説明

医用画像表示装置及び医用画像保管システム

【課題】医用画像データの画質の劣化を防止し、保存データ領域の増大を抑制しつつ、アノテーションデータをDICOM規格に準拠したデータに変換すること。
【解決手段】記憶部2は、DICOM規格に準拠した医用画像データと医用画像データに関連付けられDICOM規格に準拠していないアノテーションデータとを記憶する。表示部3は、医用画像データに対応する医用画像とアノテーションデータに対応するアノテーションとの重ね合わせ画像を表示する。抽出部4は、重ね合わせ画像から特定のカラー値を有する画素領域を抽出する。変換部5は、抽出された画素領域に対応する画像データをDICOM規格に準拠したアノテーションデータに変換する。保存部6は、DICOM規格に準拠したアノテーションデータを医用画像データに関連付けて保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像表示装置及び医用画像保管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像の読影に有用なツールとしてアノテーションが利用されている。アノテーションは、後に医用画像を再び観察する時のために、あるいは、他人が観察する時のために、医用画像に付される図形や文字、記号の総称である。例えば、アノテーションは、関心領域や直線、矢印、計測結果である。アノテーションのデータは、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格の普及が始まってしばらくの間、DICOM規格に準拠していないデータとして、医用画像のデータとは独立して保存・管理されることが多い。
【0003】
これらデータが保存された装置やシステムを新しい装置やシステムに移行(リプレース)する場合、データの移行が行われる。しかしながら、通常、DICOM規格に準拠していないアノテーションデータは、DICOM規格に準拠したデータに変換されずに欠落される。アノテーションデータの欠落は、情報資産の廃棄であり多大なる損失である。あるいは、DICOM規格に準拠していないアノテーションデータは、アノテーションと医用画像との重ね合わせ画像のキャプチャ画像(カラーのDICOM2次元画像(以下、SC画像と呼ぶことにする。))データを別途作成することによってSC画像データとして保存されている。
【0004】
SC画像データは、8×8×8階調のRGBモードの画像データで規定される。一方、オリジナルの医用画像データは、通常、16ビットのグレースケールで規定されている。従って、SC画像データは、オリジナルの医用画像データの階調情報を失ってしまっている。また、SC画像データがキャプチャ画像データなので、アノテーションデータがSC画像データの画素データに組み込まれる。従ってSC画像からアノテーションを除去することができず、アノテーションにオーバラップしているSC画像の部分領域を表示させることができない。また、SC画像データは、オリジナルの医用画像データとの性質の違いから、オリジナルの医用画像データとは別シリーズで保存されてしまう。そのため、読影の際、オリジナルの医用画像とSC画像とを見比べる必要があり、表示操作が煩雑になってしまう。さらには、24ビットのデータ量を有するSC画像データを、オリジナルの医用画像データとは別に保存する必要がある。従って、SC画像データの保存のために、膨大なデータ保存領域を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010―57903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実施形態は、前述の問題点を解決するためになされたもので、医用画像データの画質の劣化を防止し、保存データ領域の増大を抑制しつつ、アノテーションデータをDICOM規格に準拠したデータに変換することを可能とする医用画像表示装置及び医用画像保管システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る医用画像表示装置は、DICOM規格に準拠した医用画像データと前記医用画像データに関連付けられDICOM規格に準拠していないアノテーションデータとを記憶する記憶部と、前記医用画像データに対応する医用画像と前記アノテーションデータに対応するアノテーションとの重ね合わせ画像を表示する表示部と、前記重ね合わせ画像から特定のカラー値を有する画素領域を抽出する抽出部と、前記抽出された画素領域に対応する画像データをDICOM規格に準拠したアノテーションデータに変換する変換部と、前記DICOM規格に準拠したアノテーションデータを前記医用画像データに関連付けて保存する保存部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係る医用画像表示装置の構成を示す図。
