説明

医用画像表示装置及び医用画像誘導方法

【課題】医用撮像マーカーを使用することなく、患者位置と画像位置との位置合わせを行なう。
【解決手段】被検体301の医用画像を撮像する医用画像撮像装置13と、表示装置6と、被検体の位置情報を検出するための被検体位置検出具311と、撮像装置位置検出具312と、被検体位置検出具と撮像装置位置検出具のそれぞれの位置情報を計測する三次元位置計測装置15と、被検体の位置情報と医用画像の位置情報の位置合わせを行う医用画像表示装置1とを備え、医用画像表示装置は、医用画像に付されたDICOM情報の医用画像座標系Cと被検体位置検出座標系Cを、撮像装置座標系C及び撮像空間座標系Cと三次元位置計測座標系Cを介して座標変換する同次座標変換行列Tを算出して、被検体の位置情報と医用画像の位置情報の位置合わせ情報として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT装置、MRI装置、超音波撮像装置などの医用画像撮像装置で得られる医用画像を用いた医用画像誘導(ナビゲーション)機能を有する医用画像表示装置及び医用画像誘導方法に係り、具体的には被検体である実空間の患者位置と画像位置との位置合わせ(レジストレーション)を行なう技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像誘導機能を有する医用画像表示装置は、術者が操作する術具や超音波プローブの実空間における位置情報を検出して、医用画像撮像装置で得られる医用画像上に術具等の仮想画像を描画することにより、術者の操作を誘導するものである。このような医用画像表示装置では、撮像される実空間の患者位置の変化に合わせ、患者位置と撮像された医用画像との位置合わせするため、従来、医用撮像マーカーを用いた手法が種々提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−170072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、医用撮像マーカーを用いた従来技術は、いずれも、医用画像上に撮影された医用撮像マーカーの位置を特定する手段と、実空間の患者上に設定された医用撮像マーカーの位置を特定する手段を用いて、患者位置と画像位置との位置合わせを行なっている。そのため、医用撮像マーカーの位置特定作業のために、手術前の貴重な時間が費やされるという問題がある。
【0005】
一方、医用画像上の医用撮像マーカーの位置を画像処理により検出し、操作者の負担や所要時間を低減する手法も提案されている。しかし、医用撮像マーカーの検出能は、医用画像の画質にも依存するため、必ずしもうまく機能する保証はない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、医用撮像マーカーを使用することなく、患者位置と画像位置との位置合わせを行なうことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の医用画像誘導方法を適用してなる医用画像表示装置システムは、被検体の医用画像を撮像する医用画像撮像装置と、前記医用画像を表示する表示装置と、前記被検体の位置情報を検出するために前記被検体に相対位置関係を固定して設けられる被検体位置検出具と、前記医用画像撮像装置の位置情報を検出するために前記医用画像撮像装置に固定して設けられる撮像装置位置検出具と、前記被検体位置検出具と前記撮像装置位置検出具のそれぞれの位置情報を計測するための三次元位置計測装置と、前記被検体の位置情報と前記医用画像の位置情報の位置合わせを行う医用画像表示装置とを備えてなる。
特に、前記医用画像表示装置は、前記医用画像に付された画像位置及び向きを含む位置情報が展開される医用画像座標系Cと前記被検体位置検出具により展開される被検体位置検出座標系Cを、前記医用画像撮像装置の撮像装置座標系C及び撮像空間座標系Cと三次元位置計測座標系Cを用いて座標変換する同次座標変換行列Tを算出し、該同次座標変換行列Tを前記被検体の位置情報と前記医用画像の位置情報の位置合わせ情報として用いることを特徴とする。
【0008】
