説明

化粧シート被覆加工品の製造方法

【課題】 化粧シートの表面に形成した未硬化塗膜の流動性を抑制するとともに、塗膜が化粧シートの塑性変形に追随し得る程度の柔軟性を保持することができる化粧シート被覆加工品の製造方法を提供すること。
【解決の手段】 合成樹脂化粧シートの表面に熱硬化性と紫外線硬化性をともに具備する塗料を塗布して塗膜を形成する工程(1)、加熱により前記塗膜を熱硬化する工程(2)、前記塗膜上に離型性フィルムを積層する工程(3)、真空成形、圧空成形、メンブレンプレス成形などの手法により立体的な基材の表面を前記合成樹脂化粧シートで被覆する工程(4)、紫外線の照射により前記塗膜を光硬化する工程(5)及び前記離型性フィルムを前記塗膜から剥離する工程(6)からなり、前記塗料がポリオール65〜95重量%及びイソシアネート基含有ウレタンアクリレート5〜35重量%からなる硬化反応成分と光重合開始剤を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に紫外線硬化樹脂塗膜を有する化粧シート被覆加工品の製造方法に関し、詳しくは、成形中及び成形後の塗膜を保護するために適当なマスキングフィルムを用い、成形後に塗膜を硬化させるポストキュア手法により表面硬度の高い塗膜を形成した化粧シート被覆加工品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建具、家具、什器、家電製品、電子機器、自動車内装資材などの分野において、合成樹脂化粧シートを、立体的な基材に真空成形、メンブレンプレス成形等により貼着した化粧シート被覆加工品が用いられ、また、その表面には表面硬度を増すために硬化樹脂塗膜が形成される。
【0003】
表面に硬化樹脂塗膜を形成した合成樹脂化粧シートを真空成形などの二次加工により立体的に成形すると、塗膜が硬いため二次成形性が悪いので、塗膜が未硬化又は半硬化の状態で成形した後に紫外線などを照射して塗膜を硬化させるポストキュア手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、成形中及び成形後の塗膜を保護するため、マスキングフィルムを用いることも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3033189号公報(第5欄第47行〜第6欄第2行)
【特許文献2】特許第2874774号公報(第4欄第15〜24行)
【0005】
特許文献1には、成型品に耐磨耗性と耐擦傷性を付与するために半硬化又は未硬化の硬化性樹脂層を形成した化粧シートを成形品と一体化し、その後に放射線を照射して樹脂層を硬化させる手法が開示され、特許文献2には、シート基材上に硬化性樹脂を塗布した後、その塗膜上に離型性フィルムを積層し、次いで放射線を照射して塗膜を硬化させる化粧シートの製造方法が開示され、離型性フィルムの材質として、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン及びポリテトラフルオロエチレンが挙げられている。
【0006】
一方、合成樹脂化粧シートを用いてポストキュア手法により表面に硬化塗膜を形成した化粧シート被覆加工品を製造する際、紫外線照射により硬化させる前の未硬化の塗膜は液状であるため、成形前の保管時や成形工程において染み出したり、また、硬化膜の厚みが不均一になるという問題があった。これを解決するため、未硬化の塗膜を成形前にある程度硬化させ半硬化の状態にする対策などが取られているが、このような半硬化状態に硬化させることは調整が難しく、また、上記問題を完全に解決し、なおかつ均一な硬化塗膜を形成した化粧シート被覆加工品を製造することは困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたもので、化粧シートの立体成形前及び成形中においては、化粧シートの表面に形成した未硬化塗膜の流動性を抑制するとともに、化粧シートの立体成形中においては、塗膜が化粧シートの塑性変形に追随し得る程度の柔軟性を保持することができる化粧シート被覆加工品の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、紫外線硬化性樹脂塗料にウレタン結合で硬化する熱硬化性樹脂塗料を組み合わせ、化粧シートの立体成形前に先ず塗膜中の熱硬化性樹脂を硬化させ、これにより紫外線硬化性樹脂を封じ込めておき、立体成形後に紫外線硬化性樹脂を硬化させることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、合成樹脂化粧シートの表面に熱硬化性と紫外線硬化性をともに具備する塗料を塗布して塗膜を形成する工程(1)、加熱により前記塗膜を熱硬化する工程(2)、前記塗膜上に