医用画像処理装置及び医用画像診断装置
【課題】視点位置の初期設定の作業負担を軽減することを可能とする。
【解決手段】被検体に関する3次元画像データと撮影部位のデータとを記憶する画像データ記憶部41と、3次元画像データから体内の空気領域を抽出する空気領域抽出部43と、撮影部位に応じた抽出した空気領域内の特定位置に視点位置を設定する視点位置設定部47と、設定した視点位置に基づいて3次元画像データから投影画像のデータを発生する画像発生部51と、を具備する。
【解決手段】被検体に関する3次元画像データと撮影部位のデータとを記憶する画像データ記憶部41と、3次元画像データから体内の空気領域を抽出する空気領域抽出部43と、撮影部位に応じた抽出した空気領域内の特定位置に視点位置を設定する視点位置設定部47と、設定した視点位置に基づいて3次元画像データから投影画像のデータを発生する画像発生部51と、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の画像に近似する画像を発生することが可能な医用画像処理装置及び医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医用画像処理装置の性能の向上によって、表面ボリュームレンダリング(Surface Volume Rendering:SVR)や最大値投影(Maximum Intensity Projection:MIP)だけではなく、透視ボリュームレンダリング(Perspective Volume Rendering:PVR)の有用性が高まっている。PVRによって生成された投影画像は、PVR画像と呼ばれている。PVRを用いた応用例の一つとして、器官内部に視点を設定した投影画像を生成する手法がある。このようにして生成されたPVR画像の表示方法の一つの応用例として、器官内部に設定された視点を連続的に移動させて表示する方法がある。この表示方法は、内視鏡による画像表示と類似しているので仮想内視鏡表示と呼ばれている。
【0003】
仮想内視鏡表示開始時における視点位置は、体外に視点が設定されている。しかしこのような体外に視点が設定された表示は、器官内部を観察することを目的とする仮想内視鏡表示に適していない。そこで、器官の中に視点を設定するために、利用者は、表示されたPVR画像を観察しながら器官の中に視点位置及び視線方向を設定する必要がある。具体的な手順は、
1)利用者は、PVR画像の断面位置を変更させながら観察対象となる器官を探す。
2)利用者は、視点位置を観察対象となる器官内に設定する。
3)利用者は、視線方向を設定する。
【0004】
別の方法として利用者は、PVR画像上で視点位置や視線方向を徐々に変更しながら観察対象の器官内へ視点位置を移動させる。
【0005】
このように、視点位置及び視線方向を設定する際、利用者は手動操作を繰り返し行う必要がある。利用者にとってこのような作業は負担が大きい。
【特許文献1】特開平10―234663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、視点位置の初期設定の作業負担を軽減することを可能とする医用画像処理装置及び医用画像診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明に係わる医用画像処理装置は、被検体に関する3次元画像データと撮影部位のデータとを記憶する画像データ記憶部と、前記3次元画像データから体内の空気領域を抽出する空気領域抽出部と、前記撮影部位に応じた前記抽出した空気領域内の特定位置に視点位置を設定する視点位置設定部と、前記設定した視点位置に基づいて前記3次元画像データから投影画像のデータを発生する画像発生部と、を具備する。
【0008】
請求項5記載の本発明に係わる医用画像診断装置は、被検体に関する3次元画像データを再構成する再構成部と、前記3次元画像データと前記被検体に関する撮影部位のデータとを記憶する画像データ記憶部と、前記3次元画像データから体内の空気領域を抽出する空気領域抽出部と、前記撮影部位に応じた前記抽出した空気領域内の特定位置に視点位置を設定する視点位置設定部と、前記設定した視点位置に基づいて前記3次元画像データから投影画像のデータを発生する画像発生部と、を具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、視点位置の初期設定の作業負担を軽減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態では、医用画像診断装置をX線コンピュータ断層撮影装置とする。しかしながらこれに限定する必要はなく、医用画像診断装置として、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置、ガンマカメラ、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)或いはPET(Positron Emission Tomography)のうちの何れかであってもよい。
【0011】
図1は、本実施形態におけるX線コンピュータ断層撮影装置1の構成を示す図である。図1に示すように、X線コンピュータ断層撮影装置1は、スキャン装置10、コンピュータ装置20、及び医用画像処理装置40を備える。なお、スキャン装置10には、X線管とX線検出器とが1体となって被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプや、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあるが、いずれのタイプでも本発明は適用可能である。本実施形態においては回転/回転タイプとして説明する。
【0012】
スキャン装置10は、架台(ガントリ)11を有する。架台11は、円環又は円板状の回転フレーム12を回転可能に支持する。回転フレーム12は、撮影領域中に天板13に載置された被検体を挟んで対向するようにX線管14とX線検出器15とを有する。架台・寝台制御部16は、回転フレーム12を一定の角速度で連続回転させる。また、架台・寝台制御部16は、寝台を所望の方向に移動させる。X線管14は、高電圧発生部17からの高電圧の印加とフィラメント電流の供給を受けてX線を発生する。X線検出器15には、データ収集部(DAS;Data Acquisition System)18が接続される。データ収集部18は、架台・寝台制御部16の制御のもと、X線検出器15の各チャンネルの電流信号を収集する。データ収集部18は、収集した電流信号をデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号は純生データと呼ばれる。純生データは、データ収集部18によって光や磁気を使った非接触型又はスリップリング型のデータ伝送部(図示せず)を経由してコンピュータ装置20に供給される。
【0013】
コンピュータ装置20は、前処理部21、再構成部23、3次元画像データ記憶部25、表示部27、操作部29、スキャン制御部31及びシステム制御部33を備える。以下、個々の構成要素について説明する。
【0014】
前処理部21は、純生データに対して、チャンネル間の感度不均一の補正、また主に金属部等のX線強吸収体による極端な信号強度の低下又は信号脱落の補正等の前処理を行う。前処理された純生データは、生データや投影データと呼ばれる。
【0015】
再構成部23は、投影データに基づいて3次元画像データ(ボリュームデータ)を再構成する。図2は、本実施形態に係わる人体座標系(DICOM座標系)を示す図である。3次元画像データの座標系は、図2に示す人体座標系に一致しているものとする。つまり3次元画像データの座標系は、寝台13の天板に載置されている被検体の長軸をZ軸、水平方向をX軸、鉛直方向をY軸に規定する。
【0016】
3次元画像データ記憶部25は、再構成部23によって発生された3次元画像データを記憶する。
【0017】
表示部27は、後述する投影画像(PVR画像)を仮想内視鏡表示する。表示部27としては、液晶表示器等の表示デバイスが利用可能である。なお、表示部27をコンピュータ装置20には内蔵させず、医用画像処理装置40に内蔵させても良い。
【0018】
操作部29は、利用者からの仮想内視鏡表示終了指令や画像の視点位置の変更操作を受け付ける。操作部29としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、終了ボタン等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜利用可能である。
【0019】
スキャン制御部31は、スキャン装置10がスキャンを行なうように架台・寝台制御部16と高電圧発生部17とを制御する。