本発明は、医用画像には、画像位置及び向きを含む位置情報として、通常、DICOM情報が付されていることに鑑みなされたものである。しかし、DICOM情報に限られるものでないことは言うまでもなく、要は、画像位置及び向きを含む位置情報が医用画像に付されていればよい。これにより、医用画像についてDICOM情報等の位置情報により医用画像座標系Cが展開される。また、被検体位置検出具により展開される被検体位置検出座標系Cと、医用画像撮像装置に設けられた撮像装置位置検出具により展開される撮像装置座標系Cと、医用画像撮像装置を基準に設定される撮像空間座標系Cは、それぞれ予め認識できる。したがって、三次元位置計測装置によって被検体位置検出具と撮像装置位置検出具の位置情報を計測することにより、三次元位置計測座標系Cと被検体位置検出座標系Cの座標変換、三次元位置計測座標系Cと医用画像座標系Cの座標変換を演算により行なうことができる。さらに、三次元位置計測座標系Cを介して、被検体位置検出座標系Cと医用画像座標系Cの同次座標変換行列Tを直接演算により算出できる。本発明は、この同次座標変換行列Tを位置合わせ情報として用いることにより、医用撮像マーカーを使用することなく、被検体の位置情報と医用画像の位置情報との位置合わせを行なうようにしたのである。
【0009】
つまり、前記医用画像表示装置は、前記三次元位置計測装置により展開される三次元空間位置座標系Cを、前記被検体位置検出具により展開される被検体位置検出座標系Cに変換する同次座標変換行列Tを算出する。そして、前記三次元空間位置座標系Cと、前記撮像装置位置検出具により展開される撮像装置位置検出座標系Cと、前記医用画像撮像装置の撮像空間により展開される撮像空間座標系Cと、前記医用画像に付された画像の位置情報の医用画像座標系Cとに基づいて、前記被検体位置検出座標系Cを前記医用画像座標系Cに変換する同次座標変換行列Tを算出する。
【0010】
上記の場合において、前記医用画像表示装置は、前記同次座標変換行列TとTに基づいて、前記三次元位置計測装置により計測される前記被検体位置検出具の位置情報の変化に対応させて前記三次元空間位置座標系Cを前記医用画像座標系Cに変換する同次座標変換行列Tregを算出して前記位置合わせ情報とすることができる。これによれば、被検体が移動するような場合でも、速やかに、移動後の位置合わせ情報を生成することができる。
【0011】
また、本発明は、上記の場合において、さらに、前記被検体に手術を施す術具の位置情報を検出するための術具位置検出具を設け、前記医用画像表示装置は、三次元位置計測座標系Cで計測される術具の位置情報を前記同次座標変換行列T又はTregを用いて医用画像座標系Cの位置情報に変換して、前記術具の仮想術具表示を前記医用画像に重ねて表示させることができる。これにより、術具の仮想術具表示が医用画像に重ねてナビゲーション画像として表示されるから、術者が操作する術具を被検体の手術部位に的確に誘導することができる。
【0012】
また、本発明は、上記の場合において、前記医用画像撮像装置が超音波医用撮像装置であり、前記超音波撮像装置の超音波プローブの位置情報を検出するためのプローブ位置検出具を備えている医用画像表示装置システムに適用することができる。この場合、前記医用画像表示装置は、三次元位置計測座標系Cで計測される前記超音波プローブの位置情報を前記同次座標変換行列T又はTregを用いて医用画像座標系Cの位置情報に変換して、前記超音波プローブの仮想プローブ表示を前記医用画像に重ねて表示させることができる。これにより、超音波プローブにより撮像する断層部位に超音波プローブを的確に誘導することができる。
【0013】
なお、本発明において、前記医用画像表示装置は、前記三次元位置計測装置により計測される前記被検体位置検出具の位置情報を取得する度に前記位置合わせ情報を更新することができる。また、前記医用画像表示装置は、前記被検体位置検出具の位置情報を計測できないときは、更新前の前記位置合わせ情報を用いることができる。また、前記医用画像表示装置は、前記被検体位置検出具の位置情報が取得できなった場合に、前記位置合わせ情報が更新できなかったことを前記表示装置に警告表示することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、医用撮像マーカーを使用することなく、患者位置と画像位置との位置合わせを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の医用画像表示装置のハードウェア構成を示す図である。
【図2】本発明の医用画像誘導方法の実施例1の処理の流れを示す図である。
【図3】本発明の医用画像誘導方法の実施例1の位置合わせ前の状態を示す医用画像表示システムの概念図である。
【図4】本発明の医用画像誘導方法の実施例1の位置合わせ後の状態を示す医用画像表示システムの概念図である。
【図5】本発明の医用画像誘導方法の実施例1で用いる空間座標系と、異なる空間座標系の座標変換に用いる同次座標変換行列の関係を示す図である。
【図6】本発明の医用画像誘導方法の実施例1によるナビゲーション画像の表示画面の一例を示す図である。
【図7】本発明の医用画像誘導方法の実施例2の処理の流れを示す図である。
【図8】本発明の医用画像誘導方法の実施例3の処理の流れを示す図である。
