説明

医用装置およびプログラム

【課題】別々のスキャンで得られた所定の部位の画像を、同じ断面位置で容易に比較できるようにする。
【解決手段】T1強調スキャンST1およびT2強調スキャンST2を実行し、T1強調スキャンST1における肝臓の上端の位置Vと、T2強調スキャンST2における肝臓の上端の位置Wとを検出する。肝臓の上端の位置Vおよび位置Wを検出した後、位置Vと位置Wとのずれ量Δdに基づいて、T2強調スキャンST2におけるスライス位置C〜Cを、T1強調スキャンST1のスライス位置C〜Cに対して、相対的に位置合わせする。そして、位置合わせが実行された後のスライス位置に従って、表示部にT1強調画像およびT2強調画像を表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の所定の部位の画像データを取得するためのスキャンを実行する医用装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、磁気共鳴イメージング装置による検査では、検査部位に複数のスライス位置を設定し、設定した複数のスライス位置に従って、T1強調画像データおよびT2強調画像データなど、複数種類の画像データが取得される(例えば、特許文献1参照)。オペレータは、取得された複数種類の画像データを、表示部に表示することによって、複数種類の画像データを比較することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-57532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、肝臓を撮影する場合、肝臓のT1強調画像データを取得するためのT1強調スキャンと、肝臓のT2強調画像データを取得するためのT2強調スキャンが行われる。そして、T1強調画像およびT2強調画像が表示部に表示される(図23参照)。
【0005】
図23は、表示部の表示画面11aに表示されたT1強調画像およびT2強調画像を示す図である。
【0006】
表示画面11aの左欄Lには、スライス位置Cのアキシャル断面のT1強調画像ACと、隣のスライス位置Ck+1のアキシャル断面のT1強調画像ACk+1が表示されている。一方、表示画面11aの右欄Rには、スライス位置Cのアキシャル断面のT2強調画像BCと、隣のスライス位置Ck+1のアキシャル断面のT2強調画像BCk+1が表示されている。
【0007】
一般的に、別々のスキャンで得られたT1強調画像およびT2強調画像を表示させる場合、T1強調画像のスライス位置とT2強調画像のスライス位置が同じになるように画像が表示される。例えば、図23では、表示画面11aに表示されているT1強調画像のスライス位置はCおよびCk+1であり、一方、T2強調画像のスライス位置もCおよびCk+1である。
【0008】
しかし、肝臓は呼吸によって動く臓器であるので、T1強調スキャンで得られた画像データにおける肝臓の位置と、T2強調スキャンで得られた画像データにおける肝臓の位置は、必ずしも一致しない場合がある。この場合、表示画面11aに表示されるT1強調画像およびT2強調画像は、スライス位置が同じであっても、肝臓を横切る断面位置が異なってしまい、T1強調画像の肝臓とT2強調画像の肝臓を、同じ断面位置で比較することができない。そこで、オペレータは、T1強調画像の肝臓と、T2強調画像の肝臓とを、同じ断面位置で比較したい場合、例えば、表示画面11aの右欄Rのスライス位置を手動で変更し、左欄LのT1強調画像の肝臓と同じ断面位置を探し出す必要がある。このような作業は、オペレータに負担がかかるので、別々のスキャンで得られた画像であっても、簡便にスライス位置を調整できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、被検体の所定の部位の複数のスライス位置における画像データを取得するためのスキャンを実行し、別々のスキャンごとに、前記所定の部位の特徴点の位置を検出する手段と、
前記所定の部位の特徴点の位置に基づいて、前記別々のスキャンのスライス位置の位置合わせを実行する位置合わせ手段と、
位置合わせが実行された後のスライス位置に従って、前記別々のスキャンにより取得された前記所定の部位の画像データを表示する表示手段と、
を有する医用装置である。
【0010】
本発明の第2の態様は、被検体の所定の部位の複数のスライス位置における画像データを取得するためのスキャンを実行し、別々のスキャンで取得された前記所定の部位の画像データを表示する医用装置のプログラムであって、
前記別々のスキャンごとに、前記所定の部位の特徴点の位置を検出する特徴点検出処理と、
前記所定の部位の特徴点の位置に基づいて、前記別々のスキャンのスライス位置の位置合わせを実行する位置合わせ処理と、
位置合わせが実行された後のスライス位置に従って、前記別々のスキャンにより取得された前記所定の部位の画像データを表示する表示処理と、