【0020】
システム制御部33は、X線コンピュータ断層撮影装置1の全ての構成要素を制御する。
【0021】
医用画像処理装置40は、画像データ記憶部41、空気領域抽出部43、視点位置設定対象領域特定部44、撮影部位/視点位置設定ルール対応表記憶部45、視点位置設定部47、視線方向設定部49、画像発生部(投影処理部)51を有する。以下、個々の構成要素について説明する。
【0022】
画像データ記憶部41は、3次元画像データを撮影部位情報と関連付けて記憶する。撮影部位情報は、検査オーダから特定されうるスキャンした被検体の体の部位名を示す情報であり、例えば、胸部(肺野)や下腹部(大腸)といった情報である。
【0023】
空気領域抽出部43は、体内外の空気抽出機能及び体外の空気領域削除機能を有する。
【0024】
体内外の空気抽出機能により空気領域抽出部43は、3次元画像データにしきい値処理を行うことで3次元画像データから複数の体内外の空気領域を抽出する。
【0025】
体外の空気領域削除機能により空気領域抽出部43は、抽出した複数の体内外の空気領域のうち再構成領域の縁部分のボクセルを数個特定し、特定した数個のボクセルに連結するボクセルを次々に統合する。体外の空気領域削除機能により空気領域抽出部43は、統合処理を終えると、統合した領域を体外の空気領域として特定し、特定した体外の空気領域のボクセルを削除(0値化)する。
【0026】
これら2つの機能により空気領域抽出部43は、3次元画像データから複数の体内の空気領域を特定する。
【0027】
PVR対象領域特定部44は、抽出された複数の体内の空気領域それぞれについて体積を算出する。体積算出方法の典型的な例として、PVR対象領域特定部44は、複数の体内の空気領域それぞれのボクセル数を計数する。算出した複数の体積(ボクセル数)から、PVR対象領域特定部44は、最大体積の体内の空気領域を仮想内視鏡表示対象領域(PVR対象領域)として特定する。
【0028】
撮影部位/視点位置設定ルール対応表記憶部45は、撮影部位とPVR画像における視点位置設定のためのルールとの対応を表す対応表を記憶する。視点位置設定のためのルールとは、撮影部位に応じて視点位置をPVR対象領域のどこに設定するのかを定めたものである。対応表は、一例として、撮影部位を示すコードを入力とし、その撮影部位に応じた視点位置の初期的な位置を出力とした、入出力の対応を示した参照用テーブル(Look Up Table:LUT)である。撮影部位に応じた視点位置は、その撮影部位の解剖学的な位置や構造等の解剖学的な特徴によって予め決められる。
【0029】
また、撮影部位/視点位置設定ルール対応表記憶45は、撮影部位と、その撮影部位におけるPVR対象領域が解剖学上の末端器官を含むか否かとの対応を表す対応表を記憶する。解剖学上の器官とは、口腔、鼻腔、肛門等の器官である。さらに、撮影部位/視点位置設定ルール対応表記憶45は、撮影部位と視線方向の向きとの対応を示す対応表を記憶する。
【0030】
視点位置設定部47は、Z方向の視点位置設定機能、XY方向の視点位置設定機能及び判定機能を有する。
【0031】
Z方向の視点位置設定機能により視点位置設定部47は、撮影部位を示すコードから視点位置を初期的にPVR対象領域のZ方向に対する上端部又は下端部に設定する。
【0032】
XY方向の視点位置設定機能により視点位置設定部47は、設定した視点位置を含むXY断面におけるPVR対象領域の略中央に視点位置を移動させる。
【0033】
判定機能により視点位置設定部47は、撮影部位を示すコードからPVR対象領域が解剖学上の末端器官を含むか否かを判定する。
【0034】
視線方向設定部49は、撮影部位に応じた向きにPVR画像における視線方向をPVR対象領域に設定する。
【0035】
画像発生部(投影処理部)51は、設定された視点位置及び視線方向に基づいて3次元画像データを透視ボリュームデータレンダリング(PVR)等の投影処理をすることにより仮想内視鏡表示用の投影画像(PVR画像)を発生する。また、画像発生部51は、利用者により操作部29を介して視点位置が変更される度に、変更された視点位置及び視線方向に基づいて3次元画像データからPVR画像を発生する。
【0036】
以下、本実施形態における1動作例について図3を参照しながら説明する。
【0037】
なお、図3の動作例は、再構成部23によって再構成された3次元画像データが撮影部位情報と関連付けて画像データ記憶部41に記憶されているところから始まる。
【0038】
ステップS1において、3次元画像データは、空気領域抽出部43によってしきい値処理される。その結果、体内外の空気領域のボクセルに“1”をそれ以外の領域のボクセルに“0”を割り付けたデータ(セグメントデータD1)が空気領域抽出部43よって発生される。
【0039】
図4は、ステップS1の処理を説明するための図である。図4(a)はセグメントデータD1を示す図であり、図4(b)は3次元画像データのCT値ヒストグラムの一例を示す。図4(b)に示すように、3次元画像データには、体内外の空気領域や体内組織の領域が含まれている。空気領域のCT値と体内の組織のCT値とは異なる。一例として体内外の空気領域と体内組織とのしきい値を−800とする。空気領域を抽出するために、空気領域抽出部43は、しきい値を−800としたしきい値処理を3次元画像データに対して行う。その結果、図4(a)に示すようなセグメントデータD1が空気領域抽出部43によって発生される。
【0040】
ステップS2において、セグメントデータD1から体外の空気領域が空気領域抽出部43によって特定される。その結果、体内の空気領域のボクセルに“1”をそれ以外の領域に“0”のボクセルを割り付けたデータ(セグメントデータD2)が空気領域抽出部43によって発生される。
【0041】
図5及び図6を参照しながらステップS2の処理を説明する。図5は、セグメントデータD1のXY平面を示す図である。図5に示すように、セグメントデータD1中の再構成領域は、体内の空気領域IE、体内組織の領域IT、体外の空気領域OE1及び体外の空気領域OE2を含む。体外の空気領域OE1と体外の空気領域OE2との間には、寝台13の天板によって境が生じている。そのため体外の空気領域OE1と体外の空気領域OE2とは、分離している。
【0042】
図5に示すように、体内の空気領域IEと体外の空気領域OE1とは体内組織の領域ITにより分離されている。つまり、被検体の前面(A)、背面(P)、左(L)及び右(R)の何れの方向においても、体外の空気領域OE1及び体外の空気領域OE2は体内の空気領域IEの外側にある。
【0043】
図5に示すように、空気領域抽出部43によって、典型的には、再構成領域の縁における所定の4箇所(具体的には、X座標の最大値、X座標の最小値、Y座標の最大値及びY座標の最小値の4箇所)の“1”を割り付けられたボクセル(体外の空気領域)に、連結探索処理の起点としての4つのシード点Sが設定される。そして空気領域抽出部43は、設定した4つのシード点に連結するボクセルを次々に統合する。この統合処理は統合されるべきボクセルがなくなるまで繰り返される。統合されたボクセルがなす領域を統合領域と呼ぶことにする。
【0044】
空気領域抽出部43は、最終的な統合領域(体外の空気領域OE1及び体外の空気領域OE2)のボクセルを0値化する。つまり空気領域抽出部43により、図6に示すような、体内の空気領域IEのボクセルに“1”を、それ以外の領域に“0”を割り付けたデータ(セグメントデータD2)が発生される。説明の簡単のため図6に示す体内の空気領域IEは1つの領域にまとまっているが、セグメントデータD2中には複数の体内の空気領域が含まれている。
【0045】
なお、シード点Sの数は幾つでもよい。図5の場合、空気領域抽出部43は、シード点Sを前面(A)、左(L)或いは右(R)の何れか1箇所と背面(P)との2箇所に設定すれば十分である。しかし、体外の空気領域の分布に応じた箇所に4つのシード点Sを設定することで、視点位置設定部43は、体外の空気領域が2つ、3つ或いは4つに分離している場合にも、体外の空気領域を抽出できる。
【0046】
ステップS3において、PVR対象領域特定部44によって、抽出された複数の体内の空気領域の内から、最大体積を有する体内の空気領域がPVR対象領域として特定される。
【0047】
ステップS4において、視点位置設定部47は、撮影部位に応じたルールのもとで決定したPVR対象領域上の特定位置にPVR画像における視点位置を設定する(視点位置設定ルーチン)。以下、ステップS4における視点位置設定ルーチンの1動作例を図7を参照しながら説明する。
【0048】
視点位置設定ルーチンのステップSA1〜ステップSA3は、視点位置のZ座標を決定するための処理である。