【図9】本発明の医用画像誘導方法の実施例4によるナビゲーション画像の表示画面の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明に係る医用画像誘導方法を適用してなる医用画像表示装置の好ましい実施形態について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0017】
図1に示すように、本発明の一実施の形態の医用画像表示システムは、医用画像表示装置1と、ネットワーク12を介して医用画像表示装置1に通信可能に接続された医用画像撮像装置13や医用画像データベース14と、三次元位置計測装置15を備えて構成される。医用画像表示装置1は、CPU(Central Processing Unit)2、主メモリ3、記憶装置4、表示メモリ5、表示装置6、マウス8に接続されたコントローラ7、キーボード9、ネットワークアダプタ10が、それぞれシステムバス11を介して接続されている。マウス8に接続されたコントローラ7及びキーボード9は、医用画像の処理条件の入力を受付ける入力装置として機能する。また、CPU2は、入力される医用画像の処理条件に基づき、プログラムに従って医用画像処理を実行する画像処理装置として機能するようになっている。
【0018】
三次元位置計測装置15は、システムバス11に信号送受可能に接続されている。医用画像撮像装置13と医用画像データベース14は、LAN(Local Area Network)等のネットワーク12を介して、ネットワークアダプタ10と信号送受可能に接続されている。ここで、「信号送受可能に」とは、電気的、光学的に有線、無線を問わずに、相互にあるいは一方から他方へ信号送受可能な状態を示す。
【0019】
また、CPU2は、各構成要素の動作を制御する機能を備えており、記憶装置4に格納されるプログラムやプログラム実行に必要なデータを主メモリ3にロードして実行する。記憶装置4は、医用画像撮像装置13により撮像された医用画像情報を格納する装置であり、具体的にはハードディスク等である。また、記憶装置4は、フレシキブルディスク、光(磁気)ディスク、ZIPメモリ、USBメモリ等の可搬性記録媒体とデータの受け渡しをする装置であってもよい。医用画像情報は、ネットワーク12を介して医用画像撮像装置13や医用画像データベース14から取得される。また、記憶装置4には、CPU2が実行するプログラムやプログラム実行に必要なデータが格納される。主メモリ3は、CPU2が実行するプログラムや演算処理の途中経過を記憶するものである。
【0020】
表示メモリ5は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)等の表示装置6に表示するための表示データを一時的に格納するものである。マウス8やキーボード9は、操作者が医用画像表示装置1に対して操作指示を行う操作デバイスである。マウス8はトラックパッドやトラックボールなどの他のポインティングデバイスであってもよい。コントローラ7は、マウス8の状態を検出して、表示装置6上のマウスポインタの位置を取得し、取得した位置情報等をCPU2へ出力するものである。ネットワークアダプタ10は、医用画像表示装置1をLAN、電話回線、インターネット等のネットワーク12に接続するためのものである。
【0021】
三次元位置計測装置15は、術具等に設けられた術具位置検出具の三次元的な位置情報を取得し、取得した位置情報をCPU2へ出力するものである。医用画像撮像装置13は、図3に示すように被検体301の断層画像等の医用画像情報を取得する装置である。医用画像撮像装置13は、例えば、MRI装置、X線CT装置、超音波撮像装置、シンチレーションカメラ装置、PET装置、又はSPECT装置などを適用することができる。医用画像データベース14は、医用画像撮像装置13によって撮像された医用画像情報を記憶するデータベースシステムである。
【0022】
このように構成される医用画像表示装置1のCPU2は、以下に述べる実施例の医用画像誘導の演算処理を実行することにより、位置合わせ情報(レジストレーション情報)を生成する。そして、表示装置6に、医用画像撮像装置13によって撮像された医用画像に手術を施す術具等のナビゲーション画像を表示させることができるようになっている。以下、本発明の特徴部である医用画像表示装置1の医用画像誘導方法の位置合わせ情報(レジストレーション情報)を生成する方法を、実施例に沿って説明する。
【実施例1】
【0023】
図2は、本発明の実施例1の位置合わせ情報を生成する処理の流れを示す図である。以下、図2の各ステップについて、図3、図4及び図5を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる位置情報には、計測対象の空間座標における位置及び向き、姿勢等の情報を含む。
