説明

包装適用のための吸着性複合材料障壁の選択法

少なくとも、包袋の一部を外部の湿度から内容物を保護できるようにするために使用できる、適切な樹脂結合吸着剤組成物の選択方法であって、次の工程を含む:a)複数の樹脂、複数の吸着剤、及び複数のこれらの間の割合を選択して複数の複合材料を形成する工程;b)複数の複合材料について複数の破損時間を計算する工程であり、ここで、該複数の破損時間の各破損時間は、前記複数の複合材料の各複合材料の内部相対湿度hinが最大内部相対湿度と等しい場合に基づいている工程;c)該複数の破損時間のうち、より長い破損時間を決定する工程;並びに、d)工程(c)の結果に基づいて、該複数の複合材料の1つの複合材料を選択する工程である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、包装材料、より具体的には包装適用のための吸着性複合材料障壁、さらにより詳細には、吸着性複合障壁の包装適用のためのその材料及び組成物の選択方法に広く関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーの機械的特性の改善のために、無機粒子を充填したポリマーベースの複合材料が長く使用されている。また、例えば、米国特許第6,130,263号にあるように、熱可塑性の乾燥しているライナー(liner)及び内部部品を作成し、かつそのような容器内の湿度を制御する目的で、吸湿剤を添加した複合材料が提案されている。多様な電子機器、自動車、医薬品、診断機器及び食品の包装適用には、環境中の湿気への曝露から感湿性の製品又は部品を保護するために、包装又は封入した包袋内部の非常に低い湿度レベルが要求される。電子機器及び自動車用電子部品は、筐体及び構成部品における金属のダイカストの使用から熱可塑性プラスチックの使用へと、ますます移行している。この移行は、常に増加している競争環境において、重量及び原価を下げるという要求によって加速されている。こうした用途の急速な進展速度の結果、熱可塑性樹脂の選択方法には、構成部品又は装置の耐用年数に直接影響を与えるような樹脂の水蒸気の輸送特性が考慮されていないことが多い。これと連動して、構成部品又は装置は小型化の傾向にあり、吸着剤を封入するための空間がほとんど残されず、結果、湿気防止が不十分であるか又は全くなくなる。現在のところ、最良の受動的防湿特性を示す熱可塑性プラスチックの選択及び使用は、多くの場合、構成部品又は装置の所望の耐用年数にわたる水分の進入からの保護を提供するのに達していない。これまで、実質的に、この種の包袋は、水分の進入防止に関して十分な性能を提供することができなかった。
【0003】
特に容器の内装品として複合材料を使用する場合、包装内部から水分を迅速に除去することによって複合材料の乾燥効果を促進するために、いくつかの米国特許では、乾燥剤を添加した複合材料への水分輸送の改善に焦点を当てている。例えば、米国特許第5,911,937号;第6,130,263号;第6,194,079号;及び第6,214,255号を参照されたい。こうした装置は、水分の進入を阻止しないので多くの記載された需要を満たすものではないが、包装の操作中、装置の実用時間中、又は再密封可能な容器の開放後に包袋に入った水分を単に吸収する。
【0004】
全てのプラスチック材料は、大気中ガス及び水蒸気に対して透過性であるので、プラスチックから作られるどんな包装又は包袋内にも、相当期間、水分のない内部環境を提供することはできない。これまで、浸透した水分、すなわちすでに包袋に浸入した水分を制御することが、吸湿性複合材料を開発するための第1の動機であった。封入内にすでに浸透した水分を除去することに代わる方法は、包装を行うプラスチック材料自身の防湿特性を改善することである。熱可塑性ポリマー樹脂中に吸水体を分散させることで、水蒸気の浸透への活性障壁として作用する複合材料を作り出すことが可能である。活性障壁は、該障壁を横切って拡散する水分を物理的及び/又は化学的手法によって妨害し除去する。そのような障壁は、相当期間の包装内への水分の浸透の低減又は完全な排除を可能にする。例えば、米国特許出願第11/040,471号;第11/335,108号;及び第11/635,750号を参照されたい。これらの出願は、その全体を引用により本明細書中に組込まれてる。
【0005】
吸湿性添加物を充填した複合材料障壁において、ポリマー母材中に分散された吸着性添加剤は、水分が包装内に浸透し始めるより前に、障壁層の拡散性遅延時間として当業者に公知の大きな遅延を引き起すことがあり、該遅延は、多くの場合、純粋樹脂から作られた障壁中で観察される遅延より桁違いに長い。純粋樹脂及び樹脂/吸着剤複合材料障壁に対する遅延時間の算出が後述の「発明の詳細な説明」に記載されているが、こうした計算は当業者には周知であるということが理解されよう。これら遅延時間の計算は、封入不全の決定要素として使用されている。言い換えると、遅延時間に達すると、それ以降、障壁を横断する水分の浸透が妨げられることなく進行すると推測されるので、該包袋は、不全化すると想定される。これに反して、この仮定が、ある種の吸着剤材料及び障壁の複合材料に対しては正しくはないことが見出されている。例えば、遅延時間に達した後の期間、包袋は、10〜50%未満の相対湿度を維持することでき、かつ該包袋の内容物が、そのような相対湿度レベルによって劣化しない、及び/又は損傷を受けないようにし、該包袋は、単に遅延時間へ到達しただけでは不全をきたさない。従って、遅延時間に達した後、どのように封入が機能するのか理解することが有利である。
【0006】
活性障壁を提供する又は包袋内から存在する水分を吸収するためのいずれかに使用される吸湿性ポリマーの生産に向けた種々の装置及び方法に由来され得るように、所望の目標、すなわち、感湿性構成部品を劣化から保護して、それによって、構成部品の耐用年数を延長するように、多くの手法が検討されてきた。これまで、材料の選択と混合率のどちらをとるかの妥協が要求され、記載されたように、その決定は、それらの影響を十分に理解することなくなされていた。従って、特有のデザイン及び性能目標を達成するために、ポリマー樹脂、吸着剤及びこれらの混合比を選択する方法に対する長年の要求がある。さらに、ポリマー樹脂、吸着剤及びこれら選択物の混合比の効果を正確に予測する方法に長年の要求がある。先の記載を考慮すると、本発明は包装している物品の防湿特性の改善を可能にするもので、単に吸湿の速度を理解するものではない。さらに、本発明の防湿層は、水分が包袋の内部に達した後に水分を除去するのではなく、水分の浸透を防ぐ又は最小化することによって水分進入時に効果的な障壁特性を提供する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、少なくとも、包袋の一部を外部の湿度から内容物を保護できるようにするために使用できる、適切な樹脂結合吸着剤組成物の選択方法を広く含み、該包袋は、内部ヘッドスペース体積V、厚さL及び表面積Aを有し、該包袋は、外部相対湿度houtを有する環境に囲まれており、該houtは、温度Tのときの一部分の飽和水蒸気密度ρsatであり、該内部体積は、防湿層保護の終点を表す最大の内部相対湿度を有し、該方法は、次の工程を含む:a)複数の樹脂、複数の粒子状吸着剤、及び複数のこれらの間の割合を選択し、複数の複合材料を形成し、ここで、該複数の樹脂の各樹脂は、有効水蒸気拡散率Dm及び水蒸気溶解度係数Smを有し、並びに該複数の複合材料の各複合材料は、該樹脂の体積分率φm及び該吸着剤の体積分率φdを有する工程;b)該複数の複合材料及び複数の複合体材料層について複数の破損時間を計算し、ここで、該複数の破損時間の各破損時間は、前記複数の複合材料の各複合材料の内部相対湿度hinが該最大内部相対湿度と等しい場合に基づいている工程;c)該複数の破損時間のうち、より長い破損時間を決定する工程;並びに、d)工程(c)の結果に基づいて、該複数の複合材料の1つの複合材料及び1つの複合材料層の厚さを選択する工程である。また、包袋を含む複合材料層の厚さの範囲は、他の包袋設計の検討項目、例えば、機械的及び電気的特性、重量、材料及び製造費用などの影響をたびたび受けることを理解されたい。従って、工程(d)の1つの最適な複合材料を選択することで、指定の包袋の壁厚の制約を満たすようにすることが可能である。
【0008】
いくつかの実施態様において、複数の粒子状吸着剤の各粒子状吸着剤は、収着された水蒸気量に関して化学量論的かつ不可逆的であり、並びに複数の複合材料の各複合材料は化学量論係数μ、初期物質濃度R0、及び包袋又は複合材料層の外部表面で溶解した水蒸気の濃度Coutを有し、遅延時間tLR後の内部相対湿度の展開は、下記式:
【数1】

