説明

化合物の固体状態を変化させる方法、及びその方法で製造した共アモルファス組成物

本発明により、非結晶有機組成物と、有機化合物の非結晶性共アモルファス混合物を製造する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、化合物の固体状態を変化させる方法と、本発明の方法で変化させた化合物に関する。特に、本発明は、化合物(例えば医薬化合物、栄養化合物)の非結晶形態および結晶形態の調製方法と、本発明の方法で調製した非結晶化合物および結晶化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本出願は、どれもが2007年10月17日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第60/999,445号、第60/999,462号、第60/999,483号の恩恵を主張し、その内容全体が本明細書に組み込まれているものとする。本出願は、同日に出願された「室温で安定な非結晶アスピリンとその調製方法」という名称のアメリカ合衆国特許出願第xx/xxx,xxx号、弁理士ドケット番号14331/30006にも関するものであり、その内容全体も本明細書に組み込まれているものとする。
【0003】
背景
多くの固形医薬品は異なる物理的形態で存在することができる。多形は、ある化合物が少なくとも2つの結晶相で存在する能力として定義されることがしばしばある。それぞれの結晶相は、結晶格子の中で異なる配置および/またはコンホメーションを有する。非結晶性固体は乱雑な配置の分子からなり、明確な結晶格子を持たない。
【0004】
固形医薬品のさまざまな非結晶多形形態は内部固体状態構造が互いに異なっているため、一般に異なる化学的特性と物理的特性を持つ。そのような特性として、充填特性、熱力学的特性、分光特性、動力学的特性、界面特性、溶解特性、反応特性、機械的特性などがある。これらの特性は、薬品の品質および/または性能(例えば安定性、溶解速度、生物学的利用能)に直接的な影響がある可能性がある。
【0005】
例えば最近まで、形態Iとして知られるアスピリンの最初の結晶形態がアスピリンについて知られている唯一の結晶形態であり、室温で安定なアスピリンの唯一の形態であった。しかし2005年11月21日のChemical & Engineering Newsに記載されているように、Zaworotko他、J. Am. Chem. Soc.、2005年、第127巻、16802ページに、アスピリンの第2の多形形態の合成が報告された。アスピリンの形態IIは、100K(-173℃)で運動学的に安定だが、周囲条件では変換されて形態Iに戻る。
【0006】
アモルファス・ガラス状のアスピリンも形成されている。しかしおそらくはいくらかの微視的な残留物を除いてアモルファスなアスピリンはこれまで非常に低温でしか生成されていない。約243K(-30℃)というガラス転移温度を超えるとアスピリンは急速に結晶形態Iへと変換される。したがってアスピリンの従来のあらゆる形態は、室温で形態Iに変換される。アモルファス形態を作り出して維持するのに低温が必要である結果として、アモルファスな固体形態の実際的な用途は実質的になかった。
【0007】
Johari他、Physical Chemistry Chemical Physics、2000年、第2巻、5479〜5484ページにも、融解させて冷却し、周囲温度でのボール-ミリングによってアスピリンをガラス化することで、298Kで数日間にわたって結晶化に対して安定なガラス状アスピリンまたは過冷却粘性液体アスピリンが形成されることが報告されている。この粘性液体は、容器の中で傾けるとゆっくりと流動することが見いだされたが、298Kでは4〜5日の間結晶化しなかった。このガラス状アスピリンのサンプルは最終的に完全に結晶化した。それは、サンプルを約340Kに維持したときに加速された。
【0008】
Johariらは、ガラス状態は結晶状態よりも高いエネルギー状態を持っていて、音響モードの振動数はより小さく、非調和性はより大きいため、固体状態からの吸収と同化がより効果的かつ効率的になることを報告している。ガラス状アスピリンは、バルク形態では、細かい粉末にした同じ質量の結晶アスピリンよりもゆっくりと溶けることが報告されている。従来技術でよく知られているように、ある物質のバルク状サンプルは、細かい粉末にした結晶よりも表面積がはるかに小さい。そのためバルク形態を溶かすのはより難しく、バルクのガラス状アスピリンの溶解速度がより小さいというJohariらによって報告されていることが説明される。
【0009】
薬物質の最も安定な形態が製剤でしばしば用いられる。なぜなら1つの形態から別の形態へと変換される可能性が最も小さいからである。しかし所定の保管条件下で十分に安定な異なる形態を選択して薬製品の生物学的利用能を大きくすることができる。この別の形態は、準安定な多形、すなわち最も安定な形態よりは安定性が劣るが、通常の保管の間に異なる形態には一般に変換されない多形形態であるか、非結晶形態である可能性がある。非結晶形態は、結晶形態に見られる規則的な分子構造が欠けているため、胃液に溶ける間に結晶構造でなくなる必要がない。したがって非結晶形態はより速く溶けることがしばしばあり、結晶形態よりも生物学的利用能がより大きい。
【0010】
非結晶形態は医薬組成物にとって望ましい可能性があるとはいえ、工業スケールでの非結晶形態の調製にはしばしば問題がある。非結晶形態の医薬組成物を調製する方法には、融解物の固化、粒子サイズの低減、スプレー乾燥、凍結乾燥、結晶構造からの溶媒の除去、pH変化による酸と塩基の沈殿や、他の同様の技術が含まれる。
【0011】
このような方法は工業スケールでの製造に用いるのに適していなかったり実用的ではなかったりすることがしばしばある。例えば非結晶性の活性医薬成分を融解物の固化によって得るには、その活性医薬成分を融点を超えて加熱する必要がある。そのため特に活性医薬成分の比熱および/または融解熱が大きいときには、大量のエネルギーを消費する必要がある。それに加え、医薬組成物が融解すると、活性医薬成分が化学的に変化する可能性がある。材料によっては融解する前に分解もするため、融解物の固化を利用できない。
【0012】
凍結乾燥は、大規模に行なうと非常に高価であるため、一般に生産量が限られている。溶媒が有機のものである場合には、凍結乾燥は、廃棄および/または火災の問題が起こることがしばしばある。
【0013】
スプレー乾燥では、溶媒を蒸発させるのに十分なある体積の加熱ガスの中に溶液を分散させて容質の粒子を残す必要がある。加熱ガスは一般に熱い空気または窒素である。スプレー乾燥は、特別に高価な安全手段が講じられる場合を除くと、一般に水溶液に限定される。それに加え、医薬組成物が加熱ガスと接触すると分解する可能性がある。
【0014】
固体化合物の形態は、非結晶であれ結晶であれ、化合物の特性のうちで医薬組成物を形成する上で重要な多くの特性に影響を与える。粉砕された固体の流動性は、医薬組成物の調製において特に重要である。なぜなら流動性は、処理中のその医薬組成物の取り扱いやすさに影響を与えるからである。粉末化した化合物が自由に流動しない場合には、錠剤またはカプセルで1種類以上の流動促進剤を用いる必要があろう。医薬組成物で用いられる流動促進剤として、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、デンプン、三塩基性リン酸カルシウムなどがある。
【0015】
医薬化合物の特性のうちで結晶度に依存する可能性のある別の重要な1つの特性は、水性流体への溶解速度である。患者の胃における活性成分の溶解速度が治療結果を決める可能性がある。なぜなら溶解速度は、経口投与される活性成分が患者の血流に到達できる速度の上限を決めるからである。化合物の固体形態は、圧縮と保管安定性に関する挙動にも影響する可能性がある。
【0016】
有用な医薬用化合物の新規な非結晶形態と結晶形態の発見により、医薬製品の性能を改善する新たな機会が提供される。この発見により、製剤研究者が、例えば標的とする放出プロファイルや他の望む性質を持つ薬の剤形を設計するのに利用できる材料の幅が広がる。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、非結晶組成物、共アモルファス医薬組成物、及び本発明の組成物を調製する方法に関する。好ましくは、該非結晶組成物は、少なくとも2種類の医薬化合物の非結晶共アモルファス混合物を含む共アモルファス医薬組成物である。より好ましくは、医薬化合物は、アスピリン、エゼチミブ、シンバスタチン、アトルバスタチン遊離酸、アトルバスタチンカルシウム、ロスバスタチンカルシウムからなる群より選ばれる。最も好ましくは、共アモルファス医薬組成物は、エゼチミブ/シンバスタチン、エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム、エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸、エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム、エゼチミブ/シンバスタチン/アスピリン、エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム/アスピリン、エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸/アスピリン、エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリン、少なくとも1種類のスタチンとアスピリンとを含む共アモルファス組成物からなる群より選ばれる。スタチン/アスピリン共アモルファス組成物は、アトルバスタチン遊離酸/アスピリン、アトルバスタチンカルシウム/アスピリン、シンバスタチン/アスピリン、ロスバスタチンカルシウム/アスピリンだを含むが、これらに限定されない。好ましくは、共アモルファス医薬組成物はホモジニアスである。
【0018】
本発明は、少なくとも1種類の有機化合物を含む非結晶組成物を調製する方法を提供する。この方法は、少なくとも2種類の異なるレーザーからのレーザー光線を、少なくとも1種類の有機化合物を溶媒に溶かした溶液に当てて溶媒を蒸発させる操作を含んでいる。好ましくは、レーザー光線は、パルス式であって有効平均パルス長が約10-9秒以下のパルスを持ち、各レーザーからのレーザー光線のパルスは異なる波長を持つ。好ましくは、上記少なくとも1種類の有機化合物は医薬組成物である。好ましくは、上記少なくとも1種類の有機化合物は、アスピリン、エゼチミブ、シンバスタチン、アトルバスタチン遊離酸、アトルバスタチンカルシウム、ロスバスタチンカルシウム、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる。
【0019】
好ましくは、この方法で用いるレーザー光線は、第1の回折格子と、第2の回折格子と、第1の回折格子と第2の回折格子の間に配置された屈折要素とを備えるストラチャン装置を用いて変調したレーザー光を含んでいる。ストラチャン装置で用いるレーザーはダイオードレーザーである。
【0020】
本発明の方法は、好ましくは、上記少なくとも1種類の有機化合物を溶媒に溶かした溶液を取得し、その少なくとも1種類の有機化合物の溶液をカバー付きの容器に収容し、その溶液にレーザー光線を当て、そのレーザー光線を当てている間にその溶液の少なくとも一部を蒸発させることにより、非結晶組成物を形成する操作を含んでいる。
【0021】
より好ましくは、本発明の非結晶組成物を調製する方法が、第1の回折格子と、第2の回折格子と、その第1の回折格子と第2の回折格子の間に配置された屈折要素とを備えるストラチャン装置(Strachan Device)の中をレーザー光線を通過させ、相殺的干渉によってそのレーザー光線の一部を相殺し、建設的干渉(destructive interference)によってレーザー光線のパルスを生成させる操作を含んでいることである。ストラチャン装置を通過したレーザー光線は、少なくとも1種類の医薬組成物を溶媒の中に含む溶液に当てられ、その溶媒が蒸発する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、結晶アスピリンのサンプルの粉末X線回折(PXRD)パターンである。
【図2】図2は、結晶アスピリンのサンプルのフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルである。
【図3】図3は、本発明の方法で処理したアスピリンのサンプルのPXRDパターンである。
【図4】図4は、非結晶アスピリンのFTIRスペクトルである。
【図5】図5は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかった結晶アスピリンのサンプルのPXRDパターンである。
【図6】図6は、図5の結晶アスピリンのサンプルのFTIRスペクトルである。
【図7】図7は、結晶シンバスタチンのサンプルのPXRDパターンである。
【図8】図8は、結晶シンバスタチンのFTIRスペクトルである。
【図9】図9は、本発明の方法で処理したシンバスタチンのサンプルのPXRDパターンである。
【図10】図10は、本発明の方法で処理したシンバスタチンのFTIRスペクトルである。
【図11】図11は、結晶エゼチミブのサンプルのPXRDパターンである。
【図12】図12は、結晶エゼチミブのFTIRスペクトルと、本発明の方法で処理したエゼチミブのサンプルのFTIRスペクトルである。
【図13】図13は、本発明の方法で処理したエゼチミブのPXRDパターンである。
【図14】図14は、参照用の結晶エゼチミブのサンプルと、本発明の方法で製造した結晶エゼチミブのサンプルでPXRDパターンを比較した図であり、本発明の方法で製造した結晶エゼチミブは、PXRDパターンが参照用の結晶エゼチミブとは異なっている。
【図15】図15は、結晶アトルバスタチン遊離酸のサンプルのPXRDパターンである。
【図16】図16は、本発明の方法で処理したアトルバスタチン遊離酸のサンプルのPXRDパターンである。
【図17】図17は、結晶アトルバスタチン遊離酸のサンプルのFTIRスペクトルである。
【図18】図18は、本発明の方法で処理したアトルバスタチン遊離酸のサンプルのFTIRスペクトルである。
【図19】図19は、結晶アトルバスタチンカルシウムのサンプルのPXRDパターンである。
【図20】図20は、本発明の方法で処理したアトルバスタチンカルシウムのサンプルのPXRDパターンである。
【図21】図21は、結晶アトルバスタチンカルシウムのサンプルのFTIRスペクトルである。
【図22】図22は、本発明の方法で処理したアトルバスタチンカルシウムのサンプルのFTIRスペクトルである。
【図23】図23は、アモルファス状アトルバスタチンカルシウムの形態23と形態27を比較したPXRDパターンである。
【図24】図24は、アモルファス状アトルバスタチンカルシウムの形態23と形態27を比較した小角X線散乱(SAXS)パターンである。
【図25】図25は、ロスバスタチンカルシウムの参照サンプルのPXRDパターンである。
【図26】図26は、本発明の方法で処理したロスバスタチンカルシウムのPXRDパターンである。
【図27】図27は、ロスバスタチンカルシウムの参照サンプルのFTIRスペクトルである。
【図28】図28は、本発明の方法で処理したロスバスタチンのFTIRスペクトルである。
【図29】図29は、エゼチミブとシンバスタチンの重量比が1:1のサンプルをレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図30】図30は、エゼチミブとシンバスタチンの重量比が10:20のサンプルをレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図31】図31は、エゼチミブとシンバスタチンの重量比が10:40のサンプルをレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図32】図32は、エゼチミブとシンバスタチンの重量比が10:80のサンプルをレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図33】図33は、一連のレーザー処理の順番を逆にしてエゼチミブとシンバスタチンの重量比が1:1のサンプルをレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図34】図34は、一連のレーザー処理の順番を逆にしてエゼチミブとシンバスタチンの重量比が10:20のサンプルをレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図35】図35は、一連のレーザー処理の順番を逆にしてエゼチミブとシンバスタチンの重量比が10:40のサンプルをレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図36】図36は、一連のレーザー処理の順番を逆にしてエゼチミブとシンバスタチンの重量比が10:80のサンプルをレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図37】図37は、エゼチミブとシンバスタチンの重量比が1:1のサンプルをレーザー処理したもののFTIRスペクトルを参照サンプルのFTIRスペクトルと比較した図である。
【図38】図38は、エゼチミブとシンバスタチンの重量比が10:20のサンプルをレーザー処理したもののFTIRスペクトルを参照サンプルのFTIRスペクトルと比較した図である。
【図39】図39は、エゼチミブとシンバスタチンの重量比が10:40のサンプルをレーザー処理したもののFTIRスペクトルを参照サンプルのFTIRスペクトルと比較した図である。
【図40】図40は、エゼチミブとシンバスタチンの重量比が10:80のサンプルをレーザー処理したもののFTIRスペクトルを参照サンプルのFTIRスペクトルと比較した図である。
【図41】図41は、一連のレーザー処理の順番を逆にしてエゼチミブとシンバスタチンの重量比が1:1のサンプルをレーザー処理したもののFTIRスペクトルを参照サンプルのFTIRスペクトルと比較した図である。
【図42】図42は、一連のレーザー処理の順番を逆にしてエゼチミブとシンバスタチンの重量比が10:20のサンプルをレーザー処理したもののFTIRスペクトルを参照サンプルのFTIRスペクトルと比較した図である。
【図43】図43は、一連のレーザー処理の順番を逆にしてエゼチミブとシンバスタチンの重量比が10:40のサンプルをレーザー処理したもののFTIRスペクトルを参照サンプルのFTIRスペクトルと比較した図である。
【図44】図44は、一連のレーザー処理の順番を逆にしてエゼチミブとシンバスタチンの重量比が10:80のサンプルをレーザー処理したもののFTIRスペクトルを参照サンプルのFTIRスペクトルと比較した図である。
【図45】図45は、エゼチミブとアトルバスタチンカルシウムの重量比が1:1のサンプルをレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図46】図46は、エゼチミブとアトルバスタチンカルシウムの重量比が1:1のサンプルをレーザー処理したもののFTIRスペクトルである。
【図47】図47は、エゼチミブとアトルバスタチン遊離酸の重量比が1:1のサンプルをレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図48】図48は、エゼチミブとアトルバスタチン遊離酸の重量比が1:1のサンプルをレーザー処理したもののFTIRスペクトルである。
【図49】図49は、エゼチミブとロスバスタチンカルシウムの重量比が1:1のサンプルをレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図50】50は、エゼチミブとロスバスタチンカルシウムの重量比が1:1のサンプルをレーザー処理したもののFTIRスペクトルである。
【図51】図51は、エゼチミブとシンバスタチンとアスピリンの重量比が2:2:1のサンプルをレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図52】図52は、エゼチミブとシンバスタチンとアスピリンの重量比が2:2:1のサンプルをレーザー処理したもののFTIRスペクトルである。
【図53】図53は、エゼチミブとアトルバスタチンカルシウムとアスピリンの重量比が2:2:1のサンプルをレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図54】図54は、エゼチミブとアトルバスタチンカルシウムとアスピリンの重量比が2:2:1のサンプルをレーザー処理したもののFTIRスペクトルである。
【図55】図55は、エゼチミブとアトルバスタチン遊離酸とアスピリンの重量比が2:2:1のサンプルをレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図56】図56は、エゼチミブとアトルバスタチン遊離酸とアスピリンの重量比が2:2:1のサンプルをレーザー処理したもののFTIRスペクトルである。
【図57】図57は、エゼチミブとロスバスタチンカルシウムとアスピリンの重量比が2:2:1のサンプルをレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図58】図58は、エゼチミブとロスバスタチンカルシウムとアスピリンの重量比が2:2:1のサンプルをレーザー処理したもののFTIRスペクトルである。
【図59】図59は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかった結晶アトルバスタチン遊離酸のサンプルのPXRDパターンである。
