説明

化学増幅ポジ型レジスト組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、及び、レジストパターン形成方法

【課題】フォトマスク・半導体素子の微細加工における技術課題を解決することであり、特に高い感度、高い解像性(例えば、高い解像力)、良好な露光ラチチュード(EL)及び良好なラインエッジラフネス(LER)を同時に満足する化学増幅ポジ型レジスト組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、及び、レジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される繰り返し単位、下記一般式(2)で表される繰り返し単位及び下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(A)を含有する、化学増幅ポジ型レジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの製造プロセス、ナノインプリント用モールド作成プロセス及び高密度情報記録媒体の製造プロセス等に適用可能な超マイクロリソグラフィプロセス、及び、その他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられる、電子線を使用して高精細化したパターンを形成しうる化学増幅ポジ型レジスト組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、及び、レジストパターン形成方法に関するものであり、特に特定の下地膜を有する基板を使用するプロセスに用いられる化学増幅ポジ型レジスト組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、及び、レジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域やクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線からi線に、更にエキシマレーザー光にというように短波長化の傾向が見られ、現在では、電子線やX線を用いたリソグラフィも開発が進んでいる。
【0003】
特に電子線リソグラフィーは、次世代若しくは次々世代のパターン形成技術として位置付けられており、また、高解像性のゆえに半導体露光に使用されるフォトマスク作成に広く使用されている。前記フォトマスク作成の工程では、透明基板にクロム等を主成分とする遮蔽層を設けた遮蔽基板の上にレジスト層を形成し、更に選択的に電子線露光を行った後、アルカリ現像してレジストパターンを形成する。ついで、このレジストパターンをマスクとして遮蔽層をエッチングして遮蔽層にパターンを形成することにより、透明基板上に所定のパターンを有する遮蔽層を備えたフォトマスクを得ることができる。
しかし、電子線は紫外線のような一括露光ができないため、処理時間短縮のため高感度なレジストが求められており、電子線リソグラフィーに適したレジストとしては、酸分解性高分子化合物と光酸発生剤とを組合せたいわゆるポジ型化学増幅型レジスト組成物が有効に使用されている。しかし、このようなレジスト組成物において更に高感度化しようとすると、解像性の低下や露光ラチチュード(EL)の低下が起こりがちである。更にラインエッジラフネス(レジストパターンと基板界面のエッジがラインと垂直な方向に不規則に変動してエッジが凹凸となりこの凹凸がエッチング工程により転写され寸法精度を低下させる現象)の悪化も起こりがちである。ラインエッジラフネス向上は、線幅0.25μm以下の超微細領域では特に重要な課題となっている。
【0004】
これらの問題を解決する一つの方法として、例えば、特許文献1には、光酸発生基と酸分解によりアルカリ現像液への溶解性が増大する基とを同一分子内に有する樹脂が開示されている。しかしまだ、電子線リソグラフィー等の超微細領域での、高い感度、高い解像性、良好な露光ラチチュード(EL)及び良好なラインエッジラフネス(LER)を同時に満足できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−197718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、フォトマスク・半導体素子の微細加工における技術課題を解決することであり、特に高い感度、高い解像性(例えば、高い解像力)、良好な露光ラチチュード(EL)及び良好なラインエッジラフネス(LER)を同時に満足する化学増幅ポジ型レジスト組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、及び、レジストパターン形成方法を提供することにある。
特に、電子線を使用した露光による微細なパターンの形成において、良好な露光ラチチュード(EL)及び良好なラインエッジラフネス(LER)を示す化学増幅ポジ型レジスト組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定構造の高分子化合物を用いた化学増幅ポジ型レジスト組成物によって上記目的を達成されることを見出した。
即ち、本発明は以下の通りである。
【0008】
〔1〕 下記一般式(1)で表される繰り返し単位、下記一般式(2)で表される繰り返し単位及び下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(A)を含有する、化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化1】

上記一般式(1)〜(3)中、
11、R21及びR31はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
Ar11、Ar21及びAr31はそれぞれ独立に、アリーレン基を表す。
Acは、酸の作用により脱離する基であり、−OAcは酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を発生するアセタール基を表す。
21は、2価の有機基を表す。
Ar22は、無置換の芳香族環又はアルキル基若しくはアルコキシ基で置換された芳香族環を表す。
は、オニウムカチオンを表す。
〔2〕 前記Ar11、Ar21及びAr31がフェニレン基である、上記〔1〕に記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
〔3〕 前記L21が、カルボニル基、メチレン基、−CO−(CH−O−、−CO−(CH−O−CO−、−(CH−COO−、−(CH−CONR−、又は−CO−(CH−NR−である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。ここで、前記Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、前記nは、1〜10の整数を表す。
〔4〕 前記L21が、カルボニル基、−CH−COO−、−CO−CH−O−、−CO−CH−O−CO−、−CH−CONR−、又は−CO−CH−NR−である、上記〔3〕に記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。ここで、前記Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
〔5〕 前記Xが、スルホニウムカチオンである、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
〔6〕 前記高分子化合物(A)の分散度が、1.0以上1.3以下である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
〔7〕 上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物により形成されたレジスト膜。
〔8〕 上記〔7〕に記載のレジスト膜を塗布した、レジスト塗布マスクブランクス。
〔9〕 上記〔7〕に記載のレジスト膜を露光すること、及び、前記露光された膜を現像することを含む、レジストパターン形成方法。
〔10〕 上記〔8〕に記載のレジスト塗布マスクブランクスを露光すること、及び、前記露光されたマスクブランクスを現像することを含む、レジストパターン形成方法。
〔11〕 前記露光が、電子線を用いて行われる、上記〔9〕又は〔10〕に記載のレジストパターン形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、超微細領域での、高い感度、高い解像性(例えば、高い解像力)、良好な露光ラチチュード(EL)及び良好なラインエッジラフネス(LER)を同時に満足する化学増幅ポジ型レジスト組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、及び、レジストパターン形成方法を提供することができる。
特に、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、電子線を使用した露光による微細なパターンの形成において、良好な露光ラチチュード(EL)及び良好なラインエッジラフネス(LER)を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本明細書に於ける基(原子団)の表記において、置換又は無置換を記していない表記は、置換基を有していないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本発明において「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等を意味する。また、本発明において「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、EUV光等による露光のみならず、電子線及びイオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0011】
本発明に係る化学増幅ポジ型レジスト組成物は、後述の一般式(1)〜(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(A)を含有する。
本発明に係る化学増幅ポジ型レジスト組成物は、電子線露光用であることが好ましい。
【0012】
以下、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物について詳細に説明する。
【0013】
〔1〕一般式(1)で表される繰り返し単位、一般式(2)で表される繰り返し単位及び一般式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(A)
本発明に係る化学増幅ポジ型レジスト組成物は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位、下記一般式(2)で表される繰り返し単位及び下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(A)を含有する。高分子化合物(A)は、本発明に係る化学増幅ポジ型レジスト組成物において主成分として使用される。
【0014】
【化2】

