説明

化粧板の製造方法

【課題】加熱転写の温度を下げても、ポリエステルフィルム基材に対する転写層の密着性が低下せず、しかも高い意匠性が得られる化粧板の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリエステルフィルムが貼付された木質系材料に転写箔1を加熱転写してなる化粧板の製造方法であって、該転写箔が基材2に少なくとも剥離層3、装飾層4及び接着剤層5を含む転写層6を積層したものであり、ポリエステルフィルムの平均表面高低差が0.02〜0.05mmの範囲であり、かつ、加熱転写の温度が140〜170℃の範囲である化粧板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転写箔を加熱転写することによる化粧板の製造方法に関し、特に、ポリエステルフィルム基材に転写箔を低温で接着性よく転写することができ、かつ意匠性の高い化粧板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被転写基材に装飾層を含む転写層を、転写シートを用いて転写することにより、化粧板を製造することが広く行われている(例えば特許文献1参照)。
ドア材などはMDFボードなどの木質系材料で作られているが、そのエッジ部分にはPET(ポリエチレンテレフタレート)などのポリエステルフィルムが貼付され、かつ意匠性を向上させるためにR部分を作成する場合がある。こうしたドア材などに転写箔を用いて装飾を施す場合には、木質系材料の部分に加えて、ポリエステルフィルムの部分にも転写箔が転写される。
通常、転写箔を加熱転写する温度は180〜200℃程度の範囲で行われるが、この温度範囲ではポリエステルフィルムの表面の艶が転写箔の装飾層に影響を及ぼし、意匠性が悪化するという問題があった。
これを解決するためには、加熱転写の温度を下げることが考えられるが、加熱転写の温度を下げるとポリエステルフィルムへの接着性が低下するという課題があった。
【0003】
【特許文献1】特公昭60−59876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点に鑑み、木質系基材に貼付されたポリエステルフィルム基材に転写箔を接着性よく転写することができ、かつ高い意匠性を有する化粧板を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリエステルフィルムが貼付された木質系材料に転写箔を加熱転写してなる化粧板の製造方法であって、ポリエステルフィルムの平均表面高低差をある範囲とすることで、加熱転写の温度を下げても、高い密着性を維持することができ、しかも高い意匠性が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)ポリエステルフィルムが貼付された木質系材料に転写箔を加熱転写してなる化粧板の製造方法であって、該転写箔が基材に少なくとも剥離層、装飾層及び接着剤層を含む転写層を積層したものであり、前記ポリエステルフィルムの平均表面高低差が0.02〜0.05mmの範囲であり、かつ、加熱転写の温度が140〜170℃の範囲である化粧板の製造方法、
(2)転写箔が転写される被転写面がポリエステルフィルムと木質基材の両方である上記(1)に記載の化粧板の製造方法、
(3)転写箔に用いられる接着剤層がウレタン系樹脂とマレイン酸樹脂を含有し、マレイン酸樹脂の含有量が20〜40質量%である上記(1)又は(2)に記載の化粧板の製造方法、
(4)ウレタン系樹脂がブロッキング防止剤を0.1〜5質量%含有する上記(3)に記載の化粧板の製造方法、及び
(5)マレイン酸樹脂の軟化点が120〜185℃である上記(3)又は(4)に記載の化粧板の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱転写の温度を下げても、ポリエステルフィルム基材に対する転写層の密着性を維持することができ、しかも高い意匠性が得られる化粧板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、ポリエステルフィルムが貼付された木質系材料に転写箔を加熱転写してなる化粧板の製造方法であって、該転写箔が基材に少なくとも剥離層、装飾層及び接着剤層を含む転写層を積層したものであり、ポリエステルフィルムの平均表面高低差が0.02〜0.05mmの範囲であり、かつ、加熱転写の温度が140〜170℃の範囲であることを特徴とする。
【0009】
本発明は、ポリエステルフィルムが貼付された木質系材料に転写箔を加熱転写してなる化粧板の製造方法である。
ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられ、木質系材料としては、木質合板、木質単板、パーチクルボード、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)等の木質系材料が挙げられる。
