説明

化粧料

【課題】
化粧料の製造工程中における粒子径0.1μm未満の金属酸化物微粒子の飛散を軽減し、この金属酸化物微粒子を配合した化粧料を塗布した場合になめらかに肌上に塗り拡げることができる化粧料を提供する。
【解決手段】
化粧料中に、粒子径0.1μm未満の金属酸化物微粒子が集合してなる中空粒子と、有機球状粒子とを含有することにより、製造過程において金属酸化物微粒子の飛散を防ぐことができ、作業工程の安全性を高め、さらに肌の上に塗布した際に中空粒子が有機球状粉体との接触により構造が崩れ、金属酸化物微粒子を肌の上に均一に塗布することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子径0.1μm未満の金属酸化物微粒子が集合してなる中空粒子を、化粧料中に有機球状粒子と共に配合することにより、当該化粧料の製造過程における0.1μm未満の金属酸化物の飛散を抑え、また、肌に塗布した場合には、中空粒子が滑らかにのび拡がりながら崩壊して、金属酸化物が肌上に塗布されることが可能な化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子径が0.1μm未満の金属酸化物微粒子は、熱的、物理的、化学的に安定であり、さまざまな工業分野で利用されており、化粧料においても様々な種類の金属酸化物微粒子が配合されている。例えば、化粧料中にはアルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等が配合されている。
【0003】
化粧料中に金属酸化物微粒子を配合する目的は、例えば、酸化鉄による塗布色の調整や、酸化チタン、酸化亜鉛による紫外線防御効果等が挙げられる。
【0004】
特に、紫外線は生体に及ぼす作用が強く、皮膚にさまざまな変化をもたらし、皮膚に炎症を引き起こしたり、皮膚上にしわの形成を引き起こしたりすることから、酸化チタンや酸化亜鉛を含有する化粧料を肌に塗布して、紫外線から肌を守ることが大切である。
【0005】
また、酸化チタンや酸化亜鉛等は、紫外線防御効果が高いことの他に、比較的光安定性が高く人体への安全性も高いことから、多くの化粧料に配合されている。しかし、多量に配合した場合は、塗布時の白さが目立つことや、塗布してのばしていくときのきしみ感等、使用感の低下を招く。実際に酸化チタンや酸化亜鉛のみで高い紫外線防御効果をもつ化粧料も数多く開発されているが、使用感は十分良好といえるものではない。(特許文献1)
【0006】
さらに、波長280〜320nmのUV−B領域の紫外線を遮蔽する目的で配合される粒子径0.1μm未満の微粒子酸化チタンや、波長320〜400nmのUV−A領域を遮蔽する効果があるとされる粒子径0.1μm未満の微粒子酸化亜鉛は、ナノ粒子と呼ばれている。これらのナノ粒子には、肌への浸透等生体への安全性や、化粧料製造工程での粒子の飛散による製造従事者の呼吸器に対する安全性等を懸念する、いわゆる「ナノ問題」がある。(非特許文献1)
【0007】
一方で、紫外線防御能を確保するために、パラアミノ安息香酸(PABA)誘導体、桂皮酸誘導体、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、カンファー誘導体等の有機系紫外線吸収剤が配合されている。有機系紫外線吸収剤は化粧料に配合した場合に無色かつ透明であるため汎用されているが、耐熱性や耐光性の不足や多量に配合した場合における皮膚トラブル等の原因となる可能性があり、安全性が懸念される。
【0008】
このため、例えば、0.1μm以下の酸化亜鉛では、ポリマーなどと複合化する手法も考えられているが、工程中のモノマーや有機溶媒等、複合粉体製造工程で、環境への負荷の問題がある。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−208044
【特許文献2】特開平8−60022
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Peter HM Hoet, Irene Bruske−Hohlfeld and Oleg V Salata“Nanoparticles−known and unknown health risk”Journal of Nanobiotechnology,2:12,2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明は、粒子径0.1μm未満の金属酸化物微粒子を対象とした、いわゆるナノ問題への一つの対応として、化粧料の製造工程中の金属酸化物微粒子の飛散を軽減し、この金属酸化物微粒子を配合した化粧料を塗布する場合に、金属酸化物微粒子をなめらかに肌上に塗り拡げることができる化粧料を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような状況を鑑みて鋭意検討を重ねた結果、粒子径0.1μm未満の金属酸化物微粒子を集合させて中空粒子とすることにより、化粧料の製造工程中の金属酸化物微粒子の飛散を抑えることができることを見出した。さらに、有機球状粉体を共に配合することにより、該金属酸化物微粒子を化粧料中に多量に配合してもきしむこと無くなめらかにのび、のばしていく過程で摩擦により中空粒子が崩壊して、金属酸化物微粒子を肌に塗り拡げることができることを見出し、本願発明の化粧料を完成させた。
【0013】
すなわち、本願発明の化粧料は、金属酸化物微粒子が集合してなる中空粒子を用いることにより、化粧料の製造工程中で粒子径0.1μm未満の金属酸化物微粒子の飛散を抑制することができ、有機球状粉体を化粧料中に同時に配合することにより、化粧料を肌にのばし拡げたときに中空粒子と有機球状粉体とが互いに作用して中空粒子が軽く崩れてなめらかにのび、金属酸化物微粒子を肌上で細かく均一に拡げることができる。
【0014】
本願発明は、次の成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする化粧料である。
(A)粒子径0.1μm未満の金属酸化物微粒子が集合してなる中空粒子