【0049】
ステップS4が終了するとステップSA1が開始される。ステップSA1において視点位置は、撮影部位に応じたルール(視点位置設定のためのルール)のもとで、PVR対象領域上のZ方向の上端部(Z座標の最大値)又は下端部(Z座標の最小値)の一点に、視点位置設定部43によって、初期的に設定される。より具体的には、撮影部位に応じたルール(視点位置設定のためのルール)のもとで、視点位置設定部47は、セグメントデータD2をZ座標の最大値又はZ座標の最小値におけるXY平面から探索してPVR対象領域のボクセル(“1”を割り付けられたボクセル)を特定する。そして、初めに特定された1ボクセルに視点位置は視点位置設定部47によって初期的に設定される。
【0050】
以下に、撮影部位と視点位置設定のためのルールとの対応を具体例として挙げる。
・胸部(肺野) :PVR対象領域上におけるZ座標の最大値
・下腹部(大腸) :PVR対象領域上におけるZ座標の最小値
ステップSA2において、PVR対象領域が解剖学上の末端器官を含むか否かが、視点位置設定部47によって撮影部位に応じて判定される。以下に、撮影部位とその撮影部位におけるPVR対象領域が解剖学上の末端器官を含むか否かとの対応を具体例として挙げる。
・胸部(肺野) :PVR対象領域は解剖学上の末端器官(この場合、口腔及び鼻腔)を含まない
・下腹部(大腸) :PVR対象領域は解剖学上の末端器官(この場合、肛門)を含む
ステップSA2において含まないと判定した場合、視点位置設定部47は、ステップSA2からステップSA4へ進む。
【0051】
ステップSA2において含むと判定した場合、視点位置設定部47は、ステップSA2からステップSA3へ進む。ステップSA3においてステップSA1にて設定した視点位置は、視点位置設定部47によって、上端部又は下端部からZ軸のマイナス方向又はZ軸のプラス方向に、予め決められた所定のボクセル数だけ移動される。この移動処理は、視点位置をZ方向に関して器官内部に移動させるために行われる。視点位置の移動量は、例えば、撮影部位の形状や被検体の体型等によって決定される。ステップSA1にて視点位置をZ方向の上端部に設定した場合は、ステップSA3にて視点位置設定部47は、視点位置をZ軸のマイナス方向に移動させる。ステップSA1にて視点位置をZ方向の下端部に設定した場合は、ステップSA3にて視点位置設定部47は、視点位置をZ軸のプラス方向に移動させる。
【0052】
以下、撮影部位の具体例を2つ挙げ、ステップSA1〜ステップSA3の処理を具体的に説明する。1つ目は胸部(肺野)の例、2つ目は下腹部(大腸)の例である。
【0053】
図8は、撮影部位が胸部(肺野)の場合におけるステップSA1〜ステップSA3の処理を説明するための図である。肺野を仮想内視鏡表示する際は、気管内部から表示するのがよい。そのため、視点位置は、撮影部位と視点位置設定のためのルールとの対応から、PVR対象領域上のZ方向の上端部の1ボクセルに設定される。
【0054】
肺野の気管は、解剖学上の末端器官である口腔及び鼻腔等から伸びている。しかし、撮影部位が胸部の場合、再構成領域の大きさの制限のため、通常、口腔及び鼻腔は再構成領域には納まらない。つまり、PVR対象領域は末端の器官を含まない。従って、ステップSA2において、末端器官は、視点位置設定部47によって、撮影部位とPVR対象領域が解剖学上の末端器官を含むか否かとの対応から、PVR対象領域に含まれないと判定される。この判定により、視点位置設定部47は、ステップSA2からステップSA4へ進む。
【0055】
ステップSA3の処理が必要ない理由を簡単に説明する。上述したように、PVR対象領域上の気管部分は再構成領域に納まらない。そのため図8に示すように、気管部分は再構成領域のZ方向の上端部で途切れる。換言すれば、視点位置がZ方向の上端部に設定されれば、実質上、視点位置は器官内部に潜り込んでいることになる。従って、ステップSA3の処理は必要ない。
【0056】
図9は、撮影部位が下腹部(大腸)の場合におけるステップSA1〜ステップSA3の処理を説明するための図である。図9に示すように、大腸の末端は、解剖学上の末端器官である肛門に隣接している。そのため撮影部位が下腹部の場合、PVR対象領域上の大腸部分及び肛門部分は再構成領域に納まる。
【0057】
大腸を仮想内視鏡表示する際は、大腸の内部から表示するのがよい。そのための前処理として、ステップSA1において、視点位置は、視点位置設定部47によって、撮影部位と視点位置設定のためのルールとの対応から、初期的にPVR対象領域上のZ方向の下端部(Z座標の最小値)の1ボクセルに設定される。つまり、ステップSA1において視点位置は、肛門部分に設定される。
【0058】
上記の理由により、ステップSA2において、視点位置設定部4によって、撮影部位とPVR対象領域が末端器官を含むか否かとの対応から、末端器官がPVR対象領域に含まれると判定される。この判定により、視点位置設定部47は、ステップSA2からステップSA3へ進む。
【0059】
ステップSA3において視点位置は、視点位置設定部47によって、図9に示すように、予め決められたボクセル数だけZ軸のプラス方向に移動される。つまり、ステップSA3において視点位置は、大腸の内部に移動される。
【0060】
ステップSA1にて設定した又はステップSA3にて移動した視点位置は、XY平面に関してPVR対象領域の境界又はPVR対象領域の境界に近い位置である。そこで、ステップSA4〜ステップSA7における処理が行われる。ステップSA4〜ステップSA7は、XY平面に関して視点位置をPVR対象領域の内部へ移動させる、つまり、視点位置のXY座標を決定するための処理である。なお1動作例として、ステップSA4開始時において視点位置は、PVR対象領域の境界に近い位置にあるとする。つまり、ステップSA3を経由した場合の視点位置である。
【0061】
ステップSA4において視点位置設定部47は、ステップSA1にて設定した又はステップSA3に移動した視点位置を含むXY平面において、視点位置からX軸のプラス方向及びX軸のマイナス方向に沿うPVR対象領域の境界のX座標をそれぞれ特定する。
【0062】
図10は、ステップSA4における処理を説明するための図であり、ステップSA1にて設定した又はステップSA3に移動した視点位置を含むXY断面におけるPVR対象領域(最大体積の体内の空気領域)を示す図である。図10に示すように、ステップSA1にて設定した又はステップSA3にて移動させた視点位置Pは、PVR対象領域内の位置(XP、YP)にあるとする。視点位置設定部47は、視点位置PからX軸のプラス方向に沿うPVR対象領域の境界のX座標(X1)を特定する。また、視点位置設定部47は、視点位置PからX軸のマイナス方向に沿うPVR対象領域の境界のX座標(X2)を特定する。
【0063】
ステップSA5において視点位置設定部47は、ステップSA4にて特定したそれぞれのX座標に基づいて、それぞれのX座標の中点を算出する。そして視点位置は、視点位置設定部47によって、算出された中点に移動される。ステップSA6において視点位置設定部47は、ステップSA5にて移動させた視点位置を含むXY平面において、視点位置からY軸のプラス方向及びY軸のマイナス方向に沿うPVR対象領域の境界のY座標をそれぞれ特定する。
【0064】
図11は、ステップSA5及びステップSA6における処理を説明するための図であり、視点位置Pを含むXY断面におけるPVR対象領域を示す図である。視点位置設定部47は、ステップSA4にて特定したX1とX2とからX1とX2との中点のX座標(XP´)を算出する。そして視点位置Pは、視点位置設定部47によって中点の座標(XP´、YP)に移動される。次に視点位置設定部47は、移動させた視点位置PからY軸のプラス方向に沿うPVR対象領域の境界のY座標(Y1)及びY軸のマイナス方向に沿うPVR対象領域の境界のY座標(Y2)を特定する。
【0065】
ステップSA7において視点位置設定部47は、ステップSA6にて特定したそれぞれのY座標から、それぞれのY座標の中点を算出する。そして視点位置は、視点位置設定部47によって、算出された中点に視点位置を移動される。
【0066】
図12は、ステップSA7における処理を説明するための図であり、ステップSA5にて移動された視点位置Pを含むXY断面におけるPVR対象領域を示す図である。視点位置設定部47は、ステップSA6にて特定したY1とY2とからY1とY2との中点のY座標(YP´)を算出する。次に視点位置Pは、視点位置設定部47によって、中点の座標(XP´、YP´)に移動される。
【0067】
なお、ステップSA4開始時において視点位置が器官の内壁にある場合も、ステップSA4〜ステップSA7と同様の処理が適用可能である。
