動的ビームアレイを用いるフォトニックミリング
レーザ処理システムは、被加工物に対してビーム送達座標を整列させるビーム位置決めシステムを含む。ビーム位置決めシステムは、この整列に対応する位置データを生成する。また、システムは、パルスレーザ光源と、パルスレーザ光源からレーザパルスを受け取るビームレット生成モジュールとを含む。ビームレット生成モジュールは、レーザパルスからビームレットアレイを生成する。ビームレットアレイは、複数のビームレットパルスを含む。システムは、更に、ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスの振幅を選択的に変調するビームレット変調器と、変調されたビームレットアレイを、位置データに対応する被加工物上の箇所の1つ以上の標的に集光するビームレット送達光学素子とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ処理システムに関する。詳しくは、本発明は、光クロック(photonic clock)及び位置データに基づいて、増幅するパルスの選択と、被加工標的への整列とを同期させるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子材料等の基板の検査、処理、マイクロ機械加工を含む様々な産業用途において、レーザを使用することができる。例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(dynamic random access memory:DRAM)を修理するために、第1のレーザパルスを用いて、DRAMデバイスの不良メモリセルへの導電性リンクを除去し、次に、第2のレーザパルスを用いて、予備のメモリセルへの抵抗リンクを除去して、不良メモリセルをこれに置換する。リンク除去を必要とする不良メモリセルは、不規則に存在するので、ワークピース位置決め遅延時間のために、このようなレーザ修理処理に必要な時間は、通常、単一のパルス間時間ではなく、様々な範囲のパルス間時間に亘る。
【0003】
除去するべきリンクのバンクは、通常、直線的な行としてウェハ上に配置される。リンクは、一般的に、リンクラン(link run)内で処理される。リンクランの間、ステージ位置決め器(stage positioner)が集光されたレーザスポットの箇所を横切って、リンクの行を通過しながら、レーザビームがパルス駆動される。ステージは、通常、一度に、単一の軸に沿って移動し、各リンク位置では止まらない。この製造技術は、当分野では、オンザフライ(on-the-fly:OTF)リンク処理と呼ばれ、所与のウェハ上のリンクを修理できる速度の効率を高め、この結果、DRAM製造プロセスの全体の効率を向上させている。
【0004】
レーザのパルス繰返し周波数(pulse repetition frequencies:PRF)及びリンクラン速度が高くなると、ステージ位置決め器への要求も厳しくなる。ステージ加速度及び速度は、レーザPRF程は高められていない。したがって、間もなく実用化される高PRFレーザ(例えば、数百kHz又はMHzの桁のPRFを有するレーザ)の利点を最大限に活用することは困難である。
【0005】
一般的には、現在のリンク処理システムにおけるレーザパルスの真の利用率は、かなり低い。例えば、約600,000個のリンクを含む典型的なウェハは、約600秒で加工される。これは、有効ブローレート(effective blow rate)が1kHzであることを意味する。この例示的なウェハ処理システムが100kHzのPRFを有するレーザ光源を使用する場合、100個のレーザパルスのうち、ウェハの表面に達するのは、約1個のレーザパルスのみである。
【0006】
二重ビームレーザシステム及び多ビームレーザシステムは、一般的に、複雑なレーザ光学部品サブアセンブリ(laser optical subassemblies)を使用し、通常、製造費用が高価である。更に、レーザ設計の近年の進歩によって、この手法に新たな問題が生じている。例えば、ある高パワー、短パルス幅(例えば、ピコ秒又はフェムト秒の桁)のレーザは、主発振器パワー増幅器(master oscillator-power amplifier:MOPA)の手法に基づいており、この場合、モード同期レーザ発振器(mode-locked laser oscillator)が約10MHz〜約100MHzの範囲の繰返し率で安定したシードパルスを提供する。これらのレーザ発振器は、能動的にモード同期させてもよく、受動的にモード同期させてもよい。能動同期発振器は、タイミング目的のためにその出力パルス位相及び/又は周波数を調整できる。一方、受動モード同期主発振器では、このように容易に出力周波数を変更することはできない。したがって、レーザ処理システムは、受動モード同期主発振器が提供する基本周波数に動作を同期させる。
【0007】
パワー増幅器(例えば、ダイオード励起光利得媒質)は、主発振器からの選択されたパルスを増幅する。典型的なダイオード励起Qスイッチレーザの場合と同様に、これらの増幅されたパルスのエネルギは、パルス間周期(interpulse period)の関数である。真の動作繰返し率(例えば、パワー増幅器から出射されるパルスの周波数)は、通常、基本の(例えば、主発振器の)繰返し率の約数であり、通常、主発振器周波数の約10〜1000分の1である。
【0008】
所望のレーザ動作のためには、レーザは、ビーム位置決めサブシステムをレーザのパルスタイミングに従属させながら、一定の繰返し率でパルスを出射する必要がある。しかし、パルス配置正確度を維持しながら、このようなビーム位置タイミングを達成することは、かなり難しい場合がある。例えば、上述した繰返し率のためのタイミング窓は、約10ナノ秒〜約100ナノ秒の範囲であることがある。サーボ制御システムは、通常、このように小さな、固定されたタイミング窓内では、高い正確度(例えば、10nm以内)のパルス配置を保証できない。
【0009】
多くの産業用レーザ加工用途(例えば、メモリデバイスの冗長回路内のリンク切断、超小型ビア穴あけ、部品トリミング、材料切断又はスクライビング等)では、被加工物上でレーザパルスを位置決めする運動制御システムとの座標決め(coordination)を行い、高エネルギレーザパルスが出射される。この座標決めは、厳密なタイミングを用いることが多く、加工ビームの動きプロファイルに依存し、このタイミングは、任意であってもよい。タイミング精度を用いて処理システムの正確度を維持しながら、パルスコマンドのタイミングを任意にすると、パルス幅やピークパワー等のレーザ性能の側面が劣化することがある。
【0010】
多くのレーザ処理システム設計は、高いパルス繰返し率で一定のパルスエネルギを得るためにQスイッチレーザが組み込まれている。但し、このようなレーザは、パルス間周期の値(及びその変化)に敏感なことがある。したがって、パルス幅、パルスエネルギ及びパルス振幅安定性は、パルス間周期が変わると、変化することがある。このような変化は、(例えば、直前のパルス間周期の関数として)静的であることもあり、及び/又は(例えば、パルス間周期履歴の関数として)動的であることもある。この敏感度は、通常、レーザが公称繰返し率(通常200kHz未満)で出射されるようにレーザ処理システムを動作させることによって、低減又は最小化され、僅かな繰返し率の偏差によって生じるパルス特性の偏差は許容される。
【0011】
このような手法は、通常、適切な被加工箇所に向けてレーザを「オンデマンド」で出射して(又はステージ速度、伝搬遅延、パルス形成時間、及び他の遅延等の既知の因子に基づいて、その箇所にパルスを衝突させて)、所望のパルス配置正確度を維持するように所望のビーム軌道を制御することによって達成される。被加工箇所は、繰返し率が略々一定になるように配列される。レーザ安定性問題を考慮して、処理コマンドに「ダミー」の被加工箇所を挿入してもよい。「ダミー」の被加工箇所は、休止期間の間、繰返し率を略々一定に保ち、「ダミー」のパルスは、例えば、機械的シャッタ、音響光学変調器(acousto-optic modulator:AOM)及び電気光学変調器(electro-optic modulator:EOM)等のビーム変調デバイスによって被加工物から遮蔽される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施の形態においては、レーザ処理システムは、被加工物に対してビーム送達座標を整列させるビーム位置決めシステムを含む。ビーム位置決めシステムは、この整列に対応する位置データを生成する。また、システムは、パルスレーザ光源と、パルスレーザ光源からレーザパルスを受け取るビームレット生成モジュールとを含む。ビームレット生成モジュールは、レーザパルスからビームレットアレイを生成する。ビームレットアレイは、複数のビームレットパルスを含む。システムは、更に、ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスの振幅を選択的に変調するビームレット変調器と、変調されたビームレットアレイを、位置データに対応する被加工物上の箇所の1つ以上の標的に集光するビームレット送達光学素子とを備える。
【0013】
ある実施の形態では、システムは、ビームレットアレイ内のビームレットパルスを抽出し、ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスの総エネルギを判定する光検出モジュールを更に備える。光検出モジュールは、更に、ビームレット変調器にエラー補正補償信号を提供して、被加工物上の特定の標的に供給される連続するビームレット振幅を調整するように構成されている。光検出モジュールは、更に、被加工物上の特定の標的に送達された一連のビームレットパルスが提供するパルスエネルギの合計が所定の閾値に達し又はこれを超えていることを判定し、ビームレット変調器を制御して、更なるビームレットパルスが特定の標的に到達することを防ぐように構成されている。
【0014】
一実施の形態では、システムは、ビーム位置決めシステムと協働して、整列を提供するシステム制御コンピュータを更に備え、整列は、被加工物標的ピッチを、パルスレーザ光源のパルス繰返し周波数(PRF)、ビームレットアレイピッチ、及びビーム位置決めシステムと被加工物との間の相対速度(ステージ速度)に調和させる。
【0015】
他の実施の形態においては、被加工物をレーザで処理するための方法は、レーザパルスを生成するステップと、レーザパルスから、複数のビームレットパルスを含むビームレットアレイを生成するステップと、ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスの振幅を変調するステップと、変調されたビームレットアレイを、被加工物上の1つ以上の標的箇所に集光するステップとを有する。
【0016】
本発明の更なる側面及び利点は、添付の図面を参照して進められる好ましい実施の形態の以下の詳細な記述から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】被加工物(X−Y)位置決め器を含む従来のレーザパルス処理制御システムのブロック図である。
【図2】一実施の形態に係るレーザパルス処理システムのブロック図である。
【図3】図2に示すシステムを用いて被加工物を処理する一実施の形態に係る方法を示すフローチャートである。
【図4A】位置エラーを補償するための、ある実施の形態に係る例示的な方法を示すフローチャートである。
【図4B】位置エラーを補償するための、ある実施の形態に係る例示的な方法を示すフローチャートである。
【図4C】位置エラーを補償するための、ある実施の形態に係る例示的な方法を示すフローチャートである。
【図4D】位置エラーを補償するための、ある実施の形態に係る例示的な方法を示すフローチャートである。
【図5】一実施の形態に係るベクトル処理コムの使用を図式的に示す図である
【図6】動的ビームアレイを用いて被加工物標的を処理するための一実施の形態に係るフォトニックミリングサブシステムのブロック図である。
【図7A】パルス幅がプログラミング可能な一実施の形態に係るフォトニックミリングシステムのブロック図である。
【図7B】一実施の形態に基づく、プログラミング可能なパルス幅要素が主発振器に組み込まれた図7Aに示すフォトニックミリングサブシステムのブロック図である。
【図8A】一実施の形態に基づく、離散的にバンド化された反射板を含むビームレット生成モジュールを様々な視点から示す図である。
【図8B】一実施の形態に基づく、離散的にバンド化された反射板を含むビームレット生成モジュールを様々な視点から示す図である。
【図8C】一実施の形態に基づく、離散的にバンド化された反射板を含むビームレット生成モジュールを様々な視点から示す図である。
【図9】他の実施の形態に係るビームレット生成モジュールのブロック図である。
【図10】導電性リンクに一般的に用いられる様々なパターンを図式的に示す図である。
【図11】一実施の形態に基づいて、ビームレットアレイを用いて、一組の標的を処理する方法のフローチャートである。
【図12】一実施の形態に基づく、被加工物標的ピッチとビームレットピッチとの間の関係を図式的に示す図である。
【図13】ウェハの処理を説明する図である。
【図14】一実施の形態に基づく、AODを含むレーザ処理システムの概略図である。
【図15】一実施の形態に基づき、横方向に離間した複数のリンクバンクを走査する加工窓を示す概略図である。
【図16】一実施の形態に基づく、X軸に沿って延びる複数の横方向に離間したリンクバンク及びY軸に沿って延びる複数のリンクバンクを走査する加工窓を示す概略図である
【図17】一実施の形態に基づく、2つの偏向デバイスを備えるレーザ処理システムの概略図である。
【図18】一実施の形態に基づく、テレセントリック角度検出器を含むレーザ処理システムの概略図である。
【図19A】一実施の形態に基づく、一連のレーザパルスを、それぞれの位置変更プロファイルに関連付けたタイミングチャートである。
【図19B】一実施の形態に基づく、一連のレーザパルスを、それぞれの位置変更プロファイルに関連付けたタイミングチャートである。
【図19C】一実施の形態に基づく、一連のレーザパルスを、それぞれの位置変更プロファイルに関連付けたタイミングチャートである。
【図20】他の実施の形態に基づく、図6に示すような後の変調及び被加工物への送達のためのビームレットのアレイを生成するように構成された回折光学要素のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一実施の形態においては、レーザ処理システム内でビーム位置決め器制御要素(beam positioner control element)を調整するマスタタイミング要素として、光クロック(photonic clock)が使用される。光クロックは、パルスレーザ光源の光発振器からのパルス出力であってもよい。光発振器は、シード発振器又は主発振器であってもよい。ビーム位置決め器制御要素は、光発振器からのタイミング信号を使用して、被加工物上の標的構造の整列と、レーザシステムからのレーザパルスの出射とを同期させる。標的構造を処理するために、レーザ光源からの1つ以上のパルスが、レーザシステムの光学要素を透過される。レーザ光源からのパルスを振幅分割して、標的構造を処理するためのパルスのアレイを生成してもよい。
【0019】
ここに開示するレーザシステム及び方法は、様々な被加工標的を処理するために用いることができる。例えば、一実施の形態を用いて、DRAM、SRAM及びフラッシュメモリを含む様々な半導体メモリデバイス内の導電性リンク構造を切断してもよく、例えば、銅/ポリアミド積層材料等のフレキシブル回路内、及び集積回路(IC)パッケージ内にレーザ穴あけされた超小型ビアを形成してもよく、半導体のレーザプロセス若しくはマイクロマシニング、例えば、半導体集積回路、シリコンウェハ及び太陽電池のレーザスクライビング又はダイシングを行ってもよく、金属、誘電体、ポリマ材料及びプラスチックのレーザマイクロマシニングを行ってもよい。ここに開示する実施の形態に基づいて、他の多くの種類の被加工物及び/又は被加工物構造を処理できることは当業者にとって明らかである。
【0020】
以下で参照する図面では、同様の要素には同様の参照符号を付している。以下の記述では、本発明の実施の形態の完全な理解のために多くの具体的な詳細事項を提示する。但し、具体的な詳細事項の1つ以上がなくても、又は他の方法、部品又は材料によっても本実施の形態を実施できることは、当業者にとって明らかである。更に、幾つかの場合、本発明の側面が不明瞭になることを回避するために、よく知られている構造、材料又は操作については詳細に図示又は説明していない。更に、ここに説明する特徴、構造又は特性は、適切な如何なる手法で、1つ以上の実施の形態において組み合わせてもよい。
【0021】
1.トリガ可能なレーザ光源の典型的な同期
典型的なレーザ処理システムでは、タイミング信号を用いて、レーザ光源をトリガして、適切なタイミングで(例えば、ステージ速度、システム遅延及び他のパラメータに基づいて)レーザパルスを出射させ、被加工物上の標的をレーザパルスで照射する。例えば、図1は、被加工物(X−Y)位置決め器110を含む従来のレーザパルス処理制御システム100のブロック図である。同様のシステムは、本出願の譲受人に譲受されているBaird他による米国特許第6,172,325号に開示されている。システム100は、システム制御コンピュータ112及び埋め込まれた制御コンピュータ114を含み、これらは、連携してビーム位置コントローラ116を制御する。ビーム位置コントローラ116は、X−Y位置決め器110から位置情報を受け取り、X−Y位置決め器110は、紫外線(UV)レーザビーム120に対して被加工物118を位置決めする。UVレーザビーム120は、図示している折り返しミラー122に加えて、様々な光学素子(図示せず)を介して伝播させてもよい。また、X−Y位置決め器110は、Z位置決め器124を含んでいてもよく、Z位置決め器124は、Xステージ及びYステージの何れかに連結してもよい。
【0022】
UVレーザシステム126は、ダイオード励起、音響光学QスイッチNd:YVO4レーザ等のQスイッチ固体赤外線(IR)レーザ128を含む。また、UVレーザシステム126は、IRレーザ128のパルス振幅を変調する音響光学変調器(AOM)130と、周知の第2高調波、第3高調波又は第4高調波変換プロセスを使用することによって、IRレーザ128からの赤外波長発光を緑色及び/又はUV波長に変換する周波数逓倍器132とを含む。仮想線内に示すAOM134の位置によって示すように、AOM130を周波数逓倍器132の後に配置してもよい。何れの実施の形態においても、レーザコントローラ136が、AOM130(又はAOM134)の透過率を制御して、被加工物118に方向付けられたUVレーザビーム120を透過させ又は遮蔽する。
【0023】
システム制御コンピュータ112は、バス138を介して、埋め込まれた制御コンピュータ114に、被加工物118上の処理箇所の位置座標を伝える。典型的な試料加工用途において、被加工物118は、可溶リンク等の一定間隔で離間した標的又はデバイス構造を含み、これらのうちの幾つかのみがレーザ処理される。UVレーザビーム120によって処理される箇所を標的箇所(target location)と呼び、UVレーザビーム120によって処理されない箇所を中間箇所(intermediate location)と呼ぶ。埋め込まれた制御コンピュータ114は、標的箇所座標に中間箇所座標を加え、中間箇所座標は、IRレーザ128に対し、略々等しい時間間隔離間している。埋め込まれた制御コンピュータ114は、標的箇所座標及び中間箇所座標を、1つずつ、所定のレートで、バス140を介して、ビーム位置コントローラ116のレジスタ142に供給し、同時に、制御データを、バス144を介して、レーザコントローラ136のレジスタ146にロードする。この所定のレートは、X−Yコントローラ110の運動速度を制御し、制御データは、座標箇所が処理すべき標的箇所であるかを示し、更にモード及びタイミング情報を含む。
【0024】
レーザコントローラ136は、オートパルス(autopulse)モード及びパルスオンポジション(pulse-on-position)モードの何れかでタイマ148を動作させる。オートパルスモードでは、タイマ148は、レジスタ146の制御データに応じて始動する。パルスオンポジションモードでは、タイマ148は、ビーム位置コントローラ116内の比較器152からの位置一致信号150の受信に応じて始動する。ビーム位置コントローラ116内の位置エンコーダ154は、X−Y位置決め器110の現在位置を比較器152に通知し、この現在位置が、レジスタ142に格納されている位置座標に一致したとき、被加工物118が標的位置又は中間位置に対して適切に位置決めされたことを示す位置一致信号150が生成される。これに応じて、被加工物118が標的位置に対して位置決めされると、タイマ148は、同時に、(Qスイッチゲートライン158を介して)IRレーザ128内のQスイッチを動作させ、タイマ148から埋め込まれた制御コンピュータ114にサイクルダン割込(cycle done interrupt)156が供給されるまで、AOM130を透過状態に設定する。AOM130の透過率は、レーザパルスゲートデバイスとして、又はパルス振幅変調器として制御可能である。このように、IRレーザ128を「オンデマンド」でトリガして、被加工物118上の所望の標的を処理することができる。
【0025】
2.光クロック同期を用いる例示的システム
超高速レーザシステム内で光発振器を用いて、公称的に固定された周波数コムでパルスを出射してもよい。但し、上述したシステム100とは異なり、光発振器は、直接的にトリガして、「オンデマンド」でパルスを生成することはできない。すなわち、光発振器は、既知の光発振器周波数foscにおいて、離散的時間間隔でパルスを提供する。したがって、ここに開示するある実施の形態では、レーザ制御システムは、光発振器が第1のPRFであるfoscで出射する光パルス出力から派生するクロックを使用する。レーザ制御システムは、被加工物位置データと、光発振器クロックからのタイミング情報とを用いて、周波数コムから増幅するパルスを選択し、第2のPRFで処理周波数fpを生成し、更に、処理周波数fpで出射されたパルスを選択し、選択された被加工物標的に向けて透過させ、ビーム位置決めシステム及び/又は協働するビーム位置補償要素を制御して、選択されたパルスを被加工物標的に方向付ける。
【0026】
図2は、一実施の形態に係るレーザパルス処理システム200のブロック図である。図1に示すシステム100と同様に、システム200は、X−Y位置決め器110、システム制御コンピュータ112、埋め込まれた制御コンピュータ114及びビーム位置コントローラ116を含む。ビーム位置コントローラ116は、X−Y位置決め器110から位置情報を受け取り、X−Y位置決め器110は、レーザビーム210に対して被加工物118を位置決めする。図には示していないが、レーザビーム210は、様々な光学素子を介してレーザビーム経路に沿って、折り返しミラー122に伝播し、折り返しミラー122は、レーザビーム210を被加工物118に再方向付けする。また、X−Y位置決め器110は、Z位置決め器124を含んでいてもよく、Z位置決め器124は、Xステージ及びYステージの何れかに連結してもよい。
【0027】
システム制御コンピュータ112は、バス138を介して、埋め込まれた制御コンピュータ114に、被加工物118上の処理箇所の位置座標を伝える。一実施の形態においては、被加工物118は、可溶リンク等の一定間隔で離間したデバイス構造を含み、これらのうちの幾つかのみがレーザ処理される。上述したように、レーザビーム210によって処理される箇所を標的箇所と呼び、レーザビーム210によって処理されない箇所を中間箇所と呼ぶ。
【0028】
また、システム200は、パルスレーザ光源212及びレーザサブシステムコントローラ214(「LSC」と表している。)を含む。一実施の形態では、図2に示すように、パルスレーザ光源212は、光発振器216、第1の光変調器218及び増幅器220を含む。また、パルスレーザ光源212は、後置増幅器221及び高調波変換器モジュール223を含んでいてもよい。一実施の形態においては、光発振器216は、本出願の譲受人に譲受されているSun他による米国特許番号第6,574,250号に開示されているモード同期発振器(mode-locked oscillator)である。このような実施の形態では、パルスレーザ光源212は、モード同期パルスレーザ(mode-locked pulsed laser)である。これに代えて、光発振器216は、Weingarten他による米国特許第6,538,298号に開示されているような半導体吸収ミラー受動モード同期発振器(semiconductor absorbing mirror passively mode-locked oscillator)であってもよい。また、他の発振器を用いてもよいことは当業者にとって明らかである。
【0029】
第1の光変調器218は、例えば、音響光学変調器(AOM)、電気光学変調器(EOM)、又は当分野で周知の他の光変調器であってもよい。増幅器220及び/又は後置増幅器221は、例えば、光学的に励起される利得媒質を含んでいてもよい。高調波変換器モジュール223は、周知の高調波変換を用いて、入射出力パルスを高調波周波数に変換する非線形結晶を含んでいてもよい。
【0030】
