説明

医用画像撮影装置、医用画像処理装置および医用画像処理プログラム

【課題】結節が良性であるか悪性であるかを判定するために有用な情報を画像から抽出すること。
【解決手段】肺結節膨張部204が肺結節を膨張し、スケルトン化部205が棒状伸展構造をスケルトン化し、CP特定部206が肺結節の膨張境界DBと棒状伸展構造のスケルトンとの交点CPを特定する。そして、SP特定部207およびEP特定部208がCPを起点として棒状伸展構造のスケルトンを探索することによって棒状伸展構造の開始点SPおよび終了点EPをそれぞれ特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医用画像撮影装置で撮影された結節が良性であるか悪性であるかの診断を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、がんによる死亡のうち肺がんによる死亡は男性では最も多く、女性では2番目である。1999年の数字では、死亡原因が肺がんである率は男性では21.6%であり、女性では15.6%である。喫煙は肺がんの最大の原因であるが、他にも遺伝子要因、間接喫煙、ラドンガス、大気汚染、アスベストなどが肺がんの原因となる。
【0003】
孤立性肺結節(SPN:solitary pulmonary nodule)は胸部X線撮影により発見される典型的な異常であり、30〜40%が悪性である。専門家が悪性と良性の病変を見分ける能力は、3次元画像上で悪性と良性を見分ける能力に大きく依存する。一般的に、大きな結節、不規則な縁(突起、胸膜引き込み、亀裂など)、栄養血管の存在は悪性の結節を示唆している。一方、スムースな縁、均一な密度、石灰化などは良性の結節を示唆している。
【0004】
肺がんの兆候が見られる患者に対して最初に行われることは胸部X線撮影である。胸部X線撮影で疑わしい箇所が見つからない場合には、肺がんによる異常か結核や肺炎による異常かを見分けるためにより詳細な検査が行われる。X線を使った検査では、できるだけ正確に悪性の病変を特定する必要がある。
【0005】
詳細な検査は通常マルチスライスCT(MSCT)により行われる。マルチスライスCTにより、肺がんの研究は飛躍的に進歩をとげた。現在では、MSCTにより、1回の呼吸停止中に1mm未満の精度で完全な胸部画像を得ることができる。MSCTは、撮影時間、感度、肺組織と空気のコントラストに優れるなどの理由から肺の撮影に適している。
【0006】
肺がんの発見には胸部X線撮影よりMSCTが優れていることが現在では広く認識されている。肺結節に異常の可能性があると判断された場合には、肺結節の形状、大きさ、体積、大きさが2倍になるまでの時間などの特徴や患者の病歴を考慮して良性か悪性かの判断が行われ、治療計画が作成される。
【0007】
肺結節が良性か悪性かの診断は胸部X線画像やMSCT画像などを見て判断されることから、判断を支援するためにMIP(maximum intensity projection)、MPR(multiplanar reformation)、VR(volume rendering)などの処理が行われた画像が肺結節の観察に用いられる。すなわち、結節の3次元形態や周辺状況の理解を助ける目的で、複数の方向に沿ったMIP画像のシネ表示や、アキシャル、コロナル、サジタル方向および他の任意の方向のMPR画像の表示が行われている(例えば、特許文献1を参照。)。また、MPR画像やVR画像を組み合わせて表示することも行われている。
【0008】
また、近年、肺結節が良性か悪性かの分類を支援するCADシステムも開発されている。しかし、CADシステムは良性の肺結節を悪性の肺結節と分類してしまうことが多いため、その役割は限定されたものとなっており、最終的には専門家の判断に頼る必要がある。
【0009】
【特許文献1】特開平10−124649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
MSCTには、多数の画像を専門家が注意深く検査する必要があり、専門家の負担が大きいという課題がある。また、画像の解像度やCADシステムの性能向上にともない、良性と判明するまでにフォローを必要とする結節が多数検出されるようになってきており、専門家の負担を大きくしている。例えば、検出された結節の大きさが2年間一定であれば、その結節は良性であると考えられる。
【0011】
また、多数の画像を検査する必要があるため、結節を見逃してしまう可能性が高くなるという課題もある。明確に良性か悪性かの分類ができないような結節については、フォローによりコストが増大するという課題がある。患者にとっても、繰り返し行われる検査や診断までに長期間を要することが負担となっている。
【0012】