【図2】図1の制御部の制御のもとに行われるアノテーションデータ変換処理の流れを示す図。
【図3】図2のステップS3において抽出部により実行される第1の抽出処理を説明するための図。
【図4】図2のステップS3において抽出部により実行される第2の抽出処理を説明するための図。
【図5】図2のステップS4において変換部により生成されるオーバーレイデータを含むDICOMアノテーションデータが組み込まれた医用画像ファイルのデータ構造を示す図。
【図6】第2実施形態に係る医用画像保管システムの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる医用画像表示装置と医用画像保管システムとを説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る医用画像表示装置1の構成を示す図である。医用画像表示装置1は、医用画像を表示するためのコンピュータ装置(いわゆるビューワ)であっても、医用画像のデータを保存・管理するためのコンピュータ装置(いわゆるサーバ)であってもよい。また、医用画像表示装置1は、医用画像を撮像するための医用画像撮像装置に組み込まれていても良い。医用画像撮像装置としては、X線診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、SPECT装置、及びPET装置等の既存のあらゆるモダリティが該当する。
【0011】
図1に示すように、医用画像表示装置1は、記憶部2、表示部3、抽出部4、変換部5、保存部6、操作部7、及び制御部8を有する。
【0012】
記憶部2は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に準拠したデータ形式を有する医用画像ファイルを記憶する。医用画像ファイルは、互いに関連付けられた医用画像データとDICOM付帯情報とを有する。医用画像データは、患者に関する医用画像をDICOM規格に従って符号化したデータからなる。例えば、医用画像データは、医用画像を構成する各画素に関する画素データの集合である。例えば、画素データは、医用画像を構成する各画素の座標と各画素の表示色に対応するグレー値又はカラー値とを表現する。DICOM付帯情報は、例えば、医用画像データが属する患者ID、検査ID、シリーズID、画像ID、画像サイズ、画像撮像日時等のDICOM規格において標準的に利用されている情報を含む。
【0013】
また、記憶部2は、DICOM規格に準拠していないデータ形式を有するアノテーションのデータ(以下、非DICOMアノテーションデータと呼ぶことにする。)を記憶する。非DICOMアノテーションデータは、例えば、医用画像表示装置1のメーカーあるいは販売会社、すなわちベンダーにより定義されたデータ形式で記述される。非DICOMアノテーションデータは、医用画像に付されたアノテーションを非DICOM規格に従って符号化したデータからなる。非DICOMアノテーションデータは、例えば、アノテーションを構成する各画素に関する画素データの集合である。この画素データは、例えば、アノテーションを構成する各画素の座標とアノテーションの表示色とを表現する。非DICOMアノテーションデータは、例えば、医用画像表示装置1のような旧装置により作成される。非DICOMアノテーションデータは、記憶部2により医用画像データに関連付けられている。
【0014】
なお、アノテーションは、後に医用画像を再び観察する時のために、あるいは、他人が観察する時のために、医用画像に付される図形や文字、記号の総称である。例えば、アノテーションは、関心領域や直線、矢印、計測結果である。
【0015】
また、記憶部2は、後述のアノテーションのDICOM規格化のためのデータ変換プログラムを記憶している。
【0016】
表示部3は、医用画像データに従って、医用画像データに対応する医用画像を表示機器に表示する。また、表示部3は、非DICOMアノテーションデータに従って、非DICOMアノテーションデータに対応するアノテーションを表示機器に表示する。より詳細には、表示部3は、医用画像にアノテーションを重ね合わせて表示機器に表示する。以下、医用画像にアノテーションが重ね合わされた表示画像を重ね合わせ画像と呼ぶことにする。この際、重ね合わせ画像は、表示部3によりRGBモード等のカラーモードで表示される。表示機器としては、例えばCRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が挙げられる。