(式中:tは内部相対湿度hinに達するまでの時間であり;かつ
tLRは厚さLを有する包袋の遅延時間である。)
に従って計算される。
こうした実施態様において、該遅延時間は下記式:
【数2】

(式中:
【数3】

である。)
によって計算される
【0009】
他の実施態様において、複数の粒子状吸着剤の各粒子状吸着剤は、水蒸気吸着に関して可逆的であり、水蒸気収着等温線を有するが、前記水蒸気等温線は、一定の水蒸気溶解度係数Sd、及び飽和水蒸気と接触する吸着剤の単位重量あたりの最大の平衡吸着水量である擬似化学量論係数(pseudo stoichiometric coefficient)μを有する直線であり、複数の複合材料の各複合材料は、前記吸着剤の初期物質濃度R0及び外部表面で溶解した水蒸気の濃度Coutを有し、遅延時間tLL後の初期相対湿度の展開は、次の式:
【数4】

(式中:tは内部相対湿度hinに達するまでの時間であり;
tLLは厚さLを有する包袋の遅延時間であり;及び
Seff = φmSm + φdSd である。)
によって計算される。
こうした実施態様において、該遅延時間は下記式:
【数5】

(式中:
【数6】

である。)
によって計算される。
【0010】
さらに他の実施態様において、複数の粒子状吸着剤の各粒子状吸着剤は水蒸気収着等温線を有するが、該水蒸気収着等温線は、孔の飽和定数Cmax、Langmuirの親和定数b、及び初期内部相対湿度hin.0を有する内部容積を伴う二元収着様式であり、並びに遅延時間tLD後の内部相対湿度の展開は、下記式:
【数7】

(式中:tは内部相対湿度hinに達するまでの時間であり;
tLDは厚さLを有する包袋の遅延時間であり;
【数8】

である。)
によって計算される。
こうした実施態様において、該遅延時間は下記式:
【数9】

(式中:y=bhoutである。)
によって計算される。
【0011】
さらに他の実施態様において、樹脂結合吸着剤組成物が、カップリング剤又は相溶化剤の補助により形成され、該カップリング剤又は相溶化剤が、複数の樹脂の各樹脂と化学的に相溶性であり、かつ吸着剤粒子と複数の樹脂の各樹脂との接着又はカップリングを改善させる。こうした実施態様のいくつかにおいて、該カップリング剤又は相溶化剤は、反応性及び非反応性試薬からなる群から選択されるが、こうした実施態様のいくつかにおいて、該相溶化剤は、金属、金属酸化物、アクリラート、ステアラート、ブロックコポリマー、マレアート、エポキシ、シラン、チタナート、有機金属配位子、及びそれらの組合せからなる群から選択される。さらにより他の実施態様において、樹脂結合吸着剤組成物は二軸スクリュー押出機で配合される。
【0012】
本発明は樹脂結合吸着剤組成物から構成された製品を広く含み、該樹脂結合吸着剤組成物は上記方法に従って作成される。いくつかの実施態様において、樹脂結合吸着剤組成物は約2重量パーセント(2wt.%)〜約55重量パーセント(55wt.%)の吸着剤及び約45重量パーセント(45wt.%)〜約98重量パーセント(98wt.%)の樹脂を含むが、他の実施態様において、該樹脂結合吸着剤組成物は約25重量パーセント(25wt.%)〜約55重量パーセント(55wt.%)の吸着剤及び約45重量パーセント(45wt.%)〜約75重量パーセント(75wt.%)の樹脂を含み、さらに他の実施態様において、該樹脂結合吸着剤組成物は約35重量パーセント(35wt.%)〜約42重量パーセント(42wt.%)の吸着剤及び約58重量パーセント(58wt.%)〜約65重量パーセント(65wt.%)の樹脂を含む。さらに他の実施態様において、該樹脂結合吸着剤組成物は樹脂及び粒子状吸着剤を含み、実質的に、粒子状吸着剤の全ての粒子が樹脂母材によって分離されている。
【0013】
本発明はまた、少なくとも1層を有する多層の障壁構造を含み、少なくとも1層が上記方法により調製された樹脂結合吸着剤組成物を含む。
【0014】
本発明の全体的な目的は、樹脂、吸着剤及びそれらの間の割合を選択する方法を提供し、樹脂結合吸着剤の活性障壁を作成することである。
【0015】
本発明の別の全体的な目的は、包袋の活性障壁特性及び包袋に囲まれた内容物の要求に基づいて、包袋の有用年数を最大化させることにある。
【0016】
本発明のこれら及び他の目的並びに利点は、後述の本発明の好ましい実施態様及び添付図面及び特許請求の範囲より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
(図面の簡単な説明)
本発明の操作の性質及び方法は、後述の添付図を用いた本発明の詳細な説明にて、ここでより十分な説明がなされる:
【図1】参照(実線)及び定常状態(点線)の浸透条件に対する、受動膜中の水蒸気圧特性のグラフである;
【図2】受動膜中の参照の時間差のグラフである;
【図3】モレキュラーシーブ及びシリカゲルの通常の水蒸気等温線のグラフである;
【図4】水蒸気等温線のモデル形態のグラフである;
【図5A】ポリプロピレン及び種々の吸着剤材料に対する吸湿等温線のグラフである;
【図5B】ポリプロピレン樹脂及び種々の吸着剤材料を含む複合材料障壁を通過する浸透動態のグラフである;
【図6A】高密度ポリエチレン及び種々の吸着剤材料に対する吸湿等温線のグラフである;
【図6B】高密度ポリエチレン樹脂及び種々の吸着剤材料を含む複合材料障壁を通過する浸透動態のグラフである;
【図7A】ポリエチレンテレフタラート及び種々の吸着剤材料に対する吸湿等温線のグラフである;
【図7B】ポリエチレンテレフタラート樹脂及び種々の吸着剤材料を含む複合材料障壁を通過する浸透動態のグラフである;
【図8A】ナイロン及び種々の吸着剤材料に対する吸湿等温線のグラフである;
【図8B】ナイロン樹脂及び種々の吸着剤材料を含む複合材料障壁を通過する浸透動態のグラフである;
【図9】本発明に従って形成された典型的な樹脂−吸着剤複合材料の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
最初に、様々な図の図面番号と同様に、本発明の同一の又は機能的に同様の構造要素が特定されることを理解されたい。本発明は、好ましい態様としてここで検討したものに関して記載されるが、請求の範囲に記載される本発明が開示した態様を限定するものではないことを理解すべきである。
【0019】
さらに、本発明は、特定の方法論、材料及び記載の改変に限定されず、当然、改変され得ることが理解される。また、本明細書中に使用される用語法は、特定の態様のみを説明することを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、添付した特許請求の範囲によってのみ限定されることが理解される。
【0020】
特に規定しない限り、本明細書中で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。用語「包袋」は、「包装」、「容器」などの語と同義であり、それら用語は本明細書及び特許請求の範囲で表されるように互換的に使用できることが理解されよう。本明細書に記載されたものと同等又は等価のいかなる方法、装置又は材料を本発明の実施又は試行に使用することができるが、好ましい方法、装置及び材料をここに記載する。
【0021】
密封後に包装/包袋の内側で捕捉した水分を迅速に除去するように設計された、封入された乾燥剤及び内部が乾燥した層とは異なり、上述のように、本発明の乾燥障壁の複合材料は、主に、最長の実用時間の間、水分が包装物品、すなわち包袋を通って浸透するのを阻止するように設計される。このような障壁構造の使用中、包装内部からの水分の除去もまた観察されるが、こうした除去の速度は、むしろ遅くてもよく、包袋内部の収着速度の改善は本発明の一部を形成するものではない。ポリマーベースの複合材料の包装/包袋、例えば、樹脂結合吸着剤の包袋を通過する水分の透過速度を低減させ、かつ障壁壁厚を横断し定常状態の透過様式に到達することを遅延させるために、本発明は、後述の方法を用いて複合材料の材料、それらの間の割合及び充填剤の組込み手順を選択する。
【0022】
上述のように、吸湿性充填剤を充填したポリマー複合材料は、包装用途において効果的な持続性の防湿層として機能することができる。そのような障壁の瞬間的な性能は、拡散性の遅延時間及び遅延時間後の包含環境への瞬間的な有効浸透速度の見地から説明される。拡散性遅延時間の算出は当業者に周知であるが、瞬間的有効浸透速度の測定は、これまで達成されていない。不可逆的な化学量論的吸着剤の解析結果ならびにポリマー材料及び充填剤のFickian(直線)様式及び二元様式の吸湿等温線を以下に記載し、密封された包装内側の瞬間的な浸透データ及び水分の強化された速度論のモデルとして提供する。最終的な複合材料障壁の設計特性及び瞬間的な障壁性能の改善方法もまた明細書中に記載する。
【0023】
気体及び水蒸気に対する浸透性ポリマー障壁の性能は、通常、2つの定常状態の輸送特性:定常状態の透過速度(浸透)、TRSS及び参照時間差tLによって特徴付けられる。TRSSは、分離された環境中のガス圧差Δpに標準化された単位障壁面積Aを横切る浸透物の流量である。水蒸気浸透の流量は、1平方メートルあたり毎秒あたりのモルの単位(mol/(m2 s))又は1平方メートルあたり毎秒あたりのグラムの単位(g/(m2 s))で表されるが、一方、ガス浸透の流量は、1平方メートルあたり毎秒あたり1パスカルあたりのモルの単位(mol/(m2 s Pa))又は1平方メートルあたり毎秒あたり1パスカルあたりの標準温度及び圧力の立法センチメートルの単位(cm3(STP)/(m2 s Pa))で表される。あるいは、水蒸気輸送について、その浸透は多くの場合、1平方メートルあたり1日あたり相対湿度差あたりのグラムの単位(g/(m2 日 ΔRH))で表され、これは特定の温度及び相対湿度差(ΔRH)、すなわち、障壁膜の反対側の相対湿度の差が、同じ一定温度で維持されているときのものである。遅延時間は、膜内の任意の初期条件に対する外部の相対湿度の突然の変化への応答時間として、又は換言すれば、浸透の定常状態の流れ様式が確立する前の漸近的な遅延として測定され得る。通常、水蒸気圧の下流をゼロに維持して初期脱気された障壁膜の参照遅延時間が、遅延時間値tLとして報告される(図1参照)。図1に示すように、初期の参照水蒸気圧特性は、受動膜に対して実線で描かれ、定常状態の浸透条件に対しては点線で描かれる。
【0024】
遅延時間後の内包された環境中の相対湿度は、連続的に増加し、ついには外部環境と平衡に達するであろうことが理解されよう。外部環境の温度は、季節的にかつ昼-夜の周期中に変動する恐れがあるので、常に温度下降時に収容体積内で水蒸気が結露する可能性がある。上述のように、結露は、封入された電子部品の腐食、電気回路の漏電及び他の望ましくない影響を起させる恐れがある。本発明によって選択された及び/又は最適化された乾燥しているポリマー構造は、水分浸透の持続性の障壁として機能し、これによって、包装された装置の実用時間を劇的に増加させる。
【0025】
前述のように、本発明は、最適なポリマー樹脂、吸着剤材料及びそれらの間の割合を決定かつ選択するためにいくつかの工程を含む。まず、非膨潤性のポリマー障壁について論ずる。すなわち、母材内で結露させない、かつ本発明で用いることができる樹脂の例である。該ポリマー障壁は吸着剤材料を含有しないが、それでもその障壁は下記のように水分を吸着する。下記の実施態様において、均一な厚さの固体ポリマー障壁膜を検討する。内部の膜表面、すなわち包装内部の境界条件を、相対湿度hinに固定し、かつ外部の膜表面、すなわち包装外部の境界条件を相対湿度houtに固定する。hinは、温度Tのときの包装内側の水蒸気密度、すなわちρinと温度Tのときの飽和水蒸気密度、すなわちρsatとの割合に等しく、一方、houtは、温度Tのときの包装外側の水蒸気密度、すなわちρout及びρsatの割合に等しいことが理解されよう。さらに、各膜は、一定のそれぞれの水蒸気分圧pin及びpoutに相当し、該水蒸気分圧は、規定温度Tのときの飽和水蒸気圧ρsatに関連する。
【数10】