本発明の製造方法は、木質系材料の全面にポリエステルフィルムが貼付された材料に対しても、また木質系材料の一部をPETなどのポリエステルフィルムで加工している材料に対しても用いることができるが、特に木質系材料の一部をPETなどのポリエステルフィルムで加工している材料に最適である。
【0010】
本発明の製造方法においては、ポリエステルフィルムの平均表面高低差が0.02〜0.05mmの範囲であることが重要である。平均表面高低差がこの範囲であると後に詳述する低温での加熱転写をしても、転写層とポリエステルフィルムの十分な接着性が得られる。しかも、低温転写した場合には、このポリエステルフィルム上の粗さが転写層中の装飾層に影響せず、化粧板の表面には凹凸が現れない。従って、転写層とポリエステルフィルムの接着性が高い上に高い意匠性が得られる。以上の観点から、平均表面高低差は0.02〜0.04mmの範囲であることが好ましい。
なお、本発明における平均表面高低差は、3次元測定顕微鏡(オリンパス光学工業(株)製「STM6」)を用いて、ポリエステルフィルムの表面を光学的にスキャンし、表面の相対的な高低差を検知して実測し、その平均値を算出したものである。
【0011】
また、上記被転写体の表面には、予め、接着剤層との接着を補助するための易接着プライマー、あるいは表面の微凹凸や多孔質を目止めし封じるシーラー剤を塗工しておいてもよい。易接着プライマー、あるいはシーラー剤としては、通常、イソシアネート、2液硬化ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の樹脂を塗工し形成する。
なお、被転写体の形状についても特に限定はなく、シート、フィルム、平板、曲面板、棒状板、立体物などいずれの形状にも適用できる。
【0012】
次に、本発明の製造方法においては、加熱転写の温度が140〜170℃の範囲であることが必要である。通常の加熱転写の温度は180〜200℃であり、本発明の加熱転写の温度は従来よりも低い。加熱転写の温度をこの範囲とすることで、転写層をポリエステルフィルムに接着するに際し、ポリエステルフィルムの凹凸が接着剤層に吸収され、装飾層にまで及ばない。しかも、ポリエステルフィルムの凹凸は、接着剤層に対してアンカー効果を発揮してポリエステルフィルムと転写層の接着性を向上させるものである。
【0013】
本発明の製造方法で用いる転写箔について、その一例の断面の模式図を図1に示す。転写箔1は、基材2と、剥離層3、装飾層4及び接着剤層5を含む転写層6から通常構成される。
本発明の化粧板の製造方法は、転写箔1から該転写層6を被転写体に転写する際に、接着剤層5を構成する接着剤を加熱熔融し、該接着剤を冷却固化させることによって転写層6を被転写体に接着し(初期接着)、その後、該接着剤を溶融させ、硬化させて最終接着状態とするものである。
なお、基材2を剥離するタイミングは、転写圧の解除以降、基材2が剥離時応力で切断や塑性変形をしない程度に冷却し、接着剤層5が冷却や一部進行した硬化反応で固化し転写箔1が被転写体に固着した時点以降に行えばよい。
【0014】
転写の条件としては、加熱転写温度は上述のとおりであり、転写速度は1〜10m/分の範囲が好ましい。1m/分以上であると高い生産性が得られ、また10m/分以下であると良好な転写加工性が得られる。以上の観点から、転写速度は4〜6m/分の範囲がさらに好ましい。
なお、本発明の製造方法は従来の方法に比較して、加熱転写温度が低いことから、転写速度を速くすることができ、生産性に優れる。また、加熱転写温度が低いことから熱転写ロールの劣化が抑制され、しかも安定した転写が行えるという利点がある。
【0015】
次に、本発明で用いる転写箔1の構成について図1を参照しつつ詳述する。
基材2は、転写層と離型性が有り、また被転写面に凹凸が有る場合は該凹凸への形状追従性があるものであれば、従来公知のものでよく特に制限はない。従って、被転写面が平面又は二次元的凹凸表面で転写箔が伸ばされない場合には、一般的な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(シート)、又は延伸性が無い紙等を用いることができる。
また、被転写面が三次元的凹凸表面で転写箔が伸ばされる場合には、少なくとも転写時には延伸性の有る基材を用いることが肝要である。延伸性のある基材としては、例えば熱可塑性樹脂を用いることができ、具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン樹脂;エチレンテレフタレートイソフタレート共重合体、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂;塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン系熱可塑性エラストマー等のエラストマー等が挙げられる。
基材2は上述の材料からなるフィルム又はシートを単層で用いてもよいし、又は異種材料からなる積層体として用いてもよい。
基材2の厚さとしては特に限定されないが、通常は20〜200μm程度である。