離型性フィルムを積層する工程(3)、真空成形、圧空成形、メンブレンプレス成形などの手法により立体的な基材の表面を前記合成樹脂化粧シートで被覆する工程(4)、紫外線の照射により前記塗膜を光硬化する工程(5)及び前記離型性フィルムを前記塗膜から剥離する工程(6)からなり、前記塗料がポリオール65〜95重量%及びイソシアネート基含有ウレタンアクリレート5〜35重量%からなる硬化反応成分と光重合開始剤を含有することを特徴とする化粧シート被覆加工品の製造方法にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、化粧シートの立体成形前及び成形中においては、化粧シートの表面に形成された塗膜中の熱硬化した樹脂により未硬化の紫外線硬化性樹脂が封じ込められているので、未硬化塗料の染み出しを防ぐことができるとともに、紫外線硬化性樹脂が未だ硬化していないので、化粧シートの成形に際しては、塗膜が熱可塑性樹脂の塑性変形に追随できるだけの柔軟性を保持している。したがって、成形後の塗膜は良好な表面平滑性を有しており、成形後に未硬化の紫外線硬化性樹脂を硬化することにより、仕上がりのよい表面に硬化塗膜を有する化粧シート被覆加工品が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において用いられる合成樹脂化粧シートは、通常、着色された化粧シートや着色シートの表面に柄模様が印刷された化粧シートであり、塩化ビニル樹脂、非結晶性ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ABS樹脂など、好ましくは、硬質若しくは半硬質塩化ビニル樹脂又は非結晶性若しくは低結晶性ポリエステルを用い、顔料、その他添加剤を混合した樹脂組成物をカレンダー成形法や押出成形法によってシート状に成形する。この化粧シートの厚さは、通常0.075〜0.4mm、好ましくは0.1〜0.3mm程度である。
【0011】
本発明において化粧シートの表面に塗布する硬化性樹脂塗料の硬化反応成分として用いられるポリオールは、加熱によりイソシアネート基含有ウレタンアクリレートと硬化反応を起こすものであり、具体的には、1分子あたり水酸基を2個以上有するもの、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキサノール、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ〔5,2,1,0〕デカン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)シアヌル酸、イソプロピリデンビス(3,4−シクロヘキサンジオール)、あるいはこれらのポリオールのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドもしくはカプロラクトンの付加物などを挙げることができる。また、上記ポリオールとしては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、ポリウレタンポリオール、シリコーンポリオール、あるいは上記ポリオールとマロン酸又はマロン酸エステルとの重縮合物などを挙げることができる。
【0012】
次に、上記硬化反応成分として用いられるイソシアネート基含有ウレタンアクリレートは、アクリル酸エステルとイソシアネートとの反応生成物であり、加熱によりポリオールと硬化反応を起こすとともに、紫外線照射によりそれ自体が架橋硬化反応を起こす性質を有する。イソシアネート基含有ウレタンアクリレートの好適例として、多価アルコールアクリレート、たとえば、ペンタエリスリトールトリアクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物を挙げることができる。
【0013】
上記必須の硬化反応成分であるポリオールとイソシアネート基含有ウレタンアクリレートとの配合比率は、ポリオール65〜95重量%及びイソシアネート基含有ウレタンアクリレート5〜35重量%である。上記配合比率の範囲外では、熱硬化による塗膜の適度の柔軟性と紫外線硬化による塗膜の高い硬度をバランスよく発現させるのが困難である。
【0014】
次に、上記必須の硬化反応成分であるポリオールとイソシアネート基含有ウレタンアクリレートに加え、必要に応じて上記硬化反応成分としてアクリル系オリゴマーを用いることができる。アクリル系オリゴマーは、紫外線照射によりそれ自体が架橋硬化反応を起こす性質を有する紫外線硬化性樹脂であり、望ましい具体例として、ウレタンアクリレートオリゴマー、エステルアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、アクリル樹脂アクリレートなどが挙げられるが、ウレタンアクリレートオリゴマーが好ましい。
