説明

化粧料

【課題】デンドリマー型シロキサン構造を側鎖に有するアクリルポリマーとパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルとを併用した際の保存安定性を改善し、化粧持ちや使用感に優れた化粧料を提供する。
【解決手段】下記成分(a)〜(c)を含有することを特徴とする化粧料:(a)デンドリマー型シロキサン構造を側鎖に有するアクリルポリマー;(b)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル;及び(c)Si/Cの加重平均値が0.25〜0.46である液状油分。液状油分としては、シリコーン油、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油が挙げられ、液状油分はさらにエタノールを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料、特にデンドリマー型シロキサン構造を側鎖に有するアクリルポリマーとパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルとを配合した化粧料の保存安定性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
デンドリマー型シロキサン構造を側鎖に有するアクリルポリマーは、鎖状型シロキサン構造を側鎖に有する従来のシリコーン変性アクリルポリマーに比べて、耐皮脂性や耐水性の高い皮膜を形成することから、皮膜形成剤として化粧料に配合され、メーキャップ化粧料の化粧持ちなどを改善することが知られている(特許文献1〜2等)。
【0003】
しかしながら、このアクリルポリマーを有機紫外線吸収剤であるパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルと併用した場合には、保存安定性、特に低温での保存安定性が低下し、化粧持ちなどの皮膜効果が十分に発揮されないという問題があった。
【特許文献1】特開2000−63225号公報
【特許文献2】特開2003−226611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記背景技術に鑑みなされたものであり、その目的は、デンドリマー型シロキサン構造を側鎖に有するアクリルポリマーとパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルとを併用した場合の保存安定性を改善し、化粧持ちや使用感に優れた化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、デンドリマー型シロキサン構造を側鎖に有するアクリルポリマーとパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルとを溶解する液状油分を特定範囲のSi/C値に調整することにより、上記問題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記成分(a)〜(c)を含有することを特徴とする化粧料を提供する。
(a)デンドリマー型シロキサン構造を側鎖に有するアクリルポリマー
(b)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル
(c)Si/Cの加重平均値が0.25〜0.46である液状油分。
【0007】
なお、成分(c)の液状油分におけるSi/C加重平均値とは、液状油分を構成する各油分のSi/C値に、その質量割合に応じた重み付けを行って平均した値である。例えば、液状油分がシリコーン油c1(Si/C=0.5)20質量部と、シリコーン油c2(Si/C=0.2)10質量部、ならびに非シリコーン油c3(Si/C=0)10質量部との混合油分であるとき、この液状油分のSi/C加重平均値は、
(0.5×20+0.2×10+0×10)/(20+10+10)=0.3
と計算される。
また、成分(c)の液状油分は、全体として20℃で液状を呈する油分である。液状とは、傾斜法において流動性を有する状態を意味する。
【0008】
また、本発明は、前記化粧料において、成分(c)の液状油分が、シリコーン油、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、及びエステル油からなる群から選ばれる一種又は二種以上からなることを特徴とする化粧料を提供する。
また、本発明は、前記何れかの化粧料において、成分(c)の液状油分が、さらにエタノールを含有することを特徴とする化粧料を提供する。
また、本発明は、前記何れかの化粧料において、成分(a)と成分(b)の合計量に対し成分(c)を1.5倍質量以上含むことを特徴とする化粧料を提供する。
さらに、本発明は、前記何れかの化粧料からなる日焼け止め化粧料、メークアップ化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、(a)のデンドリマー型シロキサン構造を側鎖に有するアクリルポリマーと(b)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルとを(c)特定Si/Cに調整した液状油分に溶解することにより、低温保存した場合でも安定性が高く、化粧持ちや使用感に優れる化粧料が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(a)デンドリマー型シロキサン構造を側鎖に有するアクリルポリマー
成分(a)のデンドリマー型シロキサン構造を側鎖に有するアクリルポリマーとは、アクリルポリマーを主鎖とし、その側鎖にデンドリマー型のポリシロキサンを有するものである。デンドリマーとは、一つの核から放射状に高度に規則的な枝分かれを有する樹脂状高分子を言う。
本発明のアクリルポリマーとしては、下記一般式(1)で示される単量体を構成モノマーとするポリマーが挙げられる。
【0011】
【化1】