【0016】
基材2は必要に応じ、その転写層側に転写層との剥離性を向上させるため、離型層を設けてもよい(図示せず)。この離型層は基材2を剥離する際に基材2と共に転写層から剥離除去される。離型層としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ワックス等の単体又はこれらを含む混合物が用いられる。
また、剥離性を調整するために、基材2の転写層側の面に、コーティング処理、コロナ放電処理、オゾン処理などの表面処理を行ってもよい。
【0017】
また、基材2の転写層に接する側の面に、凹凸模様を設ければ、転写後の転写層表面に砂目、梨地、木目等の凹凸模様を賦形できる。凹凸模様は、エンボス加工、サンドブラスト、賦形層(離型層を兼用もできる)の盛り上げ印刷加工等の公知の方法で形成することができる。
【0018】
図1に示される転写層6は、通常、剥離層3、装飾層4及び接着剤層5からなる。
剥離層3は基材2又は基材2に設けられた離型層と装飾層4との間の剥離性を調整するため、また、転写後の装飾層4の表面保護のため等に設けられる層である。
剥離層3としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ブチラール樹脂、セルロース系樹脂等を単独で或いは2種以上混合したもの、及び電子線硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂を架橋硬化したものを用いることが好ましい。この場合、摩耗性、透明性を考慮すると、アクリル樹脂が好ましい。
【0019】
転写後に剥離層3に表面滑性を出現させるため、添加剤として、ポリエチレンワックス、テフロンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス等を添加することが好ましい。また、外装用途や太陽光にさらされる部位に使用される場合には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系紫外線吸収剤やヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤、フェノール系酸化防止剤や熱安定剤等を添加することが好ましい。
剥離層3は、グラビア印刷、ロールコート、スクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の手法により積層される。
【0020】
次に装飾層4は被転写体に装飾性を与えるものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して基材2又は剥離層3の上に印刷することにより形成される。印刷方法としては特に限定されず、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等公知の方法で行うことができる。
模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
また、印刷は部分印刷でもベタ印刷でもよく、部分印刷とベタ印刷の両方を行ってもよい。また、剥離層へのエンボス加工等による凹凸模様であってもよい。
【0021】
装飾層4に用いるインキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
【0022】
次に、接着剤層5を構成する転写用接着剤としてはウレタン系樹脂とマレイン酸樹脂を含有することが好ましい。このような接着剤を用いることにより、本発明の製造方法において、転写箔が転写される被転写面がポリエステルフィルムと木質基材の両方である場合に、両者に好適に接着させることができ好ましい
【0023】
ウレタン系樹脂としては、2液硬化型ウレタン樹脂、又は1液硬化型ウレタン樹脂等が使用できる。
2液硬化型ウレタン樹脂は、ポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂である。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等が用いられる。また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、あるいは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネート、さらには上記各種イソシアネートの付加体、又は多量体を用いることもできる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等がある。
【0024】
また、上記イソシアネートをブロック化したブロックイソシアネートとして用い、転写時の熱により、ブロックを解除して反応を開始させるようにしてもよい。ブロックイソシアネートは、上記イソシアネートを、アルコール類、フェノール類、アミン類等のブロック剤と一時的に反応させ、イソシアネート基の反応性を阻止(ブロック)した化合物である。通常、ブロック剤の解離温度を適度な温度領域まで低下させる為に、解離触媒として、金属石鹸、アミン類等の公知のものを用いる。