【数11】

その次に、温度依存性の飽和水蒸気密度ρsat(T)を用いて、内部ヘッドスペース体積Vを有する包装内の水量minを決定する。
【数12】

内部ヘッドスペース体積Vは、包装内に収容される構成要素、材料、又は任意の物体で満たされていない、包装又は包袋内の全ての容量を意味することを意図していることが理解されよう。
【0026】
ポリマー中の非凝縮ガスの溶解度係数Sと類似するポリマー母材中の水蒸気溶解度係数Smは、外部相対湿度(RH)100%、所与の温度Tのときの、乾燥ポリマー母材の単位体積Vm(親水性ポリマーの膨潤は初期は無視している)あたりのポリマー中に溶解した水の物質量mwとして表すことができる。水蒸気溶解度係数Smは、1立法メートルあたり100パーセントの相対湿度あたりのグラムの単位(g/(m3・100%RH))で表される。
【数13】

次いで、非膨潤性ポリマー母材中にFickian (直線)収着で溶解される水分の濃度Cmは、外部湿度hout(T)と平衡にあり、外部湿度houtに比例する。濃度Cmは1立法メートルあたりのグラムの単位(g/m3)で表される。
【数14】

あるいは、非膨潤性のポリマー母材中に溶解される水分量は、特定の比重ρmを有するポリマー母材中の増量成分Wmで計算してもよい。増量成分Wmは、ポリマーのグラムあたりの水のグラムの単位(g(水)/g(ポリマー))で表される。
【数15】

【0027】
毎秒あたりの平方メートル(m2/s)で与えられるポリマー母材中の水蒸気拡散Dm(T)を用いて、ポリマーの水蒸気浸透率Pm(T)が計算できる。水蒸気浸透率Pm(T)は、1平方メートルあたり毎秒あたり相対湿度100%あたりのグラムミリメートルの単位((g・mm)/(m2・s・100%RH))で表される。
【数16】

上記式(7)において、100%RHは、浸透障壁の反対側の相対湿度差ΔRH、すなわち、
外部界面で100%RHでありかつ内部界面で0%RHであることを意味する。この相対湿度の差は、水蒸気が障壁を通って拡散する原動力として働く。
【0028】
100%の相対湿度差に相当する単位水蒸気圧差Δp(T)下での、均一な厚さLを有する障壁の単位面積を横切る定常状態の水蒸気透過速度WVTRは、下記式(8)で表される。水蒸気透過速度WVTRは、1平方メートルあたり毎秒あたり相対湿度100%あたりのグラムの単位(g/(m2・s・100%RH))で表される。
【数17】

【0029】
均一な厚さL及び障壁を横切る相対湿度差Δhを有する障壁の単位面積を通過する水蒸気の定常状態の物質流束J0SSは、下記式(9)で表される。定常状態の物質流束J0SSは、1平方メートルあたり毎秒あたりのグラムの単位(g/(m2・s))で表される。
【数18】