【0012】
一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。
Aは炭素数1〜10のアルキレン基であるが、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基であり、特に好ましくはプロピレン基である。
Dはデンドリマー型ポリシロキサンに相当する基であり、下記一般式(2)で示される。
【0013】
【化2】

【0014】
は、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基であり、アルキル基としては、メチル基、メチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが例示され、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが例示される。これらの中でも、メチル基、フェニル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
はi=1とした場合の下記式(3)で示されるシリルアルキル基である。
【0015】
【化3】

【0016】
式(3)中、Rは前記と同じである。
は炭素原子数2〜10のアルキレン基であり、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基などの直鎖状アルキレン基;メチルメチレン基、メチルエチレン基、1−メチルペンチレン基、1,4−ジメチルブチレン基等の分岐状アルキレン基が例示される。これらの中でも、エチレン基、メチルエチレン基、ヘキシレン基、1−メチルペンチレン基、1,4−ジメチルブチレン基が好ましく、特に好ましくはエチレン基である。
は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基が例示される。
【0017】
i+1は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、及び上記シリルアルキル基からなる群から選ばれる基である。
は0〜3の整数である。
iは1〜10の整数であり、該シリルアルキル基の階層数、即ち、該シリルアルキル基の繰返し数を示す。
従って、階層数が1である場合には、デンドリマー型ポリシロキサン構造Dは、下記一般式(4)で示され、これは本発明の成分(d)が有するデンドリマー型ポリシロキサン構造の好適な例の一つである。
【0018】
【化4】

【0019】
一般式(4)中、R、R、Rは前記と同じであり、Rは水素原子又は前記Rと同じである。aは前記aと同じであるが、1分子中のaの平均合計数は0〜7である。
また、好適なデンドリマー型ポリシロキサン構造の一つとして、下記一般式(5)で示される基が挙げられる。
【0020】
【化5】

