説明

化合物

付加的な1つまたは複数の残基、例えばアラニン残基がTIMP-3(組織メタロプロテアーゼ3阻害剤)ポリペプチドのN末端残基の前に位置するか、あるいはTIMP-3のスレオニン2に相当する残基がグリシンに変異しているTIMP-3ポリペプチド変異体。このような変異体は、TACE、ADAMTS-4、及びADAMTS-5等のADAMの阻害剤としての活性を保持するが、MMPの阻害剤としての活性が低減されていると考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスインテグリンメタロプロテアーゼ(ADAM)、特にADAM17/TACE(腫瘍壊死因子α-変換酵素)、並びにアグリカナーゼ、特にADAMTS-4及びADAMTS-5の阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
Zn-エンドペプチダーゼの2つのファミリー、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP1)とディスインテグリンメタロプロテアーゼ(ADAM)は、細胞外マトリックス(ECM)及び細胞表面における重要なタンパク質分解反応を触媒する。主にMMPにより触媒されるマトリックスにおけるタンパク質の代謝回転は、形態形成、組織修復、胚盤胞移入、創傷治癒、及びその他の多くの重要な生理的プロセスに必要であるが(1)、一方、ADAMは、細胞表面タンパク質の外部ドメインのシェディング、サイトカイン、成長因子、細胞接着分子、及び受容体の放出(2、3)、シグナル伝達、細胞成長、細胞-細胞及び細胞-マトリックスの相互作用に関連するプロセスを触媒する。特定のMMP及びADAMの増進された活性は、癌、関節リウマチ、変形性関節症、及び心臓疾患を含む多くの重大なヒト疾患の根底にあるか、またはこれらに寄与している(1〜3)。
【0003】
細胞外マトリックスにおけるMMP活性は、4つの内在性阻害タンパク質である組織メタロプロテアーゼ阻害剤(TIMP)-1〜-4によって調節されている。これらは、わずかの例外があるが、ヒトにおいて見出される20種を超えるMMPの広スペクトルの阻害剤である(4)。さらに、TIMP-3は、ADAM10(5)、ADAM12-S(6)、ADAM17/TACE(腫瘍壊死因子α変換酵素;(7))、並びにトロンボスポンジンモチーフを有する特定のADAM、例えばADAMTS-4及びADAMTS-5(8)等を含むいくつかのアダマリシンを効果的に阻害する。TIMP-1もまた、ADAM-10を阻害する(5)。
【0004】
TIMPは、2つのドメインを有し、複数の生物活性、例えば特定の細胞の成長の刺激、アポトーシスの誘導またはアポトーシスからの保護、及び血管形成の阻害等を示す(9、10)。メタロプロテアーゼの阻害活性は、より大きい(〜120残基)N末ドメインにあり、より小さい〜65残基のC末ドメインは、いくつかのプロMMPのヘモペキシンドメインとの相互作用を媒介する。XのCysへの置換をもたらすヒトTIMP-3遺伝子における変異及びヒトTIMP-3のC末ドメインにおける切断は、若年性黄斑変性を引き起こす常染色体優性疾患、Sorsby’s基底ジストロフィー(Sorsbys fundus dystrophy)の原因である(11、12)。
【0005】
MMP-3(13)の触媒ドメインとTIMP-1との複合体、及び膜型MMPであるMMP-14(MT1-MMP;(14))とのTIMP-2の複合体の構造は、TIMPの保存されたCys1からCys70へのジスルフィド結合(TIMP-1配列の番号付け)周辺の構造的に近接する領域が、MMPの活性部位の溝の中に挿入されていることを示している。Cys1は、そのα-アミノ基及びカルボニル基を介して触媒性Zn2+と二座で配位結合する一方、残基2(ThrまたはSer)の側鎖が、当該プロテアーゼのS1' 特異性ポケットの開口に入る。MMPとのほとんど(75%)の相互作用は、Cys1からCys70へのジスルフィド結合周辺のTIMPのポリペプチド鎖の2つの部分(残基1〜4及び66〜70、図1を参照されたい)をともなう。カルバミル化(15)もしくはアセチル化(16)、及び付加的な残基の付加(16、17)によるN末端α-アミノ基の遮断は、TIMPのMMP阻害活性を不活性化する。相互作用界面において重要なアミノ酸、残基2、4、または68の単独または組合せでの置換は、異なるMMPに対するN-TIMP-1の親和性に差異的に影響する(18、19)。このことは、TIMPの特異性を改変して、より標的にされるMMP阻害剤を作製できることを示唆している。
【0006】
TACE(ADAM-17)は、細胞外マルチドメイン領域、膜貫通セグメント、及びC末細胞質ドメインから構成される1型膜タンパク質である。当該活性酵素の細胞外領域内には、メタロエンドペプチダーゼ触媒ドメイン、ディスインテグリンドメイン、システインリッチドメイン、及びクランビン様ドメインがある(2、3)。TACEの構造的、触媒的、及び阻害的な特性に関する多くのこれまでの研究は、切断された触媒ドメインに焦点を当てているが(20〜24)、いくつかの研究は、細胞外領域の非触媒ドメインが、酵素特性、例えば基質認識及び酵素前駆体活性化等に重要な影響を有することを示唆している(25、26)。
【0007】
いくつかのADAMはプロテアーゼ活性を欠損しているが、触媒活性を有するものは、それらの触媒ドメインにおける標準的なZn結合HExxHxxGxxH配列モチーフ及びMetターンをMMPと共有している(http://www.people.virginia.edu/~jw7g/)。しかし、ADAMとMMPは、全体的な配列が非常に異なっており、それらの触媒ドメインは、3次元構造が著しく異なる(20)。
【特許文献1】US20030143693
【特許文献2】WO2004/006925
【特許文献3】US2005113346
【特許文献4】US2005075384
【非特許文献1】http://www.people.virginia.edu/~jw7g/
【非特許文献2】Leeら(2002)Protein Science 11、2493〜2503頁
【非特許文献3】Thompsonら(1994)Nucl Acid Res 22、4673〜4680頁
【非特許文献4】Leeら(2002)Protein Science 11、2493〜25-3頁
【非特許文献5】Leeら(2002)Biochem J 364、227〜234頁
【非特許文献6】Meziereら(1997)J. Immunol. 159、3230〜3237頁
【非特許文献7】Blundellら(1996)「Structure-based drug design」Nature 384、23〜26頁
【非特許文献8】Bohm(1996)「Computational tools for structure-based ligand design」Prog Biophys Mol Biol 66(3)、197〜210頁
【非特許文献9】Cohenら(1990)J Med Chem 33、883〜894頁
【非特許文献10】Naviaら(1992)Curr Opin Struct Biol 2、202〜210頁
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【非特許文献12】Mirankerら(1991)Proteins:Structure, Function and Genetics 11、29〜34頁
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【非特許文献17】C. Graham Knightら、(1992)FEBS Lett. 296(3):263〜266頁
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【非特許文献22】「Monoclonal Antibodies:A manual of techniques」、H. Zola(CRC Press、1988)
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【非特許文献35】Current Pharmaceutical Design、1996、2、662頁
【非特許文献36】Kashimagi, M.ら、J. Biol. Chem. 279、10109〜10119頁、2004
【非特許文献37】Hascall及びSajdesa(J. Biol. Chem. 244、2384〜2396頁、1969)
【非特許文献38】Gendronら(2003)FEBS Lett 27877、1〜6頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
我々は、例えばTACE、ADAMTS-4、ADAMTS-5、並びにADAM10及びADAM12-S等のADAMの阻害剤であって、ただし、MMPに対する相互作用界面が破壊されているN-TIMP-3変異体を提供する。TACE及びADAMTS-4、及びADAMTS-5等のADAMの阻害剤としてのこのような変異体の特性は、TIMP-3とTACE及びADAMTS-4、及びADAMTS-5等のADAMとの相互作用、並びに阻害機構が、MMPについてのものと異なることを示唆し、また、このような変異体がTACE及びADAMTS-4、及びADAMTS-5等のADAMの選択的阻害剤として有用であることを示している。このような変異体はまた、TACE、ADAMTS-4、及びADAMTS-5等のADAMのさらなる選択的阻害剤の作製において有用なリード化合物でもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、付加的な1個の残基、または1個から2個、3個、4個、5個、6個、8個、10個、12個、15個、18個、もしくは20個までの残基が、成熟TIMP-3(組織メタロプロテアーゼ3阻害剤)ポリペプチドの1番目のアミノ酸残基(Cys1)のアミノ末端側に隣接して存在するか、あるいはTIMP-3のスレオニン2に相当する残基がグリシンまたは以下の別の1個のL-アミノ酸:Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、His、Ile、Lys、Asn、Pro、Gln、Arg、Val、Trpに変異している、TIMP-3ポリペプチド変異体を提供する。
【0010】
前記TIMP-3ポリペプチド変異体は、例えばTACE、ADAMTS-4、またはADAMTS-5等のADAMを阻害すると考えられるが、例えばMMP-1、MMP-2、ストロメライシン1(MMP-3(ΔC))の触媒ドメイン、または膜型タイプ1 MMP(MMP-14)等のMMPを、例えば野生型TIMP-3またはN-TIMP-3よりも弱く(例えば、1、2、または3桁小さく)阻害すると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1つまたは複数の付加的な残基(例えば2個、3個、4個またはそれより多く(20個まで)のアミノ酸残基)は、成熟した活性型のTIMP3の1番目のアミノ酸であるシステイン1のN末側に隣接して位置する。TIMP-3ポリペプチドのN末残基のアミノ末端側のこの付加的な1個のアミノ酸残基(またはさらなる1つまたは複数の残基)は、例えば、L-アラニン残基またはタンパク質中に天然に見い出される他の19種類のアミノ酸、例えばGlyもしくは以下のL-アミノ酸:Asp、Cys、Glu、Phe、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyrのいずれか1つであってよい。
【0012】
実施例において論じるように、成熟した活性型のTIMP-3の1番目のアミノ酸であるシステイン1のN末側に隣接して位置する2個のアミノ酸残基を有するTIMP-3ポリペプチド変異体の例は、N-TIMP-3よりもADAMTS-5に対してより選択的であると考えられる(-2A)N-TIMP-3変異体である。
【0013】
N末端のカルバミル化またはアセチル化はさらに、TACE及び/またはADAMTS-4、及びADAMTS-5等のADAMを阻害するが、例えばMMP-1、MMP-2、ストロメライシン1の触媒ドメイン(MMP-3(ΔC))、または膜型タイプ1 MMP(MMP-14)等のMMPを、野生型TIMP-3またはN-TIMP-3よりも非常に弱く阻害するTIMP-3ポリペプチドを提供し得るが、このような改変は、確実に作製することがより困難であると考えられる。
【0014】
用語TIMP-3は、当該技術分野において公知である。例えばヒトTIMP-3の配列は、登録番号NP_000353(図4)で得られ、TIMP-3は、例えばその記録に引用されている参照文献において論じられている。示されているTIMP-3の配列は、プレ配列を含む。TIMP-3の成熟配列は、残基CTCSPSH…から始まる。TIMP-3遺伝子のポリヌクレオチド配列は、登録番号NM_000362(図5)で得られる。TIMP-3に関するUS20030143693も参照されたい。
【0015】
用語ADAM、TACE、ADAMTS-4、及びADAMTS-5、並びに本明細書に記載されるその他のクラスまたは個々のメタロプロテアーゼも、例えば本明細書で引用する参考文献から明らかなように、当該技術分野において公知である。
【0016】