【0030】
材料中の平衡水蒸気濃度Cmは、潜在的に、非直線的収着等温線を介する隣接する気相中の蒸気圧Cm(p)又は一定温度のときの相対湿度hであるCm(h)に非直線的に依存するだろう。この収着の挙動を後述する。
【0031】
参照遅延時間tLは、下流の水蒸気圧をゼロ、すなわちpin=0に維持して、初期脱気された膜中において、定常状態の溶質濃度特性CSS(ξ)が確立する前の漸近の遅延を意味する。直線的吸着を伴う受動的ポリマー膜に対する参照遅延時間の例を図2に示す。
【0032】
膜厚Lを横切る溶質濃度が、該厚さを横切る無次元座標ξ=x/L=[0..1] 並びに内部及び外部の表面境界内でそれぞれ一定の境界条件Cin=C(O)=0及びCout=C(1)>0を伴う、任意の初期濃度C0(ξ)=C(ξ,t=0)に関して、遅延時間は、例えばFrischの方法を用いて得られる。Frisch H.L.の論文(J Phys. Chem. 61, 93-95 (1957))を参照。Frischに従って計算される遅延時間tLを下記式(10)に示す。
【数19】

式(10)において、Dmは障壁材料中の浸透物の拡散係数であり、x座標の原点は膜の内部表面に位置する(図1参照)。初期脱気された膜C0(ξ)=0及びFickian収着Sm=一定において、膜中の定常状態の蒸気圧は、式(11)に従って計算される。
【数20】

式(11)を考慮すると積算式(10)は、式(12)を与え、これによって参照遅延時間tLとなる。
【数21】

均一の障壁材料に関して、材料中の溶質濃度が1立法センチメートルあたりのグラム(g/cm3)で表されようが、1グラムあたりのグラムの増加重量(g/g)として表されようが問題ではない。というのもこうした特性は、上記式(5)及び式(6)により、ポリマー母材密度ρmを介して、互いに直線関係にあり、打ち消しあうからである。
【0033】
遅延時間、すなわちtL後の包含体積V中の水蒸気増加量(min)は、障壁のポリマー母材中の蒸気の増加(mb)に追従する。従って、包含体積中の水蒸気増加量は、式(13)によって計算される。
【数22】

あるいは、水蒸気増加量は、上記式(3)及び(9)を用いて計算してもよい。従って、水蒸気増加量は、式(14)を用いて決定できる。
【数23】

式(14)の係数1/2は、hin、すなわち包袋内の湿度が展開している間、外側の湿度houtが一定であるために現れる。式(14)を整理し直すと式(15)が得られる。
【数24】

積算式(15)の結果は式(16)となる。
【数25】

先の式を考慮すると、hin(0)=0である初期の乾燥した包含された環境、すなわち包袋内の体積に関して、包袋又は包装内側の相対湿度の展開は式(17)により近似される。
【数26】

つまり、遅延時間tLに達する前の期間では、包袋内には湿度はないが、遅延時間に達した後の期間では、包袋内の湿度の展開は式(17)の第2の式によって計算される。
【0034】
次に、複合材料障壁、すなわち樹脂及び吸着剤を含む障壁について論じる。膜が分散した粒子状添加物を含有し、該添加物が拡散している浸透物を吸着する場合、3つの異なった状況が考えられる:(1)該添加物が(浸透物と反応しその浸透物を消費する、又は添加剤の吸着能が枯渇することなく浸透物を他の種へ変換することによって)浸透物を際限なく触媒的に除去する;(2)該添加物がある化学量論的量に達するまで、(通常、化学反応又は化学吸着を介して)不可逆的に浸透物を吸着する;又は(3)該添加物が物理吸着によって浸透物を可逆的に固定化する。触媒的反応性障壁及び化学量論的反応性障壁の性能、すなわち遅延時間による性能は、他文献にて解析されている。Siegel R.A.及びCussler E.L.の論文(J Membr. Sci. 229, 33-41 (2004))及びSolovyov S.E.の論文(J. Phys. Chem. B 108, 15618-15630 (2004))を参照。可逆的吸着性の充填剤(水蒸気の場合乾燥剤)を含有する障壁の遅延時間は、Fickian(直線)の収着を伴うポリマー母材中に分散したそのような吸着剤の一般に観察される二元収着等温線に関して得られる。Paul D.R.及びKemp D.R.の論文(J Polym. Sci, Symp. 41, 79-93 (1973))を参照。収容された下流環境、すなわち包袋内の環境において、蒸気の浸透が蒸気圧を増加させる場合、本発明は、遅延時間後の複合材料障壁の性能の予測及び最適化を可能にする。
【0035】
外界に近い条件では、水蒸気を触媒的に取除くことはできない。すなわち、既知の吸着剤では不可逆的に際限ない量の水蒸気を除去することはできない。従って、本明細書では、不可逆的な化学量論的収着、及び可逆的な直線的収着、並びに二元収着である、無機吸着剤を微細粒子(粉体)としてポリマー母材中に分散させることのみを検討する。
【0036】
まず、不可逆的化学量論的吸着剤について検討する。一般に観察される二元収着の挙動は、2つの異なった収着様式を引き起し得る:(1)低RH値での急速な飽和及び(2)広範にわたるRH範囲の準直線吸着(空隙充填工程)続いて、漸近的飽和(母材中の通常の溶解)。図3に示すように、前者は、合成的にかつ自然に生じるモレキュラーシーブ(MS)に代表され、後者はシリカゲル(SG)乾燥剤に代表される。MS型の収着等温線を伴う浸透の挙動は、化学量論的不可逆性の化学反応で密接に近似され、該反応は、非活性化、すなわちおよそ20%RHを超えるMS飽和の前に、所定量の水分を除去する。この特徴を化学量論的吸着剤として図4に示す。この態様は、拡散の駆動力が一定の外部RHにより表され、該外部RHがMS飽和点よりずっと高く、かつ下流が0%RH、すなわち包袋内が0%RHである場合に特に関連する。
【0037】
障壁厚Lを横切る初期物質濃度特性R0(ξ)及び吸着剤1グラムあたりの水のグラム(g/g)である化学量論的係数μを有する、拡散ガス及び蒸気の不可逆的な化学反応性吸着剤を含有する浸透障壁中の参照遅延時間tLRは、その溶質と分散した添加剤との化学量論的反応のために、母材ポリマー障壁の参照遅延時間tLと定常状態の遅延時間tRとの和として見出される。Siegel R.A.及びCussler E.L.の論文(J Membr. Sci. 229, 33-41 (2004))を参照。この参照遅延時間tLRは式(18)で説明される。
【数27】

障壁厚を横切る一定の反応性の添加物配合量R0(ξ)=一定に関して、その遅延時間の式は式(19)に簡略化される。
【数28】

無次元の複体Ψは、障壁素材の相対反応容量と呼ばれ、式(20)で説明される。
【数29】

Fickian収着を伴うポリマーに関して、膜境界の上流内、すなわち包袋の外部表面の水分濃度は、式(5)のように一定の溶解度係数Smを用いて表すことができる。
【0038】
体積分率φm及び密度ρmを有するポリマー母材中に分散した体積分率φd及び見かけ上の粒子密度ρdを有する吸着性乾燥剤に関して、φdm=1である場合、体積VCを有する均一に充填された複合材料材料中の乾燥剤の物質濃度は式(21)によって説明される。
【数30】

式(11)の変形によって、母材及び分散した不可逆性吸着剤の両方における水蒸気溶解度が複合材料中の定常状態の水分物質濃度に寄与するという事実が説明される。式(22)は式(11)の変形である。
【数31】

WdはMSタイプの化学量論的乾燥剤の飽和許容量、すなわち、乾燥剤の単位重量あたりの吸着した水分重量であり、ρdは乾燥剤粒子の見かけ上の密度、すなわち、乾燥剤材料の質量をポリマー母材中の粒子によって排除される体積で割ったものである。しかし、該吸着剤に固定された水分は定常状態の流束に寄与しない。参照条件に関して、遅延時間は式(23)によって計算される。
【数32】