(B)有機球状粉体
【0015】
本願発明での粒子径0.1μm未満の金属酸化物微粒子が集合してなる中空粒子において、粒子径0.1μm未満とは、電子顕微鏡による直接観察にて、一次粒子径(球状でないものについては最長径)が0.1μm未満のものである。
【0016】
本願発明での中空粒子とは、複数個の微粒子が集合体を形成したものであり、外観が球状で中身が空洞である風船状の粒子をいう。また、外殻の一部分に穴が空いた凹面体の不完全な球状粒子も中空粒子とみなす。(図1参照)
【0017】
本願発明では、粒子径0.1μm未満の金属酸化物微粒子が集合して形成された中空粒子を製造するにあたり、環境負荷の少ない水系やアルコール系で製造できること、界面活性剤や塩類などの添加物を使わないので廃液処理の懸念がないこと等、環境にやさしく工程が簡便であることを考慮した。
具体的には、本願発明で用いる中空粒子の製造方法は、以下の通りである。すなわち、原料粉体である金属酸化物微粒子を、水系溶媒又はアルコール系溶媒に分散して分散液体(スラリー)を調製する。この時、分散液体中で作用する粒子間のvan der Waals引力と界面電気二重層の重なりに基づく静電反発力との両微小力間の相互作用によって定まる分散液体中の粒子間の平均表面間距離(LDLVO)と、分散液体中に含まれる粒子の固形分濃度とその粒子径とによって定まる分散液体中の粒子間の平均表面間距離(LWoodcock)との関係が、「LDLVO≧LWoodcock」となるように制御する。金属酸化物微粒子を分散媒体である水系溶媒又はアルコール系溶媒に均一高分散化した後、100μm未満の液滴にして噴霧乾燥を行う。
【0018】
すなわち、LDLVOは、Verwey,E. and J.Th.G.Overbeek 「Theory of the Stability of Lyophobic Colloids」 Elsevier,Amsterdam,Netherlands(1948)に示されるDLVO理論を基に、van der Waals引力と静電反発力の和のポテンシャルが、ボルツマン定数と絶対温度の積よりも10倍大きいときの粒子表面間距離である。一方、LWoodcockは、Woodcock,L.V.「Proceeding of a workshop held at Zentrum fur interdisziplinare Forschung University Bielefield」 Nov.11〜13(1985),Edited by Th.Dorfmuller and G.Williams より引用した
H=d[{1/(3πF)+5/6}0.5−1]
(式中、Hは粒子の平均表面間距離、dは粒子径、Fは粒子の体積分率)の関係式から算出したHである。本発明での中空粒子を製造する場合、このLWoodcockがLDLVOを超えない範囲の原料粉体のFを把握し、これをもとに仕込む原料粉体の固形分濃度を設定する。
【0019】
「LDLVO≧LWoodcock」の関係式を満たしながら、噴霧乾燥工程において噴霧口の目詰まり等のトラブルなく高分散化するためには、分散液体中の粒子の固形分濃度を25重量%以下とし、ビーズミルを用いて分散するのが好ましい。また、噴霧乾燥工程において0.1μm未満の液滴を形成させるには、3流体又は4流体のノズルを用いる方法、又は回転ディスク法が好ましい。
【0020】
上記のビーズミルを用いる場合、メディアとして用いる微小ビーズは、コンタミネーションを抑えるために、ジルコニアプラズマ溶融ビーズ、特にイットリウム強化型のものが好ましい。また、微小ビーズの平均粒子径は、分散効率を上げるために100μm以下が好ましい。さらに、乾燥工程の熱風の吹き出し温度は、金属酸化物微粒子の結晶系の変化を防ぎ、かつ乾燥を十分に行える様、約250℃を上限とするのが好ましい。
【0021】
本願発明における金属酸化物微粒子が集合してなる中空粒子の外径は、1.0〜50.0μmであることが好ましい。この範囲内のとき、化粧料製造工程中での飛散が抑えられ安全かつ簡便に作業従事者が取り扱える。また、この成分が配合された化粧料を肌に塗布したとき、なめらかにのび拡がりながら崩壊し、元の金属酸化物微粒子に近い状態で肌上に塗布される。
【0022】
本願発明に用いられる金属酸化物微粒子は、通常化粧料中に配合できるものであれば、特に限定されない。具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化鉄、ケイ酸(シリカ)が好ましく、これらを1種又は2種以上用いてもよい。2種以上の場合は混合物や複合物、表面処理物を用いても良い。特に、酸化チタンや酸化亜鉛は、塗布した時にきしみ感を生じやすいため、中空粒子とすることが、化粧料の使用感を良好にする上で有効である。
【0023】
酸化チタンや酸化亜鉛の場合は、他の金属酸化物で表面処理(被覆)されていてもよい。特にシリカによる表面処理は、酸化チタンの分散液体を調製した際に、粒子の分散性を向上させる効果があるため好ましい。ただし、シリカの被覆率や、シリカの被覆方法については限定しない。シリカ被覆酸化チタン微粒子としては、例えば、「マックスライトTS−01」、「マックスライトTS−04」、「マックスライトTS−043」、「マックスライトF−TS20」(昭和電工株式会社製)、「MT−100HP」、「MT−100WP」、「MT−500SA」(テイカ株式会社製)、「STR−100A」、「STR−100W」(堺化学工業株式会社製)、等が挙げられる。シリカ被覆酸化亜鉛としては、「マックスライトZS−032」、「マックスライトZS−032−D」(昭和電工株式会社製)、「FINEX−30W」、「FINEX−50W」(堺化学工業株式会社製)、等がある。
【0024】
得られた金属酸化物微粒子の集合体である中空粒子は、撥水性や撥油性を付与するために、金属石鹸処理、シリコーン処理、含フッ素処理、アミノ酸処理等、各種表面処理を行って化粧品に配合してもよい。なお、これらの処理は、1種又は2種類以上組み合わせて用いても構わない。
【0025】