光発振器216の光クロック222は、レーザサブシステムコントローラ214を介して、埋め込まれた制御コンピュータ114にパルスタイミングデータを供給する。埋め込まれた制御コンピュータ114は、パルスタイミングデータを用いて、離間する中間箇所座標を標的箇所座標に加え、ベクトル処理コム(vector process comb)を生成する。ベクトル処理コムは、標的及び中間標的ベクトル座標の行列を表す。埋め込まれた制御コンピュータ114は、バス140を介して、ビーム位置コントローラ116内のレジスタ142にベクトル処理コムを送る。レーザサブシステムコントローラ214及びビーム位置コントローラ116は、ベクトル処理コムを用いて、後述するビーム位置補償要素と連携する更なる座標決めにおいて、X−Y位置決め器110をパルスレーザ光源212によって出射されるパルスに同期させる。
【0031】
後に詳細に説明するように、光発振器216は、第1のPRFであるfOSCでレーザパルスのビームを出射する。第1の光変調器218は、光発振器216からのパルスのサブセットを選択して、増幅器220に供給し、増幅させ、続いてパルスレーザ光源212から出力させる。第1の光変調器218の出力PRFは、第2のPRF、すなわちfPである。第1の光変調器218によるパルスの選択は、クロック222からの信号及びビーム位置コントローラ116から受信する位置データに基づいて行われる。
【0032】
また、システムは、被加工物118に提供されるパルスの安定性を高めるために使用される第2の光変調器226を含む。一実施の形態においては、レーザサブシステムコントローラ214内のタイマ148は、第2の光変調器226を制御して、タイミングデータに基づいて、パルスレーザ光源212からパルスを透過させる。第2の光変調器226は、第1の光変調器218と同様に、AOM、EOM又は他の既知の光変調デバイスであってもよい。第2の光変調器226は、パルスレーザ光源212の外側に示しているが、この開示から、第2の光変調器226は、パルスレーザ光源212内に含ませてもよいことは当業者にとって明らかである。一実施の形態においては、本出願の譲受人に譲受されているBaird他による米国特許第6,172,325号に開示されているように、第2の光変調器226は、レーザパルスゲートデバイスとして、又はパルス振幅変調器として制御可能である。また、本出願の譲受人に譲受されているSun他による米国特許番号第6,947,454号に開示されているように、第2の光変調器226は、実質的に一定であって、実質的にパルスレーザ光源212と同様の繰返し率でパルスしてもよい。
【0033】
また、システム200は、増幅されたレーザパルスを、被加工物118上の選択された標的に方向付けるビーム位置補償要素を含む。ビーム位置補償要素は、音響光学偏向器230、高速ステアリングミラー232、後述するレーザコムインデクス付与モジュール(laser comb indexing module)234、これらの組合せ又は他の光学ステアリング要素を含んでいてもよい。例えば、電気光学偏向器を用いてもよいことは当業者にとって明らかである。ビームステアリング要素の制御は、光クロック222及びビーム位置コントローラ116から受信する位置データに基づいて行われる。
【0034】
3.パルス同期方法の具体例
図3は、一実施の形態に基づき、図2に示すシステム200を用いて被加工物118を処理する方法300を示すフローチャートである。開始(310)の後、方法300は、レーザサブシステムコントローラ214内のプロセスモードのタイマ148を、光発振器216のクロック222によって決定されたPRFで設定(312)することを含む。タイマ148は、パルス遮蔽信号224、228を設定し、第1の光変調器218及び第2の光変調器226のゲートをオフにし、これによって、光発振器216が出射した使用可能なエネルギ量が被加工物118に到達することを防ぐ。
【0035】
システム200がポジションオンパルス(position-on-pulse)プロセスランの開始を準備すると、埋め込まれた制御コンピュータ114は、システム制御コンピュータ112から、処理すべき被加工物118上の標的箇所座標を受信(314)する。上述のように、オシレータモジュール216内の光クロック222は、埋め込まれた制御コンピュータ114にパルスタイミングデータを供給する。埋め込まれた制御コンピュータ114は、パルスタイミングデータを用いて、処理する必要がない標的の中間箇所座標を算出(316)する。埋め込まれた制御コンピュータ114は、標的箇所座標に中間箇所座標を加え、ベクトル処理コムを生成する。ベクトル処理コムは、標的及び中間標的ベクトル座標の行列を表す。
【0036】
埋め込まれた制御コンピュータ114は、システム200をポジションオンパルスモードに設定(316)する。また、埋め込まれた制御コンピュータ114は、箇所座標を表すベクトル処理コムを、バス140を介して、ビーム位置コントローラ116内のレジスタ142にロード(318)し、現在の箇所座標を選択する。更に、埋め込まれた制御コンピュータ114は、ポジションオンパルスモードをイネーブルにするデータを、バス144を介して、レーザサブシステムコントローラ214に送信する。タイマ148は、パルス遮蔽信号224、228の設定を継続し、第1の光変調器218がパルスレーザ光源212を遮蔽し、被加工物118にパルスエネルギが透過されないようにする。次に、方法300は、現在の箇所座標に応じてビーム位置決め器110を移動(322)させる。
【0037】
そして、方法300は、X−Y位置決め器の測定位置が正確度限界(accuracy limits)内で、現在の箇所座標によって定義された期待される位置に一致しているかについてクエリ(324)を行う。ビーム位置コントローラ116内のビーム位置エンコーダ154は、比較器154にX−Y位置決め器110の現在位置を通知する。比較器154は、ビーム位置エンコーダ154からのデータをレジスタ142に格納されている現在の箇所座標と比較する。データ及び座標が所定の限界内で一致する場合、比較器154は、位置一致信号150を有効にする。
【0038】
一方、データ及び座標が所定の限界内で一致しない場合、比較器154は、補正トリガ信号(図示せず)をアサート(326)する。そして、方法は、位置エラーを補償(328)する。後に詳細に説明するように、これは、ビーム位置決めシステム(例えば、X−Y位置決め器110)及び/又は協働するビーム補償要素(例えば、AOD230及び/又はFSM232)を調整すること、レーザコムインデクス付与を有効にすること、共振器ステージを介して繰返し制御アルゴリズムを実装すること、これらの1つ以上の組合せ、及び/又はここに開示する他の手法によって実現できる。
【0039】
データ及び座標が所定の限界内で一致する場合、方法300は、タイマ148を始動(330)する。一実施の形態においては、タイマ148は、パルスレーザ光源212からの出力と実質的に一致する制御信号を適用することによって、第2の光変調器226を透過状態に設定(332)し、これにより、第2の光変調器226は、被加工物118にパルスを透過する。第2の光変調器226は、サイクルの最後(334)に達するまで透過状態のまま残り、この時点で、タイマ148は、第2の光変調器226を、透過抑制状態(reduced transmissive state)に再び設定(336)する。他の実施の形態においては、第2の光変調器226は、パルスの透過を許容するために十分な所定の期間、透過状態のまま残る。この所定の期間が終わると、第2の光変調器226は、透過抑制状態に戻る。何れの実施の形態でも、第2の光変調器226が透過抑制状態になった後は、方法300は、ステップ318に戻り、次の現在の座標位置について処理を続ける。
【0040】
上述のように、第1の光変調器218は、増幅されて、fPのPRFによって第2の光変調器に供給されるパルスを選択する。本出願の譲受人に譲受されているSun他による米国特許番号第6,947,454号に開示されているように、この手法によって、第2の光変調器226の熱負荷は、加工パルス要求の出現にかかわらず、実質的に一定のままになる。このような第2の光変調器226に対する一貫した負荷によって、熱負荷の変動に関連するレーザビーム品質の劣化、及びレーザビーム照準エラーが低減又は排除される。パルス間の振幅又はパルス間のエネルギの変動を光検出モジュール(図示せず)によって感知してもよく、続いて、第2の光変調器226の透過レベルの動的補正又は予測補正を制御して、このようなパルス間の変動を低減してもよい。
【0041】
4.位置補償方法の具体例
上述のように、図3に示す方法300は、X−Y位置決め器110の現在位置が期待される位置窓を逸脱している場合に、位置エラーを補償(328)することを含む。これは、多くの異なる手法によって達成できる。図4A、図4B、図4C及び図4Dは、ある実施の形態に基づき、補正トリガ信号を検出(410)した後に、位置エラーを補償(328)するための幾つかの例示的な方法を示すフローチャートである。
【0042】
図4Aでは、方法328は、X−Y位置決め器110上の被加工物118に対するビーム210の位置を調整するために、高速ビーム位置変更要素、例えば、図2に示すAOD230に位置補償信号を供給(412)することを含む。上述したように、EODを使用してもよい。位置補償信号は、AOD230が提供すべき偏向の方向及び量を示す値を含んでいてもよい。このような値は、(例えば、レーザサブシステムコントローラ214を介して)比較器154及び/又は位置エンコーダ154によって提供してもよく、位置エンコーダ154によって測定されるX−Y位置決め器110の現在位置と、レジスタ142に保存されている期待される位置との間の差分を定義する。
【0043】
方法328は、AOD230が提供する調整が、位置エラーを補償するために十分であるかについてのクエリ(414)を行ってもよく、被加工物118に対するビーム210の位置が所定の限界内になるまで、位置補償信号の更新(416)を継続する。例えば、図2には示していないが、AOD230に位置補正フィードバックを提供する光検出モジュールによってレーザビーム210の位置を検出してもよい。
【0044】
図4Bでは、方法328は、X−Y位置決め器110上の被加工物118に対するビーム210の位置を調整するために、図2に示すFSM232に位置補償信号を供給(412)することを含む。図4Aに示す実施の形態と同様に、位置補償信号は、FSM232が提供すべき偏向の方向及び量を示す値を含んでいてもよい。更に、方法328は、FSM232が提供する調整が、位置エラーを補償するために十分であるかについてのクエリ(414)を行ってもよく、被加工物118に対するビーム210の位置が所定の限界内になるまで、位置補償信号の更新(416)を継続する。
【0045】
図4Cは、図4A及び図4Bの組合せであり、方法328は、AOD230に一次位置補償信号を供給(420)することと、FSM232に二次位置補償信号を供給(422)することを含む。ここでも、方法328は、AOD230及び/又はFSM232が提供する調整が、位置エラーを補償するために十分であるかについてのクエリ(414)を行ってもよい。方法300は、被加工物118対するビーム210の位置が所定の限界内になるまで、一次位置補償信号及び二次位置補償信号一方又は両方を更新(416)してもよい。一実施の形態においては、方法329は、まず、一次位置補償信号を更新し、追加的な調整が十分であるかを判定し、これが不十分な場合に、二次位置補償信号も更新する。このシーケンスは、被加工物118に対するビーム210の位置が所定の限界内になるまで繰返してもよい。
【0046】
図4Dでは、方法328は、レーザコムインデクス付与モジュール234に位置補償信号を供給(424)することを含む。レーザコムインデクス付与モジュール234は、所望の補償の量(例えば、位置補償信号によって示されている量)に基づいて、ベクトル処理コムのレーザコムインデクスkを変更(426)する。レーザパルスインデクスkは、第1の光変調器218を用いて、光発振器216からのどのパルスをパルスレーザ光源212から透過させるかを決定するために用いられる整数値である。図5に関して後述するように、レーザコムインデクスkは、第2の周波数コム(fP)をインクリメント又はデクリメントして、オフセット周波数(fP’)を生成することによって適用される。ここに示す具体例では、レーザコムインデクス付与モジュール234は、第1の光変調器218による光発振器パルス番号m=1の選択に続いて、レーザコムインデクスkを1のオフセット(k=1)に指示し、この結果、オフセット処理周波数コムfP’において、光発振器パルス番号m=12が次に増幅される。
【0047】
図5は、一実施の形態に基づくベクトル処理コムの使用を図式的に示している。ここに示すように、光発振器216は、第1のPRFであるfOSCで一連のパルス510を提供する。連続するパルス510間の期間(パルス間周期)は、約1ナノ秒から約100ナノ秒の桁であってもよい。また、約100ナノ秒を超えるパルス間周期を用いてもよい。また、パルス間周期が約1ナノ秒未満の非常に小型の発振器を用いてもよいことは当業者にとって明らかである。これらの速度では、ビーム位置決めシステム(例えば、X−Yコントローラ110)が、被加工物118の特定の標的をレーザビーム210に正確に整列させることは、困難又は不可能であることがある。更に、増幅器220が、光発振器216によって提供される各パルスを効率的に増幅することは、困難又は不可能であることがある。したがって、第2のPRFであるfPで動作する第1の光変調器218は、n番目毎のパルスを選択して、被加工物118に透過させる。第2のPRFであるfP=fOSC/nである。図5に示す具体例では、処理周波数インデクスn=10であり、これにより、透過されるパルスは(例えば、レーザコムインデクスkをインクリメントすることによる位置補償がない場合)、発振器周波数コムパルスm=11、m=21、m=31…に対応する。この開示から、処理周波数インデクスnを他の如何なる整数値にしてもよいことは当業者にとって明らかである。処理周波数インデクスnは、例えば、X−Y位置決め器110が、位置エラーを所定の限界内で維持しながら、第2のPRFであるfPで標的間を移動できるように選択してもよい。
【0048】
更に図5に示すように、システム制御コンピュータ112によって指示されるレーザPRF(例えば、fP)を変更することなく、整数光発振器パルス間隔によって、連続する2つのパルスの間でレーザコムインデクスkをインクリメントしてもよい。この具体例では、第1のパルスm=1が、第1の光変調器218によって、増幅のために透過された後、レーザコムインデクスkは、k=0からk=1にインクリメントされる。n=10は、変更されていないので、この場合も、オフセット処理周波数fP’に対応する各パルスm=12、m=22、m=32、m=42…の間では、光発振器216から10個のパルスが出射される。このように、第1のパルスm=1の後にレーザコムインデクスkをインクリメントすると、処理コム内で第1の光変調器218によって透過される後続するパルスm=12、m=22、m=32、m=42が、1/fOSCの整数値でタイムシフトされ、且つ加工パルスが出射される新たなPRFであるfP’は、fPに等しいままとなる。
【0049】
再び、図4Dを参照すると、方法328は、パルス振幅安定化のために、レーザコムインデクスkをインクリメントした後に、第2の光変調器226に入射する第1のパルスm=12を選択的に遮蔽(428)することを含む。第2の光変調器226を用いて、第1のパルスm=12を遮蔽することによって、パルス間周期が1/fPより長い(短い)レーザコムインデクス付与に続いて、整定期間がパルス振幅を安定化させることができる。
【0050】
連続する2つのパルス間でレーザコムインデクスkをインクリメントすることによって、被加工面におけるレーザビームのシフト=(kにおけるシフト)×(ビーム位置決め器速度×(1/fOSC))となる。例示的な数値の具体例として、fOSC=10MHz、fP=1MHz、ビーム位置決め器装置速度=500nm/μsである場合、k=1のシフト(例えば、パルスm=10から、パルスm=11へのシフト)によって、被加工面上で(500nm/μs×0.1μs)=50nmのシフトが生じる。同じ具体例において、fOSC=100MHzを用いると、被加工面におけるシフト=5nmとなる。これらの値は、ビームの位置変更及び他の位置決め要素を補助し、作動レーザパルスが割り当てられた被加工物の標的箇所を遮ることができるようにするレーザコムの拡大された能力を表している。これに代えて、fPのPRFにおけるパルスのバーストを採用し、ビーム位置コントローラ116と連携する、埋め込まれた制御コンピュータによる指示に従って、レーザコムにインデクスを付してもよいことは当業者にとって明らかである。
【0051】
この説明から、ここに開示した位置エラー補償のための実施の形態の何れかを組み合わせて速度及び正確度を向上させてもよいことは当業者にとって明らかである。更に、位置エラー補償は、図4A、図4B、図4C、図4D及び図5に示す実施の形態に限定されない。例えば、他の実施の形態では、共振器ステージを採用して繰返し制御アルゴリズムを使用することによって、サーボ追従エラー(servo tracking error)を略々ゼロにすることができる。この実施の形態では、標的ラン(target runs)は、高速度及び高加速度で作成される。反復学習アルゴリズムが繰返しエラーを満足できる公差内に減少させることができるように、チャックステージは、(ギャッププロファイリングなしで)正確に同じ動きを繰返す。そして、上述のように、ビーム補償要素を用いて、更なる補償を行ってもよい。
【0052】
これに加えて、又は他の実施の形態では、ビーム偏向要素(例えば、AOD230又はFSM232)がビーム210をステアリングし、時間的に蓄積された速度エラーを補正してもよい。速度が遅過ぎる場合、システム200は、レーザパルスがビームステアリングデバイスの偏向範囲内に留まるように、レーザパルスをスキップしてもよい。システム200が偏向デバイス上の範囲を超えてしまう程に速度が速過ぎる場合、システム200は、第1のラン上のあるリンクを処理した後、第2の又は更なるランを実行して、他の標的を処理してもよい。これは、通常、処理時間が長くなるので、望ましくない場合がある。したがって、幾つかの実施の形態では、システム200は、最低の速度がPRF×ピッチを超えないように、PRF×標的ピッチの積より遅くリンクランを処理するようにしてもよい。
【0053】
別の実施の形態では、1パルスあたりの光発振器出力エネルギが被加工物の効率的なフォトニックコムレーザ処理(photonic comb laser processing)に十分である場合、光発振器216からの単一又は複数の出力パルスを処理で直接使用してもよい。
【0054】
5.変調されたビームレットアレイを用いるフォトニックミリングの具体例
一実施の形態においては、ここに説明したシステム及び方法は、半導体リンク構造を含む被加工物標的のアレイミリング(array milling)のために用いられる。後述するように、図2に示すレーザパルス処理システム200は、パルスレーザ光源212によって生成されたレーザビーム210からビームレットのアレイを生成するように構成されたフォトニックミリングサブシステム(photonic milling subsystem)を含んでいてもよい。フォトニックミリングサブシステムは、各ビームレットを変調し、被加工物118上の標的にビームレットの変調されたアレイを供給する。システム制御コンピュータ112及び/又は埋め込まれた制御コンピュータ114は、特定の被加工物構造を処理するために、ビームレットの変調されたアレイから使用することができるパルスの数を判定するように構成されている。これに加えて、又は他の実施の形態では、主発振器に挿入されるスペクトルバンドパス要素(spectral bandpass element)を変更することによって、ピコ秒MOPAレーザ光源のパルス幅をプログラミングする。ある実施の形態では、上述したように、ビーム位置決めシステムのための基準タイミング要素として主発振器を使用する。
【0055】
後述するように、例えば、傾斜反射板(gradient reflectivity plate)を用いて、ビームレットのアレイを生成してもよい。また、例えば、偏光分離及び再結合光学素子を用いて、ビームレットのアレイを生成してもよい。また、ビームレットのアレイは、1つ以上の回折光学要素を用いて生成してもよい(後に説明する図20参照)。
【0056】
フォトニックミリングサブシステムは、様々な異なるレーザ光源を含んでいてもよい。一実施の形態においては、レーザ光源は、約10kHzより高く、より好ましくは、約100kHzより高いPRFで、1パルスあたりの適切なエネルギを発生させるように構成されたダイオード励起受動モード同期MOPAを含む。Baird他による国際出願公開番号WO2008/014331号に記述されているようなファイバ主発振器を採用したタンデム光増幅器を用いてもよい。このような実施の形態の幾つかでは、ファイバ主発振器は、パルス幅が約100フェムト秒〜約500ピコ秒の範囲にあるレーザパルスを提供する。更に他の実施の形態では、パルス型主発振器ファイバパワー増幅器(pulsed master oscillator fiber power amplifier:MOFPA)を用いてもよい。
【0057】
図6は、一実施の形態に基づく動的ビームアレイを用いて、被加工物標的を処理するためのフォトニックミリングサブシステム600のブロック図である。フォトニックミリングサブシステム600は、レーザ光源610、調整光学素子(conditioning optics)612、ビームレット生成モジュール614、ビームレット変調器616、光検出モジュール618及びビームレット送達光学素子(beamlet delivery optics)620を含む。
【0058】
レーザ光源610からのレーザビーム622は、ビーム調整光学素子612を介して、ビームレット生成モジュール614に方向付けられる。後に詳細に説明するように、ビームレット生成モジュール614は、レーザビーム622をビームレットアレイ624に分離する。説明の目的のために、ここでは、ビームレットアレイ624をq×rビームレットアレイ624とも呼び、qは、第1の方向(例えば、行)におけるビームレットの数を表し、rは、アレイの第2の次元(例えば、列)におけるビームレットの数を表す。ビームレット生成モジュール614は、q×rビームレットアレイ624をビームレット変調器616に供給し、ビームレット変調器616は、入射する各ビームレットを指示された出力ビームレットエネルギ値に減衰させる。ビームレット変調器616は、変調されたq×rビームレットアレイ626を出力し、変調されたq×rビームレットアレイ626は、光検出モジュール618によって抽出されてビームレット送達光学素子620に供給される。ビームレット送達光学素子620は、変調されたq×rビームレットアレイ626を被加工物118に集光する。変調されたq×rビームレットアレイ626のそれぞれのビームレットのエネルギ値は、例えば、図2に示すシステム制御コンピュータ112によって指示される。
【0059】
(A)フォトニックミリングのためのレーザ光源及び変調方法
一実施の形態においては、レーザ光源610は、図2に示し、先に詳細に説明したパルスレーザ光源212を含む。
【0060】
他の実施の形態においては、レーザ光源610は、ピコ秒ファイバ主発振器を採用したタンデム光増幅器を含む。このような実施の形態の1つでは、基本レーザ出力の後段に高調波変換モジュール(図2に示す高調波変換モジュール223等)を接続して、高調波出力を生成してもよい。タンデム光増幅器には、約500ナノ秒〜約1ピコ秒の範囲のパルス幅で、約2.2μm〜約100nmの範囲の波長で、より好ましくは、約2.0μm〜約200nmの範囲の波長で出射するダイオード励起ファイバ主発振器を組み込んでもよい。
【0061】
変調方法は、シードダイオードの直接変調、パルス又は連続波(continuous wave:CW)シード出力の外部変調、又はAOM及び/又はEOMによるパワー増幅段への入力の外部変調を含んでいてもよい。パワー増幅段に供給されるポンプパワーの変調によって、レーザ光源610が生成する一時的なパルス波形を更に変更してもよい。
【0062】
他の実施の形態においては、レーザ光源610は、約500ナノ秒〜約100ピコ秒の間のパルス幅で、約2.2μm〜約150nmの範囲の波長のパルスを出射するQスイッチダイオード励起固体レーザを含む。レーザ光源610は、共振器内又は共振器外の高調波変換光学素子を用いてもよい。レーザ光源610は、CW発光の能力を有していてもよい。この場合、Qスイッチに供給されるRFウィンドウゲート(RF window gate)の変調によって、一時的なパルス波形が制御される。また、固体レーザに供給されるダイオードポンプパワーの変調によって、レーザ光源サブシステムが生成する一時的なパルス波形を更に変更してもよい。
【0063】
他の実施の形態においては、レーザ光源610は、約100ピコ秒〜約10フェムト秒の範囲のパルス幅で、約2.2μm〜約150nmの範囲の波長のパルスを出射するMOPAである。レーザ光源610は、共振器内又は共振器外の高調波変換光学素子を採用してもよい。変調方法は、ダイオードポンプ変調又はAOM及び/又はEOMによるパワー増幅器への入力の外部変調を含んでいてもよい。パワー増幅器に供給されるポンプパワーの変調によって、レーザ光源610が生成する一時的なパルス波形を更に変更してもよい。一実施の形態においては、主発振器は、ファイバレーザ主発振器であり、パワー増幅器は、ファイバパワー増幅器である。この構成は、超高速ファイバレーザ(ultrafast fiber laser)として当業者に知られている。