【0068】
ステップSA8において視点位置設定部47は、ステップSA4〜ステップSA7の処理を繰り返すか否かを判定する。繰り返すか否かの条件は、予め定められており、通常はステップSA4〜ステップSA7の処理を繰り返す必要はない。それは、視点位置は、体内の空気領域の境界付近よりも内側に存在すれば良く、厳密に中心である必要はないからである。ただし、必要に応じて何回か繰り返しても良い。
【0069】
ステップSA8において繰り返すと判定した場合、視点位置設定部47は、ステップSA4へ進み、ステップSA8にて繰り返さないと判定するまでステップSA4〜ステップSA7の処理を繰り返す。
【0070】
ステップSA8において繰り返さないと判定した場合、視点位置設定部47は、ステップSA7にて移動させた視点位置を画像発生部51に設定し、視点位置設定ルーチンを終了する。視点位置設定ルーチンが終了すると、図3のステップS5が開始される。
【0071】
ステップS5において視線方向設定部49は、撮影部位に応じた向きに視線方向をPVR対象領域に設定する。以下に、撮影部位と視線方向の向きとの対応を具体例として挙げる。
【0072】
・胸部(肺野) :Z軸のマイナス方向
・下腹部(大腸) :Z軸のプラス方向
図13は、ステップS6の処理を説明するための図である。図13に示すように、実線の矢印はZ軸のプラス方向(上向き)の視線方向であり、破線の矢印はZ軸のマイナス方向(下向き)の視線方向である。視点位置がPVR対象領域のZ方向の上端部に設定された場合、視線方向は下向きに設定されるべきである。また、視点位置がPVR対象領域のZ方向の下端部に設定された場合、視線方向は上向きに設定されるべきである。従って視線方向設定部49は、撮影部位と視線方向の向きとの対応から、撮影部位に応じた視線方向(Z軸のプラス方向又はZ軸のマイナス方向)を決定し、決定した視線方向を画像発生部51に設定する。
【0073】
ステップS6において画像発生部51は、ステップS4にて設定された視点位置とステップS5にて設定された視線方向とに基づいて、3次元画像データから1枚目のPVR画像データを発生する。ステップS6におけるPVR画像の発生処理は、既存の方法によって行なわれる。従って、PVR画像の発生処理の説明は省略する。
【0074】
ステップS7において、ステップS6にて発生された1枚目のPVR画像が表示部27によって表示される。
【0075】
図14は、1枚目のPVR画像の一例を示す図である。図14に示すように、1枚目のPVR画像は、視点位置が器官内に設定された画像である。つまり、利用者による手動操作を必要とせずに視点位置が器官内部に設定された1枚目のPVR画像が表示される。
【0076】
ステップS8において操作部29は、操作者による操作部29を介した視点移動操作が行なわれるまで待機する。操作者により視点移動操作が行なわれると、ステップS9が行なわれる。
【0077】
ステップS9において画像発生部51は、ステップS8にて行なわれた視点移動操作の移動操作量に基づいて次の視点位置を算出する。
【0078】
ステップS10において画像発生部51は、ステップS9にて算出した次の視点位置とステップS5にて設定された視線方向とに基づいて3次元画像データから次のPVR画像データを発生する。
【0079】
ステップS11において、ステップS10にて発生された次のPVR画像が、表示部27によって表示される。
【0080】
ステップS12において操作部29は、操作者により仮想内視鏡表示の終了ボタンが押されたか否かを確認する。終了ボタンが押されなければステップS8へ進む。終了ボタンが押されると仮想内視鏡表示が終了する。
【0081】
なお、上記の視点位置設定ルーチンとは別の視点位置設定ルーチンとして以下のようなものある。まず初めに視点位置設定部47は、撮影部位と視点位置設定のためのルールとの対応から、PVR対象領域上のZ軸の最大値又はZ軸の最小値におけるXY平面に含まれるPVR対象領域の重心を算出する。そして視点位置設定部47は、算出した重心に視点位置を設定する。次に視点位置設定部47は、PVR対象領域は解剖学上の末端器官を含むか否かを判定する。視点位置設定部47が含まないと判定した場合、別の視点位置設定ルーチンは終了し、ステップS5が開始される。PVR対象領域は解剖学上の末端器官を含むと判定した場合、視点位置設定部47は、予め決められたボクセル数だけZ方向のプラス方向又はマイナス方向に視点位置を移動させる。この移動処理が終了するとステップS5が開始される。ステップS5以降の処理は、視点位置設定ルーチンを行なった場合と別の視点位置設定ルーチンを行なった場合とに変わりはない。
【0082】
また、上記実施形態においては、撮影部位として胸部(肺野)と下腹部(大腸)との2つのみ説明した。しかしながら、これに拘泥されず、例えば撮影部位として胸部(食道)や下腹部(小腸)の場合にも本実施形態は適用可能である。この場合、撮影部位と視点位置設定ルールとの対応は、一例として、
・胸部(食道) :PVR対象領域上のZ軸の最大値
・下腹部(小腸) :PVR対象領域上のZ軸の最小値
となる。また、撮影部位と視線方向の向きとの対応は、1例として、
・胸部(食道) :Z軸のマイナス方向
・下腹部(小腸) :Z軸のプラス方向
となる。
【0083】
かくして本実施形態によれば、視点位置の初期設定の作業負担を軽減することが可能となる。
【0084】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施形態におけるX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図。
【図2】本実施形態に係わる人体座標系(DICOM座標系)を示す図。
【図3】本実施形態における1動作例を示す図。
【図4】図3のステップS1の処理を説明するための図。
【図5】図3のステップS2の処理を説明するための図。
【図6】図3のステップS2の処理を説明する図5とは異なる図。
【図7】本実施形態における視点位置設定ルーチンの1動作例を示す図。
【図8】図7のステップSA1〜ステップSA3において、撮影部位が胸部(肺野)の場合における処理を説明するための図。
【図9】図7のステップSA1〜ステップSA3において、撮影部位が下腹部(大腸)の場合における処理を説明するための図。
【図10】図7のステップSA4における処理を説明するための図。
【図11】図7のステップSA5及びステップSA6における処理を説明するための図。
【図12】図7のステップSA7における処理を説明するための図。
【図13】図2のステップS5の処理を説明するための図。
【図14】図2のステップS7で表示される1枚目のPVR画像を示す図。
【符号の説明】
【0086】
1…X線コンピュータ断層撮影装置、10…スキャン装置、20…コンピュータ装置、21…前処理部、23…再構成部、25…3次元画像データ記憶部、27…表示部、29…操作部、31…スキャン制御部、33…システム制御部、40…医用画像処理装置、41…画像データ記憶部、43…空気領域抽出部、44…PVR対象領域特定部、45…撮影部位/視点位置設定ルール対応表記憶部、47…視点位置設定部、49…視線方向設定部、51…画像発生部(投影処理部)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の画像に近似する画像を発生することが可能な医用画像処理装置及び医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医用画像処理装置の性能の向上によって、表面ボリュームレンダリング(Surface Volume Rendering:SVR)や最大値投影(Maximum Intensity Projection:MIP)だけではなく、透視ボリュームレンダリング(Perspective Volume Rendering:PVR)の有用性が高まっている。PVRによって生成された投影画像は、PVR画像と呼ばれている。PVRを用いた応用例の一つとして、器官内部に視点を設定した投影画像を生成する手法がある。このようにして生成されたPVR画像の表示方法の一つの応用例として、器官内部に設定された視点を連続的に移動させて表示する方法がある。この表示方法は、内視鏡による画像表示と類似しているので仮想内視鏡表示と呼ばれている。
【0003】
仮想内視鏡表示開始時における視点位置は、体外に視点が設定されている。しかしこのような体外に視点が設定された表示は、器官内部を観察することを目的とする仮想内視鏡表示に適していない。そこで、器官の中に視点を設定するために、利用者は、表示されたPVR画像を観察しながら器官の中に視点位置及び視線方向を設定する必要がある。具体的な手順は、
