説明

医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体および該共重合体等からなる医療容器用シートまたは医療容器用フィルム

【課題】柔軟性、透明性、耐衝撃性、耐熱性を有し、医療容器からの溶出物がなく、さらに落袋時に容器からの内容物の漏出を防ぐのに十分なヒートシール強度を有するという、医療容器に求められる全ての条件を満足した医療容器を製造することのできるポリプロピレン樹脂を提供する。
【解決手段】メタロセン触媒系を用いて製造される、メルトフローレートが0.1〜10g/10minかつ融点が120〜155℃の範囲にあり、室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol
)90〜40重量%と室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)10〜60重量%とから構成され(ただし前記Dinsolと前記Dsolとの合計は100重量%である)、前記Dinsolおよび前記Dsol特定の要件を満たすことを特徴とする医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液などの保存に利用される医療容器を製造するのに好適なプロピレン重合体および該重合体を原料として製造される医療容器に関する。
【背景技術】
【0002】
輸液などの保存に利用される医療容器には、容器内が清浄であって、そして容器内の状況を透視確認できる透明性を持ち、滅菌処理後にも透明性が低下せず、また内容物を入れた後も柔軟性を保持して触感がよく、さらに加熱滅菌処理に耐えられる耐熱性があり、耐衝撃性を有し、その上落袋時に容器からの内容物の漏出を防ぐのに十分なシール強度が要求される。
【0003】
従来医療容器の原料としては塩化ビニル樹脂などが用いられていたが、ダイオキシンをはじめとする環境ホルモン等の問題から脱塩ビの動向が強まり、化学的特性、物理的特性および成形加工性に優れ、しかも安価であるポリプロピレン樹脂の使用が検討されている。
【0004】
ここでポリプロピレン樹脂は耐熱性に優れており、その改質が種々試みられているが、現状の改質ポリプロピレン樹脂では上記の医療容器に求められる要件の全てを満たすことはできておらず、限られた用途でしか使用されていない。
【0005】
例えば特許文献1にはポリプロピレンとエチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体からなる医療容器用樹脂組成物が開示されているが、その実施例を見ると、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体の極限粘度が一番高いもので1.8dl/gであり、耐衝撃性が不十分である。
【0006】
特許文献2には特定の要件を満たすプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が開示されているが、その実施例を見ると、GPCにより測定した重量平均分子量が低く、そのため製品のMFRが高くなりやすく、耐衝撃性について改良の余地がある。
【0007】
特許文献3の実施例にはポリプロピレンとスチレン・エチレン・ブタジエン共重合体からなる熱可塑性樹脂組成物が開示されており、その組成物は柔軟かつ透明性に優れるが、高価であるため実用的ではない。
【0008】
このように、柔軟性、透明性、耐衝撃性、耐熱性を有し、容器からの溶出がなく、さらに落袋時に容器からの内容物の漏出を防ぐのに十分なシール強度を有するという、医療容器に求められる全ての条件を満足した医療容器を製造することのできるポリプロピレン樹脂は実現されていない。
【特許文献1】特開2001-172451号公報
【特許文献2】特開2005-132979号公報
【特許文献3】特開平7-048485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、柔軟性、透明性、耐衝撃性、耐熱性を有し、容器からの溶出物がなく、さらに落袋時に容器からの内容物の漏出を防ぐのに十分なシール強度を有するという、医療容器に求められる全ての条件を満足した医療容器を製造することのできるポリプロピレ
ン樹脂が求められている。
【0010】
従って本発明は、上記の医療容器に求められる全ての条件を満足した医療容器を製造することのできるポリプロピレン樹脂を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、メタロセン触媒を用いて製造される、特定の要件を満たすプロピレン系ランダムブロック共重合体が上記の全ての要件を満足することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
メタロセン触媒系を用いて製造される、メルトフローレートが0.1〜10g/10minか
つ融点が120〜155℃の範囲にあり、室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)90〜40重量%と室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)10〜60重量%とから構成され(ただし前記Dinsolと前記Dsolとの合計は100重量%である)、前記Dinsolが要件(1)〜(3)を満たし、前記Dsolが要件(4)〜(6)を満たすことを特徴とする医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A);
(1) DinsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
(2) Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が0.5〜7.5モル%
(3) Dinsol中のプロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和が0.2モル%以下
(4) DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
(5) Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.5〜4dl/g
(6) Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が15〜35モル%。
[2]
[1]に記載の医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)60〜99重量%とエチレン−α−オレフィン共重合体(D)1〜40重量%とからなる医療容器用プロピレン系樹脂組成物(A‘)。
【0013】
[3]
[1]に記載の医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)あるいは[2]に記載の医療容器用プロピレン系樹脂組成物(A‘)からなる医療容器用シートまたは医療容器用フィルム。
【0014】
[4]
[1]に記載の医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)あるいは[2]に記載の医療容器用プロピレン系樹脂組成物(A‘)からなる層の一方の面にプロピレン系(共)重合体からなる層(B)が、もう一方の面に融点が150℃以下のプロピレン系ランダム共重合体からなる層(C)が積層されてなる積層シートまたは積層フィルム。
【0015】
[5]
[3]に記載の医療容器用シートまたは医療容器用フィルムがヒートシールされてなる医療容器。
【0016】
[6]
[4]に記載の積層シートまたは積層フィルムがヒートシールされてなる医療容器。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、柔軟性、透明性、耐衝撃性、耐熱性を有し、容器からの溶出物がなく、さらに落袋時も容器からの内容物の漏出を防ぐのに十分なシール強度を有するという、