【図60】図60は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかった結晶アトルバスタチンカルシウムのサンプルのPXRDパターンである。
【図61】図61は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかった結晶エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウムのサンプルのPXRDパターンである。
【図62】図62は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかった結晶エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸のサンプルのPXRDパターンである。
【図63】図63は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかった結晶エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウムのサンプルのPXRDパターンである。
【図64】図64は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかった結晶エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム/アスピリンのサンプルのPXRDパターンである。
【図65】図65は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかった結晶エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸/アスピリンのサンプルのPXRDパターンである。
【図66】図66は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかった結晶エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリンのサンプルのPXRDパターンである。
【図67】図67は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかった結晶エゼチミブのサンプルのPXRDパターンである。
【図68】図68は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかった結晶エゼチミブ/シンバスタチン/アスピリンのサンプルのPXRDパターンである。
【図69】図69は、アトルバスタチンカルシウム/アスピリンを重量比1:1で組み合わせてレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図70】図70は、アトルバスタチンカルシウム/アスピリンを重量比1:1で組み合わせてレーザー処理したもののFTIRスペクトルである。
【図71】図71は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかったアトルバスタチンカルシウム/アスピリンの重量比が1:1のサンプルのPXRDパターンである。
【図72】図72は、アトルバスタチン遊離酸/アスピリンを重量比1:2で組み合わせてレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図73】図73は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかったアトルバスタチン遊離酸/アスピリンの重量比が1:2のサンプルのPXRDパターンである。
【図74】図74は、ロスバスタチンカルシウム/アスピリンを重量比1:1で組み合わせてレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図75】図75は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかったロスバスタチンカルシウム/アスピリンの重量比が1:1のサンプルのPXRDパターンである。
【図76】図76は、シンバスタチン/アスピリンを重量比2:1で組み合わせてレーザー処理したもののPXRDパターンである。
【図77】図77は、シンバスタチン/アスピリンを重量比2:1で組み合わせてレーザー処理したもののFTIRスペクトルである。
【図78】図78は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかったシンバスタチン/アスピリンの重量比が2:1のサンプルのPXRDパターンである。
【図79】図79は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかったシンバスタチンのサンプルのPXRDパターンである。
【図80】図80は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかったエゼチミブ/シンバスタチンの重量比が1:1のサンプルのPXRDパターンである。
【図81】図81は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかったエゼチミブ/シンバスタチンの重量比が1:2のサンプルのPXRDパターンである。
【図82】図82は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかったエゼチミブ/シンバスタチンの重量比が1:4のサンプルのPXRDパターンである。
【図83】図83は、本発明の方法で形成したがレーザー光線は当てなかったエゼチミブ/シンバスタチンの重量比が1:8のサンプルのPXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で用いる、化合物の固体状態に関する用語「非結晶」は、その化合物の固体形態のうちで、粉末X線回折(PXRD)分析の際に、その化合物の結晶形態のPXRDパターンに典型的ないかなるPXRDピークも実質的に存在しないPXRDパターンを提供するあらゆる固体形態を意味する。非結晶化合物は典型的にはアモルファスだが、これだけに限られる必要はない。
【0024】
本明細書で用いる用語「共アモルファス」(co-amorphous)は、2種類以上の非結晶化合物の非結晶混合物を意味し、その共アモルファス混合物は、本発明の方法でその2種類以上の化合物の溶液から作られる。3種類の非結晶化合物からなる共アモルファス組成物は、「三アモルファス」と呼ぶこともできる。共アモルファス組成物中の化合物は一般に互いに密に混合され、実質的にホモジニアスであることが好ましい。本発明の方法で調製した共アモルファス組成物は、固体溶液と見なすことが好ましい。
【0025】
上述のように、ある化合物の非結晶形態は、その化合物の結晶形態に特徴的なピークが存在しないPXRDパターンを有する。その結果、結晶形態の特徴的なPXRDパターンは、その非結晶形態の化学的な素性を確認するのに使用できない。非結晶形態のPXRDパターンが知られている場合には、そのPXRDパターンを用いて化学的な素性を確認できる。本発明の方法を用いて化合物の結晶形態を、その同じ化合物の非結晶形態または新しい結晶形態に変換する。したがって本発明の方法では、一般に、変換された化合物の化学的な素性が変化しないままであることを確認する必要がある。すなわち本発明の方法を実施している間に化学反応が起こらないことを確認する必要がある。非結晶組成物のフーリエ変換赤外(FTIR)分光分析によってその確認がなされる。
【0026】
非結晶固体化合物のFTIR分析により、一般に、その化合物の結晶形態から得られるFTIRパターンと比べて吸収帯がわずかに広がっている可能性のあるFTIRパターンになることがわかる。結晶材料の赤外スペクトルは、一般に、非結晶形態よりも吸収帯がより鋭く、および/または解像度がより大きくなる。結晶材料と、その同じ化合物の非結晶形態の間で形態が変化する結果として、赤外スペクトルにおいて吸収帯がいくらかシフトするのが観察される可能性もある。しかし非結晶形態と結晶形態の間のFTIRスペクトルの変化は小さすぎるため、結晶形態と非結晶形態のFTIRスペクトルを比較してその化合物の非結晶形態の素性を確認することはできない。
【0027】
本発明は、室温で安定な有機組成物(その中でも特に医薬組成物)の安定な結晶形態および非結晶形態と、本発明の方法で安定な結晶形態および非結晶形態を製造する方法に関する。本発明による医薬組成物の結晶形態と非結晶形態は、相対湿度約30〜約40%かつ温度約20℃〜30℃で少なくとも約24時間にわたって安定である。安定な期間は少なくとも約30日であることが好ましく、少なくとも3ヶ月であることがより好ましく、少なくとも6ヶ月であることが最も好ましい。本発明による医薬組成物の非結晶形態のサンプルは、相対湿度約30〜約40%かつ温度約20℃〜30℃で少なくとも約2年間にわたって安定で非結晶のままであった。
【0028】
本発明の方法で調製する非結晶組成物として、アスピリン、エゼチミブ、シンバスタチン、アトルバスタチン遊離酸、アトルバスタチンカルシウム、ロスバスタチンカルシウムを含む非結晶組成物と、これら化合物の共アモルファス組成物があるが、これだけに限られるわけではない。本発明の方法で調製される本発明の非結晶共アモルファス組成物として、エゼチミブ/シンバスタチン、エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム、エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸、エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム、エゼチミブ/シンバスタチン/アスピリン、エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム/アスピリン、エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸/アスピリン、エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリンのほか、少なくとも1種類のスタチンとアスピリンとを含む共アモルファス組成物があるが、これだけに限られるわけではない。スタチン/アスピリン共アモルファス組成物として、アトルバスタチン遊離酸/アスピリン、アトルバスタチンカルシウム/アスピリン、シンバスタチン/アスピリン、ロスバスタチンカルシウム/アスピリンがあるが、これだけに限られるわけではない。処理した組成物に含まれる医薬組成物の重量比は、各医薬組成物が望ましい用量になるように調節することが好ましい。
【0029】
理論に拘束されるものではないが、ある化合物の非結晶形態は、その化合物のどの結晶化形態よりも分子間格子内の自由エネルギーが高いと考えられる。そのため非結晶形態は、結晶形態と似た粒子サイズである場合に結晶形態よりも水への溶解度が約2〜8倍大きくなる。溶解度のこのような増加は、より早い溶解、吸収、臨床作用のほか、著しく大きな生物学的利用能につながる可能性がある。
【0030】
したがって本発明の非結晶医薬組成物は、経口摂取または経粘膜送達(例えば舌下投与)の後の条件下で同じ組成物の結晶形態よりも大きな溶解速度になるため、溶解度と生物学的利用能がより大きくなる。したがって相対湿度約30〜約40%かつ温度約20℃〜30℃で長期にわたって安定である本発明の非結晶医薬組成物は、結晶形態よりも臨床その他の利点を持つはずである。
【0031】
スタチンに対するアスピリンのモル比が著しく大きいことで、本発明の方法を容易に実施できたことに注意されたい。理論に拘束されるものではないが、本発明のスタチン/アスピリン共アモルファス組成物ではアスピリンがスタチンよりも水への溶解度が大きいため、水へのスタチンの溶解度が相対的に著しく大きくなると考えられる。
【0032】
化合物の結晶形態は、角度2θで測定すると、X線ビームの特定の反射角で特徴的なピークを有するPXRDパターンを持つ。一般に、測定の解像度は±0.2°2θの程度である。反射は、結晶内で分子が規則正しく配置されていることの結果である。それとは対照的に、一部が非結晶である化合物のサンプルは、ピークが実質的にぼけた、または低くなったPXRDパターンを持ち、純粋な非結晶化合物のサンプルは、一般に特徴的なピークのまったくないPXRDパターンを持つ。分子は非結晶化合物の中でランダムに配置されているため、PXRDパターンに反射ピークは観察されない。いくつかの非結晶化合物では、広い範囲にわたって発生する強度の変化が、ベースラインのノイズとともに観察される可能性がある。
【0033】
例えば本発明の方法で調製した結晶アスピリンと非結晶アスピリンを粉末X線回折(PXRD)で分析すると、結晶形態と非結晶形態での分子配列の違いが明らかになる。市販されている結晶アスピリンの典型的なPXRDパターンを図1に示す。図1のPXRDパターンは、結晶アスピリンに特徴的な多数のピークを持つ。
【0034】
それとは対照的に、図3は、本発明の方法で調製した非結晶アスピリンのPXRDパターンを示している。非結晶アスピリンのPXRDパターンは、結晶アスピリンに関して図1に示した高度に結晶的なパターンとは極めて対照的である。結晶アスピリンの強度の大きなPXRDピークが実質的に存在しない。これは、本発明の非結晶アスピリンに存在している秩序がせいぜい非常に短い範囲の秩序であることを示している。図1のPXRDパターン解像度は、図3に示したPXRDパターンの解像度よりも数倍大きいことに注目することが重要である。したがって図1の結晶アスピリンのPXRDパターンで観察されるどのピークも、図3の非結晶アスピリンのPXRDパターンに存在する可能性があるが、実際には図1のベースラインのノイズよりも大きな強度を持たない。これは、図3に示してあるように、PXRDで分析したアスピリンが実質的に純粋な非結晶アスピリンであることの明確な証拠である。サンプル中のアスピリン分子に秩序は実質的に存在しない。もし秩序があれば、PXRDにピークが見られるであろう。
【0035】
いくつかの化合物(例えばアスピリン)は室温で結晶化する強い熱力学的傾向を持つため、非結晶組成物(例えば図3に示した非結晶アスピリン)には非常に狭い範囲で形成された微結晶が存在する可能性がある。しかし本発明の方法で調製した非結晶組成物で得られた室温でのPXRDパターンは、数分子を超えない非常に短い範囲の秩序を持つ微結晶構造が組成物全体でランダムに分散されている程度がせいぜいであることを示唆している。サンプルの実質的に全体が真のガラスに典型的な完全にランダムな連続相からなり、その中に、非常に短い範囲の秩序を持つランダムないくつかの微結晶構造が含まれている可能性がある。本発明の方法で調製した非結晶組成物の物理的特性と化学的特性は、純粋なガラスで予想されるのと実質的に同じであると考えられる。分子の配置は実質的にランダムであるため、非結晶組成物の溶解度はを結晶形態よりも大きくなる傾向がある。
【0036】
PXRDパターンの特徴的な反射ピークの消失と同様、フーリエ変換赤外(FTIR)分光の吸収帯は、サンプルに含まれる化合物の非結晶形態の量が増大するにつれて一般に広くなる。これは、非結晶形態が存在することの別の証拠である。結晶材料の赤外スペクトルは、一般に、非結晶形態よりも鋭くかつ解像度がより大きい吸収帯を示す。結晶材料と、その同じ化合物の非結晶形態の間で形態が変化するため、赤外スペクトルに含まれるいくつかの帯もいくらかシフトする可能性がある。
【0037】
例として、結晶アスピリンと非結晶アスピリンのFTIR分析の結果をそれぞれ図2と図4に示す。これらアスピリン・サンプルは、図1と図3でPXRDによって分析したものである。図2に示した結晶アスピリンのFTIRパターンの吸収ピークは相対的に明確である。それとは対照的に図4に示した非結晶アスピリンのFTIRパターンは、比較的広い吸収帯を生じさせる。結晶アスピリンと本発明の非結晶アスピリンのFTIRスペクトルを比較すると、これら2つのサンプルは同じ化学物質であることがわかる。しかし図4で分析したサンプルのFTIRピークの広がりは、その化合物が非結晶形態であることに合致している。
【0038】
従来の結晶組成物の結晶構造と本発明の非結晶組成物の違いは、結晶形態と非結晶形態の偏光顕微鏡(PLM)写真でも観察される。偏光顕微鏡では、結晶組成物は複屈折を生じさせる。複屈折は、結晶形態に含まれる分子が、非結晶形態には存在しない非常に秩序だったパターンに配置されている異方性材料に出現する。その結果、結晶組成物の偏光顕微鏡写真は、結晶形態で見られる分子の秩序だった配列が欠けた純粋な非結晶組成物では観察されない高度の複屈折を示す。
【0039】
例えば結晶アスピリンの偏光顕微鏡写真では高度に結晶化したサンプル全体で複屈折が明瞭に見られる。これは、白色の干渉が大きいことを示している。それとは対照的に、本発明の純粋な等方性非結晶アスピリン粒子の偏光顕微鏡写真では複屈折が観察されない。複屈折がないというのは、本発明の非結晶組成物であることの証拠である。上に指摘したように、複屈折は、結晶形態に見られるが非結晶形態には見られない分子の秩序だった配置を必要とする。
【0040】
本発明の非結晶組成物は、1種類以上の化合物の溶液を、2つの供給源からの異なる波長のレーザー光に曝露し、溶媒を蒸発させることによって製造される。レーザー光は、同時に、または交互に当てることができる。化合物は医薬組成物であることが好ましい。
【0041】
レーザー光線は、有効パルス長がピコ秒の範囲(10-12〜10-9秒)を超えない比較的大きなパルス繰り返し速度のパルスにすることが好ましい。レーザー光線は、フェムト秒の範囲(10-15〜10-12秒)またはフェムト秒未満(10-15秒未満)の範囲が可能である。一方のレーザーは、発光の中心が可視スペクトルの下半分、すなわち約400〜約550nmにあることが好ましい。この中心は、近紫外(UV)〜青の範囲にあることがより好ましく、約400〜約470nmの波長にあることがさらに好ましい。他方のレーザーは、発光の中心が可視スペクトルの上半分、すなわち約550〜約700nmにあることが好ましい。この中心は、赤〜近赤外(IR)の範囲にあることがより好ましく、約620〜約680nmの波長にあることがさらに好ましい。用途によっては、発光の中心が似た波長にある2つのレーザー、すなわち2つの短波長のレーザー、または2つの長波長のレーザー、または発光の中心が550nm近くにある2つのレーザーを用いることが有用である可能性がある。しかし優れた結果は、中心波長が約400〜約470nmにある1つのレーザーと、中心波長が約620〜約680nmにある第2のレーザーを用いて得られた。
【0042】
理論に拘束されるものではにが、レーザーの出力帯域幅は有効な短いパルス長によって広くなると考えられる。これは不確定性原理の帰結である。その結果、レーザー光の短いパルスは、本発明の方法において多数の振動状態および/または電子状態と相互作用するフォトンを提供して非結晶形態にすると考えられる。その結果、処理する化合物の特定の吸収帯に対応する発光を持つレーザーは必要ない。
【0043】
極短レーザー・パルスは、レーザーの出力を変調して電磁(EM)波の建設的干渉がまばらなノードを生成させることによって作り出される。これについてはStrachanに付与されたアメリカ合衆国特許第6,064,500号と第6,811,564号に開示されており、その開示内容全体が参考として本明細書に組み込まれているものとする。本明細書で用いる用語「ストラチャン装置」は、Strachanがこれらの特許に開示しているタイプの装置を意味する。'500特許と'564特許に規定されていて本明細書で用いるストラチャン装置は、第1の回折格子と、第2の回折格子と、その第1の回折格子と第2の回折格子の間に配置された屈折要素とを備えている。レーザー・ビームが、連続ビームであれパルス式ビームであれ、ストラチャン装置の第1の回折格子と屈折要素と第2の回折格子を順番に通過するとき、ビームの少なくとも一部が相殺的干渉によって実質的に相殺される。ストラチャン装置を通過する光ビームの相互作用によって相殺的干渉が起こり、ビームはストラチャン装置を出ていくときに実質的に相殺されている。屈折要素により、レーザー光源の単一の臨界波長ではなく小さな範囲の波長全体で相殺させることができる。
【0044】
建設的干渉が比較的まばらである領域が、相殺要素の高周波域と低周波域の間でアパーチャから選択された方向に発生する。ストラチャン装置の出力によってこの装置から離れた位置に建設的干渉が起こる場合にだけ、建設的干渉がまばらなノードが生じる。建設的干渉は、ごく短い時間の間だけ起こるため、光の極短パルスとなる。これらのパルスは有効パルス長が約10-9秒以下であると考えられる。
【0045】
ストラチャン装置では、レーザーの波長または波長の相対振幅がわずかに変化することで、これらノードの位置が急速に変化する。そのためには、例えばレーザー・ダイオードの電流をわずかに変化させたり、接合部の温度を不規則に変化させたりすることでレーザーの中心周波数を変動させる。その結果、連続的なレーザー・ビームは、低周波数の振幅の比較的わずかな変調という簡単な手段によって持続時間が極めて短いパルス列に変換される。1MHzの周波数を超えるダイオードレーザーの振幅変調は完全に当業者の能力範囲である。その結果、持続時間がピコ秒の範囲である有効パルス長を容易に実現でき、フェムト秒またはフェムト秒未満のパルスは、適切に準備したストラチャン装置と振幅変調したダイオードレーザーを用いて実現できる。
【0046】
