説明

化学増幅型レジスト組成物、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、レジストパターン形成方法、及び、フォトマスク、並びに、高分子化合物

【課題】電子線又は極紫外線を用いたフォトマスク・半導体素子の微細加工における技術課題を解決することであり、特に、高感度、高解像性(例えば、高い解像力、優れたパターン形状、小さいラインエッジラフネス(LER))、及び、良好なドライエッチング耐性を同時に満足する化学増幅型レジスト組成物、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、レジストパターン形成方法、及び、フォトマスク、並びに、高分子化合物を提供する。
【解決手段】(A)非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基で、フェノール性水酸基の水素原子が置換された構造を有する高分子化合物、及び(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有する、化学増幅型レジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの超マイクロリソグラフィプロセスやその他のファブリケーションプロセスに好適に用いられる、電子線や極紫外線を使用して高精細化したパターンを形成しうる化学増幅型レジスト組成物、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、レジストパターン形成方法、及び、フォトマスク、並びに、高分子化合物に関するものである。特に特定の下地膜を有する基板を使用するプロセスに用いられる化学増幅型レジスト組成物、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、レジストパターン形成方法、及び、フォトマスク、並びに、高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
レジスト組成物を用いた微細加工では、集積回路の高集積化に伴って、超微細パターンの形成が要求されている。それゆえ、露光波長にもg線からi線に、更にエキシマレーザー光にというように短波長化の傾向が見られ、現在では例えば、電子線を用いたリソグラフィー技術の開発が進んでいる。またKrFエキシマレーザー等のエキシマレーザー光の露光に供される樹脂としては、フェノール性水酸基の水素原子が、脂肪族炭化水素残基を有する基で置換された構造を有する樹脂、アリール基を有する基で置換された構造を有する樹脂、及びアルキル基で置換された構造を有する樹脂がそれぞれ特許文献1〜3に記載されている。
【0003】
超微細パターンを形成するためにはレジストの薄膜化が必要であるが、薄膜化するとドライエッチング耐性が低下する。また、電子線リソグラフィーでは、近年、電子線(EB)の加速電圧を増大させてレジスト膜中での電子散乱(前方散乱)の影響を小さくさせている。しかし、そうするとレジスト膜の電子エネルギー捕捉率が低下し、感度が低下するし、レジスト基板において反射した電子の散乱(後方散乱)の影響が増大する。特に、露光面積の大きい孤立パターンを形成する場合には、後方散乱の影響が大きく、孤立パターンの解像性が低下する。
【0004】
特に、半導体露光に使用されるフォトマスクブランクスへのパターニングの場合、レジスト下層には重原子を含む遮光膜が存在するので、それに起因する後方散乱の影響がより顕著である。その為、フォトマスクブランクス上で孤立パターンを形成する場合には、特に解像性が低下する可能性が大きい。
【0005】
これらの問題を解決する方法の1つとして、ナフタレン等の多環芳香族骨格を有する樹脂の使用が検討されているが(例えば、特許文献4及び5)、孤立パターンの解像性については未解決である。特許文献6では、孤立パターンの解像性を向上させる方法の1つとして、溶解性を調整する基を含む樹脂が使用されているが、孤立パターンの解像性は満足するレベルには至っていない。
また、レジスト組成物による微細加工は、直接に集積回路の製造に用いられるだけでなく、近年ではいわゆるインプリント用モールド構造体の作製等にも適用されている(例えば、特許文献7及び非特許文献1)。そのため、高感度、高解像性(例えば、高い解像力、優れたパターン形状、小さいラインエッジラフネス(LER))、及び、良好なドライエッチング耐性を同時に満足させることが重要な課題となっており、これらの解決が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−29220号公報
【特許文献2】特許第3546687号公報
【特許文献3】特開平7−295220号公報
【特許文献4】特開2008−95009号公報
【特許文献5】特開2009−86354号公報
【特許文献6】特開2005−99558号公報
【特許文献7】特開2008−162101号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開−ナノインプリントの基板技術と最新の技術展開―編集:平井義彦 フロンティア出版(2006年6月発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高感度、高解像性(例えば、高い解像力、優れたパターン形状、小さいラインエッジラフネス(LER))、及び、良好なドライエッチング耐性を同時に満足したパターンを形成できる化学増幅型レジスト組成物、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、レジストパターン形成方法、及び、フォトマスク、並びに、高分子化合物を提供することにある。
本発明の目的は、特に、電子線や極紫外線を使用した露光による微細な孤立パターンの形成において、高い解像力を示す化学増幅型レジスト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定構造の高分子化合物を含有する化学増幅型レジスト組成物によって上記目的を達成されることを見出した。
即ち、本発明は以下の通りである。
【0010】
〔1〕
(A)非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基で、フェノール性水酸基の水素原子が置換された構造を有する高分子化合物、及び(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有する、化学増幅型レジスト組成物。
〔2〕
電子線又は極紫外線露光用である、上記〔1〕に記載の化学増幅型レジスト組成物。
〔3〕
前記高分子化合物(A)が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【化1】


(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基を表す。Arは芳香族環を表す。mは1以上の整数である。)
〔4〕
前記一般式(1)で表される繰り返し単位が下記一般式(2)で表される繰り返し単位であり、前記高分子化合物(A)が、更に、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含む、上記〔3〕に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【化2】


(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは単結合又は2価の連結基を表し、Xは非酸分解性の多環脂環炭化水素基を表す。)
【化3】


(式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
〔5〕
前記一般式(2)において、Yが2価の連結基であり、該2価の連結基がカルボニル基である、上記〔4〕に記載の化学増幅型レジスト組成物。
〔6〕
前記化合物(B)がオニウム化合物である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の化学増幅型レジスト組成物。
〔7〕
前記高分子化合物(A)の分散度が1.0〜1.35である、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の化学増幅型レジスト組成物。
〔8〕
更に、(C)ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を分子内に2個以上有する化合物を含有し、ネガ型化学増幅型レジスト組成物である、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の化学増幅型レジスト組成物。
〔9〕
前記高分子化合物(A)が、更に、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する繰り返し単位を含み、ポジ型化学増幅型レジスト組成物である、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の化学増幅型レジスト組成物。
〔10〕
上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の化学増幅型レジスト組成物により形成されたレジスト膜。
〔11〕
上記〔10〕に記載のレジスト膜を塗布した、レジスト塗布マスクブランクス。
〔12〕
上記〔10〕に記載のレジスト膜を露光すること、及び、前記露光された膜を現像することを含む、レジストパターン形成方法。
〔13〕
上記〔11〕に記載のレジスト塗布マスクブランクスを露光すること、及び、前記露光されたマスクブランクスを現像することを含む、レジストパターン形成方法。
〔14〕
前記露光が、電子線又は極紫外線を用いて行われる、上記〔12〕又は〔13〕に記載のレジストパターン形成方法。
〔15〕
上記〔11〕に記載のレジスト塗布マスクブランクスを、露光及び現像して得られるフォトマスク。
〔16〕
非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基で、フェノール性水酸基の水素原子が置換された構造を有する高分子化合物。
〔17〕
前記非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基が、非酸分解性のアダマンタン構造を有する基である、上記〔16〕に記載の高分子化合物。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、高感度、高解像性(例えば、高い解像力、優れたパターン形状、小さいラインエッジラフネス(LER))、及び、良好なドライエッチング耐性を同時に満足したパターンを形成できる化学増幅型レジスト組成物、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、レジストパターン形成方法、及び、フォトマスク、並びに、高分子化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】合成例1で合成した高分子化合物(A1)のd−DMSO(ジメチルスルホキシド)溶媒中でのH−NMR測定チャート。
【図2】合成例2で合成した高分子化合物(A10)のd−DMSO(ジメチルスルホキシド)溶媒中でのH−NMR測定チャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本明細書に於ける基(原子団)の表記において、置換又は無置換を記していない表記は、置換基を有していないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本発明において「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等を意味する。また、本発明において「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、EUV光等による露光のみならず、電子線及びイオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0014】
本発明に係る化学増幅型レジスト組成物は、(A)非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基で、フェノール性水酸基の水素原子が置換された構造を有する高分子化合物、及び(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有する。
【0015】
本発明に係る化学増幅型レジスト組成物は、電子線又は極紫外線露光用であることが好ましい。
本発明に係る化学増幅型レジスト組成物は、ネガ型化学増幅型レジスト組成物であってもよく、ポジ型化学増幅型レジスト組成物であってもよい。
以下、本発明の化学増幅型レジスト組成物について詳細に説明する。
【0016】
〔1〕(A)高分子化合物
本発明に係る化学増幅型レジスト組成物は、(A)非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基で、フェノール性水酸基の水素原子が置換された構造を有する高分子化合物を含有している。
本発明は、上記高分子化合物(A)にも関する。
本発明では、前述の特定の構造を有する高分子化合物(A)を使用することで、高分子化合物(A)のガラス転移温度(Tg)が高くなり、非常に硬いレジスト膜を形成することができ、酸の拡散性やドライエッチング耐性を制御することができる。従って、電子線や極紫外線等の活性光線又は放射線の露光部における酸の拡散性が非常に抑制されるため、微細なパターンでの解像力、パターン形状及びLERが優れる。また、高分子化合物(A)が非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有することが、高いドライエッチング耐性に寄与するものと考えられる。更に、詳細は不明だが、多環脂環炭化水素構造は水素ラジカルの供与性が高く、光酸発生剤である後述の(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の分解時の水素源となり、光酸発生剤の分解効率が向上し、酸発生効率が高くなっていると推定され、これが優れた感度に寄与するものと考えられる。
本発明に係る高分子化合物(A)が有する前述の特定の構造は、ベンゼン環等の芳香族環と、非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基とが、フェノール性水酸基に由来する酸素原子を介して連結している。前述のように、該構造は高いドライエッチング耐性に寄与するだけでなく、高分子化合物(A)のガラス転移温度(Tg)を上げることができ、これらの組み合わせの効果により解像力、特に、電子線や極紫外線を使用した露光による微細な孤立パターンの形成において高い解像力が提供されるものと推定される。
本発明に係る高分子化合物(A)によるガラス転移温度(Tg)の向上の効果は、高分子化合物(A)をポジ型のレジスト組成物中で用いる場合よりも、ネガ型のレジスト組成物中で用いる場合の方が大きいので、本発明に係る化学増幅型レジスト組成物は、ネガ型化学増幅型レジスト組成物であることが好ましい。
【0017】
本発明において、非酸分解性とは、後述の(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物が発生する酸により、分解反応が起こらない性質を意味する。
より具体的には、非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基は、酸及びアルカリに安定な基であることが好ましい。酸及びアルカリに安定な基とは、酸分解性及びアルカリ分解性を示さない基を意味する。ここで酸分解性とは、後述の(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物が発生する酸の作用により分解反応を起こす性質を意味し、酸分解性を示す基としては後述の「酸分解性基を有する繰り返し単位」において説明する酸分解性基が挙げられる。
またアルカリ分解性とは、アルカリ現像液の作用により分解反応を起こす性質を意味し、アルカリ分解性を示す基としてはポジ型の化学増幅型レジスト組成物において好適に使用される樹脂中に含まれる、従来公知のアルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基(例えばラクトン構造を有する基など)が挙げられる。
本願におけるフェノール性水酸基とは、芳香環基の水素原子を水酸基で置換してなる基である。該芳香環基の芳香環は単環又は多環の芳香環であり、ベンゼン環やナフタレン環等が挙げられる。
【0018】
本発明において、多環脂環炭化水素構造を有する基とは、多環脂環炭化水素構造を有する一価の基である限り特に限定されないが、総炭素数が5〜40であることが好ましく、7〜30であることがより好ましい。多環脂環炭化水素構造は、環内に不飽和結合を有していてもよい。
多環脂環炭化水素構造を有する基における多環脂環炭化水素構造は、単環型の脂環炭化水素基を複数有する構造、若しくは、多環型の脂環炭化水素構造を意味し、有橋式であってもよい。単環型の脂環炭化水素基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロオクチル基等を挙げることができ、単環型の脂環炭化水素基を複数有する構造はこれらの基を複数有する。単環型の脂環炭化水素基を複数有する構造は、単環型の脂環炭化水素基を2〜4個有することが好ましく、2個有することが特に好ましい。
多環型の脂環炭化水素構造としては、炭素数5以上のビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を挙げることができ、炭素数6〜30の多環シクロ構造が好ましく、例えば、アダマンタン構造、デカリン構造、ノルボルナン構造、ノルボルネン構造、セドロール構造、イソボルナン構造、ボルナン構造、ジシクロペンタン構造、α−ピネン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造、あるいはアンドロスタン構造を挙げることができる。なお、単環若しくは多環のシクロアルキル基中の炭素原子の一部が、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0019】
上記の多環脂環炭化水素構造の好ましいものとしては、アダマンタン構造、デカリン構造、ノルボルナン構造、ノルボルネン構造、セドロール構造、シクロヘキシル基を複数有する構造、シクロヘプチル基を複数有する構造、シクロオクチル基を複数有する構造、シクロデカニル基を複数有する構造、シクロドデカニル基を複数有する構造、トリシクロデカン構造があげられ、アダマンタン構造がドライエッチング耐性の観点で最も好ましい(すなわち、前記非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基が、非酸分解性のアダマンタン構造を有する基であることが最も好ましい)。
これらの多環脂環炭化水素構造(単環型の脂環炭化水素基を複数有する構造については、該単環型の脂環炭化水素基に対応する単環型の脂環炭化水素構造(具体的には以下の式(47)〜(50)の構造))の化学式を以下に表示する。
【0020】
【化4】