医療容器に求められる全ての条件を満足した医療容器を製造することのできるポリプロピレン樹脂(プロピレン系ランダムブロック共重合体)を提供することができ、前記ポリプロピレン樹脂は種々の特性に優れるため、輸液バッグ等の医療容器だけでなく、種々の容器に適用することができる。
【0018】
また前記ポリプロピレン樹脂は低温ヒートシール性にも優れるため、生産性よくヒートシールによって医療容器へと加工され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
<プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)>
本発明のプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)(以下単に共重合体(A)ともいう)は、メタロセン触媒系の存在下で、
第一重合工程にてプロピレンとエチレンとを共重合してプロピレン系ブロック共重合体であるプロピレン・エチレンランダム共重合体を製造し、引き続き第二重合工程でプロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムを製造して得られる。プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)は、メルトフローレートが0.1〜10g/10min、融点が120〜15
5℃の範囲にあり、第一重合工程で製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合体を主成分とする室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)90〜40重量%と、第二重合工程で製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムを主成分とする室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)10〜60重量%とから構成される。DinsolとDsolの割合は、好ましくはDinsolが50重量%以上80重量%未満かつDsolが20重量%をこえ50重量%以下である。
【0020】
そして、本発明のプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)において、前記Dinsolが要件(1)〜(3)を満たし、さらに前記Dsolが要件(4)〜(6)を満たす。
(1) DinsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
(2) Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が0.5〜7.5モル%
(3) Dinsol中のプロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和が0.2モル%以下
(4) DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
(5) Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.5〜4dl/g
(6) Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が15〜35モル%。
【0021】
以下、本発明に係るプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)が備える上記要件(1)〜(6)について詳細に説明する。
要件(1)
本発明のプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)の室温n-デカンに不溶な部分
(Dinsol)のGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5、好ましくは、1.5〜3.2、更に好ましくは2.0〜3.0である。このように本発明のプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)に含有される室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)に
ついて、GPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)を上述のように狭くできるのは、触媒としてメタロセン触媒系を用いているからである。そして、Mw/Mnが3.5よりも大きいと、低分子量成分が増える為にブリードアウトが発生し、加熱処理後の透明性が低下する場合がある。
【0022】
要件(2)
本発明のプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)の室温n-デカンに不溶な部分
(Dinsol)中のエチレンに由来する骨格の含有量が0.5〜7.5モル%、好ましくは0.7〜6.0モル%、更に好ましくは1.0〜5.0モル%である。Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が0.5モル%未満であると、プロピレン系ランダムブロック共
重合体(A)の融点(Tm)が高くなり、各種医療容器での透明性や柔軟性が低下すると共に、低温ヒートシール性が悪化する場合がある。また、Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が7.5モル%よりも多いと、プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)の融点が低くなり、各種医療容器での滅菌処理時の耐熱性が低下する等の不具合が発生することがある。
【0023】
要件(3)
本発明のプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)の室温n-デカンに不溶な部分
(Dinsol)中のプロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和が0.2モル%以下、好ましくは0.1モル%以下である。Dinsol中のプロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和が0.2モル%よりも多い場合、プロピレンとエチレンとのランダム共重合性が低下し、その結果、室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)中のプロピレン−エチレン共
重合体ゴムの組成分布が広くなる為、各種医療容器の耐衝撃性が低下し、さらに、加熱処理後に透明性が低下するなどの不具合が発生する場合がある。
【0024】
要件(4)
本発明のプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)の室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)のGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5、好ましくは1.2〜
3.0、更に好ましくは1.5〜2.5である。このように本発明のプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)の室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)について、GPCから
求めた分子量分布(Mw/Mn)を上述のように狭くできるのは、触媒としてメタロセン触媒系を用いているからである。(Dsol)のGPCから求めた分子量分布が上記の範囲内にあると、各種医療容器は耐熱性、透明性に優れ、分子量分布が狭いために低分子量物質をほとんど含まないので、内容物の保存中に医療容器からの溶出物がない。
