説明

化粧用不織布、該化粧用不織布の製造方法及び該化粧用不織布を用いた化粧方法

【課題】 肌への密着性が高く、肌に塗布することにより、肌の水分蒸発抑制効果と保湿効果に優れ、肌に対する感触(以下、「肌触り感」と略す。)が良好な化粧用不織布を提供する。
【解決手段】 成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを質量比1:0.001〜1:10で含有することを特徴とする化粧用不織布、該不織布の製造方法及び該化粧用不織布を用いた化粧方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを質量比1:0.001〜1:10で含有することを特徴とする化粧用不織布、該不織布の製造方法及び該化粧用不織布を用いた化粧方法に関するものである。より、詳細には、肌への密着性が高く、肌に塗布することにより、肌の水分蒸発抑制効果と保湿効果に優れ、肌に対する感触(以下、「肌触り感」と略す。)が良好な化粧用不織布に関するものである。更に、肌に塗布することにより、肌の水分蒸発抑制効果と保湿効果に優れ、肌触り感が良好な化粧用不織布の製造方法に関するものである。そして、肌の水分蒸発抑制効果と保湿効果に優れ、肌触り感が良好な化粧用不織布を用いた化粧方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧用不織布は、顔面形状や楕円形等の肌の適応部位に合わせた形状にカットし、使用時に水や化粧水、美容液等を含浸させて肌に貼付することにより、肌に水分や化粧料中の有効成分を供給するために用いられている。また、予め化粧水や美容液等を化粧用不織布に含浸させたシート状マスク等の商品も市販されている。
【0003】
また、不織布にコラーゲンやヒアルロン酸等の乾燥した化粧品成分を含有させることにより、溶液状態で不安定な化粧品成分を安定に配合することか可能な化粧料も開発されている。(特許文献1参照)
【0004】
【特許文献1】特開2004−51521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、不織布に単にコラーゲンやヒアルロン酸等の乾燥した化粧品成分を含有させるだけでは、肌への密着性や肌の水分蒸発抑制効果と保湿効果、肌触り感の全てを満足できる化粧用不織布を得ることはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記実情に鑑み、本発明者らは鋭意検討した結果、不織布にリン脂質とコラーゲンとを質量比1:0.001〜1:10で含有させることにより、肌への密着性が高く、肌に塗布することにより、肌の水分蒸発抑制効果と保湿効果に優れ、肌触り感が良好な化粧用不織布が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
また、リン脂質とコラーゲンとを含有する水中に、繊維を分散し、該分散液から網体上に漉き上げてフリースを形成し、該フリースを乾燥することにより化粧用不織布を得る製造方法が、前記課題を解決できる化粧用不織布の製造方法であることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
そして、予め調製された不織布に、リン脂質とコラーゲンとを添加することにより化粧用不織布を得る製造方法が、前記課題を解決できる化粧用不織布の製造方法であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
更に、前記したような化粧用不織布に水又は水を配合した化粧料を含浸させ、肌に塗布する方法が、前記課題を解決できる化粧方法であることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の第一は、成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを質量比1:0.001〜1:10で含有することを特徴とする化粧用不織布を提供するものである。また、不織布1質量部に対して、成分(a)と成分(b)との合計質量部が0.01〜3であることを特徴とする前記化粧用不織布、成分(a)と成分(b)を乾燥状態で含有することを特徴とする前記化粧用不織布、使用時に、水又は水を配合した化粧料を含浸又は噴霧し、肌に塗布することを特徴とする前記化粧用不織布を提供するものである。
【0011】