【0015】
上記一般式(1)〜(3)中、
11、R21及びR31はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
Ar11、Ar21及びAr31はそれぞれ独立に、アリーレン基を表す。
Acは、酸の作用により脱離する基であり、−OAcは酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を発生するアセタール基を表す。
21は、2価の有機基を表す。
Ar22は、無置換の芳香族環又はアルキル基若しくはアルコキシ基で置換された芳香族環を表す。
は、オニウムカチオンを表す。
【0016】
上記一般式(1)〜(3)中、Ar11、Ar21及びAr31がフェニレン基であることが好ましい。
【0017】
一般式(1)は、ポジ型レジスト組成物において、酸の作用により分解してアルカリ可溶性となる基(以下、“酸分解性基”ともいう)であるアセタール基を側鎖に有する繰り返し単位であり、一般式(3)は、アルカリ現像性をコントロールする機能を有する繰り返し単位である。そして、一般式(2)は、電子線等の活性光線又は放射線の照射により酸基であるスルホン酸基を発生させ、上記一般式(1)のアセタール基の分解反応を誘起する繰り返し単位である。
本発明のように酸分解性基がアセタール基であるとその分解反応を誘起する酸は強酸でなく、本発明のようなアリールスルホン酸が最も適した強度となる。また、一般式(2)において、側鎖中に部位L21及び部位Ar22が存在することによって、酸発生部分(SO)と高分子化合物(A)の主鎖との連結長を最適に設計することが可能となる。本発明において、これらの組合せにより本発明の効果が達成されるものと考えられる。特に、本発明の高分子化合物(A)によれば、高分子化合物中に酸発生部が存在することで酸の拡散を抑制しつつも、上述の部位L21及び部位Ar22のスペーサーの存在により、反応に必要な最小限の拡散を維持することができ、酸拡散距離を最適に維持できることでEL及びLERが特に良化すると推定される。
【0018】
以下に、一般式(1)で表される繰り返し単位について説明する。
【0019】
【化3】

【0020】
上記一般式(1)中、
11は、水素原子又はメチル基を表す。
Ar11は、アリーレン基を表す。
Acは、酸の作用により脱離する基であり、−OAcは酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を発生するアセタール基を表す。
【0021】
一般式(1)で表される繰り返し単位は、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する繰り返し単位であり、アルカリ可溶性基の水素原子を酸の作用により脱離する基で置換した基(以下、“酸分解性基”ともいう)である。
酸の作用により分解して、一般式(1)で表される繰り返し単位から発生するアルカリ可溶性基はフェノール性水酸基である。
【0022】
一般式(1)で表される繰り返し単位におけるR11は、水素原子又はメチル基を表すが、水素原子が特に好ましい。
一般式(1)で表される繰り返し単位におけるAr11は、アリーレン基を表し、置換基を有していてもよい。Ar11のアリーレン基は、炭素数6〜18の、置換基を有していてもよいアリーレン基であることが好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基又はナフチレン基がより好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基が最も好ましい。またAr11が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。
一般式(1)で表される繰り返し単位において、Ar11がフェニレン基の時、−OAcのAr11のベンゼン環に対する結合位置は、ベンゼン環のポリマー主鎖との結合位置に対して、パラ位でもメタ位でもオルト位でもかまわないが、パラ位若しくはメタ位が好ましい。
【0023】
一般式(1)におけるAcは、酸の作用により脱離する基であり、−OAcは酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基(フェノール性水酸基)を発生するアセタール基を表す。Acは、具体的には下記一般式(4)で表される基であることが好ましい。
【0024】
【化4】

【0025】
一般式(4)中、R41は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
41は、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂環基、又は、ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香環基を表す。
なお、R41、M41及びQの少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成していてもよい。この環は、5員環又は6員環であることが好ましい。
【0026】
41としてのアルキル基は、例えば、炭素数1〜8のアルキル基である。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基が挙げられる。
41としてのアルキル基は、置換基を有していてもよく、例えば、シアノ基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0027】
41としてのシクロアルキル基は、例えば、炭素数3〜15のシクロアルキル基である。好ましくは、シクロヘキシル基、ノルボルニル基及びアダマンチル基が挙げられる。
【0028】
41としてのアリール基は、例えば、炭素数6〜15のアリール基である。好ましくは、フェニル基、トリル基、ナフチル基及びアントリル基が挙げられる。
【0029】
41としてのアラルキル基は、例えば、炭素数6〜20のアラルキル基である。好ましくは、ベンジル基及びフェネチル基が挙げられる。
【0030】
41として特に好ましくは、水素原子、メチル基、フェニル基、ベンジル基である。
【0031】
41としての2価の連結基は、例えば、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜8のアルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基又はオクチレン基)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3〜15のシクロアルキレン基、例えば、シクロペンチレン基又はシクロヘキシレン基)、−S−、−O−、−CO−、−CS−、−SO−、−N(R)−、又はこれらの2種以上の組み合わせであり、総炭素数が20以下のものが好ましい。ここで、Rは、水素原子又はアルキル基(例えば炭素数1〜8のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等)である。
41は、単結合、アルキレン基、又はアルキレン基と−O−、−CO−、−CS−及び−N(R)−の少なくとも一つとの組み合わせからなる2価の連結基が好ましく、単結合、アルキレン基、又はアルキレン基と−O−との組み合わせからなる2価の連結基がより好ましい。ここで、Rは上述のRと同義である。
【0032】
Qとしてのアルキル基は、例えば、上述したR41としてのアルキル基と同様である。
【0033】
Qとしての脂環基及び芳香環基としては、例えば、上述したR41としてのシクロアルキル基及びアリール基が挙げられる。その炭素数は、好ましくは、3〜18である。なお、本発明においては、複数の芳香環が単結合を介して連結されてなる基(例えば、ビフェニル基、ターフェニル基)もQとしての芳香族基に含まれる。
ヘテロ原子を含む脂環基及びヘテロ原子を含む芳香環基としては、例えば、チイラン、シクロチオラン、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール及びピロリドンが挙げられる。なお、本発明においては、複数の“ヘテロ原子を含む芳香環”が単結合を介して連結されてなる基(例えば、ビオローゲン基)もQとしての芳香族基に含まれる。
Qとしての脂環基及び芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0034】
(−M41−Q)として特に好ましくは、メチル基、アリールオキシエチル基、シクロヘキシルエチル基若しくはアリールエチル基である。
【0035】
41、M41及びQの少なくとも2つが互いに結合して環を形成する場合としては、例えば、M41及びQのいずれかとR41とが結合してプロピレン基又はブチレン基を形成して、酸素原子を含有する5員環又は6員環を形成する場合が挙げられる。
【0036】
41、M41及びQの炭素数の総和をNと表記すると、Nが大きい場合には一般式(4)で表される基が脱離する前後の、高分子化合物(A)のアルカリ溶解速度変化が大きくなり、溶解のコントラストが向上して好ましい。Nの範囲としては、好ましくは4〜30であり、更に好ましくは7〜25であり、7〜20が特に好ましい。Nが30以下であると、高分子化合物(A)のガラス転移温度が低下することが抑制され、レジストの露光ラチチュード(EL)が低下したり、一般式(4)で表される基が脱離した残渣がレジストパターン上に欠陥として残ったりすることが抑制されるので好ましい
【0037】
また、R41、M41及びQのうち少なくとも1つは、脂環あるいは芳香環を有することが、ドライエッチング耐性の観点から好ましい。ここでの脂環基及び芳香環基は、例えば、上述したQとしての脂環基及び芳香環基と同様である。
【0038】
以下に、一般式(1)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0039】
【化5】