【0021】
本発明のアクリルポリマーは、上記一般式(1)で示されるデンドリマー型ポリシロキサン含有(メタ)アクリル酸系単量体に加えて、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を構成モノマーとするアクリルポリマーであることが好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピルなどの低級アルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の高級(メタ)アクリレートが挙げられる。本発明においては、少なくともメタクリル酸メチルを構成モノマーとして有することが好ましい。
【0022】
さらに、本発明のアクリルポリマーは、その他のビニル系単量体を構成モノマーとすることも可能である。例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの低級脂肪酸ビニルエステル;酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の高級脂肪酸エステル;スチレン、ビニルトルエン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン等の芳香族ビニル型単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル型単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルアルコール等の水酸基含有ビニル型単量体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボン酸含有ビニル型単量体、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2ーエチルヘキシルビニルエーテル等のエーテル結合含有ビニル型単量体;(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、片末端に(メタ)アクリル基を含有したポリジメチルシロキサン、片末端にスチリル基を含有するポリジメチルシロキサンなどの不飽和基含有シリコ−ン化合物;ブタジエン;塩化ビニル;塩化ビニリデン;(メタ)アクリロニトリル;フマル酸ジブチル;無水マレイン酸;ドデシル無水コハク酸;(メタ)アクリルグリシジルエーテル:(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;スチレンスルホン酸のようなスルホン酸基を有するラジカル重合性不飽和単量体、およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドのような(メタ)アクリル酸から誘導される4級アンモニウム塩、メタクリル酸ジエチルアミンエステルのような3級アミン基を有するアルコールのメタクリル酸エステル、およびそれらの4級アンモニウム塩が例示される。
【0023】
また多官能ビニル系単量体も使用可能であり、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、スチリル基封鎖ポリジメチルシロキサンなどの不飽和基含有シリコ−ン化合物等が例示される。
【0024】
また、フッ素化有機基を含有するビニル系単量体も使用可能であり、例えば、一般式:CH=CRCOORで表されるものが好適に用いられる。式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rはフッ素化有機基であり、例えば、−(CH)x−(CF)y−R[x=0〜3の整数、y=1〜20の整数、R=H、F、−CH(CF又は−CF(CFである]で示される直鎖又は分岐のフルオロアルキル基や、−CHCH−(CF−CFR−[OCFCF(CF)]−OC[m=0または1、n=0〜5の整数、RはFまたはCFである]で表されるフルオロアルキルオキシフルオロアルキレン基が挙げられる。
【0025】
本発明のデンドリマー型ポリシロキサン構造を側鎖に有するアクリルポリマーは、上記単量体を用いラジカル重合法など公知の方法により重合させることにより製造できる。ラジカル重合は、例えば、溶液中、ラジカル開始剤を用いて加温することにより行うことができ、必要に応じて連鎖移動剤も添加できる。具体的には、例えば特許文献1〜2に記載された方法に従って製造することができる。
アクリルポリマーの数平均分子量は、好ましくは3,000〜2,000,000、さらに好ましくは5,000から800,000である。
【0026】
また、本発明の成分(a)のアクリルポリマーとしては市販品も利用可能であり、例えばDow Corning(R) FA4001CM Silicone Acrylate[(アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマー30%及びデカメチルシクロペンタシロキサン70%の混合物、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製]、Dow Corning(R) FA4002ID Silicone Acrylate[(アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマー40%及びイソドデカン60%の混合物、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製]が挙げられる。
【0027】
成分(a)の配合量は、化粧料中、固形分として0.15〜10%、好ましくは0.3〜8%、さらに好ましくは1〜7%である。少なすぎると十分な皮膜効果が得られず、一方過剰に配合すると使用感が低下することがある。
【0028】
(b)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル
成分(b)のパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル(オクチルメトキシシンナメート)は、常温で油状の紫外線吸収剤であり、例えば「パルソールMCX」(DSMニュートリションジャパン(株))等として市販されているものを簡便に使用できる。
成分(b)の配合量は、目的とする紫外線吸収効果に応じて適宜設定可能であるが、通常は化粧料中0.1〜12%、好ましくは0.5〜7.5%。さらに好ましくは1〜7.5%である。
【0029】
なお、本発明においては、本発明の効果が損なわれない限り、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル以外の有機紫外線吸収剤も配合することができる。
このような有機紫外線吸収剤としては、化粧料に通常用いられているものが挙げられる。例えば、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル-N- アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'- ジヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4'-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等);3-(4'-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2'-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール;2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン等が挙げられる。
【0030】
(c)液状油分
成分(c)の液状油分は、一種又はニ種以上の油分で構成され、液状油分全体としてのSi/C加重平均値が0.25〜0.46となるように調整される。液状油分を構成する油分としては、油分全体として20℃で液状を呈する限りは、固形油分を含んでいてもよいが、好ましくは液状油分のみからなる。
液状油分を構成する油分の好適な例としては、シリコーン油の他、非シリコーン油である炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油が挙げられる。シリコーン油は、液状油分のSi/C加重平均値を上記範囲に調整する上で必須の油分である。
【0031】
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等)、又は環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、カプリリルヘプタメチルトリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。また、アルキル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等の変性シリコーン油も挙げられる。
なお、シリコーン系界面活性剤のように親水基を有するようなシリコーン誘導体(例えばポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンなど)は、成分(c)の構成油分には含まれない。
【0032】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸等が挙げられる。
高級アルコールとしては、例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
【0033】
エステル油としては、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油などの天然油脂;ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、 12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等の合成エステル油が挙げられる。
【0034】
また、液状油分には、エタノールを含んでいてもよい。エタノールによっても、非シリコーン油と同様に、液状油分のSi/C加重平均値を調整できる。この点で、本発明においては、エタノールも液状油分の構成油分の一つと見なすことができる。
【0035】
成分(c)の配合量は、通常は1〜70質量%、典型的には1〜50質量%の範囲で設定される。成分(c)は、成分(a)及び成分(b)を安定に溶解し得る量を用いることが好適であり、典型的には成分(a)と成分(b)の合計量に対して1.5倍質量以上を用いる。
【0036】
本発明の化粧料には、本発明の効果を損なわない限り、化粧料に通常配合可能な他の成分を配合してもよい。例えば、粉末成分、固体油脂、ロウ、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0037】
本発明の化粧料の剤型は任意であり、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水-油二層系、水-油-粉末三層系、ジェル、ミスト、スプレー、ムース、ロールオン、スティック等、特に制限されない。また、不織布等のシートに含浸あるいは塗布した製剤なども可能である。
【0038】
また、本発明の化粧料の形態も制限されず、化粧水、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル化粧料;ファンデーション、口紅、アイシャドー、アイライナー、アイブロウ、マスカラ、頬紅、マニキュア等のメーキャップ化粧料;日焼け止め化粧料(サンスクリーン剤);ボディー化粧料;芳香化粧料;ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアコンディショナー、リンス、育毛料、整髪料等の毛髪化粧料;軟膏等が挙げられる。本発明はメーキャップ化粧料や日焼け止め化粧料において特に有用である。
以下、本発明を具体例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
試験例1 油分中における安定性
下記表1〜2に従って各成分を混合し、−5℃で1ヶ月保存後の混合液について沈殿の有無、相分離の有無、透明性(透明:○、半透明:△、白濁:×)を目視で評価した。
【0040】
表1〜2のように、デンドリマー型シロキサン含有アクリルポリマー、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルは、何れも単独では汎用シリコーン油(Si/C=0.5)に安定に溶解するが(試験例1−1、試験例1−2)、これらを併用した場合には、経時的に沈殿や相分離を生じてしまう(試験例1−3〜試験例1−5)。
これに対して、液状油分のSi/Cを変えて0.46以下とすると、デンドリマー型シロキサン含有アクリルポリマーとパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルとを併用しても、沈殿や相分離を生じずに安定な油相とすることができた(試験例1−7〜1−13)。ただし、このような液状油分であっても、デンドリマー型シロキサン含有アクリルポリマーとパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルの合計量に対する液状油分の配合量が少なと、経時安定性が低下する傾向があった(試験例1−6)。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
試験例2 乳化化粧料中における安定性
表3は、上記油相を乳化化粧料とした際の保存安定性、使用感について調べた結果である。表3から、乳化化粧料においても、上記表1〜2と同様に、液状油分のSi/Cを調整することで低温での保存安定性が改善され、化粧もち効果も改善されることがわかる。
【0044】
【表3】

