプーである。このオキシアルキレングリコールは、1,2−アルキレングリコールの水酸基にアルキレンオキシドが付加および付加重合の少なくとも一方によって結合されており、水酸基に結合されたアルキレンオキシドのモル数の平均値が0.5〜5である。
【0018】
本発明に用いられる「オキシアルキレングリコール」は、1,2−アルキレングリコールの水酸基にアルキレンオキシドを付加および付加重合の少なくとも一方によって結合することによって生成される化合物である。この付加反応および付加重合反応の少なくとも一方による生成物は単一種の化合物の集合として生成されるのではなく、通常、複数の化合物の集合(すなわち混合物)として生成される。すなわち、本明細書中で使用される場合、用語「オキシアルキレングリコール」は、1,2−アルキレングリコールとアルキレンオキシドとに基づく種々の反応生成物を含んだ混合物が意図される。
【0019】
1,2−アルキレングリコールは2つの水酸基を有しているので、上述したような混合物中に含まれるべき化合物としては、「1,2−アルキレングリコールの2つの水酸基のどちらか一方または両方に複数のアルキレンオキシドが付加重合したポリオキシアルキレングリコール」、「1,2−アルキレングリコールの2つの水酸基のどちらか一方または両方に1つのアルキレンオキシドが付加したオキシアルキレングリコール」、「1,2−アルキレングリコールの一方の水酸基に複数のアルキレンオキシドが付加重合し、他方の水酸基に1つのアルキレンオキシドが付加したポリオキシアルキレングリコール」などの反応生成物、「1,2−アルキレングリコールの水酸基にアルキレンオキシドが付加されていないもの(すなわち、1,2−アルキレングリコールそのもの)」が挙げられる。オキシアルキレングリコールは、通常、これらが任意に組み合わせられた混合物として使用される。
【0020】
用語「アルキレンオキシドのモル数」は、「オキシアルキレン単位を有する化合物」の骨格を成す1,2−アルキレングリコール1分子あたり付加および付加重合の少なくとも一方によって結合されているアルキレンオキシドのモル数が意図される。上述したように、「オキシアルキレングリコール」は、複数の化合物の集合であり、付加および付加重合の少なくとも一方によって結合されているアルキレンオキシドのモル数はそれぞれの化合物にて異なる。用語「アルキレンオキシドのモル数の平均値」は、混合物全体に含まれているアルキレンオキシドのモル数と、混合物全体に含まれている1,2−アルキレングリコールのモル数とによって規定されるものであり、具体的には、付加反応および付加重合反応の少なくとも一方に用いられたアルキレンオキシドのモル数の合計を、付加反応および付加重合反応の少なくとも一方に用いられた1,2−アルキレングリコールのモル数で除することによって得られる値を意味する(本明細書中において、「アルキレンオキシドの平均付加モル数」とも称する。)。
【0021】
このアルキレンオキシドの平均付加モル数が1に近づくほど、オキシアルキレングリコールの防腐効果は強くなる。このため、アルキレンオキシドの平均付加モル数は、例えば、0.5〜5であり、0.8〜3であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。
【0022】
1,2−アルキレングリコールは、直鎖状であってもよいし、分枝鎖状であってもよい。1,2−アルキレングリコールは、例えば、8〜16個の炭素を有する1,2−アルキレングリコールであり、具体的には、1,2−オクチレングリコール、1,2−ノニレングリコール、1,2−デシレングリコール、1,2−ウンデシレングリコール、1,2−ドデシレングリコール、1,2−トリデシレングリコール、1,2−テトラデシレングリコール、1,2−ペンタデシレングリコール、および1,2−ヘキサデシレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、1,2−ドデシレングリコールであることがより好ましい。
【0023】
アルキレンオキシドは、直鎖状であってもよいし、分枝鎖状であってもよい。アルキレンオキシドは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド、ヘキシレンオキシド等であり、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドであることが好ましく、エチレンオキシドであることがより好ましい。
【0024】
好適なオキシアルキレングリコールは、「1,2−アルキレングリコールが1,2−ドデシレングリコールであり、アルキレンオキシドがエチレンオキシドであり、エチレンオキシドの平均付加モル数が1である」ポリオキシエチレンドデシレングリコールである。
【0025】
このようなオキシアルキレングリコールは公知であり、例えば、前述のエチレンオキシドの平均付加モル数が1であるポリオキシエチレンドデシレングリコールは「ニューポールDDE-10」(三洋化成工業(株)社品)として入手することができる。
【0026】
アルキレンオキシドの平均付加モル数が上述した範囲内にあるオキシアルキレングリコールは、防腐効果だけでなく、増粘効果も発揮する。つまり、本発明に用いられるオキシアルキレングリコールは、防腐剤および増粘剤の両方の役割を果たす。このようなオキシアルキレングリコールを用いれば、動物用シャンプーの構成成分の数を減らすことができ、その結果、動物用シャンプーの製造をより単純にすることができる。また、本発明に用いられるオキシアルキレングリコールは、室温にて液状もしくはペースト状であるため、取扱い時の湿度や、粉立ちおよび粉塵爆発に留意する必要がないので、動物用シャンプーの製造をより安全なものにする。