【0064】
更に他の実施の形態では、レーザ光源610は、約100ピコ秒以下であるが10フェムト秒より長い範囲のパルス幅で、約2.2μm〜約150nmの範囲の波長のパルスを出射するパルス幅可調整MOPAを含む。例えば、図7Aは、一実施の形態に基づく、パルス幅がプログラミング可能なフォトニックミリングシステム700のブロック図である。システム700は、システム制御コンピュータ112を介してパルス幅選択を提供するグラフィカルユーザインタフェース(graphical user interface:GUI)710と、サブシステム制御回路712と、フォトニックミリングサブシステム600’とを含み、フォトニックミリングサブシステム600’は、プログラミング可能なパルス幅要素(programmable pulsewidth element)714を有するレーザ光源610’を含む。ユーザは、パルス幅選択GUI710を用いて、レーザ光源610’が生成するレーザビーム622のパルス幅を選択的に変更できる。サブシステム制御回路712は、ユーザによる選択に対応してプログラミング可能なパルス幅要素714を制御して、パルス幅を調整する。
【0065】
このような実施の形態の1つでは、プログラミング可能なパルス幅要素714は、主発振器に挿入され、約50ピコ秒〜約10フェムト秒の範囲で、レーザ光源610’の離散的なパルス幅の調整を実現する。例えば、図7Bは、一実施の形態に基づく、プログラミング可能なパルス幅要素714がMOPA718の主発振器716に組み込まれた、図7Aに示すフォトニックミリングサブシステム600’のブロック図である。MOPA718は、パワー増幅器720を含む。図7Bに示す例示的な実施の形態では、プログラミング可能なパルス幅要素714は、プログラミング可能なバンドパスフィルタを含む。
【0066】
プログラミング可能なパルス幅要素714を有するレーザ光源610’は、共振器内又は共振器外の高調波変換光学素子を採用してもよい。変調方法は、ダイオードポンプ変調又はAOM及び/又はEOMによるパワー増幅器720への入力の外部変調を含んでいてもよい。パワー増幅器720に供給されるポンプパワーの変調によって、レーザ光源610’が生成する一時的なパルス波形を更に変更してもよい。一実施の形態においては、主発振器716は、ファイバレーザ主発振器であり、パワー増幅器720は、ファイバパワー増幅器である。
【0067】
図6に戻って説明を続けると、他の実施の形態では、レーザ光源610は、約50ピコ秒〜約10フェムト秒の範囲のパルス幅で、約2.2μm〜約150nmの波長のパルスを出射する主発振器再生増幅器を含む。レーザ光源610は、共振器内又は共振器外の高調波変換光学素子を採用してもよい。変調方法は、ダイオードポンプ変調又はAOM及び/又はEOMによるパワー増幅器への入力の外部変調を含んでいてもよい。パワー増幅器に供給されるポンプパワーの変調によって、レーザサブシステムが生成する一時的なパルス波形を更に変更してもよい。
【0068】
(B)ビームレット生成
図8A、図8B及び図8Cは、一実施の形態に基づく、離散的にバンド化された反射板(discretely banded reflectivity plate)810を含むビームレット生成モジュール614を様々な視点から示す図である。図8Aは、第1の表面S1及び第2の表面S2を有する離散的にバンド化された反射板810の側面図である。図8Bは、第1の表面S1の正面図である。図8Cは、第2の表面S2の正面図である。図8A及び図8Bに示すように、第1の表面S1及び第2の表面S2は、それぞれがそれぞれの反射率R1、R2…Rnを有する離散的な部分又はバンド(band)を含む。
【0069】
図8Aに示すように、バンドは、(例えば、レーザ光源610が提供する)入力レーザビーム622が、第1の表面S1を介して離散的にバンド化された反射板810に入射し、第2の表面S2で部分的に反射され、及び第2の表面S2を介して部分的に透過されて第1のビームレット812を形成するように第1の表面S1及び第2の表面S2に配置される。第1の表面S1は、第1のビームレット812の部分を構成しないビームの一部を反射して、第2の表面S2に戻す。第2の表面S2は、再び、ビームを部分的に反射し、ビームを部分的に透過して第2のビームレット814を生成する。第1の表面S1は、第2のビームレット814の部分を構成しないビームの一部を反射して、第2の表面S2に戻す。第2の表面S2は、再び、ビームを部分的に反射し、ビームを部分的に透過して第3のビームレット816を生成する。このプロセスは、離散的にバンド化された反射板810がビームレットアレイ624のための所望の数のビームレットを生成するまで繰返される。図には示していないが、ビームレット生成モジュール614は、入力レーザビーム622の一部を、複数の離散的にバンド化された反射板810に方向付け、q×rビームレットアレイ624を生成する1つ以上のビームスプリッタを含んでいてもよい。
【0070】
図9は、他の実施の形態に基づくビームレット生成モジュール614のブロック図である。この例示的な実施の形態のビームレット生成モジュール614は、第1の1/4波長板910、偏光ビームスプリッタキューブ912、第2の1/4波長板914、第1のミラー916、第3の1/4波長板918及び第2のミラー920を含む。第1の1/4波長板910は、直線偏光入射レーザビーム622を受け取り、偏光ビームスプリッタキューブ912に円偏光ビームを透過する。円偏光ビームの一部は、偏光ビームスプリッタキューブ912の出力表面を介して、第1のビームレット922として透過される。そして、円偏光ビームの他の部分は、偏光ビームスプリッタキューブ912の第1のチャネルに反射され、ここで、第2の1/4波長板914を介して第1のミラー916に方向付けられる。ビームは、第1のミラー916で反射し、第2の1/4波長板914の2回目の通過によって、p偏光光になる。p偏光成分は、偏光ビームスプリッタキューブ912の第2のチャネルに入り、ここで、同様に第3の1/4波長板918を透過し、第2のミラー920で反射し、第3の1/4波長板918を再び透過した後、偏光ビームスプリッタキューブ912の出力表面から、第2のビームレット924として出射される。図9に示すような更なるビームレットアレイ生成モジュール614を用いて、q×rビームレットアレイ624内で更なるビームレットを生成してもよい。これに加えて、又は他の実施の形態では、図20に示すように、1つ以上の回折光学要素2010がq×rビームレットアレイ624内のビームレットを生成してもよい。回折光学要素2010は、2次元又は3次元のアレイ624内で所望のビームレットの分布を生成するように形成された格子を含んでいてもよい。
【0071】
図9に戻って説明すると、第1のビームレット922及び第2のビームレット924は、略々共線上にあってもよく、ビームレットアレイ生成モジュール614の光学部品の整列の変動のために互いにランダムにオフセットしていてもよい。なお、この開示から、第1のビームレット922及び第2のビームレット924の経路が互いに実質的に平行で、且つ所望の距離だけ離間するように、ビームレットアレイ生成モジュール614の光学素子に制御された量のオフセットを導入してもよいことは当業者にとって明らかである。例えば、図9に示す第2のミラー920を、交線の頂点が偏光ビームスプリッタキューブ912の中点に平行な線に沿ったミラーの対(図示せず)に置換してもよい。他の具体例として、ミラー916、920を相補的に(例えば、一方を時計回り、他方を反時計回りに)僅かに傾けることによってオフセットを実現してもよい。第1のビームレット922及び第2のビームレット924の経路をオフセットさせる他の手法も当業者にとって明らかである。
【0072】
(C)標的整列
一実施の形態においては、システム制御コンピュータ112は、図2に示すX−Y位置決め器110を制御して、ビームレット送達光学素子620によって被加工物118上の特定の標的に集光される変調されたq×rビームレットアレイ626の送達を調整する。一実施の形態においては、アドレス指定可能なビームレット(addressable beamlet)のそれぞれについて現在位置信号を生成する。上述したように、レーザコムインデクス付与と組み合わせて、離散的又はマルチチャネルビーム位置補償要素を採用して、所定の正確度限界内の現在位置性能を達成してもよい。
【0073】
例えば、被加工物標的は、半導体デバイス上に配列された導電性リンクを含んでいてもよい。上述のように、レーザパルスは、DRAMデバイスの不良メモリセルへの導電性リンクを除去するために使用してもよい。このような導電性リンクは、1次元パターン又は2次元パターンで配列されていてもよい。例えば、図10は、導電性リンク1010に一般的に用いられる様々なパターンを図式的に示している。ここに示すパターンは、ハシゴ(ladder)パターン1012、フォーク(fork)パターン1014、魚骨(fishbone)パターン1016及び互い違い(staggered)パターン1018を含む。但し、この開示から、如何なるパターンを用いてもよいことは当業者にとって明らかである。
【0074】
一実施の形態においては、システム制御コンピュータ112は、X−Y位置決め器110を動作させるステップを実行し、変調され集光されたq×rビームレットアレイ626が被加工物標的に空間的に一致するように、パターンを繰返す。例えば、図11は、一実施の形態に基づいて、ビームレットアレイ624を用いて、一組の標的(例えば、図10に示す導電性リンク1010)を処理する方法1100のフローチャートである。開始(1110)の後、方法1100は、一組の標的に対して複数のビームレット経路を整列(1112)させることを含む。例えば、システム制御コンピュータ112は、X−Y位置決め器110及びビームレット送達光学素子620を制御して、被加工物118上であるパターンに配列されているq×rターゲットに対して、q×rビームレット経路を空間的に整列させてもよい。
【0075】
ビームレット経路を標的に整列させた後、レーザ光源610がレーザパルス622を生成(1112)し、ビームレット生成モジュール614がレーザパルスをビームレットアレイ624に分割(1116)し、ビームレット変調器616がビームレットアレイ624を変調(1118)し、ビームレット送達光学素子620が変調されたビームレットアレイ626を集光(1120)する。そして、方法1100は、変調され、集光されたビームレットアレイ626によって一組の標的を処理(1122)し、処理すべき標的の組が他にあるかについてクエリ(1124)を行う。処理すべき他の標的の組がある場合、システム制御コンピュータ112は、ビームレット経路を新たな標的の組に整列(1112)させ、方法1100を繰返す。全ての標的の組が処理されると、方法1100は、終了(1126)する。
【0076】
他の実施の形態においては、システム200のシステム制御コンピュータ112は、複数のビームレットによって送達される単一のパルスの合計によって、被加工物標的が連続して処理されるように、被加工物標的ピッチを、レーザPRF、ビームレットアレイピッチ、及びX−Yビーム位置決め器110の速度に調和させる。図12は、一実施の形態に基づく、被加工物標的ピッチ1208とビームレットピッチ1210との間の関係を図式的に示している。ここに示すように、ビームレット1212間の距離又はピッチ(ビームレットピッチ1210)は、標的1214間のピッチ(標的ピッチ1208)及びレーザ光源610のPRFに対して、以下のような関係を有する。
【0077】
c×(ビームレットピッチ)=d×(被加工物ターゲットピッチ)
ここで、c及びdは、整数であり、被加工物ターゲットピッチ=ステージ速度/PRFであり、整数c及びdは、好ましくは、c/d=整数値となるように選択される。
【0078】
図12では、ビームレットピッチ1210は、(ΔxBL)i,jで表され、被加工物ピッチ1208は、(Δxp)hで表され、ここで、iは、ビームレット番号インデクスであり、jは、パルス番号インデクスであり、hは、被加工物標的インデクスである。したがって、ここでは、例えば、特定のパルスjから生成される特定のビームレットiを(bi:pj)と表すことができる。(連続的なスキャンがないとき)ステージが一定の速度で移動している場合、1つの被加工物標的毎に送達可能な最大のパルス数は、ビームレットの数iと等しい。実例として、連続するレーザパルスjのそれぞれから生成された3つのビームレット1212(i=3)について検討する。この具体例では、レーザ光源から連続するレーザパルスが出射されると共に、レーザビーム経路は、図12に示す被加工物標的1214上を左から右に移動する。第1の被加工物標的1214は、第1のパルスから生成される第3のビームレット1212(b3:p1)、第1のパルスから生成される第2のビームレット(b2:p1)、及び第1のパルスから生成される第1のビームレット(b1:p1)によって連続的に処理される。第2の標的1214は、第2のパルスの第3のビームレット(b3:p2)、第2のパルスの第2のビームレット(b2:p2)、及び第2のパルスの第1のビームレット(b1:p2)によって処理される。
【0079】
(D)ビームレット振幅制御
一実施の形態においては、変調され、集光されたビームレットアレイ626は、振幅を指定することができる。アレイ626の各ビームレット1212の振幅は、bj:pi:Aと表され、ここで、Aは、0と1の間の実数であり、0は、最小のパルス振幅を表し、1は、最大のパルス振幅を表し、中間の値は、これらの最小値及び最大値の間でスケーリングされた振幅値を表す。実例として再び3つのビームレット(i=3)のケースについて検討すると、第1の標的1214及び第3の標的1214が最大のパルス数及び1パルスあたりの最大振幅で切削され、第2の標的1214が切削されない場合、フォトニックミリングパターンは、以下のようにプログラミングされる。
【0080】
第1の被加工物標的:(b3:p1:1);(b2:p1:1);(b1:p1:1)
第2の被加工物標的:(b3:p2:0);(b2:p2:0);(b1:p2:0)
第3の被加工物標的:(b3:p3:1);(b2:p3:1);(b1:p3:1)
一実施の形態においては、図6に示す光検出モジュール618は、ビームレット1212毎に特定の被加工物標的1214に印加される総エネルギをリアルタイムで算出するように構成されている。光検出モジュール618は、ビームレット変調器616にエラー補正補償信号を供給して、連続するビームレット振幅bj:pi:Ai,j,hを調整する。これによって、被加工物標的1214に送達される1パルスあたりの総エネルギを非常に精密に制御できる。また、これによって、特定の標的1214に印加される総エネルギを精密に制御できる。例えば、光検出モジュール618は、特定の標的1214に印加される一連のビームレット1212の総エネルギが所定の閾値に達するかこれを超えることを判定できる。閾値に達すると、光検出モジュール618は、ビームレット変調器616を制御して、更なるビームレット1212を遮蔽して、その特定の標的1214に伝達されないようにする。この開示から、他の要素を用いて、1パルスあたりのエネルギ又は特定の標的1214に印加される総エネルギを制御してもよいことは当業者にとって明らかである。例えば、光検出モジュール618が図7A及び図7Bに示すプログラミング可能なパルス幅要素にフィードバックを行うことによって、レーザ光源610’が提供するパルスのエネルギを調整してもよい。
【0081】
6.帯状の領域の処理の具体例
ここに説明したシステム及び方法は、帯状の領域の処理の実施の形態で使用することができ、ここで、パルスは、オンザフライで、被加工物上の標的構造の行に沿って、又は隣接する行間で偏向される。上述のように、図2に示す光発振器216は、高いPRF(例えば、数十kHz〜数MHz)でパルスを提供し、このパルスは、ビーム位置変更要素(例えば、AOD230、FSM232及び/又はレーザコムインデクス付与モジュール234)によって、移動加工窓内で方向付けられる。
【0082】
一例として、図13は、ウェハ1310の処理を表している。従来の連続的なリンクブローイング処理は、各リンクラン毎にウェハ1310を横断するX−Y移動ステージ110の走査を必要とする。ウェハ1310を横断しながら繰返し、前後に走査を行うことによって、ウエハ全体の処理が完了する。マシンは、前後に走査して全てのX軸リンクラン1312(実線で示す。)を処理した後、Y軸リンクラン1314(破線で示す)を処理する。この具体例は、単に例示的なものである。この他のリンクラン及びプロセスの様式も可能である。例えば、ウェハ又は光学レール(optics rail)を動かすことによってリンクを処理することも可能である。更に、リンクバンク及びリンクランは、連続動作で処理しなくてもよい。
【0083】
DRAMを含むウェハ1310では、例えば、X軸リンクラン1312とY軸リンクラン1314との間の領域1316にメモリセル(図示せず)が位置していることがある。説明のために、X軸リンクラン1312及びY軸リンクラン1314の交点の近くのウェハ1310の一部を拡大し、グループ又はリンクバンク内に配列されている複数のリンク1318を示す。包括的に言えば、リンクバンクは、ダイの中心の近くであって、デコーダ回路の近くにあり、何れのメモリセルのアレイの上にもない。リンク1318は、ウェハ1310全体のうちの比較的小さい領域を覆っている。
【0084】
図14、図17及び図18は、帯状領域処理のための代替の実施の形態の具体例を示しており、これらは、例示的なものである。図14、図17及び図18に関連して説明する帯状領域処理の原理は、ここに説明する他の実施の形態(例えば、図2)にも適用できることは当業者にとっては明らかである。
【0085】
図14は、一実施の形態に基づくAOD1410を含むレーザ処理システム1400の概略図である。レーザ1414が出射するパルスレーザビーム1412を偏向するように構成されると共に、2個の連続したパルスを2個の横方向に離間したリンクバンク内の2個の異なるリンクに送達できる非常に高速なデバイスを、AOD1410は含む。一実施の形態においては、AOD1410は、1次元で(例えば、走査方向に垂直に)レーザパルスを偏向するように構成されている。他の実施の形態においては、AOD1410は、2次元で(例えば、走査方向に垂直及び走査方向に平行に)レーザパルスを偏向するように構成されている。他の実施の形態では、2個のAODを用いて、2次元の偏向を提供する。
【0086】
また、一実施の形態においては、レーザパルスが被加工物1418(例えば、複数のリンクを有する半導体ウェハ)に到達するように、又はこれをブロックするように構成されたスイッチ1416を、レーザ処理システム1400は備える。スイッチ616は、AOD又は音響光学変調器(acousto-optic modulator:AOM)デバイスを含んでいてもよい。なお、一実施の形態においては、パルスレーザビーム1412をビームダンプ(図示せず)に選択的に向け、当該レーザパルスが被加工物1418に到達することをブロックするように構成された単一のデバイスを、スイッチ1416及びAOD1410は含む。
【0087】
更に、図14に示すように、レーザ処理システム1400は、異なる偏向を受けたビーム経路(AOD1410を出る実線及び破線として示している)を、フォーカスレンズ1426の入射瞳に対応するミラー1424(又はFSM等の他の向き変更デバイス)上の同じ位置に向けるリレーレンズ1422を備えていてもよい。実際の動作では、AOD1410が提供する異なる偏向角によって、異なるパルスが被加工物1418上の別の位置に向けられる。図には示していないが、一実施の形態では、コンピュータが読取可能な媒体に保存された命令を実行するように構成されているコントローラが、AOD1410を制御し、レーザパルスのシーケンスを、被加工物1418上の所望の位置に選択的に偏向する。
【0088】
この開示から、システム1400は、例示的なものであり、他のシステム構成も可能であることは当業者にとって明らかである。実際、他の様々な例示的システムの実施の形態を後に説明する。
【0089】
図15は、一実施の形態に基づき、横方向に離間した複数のリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520を走査する加工窓1500を示す概略図である。各リンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520は、切断されていない複数のリンク1522と、加工窓1500が複数のリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520に亘って走査しながら、一連のレーザパルスによって切断された複数のリンク1524とを含む。
【0090】
一実施の形態においては、レーザ処理システム1400は、移動加工窓1500内で何れかのリンク1522、1524を切断するように構成されている。このように、図15に示す具体例では、システム1400は、6個のリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520を処理するために、6個の個別のリンクランを用いるのではなく、1回の通過で6個のリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520の全てを処理し、システムスループットを著しく向上させている。一実施の形態においては、例えば、単一のビーム経路を介して提供される100kHzのレーザ、50μm×50μmの加工窓、低性能ステージ(例えば、1軸あたり1Gの加速度及び20msに整定時間)を含むシステムでは、従来のリンク処理システムに比べて、スループットを2〜3倍に高めることができる。このようなシステムは、高PRFレーザ(例えば、300kHz)、高性能ステージ(例えば、1m/秒のリンクラン、5Gの加速度、0.001秒の整定時間)を含む2ビームシステムに匹敵する。性能が低いステージを有するシステムを構築する方が、著しく簡単で、低コストである。更に、シングルビームシステムは、2ビームシステムを構築する場合に比べて、構築がより簡単で、低コストである。
【0091】
一実施の形態においては、加工窓1500は、複数のリンク1524を切断しながら、実質的に連続的な動きで、複数のリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520に亘って走査する。他の実施の形態においては、加工窓1500は、一連の離散的な動きによって、複数のリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520に亘って段階的に走査する。このような実施の形態の1つでは、加工窓は、各ステップ又はホップの間に、2つの互いに排他的なリンク1522、1524の組を含む。すなわち、システム1400は、第1の位置において、加工窓1500内で、軸上方向及び軸交差方向の両方において、リンク1522、1524の第1の組を処理でき、その後、加工窓1500は、リンクの第2の(異なる)の組を含む第2の位置に動く。他の実施の形態においては、加工窓1500は、より小さいステップで走査方向を進み、各リンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520に対応するリンク1522、1524の1個のグループ(例えば、1個の列)は、リンク1522、1524の他のグループが走査窓1500を出るステップの間に走査窓1500に入る。このようにして、システム1400は、各ステップの間に、異なるリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520内の横方向に離間したリンク1522、1524のグループ又は列を処理する。
【0092】
この開示から、加工窓1500及びリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520の相対的寸法に応じて、システム1400は、6個より多くのリンクバンクを1回の通過で処理できることは当業者にとって明らかである。更に、システム1400は、6個未満のリンクバンクを1回の通過で処理してもよく、これは、例えば、1回の通過で単一のリンクバンクを処理することを含む。
【0093】
この開示から、システム1400は、加工窓1500内で実質的に平行に、横方向に離間したリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520を処理することに限定されないことも当業者には明らかである。実際に、加工窓1500を通過するリンク1522、1524は、如何なるパターンに配置してもよい。また、切断されたリンク1524は、如何なる順序で切断してもよい。更に、図15は、X方向(水平方向)への一定の走査方向を示しているが、走査方向は、Y方向(垂直方向)であってもよく、X方向及びY方向の組合せであってもよく、及び/又はウェハのXY平面を巡ってランダムなパターンであってもよい。一実施の形態においては、走査方向は、スループットを最適化するように選択される。
【0094】