を計算機に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
別々のスキャンのスライス位置の位置合わせを実行することにより、別々のスキャンにより取得された所定の部位の画像を、同じ断面位置(又は近い断面位置)で容易に比較することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の形態の磁気共鳴イメージング装置を示す概略図である。
【図2】第1の形態におけるスキャンの一例の説明図である。
【図3】MRI装置100の処理フローを示す図である。
【図4】スカウトスキャンSscoutで得られたスカウト画像データを概略的に示す図である。
【図5】設定されたスライス位置の一例を示す図である。
【図6】T1強調スキャンST1およびT2強調スキャンST2におけるスライス位置を示す図である。
【図7】T1強調スキャンST1で得られたT1強調画像AC〜ACと、T2強調スキャンST2で得られたT2強調画像BC〜BCとを概略的に示す図である。
【図8】ステップST4で実行されるフローの一例を示す図である。
【図9】作成された投影画像データを示す図である。
【図10】加算プロファイルAを示す図である。
【図11】肝臓の上端のAP方向の位置Lapを示す図である。
【図12】加算プロファイルBを示す図である。
【図13】肝臓の上端のRL方向の位置Lrlを示す図である。
【図14】肝臓の上端のSI方向の位置Lsiの位置を求めるときの説明図である。
【図15】T2強調スキャンST2における肝臓の上端の位置を示す図である。
【図16】T1強調スキャンST1およびT2強調スキャンST2におけるスライス位置の位置合わせのやり方の説明図である。
【図17】表示部11の表示画面11aに表示されたT1強調画像およびT2強調画像を示す図である。
【図18】第2の形態のフローを示す図である。
【図19】作成された投影画像データを示す図である。
【図20】肝臓の上端のAP方向の位置Lap′およびRL方向の位置Lrl′を求めるときの説明図である。
【図21】T1強調スキャンST1における肝臓の上端の検出方法の説明図である。
【図22】T2強調スキャンST2における肝臓の上端の位置を示す図である。
【図23】表示部の表示画面11aに表示されたT1強調画像およびT2強調画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施するための形態について説明するが、発明を実施するための形態は、以下の形態に限定されることはない。
【0014】
図1は、本発明の第1の形態の磁気共鳴イメージング装置を示す概略図である。
磁気共鳴イメージング(MRI(Magnetic Resonance Imaging))装置100は、磁場発生装置2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0015】
磁場発生装置2は、被検体12が収容されるボア21と、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、送信コイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場B0を印加し、勾配コイル23は勾配磁場を印加し、送信コイル24はRFパルスを送信する。尚、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0016】
テーブル3は、クレードル31を有している。クレードル31は、ボア21内に移動できるように構成されている。クレードル31によって、被検体12はボア21に搬送される。
【0017】
受信コイル4は、被検体12の腹部から胸部に渡って取り付けられている。受信コイル4は、被検体12からの磁気共鳴信号を受信する。
【0018】
MRI装置1は、更に、シーケンサ5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、中央処理装置9、操作部10、および表示部11を有している。
【0019】
シーケンサ5は、中央処理装置9の制御を受けて、被検体12を撮影するための情報を送信器6および勾配磁場電源7に送る。
【0020】
送信器6は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、RFコイル24を駆動する駆動信号を出力する。
【0021】
勾配磁場電源7は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、勾配コイル23を駆動する駆動信号を出力する。
【0022】
受信器8は、受信コイル4で受信された磁気共鳴信号を信号処理し、信号処理により得たれたデータを中央処理装置9に出力する。
【0023】