例えば連続ダイオードレーザーを用いると、持続時間が極めて短いパルス列のパルス繰り返し周波数は、直接的なレーザー・ダイオード駆動装置によって規定されるか、音響光学的または電気光学的変調装置によって規定される。直接的なレーザー駆動法の固有電流変調では、レーザーの中心周波数がより変動するようになって一致するパルスの期間が短くなるのに対し、音響光学的変調では、変調されたビームのアパーチャが結晶の最適変調アパーチャの直径よりも大きい場合に似た効果が得られる。なぜなら外側の半径は内側の半径よりも変調が少ないために機能する有効アパーチャが変化するからである。
【0047】
非結晶組成物を製造する本発明の好ましい方法では、少なくとも2つの異なるレーザーから極短レーザー・パルス列を交互にその組成物の溶液に当てて溶媒を蒸発させる。上述のように、レーザーの出力帯域幅は、短いパルス長によって広くなる。これは不確定性原理の帰結である。その結果、レーザー光の短いパルスは、本発明の方法において多数の振動状態および/または電子状態と相互作用するフォトンを提供して非結晶形態にすると考えられる。その結果、処理する化合物の特定の吸収帯に対応する発光を持つレーザーは必要ないため、レーザーの選択は重要ではない。青-紫の波長帯(約400〜約470nmが好ましい)で光を放つレーザーと、赤〜近赤外の波長帯(約620〜約680nmが好ましい)で光を放つレーザー(例えばダイオードレーザー)を用いると、以下に説明するすべての医薬組成物で優れた結果が得られた。本発明の方法で処理した医薬組成物の化学構造、したがって吸収スペクトルは、本明細書に説明してあるように互いに著しく異なっているため、本発明の方法は多彩な他の有機化合物に拡張できると考えられる。
【0048】
好ましい交代式パルス列は、少なくとも一対のレーザーと1つ以上のストラチャン装置を用いて発生させる持続時間がごく短くて建設的干渉がまばらなノードを2つの波長領域内に含んでいる。理論に拘束されるものではないが、交代式の極短レーザー・パルス列は、組成物の分子の電子状態および/または振動状態と相互作用し、分子間相互作用を阻止し、したがって結晶形成を阻止する、および/または結晶構造を破壊すると考えられる。
【0049】
本発明の室温で安定な非結晶組成物は、ストラチャン装置を通過した少なくとも2つの異なるレーザーからの振幅変調した散在性建設的ノードを、溶媒にその組成物を溶かした溶液に交互に当てることによって製造されることが好ましい。交互にパルス列を当てる操作は頻繁に繰り返すことが好ましい。
【0050】
有用な溶媒は、一般に、組成物が少なくとも適度に溶け、ほぼ室温〜約130℃で蒸発し、非毒性の有機溶媒である。組成物はアルコールに溶けることが好ましく、エタノールに溶けることがより好ましい。溶媒は無水であることが好ましく、最も好ましい溶媒は、水を含まないエタノール、すなわち100%エタノールまたは無水エタノールである。
【0051】
溶媒が実質的に蒸発するまでレーザー光線を溶液に当てることが好ましい。より好ましくは、レーザー光線を当てて溶媒を蒸発させている間、溶液を加熱することだが、蒸発プロセスの間に溶液を冷却してもよい。室温まで冷却するのが好ましい。最も好ましくは、最初に、溶媒の蒸発を実質的に阻止する透明なカバーで覆った溶液にレーザー光線を当てることである。次に透明なカバーを外し、レーザー光線を好ましくは連続的に当てて溶媒を蒸発させる。
【0052】
レーザーは、青-紫の波長帯で光を放つレーザーと、赤-オレンジの波長帯で光を放つレーザーを含んでいることが好ましい。より好ましくは、レーザーが、約400〜約470nmの範囲と約620〜約680nmの範囲でそれぞれ光を放つことである。異なる波長で光を放つ3つ以上のレーザーも本発明で用いることができる。ストラチャン装置と、408nmで光を放つダイオードレーザーと、674nmで光を放つダイオードレーザーを用いて優れた結果が得られた。
【0053】
通常の空気の存在下で非結晶組成物を得る本発明の方法を示してきたが、この方法は、不活性雰囲気の中でも実施できる。不活性雰囲気は、窒素、ヘリウム、アルゴンや、他の不活性ガスを用いて提供することができる。コスト上の理由で窒素が好ましい。不活性ガスを用いると、この方法を実施している間に非結晶組成物が酸化するあらゆる傾向が排除されるであろう。
【実施例】
【0054】
例示としての以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様の単なる例であって本発明を限定すると解釈してはならず、本発明の範囲は添付の請求項によって規定される。
【0055】
本発明のレーザー処理によって調製した非結晶組成物が実験設定のアーチファクトではないことを確認するため、レーザー光線を溶液に当てないことを除いて同じ実験手法を繰り返した。すなわち例の中で上に説明したプロトコルに従ってエゼチミブ、スタチン、アスピリンのサンプルを個別に、または組み合わせて溶媒に溶かし、ホットプレートの上に置いたカバー付きのペトリ皿の中に入れ、カバーを外して溶媒が蒸発できるようにする。それぞれの比較試験でかなりの量の結晶物質が観察された。
【0056】
実施例1:非結晶アスピリンの調製
【0057】
非結晶アスピリンは室温で熱力学的平衡からはるかに離れており、室温よりもはるかに低いガラス転移温度よりも上の温度から融解温度までの温度で結晶であるか結晶化することが以前に常に見いだされている。しかし本発明に従ってレーザー光線を繰り返して当てるとアスピリンは非結晶が優勢な形態に変換される。その非結晶形態は、室温で少なくとも約1年間は安定に留まることが見いだされた。
【0058】
実施例1a
長波長(赤)である674nmの振幅変調した構造化レーザー光の後に短波長である408nm(紫)の振幅変調した構造化レーザー光をストラチャン装置から1回だけ、無水エタノールにアスピリンを溶かした溶液に当てた。各レーザーからの約3cmに広がったビームを、それぞれの波長のレーザー光についてストラチャン装置から25cmの距離でサンプルの上方を2.5分間ゆっくりと回転させた。面偏光顕微鏡を用いた処理済アスピリンの分析から、場合によってはアスピリンの小さな(一般に1ミリメートル(mm)未満の)等方性液滴の小断片が生じることがわかった。液滴は、溶媒が蒸発した後に室温で安定であった。液滴の大半は、複屈折性結晶材料からなるコアと等方性アスピリンからなるハローを持っていたが、いくつかの液滴は完全に等方的であった。結晶化材料が形成されつつ前面に接触するときに結晶化に抵抗するという等方性材料の能力は、溶媒が蒸発してしまうと、本方法によって製造された本発明の非結晶アスピリンが安定であることを証明している。
【0059】
実施例1b
レーザー光線を頻繁に繰り返して当てて安定な非結晶アスピリンを作ると、約80〜約90%またはそれ以上が透明な非結晶アスピリンが製造された。約2〜3mmまたはそれ以上の大きさの純粋なガラス状材料の液滴と、幅が数十mmの非結晶アスピリンの池が、室温で約1年まで安定であることが見いだされた。
【0060】
上述のように、基準となる標準結晶アスピリンをPXRDによって分析した。基準となる標準結晶アスピリンの反射ピークの特徴的なパターンを図1に示す。結晶アスピリンは、フーリエ変換赤外分光によっても分析した。その結果を図2に示す。非結晶状態になった化合物のPXRDパターンでは特徴的な反射ピークが失われるため、FTIR分光によって化合物の素性が確認されるとともに、非結晶状態であることの別の証拠が、結晶状態と比べて非結晶状態で起こる吸収帯の広がりによって示される。
【0061】
ストラチャン装置によって変調して構造化した長波長のレーザー光の後に短波長のレーザー光を当てるというサイクルを繰り返すことによってアスピリンの高度非結晶状態を作り出した。ストッパ付きのエーレンマイヤー・フラスコの中で12.5分間にわたって140℃に加熱して磁気撹拌機を用いて9000回転/分(rpm)で撹拌しながら、10mgの参照用結晶アスピリン標準サンプルを450mgの無水エタノールに溶かした。この溶液を60mm×15mmのガラス製ペトリ皿に移し、ガラス製カバーで覆った。このペトリ皿をホットプレートの上で100℃に加熱した。
【0062】
ストラチャン装置で変調したレーザー光線の繰り返しサイクルによってアスピリン溶液を処理した。第1のサイクルは、中心波長が674nmのダイオードレーザーからの振幅変調したダイオードレーザー光を当てることであった。第2のサイクルは、中心波長が408nmのダイオードレーザーからの振幅変調したダイオードレーザー光を当てることであった。ストラチャン装置から25cmの距離でサンプルをゆっくりと回転させ、約3cmに広がった各ビームの中を通過させた。
【0063】
674nmのダイオードレーザーのビームは、光学要素なしでピーク電力が4.80mWであった。ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後、ピーク電力は約50%低下した。ストラチャン装置を用いて674nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、直径3cmのビーム全体で約.048mWの電力を実現した。
【0064】
408nmのビームは、追加の光学要素なしでピーク電力が約4.80mWであった。ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後、ピーク電力は約50%低下した。ストラチャン装置を用いて408nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、約0.48mWの直径3cmのビームを得た。
【0065】
どちらのビームも6.25メガヘルツ(MHz)で電子的に振幅変調した。上述のように、理論に拘束されるものではないが、レーザーの出力帯域幅はストラチャン装置が生み出す有効パルス長によって広がると考えられる。これは不確定性原理の帰結である。するとレーザー光の中のフォトンがアスピリン分子の多数の電子モードおよび/または振動モードと相互作用する。
【0066】
上述のように、カバーをしたガラス製ペトリ皿をホットプレートの上に載せ、そのペトリ皿の中でアスピリン溶液を674nmのレーザーで1分間処理し、次いで408nmのレーザーで1分間処理した。その後、振幅変調して構造化した674nmのレーザーの後、408nmのレーザーを各レーザー・システムについて1分間という別のサイクルを続けた。674nmのレーザーの後に408nmのレーザーで処理するという第3のシークエンスは、各レーザー・システムについて2分間実施した。
【0067】
このサイクルの後にガラス製カバーをペトリ皿から外してエタノールを蒸発させる。さらに5サイクルにわたってレーザー処理している期間中、エタノール溶液中のアスピリンをホットプレートの上に残した。674nmの後に408nmのレーザーで処理するという次のサイクルは、各レーザー・システムについて2分間実施した。674nmの後に408nmのレーザーで処理するという次の4つのサイクルでは、各サイクルを2分間適用した。そのとき、各サイクルでそれぞれのレーザー・システムを1分間ずつ適用した。最後のレーザー処理サイクルが終了すると、レーザー処理したアスピリンのサンプルをホットプレートから取り出し、約18℃〜20℃という室温かつ湿度35%で溶媒を蒸発させるプロセスを続けた。
【0068】
レーザー処理の終了時に大半の溶媒はすでに蒸発してしまっており、透明な非結晶アスピリンからなる幅約3cmの「池」になった。結晶化した狭い縁部が池の外縁部のまわりに帯状に形成されていて、周辺部の約30%を占めていた。活性な結晶化前線が形成されるにもかかわらず、レーザー処理シークエンスのサイクルが終了した後にこの前線は無視できるくらいしか広がっていなかった。
【0069】
1時間以内の蒸発で系は安定化し、サンプルの質量の80%以上が硬化して結晶形態ではなく透明な非結晶形態になった。約18℃〜22℃という室温かつ湿度30〜40%で継続して保管すると、6ヶ月を超える期間にわたってサンプルの外観が変化せず、結晶化した縁部の隣接部でさえ、透明な非結晶アスピリンが広がった状態が維持された。これらの観察結果は、本発明の方法で製造したアスピリンの非結晶形態が安定であることを示している。
【0070】
レーザー処理したアスピリンを6ヶ月保管した後にPXRDによって調べた。図3に示したパターンは、この材料がX線で見ると高度に非結晶であることを示しており、対照の結晶アスピリンについて図1に示した高度に結晶化されたパターンとは極めて対照的である。結晶アスピリンで見られる強度の大きな反射ピークと比較し、レーザー処理したアスピリンではこれらのピークがほぼ完全に消失した。これは、生成した非結晶ガラス形態の中ではせいぜい非常に短い範囲の秩序が残っているだけであることを示している。同様にして調製したサンプルでは、さらに6ヶ月保管した後に結晶化は観察されなかった。これらの観察結果は、本発明の方法で製造したアスピリンの非結晶形態が安定であることを示している。
【0071】
次に、フーリエ変換赤外(FTIR)分光を利用し、X線で非結晶であることがわかったアスピリンのサンプルを走査した。その結果を図4に示す。図2に示したアスピリンの参照用結晶材料のFTIR分光と比較すると、結晶アスピリン参照サンプルのより明確な帯と比べてX線で非結晶であることがわかったアスピリンのサンプルでは相対的に広い吸収帯が明らかである。結晶材料の赤外スペクトルは、一般に、結晶格子中の分子の運動の自由度が小さくなるために非結晶形態よりも鋭い吸収帯、すなわちより解像度のよい吸収帯を示す。結晶材料と、その同じ化合物の非結晶形態の間で形態が変化するため、赤外スペクトルの中のいくつかの吸収帯もシフトする可能性がある。結晶アスピリンとレーザー処理したアスピリンのFTIRスペクトルの比較からわかるように、これら化合物は明らかに同じ化学物質である。レーザー処理したアスピリンのスペクトルのピークの広がりは、アスピリンの非結晶形態に合致する別の特徴である。
【0072】
実施例1c
長波長と短波長の順番を逆にして、すなわち短波長の後に長波長という順番のサイクル式レーザー処理により、実施例1bのプロトコルにおいてその後の試験を繰り返した。このプロトコルによっても室温で安定な非結晶ガラス状アスピリンの収率は90%になった。この非結晶アスピリンは23ヶ月にわたって室温で安定なままであった。このような非結晶アスピリンを入れたペトリ皿を約6週間の期間にわたって傾けた状態にした。サンプルの流動は観察されなかった。
【0073】
比較例:アスピリン
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例1bと1cのプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたアスピリンのPXRDパターンを図5に示す。図5のPXRDパターンは、図1に示した対照サンプルと同じピークを有する。得られたアスピリンのFTIR分析も実施した。得られたスペクトルを図6に示してあり、図2に示したスペクトルと実質的に同じである。これらの結果は、非結晶アスピリンが実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることをはっきりと示している。
【0074】
実施例2:非結晶シンバスタチンの調製
対照となる結晶シンバスタチンのサンプルをPXRDによって分析した。このサンプルから得られた結晶シンバスタチンの特徴的なPXRDパターンを図7に示す。結晶シンバスタチンをさらにフーリエ変換赤外(FTIR)分光を利用して分析した。結晶シンバスタチンのFTIRスペクトルを図8に示す。
【0075】
非結晶シンバスタチンを得るため、ストッパ付きのエーレンマイヤー・フラスコの中で8分間にわたって磁気撹拌機を用いて9000回転/分(rpm)で撹拌しながら40mgの結晶シンバスタチンのサンプルを674mgの100%(無水)エタノールに溶かした後、さらに10分間にわたって9000rpmで140℃に加熱した。この溶液を約20℃(すなわち室温)まで冷却し、洗浄器を用いて濾過して残留結晶をすべて除去し、60mm×15mmのガラス製ペトリ皿の中にデカントし、ガラス製カバーで覆った。
【0076】
レーザー処理したシンバスタチンを溶かしたサンプルを最初に中心波長が674nmの振幅変調したダイオードレーザー光で2.5分間にわたって処理した後、中心波長が408nmの振幅変調したダイオードレーザー光で2.5分間にわたって処理した。そのとき、ストラチャン装置の出口から25cmの距離でサンプルをゆっくりと回転させ、約3cmに広がった各ビームの中を通過させた。
【0077】
674nmのレーザー・ダイオードのビームは光学要素なしでピーク電力が4.80Wであった。ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後、ピーク電力は約50%低下した。ストラチャン装置を用いて674nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、約4.80mWの直径3cmのビームを得た。
【0078】
408nmのビームは、追加の光学要素なしでピーク電力が約0.32mWであった。ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後、ピーク電力は約50%低下した。ストラチャン装置を用いて408nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、約0.02mWの直径3cmのビームを得た。どちらのビームも6.25メガヘルツ(MHz)で電子的に振幅変調した。
【0079】
ガラス製ペトリ皿のカバーを外し、約19℃〜20℃の室温かつ41%の湿度で溶液をゆっくりと蒸発させて乾燥させた。得られた材料が乾燥すると純粋で透明なガラス状態になった。レーザー処理したシンバスタチンのサンプルを偏光顕微鏡(PLM)で調べたところ、完全に等方的に見えることがわかった。これは、この材料が純粋に非結晶であることを示している。次に、レーザー処理したシンバスタチンをPXRDを利用して調べた。そのパターンを図9に示す。このパターンは、結晶シンバスタチンのPXRDピークを実質的に持たない。これは、レーザー処理したシンバスタチンが非結晶であることを証明している。
【0080】
次に、本発明の方法で製造した非結晶シンバスタチンのFTIR分析を行なった。得られたFTIRスペクトルを図10に示す。図8に示した結晶シンバスタチンで得られたFTIRスペクトルと比較すると、レーザー処理したシンバスタチンのFTIRスペクトルの吸収帯は、参照用の結晶シンバスタチンのサンプルのはるかに明確な帯と比べて相対的に広い。
【0081】
比較例:シンバスタチン
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例2のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたシンバスタチンのPXRDパターンを図79に示す。得られたシンバスタチンのFTIR分析も実施し、材料がシンバスタチンであることを確認した。結果は、非結晶シンバスタチンが実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0082】
実施例3:非結晶エゼチミブの調製
結晶エゼチミブを光学顕微鏡、PXRD、FTIR分光で分析し、本発明の方法で処理したエゼチミブと比較するための参照サンプルとした。面偏光顕微鏡により、エゼチミブ参照サンプルは完全に複屈折性であり、したがって高度に結晶性であることが確認された。図11に示した結晶エゼチミブのPXRDスペクトルは、結晶材料に特徴的なピークを含んでいる。対照であるこの結晶エゼチミブの特徴的なFTIRパターンを図12の上部に示す。
【0083】
非結晶エゼチミブを得るため、ストッパ付きのエーレンマイヤー・フラスコの中で5分間にわたって磁気棒で撹拌しながら50mgのエゼチミブを500mgの無水エタノールに溶かした。ストッパを外し、さらに6分間にわたって165℃に加熱しながらエゼチミブと無水エタノールを撹拌した。エタノールが30%蒸発した後、エゼチミブをエタノールに溶かしたこの溶液を60mm×15mmのガラス製ペトリ皿の中にデカントした。ガラス製カバーをペトリ皿の上に置き、波長408nmのレーザーからの振幅変調したダイオードレーザー光線を2.5分間にわたって当てた後、波長674nmのレーザーからの振幅変調したダイオードレーザー光線を2.5分間にわたって当てた。
【0084】
408nmのビームは、追加の光学要素なしでピーク電力が約0.48mWであった。ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後、ピーク電力は約50%低下した。674nmのダイオードレーザーのビームは光学要素なしでピーク電力が4.80mWであった。ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後、ピーク電力は約50%低下した。どちらのビームも6.25MHzで電子的に振幅変調した。ストラチャン装置を用いて408nmのビームと674nmのビームの両方を調節して位相が80%相殺されるレベルにし、直径3cmのビーム全体でそれぞれ.05mWと.48mWの電力レベルを得た。
【0085】
最初に、ストラチャン装置で変調した408nmの変調ダイオードレーザー出力光を約3cmに広がったビームにしてまっすぐ上に向け、サンプルを、ストラチャン装置の出口から約29cmのところに約2.5分間にわたって位置させた。次に、ストラチャン装置で変調した674nmの変調ダイオードレーザー出力光を約3cmに広がったビームにしてまっすぐ上に向け、サンプルを、ストラチャン装置の出口から約29cmのところに約2.5分間にわたって位置させて処理した。ガラス製ペトリ皿の中のエゼチミブをビームの中をゆっくりと循環させ、全表面積がカバーされるようにした。
【0086】
ガラス製カバーを外し、開放された容器の中でサンプルを約20℃かつ相対湿度31%でゆっくりと蒸発させて溶媒を除去することができた。溶媒が完全に蒸発する前にサンプルは明らかに結晶化したいくつかの小さな領域を形成しており、その領域はマーカー線で囲まれていた。蒸発を続けたとき、結晶前線の顕著な拡張は観察されなかった。前線は5週間にわたって安定に残り、サンプルの優勢な等方性ガラス状材料への結晶材料による侵食はなかった。これは、非結晶形態が、結晶化前線に曝露されたときでさえ、著しく安定であることを示唆している。