例えば、図16は、一実施の形態に基づく、X軸に沿って延びる複数の横方向に離間したリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520及びY軸に沿って延びる複数のリンクバンク1610、1612を走査する加工窓1500を概略的に示している。X軸に沿って延びる横方向に離間したリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520に亘る加工窓1500の1回の通過において、加工窓1500は、Y軸に沿って延びる複数のリンクバンク1610、1612内のリンク1522、1524の少なくとも一部も通過する。再び、図16に示すように、システム1400は、加工窓1500を通過するリンク1522、1524の何れをも選択的に切断することができる。
【0095】
一実施の形態においては、システム1400は、スループットを最大化し、又は向上させるために、加工窓1500内のリンクブローのシーケンスを区分けし、順序付ける。この最大化され又は向上されたスループットを実現するために、システム1400は、加工窓1500のサイズに適合するステージ速度、任意の時点でブローされる加工窓1500内のリンク1522、1524の数、及びリンクブローの順序を算出する。このような実施の形態の1つでは、システム1400は、ブロックされるパルスの数を減少させるようにステージ速度を選択する。また、ステージ速度は、ブローすべき全てのリンクが、加工窓1500の1回の通過で確実にブローされるように選択してもよい。一実施の形態においては、ステージ速度は、一定であってもよい。
【0096】
他の実施の形態では、ステージ速度は、現在、加工窓1500を通過しているブローすべきリンク1524の数に基づいて変更してもよい。例えば、加工窓1500を通過するブローすべきリンク1524が少ない場合、システム1400は、ステージ速度を速めてもよい。より多くのブローすべきリンク1522、1524が加工窓1500を通過する場合、システム1400は、ステージ速度を遅めてもよい。
【0097】
一実施の形態においては、最大ステージ速度VSMAXは、リンクランのグループに亘る加工窓1500内のリンクの最大数(NMAX)を見出すことによって決定される。例えば、最大ステージ速度VSMAXは、加工窓1500の幅(AODwidth)にPRFを乗算し、これをNMAXで除算した値に設定してもよい。これにより、最大ステージ速度VSMAXの良好な推定値が得られる。但し、一実施の形態では、システム1400は、加工窓1500内のリンク1522、1524の可能な「待ち行列(queueing)」を考慮し、速度が上限を超えた場合に、リンクランの短いセクションに亘って、加工不要なリンクのためのバッファを提供する。リンクランの密度によっては、このような待ち行列は、約50%〜約100%の範囲でステージ速度を向上させることができる。幾つかの実施の形態では、この向上の効果は、加速/減速時間及びオーバヘッドによって弱められる。一実施の形態においては、待ち行列を用いて最大ステージ速度VSMAXを決定することは、繰返しプロセスであり、ここで、真の最大速度に近付くと、「リンク待ち行列」のオーバーフローが非常に非線形になる。このような実施の形態では、例えば、リンク密度をフィルタリングし、所与の速度のについて「リンクフロー」を算出し、所与の最大「処理フロー」(PRF×リンクピッチ)の条件下で加工窓1500内の許容できる「蓄積」を算出することによって、より高い線形性を導入できる。
【0098】
移動する加工窓1500内の如何なるリンク1524も切断できるようにするために、図14に示すAOD1410の位置決め精度は、加工窓1500の全体に亘ってシステム精度を維持するために十分高い。現在の高開口数レンズは、約50μmの走査視野を有する。更に、システムリンクブロー正確度は、平均+3σ<0.18μmより高いことが望ましい場合がある。例えば、AOD1410が、エラーバジェットに対し、約20nmのシステムの不正確性(system inaccuracy)に寄与する場合、一実施の形態に基づくAOD1410は、約1/2500(1 part in 2500)の位置決め正確度を有する。
【0099】
図17は、一実施の形態に基づく、2つの偏向デバイスを備えるレーザ処理システム1700の概略図である。システム1700は、図14に関連して説明した、レーザ1414、スイッチ1416、AOD1410、リレーレンズ1422、ミラー1424及びフォーカスレンズ1426を含む。更に、システム1700は、ビーム経路内に他のAOD1712及び他のリレーレンズ1714を含んでいる。
【0100】
一実施の形態においては、AOD1410は、レーザビームをX方向に偏向するように構成されており、AOD1712は、レーザビームをY方向に偏向するように構成されている。リレーレンズ1422は、AOD1410からAOD1712にレーザビームを結像する。リレーレンズ1714は、AOD1712からミラー1424にレーザを結像する。このように、システム1700は、レーザパルスを2つの方向に向け直すことができる。なお、一実施の形態においては、図14に示すAOD1410は、レーザビームを2つの方向に偏向することができる単一のデバイスを備える。
【0101】
図18は、一実施の形態に基づく、テレセントリック角度検出器(telecentric angle detector)1814を含むレーザ処理システム1800の概略図である。この実施の形態では、半透明ミラー1810は、レーザビームの一部をフォーカスレンズ1426に向け、レーザビームの一部を、更なるリレーレンズ1812を介して、テレセントリック角度検出器1814に向ける。テレセントリック角度検出器1814は、カッドセル、PSD又はビーム角度を検出するように構成されたカメラ検出器を含んでいてもよい。上述のように、エラー補正及び/又は較正のために、テレセントリック角度検出器1814を用いて、AOD1410、1712の一方又は両方にフィードバックを提供してもよい。
【0102】
一実施の形態においては、システム1400は、単一のパルスを用いて、各リンク1524をブローし、加工窓1500内の個別のリンク1524を処理する。AOD1410は、加工窓1500が走査方向を移動している間に、2個の連続するレーザパルスの間で、加工窓1500内で集光されたリンクパルスの位置をリンク1524に迅速に向け直す。従来のリンク処理システムは、非常にPRFが高いレーザが生成するパルスのうち、約半分から約99%をブロックすることがあるが、システム1400は、パルスの大部分又は全てを使用することができる。したがって、被加工物1418をより速く動かすことなく、スループットを大幅に向上させることができる。
【0103】
これに加えて、又は他の実施の形態では、システム1400は、被加工物1418上の単一の位置を2個以上のパルスで処理した後、AOD1410を用いて後続するパルスを被加工物1418上の他の位置に向けてもよい。システム1400は、例えば、エネルギがより低い10個パルスをリンク1524に供給した後、被加工物1418上の異なる位置にレーザビームを向け直してもよい。このように、システム1400は、非常に高い(例えば、約1MHz〜約100MHzの範囲の)PRFで生成されるパルスを方向付け、多くのブローによって所望のリンク1524を狙う有効な手法を提供する。
【0104】
加工窓1500が被加工物1418に対して継続的に動く場合、一実施の形態では、1個以上のパルスをリンク1524に送達しながら、集光されたスポット位置とリンク位置との間の固定の関係を維持するために、AOD1410を追跡に使用してもよい。また、追跡は、横方向に離間した複数のリンクとの固定の関係を維持するために用いることもできる。
【0105】
一実施の形態においては、被加工物1418上の位置間の切替時間は、1個のレーザパルス周期より短い。他の実施の形態においては、切替時間は、レーザパルス周期と同じオーダーである。更に他の実施の形態では、切替期間は、レーザパルス周期より長い。例えば、システム1400が10個のレーザパルスでリンク1524を処理し、3個又は4個のレーザパルス周期で1個のリンクから次に切り替われば、レーザ1414が有効に使用される。
【0106】
新たな位置に切り替わる(例えば、加工窓1500が図15及び図16に示す走査方向に進む)前に、10個のパルスの全てを単一のリンク1522、1524に送達すること(上述した具体例)に代えて、2個以上の横方向に離間した(例えば、走査方向に垂直に離間した)リンク1522、1524に2個以上のパルスを送達してもよい。例えば、6個の横方向に離間したリンク1522のそれぞれ(図15に示すリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520のそれぞれ)に単一のパルスを送達することが望ましいことがある。この場合、AOD1410は、加工窓1500を新たな位置に移動させる前に、6個の連続したレーザパルスを6個の横方向に離間したリンク1522に偏向することができる。
【0107】
図19A、図19B及び図19Cは、一実施の形態に基づく、一連のレーザパルス1914を、それぞれの位置変更プロファイル1916、1918、1920に関連付けたタイミングチャート1900、1910、1912を示している。この開示から、図19A、図19B及び図19Cに示すタイミングチャート1900、1910、1912は、例示的なものに過ぎず、リンク毎に送達されるパルスと、リンク間のシフトに用いられるパルス期間との如何なる組合せを用いてもよいことは当業者にとって明らかである。図19Aに示す実施の形態では、ブロー期間の間に単一のレーザパルスがリンクに送達される。そして、例えば、シフト期間の間に、AOD又は高速ビーム偏向器(図示せず)が各パルスの間でシフトし又は位置を変更する。このように、この具体例では、一連のレーザパルス1914の各レーザパルスは、異なるリンクに送達される。
【0108】
図19Bに示す実施の形態では、AOD又は高速ビーム偏向器は、各ブロー期間の間でシフトするために、図19Aの具体例に比べてより長い時間を費やす。具体的には、第1のパルスが第1のリンクに送達された後、第2のパルスが第2のリンクに送達される前に、AOD又は高速ビーム偏向器は、3パルス期間の間にシフトする。後述するように、スイッチ(例えば、更なるAOD及びビームダンプ)を用いて、シフト期間の間に、使用しないレーザパルスが被加工物の表面に到達しないようにブロックしてもよい。
【0109】
図19Cに示す実施の形態では、第1のブロー期間の間、第1の複数(図では9個)のパルスが第1のリンクに送達され、幾つか(図では約3個)のパルス期間の間、AOD又は高速ビーム偏向器がシフトし、第2のブロー期間の間、第2の複数のパルスが第2のリンクに送達される。なお、一実施の形態においては、例えば、上述したAOD1410等の高速偏向デバイスを用いて、2つ以上の第1(及び/又は第2)の複数のパルスを、第1(及び/又は第2)のブロー期間の間に、横方向に離間した複数のリンクに亘って分散させてもよい。このようにして、一連のレーザパルス1914内のパルスをできるだけ多く使用するために、パルスを効率的に分散させることができる。一実施の形態においては、使用されるパルスの数は、従来のリンク処理システムで使用されるパルスに比べて、約1%より大きく増加する。
【0110】
被加工面上の完全に又は部分的に重なる領域内の同じターゲットを処理するために向けられるレーザスポット、被加工面上の個別のターゲットに向けられるが、ビーム(例えば、ガウステイル(Gaussian tail))の一部が重なるレーザスポット、又は検出器、例えば、パルスエネルギ又は反射パルスエネルギ検出器において重なるレーザスポットでは、コヒーレントクロストークの問題が生じることがある。異なるレーザスポットのガウステイルが重なる場合、例えば、2つの近接する構造(例えば、リンク)の間の領域におけるクロストーク及び干渉の結果、光学エネルギレベルが望ましくない高さになることによってダメージが生じることがある。そこで、上述した実施の形態では、どの時点でも、被加工物上の加工窓内に単一のレーザスポットのみが入射するようにしている。被加工物上で空間的に重なるが、順次的に供給される2つのレーザスポットは、互いに干渉せず、この結果、コヒーレントクロストークを低減又は防止することができる。但し、他の実施の形態では、被加工物上の加工窓内に複数のスポットが同時に入射することがある。例えば、2つ以上のビーム経路を介して、2つ以上のレーザビームを提供してもよい。
【0111】
1又は複数のブローでサイトを処理する際、幾つかの理由から、高速ビームステアリングメカニズムを用いて集光されたスポットをステアリングすることが望ましい。
【0112】
まず、異なるリンクブロー箇所を切り換えるためにビーム偏向を行う必要がある。次に、被加工物に対してプロセス領域が継続的に移動するシステムでは、追跡コマンドを含むことが望ましい場合がある。このコマンドは、1つ以上のレーザパルスをリンクに送達しながら、焦点位置とリンク位置との間の固定の関係を維持することに役立つ。追跡コマンドは、特に、複数のパルスが1つのリンクを標的にする場合に有用である。
【0113】
更なるビーム偏向又はステアリングを用いて、移動ステージの追跡エラーを補償してもよい。例えば、平坦なXYステージを用いて、集光されたレーザスポットの下でウェハを位置決めする場合、ビームステアリングを用いて、残りのXYステージ追跡エラー(例えば、所望の軌道と実際の軌道との間の瞬間的な差分)を補償することができる。これは、出願人のFSMエラー補償と同様である。
【0114】
また、他の種類のシステムエラー又は外乱を補正するために、ステアリングメカニズムを用いることもできる。例えば、9830プラットホームでは、最終的な集光対物レンズの動きを感知し、FSMを用いて、結果として生じる被加工物における焦点の動きを補正する。これは、同じステアリングメカニズムを用いても行うことができる。また、ビーム位置エラー、例えば、レーザレールの位置安定性において感知された不正確性を補償することができる。また、このステアリングメカニズムを用いて、他のエラー、例えば、温度ドリフトを補正することでもできる。
【0115】
AOM、EOM又は他のステアリングメカニズムに送達される正味の追跡又はステアリングコマンドは、上述した1つ以上のステアリング項目を累積又は加算したものである。また、上述した以外の理由から、ビームをステアリングすることが望ましい場合もある。
【0116】
一実施の形態では、位置精度が高い高速ビームステアリングデバイスは、処理エリアに亘ってシステムの精度を維持するために、十分小さい必要がある。現在の高開口数レンズは、約50μmの走査視野を有し、システムリンクブロー精度は、平均+3σ<0.18μmより高いことが望ましい場合がある。例えば、AODが、エラーバジェットに対し、約20nmのシステムの不正確性に寄与する場合、AODは、約1/2500(1 part in 2500)の位置決め精度を有する必要がある。これは、妥当な要求である。何らかの閉ループ感知及びフィードバック補正(closed-loop sensing and feedback correction)と共にAOM又は高速ビームステアリングデバイスを駆動することが望ましい場合もある。
【0117】
これを行う1つの手法は、AODを用いて、望まれないパルスを、位置敏感型検出器(position sensitive detector:PSD)又は使用されないパルスの位置を測定できるカッドセル(quad cell)を含むビームダンプに偏向することである。この技術によって、温度ドリフト又はAOM較正における温度変化を検出できる。
【0118】
また、AOMを介して追加的なビームを出射し、これらのビームがどのように偏向されるかを測定することもできる。例えば、切断用のレーザに加えて、AOMを介してヘリウムネオンCWレーザを方向付け、この結果偏向されたCWビームの一部を、フィードバック目的のために又はドリフトの検出のためにPSD又はカッドセルに方向付けてもよい。
【0119】
本発明の基底にある原理から逸脱することなく、上述の実施の形態の詳細に多くの変更を加えることができることは当業者にとって明らかである。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって定義される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ処理システムに関する。詳しくは、本発明は、光クロック(photonic clock)及び位置データに基づいて、増幅するパルスの選択と、被加工標的への整列とを同期させるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子材料等の基板の検査、処理、マイクロ機械加工を含む様々な産業用途において、レーザを使用することができる。例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(dynamic random access memory:DRAM)を修理するために、第1のレーザパルスを用いて、DRAMデバイスの不良メモリセルへの導電性リンクを除去し、次に、第2のレーザパルスを用いて、予備のメモリセルへの抵抗リンクを除去して、不良メモリセルをこれに置換する。リンク除去を必要とする不良メモリセルは、不規則に存在するので、ワークピース位置決め遅延時間のために、このようなレーザ修理処理に必要な時間は、通常、単一のパルス間時間ではなく、様々な範囲のパルス間時間に亘る。
【0003】
除去するべきリンクのバンクは、通常、直線的な行としてウェハ上に配置される。リンクは、一般的に、リンクラン(link run)内で処理される。リンクランの間、ステージ位置決め器(stage positioner)が集光されたレーザスポットの箇所を横切って、リンクの行を通過しながら、レーザビームがパルス駆動される。ステージは、通常、一度に、単一の軸に沿って移動し、各リンク位置では止まらない。この製造技術は、当分野では、オンザフライ(on-the-fly:OTF)リンク処理と呼ばれ、所与のウェハ上のリンクを修理できる速度の効率を高め、この結果、DRAM製造プロセスの全体の効率を向上させている。
【0004】
レーザのパルス繰返し周波数(pulse repetition frequencies:PRF)及びリンクラン速度が高くなると、ステージ位置決め器への要求も厳しくなる。ステージ加速度及び速度は、レーザPRF程は高められていない。したがって、間もなく実用化される高PRFレーザ(例えば、数百kHz又はMHzの桁のPRFを有するレーザ)の利点を最大限に活用することは困難である。
【0005】
一般的には、現在のリンク処理システムにおけるレーザパルスの真の利用率は、かなり低い。例えば、約600,000個のリンクを含む典型的なウェハは、約600秒で加工される。これは、有効ブローレート(effective blow rate)が1kHzであることを意味する。この例示的なウェハ処理システムが100kHzのPRFを有するレーザ光源を使用する場合、100個のレーザパルスのうち、ウェハの表面に達するのは、約1個のレーザパルスのみである。
【0006】
二重ビームレーザシステム及び多ビームレーザシステムは、一般的に、複雑なレーザ光学部品サブアセンブリ(laser optical subassemblies)を使用し、通常、製造費用が高価である。更に、レーザ設計の近年の進歩によって、この手法に新たな問題が生じている。例えば、ある高パワー、短パルス幅(例えば、ピコ秒又はフェムト秒の桁)のレーザは、主発振器パワー増幅器(master oscillator-power amplifier:MOPA)の手法に基づいており、この場合、モード同期レーザ発振器(mode-locked laser oscillator)が約10MHz〜約100MHzの範囲の繰返し率で安定したシードパルスを提供する。これらのレーザ発振器は、能動的にモード同期させてもよく、受動的にモード同期させてもよい。能動同期発振器は、タイミング目的のためにその出力パルス位相及び/又は周波数を調整できる。一方、受動モード同期主発振器では、このように容易に出力周波数を変更することはできない。したがって、レーザ処理システムは、受動モード同期主発振器が提供する基本周波数に動作を同期させる。
【0007】
パワー増幅器(例えば、ダイオード励起光利得媒質)は、主発振器からの選択されたパルスを増幅する。典型的なダイオード励起Qスイッチレーザの場合と同様に、これらの増幅されたパルスのエネルギは、パルス間周期(interpulse period)の関数である。真の動作繰返し率(例えば、パワー増幅器から出射されるパルスの周波数)は、通常、基本の(例えば、主発振器の)繰返し率の約数であり、通常、主発振器周波数の約10〜1000分の1である。
【0008】
所望のレーザ動作のためには、レーザは、ビーム位置決めサブシステムをレーザのパルスタイミングに従属させながら、一定の繰返し率でパルスを出射する必要がある。しかし、パルス配置正確度を維持しながら、このようなビーム位置タイミングを達成することは、かなり難しい場合がある。例えば、上述した繰返し率のためのタイミング窓は、約10ナノ秒〜約100ナノ秒の範囲であることがある。サーボ制御システムは、通常、このように小さな、固定されたタイミング窓内では、高い正確度(例えば、10nm以内)のパルス配置を保証できない。
【0009】
多くの産業用レーザ加工用途(例えば、メモリデバイスの冗長回路内のリンク切断、超小型ビア穴あけ、部品トリミング、材料切断又はスクライビング等)では、被加工物上でレーザパルスを位置決めする運動制御システムとの座標決め(coordination)を行い、高エネルギレーザパルスが出射される。この座標決めは、厳密なタイミングを用いることが多く、加工ビームの動きプロファイルに依存し、このタイミングは、任意であってもよい。タイミング精度を用いて処理システムの正確度を維持しながら、パルスコマンドのタイミングを任意にすると、パルス幅やピークパワー等のレーザ性能の側面が劣化することがある。
【0010】
多くのレーザ処理システム設計は、高いパルス繰返し率で一定のパルスエネルギを得るためにQスイッチレーザが組み込まれている。但し、このようなレーザは、パルス間周期の値(及びその変化)に敏感なことがある。したがって、パルス幅、パルスエネルギ及びパルス振幅安定性は、パルス間周期が変わると、変化することがある。このような変化は、(例えば、直前のパルス間周期の関数として)静的であることもあり、及び/又は(例えば、パルス間周期履歴の関数として)動的であることもある。この敏感度は、通常、レーザが公称繰返し率(通常200kHz未満)で出射されるようにレーザ処理システムを動作させることによって、低減又は最小化され、僅かな繰返し率の偏差によって生じるパルス特性の偏差は許容される。
【0011】
このような手法は、通常、適切な被加工箇所に向けてレーザを「オンデマンド」で出射して(又はステージ速度、伝搬遅延、パルス形成時間、及び他の遅延等の既知の因子に基づいて、その箇所にパルスを衝突させて)、所望のパルス配置正確度を維持するように所望のビーム軌道を制御することによって達成される。被加工箇所は、繰返し率が略々一定になるように配列される。レーザ安定性問題を考慮して、処理コマンドに「ダミー」の被加工箇所を挿入してもよい。「ダミー」の被加工箇所は、休止期間の間、繰返し率を略々一定に保ち、「ダミー」のパルスは、例えば、機械的シャッタ、音響光学変調器(acousto-optic modulator:AOM)及び電気光学変調器(electro-optic modulator:EOM)等のビーム変調デバイスによって被加工物から遮蔽される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施の形態においては、レーザ処理システムは、被加工物に対してビーム送達座標を整列させるビーム位置決めシステムを含む。ビーム位置決めシステムは、この整列に対応する位置データを生成する。また、システムは、パルスレーザ光源と、パルスレーザ光源からレーザパルスを受け取るビームレット生成モジュールとを含む。ビームレット生成モジュールは、レーザパルスからビームレットアレイを生成する。ビームレットアレイは、複数のビームレットパルスを含む。システムは、更に、ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスの振幅を選択的に変調するビームレット変調器と、変調されたビームレットアレイを、位置データに対応する被加工物上の箇所の1つ以上の標的に集光するビームレット送達光学素子とを備える。
【0013】
ある実施の形態では、システムは、ビームレットアレイ内のビームレットパルスを抽出し、ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスの総エネルギを判定する光検出モジュールを更に備える。光検出モジュールは、更に、ビームレット変調器にエラー補正補償信号を提供して、被加工物上の特定の標的に供給される連続するビームレット振幅を調整するように構成されている。光検出モジュールは、更に、被加工物上の特定の標的に送達された一連のビームレットパルスが提供するパルスエネルギの合計が所定の閾値に達し又はこれを超えていることを判定し、ビームレット変調器を制御して、更なるビームレットパルスが特定の標的に到達することを防ぐように構成されている。
【0014】
一実施の形態では、システムは、ビーム位置決めシステムと協働して、整列を提供するシステム制御コンピュータを更に備え、整列は、被加工物標的ピッチを、パルスレーザ光源のパルス繰返し周波数(PRF)、ビームレットアレイピッチ、及びビーム位置決めシステムと被加工物との間の相対速度(ステージ速度)に調和させる。