【0025】
要件(5)
本発明のプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)の室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)の135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.5〜4dl/g、好ましくは1.5dl/gを超え3.5dl/g以下であり、さらに好ましくは1.8〜3.5dl/g、最も好ましくは2.0〜3.0dl/gである。こうしたランダムブロック共重合体の製造において、本発明で好適に使用されるメタロセン触媒系以外の触媒を用いたのでは、極限粘度[η]が1.5dl/gを超えるプロピレン系ランダムブロック共重合体を製造することは極めて困難であり、特に極限粘度[η]が1.8dl/g以上のプロピレン
系ランダムブロック共重合体を製造することはほとんど不可能である。また、Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が4dl/gよりも高いと、第二重合工程でプロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムを製造する際に、超高分子量乃至高エチレン量プロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムが微量に副生する。この微量に副生したプロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムは、プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)中に不均一に存在する為、各種医療容器での耐衝撃性の低下、フィルムおよびシートでフィッシュアイ等が発生するなどの外観不具合が生ずる場合がある。
【0026】
要件(6)
本発明のプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)の室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)中のエチレンに由来する骨格の含有量が15〜35モル%、好ましくは17〜28モル%、更に好ましくは20〜25モル%である。上記の範囲内にすることにより、医療容器の耐衝撃性を保持しながら柔軟性を付与することができ、さらに透明性が良好になる。
【0027】
本発明のプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)は、メタロセン触媒系の存在下に、第一重合工程([工程1])でプロピレンと少量のエチレンとからなるプロピレン系
ランダム共重合体を製造後、第二重合工程([工程2])でプロピレンと第一工程よりも多量のエチレンとを共重合してプロピレン−エチレン共重合体ゴムを製造して得られるプロピレン系ランダムブロック共重合体である。
【0028】
本発明において好適に使用されるメタロセン触媒系としては、メタロセン化合物、並びに、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成することのできる化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、さらに必要に応じて粒子状担体とからなるメタロセン触媒系であり、好ましくはアイソタクチックまたはシンジオタクチック構造等の立体規則性重合をすることのできるメタロセン触媒系を挙げることができる。前記メタロセン化合物の中では、本願出願人による国際出願(WO01/27124号パンフレット)に例示されている以下に示すような架橋性メタロセン化合物が好適に用いられる。
【0029】
【化1】

【0030】
上記一般式[I]において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。このような炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、アリル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基などの直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、tert-ブチル基、アミル基
、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-
プロピルブチル基、1,1-プロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチ
ル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基;ベンジル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基などの環状不飽和炭化水素基の置換した飽和炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、フリル基、N-メチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N-フェニルアミノ基、ピリル基、チエニル基などのヘテロ原子含有炭化水素基等を挙げることができる。ケイ素含有基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基などを挙げることができる。
【0031】
また、一般式[I]において、置換基R5〜R12は隣接する置換基と相互に結合して環を形成してもよい。このような置換フルオレニル基としては、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルオクタヒドロジ
ベンゾフルオレニル基、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル基等を挙げることができる。
【0032】
前記一般式[I]において、シクロペンタジエニル環に置換するR1、R2、R3、R4は水素
原子または炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1〜20の炭化水素基としては、前述の炭化水素基を例示することができる。さらに好ましくはR3が炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0033】
前記一般式[I]において、フルオレン環に置換するR5〜R12は炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1〜20の炭化水素基としては、前掲の炭化水素基を例示することができる。置換基R5〜R12は、隣接する置換基が相互に結合して環を形成し
てもよい。
【0034】
前記一般式[I]において、シクロペンタジエニル環とフルオレニル環を架橋するYは
周期律表第14族元素であることが好ましく、より好ましくは炭素、ケイ素、ゲルマニウムであり、さらに好ましくは炭素原子である。このYに置換するR13、R14は炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。これらは相互に同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。炭素数1〜20の炭化水素基としては、前掲の炭化水素基を例示することができる。さらに好ましくはR14は炭素数6〜20のアリール(aryl)基である。
アリール基としては、前述の環状不飽和炭化水素基、環状不飽和炭化水素基の置換した飽和炭化水素基、ヘテロ原子含有環状不飽和炭化水素基を挙げることができる。また、R13
、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。こ