【0017】
抽出部4は、表示された重ね合わせ画像から、特定の表示色のカラー値を有する画素領域を抽出する。特定の表示色は、アノテーションの表示色に規定される。従って抽出された画素領域は、アノテーションとみなされる。ここで、抽出された画素領域に関する画像データをアノテーション画像データと呼ぶことにする。アノテーション画像データは、抽出された画素領域を構成する各画素に関する画素データの集合である。アノテーション画像データは、非DICOM規格のデータ形式に従って符号化されたデータからなる。
【0018】
変換部5は、抽出されたアノテーション画像データをDICOM規格に準拠したデータ形式を有するデータに変換する。換言すれば、変換部5は、抽出されたアノテーション画像データをDICOM規格化する。DICOM規格化されたアノテーション画像データをDICOMアノテーションデータと呼ぶことにする。
【0019】
保存部6は、DICOMアノテーションデータを、医用画像データに関連付けて保存(記憶)する。保存部6と記憶部2とは、別々のハードウェアにより実現されてもよく、また、同一のハードウェアにより実現されてもよい。
【0020】
操作部7は、ユーザからの各種指令や情報入力を入力機器を介して受け付ける。入力機器としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチボタン等の選択デバイス、あるいはキーボード等が挙げられる。
【0021】
制御部8は、医用画像表示装置1の中枢として機能する。具体的には、制御部8は、記憶部2からデータ変換プログラムを読み出して各部を制御する。これにより、アノテーションデータのデータ形式を非DICOM規格のデータ形式からDICOM規格のデータ形式に変換するためのアノテーションデータ変換処理が実行される。
【0022】
以下、本実施形態に係る医用画像表示装置1の動作例を説明する。
【0023】
第1実施形態に係る制御部8の制御のもとに行われるアノテーションデータ変換処理は、旧装置を新装置へ移行する際の医用データのデータ変換時に供される。第1実施形態に係る医用画像表示装置1は、旧装置と新装置とのどちらにも適用可能であるが、典型的には、旧装置に該当する。
【0024】
図2は、第1実施形態に係る制御部8の制御のもとに行われるアノテーションデータ変換処理の流れを示す図である。
【0025】
まず、制御部8は、例えば、ユーザからの操作部7を介したデータ変換処理の開始要求を受け付けている。開始要求がなされたことを契機として(ステップS1:YES)、制御部8は、記憶部2からデータ変換プログラムを読み出し、データ変換プログラムに従ってアノテーションデータ変換処理の実行を開始する。
【0026】
アノテーションデータ変換処理において制御部8は、まず、表示部3に表示処理を行わせる(ステップS2)。ステップS2において表示部3は、データ変換処理対象のアノテーションデータと医用画像データとを記憶部1から読み出す。データ変換処理対象のアノテーションデータと医用画像データとは、例えば、ユーザにより操作部7を介して指定される。次に表示部3は、読み出されたアノテーションデータに対応するアノテーションを、読み出された医用画像データに対応する医用画像に重ねて表示機器に表示する。この際、医用画像とアノテーションとは、医用画像のオリジナルのマトリクスサイズ(XYサイズ)で表示される。また、表示部3は、医用画像とアノテーションとの重ね合わせ画像をRGBモードで表示する。なお、アノテーションは、医用画像に優先して表示される。すなわち、アノテーションが存在する表示機器上の画素には、アノテーションがRGBモードで表示され、アノテーションが存在しない表示機器上の画素には、医用画像が表示される。すなわち、アノテーションにオーバラップされる医用画像の部分領域は、表示されない。灰色に対応するカラー値は、例えば、(R,G,B)=(200,200,200)のように、R,G,Bの階調値が全て略同一値に設定されている。黄色に対応するカラー値は、例えば、(255,255,0)のように、Rの階調値とBの階調値とが同一値に設定され、Bの階調値が略0に設定されている。
【0027】
ステップS2が行われると制御部8は、抽出部4に抽出処理を行わせる(ステップS3)。ステップS3において抽出部4は、ステップS2において表示された重ね合わせ画像から、アノテーションの表示色で表示された画素領域を抽出する。なお、抽出部4による抽出処理は、抽出方法の違いに応じて第1の抽出処理と第2の抽出処理とに大別される。以下、各抽出処理について説明する。