この発明は、上述した従来技術による課題を解消するためになされたものであり、肺結節から伸びる棒状伸展構造(elongation)の数、位置など肺結節の解析に役立つ情報を自動的に収集し、もって診断の精度および効率を向上することができる医用画像撮影装置、医用画像処理装置および医用画像処理プログラムを提供することを目的とする。なお、棒状伸展構造とは、結節表面から伸びる血管、突起(spicula)、胸膜引き込み(pleural indentation)のことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、被検体を撮影した画像から結節および棒状伸展構造を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された結節を膨張して得られる膨張境界を特定する膨張境界特定手段と、前記膨張境界特定手段により特定された膨張境界と前記抽出手段により抽出された棒状伸展構造とが交差する交差領域を特定する交差領域特定手段と、前記交差領域特定手段により特定された交差領域から結節表面方向の棒状伸展構造を探索して該棒状伸展構造の結節上での開始位置を特定する開始位置特定手段と、前記開始位置特定手段により特定された開始位置に関する情報を出力する特定情報出力手段とを備えたことを特徴とする医用画像撮影装置である。
【0014】
また、請求項6記載の本発明は、被検体から収集された画像データから結節および棒状伸展構造を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された結節を膨張して得られる膨張境界を特定する膨張境界特定手段と、前記膨張境界特定手段により特定された膨張境界と前記抽出手段により抽出された棒状伸展構造とが交差する交差領域を特定する交差領域特定手段と、前記交差領域特定手段により特定された交差領域から結節表面方向の棒状伸展構造を探索して該棒状伸展構造の結節上での開始位置を特定する開始位置特定手段と、前記開始位置特定手段により特定された開始位置に関する情報を出力する特定情報出力手段とを備えたことを特徴とする医用画像処理装置である。
【0015】
また、請求項7記載の本発明は、被検体から収集された画像データから結節および棒状伸展構造を抽出する抽出手順と、前記抽出手順により抽出された結節を膨張して得られる膨張境界を特定する膨張境界特定手順と、前記膨張境界特定手順により特定された膨張境界と前記抽出手順により抽出された棒状伸展構造とが交差する交差領域を特定する交差領域特定手順と、前記交差領域特定手順により特定された交差領域から結節表面方向の棒状伸展構造を探索して該棒状伸展構造の結節上での開始位置を特定する開始位置特定手順と、前記開始位置特定手順により特定された開始位置に関する情報を出力する特定情報出力手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする医用画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、6または7記載の本発明によれば、結節の診断の精度および効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る医用画像撮影装置、医用画像処理装置および医用画像処理プログラムの好適な実施例を詳細に説明する。なお、本実施例では、本発明をX線CT装置に適用した場合を中心に説明する。
【実施例】
【0018】
まず、本実施例に係るX線CT装置による棒状伸展構造特徴抽出方法の概略を説明する。図1は、本実施例に係るX線CT装置による棒状伸展構造特徴抽出方法の概略を説明するための説明図である。
【0019】
図1(a)に示すように、肺結節の表面にはブラシ状の突起が存在するとともに、肺結節表面の周辺においては血管構成が複雑である。したがって、肺結節上での棒状伸展構造(血管)の開始点を特定することが非常に困難となっている。
【0020】
そこで、本実施例に係るX線CT装置は、図1(b)に示すように、まず肺結節を所定の長さ膨張し、膨張した肺結節の境界と棒状伸展構造との交点CP(crossing point)を特定する。
【0021】
そして、図1(c)に示すように、CPを起点として肺結節表面方向に棒状伸展構造を探索することによって、棒状伸展構造の肺結節上での開始点SP(starting point)を特定する。同様に、CPを起点として肺結節表面と反対方向に棒状伸展構造を探索することによって、棒状伸展構造の終了点EP(ending point)を特定する。
【0022】
このように、本実施例に係るX線CT装置は、肺結節を膨張してCPを特定し、CPを起点として肺結節表面方向に棒状伸展構造を探索することによって、ブラシ状突起が存在し、周辺の血管構成が複雑な肺結節表面上の開始点SPを特定することができる。
【0023】