中央処理装置9は、シーケンサ5および表示部11に必要な情報を伝送したり、受信器8から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MRI装置100の各種の動作を実現するように、MRI装置100の各部の動作を制御する。中央処理装置9は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。中央処理装置9は、スライス位置設定手段91、特徴点検出手段92、位置合わせ手段93、表示制御手段94などを有している。
【0024】
スライス位置設定手段91は、操作部10から入力された情報に基づいて、スライス位置を設定する。
【0025】
特徴点検出手段92は、別々のスキャンごとに、被検体12の所定の部位の特徴点の位置を検出する。
【0026】
位置合わせ手段93は、所定の部位の特徴点の位置に基づいて、別々のスキャンのスライス位置の位置合わせを実行する。
【0027】
表示制御手段94は、位置合わせが実行された後のスライス位置に従って、表示部11に、別々のスキャンにより取得された画像データを表示させる。
【0028】
中央処理装置9は、スライス位置設定手段91、特徴点検出手段92、位置合わせ手段93、表示制御手段94の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。中央処理装置9は、課題を解決するための手段に記載された計算機に相当する。
【0029】
操作部10は、オペレータ13により操作され、種々の情報を中央処理装置9に入力する。表示部11は種々の情報を表示する。
【0030】
MRI装置100は、上記のように構成されている。
次に、第1の形態で行われるスキャンについて説明する。尚、以下の説明では、被検体の肝臓を含む部位を撮影する場合について説明するが、本発明は、肝臓以外の部位を撮影する場合にも適用することができる。
【0031】
図2は、第1の形態におけるスキャンの一例の説明図である。
スカウトスキャンSscoutでは、スカウト画像データを取得するためのスキャンが行われる。スカウト画像データは、被検体の肝臓を含む部位のスライス位置を決定するために使用される画像データである。スカウト画像データは、3Dスキャンにより取得してもよいし、2Dスキャンによって取得してもよい。
【0032】
T1強調スキャンST1では、被検体12が息止めをした状態で、肝臓を含む部位のT1強調画像データを取得するための2Dスキャンが行われる。T1強調スキャンST1では、スカウト画像データに基づいて決定されたスライス位置の断面画像データが得られる。
【0033】
T2強調スキャンST2では、被検体12が息止めをした状態で、肝臓を含む部位のT2強調画像データを取得するための2Dスキャンが行われる。T2強調スキャンST2では、T1強調スキャンST1と同様に、スカウト画像データに基づいて決定されたスライス位置の断面画像データが得られる。
【0034】
次に、MRI装置100を用いて上記のスキャンSscout〜ST2を実行するときのフローについて説明する。
【0035】
図3は、MRI装置100の処理フローを示す図である。
ステップST1では、スカウトスキャンSscoutが実行される(図4参照)。
【0036】
図4は、スカウトスキャンSscoutで得られたスカウト画像データを概略的に示す図である。
【0037】
スカウトスキャンSscoutを実行することにより、肝臓12aを含む部位のスカウト画像データSCが得られる。スカウト画像データSCを取得した後、ステップST2に進む。
【0038】
ステップST2では、オペレータ13は、スカウト画像データSCに基づいて、肝臓のスライス位置を設定する(図5参照)。
【0039】
図5は、設定されたスライス位置の一例を示す図である。
オペレータ13は、表示部11の表示画面11aに、スカウト画像を表示させる。図5では、コロナル断面のスカウト画像SCが表示されている。オペレータ13は、操作部10を操作して、スライス位置C〜Cを設定するための情報を入力する。スライス位置設定手段91(図1参照)は、入力された情報に基づいて、スライス位置C〜Cを設定する。スライス位置C〜Cを設定したら、その他の撮影条件(スライス厚など)を設定し、ステップST3に進む。
【0040】
ステップST3では、T1強調スキャンST1およびT2強調スキャンST2が順に実行される。以下に、T1強調スキャンST1およびT2強調スキャンST2について、図6を参照しながら説明する。
【0041】
T1強調スキャンST1では、被検体が息止めをした状態で、ステップST2で設定されたスライス位置C〜CにおけるT1強調画像データを取得するためのスキャンが実行される。
【0042】
図6(a1)は、T1強調スキャンST1において被検体12が息止めをしたときの肝臓12aの位置と、ステップST2で設定されたスライス位置C〜Cとの位置関係を、AP方向から見た図であり、図6(a2)は、その位置関係を、スライスC側から見た図である。
【0043】
T1強調スキャンST1では、図6(a1)および(a2)に示すスライス位置C〜Cに従って、肝臓を含む部位のアキシャル断面のT1強調画像データが収集される。T1強調スキャンST1が終了した後、次のT2強調スキャンST2が実行される。