【0087】
スポット・インサイト・カラー・カメラ(モデル3.2.0)を取り付けたライカ社のDM LP顕微鏡を用いてサンプルの光学顕微鏡評価を行なった。所定の位置に配置した交差偏光装置および一次の赤補償装置とともに5倍、10倍、20倍、40倍いずれかの対物レンズを使用してサンプルを見た。サンプルの被覆を注意深く皿から剥がし、ガラス・スライドの上に置き、一滴のシリコン油で覆った。次にカバー・ガラスをサンプルの上に載せた。スポット・ソフトウエア(ウインドウズ用のv.4.5.9)を用いて画像を周囲温度で取得した。
【0088】
本発明の方法で処理したエゼチミブを分析すると、処理したエゼチミブの90%超が等方性フィルムの形態であることがわかった。その等方性エゼチミブのPXRD分析により、約20°2θを中心とする非常に広い反射を持つPXRDパターンが得られた。これは、回収されたその等方性フィルムが非結晶であることの確認となっている。非結晶エゼチミブのPXRDパターンは、図13に示してあるように、結晶エゼチミブに特徴的なPXRDピークを持たない。
【0089】
図12の下部に示した非結晶エゼチミブのエゼチミブFTIRスペクトルを図12の下部に示した結晶エゼチミブのエゼチミブFTIRスペクトルと比べると、非結晶材料がエゼチミブであることが確認される。結晶エゼチミブは非結晶エゼチミブ・フィルムのFTIRスペクトルよりも鋭いピークのあるFTIRスペクトルを持つとはいえ、これら2つのFTIRスペクトルは、非結晶材料がエゼチミブであることの確認となっている。
【0090】
本発明の方法で処理したエゼチミブにも、ミクロな複屈折材料からなる小さな領域が生じ、溶媒を蒸発させた後の数週間にわたって安定に残った。これは、等方性非結晶エゼチミブが、形成中の結晶前線に隣接しているときでさえ結晶化に抵抗したことを示している。これは、この方法で製造された非結晶エゼチミブは、溶媒が除去されると、結晶形態への逆戻りに対する顕著な安定性を実現することを示唆している。
【0091】
本発明の方法で製造した複屈折エゼチミブのPXRDパターンは、参照用の結晶エゼチミブの結晶パターンとは著しく異なっていることがわかった。図8からわかるように、レーザー処理したエゼチミブからのミクロな複屈折材料のPXRDパターンは、参照用の結晶エゼチミブとは著しく異なるピーク付きPXRDパターンを持つ。これは、エゼチミブの異なる結晶形態が調製されたことを示している。
【0092】
溶媒を除去したエゼチミブにおいて安定な非結晶パターンを作り出すことにより、化合物の初期結晶形態とは異なるユニークな結晶形態が系から出現した。本明細書では結晶化する傾向のある化合物の非結晶状態を作り出す能力に主に注目してきたが、本発明の方法を利用してそのような化合物の新しい多形結晶形態の生成を促進する条件を作り出せることも見いだされた。この場合、多形結晶形態は、化合物を非結晶状態にするのを促進する条件から自己組織化した。溶媒を除去する前または溶媒を除去している間に1つのステップまたは一連のステップとして本発明の方法を適用して特定の固体状態の組織化を促進することができると考えられる。
【0093】
少量の新しい結晶形態の生成は、その新しい形態を実質的により多く生成させるための種結晶として役立つはずである。この新しい形態が元の形態と比べて熱力学的により不利かつより不安定であるならば、溶媒の除去が完了する前または溶媒を除去している間にレーザー処理を行なうと、新しい形態の生成を実際の利用に必要なレベルまで増やすことができよう。
【0094】
図8に示したエゼチミブの新しい結晶形態は、以前に報告されている形態と似ているがおそらく同じではない。少なくとも、本明細書では、この形態を生成させることのできる新しい方法を示す。比較をさらに進めて両者が異なっていることがわかるのであれば、この結晶形態の溶解度と生物学的利用能を調べ、この形態を用いることが有利である可能性があるかをどうかを明らかにする必要があろう。
【0095】
比較例:エゼチミブ
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例3のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたエゼチミブのPXRDパターンを図67に示す。図67のPXRDパターンは、図11に示した対照サンプルと同じピークを有する。得られたエゼチミブのFTIR分析も実施し、材料がエゼチミブであることを確認した。結果は、非結晶エゼチミブが実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0096】
実施例4:非結晶アトルバスタチン遊離酸の調製
結晶アトルバスタチン遊離酸の参照サンプルをPXRDとFTIR分光で分析した。図15からわかるように、結晶アトルバスタチン遊離酸のPXRDスペクトルは、多数の特別なピークを持つPXRDを特徴とする。結晶アトルバスタチン遊離酸のFTIRスペクトルを図17に示す。
【0097】
160℃に加熱し、9000rpmで11分間にわたって撹拌しながら、10mgの結晶アトルバスタチン遊離酸を400mgの無水エタノールに溶かした。得られた溶液を60mm×15mmのガラス製ペトリ皿に移し、ガラス製カバーで覆い、100℃のホットプレートの上に置いた。
【0098】
最初に、674nmのダイオードレーザーを振幅変調した光を2.5分間にわたってアトルバスタチン遊離酸の溶液に当てた。次に、408nmのダイオードレーザーを振幅変調した光を2.5分間にわたってアトルバスタチン遊離酸の溶液に当てた。そのとき、ストラチャン装置から25cmの距離でサンプルをゆっくりと回転させながら約3cmに広がった各ビームの中を通過させた。674nmのダイオードレーザーのビームを、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過させた。ストラチャン装置を用いて674nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、直径3cmのビーム全体で約0.48mWの電力を実現した。408nmのビームは、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後にピーク電力が2.18mWであった。408nmのビームの出力もストラチャン装置を用いて光学的に位相を相殺し、送信される電力の測定値が80%低下した0.44mWを直径3cmのビーム全体で実現した。どちらのビームも6.25MHzで電子的に振幅変調した。
【0099】
ガラス製ペトリ皿のカバーを外し、約19℃〜20℃の室温かつ36%の湿度で溶液をゆっくりと蒸発させて乾燥させた。得られた材料が乾燥すると純粋で透明なガラス状態になった。次に、レーザー処理したアトルバスタチン遊離酸をPXRDを用いて調べた。PXRDパターンは、図16に示してあるように、結晶アトルバスタチン遊離酸に特徴的なピークを持たないため、非結晶であった。
【0100】
本発明の方法で調製した非結晶アトルバスタチン遊離酸を次にFTIR分光によって分析した。得られたFTIRスペクトルを図18に示す。図18に示したFTIRスペクトルを図17に示した結晶アトルバスタチン遊離酸のFTIRスペクトルと比較すると、処理したアトルバスタチン遊離酸は、結晶アトルバスタチン遊離酸と同じ化学物質であることが確認される。参照用アトルバスタチン遊離酸のFTIRスペクトルは、レーザー処理した非結晶アトルバスタチン遊離酸のスペクトルよりもピークがいくぶんかより鋭い。しかし上述のように、FTIR分光吸収帯の広がりは、材料の結晶形態と比べて非結晶に典型的である。なぜなら結晶格子に限定されない分子は運動の自由度がより大きいからである。
【0101】
比較例:アトルバスタチン遊離酸
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例4のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたアトルバスタチン遊離酸のPXRDパターンを図59に示す。図59のPXRDパターンは、図15に示した対照サンプルと同じピークを有する。得られたアトルバスタチン遊離酸のFTIR分析も実施し、材料がアトルバスタチン遊離酸であることを確認した。結果は、非結晶アトルバスタチン遊離酸が実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0102】
実施例5:非結晶アトルバスタチンカルシウムの調製
コレステロールを低下させる利点があるということで最初に開発されたアトルバスタチンは、形態23またはアモルファスBと表記されるアモルファス固体状態としてのアトルバスタチンに関するものであった。アトルバスタチンカルシウムの結晶形態が開発されたとき、形態23に関して臨床試験がすでに完了して非常に好ましい結果が得られていた。形態23を用いて調製した錠剤は、結晶化合物で製造した錠剤と比較すると吸収に差のあることが生物学的等価性試験によってわかったが、吸収の程度は、結晶形態を臨床使用する許可を得る上で十分に同等であることがわかった。アトルバスタチンカルシウムは非結晶形態で製造されてきたが、本発明の方法は、従来の方法と比べて製造法と生成される非結晶状態の両方に利点がある。そのため、このより溶けやすくてより吸収が早い形態を使用する可能性が再び開かれる。
【0103】
参照用の結晶アトルバスタチンカルシウムからなる対照サンプルをPXRDとFTIR分光によって分析した。結晶アトルバスタチンカルシウムのPXRDスペクトルは、結晶形態に典型的なPXRDピークを特徴としていた。そのスペクトルを図19に示す。結晶アトルバスタチンカルシウムのFTIRスペクトルを図21に示す。
【0104】
9000rpmで11分間にわたって撹拌しつつ160℃に加熱することにより、10mgの結晶アトルバスタチンカルシウムのサンプルを444mgの無水エタノールに溶かした。この溶液を60mm×15mmのガラス製ペトリ皿に移し、ガラス製カバーで覆い、100℃のホットプレートの上に載せた。
【0105】
中心波長が408nmのダイオードレーザーを振幅変調した光を溶液に1分間当てた。次に、中心波長が674nmのダイオードレーザーを振幅変調した光を溶液に1分間当てた後、振幅変調した408nmのレーザー光を1分間、次いで振幅変調した674nmのレーザー光を1分間という別のサイクルを続け、その後、振幅変調した408nmのレーザー光を30秒間、次いで振幅変調した674nmのレーザー光を30秒間という最終サイクルを実施した。これらサイクルの間、それぞれのストラチャン装置から25cmの距離でサンプルをゆっくりと回転させながら約3cmに広がった各ビームの中を通過させた。408nmのビームは、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後のピーク電力が2.44mWであった。408nmのビームの出力は、ストラチャン装置を用いて光学的に位相を相殺し、送信される電力の測定値が80%低下した0.48mWを直径3cmのビーム全体で実現した。674nmのダイオードレーザーのビームをソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過させた。ストラチャン装置を用いて674nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、直径3cmのビーム全体で約0.48mWの電力を実現した。どちらのビームも6.25MHzで電子的に振幅変調した。
【0106】
一連のレーザー処理の後、ガラス製ペトリ皿のカバーを外し、約19℃〜20℃の室温かつ32%の湿度で溶液をゆっくりと蒸発させて乾燥させた。得られた材料が乾燥すると透明なガラス状態になった。次に、レーザー処理したアトルバスタチンカルシウムをPXRDを利用して調べ、非結晶であることを見いだした。PXRDパターンを図20に示す。
【0107】
次に、レーザー処理した非結晶アトルバスタチンカルシウムをFTIR分光で分析した。得られたFTIRスペクトルを図22に示す。この非結晶アトルバスタチンカルシウムのFTIRスペクトルを図21に示した結晶アトルバスタチンカルシウムのFTIRスペクトルと比較すると、レーザー処理した材料がアトルバスタチンカルシウムであることが明らかになる。レーザー処理した非結晶アトルバスタチンカルシウムのFTIRスペクトルは、ある化合物の非結晶形態と結晶形態の比較から予想されるように、結晶アトルバスタチンカルシウムのスペクトルと比べていくらかピークが広がっている。
【0108】
アトルバスタチンカルシウムに関する以前の研究では、さまざまな方法で製造されたこの化合物の非結晶状態の間に違いが見られた。形態23が本発明者によって最初に試験された形態であったのに対し、別の研究室で製造された最も一般的な非結晶形態は形態27として知られている。図23では形態23と形態27のPXRDパターンを比較してあり、反射の広い帯が形態23ではいくらか異なっていてより結晶的に見えることがわかる。この印象は、形態23がより秩序だっていることを証明する図24に示した小角X線散乱(SAXS)でさらに確認される。順番にレーザー処理したアトルバスタチンカルシウムに関する図20に示したPXRDは、形態23および形態27から得られたパターンとは異なるパターンを有する。これは、この形態が、調べたあらゆる形態のうちで最低レベルの残留結晶性を持つことを示唆している。
【0109】
形態23と形態27を用いた溶解度の研究から、溶かしたときの最初の1時間における形態23の水への溶解度は市販の結晶アトルバスタチンカルシウムの3.2倍であり、形態27の水への溶解度は4.3倍であることがわかった。短い範囲の秩序がさらに少なくなっているため、レーザー処理したアトルバスタチンカルシウムの高度非結晶ガラス形態は、これら2つの形態よりも溶解度と生物学的利用能がさらに大きくなることが予想される。この増大は、望む臨床効果を維持または増大させるのに用量を減らせる可能性とともに、副作用が低減または除去されるという利点を提供する。
【0110】
高度非結晶ガラス状アトルバスタチンカルシウムを製造するこの方法を他の方法と比べたときのさらに別の利点として、化合物が熱分解する傾向または化合物が不安定になる傾向を小さくするため、非常に少ないエネルギーしか加えずにシステムと音響共鳴させることがある。そのため環境にとって毒性があったり有害だったり高価だったりする溶媒を用いる必要がない。固体状態の残留溶媒は、市場で用いられている他の溶媒と比べて環境へのリスクが実質的にないであろう。溶媒が除去されると、透明なガラス状態は非常に安定で再結晶化する傾向が無視できるように見える。そのため大規模に製造して頒布する実用性が増大する。
【0111】
比較例:アトルバスタチンカルシウム
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例5のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたアトルバスタチンカルシウムのPXRDパターンを図60に示す。図60のPXRDパターンは、図19に示した対照サンプルと同じピークを有する。得られたアトルバスタチンカルシウムのFTIR分析も実施し、材料がアトルバスタチンカルシウムであることを確認した。結果は、非結晶アトルバスタチンカルシウムが実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0112】
実施例6:非結晶ロスバスタチンカルシウムの調製
参照用の標準ロスバスタチンカルシウムという対照サンプルをPXRDとFTIR分光で分析した。このサンプルから得られたPXRDスペクトルは、反射特性の広い帯が現在製造されているアモルファスなロスバスタチンカルシウムと同じであった。それを図25に示す。ロスバスタチンカルシウムのこのサンプルから得られたFTIRスペクトルを図27に示す。
【0113】
9000rpmで12.5分間にわたって撹拌しながら160℃に加熱することにより、10mgの参照用ロスバスタチンカルシウム化合物サンプルを530mgの無水エタノールに溶かした。この溶液を60mm×15mmのガラス製ペトリ皿に移し、ガラス製カバーで覆い、95℃のホットプレートの上に載せた。
【0114】
最初に、中心波長が408nmの振幅変調したダイオードレーザー光をロスバスタチンカルシウム溶液に1分間当てた。次に、中心波長が674nmの振幅変調したダイオードレーザー光をロスバスタチンカルシウム溶液に1分間当てた。これらのサイクルの後に、波長408nmの振幅変調したレーザー光を1分間という別のサイクル、次いで波長674nmの振幅変調したレーザー光を1分間という別のサイクルを続け、その後、408nmの振幅変調したレーザー光を30秒間という最終サイクル、次いで674nmの振幅変調したレーザー光を30秒間という別のサイクルを実施した。これらサイクルの間、それぞれのストラチャン装置から25cmの距離でサンプルをゆっくりと回転させながら約3cmに広がった各ビームの中を通過させた。408nmダイオードレーザーからの発光は、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後のピーク電力が2.17mWであった。408nmのビームの出力は、ストラチャン装置を用いて光学的に位相を相殺し、送信される電力の測定値が80%低下した0.42mWを直径3cmのビーム全体で実現した。674nmのダイオードレーザーの発光をソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過させた。ストラチャン装置を用いて674nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、直径3cmのビーム全体で約0.48mWの電力を実現した。どちらのビームも6.25MHzで電子的に振幅変調した。
【0115】
一連のレーザー処理の後にガラス製ペトリ皿のカバーを外し、約20℃〜21℃かつ湿度35%で溶液をゆっくりと蒸発させて乾燥させた。得られた材料が乾燥すると透明なガラス状態になった。レーザー処理したロスバスタチンカルシウムに関する図26のPXRD分析結果には、結晶化合物に特徴的なPXRDのピークがない。これは、レーザー処理したロスバスタチンが非結晶であることの確認となっている。
【0116】
レーザー処理したロスバスタチンカルシウムのFTIRスペクトルを図28に示す。レーザー処理したロスバスタチンカルシウムのFTIRスペクトルを図27に示した参照用の固体状態のロスバスタチンカルシウムのFTIRスペクトルと比較すると、レーザー処理した材料がロスバスタチンカルシウムであることが確認される。
【0117】
PXRDパターンを固体状態のロスバスタチンカルシウムとレーザー処理したロスバスタチンとを比較すると、レーザー処理したロスバスタチンカルシウムでは、固体状態のロスバスタチンカルシウムで観察される広い反射帯がぼけるか欠如している。これは、レーザー処理したロスバスタチンカルシウムでは短い範囲の秩序がより一層少なくなっていることを示唆している。レーザー処理したアトルバスタチンカルシウムに関する議論と同様、処理していないロスバスタチンカルシウムと比べてレーザー処理したロスバスタチンカルシウムでは残留結晶度が小さくなっていることから、レーザー処理したロスバスタチンカルシウムは、現在製造されている固体状態のロスバスタチンカルシウムよりも溶けやすくて生物学的利用能がより大きいことが予測される。しかし化合物の性能に関して臨床的に有意となるのに十分であるかを確認する試験がさらに必要である。
【0118】
実施例7:共アモルファス状エゼチミブ/シンバスタチンの調製
2種類以上の化合物を非常によく混合した非結晶混合物を共アモルファス・ガラス状態にしたものを、本発明のレーザー処理によって製造した。この共アモルファスの組み合わせに関する結果を解釈するための比較データを、エゼチミブとシンバスタチンそれぞれの処理していない独立した参照サンプルと、本発明の方法で処理したエゼチミブとシンバスタチンの独立したサンプルに関するPXRDとFTIRの分析から得た。参照用の結晶エゼチミブのPXRDパターンを図11に示してあり、この参照サンプルは、結晶化合物の特徴的なPXRDピークを有する。レーザー処理した非結晶エゼチミブのPXRDパターンを図13に示す。参照用の結晶シンバスタチンのサンプルのPXRDパターンを図7に示す。レーザー処理した非結晶シンバスタチンのPXRDパターンを図9に示す。
【0119】
参照用の結晶エゼチミブのサンプルのFTIRスペクトルを、レーザー処理した非結晶エゼチミブのFTIRスペクトルとともに図12に示す。参照用の結晶シンバスタチンのサンプルのFTIRスペクトルを図8に示す。レーザー処理した非結晶シンバスタチンのFTIRスペクトルを図10に示す。特徴的な反射ピークが非結晶状態の化合物のPXRDパターンでは消えるため、FTIR分光によって化合物の同定が可能になるとともに、非結晶状態の別の証拠が、結晶状態と比べたときに非結晶で起こる吸収帯の広がりによって示される。
【0120】
エゼチミブ:シンバスタチンの重量比を1:1、1:2、1:4、1:8にして本発明の方法でエゼチミブとシンバスタチンの共アモルファス・サンプルを調製した。
【0121】
重量比が1:1のエゼチミブ:シンバスタチンに関しては、140℃に加熱したプレート上で磁気撹拌機を用いて7.5分間にわたって9000rpmで撹拌しながら、20mgの結晶エゼチミブのサンプルと20mgの結晶シンバスタチンのサンプルを753mgの無水エタノールに溶かした後、さらに11分間にわたって9000rpmで撹拌した。この溶液を20℃まで冷却した後、洗浄器を用いて濾過して残留結晶をすべて除去した。次に、このサンプル中に約10mgのエゼチミブと10mgのシンバスタチンを得るため、ガラス製カバーで覆った60mm×15mmのガラス製ペトリ皿の中に溶液の半分をデカントした。