【0021】
【化5】

【0022】
更に上記多環脂環炭化水素構造は置換基を有してもよく、置換基としては例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜6)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜10)、アリール基(好ましくは炭素数6〜15)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6)、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、及びこれら基を組み合わせてなる基(好ましくは総炭素数1〜30、より好ましくは総炭素数1〜15)が挙げられる。
【0023】
上記多環脂環炭化水素構造としては、上記式(7)、(23)、(40)、(41)及び(51)のいずれかで表される構造、上記式(48)の構造における任意の一つの水素原子を結合手とした一価の基を2個有する構造が好ましく、上記式(23)、(40)及び(51)のいずれかで表される構造、上記式(48)の構造における任意の一つの水素原子を結合手とした一価の基を2個有する構造がより好ましく、上記式(40)で表される構造が最も好ましい。
多環脂環炭化水素構造を有する基としては、上記の多環脂環炭化水素構造の任意の一つの水素原子を結合手とした一価の基であることが好ましい。
【0024】
前述の非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基で、フェノール性水酸基の水素原子が置換された構造は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位として高分子化合物(A)に含有されることが好ましい。
【0025】
【化6】

【0026】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基を表す。Arは芳香族環を表す。mは1以上の整数である。)
【0027】
一般式(1)におけるRは水素原子又はメチル基を表すが、水素原子が特に好ましい。
一般式(1)のArの芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、フェナントレン環などの炭素数6〜18の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、又は、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、チアゾール環等のヘテロ環を含む芳香環ヘテロ環を挙げることができる。中でも、ベンゼン環、ナフタレン環が解像性の観点で好ましく、ベンゼン環が最も好ましい。
Arの芳香族環は、上記−OXで表される基以外にも置換基を有していてもよく、置換基としては例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜6)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜10)、アリール基(好ましくは炭素数6〜15)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)が挙げられ、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
【0028】
Xは非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基を表す。Xで表される非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基の具体例及び好ましい範囲は上述のものと同様である。Xは、後述の一般式(2)における−Y−Xで表される基であることがより好ましい。
mは1〜5の整数であることが好ましく、1が最も好ましい。mが1でArがベンゼン環の時、―OXの置換位置はベンゼン環のポリマー主鎖との結合位置に対して、パラ位でもメタ位でもオルト位でもよいが、パラ位又はメタ位が好ましく、パラ位がより好ましい。
【0029】
本発明において、前記一般式(1)で表される繰り返し単位が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
一般式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を使用すると、高分子化合物のTgが高くなり、非常に硬いレジスト膜を形成するため、酸の拡散性やドライエッチング耐性をより確実に制御できる。
【0030】
【化7】

【0031】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは単結合又は2価の連結基を表し、Xは非酸分解性の多環脂環炭化水素基を表す。)
【0032】
前記一般式(2)で表される繰り返し単位で、本発明に用いられる好ましい例を以下に記述する。
一般式(2)におけるRは水素原子又はメチル基を表すが、水素原子が特に好ましい。
一般式(2)において、Yは2価の連結基であることが好ましい。Yの2価連結基として好ましい基は、カルボニル基、チオカルボニル基、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5)、スルホニル基、−COCH−、−NH−又はこれらを組合せた2価の連結基(好ましくは総炭素数1〜20、より好ましくは総炭素数1〜10)であり、より好ましくはカルボニル基、−COCH−、スルホニル基、−CONH−、−CSNH−であり、更に好ましくはカルボニル基、−COCH−であり、特に好ましくはカルボニル基である。
【0033】
は多環脂環炭化水素基を表し、非酸分解性である。多環脂環炭化水素基の総炭素数は5〜40であることが好ましく、7〜30であることがより好ましい。多環脂環炭化水素基は、環内に不飽和結合を有していてもよい。
このような多環脂環炭化水素基は、単環型の脂環炭化水素基を複数有する基、若しくは、多環型の脂環炭化水素基であり、有橋式であってもよい。単環型の脂環炭化水素基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロオクチル基等を挙げることができ、これらの基を複数有する。単環型の脂環炭化水素基を複数有する基は、単環型の脂環炭化水素基を2〜4個有することが好ましく、2個有することが特に好ましい。
多環型の脂環炭化水素基としては、炭素数5以上のビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができ、炭素数6〜30の多環シクロ構造を有する基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトシクロドデシル基、あるいはアンドロスタニル基を挙げることができる。なお、単環若しくは多環のシクロアルキル基中の炭素原子の一部が、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0034】
上記Xの多環脂環炭化水素基としては、好ましくはアダマンチル基、デカリン基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、セドロール基、シクロヘキシル基を複数有する基、シクロヘプチル基を複数有する基、シクロオクチル基を複数有する基、シクロデカニル基を複数有する基、シクロドデカニル基を複数有する基、トリシクロデカニル基であり、アダマンチル基がドライエッチング耐性の観点で最も好ましい。Xの多環脂環炭化水素基における多環脂環炭化水素構造の化学式としては、前述の多環脂環炭化水素構造を有する基における多環脂環炭化水素構造の化学式と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。Xの多環脂環炭化水素基は、前述の多環脂環炭化水素構造における任意の一つの水素原子を結合手とした一価の基が挙げられる。
更に上記脂環炭化水素基は置換基を有してもよく、置換基としては多環脂環炭化水素構造が有してもよい置換基として上述したものと同様のものが挙げられる。
一般式(2)における―O―Y―Xの置換位置はベンゼン環のポリマー主鎖との結合位置に対して、パラ位でもメタ位でもオルト位でもよいが、パラ位が好ましい。
【0035】
本発明において、前記一般式(1)で表される繰り返し単位が、下記一般式(2’)で表される繰り返し単位であることが最も好ましい。
【0036】
【化8】

【0037】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
【0038】
一般式(2’)におけるRは水素原子又はメチル基を表すが、水素原子が特に好ましい。
一般式(2’)におけるアダマンチルエステル基の置換位置はベンゼン環のポリマー主鎖との結合位置に対して、パラ位でもメタ位でもオルト位でもよいが、パラ位が好ましい。
【0039】
一般式(1)又は一般式(2)で示される繰り返し単位の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

【0042】
【化11】

【0043】
本発明に用いる高分子化合物(A)は、一般式(1)、(2)又は(2’)で表される繰り返し単位の他に、更に、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0044】
【化12】