1)利用者は、PVR画像の断面位置を変更させながら観察対象となる器官を探す。
2)利用者は、視点位置を観察対象となる器官内に設定する。
3)利用者は、視線方向を設定する。
【0004】
別の方法として利用者は、PVR画像上で視点位置や視線方向を徐々に変更しながら観察対象の器官内へ視点位置を移動させる。
【0005】
このように、視点位置及び視線方向を設定する際、利用者は手動操作を繰り返し行う必要がある。利用者にとってこのような作業は負担が大きい。
【特許文献1】特開平10―234663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、視点位置の初期設定の作業負担を軽減することを可能とする医用画像処理装置及び医用画像診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明に係わる医用画像処理装置は、被検体に関する3次元画像データと撮影部位のデータとを記憶する画像データ記憶部と、前記3次元画像データから体内の空気領域を抽出する空気領域抽出部と、前記撮影部位に応じた前記抽出した空気領域内の特定位置に視点位置を設定する視点位置設定部と、前記設定した視点位置に基づいて前記3次元画像データから投影画像のデータを発生する画像発生部と、を具備する。
【0008】
請求項5記載の本発明に係わる医用画像診断装置は、被検体に関する3次元画像データを再構成する再構成部と、前記3次元画像データと前記被検体に関する撮影部位のデータとを記憶する画像データ記憶部と、前記3次元画像データから体内の空気領域を抽出する空気領域抽出部と、前記撮影部位に応じた前記抽出した空気領域内の特定位置に視点位置を設定する視点位置設定部と、前記設定した視点位置に基づいて前記3次元画像データから投影画像のデータを発生する画像発生部と、を具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、視点位置の初期設定の作業負担を軽減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態では、医用画像診断装置をX線コンピュータ断層撮影装置とする。しかしながらこれに限定する必要はなく、医用画像診断装置として、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置、ガンマカメラ、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)或いはPET(Positron Emission Tomography)のうちの何れかであってもよい。
【0011】
図1は、本実施形態におけるX線コンピュータ断層撮影装置1の構成を示す図である。図1に示すように、X線コンピュータ断層撮影装置1は、スキャン装置10、コンピュータ装置20、及び医用画像処理装置40を備える。なお、スキャン装置10には、X線管とX線検出器とが1体となって被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプや、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあるが、いずれのタイプでも本発明は適用可能である。本実施形態においては回転/回転タイプとして説明する。
【0012】
スキャン装置10は、架台(ガントリ)11を有する。架台11は、円環又は円板状の回転フレーム12を回転可能に支持する。回転フレーム12は、撮影領域中に天板13に載置された被検体を挟んで対向するようにX線管14とX線検出器15とを有する。架台・寝台制御部16は、回転フレーム12を一定の角速度で連続回転させる。また、架台・寝台制御部16は、寝台を所望の方向に移動させる。X線管14は、高電圧発生部17からの高電圧の印加とフィラメント電流の供給を受けてX線を発生する。X線検出器15には、データ収集部(DAS;Data Acquisition System)18が接続される。データ収集部18は、架台・寝台制御部16の制御のもと、X線検出器15の各チャンネルの電流信号を収集する。データ収集部18は、収集した電流信号をデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号は純生データと呼ばれる。純生データは、データ収集部18によって光や磁気を使った非接触型又はスリップリング型のデータ伝送部(図示せず)を経由してコンピュータ装置20に供給される。
【0013】
コンピュータ装置20は、前処理部21、再構成部23、3次元画像データ記憶部25、表示部27、操作部29、スキャン制御部31及びシステム制御部33を備える。以下、個々の構成要素について説明する。
【0014】
前処理部21は、純生データに対して、チャンネル間の感度不均一の補正、また主に金属部等のX線強吸収体による極端な信号強度の低下又は信号脱落の補正等の前処理を行う。前処理された純生データは、生データや投影データと呼ばれる。
【0015】
再構成部23は、投影データに基づいて3次元画像データ(ボリュームデータ)を再構成する。図2は、本実施形態に係わる人体座標系(DICOM座標系)を示す図である。3次元画像データの座標系は、図2に示す人体座標系に一致しているものとする。つまり3次元画像データの座標系は、寝台13の天板に載置されている被検体の長軸をZ軸、水平方向をX軸、鉛直方向をY軸に規定する。
【0016】
3次元画像データ記憶部25は、再構成部23によって発生された3次元画像データを記憶する。
【0017】
表示部27は、後述する投影画像(PVR画像)を仮想内視鏡表示する。表示部27としては、液晶表示器等の表示デバイスが利用可能である。なお、表示部27をコンピュータ装置20には内蔵させず、医用画像処理装置40に内蔵させても良い。
【0018】
操作部29は、利用者からの仮想内視鏡表示終了指令や画像の視点位置の変更操作を受け付ける。操作部29としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、終了ボタン等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜利用可能である。
【0019】
スキャン制御部31は、スキャン装置10がスキャンを行なうように架台・寝台制御部16と高電圧発生部17とを制御する。
【0020】
システム制御部33は、X線コンピュータ断層撮影装置1の全ての構成要素を制御する。
【0021】
医用画像処理装置40は、画像データ記憶部41、空気領域抽出部43、視点位置設定対象領域特定部44、撮影部位/視点位置設定ルール対応表記憶部45、視点位置設定部47、視線方向設定部49、画像発生部(投影処理部)51を有する。以下、個々の構成要素について説明する。
【0022】
画像データ記憶部41は、3次元画像データを撮影部位情報と関連付けて記憶する。撮影部位情報は、検査オーダから特定されうるスキャンした被検体の体の部位名を示す情報であり、例えば、胸部(肺野)や下腹部(大腸)といった情報である。
【0023】
空気領域抽出部43は、体内外の空気抽出機能及び体外の空気領域削除機能を有する。
【0024】
体内外の空気抽出機能により空気領域抽出部43は、3次元画像データにしきい値処理を行うことで3次元画像データから複数の体内外の空気領域を抽出する。
【0025】
体外の空気領域削除機能により空気領域抽出部43は、抽出した複数の体内外の空気領域のうち再構成領域の縁部分のボクセルを数個特定し、特定した数個のボクセルに連結するボクセルを次々に統合する。体外の空気領域削除機能により空気領域抽出部43は、統合処理を終えると、統合した領域を体外の空気領域として特定し、特定した体外の空気領域のボクセルを削除(0値化)する。
【0026】
これら2つの機能により空気領域抽出部43は、3次元画像データから複数の体内の空気領域を特定する。
【0027】
PVR対象領域特定部44は、抽出された複数の体内の空気領域それぞれについて体積を算出する。体積算出方法の典型的な例として、PVR対象領域特定部44は、複数の体内の空気領域それぞれのボクセル数を計数する。算出した複数の体積(ボクセル数)から、PVR対象領域特定部44は、最大体積の体内の空気領域を仮想内視鏡表示対象領域(PVR対象領域)として特定する。
【0028】
撮影部位/視点位置設定ルール対応表記憶部45は、撮影部位とPVR画像における視点位置設定のためのルールとの対応を表す対応表を記憶する。視点位置設定のためのルールとは、撮影部位に応じて視点位置をPVR対象領域のどこに設定するのかを定めたものである。対応表は、一例として、撮影部位を示すコードを入力とし、その撮影部位に応じた視点位置の初期的な位置を出力とした、入出力の対応を示した参照用テーブル(Look Up Table:LUT)である。撮影部位に応じた視点位置は、その撮影部位の解剖学的な位置や構造等の解剖学的な特徴によって予め決められる。