【0028】
[第1の抽出処理]
図3は、抽出部4による第1の抽出処理について説明するための図である。図3に示すように、表示部3の表示機器には、医用画像I1とアノテーションANとの重ね合わせ画像I2が表示される。第1の抽出処理において抽出部4は、表示されている重ね合わせ画像I2を構成する複数の画素を探索し、アノテーションANの表示色のカラー値を有する画素を、アノテーションANを構成する画素(以下、アノテーション画素と呼ぶことにする。)として特定する。アノテーションANの表示色又カラー値は、ユーザにより操作部7を介して、又は自動的に設定される。典型的には、アノテーションANのカラー値は、医用画像表示装置1毎に設定されており、前述のように、記憶部2に記憶されている非DICOMアノテーションデータに含まれている。従って、抽出部4は、典型的には、記憶部2を参照することによりアノテーションANのカラー値を自動的に設定することができる。例えば、アノテーションANのカラー値が(R,G,B)=(255,255,0)、すなわち、表示色が黄色の場合、この(R,G,B)=(255,255,0)のカラー値が抽出条件に設定される。抽出部4は、重ね合わせ画像I2を構成する複数の画素の中から、抽出条件を満足する画素、この場合、(R,G,B)=(255,255,0)のカラー値が割付けられた画素をアノテーション画素として特定する。
【0029】
より具体的には、まず、抽出部4は、表示機器に表示された重ね合わせ画像をキャプチャし、重ね合わせ画像に関するビットマップ形式の画像データを生成する。以下、生成されたビットマップ形式の画像データを、ビットマップデータと呼ぶことにする。ビットマップデータは、表示された重ね合わせ画像に含まれる複数の画素のカラー値の空間分布を表現するデータである。ビットマップデータが生成されると抽出部4は、ビットマップデータに含まれる複数の画素を探索し、アノテーション画素を特定する。このようにして全てのアノテーション画素を特定すれると、抽出部4は、複数のアノテーション画素から構成される画素領域をアノテーションとして抽出する。抽出された画素領域に関する画像データ(アノテーション画像データ)は、アノテーションを構成する各画素に関する画素データの集合である。この画素データは、アノテーション画素の座標とカラー値とを表現する。あるいは、この画素データは、アノテーション画素の座標とアノテーション画素であるか否かの情報とを表現する。アノテーション画像データは、非DICOM規格のデータ形式に従って符号化される。
【0030】
なお、前述の説明においてアノテーションは、単一の表示色で表示されるとした。しかしながら、本実施形態においてアノテーションは、複数の表示色で表示されてもよい。この場合、抽出部4は、複数の表示色にそれぞれ対応する複数のカラー値の組合せを抽出条件に設定し、これら複数のカラー値のうちの何れか1つが割付けられた画素を、アノテーション画素として特定する。また、抽出部4は、複数の表示色を含むカラー値範囲を抽出条件に設定し、このカラー値範囲に含まれるカラー値が割付けられた画素を、アノテーション画素として特定してもよい。
【0031】
[第2の抽出処理]
図4は、抽出部4による第2の抽出処理について説明するための図である。図4に示すように、第2の抽出処理において表示部3は、医用画像I1とアノテーションANとの重ね合わせ画像I2とともに、医用画像I1を表示機器に表示している。なお医用画像I1は、重ね合わせ画像I2と同様に、オリジナルのマトリクスサイズ(XYサイズ)で表示され、また、RGBのカラーモードで表示される。
【0032】
重ね合わせ画像I2と医用画像I1とが表示されると抽出部4は、重ね合わせ画像I2と医用画像I1との差分画像を発生する。具体的には、抽出部4は、同一座標を有する重ね合わせ画像I2の画素と医用画像I1の画素との間でカラー値の差分値を算出する。差分画像上のカラー値(R,G,B)=(0,0,0)を有する画素は、アノテーションを構成しない画素に設定され、カラー値(R,G,B)=(0,0,0)を有さない画素は、アノテーションANを構成する画素に設定される。すなわち、抽出部4は、重ね合わせ画像I2と医用画像I1との差分画像を発生することにより、重ね合わせ画像I2からアノテーションANの画素領域を抽出している。抽出された画素領域に関するデータ(アノテーション画像データ)は、アノテーションANを構成する各画素に関する画素データの集合である。この画素データは、アノテーション画素の座標と差分画像上又は重ね合わせ画像上のカラー値とを表現する。あるいは、この画素データは、アノテーション画素の座標とアノテーション画素であるか否かの情報とを表現する。アノテーション画像データは、非DICOM規格のデータ形式に従って符号化される。