【0045】
(製造方法)
油分(成分1〜4)及び成分5〜7を均一に混合し、成分8を添加し、ホモミキサーで分散する。その後、粉末(成分9〜15)を添加し、ホモミキサーで分散する。
この分散液中に、成分16〜20を溶解した水相部を攪拌しながら徐々に添加し、乳化する。その後、ホモミキサー処理を行い乳化粒子を均一に整えて、W/O型クリーム状ファンデーションを得た。
【0046】
(安定性)
試料を50℃、室温、−5℃で1ヶ月保存した後の外観を目視により評価した。
○:分離・油浮き・乳化粒子径の増大等は全くみられない。
△:明確な分離は見られないが、僅かな油浮き、
調製当初に比較して若干の乳化粒子の増大が見られる。
×:分離・油浮きが見られ、調製当初に比較して明らかな乳化粒子の増大が見られる。
【0047】
(使用感)
安定性試験で−5℃で保存後の試料を肌に塗布し、化粧持ち、油っぽさ、べたつきについて下記基準で評価した。具体的には、評価専門パネリスト10名により、試料を実際に使用して官能試験を行った。
○:10名中8名以上が各評価項目について良好と判断した。
△:10名中5名以上8名未満が各評価項目について良好と判断した。
×:10名中5名未満が良好と判断した。
【0048】
試験例3 Si/C
表4は、液状油分のSi/C値を変えて、保存安定性ならびに使用感を調べた結果である。表4から、Si/Cが高いと保存安定性や化粧もち効果が低く、Si/C低いと油っぽさやべたつきを生じて使用感が低下し、また、化粧料もち効果も低下する傾向があることが理解される。
以上のことから、保存安定性が高く、化粧もちや使用感に優れた化粧料とするためには、液状成分のSi/Cを0.25〜0.46の範囲に調整することが好適であると考えられる。
【0049】
【表4】