TIMP-3ポリペプチド変異体は、所望の変異を有するN-TIMP-3ポリペプチド変異体であってよい。N-TIMP-3は、全長TIMP-3の残基1〜121に相当する。Leeら(2002)Protein Science 11、2493〜2503頁からのヒトN-TIMP-3の配列を、図6に示す。N-TIMP-3は、全長TIMP-3の阻害特性を保持していると考えられるが、全長TIMP-3よりもリフォールディングしやすく、その他の点では取り扱いやすいと考えられる。N-TIMP-3は、TIMP-3に比べて、細胞外マトリックスのその他のタンパク質に結合する傾向が低減されており、このことにより、治療の関係において組織でのメタロプロテアーゼ阻害剤としてのその利用可能性が増加する。
【0017】
TIMP-3ポリペプチド変異体は、さらなる非TIMP-3部分(例えばTIMP-3変異体部分と融合ポリペプチドを形成する)を含んでよい。このような部分は、TIMP-3ポリペプチド変異体のC末に典型的に位置し、例えばポリペプチドの精製、特定の組織へのポリペプチドの標的、ポリペプチドの検出または二量体形成の促進において有用である。このような適切なさらなる部分の例は当業者に公知であろう。例えば、キチン結合ドメインまたはセルロース結合ドメインは、精製に有用であろう。IgG Fabドメインは、二量体化の促進に有用であろう。例として、TIMP-3ポリペプチド変異体は、当業者に公知のHisタグ、例えば8個のヒスチジンをC末に有してよい。このようなタグは、TIMP-3ポリペプチド変異体を、当業者に公知のNiキレートカラムを用いて調製することを可能にする。
【0018】
TIMP-3ポリペプチド変異体は、例えばTIMP-3プレ配列(mtpwlglivllgswslgdwgaea)または異なる生物由来の細胞における発現に適切なプレ配列、例えば必要に応じて酵母、昆虫、または細菌のプレ配列等の当業者に公知のプレ配列とともに発現させてもよい。プレ配列を切り離して(細胞の酵素を発現させることにより、または酵素を加えることにより)、成熟TIMP-3ポリペプチド変異体を得ることができる。TIMP-3ポリペプチド変異体は、成熟TIMP-3ポリペプチド変異体配列の前に位置するN末端メチオニン残基とともに発現させてもよい。N末端メチオニンは、細胞の酵素を発現させることによって切り離すこともできる。このことは、わずかな画分はこのように切断されない可能性があるが、「野生型」タンパク質及びT2G変異体、及び-1A変異体の場合について当てはまると考えられる。このことは、その他のT2X変異体についても生じると予測されるが、その他の-1X構築物のいくつかについては、N末端メチオニンが切り離されない可能性がある。
【0019】
適切な発現構築物は、当業者に既知であろう。例えば、アデノウイルスベクターを用いて、前臨床試験用の動物に、または患者にTIMP-3を送達できる。レンチウイルス等のその他のものも有用であろう。II型コラーゲンプロモーターを含むベクターも、軟骨においてTIMP-3を発現するために有用であろう。
【0020】
TIMP-3ポリペプチド変異体は、所望の変異を有する非ヒトTIMP-3(例えば非ヒトN-TIMP-3)ポリペプチドであってよい。例えば、TIMP-3ポリペプチド変異体は、マウスまたはその他のげっ歯類のTIMP-3(例えばN-TIMP-3)ポリペプチド変異体、またはニワトリのTIMP-3(例えばN-TIMP-3)ポリペプチド変異体であってよい。TIMP-3ポリペプチド変異体は、前記の変異においてのみ天然に存在するTIMP-3ポリペプチドと異なっていてもよいか、または天然に存在するTIMP-3ポリペプチドの配列とはさらに別の点において異なっていてもよく、例えば天然に存在するTIMP-3ポリペプチドから、天然に存在するTIMP-3ポリペプチドもしくはそのフラグメントの残基のさらに1、2、5、10、もしくは20% まで異なっていてよい(例えば保存的または非保存的な変異、欠失、または挿入により)。TIMP-3ポリペプチド変異体は、前記のように、融合ポリペプチドであってもよく、例えば当業者に公知のMycエピトープタグ付加、またはHisタグ付加されたものであってよい。
【0021】
TIMP-3ポリペプチド変異体は、例えば実施例に記載されるアッセイを一般に用いて評価されるようなヒトTACEまたはヒトTACEの可溶型(例えばTACE R651;実施例1の参考文献28を参照されたい)に関するヒトT2G N-TIMP-3または-1A N-TIMP-3の阻害活性の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%を有することが特に好ましい。TIMP-3ポリペプチド変異体は、例えばMMP-1、MMP-2、ストロメライシン1の触媒ドメイン(MMP-3(ΔC))、または膜型タイプ1 MMP(MMP-14)等のMMPを、例えば野生型TIMP-3またはN-TIMP-3よりもかなり弱く(例えば1、2または3桁小さく)阻害することがさらに好ましい。
【0022】
「保存的置換」とは、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;及びPhe、Tyr等の組合せを意図する。
【0023】
本明細書においては、記号Zaa(負荷電アミノ酸)以外は、IUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)の3文字アミノ酸コードを用いる。特に、Xaaは任意のアミノ酸を表す。Xaa及びZaaは、天然に存在するアミノ酸を表すことが好ましい。アミノ酸はL-アミノ酸であることが好ましい。
【0024】
TIMP-3ポリペプチド変異体の特に好ましいアミノ酸配列は、前記の考察及び実施例から当業者には明らかであり、特許請求の範囲にも記載されている。
【0025】
TIMP-3ポリペプチド変異体は、請求項2に記載するアミノ酸配列と少なくとも65%の同一性、より好ましくは少なくとも70%、71%、72%、73%、または74%、さらに好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは90%、最も好ましくは少なくとも95%または97%の前記に定義されるアミノ酸配列との同一性を有することが特に好ましい。
【0026】
当業者に公知のように、2つのポリペプチド間のパーセント配列同一性は、例えばウィスコンシン大学遺伝計算グループ(University of Wisconsin Genetic Computing Group)のGAPプログラム等の適切なコンピュータプログラムを用いて決定することができ、パーセント同一性は、最適にアラインメントされた配列のポリペプチドとの関係において算出されると解されるであろう。
【0027】
あるいは、アラインメントは、Clustal Wプログラム(Thompsonら(1994)Nucl Acid Res 22、4673〜4680頁)を用いて行うことができる。用いられるパラメータは、次のとおりであってよい:Fastペアワイズアラインメントパラメータ:K-tuple(ワード)サイズ;1、ウィンドウサイズ;5、ギャップペナルティ;3、頂点対角要素の数;5。スコアリング法:xパーセント。
マルチプルアラインメントパラメータ:ギャップ開始ペナルティ;10、ギャップ伸長ペナルティ;0.05。スコアリングマトリックス:BLOSUM。
【0028】
TIMP-3ポリペプチド配列のアラインメント及びTACEに対するTIMP-3阻害活性についての要件も、例えばLeeら(2002)Protein Science 11、2493〜25-3頁及びLeeら(2002)Biochem J 364、227〜234頁で論じられている。
【0029】
TIMP-3ポリペプチド変異体(または適切であればTACE、ADAMTS-4、ADAMTS-5、もしくはその他のメタロプロテアーゼ)は、ヒトTIMP-3または前記のN-TIMP-3配列のアミノ酸配列(請求項1に記載されているように変異されている)、または天然に存在するその対立遺伝子多型(allelic variant)からなるポリペプチドであることが好ましい。天然に存在する対立遺伝子多型は、哺乳動物、好ましくはヒトのものであることが好ましいが、あるいは、例えばげっ歯類(例えばマウスまたはラット)、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ亜科(例えばヒツジまたはヤギ)、またはウシ等の実験動物または家畜からのホモログであってよい。このような生物及びホモログの例は、当業者に既知である。
【0030】
本発明のさらなる態様は、本発明のTIMP-3ポリペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明のさらなる態様は、本発明のTIMP-3ポリペプチド変異体を発現するのに適切な組換えポリヌクレオチドを提供する。このようなポリペプチドは、例えば、さらに5'開始コドン(ATG)または当業者に既知のその他の調節配列が付加された請求項4に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含んでよい。本発明のさらなる態様は、本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。
【0031】
本発明のさらなる態様は、本発明のTIMP-3ポリペプチド変異体を作製する方法を提供し、当該方法は、前記のTIMP-3ポリペプチド変異体を発現する本発明の宿主細胞を培養する工程、及び前記のTIMP-3ポリペプチド変異体を単離する工程を含む。
【0032】
本発明のさらなる態様は、前記の方法によって得ることができるTIMP-3ポリペプチド変異体を提供する。
【0033】
本発明のこれらの態様の例は、実施例1に記載され、当業者によって通常の方法を用いて作製してよい。
【0034】
例えば、前記のTIMP-3ポリペプチド変異体は、当該技術分野で公知の方法並びに以下及び実施例1に記載の方法によって作製してよく、例えば分子生物学的方法または自動化された化学的ペプチド合成法を用いて作製してよい。
【0035】
ペプチド模倣化合物も有用であり得ると解されるであろう。つまり、「ポリペプチド」または「ペプチド」により、アミノ酸残基がペプチド(-CO-NH-)結合により連結されている分子だけでなく、ペプチド結合が逆である分子も含む。このようなレトロインバーソ型ペプチド模倣物は、例えば本明細書に参照により組み込まれるMeziereら(1997)J. Immunol. 159、3230〜3237頁に記載される方法等の当該技術分野において既知の方法を用いて作製してよい。この方法は、バックボーンに関与するが側鎖の配向には関与しない変更を含むペプチド模倣物を作製する工程を含む。D-アミノ酸を含有するレトロインバーソ型ペプチドは、タンパク質分解に対してより耐性がある。
【0036】
同様に、ペプチド結合は、アミノ酸残基のCα原子間の間隔を保持する適切なリンカー部分が用いられるのであれば、全く省かれてもよい。リンカー部分が、ペプチド結合と実質的に同じ電荷分布及び実質的に同じ平面を有することが特に好ましい。
【0037】
ペプチドは、そのN末端またはC末端で遮断されて、外部からのタンパク質分解性の消化に対する感受性を低減させるのに役立つと解されるであろう。
【0038】
本発明は、さらに、試験化合物の構造を、本発明のTIMP-3ポリペプチド変異体(例えば請求項2に記載するような)の少なくともN末の4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸の構造と比較し、本発明のTIMP-3ポリペプチド変異体の少なくともN末の4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸の構造と類似の構造を有すると考えられる化合物を選択する工程を含む、ADAMメタロプロテアーゼ(例えばTACE、ADAMTS-4、またはADAMTS-5)をMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)よりも大きい程度で阻害することが予測される化合物を同定する方法を提供する。
【0039】
本発明のTIMP-3ポリペプチド変異体の少なくともN末の4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸の構造は、例えばLeeら(2002)Protein Science 11、2493〜2503頁に記載されるようなN-TIMP-3モデルについてモデル化された構造であってよい。選択される化合物は、構造比較から、本発明のTIMP-3ポリペプチド変異体と同様の様式でTACEまたは例えばADAMTS-4もしくはADAMTS-5等のその他のADAMと相互作用すると考えられるものであってよい。
【0040】
ADAMTS-5を阻害すると予測される化合物を選択する場合、本発明の(-2A)TIMP-3ポリペプチド変異体(すなわち、TIMP-3配列のシステイン1のN末側に2個のアラニン残基を有する)の少なくともN末の4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸の構造に類似の構造を有すると考えられる化合物を選択することが特に有用であろう。
【0041】
3次元構造は、コンピュータにより2次元の形で、例えばコンピュータ画面上に表示され得る。このような2次元表示を用いて、比較を行ってよい。