【0122】
重量比が1:2のエゼチミブ:シンバスタチンに関しては、140℃に加熱したプレート上で磁気撹拌機を用いて8分間にわたって9000rpmで撹拌しながら、10mgの対照用結晶エゼチミブと20mgの結晶シンバスタチンを698mgの無水エタノールに溶かした後、さらに10分間にわたって9000rpmで撹拌した。この溶液を20℃まで冷却した後、洗浄器を用いて濾過して残留結晶をすべて除去した。次に溶液の半分をガラス製カバーで覆った60mm×15mmのガラス製ペトリ皿の中にデカントした。
【0123】
重量比が1:4のエゼチミブ:シンバスタチンに関しては、140℃に加熱したプレート上で磁気撹拌機を用いて8分間にわたって9000rpmで撹拌しながら、5mgの結晶エゼチミブと20mgの結晶シンバスタチンを663mgの無水エタノールに溶かした後、さらに10分間にわたって9000rpmで撹拌した。この溶液を20℃まで冷却した後、洗浄器を用いて濾過して残留結晶をすべて除去した。次に溶液の半分をガラス製カバーで覆った60mm×15mmのガラス製ペトリ皿の中にデカントした。
【0124】
重量比が1:8のエゼチミブ:シンバスタチンに関しては、140℃に加熱したプレート上で磁気撹拌機を用いて3分間にわたって9000rpmで撹拌しながら、2.5mgの結晶エゼチミブと20mgの結晶シンバスタチンを502mgの無水エタノールに溶かした後、さらに11分間にわたって9000rpmで撹拌した。この溶液を20℃まで冷却した後、洗浄器を用いて濾過して残留結晶をすべて除去した。次に溶液の半分をガラス製カバーで覆った60mm×15mmのガラス製ペトリ皿の中にデカントした。
【0125】
最初に、エゼチミブ/シンバスタチンの比が1:1、1:2、1:4、1:8であるこれらのエゼチミブ/シンバスタチン・サンプルを中心波長が約674nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間にわたって処理し、次いで中心波長が約408nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間にわたって処理した。そのとき、それぞれのストラチャン装置から25cmの距離でサンプルをゆっくりと回転させながら約3cmに広がった各ビームの中を通過させた。674nmのダイオードレーザーのビームをソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過させた。ストラチャン装置を用いて674nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、直径3cmのビーム全体で0.48mWの電力を実現した。408nmのビームは、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後のピーク電力が0.10mWであった。408nmのビームの出力は、ストラチャン装置を用いて光学的に位相を相殺し、送信される電力の測定値が80%低下した0.02mWを直径3cmのビーム全体で実現した。どちらのビームも6.25メガヘルツ(MHz)で電子的に振幅変調した。
【0126】
溶液に対する一連のレーザー処理の後、ガラス製ペトリ皿のカバーを外し、約20℃〜21℃かつ湿度40〜43%で溶液をゆっくりと蒸発させて乾燥させた。4通りのエゼチミブ/シンバスタチンのサンプルすべてで得られた材料が乾燥すると純粋で透明なガラス状態になった。エゼチミブ/シンバスタチンの比が1:1、1:2、1:4、1:8のエゼチミブ/シンバスタチン・サンプルを偏光顕微鏡(PLM)で調べると、どれも完全に等方的であるように見えた。これは、調べたすべての処理済サンプルが非結晶であり、したがって共アモルファスであることを示している。
【0127】
図29は、レーザー処理した重量比が1:1のエゼチミブ/シンバスタチンのPXRDパターンを示している。これは、エゼチミブとシンバスタチンのこの組み合わせが非結晶であることを証明している。図30は、レーザー処理した重量比が1:2のエゼチミブ/シンバスタチンのPXRDパターンを示している。これは、エゼチミブとシンバスタチンのこの組み合わせが非結晶であることを証明している。図31は、レーザー処理した重量比が1:4のエゼチミブ/シンバスタチンのPXRDパターンを示している。これは、エゼチミブとシンバスタチンのこの組み合わせが非結晶であることを証明している。図32は、レーザー処理した重量比が1:8のエゼチミブ/シンバスタチンのPXRDパターンを示している。これは、エゼチミブとシンバスタチンのこの組み合わせが非結晶であることを証明している。
【0128】
したがって本発明の方法により、現在臨床で使用されている重量比1:1、1:2、1:4、1:8の4通りすべてにおいて、高度に共アモルファスな状態になったエゼチミブ/シンバスタチンの組み合わせが得られた。
【0129】
この方法を繰り返し、最初にエゼチミブとシンバスタチンの溶液を408nmのダイオードレーザーからの変調したレーザー光線で処理し、次いで674nmのダイオードレーザーからの変調したレーザー光線で処理した。これらの試験の間、重量比が1:1、1:2、1:4、1:8の上記溶液の残り半分にレーザーを逆の順番で当てるプロトコルを繰り返した。一連のレーザー処理は上に記載したのと同じだが、408nmのダイオードレーザーを2.5分間当てた後に674nmのダイオードレーザーを2.5分間当てた点が異なっていた。
【0130】
一連のレーザー処理の後、ガラス製ペトリ皿のカバーを外し、約20℃〜22℃かつ湿度40〜47%で溶液をゆっくりと蒸発させて乾燥させた。4通りのエゼチミブ/シンバスタチンのサンプルすべてで得られた材料が乾燥すると純粋で透明なガラス状態になった。エゼチミブ/シンバスタチンの比が1:1、1:2、1:4、1:8のエゼチミブ/シンバスタチン・サンプルを偏光顕微鏡で調べると、どれも完全に等方的であるように見えた。これは、調べたすべての処理済サンプルが非結晶であり、したがって共アモルファスであることを示している。
【0131】
図33は、レーザー処理した重量比が1:1のエゼチミブ/シンバスタチンのPXRDパターンを示している。これは、エゼチミブとシンバスタチンのこの組み合わせが共アモルファスであることを証明している。図34は、レーザー処理した重量比が1:2のエゼチミブ/シンバスタチンのPXRDパターンを示している。これは、エゼチミブとシンバスタチンのこの組み合わせが共アモルファスであることを証明している。図35は、レーザー処理した重量比が1:4のエゼチミブ/シンバスタチンのPXRDパターンを示している。これは、エゼチミブとシンバスタチンのこの組み合わせが共アモルファスであることを証明している。図36は、レーザー処理した重量比が1:8のエゼチミブ/シンバスタチンのPXRDパターンを示している。これは、エゼチミブとシンバスタチンのこの組み合わせが共アモルファスであることを証明している。
【0132】
次に、エゼチミブ/シンバスタチンの共アモルファスな組み合わせをフーリエ変換赤外(FTIR)分光を利用して分析した。図37、図38、図39、図40は、比がそれぞれ1:1、1:2、1:4、1:8であるレーザー処理した共アモルファス状エゼチミブ/シンバスタチン・サンプルのFTIRスペクトルを示している。図41、図42、図43、図44は、比がそれぞれ1:1、1:2、1:4、1:8であるレーザー処理した共アモルファス状エゼチミブ/シンバスタチン・サンプルのFTIRスペクトルを示している。これらのサンプルそれぞれの中の化合物比は、1:1、1:2、1:4、1:8と大きくなっていく。エゼチミブ/シンバスタチンのこれら組み合わせすべてのFTIRスペクトルは、エゼチミブとシンバスタチンの両方が共アモルファス・サンプルの中に存在していて完全に混合されていることを証明している。これらサンプルのそれぞれが非結晶形態であることに合致するように、いくつかの吸光度の線がいくらか広がっている。化合物の比が、シンバスタチンがより優勢になる方向に変化するにつれ、シンバスタチンのスペクトル帯は、組成物中の重量比の変化から予想されるように、エゼチミブのスペクトル帯と比べて相対的に強くなる。
【0133】
共アモルファス・ガラスの組み合わせは、この方法によって製造されると、室温保管条件で非常に安定に見え、再結晶する傾向は観察されない。この実施例で用いるさまざまな比の高度非結晶性共アモルファス形態は容易に製造されるため、広範な別の比も容易に製造することができよう。エゼチミブとシンバスタチンの共アモルファス組成物の製造と安定化は容易であることが観察されたため、大規模な製造へと生産を増やすことは比較的簡単であることが予想される。
【0134】
比較例:エゼチミブ/シンバスタチン
レーザー光線を当てなかったことを除き、重量比がそれぞれ1:1、1:2、1:4、1:8であるエゼチミブ/シンバスタチン・サンプルについて実施例7のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られた重量比がそれぞれ1:1、1:2、1:4、1:8であるエゼチミブ/シンバスタチン・サンプルのPXRDパターンをそれぞれ図80、図81、図82、図83に示す。得られたエゼチミブ/シンバスタチン・サンプルそれぞれのFTIR分析も実施し、各サンプルがエゼチミブとシンバスタチンで構成されていることを確認した。結果は、共アモルファス状エゼチミブ/シンバスタチンが実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0135】
実施例8:共アモルファス・ガラス状エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウムの調製
この共アモルファスの組み合わせに関する結果を解釈するための比較データを、エゼチミブとアトルバスタチンカルシウムそれぞれの処理していない独立した参照サンプルと、本発明の方法で処理したエゼチミブとアトルバスタチンカルシウムの独立したサンプルに関するPXRDとFTIRの分析から得た。参照用の結晶エゼチミブのPXRDパターンを図11に示す。レーザー処理した非結晶エゼチミブのPXRDパターンを図13に示す。結晶アトルバスタチンカルシウムのPXRDパターンを図19に示す。レーザー処理した非結晶アトルバスタチンカルシウムのPXRDパターンを図20に示す。
【0136】
参照用の結晶エゼチミブのFTIRスペクトルを、レーザー処理した非結晶エゼチミブのFTIRスペクトルとともに図12に示す。参照用の結晶アトルバスタチンカルシウムのFTIRスペクトルを図21に示す。レーザー処理した非結晶アトルバスタチンカルシウムのFTIRスペクトルを図22に示す。
【0137】
140℃に加熱したプレートの上で磁気撹拌機を用いて9000rpmで12.5分間にわたって撹拌しながら、50mgの結晶エゼチミブのサンプルと50mgの結晶アトルバスタチンカルシウムのサンプルを2008mgの無水エタノールに溶かした。次にこの溶液を室温まで冷却し、洗浄器を用いて濾過して残留結晶をすべて除去した。次に、処理したサンプルの中に約10mgのエゼチミブと10mgのアトルバスタチンカルシウム(すなわち1:1の重量比)を得るため、溶液の約20%を、100℃に加熱したプレート上の60mm×15mmのガラス製ペトリ皿の中にデカントし、ガラス製カバーで覆った。
【0138】
最初に、このサンプルを中心波長が408nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間処理し、次に、中心波長が674nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間処理した。そのとき、それぞれのストラチャン装置から25cmの距離でサンプルをゆっくりと回転させながら約3cmに広がった各ビームの中を通過させた。408nmのダイオードレーザーのビームは、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後のピーク電力が0.88mWであった。ストラチャン装置を用いて408nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、直径3cmのビーム全体で0.17mWという電力測定値を実現した。674nmのダイオードレーザーのビームをソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過させた。ストラチャン装置を用いて674nmのビームの出力の位相を光学的に相殺し、送信される電力の測定値が80%低下した約0.48mWを直径3cmのビーム全体で実現した。どちらのビームも6.25MHzで電子的に振幅変調した。
【0139】
一連のレーザー処理の後、ガラス製ペトリ皿のカバーを外し、約22℃の温度かつ24%の湿度で溶液をゆっくりと蒸発させて乾燥させた。得られたエゼチミブ/アトルバスタチンのサンプルが乾燥すると純粋で透明なガラス状態になった。図45は、レーザー処理した重量比1:1のエゼチミブ/アトルバスタチンカルシウムのPXRDパターンを示している。これは、エゼチミブとアトルバスタチンカルシウムの組み合わせが非結晶であることを証明している。
【0140】
次に、共アモルファスのエゼチミブ/アトルバスタチンカルシウムという組み合わせに対してFTIR分析を実施した。図46は、レーザー処理した重量比1:1のエゼチミブ/アトルバスタチンカルシウムのFTIRスペクトルを示している。これは、エゼチミブとアトルバスタチンカルシウムの両方が存在していて完全に混合されていることを証明している。それぞれの化合物が非結晶形態であることに合致するように、いくつかの吸光度の線がいくらか広がっている。
【0141】
エゼチミブ/アトルバスタチンが1:1の比になった共アモルファスの組み合わせは、室温保管条件で非常に安定であり、再結晶する傾向は観察されないことがわかった。化合物のこの組み合わせの高度非結晶共アモルファス形態と、個々の化合物の非結晶ガラス形態は容易に製造されるため、広範な別の比も容易に製造することができよう。化合物のこの組み合わせの共アモルファス形態の製造と安定化は容易であることが観察されたため、この方法を適用するモジュールを複製して大規模な製造へと生産を増やすことが容易に実現できると予想される。
【0142】
比較例:エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例8のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたエゼチミブ/アトルバスタチンカルシウムのPXRDパターンを図61に示す。図61のPXRDパターンは、図11に示したエゼチミブと図19に示したアトルバスタチンカルシウムのPXRDピークに対応するピークを有する。得られたエゼチミブ/アトルバスタチンカルシウムのFTIR分析も実施し、材料がエゼチミブとアトルバスタチンカルシウムであることを確認した。結果は、共アモルファス状エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウムが実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0143】
実施例9:共アモルファス状エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸の調製
この共アモルファスの組み合わせに関する結果を解釈するための比較データを、エゼチミブとアトルバスタチン遊離酸それぞれの処理していない独立した参照サンプルと、本発明の方法で処理したエゼチミブとアトルバスタチン遊離酸の独立したサンプルに関するPXRDとFTIRの分析から得た。参照用の結晶エゼチミブのPXRDパターンを図11に示す。レーザー処理した非結晶エゼチミブのPXRDパターンを図13に示す。結晶アトルバスタチン遊離酸のPXRDパターンを図15に示す。レーザー処理した非結晶アトルバスタチン遊離酸のPXRDパターンを図16に示す。
【0144】
参照用の結晶エゼチミブのサンプルのFTIR分析から得たスペクトルを、レーザー処理した非結晶エゼチミブのFTIRスペクトルとともに図12に示す。結晶アトルバスタチン遊離酸のFTIRスペクトルを図17に示す。レーザー処理した非結晶アトルバスタチン遊離酸のFTIRスペクトルを図18に示す。
【0145】
140℃に加熱したプレートの上で磁気撹拌機を用いて9000rpmで12.5分間にわたって撹拌しながら、50mgの結晶エゼチミブのサンプルと50mgの結晶アトルバスタチン遊離酸のサンプルを1999mgの無水エタノールに溶かした。次にこの溶液を室温まで冷却し、洗浄器を用いて濾過して残留結晶をすべて除去した。次に、処理したサンプルの中に約10mgのエゼチミブと10mgのアトルバスタチン遊離酸(すなわちエゼチミブとアトルバスタチン遊離酸の重量比が1:1)を得るため、溶液の約20%を、100℃に加熱したプレート上の60mm×15mmのガラス製ペトリ皿の中にデカントし、ガラス製カバーで覆った。
【0146】
最初に、エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸のサンプルを中心波長が約674nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間処理し、次に、中心波長が約408nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間処理した。そのとき、それぞれのストラチャン装置から25cmの距離でサンプルをゆっくりと回転させながら約3cmに広がった各ビームの中を通過させた。674nmダイオードレーザーのビームをソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過させた。ストラチャン装置を用いて674nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、3cmのビーム全体で約0.48mWの電力を実現した。408nmのビームは、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後のピーク電力が0.88mWであった。ストラチャン装置を用いて408nmのビームの出力の位相を光学的に相殺し、送信される電力の測定値が80%低下した0.17mWを3cmのビーム全体で実現した。どちらのビームも6.25MHzで電子的に振幅変調した。
【0147】
一連のレーザー処理の後、ガラス製ペトリ皿のカバーを外し、約22℃〜23℃の温度かつ20%の湿度で溶液をゆっくりと蒸発させて乾燥させた。得られたエゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸のサンプルが乾燥すると純粋で透明なガラス状態になった。図47は、レーザー処理した重量比1:1のエゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸のPXRDパターンを示している。これは、エゼチミブとアトルバスタチン遊離酸の組み合わせが非結晶であることを証明している。
【0148】
エゼチミブとアトルバスタチン遊離酸の共アモルファス組成物をFTIR分光で分析した。図48は、レーザー処理したエゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸のFTIRスペクトルを示している。これは、共アモルファス組成物の中にエゼチミブとアトルバスタチン遊離酸の両方が存在していて完全に混合されていることを証明している。共アモルファス組成物の中の各化合物が非結晶形態であることに合致するように、いくつかの吸光度の線がいくらか広がっている。
【0149】
重量比が1:1のエゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸の共アモルファス組成物は、室温保管条件で非常に安定であり、再結晶する傾向は観察されないことがわかった。エゼチミブとアトルバスタチン遊離酸の共アモルファス組成物は容易に製造されるため、広範な別の比も容易に製造することができよう。化合物のこの組み合わせの共アモルファス形態の製造と安定化は容易であることが観察されたため、この方法を適用するモジュールを複製して大規模な製造へと生産を増やすことが容易に実現できると予想される。
【0150】
比較例:エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例8のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたエゼチミブ/アトルバスタチンカルシウムのPXRDパターンを図62に示す。図62のPXRDパターンは、図11に示したエゼチミブと図15に示したアトルバスタチン遊離酸のPXRDピークに対応するピークを有する。得られたエゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸のFTIR分析も実施し、材料がエゼチミブとアトルバスタチン遊離酸であることを確認した。結果は、共アモルファス状エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸が実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0151】
実施例10:共アモルファス状エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウムの調製