【0045】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
【0046】
前記一般式(3)で表される繰り返し単位で、本発明に用いられる好ましい化合物を以下に記述する。
一般式(3)におけるRは水素原子又はメチル基を表すが、水素原子が特に好ましい。
一般式(3)で表されるヒドロキシスチレン繰り返し単位に関して、水酸基のベンゼン環に対する結合位置は、ベンゼン環のポリマー主鎖との結合位置に対して、パラ位でもメタ位でもオルト位でもかまわないが、パラ位又はメタ位が好ましく、パラ位がより好ましい。
一般式(3)において水酸基が置換しているベンゼン環は、該水酸基以外に置換基を有していてもよく、そのような置換基の具体例及び好ましい例としては、前述の一般式(1)のArの芳香族環が有していてもよい置換基の具体例及び好ましい例と同様である。一般式(3)において水酸基が置換しているベンゼン環は、該水酸基以外に置換基を有しないことが好ましい。
【0047】
一般式(3)で表される繰り返し単位で好ましいものとしては、以下のものが挙げられる。
【0048】
【化13】

【0049】
本発明で用いられる高分子化合物(A)は、上記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位、及び一般式(3)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位として、更に下記のような繰り返し単位を有することも好ましい。
例えば、本発明の化学増幅型レジスト組成物をポジ型のレジスト組成物として用いる場合は、高分子化合物(A)が、更に、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する繰り返し単位(以下、「酸分解性基を有する繰り返し単位」と称することがある)を含むことが必要である。
【0050】
アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
【0051】
好ましいアルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホン酸基が挙げられる。
【0052】
酸分解性基として好ましい基は、これらのアルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
【0053】
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
【0054】
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、1価の芳香環基、アルキレン基と1価の芳香環基とを組み合わせた基、又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
【0055】
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、1価の芳香環基、アルキレン基と1価の芳香環基とを組み合わせた基、又はアルケニル基を表す。
【0056】
酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を発生する繰り返し単位としては、下記一般式(4)で表される繰り返し単位が、反応性が高く、ポストベークでの感度変動、製造時のプロセス変動が少ないため好ましい。一般式(4)で表される繰り返し単位は、ポジ型レジスト組成物において、酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基となる基であるアセタール基又はケタール基を側鎖に有する繰り返し単位である。
【0057】
【化14】

【0058】
(式中、R11は、水素原子又はメチル基を表す。Ar11はアリーレン基を表す。Acは酸の作用により脱離する基であり、−OAcは酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を発生するアセタール基又はケタール基を表す。)
【0059】
前記一般式(4)で表される繰り返し単位で、本発明に用いられる好ましい化合物を以下に記述する。
一般式(4)におけるR11は水素原子又はメチル基を表すが、水素原子が特に好ましい。
一般式(4)におけるAr11はアリーレン基を表し、置換基を有していてもよい。Ar11のアリーレン基は、炭素数6〜18の、置換基を有していてもよいアリーレン基であることが好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基又はナフチレン基がより好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基が最も好ましい。またAr11が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。
一般式(4)で表される繰り返し単位において、Ar11がフェニレン基の時、−OAcのAr11のベンゼン環に対する結合位置は、ベンゼン環のポリマー主鎖との結合位置に対して、パラ位でもメタ位でもオルト位でもかまわないが、パラ位若しくはメタ位が好ましい。
【0060】
一般式(4)におけるAcは、酸の作用により脱離する基であり、−OAcは酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を発生するアセタール基又はケタール基を表す。Acは、具体的には下記一般式(5)で表される基であることが好ましい。
【0061】
【化15】

【0062】
一般式(5)中、R41及びR42は各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
41は、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂環基、又は、ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香環基を表す。
なお、R41、R42、M41及びQの少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成していてもよい。この環は、5員環又は6員環であることが好ましい。
【0063】
41及びR42としてのアルキル基は、例えば、炭素数1〜8のアルキル基である。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基が挙げられる。
【0064】
41及びR42としてのシクロアルキル基は、例えば、炭素数3〜15のシクロアルキル基である。好ましくは、シクロヘキシル基、ノルボルニル基及びアダマンチル基が挙げられる。
【0065】
41及びR42としてのアリール基は、例えば、炭素数6〜15のアリール基である。好ましくは、フェニル基、トリル基、ナフチル基及びアントリル基が挙げられる。
【0066】
41及びR42としてのアラルキル基は、例えば、炭素数6〜20のアラルキル基である。好ましくは、ベンジル基及びフェネチル基が挙げられる。
【0067】
41及びR42として特に好ましくは、水素原子、メチル基、フェニル基、ベンジル基である。またR41及びR42のいずれか少なくとも一方が水素原子である(すなわち、−OAcは酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を発生するアセタール基である)ことが好ましい。
【0068】
41としての2価の連結基は、例えば、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜8のアルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基又はオクチレン基)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3〜15のシクロアルキレン基、例えば、シクロペンチレン基又はシクロヘキシレン基)、−S−、−O−、−CO−、−CS−、−SO−、−N(R)−、又はこれらの2種以上の組み合わせであり、総炭素数が20以下のものが好ましい。ここで、Rは、水素原子又はアルキル基(例えば炭素数1〜8のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等)である。
41は、単結合、アルキレン基、又はアルキレン基と−O−、−CO−、−CS−及び−N(R)−の少なくとも一つとの組み合わせからなる2価の連結基が好ましく、単結合、アルキレン基、又はアルキレン基と−O−との組み合わせからなる2価の連結基がより好ましい。ここで、Rは上述のRと同義である。
【0069】
Qとしてのアルキル基は、例えば、上述したR41及びR42としてのアルキル基と同様である。
【0070】
Qとしての脂環基及び芳香環基としては、例えば、上述したR41及びR42としてのシクロアルキル基及びアリール基が挙げられる。その炭素数は、好ましくは、3〜15である。なお、本発明においては、複数の芳香環が単結合を介して連結されてなる基(例えば、ビフェニル基、ターフェニル基)もQとしての芳香族基に含まれる。
ヘテロ原子を含む脂環基及びヘテロ原子を含む芳香環基としては、例えば、チイラン、シクロチオラン、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール及びピロリドンが挙げられる。なお、本発明においては、複数の“ヘテロ原子を含む芳香環”が単結合を介して連結されてなる基(例えば、ビオローゲン基)もQとしての芳香族基に含まれる。
Qとしての脂環基及び芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0071】
(−M41−Q)として特に好ましくは、メチル基、アリールオキシエチル基、シクロヘキシルエチル基若しくはアリールエチル基である。
【0072】
41、R42、M41及びQの少なくとも2つが互いに結合して環を形成する場合としては、例えば、M41及びQのいずれかとR41とが結合してプロピレン基又はブチレン基を形成して、酸素原子を含有する5員環又は6員環を形成する場合が挙げられる。
【0073】
41、R42、M41及びQの炭素数の総和をNと表記すると、Nが大きい場合には一般式(5)で表される基が脱離する前後の、高分子化合物(A)のアルカリ溶解速度変化が大きくなり、溶解のコントラストが向上して好ましい。Nの範囲としては、好ましくは4〜30であり、更に好ましくは7〜25であり、7〜20が特に好ましい。Nが30以下であると、高分子化合物(A)のガラス転移温度が低下することが抑制され、レジストの露光ラチチュード(EL)が低下したり、一般式(5)で表される基が脱離した残渣がレジストパターン上に欠陥として残ったりすることが抑制されるので好ましい。
【0074】
また、R41、R42、M41及びQのうち少なくとも1つは、脂環あるいは芳香環を有することが、ドライエッチング耐性の観点から好ましい。ここでの脂環基及び芳香環基は、例えば、上述したQとしての脂環基及び芳香環基と同様である。
【0075】
酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を発生する繰り返し単位としては、下記一般式(6)で表される繰り返し単位も好ましい。一般式(6)で表される繰り返し単位は、ポジ型レジスト組成物において、酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基であるカルボキシル基を側鎖に発生する繰り返し単位である。
【0076】
【化16】

【0077】
(式中、R21は、水素原子又はメチル基を表す。Lは単結合又は2価の連結基を表す。Yは酸の作用により脱離する基を表す。)
【0078】
前記一般式(6)で表される繰り返し単位で、本発明に用いられる好ましい化合物を以下に記述する。
一般式(6)におけるR21は水素原子又はメチル基を表すが、水素原子が特に好ましい。
【0079】
Lが2価の連結基の場合、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、−O−、−SO−、−CO−、−N(R)−及びこれらの複数の組み合わせ等が挙げられる。ここで、Rは、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
【0080】
Lとしてのアルキレン基は、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基及びオクチレン基等が挙げられる。
【0081】
Lとしてのシクロアルキレン基は、炭素数5〜10のものが好ましく、例えば、シクロペンチレン基及びシクロヘキシレン基等が挙げられる。
【0082】
Lとしてのアリーレン基は、炭素数4〜20のものが好ましく、例えば、フェニレン基及びナフチレン基等が挙げられる。
【0083】
としてのアリール基の炭素数は、好ましくは4〜20であり、更に好ましくは6〜14である。このアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
としてのアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜8である。このアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基が挙げられる。
としてのシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは5〜8である。このシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0084】
Lの各基は、更に、置換基を有していてもよく、このような置換基の具体例としては、前記Ar11としてのアリーレン基が更に有し得る置換基として説明したものと同様のものを挙げることができる。
【0085】
は酸の作用により脱離する基を表し、具体的には下記一般式で表される基であることが好ましい。
【0086】
【化17】

【0087】
44〜R46は、各々独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。R44〜R46の2つは、互いに結合して、シクロアルキル基を形成してもよい。
【0088】
44〜R46のアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖又は分岐状のものが好ましい。
44〜R46のシクロアルキル基としては、炭素数3〜8の単環のシクロアルキル基又は炭素数7〜20の多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0089】
44〜R46の2つが互いに結合して形成し得るシクロアルキル基としては、炭素数3〜8の単環のシクロアルキル基又は炭素数7〜20の多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、炭素数5〜6の単環のシクロアルキル基が特に好ましい。R46がメチル基又はエチル基であり、R44とR45とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が更に好ましい。
【0090】
は、下記一般式で表される基であることも好ましい。
【0091】
【化18】

【0092】
式中、R30は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記−C(R44)(R45)(R46)で示される基を示し、三級アルキル基として具体的には、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基等が挙げられ、トリアルキルシリル基として具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が挙げられ、オキソアルキル基として具体的には、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が挙げられる。a1は1〜6の整数である。
【0093】
以下に酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する繰り返し単位の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0094】
【化19】