次に、本実施例に係るX線CT装置の構成について説明する。図2は、本実施例に係るX線CT装置の構成を示す機能ブロック図である。ガントリ100は、X線管101と、例えば64列または256列といったいわゆる多検出列型のX線検出器103とを有する。X線管101とX線検出器103は、回転軸RAまわりに回転可能に支持された円環状のフレーム102に搭載される。X線検出器103は、X線管101に対向する。フレーム102は、回転部107の駆動により例えば0.4秒/回転の高速で回転される。高電圧発生装置109からスリップリング108を経由してX線管101に管電圧が印加され、フィラメント電流が供給される。それによりX線管101からX線が発生される。X線検出器103は、被検体を透過したX線を検出する。
【0024】
一般的にDAS(Data Acquisition System)と呼ばれているデータ収集回路104は、X線検出器103からチャネルごとに出力される信号を電圧信号に変換し、増幅し、さらにディジタル信号に変換する。このデータ(生データ)は非接触データ伝送装置105を経由してガントリ100の外部のコンソール内に収容された前処理装置106に送られ、そこで感度補正等の補正処理を受け、再構成処理の直前段階にあるいわゆる投影データとして記憶装置112に記憶される。
【0025】
記憶装置112は、再構成処理を行う再構成装置114、利用者が指示などの入力に用いる入力装置115、画像等を表示する表示装置116、画像処理を行う画像処理装置200とともに、装置全体を制御するシステムコントローラ110にデータ/制御バス111を介して接続される。
【0026】
画像処理装置200は、再構成装置114により再構成されたデータを用いて肺結節の3次元画像などを表示装置116に表示する装置であり、肺結節データ抽出部201と、肺結節データ記憶部202と、ボクセル分類部203と、肺結節膨張部204と、スケルトン化部205と、CP特定部206と、SP特定部207と、EP特定部208と、特徴抽出部209と、出力部210と、制御部211とを有する。
【0027】
肺結節データ抽出部201は、再構成装置114によって生成された再構成データから肺結節を抽出し、肺結節の中心、肺結節を包含する楕円体の座標軸、肺領域と他の領域を区別するための肺マスクなどの情報を抽出する処理部である。また、この肺結節データ抽出部201は、抽出した情報に基づいて、肺結節を中心とする所定の大きさ(例えば60cm3)のROI(region of interest)を設定する。棒状伸展構造の探索などの処理は、肺結節データ抽出部201が設定したROI内のボリュームデータに対して行われる。
【0028】
肺結節データ記憶部202は、肺結節データ抽出部201により抽出された情報を記憶する記憶部である。また、この肺結節データ記憶部202は、肺結節データ抽出部201が設定したROI内のボリュームデータを記憶する。
【0029】
ボクセル分類部203は、肺結節データ記憶部202が記憶するボリュームデータを肺結節、棒状伸展構造、胸膜、肺実質に分類し、分類結果を肺結節データ記憶部202に書き込む。肺結節および棒状伸展構造のCT値は肺実質と比較して大きい。したがって、肺結節および棒状伸展構造と肺実質との分類はCT値を用いて行うことができる。
【0030】
具体的には、肺結節の中心からCT値を類似度として領域拡張処理を行うことによって肺結節および棒状伸展構造を連結した領域を抽出することができる。なお、肋骨など他のCT値が大きい領域については、肺マスクを用いて取り除くことができる。また、胸膜は肺マスクを用いて抽出することができる。
【0031】
そして、ボクセル分類部203は、肺結節データ抽出部201により抽出された肺結節を用いて肺結節と棒状伸展構造を分類することができる。なお、肺結節はソリッド領域とGGO(Ground Glass Opacity)領域(擦りガラス上の半透明の画像領域)とから構成されるが、ここでは両者を合わせて肺結節とする。
【0032】
肺結節膨張部204は、肺結節を所定の大きさ(例えば3〜5cm)膨張し、肺結節を囲う1ピクセルの厚さの膨張境界DB(Dilated Border)を特定する処理部である。なお、肺結節の膨張処理は、数学的な膨張の形態演算やChamfer距離を用いて行うことができる。また、膨張した肺結節と肺実質とのCT値の違いを用いて膨張境界DBを特定することができる。
【0033】
スケルトン化部205は、隣接する6ボクセルでの連続を保証し、トポロジを保ちながら棒状伸展構造を細線化することによって棒状伸展構造をスケルトン化する処理部であり、肺結節と少なくとも1点で接触する棒状伸展構造のスケルトンを生成する。
【0034】
CP特定部206は、肺結節の膨張境界DBと棒状伸展構造のスケルトンとの交点CPを特定する処理部である。なお、肺結節の膨張境界DBと交差するスケルトンが複数ある場合には、CP特定部206は、複数の交点CPを特定する。