【0044】
T2強調スキャンST2では、被検体が息止めをした状態で、ステップST2で設定されたスライス位置C〜CにおけるT2強調画像データを取得するためのスキャンが実行される。
【0045】
図6(b1)は、T2強調スキャンST2において被検体12が息止めをしたときの肝臓12aの位置と、ステップST2で設定されたスライス位置C〜Cとの位置関係を、AP方向から見た図であり、図6(b2)は、その位置関係を、スライスC側から見た図である。
【0046】
T2強調スキャンST2では、図6(b1)および(b2)に示すスライス位置C〜Cに従って、肝臓を含む部位のアキシャル断面のT2強調画像データが収集される。
【0047】
上記のようにして、スライス位置C〜Cにおけるアキシャル断面のT1強調画像データおよびT2強調画像データを得ることができる。図7は、T1強調スキャンST1で得られたT1強調画像データAC〜ACと、T2強調スキャンST2で得られたT2強調画像データBC〜BCとを概略的に示す図である。これらの画像データを取得したら、ステップST4に進む。
【0048】
ステップST4では、特徴点検出手段92(図1参照)が、ステップST3により得られたT1強調スキャンST1のT1強調画像データAC〜ACに基づいて、T1強調スキャンST1における撮像部位の特徴点の位置を検出する。本形態では、撮像部位の特徴点の位置として、肝臓の上端の位置を検出する。以下に検出方法を説明する。
【0049】
図8は、ステップST4で実行されるフローの一例を示す図である。
ステップST41において、特徴点検出手段92は、T1強調画像データAC〜ACから、サジタル面の投影画像データと、コロナル面の投影画像データとを作成する(図9参照)。
【0050】
図9は、作成された投影画像データを示す図である。
サジタル面の投影画像データ(以下、「サジタル投影画像データ」と呼ぶ)SAは、T1強調画像データAC〜ACをサジタル面に投影することにより作成される。また、コロナル面の投影画像データ(以下、「コロナル投影画像データ」と呼ぶ)COは、T1強調画像AC〜ACをコロナル面に投影することにより作成される。これらの投影画像データSAおよびCOを作成した後、ステップST42に進む。
【0051】
ステップST42では、特徴点検出手段92が、サジタル投影画像データSAに基づいて、肝臓の上端のAP方向の位置を求める(図10および図11参照)。
【0052】
図10および図11は、肝臓の上端のAP方向の位置Lapを求めるときの説明図である。
【0053】
特徴点検出手段92は、先ず、サジタル投影画像データSAをSI方向に加算し、加算プロファイルA(図10参照)を作成する。そして、加算プロファイルAに基づいて、肝臓の上端のAP方向の位置を求める(図11参照)。
【0054】
図11は、肝臓の上端のAP方向の位置Lapを示す図である。
肝臓12aは高信号で描出されるので、肝臓の部分における加算プロファイルAの加算値は大きくなる。したがって、加算プロファイルAの中から加算値が最大となるピークPを特定することにより、肝臓の上端のAP方向の位置Lapを求めることができる。肝臓の上端のAP方向の位置Lapを求めた後、ステップST43に進む。
【0055】
ステップST43では、特徴点検出手段92が、コロナル投影画像データCOに基づいて、肝臓の上端のRL方向の位置を求める(図12および図13参照)。
【0056】
図12および図13は、肝臓の上端のRL方向の位置Lrlを求めるときの説明図である。
【0057】
特徴点検出手段92は、先ず、コロナル投影画像データCOをSI方向に加算し、加算プロファイルB(図12参照)を算出する。そして、加算プロファイルBに基づいて、肝臓の上端のRL方向の位置を求める(図13参照)。
【0058】
図13は、肝臓の上端のRL方向の位置Lrlを示す図である。
肝臓12aは高信号で描出されるので、肝臓の部分における加算プロファイルBの加算値は大きくなる。したがって、加算プロファイルBの中から加算値が最大となるピークPを特定することにより、肝臓の上端のRL方向の位置Lrlを検出することができる。肝臓12aの上端のRL方向の位置Lrlを検出した後、ステップST44に進む。
【0059】
ステップST44では、特徴点検出手段92は、T1強調スキャンST1における肝臓の上端のSI方向の位置を求める(図14参照)。
【0060】
図14は、肝臓の上端のSI方向の位置Lsiの位置を求めるときの説明図である。
特徴点検出手段92は、先ず、図14(a)に示すように、肝臓の上端のAP方向の位置Lapと、RL方向の位置Lrlとの交差位置Xを求める。そして、交差位置Xにおける信号強度を求める。図14(b)に、交差位置Xにおける信号強度曲線Cxが示されている。信号強度曲線Cxの横軸はSI方向の位置を表しており、縦軸は信号強度を表している。肝臓領域は、肺領域よりも、信号強度が大きくなる。したがって、信号強度が急激に変化する位置を検出することによって、肝臓の上端のSI方向の位置Lsiを求めることができる。