式(23)は式(20)の結果と同等の質量分率である;しかし、この場合において、Ψは式(24)で説明される。
【数33】

【0039】
Φdがポリマー母材に配合される吸着剤、すなわち乾燥剤の体積分率であり、fdが吸着剤の重量分率である場合、これら分率は式(25)及び(22)により相互転換できる。
【数34】

【0040】
遅延時間後に膜下流側に完全なシンク(sink)が存在する場合、溶質の進入速度は、有効拡散係数DC及び溶解度係数SCを有する非反応性複合材料の浸透TRSSに比例する。有効流束J0は下流の膜境界を通過する溶質の浸透速度を表す。「完全なシンク」とは、膜の下流、又は言い換えると、包袋内の体積が、水分が障壁材料を通過して進入する間も0パーセント(0%)RHに維持されていることを意味していると理解されたい。
【数35】

式(27)は初期圧力pinがゆっくりと変化し、擬似定常状態の流束が障壁を越えて確立することを表している。これは、通常、パッキング包袋が、使用されている包装用材料の体積よりかなり大きな総体積を包含する場合である。これはすべての包装において標準的な設計目標を構成する。吸着剤が水蒸気に対して非浸透性であり(すなわち、水分の拡散経路として作用しない)、該吸着剤が母材中の水分子の移動性に全く影響を及ぼさない場合、式(27)は式(28)に変更される。
【数36】

式(23)及び(28)を用いて、拡散に有効なポリマー母材の低減した体積分率を説明すると、吸着剤粒子の存在のために、包装(すなわち包袋)内側の湿度の展開は式(29)で表される。
【数37】

つまり、遅延時間tLRに達する前の期間、包袋内には湿度はないが、遅延時間tLRに達した後の期間は、包袋内の湿度が式(29)の第2の式より計算される。
【0041】
乾燥剤の飽和湿度hsat未満のRHレベルに関して、乾燥剤の収着等温線は多くの場合、直線となり:Cd(hhsat)=Sdh、飽和水蒸気圧psatを越えるRHレベルに関しては、乾燥剤の内部表面はほぼ飽和されており、Fickian型の崩壊は無視できる場合が多い。
【数38】

こうした収着様式を解析して下に記載する。
【0042】
乾燥剤の飽和蒸気圧未満では、複合材料の有効な溶解度係数が、体積濃度に基づいて規定され、式(30)及び(31)によって計算される。
【数39】

分散した直線型の吸着剤を有する複合材料障壁の参照遅延時間tLLは、式(32)より計算される。
【数40】

tLL、すなわち式(32)は、障壁の相対湿度容量がΨ≫1でかつ外部湿度houtがほぼ100%である場合に、tLR、すなわち式(23)のおよそ3倍未満となる。
【0043】
遅延時間tLL後の内部ヘッドスペース体積Vの水蒸気の蓄積、すなわち、包袋内の空の体積は、式(14)に類似した物質収支である下記式(33)によって説明される。
【数41】

式(33)は下記式(34)のように整理することができる。
【数42】

hinについて式(34)を解くと、式(35)になり、式中、Δh0=hout-hin.0は障壁を横切る初期相対湿度の差である。
【数43】

先の記載を考慮すると、参照初期条件の初期圧力の増加に対する近似解の組合せは、式(32)より与えられるtLL値及び式(31)より与えられるSeff値を有する式(36)となる。
【数44】

つまり、遅延時間tLLに達する前の期間、包袋内に湿度はないが、遅延時間tLLに達した後の期間は、包袋内の湿度は式(36)の第2の式で計算される。
【0044】
上述のように、多くの吸着剤がFickian(バルク溶解)様式及びLangmuir(孔飽和)様式の収着挙動を伴う可逆的な二元収着様式の吸着体としても挙動できる。一般的な乾燥剤の二元収着(DS)等温線Sd(h)は、式(37)、(38)及び(39)によってCC=Seff(T)hとして、ポリマー複合材料に配合された乾燥剤の有効溶解度係数に組込むことができる。
【数45】

パラメータCmaxは、Langmuir様式吸着における孔の飽和定数と呼ばれる。現象的なLangmuir親和定数bは、Langmuir様式における溶質の収着及び脱着の速度定数の割合と相関がある。有効な収着等温線は、ポリマー母材のFickian様式収着及び乾燥剤の二元収着を組合せたものである。
【0045】
乾燥剤の二元収着等温線の参照遅延時間tLDは、式(10)のように見出される。Paul D.R.及びKemp D.R.の論文(J Polym. ScI, Symp. 41, 79-93 (1973))を参照。
【数46】

上記Ψと異なり、yは下記式(41)で説明される。
【数47】

【0046】
式(33)とは反対に、初期湿度hinが変化する間の障壁における有効溶解度係数の変化は、収着等温線の非直線性のために無視することはできず、浸透の動態を得るためにはそのような変化を微分しなければならない。この場合において、一定の容器体積Vの内側の物質収支は式(42)、(43)又は同等に式(44)によって表される。
【数48】

式(44)の係数は下記式(45)を含む。
【数49】

式(45)を包装内側の相対湿度に対する既知の初期条件hin.0から得られる積分定数について解くと式(46)となり、次に、(47)となる。
【数50】

式(40)で計算されるtLDに達する前は、包袋内のRHは、0パーセント(0%)に等しいままであるが、tLD後の包装内側のRHの展開hin(t)は、t(hin)、すなわち式(48)のように表される陰関数である。
【数51】

従って、上記等式とは異なり、包袋内の湿度の値hinを時間tに基づいて計算するためには、複数の値のhinを用いて複数の時間tを決定する。続いて、hinとtの関係は図示によって表すか又は他の方法を用いて解析され得る。
【0047】
上記の解析を考慮して、樹脂及び吸着剤の複合材料の下記実施例にて、本発明をどのように使用して、それら材料及び割合の選択による吸着性複合材料障壁の配合の最適化を行うかを示す。第1の実施例において、使用した樹脂はポリプロピレン(PP)だが(図5A及び5Bを参照)、第2の実施例においては、高密度ポリエチレン(HDPE)を樹脂とする(図6A及び6Bを参照)。第3の実施例においては、使用した樹脂はポリエチレンテレフタラート(PET)であり(図7A及び7Bを参照)、及び第4の実施例では、吸湿性ポリアミド樹脂ナイロン6,6を使用する(図8A及び8Bを参照)。各実施例で、それぞれの樹脂と化学量論、直線、及び二元の吸着剤を組合せて性能を比較する。ここで、二元吸着剤は、弱い非直線性収着等温線、すなわちほぼ直線性の吸着剤、又は強い非直線性収着等温線、すなわち化学量論的吸着剤のどちらかを有するようなモデルとする。
【0048】
下記に示した実施例において、検討した化学量論的又は不可逆的化学吸着剤は酸化カルシウム(CaO)であり、一方、検討した直線様式の吸着体は相対湿度0〜60パーセント(0〜60%)でシリカゲルであり、検討した強い二元収着様式の吸着体はモレキュラーシーブであり、検討した弱い二元収着様式の吸着体はモレキュラーシーブとシリカゲルの混合物である。本発明の方法を実施する場合に、当技術分野で周知の他の吸着剤もまた検討することができ、そのような吸着剤は、本発明の請求項の趣旨及び範囲に含まれることを理解されたい。さらに、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、及びナイロンについてのみを以下に記載するが、任意の適切な樹脂/ポリマーを検討する場合にも本発明は使用でき、そのような樹脂/ポリマーは、本発明の請求項の趣旨及び範囲に含まれることを理解されたい。
【0049】
さらに、全ての収着等温線を、相対湿度100パーセント(100%)で同じ26重量パーセント(26wt.%)の最大水分収着容量に相当するように調整し、事例間で比較しやすくしている。実際の等温線は、図3に示すように最大容量が異なる。さらに、それぞれの下記組成物は40重量パーセント(40wt.%)の吸着剤を含むが、配合体積値は樹脂の密度差のためにそれぞれ異なることに留意されたい。
【実施例】
【0050】
(実施例1 ポリエチレン及び種々の吸着剤)
【0051】
【表1】