【0095】
【化20】

【0096】
【化21】

【0097】
本発明の化学増幅型レジスト組成物をポジ型のレジスト組成物として用いる場合の高分子化合物(A)における、酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を発生する繰り返し単位の含有量は、高分子化合物(A)の全繰り返し単位に対して、5〜70モル%の範囲が好ましく、10〜60モル%の範囲がより好ましく、15〜50モル%の範囲が特に好ましい。
【0098】
本発明で用いられる高分子化合物(A)は、上記繰り返し単位以外の繰り返し単位として、下記のような繰り返し単位(以下、「他の繰り返し単位」ともいう)を更に有することも好ましい。
【0099】
これら他の繰り返し単位を形成するための重合性モノマーの例としてはスチレン、アルキル置換スチレン、アルコキシ置換スチレン、O−アルキル化スチレン、O−アシル化スチレン、水素化ヒドロキシスチレン、無水マレイン酸、アクリル酸誘導体(アクリル酸、アクリル酸エステル等)、メタクリル酸誘導体(メタクリル酸、メタクリル酸エステル等)、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、置換基を有しても良いインデン、等を挙げることができる。
高分子化合物(A)は、これら他の繰り返し単位を含有してもしなくても良いが、含有する場合、これら他の繰り返し単位の高分子化合物(A)中の含有量は、高分子化合物(A)を構成する全繰り返し単位に対して、一般的に1〜20モル%、好ましくは2〜10モル%である。
【0100】
また、上記繰り返し単位以外の繰り返し単位として、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位や、光酸発生基を有する繰り返し単位を更に有することも好ましい。
アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位としては、例えば、ラクトン構造、フェニルエステル構造を有する繰り返し単位などがあげられ、好ましくは5〜7員環ラクトン構造を有する繰り返し単位であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環した構造を有する繰り返し単位がより好ましい。以下に、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位の具体例を示す。式中、Rxは、H,CH,CHOH,又はCFを表す。
【0101】
【化22】

【0102】
【化23】

【0103】
高分子化合物(A)は、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位の含有量は、高分子化合物(A)中の全繰り返し単位に対し、5〜50モル%が好ましく、より好ましくは10〜40モル%、更に好ましくは15〜30モル%である。
【0104】
本発明においては、上記以外の繰り返し単位として、更に光酸発生基を有する繰り返し単位を含むことが好ましく、そのような単位として例えば、特開平9−325497号公報〔0028〕に記載された繰り返し単位や、特開2009−93137号公報〔0038〕〜〔0041〕に記載された繰り返し単位があげられる。そして、この場合、この光酸発生基を有する繰り返し単位が本発明の活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)にあたると考えることができる。
以下に、光酸発生基を有する繰り返し単位に対応するモノマーの具体例(EB又はEUV露光により発生した酸の構造として示す)を示す。
【0105】
【化24】

【0106】
高分子化合物が光酸発生基を有する繰り返し単位を含有する場合、光酸発生基を有する繰り返し単位の含有量は、高分子化合物(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜40モル%が好ましく、より好ましくは5〜35モル%、更に好ましくは5〜30モル%である。
【0107】
本発明に用いられる高分子化合物(A)における、非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基で、フェノール性水酸基の水素原子が置換された構造を有する繰り返し単位(好ましくは、一般式(1)、一般式(2)又は一般式(2’)で表される繰り返し単位)の含有量の範囲は、高分子化合物(A)を構成する全繰り返し単位に対して、一般的に1〜40モル%、好ましくは2〜30モル%である。
高分子化合物(A)が一般式(3)で表される繰り返し単位を含有する場合の、一般式(3)で表される繰り返し単位の含有量の範囲は、高分子化合物(A)を構成する全繰り返し単位に対して、ネガ型レジスト組成物である場合、一般的に60〜99モル%、好ましくは70〜98モル%であり、ポジ型レジスト組成物である場合、一般的に20〜70モル%、好ましくは25〜60モル%である。
【0108】
高分子化合物(A)は、公知のラジカル重合法やアニオン重合法やリビングラジカル重合法(イニファーター法等)により合成することができる。例えば、アニオン重合法では、ビニルモノマーを適当な有機溶媒に溶解し、金属化合物(ブチルリチウム等)を開始剤として、通常、冷却条件化で反応させて重合体を得ることができる。
高分子化合物(A)としては、芳香族ケトン又は芳香族アルデヒド、及び1〜3個のフェノール性水酸基を含有する化合物の縮合反応により製造されたポリフェノール化合物(例えば、特開2008−145539)、カリックスアレーン誘導体(例えば特開2004−18421)、Noria誘導体(例えば特開2009−222920)、ポリフェノール誘導体(例えば特開2008−94782)も適用でき、高分子反応で修飾して合成しても良い。
また、高分子化合物(A)は、ラジカル重合法やアニオン重合法で合成したポリマーに高分子反応で修飾して合成することが好ましい。
高分子化合物(A)の重量平均分子量は、好ましくは1000〜200000であり、更に好ましくは2000〜50000であり、更により好ましくは2000〜10000である。
高分子化合物(A)の分散度(分子量分布)(Mw/Mn)は、好ましくは1.7以下であり、感度及び解像性の向上の観点でより好ましくは1.0〜1.35であり、1.0〜1.2が最も好ましい。リビングアニオン重合等のリビング重合を用いることで、得られる高分子化合物の分散度(分子量分布)が均一となり、好ましい。高分子化合物(A)の重量平均分子量及び分散度は、GPC測定によるポリスチレン換算値として定義される。
なお高分子化合物(A)は、上述のような特定の繰り返し単位に対応するモノマーを高分子重合して得られる化合物のみに限定されず、非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基で、フェノール性水酸基の水素原子が置換された構造を有する限り、分子レジストのような比較的低分子の化合物も用いることが出来る。
本発明の化学増幅型レジスト組成物に対する高分子化合物(A)の添加量は組成物の全固形分に対して、好ましくは30〜95質量%、より好ましくは40〜90質量%、特に好ましくは50〜85質量%で用いられる。
【0109】
以下に本発明で使用される高分子化合物(A)の具体例を示す。
本発明の化学増幅型レジスト組成物をネガ型レジスト組成物として用いる場合には、高分子化合物(A)は以下に示す構造を持つ化合物が好ましく用いられる。
【0110】
【化25】

【0111】
【化26】

【0112】
【化27】

【0113】
本発明の化学増幅型レジスト組成物をポジ型レジスト組成物として用いる場合には、高分子化合物(A)は以下に示す構造を持つ化合物が好ましく用いられる。
【0114】
【化28】

【0115】
【化29】

【0116】
【化30】

【0117】
【化31】

【0118】
高分子化合物(A)を、ネガ型レジスト組成物中で使用する場合、高分子化合物(A)は上述の一般式(1)、(2)又は(2’)で表される繰り返し単位(以下、これら繰り返し単位を総称して“繰り返し単位(X)”という)と、上述の一般式(3)で表される繰り返し単位(以下、“繰り返し単位(Y)”という)との二成分からなる高分子化合物であることが好ましい。
高分子化合物(A)が、繰り返し単位(X)と繰り返し単位(Y)との二成分からなる高分子化合物である場合、高分子化合物(A)を構成する全繰り返し単位に対する、繰り返し単位(X)及び繰り返し単位(Y)のモル比率(%)(X/Y)は、X/Y=40/60〜5/95の範囲が好ましく、X/Y=30/70〜7/93の範囲がより好ましい。
【0119】
高分子化合物(A)を、ポジ型レジスト組成物中で使用する場合、高分子化合物(A)は上述の一般式(1)、(2)又は(2’)で表される繰り返し単位(以下、これら繰り返し単位を総称して“繰り返し単位(X)”という)と、上述の一般式(3)で表される繰り返し単位(以下、“繰り返し単位(Y)”という)と、上述の酸分解性基を有する繰り返し単位(以下、“繰り返し単位(Z)”という)との三成分からなる高分子化合物であることが好ましい。
高分子化合物(A)が、繰り返し単位(X)と繰り返し単位(Y)と繰り返し単位(Z)との三成分からなる高分子化合物である場合、高分子化合物(A)を構成する全繰り返し単位に対する、繰り返し単位(X)、繰り返し単位(Y)及び繰り返し単位(Z)のモル比率(%)X、Y、Zはそれぞれ、X=3〜40、Y=20〜70、Z=10〜60(但し、X+Y+Z=100)の範囲であることが好ましく、X=5〜30、Y=30〜60、Z=20〜50(但し、X+Y+Z=100)の範囲であることがより好ましい。
【0120】
〔2〕(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明の化学増幅型レジスト組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)(以下、適宜、これらの化合物を「酸発生剤」と略称する)を含有する。
酸発生剤の好ましい形態として、オニウム化合物を挙げることができる。そのようなオニウム化合物としては、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩などを挙げることができる。
また、酸発生剤の別の好ましい形態として、活性光線又は放射線の照射により、スルホン酸、イミド酸又はメチド酸を発生する化合物を挙げることができる。その形態における酸発生剤は、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、オキシムスルホネート、イミドスルホネートなどを挙げることができる。
【0121】
本発明に用いる酸発生剤としては、低分子化合物に限らず、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基を高分子化合物の主鎖又は側鎖に導入した化合物も用いることができる。更に前述したように、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基が、本発明に用いる高分子化合物(A)の共重合成分となっている繰り返し単位中に存在する場合は、本発明の高分子化合物とは別分子の酸発生剤(B)はなくてもかまわない。
【0122】
酸発生剤は、電子線又は極紫外線の照射により酸を発生する化合物であることが好ましい。
【0123】
本発明において、好ましいオニウム化合物として、下記一般式(7)で表されるスルホニウム化合物、若しくは一般式(8)で表されるヨードニウム化合物を挙げることができる。
【0124】
【化32】