【0061】
したがって、図14(c)に示すように、肝臓の上端のAP方向の位置Lap、RL方向の位置Lrl、およびSI方向の位置Lsiの交点Vを、肝臓の上端の位置として検出することができる。
【0062】
このようにして、ステップST4が終了する。ステップST4が終了したら、ステップST5(図3参照)に進む。
【0063】
ステップST5では、特徴点検出手段92が、ステップST3により得られたT2強調スキャンST2のT2強調画像データBC〜BC(図7参照)に基づいて、T2強調スキャンST2における撮像部位の特徴点の位置を検出する(図15参照)。
【0064】
図15は、T2強調スキャンST2における肝臓の上端の位置を示す図である。
図15では、T2強調スキャンST2において検出された肝臓の上端を、符号「W」で示してある。また、図15には、ステップST4で検出されたT1強調スキャンST1における肝臓の上端の位置Vも示してある。
【0065】
T2強調スキャンST2における肝臓の上端の位置Wは、T1強調スキャンST1における肝臓の上端の位置Vの検出方法と同様に、図8に示すフローに従って検出することができる。ただし、肝臓のAP方向およびRL方向の動き量は、SI方向の動き量に比べて、十分に小さいと考えることができる。したがって、T1強調スキャンST1の画像データから求めた肝臓の上端のAP方向の位置を、T2強調スキャンST2における肝臓の上端のAP方向の位置として採用してもよい。同様に、T1強調スキャンST1の画像データから求めた肝臓の上端のRL方向の位置を、T2強調スキャンST2における肝臓の上端のRL方向の位置として採用してもよい。
【0066】
T2強調スキャンST2における肝臓の上端の位置Wを検出した後、ステップST6に進む。
【0067】
ステップST6では、位置合わせ手段93(図1参照)が、T1強調スキャンST1における肝臓の上端の位置Vと、T2強調スキャンST2における肝臓の上端の位置Wとに基づいて、T1強調スキャンST1およびT2強調スキャンST2におけるスライス位置の位置合わせを実行する。
【0068】
図16は、T1強調スキャンST1およびT2強調スキャンST2におけるスライス位置の位置合わせのやり方の説明図である。
【0069】
図16(a)はスライス位置の位置合わせ前を概略的に示す図、図16(b)はスライス位置の位置合わせ後を概略的に示す図である。
【0070】
スライス位置を位置合わせする前は、図16(a)に示すように、T1強調スキャンST1における肝臓の上端の位置Vと、T2強調スキャンST2における肝臓の上端の位置Wとの間に、ずれ量Δdが生じている。位置合わせ手段93は、ずれ量Δdに基づいて、T2強調スキャンST2におけるスライス位置C〜Cを、T1強調スキャンST1のスライス位置C〜Cに対して、相対的に位置合わせする。
【0071】
スライス位置の位置合わせを実行することにより、図16(b)に示すように、T1強調スキャンST1とT2強調スキャンST2との間の肝臓の位置ずれを補正することができる。したがって、T2強調スキャンST2における肝臓の断面位置を、T1強調スキャンST1における肝臓の断面位置に合わせることができる。スライス位置の位置合わせを行った後、ステップST7に進む。
【0072】
ステップST7では、表示制御手段94(図1参照)が、位置合わせが実行された後のスライス位置(図16(b)参照)に従って、表示部11に画像データを表示させる(図17参照)。
【0073】
図17は、表示部11の表示画面11aに表示されたT1強調画像およびT2強調画像を概略的に示す図である。
【0074】
表示部11の表示画面11aの左欄Lには、スライス位置CのT1強調画像ACと、隣のスライス位置Ck+1のT1強調画像ACk+1が表示されている。一方、表示画面11aの右欄Rには、スライス位置CのT2強調画像BCと、隣のスライス位置Cj+1のT2強調画像BCj+1が表示されている。
【0075】
第1の形態では、肝臓の上端のずれ量Δdに基づいて、T1強調スキャンST1およびT2強調スキャンST2におけるスライス位置を位置合わせしている。したがって、T1強調スキャンST1およびT2強調スキャンST2において、息止めをしたときの肝臓の位置が異なっていても、肝臓の断面位置が同じになるように(又は肝臓の断面位置が近くなるように)T1強調画像およびT2強調画像が表示される。このため、オペレータは、T1強調画像のスライス位置とT2強調画像のスライス位置との位置合わせを手動で行わなくても、別々のスキャン(T1強調スキャンST1およびT2強調スキャンST2)で得られた肝臓の画像を、同じ断面位置(又は近い断面位置)で容易に比較することができる。
【0076】