【0025】
また、上記1液硬化型ウレタン樹脂は、分子末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを必須成分とする組成物である。前記プレポリマーは、通常は分子両末端に各々イソシアネート基を1個以上有するポリイソシアネートプレポリマーであり、常温で固体の熱可塑性樹脂の状態にあるものである。イソシアネート基同士が空気中の水分により反応して鎖延長反応を起こして、その結果、分子鎖中に尿素結合を有する反応物を生じて、この尿素結合に更に分子末端のイソシアネート基が反応して、ビウレット結合を起こして分岐し、架橋反応を起こす。分子末端にイソシアネート基を有するプレポリマーの分子鎖の骨格構造は任意であるが、具体的には、ウレタン結合を有するポリウレタン骨格、エステル結合を有するポリエステル骨格、ポリブタジエン骨格等である。適宜これら1種又は2種以上の骨格構造を採用する。なお、分子鎖中にウレタン結合がある場合は、このウレタン結合とも末端イソシアネート基が反応して、アロファネート結合を生じて、このアロファネート結合によっても架橋反応を起こす。
【0026】
本発明で使用するウレタン系樹脂は、幅6mm、厚さ0.7mmのフィルムとし、JIS K7127に準拠した引張試験(引張速度45mm/分)において、破断伸度が500〜1200%の範囲であることが好ましい。通常のウレタン系樹脂に比較して大きな破断伸度を有するウレタン系樹脂を選択することによって、木質系材料とポリエステルフィルム系材料のいずれにも良好に接着し得る転写用接着剤が設計しやすくなる。
【0027】
また、本発明で使用するウレタン系樹脂は、粘着性(タック性)を有するものを選択することが好ましい。粘着性を有するものを選択することで、木質系材料とポリエステルフィルム系材料のいずれにも良好に接着し得る転写用接着剤が設計しやすくなる。
但し、この粘着性がウレタン系樹脂のハンドリングを悪くするので、これを防止することを目的にブロッキング防止剤を含有させることが好ましい。
【0028】
上記ブロッキング防止剤としては通常化粧シート等に用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム等の透明性の高い無機粒子が好適に用いられる。
ブロッキング防止剤の粒径としては、効果の点から通常0.1〜5μm程度が好ましく、さらには0.5〜3μmの範囲が好ましい。
ブロッキング防止剤の含有量としては、ウレタン系樹脂中に0.1〜5質量%の範囲で含有されることが好ましい。0.1質量%以上であると粘着性を十分に抑制することができ、好適なハンドリング性が得られる。一方、5質量%以下であると、ブロッキングを抑制することができる。
【0029】
次に、接着剤層5を構成する転写用接着剤に含有するマレイン酸樹脂は無水マレイン酸又はマレイン酸エステルと他のモノマーを共重合させて得られるコポリマーである。無水マレイン酸と共重合させるモノマーは、共重合可能なモノマーであればいずれを用いてもよく、多種併用してもよい。
特に有用なモノマーとしてはスチレン、イソブチレン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
無水マレイン酸と、これに共重合させるモノマーの割合は、無水マレイン酸1molに対し、共重合させるモノマーの合計が1〜5molの範囲であることが好ましく、さらには1〜3molの範囲が好ましい。無水マレイン酸と、これに共重合させるモノマーは、酢酸エステル、ジオキサン、キシレンなどの重合を阻害しない有機溶剤に溶解させ、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどのラジカル発生剤を、無水マレイン酸と、これに共重合させるモノマーの合計100質量部に対して、通常0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜2質量部の範囲で加え、70℃〜150℃の温度範囲で、2〜10時間反応させることにより共重合体が得られる。
マレイン酸樹脂の平均分子量としては2000〜50000の範囲が好ましく、さらには5000〜30000の範囲が好ましい。
【0030】
また、本発明におけるマレイン酸樹脂にはロジン変性マレイン酸樹脂も包含される。ロジン変性マレイン酸樹脂は、ロジンと無水マレイン酸から三塩基酸の付加物を作り、多価アルコ−ルでエステル化したものである。無水マレイン酸の付加量、多価アルコ−ルの種類、エステル化度の違いで軟化点、溶解性など種々の異なった性質のものが得られる。
【0031】
上記マレイン酸樹脂の軟化点は120〜185℃が好ましい。軟化点が120℃以上であると、低温での転写性が良好となり、軟化点が185℃以下であると、ブロッキングが抑制できる。以上の観点から軟化点はさらに120〜150℃の範囲が好ましい。また、酸価は100〜300の範囲が好ましく、さらには150〜300の範囲が好ましい。