また、本発明の第二は、成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを含有する水中に、繊維を分散し、該分散液から網体上に漉き上げてフリースを形成し、該フリースを乾燥することを特徴とする化粧用不織布の製造方法を提供するものである。また、水中に繊維を分散し、該分散液から網体上に漉き上げてフリースを形成した後、該フリースに成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを添加し、該フリースを乾燥することを特徴とする化粧用不織布の製造方法、成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを水に分散し、該分散液を噴霧又は含浸させて添加することを特徴とする前記化粧用不織布の製造方法、予め調製された不織布に、成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを添加することを特徴とする化粧用不織布の製造方法を提供するものである。
【0012】
そして、本発明の第三は、前記何れかに記載の化粧用不織布に水又は水を配合した化粧料を含浸又は噴霧し、肌に塗布することを特徴する化粧方法を提供するものである。また、化粧用不織布に水又は水を配合した化粧料を含浸又は噴霧し、肌に塗布することを特徴する化粧方法、化粧料が電解質を配合したものであることを特徴とする前記化粧方法、化粧料の25℃における電気伝導度が0.05〜2s/mであることを特徴する前記化粧方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、肌への密着性が高く、水や水を配合した化粧料が染込み易く、肌に塗布することにより、肌の水分蒸発抑制効果と保湿効果に優れ、肌触り感が良好な化粧用不織布を得ることが可能となる。また、肌への密着性が高く、肌に塗布することにより、肌の水分蒸発抑制効果と保湿効果に優れ、肌触り感が良好な化粧方法が提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、ますは本発明の化粧用不織布について説明する。
本発明の化粧用不織布は、不織布に成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを質量比1:0.001〜1:10で含有するものである。
本発明に用いられる成分(a)リン脂質は、不織布の肌への密着性を高め、肌触り感を良好にするために用いられるものであり、通常の化粧料に用いられるリン脂質であれば、特に限定されず何れのものを用いることができる。具体的には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴリン脂質などが挙げられ、これらの類似物あるいはこれらのものを含有する組成物、すなわち大豆レシチン、卵黄レシチン、あるいはそれらの水素添加物等が挙げられ、これらを必要に応じて一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。これら中でも、経時的な匂いや安定性の観点から水素添加している水素添加リン脂質が好ましく、更には、肌の水分蒸発抑制効果と保湿効果の観点から、PC純度(ホスファチジルコリン濃度)が60質量%(以下、単に「%」と略す。)以上であることが好ましい。
【0015】
本発明に用いられる成分(b)コラーゲンは、肌の水分蒸発抑制効果と保湿効果を高め、肌触り感を良好にするために用いられるものであり、通常の化粧料に用いられるコラーゲンであれば、特に限定されず何れのものを用いることができる。具体的には、鮭、鮫等の海洋魚等から精製して得られるものであり、これらの中でも寒流系魚類より得られるコラーゲンは、熱変性温度が低いため好ましい。尚、これらコラーゲンは、水への溶解性を向上させるため、加水分解やアテロ化、サクシニル化等の処理を行ったコラーゲン誘導体もあるが、これらは本発明の成分(b)として用いることは好ましくない。
【0016】
本発明では、成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを質量比1:0.001〜1:10の範囲で不織布に含有させるが、1:0.005〜1:5の範囲がより好ましい。この範囲で、成分(a)と成分(b)とを含有させると、肌への密着性、肌の水分蒸発抑制効果と保湿効果がより優れた化粧用不織布を得ることができる。
【0017】
本発明では、不織布1質量部に対して、成分(a)と成分(b)との合計質量部が0.01〜3であることが好ましい。この範囲であれば、肌への密着性、肌の水分蒸発抑制効果と保湿効果がより優れた化粧用不織布を得ることができる。
【0018】
本発明の化粧用不織布に用いられる不織布は、天然繊維、合成繊維等の繊維を織らずに、絡み合わせたシートであり、湿式製造法、乾式製造法等の何れの製造方法により得られた不織布でもよい。不織布に用いられる繊維としては、コットン、羊毛、麻、パルプ、絹、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル繊維、ビニロン、アラミド繊維等が挙げられ、これらを必要に応じて一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。これら中でも、化粧用としての肌への密着性や、肌触り感の観点より、コットン、レーヨンが好ましい。
