説明

動物用洗浄組成物

【課題】使用中の泡立ちが良好で、使用後の動物の感触、特にドライ後のなめらかさ、ブラッシングのし易さに優れ、且つ皮膚刺激が低い動物用洗浄組成物を提供する。
【解決手段】下記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体を0.1〜20質量%と、アニオン性界面活性剤を2〜30質量%と、両性界面活性剤を1〜30質量%とを含有していることを特徴とする。
(化1)
Y−[O(EO)−(AO)−(EO)−R] (I)
(式中、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基、kは前記多価アルコールの水酸基数、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基でそれぞれブロック状に付加されている。a×k、b×kおよびc×kはそれぞれオキシエチレン基、炭素数3〜6のオキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、0≦a×k≦100、1≦b×k≦100、0≦c×k≦100、ただし(a+c)×k>1である。オキシエチレン基と炭素数3〜6のオキシアルキレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、10〜80質量%である。Rは炭素数1〜4の炭化水素基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動物用洗浄組成物、特にその有効成分としてブロック型アルキレンオキシド誘導体を含む基剤の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
犬や猫を代表とする動物はペットとして昔から可愛いがられてきたが、近年ますますその傾向は高くなってきている。ペットが快適な生活を送れるよう、以前よりも室内で飼われる場合が多くなり、飼い主と接触する機会が多くなっている。そのため、より清潔に保つ必要性が高まっており、ペット用の洗浄料、特にシャンプーのニーズが高まっている。
【0003】
犬や猫等のペットをシャンプーする場合、いくつか注意すべき課題がある。一つは、ペットは水を嫌うことから出来るだけ短時間で行なわなければならない。そのため優れた洗浄力や泡立ちを有する洗浄組成物が望まれている。
二つ目として、近年特に、シャンプー後の毛の感触が重視されるようになってきている。そのため感触、特にドライ後のなめらかさ、ブラッシングのし易い(毛がからまないこと)洗浄組成物が望まれている。
三つ目として、ペットの中でも特に犬は皮膚疾患にかかりやすいため、洗浄した後でも皮膚が乾燥しないような、マイルドな洗浄組成物が望まれていた。
【0004】
これらの解決手段として、界面活性剤、酵素および微生物などを配合したペット用洗浄剤(例えば、特許文献1)、皮膚疾患の治癒を目的とした薬用シャンプー(例えば、特許文献2)が提案されている。しかしながらそれらの効果は十分満足いくものではなかった。さらにグリセリン脂肪酸エステルなど使用した、ペットにとって安全性の高い洗浄剤も提案されている(例えば、特許文献3)。しかし従来の動物用シャンプーで洗浄した場合、洗浄後皮膚が乾燥し、赤みや痒みが出てくるといった欠点があった。これは一般的に人間よりも動物の方が外気に触れる機会や地面などに擦りつける機会が多いためと考えられる。
【0005】
皮膚刺激性が低く、使用感触も良好な直鎖型ポリアルキレンオキシドジアルキルエーテル誘導体を配合した提案もされている(例えば、特許文献4)。しかしこれらの提案では使用感触、皮膚に対する刺激性の緩和には優れているものの、若干毛がからむため、ブラッシングしにくい傾向にあり、必ずしも満足のいく効果が得られてはいなかった。
【0006】
また動物用洗浄組成物を作成する場合には、基剤の安定性向上のため、および洗浄力向上のために、通常、界面活性剤が配合されている。界面活性剤の配合効果は、相当量の配合によって基剤の安定性および洗浄力を向上させるものの、使用感触の悪化の一因となる場合があった。界面活性剤の配合量を減量すれば、基剤の安定性および洗浄力が悪化する傾向にあり、安定性、洗浄力と使用感触を両立させることは、界面活性剤配合時の課題の一つである。
【0007】
【特許文献1】特開平3−192200号公報
【特許文献2】特開平11−193098号公報
【特許文献3】特開2001−251985号公報
【特許文献4】特開2004−292701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題に鑑みなされたもので、その目的は、使用中の泡立ちが良好で、使用後の動物の感触、特にドライ後のなめらかさ、ブラッシングのし易さに優れ、且つ皮膚刺激が低い動物用洗浄組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、特定のブロック型アルキレンオキシド誘導体を、陰イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤とともに用いることにより、使用中の泡立ちが良好で、使用後の動物の感触、特にドライ後のなめらかさ、ブラッシングのし易さに優れ、且つ皮膚刺激が低いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る動物用洗浄組成物は、式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体を0.1〜20質量%と、アニオン性界面活性剤を2〜30質量%と、両性界面活性剤を1〜30質量%とを含有していることを特徴とする。
(化1)
Y−[O(EO)−(AO)−(EO)−R] (I)
(式中、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基、kは前記多価アルコールの水酸基数、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基でそれぞれブロック状に付加されている。a×k、b×kおよびc×kはそれぞれオキシエチレン基、炭素数3〜6のオキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、0≦a×k≦100、1≦b×k≦100、0≦c×k≦100、ただし(a+c)×k>1である。オキシエチレン基と炭素数3〜6のオキシアルキレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、10〜80質量%である。Rは炭素数1〜4の炭化水素基である。)