【0042】
以下のものは、分子モデリング技術に関する:Blundellら(1996)「Structure-based drug design」Nature 384、23〜26頁;Bohm(1996)「Computational tools for structure-based ligand design」Prog Biophys Mol Biol 66(3)、197〜210頁;Cohenら(1990)J Med Chem 33、883〜894頁;Naviaら(1992)Curr Opin Struct Biol 2、202〜210頁。
【0043】
例えば以下のコンピュータプログラムは、本発明のこの態様の方法を行う上で有用であり得る:GRID(Goodford(1985)J Med Chem 28、849〜857頁;英国オックスフォード、オックスフォード大学から入手可能);MCSS(Mirankerら(1991)Proteins:Structure, Function and Genetics 11、29〜34頁;マサチューセッツ州バーリントン、モレキュラーシミュレーションズ(Molecular Simulations)から入手可能);AUTODOCK(Goodsellら(1990)Proteins:Structure, Function and Genetics 8、195〜202頁;カリフォルニア州ラホーヤ、スクリップスリサーチインスティテュート(Scripps Research Institute)から入手可能);DOCK(Kuntzら(1982)J Mol Biol 161、269〜288頁;カリフォルニア州サンフランシスコ、カリフォルニア大学から入手可能);LUDI(Bolim(1992)J Comp Aid Molec Design 6、61〜78頁;カリフォルニア州サンディエゴ、バイオシムテクノロジーズ(Biosym Technologies)から入手可能);LEGEND(Nishibataら(1991)Tetrahedron 47、8985頁;マサチューセッツ州バーリントン、モレキュラーシミュレーションズから入手可能);LeapFrog(ミズーリ州セントルイス、トリポスアソシエーツ(Tripos Associates)から入手可能);Gaussian 92、例えばC改訂(MJ Frisch、ガウシアンインコーポレーテッド(Gaussian, Inc.)、ペンシルベニア州ピッツバーグ、(c)1992);AMBER、バージョン4.0(PA Kollman、サンフランシスコのカリフォルニア大学、(c)1994);QUANTA/CHARMM(モレキュラーシミュレーションズ、マサチューセッツ州バーリントン、(c)1994);及びInsight II/Discover(バイオシムテクノロジーズインコーポレーテッド、カリフォルニア州サンディエゴ、(c)1994)。プログラムは、例えばSilicon Graphics(商標)ワークステーション、Indigo2(商標)またはIBM RISC/6000(商標)ワークステーションモデル550で実行されてよい。
【0044】
例えば、CHEM DRAWまたはCHEM FINDER等のプログラムを用いた新しいリガンドの下部構造の探索によって、いくつかのin silico法を用いることができるであろう。リガンド(例えばTIMP-3ポリペプチド変異体)またはADAMに結合し得るその一部分の基礎構造を用い(または予測し)、その種々の構造的特徴をプログラムに入力して、当該プログラムが、この下部構造を含む化学物質について一連の化学会社のカタログを検索する。
【0045】
出発化合物は、まず、例えばTACE等のADAMに対する阻害効果についてスクリーニングすることによって選択し、次いで、構造と比較し、さらなる化合物の設計の基礎として用い、次にこれを、以下にさらに論じるように、さらなるモデリング及び/または合成、及び評価によって試験してよい。
【0046】
選択された化合物は、次いで、注文するかまたは合成して、結合能、並びに/あるいはADAM及び/またはMMP活性の阻害能の1つまたは複数について評価してよい。
【0047】
本発明の方法は、前記のコンピュータモデリングを用いて選択された化合物を提供し、合成し、精製し、及び/または処方する工程、並びに当該化合物が1つまたは複数のADAM及び/またはMMPの活性を阻害するかを評価する工程をさらに含んでよい。当該化合物は、例えば動物またはヒトでのin vivo試験に用いるための製薬的用途のために配合されてよい。
【0048】
前述のように、1つまたは複数のMMPよりも、1つまたは複数のADAMの活性をより阻害する化合物を選択してよい。
【0049】
前記のように、選択または設計された化合物は、合成(もし既に合成されているのでなければ)または精製し、且つADAM及び/またはMMPに対するその効果について試験してよい。化合物は、ADAM及び/またはMMP、あるいはADAM及び/またはMMPがその中に存在する細胞または組織に対するその効果について、in vitroスクリーニングで試験してよい。細胞または組織は、内在性ADAM及び/もしくはMMPを含んでよいか、並びに/あるいは外因性ADAM及び/またはMMP(ADAMまたはMMPをコードする内在性核酸の操作の結果として発現されるADAM及び/またはMMPを含む)を含んでよい。化合物は、ex vivoまたはin vivoスクリーニングで試験してよく、これらはトランスジェニック動物または組織を用いてよい。化合物は、例えばADAMまたはMMP遺伝子の1つまたは複数のコピーのノックアウトあるいはノックダウンにより、ADAMまたはMMPを含まない(または低下した量のADAMまたはMMPを含む)細胞、組織、または生物で、比較のために試験してもよい。適切な試験は、当業者には明らかであり、その例は、例えばTNFαのシェディングの評価、軟骨分解、または例えばII型コラーゲン誘発関節炎(CIA)等の関節炎の動物モデルでの滑膜細胞増殖の評価を含む。
【0050】
化合物がADAM(例えばTACE、ADAMTS-4、もしくはADAMTS-5)またはMMP(これについても好ましいものは前記のものである)を阻害する能力は、例えば実施例に記載する方法等の当業者に公知の方法を用いて評価してよい。例えば、実施例に記載するような、精製成分を用いる酵素アッセイ、シェディングアッセイ、または軟骨アグリカン分解アッセイを用いてよい。例えばWO2004/006925も、TACEの阻害剤を評価するのに用いてよいアッセイを記載している。特定のMMPに最適な基質及び緩衝液の条件を用いたその他の発現及び精製されたプロMMPについて用い得るプロトコールは、例えばC. Graham Knightら、(1992)FEBS Lett. 296(3):263〜266頁に記載されている。本発明の化合物または変異体がTNFα産生の細胞プロセシングを阻害する能力は、例えば、基本的にK. M. Mohlerら、(1994)Nature 370:218〜220頁に記載されるようにして、放出されたTNFを検出するELISAを用いてTHP-1細胞において評価してよい。N. M. Hooperら、(1997)Biochem. J. 321:265〜279頁に記載されるもの等のその他の膜分子のプロセシングまたはシェディングは、例えば、適切な細胞系を、シェディングされたタンパク質を検出するための適切な抗体とともに用いることによって試験してよい。軟骨のアグリカン成分またはコラーゲン成分の分解を阻害する本発明の変異体または化合物の能力は、例えば、本質的にK. M. Bottomleyら、(1997)Biochem J. 323:483〜488頁に記載されるようにして、評価できる。in vivoのTNFα阻害剤としての本発明の変異体または化合物の能力は、例えばラットにおいて評価できる。簡単に言えば、雌のウィスターアルダーリーパーク(AP)ラット(90〜100g)の群に、化合物(5匹のラット)または薬剤ビヒクル(5匹のラット)を、リポ多糖(LPS)負荷(30gg/ラットi. v.)の1時間前に適切な経路、例えば経口(p.o.)、腹腔内(i.p.)、皮下(s.c.)により投与する。LPS負荷の60分後に、ラットに麻酔をかけ、最後の血液サンプルを後方大静脈から採取する。血液を室温にて2時間凝固させ、血清サンプルを得る。これらをTNFαELISA及び化合物濃度分析のために-20℃で保存する。専用のソフトウェアによるデータ分析によって、各化合物/投与量を算出する:TNFαのパーセント阻害=平均TNFα(ビヒクルコントロール)−平均TNFα(処理)×100平均TNFα(ビヒクルコントロール)。抗関節炎薬としての化合物の活性は、例えば、コラーゲン誘発関節炎(CIA)において、D. E. Trenthamら、(1977)J. Exp. Med. 146:857頁により定義されるようにして試験できる。このモデルにおいて、酸可溶性天然II型コラーゲンは、フロイント不完全アジュバント中で投与された場合に、ラットにおいて多発性関節炎を引き起こす。同様の条件を用いて、例えばマウスにおいて関節炎を誘発できる。
【0051】
化合物は、当業者に公知のような、例えば毒性または代謝の試験等のその他の試験に供されてもよい。
【0052】
試験化合物は、例えば、ペプチド模倣化合物または抗体であってよい。用語「抗体」は、合成抗体、並びに抗原結合部位を保持する抗体全体のフラグメント及びバリアント(例えば当業者に既知のヒト化抗体分子またはその他の変異抗体分子)を含む。抗体は、モノクローナル抗体であってよいが、ポリクローナル抗体調製物、それらの1つもしくは複数の部分(例えばFabフラグメントもしくはF(ab')2)、または合成抗体もしくはその一部分であってもよい。Fab、Fv、ScFv、及びdAb抗体フラグメントは、すべて、E.coliで発現されてそこから分泌され得、それにより、当該フラグメントの容易な大量産生を可能となる。「ScFv分子」は、VH及びVLのパートナードメインが、柔軟性のあるオリゴペプチドを介して連結している分子を意味する。IgGクラス抗体が好ましい。
【0053】
選択される抗原に対して適切なモノクローナル抗体は、例えば「Monoclonal Antibodies:A manual of techniques」、H. Zola(CRC Press、1988)及び「Monoclonal Hybridoma Antibodies:techniques and Applications」、JGR Hurrell(CRC Press、1982)に開示されているもの等の既知の方法により調製され、前記のように改変されてよい。当業者に公知のように、ファージディスプレイに基づく方法を代わりに用いてよい。二重特異性抗体は、細胞融合、一価フラグメントの再会合、または抗体全体の化学的架橋により調製してよい。二重特異性抗体を調製する方法は、Corvalenら、(1987)Cancer Immunol. Immunother. 24、127〜132頁及び133〜137頁及び138〜143頁に開示されている。
【0054】
特異的結合部位を保持している抗体フラグメントの合成に関わる技術の一般的な総説は、Winter及びMilstein(1991)Nature 349、293〜299頁に見出される。
【0055】
前記の方法において同定された化合物は、それら自体で薬剤として有用であるか、またはより有効な化合物の設計及び合成のためのリード化合物であり得る。
【0056】
前記化合物は、薬剤様化合物、または化合物を同定する前記方法のそれぞれについての薬剤様化合物の開発のためのリード化合物であってよい。前記方法は、当業者に公知のように、医薬化合物または薬剤の開発におけるスクリーニングアッセイとして有用であり得ると解されるであろう。
【0057】
用語「薬剤様化合物」は当業者に公知であり、例えば医薬品中の活性成分等の、それを医薬に用いるのに適するようにし得る特徴を有する化合物の意味を含んでよい。つまり、例えば薬剤様化合物は、有機化学の技術により、あまり好ましくないが分子生物学または生化学の技術によって合成し得る分子であってよく、好ましくは小分子であり、5000ダルトン未満であってよい。薬剤様化合物は、特定の1つまたは複数のタンパク質と選択的相互作用の特性を付加的に示してよく、生物学的に利用可能であるか、且つ/または細胞膜を透過可能であってよいが、これらの特徴は必須でないと解されるであろう。
【0058】
用語「リード化合物」は、同様に、当業者に公知であり、化合物自体は薬剤としての使用に適さないが(例えばその意図する標的に対する有効性が弱いため、その作用が選択的でないため、不安定であるため、合成が困難であるため、または生物学的利用可能性に乏しいため)、化合物が、より所望の特徴を有し得るその他の化合物の設計のための出発点を提供し得るという意味を含んでよい。
【0059】
ハイスループット操作を可能にするスクリーニングアッセイが特に好ましいと解される。
【0060】
ADAM、例えばTACEの活性をin vivoで調節し得る化合物または変異体を同定することが望ましいと解されるであろう。つまり、前記方法において用いられる試薬及び条件は、例えばADAMと当該化合物または変異体との間の相互作用が、in vivoでのヒトADAMと当該化合物または変異体との間と実質的に同じになるように選択してよいと解されるであろう。
【0061】