【0027】
本発明に係る動物用シャンプーに含まれるオキシアルキレングリコールの量は、製造されるシャンプーの総質量を基準として、1〜5%であることが好ましく、2〜3%であることがより好ましい。この範囲内のオキシアルキレングリコールが含まれていれば、本発明に係る動物用シャンプーの適切な粘度および防腐効果を実現することができる。適切な粘度としては、東機産業社製B型粘度計(ロータNo.2)を用いて、30rpmもしくは12rpmにて測定した場合、200〜2000mPasであることが好ましく、300〜1500mPasであることがより好ましい。防腐効果は、防腐剤が含まれる製品中において、微生物の増殖を防止し製品の腐敗を抑制する程度のものである。動物用シャンプーがこのような防腐効果を有しているか否かは、例えば動物用シャンプーに微生物を接種し、その微生物が増殖するか否かを観察することによって調べることができる。
【0028】
本発明に係る動物用シャンプーに含まれる洗浄剤は、特に限定されず、公知の洗浄剤であればよい。洗浄剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、および両性界面活性剤が挙げられる。
【0029】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、およびラウロイル加水分解シルクナトリウム等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、塩化セチルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。両性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウロイル−β−アラニンナトリウム、β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等が挙げられる。
【0030】
本発明に係る動物用シャンプーに含まれるべき洗浄剤の量はその種類により異なるが、製造されるシャンプーの総質量を基準として、通常3〜40%であることが好ましく、5%〜30%であることがより好ましい。
【0031】
本発明に係る動物用シャンプーに含まれる溶剤は、特に限定されないが、水または親水性溶媒であり、洗浄剤等の個々の成分がこれらの溶媒で希釈された溶液である場合、その溶液に含まれる溶媒も含むものである。本発明に係る動物用シャンプーに含まれる溶剤(前記溶媒も含む)の量は、製造されるシャンプーの総質量を基準として、50〜95%であることが好ましく、60〜90%であることがより好ましい。
【0032】
また、本発明に係る動物用シャンプーは、上述したオキシアルキレングリコール、洗浄剤および溶剤以外の添加剤を目的に応じて任意に含んでいてもよい。
【0033】
添加剤としては、洗浄助剤、保湿剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、パール化剤、シリコーン剤、殺菌剤、殺虫剤、香料、植物エキス、着色剤等が挙げられる。洗浄助剤としては、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)、クエン酸塩、ホスホン酸塩等のキレート剤等が挙げられる。保湿剤としては、グリセリン、濃グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。pH調整剤としては、トリエタノールアミン、クエン酸等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン誘導体、p−アミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体等が挙げられる。パール化剤としては、ジステアリン酸エチレングリコールが挙げられる。シリコーン剤としては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。殺虫剤としては、アレスリン、フェノトリン、ピレトリン、エトフェンプロックス等が挙げられる。殺菌剤としては、サリチル酸、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、クロルキシレノール等が挙げられる。植物エキスとしては、カンゾウ抽出末、アロエエキス、およびカワラヨモギエキス等が挙げられる。着色剤としては、タール系色素等が挙げられる。
【0034】
本発明に係る動物用シャンプーが添加剤を含んでいる場合、含まれるべき添加剤の総量は、製造されるシャンプーの総質量を基準として、20%以下である。
【0035】
本発明に係る動物用シャンプーのpHは、特に限定されないが、動物に対する安全性の面から4〜9であることが好ましい。
【0036】
本発明に係る動物用シャンプーの剤型は、特に限定されず例えば、液状、ジェル状、クリーム状等の目的に応じた剤型にすることができる。本発明に係る動物用シャンプーが充填される容器としては、ボトル、ポンプ付き容器、チューブ、ポンプフォーマー等が挙げられる。
【0037】
なお、本発明は、本発明に係る動物用シャンプーを構成する成分が一物質中に含まれている態様(すなわち組成物)として提供されることが好ましいが、分離されたこれらの成分を一纏めに梱包した態様(すなわちキット)として提供されてもよい。本発明に係るキットは、オキシアルキレングリコール、洗浄剤、および溶剤を備えていればよく、これらは別々の容器に充填されていてもよいし、同じ容器に充填されていてもよい。
【0038】