【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
【化9】

【0044】
本発明の高分子化合物(A)における一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、高分子化合物(A)の全繰り返し単位に対して、1〜60モル%の範囲が好ましく、3〜50モル%の範囲がより好ましく、5〜40モル%の範囲が特に好ましい。
【0045】
次に、一般式(2)で表される繰り返し単位について説明する。
【0046】
【化10】

【0047】
上記一般式(2)中、
21は、水素原子又はメチル基を表す。
Ar21は、アリーレン基を表す。
21は、2価の有機基を表す。
Ar22は、無置換の芳香族環又はアルキル基若しくはアルコキシ基で置換された芳香族環を表す。
は、オニウムカチオンを表す。
【0048】
前記一般式(2)で表される繰り返し単位で、本発明に用いられる好ましい化合物を以下に記述する。
一般式(2)で表される繰り返し単位におけるR21は、水素原子又はメチル基を表すが、水素原子が特に好ましい。
一般式(2)で表される繰り返し単位におけるAr21は、アリーレン基を表し、置換基を有していてもよい。Ar21のアリーレン基は、炭素数6〜18の、置換基を有していてもよいアリーレン基であることが好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基又はナフチレン基がより好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基が最も好ましい。またAr21が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。
一般式(2)で表される繰り返し単位において、Ar21がフェニレン基の時、−O−L21−Ar22−SOのAr21のベンゼン環に対する結合位置は、ベンゼン環のポリマー主鎖との結合位置に対して、パラ位でもメタ位でもオルト位でもかまわないが、メタ位及びパラ位が好ましく、パラ位が特に好ましい。
【0049】
一般式(2)におけるL21の2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、−O−、−CO−、−NR14−、−S−、−CS−及びこれらの組み合わせが挙げられる。ここで、R14は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。L21の2価の有機基の総炭素数は1〜15が好ましく、より好ましくは1〜10である。
上記アルキレン基として、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基又はオクチレン基が挙げられる。
上記アルケニレン基は、好ましくは炭素数2〜8、より好ましくは炭素数2〜4のアルケニレン基である。
14で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基の具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(4)におけるR41で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基の具体例及び好ましい範囲と同様である。
【0050】
21として好ましい基は、カルボニル基、メチレン基、−CO−(CH−O−、−CO−(CH−O−CO−、−(CH−COO−、−(CH−CONR−、又は−CO−(CH−NR−であり、特に好ましくは、カルボニル基、−CH−COO−、−CO−CH−O−、−CO−CH−O−CO−、−CH−CONR−、又は−CO−CH−NR−である。ここで、前記Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、前記nは、1〜10の整数を表す。
【0051】
で表されるアルキル基、アリール基、アラルキル基の具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(4)におけるR41で表されるアルキル基、アリール基、アラルキル基の具体例及び好ましい範囲と同様である。
nは、1〜6の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1が最も好ましい。
【0052】
Ar22は、無置換の芳香族環又はアルキル基若しくはアルコキシ基で置換された芳香族環を表す。Ar22が無置換の芳香族環であるとは、Ar22と連結している−L21−及び−SO以外に、置換基を有さないことを意味する。また、Ar22がアルキル基若しくはアルコキシ基で置換された芳香族環であるとは、Ar22と連結している−L21−及び−SO以外に、置換基としてアルキル基若しくはアルコキシ基を有することを意味する。このように、Ar22は、フッ素原子等の電子求引性基を置換基として有さない芳香族環であり、これにより発生する酸の強度が上がり過ぎることが抑制され、発生する酸を適度な強度とすることができる。
Ar22が、アルキル基を有する場合のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜8であり、より好ましくは炭素数1〜4である。Ar22が、アルコキシ基を有する場合のアルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜8であり、より好ましくは炭素数1〜4である。Ar22の芳香族環は、芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)であっても、芳香族複素環(例えば、キノリン環)であってもよく、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数6〜12である。
Ar22は、無置換又はアルキル基若しくはアルコキシ基が置換した芳香族環であり、該芳香族環が芳香族炭化水素環であることがより好ましく、芳香族炭化水素環がベンゼン環又はナフタレン環であることが更に好ましい。またAr22は、無置換の芳香族環であることがより好ましい。
は、オニウムカチオンを表し、好ましくはスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンであり、より好ましくはスルホニウムカチオンである。
【0053】
上述したように、一般式(2)において、側鎖中に部位L21及び部位Ar21が存在することによって、酸発生部分(SO)と高分子化合物(A)の主鎖との連結長が長くなり、露光により発生した酸が一般式(1)中の脱離基Acと反応し易くなる。但し、上記連結長が長過ぎると、発生した酸が拡散し易くなる為、ラフネス特性及び解像性が低下する。上記連結長を表す指標として、(L21−Ar22)の最小連結原子数は、3〜20であることが好ましく、3〜15であることが更に好ましく、3〜10であることが特に好ましい。
【0054】
なお、最小連結原子数は、以下のようにして定められる数である。即ち、まず、L21−Ar22を構成している原子のうち、Ar21と結合する酸素原子に結合している原子と、−SOと結合している原子とを結ぶ原子の列を考える。次に、これら列の各々に含まれる原子数を求める。そして、これら原子数のうち最小のものを、最小連結原子数とする。
例えば、下記一般式(N−1)の場合は3であり、(N−2)の場合は7である。
【0055】
【化11】