本発明のさらなる態様は、医薬における使用のための本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(または本発明の前記の選択/設計方法により同定されるかもしくは同定され得る化合物)である。このような化合物、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドが有用であり得る症状または疾患を以下に記載する。
【0062】
当該ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または化合物は、希釈剤及び担体の標準的な滅菌非発熱性製剤として、任意の適切な経路で、例えば静脈内、腹腔内、または膀胱内のように、通常、非経口的に投与されてよい。当該化合物(またはポリペプチドもしくはポリヌクレオチド)は、局所的に投与されてもよく、これは外傷の治療のために特に有利であるであろう。当該化合物(またはポリペプチドもしくはポリヌクレオチド)は、限局的な方法で、例えば注射により投与されてもよい。
【0063】
本発明のさらなる態様は、例えばTACE(TNFα変換酵素)、ADAMTS-4、またはADAMTS-5等の1つまたは複数のADAMの阻害を必要とする患者の治療のための医薬の製造における、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(または化合物)の使用を提供する。
【0064】
患者は、TNF-αの調節されていないまたは調節不全のシェディングにともなう炎症性疾患の患者であってよい。TACE活性は、TGFα、p75、及びp55 TNF受容体、L-セレクチン、並びにアミロイド前駆体タンパク質を含むその他の膜結合タンパク質のシェディングにも関わっている[Black(2002)Int:J. Biochem. Cell Biol. 34:1〜5頁]。この点において、患者は、関節リウマチまたは変形性関節症の患者であってよい。患者は、放射線医学的にもしくはその他の方法を用いて診断された疾患の初期段階、またはADAMTS-4及びADAMTS-5が関わっていると考えられる関節軟骨の調節されていない分解を含む関節リウマチあるいは変形性関節症の患者であってよい。ADAMTS-4及びADAMTS-5は、アグリカン、フィブロモジュリン、デコリン、及びバイグリカンを分解する。
【0065】
従って、本発明のさらなる態様は、関節リウマチ、変形性関節症、骨減少症、骨溶解、骨粗しょう症、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、変性軟骨損失、敗血症、敗血症性ショック、AIDS、HIV感染[Peterson, P. K.;Gekker, G;ら J. Clin. Invest 1992、89、574頁;Pallares-Trujillo, J.;Lopez-Soriano, F. J. Argiles、J. M. Med. Res. Reviews、1995、15(6)、533頁]、移植片拒絶[Piguet, P. F.;Grau, G. E.;ら J. Exp. Med. 1987、166、1280頁]、悪液質 [Beutler, B.;Cerami, A. Ann. Rev. Biochem. 1988、57、505頁]、食欲不振、炎症[Ksontini, R.;MacKay, S. L. D.;Moldawer, L. L. Arch Surg. 1998、133、558頁]、腹部大動脈瘤、脳卒中、うっ血性心不全[Packer, M. Circulation、1995、92(6)、1379頁;Ferrari, R.;Bachetti, T.;ら Circulation、1995、92(6)、1479頁]、虚血後再灌流障害、中枢神経系の炎症性疾患、炎症性腸疾患、またはインスリン抵抗性[Hotamisligil, G. S.;Shargill, N. S.;Spiegelman, B. M.;ら Science、1993、259、87頁]を治療するための医薬の製造における、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(または化合物)の使用を提供する。これらの疾患及び症状は、TACE、ADAMTS-4、ADAMTS-5、及びおそらくADAM-10の過剰な活性に関連していると考えられる。
【0066】
これらの症状は、TNFαにより介在される症状または疾患の例と考えられる。その他のこのような症状または疾患を治療するための医薬の製造における、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(または化合物)の使用も、本発明の範囲内に含まれる。MMPをより少なく阻害するTACE及び/またはADAM-10(これもまたTNF-αのシェディングにおいて役割を担うと考えられる)の阻害剤は、これらの症状の治療または予防において有用であると考えられる。TNFαにより介在される症状は、当業者に公知であり、例えばUS2005113346、「TNF-[alpha] in Human Diseases」、Current Pharmaceutical Design、1996、2、662頁;WO 2004/006925;敗血症性ショック、血行力学的ショック、敗血症症候群、虚血後再灌流障害、マラリア、クローン病、炎症性腸疾患、マイコバクテリア感染、髄膜炎、乾癬、うっ血性心不全、線維症、悪液質、移植片拒絶、癌、血管新生をともなう疾患、自己免疫疾患、皮膚炎症性疾患、変形性関節症、関節リウマチ、多発性硬化症、放射線障害、高濃度酸素肺障害、歯周病、HIV、及びインスリン非依存性糖尿病に言及するUS 2005075384;血管新生、虹彩ルベオーシス、血管新生緑内障、年齢関連黄斑変性症、糖尿病性網膜症、虚血性網膜症、及び未熟児網膜症に言及するUS 6,534,475号に詳細に論じられている。
【0067】
予防的治療として、ADAMTS-4またはADAMTS-5の阻害は、例えば変形性関節症に特に有用であり得る。これらの酵素は、何年もの期間にわたって軟骨に作用すると考えられている。この疾患の根底にあるプロセスは、10〜30年を要すると考えられている。従って、予防的治療は、当該疾患の発生の危険があると考えられる患者、または疾患の非常に初期の患者に望ましいであろう。
【0068】
本発明のさらなる態様は、治療上有効な量の本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(または化合物)を患者に投与する工程を含む、1つまたは複数のADAM、例えばTACE(TNFα変換酵素)、ADAMTS4、またはADAMTS5等の阻害を必要とする患者を治療する方法を提供する。
【0069】
本明細書において言及するすべての文献は、本明細書によって参照により組み込まれる。
【0070】
ここで、本発明を、以下の限定しない図面及び実施例を参照してより詳細に記載する。
【実施例】
【0071】
<実施例1:組織メタロプロテアーゼ阻害剤-3における反応部位変異は、TNF-α変換酵素ではなくマトリックスメタロプロテアーゼの阻害を低下させる>
組織メタロプロテアーゼ阻害剤-3(TIMP-3)は、細胞外マトリックスの代謝回転及び細胞表面タンパク質のシェディングにおいて機能する細胞外及び細胞表面のメタロプロテアーゼの2つのファミリーであるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)及びいくつかのADAM(アダマリシン)の二重阻害剤である。TIMPによるMMPの阻害機構は、よく特徴づけされており、MMPとアダマリシンの触媒ドメインは相同的であるため、TIMP-3のアダマリシンとの相互作用は、密接に類似していると推測されていた。ここで、我々は、TIMP-3の阻害ドメイン(N-TIMP-3)によるADAM-17(TACE)の細胞外領域の阻害が、正の協同性を示すことを報告する。また、N-TIMP-3のMMP相互作用表面のコアにおける変異が、MMPへの結合親和性を劇的に減少させるが、TACEに対する阻害活性に対してはほとんど影響がない。これらの結果は、TIMP-3によるADAM-17の阻害機構が、MMPに対するものとは異なり得ることを示唆している。変異タンパク質はまた、ホルボールエステルで刺激した細胞からのTNF-α放出の有効な阻害剤でもあり、MMP阻害によって生じる副作用を低減し得、且つ関節リウマチ等の過剰のTACE活性をともなう疾患の治療に有用である可能性があるTACE特異的阻害剤を設計するための手掛りをそれらが提供することを示している。
【0072】
用いられる略語は、MMP:マトリックスメタロプロテアーゼ、TIMP:組織メタロプロテアーゼ阻害剤、N-TIMP:TIMPのN末阻害ドメイン、ADAM:ディスインテグリン及びメタロプロテアーゼ、TACE:腫瘍壊死因子α変換酵素、MT1-MMP:膜型メタロプロテアーゼ1、TAPI-2:HONHCOCH2CH(CH2CH(CH32)-CO-t-ブチル-Gly-Ala-NHCH2CH2NH2、Ki(app):見かけの阻害定数。
【0073】
[実験手順]
材料−pET-42bベクター(Novagen)中にTIMP-3のN末ドメインのC末にHisタグを付加した形をコードする遺伝子を含むプラスミドpET-42b-N-timp-3His8を、以前に記載されたように作製した(8)。プラスミド構築、並びにN-TIMP-3変異体の発現、精製、及びin vitro折り畳みに用いたすべての試薬、細胞、及び装置は、先行研究と同じ供給源から入手した(8)。動態アッセイに用いたメタロプロテアーゼ及び基質は、以前に報告された供給源から入手した(19、27)。N-TIMP-1は、E.coliで発現され、記載されたようにしてin vitroで折り畳まれ(19)、合成メタロプロテアーゼ阻害剤TAPI-2[HONHCOCH2CH(CH2CH(CH32)-CO-t-ブチル-Gly-Ala-NHCH2CH2NH2]は、Peptides Internationalからのものであった。ヒト単球THP-1細胞及びRPMI-1640培地はATCCから購入し、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)はSigmaからであり、ELISAに用いた抗体はBD Pharmingenからのものであった。
【0074】
N-TIMP-3変異体の構築−プラスミドpET-42b-N-timp-3His8を、PCRによる部位特異的突然変異誘発のための鋳型として用いた。用いた正方向プライマー(変異コドンは下線を付し、制限部位は斜体で示す)は、
5'-AAAACATATGTGCGGATGCTCGCCC-AGCCAC-3'(T2G用)及び
5'-AAAACATATGGCATGCACATGCTCG-CCCAGCCAC-3'(-1Ala用)
であった。
【0075】
逆方向プライマーは、
5'-AAAAGCGGCCGCGTTACAACCCA-GGTGATA-3'
であった。
反応は、PCR Sprint HYBAIDシステムで、Vent PCRキット(New England Biolabs)を用いて、94℃で3分間のホットスタートの後に、94℃で1分間、60℃で1分間、及び72℃で2分間の35サイクルで行った。PCR産物は、NdeI及びNotI部位(どちらの酵素もNew England Biolabsから)を用いてpET-42bベクターに再度クローニングし、T7プロモータープライマーを用いて自動DNA配列決定により確認した。
【0076】
N-TIMP-3及び変異体の発現、精製、及びin vitro折り畳み−N-TIMP-3及びその変異体を、E. coli BL21(DE3)細胞内で封入体として発現させた。6Mグアニジン-HClを用いてタンパク質を抽出し、以前に記載されたようにして(8)、6Mグアニジン中でNi2+キレートクロマトグラフィーにより精製した。精製タンパク質をシスタミンで処理し、折り畳みのプロセスの間にタンパク質の可溶性を増大させるために1M NaClを含有させた以外は記載されたようにして(8)、5mM β-メルカプトエタノール及び1mMの2-ヒドロキシエチルジスルフィドの存在下で、透析により変性剤を除去することによって、in vitroで折り畳んだ。折り畳まれたタンパク質を、次いで20mM Tris-HCl(pH 7.0)、1M NaCl、及び20%グリセロールであらかじめ平衡化した5mlのNi2+-NTAカラムにのせ、200mM イミダゾールを含有する同じ緩衝液で溶出した。
【0077】
酵素阻害動態研究−MMP及びTACEについての阻害動態研究を、以前に記載されたもの(19、27)に改変を加えて行った。精製されたN-TIMP-3及び変異体を、20%グリセロール含有20mM Tris-HCl(pH 7.0)、50mM NaCl に対して透析し、14000rpmで10分間遠心分離して任意の沈殿物を除去し、阻害アッセイを実施する前にタンパク質濃度を再び測定した。NaClは、in vitroでTACE外部ドメインの活性を阻害するため(28)、我々は、TACEを用いるすべてのアッセイにおいてNaClの最終濃度を1mMに調整した。等量(アッセイ全容量の10%)のN-TIMP-3及び変異体の希釈溶液をTACEアッセイに添加し、最終pHが8.8になった。
必要に応じて以下の等式に当てはめることによって、阻害データを分析した。
【0078】
(等式1)強固な結合の阻害:
【数1】