のような置換基としては、フルオレニリデン基、10-ヒドロアントラセニリデン基、ジベ
ンゾシクロヘプタジエニリデン基などが好ましい。
【0035】
また、上記一般式[I]で表されるメタロセン化合物は、R1、R4、R5またはR12から選ばれる置換基と架橋部のR13またはR14が互いに結合して環を形成してもよい。
前記一般式[I]において、Mは好ましくは周期律表第4族遷移金属であり、さらに好
ましくはTi、Zr、Hfである。また、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれる。jは1〜4の整数であり、jが2以上のときは、Qは互いに同一でも異なっていてもよい。ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、炭化水素基の具体例としては前掲と同様のものなどが挙げられる。アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert-ブトキシ、フェノキシなどのアルコキシ基、アセテート、ベンゾエー
トなどのカルボキシレート基、メシレート、トシレートなどのスルホネート基等が挙げられる。孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル類等が挙げられる。Qは少なくとも1つがハロゲン原子またはアルキル
基であることが好ましい。
【0036】
このような架橋メタロセン化合物としては、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチル-シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメ
チレン(3-tert-ブチル-5-メチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチル-シクロ
ペンタジエニル)(3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(メチ
ル)(フェニル)メチレン(3-tert-ブチル-5-メチル-シクロペンタジエニル)(オクタ
メチルオクタヒドロベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、[3-(1',1',4',4',7',7',10',10'-オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル)(1,1,3-トリ
メチル-5-tert-ブチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライド
(下記式[II]参照)などが好ましく挙げられる。
【0037】
【化2】

【0038】
なお、本発明で使用されるメタロセン触媒において、前記一般式[I]で表わされる第4
族遷移金属化合物とともに用いられる助触媒は、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、および遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、さらには必要に応じて用いられる粒子状担体からなり、これらにつ
いては、本出願人による前記公報(WO01/27124号パンフレット)あるいは特開平11-315109号公報中に開示された化合物を制限無く使用することができる。
【0039】
本発明におけるプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)は、二つ以上の反応装置を直列に連結した重合装置を用い、次の二つの工程([工程1]および[工程2])を連続的に実施することによって得られる。
【0040】
[工程1]は、重合温度0〜100℃、重合圧力常圧〜5MPaゲージ圧で、プロピレンとエチレンとを共重合させる。[工程1]では、プロピレンに対してエチレンのフィード量を少量とすることによって、[工程1]で製造されるプロピレン系ランダム共重合体がDinsolの主成分となるようにする。
【0041】
[工程2]は、重合温度0〜100℃、重合圧力常圧〜5MPaゲージ圧で、プロピレンとエチレンとを共重合させる。[工程2]では、プロピレンに対するエチレンのフィード量を[工程1]のときよりも多くすることによって、[工程2]で製造されるプロピレン−エチレン共重合ゴムがDsolの主成分となるようにする。
【0042】
このようにすることにより、Dinsolに係る要件(1)〜(3)は、[工程1]における重合
条件の調整によって、Dsolに係る要件(4)〜(6)は、[工程2]における重合条件の調整
によって、満足させることが可能となる。
【0043】
また、本発明のプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)が満足すべき物性については、使用するメタロセン触媒の化学構造により決定されることが多い。具体的には、要件(1)DinsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)、要件(3)Dinsol中のプロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和、要件(4)DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)、およびプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)の融点については、主として、[工程1]および[工程2]において用いられるメタロセン触媒を適切に選択することによって、本発明の要件を満足するように調節することができる。本発明に
おいて好ましく用いられるメタロセン触媒については前述の通りである。
【0044】
さらに、要件(2)Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量については、[工程1]におけるエチレンのフィード量などによって調整することが可能である。要件(5)Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]については、[工程2]における水素などの分子量調節剤のフィード量などによって調節することが可能である。要件(6)Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量については、[工程2]におけるエチレンのフィード量などによって調節することが可能である。さらに、[工程1]と[工程2]とで製造する重合体の量比を調整することによって、DinsolとDsolとの組成比、およびプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)のメルトフローレートを適切に調節することが可能である。
【0045】
また、本発明のプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)は、前記方法の[工程1]で製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合体と、前記方法の[工程2]で製造されるプロピレン−エチレンランダム共重合体ゴムを、メタロセン化合物含有触媒の存在下で個別に製造した後に、これら物理的手段を用いてブレンドして製造してよい。
【0046】
本発明にかかる医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)には、本発明の目的から逸脱しない範囲内で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、造核剤、中和剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料等の添加剤を適宜配合することができる。その後、押出機、バンバリーミキサー、タンブラー、ブラベンダー、ニーダー、リボンブレンダー等の混合装置を用いて均一混合し、樹脂組成物にすることができる。