【0056】
一般式(2)で表される繰り返し単位中のXで表されるオニウムカチオンは、好ましくは以下の一般式(5)又は(6)で表されるオニウムカチオンである。
【0057】
【化12】

【0058】
一般式(5)及び(6)において、
a1、Ra2、Ra3、Ra4及びRa5は、各々独立に、有機基を表す。
【0059】
以下、一般式(5)で表されるスルホニウムカチオンを更に詳述する。
【0060】
上記一般式(5)のRa1〜Ra3は、各々独立に、有機基を表すが、好ましくはRa1〜Ra3の少なくとも1つがアリール基であり、アリールスルホニウムカチオンであることが好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
アリールスルホニウムカチオンは、Ra1〜Ra3の全てがアリール基でもよいし、Ra1〜Ra3の一部がアリール基で残りがアルキル基でもよく、例えば、トリアリールスルホニウムカチオン、ジアリールアルキルスルホニウムカチオン、アリールジアルキルスルホニウムカチオン、ジアリールシクロアルキルスルホニウムカチオン、アリールジシクロアルキルスルホニウムカチオンを挙げることができる。
アリールスルホニウムカチオンのアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。2つ以上のアリール基を有する場合、アリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウムカチオンのアリール基以外の基は、アルキル基の場合、炭素数1〜15の直鎖、分岐状アルキル基、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
a1〜Ra3のアリール基、アルキル基は置換基を有してもよく、好ましい置換基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。Ra1〜Ra3がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
一般式(5)に於けるRa1〜Ra3は、そのうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。
【0061】
次に、一般式(6)で表されるヨードニウムカチオンを詳述する。
上記一般式(6)のRa4及びRa5は、各々独立に、有機基を表すが、好ましくは各々独立に、アリール基、アルキル基を表し、更に好ましくは、一般式(6)で表されるヨードニウムカチオンは、Ra4及びRa5の少なくとも1つがアリール基であるアリールヨードニウムカチオンである。
前記Ra4及びRa5のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
a4及びRa5としてのアルキル基は、直鎖、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
a4及びRa5が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
【0062】
以下に一般式(2)で表される繰り返し単位を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0063】
【化13】

【0064】
【化14】

【0065】
【化15】

【0066】
【化16】

【0067】
【化17】

【0068】
【化18】

【0069】
本発明の高分子化合物(A)における一般式(2)で表される繰り返し単位の含有量は、高分子化合物(A)の全繰り返し単位に対して、1〜40モル%の範囲が好ましく、2〜20モル%の範囲がより好ましく、2〜15モル%の範囲が特に好ましい。
【0070】
次に、一般式(3)で表される繰り返し単位について説明する。
【0071】
【化19】

【0072】
上記一般式(3)中、
31は、水素原子又はメチル基を表す。
Ar31は、アリーレン基を表す。
【0073】
一般式(3)で表される繰り返し単位におけるR31は、水素原子又はメチル基を表すが、水素原子が特に好ましい。
一般式(3)で表される繰り返し単位におけるAr31は、アリーレン基を表し、−OH以外に置換基を有していてもよい。Ar31のアリーレン基は、炭素数6〜18の、置換基を有していてもよいアリーレン基であることが好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基又はナフチレン基がより好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基が更に好ましい。またAr31が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基が挙げられるが、Ar31で表されるアリーレン基は、−OH以外に置換基を有しないことが好ましい。
一般式(3)で表される繰り返し単位において、Ar31がフェニレン基の時、−OHのAr31のベンゼン環に対する結合位置は、ベンゼン環のポリマー主鎖との結合位置に対して、パラ位でもメタ位でもオルト位でもかまわないが、パラ位若しくはメタ位が好ましい。
【0074】
一般式(3)で表される繰り返し単位は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位で、レジストのアルカリ現像性をコントロールする機能を有する。
一般式(3)で表される繰り返し単位の具体例を以下に記載する。
【0075】
【化20】

【0076】
このうち、一般式(3)で表される繰り返し単位の好ましい例は、Ar31が無置換のフェニレン基である繰り返し単位であり、以下に記載するものが挙げられる。
【0077】
【化21】

【0078】
本発明の高分子化合物(A)における一般式(3)で表される繰り返し単位の含有量は、高分子化合物(A)中の全繰り返し単位に対し、3〜98モル%が好ましく、より好ましくは40〜90モル%、更に好ましくは50〜85モル%である。
【0079】
本発明で用いられる高分子化合物(A)は、上記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位として、下記のような繰り返し単位を更に有することも好ましい。
例えば、更に、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位があげられる。そのような基としては、ラクトン構造を有する基、フェニルエステル構造を有する基などがあげられ、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0080】
【化22】

【0081】
一般式(AII)中、Vはアルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を表し、Rbは水素原子又はメチル基を表し、Abは単結合又は2価の有機基を表す。
アルカリ現像液の作用で分解する基であるVはエステル結合を有する基であり、中でもラクトン構造を有する基がより好ましい。ラクトン構造を有する基としては、ラクトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。
好ましいAbは、単結合、又は−AZ−CO−で表される2価の連結基である(AZは、アルキレン基又は脂肪族環基である)。好ましいAZはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
以下に、具体例を示す。式中、Rxは、H又はCHを表す。
【0082】
【化23】