【0015】
他の実施の形態においては、被加工物をレーザで処理するための方法は、レーザパルスを生成するステップと、レーザパルスから、複数のビームレットパルスを含むビームレットアレイを生成するステップと、ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスの振幅を変調するステップと、変調されたビームレットアレイを、被加工物上の1つ以上の標的箇所に集光するステップとを有する。
【0016】
本発明の更なる側面及び利点は、添付の図面を参照して進められる好ましい実施の形態の以下の詳細な記述から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】被加工物(X−Y)位置決め器を含む従来のレーザパルス処理制御システムのブロック図である。
【図2】一実施の形態に係るレーザパルス処理システムのブロック図である。
【図3】図2に示すシステムを用いて被加工物を処理する一実施の形態に係る方法を示すフローチャートである。
【図4A】位置エラーを補償するための、ある実施の形態に係る例示的な方法を示すフローチャートである。
【図4B】位置エラーを補償するための、ある実施の形態に係る例示的な方法を示すフローチャートである。
【図4C】位置エラーを補償するための、ある実施の形態に係る例示的な方法を示すフローチャートである。
【図4D】位置エラーを補償するための、ある実施の形態に係る例示的な方法を示すフローチャートである。
【図5】一実施の形態に係るベクトル処理コムの使用を図式的に示す図である
【図6】動的ビームアレイを用いて被加工物標的を処理するための一実施の形態に係るフォトニックミリングサブシステムのブロック図である。
【図7A】パルス幅がプログラミング可能な一実施の形態に係るフォトニックミリングシステムのブロック図である。
【図7B】一実施の形態に基づく、プログラミング可能なパルス幅要素が主発振器に組み込まれた図7Aに示すフォトニックミリングサブシステムのブロック図である。
【図8A】一実施の形態に基づく、離散的にバンド化された反射板を含むビームレット生成モジュールを様々な視点から示す図である。
【図8B】一実施の形態に基づく、離散的にバンド化された反射板を含むビームレット生成モジュールを様々な視点から示す図である。
【図8C】一実施の形態に基づく、離散的にバンド化された反射板を含むビームレット生成モジュールを様々な視点から示す図である。
【図9】他の実施の形態に係るビームレット生成モジュールのブロック図である。
【図10】導電性リンクに一般的に用いられる様々なパターンを図式的に示す図である。
【図11】一実施の形態に基づいて、ビームレットアレイを用いて、一組の標的を処理する方法のフローチャートである。
【図12】一実施の形態に基づく、被加工物標的ピッチとビームレットピッチとの間の関係を図式的に示す図である。
【図13】ウェハの処理を説明する図である。
【図14】一実施の形態に基づく、AODを含むレーザ処理システムの概略図である。
【図15】一実施の形態に基づき、横方向に離間した複数のリンクバンクを走査する加工窓を示す概略図である。
【図16】一実施の形態に基づく、X軸に沿って延びる複数の横方向に離間したリンクバンク及びY軸に沿って延びる複数のリンクバンクを走査する加工窓を示す概略図である
【図17】一実施の形態に基づく、2つの偏向デバイスを備えるレーザ処理システムの概略図である。
【図18】一実施の形態に基づく、テレセントリック角度検出器を含むレーザ処理システムの概略図である。
【図19A】一実施の形態に基づく、一連のレーザパルスを、それぞれの位置変更プロファイルに関連付けたタイミングチャートである。
【図19B】一実施の形態に基づく、一連のレーザパルスを、それぞれの位置変更プロファイルに関連付けたタイミングチャートである。
【図19C】一実施の形態に基づく、一連のレーザパルスを、それぞれの位置変更プロファイルに関連付けたタイミングチャートである。
【図20】他の実施の形態に基づく、図6に示すような後の変調及び被加工物への送達のためのビームレットのアレイを生成するように構成された回折光学要素のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一実施の形態においては、レーザ処理システム内でビーム位置決め器制御要素(beam positioner control element)を調整するマスタタイミング要素として、光クロック(photonic clock)が使用される。光クロックは、パルスレーザ光源の光発振器からのパルス出力であってもよい。光発振器は、シード発振器又は主発振器であってもよい。ビーム位置決め器制御要素は、光発振器からのタイミング信号を使用して、被加工物上の標的構造の整列と、レーザシステムからのレーザパルスの出射とを同期させる。標的構造を処理するために、レーザ光源からの1つ以上のパルスが、レーザシステムの光学要素を透過される。レーザ光源からのパルスを振幅分割して、標的構造を処理するためのパルスのアレイを生成してもよい。
【0019】
ここに開示するレーザシステム及び方法は、様々な被加工標的を処理するために用いることができる。例えば、一実施の形態を用いて、DRAM、SRAM及びフラッシュメモリを含む様々な半導体メモリデバイス内の導電性リンク構造を切断してもよく、例えば、銅/ポリアミド積層材料等のフレキシブル回路内、及び集積回路(IC)パッケージ内にレーザ穴あけされた超小型ビアを形成してもよく、半導体のレーザプロセス若しくはマイクロマシニング、例えば、半導体集積回路、シリコンウェハ及び太陽電池のレーザスクライビング又はダイシングを行ってもよく、金属、誘電体、ポリマ材料及びプラスチックのレーザマイクロマシニングを行ってもよい。ここに開示する実施の形態に基づいて、他の多くの種類の被加工物及び/又は被加工物構造を処理できることは当業者にとって明らかである。
【0020】
以下で参照する図面では、同様の要素には同様の参照符号を付している。以下の記述では、本発明の実施の形態の完全な理解のために多くの具体的な詳細事項を提示する。但し、具体的な詳細事項の1つ以上がなくても、又は他の方法、部品又は材料によっても本実施の形態を実施できることは、当業者にとって明らかである。更に、幾つかの場合、本発明の側面が不明瞭になることを回避するために、よく知られている構造、材料又は操作については詳細に図示又は説明していない。更に、ここに説明する特徴、構造又は特性は、適切な如何なる手法で、1つ以上の実施の形態において組み合わせてもよい。
【0021】
1.トリガ可能なレーザ光源の典型的な同期
典型的なレーザ処理システムでは、タイミング信号を用いて、レーザ光源をトリガして、適切なタイミングで(例えば、ステージ速度、システム遅延及び他のパラメータに基づいて)レーザパルスを出射させ、被加工物上の標的をレーザパルスで照射する。例えば、図1は、被加工物(X−Y)位置決め器110を含む従来のレーザパルス処理制御システム100のブロック図である。同様のシステムは、本出願の譲受人に譲受されているBaird他による米国特許第6,172,325号に開示されている。システム100は、システム制御コンピュータ112及び埋め込まれた制御コンピュータ114を含み、これらは、連携してビーム位置コントローラ116を制御する。ビーム位置コントローラ116は、X−Y位置決め器110から位置情報を受け取り、X−Y位置決め器110は、紫外線(UV)レーザビーム120に対して被加工物118を位置決めする。UVレーザビーム120は、図示している折り返しミラー122に加えて、様々な光学素子(図示せず)を介して伝播させてもよい。また、X−Y位置決め器110は、Z位置決め器124を含んでいてもよく、Z位置決め器124は、Xステージ及びYステージの何れかに連結してもよい。
【0022】
UVレーザシステム126は、ダイオード励起、音響光学QスイッチNd:YVO4レーザ等のQスイッチ固体赤外線(IR)レーザ128を含む。また、UVレーザシステム126は、IRレーザ128のパルス振幅を変調する音響光学変調器(AOM)130と、周知の第2高調波、第3高調波又は第4高調波変換プロセスを使用することによって、IRレーザ128からの赤外波長発光を緑色及び/又はUV波長に変換する周波数逓倍器132とを含む。仮想線内に示すAOM134の位置によって示すように、AOM130を周波数逓倍器132の後に配置してもよい。何れの実施の形態においても、レーザコントローラ136が、AOM130(又はAOM134)の透過率を制御して、被加工物118に方向付けられたUVレーザビーム120を透過させ又は遮蔽する。
【0023】
システム制御コンピュータ112は、バス138を介して、埋め込まれた制御コンピュータ114に、被加工物118上の処理箇所の位置座標を伝える。典型的な試料加工用途において、被加工物118は、可溶リンク等の一定間隔で離間した標的又はデバイス構造を含み、これらのうちの幾つかのみがレーザ処理される。UVレーザビーム120によって処理される箇所を標的箇所(target location)と呼び、UVレーザビーム120によって処理されない箇所を中間箇所(intermediate location)と呼ぶ。埋め込まれた制御コンピュータ114は、標的箇所座標に中間箇所座標を加え、中間箇所座標は、IRレーザ128に対し、略々等しい時間間隔離間している。埋め込まれた制御コンピュータ114は、標的箇所座標及び中間箇所座標を、1つずつ、所定のレートで、バス140を介して、ビーム位置コントローラ116のレジスタ142に供給し、同時に、制御データを、バス144を介して、レーザコントローラ136のレジスタ146にロードする。この所定のレートは、X−Yコントローラ110の運動速度を制御し、制御データは、座標箇所が処理すべき標的箇所であるかを示し、更にモード及びタイミング情報を含む。
【0024】
レーザコントローラ136は、オートパルス(autopulse)モード及びパルスオンポジション(pulse-on-position)モードの何れかでタイマ148を動作させる。オートパルスモードでは、タイマ148は、レジスタ146の制御データに応じて始動する。パルスオンポジションモードでは、タイマ148は、ビーム位置コントローラ116内の比較器152からの位置一致信号150の受信に応じて始動する。ビーム位置コントローラ116内の位置エンコーダ154は、X−Y位置決め器110の現在位置を比較器152に通知し、この現在位置が、レジスタ142に格納されている位置座標に一致したとき、被加工物118が標的位置又は中間位置に対して適切に位置決めされたことを示す位置一致信号150が生成される。これに応じて、被加工物118が標的位置に対して位置決めされると、タイマ148は、同時に、(Qスイッチゲートライン158を介して)IRレーザ128内のQスイッチを動作させ、タイマ148から埋め込まれた制御コンピュータ114にサイクルダン割込(cycle done interrupt)156が供給されるまで、AOM130を透過状態に設定する。AOM130の透過率は、レーザパルスゲートデバイスとして、又はパルス振幅変調器として制御可能である。このように、IRレーザ128を「オンデマンド」でトリガして、被加工物118上の所望の標的を処理することができる。
【0025】
2.光クロック同期を用いる例示的システム
超高速レーザシステム内で光発振器を用いて、公称的に固定された周波数コムでパルスを出射してもよい。但し、上述したシステム100とは異なり、光発振器は、直接的にトリガして、「オンデマンド」でパルスを生成することはできない。すなわち、光発振器は、既知の光発振器周波数foscにおいて、離散的時間間隔でパルスを提供する。したがって、ここに開示するある実施の形態では、レーザ制御システムは、光発振器が第1のPRFであるfoscで出射する光パルス出力から派生するクロックを使用する。レーザ制御システムは、被加工物位置データと、光発振器クロックからのタイミング情報とを用いて、周波数コムから増幅するパルスを選択し、第2のPRFで処理周波数fpを生成し、更に、処理周波数fpで出射されたパルスを選択し、選択された被加工物標的に向けて透過させ、ビーム位置決めシステム及び/又は協働するビーム位置補償要素を制御して、選択されたパルスを被加工物標的に方向付ける。
【0026】
図2は、一実施の形態に係るレーザパルス処理システム200のブロック図である。図1に示すシステム100と同様に、システム200は、X−Y位置決め器110、システム制御コンピュータ112、埋め込まれた制御コンピュータ114及びビーム位置コントローラ116を含む。ビーム位置コントローラ116は、X−Y位置決め器110から位置情報を受け取り、X−Y位置決め器110は、レーザビーム210に対して被加工物118を位置決めする。図には示していないが、レーザビーム210は、様々な光学素子を介してレーザビーム経路に沿って、折り返しミラー122に伝播し、折り返しミラー122は、レーザビーム210を被加工物118に再方向付けする。また、X−Y位置決め器110は、Z位置決め器124を含んでいてもよく、Z位置決め器124は、Xステージ及びYステージの何れかに連結してもよい。
【0027】
システム制御コンピュータ112は、バス138を介して、埋め込まれた制御コンピュータ114に、被加工物118上の処理箇所の位置座標を伝える。一実施の形態においては、被加工物118は、可溶リンク等の一定間隔で離間したデバイス構造を含み、これらのうちの幾つかのみがレーザ処理される。上述したように、レーザビーム210によって処理される箇所を標的箇所と呼び、レーザビーム210によって処理されない箇所を中間箇所と呼ぶ。
【0028】
また、システム200は、パルスレーザ光源212及びレーザサブシステムコントローラ214(「LSC」と表している。)を含む。一実施の形態では、図2に示すように、パルスレーザ光源212は、光発振器216、第1の光変調器218及び増幅器220を含む。また、パルスレーザ光源212は、後置増幅器221及び高調波変換器モジュール223を含んでいてもよい。一実施の形態においては、光発振器216は、本出願の譲受人に譲受されているSun他による米国特許番号第6,574,250号に開示されているモード同期発振器(mode-locked oscillator)である。このような実施の形態では、パルスレーザ光源212は、モード同期パルスレーザ(mode-locked pulsed laser)である。これに代えて、光発振器216は、Weingarten他による米国特許第6,538,298号に開示されているような半導体吸収ミラー受動モード同期発振器(semiconductor absorbing mirror passively mode-locked oscillator)であってもよい。また、他の発振器を用いてもよいことは当業者にとって明らかである。
【0029】
第1の光変調器218は、例えば、音響光学変調器(AOM)、電気光学変調器(EOM)、又は当分野で周知の他の光変調器であってもよい。増幅器220及び/又は後置増幅器221は、例えば、光学的に励起される利得媒質を含んでいてもよい。高調波変換器モジュール223は、周知の高調波変換を用いて、入射出力パルスを高調波周波数に変換する非線形結晶を含んでいてもよい。
【0030】
光発振器216の光クロック222は、レーザサブシステムコントローラ214を介して、埋め込まれた制御コンピュータ114にパルスタイミングデータを供給する。埋め込まれた制御コンピュータ114は、パルスタイミングデータを用いて、離間する中間箇所座標を標的箇所座標に加え、ベクトル処理コム(vector process comb)を生成する。ベクトル処理コムは、標的及び中間標的ベクトル座標の行列を表す。埋め込まれた制御コンピュータ114は、バス140を介して、ビーム位置コントローラ116内のレジスタ142にベクトル処理コムを送る。レーザサブシステムコントローラ214及びビーム位置コントローラ116は、ベクトル処理コムを用いて、後述するビーム位置補償要素と連携する更なる座標決めにおいて、X−Y位置決め器110をパルスレーザ光源212によって出射されるパルスに同期させる。
【0031】
後に詳細に説明するように、光発振器216は、第1のPRFであるfOSCでレーザパルスのビームを出射する。第1の光変調器218は、光発振器216からのパルスのサブセットを選択して、増幅器220に供給し、増幅させ、続いてパルスレーザ光源212から出力させる。第1の光変調器218の出力PRFは、第2のPRF、すなわちfPである。第1の光変調器218によるパルスの選択は、クロック222からの信号及びビーム位置コントローラ116から受信する位置データに基づいて行われる。
【0032】
また、システムは、被加工物118に提供されるパルスの安定性を高めるために使用される第2の光変調器226を含む。一実施の形態においては、レーザサブシステムコントローラ214内のタイマ148は、第2の光変調器226を制御して、タイミングデータに基づいて、パルスレーザ光源212からパルスを透過させる。第2の光変調器226は、第1の光変調器218と同様に、AOM、EOM又は他の既知の光変調デバイスであってもよい。第2の光変調器226は、パルスレーザ光源212の外側に示しているが、この開示から、第2の光変調器226は、パルスレーザ光源212内に含ませてもよいことは当業者にとって明らかである。一実施の形態においては、本出願の譲受人に譲受されているBaird他による米国特許第6,172,325号に開示されているように、第2の光変調器226は、レーザパルスゲートデバイスとして、又はパルス振幅変調器として制御可能である。また、本出願の譲受人に譲受されているSun他による米国特許番号第6,947,454号に開示されているように、第2の光変調器226は、実質的に一定であって、実質的にパルスレーザ光源212と同様の繰返し率でパルスしてもよい。
【0033】
また、システム200は、増幅されたレーザパルスを、被加工物118上の選択された標的に方向付けるビーム位置補償要素を含む。ビーム位置補償要素は、音響光学偏向器230、高速ステアリングミラー232、後述するレーザコムインデクス付与モジュール(laser comb indexing module)234、これらの組合せ又は他の光学ステアリング要素を含んでいてもよい。例えば、電気光学偏向器を用いてもよいことは当業者にとって明らかである。ビームステアリング要素の制御は、光クロック222及びビーム位置コントローラ116から受信する位置データに基づいて行われる。
【0034】
3.パルス同期方法の具体例
図3は、一実施の形態に基づき、図2に示すシステム200を用いて被加工物118を処理する方法300を示すフローチャートである。開始(310)の後、方法300は、レーザサブシステムコントローラ214内のプロセスモードのタイマ148を、光発振器216のクロック222によって決定されたPRFで設定(312)することを含む。タイマ148は、パルス遮蔽信号224、228を設定し、第1の光変調器218及び第2の光変調器226のゲートをオフにし、これによって、光発振器216が出射した使用可能なエネルギ量が被加工物118に到達することを防ぐ。
【0035】
システム200がポジションオンパルス(position-on-pulse)プロセスランの開始を準備すると、埋め込まれた制御コンピュータ114は、システム制御コンピュータ112から、処理すべき被加工物118上の標的箇所座標を受信(314)する。上述のように、オシレータモジュール216内の光クロック222は、埋め込まれた制御コンピュータ114にパルスタイミングデータを供給する。埋め込まれた制御コンピュータ114は、パルスタイミングデータを用いて、処理する必要がない標的の中間箇所座標を算出(316)する。埋め込まれた制御コンピュータ114は、標的箇所座標に中間箇所座標を加え、ベクトル処理コムを生成する。ベクトル処理コムは、標的及び中間標的ベクトル座標の行列を表す。
【0036】
埋め込まれた制御コンピュータ114は、システム200をポジションオンパルスモードに設定(316)する。また、埋め込まれた制御コンピュータ114は、箇所座標を表すベクトル処理コムを、バス140を介して、ビーム位置コントローラ116内のレジスタ142にロード(318)し、現在の箇所座標を選択する。更に、埋め込まれた制御コンピュータ114は、ポジションオンパルスモードをイネーブルにするデータを、バス144を介して、レーザサブシステムコントローラ214に送信する。タイマ148は、パルス遮蔽信号224、228の設定を継続し、第1の光変調器218がパルスレーザ光源212を遮蔽し、被加工物118にパルスエネルギが透過されないようにする。次に、方法300は、現在の箇所座標に応じてビーム位置決め器110を移動(322)させる。
【0037】
そして、方法300は、X−Y位置決め器の測定位置が正確度限界(accuracy limits)内で、現在の箇所座標によって定義された期待される位置に一致しているかについてクエリ(324)を行う。ビーム位置コントローラ116内のビーム位置エンコーダ154は、比較器154にX−Y位置決め器110の現在位置を通知する。比較器154は、ビーム位置エンコーダ154からのデータをレジスタ142に格納されている現在の箇所座標と比較する。データ及び座標が所定の限界内で一致する場合、比較器154は、位置一致信号150を有効にする。
【0038】
一方、データ及び座標が所定の限界内で一致しない場合、比較器154は、補正トリガ信号(図示せず)をアサート(326)する。そして、方法は、位置エラーを補償(328)する。後に詳細に説明するように、これは、ビーム位置決めシステム(例えば、X−Y位置決め器110)及び/又は協働するビーム補償要素(例えば、AOD230及び/又はFSM232)を調整すること、レーザコムインデクス付与を有効にすること、共振器ステージを介して繰返し制御アルゴリズムを実装すること、これらの1つ以上の組合せ、及び/又はここに開示する他の手法によって実現できる。
【0039】
データ及び座標が所定の限界内で一致する場合、方法300は、タイマ148を始動(330)する。一実施の形態においては、タイマ148は、パルスレーザ光源212からの出力と実質的に一致する制御信号を適用することによって、第2の光変調器226を透過状態に設定(332)し、これにより、第2の光変調器226は、被加工物118にパルスを透過する。第2の光変調器226は、サイクルの最後(334)に達するまで透過状態のまま残り、この時点で、タイマ148は、第2の光変調器226を、透過抑制状態(reduced transmissive state)に再び設定(336)する。他の実施の形態においては、第2の光変調器226は、パルスの透過を許容するために十分な所定の期間、透過状態のまま残る。この所定の期間が終わると、第2の光変調器226は、透過抑制状態に戻る。何れの実施の形態でも、第2の光変調器226が透過抑制状態になった後は、方法300は、ステップ318に戻り、次の現在の座標位置について処理を続ける。
【0040】
上述のように、第1の光変調器218は、増幅されて、fPのPRFによって第2の光変調器に供給されるパルスを選択する。本出願の譲受人に譲受されているSun他による米国特許番号第6,947,454号に開示されているように、この手法によって、第2の光変調器226の熱負荷は、加工パルス要求の出現にかかわらず、実質的に一定のままになる。このような第2の光変調器226に対する一貫した負荷によって、熱負荷の変動に関連するレーザビーム品質の劣化、及びレーザビーム照準エラーが低減又は排除される。パルス間の振幅又はパルス間のエネルギの変動を光検出モジュール(図示せず)によって感知してもよく、続いて、第2の光変調器226の透過レベルの動的補正又は予測補正を制御して、このようなパルス間の変動を低減してもよい。
【0041】
4.位置補償方法の具体例
上述のように、図3に示す方法300は、X−Y位置決め器110の現在位置が期待される位置窓を逸脱している場合に、位置エラーを補償(328)することを含む。これは、多くの異なる手法によって達成できる。図4A、図4B、図4C及び図4Dは、ある実施の形態に基づき、補正トリガ信号を検出(410)した後に、位置エラーを補償(328)するための幾つかの例示的な方法を示すフローチャートである。
【0042】
図4Aでは、方法328は、X−Y位置決め器110上の被加工物118に対するビーム210の位置を調整するために、高速ビーム位置変更要素、例えば、図2に示すAOD230に位置補償信号を供給(412)することを含む。上述したように、EODを使用してもよい。位置補償信号は、AOD230が提供すべき偏向の方向及び量を示す値を含んでいてもよい。このような値は、(例えば、レーザサブシステムコントローラ214を介して)比較器154及び/又は位置エンコーダ154によって提供してもよく、位置エンコーダ154によって測定されるX−Y位置決め器110の現在位置と、レジスタ142に保存されている期待される位置との間の差分を定義する。
【0043】
方法328は、AOD230が提供する調整が、位置エラーを補償するために十分であるかについてのクエリ(414)を行ってもよく、被加工物118に対するビーム210の位置が所定の限界内になるまで、位置補償信号の更新(416)を継続する。例えば、図2には示していないが、AOD230に位置補正フィードバックを提供する光検出モジュールによってレーザビーム210の位置を検出してもよい。
【0044】