この共アモルファスの組み合わせに関する結果を解釈するための比較データを、エゼチミブとロスバスタチンカルシウムそれぞれの処理していない参照サンプルと、本発明の方法で処理したエゼチミブとロスバスタチンカルシウムのサンプルに関するPXRDとFTIRの分析から得た。参照用の結晶エゼチミブのPXRDパターンを図11に示す。レーザー処理した非結晶エゼチミブのPXRDパターンを図13に示す。結晶ロスバスタチンカルシウムのPXRDパターンを図25に示す。レーザー処理した非結晶ロスバスタチンカルシウムのPXRDパターンを図26に示す。
【0152】
参照用の結晶エゼチミブのFTIRスペクトルを、レーザー処理した非結晶エゼチミブのFTIRスペクトルとともに図12に示す。参照用の結晶ロスバスタチンカルシウムのサンプルのFTIRスペクトルを図27に示す。レーザー処理した非結晶ロスバスタチンカルシウムのFTIRスペクトルを図28に示す。
【0153】
140℃に加熱したプレートの上で磁気撹拌機を用いて9000rpmで8分間にわたって撹拌しながら、10mgの結晶エゼチミブのサンプルと10mgのロスバスタチンカルシウムのサンプルを408mgの無水エタノールに溶かした後、磁気撹拌機を用いて9000rpmでさらに10分間にわたって撹拌した。処理したサンプルの中に約10mgのエゼチミブと10mgのアトロバスタチン遊離酸(すなわち1:1の重量比)を得るため、この溶液を、100℃に加熱したプレート上の60mm×15mmのガラス製ペトリ皿の中にデカントし、ガラス製カバーで覆った。
【0154】
最初に、エゼチミブ/ロスバスタチンのサンプルを中心波長が約674nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間処理し、次に、中心波長が約408nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間処理した。そのとき、それぞれのストラチャン装置から25cmの距離でサンプルをゆっくりと回転させながら約3cmに広がった各ビームの中を通過させた。674nmダイオードレーザーのビームをソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過させた。ストラチャン装置を用いて674nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、直径3cmのビーム全体で約.048mW電力を実現した。408nmのビームは、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後のピーク電力が2.15mWであった。ストラチャン装置を用いて408nmのビームの出力の位相を光学的に相殺し、送信される電力の測定値が80%低下した0.43mWを直径3cmのビーム全体で実現した。どちらのビームも6.25MHzで電子的に振幅変調した。
【0155】
エゼチミブとロスバスタチンカルシウムに対する一連のレーザー処理の後、ガラス製ペトリ皿のカバーを外し、19℃の温度かつ45%の湿度で溶液をゆっくりと蒸発させて乾燥させた。エゼチミブ/ロスバスタチンのサンプルに関して得られた材料が乾燥すると純粋で透明なガラス状態になった。図49は、レーザー処理した重量比1:1のエゼチミブ/ロスバスタチンのPXRDパターンを示している。これは、エゼチミブとロスバスタチンカルシウムの組み合わせが非結晶であることを証明している。
【0156】
次に、エゼチミブとロスバスタチンカルシウムの共アモルファス組成物をFTIR分光で分析した。図50は、レーザー処理したエゼチミブ/ロスバスタチンのFTIRスペクトルを示している。これは、組成物の中にエゼチミブとロスバスタチンカルシウムの両方が存在していて完全に混合されていることを証明している。各化合物が非結晶形態であることに合致するように、いくつかの吸光度の線がいくらか広がってもいる。
【0157】
重量比が1:1のエゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム組成物は、室温保管条件で非常に安定であり、再結晶する傾向は観察されないことがわかった。エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム組成物の共アモルファス形態と個々の化合物の非結晶ガラス形態は容易に製造されるため、広範な別の比も容易に製造することができよう。エゼチミブとロスバスタチンカルシウムの共アモルファス形態の製造と安定化は容易であることが観察されたため、この方法を適用するモジュールを複製して大規模な製造へと生産を増やすことが容易に実現できると予想される。
【0158】
比較例:エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例10のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたエゼチミブ/ロスバスタチンカルシウムのPXRDパターンを図63に示す。図63のPXRDパターンは、図11に示したエゼチミブと図25に示したロスバスタチンカルシウムのPXRDピークに対応するピークを有する。得られたエゼチミブ/ロスバスタチンカルシウムのFTIR分析も実施し、材料がエゼチミブとロスバスタチンカルシウムであることを確認した。結果は、共アモルファス状エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウムが実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0159】
実施例11:共アモルファス状エゼチミブ/シンバスタチン/アスピリンの調製
この共アモルファスの組み合わせに関する結果を解釈するための比較データを、エゼチミブとシンバスタチンとアスピリンそれぞれの処理していない参照サンプルと、本発明の方法で処理したエゼチミブとシンバスタチンとアスピリンのサンプルに関するPXRDとFTIRの分析から得た。参照用の結晶エゼチミブのPXRDパターンを図11に示す。レーザー処理した非結晶エゼチミブのPXRDパターンを図13に示す。結晶シンバスタチンのPXRDパターンを図7に示す。レーザー処理した非結晶シンバスタチンのPXRDパターンを図9に示す。結晶アスピリンのPXRDパターンを図1に示す。レーザー処理した非結晶アスピリンのPXRDパターンを図3に示す。
【0160】
結晶エゼチミブのFTIRスペクトルを、レーザー処理した非結晶エゼチミブのFTIRスペクトルとともに図12に示す。参照用の結晶シンバスタチンのサンプルのFTIRスペクトルを図8に示す。レーザー処理した非結晶シンバスタチンのFTIRスペクトルを図10に示す。結晶アスピリンのFTIRスペクトルを図2に示す。レーザー処理した非結晶アスピリンのFTIRスペクトルを図4に示す。
【0161】
140℃に加熱したプレートの上で磁気撹拌機を用いて9000rpmで12分間にわたって撹拌しながら、10mgの結晶エゼチミブのサンプルと5mgの結晶シンバスタチンのサンプルと5mgの結晶アスピリンのサンプルを1000mgの無水エタノールに溶かした。次にこの溶液を室温まで冷却し、洗浄器を用いて濾過して残留結晶をすべて除去した。次に、エゼチミブ/シンバスタチン/アスピリンのサンプルの中に10mgのエゼチミブと10mgのシンバスタチンと5mgのアスピリン(すなわち2:2:1の重量比)を得るため、この溶液を60mm×15mmのガラス製ペトリ皿の中にデカントし、ガラス製カバーで覆った。
【0162】
最初に、エゼチミブ/シンバスタチン/アスピリンのサンプルを中心波長が約408nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間にわたって処理した後、中心波長が約674nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間にわたって処理した。そのとき、それぞれのストラチャン装置から25cmの距離でサンプルをゆっくりと回転させながら約3cmに広がった各ビームの中を通過させた。408nmのダイオードレーザーのビームは、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後のピーク電力が2.61mWであった。ストラチャン装置を用いて408nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、直径3cmのビーム全体で約0.52mWの電力を実現した。674nmダイオードレーザーのビームをソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過させた。ストラチャン装置を用いて674nmのビームの出力の位相を光学的に相殺し、送信される電力の測定値が80%低下した約0.48mWを直径3cmのビーム全体で実現した。どちらのビームも6.25MHzで電子的に振幅変調した。
【0163】
一連のレーザー処理の後、ガラス製ペトリ皿のカバーを外し、21℃の温度かつ26%の湿度で溶液をゆっくりと蒸発させて乾燥させた。エゼチミブ/シンバスタチン/アスピリンのサンプルに関して得られた材料が乾燥すると純粋で透明なガラス状態になった。図51は、レーザー処理した重量比2:2:1のエゼチミブ/シンバスタチン/アスピリンのPXRDパターンを示している。これは、エゼチミブ、シンバスタチン、アスピリンの組成物が非結晶であることを証明している。
【0164】
次に、エゼチミブとシンバスタチンとアスピリンの共アモルファス組成物をFTIR分光で分析した。図52は、レーザー処理したエゼチミブ/シンバスタチン/アスピリン共アモルファス組成物のFTIRスペクトルを示している。これは、これら3つの化合物が存在していて完全に混合されていることを証明している。非結晶形態であることに合致するように、いくつかの吸光度の線がいくらか広がってもいる。
【0165】
重量比が2:2:1のエゼチミブ/シンバスタチン/アスピリン共アモルファス・ガラス組成物は、室温保管条件で非常に安定であり、再結晶する傾向は観察されないことがわかった。化合物のこの組み合わせの共アモルファス形態の製造と安定化は容易であることが観察されたため、製造を大規模にすることが容易に実現できると予想される。
【0166】
比較例:エゼチミブ/シンバスタチン/アスピリン
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例11のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたエゼチミブ/シンバスタチン/アスピリンのPXRDパターンを図68に示す。図68のPXRDパターンは、図11に示したエゼチミブ、図18に示したシンバスタチン、図1に示したアスピリンのPXRDピークに対応するピークを有する。得られたエゼチミブ/シンバスタチン/アスピリンのFTIR分析も実施し、結晶材料がエゼチミブとシンバスタチンとアスピリンであることを確認した。結果は、共アモルファス状エゼチミブ/シンバスタチン/アスピリンが実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0167】
実施例12:共アモルファス状エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム/アスピリンの調製
この共アモルファスの組み合わせに関する結果を解釈するための比較データを、エゼチミブとアトルバスタチンカルシウムとアスピリンそれぞれの処理していない参照サンプルと、本発明の方法で処理したこれら化合物の非結晶形態に関するPXRDとFTIRの分析から得た。参照用の結晶エゼチミブのPXRDパターンを図11に示す。レーザー処理した非結晶エゼチミブのPXRDパターンを図13に示す。結晶アトルバスタチンカルシウムのPXRDパターンを図19に示す。レーザー処理した非結晶アトルバスタチンカルシウムのPXRDパターンを図20に示す。結晶アスピリンのPXRDパターンを図1に示す。レーザー処理した非結晶アスピリンのPXRDパターンを図3に示す。
【0168】
参照用の結晶エゼチミブのFTIRスペクトルを、レーザー処理した非結晶エゼチミブのFTIRスペクトルとともに図12に示す。参照用の結晶アトルバスタチンカルシウムのサンプルのFTIRスペクトルを図21に示す。レーザー処理した非結晶アトルバスタチンカルシウムのFTIRスペクトルを図22に示す。参照用の結晶アスピリンのサンプルのFTIRスペクトルを図2に示す。レーザー処理した非結晶アスピリンのFTIRスペクトルを図4に示す。
【0169】
140℃に加熱したプレートの上で磁気撹拌機を用いて9000rpmで12分間にわたって撹拌しながら、50mgの結晶エゼチミブのサンプルと50mgの結晶アトルバスタチンカルシウムのサンプルと25mgの結晶アスピリンのサンプルを2400mgの無水エタノールに溶かした。次にこの溶液を室温まで冷却し、洗浄器を用いて濾過して残留結晶をすべて除去した。次に、エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム/アスピリンのサンプルの中に10mgのエゼチミブと10mgのアトルバスタチンカルシウムと5mgのアスピリン(すなわち2:2:1の重量比)を得るため、この溶液の20%を60mm×15mmのガラス製ペトリ皿の中にデカントし、ガラス製カバーで覆った。
【0170】
最初に、エゼチミブ、アトルバスタチンカルシウム、アスピリンを中心波長が約408nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間にわたって処理した後、中心波長が約674nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間にわたって処理した。そのとき、それぞれのストラチャン装置から25cmの距離でサンプルをゆっくりと回転させながら約3cmに広がった各ビームの中を通過させた。408nmのダイオードレーザーのビームは、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後のピーク電力が0.71mWであった。ストラチャン装置を用いて408nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、0.14mWという電力測定値を実現した。674nmダイオードレーザーのビームをソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過させた。ストラチャン装置を用いて674nmのビームの出力の位相を光学的に相殺し、送信される電力の測定値が80%低下した0.48mWを直径3cmのビーム全体で実現した。どちらのビームも6.25MHzで電子的に振幅変調した。
【0171】
一連のレーザー処理の後、ガラス製ペトリ皿のカバーを外し、20〜21℃の温度かつ34%の湿度で溶液をゆっくりと蒸発させて乾燥させた。得られたエゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム/アスピリン組成物が乾燥すると純粋で透明なガラス状態になった。図53は、レーザー処理した重量比2:2:1のエゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム/アスピリンのPXRDパターンを示している。これは、エゼチミブ、アトルバスタチンカルシウム、アスピリンの組成物が非結晶であることを証明している。
【0172】
次に、エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム/アスピリンの共アモルファス組成物をFTIR分光で分析した。図54は、レーザー処理したエゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム/アスピリンのFTIRスペクトルを示している。これは、これら3つの化合物が存在していて完全に混合されていることを証明している。非結晶形態であることに合致するように、いくつかの吸光度の線がいくらか広がってもいる。
【0173】
重量比が2:2:1のエゼチミブ/シンバスタチン/アスピリンは、室温保管条件で非常に安定であり、再結晶する傾向は観察されないことがわかった。化合物のこの組み合わせの共アモルファス形態の製造と安定化は容易であることが観察されたため、この方法を適用するモジュールを複製して大規模な製造へと生産を増やすことが容易に実現できると予想される。
【0174】
比較例:エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム/アスピリン
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例12のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたエゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム/アスピリンのPXRDパターンを図62に示す。図64のPXRDパターンは、図11に示したエゼチミブ、図19に示したアトルバスタチンカルシウム、図1に示したアスピリンのPXRDピークに対応するピークを有する。得られたエゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム/アスピリンのFTIR分析も実施し、結晶材料がエゼチミブとシンバスタチンカルシウムとアスピリンであることを確認した。結果は、共アモルファス状エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム/アスピリンが実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0175】
実施例13:共アモルファス状エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸/アスピリンの調製
この共アモルファスの組み合わせに関する結果を解釈するための比較データを、エゼチミブとアトルバスタチン遊離酸とアスピリンそれぞれの処理していない参照サンプルと、本発明の方法で処理したこれら化合物の非結晶形態に関するPXRDとFTIRの分析から得た。参照用の結晶エゼチミブのPXRDパターンを図11に示す。レーザー処理した非結晶エゼチミブのPXRDパターンを図13に示す。結晶アトルバスタチン遊離酸のPXRDパターンを図15に示す。レーザー処理した非結晶アトルバスタチン遊離酸のPXRDパターンを図16に示す。結晶アスピリンのPXRDパターンを図1に示す。レーザー処理した非結晶アスピリンのPXRDパターンを図3に示す。
【0176】
参照用の結晶エゼチミブのサンプルのFTIRスペクトルを、レーザー処理した非結晶エゼチミブのFTIRスペクトルとともに図12に示す。参照用の結晶アトルバスタチン遊離酸のサンプルのFTIRスペクトルを図17に示す。レーザー処理した非結晶アトルバスタチン遊離酸のFTIRスペクトルを図18に示す。結晶アスピリンのFTIRスペクトルを図2に示す。レーザー処理した非結晶アスピリンのFTIRスペクトルを図4に示す。
【0177】
140℃に加熱したプレートの上で磁気撹拌機を用いて9000rpmで12分間にわたって撹拌しながら、50mgの結晶エゼチミブのサンプルと50mgの結晶アトルバスタチン遊離酸のサンプルと25mgの結晶アスピリンのサンプルを2400mgの無水エタノールに溶かした。次にこの溶液を室温まで冷却し、洗浄器を用いて濾過して残留結晶をすべて除去した。次に、エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸/アスピリンのサンプルの中に10mgのエゼチミブと10mgのアトルバスタチン遊離酸と5mgのアスピリン(すなわち2:2:1の重量比)を得るため、この溶液の20%を60mm×15mmのガラス製ペトリ皿の中にデカントし、ガラス製カバーで覆った。
【0178】
最初に、エゼチミブ、アトルバスタチン遊離酸、アスピリンを中心波長が約408nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間にわたって処理した後、中心波長が約674nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間にわたって処理した。そのとき、それぞれのストラチャン装置から25cmの距離でサンプルをゆっくりと回転させながら約3cmに広がった各ビームの中を通過させた。408nmのダイオードレーザーのビームは、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後のピーク電力が0.71mWであった。ストラチャン装置を用いて408nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、0.14mWという電力測定を実現した。674nmダイオードレーザーのビームをソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過させた。ストラチャン装置を用いて674nmのビームの出力の位相を光学的に相殺し、送信される電力の測定値が80%低下した0.48mWを直径3cmのビーム全体で実現した。どちらのビームも6.25MHzで電子的に振幅変調した。
【0179】
一連のレーザー処理の後、ガラス製ペトリ皿のカバーを外し、20℃の温度かつ35%の湿度で溶液をゆっくりと蒸発させて乾燥させた。得られたエゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸/アスピリン組成物が乾燥すると純粋で透明なガラス状態になった。図55は、レーザー処理した重量比2:2:1のエゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸/アスピリンのPXRDパターンを示している。これは、この組成物が非結晶であることを証明している。
【0180】