(ステップS201)
CPU2は、記憶装置4又は医用画像データベース14に事前に記憶させておいた医用画像撮像装置13の撮像装置位置検出具312上で展開される撮像装置位置検出座標系Cから医用画像撮像装置13のアイソセンタ313を原点として展開される撮像空間座標系Cへの同次座標変換行列Tを取得する。アイソセンタ313は、医用画像撮像装置13の撮像空間座標の基準点又は原点として予め設定されているものである。同次座標変換行列Tは、撮像装置位置検出座標系Cから撮像空間座標系Cへの回転行列をM、撮像空間座標系Cの原点に対する撮像装置位置検出座標系Cの原点への相対ベクトルをdとすれば、その行列成分は次式(1)で表される。
【数1】

【0024】
(ステップS202、S203)
CPU2は、ステップS202において、三次元位置計測装置15を用いて被検体位置検出具311の位置情報を計測し、この位置情報を入力として、三次元位置計測装置15上で展開される三次元位置計測座標系Cから被検体位置検出具311上で展開される被検体位置検出座標系Cへの同次座標変換行列Tを算出する。また、CPU2は、ステップS203において、三次元位置計測装置15を用いて撮像装置位置検出具312の位置情報を計測し、この位置情報を入力として、三次元位置計測装置15上で展開される位置計測装置座標系Cから撮像装置位置検出座標系Cへの同次座標変換行列Tを算出する。ここで、三次元位置計測装置15から取得する計測情報が、各検出座標系から位置計測装置座標系Cへの回転行列M、Mと、位置計測装置座標系Cにおける位置計測装置座標系Cの原点に対する各検出座標系の原点への相対ベクトルをd、dとすれば、同次座標変換行列T,Tの行列成分はそれぞれ次式(2)で表される。
【数2】

なお、MRI装置等のように、被検体が横臥されるベッドが撮像時に移動しない撮像装置の場合は、撮像直前又は直後の各位置情報を計測し、これら各位置情報から各同次座標変換行列を算出する。一方、X線CT装置等のように撮像時にベッドが移動する撮像装置の場合は、任意の断層像を取得し、その断層位置での各位置情報を計測し、これら各位置情報から各同次座標変換行列を算出する。
【0025】
(ステップS204)
CPU2は、医用画像診断装置13又は医用画像データベース14から撮像した医用画像を取得する。取得した医用画像のDICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)情報から、医用画像撮像装置13上の撮像空間座標系Cに対する画像の位置及び方向を取得する。そして、撮像空間座標系Cの基準点として設定されたアイソセンタ313に対する医用画像の位置及び方向を演算して、撮像空間座標系Cから医用画像座標系Cへの同次座標変換行列Tを算出する。取得した行方向、列方向の画像方向をそれぞれベクトルa、bとし、各スライスデータの画像位置から割り出したボリュームデータの原点位置をベクトルcとすれば、同次座標変換行列Tの行列成分は次式(3)で表される。
【数3】

【0026】
(ステップS205)
CPU2は、ステップS201で取得した同次座標変換行列Tと、ステップS202、S203で取得した各同次座標変換行列T及びTと、ステップS204で算出した同次座標変換行列Tとから、被検体位置検出座標系Cから医用画像座標系Cへの同次座標変換行列Tを、次式(4)で算出する。このようにして、被検体位置である患者位置と医用画像位置との位置合わせ(ナビゲーション)情報として、同次座標変換行列Tを生成する。つまり、三次元位置計測装置15により被検体位置検出具311の位置情報を計測すれば、同次座標変換行列Tにより患者位置に対応する医用画像位置を直ちに算出して、患者位置と医用画像位置の位置合わせを行うことができる。

=T−1 ・・・ (4)

【0027】
(ステップS206)
CPU2は、三次元位置計測装置15を用いて、被検体301を移動した後の被検体位置検出具311の位置情報を計測し、この位置情報を入力として、三次元位置計測座標系Cから被検体位置検出座標系Cへの同次座標変換行列T′を算出する。次いで、ステップS205で算出した同次座標変換行列Tを入力として、三次元位置計測座標系Cから医用画像座標系Cへの同次座標変換行列Tregを、次式(5)で算出する。この同次座標変換行列Tregは、被検体の移動に対応する位置合わせ情報として、被検体の移動に合わせて、あるいは周期的に算出する。これにより、三次元位置計測装置15により被検体位置検出具311の位置情報を計測すれば、同次座標変換行列Tregにより患者位置に対応する医用画像位置を直ちに算出して、患者位置と医用画像位置の位置合わせを行うことができる。

Treg=T′ ・・・ (5)

【0028】
(ステップS207)