【0125】
一般式(7)及び(8)において、
a1、Ra2、Ra3、Ra4及びRa5は、各々独立に、有機基を表す。
は、有機アニオンを表す。
以下、一般式(7)で表されるスルホニウム化合物及び一般式(8)で表されるヨードニウム化合物を更に詳述する。
【0126】
上記一般式(7)のRa1〜Ra3、並びに、上記一般式(8)のRa4及びRa5は、各々独立に有機基を表すが、好ましくはRa1〜Ra3の少なくとも1つ、並びに、Ra4及びRa5の少なくとも1つがそれぞれアリール基である。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
上記一般式(7)及び(8)におけるXの有機アニオンは、例えばスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンなどが挙げられ、好ましくは、下記一般式(9)、(10)又は(11)で表される有機アニオンであり、より好ましくは下記一般式(9)で表される有機アニオンである。
【0127】
【化33】

【0128】
上記一般式(9)、(10)及び(11)に於いて、Rc、Rc、Rc及びRcは、それぞれ、有機基を表す。
【0129】
上記Xの有機アニオンが、電子線や極紫外線などの活性光線又は放射線の照射により発生する酸であるスルホン酸、イミド酸、メチド酸などに対応する。
上記Rc1〜Rc4の有機基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらの複数が連結された基を挙げることができる。これら有機基のうちより好ましくは1位がフッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたシクロアルキル基、フッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。上記Rc2〜Rc4の有機基の複数が互いに連結して環を形成していてもよく、これら複数の有機基が連結された基としては、フッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたアルキレン基が好ましい。フッ素原子又はフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。ただし、末端基は置換基としてフッ素原子を含有しないことが好ましい。
【0130】
そして、本発明においては、前記酸を発生する化合物(B)は、露光で発生した酸の非露光部への拡散を抑制し解像性やパターン形状を良好にする観点から、体積130Å以上の大きさの酸(より好ましくはスルホン酸)を発生する化合物であることが好ましく、体積190Å以上の大きさの酸(より好ましくはスルホン酸)を発生する化合物であることがより好ましく、体積270Å以上の大きさの酸(より好ましくはスルホン酸)を発生する化合物であることが更により好ましく、体積400Å以上の大きさの酸(より好ましくはスルホン酸)を発生する化合物であることが特に好ましい。ただし、感度や塗布溶剤溶解性の観点から、上記体積は、2000Å以下であることが好ましく、1500Å以下であることが更に好ましい。上記体積の値は、富士通株式会社製の「WinMOPAC」を用いて求めた。すなわち、まず、各例に係る酸の化学構造を入力し、次に、この構造を初期構造としてMM3法を用いた分子力場計算により、各酸の最安定立体配座を決定し、その後、これら最安定立体配座についてPM3法を用いた分子軌道計算を行うことにより、各酸の「accessible volume」を計算することができる。
以下に本発明において、特に好ましい酸発生剤を以下に例示する。なお、例の一部には、体積の計算値を付記している(単位Å)。なお、ここで求めた計算値は、アニオン部にプロトンが結合した酸の体積値である。
【0131】
【化34】

【0132】
【化35】

【0133】
【化36】

【0134】
【化37】

【0135】
また、本発明に用いる酸発生剤(好ましくはオニウム化合物)としては、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基(光酸発生基)を高分子化合物の主鎖又は側鎖に導入した高分子型酸発生剤も用いることができ、前述の高分子化合物(A)の記載中に、光酸発生基を有する繰り返し単位として記載した。
【0136】
酸発生剤の組成物中の含有量は、レジスト組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.1〜25質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%であり、更に好ましくは1〜18質量%である。
酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0137】
〔3〕ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を分子内に2個以上有する化合物
本発明の化学増幅型レジスト組成物をネガ型の化学増幅型レジスト組成物として用いる場合には、ネガ型化学増幅型レジスト組成物は、架橋剤として、(C)ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を分子内に2個以上有する化合物(以下、適宜、酸架橋剤又は単に架橋剤と称する)を含有することが好ましい。
【0138】
好ましい架橋剤としては、ヒドロキシメチル化又はアルコキシメチル化系フェノール化合物、アルコキシメチル化メラミン系化合物、アルコキシメチルグリコールウリル系化合物類及びアルコキシメチル化ウレア系化合物が挙げられる。特に好ましい架橋剤としての化合物(C)としては、分子内にベンゼン環を3〜5個含み、更にヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を合わせて2個以上有し、分子量が1200以下のフェノール誘導体や、少なくとも2個の遊離N−アルコキシメチル基を有するメラミン−ホルムアルデヒド誘導体やアルコキシメチルグリコールウリル誘導体が挙げられる。
アルコキシメチル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基が好ましい。
【0139】
上記架橋剤のうち、ヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有さないフェノール化合物とホルムアルデヒドを塩基触媒下で反応させることによって得ることができる。また、アルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体とアルコールを酸触媒下で反応させることによって得ることができる。
このようにして合成されたフェノール誘導体のうち、アルコキシメチル基を有するフェノール誘導体が感度、保存安定性の点から特に好ましい。
【0140】
別の好ましい架橋剤の例として、更にアルコキシメチル化メラミン系化合物、アルコキシメチルグリコールウリル系化合物類及びアルコキシメチル化ウレア系化合物のようなN−ヒドロキシメチル基又はN−アルコキシメチル基を有する化合物を挙げることができる。
【0141】
このような化合物としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、1,3−ビスメトキシメチル−4,5−ビスメトキシエチレンウレア、ビスメトキシメチルウレア等が挙げられ、EP0,133,216A、西独特許第3,634,671号、同第3,711,264号、EP0,212,482A号に開示されている。
これら架橋剤の中で特に好ましいものを以下に挙げる。
【0142】
【化38】