本願発明における、粒子径0.1μm未満の金属酸化物微粒子が集合してなる中空粒子の化粧料への配合量は、0.01〜10.0重量%が好ましい。より好ましくは、0.1〜10.0重量%であり、この範囲内のとき、塗布時ののびのなめらかさが損なわれない。
【0026】
本願発明で用いられる有機球状粉体は、通常の化粧料に用いられる水及び油剤に不溶の球状粉体であり、形状が略球状〜真球状のものが含まれる。このような有機球状粉体としては、例えば、ナイロンパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンや(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー等のシリコーンパウダー、ポリメタクリル酸メチルやメタクリル酸メチルクロスポリマー等のアクリル樹脂パウダーが挙げられる。
【0027】
本願発明の有機球状粉体の平均粒子径は、3.0〜20.0μmが好ましく、より好ましくは5.0〜15.0μmである。この範囲内のとき、塗布時に中空粒子と接触し、該中空粒子を崩す効果が得られる。
【0028】
これらの有機球状粉体は市販品を用いることができ、例えば、ナイロンパウダーである「ガンツパールGPA−550」(ガンツ化成株式会社製)、「ナイロンSP−500」、「ナイロンSP−10」、「ナイロンSP−20」、「ナイロンパウダーHK−5000」(東レ株式会社製)、等が挙げられる。
また、シリコーンパウダーである「トスパール145A」、「トスパール2000B」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、「KMP−590」、「KSP−100」、「KSP−101」、「KSP−102」、「KSP−105」、「KSP−300」(信越化学工業株式会社製)、「トレフィルE−506S」、「EP−9215」(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、等が挙げられる。
アクリル樹脂パウダーである「MB−4C」、「MB−8C」「ACX−806C」、「ACX−1502C」(積水化成品工業株式会社製)、「GM−0600」、「GMX−0610」、「GMX−0810」、「GMX−2001」、「GMP−0800」、「GMP−0820」、「GBM−55COS」(ガンツ化成株式会社製)「マツモトマイクロスフェアーM−100」、「マツモトマイクロスフェアーM−101」、「マツモトマイクロスフェアーM−305」、「マツモトマイクロスフェアーM−306」、「マツモトマイクロスフェアーM−330」、「マツモトマイクロスフェアーM−201」、「マツモトマイクロスフェアーM−503B」、「マツモトマイクロスフェアーS−100」、「マツモトマイクロスフェアーM−102」(松本油脂製薬株式会社製)、等が挙げられる。
【0029】
成分(B)の有機球状粉体は、上記のなかから1種又は2種類以上を用いることができ、化粧料中に1.0〜5.0重量%含有される。この範囲内のとき、金属酸化物微粒子の集合体である中空粒子の塗布時になめらかさを与え、また、化粧料をのび拡げたときに中空粒子を適度に崩壊させることができる。
【0030】
本願発明の化粧料には、前記の成分(A)と(B)の他に、必要に応じて本発明の効果が損なわれない範囲で通常の化粧料に配合される成分である水、油脂、ロウ類、炭化水素、脂肪酸、アルコール、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン油、フッ素油、多価アルコール、糖類、高分子、界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、酸化防止剤、殺菌・防腐剤、染料、香料、色素、可塑剤、有機溶媒、薬剤、動植物抽出物、パール顔料、表面処理粉体、複合顔料、アミノ酸、ペプチド、ビタミン等を適宜配合することができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0031】
本願発明によれば、化粧料製造工程中に金属酸化物微粒子の飛散を抑えて作業従事者が簡便かつ安全に取り扱える。また、酸化チタン等の金属酸化物微粒子は球状に中空粒子化されているため、なめらかに肌に塗布することができ、さらに肌上に塗布されたときに中空粒子を形成していた酸化チタン等が崩壊し、紫外線遮蔽効果を発揮することのできる化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】製造粉体5の外観の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図2】製造粉体5の割断面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図3】製造粉体5を掌上で崩した時の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本願発明に用いる中空粒子の製造例を挙げる。
【0034】
製造粉体1
微粒子酸化チタン(昭和電工株式会社製、マックスライト TS−04、シリカ表面処理品、粒子径30nm)50gを精製水350gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−015、ビーズ:ZrOYビーズ 直径30ミクロン、スラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約8重量%)を用い30分間分散した。その後、噴霧乾燥機(藤崎電機株式会社製 MDL−050B、3流体ノズルPN3005)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を製造粉体1とした。なお、ここでLDLVOとLWoodcockは、Hamaker定数:19.7×10−20(水中の酸化チタン)、粒子の誘電率:3.8(シリカ)、電気二重層の厚さとしてのゼータ電位:295mV(シリカ)、デバイ長:5〜10nm、絶対温度:300Kの条件で検討し、LDLVOがLWoodcockの計算値39nmより大きく、LDLVO≧LWoodcockであることを確認した。