このステップは、術具等の操作を誘導するために、術具の位置情報を計測して、医用画像に術具の位置情報の表示を行う処理である。つまり、CPU2は、三次元位置計測装置15を用いて、図4に示す術具401に設けられた術具位置検出具402の位置情報(ベクトル)dsensorを計測し、この位置情報を入力として同次座標(ベクトル)rsensor算出し、ステップS206で算出した同次座標変換行列Tregを入力として、医用画像座標系Cでの術具位置検出具402の同次座標(ベクトル)rimageを算出する。同次座標rimageは次式(6)で表される。なお、術具位置検出具402の位置情報dsensorには、術具401の先端までのオフセットも含まれているものとする。
【数4】

このようにして、ステップS206とS207により、被検体301が移動された場合、その移動後の被検体位置検出具311の位置情報を三次元位置計測装置15により計測して、三次元位置計測座標系Cから被検体位置検出座標系Cへの被検体301が移動後の同次座標変換行列T′を算出する。そして、三次元位置計測座標系Cから医用画像座標系Cへの同次座標変換行列Tregを前記式(5)で算出する。算出された同次座標変換行列Tregを用いて、三次元位置計測装置15により計測された術具位置検出具402の位置情報(ベクトル)dsensorを、医用画像座標系Cでの術具位置検出具402の同次座標(ベクトル)rimageに変換する。これにより、移動操作後の術具401の位置情報を直ちに医用画像における位置情報に変換でき、例えば術具401の仮想画像表示の位置を医用画像に位置合わせすることができる。
【0029】
(ステップS208)
CPU2は、同次座標rimageを入力として、術具先端位置でのナビゲーション画像として、例えば術具401の仮想画像表示を表示装置6に表示する。なお、画像処理条件(パラメータ等)については、マウス8およびキーボード9により適時入力が可能である。CPU2は、入力される画像処理条件に応じた処理を施したナビゲーション画像を表示装置6へ表示する。
【0030】
図6に、実施例1により得られるナビゲーション画像の表示画面の一例を示す。図示のように、表示画面501は、ナビゲーション画像として、被検体301の手術部位の直交3断面画像であるアキシャル断面511、サジタル断面512及びコロナル断面513と、3次元レンダリング画像514に、位置合わせ情報に従って形成された仮想術具表示515が重ねて表示されている。
また、表示画面501の右部上には、被検体位置計測インターフェイスである位置取得アイコン521と、位置合わせ実行インターフェイスであるレジストレーションアイコン522が入力用として表示されている。また、表示画面501の右部下には、画像処理指令を入力する画像閾値インターフェイス531、視点位置平行移動インターフェイス532、視点位置回転移動インターフェイス533及び画像拡大インターフェイス534のアイコンが表示されている。
【0031】
以上説明したように、本実施例1によれば、三次元位置計測装置15により計測される被検体301もしくは被検体301との相対的な位置関係が変化しない剛体(ベッド、固定具など)に固定された被検体位置検出具311の位置情報と、三次元位置計測装置15により計測される医用画像撮像装置13の位置情報と、医用画像撮像装置13に固有な撮像空間の基準点(例えば、アイソセンタの位置)の位置情報と、医用画像に付された画像位置情報であるDICOM情報とから、医用撮像マーカーを使用せずに、患者位置と画像位置との位置合わせに必要な位置合わせ情報を生成することができる。その位置合わせ情報と術具401の位置情報に基づいて、術具401に仮想術具表示の位置と向きを医用画像に位置合わせて表示させることにより、画像誘導を短時間で行なうことができる。
【実施例2】
【0032】
図7は、本発明の実施例2の位置合わせ情報を生成する処理の流れを示す図である。以下、図7の各ステップについて詳細に説明する。本実施例2は、実施例1で生成した位置合わせ情報を、被検体301の移動に合わせて随時更新する処理である。
【0033】
(ステップS601)
CPU2は、三次元位置計測装置15を用いて、被検体位置検出具311の位置情報を計測するごとに、実施例1のステップS206及びS207を実施し、同次座標変換行列Tregを随時更新し、医用画像座標系Cでの術具位置検出具402の同次座標を算出する。
(ステップS602)
CPU2は、ステップS601で算出した同次座標を入力として、術具先端位置を含む仮想術具表示515をナビゲーション画像として表示装置6に表示する。なお、画像処理条件(パラメータ等)については、マウス8およびキーボード9により適時入力が可能であり、入力に応じた処理を実施したナビゲーション画像を表示装置6へ表示する。
【0034】