(等式2)通常の阻害:
【数2】

(等式3)協同的阻害(29):
【数3】

【0079】
式中、vは実験的に決定された反応速度であり、v0は阻害されていない活性であり、Eは酵素濃度であり、Iは阻害剤濃度であり、Kは見かけの阻害定数(Ki(app))であり、hはヒル係数である。
【0080】
THP-1細胞からのTNF-αシェディングの阻害−使用前に、すべてのTIMP溶液を、20mM Tris-HCl(pH 7.0)、150mM NaCl、及び20%グリセロールに対して透析した。5%胎児ウシ血清を補充したRPMI-1640培地中で培養したヒト単球THP-1細胞を回収し、十分に洗浄し、2.5×106細胞/mlで無血清培地に再び播種した。PMAを最終濃度100ng/mlまで添加することによってシェディングを刺激し、細胞を37℃で5% CO2を用いて20分間インキュベーションした後に、1/10容量の種々の濃度のN-TIMP-3または変異体を添加した。次いで、細胞をさらに6時間培養し、馴化培地を3000rpmでの遠心分離によって回収した。培地中に放出された可溶性TNF-αの量を、Engelbertsらにより記載されたもの(30)に改変を加えたサンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイを用いて測定した。放出TNF-αを、マウスモノクローナル抗ヒトTNF-α抗体BD551220(1:200希釈)で被覆したマイクロタイタープレートに吸着させ、結合したTNF-αを、ビオチン標識マウスモノクローナル抗ヒトTNF-α抗体BD554511(1:500希釈)、セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン、及びペルオキシダーゼ基質としての3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(KPL、英国ギルフォード)を用いて検出した。ELX808プレートリーダー(BIO-TEKインスツルメンツインコーポレーテッド(Instruments Inc))を用いて、450nmでプレートを読み取った。組換えヒトTNF-αの標準曲線は、60〜5000pg/mlの範囲に及んだ。
【0081】
[結果]
N-TIMP-3変異体の設計及び生成−N-TIMP-3における変異は、TIMP-1/MMP-3複合体及びTIMP-2/MT1-MMP複合体の既知の構造(13、14)、並びにTIMPに関する変異についての先行研究(17、18)に基づいて、MMPに対する阻害活性を低下させるように設計された。具体的な変異は次のとおりである。
活性部位Zn2+とCys1との相互作用を乱すN末端のアラニン伸長(-1A)の付加;N-TIMP-1(我々の未発表のデータ)及びTIMP-2(17)におけるこの変異は、MMPに対する阻害活性を大幅に低減した。
残基2の側鎖を除去するThr2のGly(T2G)への変異;この残基は、MMPのS1'特異性ポケットと相互作用し、N-TIMP-1におけるこの変異は、MMP-1、-2、及び-3に対する親和性を約1000倍低減する(18)。
これらの変異体は、野生型阻害剤と同様に、封入体として細菌内で発現され、精製され、in vitroで折り畳まれた。高塩濃度はN-TIMP-3の可溶性を増大させることが見い出された。従って、我々は、in vitro折り畳みの間ずっと、1 M NaClを含有させた。このことは、N-TIMP-3及び変異体の収率を著しく増加させた(データは示さず)。
【0082】
精製メタロプロテアーゼに関する変異体の阻害特性−野生型N-TIMP-3及び2つの変異体の阻害活性を、4つの異なるサブグループを示すMMP:全長コラゲナーゼ1(MMP-1)、ゼラチナーゼA(MMP-2)、ストロメライシン1の触媒ドメイン(MMP-3(ΔC))、及び膜型タイプ1 MMP(MMP-14)を用いて決定した。N-TIMP-1及びTIMP-2の対応する変異体について以前に報告されているように(17、18)、N-TIMP-3における両変異は、4つのMMPに対する阻害活性を、2〜3桁の大きさで低減させた(表I)。図2Aは、野生型及び変異型N-TIMP-3によるMMP-14(CD)の阻害における違いを強調する。
【0083】
膜貫通ドメイン及びC末細胞質ドメインが欠失している可溶型TACE(TACE R651;(28))に対する野生型N-TIMP-3に関しても、当該変異体の阻害活性を比較した。TACEの活性はより高いpHで最適であり((7)及びR&D systemsからのプロトコール)、且つ塩によって強く阻害される(28)ため、これらのアッセイを、pH 9.0、低イオン強度で行った。野生型N-TIMP-3及びヒドロキサメート(hydroxamate)ベースの阻害剤であるTAPI-2は両方とも、TACEの活性を効果的に阻害した。対照的に、野生型N-TIMP-1は、同じ条件下で最小の阻害活性を有していた(図2B)。野生型N-TIMP-3によるTACEの阻害曲線はS字状であり、TAPI-2による阻害、並びにMMPのN-TIMP-3及びN-TIMP-1による阻害とは著しく対照的である(図2A、2B;(31))。S字状の阻害曲線は、N-TIMP-3のT2G及び-1A変異体を用いたTACEに関しても得られた(図2C)。MMPに対する活性を大きく低減させるこれらの変異は、TACEの阻害に対してはほとんど影響を有さなかった。N-TIMP-3及びその変異体に関して得られた阻害データは、強固な結合もしくは弱〜中程度の阻害剤についての等式1または2、あるいは複数部位結合を表す他の等式(示さず)にあまり適合しなかったが、正の協同的結合についての等式3によく適合した。結果は、当該変異が見かけの阻害定数(Ki(app))に対して小さい影響しか有さないだけでなく、ヒル係数hを低減させることを示している(表II)。
【0084】
TACE及びMMPの活性測定に用いた条件は、pH及びイオン強度が異なる。このことがN-TIMP-3及び変異体の阻害活性に影響し得るかどうかを決定するために、野生型N-TIMP-3及びT2G変異体のTACEに対する阻害活性をさらに、pH 7.5で測定した。なぜなら、MMP阻害測定をこのpHで行ったためである。S字状の阻害曲線は、両タンパク質に関して得られ、それぞれ26±3及び46±2nMのKi値が得られた(データは示さず)。強い酵素阻害のために、より高いNaCl濃度でのTACE活性測定は行うことができなかった。N-TIMP-3及び変異体の阻害パターンがpH及びイオン強度により影響されるかどうかを決定するために、我々は、TACE活性測定に用いた条件下で、N-TIMP-3及び-1A変異体によるMMP-1の阻害を検討した。両方ともに、それぞれ1.6nM及び412nMのKi値を有する通常の双曲線阻害プロファイルを示した(データは示さず)。従って、野生型阻害剤の結合は、より高いpHでは著しく影響されず、当該変異はさらに、pH7.5でのものよりも3倍低い程度ではあるが、結合を強く妨害した。
【0085】
TNF-αの細胞性シェディングの阻害に対するN-TIMP-3における変異の効果−多くの細胞表面タンパク質の外部ドメインは、細胞表面の「シェダーゼ」によって触媒されるプロセシングにより可溶型で放出される。TACE/ADAM17及びADAM10は両方とも、シェダーゼとして活性であることが見い出されており、TACEはサイトカインであるTNF-αをその細胞表面前駆体から放出させるのに特に重要である(32)。単球からのTNF-αの放出は、炎症及び免疫性に重要であり、このことが、TACEを抗タンパク質分解療法の興味深い標的にしている。我々は、N-TIMP-3及び変異体がヒト単球THP-1細胞からのTNF-αシェディングを阻害する能力について検討し、他のシェダーゼはそうではないが、TACEは細胞表面からのTNF-αの放出を担う主要な酵素であることが示された(33)。細胞培養系では、in vitroでの精製酵素の阻害よりもより高濃度の阻害剤が必要である。それにもかかわらず、50〜500nMの濃度において、N-TIMP-3はPMAで刺激されたTNF-αの放出を阻害したが、N-TIMP-1は何の効果も有さなかった。図2Cに示す不純物のない酵素を用いた研究のように、N-TIMP-3におけるT2G及び-1Aの変異は、TNF-α放出に対してわずかに低減された阻害活性を示しただけであった(図3)。
【0086】
[考察]
4つの哺乳動物TIMPのうち、TIMP-3は、MMP及びディスインテグリンメタロプロテアーゼの両方を含む、メタロプロテアーゼ阻害剤として最も広い範囲を有する。後者は、複合マルチドメイン酵素であり、MMPとは触媒ドメイン及びプロドメインのみを共有する。ADAM及びMMPの触媒ドメインは相同的であるが、それらの配列同一性のレベルは低く、TACE触媒ドメインの結晶構造は、これらの3次構造が異なることを示す(20)。TACE及びMMPの構造の間で位相学的に等しい~120のCα原子のrms偏差は、1.6Åである。ADAMは、付加的なα-ヘリックス及び複数のプルターンループを含む独特の構造的特徴を有するが、MMPによって共有される構造上の亜鉛イオン及びカルシウムイオンを欠く(20)。TACE及びMMPは、一般に、類似の活性部位構造を有するが、TACEのものは、疎水性S1'特異性ポケットと一体化する深いS3'ポケットを有する点において異なる。多くの先行研究は、構造的研究(20)、並びにN-TIMP及びそれらの変異体を用いた阻害研究(21〜24)を含む、TACEの切断された触媒ドメインに焦点を当てている。TIMP-3/TACE複合体の構造なしに、Leeら(34)は、TIMP-1及びTIMP-2の既知の構造を用いてTIMP-3の構造をモデル化し、これを、2つの既知の阻害性TIMP/MMP複合体におけるものと同様の様式で、TACEの触媒ドメインとドッキングさせることができた。このことは、TACEのTIMP-3阻害の機構が、MMPに対する機構と同様であり得ることを示唆している。しかし、TACEの切断された触媒ドメインと、ディスインテグリン、システインリッチ、及びクランビン様のドメインを含有するここで用いられるものに類似したより長い型との間には、TIMP-3阻害に対する感受性に著しい差がある(35)。非触媒ドメインは、TACE及び他のADAMにおける基質特異性に影響を及ぼすことが示されている(25、36)。
【0087】
今回の研究は、TACEの長い型とMMPのTIMP-3による阻害の間の重要な相違点を同定する。第一に、野生型N-TIMP-3及び2つの変異体によるTACEの阻害は、1.9〜3.5のヒル係数を有する正の協同性を示す。この知見は予測されなかったが、TACEの種々の調製物及びより低いpH(7.5)で確認されている。正の協同性は、複数の相互作用結合部位の存在によって生じ、TACEにおける代替的なコンフォメーションの状態及びその構造的基礎は、現在知られていない。しかし、正の協同性は、TACEの類似の型による合成ペプチド基質の加水分解について以前に記載されている(37)。協同性は、N末端及びC末端で誘導体化されたペプチド基質を用いてのみ観察されたが、キャップされていないペプチドは、通常の双曲線の飽和曲線を示した(37)。この明らかなアロステリックな挙動は、TACE活性の調節について重要な意味を有し得る。
【0088】
N-TIMP-3阻害における第二の主要な相違点は、N-TIMP-3のT2G及び-1Aの変異体はともにTACEの強力な阻害剤であるが、4つの代表的なMMP(コラゲナーゼ1、ゼラチナーゼA、ストロメライシン1、及び膜型タイプ1 MMP)の非常に弱い阻害剤であり、また他のMMPの弱い阻害剤でもあるようだという知見である。TIMPにおけるα-アミノ基へのN末端の任意の伸長の存在は、MMPに対する阻害活性を大きく低減させることが示されており(15〜17)、おそらくこれは、このような伸長が触媒性Zn2+とCys1との相互作用を妨げるためである。N-TIMP-3の-1A変異体がMMPではなくTACEの有効な阻害剤であるという事実は、活性部位Zn2+と阻害剤との相互作用がTACEへの結合強度に比較的重要でない可能性があることを示唆している。このことは、細菌によって発現された形態の単離プロドメイン(22〜214残基)が、TACEの触媒ドメイン及び全長可溶型の両方を阻害することが見い出されている、TACE自体のプロドメインによるTACEの阻害に関する先行研究と一致するようである。MMPにおいては、メタロプロテアーゼドメインの触媒性Zn2+と相互作用する単離プロドメインにおけるシステインスイッチ領域のCys184の変異は、プロドメイン阻害に対して有意な効果を有さなかった(26)。
【0089】
TIMPとMMPの相互作用の別の重要な特徴は、MMPのS1'特異性ポケット内へのTIMPの残基2の側鎖の伸長である。対応する残基は、TIMP-3/TACE複合体のモデルにおいて類似の役割を有すると提案されている(34)。ほとんどのMMPに比べて、TACEのS1'ポケットは深く、非常に疎水性である。しかし、N-TIMP-3のThr2を、TACEのS1'部位によりよく適合するはずのより大きい疎水性側鎖を有する残基で置換すると、この酵素への阻害剤の結合は改善しなかった(21)。この残基をプロテアーゼのS1'ポケットとの可能な相互作用のための側鎖を欠くグリシンに変異させると、MMPへの親和性の大きな低減をもたらすが、TACEの阻害に対してはほとんど影響がない。このことは、この相互作用部位も、結合の自由エネルギーにほとんど寄与しないことを示唆する。我々は、TIMP-3が、MMPとは異なる様式で、Thr2が当該酵素のS1'ポケットと接触さえしていないようにTACEとの複合体中で配向している可能性を除外することはできない。
【0090】
今回の研究で用いたTACEの長い型は、阻害剤に応答する触媒ドメインとは異なる。これは、TACEプロドメインによる阻害に対して感度が30倍低く(26)、N-TIMP-3によってより弱く阻害される(35)。さらに、N-TIMP-3のTACE触媒ドメインへの結合を増大するいくつかの変異は、酵素のより長い型への結合に対してほとんど効果を有さないことが見出された(35)。Murphy及び共同研究者らは、TACEのシステインリッチドメインが、触媒ドメインへのTIMP-3 の結合を阻害するように作用するであろうことを示唆し、MMP反応部位から離れたリジンの変異が、より長い型の酵素により有効な阻害剤を生じると報告している(22)。これらの結果は、非触媒ドメインが触媒ドメインの特性を調節していることを示唆しており、in vivoでの可能な使用のために特定の阻害剤を開発する際に、より長い型の酵素の阻害特性を考慮することの重要性を強調する。
【0091】
可溶性TNF-αは、TACE/ADAM17のほかに、ADAM10、ADAM19、MMP-7、及び白血球セリンプロテアーゼであるプロテアーゼ3を含むいくつかのプロテアーゼによって、培養細胞または組織から放出される(38〜41)。THP-1細胞の膜抽出物から精製されるADAM10は、in vitroでプロTNF-αをプロセシングすることが示されたが(42)、種々のADAM mRNAを特異的に標的にするアンチセンスオリゴを用いた研究は、ADAM10ではなくTACEが、この細胞系においてTNF-αについての主要なシェダーゼであることを示唆する(33)。このことは、N-TIMP-3はTHP-1細胞においてTNF-αのシェディングを効果的に阻害するが、ADAM10の強力な阻害剤であるTIMP-1の阻害ドメインは効果を有さないという我々の発見と一致する。MMPを効果的に阻害しないN-TIMP-3変異体が野生型の阻害剤にに類似の効果を有するという事実は、MMPがこれらの細胞におけるシェディング活性に主要に貢献するという可能性を事実上除外する。これらの変異体は、MMPの活性を、生体系におけるTACE及びおそらく他のADAMの活性から区別するために有用なツールを提供する。後者の点に関して、これらの変異が、ディスインテグリンメタロプロテアーゼに対するTIMP-3の阻害活性にどのように影響するかを見出すことは興味深い。
【0092】
in vivoでのTNF-αのシェディングの阻害におけるTIMP-3の直接的関与がマウスモデルで最近実証され、そこでは、TIMP-3遺伝子の削除が過剰なTACE活性、可溶性TNF-αのレベルの増加、及び肝臓での重篤な炎症をもたらす(43)。この観察結果は、関節リウマチ及びクローン病を含むTNF-αの調節されないシェディングをともなう炎症性疾患の治療においてTIMP-3を用いることの実現可能性をさらに実証する。しかし、一連のMMPは、関節炎において過剰発現されているが(44)、MMP活性の欠如は、関節及び骨の異常の原因である。例えば、MT1-MMPは、骨細胞の安定的貯蔵の維持及び骨の正常な発達に必須であり(45)、MT1-MMPをコードする遺伝子の欠陥を有するマウスは、骨減少症及び関節炎を発生する(46)。さらに、いくつかのサウジアラビアの血縁家族で同定されたMMP-2遺伝子における2つの変異は、MMP-2活性の欠如をもたらし、病気に冒された家族のメンバーにおける常染色体劣性型の多中心性骨溶解及び関節炎の原因であり得る(47)。これらの観察結果は、MMPが、関節炎に対する重要な防御効果を有し得ることを示唆する。TIMP-3のN末ドメインがMMP-2及びMT1-MMPの両方の強力な阻害剤であるため(27)、野生型阻害剤を用いる可能性のある治療の結果を予測できない。本明細書に記載するN-TIMP-3変異体は、正常な生理的プロセスにおいて重要な役割を有する大きいファミリーのプロテアーゼであるMMPを、実質的に危害を加えないため、臨床への応用において野生型阻害剤を超える利点を有するであろう。
【0093】
(参考文献1)