【0033】
ステップS3が行われると制御部8は、変換部5に変換処理を行わせる(ステップS4)。ステップS4において変換部5は、ステップS3において抽出されたアノテーションの画素領域に関するアノテーション画像データをDICOMアノテーションデータに変換する。ステップS4の詳細については後述する。
【0034】
ステップS4が行われると制御部8は、保存部6に保存処理を行わせる(ステップS5)。ステップS5において保存部6は、DICOMアノテーションデータを医用画像データに関連付けて保存する。以下、ステップS4とS5との処理を、変換処理の種類に応じて詳細に説明する。変換処理は、データ形式の違いに応じて第1の変換処理と第2の変換処理とに大別される。
【0035】
[第1の変換処理及び保存処理]
第1の変換処理において変換部5は、アノテーション画像データをDICOM規格に準拠したオーバーレイデータを含むDICOMアノテーションデータに変換する(ステップS4)。そして変換部5は、DICOMアノテーションデータを、記憶部2に記憶されているDICOM規格に準拠した医用画像ファイルに組み込む。記憶部2は、この医用画像ファイルを保存する(ステップS5)。換言すれば、記憶部2は、DICOMアノテーションデータを医用画像データに関連付けて記憶する。
【0036】
図5は、オーバーレイデータD22を含むDICOMアノテーションデータD2が組み込まれた医用画像ファイルのデータ構造を示す図である。図5に示すように、医用画像ファイルは、互いに関連付けられたDICOM付帯情報D1、DICOMアノテーションデータD2、及び医用画像データD3を有している。医用画像データD3は、DICOMアノテーションデータD2に由来するアノテーションデータに記憶部2において関連付けられているデータである。DICOM付帯情報D1は、医用画像データD3に関連付けられている。DICOMアノテーションデータD2は、変換部5によりアノテーション画像データに基づいて生成される。DICOMアノテーションデータD2は、オーバーレイデータD22とオーバーレイ付随情報D21とを含む。オーバーレイデータD22は、画素毎に1ビットの情報で定義される。すなわち、オーバーレイデータD22は、画素毎にアノテーション画素であるか否かの情報を有している。オーバーレイデータD22は、アノテーションの空間分布を表現するビットマップデータである。オーバーレイデータD22は、DICOM規格において定義されているデータ要素タグ(60xx,3000)により管理されている。オーバーレイ付随情報D21は、アノテーションの表示色のカラー値やマトリクスサイズ(XYサイズ)、基準位置等のアノテーションに関する付随情報を有している。
【0037】
[第2の変換処理及び保存処理]
第2の変換処理において変換部5は、ステップS3において抽出されたアノテーション画像データをDICOM規格に準拠したDICOM・GSPS(グレースケールソフトコピー提示状態:Gray Scale Presentation State)データに変換する(ステップS4)。より詳細には、変換部5は、アノテーション画像データに画像認識処理を施し、アノテーションの形状と位置とを特定する。アノテーションの位置は、アノテーションの形状に応じた複数の特徴点の座標により規定される。例えば、アノテーションが三角形の場合、複数の特徴点の座標は3つの頂点の座標に規定される。変換部5は、特定されたアノテーションの形状と位置とをDICOM・GSPSのデータ形式に従って符号化する。この符号化により生成されたデータがDICOM・GSPSデータとして扱われる。そして変換部5は、DICOM・GSPSデータを、記憶部2に記憶されているDICOM規格に準拠した医用画像ファイルに組み込む(マージする)。記憶部2は、DICOM・GSPSデータを医用画像データに紐付けて保存する(ステップS5)。
【0038】
なお、DICOM・GSPSデータは、医用画像データに紐付けて保存されれば、医用画像ファイルに組み込まれなくても良い。例えば、DICOM・GSPSデータは、医用画像ファイルとは別のファイルで管理され保存されてもよい。
【0039】