なお、ステップS206において、被検体位置検出具311の位置情報が何らかの理由で検出できなかった場合には、更新前の同次座標変換行列Tregを用いて、医用画像座標系Cでの術具位置検出具402の同次座標を算出してもよい。また、被検体位置検出具311の位置が更新できなかったことを警告表示してもよい。本実施例2によれば、実施例1の効果に加えて、被検体が移動しても画像誘導を行なうことができるという効果が得られる。
【実施例3】
【0035】
図8は、本発明の実施例3の位置合わせ情報を生成する処理の流れを示す図である。以下、図8の各ステップについて詳細に説明する。本実施例3は、被検体位置検出具311が複数設置されている場合の位置合わせ方法であり、実施例1により、術具位置検出具402の同次座標を、複数の被検体位置検出具311に対してそれぞれ算出することが異なる。
【0036】
(ステップS801)
CPU2は、実施例1のステップS207で複数の被検体位置検出具311について算出した術具位置検出具402のそれぞれの同次座標から、術具先端位置を算出する。この場合、複数の同次座標を加算平均して1つの同次座標を算出する。あるいはこれに代えて、複数の同次座標の最頻値、平均位置からの距離に基づいた中央値、統計学的尤度に基づいた値、などを採用することができる。また、算出した術具位置検出具402の各同次座標の相対距離が、設定された閾値よりも大きくなった場合には、表示装置6へ位置精度が低下したことを警告表示することができる。
【0037】
(ステップS802)
CPU2は、ステップS801で算出した同次座標を入力として、図6に示したように、術具先端位置を含む仮想術具表示515をナビゲーション画像として表示装置6に表示する。また、画像処理条件(パラメータ等)については、マウス8およびキーボード9により適時入力が可能であり、入力に応じた処理を実施したナビゲーション画像を表示装置6へ表示することは、実施例1、2と同様である。
本実施例3によれば、実施例1の効果に加えて、被検体の動きにより位置合わせ精度が低下した場合に、精度低下を通知することができる。
【実施例4】
【0038】
図9に、本発明の実施例4の位置合わせ情報の生成処理により生成されたナビゲーション画像の他の表示例を示す。本実施例4は、実施例1〜3の術具の画像誘導方法とは異なり、超音波プローブの画像誘導方法に本発明を適用した例である。すなわち、図9の3次元レンダリング画像713に仮想超音波プローブ表示714を重ねて表示させた例である。したがって、本実施例の医用画像撮像装置13は、超音波画像撮像装置である。そして、本実施例4の場合は、術具位置検出具に代えて超音波プローブ位置検出具を設け、超音波プローブにより撮像される断層像等の位置及び向きをナビゲーションして、撮像操作を支援する。図9において、符号711は任意断面のナビゲーション画像、符号712は超音波診断画像である。本実施例4のナビゲーション画像711には、超音波プローブ及び超音波スキャン面の仮想画像が描画されるようになっている。
【0039】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。要は、医用画像撮像装置により撮像した医用画像に付されたDICOM情報等の画像の位置情報と、三次元位置計測装置により計測される医用画像撮像装置の位置情報と、医用画像撮像装置の画像空間に設定された基準位置の位置情報と、被検体位置検出具の位置情報とに基づいて、被検体の位置情報と医用画像の位置情報の位置合わせ情報を生成することを特徴とする。さらに、要約すれば、医用画像に付されたDICOM情報等の画像の医用画像座標系Cと被検体位置検出座標系Cを、医用画像を撮像する撮像装置座標系C及び撮像空間座標系Cと三次元位置計測座標系Cを介して座標変換する同次座標変換行列Tを位置合わせ情報として採用したことを特徴とする。そして、この位置合わせ情報を用い、三次元位置計測座標系Cで計測される術具の位置情報を医用画像座標系Cに変換して、医用画像に重ねて表示する仮想術具表示の位置を精度良くかつ位置合わせできる。
【符号の説明】
【0040】
1 医用画像表示装置
2 CPU
3 主メモリ
4 記憶装置
5 表示メモリ
6 表示装置
7 コントローラ
8 マウス
9 キーボード
10 ネットワークアダプタ
11 システムバス
12 ネットワーク
13 医用画像撮影装置
14 医用画像データベース
15 三次元位置計測装置
301 被検体
311 被検体位置検出具
312 撮像装置位置検出具
313 アイソセンタ
401 術具