【0011】
また、前記動物用洗浄組成物は、前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、AOがオキシブチレン基であることが好適である。
【0012】
また、前記動物用洗浄組成物は、前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、aが0であることが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の動物用洗浄組成物は、使用中の泡立ちが良好で、使用後の動物の感触、特にドライ後のなめらかさ、ブラッシングのし易さに優れ、且つ動物に対する皮膚刺激性が低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
<ブロック型アルキレンオキシド誘導体>
本発明にかかる動物用洗浄組成物は、下記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体を含むものである。
(化2)
Y−[O(EO)a−(AO)b−(EO)c−R]k (I)
【0015】
上記式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体において、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基であり、kは前記多価アルコールの水酸基数であり3〜6である。
3〜6個の水酸基を有する多価アルコールとしては、例えばk=3であるグリセリン、トリメチロールプロパン、k=4であるエリスリトール、ペンタエリスリトール、k=5であるキシリトール、k=6であるソルビトール、イノシトールが挙げられる。本発明にかかる動物用洗浄組成物に配合されるブロック型アルキレンオキシド誘導体は、前記の3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの1種または2種以上の混合物の水酸基を除いた残基を基本骨格とする。
すなわち、本発明にかかる動物用洗浄組成物に配合されるブロック型アルキレンオキシド誘導体は、前記の3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの1種又は2種以上の混合物の水酸基を除いた残基を基本骨格とする。
本発明において、特に、Yが3〜4個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基であることがより好ましく、すなわち、3≦k≦4を満たすことが好適である。kが2以下であると、動物用洗浄組成物に配合した場合にブラッシングのし易さが劣る傾向にあり、kが7以上であると洗浄後の毛のなめらかさに劣る傾向にある。
【0016】
EOは、オキシエチレン基である。AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基であり、具体的には、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシt−ブチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシペンチレン基、オキシヘキシレン基などが挙げられる。好ましくは、オキシプロピレン基、オキシブチレン基であり、さらに好ましくはオキシブチレン基である。また、AOは1種又は2種以上を用いることができる。
【0017】
b×kはAOの平均付加モル数であり、1≦b×k≦100、好ましくは3≦b×k≦70、より好ましくは5≦b×k≦50である。a×k及びc×kはEOの平均付加モル数であり、0≦a×k≦100、0≦c×k≦100である。a×kとして、好ましくは0≦a×k≦70、より好ましくは0≦a×k≦50である。また、c×kとして、好ましくは3≦c×k≦70、より好ましくは5≦c×k≦50である。また、前記式(I)中の全オキシエチレン基の平均付加モル数(a+c)×kは、1より大きく、好ましい範囲は、1<(a+c)×k≦200であり、さらに好ましくは6≦(a+c)×k≦140である。AOは本発明にかかるブロック型アルキレンオキシド誘導体において疎水性部位となり、b×kが0であると、動物用洗浄組成物に配合した場合に洗浄乾燥後の毛のなめらかさ、洗浄効果、ブラッシングのしやすさ劣る傾向にあり、100を越えると使用後になめらか感に劣る傾向がある。また、(a+c)×kが0であると、動物用洗浄組成物に配合した場合に洗浄中の泡立ち、洗浄乾燥後の毛のなめらかさに劣る傾向にあり、100を越えると洗浄乾燥後の毛のなめらかさに劣る傾向にある。
【0018】
前記式(I)中のAOとEOの合計に対する前記式(I)中の全EOの割合は10〜80質量%であり、さらに好ましくは20〜70質量%である。前記割合が10質量%より小さいと使用後になめらか感に劣る傾向にあり、80質量%より大きいと洗浄乾燥後の毛のなめらかさに劣る傾向にある。
また、AOとEOの付加形態はブロック状であり、付加順序は式中のYに対して、(AO)−(EO)の順、(EO)−(AO)の順、(EO)−(AO)−(EO)の順のいずれであってもよい。本発明においては、式中のYに対して(AO)−(EO)の順であることが特に好ましい。式中のYに対して(AO)−(EO)の順となる場合、式中のaは0であることが特に好ましい。
【0019】
前記式(I)において、Rは炭素数1〜4の炭化水素基であり、このような炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。本発明においては特にメチル基、エチル基であることが好ましい。炭素数が5より大きいと、使用後の乾燥時になめらか感に劣る傾向にある。また、Rが水素原子であると、洗浄乾燥後の毛のなめらかさや洗浄効果に劣るため好ましくない。