【0035】
製造粉体2
微粒子酸化チタン(昭和電工株式会社製、マックスライト TS−04、シリカ表面処理品、粒子径30nm)70gを精製水350gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−015、ビーズ:ZrOYビーズ 直径30ミクロン、スラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約11重量%)を用い30分間分散した。その後、噴霧乾燥機(藤崎電機株式会社製 MDL−050B、3流体ノズルPN3005)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を製造粉体2とした。なお、ここでLDLVOとLWoodcockは、製造粉体1と同様にして計算し、LDLVO≧LWoodcockであることを確認した。
【0036】
製造粉体3
微粒子酸化チタン(昭和電工株式会社製、マックスライト TS−04、シリカ表面処理品、粒子径30nm)100gを精製水350gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−015、ビーズ:ZrOYビーズ 直径30ミクロン、スラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約15重量%)を用い30分間分散した。その後、噴霧乾燥機(藤崎電機株式会社製 MDL−050B、3流体ノズルPN3005)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を製造粉体3とした。なお、ここでLDLVOとLWoodcockは、製造粉体1と同様にして計算し、LDLVO≧LWoodcockであることを確認した。
【0037】
製造粉体4
微粒子酸化チタン(昭和電工株式会社製、マックスライト TS−04、シリカ表面処理品、粒子径30nm)50gを精製水350gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−015、ビーズ:ZrOYビーズ 直径30ミクロン、スラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約8重量%)を用い30分間分散した。この操作を5回繰り返して総量約2.5kgの分散液体を集め、その後、噴霧乾燥機(大川原化工機製 FOC−20、回転ディスク法)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を製造粉体4とした。
【0038】
製造粉体5
微粒子酸化チタン(昭和電工株式会社製、マックスライト TS−04、シリカ表面処理品、粒子径30nm)70gを精製水350gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−015、ビーズ:ZrOYビーズ 直径30ミクロン、スラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約11重量%)を用い30分間分散した。この操作を5回繰り返して総量約2.5kgの分散液体を集め、その後、噴霧乾燥機(大川原化工機製 FOC−20、回転ディスク法)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を製造粉体5とした。
【0039】
製造粉体6
微粒子酸化チタン(昭和電工株式会社製、マックスライト TS−04、シリカ表面処理品、粒子径30nm)150gを精製水350gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−015、ビーズ:ZrOYビーズ 直径30ミクロン、スラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約21重量%)を用い30分間分散した。この操作を5回繰り返して総量約2.5kgの分散液体を集め、その後、噴霧乾燥機(大川原化工機製 FOC−20、回転ディスク法)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を製造粉体6とした。なお、ここでLDLVOとLWoodcockは、製造粉体1と同様にして計算し、LDLVO≧LWoodcockであることを確認した。
【0040】
製造粉体7
微粒子酸化チタン(テイカ株式会社製、MT−100HP、シリカ表面処理品、粒子径15nm)100gを精製水350gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−015、ビーズ:ZrOYビーズ 直径30ミクロン、スラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約15重量%)を用い30分間分散した。その後、噴霧乾燥機(藤崎電機株式会社製 MDL−050B、三流体ノズルPN3005)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を製造粉体7とした。なお、ここでLDLVOとLWoodcockは、製造粉体1と同様にして計算し、LDLVO≧LWoodcockであることを確認した。
【0041】
製造粉体8
微粒子酸化チタン(テイカ株式会社製、MT−100HP、シリカ表面処理品、粒子径15nm)70gを精製水350gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−015、ビーズ:ZrOYビーズ 直径30ミクロン、スラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約11重量%)を用い30分間分散した。この操作を5回繰り返して総量約2.5kgの分散液体を集め、その後、噴霧乾燥機(大川原化工機製 FOC−20、回転ディスク法)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を製造粉体8とした。なお、ここでLDLVOとLWoodcockは、製造粉体1と同様にして計算し、LDLVO≧LWoodcockであることを確認した。