【0143】
式中、L〜Lは、各々独立に、水素原子、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。
【0144】
本発明において架橋剤は、ネガ型のレジスト組成物の固形分中、好ましくは3〜65質量%、より好ましくは5〜50質量%の添加量で用いられる。架橋剤の添加量を3〜65質量%とすることにより、残膜率及び解像力が低下することを防止するとともに、レジスト液の保存時の安定性を良好に保つことができる。
【0145】
本発明において、架橋剤は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよく、パターン形状の観点から2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
例えば、上記のフェノール誘導体に加え、他の架橋剤、例えば上述のN−アルコキシメチル基を有する化合物等を併用する場合、上記のフェノール誘導体と他の架橋剤の比率は、モル比で100/0〜20/80、好ましくは90/10〜40/60、更に好ましくは80/20〜50/50である。
【0146】
〔4〕塩基性化合物
本発明の化学増幅型レジスト組成物には、前記成分の他に、塩基性化合物を酸補足剤として含有することが好ましい。塩基性化合物を用いることにより、露光から後加熱までの経時による性能変化を小さくすることできる。このような塩基性化合物としては、有機塩基性化合物であることが好ましく、より具体的には、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられる。アミンオキサイド化合物(メチレンオキシ単位及び/又はエチレンオキシ単位を有するものが好ましく、例えば特開2008−102383に記載の化合物が挙げられる。)、アンモニウム塩(好ましくはヒドロキシド又はカルボキシレートである。より具体的にはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドに代表されるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドがLERの観点で好ましい。)も適宜用いられる。
更に、酸の作用により塩基性が増大する化合物も、塩基性化合物の1種として用いることができる。
アミン類の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、2,4,6−トリ(t−ブチル)アニリン、トリエタノールアミン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミンや、米国特許第6040112号明細書のカラム3、60行目以降に例示の化合物、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミンや、米国特許出願公開第2007/0224539A1号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)などが挙げられる。含窒素複素環構造を有する化合物としては、2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、N−ヒドロキシエチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ジメチルアミノピリジン、アンチピリン、ヒドロキシアンチピリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エン、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
また、光分解性塩基性化合物(当初は塩基性窒素原子が塩基として作用して塩基性を示すが、活性光線あるいは放射線の照射により分解されて、塩基性窒素原子と有機酸部位とを有する両性イオン化合物を発生し、これらが分子内で中和することによって、塩基性が減少又は消失する化合物。例えば、特登3577743、特開2001−215689号、特開2001−166476、特開2008−102383に記載のオニウム塩)、光塩基発生剤(例えば、特開2010−243773に記載の化合物)も適宜用いられる。
これら塩基性化合物の中でも解像性向上の観点でアンモニウム塩が好ましい。
本発明において、塩基性化合物は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明で使用される塩基性化合物の含有量は、レジスト組成物の全固形分に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.03〜5質量%がより好ましく、0.05〜3質量%が特に好ましい。
【0147】
〔5〕界面活性剤
本発明の化学増幅型レジスト組成物は、更に、塗布性を向上させるため界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤の例としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤、メガファックF171(大日本インキ化学工業製)やフロラードFC430(住友スリーエム製)やサーフィノールE1004(旭硝子製)、OMNOVA社製のPF656及びPF6320、等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーが挙げられる。
レジスト組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の使用量は、レジスト組成物の全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.0005〜1質量%である。
【0148】
〔6〕有機カルボン酸
本発明の化学増幅型レジスト組成物には、前記成分の他に、有機カルボン酸を含有することが好ましい。このような有機カルボン酸化合物として、脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、オキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ケトカルボン酸、安息香酸誘導体、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸などを挙げることができるが、電子線露光を真空化で行なう際にはレジスト膜表面より揮発して描画チャンバー内を汚染してしまう恐れがあるので、好ましい化合物としては、芳香族有機カルボン酸、その中でも例えば安息香酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸が好適である。
有機カルボン酸の配合量としては、高分子化合物(A)100質量部に対し、0.01〜10質量部の範囲内が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量部、更により好ましくは0.01〜3質量部である。
【0149】
本発明の化学増幅型レジスト組成物は、必要に応じて、更に、染料、可塑剤、酸増殖剤
(国際公開第95/29968号公報、国際公開第98/24000号公報、特開平8−305262号公報、特開平9−34106号公報、特開平8−248561号公報、特表平8−503082号公報、米国特許第5,445,917号明細書、特表平8−503081号公報、米国特許第5,534,393号明細書、米国特許第5,395,736号明細書、米国特許第5,741,630号明細書、米国特許第5,334,489号明細書、米国特許第5,582,956号明細書、米国特許第5,578,424号明細書、米国特許第5,453,345号明細書、米国特許第5,445,917号明細書、欧州特許第665,960号明細書、欧州特許第757,628号明細書、欧州特許第665,961号明細書、米国特許第5,667,943号明細書、特開平10−1508号公報、特開平10−282642号公報、特開平9−512498号公報、特開2000−62337号公報、特開2005−17730号公報、特開2008−209889号公報等に記載)等を含有してもよい。これらの化合物については、いずれも特開2008−268935号に記載のそれぞれの化合物を挙げることができる。
〔カルボン酸オニウム塩〕
本発明のレジスト組成物は、カルボン酸オニウム塩を含有してもよい。カルボン酸オニウム塩としては、カルボン酸スルホニウム塩、カルボン酸ヨードニウム塩、カルボン酸アンモニウム塩などを挙げることができる。特に、カルボン酸オニウム塩としては、カルボン酸ヨードニウム塩、カルボン酸スルホニウム塩が好ましい。更に、本発明においては、カルボン酸オニウム塩のカルボキシレート残基が芳香族基、炭素−炭素2重結合を含有しないことが好ましい。特に好ましいアニオン部としては、炭素数1〜30の直鎖、分岐、単環若しくは多環環状アルキルカルボン酸アニオンが好ましい。更に好ましくはこれらのアルキル基の一部又は全てがフッ素置換されたカルボン酸のアニオンが好ましい。またアルキル鎖中に酸素原子を含んでいても良い。これにより220nm以下の光に対する透明性が確保され、感度、解像力が向上し、疎密依存性、露光マージンが改良される。
【0150】
本発明のレジスト組成物に使用される溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、トルエン、キシレン、酢酸シクロヘキシル、ジアセトンアルコール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどが好ましい。これらの溶剤は単独若しくは組合せて用いられる。
レジスト組成物の固形分は、上記溶剤に溶解し、固形分濃度として、1〜40質量%で溶解することが好ましい。より好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは3〜20質量%である。
【0151】
本発明は、本発明の化学増幅型レジスト組成物により形成されたレジスト膜にも関し、このようなレジスト膜は、例えば、該レジスト組成物が基板等の支持体上に塗布されることにより形成される。このレジスト膜の厚みは、0.02〜0.1μmが好ましい。基板上に塗布する方法としては、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により基板上に塗布されるが、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000〜3000rpmが好ましい。塗布膜は60〜150℃で1〜20分間、好ましくは80〜120℃で1〜10分間プリベークして薄膜を形成する。
【0152】
被加工基板及びその最表層を構成する材料は、例えば半導体用ウエハの場合、シリコンウエハを用いることができ、最表層となる材料の例としては、Si,SiO,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等が挙げられる。
【0153】
また、本発明は、上記のようにして得られるレジスト膜を塗布した、レジスト塗布マスクブランクスにも関する。このようなレジスト塗布マスクブランクスを得るために、フォトマスク作製用のフォトマスクブランクス上にレジストパターンを形成する場合、使用される透明基板としては、石英、フッ化カルシウム等の透明基板を挙げることができる。一般には、該基板上に、遮光膜、反射防止膜、更に位相シフト膜、追加的にはエッチングストッパー膜、エッチングマスク膜といった機能性膜の必要なものを積層する。機能性膜の材料としては、ケイ素、又はクロム、モリブデン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、チタン、ニオブ等の遷移金属を含有する膜が積層される。また、最表層に用いられる材料としては、ケイ素又はケイ素に酸素及び/又は窒素を含有する材料を主構成材料とするもの、更にそれらに遷移金属を含有する材料を主構成材料とするケイ素化合物材料や、遷移金属、特にクロム、モリブデン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、チタン、ニオブ等より選ばれる1種以上、又は更にそれらに酸素、窒素、炭素より選ばれる元素を1以上含む材料を主構成材料とする遷移金属化合物材料が例示される。
遮光膜は単層でも良いが、複数の材料を塗り重ねた複層構造であることがより好ましい。複層構造の場合、1層当たりの膜の厚みは、特に限定されないが、5nm〜100nmであることが好ましく、10nm〜80nmであることがより好ましい。遮光膜全体の厚みとしては、特に限定されないが、5nm〜200nmであることが好ましく、10nm〜150nmであることがより好ましい。
【0154】
これらの材料のうち、一般にクロムに酸素や窒素を含有する材料を最表層に持つフォトマスクブランク上で化学増幅型レジスト組成物を用いてパターン形成を行った場合、基板付近でくびれ形状が形成される、いわゆるアンダーカット形状となりやすいが、本発明を用いた場合、従来のものに比べてアンダーカット問題を改善することができる。
次いで、このレジスト膜には活性光線又は放射線(電子線等)を照射し、好ましくはベーク(通常80〜150℃、より好ましくは90〜130℃で、通常1〜20分間、好ましくは1〜10分間)を行った後、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。そして、このパターンをマスクとして用いて、適宜エッチング処理及びイオン注入などを行い、半導体微細回路及びインプリント用モールド構造体やフォトマスク等を作成する。
なお、本発明の組成物を用いてインプリント用モールドを作成する場合のプロセスについては、例えば、特許第4109085号公報、特開2008−162101号公報、及び「ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開―ナノインプリントの基板技術と最新の技術展開―編集:平井義彦(フロンティア出版)」に記載されている。
【0155】
本発明の化学増幅型レジスト組成物の使用形態及びレジストパターン形成方法を次に説明する。
本発明は、上記レジスト膜又はレジスト塗布マスクブランクスを露光すること、及び、該露光されたレジスト膜又はレジスト塗布マスクブランクスを現像することを含む、レジストパターン形成方法にも関する。本発明において、前記露光が電子線又は極紫外線を用いて行われることが好ましい。
精密集積回路素子の製造などにおいてレジスト膜上への露光(パターン形成工程)は、まず本発明のレジスト膜にパターン状に電子線又は極紫外線(EUV)照射を行うことが好ましい。露光量は電子線の場合0.1〜20μC/cm程度、好ましくは3〜10μC/cm程度、極紫外線の場合0.1〜20mJ/cm程度、好ましくは3〜15mJ/cm程度となるように露光する。次いで、ホットプレート上で60〜150℃で1〜20分間、好ましくは80〜120℃で1〜10分間、露光後加熱(ポストエクスポージャベーク)を行い、ついで現像、リンス、乾燥することによりレジストパターンを形成する。現像液は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)等の好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは2〜3質量%アルカリ水溶液で、好ましくは0.1〜3分間、より好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像する。アルカリ現像液には、アルコール類及び/又は界面活性剤を、適当量添加してもよい。アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。特に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%質量の水溶液が望ましい。
【0156】
現像液には、必要に応じてアルコール類及び/又は界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0157】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
上記各種の現像方法が、現像装置の現像ノズルから現像液をレジスト膜に向けて吐出する工程を含む場合、吐出される現像液の吐出圧(吐出される現像液の単位面積あたりの流速)は好ましくは2mL/sec/mm以下、より好ましくは1.5mL/sec/mm以下、更に好ましくは1mL/sec/mm以下である。流速の下限は特に無いが、スループットを考慮すると0.2mL/sec/mm以上が好ましい。
吐出される現像液の吐出圧を上記の範囲とすることにより、現像後のレジスト残渣に由来するパターンの欠陥を著しく低減することができる。
このメカニズムの詳細は定かではないが、恐らくは、吐出圧を上記範囲とすることで、現像液がレジスト膜に与える圧力が小さくなり、レジスト膜・レジストパターンが不用意に削られたり崩れたりすることが抑制されるためと考えられる。
なお、現像液の吐出圧(mL/sec/mm)は、現像装置中の現像ノズル出口における値である。
【0158】
現像液の吐出圧を調整する方法としては、例えば、ポンプなどで吐出圧を調整する方法や、加圧タンクからの供給で圧力を調整することで変える方法などを挙げることができる。
【0159】
また、現像液を用いて現像する工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0160】
アルカリ現像の後に行うリンス処理におけるリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0161】
こうして、本発明の化学増幅型レジスト組成物がネガ型の場合、未露光部分のレジスト膜は溶解し、露光された部分は高分子化合物が架橋しているので現像液に溶解され難く、本発明の化学増幅型レジスト組成物がポジ型の場合、露光された部分が現像液に溶解し、未露光部分は現像液に溶解され難く、基板上に目的のパターンが形成される。
【0162】
また本発明は、レジスト塗布マスクブランクスを、露光及び現像して得られるフォトマスクにも関する。露光及び現像としては、上記に記載の工程が適用される。該フォトマスクは半導体製造用として好適に使用される。
本発明におけるフォトマスクは、ArFエキシマレーザー等で用いられる光透過型マスクであっても、EUV光を光源とする反射系リソグラフィーで用いられる光反射型マスクであっても良い。
【0163】
また、本発明は、上記した本発明のレジストパターン形成方法を含む、半導体デバイスの製造方法、及び、この製造方法により製造された半導体デバイスにも関する。
本発明の半導体デバイスは、電気電子機器(家電、OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載されるものである。
【実施例】
【0164】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
【0165】
(I)ネガ型化学増幅レジストとしての例(電子線)
1.高分子化合物(A)((A)成分)の合成例
<合成例1:高分子化合物(A1)の合成>
日本曹達株式会社製、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP2500)20gをテトラヒドロフラン(THF)120mLに溶解し、4.96gの1−アダマンタンカルボニルクロリド、3.37gのトリエチルアミンを加え、50℃で4時間撹拌した。反応液を室温に戻した後、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを加え、反応液を氷水中で撹拌しながら、1NのHCl水溶液を少しずつ反応液に添加し中和した。反応液を分液ロートに移し、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを更に加えて撹拌後、水層を除去した。その後有機層を200mLの蒸留水で5回洗浄後、有機層を濃縮し、ヘキサン2L中に滴下した。粉体をろ過後、分取し、真空乾燥することで高分子化合物(A1)20.6gが得られた。図1に得られた高分子化合物(A1)のd−DMSO溶媒中でのH−NMR測定チャートを示す。
【0166】
<合成例2:高分子化合物(A10)の合成>
日本曹達株式会社製、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP2500)15gをテトラヒドロフラン(THF)100mLに溶解し、4.89gのビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸クロリド(bicyclo[2.2.1]hept−5−ene−2−carbonyl chloride)、3.79gのトリエチルアミンを加え、50℃で4時間撹拌した。反応液を室温に戻した後、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを加え、反応液を氷水中で撹拌しながら、1NのHCl水溶液を少しずつ反応液に添加し中和した。反応液を分液ロートに移し、水層を除去した。その後有機層を200mLの蒸留水で5回洗浄後、有機層を濃縮し、ヘキサン2L中に滴下した。粉体をろ過後、分取し、真空乾燥することで高分子化合物(A10)17.7gが得られた。図2に得られた高分子化合物(A10)のd−DMSO溶媒中でのH−NMR測定チャートを示す。
【0167】
また、高分子化合物(A1)及び(A10)と同様にして、他の高分子化合物を合成した。
得られた高分子化合物につき、H−NMR測定により、高分子化合物の組成比(モル比)を算出した。また、GPC(溶媒:THF)測定により、高分子化合物の重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)、数平均分子量(Mn:ポリスチレン換算)及び分散度(Mw/Mn、以下「PDI」ともいう)を算出した。重量平均分子量及び分散度について、以下の表中に、高分子化合物の化学式及び組成比とともに示す。
【0168】
【表1】