【0050】
(製造方法)
表3と同様にして、W/O型乳液状ファンデーションを得た。
【0051】
以下、本発明にかかる化粧料の処方例を示す。配合量は質量%で示す。何れの化粧料も保存安定性、化粧料持ち、使用感に優れるものであった。
【0052】
処方例1:O/W乳化ファンデーション
【表5】

【0053】
(製造方法)
水相成分1〜4を溶解し、成分5を添加しホモミキサーで均一に分散する。その後、粉末成分6〜10を添加し、ホモミキサーで均一に分散し、中和剤成分24を添加、溶解後約70℃に加温する(粉末分散水相)。
油相成分11〜23を約70℃で加温溶解し、上記水相に添加し、ホモミキサーで均一に乳化粒子を整える。その後、約30℃まで冷却し、目的とするファンデーションを得た。
【0054】
処方例2:油性ファンデーション
【表6】

【0055】
(製造方法)
液状成分1〜7を均一に混合し、粉末成分8〜13を添加する。その後、ホモミキサーで均一に分散し、目的とする油性ファンデーションを得た。
【0056】
処方例3:化粧下地
【表7】

【0057】
(製造方法)
油相成分1〜6を均一に混合し、成分7を添加し、ホモミキサーで均一に分散する。その後、粉末成分8〜12を添加し、ホモミキサーで均一に分散する(粉末分散油相)。
上記油相に、成分13〜20を溶解した水相成分を添加し、ホモミキサーで乳化粒子を均一に整え、目的とする化粧下地を得た。
【0058】
処方例4:W/O型サンスクリーン
【表8】

【0059】
(製造方法)
油相成分1〜7を均一に混合し、粉末成分8,9を添加する。ホモミキサーで均一に分散し、成分10〜15を溶解した水相成分を添加する。ホモミキサーで乳化粒子を均一に整え、目的とするサンスクリーンを得た。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)〜(c)を含有することを特徴とする化粧料。
(a)デンドリマー型シロキサン構造を側鎖に有するアクリルポリマー
(b)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル
(c)Si/Cの加重平均値が0.25〜0.46である液状油分。
【請求項2】
請求項1記載の化粧料において、成分(c)の液状油分が、シリコーン油、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、及びエステル油からなる群から選ばれる一種又は二種以上からなることを特徴とする化粧料。
【請求項3】
請求項1又は2記載の化粧料において、成分(c)の液状油分が、さらにエタノールを含有することを特徴とする化粧料。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の化粧料において、成分(a)と成分(b)の合計量に対し成分(c)を1.5倍質量以上含むことを特徴とする化粧料。
【請求項5】
請求項1〜5の何れかに記載の化粧料からなる日焼け止め化粧料。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の化粧料からなるメークアップ化粧料。

【公開番号】特開2010−143833(P2010−143833A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319673(P2008−319673)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】