本発明に係る動物用シャンプーは、非ヒト動物に適用されることが意図される。すなわち、特に言及されない場合、本明細書中で使用される場合、用語「動物」は「非ヒト動物」が意図される。「非ヒト動物」としては、例えば、ヒトを除く哺乳類、および鳥類を挙げることができる。ヒトを除く哺乳類としては、特に限定されるものではなく、例えば、ウシ、イノシシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等の偶蹄類、ウマ等の奇蹄類、マウス、ラット、ハムスター、リス等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、イヌ、ネコ、フェレット等の食肉類等を挙げることができる。また、鳥類としては、特に限定されるものではなく、例えば、アヒル、ニワトリ、ハト、インコ等を挙げることができる。また、これらの非ヒト動物は、家畜またはコンパニオンアニマル(愛玩動物)であることに限定されるものではなく、野生動物であってもよい。また、好適な実施形態において、本発明に係る動物用シャンプーは、小動物に適用されるが、本発明に係る動物用シャンプーが適用される非ヒト動物は、小動物〜大動物のいずれであってもよい。ここで、「小動物」とは、例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、ニワトリ、ハムスター、フェレット等のような動物が意図され、「大動物」とは、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等のような動物が意図される。
【0039】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0041】
まず、本発明に係る動物用シャンプーの製剤例、または比較製剤例(比較例)を示す。なお、これらの例にて示されているポリオキシエチレンドデシレングリコールにおいて、エチレンオキシドの平均付加モル数が1である三洋化成工業社製「ニューポールDDE-10」を使用した。
【0042】
尚、下記製造例における%とは、質量%を表す。
【0043】
〔製造例1〕
表1に示す配合量になるように、ポリオキシエチレンドデシレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(25%溶液)(三洋化成工業(株))、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(29%溶液)(三洋化成工業(株))、濃グリセリン(花王ケミカル(株))、および水を混合して、動物用シャンプーを調製した。
【0044】
〔製造例2〕
製造例1と同様に、表1に示す配合量になるように、ポリオキシエチレンドデシレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(25%溶液)、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム(30%溶液)、ラウリン酸アミドプロピルベタイン液(30%溶液)、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ジステアリン酸エチレングリコール、グリセリン、クエン酸、アロエエキス、カワラヨモギエキス、香料、および水を混合して動物用シャンプーを調製した。
【0045】
〔製造例3〕
製造例1と同様に、表1に示す配合量になるように、ポリオキシエチレンドデシレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(25%溶液)、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン液(30%溶液)、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリン酸アミドプロピルベタイン液(30%溶液)、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、濃グリセリン、クエン酸、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン(40%溶液)、香料、および水を混合して動物用シャンプーを調製した。
【0046】
〔製造例4〕
製造例1と同様に、表1に示す配合量になるように、ポリオキシエチレンドデシレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(28%溶液)、ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム(30%溶液)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(30%溶液)、ラウリン酸アミドプロピルベタイン液(30%溶液)、ジステアリン酸エチレングリコール、ラウロイル加水分解シルクナトリウム液(20%溶液)、濃グリセリン、クエン酸および水を混合して動物用シャンプーを調製した。
【0047】
〔製造例5〕
製造例1と同様に表1に示す配合量になるように、ポリオキシエチレンドデシレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(28%溶液)、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン液(30%溶液)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(30%溶液)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液(29%溶液)、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、濃グリセリン、クエン酸、アレスリン、香料および水を混合して動物用シャンプーを調製した。