また、本発明にかかる動物用洗浄組成物に配合されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、Rは1分子中、同一であっても又は異なっていてもよく、1分子中において同一のRを有するブロック型アルキレンオキシド誘導体1種、または異なるRを有する2種以上の混合物であってもよい。
【0020】
本発明にかかる動物用洗浄組成物に配合されるアルキレンオキシド誘導体としては、具体的にはPOB(30)POE(30)グリセリルトリメチルエーテル、POB(30)POE(35)グリセリルトリメチルエーテル、POB(17)POE(28)グリセリルトリメチルエーテル、POB(27)POE(45)グリセリルトリメチルエーテル、POB(14)POE(34)グリセリルトリメチルエーテル、POB(22)POE(55)グリセリルトリメチルエーテル、POB(19)POE(55)グリセリルトリメチルエーテル、POB(40)POE(80)グリセリルトリメチルエーテル、POB(80)POE(40)グリセリルトリメチルエーテル、POB(30)POE(30)グリセリルトリエチルエーテル、POB(30)POE(35)グリセリルトリエチルエーテル、POB(14)POE(34)グリセリルトリエチルエーテル、POB(30)POE(30)グリセリルトリプロピルエーテル、POE(30)POP(30)グリセリルトリメチルエーテル、POE(35)POP(40)グリセリルトリメチルエーテル、POE(41)POP(48)グリセリルトリメチルエーテル等が挙げられる。
なお、上記POE、POP、POBは、それぞれポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンの略であり、以下、このように略して記載することがある。
【0021】
本発明にかかる動物用洗浄組成物に配合されるブロック型アルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を有している多価アルコールに対して、エチレンオキシドおよび炭素数3〜6のアルキレンオキシドを付加重合した後、ハロゲン化アルキルをアルカリ触媒の存在下にエーテル反応させることによって得られる。
【0022】
本発明にかかる動物用洗浄組成物において、上述の特定構造を有するアルキレンオキシド誘導体の配合量は、組成物全体に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、さらに0.1〜10質量%であることが好ましい。前記配合量が0.01質量%に満たないと、配合による効果の発現が十分ではない場合があり、配合量が20質量%を超えると使用後の乾燥時になめらか感に劣る場合がある。
【0023】
<アニオン性界面活性剤>
本発明において必須成分であるアニオン性界面活性剤としては、洗浄料で一般的に用いられる界面活性剤であれば特に制限されず、例えば脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等);高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POE-ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE-ラウリル硫酸ナトリウム等);N-アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウリルメチルタウリンナトリウム等);リン酸エステル塩(POE-オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE-ステアリルエーテルリン酸等);スルホコハク酸塩(例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等);高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等);N-アシルグルタミン酸塩(例えば、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等);硫酸化油(例えば、ロート油等);POE-アルキルエーテル硫酸塩;POE-アルキルエーテルカルボン酸;POE-アルキルアリルエーテルカルボン酸塩;α-オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N-パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0024】
本発明に係るアニオン性界面活性剤の配合量は、組成物全体に対し2〜30質量%、更に好ましくは5〜15質量%である。前記配合量が2質量%に満たないと泡立ちが悪くなり、30質量%を越えると使用後、きしみ若しくはぬめりを感じる場合がある。
【0025】
<両性性界面活性剤>
本発明において必須成分である両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン系両性界面活性剤(例えば、2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等);ベタイン系界面活性剤(例えば、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)等が挙げられる。
【0026】
本発明に係る両性界面活性剤の配合量は、組成物全体に対し1〜30質量%、更に好ましくは3〜15.0質量%である。前記配合量が1質量%に満たないと泡立ちが悪くなり、30質量%を越えると使用後、ぬめりを感じる場合がある。
【0027】
本発明にかかる動物用洗浄組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、一般に動物用洗浄組成物に配合される他の成分、例えば、油分、水等を配合することができ、さらに所望に応じて、無機顔料、体質顔料等の粉末類、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、防腐剤、色素、香料などを適宜配合することができる。
【実施例】
【0028】
次に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。なお、配合量は全て質量%で示す。また、特に断りのない限りは、BOはオキシブチレン基を示す。まず始めに各実施例及び比較例で用いた評価法について説明する。