次に、エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸/アスピリンの共アモルファス組成物をFTIR分光で分析した。図56は、レーザー処理したエゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸/アスピリンの共アモルファス組成物のFTIRスペクトルを示している。これは、これら3つの化合物が存在していて完全に混合されていることを証明している。非結晶形態であることに合致するように、いくつかの吸光度の線がいくらか広がってもいる。
【0181】
重量比が2:2:1のエゼチミブ/シンバスタチン/アスピリン共アモルファス組成物は、室温保管条件で非常に安定であり、再結晶する傾向は観察されないことがわかった。この組み合わせの高度非結晶共アモルファス形態は容易に製造されるため、広範な別の比も容易に製造することができよう。化合物のこの組み合わせの共アモルファス形態の製造と安定化は容易であることが観察されたため、この方法を適用するモジュールを複製して大規模な製造へと生産を増やすことが容易に実現できると予想される。
【0182】
比較例:エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸/アスピリン
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例13のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたエゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸/アスピリンのPXRDパターンを図65に示す。図65のPXRDパターンは、図11に示したエゼチミブ、図15に示したアトルバスタチン遊離酸、図1に示したアスピリンのPXRDピークに対応するピークを有する。得られたエゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸/アスピリンのFTIR分析も実施し、結晶材料がエゼチミブとシンバスタチン遊離酸とアスピリンであることを確認した。結果は、共アモルファス状エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸/アスピリンが実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0183】
実施例14:共アモルファス状エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリンの調製
この共アモルファスの組み合わせに関する結果を解釈するための比較データを、エゼチミブとロスバスタチンカルシウムとアスピリンそれぞれの処理していない参照サンプルと、本発明の方法で処理したこれら化合物の非結晶形態に関するPXRDとFTIRの分析から得た。参照用の結晶エゼチミブのPXRDパターンを図11に示す。レーザー処理した非結晶エゼチミブのPXRDパターンを図13に示す。参照用のロスバスタチンカルシウムのサンプルのPXRDパターンを図25に示す。レーザー処理した非結晶ロスバスタチンカルシウムのPXRDパターンを図26に示す。参照用の結晶アスピリンのサンプルのPXRDパターンを図1に示す。レーザー処理した非結晶アスピリンのPXRDパターンを図3に示す。
【0184】
参照用の結晶エゼチミブのサンプルのFTIRスペクトルを、レーザー処理した非結晶エゼチミブのFTIRスペクトルとともに図12に示す。参照用のロスバスタチンカルシウムのサンプルのFTIRスペクトルを図27に示す。レーザー処理した非結晶ロスバスタチンカルシウムのFTIRスペクトルを図28に示す。参照用の結晶アスピリンのサンプルのFTIRスペクトルを図2に示す。レーザー処理した非結晶アスピリンのFTIRスペクトルを図4に示す。
【0185】
140℃に加熱したプレートの上で磁気撹拌機を用いて9000rpmで12分間にわたって撹拌しながら、20mgの結晶エゼチミブのサンプルと20mgの結晶ロスバスタチンカルシウムのサンプルと10mgの結晶アスピリンのサンプルを2000mgの無水エタノールに溶かした。次にこの溶液を室温まで冷却し、洗浄器を用いて濾過して残留結晶をすべて除去した。次に、10mgのエゼチミブと10mgのロスバスタチンカルシウムと5mgのアスピリン(すなわち2:2:1の重量比)を含む溶液を得るため、この溶液の半分を60mm×15mmのガラス製ペトリ皿の中にデカントし、ガラス製カバーで覆った。
【0186】
最初に、エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリンを中心波長が約408nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間にわたって処理した後、中心波長が約674nmのダイオードレーザーからの振幅変調したレーザー光線で2.5分間にわたって処理した。そのとき、それぞれのストラチャン装置から25cmの距離でサンプルをゆっくりと回転させながら約3cmに広がった各ビームの中を通過させた。408nmのダイオードレーザーのビームは、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後のピーク電力が2.4mWであった。ストラチャン装置を用いて408nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、0.48mWという電力測定値を実現した。674nmダイオードレーザーのビームをソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過させた。ストラチャン装置を用いて674nmのビームの出力の位相を光学的に相殺し、送信される電力の測定値が80%低下した0.48mWを直径3cmのビーム全体で実現した。どちらのビームも6.25MHzで電子的に振幅変調した。
【0187】
レーザー処理の後、ガラス製ペトリ皿のカバーを外し、溶液が21℃の温度かつ30%の湿度で溶液をゆっくりと蒸発させて乾燥させた。得られたエゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリンの共アモルファス組成物が乾燥すると純粋で透明なガラス状態になった。図57は、レーザー処理した重量比2:2:1のエゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリンの共アモルファス組成物のPXRDパターンを示している。これは、この組成物が非結晶であることを証明している。
【0188】
次に、エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリンの共アモルファス組成物をFTIR分光で分析した。図58は、レーザー処理したエゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリンの共アモルファス組成物のFTIRスペクトルを示している。これは、これら3つの化合物が存在していて完全に混合されていることを証明している。非結晶形態であることに合致するように、いくつかの吸光度の線がいくらか広がってもいる。
【0189】
重量比が2:2:1のエゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリンの共アモルファス組成物は、室温保管条件で非常に安定であり、再結晶する傾向は観察されないことがわかった。化合物のこの組み合わせの共アモルファス形態の製造と安定化は容易であることが観察されたため、この方法を適用するモジュールを複製して大規模な製造へと生産を増やすことが容易に実現できると予想される。
【0190】
比較例:エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリン
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例13のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたエゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリンのPXRDパターンを図66に示す。図66のPXRDパターンは、図11に示したエゼチミブ、図25に示したロスバスタチンカルシウム、図1に示したアスピリンのPXRDピークに対応するピークを有する。得られたエゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリンのFTIR分析も実施し、結晶材料がエゼチミブとロスバスタチンカルシウムとアスピリンであることを確認した。結果は、共アモルファス状エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリンが実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0191】
実施例15:非結晶アトルバスタチンカルシウム/アスピリンの調製
ストラチャン装置によって変調して構造化した長波長のレーザー光の後に短波長のレーザー光を当てることにより、アトルバスタチンカルシウムとアスピリンの組み合わせの高度非結晶ガラス状態を作り出した。ストッパ付きのエーレンマイヤー・フラスコの中で10分間にわたって140℃に加熱して磁気撹拌機を用いて9000rpmで撹拌しながら、60mgの結晶アトルバスタチンカルシウムのサンプルと60mgの結晶アスピリンのサンプルを1000mgの無水エタノールに溶かした。この溶液を60mm×15mmの6つのガラス製ペトリ皿に均等に分割して処理したサンプルと処理しない対照サンプルを作り、各サンプルをガラス製のカバーで覆った。これらのサンプルを放置して室温まで冷やした。
【0192】
ストラチャン装置で変調した一連のレーザー光線を用いて重量比が1:1のアトルバスタチンカルシウム/アスピリンの1つのサンプルを処理した。振幅変調したダイオードレーザー光の最初の照射は、中心波長が674nmのダイオードレーザーからのものであった。振幅変調したダイオードレーザー光の2回目の照射は、中心波長が405nmのダイオードレーザーからのものであった。それぞれのストラチャン装置から25cmの距離で、約3cmに広がった各ビームの上方にサンプルを置いた。
【0193】
674nmのダイオードレーザーのビームは光学要素なしでピーク電力が4.80mWであり、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後に電力が約50%減少して2.4mWになった。ストラチャン装置を用いて408nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、直径3cmに広がったビーム全体で0.48mWという電力測定を実現した。405nmのビームは光学要素なしでピーク電力が11mWであり、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後に電力が約50%減少して5.5mWになった。ストラチャン装置を用いて405nmのビームの出力の位相を光学的に相殺し、送信される電力の測定値が80%低下した約1.1mWを直径3cmに広がったビーム全体で実現した。674nmのビームは6.25メガヘルツ(MHz)で電子的に振幅変調し、405nmのビームは10.8MHzで変調した。
【0194】
カバーをしたペトリ皿の中でアトルバスタチンカルシウムとアスピリンの溶液を674nmのビームで2.5分間にわたって処理した後、405nmのビームで2.5分間にわたって処理した。そのとき、サンプルをゆっくりと回転させながら、下から当てた各ビームの中を通過させた。次にカバーをサンプルから外し、約20℃の室温でゆっくりと蒸発させることによって固化させた。
【0195】
このサンプルの溶媒が蒸発すると、サンプル全体で透明なガラス状の外観が得られた。図69は、重量比を1:1にしたアトルバスタチンカルシウムとアスピリンの組み合わせのPXRDパターンが高度に非結晶であることを示している。図70は、このサンプルのFTIRスペクトルであり、個々の化合物の特徴的なピークが存在し、化合物の非結晶形態に典型的な帯の広がりがあることを示している。
【0196】
比較例:アトルバスタチンカルシウム/アスピリン
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例15のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたアトルバスタチンカルシウム/アスピリンのPXRDパターンを図71に示す。得られたアトルバスタチンカルシウム/アスピリンのFTIR分析も実施し、材料がアトルバスタチンカルシウムとアスピリンの組み合わせであることを確認した。結果は、非結晶アトルバスタチンカルシウム/アスピリンが実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0197】
アトルバスタチンカルシウムの分子量は1155.36であり、アスピリンの分子量は180.16である。この組み合わせの化合物は重量比が1:1だが、アスピリンの相対サイズをより小さくすると、アスピリンとアトルバスタチンカルシウムのモル比が6.413:1になる。
【0198】
実施例16:アトルバスタチン遊離酸/アスピリンの調製
ストラチャン装置によって変調して構造化した短波長のレーザー光の後に長波長のレーザー光を当てることにより、アトルバスタチン遊離酸とアスピリンの組み合わせの高度非結晶ガラス状態を作り出した。ストッパ付きのエーレンマイヤー・フラスコの中で10分間にわたって140℃に加熱して磁気撹拌機を用いて9000rpmで撹拌しながら、60mgの結晶アトルバスタチン遊離酸のサンプルと120mgの結晶アスピリンのサンプルを1800mgの無水エタノールに溶かした。この溶液を濾過した後、6つのポリスチレン製ペトリ皿に均等に分割して処理したサンプルと処理しない対照サンプルを作った。各サンプルをポリスチレン製のカバーで覆った。これらのサンプルを放置して室温まで冷やした。
【0199】
ストラチャン装置で変調した一連のレーザー光線を用いて例となる重量比が1:2のアトルバスタチン遊離酸/アスピリンのサンプルを処理した。振幅変調したダイオードレーザー光の最初の照射は、中心波長が405nmのダイオードレーザーからのものであった。振幅変調したダイオードレーザー光の2回目の照射は、中心波長が674nmのダイオードレーザーからのものであった。それぞれのストラチャン装置から25cmの距離で、約3cmに広がった各ビームの上方にサンプルを置いた。
【0200】
405nmのビームは光学要素なしでピーク電力が11mWであり、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後に電力が約50%減少して5.5mWになった。ストラチャン装置を用いて405nmのビームの出力の位相を光学的に相殺し、送信される電力の測定値が90%低下した約0.55mWを直径3cmに広がったビーム全体で実現した。674nmのダイオードレーザーのビームは光学要素なしでピーク電力が4.80mWであり、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後に電力が約50%減少して2.4mWになった。ストラチャン装置を用いて408nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、直径3cmに広がったビーム全体で約0.48mWの電力を実現した。405nmのビームは10.8MHzで電子的に振幅変調し、674nmのビームは46.2MHzで変調した。
【0201】
カバーをしたペトリ皿の中でアトルバスタチン遊離酸とアスピリンの溶液をストラチャン装置で変調した405nmのビームで2.5分間にわたって処理した後、674nmのビームで2.5分間にわたって処理した。3cmのビームがサンプルの皿全体をカバーするとき、サンプルは静止していた。次にカバーをサンプルから外し、約22℃の室温でゆっくりと蒸発させることによって固化させた。
【0202】
溶媒を蒸発させると、全体が透明なガラス状の外観を持つサンプルが得られた。図72は、重量比を1:2にしたアトルバスタチン遊離酸とアスピリンの組み合わせのPXRDパターンが高度に非結晶であることを示している。このサンプルのFTIR分析から、個々の化合物の特徴的なピークが存在し、化合物の非結晶形態に典型的な帯の広がりがあることが証明された。
【0203】
比較例:アトルバスタチン遊離酸/アスピリン
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例16のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたアトルバスタチン遊離酸/アスピリンのPXRDパターンを図73に示す。得られたアトルバスタチン遊離酸/アスピリンのFTIR分析も実施し、材料がアトルバスタチン遊離酸とアスピリンの組み合わせであることを確認した。結果は、非結晶アトルバスタチン遊離酸/アスピリンの組み合わせが実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0204】
アトルバスタチン遊離酸の分子量は558.64である。この組み合わせの化合物は重量比が1:2だが、アスピリンの相対サイズをより小さくすると、アスピリンとアトルバスタチン遊離酸のモル比が6.202:1になる。
【0205】
実施例17:ロスバスタチンカルシウム/アスピリンの調製
ストラチャン装置によって変調して構造化した短波長のレーザー光の後に長波長のレーザー光を当てることにより、ロスバスタチンカルシウムとアスピリンの組み合わせの高度非結晶ガラス状態を作り出した。ストッパ付きのエーレンマイヤー・フラスコの中で10分間にわたって140℃に加熱して磁気撹拌機を用いて9000rpmで撹拌しながら、60mgの結晶ロスバスタチンカルシウムのサンプルと60mgの結晶アスピリンのサンプルを1200mgの無水エタノールに溶かした。この溶液を濾過した後、6つのポリスチレン製ペトリ皿に均等に分割して処理したサンプルと処理しない対照サンプルを作った。各サンプルをポリスチレン製のカバーで覆った。これらのサンプルを放置して室温まで冷やした。
【0206】
ストラチャン装置で変調した一連のレーザー光線を用いて例となる重量比が1:1のロスバスタチンカルシウム/アスピリンのサンプルを処理した。振幅変調したダイオードレーザー光の最初の照射は、中心波長が405nmのダイオードレーザーからのものであった。振幅変調したダイオードレーザー光の2回目の照射は、中心波長が674nmのダイオードレーザーからのものであった。それぞれのストラチャン装置から25cmの距離で、約3cmに広がった各ビームの上方にサンプルを置いた。
【0207】
405nmのビームは光学要素なしでピーク電力が11mWであり、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後に電力が約50%減少して5.5mWになった。ストラチャン装置を用いて405nmのビームの出力の位相を光学的に相殺し、送信される電力の測定値が90%低下した約0.55mWを直径3cmに広がったビーム全体で実現した。674nmのダイオードレーザーのビームは光学要素なしでピーク電力が4.80mWであり、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後に電力が約50%減少して2.4mWになった。ストラチャン装置を用いて674nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、直径3cmに広がったビーム全体で約0.48mWの電力を実現した。405nmのビームは10.8MHzで電子的に振幅変調し、674nmのビームは46.2MHzで変調した。
【0208】
カバーをしたペトリ皿の中でロスバスタチンカルシウムとアスピリンの溶液をストラチャン装置で変調した405nmのビームで1分間にわたって処理した後、674nmのビームで1分間にわたって処理した。3cmの各ビームがサンプルの皿全体をカバーするとき、サンプルは静止していた。これと同じサイクルをさらに2回繰り返したため、合計処理時間は6分間である。次にカバーをサンプルから外し、約23℃の室温でゆっくりと蒸発させることによって固化させた。
【0209】
サンプルの溶媒が蒸発すると、サンプル全体で透明なガラス状の外観が得られた。図74は、重量比を1:1にしたロスバスタチンカルシウムとアスピリンの組み合わせのPXRDパターンが高度に非結晶であることを示している。このサンプルのFTIR分析から、個々の化合物の特徴的なピークが存在し、化合物の非結晶形態に典型的な帯の広がりがあることが証明された。
【0210】
比較例:ロスバスタチンカルシウム/アスピリン
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例17のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたロスバスタチンカルシウム/アスピリンのPXRDパターンを図75に示す。得られたロスバスタチンカルシウム/アスピリンのFTIR分析も実施し、材料がロスバスタチンカルシウムとアスピリンの組み合わせであることを確認した。結果は、ロスバスタチンカルシウム/アスピリンの非結晶の組み合わせが実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0211】
ロスバスタチンカルシウムの分子量は1001.14である。この組み合わせの化合物は重量比が1:1だが、アスピリンの相対サイズをより小さくすると、アスピリンとアトルバスタチンのモル比が5.557:1になる。
【0212】