【0052】
図5Bに見られるように、遅延時間は約24ヶ月〜約72ヶ月で変化し、内部相対湿度レベルは樹脂/吸着剤組成により上昇する。従って、内部相対湿度60パーセント(60%)を破損点と考えた場合、破損時間は約76ヶ月〜約108ヶ月であった。
【0053】
(実施例2 高密度ポリエチレン及び種々の吸着剤)
【0054】
【表2】

【0055】
図6Bに見られるように、遅延時間は約48ヶ月〜約144ヶ月で変化し、内部相対湿度レベルは樹脂/吸着剤組成により上昇する。従って、内部相対湿度60パーセント(60%)を破損点と考えた場合、破損時間は約144ヶ月〜約207ヶ月であった。
【0056】
(実施例3 ポリエチレンテレフタラート及び種々の吸着剤)
【0057】
【表3】

【0058】
図7Bに見られるように、遅延時間は約6ヶ月〜約18ヶ月で変化し、内部相対湿度レベルは樹脂/吸着剤組成により上昇する。従って、内部相対湿度60パーセント(60%)を破損点と考えた場合、破損時間は19.5ヶ月〜約26ヶ月であった。
【0059】
(実施例4 ナイロン及び種々の吸着剤)
【0060】
【表4】

【0061】
図8Bに見られるように、遅延時間は約2ヶ月〜約4ヶ月で変化し、内部相対湿度レベルは樹脂/吸着剤組成により上昇する。従って、内部相対湿度60パーセント(60%)を破損点と考えた場合、破損時間は約5ヶ月〜約7ヶ月であった。
【0062】
本結果は、直線性吸着体及び弱い非直線性吸着体を示したが、短い遅延時間を与えることで、潜在的に長い実用時間の包装成分となることができる。例えば、図5Aから8Bに示すように、このような直線性の吸着体は、容器内部が60%RHに達するまで、同じ飽和容量及び複合材料障壁に配合する同じ重量分率を有する化学量論的吸着体、及び強い非直線性(二元)吸着体より長い時間を提供することができる。上記を考えると、当業者は、樹脂の群からどの樹脂を、吸着剤の群からどの吸着剤を、それらのどの割合を決定し、例えば、剛性、強度、重量、材料の適合性などの必要な特性を提供でき、一方、樹脂/吸着剤複合材料から構成される包袋内は、所望の期間、相対湿度が許容し得るレベル以下に維持される。従って、費用部分は最小化でき、かつ性能部分は最大化できる。
【0063】
先の記載を考慮すると、本発明の方法は、例えば、ポリプロピレン及びポリエチレンなどのポリオレフィンなどの高度な防湿性受動ポリマー材料、又は言い換えれば、本質的に低い水蒸気浸透率を有するポリマーを含むこのような活性障壁に好ましい樹脂を示すとされる。物理的吸着剤、例えばシリカゲル及びモレキュラーシーブスなど及び化学的吸着剤、例えば、酸化カルシウムなどの乾燥剤材料は、配合中ポリマー母材に分散する前に、およそ1ミクロン(1μm)〜およそ50ミクロン(50μm)の粒子サイズを有する細粉として調製されるべきである。より細かい平均サイズの吸着剤が、同じ吸着剤の配合において、水分拡散が複合材料障壁を越える間に、こうした粒子を水分子が迂回する確率を低減することが示されている。Solovyov S.E.の論文(J Phys. Chem. B 110, 17977-17986 (2006))を参照。得られる効果は、そのような複合材料を通過する瞬間的な浸透速度を0又はほぼ0に低減することである。
【0064】
上記結果は、粒子状乾燥剤がポリマー母材中で凝集することなく良好に分散しているという前提に基づいており、そのことは、流路、空間、細孔、及び相互連結された連行粒子集合体などのポリマー母材内の水分拡散を促進させる経路を与えるものではない。複合材料中の粒子の凝集を阻止し、近くの粒子間の十分な分離を与え、かつ複合材料中で隣接する母材ポリマー相を作り出すために、溶融混合の段階の間、乾燥剤粒子の分散が行われなければならないことが見出されている。単一及び二軸スクリュー押出技術が溶融混合に最も適していることが見出されている。また、好ましい実施態様において、複合材料中の乾燥剤の配合容積を、25〜30体積パーセント(25〜30vol.%)未満に制限し、上記凝集及び粒子間の接触を防止すべきであることも見出されている。25〜30vol.%の乾燥剤配合レベルでは、分離した乾燥剤粒子が互いに接触することなく、従って、粒子間の水分輸送の促進はあり得ない。よって、主に、水分輸送は隣接したポリマー母材を通って起こり、従って、該水分輸送は母材ポリマーの水蒸気輸送特性によって制御される。しかし、乾燥剤の配合体積は、上記制約内で可能な最大の配合量であるように選択され、最大の複合材料の水分吸着容量を達成させ、また、高い配合体積により、複合材料障壁を越える拡散の間、乾燥剤粒子を迂回してきた水分子を阻止するのに機能する。
【0065】
そのようなポリマー母材の例を図9に示す。ポリマー母材20は、隣接する樹脂22及び吸着剤粒子24を含む。図に見られるように、それぞれの吸着剤粒子24は、樹脂22によって他の粒子24と互いに分離されている。母材20は、外部表面26及び内部表面28を有する。外部表面26に近づいた水蒸気は、例えば、一方向の矢印30に従って母材20に入る。吸着剤粒子24の飽和より前は、水蒸気は、例えば、一方向の矢印32に従って母材20内に進入でき、そのような水蒸気は、最終的に吸着剤粒子24によって吸着される。吸着剤粒子24の飽和後は、水蒸気は一方向の矢印34に従って母材20を通って進行できるか、又は一方向の矢印36に従う水蒸気は吸着剤粒子38に吸着され、次いで一方向の矢印40のように粒子38から離れる。内部表面28に到達したどんな水分子、すなわち水蒸気も、例えば一方向の矢印42に従って母材20から出ることができる。
【0066】
母材内での粒子の分散及び本質的な互いの分離の手法として、混合及び配合の手順、配合のためのポリマー及び乾燥剤の詳細、配合中の供給及び加工条件、相溶化剤の使用の可能性、及び高配合複合材料の形態を安定させるための加工などもまた本発明の一部を形成する。通常、樹脂及び分散した乾燥剤粒子の熱力学的不相溶性から生じる乾燥剤粒子とポリマー間の微視的な界面ギャップ及び欠損は、樹脂−吸着剤複合材料中における適当な相溶化剤の使用によって良好に低減又は除去されることが見出されている。しかし、凝集を阻止し、相溶化された乾燥剤粒子の他の相互作用、例えば粒子を結合するマイクロチャンネルの形成を最小化し、かつ冷却中の複合材料での細孔、孔、微小亀裂の形成を本質的に阻止するために、最小限の適当量の相溶化剤だけが使用されるということが理解されよう。隣接するポリマー相での微小亀裂の形成は、高充填ポリマー複合材料の冷却時に、吸着剤粒子の配合によって抑圧されたポリマーの不均一な収縮の結果としてしばしば観察され、そのような欠陥は複合材料を通過する水分の浸透速度を大きく増加させる場合がある。従って、制御された冷却様式及び適当な相溶化剤の選択は、本発明の樹脂結合吸着剤複合材料から作られる部品の微小亀裂の形成を低減できる。加工助剤及び添加剤を選択して複合材料中で所望の粒子の分散を達成することは、そのような添加剤が、乾燥剤粒子周囲の水分拡散及び1つの粒子から他の粒子への水分拡散、例えば相溶化された界面に沿う水分拡散、及び各粒子の周囲の重複した境界層を通る水分拡散を促進又は容易にさせるのではなく、むしろ複合材料形態を安定化させ、粒子への水分の浸透の遮断を阻止するためだけに機能するという事実を説明している。従って、ポリマー母材の水蒸気浸透性に近い又は本質的に同一の水蒸気浸透性を与えるために、相溶剤が選択される。
【0067】
全体として、本発明で有用かつ機能的な吸着剤は、特別な添加物を用いずに機械的に樹脂と結合する、上記のモレキュラーシーブなどの吸着剤である。さらに他のものを本発明に従って、適当な添加剤の使用を介して、すなわち、カップリング剤又は相溶剤の補助により樹脂を結合させることができる。モレキュラーシーブに加えて、本発明の組成物に有用である他の代表的な吸着剤に含まれるのは、シリカゲル、活性炭、活性アルミナ、粘土、他の天然のゼオライト、及びそれらの組合せである。カップリング剤又は相溶剤とともに機能すると考えられる吸着剤に含まれるのは、活性炭及び活性アルミナのメンバーなどである。
【0068】
相溶剤として機能する添加剤は、2つの種類、すなわち樹脂又は吸着剤と結合する添加剤、及び樹脂及び吸着剤の両方と幾分の親和性を有する添加剤とに分類され、固体の界面活性剤として作用する。反応性カップリング剤に含まれるのは、マレアート、エポキシ及びシランなどのクラスである。より具体的には、反応性カップリング剤に含まれるのは、代表例として、無水マレイン酸グラフトポリマーを約2〜約5重量%の範囲の量で使用する。特に、これらに含めることができるのは、代表例として、無水マレイン酸でグラフト化したポリプロピレン又はABS樹脂であり、後者はスチレン系ポリマーのカップリング剤として有用である。
【0069】
本発明はまた、非反応型と呼ばれる相溶化剤を吸着剤と樹脂の結合に使用することも意図している。この組成物の代表例として、金属(例えば、亜鉛又はナトリウム)、金属酸化物、有機金属配位子、アクリラート、ステアラート及びブロックコポリマー、例えば吸着剤の約0.01〜約0.2重量%の範囲のステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウムである。実際のレベルは表面積によって決定され、次に粒子径に比例する。平均粒子径10μmのモレキュラーシーブに関して、100ppmのステアリン酸アルミニウムが、ポリアミド樹脂と相溶化させる通常の開始レベルである。反応性及び非反応性カップリング/相溶剤の両方を用いて、樹脂母材中のそれらの混合は相境界を形成しないとされる。