【0029】
「評価(1):洗浄中の泡立ち」
家庭内で飼育されている犬に対して使用し、洗浄中の泡立ちの有無を専門パネラー10名により判定した。評価基準は以下の通りである。
◎…専門パネラー8名以上が洗浄中泡立ち良好と認めた。
○…専門パネラー6名以上8名未満が洗浄中泡立ち良好と認めた。
△…専門パネラー3名以上6名未満が洗浄中泡立ち良好と認めた。
×…専門パネラー3名未満が洗浄中泡立ち良好と認めた。
【0030】
「評価(2):洗浄乾燥後の毛のなめらかさ」
家庭内で飼育されている犬に対して使用し、洗浄乾燥後の毛のなめらかさの有無を専門パネラー10名により判定した。なお自然乾燥後の毛のなめらかさと洗浄前の状態を比較法により評価した。評価基準は以下の通りである。
◎…専門パネラー8名以上が洗浄前よりもなめらかと認めた。
○…専門パネラー6名以上8名未満が洗浄前よりもなめらかと認めた。
△…専門パネラー3名以上6名未満が洗浄前よりもなめらかと認めた。
×…専門パネラー3名未満が洗浄前よりもなめらかと認めた。
【0031】
「評価(3):洗浄効果」
家庭内で飼育されている犬に対して使用し、洗浄後の洗浄効果感の有無を専門パネラー10名により判定した。評価基準は以下の通りである。
◎…専門パネラー8名以上が、洗浄後臭いがなく、且つ洗浄効果があると認めた。
○…専門パネラー6名以上8名未満が、洗浄後臭いがなく、且つ洗浄効果があると認めた。
△…専門パネラー3名以上6名未満が、洗浄後臭いがなく、且つ洗浄効果があると認めた。
×…専門パネラー3名未満が、洗浄後臭いがなく、且つ洗浄効果があると認めた。
【0032】
「評価(4):ブラッシングのしやすさ」
家庭内で飼育されている犬に対して使用し、洗浄・乾燥後のブラッシングのしやすさの有無を専門パネラー10名により判定した。評価基準は以下の通りである。
◎…専門パネラー8名以上が、ブラッシングしやすいと認めた。
○…専門パネラー6名以上8名未満が、ブラッシングしやすいと認めた。
△…専門パネラー3名以上6名未満が、ブラッシングしやすいと認めた。
×…専門パネラー3名未満が、ブラッシングしやすいと認めた。
【0033】
「評価(5):皮膚刺激試験」
皮膚炎の症状が認められる犬に対して1ヶ月間使用し、その後観察者10名により犬の状態を見て評価し、その平均値を算出した。この評価において平均値が1.5以上の場合は皮膚刺激性が弱い(○)とし、平均値が1.0点以上1.5未満の場合は皮膚刺激性が中程度である(△)とし、平均値が1.0未満の場合は皮膚刺激性が強い(×)と評価した。
2点:症状が軽減された
1点:症状変化なし
0点:症状が若干悪化した
【0034】
本発明者らは、下記表1に示す処方による動物用洗浄組成物をそれぞれ調製し、その特性について上記評価方法により評価を行なった。試験結果を表1に示す。
なお、各試験例に配合した各種アルキレンオキシド誘導体は、以下の合成例に準じて調製したものを用いた。
【0035】
試験例1
ポリオキシブチレン(30モル)ポリオキシエチレン(30モル)トリメチルグリセリルエーテル(ブロック型アルキレンオキシド誘導体)の合成例
グリセリン92gと触媒として水酸化カリウム18gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりブチレンオキシド2160gを滴下させ、2時間攪拌した。続いて、滴下装置によりエチレンオキシド1320gを滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム400gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル300gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7に調整し、含有する水分を除去するため減圧−0.088MPa(ゲージ圧)100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、ブロック型アルキレンオキシド誘導体を得た。
塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が49、メチルエーテル化後の水酸基価が0.4であることから、末端メチル基数に対する水素原子数の割合は0.008であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されている。
【0036】
試験例2
ポリオキシブチレン(30モル)ポリオキシエチレン(30モル)トリブチルグリセリルエーテル(ブロック型アルキレンオキシド誘導体)の合成例
グリセリン92gと触媒として水酸化カリウム18gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりブチレンオキシド2160gを滴下させ、2時間攪拌した。続いて、滴下装置によりエチレンオキシド1320gを滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム800gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化ブチル1200gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7に調整し、含有する水分を除去するため減圧−0.088MPa(ゲージ圧)100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、ブロック型アルキレンオキシド誘導体を得た。
塩化ブチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が50、ブチルエーテル化後の水酸基価が1.5であることから、末端ブチル基数に対する水素原子数の割合は0.03であり、ほぼ完全に水素原子がブチル基に変換されている。
【0037】
試験例3
ポリオキシエチレン(57モル)トリメチルグリセリルエーテル(アルキレンオキシド誘導体)の合成例