【0047】
<医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)からなる医療容器用シートまたは医療容器用フィルム>
本発明にかかる医療容器用シートまたは医療容器用フィルムは、共重合体(A)を種々の公知の方法により成形することによって得ることができる。
【0048】
たとえば、共重合体(A)を押出機に供給し、T−ダイまたはサーキュラーダイを通してフィルム成形することによって、透明な未延伸フィルムを製造することができる。他にもT−ダイによる一軸延伸成形、二軸延伸成形、カレンダー成形なども採用可能である。
【0049】
そして本発明の医療容器用シートまたは医療容器用フィルムはヒートシール強度にも優れるため、ヒートシール法でシートまたはフィルムを貼り合わせることにより、製品運搬等で誤って医療容器を落とした際も、内容物の漏出を防ぐことができる。
【0050】
従来プロピレン−エチレン共重合体に低温ヒートシール性を付与させる為に、プロピレン−ブテンランダム共重合体ゴム、ブテン−プロピレンランダム共重合体ゴムを添加していたが、本発明の医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)により、これらゴム成分の添加量を低減させることができ、製造コストの低減化が図れる。また、本発明の医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)はポリエチレンに近い柔軟性を有すると同時にポリエチレンよりも耐熱性があるという特徴も有している。
【0051】
また、本発明の医療用器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体とからなる医療容器用プロピレン系樹脂組成物(A‘)の実施形態にすることにより、本発明の効果を保ったまま、更に製造コストを低減化することができる。前記医療容器用プロピレン系樹脂組成物(A‘)は、通常前記医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)60〜99重量%と前記エチレン−α−オレフィン共重合体1〜40重量%とからなる。
【0052】
<本発明にかかる積層シートまたは積層フィルム>
本発明にかかる積層シートまたは積層フィルムは、本発明にかかる医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)または前記本発明の医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体とからなる医療容器用プロピレン系樹脂組成物(A‘)からなる層の一方の面にプロピレン系(共)重合体からなる層(B)が、もう一方の面に融点が150℃以下のプロピレン系ランダム共重合体からなる層(C)が積層されてなることを特徴としている。本発明にかかる医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)からなる層が良好な柔軟性を有しているため、その性質をいかし、多層シートまたはフィルムにおける中間層として利用し、耐ブロッキング性等の機能をプロピレン系(共)重合体からなる層(B)および融点が150℃以下のプロピレン系ランダム共重合体からなる層(C)で付与させたものである。
【0053】
以下、前記プロピレン系(共)重合体からなる層(B)および融点が150℃以下のプロピレン系ランダム共重合体からなる層(C)について説明する。
(1)プロピレン系(共)重合体からなる層(B)
プロピレン系(共)重合体からなる層(B)を構成するプロピレン系(共)重合体としては、プロピレン単独重合体、プロピレン系ランダム共重合体などが挙げられる。これらの中でも柔軟性の点から、プロピレン系ランダム共重合体が好ましい。
【0054】
上記の重合体は種々の公知の方法により当業者が製造することができ、また例えば商品名「プライムポリプロF232DC((株)プライムポリマー製)」として市販されている。
【0055】
(2)融点が150℃以下のプロピレン系ランダム共重合体からなる層(C)
融点が150℃以下のプロピレン系ランダム共重合体からなる層(C)を構成するプロピレン系ランダム共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体等が挙げられる。チーグラーナッタ触媒系プロピレン系ランダム共重合体を使用する場合、これらの中でも低温シール性と低溶出の点から、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体あるいはプロピレン−ブテンランダム共重合体が好ましい。
【0056】
上記のプロピレン系ランダム共重合体は種々の公知の方法により当業者が製造することができ、また例えば商品名「プライムポリプロF337D((株)プライムポリマー製)」として市販されている。
【0057】
また、メタロセン触媒系プロピレン系ランダム共重合体は低温シール性、低溶出性に優れているので、層(C)を構成するプロピレン系ランダム共重合体として好適に使用することができる。
【0058】
本発明にかかる医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)または本発明の医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)とエチレン−α−オレフィン共重合体とからなる医療容器用プロピレン系樹脂組成物(A‘)からなる層(以下、共重合体(A)等からなる層とも呼ぶ)の一方の面にプロピレン系(共)重合体からなる層(B)が、もう一方の面に融点が150℃以下のプロピレン系ランダム共重合体からなる層(C)が積層されてなる本発明の積層シートまたは積層フィルムは、プロピレン系(共)重合体からなる層(B)が耐ブロッキング性を付与して最外層として使用されることが多く、プロピレン系ランダム共重合体からなる層(C)が低温シール性、低溶出性を付与して最内層として使用されることが多く、その結果、医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)単体からなるシートまたはフィルムよりもさらに有用である。また、層(B)の構成材料は層(C)の構成材料と同一であってもよい。
【0059】
本発明の積層シートまたは積層フィルムを製造する方法は特に限定されず、種々の公知の方法が適用可能である。たとえば、共押出積層法は製造効率がよく、層間剥離が生じにくいため好ましい。
【0060】
共重合体(A)等からなる層、層(B)および層(C)の厚みの比は、柔軟性と耐衝撃性を保持してかつ低温シール性、耐ブロッキング性を付与する観点から、通常層(B):共重合体(A)等からなる層:層(C)=1〜10:80〜98:1〜10(ただし、3つの数値の和は100である)である。また、医療容器の要求特性に応じて、層(A)、層(B)、層(C)を使用して、4層以上の層構成を有する医療容器用積層シート、積層フィルムとして使用してもよい。
【0061】
<本発明にかかる医療容器>
本発明の医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)、該共重合体(A)または上記医療容器用プロピレン系樹脂組成物(A‘)からなる医療容器用シートまたは医療容器用フィルム、および本発明の積層シートまたは積層フィルムを成形することにより、医療容器が得られる。前記医療容器は柔軟性、透明性、耐衝撃性、耐熱性を有し、容器からの溶出物がなく、さらに落袋時も内容物の漏出が無いという、医療容器に求められる全ての条件を満足している。
【0062】