図4Bでは、方法328は、X−Y位置決め器110上の被加工物118に対するビーム210の位置を調整するために、図2に示すFSM232に位置補償信号を供給(412)することを含む。図4Aに示す実施の形態と同様に、位置補償信号は、FSM232が提供すべき偏向の方向及び量を示す値を含んでいてもよい。更に、方法328は、FSM232が提供する調整が、位置エラーを補償するために十分であるかについてのクエリ(414)を行ってもよく、被加工物118に対するビーム210の位置が所定の限界内になるまで、位置補償信号の更新(416)を継続する。
【0045】
図4Cは、図4A及び図4Bの組合せであり、方法328は、AOD230に一次位置補償信号を供給(420)することと、FSM232に二次位置補償信号を供給(422)することを含む。ここでも、方法328は、AOD230及び/又はFSM232が提供する調整が、位置エラーを補償するために十分であるかについてのクエリ(414)を行ってもよい。方法300は、被加工物118対するビーム210の位置が所定の限界内になるまで、一次位置補償信号及び二次位置補償信号一方又は両方を更新(416)してもよい。一実施の形態においては、方法329は、まず、一次位置補償信号を更新し、追加的な調整が十分であるかを判定し、これが不十分な場合に、二次位置補償信号も更新する。このシーケンスは、被加工物118に対するビーム210の位置が所定の限界内になるまで繰返してもよい。
【0046】
図4Dでは、方法328は、レーザコムインデクス付与モジュール234に位置補償信号を供給(424)することを含む。レーザコムインデクス付与モジュール234は、所望の補償の量(例えば、位置補償信号によって示されている量)に基づいて、ベクトル処理コムのレーザコムインデクスkを変更(426)する。レーザパルスインデクスkは、第1の光変調器218を用いて、光発振器216からのどのパルスをパルスレーザ光源212から透過させるかを決定するために用いられる整数値である。図5に関して後述するように、レーザコムインデクスkは、第2の周波数コム(fP)をインクリメント又はデクリメントして、オフセット周波数(fP’)を生成することによって適用される。ここに示す具体例では、レーザコムインデクス付与モジュール234は、第1の光変調器218による光発振器パルス番号m=1の選択に続いて、レーザコムインデクスkを1のオフセット(k=1)に指示し、この結果、オフセット処理周波数コムfP’において、光発振器パルス番号m=12が次に増幅される。
【0047】
図5は、一実施の形態に基づくベクトル処理コムの使用を図式的に示している。ここに示すように、光発振器216は、第1のPRFであるfOSCで一連のパルス510を提供する。連続するパルス510間の期間(パルス間周期)は、約1ナノ秒から約100ナノ秒の桁であってもよい。また、約100ナノ秒を超えるパルス間周期を用いてもよい。また、パルス間周期が約1ナノ秒未満の非常に小型の発振器を用いてもよいことは当業者にとって明らかである。これらの速度では、ビーム位置決めシステム(例えば、X−Yコントローラ110)が、被加工物118の特定の標的をレーザビーム210に正確に整列させることは、困難又は不可能であることがある。更に、増幅器220が、光発振器216によって提供される各パルスを効率的に増幅することは、困難又は不可能であることがある。したがって、第2のPRFであるfPで動作する第1の光変調器218は、n番目毎のパルスを選択して、被加工物118に透過させる。第2のPRFであるfP=fOSC/nである。図5に示す具体例では、処理周波数インデクスn=10であり、これにより、透過されるパルスは(例えば、レーザコムインデクスkをインクリメントすることによる位置補償がない場合)、発振器周波数コムパルスm=11、m=21、m=31…に対応する。この開示から、処理周波数インデクスnを他の如何なる整数値にしてもよいことは当業者にとって明らかである。処理周波数インデクスnは、例えば、X−Y位置決め器110が、位置エラーを所定の限界内で維持しながら、第2のPRFであるfPで標的間を移動できるように選択してもよい。
【0048】
更に図5に示すように、システム制御コンピュータ112によって指示されるレーザPRF(例えば、fP)を変更することなく、整数光発振器パルス間隔によって、連続する2つのパルスの間でレーザコムインデクスkをインクリメントしてもよい。この具体例では、第1のパルスm=1が、第1の光変調器218によって、増幅のために透過された後、レーザコムインデクスkは、k=0からk=1にインクリメントされる。n=10は、変更されていないので、この場合も、オフセット処理周波数fP’に対応する各パルスm=12、m=22、m=32、m=42…の間では、光発振器216から10個のパルスが出射される。このように、第1のパルスm=1の後にレーザコムインデクスkをインクリメントすると、処理コム内で第1の光変調器218によって透過される後続するパルスm=12、m=22、m=32、m=42が、1/fOSCの整数値でタイムシフトされ、且つ加工パルスが出射される新たなPRFであるfP’は、fPに等しいままとなる。
【0049】
再び、図4Dを参照すると、方法328は、パルス振幅安定化のために、レーザコムインデクスkをインクリメントした後に、第2の光変調器226に入射する第1のパルスm=12を選択的に遮蔽(428)することを含む。第2の光変調器226を用いて、第1のパルスm=12を遮蔽することによって、パルス間周期が1/fPより長い(短い)レーザコムインデクス付与に続いて、整定期間がパルス振幅を安定化させることができる。
【0050】
連続する2つのパルス間でレーザコムインデクスkをインクリメントすることによって、被加工面におけるレーザビームのシフト=(kにおけるシフト)×(ビーム位置決め器速度×(1/fOSC))となる。例示的な数値の具体例として、fOSC=10MHz、fP=1MHz、ビーム位置決め器装置速度=500nm/μsである場合、k=1のシフト(例えば、パルスm=10から、パルスm=11へのシフト)によって、被加工面上で(500nm/μs×0.1μs)=50nmのシフトが生じる。同じ具体例において、fOSC=100MHzを用いると、被加工面におけるシフト=5nmとなる。これらの値は、ビームの位置変更及び他の位置決め要素を補助し、作動レーザパルスが割り当てられた被加工物の標的箇所を遮ることができるようにするレーザコムの拡大された能力を表している。これに代えて、fPのPRFにおけるパルスのバーストを採用し、ビーム位置コントローラ116と連携する、埋め込まれた制御コンピュータによる指示に従って、レーザコムにインデクスを付してもよいことは当業者にとって明らかである。
【0051】
この説明から、ここに開示した位置エラー補償のための実施の形態の何れかを組み合わせて速度及び正確度を向上させてもよいことは当業者にとって明らかである。更に、位置エラー補償は、図4A、図4B、図4C、図4D及び図5に示す実施の形態に限定されない。例えば、他の実施の形態では、共振器ステージを採用して繰返し制御アルゴリズムを使用することによって、サーボ追従エラー(servo tracking error)を略々ゼロにすることができる。この実施の形態では、標的ラン(target runs)は、高速度及び高加速度で作成される。反復学習アルゴリズムが繰返しエラーを満足できる公差内に減少させることができるように、チャックステージは、(ギャッププロファイリングなしで)正確に同じ動きを繰返す。そして、上述のように、ビーム補償要素を用いて、更なる補償を行ってもよい。
【0052】
これに加えて、又は他の実施の形態では、ビーム偏向要素(例えば、AOD230又はFSM232)がビーム210をステアリングし、時間的に蓄積された速度エラーを補正してもよい。速度が遅過ぎる場合、システム200は、レーザパルスがビームステアリングデバイスの偏向範囲内に留まるように、レーザパルスをスキップしてもよい。システム200が偏向デバイス上の範囲を超えてしまう程に速度が速過ぎる場合、システム200は、第1のラン上のあるリンクを処理した後、第2の又は更なるランを実行して、他の標的を処理してもよい。これは、通常、処理時間が長くなるので、望ましくない場合がある。したがって、幾つかの実施の形態では、システム200は、最低の速度がPRF×ピッチを超えないように、PRF×標的ピッチの積より遅くリンクランを処理するようにしてもよい。
【0053】
別の実施の形態では、1パルスあたりの光発振器出力エネルギが被加工物の効率的なフォトニックコムレーザ処理(photonic comb laser processing)に十分である場合、光発振器216からの単一又は複数の出力パルスを処理で直接使用してもよい。
【0054】
5.変調されたビームレットアレイを用いるフォトニックミリングの具体例
一実施の形態においては、ここに説明したシステム及び方法は、半導体リンク構造を含む被加工物標的のアレイミリング(array milling)のために用いられる。後述するように、図2に示すレーザパルス処理システム200は、パルスレーザ光源212によって生成されたレーザビーム210からビームレットのアレイを生成するように構成されたフォトニックミリングサブシステム(photonic milling subsystem)を含んでいてもよい。フォトニックミリングサブシステムは、各ビームレットを変調し、被加工物118上の標的にビームレットの変調されたアレイを供給する。システム制御コンピュータ112及び/又は埋め込まれた制御コンピュータ114は、特定の被加工物構造を処理するために、ビームレットの変調されたアレイから使用することができるパルスの数を判定するように構成されている。これに加えて、又は他の実施の形態では、主発振器に挿入されるスペクトルバンドパス要素(spectral bandpass element)を変更することによって、ピコ秒MOPAレーザ光源のパルス幅をプログラミングする。ある実施の形態では、上述したように、ビーム位置決めシステムのための基準タイミング要素として主発振器を使用する。
【0055】
後述するように、例えば、傾斜反射板(gradient reflectivity plate)を用いて、ビームレットのアレイを生成してもよい。また、例えば、偏光分離及び再結合光学素子を用いて、ビームレットのアレイを生成してもよい。また、ビームレットのアレイは、1つ以上の回折光学要素を用いて生成してもよい(後に説明する図20参照)。
【0056】
フォトニックミリングサブシステムは、様々な異なるレーザ光源を含んでいてもよい。一実施の形態においては、レーザ光源は、約10kHzより高く、より好ましくは、約100kHzより高いPRFで、1パルスあたりの適切なエネルギを発生させるように構成されたダイオード励起受動モード同期MOPAを含む。Baird他による国際出願公開番号WO2008/014331号に記述されているようなファイバ主発振器を採用したタンデム光増幅器を用いてもよい。このような実施の形態の幾つかでは、ファイバ主発振器は、パルス幅が約100フェムト秒〜約500ピコ秒の範囲にあるレーザパルスを提供する。更に他の実施の形態では、パルス型主発振器ファイバパワー増幅器(pulsed master oscillator fiber power amplifier:MOFPA)を用いてもよい。
【0057】
図6は、一実施の形態に基づく動的ビームアレイを用いて、被加工物標的を処理するためのフォトニックミリングサブシステム600のブロック図である。フォトニックミリングサブシステム600は、レーザ光源610、調整光学素子(conditioning optics)612、ビームレット生成モジュール614、ビームレット変調器616、光検出モジュール618及びビームレット送達光学素子(beamlet delivery optics)620を含む。
【0058】
レーザ光源610からのレーザビーム622は、ビーム調整光学素子612を介して、ビームレット生成モジュール614に方向付けられる。後に詳細に説明するように、ビームレット生成モジュール614は、レーザビーム622をビームレットアレイ624に分離する。説明の目的のために、ここでは、ビームレットアレイ624をq×rビームレットアレイ624とも呼び、qは、第1の方向(例えば、行)におけるビームレットの数を表し、rは、アレイの第2の次元(例えば、列)におけるビームレットの数を表す。ビームレット生成モジュール614は、q×rビームレットアレイ624をビームレット変調器616に供給し、ビームレット変調器616は、入射する各ビームレットを指示された出力ビームレットエネルギ値に減衰させる。ビームレット変調器616は、変調されたq×rビームレットアレイ626を出力し、変調されたq×rビームレットアレイ626は、光検出モジュール618によって抽出されてビームレット送達光学素子620に供給される。ビームレット送達光学素子620は、変調されたq×rビームレットアレイ626を被加工物118に集光する。変調されたq×rビームレットアレイ626のそれぞれのビームレットのエネルギ値は、例えば、図2に示すシステム制御コンピュータ112によって指示される。
【0059】
(A)フォトニックミリングのためのレーザ光源及び変調方法
一実施の形態においては、レーザ光源610は、図2に示し、先に詳細に説明したパルスレーザ光源212を含む。
【0060】
他の実施の形態においては、レーザ光源610は、ピコ秒ファイバ主発振器を採用したタンデム光増幅器を含む。このような実施の形態の1つでは、基本レーザ出力の後段に高調波変換モジュール(図2に示す高調波変換モジュール223等)を接続して、高調波出力を生成してもよい。タンデム光増幅器には、約500ナノ秒〜約1ピコ秒の範囲のパルス幅で、約2.2μm〜約100nmの範囲の波長で、より好ましくは、約2.0μm〜約200nmの範囲の波長で出射するダイオード励起ファイバ主発振器を組み込んでもよい。
【0061】
変調方法は、シードダイオードの直接変調、パルス又は連続波(continuous wave:CW)シード出力の外部変調、又はAOM及び/又はEOMによるパワー増幅段への入力の外部変調を含んでいてもよい。パワー増幅段に供給されるポンプパワーの変調によって、レーザ光源610が生成する一時的なパルス波形を更に変更してもよい。
【0062】
他の実施の形態においては、レーザ光源610は、約500ナノ秒〜約100ピコ秒の間のパルス幅で、約2.2μm〜約150nmの範囲の波長のパルスを出射するQスイッチダイオード励起固体レーザを含む。レーザ光源610は、共振器内又は共振器外の高調波変換光学素子を用いてもよい。レーザ光源610は、CW発光の能力を有していてもよい。この場合、Qスイッチに供給されるRFウィンドウゲート(RF window gate)の変調によって、一時的なパルス波形が制御される。また、固体レーザに供給されるダイオードポンプパワーの変調によって、レーザ光源サブシステムが生成する一時的なパルス波形を更に変更してもよい。
【0063】
他の実施の形態においては、レーザ光源610は、約100ピコ秒〜約10フェムト秒の範囲のパルス幅で、約2.2μm〜約150nmの範囲の波長のパルスを出射するMOPAである。レーザ光源610は、共振器内又は共振器外の高調波変換光学素子を採用してもよい。変調方法は、ダイオードポンプ変調又はAOM及び/又はEOMによるパワー増幅器への入力の外部変調を含んでいてもよい。パワー増幅器に供給されるポンプパワーの変調によって、レーザ光源610が生成する一時的なパルス波形を更に変更してもよい。一実施の形態においては、主発振器は、ファイバレーザ主発振器であり、パワー増幅器は、ファイバパワー増幅器である。この構成は、超高速ファイバレーザ(ultrafast fiber laser)として当業者に知られている。
【0064】
更に他の実施の形態では、レーザ光源610は、約100ピコ秒以下であるが10フェムト秒より長い範囲のパルス幅で、約2.2μm〜約150nmの範囲の波長のパルスを出射するパルス幅可調整MOPAを含む。例えば、図7Aは、一実施の形態に基づく、パルス幅がプログラミング可能なフォトニックミリングシステム700のブロック図である。システム700は、システム制御コンピュータ112を介してパルス幅選択を提供するグラフィカルユーザインタフェース(graphical user interface:GUI)710と、サブシステム制御回路712と、フォトニックミリングサブシステム600’とを含み、フォトニックミリングサブシステム600’は、プログラミング可能なパルス幅要素(programmable pulsewidth element)714を有するレーザ光源610’を含む。ユーザは、パルス幅選択GUI710を用いて、レーザ光源610’が生成するレーザビーム622のパルス幅を選択的に変更できる。サブシステム制御回路712は、ユーザによる選択に対応してプログラミング可能なパルス幅要素714を制御して、パルス幅を調整する。
【0065】
このような実施の形態の1つでは、プログラミング可能なパルス幅要素714は、主発振器に挿入され、約50ピコ秒〜約10フェムト秒の範囲で、レーザ光源610’の離散的なパルス幅の調整を実現する。例えば、図7Bは、一実施の形態に基づく、プログラミング可能なパルス幅要素714がMOPA718の主発振器716に組み込まれた、図7Aに示すフォトニックミリングサブシステム600’のブロック図である。MOPA718は、パワー増幅器720を含む。図7Bに示す例示的な実施の形態では、プログラミング可能なパルス幅要素714は、プログラミング可能なバンドパスフィルタを含む。
【0066】
プログラミング可能なパルス幅要素714を有するレーザ光源610’は、共振器内又は共振器外の高調波変換光学素子を採用してもよい。変調方法は、ダイオードポンプ変調又はAOM及び/又はEOMによるパワー増幅器720への入力の外部変調を含んでいてもよい。パワー増幅器720に供給されるポンプパワーの変調によって、レーザ光源610’が生成する一時的なパルス波形を更に変更してもよい。一実施の形態においては、主発振器716は、ファイバレーザ主発振器であり、パワー増幅器720は、ファイバパワー増幅器である。
【0067】
図6に戻って説明を続けると、他の実施の形態では、レーザ光源610は、約50ピコ秒〜約10フェムト秒の範囲のパルス幅で、約2.2μm〜約150nmの波長のパルスを出射する主発振器再生増幅器を含む。レーザ光源610は、共振器内又は共振器外の高調波変換光学素子を採用してもよい。変調方法は、ダイオードポンプ変調又はAOM及び/又はEOMによるパワー増幅器への入力の外部変調を含んでいてもよい。パワー増幅器に供給されるポンプパワーの変調によって、レーザサブシステムが生成する一時的なパルス波形を更に変更してもよい。
【0068】
(B)ビームレット生成
図8A、図8B及び図8Cは、一実施の形態に基づく、離散的にバンド化された反射板(discretely banded reflectivity plate)810を含むビームレット生成モジュール614を様々な視点から示す図である。図8Aは、第1の表面S1及び第2の表面S2を有する離散的にバンド化された反射板810の側面図である。図8Bは、第1の表面S1の正面図である。図8Cは、第2の表面S2の正面図である。図8A及び図8Bに示すように、第1の表面S1及び第2の表面S2は、それぞれがそれぞれの反射率R1、R2…Rnを有する離散的な部分又はバンド(band)を含む。
【0069】
図8Aに示すように、バンドは、(例えば、レーザ光源610が提供する)入力レーザビーム622が、第1の表面S1を介して離散的にバンド化された反射板810に入射し、第2の表面S2で部分的に反射され、及び第2の表面S2を介して部分的に透過されて第1のビームレット812を形成するように第1の表面S1及び第2の表面S2に配置される。第1の表面S1は、第1のビームレット812の部分を構成しないビームの一部を反射して、第2の表面S2に戻す。第2の表面S2は、再び、ビームを部分的に反射し、ビームを部分的に透過して第2のビームレット814を生成する。第1の表面S1は、第2のビームレット814の部分を構成しないビームの一部を反射して、第2の表面S2に戻す。第2の表面S2は、再び、ビームを部分的に反射し、ビームを部分的に透過して第3のビームレット816を生成する。このプロセスは、離散的にバンド化された反射板810がビームレットアレイ624のための所望の数のビームレットを生成するまで繰返される。図には示していないが、ビームレット生成モジュール614は、入力レーザビーム622の一部を、複数の離散的にバンド化された反射板810に方向付け、q×rビームレットアレイ624を生成する1つ以上のビームスプリッタを含んでいてもよい。
【0070】
図9は、他の実施の形態に基づくビームレット生成モジュール614のブロック図である。この例示的な実施の形態のビームレット生成モジュール614は、第1の1/4波長板910、偏光ビームスプリッタキューブ912、第2の1/4波長板914、第1のミラー916、第3の1/4波長板918及び第2のミラー920を含む。第1の1/4波長板910は、直線偏光入射レーザビーム622を受け取り、偏光ビームスプリッタキューブ912に円偏光ビームを透過する。円偏光ビームの一部は、偏光ビームスプリッタキューブ912の出力表面を介して、第1のビームレット922として透過される。そして、円偏光ビームの他の部分は、偏光ビームスプリッタキューブ912の第1のチャネルに反射され、ここで、第2の1/4波長板914を介して第1のミラー916に方向付けられる。ビームは、第1のミラー916で反射し、第2の1/4波長板914の2回目の通過によって、p偏光光になる。p偏光成分は、偏光ビームスプリッタキューブ912の第2のチャネルに入り、ここで、同様に第3の1/4波長板918を透過し、第2のミラー920で反射し、第3の1/4波長板918を再び透過した後、偏光ビームスプリッタキューブ912の出力表面から、第2のビームレット924として出射される。図9に示すような更なるビームレットアレイ生成モジュール614を用いて、q×rビームレットアレイ624内で更なるビームレットを生成してもよい。これに加えて、又は他の実施の形態では、図20に示すように、1つ以上の回折光学要素2010がq×rビームレットアレイ624内のビームレットを生成してもよい。回折光学要素2010は、2次元又は3次元のアレイ624内で所望のビームレットの分布を生成するように形成された格子を含んでいてもよい。
【0071】
図9に戻って説明すると、第1のビームレット922及び第2のビームレット924は、略々共線上にあってもよく、ビームレットアレイ生成モジュール614の光学部品の整列の変動のために互いにランダムにオフセットしていてもよい。なお、この開示から、第1のビームレット922及び第2のビームレット924の経路が互いに実質的に平行で、且つ所望の距離だけ離間するように、ビームレットアレイ生成モジュール614の光学素子に制御された量のオフセットを導入してもよいことは当業者にとって明らかである。例えば、図9に示す第2のミラー920を、交線の頂点が偏光ビームスプリッタキューブ912の中点に平行な線に沿ったミラーの対(図示せず)に置換してもよい。他の具体例として、ミラー916、920を相補的に(例えば、一方を時計回り、他方を反時計回りに)僅かに傾けることによってオフセットを実現してもよい。第1のビームレット922及び第2のビームレット924の経路をオフセットさせる他の手法も当業者にとって明らかである。
【0072】
(C)標的整列
一実施の形態においては、システム制御コンピュータ112は、図2に示すX−Y位置決め器110を制御して、ビームレット送達光学素子620によって被加工物118上の特定の標的に集光される変調されたq×rビームレットアレイ626の送達を調整する。一実施の形態においては、アドレス指定可能なビームレット(addressable beamlet)のそれぞれについて現在位置信号を生成する。上述したように、レーザコムインデクス付与と組み合わせて、離散的又はマルチチャネルビーム位置補償要素を採用して、所定の正確度限界内の現在位置性能を達成してもよい。
【0073】
例えば、被加工物標的は、半導体デバイス上に配列された導電性リンクを含んでいてもよい。上述のように、レーザパルスは、DRAMデバイスの不良メモリセルへの導電性リンクを除去するために使用してもよい。このような導電性リンクは、1次元パターン又は2次元パターンで配列されていてもよい。例えば、図10は、導電性リンク1010に一般的に用いられる様々なパターンを図式的に示している。ここに示すパターンは、ハシゴ(ladder)パターン1012、フォーク(fork)パターン1014、魚骨(fishbone)パターン1016及び互い違い(staggered)パターン1018を含む。但し、この開示から、如何なるパターンを用いてもよいことは当業者にとって明らかである。
【0074】
一実施の形態においては、システム制御コンピュータ112は、X−Y位置決め器110を動作させるステップを実行し、変調され集光されたq×rビームレットアレイ626が被加工物標的に空間的に一致するように、パターンを繰返す。例えば、図11は、一実施の形態に基づいて、ビームレットアレイ624を用いて、一組の標的(例えば、図10に示す導電性リンク1010)を処理する方法1100のフローチャートである。開始(1110)の後、方法1100は、一組の標的に対して複数のビームレット経路を整列(1112)させることを含む。例えば、システム制御コンピュータ112は、X−Y位置決め器110及びビームレット送達光学素子620を制御して、被加工物118上であるパターンに配列されているq×rターゲットに対して、q×rビームレット経路を空間的に整列させてもよい。
【0075】