【0035】
SP特定部207は、棒状伸展構造のスケルトンの肺結節上での開始点SPを特定する処理部である。図3は、SP特定部207による開始点SPの特定方法を説明するための説明図である。SP特定部207は、図3(a)に示すように、CPを起点として肺結節表面方向に棒状伸展構造のスケルトンを探索してスケルトンに対応するn分木を構築する。なお、ノードから次のノードへの探索は、隣接する26ボクセルに対して行い、肺結節表面に隣接するボクセルまたは胸膜に到達するか、あるいは、探索するボクセルがなくなるまで行う。
【0036】
n分木は棒状伸展構造を表すのに適しているが、多数の分岐がある血管などに対しては取り扱いが複雑になる。そこで、SP特定部207は、n分木を図3(b)に示すような2分木に変換する。ここで、2分木とは、各ノードにおける分岐数が最大2の木である。2分木に対しては様々な探索方法や情報抽出方法があり、n分木と比較して2分木は取り扱いが容易になる。
【0037】
そして、SP特定部207は、CPを起点として肺結節表面に隣接するボクセルで終了する2分木上の全てのパスを探索し、各パスの長さを記録する。そして、SP特定部207は、長さが最短のパスを特定し、最短パスが接する肺結節表面上の点を棒状伸展構造の開始点SPとする。肺結節周辺で複雑な分岐がある血管の場合、最短パスはCPから肺結節への最も直線的なパスとなる。図3(c)では、「1→3」が最短パスとして特定される。
【0038】
このように、このSP特定部207が、CPを起点として肺結節表面に到達する最短パスを特定することによって、棒状伸展構造の開始点SPを特定することができる。
【0039】
EP特定部208は、棒状伸展構造のスケルトンの終了点EPを特定する処理部である。図4は、EP特定部208による終了点EPの特定方法を説明するための説明図である。EP特定部208は、図4(a)に示すように、CPを起点として肺結節表面と反対方向すなわちROIの境界領域方向に棒状伸展構造のスケルトンを探索してスケルトンに対応するn分木を構築する。
【0040】
そして、EP特定部208は、n分木を図4(b)に示すような2分木に変換し、2分木を探索することによって棒状伸展構造の終了点EPを特定する。ここで、終了点EPとしては、
・最長パスの端点
・最も直線的なパスの端点
・CPから予め定めた距離にある点
・胸膜引き込みPI(pleural indentation:胸膜とスケルトンの交点)
などの種類の中からユーザによって指定されたものを選択する。
【0041】
なお、最も直線的なパスは、各分岐ノードで分岐に沿ったベクトルと既に特定した肺結節方向の分岐に沿ったベクトルとがなす角が最大である分岐を選択することによって特定される。また、2つの分岐が同じ角度である場合には、例えば、血管(棒状伸展構造)の内腔径が最大である分岐を選択する。図4(c)に、血管内腔径の情報を2分木に付加した例を示す。
【0042】
図4(d)は、最長パスの端点を終了点EPとした場合を示し、図4(e)は、CPから予め定めた距離にある点を終了点EPとした場合を示し、図4(f)は、胸膜引き込みPIを終了点EPとした場合を示す。
【0043】
特徴抽出部209は、棒状伸展構造の他の特徴を抽出する処理部である。抽出する特徴としては、SPまたはCPにおける接平面、棒状伸展構造の肺結節への侵入角度、接平面からSPまたはEPへの方向ベクトル、SPからEPまでのスケルトンを定義するスケルトン定義点などがある。
【0044】
図5は、棒状伸展構造の肺結節への侵入角度の算出方法を示す図である。図5(a)に示すようなSPが肺結節表面上にある場合、特徴抽出部209は、肺結節表面を滑らかにし(b)、SPでの接平面を特定する(c)。そして、特徴抽出部209は、接平面と棒状伸展構造がなす角を侵入角度として算出する(d)。なお、方向ベクトル、スケルトン定義点については、図10に示す。
【0045】
図2に戻って、出力部210は、CP、SP、EP、棒状伸展構造の数、接平面、侵入角度、方向ベクトル、スケルトン定義点などの特徴に関する情報をファイルに出力する処理部である。この出力部210の出力は、肺結節が良性か悪性かを判定するCADシステムや様々な視覚化システムへの入力として利用される。なお、視覚化システムとは、医師が肺結節や棒状伸展構造を詳細に観察する場合に利用する画像表示システムである。
【0046】
制御部211は、画像処理装置200全体の制御を行う処理部であり、具体的には、機能部間の制御の移動や機能部と記憶部の間のデータの受け渡しなどを行うことによって、画像処理装置200を一つの装置として機能させる。
【0047】
次に、画像処理装置200による棒状伸展構造特徴抽出処理の処理手順を図6および図7を用いて説明する。図6は、画像処理装置200による棒状伸展構造特徴抽出処理の処理手順を示すフローチャートであり、図7は、各処理ステップに対応する画像箇所を示す図である。