【0029】
また、撮影部位/視点位置設定ルール対応表記憶45は、撮影部位と、その撮影部位におけるPVR対象領域が解剖学上の末端器官を含むか否かとの対応を表す対応表を記憶する。解剖学上の器官とは、口腔、鼻腔、肛門等の器官である。さらに、撮影部位/視点位置設定ルール対応表記憶45は、撮影部位と視線方向の向きとの対応を示す対応表を記憶する。
【0030】
視点位置設定部47は、Z方向の視点位置設定機能、XY方向の視点位置設定機能及び判定機能を有する。
【0031】
Z方向の視点位置設定機能により視点位置設定部47は、撮影部位を示すコードから視点位置を初期的にPVR対象領域のZ方向に対する上端部又は下端部に設定する。
【0032】
XY方向の視点位置設定機能により視点位置設定部47は、設定した視点位置を含むXY断面におけるPVR対象領域の略中央に視点位置を移動させる。
【0033】
判定機能により視点位置設定部47は、撮影部位を示すコードからPVR対象領域が解剖学上の末端器官を含むか否かを判定する。
【0034】
視線方向設定部49は、撮影部位に応じた向きにPVR画像における視線方向をPVR対象領域に設定する。
【0035】
画像発生部(投影処理部)51は、設定された視点位置及び視線方向に基づいて3次元画像データを透視ボリュームデータレンダリング(PVR)等の投影処理をすることにより仮想内視鏡表示用の投影画像(PVR画像)を発生する。また、画像発生部51は、利用者により操作部29を介して視点位置が変更される度に、変更された視点位置及び視線方向に基づいて3次元画像データからPVR画像を発生する。
【0036】
以下、本実施形態における1動作例について図3を参照しながら説明する。
【0037】
なお、図3の動作例は、再構成部23によって再構成された3次元画像データが撮影部位情報と関連付けて画像データ記憶部41に記憶されているところから始まる。
【0038】
ステップS1において、3次元画像データは、空気領域抽出部43によってしきい値処理される。その結果、体内外の空気領域のボクセルに“1”をそれ以外の領域のボクセルに“0”を割り付けたデータ(セグメントデータD1)が空気領域抽出部43よって発生される。
【0039】
図4は、ステップS1の処理を説明するための図である。図4(a)はセグメントデータD1を示す図であり、図4(b)は3次元画像データのCT値ヒストグラムの一例を示す。図4(b)に示すように、3次元画像データには、体内外の空気領域や体内組織の領域が含まれている。空気領域のCT値と体内の組織のCT値とは異なる。一例として体内外の空気領域と体内組織とのしきい値を−800とする。空気領域を抽出するために、空気領域抽出部43は、しきい値を−800としたしきい値処理を3次元画像データに対して行う。その結果、図4(a)に示すようなセグメントデータD1が空気領域抽出部43によって発生される。
【0040】
ステップS2において、セグメントデータD1から体外の空気領域が空気領域抽出部43によって特定される。その結果、体内の空気領域のボクセルに“1”をそれ以外の領域に“0”のボクセルを割り付けたデータ(セグメントデータD2)が空気領域抽出部43によって発生される。
【0041】
図5及び図6を参照しながらステップS2の処理を説明する。図5は、セグメントデータD1のXY平面を示す図である。図5に示すように、セグメントデータD1中の再構成領域は、体内の空気領域IE、体内組織の領域IT、体外の空気領域OE1及び体外の空気領域OE2を含む。体外の空気領域OE1と体外の空気領域OE2との間には、寝台13の天板によって境が生じている。そのため体外の空気領域OE1と体外の空気領域OE2とは、分離している。
【0042】
図5に示すように、体内の空気領域IEと体外の空気領域OE1とは体内組織の領域ITにより分離されている。つまり、被検体の前面(A)、背面(P)、左(L)及び右(R)の何れの方向においても、体外の空気領域OE1及び体外の空気領域OE2は体内の空気領域IEの外側にある。
【0043】
図5に示すように、空気領域抽出部43によって、典型的には、再構成領域の縁における所定の4箇所(具体的には、X座標の最大値、X座標の最小値、Y座標の最大値及びY座標の最小値の4箇所)の“1”を割り付けられたボクセル(体外の空気領域)に、連結探索処理の起点としての4つのシード点Sが設定される。そして空気領域抽出部43は、設定した4つのシード点に連結するボクセルを次々に統合する。この統合処理は統合されるべきボクセルがなくなるまで繰り返される。統合されたボクセルがなす領域を統合領域と呼ぶことにする。
【0044】
空気領域抽出部43は、最終的な統合領域(体外の空気領域OE1及び体外の空気領域OE2)のボクセルを0値化する。つまり空気領域抽出部43により、図6に示すような、体内の空気領域IEのボクセルに“1”を、それ以外の領域に“0”を割り付けたデータ(セグメントデータD2)が発生される。説明の簡単のため図6に示す体内の空気領域IEは1つの領域にまとまっているが、セグメントデータD2中には複数の体内の空気領域が含まれている。
【0045】
なお、シード点Sの数は幾つでもよい。図5の場合、空気領域抽出部43は、シード点Sを前面(A)、左(L)或いは右(R)の何れか1箇所と背面(P)との2箇所に設定すれば十分である。しかし、体外の空気領域の分布に応じた箇所に4つのシード点Sを設定することで、視点位置設定部43は、体外の空気領域が2つ、3つ或いは4つに分離している場合にも、体外の空気領域を抽出できる。
【0046】
ステップS3において、PVR対象領域特定部44によって、抽出された複数の体内の空気領域の内から、最大体積を有する体内の空気領域がPVR対象領域として特定される。
【0047】
ステップS4において、視点位置設定部47は、撮影部位に応じたルールのもとで決定したPVR対象領域上の特定位置にPVR画像における視点位置を設定する(視点位置設定ルーチン)。以下、ステップS4における視点位置設定ルーチンの1動作例を図7を参照しながら説明する。
【0048】
視点位置設定ルーチンのステップSA1〜ステップSA3は、視点位置のZ座標を決定するための処理である。
【0049】
ステップS4が終了するとステップSA1が開始される。ステップSA1において視点位置は、撮影部位に応じたルール(視点位置設定のためのルール)のもとで、PVR対象領域上のZ方向の上端部(Z座標の最大値)又は下端部(Z座標の最小値)の一点に、視点位置設定部43によって、初期的に設定される。より具体的には、撮影部位に応じたルール(視点位置設定のためのルール)のもとで、視点位置設定部47は、セグメントデータD2をZ座標の最大値又はZ座標の最小値におけるXY平面から探索してPVR対象領域のボクセル(“1”を割り付けられたボクセル)を特定する。そして、初めに特定された1ボクセルに視点位置は視点位置設定部47によって初期的に設定される。
【0050】
以下に、撮影部位と視点位置設定のためのルールとの対応を具体例として挙げる。
・胸部(肺野) :PVR対象領域上におけるZ座標の最大値
・下腹部(大腸) :PVR対象領域上におけるZ座標の最小値
ステップSA2において、PVR対象領域が解剖学上の末端器官を含むか否かが、視点位置設定部47によって撮影部位に応じて判定される。以下に、撮影部位とその撮影部位におけるPVR対象領域が解剖学上の末端器官を含むか否かとの対応を具体例として挙げる。
・胸部(肺野) :PVR対象領域は解剖学上の末端器官(この場合、口腔及び鼻腔)を含まない
・下腹部(大腸) :PVR対象領域は解剖学上の末端器官(この場合、肛門)を含む
ステップSA2において含まないと判定した場合、視点位置設定部47は、ステップSA2からステップSA4へ進む。
【0051】
ステップSA2において含むと判定した場合、視点位置設定部47は、ステップSA2からステップSA3へ進む。ステップSA3においてステップSA1にて設定した視点位置は、視点位置設定部47によって、上端部又は下端部からZ軸のマイナス方向又はZ軸のプラス方向に、予め決められた所定のボクセル数だけ移動される。この移動処理は、視点位置をZ方向に関して器官内部に移動させるために行われる。視点位置の移動量は、例えば、撮影部位の形状や被検体の体型等によって決定される。ステップSA1にて視点位置をZ方向の上端部に設定した場合は、ステップSA3にて視点位置設定部47は、視点位置をZ軸のマイナス方向に移動させる。ステップSA1にて視点位置をZ方向の下端部に設定した場合は、ステップSA3にて視点位置設定部47は、視点位置をZ軸のプラス方向に移動させる。