【0048】
〔比較例1〕
ポリオキシエチレンドデシレングリコールの代わりにパラオキシ安息香酸メチル(上野製薬社)を使用したことを除いて、製造例1と同様に表1に示す配合量になるように動物用シャンプーを調製した。
【0049】
〔比較例2〕
ポリオキシエチレンドデシレングリコールの代わりに精製水を使用したことを除いて、製造例1と同様に表1に示す配合量になるように動物用シャンプーを調製した。
【0050】
【表1】

【0051】
〔製造例と比較例との対比〕
製造例1で調整した動物用シャンプーの粘度を、東機産業社製B型粘時計(ロータNo.2)を用いて、30rpmまたは12rpmで25℃にて測定した。測定された粘度は1190(mPas)であり、動物用シャンプーとして適切な粘度を有していることが分かった。同様に、比較例1および2にて調整した動物用シャンプーについての粘度を測定したところ、それぞれ、20(mPas)および4(mPas)であった。
【0052】
製造例1で調整した動物用シャンプーの防腐効果を以下のようにして調べた。すなわち、寒天培地入りのシャーレの蓋を開けた状態で3時間放置し、その後蓋を閉めて25℃、湿度98%環境下で落下細菌を培養した。次いで、同一と考えられる菌について、菌糸が伸長した状態が同様の菌を菌糸の先端を含むように寒天培地を5×5mmに切り取った。これとは別に作製した寒天培地上に製造例1にて調製した動物用シャンプーを1g塗布し、寒天培地の表面全体に広げた。その後、この寒天培地内に、先程の5×5mmに切り取った供試菌を含む寒天培地を1片接種した。
【0053】
接種後、前述の培養条件にて2日間培養し、菌の増殖状態を肉眼で観察した。目視観察による菌の増殖結果は以下の通り3段階で確定した。
【0054】
+:明らかに菌の増殖が認められた。
【0055】
±:わずかに菌の増殖が認められた。
【0056】
−:菌の増殖は認められなかった。
【0057】
表2に示すように、製造例1にて調製した動物用シャンプーを用いた場合、菌の増殖は認められなかった。この結果から、製造例1にて調製した動物用シャンプーの防腐効果が認められ、本動物用シャンプーは十分な防腐効果を有していることが分かった。また、比較例1にて調整した動物用シャンプーの防腐効果を製造例1にて調整した動物用シャンプーの場合と同様にして調べたところ、防腐効果が認められた。また、比較例2にて調整した動物用シャンプーの防腐効果を製造例1にて調整した動物用シャンプーの場合と同様にして調べたところ、防腐効果は発揮されなかった。
【0058】
製造例1、比較例1および2にて調整した動物用シャンプーの粘度および、菌の増殖の結果、および防腐効果を下記表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
製造例1は、比較例1に用いられているパラオキシ安息香酸メチルの代わりに、同量のポリオキシエチレンドデシレングリコールが用いられている。比較例1における粘度は製造例1における粘度よりも顕著に低い。このように、ポリオキシエチレンドデシレングリコールは増粘効果を有しているが、パラオキシ安息香酸メチルは増粘効果を有しているとはいえない。
【0061】
比較例2は、製造例1のポリオキシエチレンドデシレングリコールが用いられておらず、その分量を精製水が置き換えている。両者の比較から製造例1のみにおいて防腐効果が発揮されていることがわかる。このように、ポリオキシエチレンドデシレングリコールは防腐効果を有している。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、動物の体表(体毛を含む。)を洗浄することによって動物を清潔に保つこと等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシアルキレングリコール、洗浄剤、および溶剤を含んでいる動物用シャンプーであって、該オキシアルキレングリコールは、1,2−アルキレングリコールの水酸基にアルキレンオキシドが付加および付加重合の少なくとも一方によって結合されており、該水酸基に結合された該アルキレンオキシドのモル数の平均値が0.5〜5であることを特徴とする動物用シャンプー。
【請求項2】
前記平均値が1〜3であることを特徴とする請求項1に記載の動物用シャンプー。
【請求項3】
前記アルキレンオキシドがエチレンオキシドであることを特徴とする請求項1または2に記載の動物用シャンプー。
【請求項4】
前記1,2−アルキレングリコールが、1,2−オクチレングリコール、1,2−ノニレングリコール、1,2−デシレングリコール、1,2−ウンデシレングリコール、1,2−ドデシレングリコール、1,2−トリデシレングリコール、1,2−テトラデシレングリコール、1,2−ペンタデシレングリコール、および1,2−ヘキサデシレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の動物用シャンプー。

【公開番号】特開2012−46455(P2012−46455A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191188(P2010−191188)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(390000527)住化ライフテク株式会社 (54)
【Fターム(参考)】