【0169】
【表2】

【0170】
2.実施例〔実施例1E〕
(1)支持体の準備
酸化Cr蒸着した6インチウェハー(通常のフォトマスクブランクスに使用する遮蔽膜処理を施した物)を準備した。
【0171】
(2)レジスト塗布液の準備
(ネガ型レジスト組成物N1の塗布液組成)
高分子化合物(A1) 0.60g
光酸発生剤(z5)(構造式は下記) 0.12g
架橋剤CL−1(構造式は下記) 0.08g
架橋剤CL−5(構造式は下記) 0.04g
テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(塩基性化合物) 0.002g
2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸(有機カルボン酸) 0.012g
界面活性剤PF6320(OMNOVA(株)製) 0.001g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤) 4.0g
プロピレングリコールモノメチルエーテル(溶剤) 5.0g
【0172】
【化39】

【0173】
上記組成物溶液を0.04μmの孔径を有するポリテトラフルオロエチレンフィルターで精密ろ過して、レジスト塗布溶液を得た。
【0174】
(3)レジスト膜の作成
上記6インチウェハー上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いてレジスト塗布溶液を塗布し、110℃、90秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚100nmのレジスト膜を得た。すなわち、レジスト塗布マスクブランクスを得た。
【0175】
(4)ネガ型レジストパターンの作製
このレジスト膜に、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50KeV)を用いて、パターン照射を行った。照射後に、120℃、90秒間ホットプレート上で加熱し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて60秒間浸漬した後、30秒間、水でリンスして乾燥した。
【0176】
(5)レジストパタ−ンの評価
得られたパターンを下記の方法で、感度、解像力、パタ−ン形状、ラインエッジラフネス(LER)及びドライエッチング耐性について評価した。
【0177】
〔感度〕
得られたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4300)を用いて観察した。線幅100nm(ライン:スペース=1:1)のレジストパターンを解像するときの露光量(電子線照射量)を感度とした。この値が小さいほど、感度が高い。
【0178】
〔解像力(LS)〕
上記の感度を示す露光量(電子線照射量)における限界解像力(ラインとスペースが分離解像する最小の線幅)をLS解像力(nm)とした。
【0179】
〔解像力(IS)〕
スペース幅100nmの孤立スペースパターン(スペース:ライン=1:>100)を解像する際の最小照射量における限界解像力(スペースとラインが分離解像する最小のスペース幅)をIS解像力(nm)とした。
【0180】
〔パタ−ン形状〕
上記の感度を示す露光量(電子線照射量)における線幅100nmのラインパターン(L/S=1/1)の断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4300)を用いて観察した。ラインパターンの断面形状において、[ラインパターンのトップ部(表面部)における線幅/ラインパターンの中部(ラインパターンの高さの半分の高さ位置)における線幅]で表される比率が1.5以上のものを「逆テーパー」とし、該比率が1.2以上1.5未満のものを「やや逆テーパー」とし、該比率が1.2未満のものを「矩形」として、評価を行った。
【0181】
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
上記の感度を示す照射量(電子線照射量)で、線幅100nmのラインパターン(L/S=1/1)を形成した。そして、その長さ方向50μmに含まれる任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、エッジがあるべき基準線からの距離を測定した。そして、この距離の標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0182】
〔ドライエッチング耐性〕
上記の感度を示す照射量(電子線照射量)で全面照射を行うことにより形成したレジスト膜を、HITACHI U−621でAr/C/Oガス(体積比率100/4/2の混合ガス)を用いて30秒間ドライエッチングを行った。その後レジスト残膜率を測定し、ドライエッチング耐性の指標とした。
非常に良好:残膜率95%以上
良好:95%未満90%以上
不良:90%未満
【0183】
〔実施例2E〕
高分子化合物(A)として、前述の高分子化合物(A2)を用い、下表2に記載の溶剤を用いた以外は、実施例1Eと同様にしてレジスト溶液(ネガ型レジスト組成物N2)の調製、ネガ型パターン形成及びその評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0184】
〔実施例3E〕〜〔実施例9E〕、〔実施例19E〕
高分子化合物(A)として、高分子化合物(A3)〜(A10)をそれぞれ用い、下表2に記載の溶剤をそれぞれ用いた以外は、実施例1Eと同様にしてレジスト溶液(ネガ型レジスト組成物N3〜N9及びN19)の調製、ネガ型パターン形成及びその評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0185】
〔実施例10E〕〜〔実施例18E〕、〔比較例1E〕及び〔比較例2E〕
レジスト液処方で、下表2に記載の成分以外は実施例1Eと同様にしてレジスト溶液(ネガ型レジスト組成物N10〜N18、ネガ型レジスト比較組成物N1及びN2)の調製、ネガ型パターン形成及びその評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0186】
【表3】

【0187】
上記及び下記実施例/比較例で用いた前掲以外の素材の略称を以下に記載する。
【0188】
〔酸発生剤(化合物(B))〕
【0189】
【化40】

【0190】
〔架橋剤(化合物(C))〕
【0191】
【化41】

【0192】
〔塩基性化合物〕
B1:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
B2:トリ(n−オクチル)アミン
B3:2,4,5−トリフェニルイミダゾール
【0193】
【化42】

【0194】
〔溶剤〕
S1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)
S2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)
S3:2−ヘプタノン
S4:乳酸エチル
S5:シクロヘキサノン
S6:γ−ブチロラクトン
S7:プロピレンカーボネート
【0195】
評価結果を表3に示す。
【0196】
【表4】

【0197】
表3に示す結果から、本発明に係る組成物は、感度、解像力、パターン形状、ラインエッジラフネス(LER)及びドライエッチング耐性に優れることが分かる。
【0198】
(II)ポジ型化学増幅レジストとしての例(電子線)
1.高分子化合物(A)((A)成分)の合成例
<合成例3:高分子化合物(P1)の合成>
日本曹達株式会社製、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP8000)20gをテトラヒドロフラン(THF)120mLに溶解し、4.96gの1−アダマンタンカルボニルクロリド、3.37gのトリエチルアミンを加え、50℃で4時間撹拌した。反応液を室温に戻した後、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを加え、反応液を氷水中で撹拌しながら、1NのHCl水溶液を少しずつ反応液に添加し中和した。反応液を分液ロートに移し、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを更に加えて撹拌後、水層を除去した。その後有機層を200mLの蒸留水で5回洗浄後、有機層を濃縮し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解した。この溶液を以下では溶液p−1と表記することがある。
次に、溶液p−1に、ビニルエーテル化合物としての10.27gの2−シクロヘキシルエチルビニルエーテル、及び、0.97gの2%カンファースルホン酸(PGMEA溶液)を加え、室温で4時間撹拌した。0.70gの6%トリエチルアミン(PGMEA溶液)を加え、しばらく撹拌した後、反応液を酢酸エチル165mLの入った分液ロートに移した。この有機層を蒸留水200mLで3回洗浄後、有機層をエバポレーターで濃縮し、酢酸エチルを除去した。この反応液をヘキサン2L中に滴下した。粉体をろ過後、分取し、真空乾燥することで高分子化合物(P1)25.6gが得られた。
【0199】
また、高分子化合物(P1)と同様にして、他の高分子化合物を合成した。
得られた高分子化合物につき、H−NMR測定により、高分子化合物の組成比(モル比)を算出した。また、GPC(溶媒:THF)測定により、高分子化合物の重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)、数平均分子量(Mn:ポリスチレン換算)及び分散度(Mw/Mn、以下「PDI」ともいう)を算出した。重量平均分子量及び分散度について、以下の表中に、高分子化合物の化学式及び組成比とともに示す。
【0200】
【表5】