【0083】
【化24】

【0084】
高分子化合物(A)は、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、該基を有する繰り返し単位の含有量は、高分子化合物(A)中の全繰り返し単位に対し、10〜60モル%が好ましく、より好ましくは15〜50モル%、更に好ましくは15〜40モル%である。
【0085】
本発明の高分子化合物(A)における上記以外の繰り返し単位を形成するための重合性モノマーの例としては、スチレン、アルキル置換スチレン、アルコキシ置換スチレン、O−アルキル化スチレン、O−アシル化スチレン、水素化ヒドロキシスチレン、無水マレイン酸、アクリル酸誘導体(アクリル酸、アクリル酸エステル等)、メタクリル酸誘導体(メタクリル酸、メタクリル酸エステル等)、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、置換基を有しても良いインデン等を挙げることができる。置換スチレンとしては4−(1−ナフチルメトキシ)スチレン、4−ベンジルオキシスチレン、4−(4−クロロベンジルオキシ)スチレン、3−(1−ナフチルメトキシ)スチレン、3−ベンジルオキシスチレン、3−(4−クロロベンジルオキシ)スチレンなどが好ましい。
【0086】
高分子化合物(A)は、これら繰り返し単位を含有してもしなくても良いが、含有する場合、これら繰り返し単位の高分子化合物(A)中の含有量は、高分子化合物(A)を構成する全繰り返し単位に対して、一般的に1〜20モル%、好ましくは2〜10モル%である。
【0087】
本発明に用いられる上記高分子化合物(A)は、例えば、各繰り返し単位に対応する不飽和モノマーを、ラジカル、カチオン又はアニオン重合させることにより合成することができる。また各繰り返し単位の前駆体に相当する不飽和モノマーを用いてポリマーを重合した後に、合成したポリマーに低分子化合物を修飾し、所望の繰返し単位へ変換することによって合成することも可能である。いずれの場合も、リビングアニオン重合等のリビング重合を用いることで、得られる高分子化合物の分子量分布が均一となり、好ましい。
本発明に用いられる上記高分子化合物(A)の重量平均分子量は、好ましくは1000〜200000であり、更に好ましくは2000〜50000であり、更により好ましくは2000〜15000である。上記高分子化合物(A)の好ましい分散度(分子量分布)(Mw/Mn)は、1.0以上1.7以下であり、より好ましくは1.0以上1.3以下である。上記高分子化合物(A)の重量平均分子量及び分散度は、GPC測定によるポリスチレン換算値として定義される。
【0088】
以下に本発明で使用される上記高分子化合物(A)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
【化25】