【0042】
製造粉体9
微粒子酸化チタン(昭和電工株式会社製、マックスライト TS−04、シリカ表面処理品、粒子径30nm)2.03kgを精製水8.63kgに加えプロペラミキサーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−10、ビーズ:ZrOYビーズ 直径50ミクロン、スラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約11重量%)を用い30分間分散した。その後、噴霧乾燥機(藤崎電機株式会社製 MDL−050B、4流体ノズルSE4003)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を製造粉体9とした。なお、ここでLDLVOとLWoodcockは、製造粉体1と同様にして計算し、LDLVO≧LWoodcockであることを確認した。
【0043】
製造粉体10
微粒子酸化チタン(昭和電工株式会社製、マックスライト TS−04、シリカ表面処理品、粒子径30nm)2.03kgを精製水8.63kgに加えプロペラミキサーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−10、ビーズ:ZrOYビーズ 直径50ミクロン、ススラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約11重量%)を用い30分間分散した。その後、噴霧乾燥機(大川原化工機製 FOC−20、回転ディスク法)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を製造粉体10とした。
【0044】
製造粉体11
微粒子酸化チタン(堺化学工業株式会社製、STR−100W、シリカ表面処理品、粒子径15nm)70gを精製水350gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−015、ビーズ:ZrOYビーズ 直径30ミクロン、スラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約11重量%)を用い30分間分散した。その後、噴霧乾燥機(藤崎電機株式会社製 MDL−050B、3流体ノズルPN3005)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を製造粉体11とした。
【0045】
製造粉体12
微粒子酸化チタン(堺化学工業株式会社製、STR−100W、シリカ表面処理品、粒子径15nm)70gを精製水350gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−015、ビーズ:ZrOYビーズ 直径30ミクロン、スラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約11重量%)を用い30分間分散した。この操作を5回繰り返して総量約2.5kgの分散液体を集め、その後、噴霧乾燥機(大川原化工機製 FOC−20 回転ディスク法)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を製造粉体12とした。なお、ここでLDLVOとLWoodcockは、製造粉体1と同様にして計算し、LDLVO≧LWoodcockであることを確認した。
【0046】
製造粉体13
微粒子酸化チタン(テイカ株式会社製 MT−500B、表面処理なし、粒子径35nm)70gを精製水350gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−015、ビーズ:ZrOYビーズ 直径30ミクロン、スラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約11重量%)を用い30分間分散した。その後、噴霧乾燥機(藤崎電機株式会社製 MDL−050B、3流体ノズルPN3005)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を製造粉体13とした。なお、ここでLDLVOとLWoodcockは、製造粉体1と同様にして計算し(ただし、粒子の誘電率:114、電気二重層の厚さとしてのゼータ電位:83mVとした。)、LDLVO≧LWoodcockであることを確認した。
【0047】
製造粉体14
微粒子酸化チタン(テイカ株式会社製 MT−500B、表面処理なし、粒子径35nm)70gを精製水350gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−015、ビーズ:ZrOYビーズ 直径30ミクロン、スラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約11重量%)を用い30分間分散した。この操作を5回繰り返して総量約2.5kgの分散液体を集め、その後、噴霧乾燥機(大川原化工機製 FOC−20、回転ディスク法)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を製造粉体14とした。
【0048】
比較製造粉体1
微粒子酸化チタン(昭和電工株式会社製、マックスライト TS−04、シリカ表面処理品、粒子径30nm)70gを精製水550gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ホモミキサー:プライミクス株式会社製 T.K.ロボミクス、分散液体中の粉体の固形分濃度 約11重量%)を用い30分間分散した。その後、噴霧乾燥機(藤崎電機株式会社製 MDL−050B、3流体ノズルPN3005)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を比較製造粉体1とした。
【0049】