ウレタンアクリレートオリゴマーとは、高分子量のイソシアネートとヒドロキシル基を有するアクリレートとが化学結合したものであって、その重量平均分子量は通常2000〜12000程度である。
【0015】
上記アクリル系オリゴマーの配合量は、ポリオールとイソシアネート基含有ウレタンアクリレートの合計量100重量部あたり0〜150重量部である。配合量が150重量部を超えると、熱硬化した塗膜によって後に紫外線硬化される未硬化反応成分の染み出しを抑えるのが困難になる。
【0016】
上記硬化反応成分からなる塗膜に紫外線を照射して未硬化成分を架橋硬化させるために光重合開始剤を添加する必要があり、この場合、照射された紫外線によって光開始剤がラジカルを発生し、このラジカルによってアクリレートが重合して硬化する。
【0017】
本発明においては、成形中及び成形後の塗膜を保護するため、塗膜中の硬化反応成分の一部を加熱により硬化させた後、塗膜上に離型性フィルムを積層する。このようなマスキングフィルムとして用いる離型性フィルムは、非結晶性又は低結晶性ポリエステル系樹脂からなる外層と結晶性のポリブチレンテレフタレート系樹脂からなる内層を積層してなる複層フィルムが好ましい。
【0018】
上記離型性フィルムの外層を構成する非結晶性又は低結晶性ポリエステル系樹脂は、実質的に結晶性を有しないポリエステルないし結晶化度が50%以下の結晶性の低いポリエステルであって、具体的には、テレフタル酸を主体とするジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの少なくとも1種のジオール成分とからなる共重合ポリエステルであり、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸以外に、アジピン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸及びそれらのエステル形成性誘導体、ジオール成分として、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール以外の脂肪族ジオール、芳香族ジオール、脂環式ジオールなどの成分を少量、通常5重量%以下の割合で含むこともできる。
非結晶性又は低結晶性ポリエステル系樹脂の好適な具体例として、テレフタル酸からなるジカルボン酸成分と、20〜35モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールと65〜80モル%のエチレングリコールからなるジオール成分とから構成された共重合ポリエステルを挙げることができる。
また、上記の非結晶性又は低結晶性ポリエステル系樹脂に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、PETI、PBTIなどの結晶化度が50%を超える結晶性ポリエステル系樹脂を配合することができる。これらのポリエステルの混合物に占める非結晶性又は低結晶性ポリエステル系樹脂の配合比率は、通常60〜100重量%、好ましくは80〜100重量%の範囲である。
【0019】
上記離型性フィルムの内層、すなわち、離型性フィルムを積層する硬化塗膜側の層は、結晶性のポリブチレンテレフタレート系樹脂から構成される。
結晶性のポリブチレンテレフタレート系樹脂は、ポリブチレンテレフタレートのみならず、イソフタル酸、アジピン酸などのテレフタル酸以外のジカルボン酸成分や、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、プロピレングリコールなどのブチレングリコール以外のジオール成分を少量共重合したものでもよい。また、二種以上のポリブチレンテレフタレート系樹脂を混合してもよい。さらに、ポリブチレンテレフタレート系樹脂以外の樹脂を少量配合することができる。
【0020】
上記離型性フィルムの外層及び内層を構成する非結晶性又は低結晶性ポリエステル系樹脂及び結晶性のポリブチレンテレフタレート系樹脂には、それぞれ、各種の添加剤、例えば、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などを配合することができる。
【0021】
上記外層及び内層からなる複層フィルムの成形方法については、外層を構成する非結晶性又は低結晶性ポリエステル系樹脂と内層を構成する結晶性のポリブチレンテレフタレート系樹脂をそれぞれ別の押出機に供給し、共押出成形により積層一体化して製膜する方法が望ましい。内層の厚さが極めて薄いため、他の成形法では均一な厚さの積層フィルムを成形するのが困難である。