なお、DICOM規格に準拠していないデータ形式で医用画像の表示条件が管理されている場合がある。この場合、記憶部2は、医用画像データに表示条件データを関連付けて記憶している。アノテーション画像データをDICOM・GSPSデータに変換する場合、変換部5は、この表示条件もDICOM・GSPSデータに変換するとよい。なお、表示条件は、画像回転や画像反転、白黒反転、WW(Window Width)/WL(Window Level)をDICOM規格に準拠していないデータ形式に従って符号化したデータからなる。変換部5は、このような非DICOM規格の表示条件データをDICOM・GSPSデータに変換する。そして保存部6は、DICOM・GSPSデータに変換された表示条件データを医用画像データに関連付けて保存する。これにより、非DICOM規格の表示条件データを、DICOM規格化することができる。
【0040】
このようにしてステップS5が終了すると制御部8は、アノテーションデータ変換処理を終了する。
【0041】
第1実施形態によれば医用画像表示装置1は、記憶部2、表示部3、抽出部4、変換部5、及び保存部6を有している。記憶部2は、DICOM規格に準拠したデータ形式を有する医用画像データと、DICOM規格に準拠していないアノテーションデータ(非DICOMアノテーションデータ)とを記憶している。表示部3は、非DICOMアノテーションデータに対応するアノテーションを、医用画像データに対応する医用画像に重ね合わせて表示機器に表示する。抽出部4は、医用画像とアノテーションとの重ね合わせ画像から特定の表示色を有するアノテーションを抽出する。変換部5は、抽出されたアノテーションの画像データ(アノテーション画像データ)をDICOM規格に準拠したデータ形式を有するアノテーションデータ(DICOMアノテーションデータ)に変換する。保存部6は、DICOMアノテーションデータを、DICOMアノテーションデータに由来する非DICOMアノテーションデータに記憶部2において関連付けられている医用画像データに関連付けて保存する。
【0042】
前述のような構成により、アノテーションがDICOM規格化されるので、DICOM規格に準拠したシステムや装置においてアノテーションの再現が可能となる。従って本実施形態に係る医用画像表示装置1は、読影の質の低下、過去の情報資産の欠損を回避できる。また、システムや装置の他メーカーへのリプレイスやマルチベンダ化が容易となる。
【0043】
また、前述のような構成により、アノテーションデータは、DICOMオーバーレイ化により医用画像ファイルの一部として保存、あるいは、医用画像ファイルに紐付いたDICOM・GSPSデータとして保存される。このようなデータ保存形式により、本実施形態に係る医用画像表示装置1は、医用画像の表示操作のみでアノテーションを表示でき、アノテーションの表示操作の煩雑さを低減することができる。これにより、スムーズな読影が行われる。また、DICOM規格化されたアノテーションデータに関連付けられた医用画像データは、オリジナルの医用画像データと同一の画質を有している。そのため、本実施形態に係る医用画像表示装置1は、アノテーションデータのDICOM規格化に伴う医用画像データの画質低減を防止することができる。
【0044】
また、前述のような構成により、医用画像データ(より詳細には、画素データ)とDICOM規格化されたアノテーションデータとは、別々のデータセットとして扱われる。従って、アノテーション(オーバーレイ)の表示/非表示を、ユーザにより指定することができる。これにより本実施形態に係る医用画像表示装置1は、アノテーションが重ねられた医用画像内のアノテーションを非表示にすることで、アノテーションがオーバラップしていた医用画像の部分領域を選択的に表示させることできる。
【0045】
また、上述のように、DICOMオーバーレイデータは、1ビットのデータ量を有する。一方、従来のアノテーションデータの変換処理において発生されていたSC画像データは、24ビットのデータ量を有する。従って本実施形態に係る医用画像表示装置1は、SC画像データを生成しないので、従来に比して、データ変換後のデータ保存容量を削減することができる。
【0046】
かくして第1実施形態によれば、医用画像データの画質の劣化を防止し、保存データ領域の増大を抑制しつつ、アノテーションデータをDICOM規格に準拠したデータに変換することが可能となる。
【0047】
[第2実施形態]
第1実施形態においては、単一のコンピュータ装置により実現される医用画像表示装置について説明した。第2実施形態においては、医用画像表示装置と医用画像保管装置とにより構成される医用画像保管システムについて説明する。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0048】