【0090】
【化26】

【0091】
【化27】

【0092】
【化28】

【0093】
【化29】

【0094】
また、これらの高分子化合物は2種以上を混合して使用してもよい。
本発明に用いられる上記高分子化合物(A)の添加量は組成物の全固形分を基準として、30〜100質量%とすることが好ましく、50〜99.7質量%とすることがより好ましく、70〜99.5質量%とすることが特に好ましい。
【0095】
〔2〕(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する低分子化合物
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、更に、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する低分子化合物(B)(以下、適宜、これらの化合物を「酸発生剤(B)」と略称する)を含有してもよい。
ここで、低分子化合物(B)とは、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する部位が、高分子化合物の主鎖又は側鎖に導入された化合物以外の化合物を意味し、典型的には、前記部位が単分子の化合物に導入された化合物である。低分子化合物(B)の分子量は一般的に4000以下であり、好ましくは2000以下であり、より好ましくは1000以下である。また低分子化合物(B)の分子量は一般的に100以上であり、好ましくは200以上である。
【0096】
酸発生剤(B)の好ましい形態として、オニウム化合物を挙げることができる。そのような酸発生剤(B)としては、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩などを挙げることができる。
また、酸発生剤(B)の別の好ましい形態として、活性光線又は放射線の照射により、スルホン酸、イミド酸又はメチド酸を発生する化合物を挙げることができる。その形態における酸発生剤(B)は、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、オキシムスルホネート、イミドスルホネートなどを挙げることができる。
【0097】
酸発生剤(B)は、電子線の照射により酸を発生する化合物であることが好ましい。
【0098】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、酸発生剤(B)を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、レジスト組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは0.5〜10質量%であり、更に好ましくは1〜7質量%である。
酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0099】
〔3〕塩基性化合物
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物には、前記成分の他に、塩基性化合物を酸補足剤として含有することが好ましい。塩基性化合物を用いることにより、露光から後加熱までの経時による性能変化を小さくすることできる。このような塩基性化合物としては、有機塩基性化合物であることが好ましく、より具体的には、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられる。アミンオキサイド化合物(特開2008−102383に記載)、アンモニウム塩(好ましくはヒドロキシド又はカルボキシレートである。より具体的にはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドに代表されるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドがLERの観点で好ましい。)も適宜用いられる。
更に、酸の作用により塩基性が増大する化合物も、塩基性化合物の1種として用いることができる。
アミン類の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、2,4,6−トリ(t−ブチル)アニリン、トリエタノールアミン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミンや、米国特許第6040112号明細書のカラム3、60行目以降に例示の化合物、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミンや、米国特許出願公開第2007/0224539A1号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)などが挙げられる。含窒素複素環構造を有する化合物としては、2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、N−ヒドロキシエチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ジメチルアミノピリジン、アンチピリン、ヒドロキシアンチピリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エン、などが挙げられる。アンモニウム塩としてはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
これら塩基性化合物の中でも解像性向上の観点でアンモニウム塩が好ましい。
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、塩基性化合物を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、本発明で使用される塩基性化合物の含有量は、レジスト組成物の全固形分に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.03〜5質量%がより好ましく、0.05〜3質量%が特に好ましい。
【0100】
〔4〕界面活性剤
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、更に、塗布性を向上させるため界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤の例としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤、フロラードFC430(住友スリーエム製)やサーフィノールE1004(旭硝子製)、OMNOVA社製のPF656及びPF6320、等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーが挙げられる。
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、界面活性剤を含有してもしなくてもよいが、レジスト組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の使用量は、レジスト組成物の全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.0005〜1質量%である。
【0101】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物には、必要に応じて、更に、染料、可塑剤、光分解性塩基化合物、光塩基発生剤等を含有させることができる。これらの化合物については、いずれも特開2002−6500号に記載のそれぞれの化合物を挙げることができる。
【0102】
また、本発明のポジ型レジスト組成物に使用される溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、トルエン、キシレン、酢酸シクロヘキシル、ジアセトンアルコール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどが好ましい。これらの溶剤は単独若しくは組み合わせて用いられる。
レジスト組成物の固形分は、上記溶剤に溶解し固形分濃度として、1〜40質量%で溶解することが好ましい。より好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは3〜20質量%である。
【0103】
本発明は、本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物により形成されたレジスト膜にも関し、このようなレジスト膜は、例えば、該レジスト組成物が基板等の支持体上に塗布されることにより形成される。本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物は、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により基板上に塗布され、60〜150℃で1〜20分間、好ましくは80〜130℃で1〜10分間プリベークして薄膜を形成する。この塗布膜の膜厚は30〜200nmが好ましい。
本発明に適した基板は、シリコン基板、金属蒸着膜又は金属を含む膜が設けられた基板、より適しているのは、表面にCr、MoSi、TaSi若しくはそれらの酸化物、窒化物による蒸着膜が設けられた基板である。
また、本発明は、上記のようにして得られるレジスト膜を塗布した、レジスト塗布マスクブランクスにも関する。このようなレジスト塗布マスクブランクスを得るために、フォトマスク作製用のフォトマスクブランクス上にレジストパターンを形成する場合、使用される透明基板としては、石英、フッ化カルシウム等の透明基板を挙げることができる。一般には、該基板上に、遮光膜、反射防止膜、更に位相シフト膜、追加的にはエッチングストッパー膜、エッチングマスク膜といった機能性膜の必要なものを積層する。機能性膜の材料としては、ケイ素、又はクロム、モリブデン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、チタン、ニオブ等の遷移金属を含有する膜が積層される。また、最表層に用いられる材料としては、ケイ素又はケイ素に酸素及び/又は窒素を含有する材料を主構成材料とするもの、更にそれらに遷移金属を含有する材料を主構成材料とするケイ素化合物材料や、遷移金属、特にクロム、モリブデン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、チタン、ニオブ等より選ばれる1種以上、又は更にそれらに酸素、窒素、炭素より選ばれる元素を1以上含む材料を主構成材料とする遷移金属化合物材料が例示される。
遮光膜は単層でも良いが、複数の材料を塗り重ねた複層構造であることがより好ましい。複層構造の場合、1層当たりの膜の厚みは、特に限定されないが、5nm〜100nmであることが好ましく、10nm〜80nmであることがより好ましい。遮光膜全体の厚みとしては、特に限定されないが、5nm〜200nmであることが好ましく、10nm〜150nmであることがより好ましい。
【0104】
これらの材料のうち、一般にクロムに酸素や窒素を含有する材料を最表層に持つフォトマスクブランク上で化学増幅型レジスト組成物を用いてパターン形成を行った場合、基板付近ですそ引きが形成され、いわゆるテーパー形状となりやすいが、本発明を用いた場合、従来のものに比べてテーパー形状を改善することができる。
次いで、このレジスト膜には活性光線又は放射線(電子線等)を照射し、好ましくはベーク(通常80〜150℃、より好ましくは90〜130℃)を行った後、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。そして、このパターンをマスクとして用いて、適宜エッチング処理及びイオン注入などを行い、半導体微細回路及びインプリント用モールド構造体等を作成する。
なお、本発明の組成物を用いてインプリント用モールドを作成する場合のプロセスについては、例えば、特許第4109085号公報、特開2008−162101号公報、及び「ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開―ナノインプリントの基板技術と最新の技術展開―編集:平井義彦(フロンティア出版)」に記載されている。
【0105】
本発明の化学増幅ポジ型レジスト組成物の使用形態及びレジストパターン形成方法を次に説明する。
本発明は、上記レジスト膜又はレジスト塗布マスクブランクスを露光すること、及び、該露光されたレジスト膜又はレジスト塗布マスクブランクスを現像することを含む、レジストパターン形成方法にも関する。本発明において、前記露光が電子線を用いて行われることが好ましい。
精密集積回路素子の製造などにおいてレジスト膜上への露光(パターン形成工程)は、まず本発明のレジスト膜にパターン状に電子線照射を行う。照射量(露光量)は0.1〜60μC/cm程度、好ましくは3〜50μC/cm程度となるように露光する。次いで、ホットプレート上で60〜150℃で1〜20分間、好ましくは80〜120℃で1〜10分間、露光後加熱(ポストエクスポージャベーク)を行い、ついで現像、リンス、乾燥することによりレジストパターンを形成する。現像液は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等の0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%アルカリ水溶液で、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像する。こうして、露光された部分が現像液に溶解し、未露光部分は現像液に溶解され難く、基板上に目的のパターンが形成される。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
【0107】
1.高分子化合物(A)の合成例
以下に実施例で使用する高分子化合物(A)の合成例を記載する。
〔一般式(1)〜(3)で表される繰り返し単位を含む本発明の高分子化合物(A)〕
<合成例1:高分子化合物(P−1)の合成>
ポリヒドロキシスチレン化合物としてのポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP−2500, 日本曹達株式会社製)30gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)120gに溶解した。この溶液に、ビニルエーテル化合物として2,6−ジフェニルフェニルオキシエチルビニルエーテル(以下、VE−1と表記することがある)15.80g及び1.45gの2質量%カンファースルホン酸(PGMEA溶液)を加え、室温で2時間撹拌した。1.05gの10質量%トリエチルアミン(PGMEA溶液)を加え、しばらく撹拌した後、反応液を酢酸エチル165mLの入った分液ロートに移した。この有機層を蒸留水200mLで3回洗浄後、有機層を減圧乾固した。
得られたポリマーをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)120gに溶解し、ピリジン19.75g、スルホ化剤として2−スルホ安息香酸無水物(以下、SN−1と表記することがある)2.76g、N,N−ジメチルアミノピリジン366mgを加え、室温で5時間攪拌した。反応液を酢酸エチル300mLの入った分液ロートに移し、有機層を飽和食塩水300mLで5回洗浄し、有機層をエバポレーターで濃縮し、酢酸エチルを除去した。
得られたポリマーをテトラヒドロフラン(THF)90mL及びメタノール30mLに溶解し、PAG前駆体として臭化トリフェニルスルホニウム(以下、PG−1と表記することがある)5.14gを加え、室温で3時間攪拌した。反応液をエバポレーターで濃縮した後、酢酸エチル300mLに再溶解して有機層を蒸留水300mLで5回洗浄した。有機層を濃縮し、アセトン150mLに溶解した後、蒸留水:メタノール=15:1(体積比)の混合溶液2L中に滴下した。上澄み液を除去して得られた固体を酢酸エチル150mLに溶解し、ヘキサン2L中に滴下した。上澄みを除去して得られた沈殿を95gのPGMEAに溶解した。得られた溶液からエバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、高分子化合物(P−1)のPGMEA溶液(26.7質量%)が136.2g得られた。
【0108】
得られた高分子化合物(P−1)につき、H−NMR測定により、高分子化合物(P−1)の組成比(モル比)を算出した。また、GPC(溶媒:N−メチル−2−ピロリドン)測定により、高分子化合物(P−1)の重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)、数平均分子量(Mn:ポリスチレン換算)及び分散度(Mw/Mn、以下「PDI」ともいう)を算出した。これらの結果を、以下の化学式中に示す。
【0109】
【化30】

【0110】
<合成例2〜14及び比較合成例1〜2 :高分子化合物(P−2)〜(P−14)及び(R−1)〜(R−2)の合成>
以下、合成例1と同様にして、高分子化合物(P−2)〜(P−14)及び(R−1)〜(R−2)を合成した。使用した反応試薬、その仕込み量(ポリヒドロキシスチレン単位に対するmol%)、及び得られた高分子化合物溶液の濃度(質量%)、得量(g)を下表1に示す。
【0111】
【表1】