この複層フィルムは、内層の厚さが3〜15μmであり、総厚さが20〜100μmである。内層の厚さが3μm未満では均一な厚さの膜を形成するのが困難であり、15μmを超えるとスプリングバック現象による塗膜との密着性の低下が避けられず、複層フィルムの総厚さが20μm未満では塗膜との密着性が不十分となり、100μmを超えてもコスト高になるだけでメリットはない。
また、外層と内層の各厚さの比は、95〜50:5〜50の範囲内にあることが望ましい。
【0022】
合成樹脂化粧シートの表面に塗膜を形成する工程(1)
本発明においては、先ず、化粧シートの表面に上記硬化反応成分2種ないし3種からなる硬化性樹脂塗料を塗布する。塗布方法については特に制限がなく、例えば、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法などを使用することができる。
【0023】
加熱により塗膜を熱硬化する工程(2)
化粧シートの表面に上記硬化性樹脂塗料を塗布した後、先ず、加熱によりポリオールの水酸基とイソシアネート基含有ウレタンアクリレートのイソシアネート基を反応させ、ウレタン結合生成による硬化反応を起こす。加熱は、塗膜を高温雰囲気下に一定時間曝すことによって行われ、硬化反応成分の一部が熱硬化した塗膜は、未硬化成分の染み出しを抑制することができ、かつ、柔軟性を保っている。
【0024】
塗膜上に離型性フィルムを積層する工程(3)
次いで、熱硬化した塗膜上に離型性フィルムとして上記複層フィルムをその内層が塗膜に密着するようにして積層する。
【0025】
立体的な基材の表面を合成樹脂化粧シートで被覆する工程(4)
次いで立体的な基材に真空成形、圧空成形、メンブレンプレス成形等により貼着加工する。この二次成形加工に使用される立体的な基材としては、立体加工された中密度繊維板(MDF)、金属や射出成形された樹脂成型品等を挙げることができる。
【0026】
紫外線の照射により塗膜を光硬化する工程(5)
二次成形加工後、立体成型品の表面の離型性フィルムを通して紫外線を照射し、未硬化の塗膜を硬化させる。
【0027】
離型性フィルムを膜から剥離する工程(6)
硬化前後の塗膜表面を保護してきた離型性フィルムは、塗膜の硬化後、必要な時点で最終的に剥離して取り除く。露出した塗膜表面及び塗膜を通して透けて見える成形品の外観は、ポストキュア手法とそれに加えて適当なマスキングフィルムを用いたことにより、良好なものものとなる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を挙げるが、本発明はかかる実施例によって何ら限定されるものではない。また、本発明においては、成型加工性、耐擦傷性、鉛筆硬度及び耐溶剤性は、以下に示す試験方法により評価した。
【0029】
(1)成型性
真空成形により立体的な基材の表面を被覆した化粧シートの表面に皺、クラック等の発生の有無を目視により確認し、以下の基準で評価した。
○ 皺、クラックの発生が全く認められない。
△ 皺、クラックの発生が少し認められる。
× 皺、クラックの発生が多く認められる。
【0030】
(2)耐擦傷性
基材に貼着した化粧シート表面の硬化塗膜を爪で擦り、傷の発生の有無を目視により確認し、以下の基準で評価した。
○ 傷の発生が全く認められない。
△ 傷の発生が少し認められる。
× 傷の発生が多く認められる。
【0031】
(3)鉛筆硬度
JIS−K5600−5−4に依った。
【0032】
(4)耐溶剤性
2種類の溶剤(トルエン及びMEK)を各0.5ml含ませた脱脂綿にて試料シートの表面を20往復強く擦った後の表面状態を観察し、次の基準で評価した。
○ 表面状態に全く変化が認められない。
△ 表面が少し侵されている。
× 表面がかなり侵されている。
【0033】
実施例1
化粧シートとして厚さ300μmの着色した半硬質塩化ビニル樹脂製シートを用い、その表面に、アクリルポリオール(インテック社製、UM−15)100重量部に対して、イソシアネート基含有ウレタンアクリレート系樹脂塗料(根上工業社製、HNF−1)20重量部、光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、IC−184)3重量部を添加して調製した塗料をバーコーターで塗布した後、70℃の温度で1分間加熱し、均一な厚さ約5μmの塗膜を形成した。
一方、非結晶性ポリエステル系樹脂(イーストマンケミカル社製の共重合ポリエステル、商品名「PETG GN071」)100重量部に滑剤(モンタン酸ワックス、クラリアントジャパン社製、商品名「G431L」)1重量部を添加した樹脂材料と、結晶性のポリブチレンテレフタレート系樹脂(ポリプラスチック社製、商品名「700FP」)100重量部に上記と同じ滑剤1重量部を添加した樹脂材料とをそれぞれ別の押出機に供給して共押出成形し、非結晶性ポリエステル系樹脂からなる厚さ45μmの外層と結晶性のポリブチレンテレフタレート系樹脂からなる厚さ5μmの内層が積層一体化された総厚さ50μmの透明な複層フィルムを成形した。