402 術具位置検出具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の医用画像を撮像する医用画像撮像装置と、前記医用画像を表示する表示装置と、前記被検体の位置情報を検出するために前記被検体に相対位置関係を固定して設けられる被検体位置検出具と、前記医用画像撮像装置の位置情報を検出するために前記医用画像撮像装置に固定して設けられる撮像装置位置検出具と、前記被検体位置検出具と前記撮像装置位置検出具のそれぞれの位置情報を計測するための三次元位置計測装置と、前記被検体の位置情報と前記医用画像の位置情報の位置合わせを行う医用画像表示装置とを備えてなる医用画像表示装置システムであって、
前記医用画像表示装置は、前記医用画像に付された画像位置及び向きを含む位置情報が展開される医用画像座標系Cと前記被検体位置検出具により展開される被検体位置検出座標系Cを、前記医用画像撮像装置の撮像装置座標系C及び撮像空間座標系Cと三次元位置計測座標系Cを介して座標変換する同次座標変換行列Tを算出し、該同次座標変換行列Tを前記被検体の位置情報と前記医用画像の位置情報の位置合わせ情報として用いることを特徴とする医用画像表示装置システム。
【請求項2】
請求項1に記載の医用画像表示装置システムにおいて、
前記医用画像表示装置は、
前記三次元位置計測装置により展開される三次元空間位置座標系Cを前記被検体位置検出具により展開される被検体位置検出座標系Cに変換する同次座標変換行列Tを算出し、
前記三次元空間位置座標系Cと、前記撮像装置位置検出具により展開される撮像装置位置検出座標系Cと、前記医用画像撮像装置の撮像空間により展開される撮像空間座標系Cと、前記医用画像に付された画像の位置情報の医用画像座標系Cとに基づいて、前記被検体位置検出座標系Cを前記医用画像座標系Cに変換する同次座標変換行列Tを算出することを特徴とする医用画像表示装置システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の医用画像表示装置システムにおいて、
前記医用画像表示装置は、
前記同次座標変換行列TとTに基づいて、前記三次元位置計測装置により計測される前記被検体位置検出具の位置情報の変化に対応させて前記三次元空間位置座標系Cを前記医用画像座標系Cに変換する同次座標変換行列Tregを算出して前記位置合わせ情報とすることを特徴とする医用画像表示装置システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医用画像表示装置システムにおいて、
さらに、前記被検体に手術を施す術具の位置情報を検出するための術具位置検出具を有し、
前記医用画像表示装置は、三次元位置計測座標系Cで計測される術具の位置情報を前記同次座標変換行列T又はTregを用いて医用画像座標系Cの位置情報に変換して、前記術具の仮想術具表示を前記医用画像に重ねて表示させることを特徴とする医用画像表示装置システム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医用画像表示装置システムにおいて、
前記医用画像撮像装置が超音波医用撮像装置であり、前記超音波撮像装置の超音波プローブの位置情報を検出するためのプローブ位置検出具を備え、
前記医用画像表示装置は、三次元位置計測座標系Cで計測される前記超音波プローブの位置情報を前記同次座標変換行列T又はTregを用いて医用画像座標系Cの位置情報に変換して、前記超音波プローブの仮想プローブ表示を前記医用画像に重ねて表示させることを特徴とする医用画像表示装置システム。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医用画像表示装置システムにおいて、
前記医用画像に付された画像位置及び向きを含む位置情報は、DICOM情報であることを特徴とする医用画像表示装置システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の医用画像表示装置システムにおいて、
前記医用画像表示装置は、前記三次元位置計測装置により計測される前記被検体位置検出具の位置情報を取得する度に前記位置合わせ情報を更新することを特徴とする医用画像表示システム。
【請求項8】
請求項7に記載の医用画像表示システムにおいて、
前記医用画像表示装置は、前記被検体位置検出具の位置情報を計測できないときは、更新前の前記位置合わせ情報を用いることを特徴とする医用画像表示システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の医用画像表示システムにおいて、
前記医用画像表示装置は、前記被検体位置検出具の位置情報が取得できなった場合に、前記位置合わせ情報が更新できなかったことを前記表示装置に警告表示することを特徴とする医用画像表示システム。
【請求項10】
請求項4に記載の医用画像表示システムにおいて、