グリセリン92gと触媒として水酸化カリウム18gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりエチレンオキシド2508gを滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム400gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル300gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7に調整し、含有する水分を除去するため減圧−0.088MPa(ゲージ圧)100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、アルキレンオキシド誘導体を得た。
塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が66、メチルエーテル化後の水酸基価0.6であることから、末端メチル基数に対する水素原子数の割合は0.009であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されている。
【0038】
試験例4
ポリオキシブチレン(34モル)トリメチルグリセリルエーテル(アルキレンオキシド誘導体)の合成例
グリセリン92gと触媒として水酸化カリウム18gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりブチレンオキシド2448gを滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム400gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル300gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7に調整し、含有する水分を除去するため減圧−0.088MPa(ゲージ圧)100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、アルキレンオキシド誘導体を得た。
塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が66、メチルエーテル化後の水酸基価0.6であることから、末端メチル基数に対する水素原子数の割合は0.009であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されている。
【0039】
試験例5
ポリオキシブチレン(30モル)ポリオキシエチレン(30モル)グリセリルエーテル(ブロック型アルキレンオキシド誘導体)の合成例
グリセリン92gと触媒として水酸化カリウム18gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりブチレンオキシド2160gを滴下させ、2時間攪拌した。続いて、滴下装置によりエチレンオキシド1320gを滴下させ、2時間攪拌した。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7に調整し、含有する水分を除去するため減圧−0.088MPa(ゲージ圧)100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、ブロック型アルキレンオキシド誘導体を得た。
【0040】
試験例6
ポリオキシブチレン(30モル)ポリオキシエチレン(30モル)トリメチルグリセリルエーテル(ランダム型アルキレンオキシド誘導体)の合成例
グリセリン92gと触媒として水酸化カリウム18gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりブチレンオキシド2160gとエチレンオキシド1320gの混合物を滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム400gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル300gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7に調整し、含有する水分を除去するため減圧−0.088MPa(ゲージ圧)、100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、ランダム型アルキレンオキシド誘導体を得た。
塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が47、メチルエーテル化後の水酸基価が0.5であることから、末端メチル基数に対する水素原子数の割合は0.011であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されている。
【0041】
試験例7
ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(10モル)ジメチルエーテル(ブロック型アルキレンオキシド誘導体)の合成例
プロピレングリコール76gと触媒として水酸化カリウム3.1gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりプロピレンオキシド522gを滴下させ、2時間攪拌した。ひきつづき滴下装置によりエチレンオキシド440gを滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム224gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル188gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するため減圧−0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、前記化3に示すアルキレンオキシド誘導体を得た。
塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が110、化合物1の水酸基価が0.3、末端メチル基数に対する水素原子数の割合は0.003であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されている。