【0112】
高分子化合物(P−2)〜(P−14)及び(R−1)〜(R−2)の合成に用いた反応試薬を以下に示す。
VP−8000:ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(日本曹達株式会社製)
MHS:ポリ(m−ヒドロキシスチレン) (Mw=4200, PDI=1.2)
【0113】
【化31】

【0114】
<参考合成例1:Nf−PHSの合成>
30gのVP−2500をアセトン120gに溶解し、4.35gの炭酸カリウム、1.18gのヨウ化ナトリウム、2.78gの1−クロロメチルナフタレンを加え、4時間還流した。反応液を室温に戻し、エバポレーターで約60gのアセトンを除去した後、反応液を200mLの酢酸エチルの入った分液ロートに移した。有機層を200mLの1規定塩酸水溶液で2回、200mLの蒸留水で2回洗浄した後、有機層を濃縮乾固することでNf−PHSが得られた。
【0115】
<参考合成例2:Bn−MHSの合成>
参考合成例1にて、VP−2500を前記MHS、2.78gの1−クロロメチルナフタレンを2.69gの臭化ベンジルに代えた以外は同様にして、Bn−MHSが得られた。
【0116】
<合成例15:高分子化合物(P−15)の合成>
フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール20.0gに塩化アセチル10.86gを加え、45℃で4時間攪拌した。エバポレーターで低沸点成分を除去することで、クロロアルキルエーテル化合物として、1−クロロ−2−フェニルエチル メチルエーテル(以下、Cl−1と表記することがある)が定量的に得られた。
30gのVP−2500を120gのTHFに溶解し、26.52gのトリエチルアミンを加え氷浴中で冷却した。21.3gのCl−1を反応液に滴下し、室温に戻した後、3時間攪拌した。反応液に蒸留水100mLを加え、エバポレーターでTHFを除去した。反応液を酢酸エチル300mLの入った分液ロートに移し、蒸留水300mLで5回洗浄した。有機層をエバポレーターで濃縮乾固した。
得られたポリマーをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)120gに溶解し、ピリジン19.75g、スルホ化剤として2−スルホ安息香酸無水物2.76g、N,N−ジメチルアミノピリジン366mgを加え、室温で5時間攪拌した。反応液を酢酸エチル300mLの入った分液ロートに移し、有機層を飽和食塩水300mLで5回洗浄し、有機層をエバポレーターで濃縮し、酢酸エチルを除去した。
得られたポリマーをテトラヒドロフラン(THF)90mL及びメタノール30mLに溶解し、PAG前駆体として臭化トリフェニルスルホニウム5.14gを加え、室温で3時間攪拌した。反応液をエバポレーターで濃縮した後、酢酸エチル300mLに再溶解して有機層を蒸留水300mLで5回洗浄した。有機層を濃縮し、アセトン150mLに溶解した後、蒸留水:メタノール=15:1(体積比)の混合溶液2L中に滴下した。上澄み液を除去して得られた固体を酢酸エチル150mLに溶解し、ヘキサン2L中に滴下した。上澄みを除去して得られた沈殿を95gのPGMEAに溶解した。得られた溶液からエバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、高分子化合物(P−15)のPGMEA溶液(27.1質量%)が135.3g得られた。
【0117】
<合成例16〜19 :高分子化合物(P−16)〜(P−19)の合成>
以下、合成例15と同様にして、高分子化合物(P−16)〜(P−19)を合成した。使用した反応試薬、その仕込み量(ポリヒドロキシスチレン単位に対するmol%)、及び得られた高分子化合物溶液の濃度(質量%)、得量(g)を下表2に示す。
【0118】
【表2】

【0119】
高分子化合物(P−16)〜(P−19)の合成に用いた反応試薬を以下に示す。
【0120】
【化32】

【0121】
<合成例20:高分子化合物(P−20)の合成>
1−メトキシー2−プロパノール7.84gを窒素気流下、70℃に加熱した。この液を攪拌しながら、以下に示すモノマー(M−1)10.0g、モノマー(M−2)5.13g、モノマー(M−3)1.66g、1−メトキシー2−プロパノール31.34g、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V−601、和光純薬工業(株)製〕1.13gの混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で更に4時間攪拌した。反応液を放冷後、多量のヘキサン/酢酸エチルで再沈殿を行い、真空乾燥を行うことで、本発明の高分子化合物(P−20)を10.04g得た。
【0122】
【化33】

【0123】
<合成例21〜24及び比較合成例3〜5:高分子化合物(P−21)〜(P−24)及び(R−3)〜(R−5)の合成>
以下、合成例20と同様にして、合成した。使用したモノマー、その仕込み量(g)、重合開始剤仕込み量(g)、及び得られた高分子化合物の得量(g)を下表3に示す。
【0124】
【表3】

【0125】
高分子化合物(P−21)〜(P−24)、(R−3)〜(R−5)の合成に用いたモノマーを以下に示す。
【0126】
【化34】

【0127】
以下、高分子化合物(P−1)〜(P−24)及び(R−1)〜(R−5)の各々について、構造、組成比、重量平均分子量、及び分散度を示す。
【0128】
【化35】