次いで、4本ロールラミネーターを用い、化粧シートの未硬化塗膜上にマスキングフィルムとして上記複層フィルムをその内層が塗膜に密着するようにして積層し、80℃のロール温度でラミネートして積層化粧シートを得た。
得られた積層化粧シートを用いて立体的な基材に貼着被覆するにあたり、基材として10cm×5cm、厚さ15mmのMDFを用い、積層化粧シートを90℃の温度に加熱して軟化させ、真空成形により基材の上面と側面を積層化粧シートで貼着被覆した。
高圧水銀灯(強度120W/cm)を搭載した紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、「アイグランデージ」ECS−401GX)を用い、水銀灯の点灯下において、通過速度10m/分、通過回数2回の条件で上記成型品を通過させることにより、マスキングフィルムを通して紫外線を照射して未硬化の塗膜を硬化させた。塗膜の硬化後、マスキングフィルムを剥離して取り除き、表面に硬化塗膜を有する化粧シートで表面を被覆した成型品を得た。
本実施例において、熱硬化後の塗膜から未硬化成分の染み出しはなかった。
また、化粧シートで表面を被覆した上記成型品について各評価試験を行い、評価結果を表1に示す。
【0034】
実施例2
化粧シート表面に塗布する塗料を、アクリルポリオール(インテック社製、UM−15)100重量部に対して、イソシアネート基含有ウレタンアクリレート系樹脂塗料(根上工業社製、HNF−1)16重量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業社製、HDP−M20)100重量部、光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、IC−184)3.5重量部を添加して調製したこと以外は、実施例1と同様にして、塗膜の熱硬化、化粧シートの成形被覆及び塗膜の紫外線硬化を行い、表面に硬化塗膜を有する化粧シートで表面を被覆した成型品を得た。
本実施例において、熱硬化後の塗膜から未硬化成分の染み出しはなかった。
また、化粧シートで表面を被覆した上記成型品について各評価試験を行い、評価結果を表1に示す。
【0035】
比較例
化粧シート表面に塗布する塗料を、アクリルポリオール(インテック社製、UM−15)100重量部に対して、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(インテック社製)10重量部を添加して調製し、化粧シートの成形被覆後に紫外線照射を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、塗膜の熱硬化及び化粧シートの成形被覆を行い、表面に硬化塗膜を有する化粧シートで表面を被覆した成型品を得た。
化粧シートで表面を被覆した上記成型品について各評価試験を行い、評価結果を表1に示す。
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂化粧シートの表面に熱硬化性と紫外線硬化性をともに具備する塗料を塗布して塗膜を形成する工程(1)、加熱により前記塗膜を熱硬化する工程(2)、前記塗膜上に離型性フィルムを積層する工程(3)、真空成形、圧空成形、メンブレンプレス成形などの手法により立体的な基材の表面を前記合成樹脂化粧シートで被覆する工程(4)、紫外線の照射により前記塗膜を光硬化する工程(5)及び前記離型性フィルムを前記塗膜から剥離する工程(6)からなり、前記塗料がポリオール65〜95重量%及びイソシアネート基含有ウレタンアクリレート5〜35重量%からなる硬化反応成分と光重合開始剤を含有することを特徴とする化粧シート被覆加工品の製造方法。
【請求項2】
前記塗料が硬化反応成分としてポリオール及びイソシアネート基含有ウレタンアクリレートの合計量100重量部あたりアクリル系オリゴマー0〜150重量部を含有する請求項1に記載の化粧シート被覆加工品の製造方法。
【請求項3】
前記離型性フィルムが非結晶性又は低結晶性のポリエステル系樹脂からなる外層と結晶性のポリブチレンテレフタレート系樹脂からなる厚さ3〜15μmの内層を積層してなる総厚さ20〜100μmの複層フィルムである請求項1又は2に記載の化粧シート被覆加工品の製造方法。

【公開番号】特開2007−7528(P2007−7528A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190015(P2005−190015)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】