【0019】
本発明の化粧用不織布に用いられる不織布は、水や水を配合した化粧料を含浸又は噴霧して使用するため、不織布の目付(密度)は、30〜300g/mが好ましい。更に、不織布の厚みとしては、200〜4000μmが好ましい。
【0020】
次に、本発明の化粧用不織布の製造方法について説明する。
本発明の化粧用不織布の製造方法は、前記した本発明の化粧用不織布の製造方法に関するものである。
【0021】
第一の製造方法は、成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを含有する水中に、繊維を分散し、該分散液から網体上に漉き上げてフリースを形成し、該フリースを乾燥することを特徴とする化粧用不織布の製造方法に関するものであり、成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを含有する水中に、繊維を分散し、該分散液から網体上に漉き上げてフリースを形成し、該フリースを乾燥する、いわゆる湿式の不織布の製造過程において、成分(a)及び成分(b)を不織布に含有させる方法に関するものである。
【0022】
まずは、水等の溶媒中に成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを分散し、該分散液に繊維を添加し、分散して得た分散液から、網体上に漉き上げてフリースを形成し、該フリースを乾燥し、水等の溶媒を除去して、化粧料用不織布を得る製造方法である。この化粧料用不織布は、使用目的に合わせて、顔面形状や楕円形等の肌の適応部位に合わせた形状にカットし使用する。尚、水等の溶媒中に成分(a)リン脂質、成分(b)コラーゲン、繊維を一括して分散し、該分散液から網体上に漉き上げてフリースを形成し、該フリースを乾燥し、水等の溶媒を除去して、化粧料用不織布を得る製造方法の同様に可能である。また、前記フリースは、乾燥前に、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流絡合法、ステッチボンド法、スチームジェット法等の方法により、繊維同士を結合させる工程を加えることができる。
【0023】
第二の製造方法は、水中に繊維を分散し、該分散液から網体上に漉き上げてフリースを形成した後、該フリースに成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを添加し、該フリースを乾燥することを特徴とする化粧用不織布の製造方法に関するものであり、水中に繊維を分散し、該分散液から網体上に漉き上げてフリースを形成した後、該フリースに成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを添加し、該フリースを乾燥する、湿度式の不織布の製造過程において、フリースを乾燥するまえに、成分(a)及び成分(b)を含有させる方法に関するものである。
【0024】
まず、水等の溶媒中に繊維を分散し、該分散液から網体上に漉き上げてフリースを形成した後、該フリースに、予め水等の溶媒中に成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを分散した分散液を添加し、該フリースを乾燥し、水等の溶媒を除去して、化粧料用不織布を得る製造方法である。尚、成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを分散した分散液をフリースに添加する方法としては、噴霧、含浸等の方法を用いることができる。この化粧料用不織布は、使用目的に合わせて、顔面形状や楕円形等の肌の適応部位に合わせた形状にカットし使用する。また、前記フリースは、乾燥前に、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流絡合法、ステッチボンド法、スチームジェット法等の方法により、繊維同士を結合させる工程を加えることができる。
【0025】
第三の製造方法は、予め調製された不織布に、成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを添加することを特徴とする化粧用不織布の製造方法に関するものであり、予め調製された不織布に、後から、成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを添加する方法に関するものである。
【0026】