医療容器は通常、内容物の充填後に加熱滅菌が行われる。水蒸気滅菌の場合には例えば121℃で滅菌が行われ、本発明の共重合体(A)などを原料として製造された医療容器は耐熱性に優れるため、この高温にも耐え、また加熱処理後に透明性が低下せず、さらに医療容器からの溶出物もない。
【0063】
〔実施例〕
次に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における物性の測定方法は次の通りである。
【0064】
(m1)MFR(メルトフローレート)
MFRは、ASTM D1238(230℃、荷重2.16kg)に従って測定した。
(m2)融点(Tm)
示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製)を用いて測定を行った。ここで測定し
た第3stepにおける吸熱ピークを融点(Tm)と定義した。
【0065】
(測定条件)
第1step : 10℃/minで240℃まで昇温し、10min間保持する。
第2step : 10℃/minで60℃まで降温する。
第3step : 10℃/minで240℃まで昇温する。
(m3)室温n-デカン可溶部量(Dsol
最終生成物(すなわち、本発明のプロピレン系ランダムブロック重合体)のサンプル5gにn-デカン200mlを加え、145℃で30分間加熱溶解した。約3時間かけて、20℃まで冷却さ
せ、30分間放置した。その後、析出物(以下、n-デカン不溶部:Dinsol)を濾別した。濾液を約3倍量のアセトン中に入れ、n-デカン中に溶解していた成分を析出させた(析出物
(A))。析出物(A)とアセトンを濾別し、析出物を乾燥した。なお、濾液側を濃縮乾固しても残渣は認められなかった。
【0066】
N-デカン可溶部量は、以下の式によって求めた。
n-デカン可溶部量(wt%)=〔析出物(A)重量/サンプル重量〕×100。
(m4)Mw/Mn測定〔重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)〕
ウォーターズ社製GPC-150C Plusを用い以下の様にして測定した。分離カラムは、TSKgel GMH6−HT及びTSKgel GMH6−HTLであり、カラムサイズはそれぞ
れ内径7.5mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼ
ン(和光純薬工業(株))および酸化防止剤としてBHT(和光純薬工業(株))0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106のものについては東ソー(株)製を用い、1000
≦Mw≦4×106のものについてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
【0067】
(m5)エチレンに由来する骨格の含有量
Dinsol、Dsol中のエチレンに由来する骨格濃度を測定するために、サンプル20〜30mgを1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン(2:1)溶液0.6mlに溶解後、炭素核磁気共鳴分析(13C-NMR)を行った。プロピレン、エチレン、α-オレフィンの定量はダイアッド連鎖分布より求めた。例えば、プロピレン−エチレン共重合体の場合、
【0068】
【数1】

【0069】
を用い、以下の計算式(Eq-1)および(Eq-2)により求めた。
【0070】
【数2】

【0071】
(m6)極限粘度[η]
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追
加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、
濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた。
【0072】
[η]= lim(ηsp/C) (C→0)。
(m7)2,1-挿入結合量、1,3-挿入結合量の測定
13C−NMRを用いて、特開平7-145212号公報に記載された方法に従って、プロピレンの2,1-挿入結合量、1,3-挿入結合量を測定した。
【0073】
(m8)フィルムのヒートシール性(シール強度)
フィルムを5mm巾にサンプリングし、シール時間を1秒、圧力を0.2Mpaに設定してシールした。シールバーの上部温度を200℃に設定し、下部を70℃でヒートシールしたフィルムの両端を300mm/minで引張り、剥離する最大強度を測定した。
【0074】
(m9)フィルムのヤング率
JIS K 6781に準じてキャストフィルムのヤング率の測定を行った(MD方向)。なお、引張速度は200mm/min、チャック間距離は80mmである。
【0075】
(m10)フィルムのハイレートインパクト試験
ハイレートインパクト試験は下記条件により行った。
試験温度 : 0℃
撃芯径 : 1/2インチ
受け台 : 1インチ
撃芯速度 : 10m/s
(m11) フィルムのヘイズ(HAZE)
JIS K7105に準拠して測定した。
【0076】
また、シクロヘキサノール溶媒で測定したヘイズ値を内部ヘイズとした。
製造例1
(1)固体触媒担体の製造
1L枝付フラスコにSiO2300gをサンプリングし、トルエン800mLを入れ、
スラリー化した。次に5L4つ口フラスコへ移液をし、トルエン260mLを加えた。メチルアルミノキサン(以下、MAO)−トルエン溶液(10wt%溶液)を2830mL導入した。室温のままで、30分間攪拌した。1時間かけて溶液を110℃に昇温し、4時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却した。冷却後、上澄みトルエンを抜き出し、フレッシュなトルエンで、置換率が95%になるまで、置換を行った。
【0077】
(2)固体触媒の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内にて、5L4つ口フラスコにジフェニルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロ
リドを2.0g秤り取った。フラスコを外へ出し、トルエン0.46リットルと(1)で調製したMAO/SiO/トルエンスラリー1.4リットルを窒素下で加え、30分間攪拌し担持を行った。得られたジフェニルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペン
タジエニル)(2,7−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド/MAO/SiO/トルエンスラリーはn-ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4.5リットルとした。この操作は、室温で行った。
【0078】
(3)前重合触媒の製造
前記の(2)で調製した固体触媒成分404g、トリエチルアルミニウム218mL、ヘ
プタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちエチレンを1212g挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で6g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この前重合触媒は固体触媒成分1g当りポリエチレンを3g含んでいた。この前重合触媒をM1系と呼ぶ。
【0079】
(4)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを30kg/時間、水素を2NL/時間、(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として5.8g/時間、トリエチルアルミニウム2.3ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は30℃であり、圧力は3.1MPa/Gであった。