比較製造粉体2
微粒子酸化チタン(昭和電工株式会社製、マックスライト TS−04、シリカ表面処理品、粒子径30nm)70gを精製水550gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ホモミキサー:プライミクス株式会社製 T.K.ロボミクス、分散液体中の粉体の固形分濃度 約11重量%)を用い30分間分散した。この操作を5回繰り返して総量約2.5kgの分散液体を集め、その後、噴霧乾燥機(大川原化工機製 FOC−20、回転ディスク法)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を比較製造粉体2とした。
【0050】
比較製造粉体3
微粒子酸化チタン(昭和電工株式会社製、マックスライト TS−04、シリカ表面処理品、粒子径30nm)200gを精製水1500gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ボールミル:ヤマト科学株式会社製 UNIVERSAL BALL MILL UB−31、ビーズ:アルミナボール 直径3.0ミリ、分散液体中の粉体の固形分濃度 約11重量%)を用い30分間分散した。その後、噴霧乾燥機(藤崎電機株式会社製 MDL−050B、3流体ノズルPN3005)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を比較製造粉体3とした。
【0051】
比較製造粉体4
微粒子酸化チタン(昭和電工株式会社製、マックスライト TS−04、シリカ表面処理品、粒子径30nm)51gを精製水400gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(振動ミル:中央加工機株式会社製、ビーズ:アルミナビーズ 直径2.0ミリ、分散液体中の粉体の固形分濃度 約11重量%)を用い30分間分散した。その後、噴霧乾燥機(藤崎電機株式会社製 MDL−050B、3流体ノズルPN3005)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を比較製造粉体4とした。
【0052】
比較製造粉体5
微粒子酸化チタン(昭和電工株式会社製、マックスライト TS−04、シリカ表面処理品、粒子径30nm)30gを精製水350gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−015、ビーズ:ZrOYビーズ 直径30ミクロン、スラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約5重量%)を用い30分間分散した。その後、噴霧乾燥機(藤崎電機株式会社製 MDL−050B、3流体ノズルPN3005)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を比較製造粉体5とした。なお、ここでLDLVOとLWoodcockは、製造粉体1と同様にして計算し、LDLVOがLWoodcockよりも小さくなることを確認した。
【0053】
比較製造粉体6
微粒子酸化チタン(昭和電工株式会社製、マックスライト TS−04、シリカ表面処理品、粒子径30nm)200gを精製水350gに加えマグネチックスターラーで分散し、湿式媒体ミル(ビーズミル:寿工業株式会社製 UAM−015、ビーズ:ZrOYビーズ 直径30ミクロン、スラリー投入前のビーズミル内部及び系内の精製水容量約200gを加味した分散液体中の粉体の固形分濃度 約26重量%)を用い30分間分散した。その後、噴霧乾燥機(藤崎電機株式会社製 MDL−050B、3流体ノズルPN3005)にて乾燥し、サイクロンで回収された粉体を比較製造粉体6とした。
【0054】
走査型電子顕微鏡(SEM)観察による製造粉体及び比較製造粉体の中空構造状態の確認
上記製造方法によって作製された製造粉体及び比較製造粉体が、中空粒子であるかどうかは、SEMによる外観及び割断面の形状の観察によって行った。図1及び図2は、それぞれ製造粉体5の外観と割断面のSEM画像である。割断面の観察は、エポキシ樹脂中に製造粉体を含有させ、それを割断することによって製造粉体の割断面を露出させたサンプルを調製し行った。製造粉体及び比較製造粉体の粒子径は、SEM観察にて、任意に選んだ10個の割断された粒子の粒子径を測定し、その平均値(小数点第2位以下切り捨て)とした。測定された結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
前記のSEM観察の結果より、製造粉体1〜12は、中空粒子であることが確認できた。製造粉体13と14は、中空粒子と中心部まで中身が詰まった中実粒子の混合物であったが、中空粒子が多かった。比較製造粉体1〜4は、ビーズミルを用いておらず、不定形の粒子(凝集体)だった。比較製造粉体5は、不定形や中実粒子の混合物であった。このため金属酸化物微粒子の水系溶媒への分散時の固形分濃度が、「LDLVO≧LWoodcock」の関係式を満たしていない場合は、中空粒子が得られない。比較製造粉体6は、中空粒子はわずかで不定形や大きな凝集物が存在していた。これは、分散液体中の粉体濃度が高かったため、噴霧乾燥工程中にノズルの目詰まりが発生したためと考えられる。また、製造粉体9や製造粉体10のように、大量生産レベルの製造スケールにおいても、小スケールの製造と同様に中空粒子を得られることから、この生産方法が、十分に大量生産に適した方法であると考えられる。さらには、製造比較粉体6のように金属酸化物微粒子の水系溶媒への分散時の固形分濃度を上記の「LDLVO≧LWoodcock」の範囲の中であっても、固形分濃度が25重量%を超える場合は、噴霧乾燥工程でのノズルの目詰まりなどが発生しやすくなる。
【0057】
モニターによる製造粉体及び比較製造粉体の肌の上でののびのなめらかさの評価
上記の製造粉体及び比較製造粉体ののびのなめらかさを、モニター5名の肌に塗布して評価した。製造粉体1〜14は、元となる微粒子酸化チタンと比較して、肌の上できしみなくなめらかにのびるという評価を得た。また、比較製造粉体1〜6の粉体は、元となる微粒子酸化チタンと同様に肌の上に塗布したときにきしみ感を感じたという評価を得た。