まず、水等の溶媒中に成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを分散した分散液を調製する。そして、予め調製された不織布に、該分散液を噴霧、含浸等の方法により、添加し、乾燥し、水等の溶媒を除去して、化粧料用不織布を得る製造方法である。この化粧料用不織布は、使用目的に合わせて、顔面形状や楕円形等の肌の適応部位に合わせた形状にカットし使用する。
【0027】
前記第一〜第三の製造方法において、水等の溶媒を乾燥して除去する工程は、溶媒の沸点以上に加熱すれば良いが、リン脂質の変性やコラーゲンの熱変性を防ぐために、30℃以下の低温で乾燥することが好ましい。
【0028】
前記第一〜第三の製造方法において、用いられる成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンは、化粧料用不織布の発明において用いられるものと同じである。また、成分(a)と成分(b)の含有質量比、不織布と成分(a)と成分(b)も同様である。更には、不織布1質量部に対して、成分(a)と成分(b)との合計質量部が0.01〜3であることが好ましい。この範囲であれば、肌への密着性、肌の水分蒸発抑制効果と保湿効果がより優れた化粧用不織布を得ることができる。
【0029】
前記第一〜第三の製造方法において、用いられる不織布は、水や水を配合した化粧料を含浸又は噴霧して使用するため、不織布の目付(密度)は、30〜300g/mが好ましい。更に、不織布の厚みとしては、200〜4000μmが好ましい。
【0030】
次に、本発明の化粧方法について説明する。
本発明の化粧料方法は、前記した化粧用不織布又は、前記した化粧用不織布の製造方法により製造された化粧用不織布を用いた化粧方法に関するものである。
【0031】
第一の化粧方法は、化粧用不織布に水又は水を配合した化粧料を含浸させ、肌に塗布する化粧方法に関するものである。具体的には、前記した化粧用不織布又は、前記した化粧用不織布の製造方法により製造された化粧用不織布を使用目的に合わせて、顔面形状や楕円形等の肌の適応部位に合わせた形状にカットし、これに水又は水を配合した化粧料を含浸又は噴霧し、肌に貼付させ、一定時間保持して、肌に水分や化粧料中の有効成分を供給する方法である。
【0032】
前記化粧方法において、化粧用不織布に含浸又は噴霧する化粧料中には、電解質を含有することが好ましい。通常化粧料には、有効成分として電解質を配合させるが、リン脂質やコラーゲンを配合した水中の電解質の濃度が高くなりすぎると、リン脂質の界面活性能の低下やコラーゲンが水中で析出する等の問題を生じる場合があり、この点からも、本願発明の化粧方法が有効である。
【0033】
前記した電解質としては、通常の化粧料として用いられるものであれば、有機・無機を問わず用いることができる。具体的には、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウムカリウム、リン酸水素ナトリウム等の無機電解質、グリチルリチン酸塩類、グリチルレチン酸塩、サリチル酸塩、トラネキサム酸塩、ピロリドンカルボン酸塩、エデト酸塩、L−アラニン、β−アラニン、L−アルギニン、L−アルギニン塩酸塩、L−アスパラギン一水和物、L−アスパラギン酸、ポリアスパラギン酸、L−シトルリン、L−システイン、L−システイン塩酸塩一水和物、L−シスチン、L−ドーパ、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸塩酸塩、L−グルタミン、ポリグルタミン酸、グリシン、トリメチルグリシン、L−ヒスチジン、L−ヒスチジン塩酸塩一水和物、L−ヒドロキシプロリン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−リジン塩酸塩、L−メチオニン、L−オルニチン塩酸塩、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−αアミノ酪酸等のアミノ酸及びアミノ酸誘導体、L−アスコルビン酸及びL−アスコルビン酸誘導体、クエン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩等のα―ヒドロキシ酸塩、ピロリドンカルボン酸塩等が挙げられ、これらより必要に応じて、一種又は二種以上を用いることができる。
【0034】
これら電解質の中でも、肌に美白効果、保湿効果、収斂効果、角質溶解効果等を付与するため相当量配合することが必要となる場合であっても、本発明の化粧方法は有効である。このような電解質としては、具体的には、グルタミン酸、リシン、アルギニン、N−アシルグルタミン酸、グルタミン酸塩、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸等のアミノ酸及びその誘導体、クエン酸、乳酸、乳酸ナトリウム等のα−ヒドロキシ酸及びその塩類、アスコルビン酸、L−アスコルビン酸−2−リン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド等のアスコルビン酸及びその誘導体、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、尿素、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸塩、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸塩等が挙げられ、これらより必要に応じて、一種又は二種以上を用いることができる。