図6は、第2実施形態に係る医用画像保管システム20の構成を示す図である。図6に示すように、医用画像保管システム20は、互いにネットワークを介して接続された医用画像表示装置30と医用画像保管装置40とを有している。例えば、医用画像表示装置30は、いわゆるビューワに該当し、医用画像保管装置40は、いわゆるサーバに該当する。このように、医用画像表示装置30と医用画像保管装置40とは、PACS(Picture Archiving and Communication System)を構築している。なお、医用画像表示装置30は、医用画像を撮像するための医用画像撮像装置に組み込まれていても良い。医用画像撮像装置としては、X線診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、SPECT装置、及びPET装置等の既存のあらゆるモダリティが該当する。
【0049】
図6に示すように、医用画像表示装置30は、記憶部2、表示部3、抽出部4、変換部5、操作部7、送信部9、及び制御部10を有する。
【0050】
送信部9は、DICOMアノテーションデータと、このアノテーションデータに由来する非DICOMアノテーションデータに記憶部2において関連付けられている医用画像データとを、DICOM規格に準拠した通信方式によりネットワークを介して医用画像保管装置40に送信する。
【0051】
制御部10は、医用画像表示装置30の中枢として機能する。具体的には、制御部10は、記憶部2からデータ変換プログラムを読み出して各部を制御する。これにより、アノテーションデータのデータ形式を非DICOM規格のデータ形式からDICOM規格のデータ形式に変換するためのアノテーションデータ変換処理が実行される。
【0052】
図6に示すように、医用画像保管装置40は、受信部11、保管部6、及び制御部12を有している。
【0053】
受信部11は、医用画像表示装置30からネットワークを介して送信されたDICOMアノテーションデータと医用画像データとを、DICOM規格に準拠した通信方式により受信する。受信されたDICOMアノテーションデータと医用画像データとは、保管部6により関連付けて保管される。
【0054】
医用画像保管システム20によるアノテーションデータデータ変換処理は、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0055】
第2実施形態によれば医用画像保管システム20は、記憶部2、表示部3、抽出部4、変換部5、及び保存部6を有している。記憶部2は、DICOM規格に準拠したデータ形式を有する医用画像データと、DICOM規格に準拠していないアノテーションデータ(非DICOMアノテーションデータ)とを記憶している。表示部3は、非DICOMアノテーションデータに対応するアノテーションを、医用画像データに対応する医用画像に重ね合わせて表示機器に表示する。抽出部4は、医用画像とアノテーションとの重ね合わせ画像から特定の表示色を有するアノテーションを抽出する。変換部5は、抽出されたアノテーションの画像データ(アノテーション画像データ)をDICOM規格に準拠したデータ形式を有するアノテーションデータ(DICOMアノテーションデータ)に変換する。保存部6は、DICOMアノテーションデータを、DICOMアノテーションデータに由来する非DICOMアノテーションデータに記憶部2において関連付けられている医用画像データに関連付けて保存する。
【0056】
また、第2実施形態によれば医用画像保管システム20は、医用画像表示装置30と医用画像保管装置40とを有している。医用画像表示装置30は、記憶部2、表示部3、抽出部4、変換部5、及び送信部9を有している。送信部9は、DICOMアノテーションデータと、DICOMアノテーションデータに由来する非DICOMアノテーションデータに記憶部2において関連付けられている医用画像データとを医用画像保管装置40に送信する。医用画像保管装置40は、受信部11と保存部6とを有している。受信部11は、医用画像表示装置30からのDICOMアノテーションと医用画像データとを受信する。保存部6は、受信されたDICOMアノテーションと医用画像データとを関連付けて保存する。
【0057】
かくして第2実施形態によれば、医用画像データの画質の劣化を防止し、保存データ領域の増大を抑制しつつ、アノテーションデータをDICOM規格に準拠したデータに変換することが可能となる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0059】