【0048】
図6に示すように、この棒状伸展構造特徴抽出処理では、画像処理装置200は、肺結節データ抽出部201が、再構成データを用いて肺結節を特定し、特定した肺結節に基づいてROIを設定する(ステップS1)。そして、肺結節データ抽出部201は、肺結節に関するデータ、肺マスクのデータ、ROIの設定データ、ROI内のボリュームデータなどを肺結節データ記憶部202に格納する。
【0049】
そして、ボクセル分類部203が、肺結節データ記憶部202に記憶されたデータを用いてROI内の各ボクセルを肺結節と、棒状伸展構造と、胸膜と、肺実質とに分類する(ステップS2)。
【0050】
そして、肺結節膨張部204が、肺結節を膨張し、膨張境界DBを特定する(ステップS3)。そして、スケルトン化部205が、棒状伸展構造をスケルトン化する(ステップS4)。なお、膨張境界DBの特定を棒状伸展構造のスケルトン化の後に行うこともできる。
【0051】
そして、CP特定部206が膨張境界DBと棒状伸展構造のスケルトンとの交点CPを特定し(ステップS5)、各CPを起点として、SP特定部207が開始点SPを特定し(ステップS6)、EP特定部208が終了点EPを特定する(ステップS7)。
【0052】
そして、特徴抽出部209が、接平面、侵入角度などの他の特徴を抽出し(ステップS8)、出力部210が、CP、SP、EPおよび他の特徴に関する情報をファイルに出力する(ステップS9)。
【0053】
このように、肺結節を膨張してCPを特定し、特定したCPを起点として開始点SPを特定することによって、肺結節上の棒状伸展構造の開始点を容易に特定することができる。
【0054】
次に、SP特定部207によるSP特定処理の処理手順について説明する。図8は、SP特定部207によるSP特定処理の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、SP特定部207は、CPから肺結節表面方向のスケルトンに対応するn分木を構築し(ステップS61)、構築したn分木を2分木に変換する(ステップS62)。
【0055】
そして、2分木を探索してCPから肺結節表面までの最短パスを特定し(ステップS63)、最短パスが接する肺結節表面上の点を開始点SPとして特定する(ステップS64)。
【0056】
このように、n分木を2分木に変換し、2分木を探索してCPから肺結節表面までの最短パスを特定することによって、開始点SPを効率良く特定することができる。
【0057】
次に、EP特定部208によるEP特定処理の処理手順について説明する。図9は、EP特定部208によるEP特定処理の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、EP特定部208は、CPから肺結節表面と反対方向のスケルトンに対応するn分木を構築し(ステップS71)、構築したn分木を2分木に変換する(ステップS72)。
【0058】
そして、2分木を探索してユーザに指定された種類の終了点にいたるパスを特定し(ステップS73)、終了点EPを特定する(ステップS74)。
【0059】
このように、n分木を2分木に変換し、2分木を探索してユーザに指定された終了点にいたるパスを特定することによって、終了点EPを効率良く特定することができる。
【0060】
次に、画像処理装置200によって抽出された特徴の利用例について図10〜図13を用いて説明する。図10は、CADシステムおよび視覚化システムの入力となる特徴を示す図である。同図に示すように、SP、EP、CP、胸膜引き込み、接平面および侵入角度は、CADシステムの入力として利用される。また、SP、EP、方向ベクトル、スケルトン定義点は、視覚化システムの入力として利用される。あるいは、画像処理装置200によって抽出された特徴は、胸膜タグ解析などにも利用することができる。
【0061】
図11は、CADシステムの入出力例を示す図である。同図に示すように、CADシステムは、患者の病歴、時間変化データに加えて、棒状伸展構造に関するデータを含む形態データを入力し、肺結節が良性であるか悪性であるかを判定するとともに、判定結果に基づくアクション情報を出力する。
【0062】
図12(a)は、視覚化システムによるスラブMIP/MPR表示例を示す図である。同図に示す観察面は、SPからEPへの方向ベクトルによって決定される。また、デフォルトのスラブ厚は観察面から棒状伸展構造定義点(スケルトン定義点)までの距離の最大値であり、デフォルトの観察方向は観察面に垂直な方向である。ユーザは、観察中にスラブ厚や観察方向を変更することができる。
【0063】
図12(b)は、スラブMPR画像の絵画表示例を示す図である。肺結節および棒状伸展構造は周辺より高い輝度を有し白く表示される。また、SPからEPまでのパスセグメント、SP、EPなどを重ねて表示することもできる。