また、オペレータ13は、被検体12に対して、事前に、撮影中はできるだけ体を動かさないようにお願いしているが、それでも、被検体12は撮影中に体を(無意識にのうちに)動かしてしまうことがある。このような場合であっても、上記のように、スライス位置の位置合わせを行うことによって、肝臓の断面位置が同じになるように(又は肝臓の断面位置が近くなるように)T1強調画像およびT2強調画像を表示することができる。
【0077】
更に、第1の形態では、ナビゲータによって横隔膜の位置を検出する必要がないので、腹水などの影響によるスライス位置のずれを低減することもできる。
【0078】
上記の説明では、特徴点として、肝臓の上端の位置を検出している。しかし、肝臓の下端など、別の特徴点の位置を検出してスライス位置を合わせてもよい。
【0079】
尚、上記の説明では、T1強調スキャンST1およびT2強調スキャンST2は、被検体が息止めをした状態で実行されているが、自由呼吸下で実行されていてもよいし、呼吸同期法を用いて実行されてもよい。
【0080】
(2)第2の形態
第1の形態では、T1強調スキャンST1およびT2強調スキャンST2で得られた画像データに基づいて、肝臓の上端のAP方向およびRL方向の位置を求めている。しかし、スカウトスキャンSscoutで取得されたスカウト画像データに基づいて、肝臓の上端のAP方向およびRL方向の位置を求めてもよい。第2の形態では、スカウトスキャンSscoutで取得されたスカウト画像データに基づいて、肝臓の上端のAP方向およびRL方向の位置を求める場合の例について説明する。
【0081】
尚、第2の形態のMRI装置は、第1の形態のMRI装置100と同様に、図1に示す構成を有している。しかし、第2の形態のMRI装置は、第1の形態のMRI装置100と比較すると、特徴点検出手段92の処理動作が異なっている。第2の形態における特徴点検出手段92の処理動作については、後述する。
【0082】
次に、第2の形態において、図2に示すスキャンSscout〜ST2を実行するときの処理フローについて説明する。
【0083】
図18は、第2の形態のフローを示す図である。
ステップST1では、スカウトスキャンSscout(図2参照)が実行される。スカウトスキャンSscoutが実行されることにより、図4に示すように、肝臓を含む部位のスカウト画像データSCが取得される。スカウトスキャンSscoutを実行したら、ステップST2が実行される。ステップST2では、第1の形態と同様に、スライス位置C〜C(図5参照)が設定される。
【0084】
また、第2の形態では、ステップST1の後、ステップST21およびST22も実行される。以下に、ステップST21およびST22について、順に説明する。
【0085】
ステップST21では、特徴点検出手段92(図1参照)が、スカウト画像データSCから、サジタル面の投影画像データと、コロナル面の投影画像データとを作成する(図19参照)。
【0086】
図19は、作成された投影画像データを示す図である。
サジタル投影画像データSAは、スカウト画像データSCをサジタル面に投影することにより作成される。また、コロナル投影画像データCOは、スカウト画像データSCをコロナル面に投影することにより作成される。これらの投影画像データSAおよびCOを作成した後、ステップST22に進む。
【0087】
ステップST22では、特徴点検出手段92が、サジタル投影画像データSAおよびコロナル投影画像データCOに基づいて、肝臓の上端のAP方向の位置Lap′およびRL方向の位置Lrl′を求める(図20参照)。
【0088】
図20は、肝臓の上端のAP方向の位置Lap′およびRL方向の位置Lrl′を求めるときの説明図である。
【0089】
肝臓の上端のAP方向の位置Lap′は、第1の形態と同様に、加算プロファイルAから求める。また、肝臓の上端のRL方向の位置Lrl′は、第1の形態と同様に、加算プロファイルBから求める。肝臓の上端のAP方向の位置Lap′およびRL方向の位置Lrl′を求めた後、ステップST3に進む。
【0090】
ステップST3では、T1強調スキャンST1およびT2強調スキャンST2(図2参照)を実行する。T1強調スキャンST1およびT2強調スキャンST2によって、図7に示す画像データ(T1強調スキャンST1のT1強調画像データAC〜AC、およびT2強調スキャンST2のT2強調画像データBC〜BC)が得られる。これらの画像データを取得したら、ステップST4に進む。
【0091】
ステップST4では、特徴点検出手段92は、T1強調スキャンST1における肝臓の上端の位置を検出する(図21参照)。
【0092】
図21は、T1強調スキャンST1における肝臓の上端の検出方法の説明図である。
特徴点検出手段92は、先ず、ステップST22で求めたスカウトスキャンSscoutにおける肝臓の上端のAP方向の位置Lap′およびRL方向の位置Lrl′に基づいて、T1強調スキャンST1における肝臓の上端のSI方向の位置Lsi′を求める。具体的には、以下のようにして、肝臓の上端のSI方向の位置Lsi′を求める。
【0093】