実施例18:シンバスタチン/アスピリンの調製
ストラチャン装置によって変調して構造化した短波長のレーザー光の後に長波長のレーザー光を当てることにより、シンバスタチンとアスピリンの組み合わせの高度非結晶ガラス状態を作り出した。ストッパ付きのエーレンマイヤー・フラスコの中で10分間にわたって140℃に加熱して磁気撹拌機を用いて9000rpmで撹拌しながら、60mgの結晶シンバスタチンのサンプルと30mgの結晶アスピリンのサンプルを900mgの無水エタノールに溶かした。この溶液を濾過した後、6つのポリスチレン製ペトリ皿に均等に分割して処理したサンプルと処理しない対照サンプルを作った。各サンプルをポリスチレン製のカバーで覆った。これらのサンプルを放置して室温まで冷やした。
【0213】
ストラチャン装置で変調した一連のレーザー光線を用いて例となる重量比が2:1のシンバスタチン/アスピリンのサンプルを処理した。振幅変調したダイオードレーザー光の最初の照射は、中心波長が405nmのダイオードレーザーからのものであった。振幅変調したダイオードレーザー光の2回目の照射は、中心波長が674nmのダイオードレーザーからのものであった。それぞれのストラチャン装置から25cmの距離で、約3cmに広がった各ビームの上方にサンプルを置いた。
【0214】
405nmのビームは光学要素なしでピーク電力が11mWであり、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後に電力が約50%減少して5.5mWになった。ストラチャン装置を用いて405nmのビームの出力の位相を光学的に相殺し、送信される電力の測定値が90%低下した約0.55mWを直径3cmに広がったビーム全体で実現した。674nmのダイオードレーザーのビームは光学要素なしでピーク電力が4.80mWであり、ソーラボ社の5倍ビーム・エキスパンダとストラチャン装置を通過した後に電力が約50%減少して2.4mWになった。ストラチャン装置を用いて674nmのビームを調節して位相が80%相殺されるレベルにし、直径3cmに広がったビーム全体で0.48mWの電力を実現した。405nmのビームは10.8MHzで電子的に振幅変調し、674nmのビームは46.2MHzで変調した。
【0215】
カバーをしたペトリ皿の中でシンバスタチンとアスピリンの溶液をストラチャン装置で変調した405nmのビームで1分間にわたって処理した後、674nmのビームで1分間にわたって処理した。3cmの各ビームがサンプルの皿全体をカバーするとき、サンプルは静止していた。これと同じサイクルをさらに2回繰り返したため、合計処理時間は6分間である。次にカバーをサンプルから外し、約21℃の室温でゆっくりと蒸発させることによって固化させた。
【0216】
このサンプルの溶媒が蒸発すると、サンプル全体で透明なガラス状の外観が得られた。図76は、重量比を2:1にしたシンバスタチンとアスピリンの組み合わせのPXRDパターンが高度に非結晶であることを示している。図77は、このサンプルのFTIR分析であり、個々の化合物の特徴的なピークが存在し、化合物の非結晶形態に典型的な帯の広がりがあることを示している。
【0217】
比較例:シンバスタチン/アスピリン
レーザー光線を当てなかったことを除き、実施例18のプロトコルを繰り返した。得られた材料は明らかに結晶であり、それをPXRD分析によって確認した。PXRD分析により、かなりの量の結晶材料が存在していることがわかった。レーザー光線を当てずに得られたシンバスタチン/アスピリンのPXRDパターンを図78に示す。得られたシンバスタチン/アスピリンのFTIR分析も実施し、材料がシンバスタチンとアスピリンの組み合わせであることを確認した。結果は、非結晶シンバスタチン/アスピリンが実験のアーチファクトではなく、本発明の方法においてレーザー光線を当てたことの直接的な結果であることを示している。
【0218】
シンバスタチンの分子量は418.56である。この組み合わせの化合物は重量比が1:1だが、アスピリンの相対サイズをより小さくすると、アスピリンとアトトバスタチン遊離酸のモル比が1.162:1になる。
【0219】
1種類だけの分子群または分子小クラスターが埋め込まれるアスピリンのガラス形態を室温で安定にできることで、埋め込まれた化合物の溶解度が顕著に大きくなる。ある化合物が疎水性で水への溶解度が小さいとき、溶解度がはるかに大きなガラス状アスピリンのマトリックスでこの化合物を取り囲むと、その1種類または複数種類の疎水性化合物の溶解速度、生物学的利用能、吸収は、そのマトリックスの程度まで増大するであろう。アスピリンの相対的な分子比がより大きく、埋め込まれる化合物の固有溶解度がより大きくなるほど、共アモルファスの組み合わせの溶解度も大きくなる可能性がある。
【0220】
一例として、結晶シンバスタチンの水への溶解度は0.03mg/mlであり、これは比較的小さな値である。それとは対照的に、結晶アスピリンの水への室温での溶解度は3.33mg/mlであり、111倍も異なる。シンバスタチンとアスピリンの両方がアモルファスな状態を作ることにより、シンバスタチンの溶解度が著しく大きくなることが予想される。
【0221】
アスピリンをアトルバスタチンカルシウム、アトルバスタチン遊離酸、ロスバスタチンカルシウムと組み合わせた共アモルファス体で実現される特に大きなモル比では、埋め込まれたスタチンの個々の分子またはいくつかの分子をアスピリン分子が完全に取り囲むことができる。このようにしてナノメートル・スケールでアスピリンの非結晶マトリックスの中にポケットが形成されるため、このシステムは、ガラス状アスピリンのナノポケット・パッケージング、ならびに比較的溶解度の小さな化合物の送達システムとして記述することができよう。アスピリン(またはこの方法で調製できる他の適切なマトリックス化合物)とスタチンの組み合わせは、このようにして埋め込まれたスタチンや他の疎水性化合物または溶解度の小さな化合物の非結晶状態の長期安定性をより大きくする環境を作り出すことができる。
【0222】
スタチンの医薬としての利点は、主に全コレステロールとLDLコレステロールを低下させることにある。スタチンを用いると全身性炎症マーカー(例えばC反応性タンパク質)が低下することが観察されてきた。全コレステロール、その中でも特にLDLコレステロールのレベルの低下と、全身性炎症の減少は、心臓血管の健康状態を改善する因子として認められてきた。アスピリンには、心臓血管の状態の改善とは独立に血栓形成の傾向を小さくする効果があることがよく証明されている。共吸収マトリックスの中でスタチンとアスピリンを特別にペアにすると、心臓と血管の健康にとって加算的な効果、それどころか相乗的な効果がもたらされるであろう。
【0223】
アトルバスタチンには特に顕著な治療増強効果が期待される。わずか30%が吸収されるだけで溶解度の増大によって初期吸収が著しく大きくなる可能性がある。12%という現在の全身性生物学的利用能は、吸収が大きくなるのと同じ程度まで比例して大きくすることができる。より少ない用量で臨床上の利益を同等に、またはより大きくできるため、副作用のプロファイルを小さくするとともに、スタチンの薬理効果を得られる可能性のあるより多くの人にスタチンが受け入れられるようにすることができる。
【0224】
この形態を大規模に生産するためには、マイクロ封止により、非結晶アスピリンとスタチンその他の化合物が共アモルファスになった組み合わせで構成された大きな粒子よりも本質的に安定なより小さい粒子サイズにして封止することができる。マイクロ封止によってより広い範囲の温度と湿度で長期にわたる保管安定性を維持することが容易になる。マイクロ封止技術は従来からよく知られている。
【0225】
本明細書で説明したエゼチミブとスタチンは、個別の化合物として、またエゼチミブとスタチンを組み合わせた共アモルファス・ガラスとして非結晶状態のものを容易に製造できるが、アスピリンがこの組み合わせに加わると、濃度閾値が存在していて、その閾値を超えると結晶化する傾向が生じた。エゼチミブとスタチンを同じ重量比で組み合わせ、アスピリンを添加してエゼチミブ/スタチン/アスピリンが1:1:1の比になるようにすると、透明なガラス状マトリックスの中に細かい糸状の結晶が現われた。おそらく結晶化したアスピリンが凝集したことを反映しているのであろう。エゼチミブ/スタチン/アスピリン組成物でアスピリンを減らして重量比を2:2:1にすると、本発明の方法で安定な共アモルファス・ガラス形態が容易に製造された。したがってこの方法により、広い範囲の比で安定なエゼチミブとスタチンの共アモルファスの組み合わせを作ることができるように見える。アスピリンはこの組み合わせに少なくとも約20重量%のレベルまで添加することができ、その結果としてエゼチミブとスタチンにアスピリンを加えた安定な高度共アモルファスの組み合わせが作り出される。
【0226】
上に説明した本発明の実施例で処理した化合物の分子構造は、以下に示すように著しく異なっている。
【0227】
【化1】

【0228】
【化2】

【0229】
これら化合物の分子構造は著しく異なっているため、当業者であれば、これら化合物それぞれの分子軌道と分光学の吸収帯も著しく異なっていて、観測される変化をもたらすのに異なる波長のレーザーが必要となると予想するであろう。しかし上述のように、これら化合物の非結晶組成物と共アモルファス組成物は本発明の方法で処理することによって調製された。各実施例のそれぞれの組成物について、主として同じ2つの波長で光を放つダイオードレーザーからのレーザー光線をストラチャン装置を通過させることによって変調し、組成物に当てた。すなわち各実施例で用いたレーザーの発光スペクトルに顕著な違いはない。実施例で使用したダイオードレーザーの1つは、中心波長が約408nm(実施例1〜14)または405nm(実施例15〜18)の紫の範囲でレーザー光線を発生させた。実施例で使用した他方のダイオードレーザーは、中心波長が約674nmのレーザー光線を発生させた。それぞれの実施例は、分子構造の違いにもかかわらず、非結晶形態の組成物を提供した。
【0230】
上述のように、理論に拘束されるものではないが、短いパルス長によってレーザーの出力帯幅が広がると考えられる。これは不確定性原理の帰結である。その結果、レーザー光の短いパルスは、組成物のさまざまな振動状態および/または電子状態と相互作用するフォトンを提供して非結晶形態にすると考えられる。組成物の特定の吸収帯に対応する発光を持つレーザーは必要ない。したがって本発明の方法は、他の医薬組成物と有機組成物に容易に拡張できると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の医薬化合物の非結晶性共アモルファス(co-amorphous)混合物を含む、共アモルファス医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬化合物が、アスピリン、エゼチミブ、シンバスタチン、アトルバスタチン遊離酸、アトルバスタチンカルシウム及びロスバスタチンカルシウムからなる群より選ばれる、請求項1に記載の共アモルファス医薬組成物。
【請求項3】
エゼチミブ/シンバスタチン、エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム、エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸、エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム、エゼチミブ/シンバスタチン/アスピリン、エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム/アスピリン、エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸/アスピリン、エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリン、及び少なくとも1種類のスタチンとアスピリンとを含む共アモルファス組成物からなる群より選ばれる、請求項1または2に記載の共アモルファス医薬組成物。
【請求項4】
アトルバスタチン遊離酸/アスピリン、アトルバスタチンカルシウム/アスピリン、シンバスタチン/アスピリン、及びロスバスタチンカルシウム/アスピリンからなる群より選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共アモルファス医薬組成物。
【請求項5】
ホモジニアスである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の共アモルファス医薬組成物。
【請求項6】
少なくとも1種類の有機化合物を含む非結晶組成物を製造する方法であって、少なくとも2つの異なるレーザーからのレーザー光線を、少なくとも1種類の有機化合物を溶媒に溶かした溶液に適用し、該溶媒を蒸発させることを含み、該レーザー光線が、場合により約10-9秒以下の有効平均パルス長を有するパルスであり、各レーザーからの該レーザー光線が異なる波長を有する、方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種類の有機化合物が医薬組成物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種類の有機化合物が、アスピリン、エゼチミブ、シンバスタチン、アトルバスタチン遊離酸、アトルバスタチンカルシウム、ロスバスタチンカルシウム、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザーのうちの少なくとも1つが可視光を放つ、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
1つのレーザーが近紫外〜青の範囲の照射線を出し、1つのレーザーが赤〜近赤外の範囲の照射線を出す、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
1つのレーザーが約400〜約470nmの範囲の波長を有する照射線を出し、1つのレーザーが約620〜約680nmの範囲の波長を有する照射線を出す、請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザー光線をストラチャン装置(Strachan Device)で変化させ、そのストラチャン装置は、第1の回折格子と、第2の回折格子と、その第1の回折格子と第2の回折格子の間に配置された屈折要素とを備える、請求項6〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記レーザーがダイオードレーザーである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記レーザー光線が約10-12秒以下の有効平均パルス長を有する、請求項6〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記レーザー光線が約10-15秒以下の有効平均パルス長を有する、請求項6〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも2つの異なるレーザーからのレーザー・パルスを同時に適用することをさらに含む、請求項6〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも2つの異なるレーザーからのレーザー・パルスを交互に適用することをさらに含む、請求項6〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記溶媒がアルコールである、請求項6〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒が無水アルコールである、請求項6〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1種類の有機化合物を溶媒に溶かした溶液を取得し;
その少なくとも1種類の有機化合物の溶液をカバー付きの容器に収容し;
該溶液にレーザー・パルスを適用し;そして
該レーザー・パルスを適用している間に該溶液の少なくとも一部を蒸発させ、よって非結晶組成物を形成すること、
をさらに含む、請求項6〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記レーザー・パルスを適用している間、前記少なくとも1種類の有機化合物の溶液を加熱することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記溶液を約100℃の温度に加熱することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記溶媒の蒸発が完了するまで、前記少なくとも1種類の有機化合物の溶液に前記レーザー光線を適用することをさらに含む、請求項20〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記溶媒を蒸発させながら前記少なくとも1種類の有機化合物の溶液を室温まで冷却することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記レーザー光線の適用を開始した後、所定の期間にわたって溶媒の蒸発を阻止し、次いでレーザー・パルスの適用を続けながら溶媒を蒸発させることをさらに含む、請求項20〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒の蒸発が完了するまで前記溶液に前記レーザー光線を適用することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも2つの異なるレーザーからのレーザー光線を同時に適用することをさらに含む、請求項20〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも2つの異なるレーザーからのレーザー光線を交互に適用することをさらに含む、請求項20〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
非結晶組成物を製造する方法であって、
第1の回折格子と、第2の回折格子と、該第1の回折格子と該第2の回折格子の間に配置された屈折要素とを備えるストラチャン装置の中をレーザー光線を通過させ、相殺的干渉によって該レーザー光線の一部を相殺し、建設的干渉によってレーザー光線の有効パルスを生成させ;
前記ストラチャン装置の中を通過したレーザー光線を、溶媒の中に少なくとも1種類の医薬組成物を含む溶液に適用し;そして、
該溶媒を蒸発させること、
を含む、方法。
【請求項30】
前記レーザー光線のパルスが、約10-9秒以下の有効平均パルス長を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1種類の医薬組成物が、アスピリン、エゼチミブ、シンバスタチン、アトルバスタチン遊離酸、アトルバスタチンカルシウム、ロスバスタチンカルシウム、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記医薬組成物が、エゼチミブ/シンバスタチン、エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム、エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸、エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム、エゼチミブ/シンバスタチン/アスピリン、エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム/アスピリン、エゼチミブ/アトルバスタチン遊離酸/アスピリン、エゼチミブ/ロスバスタチンカルシウム/アスピリン、及び少なくとも1種類のスタチンとアスピリンとを含む共アモルファス組成物からなる群より選ばれる、請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記医薬組成物が、アトルバスタチン遊離酸/アスピリン、アトルバスタチンカルシウム/アスピリン、シンバスタチン/アスピリン、及びロスバスタチンカルシウム/アスピリンからなる群より選ばれる、請求項29〜32のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【図78】
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【図79】
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【図80】
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【図81】
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【図82】
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【図83】
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【公表番号】特表2011−500709(P2011−500709A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530098(P2010−530098)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/080095
【国際公開番号】WO2009/052246
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
【出願人】(510109718)
【Fターム(参考)】