【0064】
図13は、視覚化システムによる肺結節および棒状伸展構造の表示例を示す図である。ユーザは表示対象を自由に回転したり拡大縮小することができる。また、ユーザは、MPR画像の表示、最適観察方向からの棒状伸展構造の表示、長さや種類など棒状伸展構造に関する情報の表示を行うことができる。
【0065】
上述してきたように、本実施例では、肺結節膨張部204が肺結節を膨張し、スケルトン化部205が棒状伸展構造をスケルトン化し、CP特定部206が肺結節の膨張境界DBと棒状伸展構造のスケルトンとの交点CPを特定する。そして、SP特定部207およびEP特定部208がCPを起点として棒状伸展構造のスケルトンを探索することによって棒状伸展構造の開始点SPおよび終了点EPをそれぞれ特定する。したがって、周辺に複雑な構成の血管が存在し、ブラシ状突起が存在する表面上に存在する肺結節に対しても容易に棒状伸展構造の開始点SPおよび終了点EPを特定することができる。
【0066】
また、本実施例では、ユーザが棒状伸展構造の終点の種類を指定し、EP特定部208が、ユーザによって指定された種類の終点を特定する。したがって、様々なCADシステムや視覚化システムが必要とする終了点EPの情報を画像データから抽出して出力することができる。
【0067】
このように、本実施例では、棒状伸展構造の開始点SPおよび終了点EPを特定し、開始点SPおよび終了点EPを含む棒状伸展構造の特徴を自動的に抽出することとしたので、肺がんの診断の精度および効率を向上させることができる。
【0068】
なお、本実施例では、X線CT装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばMRI装置など他の医療用画像撮影装置にも同様に適用することができる。
【0069】
また、本実施例では、X線CT装置が棒状伸展構造の特徴を抽出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、X線CT装置やMRI装置が収集した画像データを取得し、取得した画像データを処理して棒状伸展構造の特徴を抽出する医用画像処理装置、あるいはコンピュータを医用画像処理装置として機能させる医用画像処理プログラムにも同様に適用することができる。
【0070】
また、本実施例では、肺結節を診断する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の結節の診断にも同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明は、肺がんなどの診断支援装置として有用であり、特に、多くの患者を効率よく診断する必要がある場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施例に係るX線CT装置による棒状伸展構造特徴抽出方法の概略を説明するための説明図である。
【図2】本実施例に係るX線CT装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】SP特定部による開始点SPの特定方法を説明するための説明図である。
【図4】EP特定部による終了点EPの特定方法を説明するための説明図である。
【図5】棒状伸展構造の肺結節への侵入角度の算出方法を示す図である。
【図6】画像処理装置による棒状伸展構造特徴抽出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】各処理ステップに対応する画像箇所を示す図である。
【図8】SP特定部によるSP特定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】EP特定部によるEP特定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】CADシステムおよび視覚化システムの入力となる特徴を示す図である。
【図11】CADシステムの入出力例を示す図である。
【図12】視覚化システムによる表示例を示す図である。
【図13】視覚化システムによる肺結節および棒状伸展構造の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
100 ガントリ
101 X線管
102 フレーム
103 X線検出器
104 データ収集回路(DAS)
105 非接触データ伝送装置
106 前処理装置
107 回転部
108 スリップリング
109 高電圧発生装置
110 システムコントローラ
111 データ/制御バス
112 記憶装置
114 再構成装置
115 入力装置
116 表示装置
200 画像処理装置
201 肺結節データ抽出部
202 肺結節データ記憶部
203 ボクセル分類部