ビームレット経路を標的に整列させた後、レーザ光源610がレーザパルス622を生成(1112)し、ビームレット生成モジュール614がレーザパルスをビームレットアレイ624に分割(1116)し、ビームレット変調器616がビームレットアレイ624を変調(1118)し、ビームレット送達光学素子620が変調されたビームレットアレイ626を集光(1120)する。そして、方法1100は、変調され、集光されたビームレットアレイ626によって一組の標的を処理(1122)し、処理すべき標的の組が他にあるかについてクエリ(1124)を行う。処理すべき他の標的の組がある場合、システム制御コンピュータ112は、ビームレット経路を新たな標的の組に整列(1112)させ、方法1100を繰返す。全ての標的の組が処理されると、方法1100は、終了(1126)する。
【0076】
他の実施の形態においては、システム200のシステム制御コンピュータ112は、複数のビームレットによって送達される単一のパルスの合計によって、被加工物標的が連続して処理されるように、被加工物標的ピッチを、レーザPRF、ビームレットアレイピッチ、及びX−Yビーム位置決め器110の速度に調和させる。図12は、一実施の形態に基づく、被加工物標的ピッチ1208とビームレットピッチ1210との間の関係を図式的に示している。ここに示すように、ビームレット1212間の距離又はピッチ(ビームレットピッチ1210)は、標的1214間のピッチ(標的ピッチ1208)及びレーザ光源610のPRFに対して、以下のような関係を有する。
【0077】
c×(ビームレットピッチ)=d×(被加工物ターゲットピッチ)
ここで、c及びdは、整数であり、被加工物ターゲットピッチ=ステージ速度/PRFであり、整数c及びdは、好ましくは、c/d=整数値となるように選択される。
【0078】
図12では、ビームレットピッチ1210は、(ΔxBL)i,jで表され、被加工物ピッチ1208は、(Δxp)hで表され、ここで、iは、ビームレット番号インデクスであり、jは、パルス番号インデクスであり、hは、被加工物標的インデクスである。したがって、ここでは、例えば、特定のパルスjから生成される特定のビームレットiを(bi:pj)と表すことができる。(連続的なスキャンがないとき)ステージが一定の速度で移動している場合、1つの被加工物標的毎に送達可能な最大のパルス数は、ビームレットの数iと等しい。実例として、連続するレーザパルスjのそれぞれから生成された3つのビームレット1212(i=3)について検討する。この具体例では、レーザ光源から連続するレーザパルスが出射されると共に、レーザビーム経路は、図12に示す被加工物標的1214上を左から右に移動する。第1の被加工物標的1214は、第1のパルスから生成される第3のビームレット1212(b3:p1)、第1のパルスから生成される第2のビームレット(b2:p1)、及び第1のパルスから生成される第1のビームレット(b1:p1)によって連続的に処理される。第2の標的1214は、第2のパルスの第3のビームレット(b3:p2)、第2のパルスの第2のビームレット(b2:p2)、及び第2のパルスの第1のビームレット(b1:p2)によって処理される。
【0079】
(D)ビームレット振幅制御
一実施の形態においては、変調され、集光されたビームレットアレイ626は、振幅を指定することができる。アレイ626の各ビームレット1212の振幅は、bj:pi:Aと表され、ここで、Aは、0と1の間の実数であり、0は、最小のパルス振幅を表し、1は、最大のパルス振幅を表し、中間の値は、これらの最小値及び最大値の間でスケーリングされた振幅値を表す。実例として再び3つのビームレット(i=3)のケースについて検討すると、第1の標的1214及び第3の標的1214が最大のパルス数及び1パルスあたりの最大振幅で切削され、第2の標的1214が切削されない場合、フォトニックミリングパターンは、以下のようにプログラミングされる。
【0080】
第1の被加工物標的:(b3:p1:1);(b2:p1:1);(b1:p1:1)
第2の被加工物標的:(b3:p2:0);(b2:p2:0);(b1:p2:0)
第3の被加工物標的:(b3:p3:1);(b2:p3:1);(b1:p3:1)
一実施の形態においては、図6に示す光検出モジュール618は、ビームレット1212毎に特定の被加工物標的1214に印加される総エネルギをリアルタイムで算出するように構成されている。光検出モジュール618は、ビームレット変調器616にエラー補正補償信号を供給して、連続するビームレット振幅bj:pi:Ai,j,hを調整する。これによって、被加工物標的1214に送達される1パルスあたりの総エネルギを非常に精密に制御できる。また、これによって、特定の標的1214に印加される総エネルギを精密に制御できる。例えば、光検出モジュール618は、特定の標的1214に印加される一連のビームレット1212の総エネルギが所定の閾値に達するかこれを超えることを判定できる。閾値に達すると、光検出モジュール618は、ビームレット変調器616を制御して、更なるビームレット1212を遮蔽して、その特定の標的1214に伝達されないようにする。この開示から、他の要素を用いて、1パルスあたりのエネルギ又は特定の標的1214に印加される総エネルギを制御してもよいことは当業者にとって明らかである。例えば、光検出モジュール618が図7A及び図7Bに示すプログラミング可能なパルス幅要素にフィードバックを行うことによって、レーザ光源610’が提供するパルスのエネルギを調整してもよい。
【0081】
6.帯状の領域の処理の具体例
ここに説明したシステム及び方法は、帯状の領域の処理の実施の形態で使用することができ、ここで、パルスは、オンザフライで、被加工物上の標的構造の行に沿って、又は隣接する行間で偏向される。上述のように、図2に示す光発振器216は、高いPRF(例えば、数十kHz〜数MHz)でパルスを提供し、このパルスは、ビーム位置変更要素(例えば、AOD230、FSM232及び/又はレーザコムインデクス付与モジュール234)によって、移動加工窓内で方向付けられる。
【0082】
一例として、図13は、ウェハ1310の処理を表している。従来の連続的なリンクブローイング処理は、各リンクラン毎にウェハ1310を横断するX−Y移動ステージ110の走査を必要とする。ウェハ1310を横断しながら繰返し、前後に走査を行うことによって、ウエハ全体の処理が完了する。マシンは、前後に走査して全てのX軸リンクラン1312(実線で示す。)を処理した後、Y軸リンクラン1314(破線で示す)を処理する。この具体例は、単に例示的なものである。この他のリンクラン及びプロセスの様式も可能である。例えば、ウェハ又は光学レール(optics rail)を動かすことによってリンクを処理することも可能である。更に、リンクバンク及びリンクランは、連続動作で処理しなくてもよい。
【0083】
DRAMを含むウェハ1310では、例えば、X軸リンクラン1312とY軸リンクラン1314との間の領域1316にメモリセル(図示せず)が位置していることがある。説明のために、X軸リンクラン1312及びY軸リンクラン1314の交点の近くのウェハ1310の一部を拡大し、グループ又はリンクバンク内に配列されている複数のリンク1318を示す。包括的に言えば、リンクバンクは、ダイの中心の近くであって、デコーダ回路の近くにあり、何れのメモリセルのアレイの上にもない。リンク1318は、ウェハ1310全体のうちの比較的小さい領域を覆っている。
【0084】
図14、図17及び図18は、帯状領域処理のための代替の実施の形態の具体例を示しており、これらは、例示的なものである。図14、図17及び図18に関連して説明する帯状領域処理の原理は、ここに説明する他の実施の形態(例えば、図2)にも適用できることは当業者にとっては明らかである。
【0085】
図14は、一実施の形態に基づくAOD1410を含むレーザ処理システム1400の概略図である。レーザ1414が出射するパルスレーザビーム1412を偏向するように構成されると共に、2個の連続したパルスを2個の横方向に離間したリンクバンク内の2個の異なるリンクに送達できる非常に高速なデバイスを、AOD1410は含む。一実施の形態においては、AOD1410は、1次元で(例えば、走査方向に垂直に)レーザパルスを偏向するように構成されている。他の実施の形態においては、AOD1410は、2次元で(例えば、走査方向に垂直及び走査方向に平行に)レーザパルスを偏向するように構成されている。他の実施の形態では、2個のAODを用いて、2次元の偏向を提供する。
【0086】
また、一実施の形態においては、レーザパルスが被加工物1418(例えば、複数のリンクを有する半導体ウェハ)に到達するように、又はこれをブロックするように構成されたスイッチ1416を、レーザ処理システム1400は備える。スイッチ616は、AOD又は音響光学変調器(acousto-optic modulator:AOM)デバイスを含んでいてもよい。なお、一実施の形態においては、パルスレーザビーム1412をビームダンプ(図示せず)に選択的に向け、当該レーザパルスが被加工物1418に到達することをブロックするように構成された単一のデバイスを、スイッチ1416及びAOD1410は含む。
【0087】
更に、図14に示すように、レーザ処理システム1400は、異なる偏向を受けたビーム経路(AOD1410を出る実線及び破線として示している)を、フォーカスレンズ1426の入射瞳に対応するミラー1424(又はFSM等の他の向き変更デバイス)上の同じ位置に向けるリレーレンズ1422を備えていてもよい。実際の動作では、AOD1410が提供する異なる偏向角によって、異なるパルスが被加工物1418上の別の位置に向けられる。図には示していないが、一実施の形態では、コンピュータが読取可能な媒体に保存された命令を実行するように構成されているコントローラが、AOD1410を制御し、レーザパルスのシーケンスを、被加工物1418上の所望の位置に選択的に偏向する。
【0088】
この開示から、システム1400は、例示的なものであり、他のシステム構成も可能であることは当業者にとって明らかである。実際、他の様々な例示的システムの実施の形態を後に説明する。
【0089】
図15は、一実施の形態に基づき、横方向に離間した複数のリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520を走査する加工窓1500を示す概略図である。各リンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520は、切断されていない複数のリンク1522と、加工窓1500が複数のリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520に亘って走査しながら、一連のレーザパルスによって切断された複数のリンク1524とを含む。
【0090】
一実施の形態においては、レーザ処理システム1400は、移動加工窓1500内で何れかのリンク1522、1524を切断するように構成されている。このように、図15に示す具体例では、システム1400は、6個のリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520を処理するために、6個の個別のリンクランを用いるのではなく、1回の通過で6個のリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520の全てを処理し、システムスループットを著しく向上させている。一実施の形態においては、例えば、単一のビーム経路を介して提供される100kHzのレーザ、50μm×50μmの加工窓、低性能ステージ(例えば、1軸あたり1Gの加速度及び20msに整定時間)を含むシステムでは、従来のリンク処理システムに比べて、スループットを2〜3倍に高めることができる。このようなシステムは、高PRFレーザ(例えば、300kHz)、高性能ステージ(例えば、1m/秒のリンクラン、5Gの加速度、0.001秒の整定時間)を含む2ビームシステムに匹敵する。性能が低いステージを有するシステムを構築する方が、著しく簡単で、低コストである。更に、シングルビームシステムは、2ビームシステムを構築する場合に比べて、構築がより簡単で、低コストである。
【0091】
一実施の形態においては、加工窓1500は、複数のリンク1524を切断しながら、実質的に連続的な動きで、複数のリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520に亘って走査する。他の実施の形態においては、加工窓1500は、一連の離散的な動きによって、複数のリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520に亘って段階的に走査する。このような実施の形態の1つでは、加工窓は、各ステップ又はホップの間に、2つの互いに排他的なリンク1522、1524の組を含む。すなわち、システム1400は、第1の位置において、加工窓1500内で、軸上方向及び軸交差方向の両方において、リンク1522、1524の第1の組を処理でき、その後、加工窓1500は、リンクの第2の(異なる)の組を含む第2の位置に動く。他の実施の形態においては、加工窓1500は、より小さいステップで走査方向を進み、各リンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520に対応するリンク1522、1524の1個のグループ(例えば、1個の列)は、リンク1522、1524の他のグループが走査窓1500を出るステップの間に走査窓1500に入る。このようにして、システム1400は、各ステップの間に、異なるリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520内の横方向に離間したリンク1522、1524のグループ又は列を処理する。
【0092】
この開示から、加工窓1500及びリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520の相対的寸法に応じて、システム1400は、6個より多くのリンクバンクを1回の通過で処理できることは当業者にとって明らかである。更に、システム1400は、6個未満のリンクバンクを1回の通過で処理してもよく、これは、例えば、1回の通過で単一のリンクバンクを処理することを含む。
【0093】
この開示から、システム1400は、加工窓1500内で実質的に平行に、横方向に離間したリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520を処理することに限定されないことも当業者には明らかである。実際に、加工窓1500を通過するリンク1522、1524は、如何なるパターンに配置してもよい。また、切断されたリンク1524は、如何なる順序で切断してもよい。更に、図15は、X方向(水平方向)への一定の走査方向を示しているが、走査方向は、Y方向(垂直方向)であってもよく、X方向及びY方向の組合せであってもよく、及び/又はウェハのXY平面を巡ってランダムなパターンであってもよい。一実施の形態においては、走査方向は、スループットを最適化するように選択される。
【0094】
例えば、図16は、一実施の形態に基づく、X軸に沿って延びる複数の横方向に離間したリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520及びY軸に沿って延びる複数のリンクバンク1610、1612を走査する加工窓1500を概略的に示している。X軸に沿って延びる横方向に離間したリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520に亘る加工窓1500の1回の通過において、加工窓1500は、Y軸に沿って延びる複数のリンクバンク1610、1612内のリンク1522、1524の少なくとも一部も通過する。再び、図16に示すように、システム1400は、加工窓1500を通過するリンク1522、1524の何れをも選択的に切断することができる。
【0095】
一実施の形態においては、システム1400は、スループットを最大化し、又は向上させるために、加工窓1500内のリンクブローのシーケンスを区分けし、順序付ける。この最大化され又は向上されたスループットを実現するために、システム1400は、加工窓1500のサイズに適合するステージ速度、任意の時点でブローされる加工窓1500内のリンク1522、1524の数、及びリンクブローの順序を算出する。このような実施の形態の1つでは、システム1400は、ブロックされるパルスの数を減少させるようにステージ速度を選択する。また、ステージ速度は、ブローすべき全てのリンクが、加工窓1500の1回の通過で確実にブローされるように選択してもよい。一実施の形態においては、ステージ速度は、一定であってもよい。
【0096】
他の実施の形態では、ステージ速度は、現在、加工窓1500を通過しているブローすべきリンク1524の数に基づいて変更してもよい。例えば、加工窓1500を通過するブローすべきリンク1524が少ない場合、システム1400は、ステージ速度を速めてもよい。より多くのブローすべきリンク1522、1524が加工窓1500を通過する場合、システム1400は、ステージ速度を遅めてもよい。
【0097】
一実施の形態においては、最大ステージ速度VSMAXは、リンクランのグループに亘る加工窓1500内のリンクの最大数(NMAX)を見出すことによって決定される。例えば、最大ステージ速度VSMAXは、加工窓1500の幅(AODwidth)にPRFを乗算し、これをNMAXで除算した値に設定してもよい。これにより、最大ステージ速度VSMAXの良好な推定値が得られる。但し、一実施の形態では、システム1400は、加工窓1500内のリンク1522、1524の可能な「待ち行列(queueing)」を考慮し、速度が上限を超えた場合に、リンクランの短いセクションに亘って、加工不要なリンクのためのバッファを提供する。リンクランの密度によっては、このような待ち行列は、約50%〜約100%の範囲でステージ速度を向上させることができる。幾つかの実施の形態では、この向上の効果は、加速/減速時間及びオーバヘッドによって弱められる。一実施の形態においては、待ち行列を用いて最大ステージ速度VSMAXを決定することは、繰返しプロセスであり、ここで、真の最大速度に近付くと、「リンク待ち行列」のオーバーフローが非常に非線形になる。このような実施の形態では、例えば、リンク密度をフィルタリングし、所与の速度のについて「リンクフロー」を算出し、所与の最大「処理フロー」(PRF×リンクピッチ)の条件下で加工窓1500内の許容できる「蓄積」を算出することによって、より高い線形性を導入できる。
【0098】
移動する加工窓1500内の如何なるリンク1524も切断できるようにするために、図14に示すAOD1410の位置決め精度は、加工窓1500の全体に亘ってシステム精度を維持するために十分高い。現在の高開口数レンズは、約50μmの走査視野を有する。更に、システムリンクブロー正確度は、平均+3σ<0.18μmより高いことが望ましい場合がある。例えば、AOD1410が、エラーバジェットに対し、約20nmのシステムの不正確性(system inaccuracy)に寄与する場合、一実施の形態に基づくAOD1410は、約1/2500(1 part in 2500)の位置決め正確度を有する。
【0099】
図17は、一実施の形態に基づく、2つの偏向デバイスを備えるレーザ処理システム1700の概略図である。システム1700は、図14に関連して説明した、レーザ1414、スイッチ1416、AOD1410、リレーレンズ1422、ミラー1424及びフォーカスレンズ1426を含む。更に、システム1700は、ビーム経路内に他のAOD1712及び他のリレーレンズ1714を含んでいる。
【0100】
一実施の形態においては、AOD1410は、レーザビームをX方向に偏向するように構成されており、AOD1712は、レーザビームをY方向に偏向するように構成されている。リレーレンズ1422は、AOD1410からAOD1712にレーザビームを結像する。リレーレンズ1714は、AOD1712からミラー1424にレーザを結像する。このように、システム1700は、レーザパルスを2つの方向に向け直すことができる。なお、一実施の形態においては、図14に示すAOD1410は、レーザビームを2つの方向に偏向することができる単一のデバイスを備える。
【0101】
図18は、一実施の形態に基づく、テレセントリック角度検出器(telecentric angle detector)1814を含むレーザ処理システム1800の概略図である。この実施の形態では、半透明ミラー1810は、レーザビームの一部をフォーカスレンズ1426に向け、レーザビームの一部を、更なるリレーレンズ1812を介して、テレセントリック角度検出器1814に向ける。テレセントリック角度検出器1814は、カッドセル、PSD又はビーム角度を検出するように構成されたカメラ検出器を含んでいてもよい。上述のように、エラー補正及び/又は較正のために、テレセントリック角度検出器1814を用いて、AOD1410、1712の一方又は両方にフィードバックを提供してもよい。
【0102】
一実施の形態においては、システム1400は、単一のパルスを用いて、各リンク1524をブローし、加工窓1500内の個別のリンク1524を処理する。AOD1410は、加工窓1500が走査方向を移動している間に、2個の連続するレーザパルスの間で、加工窓1500内で集光されたリンクパルスの位置をリンク1524に迅速に向け直す。従来のリンク処理システムは、非常にPRFが高いレーザが生成するパルスのうち、約半分から約99%をブロックすることがあるが、システム1400は、パルスの大部分又は全てを使用することができる。したがって、被加工物1418をより速く動かすことなく、スループットを大幅に向上させることができる。
【0103】
これに加えて、又は他の実施の形態では、システム1400は、被加工物1418上の単一の位置を2個以上のパルスで処理した後、AOD1410を用いて後続するパルスを被加工物1418上の他の位置に向けてもよい。システム1400は、例えば、エネルギがより低い10個パルスをリンク1524に供給した後、被加工物1418上の異なる位置にレーザビームを向け直してもよい。このように、システム1400は、非常に高い(例えば、約1MHz〜約100MHzの範囲の)PRFで生成されるパルスを方向付け、多くのブローによって所望のリンク1524を狙う有効な手法を提供する。
【0104】
加工窓1500が被加工物1418に対して継続的に動く場合、一実施の形態では、1個以上のパルスをリンク1524に送達しながら、集光されたスポット位置とリンク位置との間の固定の関係を維持するために、AOD1410を追跡に使用してもよい。また、追跡は、横方向に離間した複数のリンクとの固定の関係を維持するために用いることもできる。
【0105】
一実施の形態においては、被加工物1418上の位置間の切替時間は、1個のレーザパルス周期より短い。他の実施の形態においては、切替時間は、レーザパルス周期と同じオーダーである。更に他の実施の形態では、切替期間は、レーザパルス周期より長い。例えば、システム1400が10個のレーザパルスでリンク1524を処理し、3個又は4個のレーザパルス周期で1個のリンクから次に切り替われば、レーザ1414が有効に使用される。
【0106】
新たな位置に切り替わる(例えば、加工窓1500が図15及び図16に示す走査方向に進む)前に、10個のパルスの全てを単一のリンク1522、1524に送達すること(上述した具体例)に代えて、2個以上の横方向に離間した(例えば、走査方向に垂直に離間した)リンク1522、1524に2個以上のパルスを送達してもよい。例えば、6個の横方向に離間したリンク1522のそれぞれ(図15に示すリンクバンク1510、1512、1514、1516、1518、1520のそれぞれ)に単一のパルスを送達することが望ましいことがある。この場合、AOD1410は、加工窓1500を新たな位置に移動させる前に、6個の連続したレーザパルスを6個の横方向に離間したリンク1522に偏向することができる。
【0107】
図19A、図19B及び図19Cは、一実施の形態に基づく、一連のレーザパルス1914を、それぞれの位置変更プロファイル1916、1918、1920に関連付けたタイミングチャート1900、1910、1912を示している。この開示から、図19A、図19B及び図19Cに示すタイミングチャート1900、1910、1912は、例示的なものに過ぎず、リンク毎に送達されるパルスと、リンク間のシフトに用いられるパルス期間との如何なる組合せを用いてもよいことは当業者にとって明らかである。図19Aに示す実施の形態では、ブロー期間の間に単一のレーザパルスがリンクに送達される。そして、例えば、シフト期間の間に、AOD又は高速ビーム偏向器(図示せず)が各パルスの間でシフトし又は位置を変更する。このように、この具体例では、一連のレーザパルス1914の各レーザパルスは、異なるリンクに送達される。
【0108】
図19Bに示す実施の形態では、AOD又は高速ビーム偏向器は、各ブロー期間の間でシフトするために、図19Aの具体例に比べてより長い時間を費やす。具体的には、第1のパルスが第1のリンクに送達された後、第2のパルスが第2のリンクに送達される前に、AOD又は高速ビーム偏向器は、3パルス期間の間にシフトする。後述するように、スイッチ(例えば、更なるAOD及びビームダンプ)を用いて、シフト期間の間に、使用しないレーザパルスが被加工物の表面に到達しないようにブロックしてもよい。