【0070】
樹脂結合吸着剤組成物は、本発明に従って、当業者に一般に熟知されている熱可塑性配合技術を使用して調製することができる。好ましい吸着剤であるモレキュラーシーブを樹脂、例えばポリアミド、ポリオレフィン又はそのようなものに組込むことができ、これは粉末形状の吸着剤を選択した樹脂のビーズとともに良好な混合特性を有する可塑化押出機に供給することによって組込むことができる。一軸スクリュー押出機を使用して樹脂と吸着剤を配合してもよいが、通常、樹脂及び吸着剤の混合は、適当な樹脂結合吸着剤を作るために2重配合(double-compound)である必要がある。2重に配合した後でさえ、さらなる加工中に凝集及び相分離が生じる。広範な逆混合を有する二軸スクリュー押出装置を使用して配合した樹脂結合吸着剤材料が、ほぼ完全な吸着剤の分散を達成し本発明の目的である優れた機械的及び物理的特性を作り出すために必要であることが見出されている。言い換えると、二軸スクリュー押出機を介して形成された樹脂結合吸着剤材料は、樹脂母材内での吸着剤の移行がほとんどなく、このため、こうした樹脂結合吸着剤材料では均一な外観が維持される。従って、通常、二軸スクリュー押出機を使用して、樹脂を融解し吸着剤を隅々まで混合させて、本発明の樹脂結合吸着剤材料を形成する。通常、DSC(示差走査熱量測定)で測定した融点以上で樹脂を加熱し、その後吸着剤を添加することが有利である。これは、本発明の樹脂結合吸着剤の調製において、融解した樹脂中で吸着剤の完全な混和性が達成されるために全ての結晶化度が失われる場合に、温度をその点まで上昇させるべきであるということである。例えば、DuPont's Zytel(登録商標)101ポリアミド樹脂は262℃以上で加熱されることになる。押出された樹脂は冷却され、次いでペレット状又は顆粒状に切断又は粉砕される。配合は高温で行うので、この加工の間に吸着剤が水分を吸着することはないが、構成部品に成形されるとき及び作業環境中に設置されるときに、吸着剤はその吸着能を保持している。
【0071】
本発明の樹脂結合吸着剤システムで実現される一つのさらなる利点は、樹脂と吸着剤が本質的に結合する場合、グラム対グラムであり、このことは袋詰めされた吸着剤を用いる吸着システム、すなわち単位体積あたりの吸着容量より有効である。吸着剤を収容するのに袋を使用した以前の方法では、例えば、吸着剤が冷媒流に入るのを阻止するためにビーズを要求した。これは、一般に、例えば粉末の形態で15wt%バインダのバインダ樹脂内に吸着剤を結合させることを要求した。従って、40グラムの市販の吸着剤を袋内に設置した場合、実際は、34グラムの吸着剤だけがそのシステムに導入される(6グラムのバインダとともに)。対照的に、本発明では、吸着剤は構成部品を作る成形用樹脂に直接入れられるので、樹脂結合吸着剤は補助のバインダ樹脂を必要としない。有利には、本発明を用いて、中間のバインダ樹脂を必要とせず、通常の袋詰めされた吸着剤で達成されるのものとは異なる、より高い吸着剤配合因子を考慮する。
【0072】
記載した複合材料の障壁を通過する水蒸気の浸透速度の減少期間は、吸収と化学的反応性のどちらも、該障壁の遅延時間と呼ばれるものによって決定される。化学的吸着剤に関して、遅延時間は障壁材料の化学量論的反応容量に依存する。物理的吸着剤に関して、遅延時間は使用する乾燥剤の吸湿容量、配合された分率、及び水蒸気収着等温線の形状に制御される。その障壁が「漏れ」始めるより前に、障壁の厚さを横切って完全にその反応容量を消耗しなければならない化学的吸着剤と異なり、物理的吸着剤はそれらで満たされた障壁を横切って浸透が再開する場合に、完全には飽和していない。複合材料の構造は、定常状態の水蒸気輸送が障壁を越えて確立した後でさえ、吸収障壁として機能し続ける。従って、包装内側の湿度レベルが増加するに従って、さらなる吸着剤の画分を飽和させる必要があるため包装内の水蒸気の堆積速度を減少させる。
【0073】
本発明は、乾燥剤の高い配合レベルによって高度に充填されたポリマー複合材料を作成する方法を提供し、冷却時のそり及び収縮の大幅な低減を示し、これによって精度の良い製造公差でより厚い構造部品を製造する方法を提供することが見出されている。このような複合材料を構造成形用樹脂として使用し、様々な用途で物品の単一層の堅い包装及び封入用物品を作ることができる。さらに、樹脂−吸着剤母材への分散したエラストマー相、例えば、低い透湿性を有する熱可塑性ゴムなどの添加によって、開示された複合材料の耐衝撃性改良グレードを調製することができる。さらに、本発明方法を用いて樹脂−吸着剤複合材料を作り出し、包装物品の使用可能な実用時間、すなわち障壁の持続時間を延長するために、包装物品の外部上に塗布して高度な防湿層を形成することができる。
【0074】
本発明以前の失敗していると想定される包装及び/又は包袋は、遅延時間のみの計算に基づいていたことを理解されたい。しかし、そのような包袋内の多くの内容物は0パーセント(0%)以上の内部相対湿度レベルに耐えることができ、実際は、いくらかの内容物は60パーセント(60%)を超える相対湿度レベルでさえ耐えることができた。従って、包袋が破られたと仮定すると、遅延時間に達すると、内容物がいまだ安全であろう長期の期間が失われ、結果として、予想実用時間が短縮される又は費用の増加を伴う別の包袋を設計することになる。先の記載を考慮すると、本発明は、長期間にわたって、そのような包袋内の初期相対湿度の増加を正確に測定する方法を提供する。当業者に理解されるように、試験には数年かかることがあり、そのような試験を加速させる合理的な方法などないので、単に高湿度レベルでそのような包袋を試験するだけでは実際的ではない。従って、本発明方法は、長時間の実際的でない試験を必要とすることなく、そのような包袋の性能に関する情報を提供する。
【0075】
本発明の方法は、樹脂及び吸着剤の群から樹脂と吸着剤の組成物を決定する手段を提供し、その樹脂と吸着剤の組成物が設計要件、例えば、そのような組成物から作られる包袋内への湿気の進入及び全体的な費用を満たすであろう。本方法は下記の工程を含む:a)複数の樹脂、複数の吸着剤、及び複数のこれらの間の割合を選択して複数の複合材料を形成する工程;b)複数の複合材料について複数の破損時間を算出する工程であり、該複数の破損時間の各破損時間が、複数の複合材料の各複合材料の初期相対湿度hinが最大内部相対湿度と等しい場合に基づいている(内部相対湿度の様々な計算方法については上記を参照);c)複数の破損時間のより大きいものを決定する工程;及びd)工程(c)の結果に基づいて、複数の複合材料のうちの1つの複合材料を選択する工程である。上記方法を行うことで、包袋の設計要件に最もよく適合した樹脂結合吸着剤組成物を選択することができる。
【0076】
このように、本発明の修正及び変更は当業者には容易に明らかであろうが、このような修正は主張する本発明の趣旨及び範囲に含まれることが意図されるものであり、本発明の目的が有効に得られることが認められる。上記は本発明の例示であり、限定すると考えるべきではないこともまた理解される。従って、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明の他の実施態様が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、包袋の一部を外部の湿度から内容物を保護できるようにするために使用できる、適切な樹脂結合吸着剤組成物の選択方法であって、前記包袋は、内部ヘッドスペース体積V、厚さL及び表面積Aを有し、前記包袋は、外部相対湿度houtを有する環境に囲まれており、該houtは、温度Tのときの一部分の飽和水蒸気密度ρsatであり、前記内部体積は、最大の内部相対湿度を有し:
a)複数の樹脂、複数の粒子状吸着剤、及び複数のこれらの間の割合を選択し、複数の複合材料を形成し、ここで、前記複数の樹脂の各樹脂は有効水蒸気拡散率Dm及び水蒸気溶解度係数Smを有し、並びに、前記複数の複合材料の各複合材料が前記樹脂の体積分率φm及び前記吸着剤の体積分率φdを有する工程;
b)前記複数の複合材料について複数の破損時間を計算し、ここで、前記複数の破損時間の各破損時間は、前記複数の複合材料の各複合材料の内部相対湿度hinが前記最大内部相対湿度と等しい場合に基づいている工程;
c)前記複数の破損時間のうち、より長い破損時間を決定する工程;並びに、
d)工程(c)の結果に基づいて、前記複数の複合材料の1つの複合材料を選択する工程
を含む前記方法。
【請求項2】
前記複数の粒子状吸着剤の各粒子状吸着剤が、化学量論的であり、かつ前記複数の複合材料の各複合材料が、化学量論係数μ、初期物質濃度R0及び外部表面で溶解した水蒸気濃度Coutを有し、遅延時間tLR後の前記内部相対湿度が下記式:
【数1】