204 肺結節膨張部
205 スケルトン化部
206 CP特定部
207 SP特定部
208 EP特定部
209 特徴抽出部
210 出力部
211 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を撮影した画像から結節および棒状伸展構造を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された結節を膨張して得られる膨張境界を特定する膨張境界特定手段と、
前記膨張境界特定手段により特定された膨張境界と前記抽出手段により抽出された棒状伸展構造とが交差する交差領域を特定する交差領域特定手段と、
前記交差領域特定手段により特定された交差領域から結節表面方向の棒状伸展構造を探索して該棒状伸展構造の結節上での開始位置を特定する開始位置特定手段と、
前記開始位置特定手段により特定された開始位置に関する情報を出力する特定情報出力手段と
を備えたことを特徴とする医用画像撮影装置。
【請求項2】
前記開始位置特定手段は、
前記交差領域から結節表面方向の棒状伸展構造に対応するn分木を生成するn分木生成手段と、
前記n分木生成手段により生成されたn分木を2分木に変換する木構造変換手段と、
前記木構造変換手段により変換された2分木を探索して結節表面までの最短パスを特定する最短パス特定手段と、
前記最短パス特定手段により特定された最短パスに基づいて前記開始位置を特定する最短パス開始位置特定手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の医用画像撮影装置。
【請求項3】
前記抽出手段により抽出された棒状伸展構造をスケルトン化するスケルトン化手段をさらに備え、
前記交差領域特定手段は、前記膨張境界特定手段により特定された膨張境界と前記スケルトン化手段によりスケルトン化された棒状伸展構造とが交差する領域を交差領域として特定することを特徴とする請求項1または2に記載の医用画像撮影装置。
【請求項4】
前記開始位置特定手段により結節上での開始位置が特定された棒状伸展構造の終了位置を前記交差領域から結節表面と反対方向の棒状伸展構造を探索して特定する終了位置特定手段をさらに備え、
前記特定情報出力手段は、前記終了位置特定手段により特定された終了位置に関する情報をさらに出力することを特徴とする請求項1、2または3に記載の医用画像撮影装置。
【請求項5】
前記終了位置特定手段は、前記開始位置特定手段により結節上での開始位置が特定された棒状伸展構造が胸膜と交差する胸膜引き込み位置を前記終了位置として特定することを特徴とする請求項4に記載の医用画像撮影装置。
【請求項6】
被検体から収集された画像データから結節および棒状伸展構造を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された結節を膨張して得られる膨張境界を特定する膨張境界特定手段と、
前記膨張境界特定手段により特定された膨張境界と前記抽出手段により抽出された棒状伸展構造とが交差する交差領域を特定する交差領域特定手段と、
前記交差領域特定手段により特定された交差領域から結節表面方向の棒状伸展構造を探索して該棒状伸展構造の結節上での開始位置を特定する開始位置特定手段と、
前記開始位置特定手段により特定された開始位置に関する情報を出力する特定情報出力手段と
を備えたことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項7】
被検体から収集された画像データから結節および棒状伸展構造を抽出する抽出手順と、
前記抽出手順により抽出された結節を膨張して得られる膨張境界を特定する膨張境界特定手順と、
前記膨張境界特定手順により特定された膨張境界と前記抽出手順により抽出された棒状伸展構造とが交差する交差領域を特定する交差領域特定手順と、
前記交差領域特定手順により特定された交差領域から結節表面方向の棒状伸展構造を探索して該棒状伸展構造の結節上での開始位置を特定する開始位置特定手順と、
前記開始位置特定手順により特定された開始位置に関する情報を出力する特定情報出力手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする医用画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図6】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−273644(P2009−273644A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127508(P2008−127508)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】