【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
<実施例2:ADAMTS-4を阻害する能力についての(-1A)N-TIMP-3及びN-TIMP-3(T2G)の変異体の試験>
[方法]
C末スペーサドメインを欠く組換えヒトADAMTS-4を、記載されたようにして調製して発現させ(Kashimagi, M.ら、J. Biol. Chem. 279、10109〜10119頁、2004)、Hascall及びSajdesa(J. Biol. Chem. 244、2384〜2396頁、1969)に従って、ウシの軟骨アグリカンを精製した。C末GELEを有するフラグメントを認識する抗体は、Kashiwagiら(2004)により記載されている。(-1A)N-TIMP-3及びN-TIMP-3(T2G)によるADAMTS-4の阻害を調べるために、0.5nMのADAMTS-4を、種々の濃度の阻害剤とともに30分間、室温でインキュベーションし、次いで1mg/mlのウシアグリカンとともに37℃で2時間インキュベーションした。当該反応を、10mMのEDTAによって停止させ、消化産物を、コンドロイチナーゼABC(0.01単位/10μgアグリカン)及びケラタナーゼ(0.01単位/10μgアグリカン)により、Tris-酢酸(pH6.5)、5mM EDTA中で37℃にて3時間、脱グリコシル化した。次いで、生成物を10倍量のアセトンで沈殿させ、抗GELE抗体を一次抗体として用い、Littleらにより記載されているように現像するウェスタンブロッティング分析にかけた。バンドの染色強度を、濃度測定分析によって定量した。
【0097】
[結果]
(-1A)N-TMP-3(左のパネル)及びN-TIMP-3(T2G)(右のパネル)はともに、それぞれ18nM及び15nMのKi(app)を有する用量依存的な阻害を示す。
【0098】
[考察]
in vitro阻害アッセイは、N-TIMP-3変異体が、ADAMTS-4(アグリカナーゼ1)の有効な阻害剤であることを示す。N-TIMP-3は、ADAMTS4及びADAMTS-5(アグリカナーゼ2)をともに阻害するため(Kashwagiら、2001 [147])、我々は、これらの変異体がADAMTS-5を同程度阻害する可能性があると推測する。従って、これらのN-TIMP-3変異体は、軟骨アグリカン分解の有効な阻害剤である可能性がある。
【0099】
(参考文献2)