【0042】
試験例8
ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(10モル)ジメチルエーテル(ランダム型アルキレンオキシド誘導体)の合成例
プロピレングリコール76gと触媒として水酸化カリウム3.1gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりエチレンオキシド440gとプロピレンオキシド522gの混合物を滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム224gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル188gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するため減圧−0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、前記化4に示すアルキレンオキシド誘導体を得た。
塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が107、化合物1の水酸基価が0.4、末端メチル基数に対する水素原子数の割合は0.004であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されている。
【0043】
なお、下記表1中の試験例1〜5に配合されたブロック型アルキレンオキシド誘導体は、下記の構造を有することを示している。例えば、a+c+e=30、b+d+f=30の場合は、(BO)30(EO)30と表記する。また、試験例6に配合されたランダム型アルキレンオキシド誘導体は、下記構造においてBO、EOの付加形態がランダム状であることを示す。
【化3】

【0044】
【表1】

【0045】
オキシエチレン部のみであるアルキレンオキシド誘導体配合の試験例3は、特に洗浄乾燥後の毛のなめらかさ、洗浄効果、ブラッシングのしやすさ等の点が劣り、またオキシブチレン部のみであるアルキレンオキシド誘導体を配合した試験例4は、洗浄中の泡立ち、洗浄乾燥後の毛のなめらかさの点で劣るものであった。
さらにアルキレンオキシド誘導体の末端が水素であるものを配合した試験例5では、特に洗浄乾燥後の毛のなめらかさが十分ではない。またランダム型のアルキレンオキシド誘導体を配合した試験例6では、ブラッシングのしやすさの点が十分でない。
また、直鎖型のブロック型またはランダム型アルキレンオキシド誘導体を配合した試験例7及び8においては、泡立ち、洗浄乾燥後の毛のなめらかさ、洗浄効果、および皮膚刺激性は優れているものの、ブラッシングのしやすさが試験例1及び2に比べ不十分であった。アルキレンオキシド誘導体を配合しなかった試験例9においては、乾燥後の毛がなめらかでなく、ブラッシングのしやすさに劣っていた。また、アルキレンオキシド誘導体配合のものと比べ、若干の皮膚刺激性が認められた。
【0046】
一方、各種ブロック型アルキレンオキシド誘導体を配合した試験例1〜2においては、(1)〜(5)のいずれの評価においても優れたものであった。
以上の結果から、本発明において、特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体をアニオン性界面活性剤および両性界面活性剤と共に配合することにより、使用中の泡立ちが良好で、使用後の動物の感触、特にドライ後のなめらかさ、ブラッシングのし易さに優れ、且つ皮膚刺激の低い動物用洗浄組成物が得られることが明らかである。
【0047】
次に、動物用洗浄組成物における特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体の好適な配合量の検討結果を下記表2に示す。
【表2】

【0048】
表2に示す結果より、本発明にかかるアルキレンオキシド誘導体の添加効果は、0.01質量%程度から認められるが、特に顕著に認められるのは0.1質量% 以上である。但し、30質量%以上になると、やや洗浄中の泡立ちが悪くなり、若干皮膚への刺激性もみられるようになるので、20質量%程度までの配合が好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体を0.1〜20質量%と、アニオン性界面活性剤を2〜30質量%と、両性界面活性剤を1〜30質量%とを含有していることを特徴とする動物用洗浄組成物。
(化1)
Y−[O(EO)−(AO)−(EO)−R] (I)
(式中、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基、kは前記多価アルコールの水酸基数、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基でそれぞれブロック状に付加されている。a×k、b×kおよびc×kはそれぞれオキシエチレン基、炭素数3〜6のオキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、0≦a×k≦100、1≦b×k≦100、0≦c×k≦100、ただし(a+c)×k>1である。オキシエチレン基と炭素数3〜6のオキシアルキレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、10〜80質量%である。Rは炭素数1〜4の炭化水素基である。)
【請求項2】
前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、AOがオキシブチレン基であることを特徴とする請求項1に記載の動物用洗浄組成物。
【請求項3】
前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、aが0であることを特徴とする請求項1または2に記載の動物用洗浄組成物。

【公開番号】特開2009−108261(P2009−108261A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284092(P2007−284092)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】