【0032】
転写用接着剤中のマレイン酸樹脂の含有量は、固形分換算で20〜40質量%の範囲であることが好ましい。マレイン樹脂の含有量がこの範囲であると、木質系材料とポリエステルフィルム系材料のいずれにも良好に接着し得る。以上の点から、さらにマレイン酸樹脂の含有量は25〜35質量%の範囲が好ましい。
【0033】
上記転写用接着剤には、各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、耐摩耗性向上剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、充填剤、溶剤、着色剤、耐候性向上剤、抗菌剤などが挙げられる。
【0034】
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の微粒子が挙げられる。該微粒子の形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の微粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
【0035】
接着剤層5は上記にて詳述した接着剤を塗工して形成する。接着剤層の厚さとしては、被転写体への接着性が得られれば特に制限はないが、通常1〜50μmの範囲である。特に、木質材料とポリエステル材料に同時に接着することを考慮すると、接着剤層5の膜厚は5〜30μmの範囲が好ましく、さらには10〜20μmの範囲が好ましい。
接着剤層5の塗工方法については特に制限はなく、通常用いられる、グラビア印刷、スプレーコート、フローコート等の方法を用いることができる。
【0036】
本発明により得られた化粧板はドア材、浴室の壁材、ユニットバス壁材、ユニットバス内装材、厨房の壁財、AV機器、エアコンカバーなどとして用いることができるが、特に、上述のように、木質合板、木質単板、パーチクルボード、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)等の木質系材料の一部をPETなどのポリエステルフィルムで加工しているドア材などに最適である。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
各実施例及び比較例で得られた化粧板について、転写層と被転写体との接着性及び意匠性を以下のように評価した。なお、各実施例及び比較例におけるポリエステルフィルムの平均表面高低差は明細書本文中に記載の方法により測定した。
(1)接着性
転写層と被転写体との間の剥離状態を目視にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
3点;密着良好
2点;若干剥離
1点;密着不良
(2)意匠性
被転写体に熱転写された後の転写層の表面平滑性を目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:表面に凹凸が見られず平滑であり、意匠性が高い。
△:表面に若干凹凸が見られるが、実用上問題ない程度の意匠性を有する。
×:ポリエステルフィルムの凹凸が装飾層に現れ意匠性が低い。
【0038】
製造例1(転写箔の製造)
基材2として、PET(三菱ポリエステルフィルム(株)製「E−130」)を用い、その片面にアクリル樹脂をバインダーとし、添加剤としてポリエステルを含有する樹脂組成物を塗工して剥離層3を設けた。剥離層3の厚さは2μmであった。
次いで、剥離層3上にアクリルセルロースをバインダーとし、フタロシアニン、イソインドリノン、及びキナクリドンを主成分とする着色剤を用いて、木目模様の装飾層4をグラビア印刷にて形成した。装飾層4の厚さは2μmであった。
次に、フィルムとした際の破断伸度(明細書本文中に記載した測定条件)が1000%であるウレタン樹脂とマレイン酸樹脂の混合物(ウレタン樹脂/マレイン酸樹脂、(株)昭和インク工業所製)と軟化点130℃のマレイン酸樹脂((株)昭和インク工業所製)を、該混合樹脂中のマレイン酸樹脂の含有量が33.3質量%となるように混合した。該混合樹脂を上記装飾層4の上にグラビアコーティングし、乾燥後の厚さが15μmとなるように接着剤層5を形成した。
【0039】
実施例1
MDF基板(大建工業(株)製「テクノウッド」、厚さ2mm)の周囲にエッジテープとしてポリエステルフィルム(リケンテクノス(株)製「R81(PET−G)」、厚さ500μm)を貼付した材料を用意した。該ポリエステルフィルムの平均表面高低差は0.0321mmであった。
この材料に上記製造例1で調製した転写箔を転写温度160℃、転写速度7m/分の条件で転写し、化粧板を製造した。上記方法にて評価した結果を第1表に示す。
【0040】
実施例2
ポリエステルフィルムとして平均表面高低差が0.02mmであるもの(リケンテクノス(株)製「R107(PET−G)」、厚さ500μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして化粧板を製造した。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