特徴点検出手段92は、図21(a)に示すように、肝臓の上端のAP方向の位置Lap′と、RL方向の位置Lrl′との交差位置X′を求め、交差位置X′における信号強度曲線Cx′を求める(図21(b)参照)。肝臓領域は、肺領域よりも、信号強度が大きくなるので、信号強度曲線Cx′の中で信号強度が急激に変化する位置を検出することによって、肝臓の上端のSI方向の位置Lsi′を求めることができる。したがって、図21(c)に示すように、肝臓の上端のAP方向の位置Lap′と、RL方向の位置Lrl′と、SI方向の位置Lsi′との交点Vを、肝臓の上端の位置として検出することができる。
【0094】
T1強調スキャンST1における肝臓の上端の位置Vを検出した後、ステップST5に進む。
【0095】
ステップST5では、特徴点検出手段92が、T2強調スキャンST2における肝臓の上端の位置を検出する。(図22参照)。
【0096】
図22は、T2強調スキャンST2における肝臓の上端の位置を示す図である。
図22では、T2強調スキャンST2において検出された肝臓の上端を、符号「W」で示してある。
【0097】
T2強調スキャンST2における肝臓の上端の位置Wは、ステップST4と同様に、スカウトスキャンSscoutにおける肝臓の上端のAP方向の位置Lap′とRL方向の位置Lrl′との交差位置X′を求め、交差位置X′における信号強度曲線(図示せず)から、肝臓の上端のSI方向の位置Lsi’’を求めることによって、検出することができる。
【0098】
T2強調スキャンST2における肝臓の上端の位置Wを検出した後、ステップST6に進む。
【0099】
ステップST6およびステップST7は、第1の形態と同様であるので、説明は省略する。
【0100】
第2の形態では、第1の形態と同様に、肝臓の断面位置が同じになるように(又は肝臓の断面位置が近くなるように)T1強調画像およびT2強調画像が表示される。したがって、オペレータは、T1強調画像のスライス位置とT2強調画像のスライス位置との位置合わせを手動で行わなくても、別々のスキャンで得られた肝臓の画像を、同じ断面位置(又は近い断面位置)で容易に比較することができる。
【0101】
一般的に、肝臓のAP方向およびRL方向の動き量は、SI方向の動き量に比べて、十分に小さいと考えることができる。したがって、第2の形態のように、スカウトスキャンSscoutのスカウト画像データを用いて、T1強調スキャンST1(およびT2強調スキャンST2)における肝臓の上端のAP方向およびRL方向の位置を求めてもよい。
【0102】
第1の形態および第2の形態において、T1強調スキャンST1およびT2強調スキャンST2では、2Dスキャンが実行されている。しかし、2Dスキャンの代わりに、3Dスキャンで画像データを収集してもよい。
【0103】
第1の形態および第2の形態では、肝臓の上端のAP方向の位置およびRL方向の位置を求めるために、サジタル投影画像データおよびコロナル投影画像データを作成している。しかし、肝臓の上端のAP方向の位置およびRL方向の位置を求めることができるのであれば、サジタル面およびコロナル面とは別の面の投影画像データを作成してもよい。
【0104】
第1の形態および第2の形態では、肝臓の上端のAP方向の位置およびRL方向の位置を求めるために、加算プロファイルAおよびBを作成している。しかし、肝臓の上端のAP方向の位置およびRL方向の位置を求めることができるのであれば、加算プロファイルとは別のプロファイル(例えば、信号値の最大値を表す最大値プロファイルや、信号値の最小値を表す最小値プロファイル、信号値の平均値を表す平均値プロファイル)を作成してもよい。
【0105】
第1の形態および第2の形態では、肝臓の上端のAP方向の位置、RL方向の位置、およびSI方向の位置を求めることによって、肝臓の上端の位置を検出している。しかし、AP方向、RL方向、およびSI方向とは別の方向に関して、肝臓の上端の位置を求めて、肝臓の上端の位置を検出してもよい。
【0106】
第1の形態および第2の形態では、スライス位置設定手段91は、オペレータ13が操作部10から入力した情報に基づいて、スライス位置C〜Cを設定している。しかし、スライス位置設定手段91が、画像データに基づいて、スライス位置を自動的に設定してもよい。
【0107】
第1の形態および第2の形態では、T1強調画像およびT2強調画像を表示させる例について説明されている。しかし、本発明は、T1強調画像やT2強調画像の代わりに別の画像(例えばプロトン密度強調画像)を表示してもよいし、T1強調画像およびT2強調画像に加えて、更に別の画像を表示してもよい。また、別々のスキャンで得られた画像を表示させるのであれば、同じ種類の画像を表示させてもよい(例えば、表示画面11aの左欄Lに、スキャンAで取得されたT1強調画像を表示させ、表示画面11aの右欄Rに、別のスキャンBで取得されたT1強調画像を表示させてもよい。)
【0108】