【0109】
図19Cに示す実施の形態では、第1のブロー期間の間、第1の複数(図では9個)のパルスが第1のリンクに送達され、幾つか(図では約3個)のパルス期間の間、AOD又は高速ビーム偏向器がシフトし、第2のブロー期間の間、第2の複数のパルスが第2のリンクに送達される。なお、一実施の形態においては、例えば、上述したAOD1410等の高速偏向デバイスを用いて、2つ以上の第1(及び/又は第2)の複数のパルスを、第1(及び/又は第2)のブロー期間の間に、横方向に離間した複数のリンクに亘って分散させてもよい。このようにして、一連のレーザパルス1914内のパルスをできるだけ多く使用するために、パルスを効率的に分散させることができる。一実施の形態においては、使用されるパルスの数は、従来のリンク処理システムで使用されるパルスに比べて、約1%より大きく増加する。
【0110】
被加工面上の完全に又は部分的に重なる領域内の同じターゲットを処理するために向けられるレーザスポット、被加工面上の個別のターゲットに向けられるが、ビーム(例えば、ガウステイル(Gaussian tail))の一部が重なるレーザスポット、又は検出器、例えば、パルスエネルギ又は反射パルスエネルギ検出器において重なるレーザスポットでは、コヒーレントクロストークの問題が生じることがある。異なるレーザスポットのガウステイルが重なる場合、例えば、2つの近接する構造(例えば、リンク)の間の領域におけるクロストーク及び干渉の結果、光学エネルギレベルが望ましくない高さになることによってダメージが生じることがある。そこで、上述した実施の形態では、どの時点でも、被加工物上の加工窓内に単一のレーザスポットのみが入射するようにしている。被加工物上で空間的に重なるが、順次的に供給される2つのレーザスポットは、互いに干渉せず、この結果、コヒーレントクロストークを低減又は防止することができる。但し、他の実施の形態では、被加工物上の加工窓内に複数のスポットが同時に入射することがある。例えば、2つ以上のビーム経路を介して、2つ以上のレーザビームを提供してもよい。
【0111】
1又は複数のブローでサイトを処理する際、幾つかの理由から、高速ビームステアリングメカニズムを用いて集光されたスポットをステアリングすることが望ましい。
【0112】
まず、異なるリンクブロー箇所を切り換えるためにビーム偏向を行う必要がある。次に、被加工物に対してプロセス領域が継続的に移動するシステムでは、追跡コマンドを含むことが望ましい場合がある。このコマンドは、1つ以上のレーザパルスをリンクに送達しながら、焦点位置とリンク位置との間の固定の関係を維持することに役立つ。追跡コマンドは、特に、複数のパルスが1つのリンクを標的にする場合に有用である。
【0113】
更なるビーム偏向又はステアリングを用いて、移動ステージの追跡エラーを補償してもよい。例えば、平坦なXYステージを用いて、集光されたレーザスポットの下でウェハを位置決めする場合、ビームステアリングを用いて、残りのXYステージ追跡エラー(例えば、所望の軌道と実際の軌道との間の瞬間的な差分)を補償することができる。これは、出願人のFSMエラー補償と同様である。
【0114】
また、他の種類のシステムエラー又は外乱を補正するために、ステアリングメカニズムを用いることもできる。例えば、9830プラットホームでは、最終的な集光対物レンズの動きを感知し、FSMを用いて、結果として生じる被加工物における焦点の動きを補正する。これは、同じステアリングメカニズムを用いても行うことができる。また、ビーム位置エラー、例えば、レーザレールの位置安定性において感知された不正確性を補償することができる。また、このステアリングメカニズムを用いて、他のエラー、例えば、温度ドリフトを補正することでもできる。
【0115】
AOM、EOM又は他のステアリングメカニズムに送達される正味の追跡又はステアリングコマンドは、上述した1つ以上のステアリング項目を累積又は加算したものである。また、上述した以外の理由から、ビームをステアリングすることが望ましい場合もある。
【0116】
一実施の形態では、位置精度が高い高速ビームステアリングデバイスは、処理エリアに亘ってシステムの精度を維持するために、十分小さい必要がある。現在の高開口数レンズは、約50μmの走査視野を有し、システムリンクブロー精度は、平均+3σ<0.18μmより高いことが望ましい場合がある。例えば、AODが、エラーバジェットに対し、約20nmのシステムの不正確性に寄与する場合、AODは、約1/2500(1 part in 2500)の位置決め精度を有する必要がある。これは、妥当な要求である。何らかの閉ループ感知及びフィードバック補正(closed-loop sensing and feedback correction)と共にAOM又は高速ビームステアリングデバイスを駆動することが望ましい場合もある。
【0117】
これを行う1つの手法は、AODを用いて、望まれないパルスを、位置敏感型検出器(position sensitive detector:PSD)又は使用されないパルスの位置を測定できるカッドセル(quad cell)を含むビームダンプに偏向することである。この技術によって、温度ドリフト又はAOM較正における温度変化を検出できる。
【0118】
また、AOMを介して追加的なビームを出射し、これらのビームがどのように偏向されるかを測定することもできる。例えば、切断用のレーザに加えて、AOMを介してヘリウムネオンCWレーザを方向付け、この結果偏向されたCWビームの一部を、フィードバック目的のために又はドリフトの検出のためにPSD又はカッドセルに方向付けてもよい。
【0119】
本発明の基底にある原理から逸脱することなく、上述の実施の形態の詳細に多くの変更を加えることができることは当業者にとって明らかである。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって定義される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に対してビーム送達座標を整列させ、前記整列に対応する位置データを生成するビーム位置決めシステムと、
パルスレーザ光源と、
前記パルスレーザ光源からレーザパルスを受け取り、前記レーザパルスから、複数のビームレットパルスを含むビームレットアレイを生成するビームレット生成モジュールと、
前記ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスの振幅を変調するビームレット変調器と、
前記変調されたビームレットアレイを、前記位置データに対応する被加工物上の箇所の1つ以上の標的に集光するビームレット送達光学素子とを備えるレーザ処理システム。
【請求項2】
前記ビームレットアレイ内のビームレットパルスを抽出し、
前記ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスの総エネルギを判定する光検出モジュールを更に備える請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記光検出モジュールは、更に、前記ビームレット変調器にエラー補正補償信号を提供して、前記被加工物上の特定の標的に供給される連続するビームレット振幅を調整するように構成されている請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記光検出モジュールは、更に、
前記被加工物上の特定の標的に送達された一連のビームレットパルスが提供するパルスエネルギの合計が所定の閾値に達し又はこれを超えていることを判定し、
前記ビームレット変調器を制御して、更なるビームレットパルスが前記特定の標的に到達することを防ぐように構成されている請求項2記載のシステム。
【請求項5】
前記ビーム位置決めシステムと協働して、
被加工物標的ピッチを、
前記パルスレーザ光源のパルス繰返し周波数(PRF)、
ビームレットアレイピッチ、及び
前記ビーム位置決めシステムと前記被加工物との間の相対速度(ステージ速度)に調和させることにより、
前記整列を提供するシステム制御コンピュータを更に備える請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記ビームレットピッチは、被加工物標的ピッチ及びパルスレーザ光源のPRFに対して、
c×(ビームレットピッチ)=d×(被加工物標的ピッチ)の関係を有し、
前記c及びdは、整数であり、
前記被加工物ピッチ=ステージ速度/PRFであり、
前記整数c及びdは、
c/d=整数値となるように選択される請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記ビームレット生成モジュールは、離散的にバンド化された反射板を含み、前記離散的にバンド化された反射板は、
第1の複数の個別の反射バンドを含む第1の表面と、
第2の複数の個別の反射バンドを含む第2の表面とを備え、
前記第1の表面は、
前記離散的にバンド化された反射板に前記レーザパルスを受け取り、
前記第2の表面から受け取ったレーザパルスの減少した一部を前記第2の表面に向けて前記離散的にバンド化された反射板に継続的に反射するように構成され、
前記第2の表面は、
前記第1の表面から受け取った前記レーザパルスの減少した一部の第1の部分を継続的に透過し、第2の部分を反射するように構成されており、前記透過される第1の部分は、前記ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスに対応する請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記ビームレット生成モジュールは、
前記レーザパルスを受け取り、前記レーザパルスを、直線偏光から円偏光に変換する第1の1/4波長板と、
第1のチャネル、第2のチャネル及び出力表面を有し、前記円偏光されたレーザビームの第1の部分を、前記出力表面を介して、前記ビームレットアレイの第1のビームレットパルスとして透過し、前記円偏光されたレーザビームの第2の部分を、前記第1のチャネルに透過するように構成された偏光ビームスプリッタキューブと、
前記円偏光されたレーザビームの第2の部分を第1のミラーに透過し、前記第1のミラーから反射を受け取り、前記第1のミラーからの反射をp偏光ビームに変換して前記偏光ビームスプリッタキューブに戻し、前記偏光ビームスプリッタキューブが前記第2のチャネルを介して前記p偏光ビームを透過する第2の1/4波長板と、
前記p偏光ビームを第2のミラーに透過し、前記第2のミラーから反射を受け取り、前記第2のミラーからの反射を前記偏光ビームスプリッタキューブに透過する第3の1/4波長板とを備え、前記偏光ビームスプリッタキューブは、前記第3の1/4波長板から受け取ったビームを、前記出力表面を介して、前記ビームレットアレイの第2のビームレットパルスとして透過する請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記ビームレット生成モジュールは、少なくとも1つの回折光学要素を含む請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記パルスレーザ光源は、
前記被加工物に対するビーム送達座標の整列のための前記ビーム位置決めシステムの座標決めのための基準タイミング信号を提供する第1のパルス繰返し周波数でレーザパルスを出射する光発振器と、
前記第1のパルス繰返し周波数より低い第2のパルス繰返し周波数で、増幅のためのレーザパルスのサブセットを選択する第1の光変調器とを備え、前記サブセットに含まれる前記レーザパルスの選択は、前記第1のパルス繰返し周波数及び前記位置データに基づいている請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記位置データに基づいて、前記ビーム送達座標の整列を調整するレーザコムインデクス付与モジュールを更に備え、前記レーザコムインデクス付与モジュールが、
前記第1のパルス繰返し周波数が前記第2のパルス繰返し周波数の整数倍数nとなるように前記第2のパルス繰返し周波数を選択し、
前記ビーム送達座標の調整の量に基づいて、前記サブセット内の第1の増幅されたパルスと、前記サブセット内の第2の増幅されたパルスとの間のパルス間時間を、光発振器パルス間時間の整数倍数kによってオフセットさせるように構成された請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記パルスレーザ光源は、ファイバ主発振器を含むタンデム光増幅器を備える請求項1記載のシステム。
【請求項13】
前記ファイバ主発振器は、約100フェムト秒から約500ピコ秒の範囲のパルス幅でレーザパルスを出力するように構成されている請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記パルスレーザ光源は、Qスイッチダイオード励起固体レーザを備える請求項1記載のシステム。
【請求項15】
前記パルスレーザ光源は、主発振器パワー増幅器(MOPA)を備える請求項1記載のシステム。
【請求項16】
前記MOPAの主発振器に統合されたプログラミング可能なパルス幅要素を更に備える請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記プログラミング可能なパルス幅要素は、プログラミング可能なバンドパスフィルタを備える請求項16記載のシステム。
【請求項18】
前記パルスレーザ光源は、主発振器再生増幅器を備える請求項1記載のシステム。
【請求項19】
被加工物をレーザで処理するための方法において、
レーザパルスを生成するステップと、
前記レーザパルスから、複数のビームレットパルスを含むビームレットアレイを生成するステップと、
前記ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスの振幅を変調するステップと、
前記変調されたビームレットアレイを、前記被加工物上の1つ以上の標的箇所に集光するステップとを有する方法。
【請求項20】
前記ビームレットアレイ内の前記ビームレットパルスを抽出するステップと、
前記ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスの総エネルギを判定するステップと、
前記被加工物上の特定の標的に供給される連続するビームレット振幅を調整するエラー補償信号を生成するステップとを更に有する請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記被加工物上の特定の標的に送達された一連のビームレットパルスが提供するパルスエネルギの合計が所定の閾値に達し又はこれを超えていることを判定するステップと、
前記判定に基づいて、更なるビームレットパルスが前記特定の標的に到達することを防ぐステップとを更に有する請求項19記載の方法。
【請求項22】
被加工物標的ピッチを、
前記パルスレーザ光源のパルス繰返し周波数(PRF)、
ビームレットアレイピッチ、及び
ビーム位置決めシステムと被加工物との間の相対速度に調和させる請求項19記載の方法。
【請求項1】
被加工物に対してビーム送達座標を整列させ、前記整列に対応する位置データを生成するビーム位置決めシステムと、
パルスレーザ光源と、
前記パルスレーザ光源からレーザパルスを受け取り、前記レーザパルスから、複数のビームレットパルスを含むビームレットアレイを生成するビームレット生成モジュールと、
前記ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスの振幅を変調するビームレット変調器と、
前記変調されたビームレットアレイを、前記位置データに対応する被加工物上の箇所の1つ以上の標的に集光するビームレット送達光学素子とを備えるレーザ処理システム。
【請求項2】
前記ビームレットアレイ内のビームレットパルスを抽出し、
前記ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスの総エネルギを判定する光検出モジュールを更に備える請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記光検出モジュールは、更に、前記ビームレット変調器にエラー補正補償信号を提供して、前記被加工物上の特定の標的に供給される連続するビームレット振幅を調整するように構成されている請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記光検出モジュールは、更に、
前記被加工物上の特定の標的に送達された一連のビームレットパルスが提供するパルスエネルギの合計が所定の閾値に達し又はこれを超えていることを判定し、
前記ビームレット変調器を制御して、更なるビームレットパルスが前記特定の標的に到達することを防ぐように構成されている請求項2記載のシステム。
【請求項5】
前記ビーム位置決めシステムと協働して、
被加工物標的ピッチを、
前記パルスレーザ光源のパルス繰返し周波数(PRF)、
ビームレットアレイピッチ、及び
前記ビーム位置決めシステムと前記被加工物との間の相対速度(ステージ速度)に調和させることにより、
前記整列を提供するシステム制御コンピュータを更に備える請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記ビームレットピッチは、被加工物標的ピッチ及びパルスレーザ光源のPRFに対して、
c×(ビームレットピッチ)=d×(被加工物標的ピッチ)の関係を有し、
前記c及びdは、整数であり、
前記被加工物ピッチ=ステージ速度/PRFであり、
前記整数c及びdは、
c/d=整数値となるように選択される請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記ビームレット生成モジュールは、離散的にバンド化された反射板を含み、前記離散的にバンド化された反射板は、
第1の複数の個別の反射バンドを含む第1の表面と、
第2の複数の個別の反射バンドを含む第2の表面とを備え、
前記第1の表面は、
前記離散的にバンド化された反射板に前記レーザパルスを受け取り、
前記第2の表面から受け取ったレーザパルスの減少した一部を前記第2の表面に向けて前記離散的にバンド化された反射板に継続的に反射するように構成され、
前記第2の表面は、
前記第1の表面から受け取った前記レーザパルスの減少した一部の第1の部分を継続的に透過し、第2の部分を反射するように構成されており、前記透過される第1の部分は、前記ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスに対応する請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記ビームレット生成モジュールは、
前記レーザパルスを受け取り、前記レーザパルスを、直線偏光から円偏光に変換する第1の1/4波長板と、
第1のチャネル、第2のチャネル及び出力表面を有し、前記円偏光されたレーザビームの第1の部分を、前記出力表面を介して、前記ビームレットアレイの第1のビームレットパルスとして透過し、前記円偏光されたレーザビームの第2の部分を、前記第1のチャネルに透過するように構成された偏光ビームスプリッタキューブと、
前記円偏光されたレーザビームの第2の部分を第1のミラーに透過し、前記第1のミラーから反射を受け取り、前記第1のミラーからの反射をp偏光ビームに変換して前記偏光ビームスプリッタキューブに戻し、前記偏光ビームスプリッタキューブが前記第2のチャネルを介して前記p偏光ビームを透過する第2の1/4波長板と、
前記p偏光ビームを第2のミラーに透過し、前記第2のミラーから反射を受け取り、前記第2のミラーからの反射を前記偏光ビームスプリッタキューブに透過する第3の1/4波長板とを備え、前記偏光ビームスプリッタキューブは、前記第3の1/4波長板から受け取ったビームを、前記出力表面を介して、前記ビームレットアレイの第2のビームレットパルスとして透過する請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記ビームレット生成モジュールは、少なくとも1つの回折光学要素を含む請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記パルスレーザ光源は、
前記被加工物に対するビーム送達座標の整列のための前記ビーム位置決めシステムの座標決めのための基準タイミング信号を提供する第1のパルス繰返し周波数でレーザパルスを出射する光発振器と、
前記第1のパルス繰返し周波数より低い第2のパルス繰返し周波数で、増幅のためのレーザパルスのサブセットを選択する第1の光変調器とを備え、前記サブセットに含まれる前記レーザパルスの選択は、前記第1のパルス繰返し周波数及び前記位置データに基づいている請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記位置データに基づいて、前記ビーム送達座標の整列を調整するレーザコムインデクス付与モジュールを更に備え、前記レーザコムインデクス付与モジュールが、
前記第1のパルス繰返し周波数が前記第2のパルス繰返し周波数の整数倍数nとなるように前記第2のパルス繰返し周波数を選択し、
前記ビーム送達座標の調整の量に基づいて、前記サブセット内の第1の増幅されたパルスと、前記サブセット内の第2の増幅されたパルスとの間のパルス間時間を、光発振器パルス間時間の整数倍数kによってオフセットさせるように構成された請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記パルスレーザ光源は、ファイバ主発振器を含むタンデム光増幅器を備える請求項1記載のシステム。
【請求項13】
前記ファイバ主発振器は、約100フェムト秒から約500ピコ秒の範囲のパルス幅でレーザパルスを出力するように構成されている請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記パルスレーザ光源は、Qスイッチダイオード励起固体レーザを備える請求項1記載のシステム。
【請求項15】
前記パルスレーザ光源は、主発振器パワー増幅器(MOPA)を備える請求項1記載のシステム。
【請求項16】
前記MOPAの主発振器に統合されたプログラミング可能なパルス幅要素を更に備える請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記プログラミング可能なパルス幅要素は、プログラミング可能なバンドパスフィルタを備える請求項16記載のシステム。
【請求項18】
前記パルスレーザ光源は、主発振器再生増幅器を備える請求項1記載のシステム。
【請求項19】
被加工物をレーザで処理するための方法において、
レーザパルスを生成するステップと、
前記レーザパルスから、複数のビームレットパルスを含むビームレットアレイを生成するステップと、
前記ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスの振幅を変調するステップと、
前記変調されたビームレットアレイを、前記被加工物上の1つ以上の標的箇所に集光するステップとを有する方法。
【請求項20】
前記ビームレットアレイ内の前記ビームレットパルスを抽出するステップと、
前記ビームレットアレイ内の各ビームレットパルスの総エネルギを判定するステップと、
前記被加工物上の特定の標的に供給される連続するビームレット振幅を調整するエラー補償信号を生成するステップとを更に有する請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記被加工物上の特定の標的に送達された一連のビームレットパルスが提供するパルスエネルギの合計が所定の閾値に達し又はこれを超えていることを判定するステップと、
前記判定に基づいて、更なるビームレットパルスが前記特定の標的に到達することを防ぐステップとを更に有する請求項19記載の方法。
【請求項22】
被加工物標的ピッチを、
前記パルスレーザ光源のパルス繰返し周波数(PRF)、
ビームレットアレイピッチ、及び
ビーム位置決めシステムと被加工物との間の相対速度に調和させる請求項19記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20】
【公表番号】特表2012−502805(P2012−502805A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527964(P2011−527964)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/057346
【国際公開番号】WO2010/033723
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(593141632)エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド (161)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/057346
【国際公開番号】WO2010/033723
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(593141632)エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド (161)
【Fターム(参考)】
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