【0035】
本発明の化粧料方法に用いられる電解質の化粧料中への配合量は、化粧料の電気伝導度が、20℃で0.05〜2s/mの範囲で配合することが好ましい。尚、本発明において、化粧料の電気伝導度は、電気伝導率計CM−60G(東亜電波工業社製)を用いて測定した。
【0036】
本発明の化粧料方法に用いられる電解質の化粧料中への配合量は、電解質、目的により異なり特に限定されるものではないが、0.1〜10%が好ましく、0.3〜3%がより好ましい。
【0037】
本発明の化粧方法に用いられる化粧用不織布に含浸又は噴霧する化粧料は、含浸又は噴霧が容易になるため液状であることが好ましい。
【0038】
本発明の化粧方法に用いられる化粧用不織布に含浸又は噴霧する化粧料は、前記した必須成分の他に、通常の化粧料に使用される成分、例えば、水溶性高分子、低級アルコール類、水性成分、界面活性剤、粉体、紫外線吸収剤、保湿剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、香料、清涼剤等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0039】
本発明の化粧料としては、ローション、乳液、クリーム、美容液、日焼け止め料、パック等の顔、手足、ボディ用等の基礎化粧料が好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0041】
実施例1〜8及び比較例1〜7:化粧用不織布
下記表1及び2に示す組成の化粧用不織布を下記製造方法により調製し、これを2cm四方にカットし、化粧水A(以下に処方を示す。アスコルビン酸グルコシドを2%配合した、25℃の電気伝導度が0.275s/m)を0.5ml含浸させたものを被験者の目元部に貼付し、10分間放置後、該化粧用不織布を剥がし、「肌に対する感触(肌触り感)」、「肌への密着性」、「不織布への水の染込み易さ」、「保湿効果」、「保湿効果の持続」の各項目について、以下に示す評価方法により評価し、結果を併せて表1及表2に示した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
(製造方法)
A:成分1〜2を精製水に分散させる。
B:Aに成分3〜4を添加し、分散させる。
C:Bから網体を用いてフリースを漉き上げてフリースを形成する。
D:Cのフリースを水流絡合法により不織布を調製する。
E:Dを凍結乾燥させて、化粧用不織布
(目付:60g/m,厚み:500μm)を得た。
【0045】
〔評価方法1〕
化粧品評価専門パネル10名に、前記実施例及び比較例の化粧用不織布を2cm四方に切り、化粧水A(アスコルビン酸グルコシドを2%配合した、25℃の電気伝導度が0.275s/m)を0.5ml含浸したものを頬に貼付し10分間放置後、不織布を剥がし、「肌に対する感触(肌触り感)」、「肌への密着性」、「不織布への水の染込み易さ」、「保湿効果」、「保湿効果の持続」の其々の項目について、各自が以下の評価基準に従って5段階評価し化粧用不織布毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。
<評価基準>
[評価結果] :[評 点]
非常に良好 : 5点
良好 : 4点
普通 : 3点
やや不良 : 2点
不良 : 1点
<判定基準>
[評点の平均点] :[判 定]
4.5以上 : ◎
3.5以上〜4.5未満 : ○
1.5以上〜3.5未満 : △
1.5未満 : ×
【0046】
化粧水の処方
(成分) (%)
(1)ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 0.1
(2)メチルパラベン 0.1
(3)香料 適量
(4)エチルアルコール 5.0
(5)ジプロピレングリコール 7.0
(6)グリセリン 3.0
(7)精製水 10.0
(8)アスコルビン酸−2−グルコシド 2.0
(9)水酸化ナトリウム 0.26
(10)リン酸1水素2ナトリウム 0.1
(11)リン酸2水素1ナトリウム 0.1
(12)エデト酸2ナトリウム 0.05
(13)精製水 残量
【0047】
(製法)
A:成分1〜4を混合溶解する。
B:成分5〜13を混合溶解する。
C:BにAを添加混合し、化粧水を得た。
【0048】