【0052】
以下、撮影部位の具体例を2つ挙げ、ステップSA1〜ステップSA3の処理を具体的に説明する。1つ目は胸部(肺野)の例、2つ目は下腹部(大腸)の例である。
【0053】
図8は、撮影部位が胸部(肺野)の場合におけるステップSA1〜ステップSA3の処理を説明するための図である。肺野を仮想内視鏡表示する際は、気管内部から表示するのがよい。そのため、視点位置は、撮影部位と視点位置設定のためのルールとの対応から、PVR対象領域上のZ方向の上端部の1ボクセルに設定される。
【0054】
肺野の気管は、解剖学上の末端器官である口腔及び鼻腔等から伸びている。しかし、撮影部位が胸部の場合、再構成領域の大きさの制限のため、通常、口腔及び鼻腔は再構成領域には納まらない。つまり、PVR対象領域は末端の器官を含まない。従って、ステップSA2において、末端器官は、視点位置設定部47によって、撮影部位とPVR対象領域が解剖学上の末端器官を含むか否かとの対応から、PVR対象領域に含まれないと判定される。この判定により、視点位置設定部47は、ステップSA2からステップSA4へ進む。
【0055】
ステップSA3の処理が必要ない理由を簡単に説明する。上述したように、PVR対象領域上の気管部分は再構成領域に納まらない。そのため図8に示すように、気管部分は再構成領域のZ方向の上端部で途切れる。換言すれば、視点位置がZ方向の上端部に設定されれば、実質上、視点位置は器官内部に潜り込んでいることになる。従って、ステップSA3の処理は必要ない。
【0056】
図9は、撮影部位が下腹部(大腸)の場合におけるステップSA1〜ステップSA3の処理を説明するための図である。図9に示すように、大腸の末端は、解剖学上の末端器官である肛門に隣接している。そのため撮影部位が下腹部の場合、PVR対象領域上の大腸部分及び肛門部分は再構成領域に納まる。
【0057】
大腸を仮想内視鏡表示する際は、大腸の内部から表示するのがよい。そのための前処理として、ステップSA1において、視点位置は、視点位置設定部47によって、撮影部位と視点位置設定のためのルールとの対応から、初期的にPVR対象領域上のZ方向の下端部(Z座標の最小値)の1ボクセルに設定される。つまり、ステップSA1において視点位置は、肛門部分に設定される。
【0058】
上記の理由により、ステップSA2において、視点位置設定部4によって、撮影部位とPVR対象領域が末端器官を含むか否かとの対応から、末端器官がPVR対象領域に含まれると判定される。この判定により、視点位置設定部47は、ステップSA2からステップSA3へ進む。
【0059】
ステップSA3において視点位置は、視点位置設定部47によって、図9に示すように、予め決められたボクセル数だけZ軸のプラス方向に移動される。つまり、ステップSA3において視点位置は、大腸の内部に移動される。
【0060】
ステップSA1にて設定した又はステップSA3にて移動した視点位置は、XY平面に関してPVR対象領域の境界又はPVR対象領域の境界に近い位置である。そこで、ステップSA4〜ステップSA7における処理が行われる。ステップSA4〜ステップSA7は、XY平面に関して視点位置をPVR対象領域の内部へ移動させる、つまり、視点位置のXY座標を決定するための処理である。なお1動作例として、ステップSA4開始時において視点位置は、PVR対象領域の境界に近い位置にあるとする。つまり、ステップSA3を経由した場合の視点位置である。
【0061】
ステップSA4において視点位置設定部47は、ステップSA1にて設定した又はステップSA3に移動した視点位置を含むXY平面において、視点位置からX軸のプラス方向及びX軸のマイナス方向に沿うPVR対象領域の境界のX座標をそれぞれ特定する。
【0062】
図10は、ステップSA4における処理を説明するための図であり、ステップSA1にて設定した又はステップSA3に移動した視点位置を含むXY断面におけるPVR対象領域(最大体積の体内の空気領域)を示す図である。図10に示すように、ステップSA1にて設定した又はステップSA3にて移動させた視点位置Pは、PVR対象領域内の位置(XP、YP)にあるとする。視点位置設定部47は、視点位置PからX軸のプラス方向に沿うPVR対象領域の境界のX座標(X1)を特定する。また、視点位置設定部47は、視点位置PからX軸のマイナス方向に沿うPVR対象領域の境界のX座標(X2)を特定する。
【0063】
ステップSA5において視点位置設定部47は、ステップSA4にて特定したそれぞれのX座標に基づいて、それぞれのX座標の中点を算出する。そして視点位置は、視点位置設定部47によって、算出された中点に移動される。ステップSA6において視点位置設定部47は、ステップSA5にて移動させた視点位置を含むXY平面において、視点位置からY軸のプラス方向及びY軸のマイナス方向に沿うPVR対象領域の境界のY座標をそれぞれ特定する。
【0064】
図11は、ステップSA5及びステップSA6における処理を説明するための図であり、視点位置Pを含むXY断面におけるPVR対象領域を示す図である。視点位置設定部47は、ステップSA4にて特定したX1とX2とからX1とX2との中点のX座標(XP´)を算出する。そして視点位置Pは、視点位置設定部47によって中点の座標(XP´、YP)に移動される。次に視点位置設定部47は、移動させた視点位置PからY軸のプラス方向に沿うPVR対象領域の境界のY座標(Y1)及びY軸のマイナス方向に沿うPVR対象領域の境界のY座標(Y2)を特定する。
【0065】
ステップSA7において視点位置設定部47は、ステップSA6にて特定したそれぞれのY座標から、それぞれのY座標の中点を算出する。そして視点位置は、視点位置設定部47によって、算出された中点に視点位置を移動される。
【0066】
図12は、ステップSA7における処理を説明するための図であり、ステップSA5にて移動された視点位置Pを含むXY断面におけるPVR対象領域を示す図である。視点位置設定部47は、ステップSA6にて特定したY1とY2とからY1とY2との中点のY座標(YP´)を算出する。次に視点位置Pは、視点位置設定部47によって、中点の座標(XP´、YP´)に移動される。
【0067】
なお、ステップSA4開始時において視点位置が器官の内壁にある場合も、ステップSA4〜ステップSA7と同様の処理が適用可能である。
【0068】
ステップSA8において視点位置設定部47は、ステップSA4〜ステップSA7の処理を繰り返すか否かを判定する。繰り返すか否かの条件は、予め定められており、通常はステップSA4〜ステップSA7の処理を繰り返す必要はない。それは、視点位置は、体内の空気領域の境界付近よりも内側に存在すれば良く、厳密に中心である必要はないからである。ただし、必要に応じて何回か繰り返しても良い。
【0069】
ステップSA8において繰り返すと判定した場合、視点位置設定部47は、ステップSA4へ進み、ステップSA8にて繰り返さないと判定するまでステップSA4〜ステップSA7の処理を繰り返す。
【0070】
ステップSA8において繰り返さないと判定した場合、視点位置設定部47は、ステップSA7にて移動させた視点位置を画像発生部51に設定し、視点位置設定ルーチンを終了する。視点位置設定ルーチンが終了すると、図3のステップS5が開始される。
【0071】
ステップS5において視線方向設定部49は、撮影部位に応じた向きに視線方向をPVR対象領域に設定する。以下に、撮影部位と視線方向の向きとの対応を具体例として挙げる。
【0072】
・胸部(肺野) :Z軸のマイナス方向
・下腹部(大腸) :Z軸のプラス方向
図13は、ステップS6の処理を説明するための図である。図13に示すように、実線の矢印はZ軸のプラス方向(上向き)の視線方向であり、破線の矢印はZ軸のマイナス方向(下向き)の視線方向である。視点位置がPVR対象領域のZ方向の上端部に設定された場合、視線方向は下向きに設定されるべきである。また、視点位置がPVR対象領域のZ方向の下端部に設定された場合、視線方向は上向きに設定されるべきである。従って視線方向設定部49は、撮影部位と視線方向の向きとの対応から、撮影部位に応じた視線方向(Z軸のプラス方向又はZ軸のマイナス方向)を決定し、決定した視線方向を画像発生部51に設定する。
【0073】
ステップS6において画像発生部51は、ステップS4にて設定された視点位置とステップS5にて設定された視線方向とに基づいて、3次元画像データから1枚目のPVR画像データを発生する。ステップS6におけるPVR画像の発生処理は、既存の方法によって行なわれる。従って、PVR画像の発生処理の説明は省略する。
【0074】