【0058】
製造粉体をなめらかに肌上で崩すことができる有機球状粉体の粒子径の評価
上記製造方法によって作成された製造粉体が、化粧料中に同時に配合される有機球状粉体によって肌上で凝集せず、また、使用感を低下させることなく均一に崩れるかについて評価した。中空構造であることが確認された製造粉体5(外径約44.9μm)と表2に示す粒子径の異なる有機球状粉体とを重量比2:1で混合し、混合物の少量を掌にのせ、指で肌の上にのばした。このとき、製造粉体の中空構造が崩れているかどうかについて、倍率15,000倍のSEM観察にて次のように評価した。評価結果を表2に併記した。
<評価基準>
〔判定:SEM観察視野中の粒子の状態〕
◎:中空粒子及び中空粒子が崩壊した殻片は観察されない。
○:中空粒子は観察されず、中空粒子が崩壊した殻片がわずかに観察される。
△:中空粒子及び中空粒子が崩壊した殻片が観察される。
【0059】
【表2】

【0060】
図3は、製造粉体5を上記の方法で崩した際のSEM画像である。この結果より、有機球状粉体の平均粒子径が3μm〜20μmの範囲内のとき、中空粒子は崩しやすく、5.0〜8.0μmの範囲内のとき、さらに崩しやすいことがわかる。これは、製造粉体の殻の厚さが約1.0〜10.0μmであったことから、この厚みに対して、この範囲内の粒子径である有機球状粉体が最も効率よく中空粒子を崩す効果があるためと考えられる。
【実施例】
【0061】
次に、本願発明の化粧料について実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記の表3に、実施例1〜〜11及び比較例1〜4を示す。表3の処方及び下記の製法により、化粧料を調製し、次いで示す評価方法及び評価基準により評価した。なお、その結果は表3に併せて示した。
【0062】
【表3】

【0063】
(製法)
成分(1)〜(10)を80℃に加熱溶解し、これに成分(11)〜(17)を均一に分散させ、油相とする。成分(18)〜(22)を85℃に加熱溶解し、水相とする。油相に水相を撹拌しながら加え、35℃まで冷却し、W/O乳化型クリームを得た。
【0064】
(評価方法1:化粧料製造現場での微粒子酸化チタンの飛散を抑制する効果)
上記実施例及び比較例1のクリームを調製する工程で、粉体の秤量から成分(1)〜(10)の油相成分に成分(11)〜(17)を分散させる工程を、密閉した実験室で防塵マスクを着用して作業を行った。その防塵マスクの表面から試料粉体を採取し、SEMにより、約250nmの顔料級酸化チタンと比較しながら、約100nm以下の粒子や凝集体の有無を観察した。微粒子酸化チタンの飛散抑制効果は、この観察で、比較例1(微粒子酸化チタンを使用)調製時に使用した防塵マスクから得られた試料と比較して、約100nm以下の粒子や凝集体が減少しているものや無いものを良好として○、同程度又は増加しているものを改善していないとして×として表3に併せて示した。
【0065】
(評価方法2:塗布のなめらかさ)
20〜40代の化粧品専門パネル10名に、上記実施例及び比較例のW/O乳化型クリームを使用してもらい、塗布のなめらかさについて以下の評価基準により評点を付し、各W/O乳化型クリームごとに評点の平均点を算出し、以下に示す判定基準に従って判定した。
<評価基準>
〔塗布のなめらかさ〕 〔評点〕
非常に良好 :5
良好 :4
普通 :3
やや不良 :2
不良 :1
<判定基準>
〔評点の平均点〕 〔判定〕
4.0以上 :◎
3・5以上4.0未満 :○
2.5以上3.5未満 :△
2.5未満 :×
【0066】
(評価方法3:中空粒子の肌上での崩れ易さ)
化粧料中での中空粒子の肌上での崩れ易さは、次のようにして評価した。
上記の実施例及び比較例のW/O乳化型クリーム60mgを、縦5cm×横6cmの塗布範囲を示したビューラックス社製バイオプレート上に塗布した。クリームを均一に塗布するためマイクロスパーテルでクリームを数か所に分けて均等に置き、指サックをつけた指でのばした。のばす時間は1分間とし、通常肌に塗布する速さで塗布範囲に均一になるよう繰り返しのばし続けた。塗布終了後、約15mgのメチルフェニルポリシロキサン(信越化学株式会社製KF−56A)をクリーム塗布部位に滴下し、ゴムへらを利用してクリームを回収した。次いで、回収したクリームをスライドガラスに乗せ、キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−500(高解像度ズームレンズVH−Z500付)を用いて約2000倍で観察した。中空粒子の有無は、この倍率で観察範囲の5箇所で観察して判断した。本願発明の中空粒子の場合、観察時に焦点を僅かにずらしながら観察すると、殻の部分を透過する光の干渉によって縞模様が観察できるので、この特性を利用して他の球状粒子と区別して判定した。最終的な評価は下記判定基準で行った。
<判定基準>
〔中空粒子の肌上での崩れ易さ〕 〔判定〕
5箇所すべてで中空粒子は観察されなかった :◎
1か所で中空粒子が確認された :○
2〜3箇所で中空粒子が確認された :△
4〜5箇所で中空粒子が確認された :×
【0067】
中空粒子を用いた実施例と、微粒子酸化チタンをそのまま配合した比較例1及び3の結果から、0.1μm以下の酸化チタンをそのまま化粧料中に配合するよりも、中空粒子として配合するほうが、使用感が良好な化粧料を得ることができる。また、微粒子酸化チタンの飛散についても、本願発明では、その製造現場での微粒子の飛散を抑制することができ、良好な作業現場を提供することができる。ただし、実施例10のように、製造粉体を10重量%超える量を配合した場合に、塗布のなめらかさは維持されるものの、肌上でも中空粒子が崩れるまでに時間がかかるため、使用性がやや劣る。そのため、中空粒子の配合量は、化粧料中に0.01〜10.0重量%とするのが好ましい。また、比較例2のように、微粒子酸化チタンを中空粒子として配合した場合でも、有機球状粉体が配合されていないと、肌の上で中空粒子が崩れにくいので、使用性と紫外線防御の実用性が低下する。よって、中空粒子と有機球状粉体は両方配合されていなければならない。この中空粒子と併用する有機球状粉体の配合量は、1.0〜5.0重量%が適量である。なお、比較例4のように、有機球状粉体の代わりに、無機球状粉体であるシリカ粒子を配合すると、シリカ粒子の硬さから、使用感はなめらかさが無く、きしみ感を感じさせて不適である。