(式中:tは前記内部相対湿度hinに達するまでの時間であり;かつ
tLRは前記厚さLを有する前記包袋の遅延時間である。)
によって計算される、請求項1記載の樹脂結合吸着剤組成物の選択方法。
【請求項3】
前記遅延時間が下記式:
【数2】

(式中:
【数3】

である。)
によって計算される、請求項2記載の樹脂結合吸着剤組成物の選択方法。
【請求項4】
前記複数の粒子状吸着剤の各粒子状吸着剤が水蒸気収着等温線を有し、前記水蒸気等温線が直線であり、かつ水蒸気溶解度係数Sdを有し、並びに前記複数の複合材料の各複合材料が擬似化学量論係数μ、初期物質濃度R0、及び外部表面で溶解した水蒸気の濃度Coutを有し、遅延時間tLL後の前記内部相対湿度が下記式:
【数4】

(式中:tは前記内部相対湿度hinに達するまでの時間であり;
tLLは前記厚さLを有する前記包袋の前記遅延時間であり;かつ
SeffmSmdSdである。)
によって計算される、請求項1記載の樹脂結合吸着剤組成物の選択方法。
【請求項5】
前記遅延時間が下記式:
【数5】

(式中:
【数6】

である。)
によって計算される、請求項4記載の樹脂結合吸着剤組成物の選択方法。
【請求項6】
前記複数の粒子状吸着剤の各粒子状吸着剤が水蒸気収着等温線を有し、前記水蒸気収着等温線が二元収着様式であり、かつ孔の飽和定数Cmax、Langmuir親和定数b、及び初期内部相対湿度hin.0を有する前記内部体積を有し、遅延時間tLD後の前記内部相対湿度が下記式:
【数7】

(式中:tは前記内部相対湿度hinに達するまでの時間であり;
tLDは前記厚さLを有する前記包袋の前記遅延時間であり;
【数8】

である。)
によって計算される、請求項1記載の樹脂結合吸着剤組成物の選択方法。
【請求項7】
前記遅延時間が下記式:
【数9】

(式中:y=bhoutである。)
によって計算される、請求項6記載の樹脂結合吸着剤組成物の選択方法。
【請求項8】
前記樹脂結合吸着剤組成物が、カップリング剤又は相溶化剤の補助とともに形成され、該カップリング剤又は相溶化剤が、前記複数の樹脂の各樹脂と化学的に相溶性であり、かつ前記複数の粒子状吸着剤の各粒子状吸着剤と前記複数の樹脂の各樹脂との接着又はカップリングを改善する、請求項1記載の樹脂結合吸着剤組成物の選択方法。
【請求項9】
前記カップリング剤又は相溶化剤が、反応性及び非反応性試薬からなる群から選択される、請求項8記載の樹脂結合吸着剤組成物の選択方法。
【請求項10】
前記相溶化剤が、金属、金属酸化物、アクリラート、ステアラート、ブロックコポリマー、マレアート、エポキシ、シラン、チタナート、有機金属配位子、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項9記載の樹脂結合吸着剤組成物の選択方法。
【請求項11】
前記樹脂結合吸着剤組成物が、二軸スクリュー押出機で配合される、請求項1記載の樹脂結合吸着剤組成物の選択方法。
【請求項12】
請求項1の方法に従って作成される、樹脂結合吸着剤組成物から構成される物品。
【請求項13】
前記樹脂結合吸着剤組成物が、約2重量パーセント(2wt.%)〜約55重量パーセント(55wt.%)の吸着剤及び約45重量パーセント(45wt.%)〜約98重量パーセント(98wt.%)の樹脂を含む、請求項12記載の物品。
【請求項14】
前記樹脂結合吸着剤組成物が、約25重量パーセント(25wt.%)〜約55重量パーセント(55wt.%)の吸着剤及び約45重量パーセント(45wt.%)〜約75重量パーセント(75wt.%)の樹脂を含む、請求項12記載の物品。
【請求項15】
前記樹脂結合吸着剤組成物が、約35重量パーセント(35wt.%)〜約42重量パーセント(42wt.%)の吸着剤及び約58重量パーセント(58wt.%)〜約65重量パーセント(65wt.%)の樹脂を含む、請求項12記載の物品。
【請求項16】
前記樹脂結合吸着剤組成物が樹脂及び粒子状吸着剤を含み、かつ実質的に、前記粒子状吸着剤の全ての粒子が前記樹脂によって分離されている、請求項12記載の物品。
【請求項17】
請求項1記載の方法により調製された樹脂結合吸着剤組成物を含む、少なくとも1つの層を含む多層の障壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−527308(P2010−527308A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501005(P2010−501005)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/004055
【国際公開番号】WO2008/121321
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(503264031)マルチソーブ テクノロジーズ インコーポレイティド (12)
【Fターム(参考)】