【0201】
【表6】

【0202】
2.実施例
〔実施例1P〕
(1)支持体の準備
酸化Cr蒸着した6インチウェハー(通常のフォトマスクブランクスに使用する遮蔽膜処理を施した物)を準備した。
【0203】
(2)レジスト塗布液の準備
(ポジ型レジスト組成物P1の塗布液組成)
高分子化合物(P1) 0.60g
光酸発生剤z62(構造式は上記) 0.12g
テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(塩基性化合物) 0.002g
界面活性剤PF6320(OMNOVA(株)製) 0.001g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤) 9.0g
【0204】
上記組成物溶液を0.04μmの孔径を有するポリテトラフルオロエチレンフィルターで精密ろ過して、レジスト塗布溶液を得た。
【0205】
(3)レジスト膜の作成
上記6インチウェハー上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いてレジスト塗布溶液を塗布し、110℃、90秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚100nmのレジスト膜を得た。すなわち、レジスト塗布マスクブランクスを得た。
【0206】
(4)ポジ型レジストパターンの作製
このレジスト膜に、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50KeV)を用いて、パターン照射を行った。照射後に、120℃、90秒ホットプレート上で加熱し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて60秒間浸漬した後、30秒間、水でリンスして乾燥した。
【0207】
(5)レジストパタ−ンの評価
得られたパターンを下記の方法で、感度、解像力、パタ−ン形状、ラインエッジラフネス(LER)及びドライエッチング耐性について評価した。
【0208】
〔感度〕
得られたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4300)を用いて観察した。線幅100nm(ライン:スペース=1:1)のレジストパターンを解像するときの露光量(電子線照射量)を感度とした。この値が小さいほど、感度が高い。
【0209】
〔解像力評価(LS)〕
上記の感度を示す露光量(電子線照射量)における限界解像力(ラインとスペースが分離解像する最小の線幅)をLS解像力とした。
【0210】
〔解像力評価(IL)〕
線幅100nmの孤立ラインパターン(ライン:スペース=1:>100)を解像する際の最小照射量における限界解像力(ラインとスペースが分離解像する最小の線幅)をIL解像力(nm)とした。
【0211】
〔パタ−ン形状〕
上記の感度を示す露光量(電子線照射量)における線幅100nmのラインパターン(L/S=1/1)の断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4300)を用いて観察した。ラインパターンの断面形状において、[ラインパターンのボトム部(底部)における線幅/ラインパターンの中部(ラインパターンの高さの半分の高さ位置)における線幅]で表される比率が1.5以上のものを「順テーパー」とし、該比率が1.2以上1.5未満のものを「やや順テーパー」とし、該比率が1.2未満のものを「矩形」として、評価を行った。
【0212】
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
上記の感度を示す照射量(電子線照射量)で、線幅100nmのラインパターン(L/S=1/1)を形成した。そして、その長さ方向50μmに含まれる任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、エッジがあるべき基準線からの距離を測定した。そして、この距離の標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0213】
〔ドライエッチング耐性評価〕
未露光レジスト膜を、HITACHI U−621でAr/C/Oガス(体積比率100/4/2の混合ガス)を用いて30秒間ドライエッチングを行った。その後レジスト残膜率を測定し、ドライエッチング耐性の指標とした。
非常に良好:残膜率95%以上
良好:95%未満90%以上
不良:90%未満
【0214】
〔実施例2P〕〜〔実施例20P〕、〔比較例1P〕〜〔比較例3P〕
レジスト液処方で、下表5に記載の成分以外は実施例1Pと同様にしてレジスト溶液(ポジ型レジスト組成物P2〜P20、ポジ型レジスト比較組成物P1〜P3)の調製、ポジ型パターン形成及びその評価を行った。
【0215】
【表7】

【0216】
評価結果を表6に示す。
【0217】
【表8】

【0218】
表6に示す結果から、本発明に係る組成物は、感度、解像力、パターン形状、LER及びドライエッチング耐性に優れることが分かる。
【0219】
(III)ネガ型化学増幅レジストとしての例(EUV)
〔実施例1F〜6F並びに比較例1F及び2F)
(レジスト溶液の調製)
下記表7に示したネガ型レジスト組成物をポアサイズ0.04μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して、ネガ型レジスト溶液を調製した。
【0220】
(レジスト評価)
調製したネガ型レジスト溶液を、スピンコーターを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布し、100℃で60秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行って、0.05μmの膜厚を有したレジスト膜を形成させた。
得られたレジスト膜に関し、下記の方法で、感度、解像力、パタ−ン形状、ラインエッジラフネス(LER)及びドライエッチング耐性について評価した。
【0221】
〔感度〕
得られたレジスト膜に、EUV光(波長13nm)を用いて、露光量を0〜20.0mJ/cmの範囲で0.1mJ/cmずつ変えながら、線幅100nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを介して、露光を行った後、110℃で90秒間ベークした。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて現像した。
線幅100nmのラインアンドスペース(L/S=1/1)のマスクパターンを再現する露光量を感度とした。この値が小さいほど、感度が高い。
【0222】
〔解像力(LS)〕
上記の感度を示す露光量における限界解像力(ラインとスペースとが分離解像する最小の線幅)をLS解像力(nm)とした。
【0223】
〔パターン形状〕
上記の感度を示す露光量における線幅100nmのラインパターン(L/S=1/1)の断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4300)を用いて観察した。ラインパターンの断面形状において、[ラインパターンのトップ部(表面部)における線幅/ラインパターンの中部(ラインパターンの高さの半分の高さ位置)における線幅]で表される比率が1.5以上のものを「逆テーパー」とし、該比率が1.2以上1.5未満のものを「やや逆テーパー」とし、該比率が1.2未満のものを「矩形」として、評価を行った。
【0224】
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
上記の感度を示す露光量で、線幅100nmのラインパターン(L/S=1/1)を形成した。そして、その長さ方向50μmにおける任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、エッジがあるべき基準線からの距離を測定した。そして、この距離の標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0225】
〔ドライエッチング耐性〕
上記の感度を示す露光量で全面照射を行うことにより形成したレジスト膜を、HITACHI U−621でAr/C/Oガス(体積比率100/4/2の混合ガス)を用いて15秒間ドライエッチングを行った。その後レジスト残膜率を測定し、ドライエッチング耐性の指標とした。
非常に良好:残膜率95%以上
良好:95%未満90%以上
不良:90%未満
【0226】
以上の評価結果を表7に示す。
【0227】
【表9】

【0228】
表7に示す結果から、本発明に係る組成物は、感度、解像力、パターン形状、ラインエッジラフネス(LER)及びドライエッチング耐性に優れることが分かる。
【0229】
(IV)ポジ型化学増幅レジストとしての例(EUV)
〔実施例1Q〜9Q並びに比較例1Q及び2Q〕
(レジスト溶液の調製)
下記表8に示したポジ型レジスト組成物をポアサイズ0.04μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して、ポジ型レジスト溶液を調製した。
【0230】
(レジスト評価)
調製したポジ型レジスト溶液を、スピンコーターを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布し、100℃で60秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行って、0.05μmの膜厚を有したレジスト膜を形成させた。
得られたレジスト膜に関し、下記の方法で、感度、解像力、パタ−ン形状、ラインエッジラフネス(LER)及びドライエッチング耐性について評価した。
【0231】
〔感度〕
得られたレジスト膜に、EUV光(波長13nm)を用いて、露光量を0〜20.0mJ/cmの範囲で0.1mJ/cmずつ変えながら、線幅100nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを介して、露光を行った後、110℃で90秒間ベークした。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて現像した。
線幅100nmのラインアンドスペース(L/S=1/1)のマスクパターンを再現する露光量を感度とした。この値が小さいほど、感度が高い。
【0232】
〔解像力(LS)〕
上記の感度を示す露光量における限界解像力(ラインとスペースとが分離解像する最小の線幅)をLS解像力(nm)とした。
【0233】
〔パターン形状〕
上記の感度を示す露光量における線幅100nmのラインパターン(L/S=1/1)の断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4300)を用いて観察した。ラインパターンの断面形状において、[ラインパターンのボトム部(底部)における線幅/ラインパターンの中部(ラインパターンの高さの半分の高さ位置)における線幅]で表される比率が1.5以上のものを「順テーパー」とし、該比率が1.2以上1.5未満のものを「やや順テーパー」とし、該比率が1.2未満のものを「矩形」として、評価を行った。
【0234】
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
上記の感度を示す露光量で、線幅100nmのラインパターン(L/S=1/1)を形成した。そして、その長さ方向50μmにおける任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、エッジがあるべき基準線からの距離を測定した。そして、この距離の標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0235】
〔ドライエッチング耐性〕
未露光レジスト膜を、HITACHI U−621でAr/C/Oガス(体積比率100/4/2の混合ガス)を用いて15秒間ドライエッチングを行った。その後レジスト残膜率を測定し、ドライエッチング耐性の指標とした。
非常に良好:残膜率95%以上
良好:95%未満90%以上
不良:90%未満
【0236】
以上の評価結果を表8に示す。
【0237】
【表10】

【0238】
表8に示す結果から、本発明に係る組成物は、感度、解像力、パターン形状、ラインエッジラフネス(LER)及びドライエッチング耐性に優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基で、フェノール性水酸基の水素原子が置換された構造を有する高分子化合物、及び(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、を含有する、化学増幅型レジスト組成物。
【請求項2】
電子線又は極紫外線露光用である、請求項1に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項3】
前記高分子化合物(A)が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む、請求項1又は2に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【化1】


(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基を表す。Arは芳香族環を表す。mは1以上の整数である。)
【請求項4】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位が下記一般式(2)で表される繰り返し単位であり、前記高分子化合物(A)が、更に、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含む、請求項3に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【化2】


(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは単結合又は2価の連結基を表し、Xは非酸分解性の多環脂環炭化水素基を表す。)
【化3】


(式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
【請求項5】
前記一般式(2)において、Yが2価の連結基であり、該2価の連結基がカルボニル基である、請求項4に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項6】
前記化合物(B)がオニウム化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項7】
前記高分子化合物(A)の分散度が1.0〜1.35である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項8】
更に、(C)ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を分子内に2個以上有する化合物を含有し、ネガ型化学増幅型レジスト組成物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項9】
前記高分子化合物(A)が、更に、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を発生する基を有する繰り返し単位を含み、ポジ型化学増幅型レジスト組成物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化学増幅型レジスト組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化学増幅型レジスト組成物により形成されたレジスト膜。
【請求項11】
請求項10に記載のレジスト膜を塗布した、レジスト塗布マスクブランクス。
【請求項12】
請求項10に記載のレジスト膜を露光すること、及び、前記露光された膜を現像することを含む、レジストパターン形成方法。
【請求項13】
請求項11に記載のレジスト塗布マスクブランクスを露光すること、及び、前記露光されたマスクブランクスを現像することを含む、レジストパターン形成方法。
【請求項14】
前記露光が、電子線又は極紫外線を用いて行われる、請求項12又は13に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項15】
請求項11に記載のレジスト塗布マスクブランクスを、露光及び現像して得られるフォトマスク。
【請求項16】
非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基で、フェノール性水酸基の水素原子が置換された構造を有する高分子化合物。
【請求項17】
前記非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基が、非酸分解性のアダマンタン構造を有する基である、請求項16に記載の高分子化合物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−163946(P2012−163946A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255302(P2011−255302)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】