【0100】
<実施例3:培養ブタ関節軟骨を用いた、(-1A)N-TIMP-3及びN-TIMP-3(T2G)変異体の軟骨アグリカン分解を阻害する能力についての試験>
《軟骨培養及び阻害研究》
ブタ関節軟骨を、3〜9ヶ月齢のブタの中手指関節から、長さ約3mm及び幅2〜3mmの小さい削り屑に切断した。切断後に、軟骨を24時間、37℃にて5% CO2の下で、ペニシリン-ストレプトマイシン、アンフォテリシンB、及び5%胎児ウシ血清を含有するDMEM中に放置する。次いで、培地を新鮮な培地に置き換え、軟骨をさらに24〜48時間放置する。次いで、各軟骨片を、10〜100ng/ml IL-1αまたは1μMレチノイン酸、及び種々の濃度の各TIMP-3変異体を含むかあるいは含まない200μlの無血清DMEMを含む丸底96ウェルプレートの1つのウェルに入れる。3日後に、すべての馴化培地を回収し、使用するまで-20℃で保存する。
【0101】
《グリコサミノグリカン(GAG)放出の分析》
馴化培地中に放出されたGAGを、Farndaleら[20]により記載されるようなジメチルメチレンブルー(DMMB)アッセイの変法を用いて、二重で測定する。サメのコンドロイチン硫酸(0〜2.62μg)を標準物質として用いる。培地中に放出された全GAGの%は、次のようにして算出する:放出された全GAGの%=(培地中の全GAG)/(培地中の全GAG+軟骨中に残っている全GAG)。
【0102】
《アグリカナーゼ及びMMPにより生じたアグリカンフラグメントのウェスタン分析による同定》
馴化培地中に放出されたアグリカンフラグメントを、コンドロイチナーゼABC及びケラタナーゼでの消化によって脱グリコシル化し、サンプルを、Littleら[17]により記載されるようにSDS/PAGE及びウェスタンブロッティング分析にかける。アグリカナーゼにより生じた及びMMPにより生じたアグリカンフラグメントを検出するために用いる一次抗体は、それぞれBC-3及びBC-14である[19]。抗原−抗体複合体を、抗マウスAP結合ロバ抗体及びAP基質によって検出する。
【0103】
[結果]
N-TIMP-3を用いて前記の実験を行った結果は、次のとおりである。Gendronら(2003)FEBS Lett 27877、1〜6頁も参照されたい。(-1A)N-TIMP-3及びN-TIMP-3(T2G)変異体に関して、同様の結果であると考えられる。
【0104】
《N-TIMP-3は、軟骨外植片におけるIL-1α及びレチノイン酸で刺激されたアグリカン分解を阻害する》
ウシ鼻軟骨外植片を、N-TIMP-1、TIMP-2、またはN-TIMP-3の存在または非存在下で、IL-αで3日間刺激した。IL-1αで処理した外植片は、コントロールに対して約5倍のGAG放出の増加を示した。IL-1αで刺激された放出は、N-TIMP-3の添加により、濃度依存的に著しく阻害された。しかし、N-TIMP-1及びTIMP-2は、1μMの濃度でさえ有効でなかった。IL-1αでの処理の際の軟骨外植片のサフラニンO染色により、N-TIMP-3の添加は、マトリックスからのGAGの放出を保護することが明らかになった。同様の結果が、IL-1αで刺激されたブタ関節軟骨に関して観察された。
【0105】
レチノイン酸で刺激されたブタ関節軟骨からのGAG放出も、IL-1αで刺激された軟骨と比較してより小さい程度であるが、N-TIMP-3によって阻害された。N-TIMP-1及びTIMP-2は、レチノイン酸で刺激されたGAG放出を阻害しなかった。
【0106】
《アグリカナーゼ活性は、N-TIMP-3によぅて特異的に阻害される》
前記の実験からの馴化培地を、アグリカナーゼにより生じたアグリカンネオエピトープARGSVまたはMMPにより生じたアグリカンネオエピトープFFGVGのいずれかを認識するモノクローナル抗体によって分析した。GAG放出と一致して、いずれかの刺激物質での処理の際に放出された、アグリカナーゼにより生じたアグリカンフラグメントの量は増加したが、MMPにより生じたフラグメントは検出されなかった。アグリカナーゼにより生じたフラグメントの放出は、IL-1αで刺激された軟骨及びレチノイン酸で刺激された軟骨の両方で、0.05μM N-TIMP-3により部分的に阻害され、さらに0.1μM N-TIMP-3により完全に阻害された。N-TIMP-1及びTIMP-2は、1μMの濃度でさえ有効でなかった。
【0107】
《N-TIMP-3のN末変異体によるIL-1αで刺激されたブタ関節軟骨分解の阻害》
ブタ関節軟骨片を3日間培養した。軟骨を、記載する濃度のTIMPとともにIL-1α(10ng/ml)で刺激した。培地中へのグリコサミノグリカン(GAG)の放出を、ジメチルメチレンブルー(DMMB)によって測定した。N-TIMP-3及びN末変異体は、用量依存的に分解を阻害したが、TIMP-1及びTIMP-2は阻害しなかった(図7)。
【0108】
(参考文献3)実施例3用の番号付け

【0109】
<実施例4:Ki(app)決定>
《アグリカナーゼ(ADAMTS-4及びADAMTS-5)活性用のアッセイ》
1)GST-IGD-FLAG基質の調製
C末FLAG配列を付加されたアグリカンの球間ドメイン(interblobular domain:IGD)(Tyr331〜Gly457)に融合したグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)を含む基質(GST-IGD-FLAG)を、pGEX-4T1内にEcoR1及びXho1クローニング部位でクローニングによって調製した。この基質を、pGEX4T1 GST-IGD-FLAGプラスミドでトランスフェクションしたE. coli BL-21株(非-DE3)で、100mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)での誘導によって発現させた。誘導後に、細菌を遠心分離によって回収し、20mlの50mM Tris-HCl(pH8.0)、150mM NaCl、0.02% NaN3、100 mM DTT、100 mM EDTA、及びプロテアーゼ阻害剤カクテルセットII阻害剤(Merck、英国ノッティンガム)中に再懸濁した。次いで、再懸濁した細菌をフレンチプレスを用いて機械的に破砕した(5×1500Psi)。24,000gで遠心分離した後に(30分、4℃)、発現したGST-IGD-FLAGを含む上清を、グルタチオン-セファロース4Bカラム(Qiagen、英国クローリー)にかけた。0.5M NaCl、50mM Tris-HCl(pH8.0)でカラムを洗浄し、10mM還元型グルタチオン、50mM Tris-HCl(pH8.0)で溶出した。溶出物質を10容量の50mM Tris-HCl(pH8.0)、150mM NaClに対して3回透析した。次いで、必要な場合にはこの基質をA280>2.5までポリエチル硫酸膜スピン濃縮器(Vivascience、英国エプソム)を用いて濃縮する。完全な基質(52kDa)の濃度を、既知の量のウシ血清アルブミン(GE Healthsciences、英国バッキンガムシャー)のクーマシーブリリアントブルー染色との比較によって決定した。細菌培養物1リットル当たりの基質の収量(>20mgの部分的に精製された物質)は、2000回を超えるアッセイ反応に十分であった。
【0110】
2)アグリカナーゼアッセイ
アグリカナーゼアッセイを、50mM Tris HCl pH7.5、150mM NaCl、10 mM CaCl2、0.02% NaN3、0.05% Brij-35中で、37℃にて行った。N-TIMP-3を用いた場合、阻害剤を酵素とあらかじめ1時間インキュベーションした。反応容量は、5μlのGST-IGD-FLAG基質(34μM)及び阻害剤の有無での、5μlのADAMTS-4またはADAMTS-5(2nM)からなる全10μlであった。酵素量及びインキュベーション時間は、記載するとおりであった。酵素反応を、10μlの20mM EDTAを含む2×SDS-PAGEサンプルローディングバッファーの添加によって適切な時点で停止させた。次いで、反応物を10% SDS-PAGE分析にかけた。タンパク質を、クーマシーブリリアントブルーR-250を用いて染色した。染色したゲルを、走査型濃度計(Biorad GS-710、英国ヘメルヘムステッド)を用いてスキャンし、生成物(17kDa)のバンド強度を、1D Phoretix定量ソフトウェア(Nonlinear Dynamics、英国ニューカッスルアポンタイン)を用いて定量した。バックグラウンドの減算はローリングボール法を用いて行い、バンド強度はピクセル容量として表した。
【0111】
MMP-1、MMP-2、及びMMP-3についてのKi(app)決定は、実施例1に記載したようにして行った。
【0112】
【表3】

【0113】
変異体(-2A)N-TIMP-3は、ADAMTS-5を、ADAMTS-4よりも約45倍強力に阻害する。ADAMTS-4及びADAMTS-5欠損マウスを用いた最近の研究は、ADAMTS-5が、関節リウマチ動物モデル(Stantonら、2005)及び変形性関節症動物モデル(Glassonら、2005)における軟骨破壊を引き起こす重要なアグリカナーゼであることを示した。図8に示す我々の研究は、3つのN-TIMP-3変異体が野生型N-TIMP-3と同等に有効であることを示し、このことはまた、ADAMTS-5が重要なアグリカナーゼであることを示唆する。さらに、我々の研究は、(-2A)N-TIMP-3変異体は、ADAMTS-5に対してより選択的であるため、毒性がより低いであろうことを示している。
【0114】
(-2A)N-TIMP-3は、TACEの強力な阻害剤でもある。100nMの(-2A)N-TIMP-3に対して、TACE活性の約80〜90%の阻害が観察されたが、この濃度では、MMP-1、-2、または-3に対する阻害は観察されなかった。
【0115】
(参考文献4)