1…医用画像表示装置、2…記憶部、3…表示部、4…抽出部、5…変換部、6…保存部、7…操作部、8…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DICOM規格に準拠した医用画像データと前記医用画像データに関連付けられDICOM規格に準拠していないアノテーションデータとを記憶する記憶部と、
前記医用画像データに対応する医用画像と前記アノテーションデータに対応するアノテーションとの重ね合わせ画像を表示する表示部と、
前記重ね合わせ画像から特定のカラー値を有する画素領域を抽出する抽出部と、
前記抽出された画素領域に対応する画像データをDICOM規格に準拠したアノテーションデータに変換する変換部と、
前記DICOM規格に準拠したアノテーションデータを前記医用画像データに関連付けて保存する保存部と、
を具備する医用画像表示装置。
【請求項2】
前記DICOM規格に準拠したアノテーションデータは、DICOMオーバーレイデータである、請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項3】
前記DICOM規格に準拠したアノテーションデータは、DICOM・GSPS(Gray Scale Presentation State)データである、請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項4】
前記変換部は、さらに、前記医用画像データに関連付けられている表示条件データをDICOM・GSPSデータに変換する、請求項3記載の医用画像表示装置。
【請求項5】
前記抽出部は、前記重ね合わせ画像に含まれる複数の画素を探索し、前記特定のカラー値を有するアノテーションデータとして、前記複数の画素の中から特定のカラー値を有する画素領域のデータを抽出する、請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記重ね合わせ画像とともに、前記医用画像を表示し、
前記抽出部は、前記重ね合わせ画像と前記表示された医用画像との差分画像を前記特定のカラー値を有する画素領域として抽出する、
請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記重ね合わせ画像を前記医用画像のオリジナルの画像サイズで表示する、請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項8】
DICOM規格に準拠した医用画像データと前記医用画像データに関連付けられDICOM規格に準拠していないアノテーションデータとを記憶する記憶部と、
前記医用画像データに対応する医用画像と前記アノテーションデータに対応するアノテーションとの重ね合わせ画像を表示する表示部と、
前記重ね合わせ画像から特定のカラー値を有する画素領域を抽出する抽出部と、
前記抽出された画素領域に対応する画像データをDICOM規格に準拠したアノテーションデータに変換する変換部と、
前記DICOM規格に準拠したアノテーションデータを前記医用画像データに関連付けて保存する保存部と、
を具備する医用画像保管システム。
【請求項9】
医用画像を表示するための医用画像表示装置と前記医用画像表示装置にネットワークを介して接続された医用画像保管装置とを具備する医用画像保管システムであって、
前記医用画像表示装置は、
DICOM規格に準拠した医用画像データと前記医用画像データに関連付けられDICOM規格に準拠していないアノテーションデータとを記憶する記憶部と、
前記医用画像データに対応する医用画像と前記アノテーションデータに対応するアノテーションとの重ね合わせ画像を表示する表示部と、
前記重ね合わせ画像から特定のカラー値を有する画素領域を抽出する抽出部と、
前記抽出された画素領域に対応する画像データをDICOM規格に準拠したアノテーションデータに変換する変換部と、
前記DICOM規格に準拠したアノテーションデータと前記医用画像データとを前記医用画像保管装置に送信する送信部と、を備え、
前記医用画像保管装置は、
前記送信されたアノテーションデータと医用画像データとを受信する受信部と、
前記受信されたアノテーションデータと医用画像データとを関連付けて保存する保存部と、を備える、
ことを特徴とする医用画像保管システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−221365(P2012−221365A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88412(P2011−88412)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】