【0129】
【化36】

【0130】
【化37】

【0131】
【化38】

【0132】
(比較用の高分子化合物)
【0133】
【化39】

【0134】
2.実施例
[実施例1]
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)/プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)=80/20(質量比)の混合溶媒に、上記高分子化合物(P−3)/テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(塩基性化合物)/界面活性剤PF6320(OMNOVA(株)製)=99.35/0.6/0.05(質量比)の割合で、固形分濃度が4質量%となるように溶解させた溶液を、0.1μmのポアサイズを有するポリテトラフルオロエチレンフィルターを用いてろ過し、ポジ型レジスト塗布溶液を調製した。
この塗布液を化学蒸着によって厚み100nmの酸化クロム膜(遮光膜)が設けられたガラス基板に、スピンコータを用いて、均一に塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、130℃で600秒間に亘って加熱乾燥を行った。これにより、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。
このレジスト膜に対して、電子線照射装置((株)日立製作所製HL750;加速電圧50keV)を用いて、電子線照射を行った。照射後直ぐに、120℃で600秒間ホットプレート上にて加熱した。
その後、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて、23℃で60秒間現像し、30秒間純水を用いてリンスした後、乾燥させた。これにより、ラインアンドスペースパターン(ライン:スペース=1:1)を形成した。なお、以下では、ラインアンドスペースパターンをL&Sと略記することがある。
【0135】
〔感度〕
得られた各パターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4800)を用いて観察した。L&Sパターンについて、100nmの線幅のラインを解像する際の最小照射エネルギーを感度(μC/cm)とした。
【0136】
〔解像力〕
上記の感度を示す照射量における限界解像力(ラインとスペースが分離解像する最小の線幅)を解像力(nm)とした。
【0137】
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
上記の感度を示す照射量における線幅100nmのラインパターンの長さ方向50μmにおける任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4800)を用いてエッジがあるべき基準線からの距離を測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。この値が小さい程、ラインエッジラフネスが良好である。
【0138】
〔露光ラチチュード(EL)〕
上記の感度を示す照射量(以下、“最適照射量”ともいう)において、照射量を変化させた際にパターンサイズが100nm±10%を許容する照射量幅を求め、この値を最適照射量で割って露光ラチチュードを百分率表示した。この値が大きい程、露光ラチチュードが良好である。
【0139】
評価結果を表5に示す。
【0140】
[実施例2〜24及び比較例1〜5]
レジスト液処方で、下表4に記載の成分以外は実施例1と同様にしてレジスト溶液の調製、ポジ型パターン形成及びその評価を行った。評価結果を表5〜表7に示す。
【0141】
【表4】

【0142】
なお、表4に示した各成分の濃度は、全固形分の質量を基準とした質量濃度である。
上記及び下記実施例/比較例で用いた前掲以外の素材の略称を以下に記載する。
【0143】
〔光酸発生剤(B)〕
【0144】
【化40】

【0145】
〔塩基性化合物〕
【0146】
【化41】

【0147】
〔界面活性剤〕
W−1:PF6320(OMNOVA社製;フッ素系)
〔溶剤〕
S1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
【0148】
【表5】

【0149】
同種のアセタール基を有する高分子化合物を使用したレジスト組成物間で比較すると、表5に示すように、実施例1〜4に係る組成物は、高い感度、高い解像力、良好なラインエッジラフネス(LER)及び良好な露光ラチチュード(EL)を同時に満足することができた。一方で、比較用の高分子化合物(R−1)、(R−3)〜(R−5)を使用した比較例1〜4に係る組成物は、感度、解像力、ラインエッジラフネス(LER)及び露光ラチチュード(EL)のいずれかの結果が優れておらず、高い感度、高い解像力、良好なラインエッジラフネス(LER)及び良好な露光ラチチュード(EL)を同時に満足することができなかった。
また、実施例1と実施例2を比較すると、高分子化合物の分散度が低い実施例1の方がLER及びELがより優れていた。
【0150】
【表6】

【0151】
同種のアセタール基を有する高分子化合物を使用したレジスト組成物間で比較すると、表6に示すように、実施例5〜7に係る組成物は、高い感度、高い解像力、良好なラインエッジラフネス(LER)及び良好な露光ラチチュード(EL)を同時に満足することができた。一方で、比較用の高分子化合物(R−2)を使用した比較例5に係る組成物は、感度、解像力、ラインエッジラフネス(LER)及び露光ラチチュード(EL)のいずれかの結果が優れておらず、高い感度、高い解像力、良好なラインエッジラフネス(LER)及び良好な露光ラチチュード(EL)を同時に満足することができなかった。
【0152】
【表7】

【0153】
[実施例25〜34及び比較例6]
レジスト液処方で、下表8に記載の成分以外は実施例1と同様にして調製したポジ型レジスト溶液を、スピンコータを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、130℃で90秒間に亘って加熱乾燥を行った。これにより、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。このレジスト膜に対して、電子線照射装置((株)日立製作所製HL750;加速電圧50keV)を用いて、電子線照射を行った。照射後直ぐに、120℃で90秒間ホットプレート上にて加熱した。その後、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて、23℃で60秒間現像し、30秒間純水を用いてリンスした後、乾燥させた。これにより、ラインアンドスペースパターン(ライン:スペース=1:1)を形成した。このパターンに対して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表8に示す。
【0154】
【表8】

【0155】
表8に示すように、実施例25〜34に係る組成物は、高い感度、高い解像力、良好なラインエッジラフネス(LER)及び良好な露光ラチチュード(EL)を同時に満足することができた。一方で、比較用の高分子化合物(R−1)を使用した比較例6に係る組成物は、感度、解像力、ラインエッジラフネス(LER)及び露光ラチチュード(EL)のいずれかの結果が優れておらず、高い感度、高い解像力、良好なラインエッジラフネス(LER)及び良好な露光ラチチュード(EL)を同時に満足することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位、下記一般式(2)で表される繰り返し単位及び下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(A)を含有する、化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化1】

上記一般式(1)〜(3)中、
11、R21及びR31はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
Ar11、Ar21及びAr31はそれぞれ独立に、アリーレン基を表す。
Acは、酸の作用により脱離する基であり、−OAcは酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を発生するアセタール基を表す。
21は、2価の有機基を表す。
Ar22は、無置換の芳香族環又はアルキル基若しくはアルコキシ基で置換された芳香族環を表す。
は、オニウムカチオンを表す。
【請求項2】
前記Ar11、Ar21及びAr31がフェニレン基である、請求項1に記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項3】
前記L21が、カルボニル基、メチレン基、−CO−(CH−O−、−CO−(CH−O−CO−、−(CH−COO−、−(CH−CONR−、又は−CO−(CH−NR−である、請求項1又は2に記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。ここで、前記Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、前記nは、1〜10の整数を表す。
【請求項4】
前記L21が、カルボニル基、−CH−COO−、−CO−CH−O−、−CO−CH−O−CO−、−CH−CONR−、又は−CO−CH−NR−である、請求項3に記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。ここで、前記Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
【請求項5】
前記Xが、スルホニウムカチオンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項6】
前記高分子化合物(A)の分散度が、1.0以上1.3以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化学増幅ポジ型レジスト組成物により形成されたレジスト膜。
【請求項8】
請求項7に記載のレジスト膜を塗布した、レジスト塗布マスクブランクス。
【請求項9】
請求項7に記載のレジスト膜を露光すること、及び、前記露光された膜を現像することを含む、レジストパターン形成方法。
【請求項10】
請求項8に記載のレジスト塗布マスクブランクスを露光すること、及び、前記露光されたマスクブランクスを現像することを含む、レジストパターン形成方法。
【請求項11】
前記露光が、電子線を用いて行われる、請求項9又は10に記載のレジストパターン形成方法。

【公開番号】特開2012−163725(P2012−163725A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23412(P2011−23412)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】