前記医用画像表示装置は、前記被検体位置検出具が複数設けられている場合は、前記複数の被検体位置検出具のそれぞれについて前記位置合わせ情報T又はTregを生成し、三次元位置計測座標系Cで計測される術具の複数の位置情報を前記同次座標変換行列T又はTregを用いてそれぞれ前記医用画像座標系Cの位置情報に変換し、変換された前記医用画像座標系Cの複数の位置情報に基づいて一の位置情報を求め、求めた一の位置情報に基づいて前記術具の仮想術具表示を前記医用画像に重ねて表示させることを特徴とする医用画像表示システム。
【請求項11】
請求項10に記載の医用画像表示システムにおいて
前記医用画像表示装置は、変換された前記医用画像座標系Cの複数の位置情報に基づいて、位置合わせ精度を判定する閾値と比較し、位置合わせ精度の低下を警告表示することを特徴とする医用画像表示システム。
【請求項12】
被検体の医用画像を撮像する医用画像撮像装置と、前記医用画像を表示する表示装置と、前記被検体の位置情報を検出するために前記被検体に相対位置関係を固定して設けられる被検体位置検出具と、前記医用画像撮像装置の位置情報を検出するために前記医用画像撮像装置に固定して設けられる撮像装置位置検出具と、前記被検体位置検出具と前記撮像装置位置検出具のそれぞれの位置情報を計測するための三次元位置計測装置とを用いて、前記被検体の位置情報と前記医用画像の位置情報の位置合わせを行う医用画像誘導方法であって、
前記医用画像に付された画像位置及び向きを含む位置情報が展開される医用画像座標系Cと前記被検体位置検出具により展開される被検体位置検出座標系Cを、前記医用画像撮像装置の撮像装置座標系C及び撮像空間座標系Cと三次元位置計測座標系Cを介して座標変換する同次座標変換行列Tを算出し、該同次座標変換行列Tを前記被検体の位置情報と前記医用画像の位置情報の位置合わせ情報として用いることを特徴とする医用画像誘導方法。
【請求項13】
請求項12に記載の医用画像誘導方法において、
前記三次元位置計測装置により展開される三次元空間位置座標系Cを前記被検体位置検出具により展開される被検体位置検出座標系Cに変換する同次座標変換行列Tを算出し、
前記三次元空間位置座標系Cと、前記撮像装置位置検出具により展開される撮像装置位置検出座標系Cと、前記医用画像撮像装置の撮像空間により展開される撮像空間座標系Cと、前記医用画像に付された画像の位置情報の医用画像座標系Cとに基づいて、前記被検体位置検出座標系Cを前記医用画像座標系Cに変換する同次座標変換行列Tを算出することを特徴とする医用画像誘導方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の医用画像誘導方法において、
前記同次座標変換行列TとTに基づいて、前記三次元位置計測装置により計測される前記被検体位置検出具の位置情報の変化に対応させて前記三次元空間位置座標系Cを前記医用画像座標系Cに変換する同次座標変換行列Tregを算出して前記位置合わせ情報とすることを特徴とする医用画像誘導方法。
【請求項15】
請求項12乃至14のいずれか1項に記載の医用画像誘導方法において、
さらに、前記被検体に手術を施す術具の位置情報を検出するための術具位置検出具を用い、
三次元位置計測座標系Cで計測される術具の位置情報を前記同次座標変換行列T又はTregを用いて医用画像座標系Cの位置情報に変換して、前記術具の仮想術具表示を前記医用画像に重ねて表示させることを特徴とする医用画像誘導方法。
【請求項16】
請求項12乃至14のいずれか1項に記載の医用画像誘導方法において、
前記医用画像撮像装置として超音波医用撮像装置と、前記超音波撮像装置の超音波プローブの位置情報を検出するためのプローブ位置検出具を用い、
三次元位置計測座標系Cで計測される前記超音波プローブの位置情報を前記同次座標変換行列T又はTregを用いて医用画像座標系Cの位置情報に変換して、前記超音波プローブの仮想プローブ表示を前記医用画像に重ねて表示させることを特徴とする医用画像誘導方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−81167(P2012−81167A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231432(P2010−231432)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 超音波医学 第37巻 日本超音波医学会 第83回学術集会プログラム・講演抄録集 平成22年4月15日発行
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発/橋渡し促進技術開発/疾患動物を用いた新規治療機器の安全性・有効性評価手法の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】