【0068】
さらに、粒子径の異なる製造粉体5と製造粉体2の両方を用いて調製した実施例11においても、製造中の微粒子酸化チタンの飛散が抑制でき、塗布するとなめらかにのび、中空粒子が崩れ易いことを確認した。
【0069】
(実施例12)
(O/W乳化型化粧下地)
前記の製造粉体5と、有機球状粉体を用いて下記処方の化粧下地を調製した。

成分 配合量(重量%)
(1)セスキステアリン酸メチルグルコシド 1.00
(2)ステアロイル乳酸ナトリウム 0.20
(3)水添ナタネ油アルコール 3.50
(4)スクワラン 6.00
(5)ミリスチン酸オクチルドデシル 6.00
(6)マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 2.00
(7)トリイソステアリン酸ポリグリセリル 1.00
(8)ブチルパラベン 0.10
(9)精製水 52.24
(10)合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウム 1.00
(11)ヒドロキシエタンジホスホン酸 0.06
(12)キサンタンガム 0.20
(13)1,3−ブチレングリコール 10.00
(14)メチルパラベン 0.20
(15)ジグリセリン 5.00
(16)製造粉体5 5.00
(17)有機球状粒子 6.00
(18)メチルポリシロキサン 0.50
合計 100.00

*有機球状粒子:(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー(信越化学社製KSP−300)

【0070】
(製法)
水相成分(9)〜(14)を撹拌混合し、加熱して85℃に保つ。油相成分(1)〜(8)を混合し、加熱溶解して80℃とする。油相に水相を加えて予備乳化し、ホモミキサーで均一に乳化した後、ホモミキサーを止め撹拌を続けながら冷却する。約70℃で成分(9)の一部と成分(15)〜(17)の混合物、及び(18)を順に加え、さらに35℃まで冷却してO/W乳化型化粧下地を得た。
【0071】
実施例12の化粧下地は、製造時において酸化チタン等の微粒子粉体の飛散が抑制された。また、塗布時のなめらかさは、元となる微粒子酸化チタンを中空粒子とせずに配合したものと比較して良好であり、また、塗布時の通常の力で中空粒子が崩れ、均一に肌に塗布できるものであった。

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明で用いた製造粉体は、粒子径0.1μm以下の微粒子の飛散を抑えることができることから作業従事者に対する安全性が確保できる。また、製造工程で溶剤を使わないため、人にも環境にもやさしく、ナノ粒子粉体を利用する幅広い分野に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする化粧料。
(A)粒子径0.1μm未満の金属酸化物微粒子が集合してなる中空粒子
(B)有機球状粉体
【請求項2】
(A)成分の製造方法が、粒子径0.1μm未満の金属酸化物微粒子の水系溶媒への分散度を下記式
DLVO≧LWoodcock
(ここで、LDLVOは、分散液体中で作用する粒子間のvan der Waals引力と界面電気二重層の重なりに基づく静電反発力との両微小力間の相互作用によって定まる分散液体中の粒子間の平均表面間距離を表す。LWoodcockは、分散液体中に含まれる粒子の固形分濃度とその粒子径とによって定まる分散液体中の粒子間の平均表面間距離を表す。)により制御し、分散液体中の粉体を均一高分散化して、分散液体を100μm未満の液状物質(液滴)とし噴霧乾燥を行うことを特徴とする請求項1記載の化粧料。
【請求項3】
(A)成分の中空粒子の製造方法が、粒子径0.1μm未満の該金属酸化物微粒子を水系溶媒中に分散する際に、分散液体中の粉体の固形分濃度を25重量%以下として粉体の分散制御をビーズミルで行い、3流体、4流体ノズル又は回転ディスク法を用いて液滴粒子径を100μm未満に制御して噴霧乾燥を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の化粧料。
【請求項4】
(A)成分の中空粒子の平均粒子径(平均外径)が、1.0μm〜50.0μmであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の化粧料。
【請求項5】
(A)成分の中空粒子を形成する該金属酸化物微粒子が、シリカによって被覆されている粒子径0.1μm以下の酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の化粧料。
【請求項6】
(B)成分の有機球状粉体の平均粒子径が3.0〜20.0μmである請求項1〜5いずれか1項記載の化粧料。
【請求項7】
(A)成分の中空粒子の配合量が0.01〜10.0重量%であり、かつ(B)成分の有機球状粉体の配合量が1.0〜5.0重量%であることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の化粧料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−224588(P2012−224588A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94590(P2011−94590)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【出願人】(591275665)三信鉱工株式会社 (7)
【Fターム(参考)】