【0116】
<実施例5:単球由来マクロファージ(MDM)に対するTIMP-3変異体の効果>
MDMは、インターロイキン(IL)-1β、腫瘍壊死因子(TNF)α、及びIL-6を含む炎症誘発性サイトカイン;IL-8及びマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-2、及び9を含むケモカインを、例えばLPSでの刺激後に放出する。従って、前記のように、MDMは、ADAMメタロプロテアーゼをMMPよりも大きい程度で阻害すると予測されるTIMP-3変異体または化合物の効果を試験するのに適した細胞である。
【0117】
[実験モデル]
MDMに対するTIMP-3の有効性に対処するために、健常な被験者由来のMDMを実験室で培養し、LPSで刺激した。MMP-9活性及びTNFαに対するTIMP-3変異体の効果を測定した。
【0118】
[方法]
《ヒト末梢血からの白血球の単離》
この方法は、Dransfieldら[7]から改変され、無菌条件下で行われた。血液をEDTA(2%w/v)中に回収した。デキストラン溶液(6%w/v)を、20mlの血液当たり10mlの容量で全血に加え、ダルベッコのPBS中で最終容量を50mlに調整した。サンプルを、室温にて45分間沈殿させた。沈殿後に、上部の白血球に富む層を4℃にて400×gで10分間遠心分離し、上清を捨てた。細胞を含むペレットをダルベッコのPBSに再懸濁し、前回と同様に2回目の遠心分離を行った。
【0119】
《勾配調製》
勾配は、3つの別々の濃度のパーコール(登録商標)からなった。「100%v/v」パーコール(登録商標)溶液を、10%v/vの10×PBSを含む90%v/vのパーコール(登録商標)から調製した。次いで、勾配を以下のようにして調製した。4mlの81%v/ vパーコールを15mlファルコンチューブに加えた。これに4mlの70%v/vパーコールを重ねた。細胞ペレットを3mlの55%v/vパーコール(登録商標)に再懸濁し、次いで、あらかじめ調製した勾配の上に重ねた。細胞を4℃にて750×gで20分間遠心分離した。末梢血単核細胞(PBMC)を、55%/70%の界面(最上層)から回収し、多核白血球(PMN)は、70%/81%界面(最下層)に残った。PBMCを、滅菌PBS中での遠心分離により2回洗浄した。
【0120】
《VarioMACS及びネガティブ選択磁気標識を用いた単球の単離》
PBMCを、血清含有分離緩衝液(滅菌PBS、0.5%w/vウシ血清アルブミン(BSA)、2mM EDTA)中で洗浄した。細胞を、Kimura染色液で1:100に希釈し、血球計数器で計数した。細胞ペレットを、単球分離キットからの以下の比の試薬と再懸濁した。60μl分離緩衝液、20μl Fc受容体(FcR)ブロッキング試薬、及び20μl ハプテン結合抗体カクテルを107細胞に加え、6〜12℃で5分間インキュベーションした。細胞を、標識容量よりも10〜20倍多い容量の分離緩衝液中で2回洗浄した(5分、4℃、250×g)。細胞ペレットを、107細胞当たり60μl分離緩衝液、20μl FcRブロッキング試薬、20μl MACS抗ハプテンマイクロビーズ、及び5μl CD 15マイクロビーズ(混入している任意の好中球を除去するため)に再懸濁し、6〜12℃にて15分間インキュベーションした。細胞を洗浄し(5分、4℃、250×g)、500μlの分離緩衝液に再懸濁した。磁気カラムを、3mlの分離緩衝液での洗浄によって準備した。細胞懸濁物を加え、3mlの分離緩衝液の分割量でさらに4回カラムを洗浄した。単球を含む磁気カラムろ過物を、MDM培地(フェノールレッド、10%v/v熱不活化FBS(HIFBS)、10,000n/10mg/ml(1%w/v)ペニシリン/ストレプトマイシン、2mM(1%v/v)L-グルタミン含有RPMI 1640)中で2回洗浄した。
【0121】
《単球由来マクロファージ用の細胞培養方法》
単球を、1×105細胞/ウェルの密度で、96-ウェル組織培養処理コースター(登録商標)プレートに播種し、加湿インキュベータ中で5%v/v CO2で37℃にて12日間培養した。培地及び2ng/mlのGM-CSFを、4日目と8日目に交換した。12日目に、細胞をマクロファージ表現型に分化させた。
【0122】
《アッセイ》
市販のELISAキットを用いてTNFαを測定し、Flourokineキットを用いてMMP-9を測定した。
【0123】
[結果]
N-TIMP-3変異体T2Gは、MDMによるTNFα基礎放出に対してほとんど効果を有さなかった。LPSの存在下において、T2Gは、MDMによるLPS刺激TNFα放出に対してほとんど効果を有さなかった(図9)。
【0124】
N-TIMP-3変異体-2Alaは、MDMによるTNFα基礎放出に対してほとんど効果を有さなかった。しかし、LPSの存在下において、-2Ala変異体は、~180nMのEC50でMDMによるLPS刺激TNFα放出を阻害した(図9)。
【0125】
-2Ala TIMP-3変異体と同様に、N-TIMP-3分子も、MDMによるTNFα基礎放出に対してほとんど効果を有さなかった。このポリペプチドもまた、~180nMのEC50でMDMによるLPS刺激TNFα放出を阻害した(図9)。
【0126】
正常な被験者由来の細胞に対するこれらの変異体の効果は、これらの変異体がTNFαのレベルを低減させるのに有益であり得ることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】TIMP-3の反応部位のコア領域の構造モデル。この画像は、TIMP-1/MMP-3複合体の結晶構造(pdbファイル1UEA;(13))及びSWISS-MODELレポジトリにおいてヒトTIMP-3についてモデル化された構造(48)に由来する、N-TIMP-3のMMP-3との複合体のモデルから作成された。両方のTIMPのC末ドメインを、テキスト編集により除去した。N-TIMP-3構造を、1UEAでのN-TIMP-1の座標に重ね合わせ、手作業で調整して、2つの構造のN末の4残基が正確に重なっていることを確実にした。サンフランシスコ、カリフォルニア大学のコンピュータグラフィクス研究室(Computer Graphics Laboratory)からのUCSF Chimeraパッケージ(NIH P41 RR-04081による援助;(49))を用いて、これを行い、画像を作成した。
【図2A】N-TIMP-3及びその変異体によるMMP及びTACEの阻害。A.野生型及び変異型N-TIMP-3によるMMP-14(CD)の阻害。白丸:野生型N-TIMP-3、黒丸:T2G、及び白い四角:-1A。
【図2B】N-TIMP-3及びその変異体によるMMP及びTACEの阻害。B.野生型N-TIMP-3、N-TIMP-1、及びTAPI-2によるTACEの阻害の比較。阻害剤を、0.5nMのTACEとともに3時間室温でインキュベーションし、残存酵素活性を、10μMの基質III(R&Dシステムズ)を用いて測定した。pH 9.0、1mMのNaCl最終濃度で、アッセイを行った。白丸:N-TIMP-3、黒丸:TAPI-2、及び白い四角:N-TIMP-1。
【図2C】N-TIMP-3及びその変異体によるMMP及びTACEの阻害。C.野生型及び変異型N-TIMP-3によるTACE(0.5nM)の阻害。白丸:野生型阻害剤、黒丸:T2G、及び白い四角:-1A。
【図3】TNF-αの細胞性シェディングの阻害における、N-TIMP-3の変異の効果。無血清RPMI-1640培地で生育しているTHP-1細胞(2.5×106/ml)を、100ng/mlのPMAで20分間刺激した後に、種々の濃度のN-TIMP-3(野生型及び変異型)を添加した。細胞を、さらに6時間増殖させ、ELISAアッセイ用に馴化培地を回収した。
【図4】プレ配列を含むTIMP-3の配列。
【図5】TIMP-3及びN-TIMP-3ポリペプチド変異体をコードする配列。当該配列は、ATG開始コドン(Met)、変異されたアミノ酸に対するのすべての可能なコドン、及び終止コドン(斜体)を含む。
【図6】N-TIMP-3変異体によるADAMTS-4の阻害。スペーサドメインを欠くADAMTS-4(0.5nM)を、N-TIMP-3変異体とともに記載する濃度で30分間インキュベーションし、次いで、pH 7.5で1mg/mlのウシアグリカンとともに37℃で2時間インキュベーションした。当該反応を10mM EDTAで停止させ、サンプルを脱グリコシル化し、Littleら[17]により記載されているようなC末GELE1480を有するフラグメントを認識する抗体を用いたウェスタンブロッティング分析にかけた。当該バンドを、濃度測定分析によって定量した。
【図7】N-TIMP-3のN末変異体によるIL-1αで刺激したブタ関節軟骨分解の阻害。ブタ関節軟骨片を3日間培養した。軟骨を、記載する濃度のTIMPを含むIL-1α(10ng/ml)で刺激した。培地へのグリコサミノグリカン(GAG)放出を、ジメチルメチレンブルー(DMMB)によって測定した。N-TIMP-3及びN末変異体は、用量依存的に分解を阻害したが、TIMP-1及びTIMP-2は阻害しなかった。
【図8】Ki(app)決定のグラフ。GST-IGD-FLAG基質アッセイを用いて、ADAMTS-4(黒い四角)及びADAMTS-5(白丸)に対するN末反応部位変異体のKi(app)を決定した。
【図9】単球由来マクロファージ(MDM)によるTNFα放出に対するTIMP-3変異体の効果。正常な被験者由来のMDMを、10ng/mlのLPSの存在下で、増加する濃度のTIMP-3変異タンパク質とともにインキュベーションした。当該データは、LPS刺激の%に標準化されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加的な1個の残基、または1個から2個、3個、4個、5個、6個、8個、10個、12個、15個、18個、もしくは20個までの残基が、成熟TIMP-3(組織メタロプロテアーゼ3阻害剤)ポリペプチドの1番目のアミノ酸残基(Cys1)のアミノ末端側に隣接して存在するか、あるいはTIMP-3のスレオニン2に相当する残基がグリシンまたは以下の別の1個のL-アミノ酸:Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、His、Ile、Lys、Asn、Pro、Gln、Arg、Val、Trpに変異している、TIMP-3ポリペプチド変異体。
【請求項2】
TIMP-3ポリペプチドの1番目のアミノ酸残基(Cys1)のアミノ末端側にある付加的な1個のアミノ酸残基(またはさらなる1個もしくは複数の残基)が、L-アラニン残基またはGlyもしくは以下のL-アミノ酸:Asp、Cys、Glu、Phe、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyrのうちの1つである、請求項1に記載のTIMP-3ポリペプチド変異体。
【請求項3】
TIMP-3ポリペプチド変異体が、アミノ酸配列:
【化1】

[配列中で、xはa、またはd、e、f、g、h、i、k、1、m、n、p、q、r、s、t、v、w、yのうちの1つである]、
または配列:
【化2】

または配列:
【化3】

[配列中、zはg、またはa、d、e、f、h、i、k、n、p、q、r、v、wのうちの1つである]、
または配列:
【化4】

[配列中、xはa、またはd、e、f、g、h、i、k、l、m、n、p、q、r、s、t、v、w、yのうちの1つであり、zはg、またはa、d、e、f、h、i、k、n、p、q、r、v、wのうちの1つである]、
または配列:
【化5】

[配列中、xはa、またはd、e、f、g、h、i、k、l、m、n、p、q、r、s、t、y、w、yのうちの1つである]、
または配列:
【化6】

または配列:
【化7】

[配列中、zはg、またはa、d、e、f、h、i、k、n、p、q、r、v、wのうちの1つである]、
または配列:
【化8】

[配列中、xはa 、またはd、e、f、g、h、i、k、l、m、n、p、q、r、s、t、v、w、yのうちの1つであり、zはg、またはa、d、e、f、h、i、k、n、p、q、r、v、wのうちの1つである]
を有するかあるいは含む、請求項1または2に記載のTIMP-3ポリペプチド変異体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のTIMP-3ポリペプチド変異体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項5】
ポリヌクレオチド配列:
【化9】

[配列中、xはt、c、a、またはgであってよく]、
または
【化10】

[配列中、xはt、c、a、またはgであってよく]、
または
【化11】

[配列中、xはt、c、a、またはgであってよく]、
または
【化12】

[配列中、xはt、c、a、またはgであってよく]、
または
【化13】

[配列中、xはt、c、a、またはgであってよく]、
または
【化14】

[配列中、xはt、c、a、またはgであってよく]、
または
【化15】

[配列中、xはt、c、a、またはgであってよく]、
または
【化16】

[配列中、xはt、c、a、またはgであってよく]、
を含む請求項4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1、2、または3に記載のTIMP-3ポリペプチド変異体を発現するのに適した組換えポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項8】
前記TIMP-3ポリペプチド変異体を発現する請求項7に記載の宿主細胞を培養する工程、及び前記TIMP-3ポリペプチド変異体を単離する工程を含む、請求項1、2、または3に記載のTIMP-3ポリペプチド変異体の作製方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法によって獲得可能なTIMP-3ポリペプチド変異体。
【請求項10】
請求項1、2、または3に記載のTIMP-3ポリペプチド変異体の少なくともN末の4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸の構造と試験化合物の構造を比較する工程、及び前記TIMP-3ポリペプチド変異体の少なくともN末の4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸のものに類似の構造を有すると考えられる化合物を選択する工程を含む、ADAMメタロプロテアーゼ(例えばTACE、ADAMTS-4、またはADAMTS-5)を、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)よりも大きい程度で阻害することが予測される化合物の同定方法。
【請求項11】
医薬における使用のための請求項1、2、3、または8に規定されるポリペプチド、あるいは請求項4、5、または6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
1つまたは複数のADAM、例えばTACE(TNFα変換酵素)、ADAMTS4、またはADAMTS5の阻害を必要とする患者の治療のための医薬の製造における、請求項1、2、3、または8に規定されるポリペプチド、あるいは請求項4、5、または6に記載のポリヌクレオチドの使用。
【請求項13】
医薬が、関節リウマチ、変形性関節症、骨減少症、骨溶解、骨粗しょう症、クローン病、潰瘍性大腸炎、変性軟骨損失、敗血症、AIDS、HIV感染、移植片拒絶、食欲不振、炎症、うっ血性心不全、虚血後再灌流障害、中枢神経系の炎症性疾患、炎症性腸疾患、インスリン抵抗性、敗血症性ショック、血行力学的ショック、敗血症症候群、マラリア、マイコバクテリア感染、髄膜炎、乾癬、線維症、悪液質、移植片拒絶、癌、血管新生をともなう疾患、自己免疫疾患、皮膚炎症性疾患、多発性硬化症、放射線障害、高濃度酸素肺障害、歯周病、インスリン非依存性糖尿病、血管新生、虹彩ルベオーシス、血管新生緑内障、年齢関連黄斑変性症、糖尿病性網膜症、虚血性網膜症、または未熟児網膜症を治療するためのものである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
治療上有効な量の請求項1、2、3、または8に規定されるポリペプチド、あるいは請求項4、5、または6に記載のポリヌクレオチドを患者に投与する工程を含む、1つまたは複数のADAM、例えばTACE(TNFα変換酵素)、ADAMTS-4、またはADAMTS-5の阻害を必要とする患者の治療方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−502179(P2009−502179A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524259(P2008−524259)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/029726
【国際公開番号】WO2007/016482
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(599008621)インペリアル イノベーションズ リミテッド (25)
【Fターム(参考)】