【0080】
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.07mol%、エチレンを気相部のエチレン濃度が、1.9mol%になるように供給した。重合温度65℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。
【0081】
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気
固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.10(モル比)、水素/エチレン≒0.0001(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度7
0℃、圧力1.4MPa/Gで重合を行った。得られたプロピレン系ランダムブロック共重合体(A−1)について、80℃で真空乾燥を行った。プロピレン系ランダムブロック共重合体(A−1)の物性を表1に示す。
【0082】
製造例2
重合方法を以下の様に変えた以外は、製造例1と同様の方法で行った。
(1)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを30kg/時間、水素を2NL/時間、製造例1の(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として5.7g/時間、トリエチルアルミニウム2.3ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は30℃であり、圧力は3.1MPa/Gであった。
【0083】
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.08mol%、エチレンを気相部のエチレン濃度が、1.8mol%になるように供給した。重合温度65℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。
【0084】
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気
固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.12(モル比)、水素/エチレン≒0.0001(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.3MPa/Gで重合を行った。得られたプロピレン系ランダムブロック共重合体(A−2)について、80℃で真空乾燥を行った。プロピレン系ランダムブロック共重合体(A−2)の物性を表1に示す。
【0085】
製造例3
重合方法を以下の様に変えた以外は、製造例1と同様の方法で行った。
(1)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを30kg/時間、水素を2NL/時間、製造例1の(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として5.6g/時間、トリエチルアルミニウム2.3ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は30℃であり、圧力は3.1MPa/Gであった。
【0086】
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.08mol%、エチレンを気相部のエチレン濃度が、1.8mol%になるように供給した。重合温度65℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。
【0087】
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気
固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.18(モル比)、水素/エチレン≒0.0001(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.3MPa/Gで重合を行った。得られたプロピレン系ランダムブロック共重合体について、80℃で真空乾燥を行った。プロピレン系ランダムブロック共重合体(A−3)の物性を表1に示す。
【0088】
製造例4
重合方法を以下の様に変えた以外は、製造例1と同様の方法で行った。
(1)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを30kg/時間、水素を2NL/時間、製造例1の(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として5.8g/時間、トリエチルアルミニウム2.3ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は30℃であり、圧力は3.1MPa/Gであった。
【0089】
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.07mol%、エチレンを気相部のエチレン濃度が、1.8mol%になるように供給した。重合温度65℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。
【0090】
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気
固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.25(モル比)、水素/エチレン≒0.0001(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.2MPa/Gで重合を行った。得られたプロピレン系ランダムブロック共重合体(A−4)について、80℃で真空乾燥を行った。プロピレン系ランダムブロック共重合体(A−4)の物性を表1に示す。
【0091】
製造例5
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム952g、デカン4420mlおよび2−エチルヘキシルアルコ
ール3906gを、130℃で2時間加熱して均一溶液とした。この溶液中に無水フタル酸213gを添加し、130℃にてさらに1時間攪拌混合を行って無水フタル酸を溶解させた。
【0092】
このようにして得られた均一溶液を23℃まで冷却した後、この均一溶液の750mlを、−20℃に保持された四塩化チタン2000ml中に1時間にわたって滴下した。滴下後、得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)52.2gを添加し、これより2時間攪拌しながら同温度に保持した。次いで熱時濾過にて固体部を採取し、この固体部を2750mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。
【0093】
加熱終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンを用いて、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで洗浄した。
上記の様に調製された固体状チタン触媒成分はヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分は、チタンを2重量%、塩素を57重量%、マグネシウムを21重量%およびDIBPを20重量%の量で含有していた。
【0094】
(2)前重合触媒の製造
遷移金属触媒成分56g、トリエチルアルミニウム20.7mL、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン7.0mL、ヘプタン80Lを内容量200L
の攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温5℃に保ちプロピレンを560g挿入し、60分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、
遷移金属触媒成分濃度で0.7g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この前重合触媒は遷移金属触媒成分1g当りポリプロピレンを10g含んでいた。この前重合触媒をZN系と呼ぶ。
【0095】
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを30kg/時間、水素を135NL/時間、エチレン0.4kg/時間、触媒スラリーを固体触媒成分として0.16g/時間、トリエチルアルミニウム2.3ml/時間、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.8ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.5MPa/Gであった。
【0096】
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌器付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が9.0mol%、エチレンを気相部のエチレン濃度が、2.5mol%になるように供給した。重合温度65℃、圧力3.3MPa/Gで重合を行った。
【0097】
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気
固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.32(モル比)、水素/エチレン≒0.3(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.4MPa/Gで重合を行った。得られたプロピレン系ランダムブロック共重合体(A−5)について、80℃で真空乾燥を行った。プロピレン系ランダムブロック共重合体(A−5)の物性を表1に示す。
【0098】
【表1】

【実施例1】
【0099】
製造例1で製造されたプロピレン系ランダムブロック共重合体(A−1)100重量部に対して、熱安定剤IRGANOX(登録商標)1010(チバガイギー(株))0.1重量部、熱
安定剤IRGAFOS(登録商標)168(チバガイギー(株))0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部をタンブラーにて混合後、二軸押出機にて溶融混練してペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を調製し、Tダイ押出機[品番GM30+20、(株)GMエンジニアリング製]にてキャストフィルムを製膜した。フィルムの物性を表2に示す。
<溶融混練条件>
同方向二軸押出機:品番 NR2−36、ナカタニ機械(株)製
混練温度:240℃
スクリュー回転数:200rpm
フィーダー回転数:400rpm
<フィルム成形>
Tダイ押出機:品番 GM30+20、(株)GMエンジニアリング製
押出温度:230℃
チルロール温度:30℃
押出機回転数:60rpm
引取機回転数:2.2rpm
フィルム厚さ:200μm
【実施例2】
【0100】
製造例1で製造されたプロピレン系ランダムブロック共重合体(A−1)の代わりに、製造例2で製造されたプロピレン系ランダムブロック共重合体(A−2)を使用した以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【実施例3】
【0101】
製造例1で製造されたプロピレン系ランダムブロック共重合体(A−1)の代わりに、製造例3で製造されたプロピレン系ランダムブロック共重合体(A−3)を使用した以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【実施例4】
【0102】
製造例1で製造されたプロピレン系ランダムブロック共重合体(A−1)の代わりに、製造例4で製造されたプロピレン系ランダムブロック共重合体(A−4)を使用した以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの物性を表2に示す。
[比較例1]
【0103】
製造例1で製造されたプロピレン系ランダムブロック共重合体(A−1)の代わりに、製造例5で製造されたプロピレン系ランダムブロック共重合体(A−5)を使用した以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの物性を表2に示す。
【0104】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン触媒系を用いて製造される、
メルトフローレートが0.1〜10g/10minかつ融点が120〜155℃の範囲にあり

室温n-デカンに不溶な部分(Dinsol)90〜40重量%と室温n-デカンに可溶な部分(Dsol)10〜60重量%とから構成され(ただし前記Dinsolと前記Dsolとの合計は100重量%である)、
前記Dinsolが要件(1)〜(3)を満たし、前記Dsolが要件(4)〜(6)を満たすことを特徴とする医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A);
(1) DinsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
(2) Dinsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が0.5〜7.5モル%
(3) Dinsol中のプロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量の和が0.2モル%以下
(4) DsolのGPCから求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.5
(5) Dsolの135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.5〜4dl/g
(6) Dsol中のエチレンに由来する骨格の含有量が15〜35モル%。
【請求項2】
請求項1に記載のプロピレン系ランダムブロック共重合体(A)60〜99重量%とエチレン−α−オレフィン共重合体(D)1〜40重量%とからなる医療容器用プロピレン系樹脂組成物(A‘)。
【請求項3】
請求項1に記載の医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)あるいは請求項2に記載の医療容器用プロピレン系樹脂組成物(A‘)からなる医療容器用シートまたは医療容器用フィルム。
【請求項4】
請求項1に記載の医療容器用プロピレン系ランダムブロック共重合体(A)あるいは請求項2に記載の医療容器用プロピレン系樹脂組成物(A‘)からなる層の一方の面にプロピレン系(共)重合体からなる層(B)が、もう一方の面に融点が150℃以下のプロピレン系ランダム共重合体からなる層(C)が積層されてなる積層シートまたは積層フィルム。
【請求項5】
請求項3に記載の医療容器用シートまたは医療容器用フィルムがヒートシールされてなる医療容器。
【請求項6】
請求項4に記載の積層シートまたは積層フィルムがヒートシールされてなる医療容器。

【公開番号】特開2009−84305(P2009−84305A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251843(P2007−251843)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】