【0041】
比較例1
ポリエステルフィルムとして平均表面高低差が0.0135mmであるもの(リケンテクノス(株)製「R45(PET−G)」、厚さ500μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして化粧板を製造した。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
【0042】
比較例2
ポリエステルフィルムとして平均表面高低差が0.0111mmであるもの(リケンテクノス(株)製「PT201(PET−G)」、厚さ500μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして化粧板を製造した。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
【0043】
比較例3
ポリエステルフィルムとして平均表面高低差が0.0037mmであるもの(リケンテクノス(株)製「PT904(PET−G)」、厚さ500μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして化粧板を製造した。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
【0044】
比較例4
ポリエステルフィルムとして平均表面高低差が0.0036mmであるもの(リケンテクノス(株)製「リベスター(PET−G)」、厚さ500μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして化粧板を製造した。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
【0045】
比較例5〜10
実施例1、2及び比較例1〜4において、加熱転写の温度を180℃としたこと以外はそれぞれの実施例及び比較例と同様に化粧板を製造した。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
【0046】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の製造方法によれば、加熱転写の温度を下げても、ポリエステルフィルム基材に対する転写層の密着性が低下せず、しかも意匠性の高い化粧板が得られる。また、本発明の製造方法によれば、木質系材料とポリエステルフィルム系材料のいずれにも良好に接着させることができる。従って、木質合板、木質単板、パーチクルボード、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)等の木質系材料の一部をPETなどのポリエステルフィルムで加工しているドア材などに好適に用いることができ、木質系材料及びポリエステルフィルムのいずれにも高い接着性で転写することができる。
さらに、加熱転写温度が低いために、熱転写ロールの劣化を抑制することができ、また安定した転写を行うことができる上に、転写速度を上げることができ、生産性が飛躍的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明で用いる転写箔の一例の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1.転写箔
2.基材
3.剥離層
4.装飾層
5.接着剤層
6.転写層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムが貼付された木質系材料に転写箔を加熱転写してなる化粧板の製造方法であって、該転写箔が基材に少なくとも剥離層、装飾層及び接着剤層を含む転写層を積層したものであり、前記ポリエステルフィルムの平均表面高低差が0.02〜0.05mmの範囲であり、かつ、加熱転写の温度が140〜170℃の範囲である化粧板の製造方法。
【請求項2】
転写箔が転写される被転写面がポリエステルフィルムと木質基材の両方である請求項1に記載の化粧板の製造方法。
【請求項3】
転写箔に用いられる接着剤層がウレタン系樹脂とマレイン酸樹脂を含有し、マレイン酸樹脂の含有量が20〜40質量%である請求項1又は2に記載の化粧板の製造方法。
【請求項4】
ウレタン系樹脂がブロッキング防止剤を0.1〜5質量%含有する請求項3に記載の化粧板の製造方法。
【請求項5】
マレイン酸樹脂の軟化点が120〜185℃である請求項3又は4に記載の化粧板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−80654(P2008−80654A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263471(P2006−263471)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】