ステップS7において、ステップS6にて発生された1枚目のPVR画像が表示部27によって表示される。
【0075】
図14は、1枚目のPVR画像の一例を示す図である。図14に示すように、1枚目のPVR画像は、視点位置が器官内に設定された画像である。つまり、利用者による手動操作を必要とせずに視点位置が器官内部に設定された1枚目のPVR画像が表示される。
【0076】
ステップS8において操作部29は、操作者による操作部29を介した視点移動操作が行なわれるまで待機する。操作者により視点移動操作が行なわれると、ステップS9が行なわれる。
【0077】
ステップS9において画像発生部51は、ステップS8にて行なわれた視点移動操作の移動操作量に基づいて次の視点位置を算出する。
【0078】
ステップS10において画像発生部51は、ステップS9にて算出した次の視点位置とステップS5にて設定された視線方向とに基づいて3次元画像データから次のPVR画像データを発生する。
【0079】
ステップS11において、ステップS10にて発生された次のPVR画像が、表示部27によって表示される。
【0080】
ステップS12において操作部29は、操作者により仮想内視鏡表示の終了ボタンが押されたか否かを確認する。終了ボタンが押されなければステップS8へ進む。終了ボタンが押されると仮想内視鏡表示が終了する。
【0081】
なお、上記の視点位置設定ルーチンとは別の視点位置設定ルーチンとして以下のようなものある。まず初めに視点位置設定部47は、撮影部位と視点位置設定のためのルールとの対応から、PVR対象領域上のZ軸の最大値又はZ軸の最小値におけるXY平面に含まれるPVR対象領域の重心を算出する。そして視点位置設定部47は、算出した重心に視点位置を設定する。次に視点位置設定部47は、PVR対象領域は解剖学上の末端器官を含むか否かを判定する。視点位置設定部47が含まないと判定した場合、別の視点位置設定ルーチンは終了し、ステップS5が開始される。PVR対象領域は解剖学上の末端器官を含むと判定した場合、視点位置設定部47は、予め決められたボクセル数だけZ方向のプラス方向又はマイナス方向に視点位置を移動させる。この移動処理が終了するとステップS5が開始される。ステップS5以降の処理は、視点位置設定ルーチンを行なった場合と別の視点位置設定ルーチンを行なった場合とに変わりはない。
【0082】
また、上記実施形態においては、撮影部位として胸部(肺野)と下腹部(大腸)との2つのみ説明した。しかしながら、これに拘泥されず、例えば撮影部位として胸部(食道)や下腹部(小腸)の場合にも本実施形態は適用可能である。この場合、撮影部位と視点位置設定ルールとの対応は、一例として、
・胸部(食道) :PVR対象領域上のZ軸の最大値
・下腹部(小腸) :PVR対象領域上のZ軸の最小値
となる。また、撮影部位と視線方向の向きとの対応は、1例として、
・胸部(食道) :Z軸のマイナス方向
・下腹部(小腸) :Z軸のプラス方向
となる。
【0083】
かくして本実施形態によれば、視点位置の初期設定の作業負担を軽減することが可能となる。
【0084】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施形態におけるX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図。
【図2】本実施形態に係わる人体座標系(DICOM座標系)を示す図。
【図3】本実施形態における1動作例を示す図。
【図4】図3のステップS1の処理を説明するための図。
【図5】図3のステップS2の処理を説明するための図。
【図6】図3のステップS2の処理を説明する図5とは異なる図。
【図7】本実施形態における視点位置設定ルーチンの1動作例を示す図。
【図8】図7のステップSA1〜ステップSA3において、撮影部位が胸部(肺野)の場合における処理を説明するための図。
【図9】図7のステップSA1〜ステップSA3において、撮影部位が下腹部(大腸)の場合における処理を説明するための図。
【図10】図7のステップSA4における処理を説明するための図。
【図11】図7のステップSA5及びステップSA6における処理を説明するための図。
【図12】図7のステップSA7における処理を説明するための図。
【図13】図2のステップS5の処理を説明するための図。
【図14】図2のステップS7で表示される1枚目のPVR画像を示す図。
【符号の説明】
【0086】
1…X線コンピュータ断層撮影装置、10…スキャン装置、20…コンピュータ装置、21…前処理部、23…再構成部、25…3次元画像データ記憶部、27…表示部、29…操作部、31…スキャン制御部、33…システム制御部、40…医用画像処理装置、41…画像データ記憶部、43…空気領域抽出部、44…PVR対象領域特定部、45…撮影部位/視点位置設定ルール対応表記憶部、47…視点位置設定部、49…視線方向設定部、51…画像発生部(投影処理部)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に関する3次元画像データと撮影部位のデータとを記憶する画像データ記憶部と、
前記3次元画像データから体内の空気領域を抽出する空気領域抽出部と、
前記撮影部位に応じた前記抽出した空気領域内の特定位置に視点位置を設定する視点位置設定部と、
前記設定した視点位置に基づいて前記3次元画像データから投影画像のデータを発生する画像発生部と、
を具備する医用画像処理装置。
【請求項2】
前記抽出した空気領域の前記特定位置は、前記撮影部位の解剖学的な特徴に応じて決定されることを特徴とする請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記撮影部位に応じた向きに視線方向を設定する視線方向設定部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記投影画像を表示する表示部をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
被検体に関する3次元画像データを再構成する再構成部と、
前記3次元画像データと前記被検体に関する撮影部位のデータとを記憶する画像データ記憶部と、
前記3次元画像データから体内の空気領域を抽出する空気領域抽出部と、
前記撮影部位に応じた前記抽出した空気領域内の特定位置に視点位置を設定する視点位置設定部と、
前記設定した視点位置に基づいて前記3次元画像データから投影画像のデータを発生する画像発生部と、
を具備することを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項1】
被検体に関する3次元画像データと撮影部位のデータとを記憶する画像データ記憶部と、
前記3次元画像データから体内の空気領域を抽出する空気領域抽出部と、
前記撮影部位に応じた前記抽出した空気領域内の特定位置に視点位置を設定する視点位置設定部と、
前記設定した視点位置に基づいて前記3次元画像データから投影画像のデータを発生する画像発生部と、
を具備する医用画像処理装置。
【請求項2】
前記抽出した空気領域の前記特定位置は、前記撮影部位の解剖学的な特徴に応じて決定されることを特徴とする請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記撮影部位に応じた向きに視線方向を設定する視線方向設定部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記投影画像を表示する表示部をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
被検体に関する3次元画像データを再構成する再構成部と、
前記3次元画像データと前記被検体に関する撮影部位のデータとを記憶する画像データ記憶部と、
前記3次元画像データから体内の空気領域を抽出する空気領域抽出部と、
前記撮影部位に応じた前記抽出した空気領域内の特定位置に視点位置を設定する視点位置設定部と、
前記設定した視点位置に基づいて前記3次元画像データから投影画像のデータを発生する画像発生部と、
を具備することを特徴とする医用画像診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−220416(P2008−220416A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58900(P2007−58900)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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