表1及び表2の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜8の化粧用不織布は、「肌に対する感触(肌触り感)」、「肌への密着性」、「不織布への水の染込み易さ」、「保湿効果」、「保湿効果の持続」の全ての項目に優れた化粧用不織布であった。これに対して、成分(a)及び成分(b)を配合しない比較例1では、「肌に対する感触(肌触り感)」、「肌への密着性」、「保湿効果」、「保湿効果の持続」が良好ではなかった。また、成分(b)を配合しない比較例2では、「肌に対する感触(肌触り感)」、「肌への密着性」が良好ではなかった。また、成分(a)を配合しない比較例3では、「肌への密着性」、「保湿効果の持続」が良好ではなかった。そして、成分(a)と成分(b)の質量比が範囲外である比較例4〜7では、全ての項目を満足できる化粧用不織布は得られなかった。
【0049】
〔評価方法2〕
ボランティアに、評価方法1と同様に実施例1及び比較例1の化粧用不織布を2cm四方に切り、精製水を0.5ml塗布したものを頬に貼付し10分間放置後、不織布を剥がす試験を行った。これを1日2回、2週間連用後、TEWL(水分蒸散抑制効果)と保湿効果(水分量:コンダクタンスをIBS社製Skicon−200で測定)を測定し、図1及び図2に結果を示した。
【0050】
図1及び図2の結果から明らかなように、本発明の実施例1は、比較例1、ブランク(素肌)に比べて、TEWL(水分蒸散抑制効果)と保湿効果(水分量)に優れ、保湿効果に優れることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】水分蒸散抑制効果の試験結果
【図2】水分量の試験結果 以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを質量比1:0.001〜1:10で含有することを特徴とする化粧用不織布。
【請求項2】
不織布1質量部に対して、成分(a)と成分(b)との合計質量部が0.01〜3であることを特徴とする請求項1記載の化粧用不織布。
【請求項3】
成分(a)と成分(b)とを乾燥状態で含有することを特徴とする請求項1又は2記載の化粧用不織布。
【請求項4】
使用時に、水又は水を配合した化粧料を含浸又は噴霧し、肌に塗布することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の化粧用不織布。
【請求項5】
成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを含有する水中に、繊維を分散し、該分散液から網体上に漉き上げてフリースを形成し、該フリースを乾燥することを特徴とする化粧用不織布の製造方法。
【請求項6】
水中に繊維を分散し、該分散液から網体上に漉き上げてフリースを形成した後、該フリースに成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを添加し、該フリースを乾燥することを特徴とする化粧用不織布の製造方法。
【請求項7】
成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを水に分散し、該分散液を噴霧又は含浸させて添加することを特徴とする請求項6記載の化粧用不織布の製造方法。
【請求項8】
予め調製された不織布に、成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを添加することを特徴とする化粧用不織布の製造方法。
【請求項9】
成分(a)リン脂質と成分(b)コラーゲンとを水に分散し、該分散液を噴霧又は含浸させて添加することを特徴とする請求項8記載の化粧用不織布の製造方法。
【請求項10】
請求項5〜9の何れかに記載の製造方法により得られたことを特徴する化粧用不織布。
【請求項11】
請求項1〜4の何れかに記載の化粧用不織布に水又は水を配合した化粧料を含浸又は噴霧し、肌に塗布することを特徴する化粧方法。
【請求項12】
請求項10の化粧用不織布に水又は水を配合した化粧料を含浸又は噴霧し、肌に塗布することを特徴する化粧方法。
【請求項13】
化粧料が電解質を配合したものであることを特徴とする請求項11又は12記載の化粧方法。
【請求項14】
化粧料の25℃における電気伝導度が0.05〜2s/mであることを特徴する請求項13記載の化粧方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−222575(P2008−222575A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59278(P2007−59278)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】