第1の形態および第2の形態では、磁気共鳴イメージング装置について説明されている。しかし、本発明は、X線CT装置など、別のモダリティにも適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
2 磁場発生装置
3 テーブル
4 受信コイル
5 シーケンサ
6 送信器
7 勾配磁場電源
8 受信器
9 中央処理装置
10 操作部
11 表示部
12 被検体
13 オペレータ
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 送信コイル
31 クレードル
91 スライス位置設定手段
92 特徴点検出手段
93 位置合わせ手段
94 表示制御手段
100 MRI装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の所定の部位の複数のスライス位置における画像データを取得するためのスキャンを実行し、別々のスキャンごとに、前記所定の部位の特徴点の位置を検出する手段と、
前記所定の部位の特徴点の位置に基づいて、前記別々のスキャンのスライス位置の位置合わせを実行する位置合わせ手段と、
位置合わせが実行された後のスライス位置に従って、前記別々のスキャンにより取得された前記所定の部位の画像データを表示する表示手段と、
を有する医用装置。
【請求項2】
前記特徴点の位置を検出する手段は、
前記別々のスキャンごとに、前記特徴点の第1の方向の位置と、前記特徴点の第2の方向の位置と、前記特徴点の第3の方向の位置とを求めることにより、前記特徴点の位置を検出する、請求項1に記載の医用装置。
【請求項3】
前記特徴点の位置を検出する手段は、
前記別々のスキャンごとに、前記特徴点の第1の方向の位置と、前記特徴点の第2の方向の位置とが交差する交差位置を求め、前記交差位置において、前記特徴点の第3の方向の位置を求める、請求項2に記載の医用装置。
【請求項4】
前記特徴点の位置を検出する手段は、
前記別々のスキャンのうちの所定のスキャンにより得られた画像データに基づいて、前記交差位置を求める、請求項3に記載の医用装置。
【請求項5】
前記特徴点の位置を検出する手段は、
前記所定のスキャンにより得られた画像データの投影画像データを作成し、前記投影画像データのプロファイルに基づいて、前記交差位置を求める、請求項4に記載の医用装置。
【請求項6】
スカウト画像データを取得するためのスカウトスキャンが実行され、
前記特徴点の位置を検出する手段は、
前記スカウト画像データに基づいて、前記交差位置を求める、請求項3に記載の医用装置。
【請求項7】
前記特徴点の位置を検出する手段は、
前記スカウト画像データの投影画像データを作成し、前記投影画像データのプロファイルに基づいて、前記交差位置を求める、請求項6に記載の医用装置。
【請求項8】
前記プロファイルは、加算プロファイルである、請求項5又は7に記載の医用装置。
【請求項9】
前記表示手段は、
表示部と、
位置合わせが実行された後のスライス位置に従って、前記表示部に、前記別々のスキャンにより取得された画像データを表示させる表示制御手段と、
を有する、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項10】
前記所定の部位のスライス位置の情報を入力するための操作部を有し、
前記スライス位置設定手段は、
前記操作部から入力された情報に基づいて、前記スライス位置を設定する、請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項11】
前記所定の部位の特徴点は、肝臓の上端である、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項12】
前記医用装置は、磁気共鳴イメージング装置又はCT装置である、請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項13】
被検体の所定の部位の複数のスライス位置における画像データを取得するためのスキャンを実行し、別々のスキャンで取得された前記所定の部位の画像データを表示する医用装置のプログラムであって、
前記別々のスキャンごとに、前記所定の部位の特徴点の位置を検出する特徴点検出処理と、
前記所定の部位の特徴点の位置に基づいて、前記別々のスキャンのスライス位置の位置合わせを実行する位置合わせ処理と、
位置合わせが実行された後のスライス位置に従って、前記別々のスキャンにより取得された前記所定の部位の画像データを表示する表示処理と、
を計算機に実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−115399(P2012−115399A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266738(P2010−266738)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】